JP2013188136A - 安定性が向上したカシューナッツ殻油 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、未加熱または加熱カシューナッツ殻油の重合を抑制して安定化することを課題とする。本発明はまた、約20℃で固化する未加熱のカシューナッツ殻油を、低温でも運び易くすることを課題とする。
【解決手段】水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリと未加熱または加熱カシューナッツ殻油を含む組成物であって、前記アルカリにより未加熱または加熱カシューナッツ殻油の重合性が抑制されている、組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリと未加熱または加熱カシューナッツ殻油を含む組成物であって、前記アルカリにより未加熱または加熱カシューナッツ殻油の重合性が抑制されている組成物、並びにこれを用いたカシューナッツ殻油製剤及び飼料に関する。本発明はまた、未加熱または加熱カシューナッツ殻油に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリを添加することを特徴とする、カシューナッツ殻油の重合性抑制方法に関する。
カシューナッツ殻油(CNSL)は、カシューナッツ ツリー(Anacardium occidentale L.)の実の殻に含まれる油状の液体である。カシューナッツ殻油は、その成分として、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、メチルカルドールを主に含む。カシューナッツ殻油の調製法としては加熱法と溶剤抽出法があるが、通常、カシューナッツ殻油はカシューナッツ生産地にて加熱処理されることにより、アナカルド酸をカルダノールに変換して使用されている。
工業製品への応用例としては特許文献1−3があるが、いずれも、使用されているカシューナッツ殻油は加熱処理されたものである。また、特許文献4−6には未加熱のカシューナッツ殻油およびその成分であるアナカルド酸の飼料用途に向けた活用について言及されているが、具体的なカシューナッツ殻油の飼料への添加方法については記載されていない。実際、カシューナッツ殻油は粘度が高く、特に未加熱品は約20℃にて流動性が消失し、固化するなど非常に取り扱い難い。また、カシューナッツ殻油はその成分が不安定であり、芳香環の側鎖部分(不飽和脂肪酸)が重合するという問題もあった。
油状物質の飼料への添加方法としては、シリカに油状物質を吸収させ粉体状とし、飼料に添加する方法がビタミンEで知られている(非特許文献1)。しかし、同様の方法をこのカシューナッツ殻油に適用すると、液体状態よりも安定性が低く、重合し、安定性が低下するという問題点があった。
特許文献7には、アナカルド酸を含有したカシューナッツ殻液に水酸化カルシウムを添加混合し、アナカルド酸を安定化させる方法が記載されている。しかしながら、特許文献7には、水酸化カルシウムはアナカルド酸と反応して溶解性のない金属塩を生じ、アナカルド酸をカルダノールに変換させないことが記載されているのみであり、未加熱または加熱カシューナッツ殻油に水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような溶解性のある塩を生じるアルカリを添加して、カシューナッツ殻油の重合性を抑制することは記載されていない。また、特許文献7には、カシューナッツ殻油の重合性を抑制することについては課題として何ら言及されていない。
なお、未加熱または加熱カシューナッツ殻油について、安定性および取り扱い性の向上の両面から粉体化した例は今までにない。また、アルカリを添加した未加熱または加熱カシューナッツ殻油を賦形剤と混合することにより、20℃近辺で固化することを防止できることも特許文献7に記載されていない。
特開2008−144171号公報 特開2006−111839号公報 特開2003−252893号公報 特開2003−238400号公報 特開2001−151675号公報 特開平8−231410号公報 特開2010−88363号公報
小華薬品株式会社HP、http://www.shoka.co.jp/gyomu/bite.html
本発明は、未加熱または加熱カシューナッツ殻油の重合を抑制して安定化することを課題とする。本発明はまた、約20℃で固化する未加熱のカシューナッツ殻油を、低温でも運び易くすることを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、溶解性のある塩を生じるアルカリを未加熱または加熱カシューナッツ殻油に加えることにより、カシューナッツ殻油の重合が抑制されることを見出した。
本発明者らはまた、未加熱・加熱処理したカシューナッツ殻油に、比表面積が500m3/g以下またはpHが6以上のシリカを配合することにより、安定性を向上させたカシューナッツ殻油製剤が得られることを見出した。
本発明者らはさらに、穀物粉、シリカ等の賦形剤を用いることにより、約20℃以下の低温でも、固化させることなく、未加熱のカシューナッツ殻油を安定化できることを見出した。
本発明者らは、このようにして、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリと未加熱または加熱カシューナッツ殻油を含む組成物であって、前記アルカリにより未加熱または加熱カシューナッツ殻油の重合性が抑制されている、組成物。
(2)アルカリの量がカシューナッツ殻油比2重量%以上である(1)に記載の組成物。(3)(1)または(2)に記載の組成物と賦形剤とを含むカシューナッツ殻油製剤。
(4)前記賦形剤がシリカであることを特徴とする(3)に記載のカシューナッツ殻油製剤。
(5)前記シリカの比表面積が500m3/g以下であることを特徴とする(4)に記載のカシューナッツ殻油製剤。
(6)前記シリカのpHが6以上であることを特徴とする(4)または(5)に記載のカシューナッツ殻油製剤。
(7)(1)または(2)に記載の組成物および/あるいは(3)〜(6)のいずれか1項に記載のカシューナッツ殻油製剤を含むことを特徴とする飼料。
(8)未加熱または加熱カシューナッツ殻油に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリを添加することを特徴とする、カシューナッツ殻油の重合性抑制方法。
未加熱または加熱カシューナッツ殻油に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリを添加することにより、重合を抑制することができる。また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリを添加した未加熱または加熱カシューナッツ殻油に賦形剤を配合することにより、安定性を向上させることができる。さらに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリを添加し
た未加熱カシューナッツ殻油に賦形剤を配合することにより、20℃近辺で固化することを防止できる。従って、カシューナッツ殻油の工業的利用が容易になる。
図1は、pHの異なる4種のシリカを用いた場合の未加熱カシューナッツ殻油の組成変化を示す。棒グラフは、上から順に、カルドールC15:1、C15:2、C15:3、カルダノールC15:1、C15:2、C15:3、アナカルド酸C15:1、C15:2、C15:3を示す。 図2は、9種類のシリカの、pHまたは比表面積と8時間後のカルダノールまたはカルドール量(濃度)との相関を示す。 図3は、アルカリを添加しない場合の、未加熱または加熱カシューナッツ殻油の組成の変化(0日目および3日目)を示す。棒グラフは、上から順に、示される物質が含まれることを示す。 図4は、2重量%のアルカリを添加する場合の、未加熱または加熱カシューナッツ殻油の組成の変化(0日目および3日目)を示す。棒グラフは、上から順に、カルドールC15:1、C15:2、C15:3を示す。 図5は、アルカリ性シリカを用いた場合の飼料における重合反応の抑制を示す。棒グラフは、上から順に、カルドールC15:1、C15:2、C15:3を示す。
本発明の組成物は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリと未加熱または加熱カシューナッツ殻油を含み、前記アルカリにより未加熱または加熱カシューナッツ殻油の重合性が抑制されていることを特徴とする。
本発明に用いるカシューナッツ殻油は、カシューナッツ ツリー(Anacardium occidentale L.)の実の殻に含まれる油状の液体である。カシューナッツ殻油は、その成分として、アナカルド酸、カルダノール、カルドール、メチルカルドールを含むものである。
カシューナッツの殻を圧搾することにより抽出された非加熱カシューナッツ殻油(以下、カシューナッツ殻油という。)は、J.Agric.Food Chem. 2001, 49, 2548-2551に記載されるように、アナカルド酸を55〜80質量%、カルダノールを5〜20質量%、カルドールを5〜30質量%含むものである。また、非加熱カシューナッツ殻油を130℃以上で加熱処理して得られる加熱カシューナッツ殻油は、非加熱カシューナッツ殻油の主成分のアナカルド酸が脱炭酸しカルダノールに変換され、アナカルド酸を0〜10質量%、カルダノールを55〜80質量%、カルドールを5〜30質量%含むものとなる。
なお、アナカルド酸、カルダノール、およびカルドールは、芳香族環に結合する炭素数15の脂肪鎖が有する不飽和結合の数により、それぞれ主に以下の三種類が存在する(15:1,15:2,15:3)。
本発明において、カシューナッツ殻油の重合とは、その成分であるアナカルド酸、カルダノール、カルドールが重合し、有機溶媒に不溶の部分が増大することをいう。本発明において、カシューナッツ殻油の重合は、酢酸エチルを使用するHPLCによる組成分析により、カルドールの濃度の減少により評価する。
本発明において使用されるカシューナッツ殻油は、カシューナッツの殻を圧搾することにより抽出した植物油として得ることができる。また、本発明において使用されるカシューナッツ殻油は、加熱または抽出により、例えば、カシューナッツ殻を乾留又は溶剤抽出して得ることもできる。さらに、本発明において使用されるカシューナッツ殻油は、特開平8−231410号公報に記載されている方法によって、例えば、溶剤抽出法や加熱法によって得ることができる。
本発明において使用されるカシューナッツ殻油は、その他にも加熱殺菌処理油、カシューナッツの殻を粉砕・破砕して得られたものであってもよい。
本発明において使用されるカシューナッツ殻油は、市販品を用いることもできる。
本発明のカシューナッツ殻油は、上記のようにして得られた非加熱カシューナッツ殻油を、70℃以上、好ましくは130℃以上に加熱することによって得た加熱カシューナッツ殻油であってもよい。
本発明のカシューナッツ殻油は、カシューナッツの殻から圧搾抽出(非加熱カシューナッツ殻油)し、これを130℃に加熱処理して得たものでもよい。
本発明において使用されるアルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリである。水酸化ナトリウム、水酸化カリウムは、ナトリウム塩、カリウム塩のような溶解性のある金属塩を生じるアルカリである。これらのアルカリは、2種類以上組み合わせてカシューナッツ殻油に添加されてもよい。
使用されるアルカリの量としては、カシューナッツ殻油(CNSL)比2重量%以上であることが好ましく、より好ましくは、5重量%〜10重量%である。
本発明の組成物は、未加熱または加熱カシューナッツ殻油に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリを添加することにより製造することができる。
本発明のカシューナッツ殻油製剤は、未加熱または加熱カシューナッツ殻油、賦形剤ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリ成分を含むものであれば特に限定されない。
本発明のカシューナッツ殻油製剤は、本発明の組成物と賦形剤とを含む製剤が好ましく、例えば、本発明の組成物と賦形剤とを混合し、カシューナッツ殻油製剤とすることができる。
また、本発明のカシューナッツ殻油製剤は、アルカリ成分と賦形剤とをあらかじめ混合し、アルカリ成分と混合された賦形剤をさらに未加熱または加熱カシューナッツ殻油と混合させたものであってもよい。賦形剤中のアルカリ成分の影響により、アルカリ成分が賦形剤と混合された状態で、未加熱または加熱カシューナッツ殻油の重合を抑制することができる。
さらに、本発明のカシューナッツ殻油製剤は、未加熱または加熱カシューナッツ殻油と賦形剤とを混合した後、吹き付け処理等によりアルカリ成分を添加しても良い。
無機賦形剤としては、珪酸およびその塩類(例えば、シリカ)、バーミキュライト、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイトが挙げられるが、これらに限定されない。
無機賦形剤としてシリカを用いる場合には、pHが6以上であることが好ましく、そして/またはその比表面積が500m3/g以下であることが好ましい。より好ましくは、pH7〜12、そして/またはその比表面積が、400m3/g以下である。なお、比表面積は、BET法によって測定することができる。
無機賦形剤としてシリカを用いる場合の、配合比(重量比)としては、シリカ/カシューナッツ殻油=1/3.0〜1/0.1とすることが好ましい。他の無機賦形剤を使用する場合にも、同様のpH、比表面積、配合比とすればよい。
なお、穀物粉類や、後述の、トウモロコシ粒、トウモロコシ粉、マイロ、大豆粕、カラスムギ、小麦粉ショート、小麦粗粉、アルファルファ、クローバー、脱脂米糠、北洋ミール、沿岸ミール、酵母、糖蜜、肉片、ボーンミールなどの飼料成分を有機賦形剤として用いてもよい。
本発明のカシューナッツ殻油製剤は、未加熱または加熱カシューナッツ殻油、賦形剤ならびに水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも
1種のアルカリ成分に加えて、酸化防止剤を含んでいてもよく、例えば、エトキシキン、t−ブチルヒドロキシトルエン、t−ブチルヒドロキシアニソール、t−ブチルヒドロキノン、アスコルビン酸およびそのエステル、ビタミンE、没食子酸およびそのエステル、エリソルビン酸、クロロゲン酸、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩、リン酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明のカシューナッツ殻油製剤の剤形は、穀物粉、シリカなどの賦形剤を含有することにより、粉剤として製剤化することができる。すなわち、本発明のカシューナッツ殻油製剤は、未加熱または加熱カシューナッツ殻油、賦形剤、アルカリ成分、および必要に応じて任意成分を混合し、粉剤に製剤化することにより製造することができる。このような本発明の粉末状の製剤は、他の任意成分と混合させず飼料とすることができる。
本発明のカシューナッツ殻油製剤は、粉剤以外にもペレット剤などの粒剤にすることができる。この場合、未加熱または加熱カシューナッツ殻油に賦形剤およびアルカリ成分を加えるほかに硬化油を使用してもよい。硬化油としては、パーム油、ダイズ油、ナタネ油などを硬化した油が用いられる。硬化油の融点は45〜65℃となっているのが好ましい。なお、ペレット化とするには、通常の押し出し造粒機を用いて製造することができる。
本発明のカシューナッツ殻油製剤はまた、コーティングされていてもよく、例えば、造粒後、ゼイン、セラック、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、プルラン、ヘミロース、グルコース、乳糖、トレハロースおよびデンプンから選択されるコート剤によりコーティングすることができる。また、それらを成分とするシートにより被覆されていても良い。
本発明には、本発明の組成物および/またはカシューナッツ殻油製剤を含む飼料が含まれる。本発明において、飼料に含まれる未加熱または加熱カシューナッツ殻油は、カシューナッツ殻油の重合が抑制されている。
本発明の飼料において本発明の組成物および/またはカシューナッツ殻油製剤と配合される飼料成分の種類や配合割合などは特に制限されず、それぞれの動物に対して従来から給与されている飼料であればよく、例えば、トウモロコシ粒、トウモロコシ粉、マイロ、大豆粕、カラスムギ、小麦粉ショート、小麦粗粉、アルファルファ、クローバー、脱脂米糠、北洋ミール、沿岸ミール、酵母、糖蜜、肉片、ボーンミール、炭酸カルシウム、第2リン酸カルシウム、イエログリース、ビタミン類、ミネラル類などを用いて調製することができる。
本発明の飼料は、未加熱カシューナッツ殻油製剤をそのまま飼料成分に添加し、混合して製造することができる。この際、粉末状、固形状の未加熱カシューナッツ殻油製剤を用いる場合は、混合を容易にするために製剤を液状又はゲル状の形態にしてもよい。この場合は、水、大豆油、菜種油、コーン油などの植物油、液体動物油、ポリビニルアルコールやポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸などの水溶性高分子化合物を液体担体として用いることができる。また、飼料中におけるカシューナッツ殻油の均一性を保つために、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、カゼインナトリウム、アラビアゴム、グアーガム、タマリンド種子多糖類などの水溶性多糖類を配合することも好ましい。
本発明の飼料は、牛、豚、鶏、羊、馬、ヤギなどの家畜の飼育に好適である。摂取させる飼料の量は、動物の種類、体重、年齢、性別、健康状態、飼料の成分などにより適宜調節することができ、このとき飼料に含まれるカシューナッツナッツ殻油が好ましくは0.005〜500g/頭・日、より好ましくは0.05〜100g/頭・日である。
飼料を摂取させる方法及び飼育する方法は、動物の種類に応じて、通常用いられる方法
をとることができる。
実施例1.試料調製
カシュー・トレーディング(株)よりカシューナッツの殻500kgを入手し、圧搾する事によりカシューナッツ殻油(未加熱カシューナッツ殻油)158kgを製造した。また、この未加熱カシューナッツ殻油を150℃にて10時間加熱することにより、成分中のアナカルド酸が脱炭酸反応によりカルダノールに変換した加熱カシューナッツ殻油を得た。賦形剤として使用したシリカ(9種類)は一覧を表1に示した。シリカは全てエボニック デグサ ジャパン(株)より入手した。
実施例2.HPLC測定
(1)図1,2,5について
Waters600(日本ウォータース(株))、検出器(Waters490E、日本ウォータース(株))、プリンタ(クロマトパックC−R6A、島津製作所)、カラム(SUPELCOSIL LC18、SUPELCO社)を用いた。条件は、溶媒 アセトニトリル:水:酢酸=80:20:1(容量比)、流速2ml/ml、温度 25℃、吸光度 280nmにて測定した。
(2)図3,4について
PU-2089 Plus(日本分光(株))、検出器(MD-2010 plus、日本分光(株))を使用した。分析条件は、上記(1)と同様に実施した。
pH測定
シリカのpHは下記要領にて測定した。
イオン交換水により5重量%のシリカ水懸濁液を作成し、ガラス電極にて電位測定し、pHとした。
実施例3
未加熱カシューナッツ殻油 10gを各ビーカーに分取し、そこに、各種シリカ 5gを加え、均一となるよう攪拌した。それぞれ、密閉後80℃の恒温槽に静置し、8時間、1日後にサンプリングを行った。酢酸エチルを使用して5000ppm(シリカ込み)に調整し、HPLCによる組成分析を実施した。
pHの異なる4種のシリカを用いた場合の組成変化を図1に示した。シリカのpHが酸性側に行くに従い、回収された未加熱カシューナッツ殻油成分の量(濃度)が小さくなる事が分かる。これは80℃に静置した間に重合が進行し、酢酸エチルに不溶の部分が増大した為である。特に、カルドールに於いてピークの減少が顕著であり、カルドールが特に重合し易いことが分かる。
図2には、使用した9種類のシリカに於いて、シリカのpHおよび比表面積と8時間後
のカルダノールおよびカルドール量(濃度)との相関を図示した。カルダノール、カルドール供にpHとの相関が確認され、アルカリ性になるに従い回収されたカルダノール、カルドール量が増加している(重合が生じ難くなっている)ことが確認された。また、比表面積との関係においても、pHほど相関は強くないが、比表面積が小さくなるに従い、回収されたカルダノール、カルドール量が増加している(重合が生じ難くなっている)ことが確認された。
実施例4
未加熱カシューナッツ殻油 10gおよび加熱カシューナッツ殻油 10gを各ビーカーに分取し、それぞれのカシューナッツ殻油に関して2重量%となるように各種アルカリ成分(NaOH溶液(53.6 %),KOH溶液(56.5 %),NH3(28 %))を水溶液にて添加した。そこに、Sipernat 22 5gを加え、均一となるよう攪拌した。それぞれ、密閉後80℃の恒温槽に静置し、3日後にサンプリングを行った。酢酸エチルを使用して500ppm(シリカ込み)に調整し、HPLCによる組成分析を実施した。
図3にアルカリを加えないで実施した場合(比較例)の変化を図示した。同時に最も重合し易い成分であるカルドールを取り上げて併記した。これによると、カルドールに於ける未加熱カシューナッツ殻油および加熱カシューナッツ殻油の3日後の減少量はそれぞれ20%、23%であった。これに対して各種アルカリを2重量%添加した場合は回収率の上昇(重合の低下)が確認された(図4)。これにより、アルカリ添加が重合の抑制に効果的に効いている事が判明した。
実施例5
飼料(若齢牛育成用標準飼料:SDC No.2 日本配合飼料(株))100gに実施例3にて作成したシリカ剤2種(Carplex BS306およびCarplex #1120)を1重量%添加して、未加熱カシューナッツ殻油を含む飼料を作成した。
それぞれ、密閉後80℃の恒温槽に静置し、3日後にサンプリングを行い、HPLCによる組成分析を行った。
HPLC分析は、試験に用いた飼料から酢酸エチルにて可溶部を抽出後、ろ過、乾燥し、5mg/mlとなるよう濃度調整して測定した。分析結果はカルドールについて、分析時の濃度(ppm)として記した(図5)。
これより、Carplex #1120(pH10.6)を使用した方は、飼料中に於いても重合が進行することなく、安定に存在することがわかる。
実施例6
未加熱カシューナッツ殻油を添加した飼料の作成(有機賦形剤の使用)
標準飼料を賦形剤として利用し、鶏及び牛用飼料を作成した。配合例は以下に限定されない。
(1)ブロイラー用飼料作成
ブロイラー肥育前期用標準飼料:SDB No.1 日本配合飼料(株)99.5重量%未加熱カシューナッツ殻油(2重量%NaOH) 0.05重量%
混合する事により粉体となり、20℃近辺で固化することを防止できる。
(2)牛用飼料作成
若齢牛育成用標準飼料:SDC No.2 日本配合飼料(株) 99.5重量%未加熱カシューナッツ殻油(2重量%NaOH) 0.05重量%
混合する事により粉体となり、20℃近辺で固化することを防止できる。
未加熱または加熱カシューナッツ殻油に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアンモニアを添加することにより、重合を抑制することができる。また、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアンモニアを添加した未加熱または加熱カシューナッツ殻油を
賦形剤と混合することにより、安定性を向上させることができる。さらに、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、またはアンモニアを添加した未加熱カシューナッツ殻油に賦形剤を配合することにより、20℃近辺で固化することを防止できる。従って、カシューナッツ殻油の工業的利用が容易になる。

Claims (8)

  1. 水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリと未加熱または加熱カシューナッツ殻油を含む組成物であって、前記アルカリにより未加熱または加熱カシューナッツ殻油の重合性が抑制されている、組成物。
  2. アルカリの量がカシューナッツ殻油比2重量%以上である請求項1に記載の組成物。
  3. 請求項1または2に記載の組成物と賦形剤とを含むカシューナッツ殻油製剤。
  4. 前記賦形剤がシリカであることを特徴とする請求項3に記載のカシューナッツ殻油製剤。
  5. 前記シリカの比表面積が500m3/g以下であることを特徴とする請求項4に記載のカシューナッツ殻油製剤。
  6. 前記シリカのpHが6以上であることを特徴とする請求項4または5に記載のカシューナッツ殻油製剤。
  7. 請求項1または2に記載の組成物および/あるいは請求項3〜6のいずれか1項に記載のカシューナッツ殻油製剤を含むことを特徴とする飼料。
  8. 未加熱または加熱カシューナッツ殻油に水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアから選択される少なくとも1種のアルカリを添加することを特徴とする、カシューナッツ殻油の重合性抑制方法。
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