JP2013185441A - 車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置 - Google Patents

車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】車両搭載のターボ過給機付エンジンにおいて、目標過給圧に基づきターボ過給機の作動を制御して燃費及び排気エミッション性を向上させることと、排気圧力が過剰に上昇することを防止して排気系の信頼性を確保することと、を両立させる。
【解決手段】制御器(PCM10)は、排気圧力把握手段によって把握された排気圧力に基づき、所定の上限排気圧力を超えないような流量調整弁(レギュレートバルブ64a)のガード開度を設定すると共に、変速機が少なくとも所定以下の低速段にあるときであって、目標過給圧に基づいてフィードバック制御される流量調整弁の開度がガード開度よりも小さくなるときには、ガード開度に従って流量調整弁の開度を調整する。
【選択図】図5

Description

ここに開示する技術は、車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置に関する。
特許文献1には、排気通路の上流側に配置された小型タービンを有する小型ターボ過給機と、小型タービンよりも下流側に配置された大型タービンを有する大型ターボ過給機とを備えたディーゼルエンジンにおいて、エンジンの低速低負荷領域では、小型タービンをバイパスするバイパス路に設けたレギュレートバルブ(つまり、流量調整弁)を閉じることによって、低排気エネルギでも小型ターボ過給機を作動させて過給圧を得る一方、エンジンの高速高負荷領域では、レギュレートバルブを開けることによって、小型ターボ過給機を非作動にし、排気抵抗を低減することが記載されている。つまり、レギュレートバルブの開度は、エンジンの運転状態に応じて設定される目標過給圧に従って、当該目標過給圧が達成されるようにフィードバック制御され、これにより、広い運転領域で応答性良く過給圧が得られて、トルク及び燃費の向上のみならず、排気エミッション性の向上にも有利になる。
特開2006−70878号公報
ところが、少なくとも小型ターボ過給機を含む過給機付エンジンは、例えば低速段での全開加速時のような走行時に排気圧力が上昇しやすく、前述の通り、目標過給圧に基づいてレギュレートバルブの開度をフィードバック制御していたのでは、排気圧力が高くなりすぎて、排気系の信頼性の拘束条件を保証できなくなる場合がある。
特に、トルクコンバータを有する自動変速機が搭載された車両では、急加速時にはトルクコンバータのスリップによってエンジンの回転数が急上昇してしまい排気圧力の急上昇を招きやすい。自動変速機はまた、加速時のキックダウンによって変速段が低速側に切り替わることで、排気圧力が高くなりすぎるような状態を、より一層招きやすいという問題がある。
ここに開示する技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両搭載のターボ過給機付エンジンにおいて、目標過給圧に基づきターボ過給機の作動を制御して燃費及び排気エミッション性を向上させることと、排気圧力が過剰に上昇することを防止して排気系の信頼性を確保することと、を両立させることにある。
ここに開示する車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置は、車両に搭載されたエンジンと、前記エンジンの出力を変速して駆動輪に伝達するよう構成された変速機と、前記エンジンの排気通路に配置された第1タービン、及び、前記エンジンの吸気通路に配置された第1コンプレッサを有しかつ、前記エンジンの運転状態が予め設定された低回転側の第1領域にあるときに作動をする第1ターボ過給機と、前記排気通路における前記第1タービンよりも下流側に配置された第2タービン、及び、前記吸気通路に配置された第2コンプレッサを有しかつ、前記エンジンの運転状態が、前記第1領域よりも高回転側の第2領域にあるときに少なくとも作動をする第2ターボ過給機と、前記第1タービンをバイパスするバイパス路に配置されかつ、その開度を調整することによって前記第1ターボ過給機の作動を制御するよう構成された流量調整弁と、前記第1タービンよりも上流側における排気圧力を直接的又は間接的に把握するように構成された排気圧力把握手段と、前記エンジンの運転状態に応じた目標過給圧に基づき設定された目標開度となるように前記流量調整弁の開度をフィードバック制御する制御器と、を備える。
そして、前記制御器は、前記排気圧力把握手段によって把握された排気圧力に基づき、所定の上限排気圧力を超えないような前記流量調整弁のガード開度を設定すると共に、前記変速機が少なくとも所定以下の低速段にあるときであって、前記フィードバック制御される前記流量調整弁の開度が前記ガード開度よりも小さくなるときには、前記ガード開度となるように前記流量調整弁の開度を調整する。
ここで、「排気圧力把握手段」は、エンジンの排気通路に配置されて排気圧力を直接検出する排気圧力センサとしてもよいし、後述するように、排気圧力センサを用いずに、種々のパラメータから、排気圧力を予測する構成を採用してもよい。
「所定の上限排気圧力」は、エンジン本体の排気系の信頼性の拘束条件を満足させることが可能な排気圧力の上限値として、適宜、設定すればよい。
前記の構成によると、エンジンの運転状態が低回転側の第1領域にあるときには、少なくとも第1ターボ過給機が作動し、エンジンの運転領域が高回転側の第2領域にあるときには、第2ターボ過給機が作動する。つまり、この構成は、2ステージターボ過給機であり、第1ターボ過給機の作動状態は、バイパス路に設けられた流量調整弁の開度によって制御される。具体的には、流量調整弁を閉じたときには、排気ガスが第1タービンを通過するようになるため、第1ターボ過給機が作動し、逆に流量調整弁を開けたときには、排気ガスが第1タービンをバイパスするようになるため、第1ターボ過給機が非作動となる。
制御器は、エンジンの運転状態に応じた目標過給圧に基づき設定された目標開度となるように、流量調整弁の開度を調整する。これは2ステージターボ過給機の通常の制御に相当し、この目標過給圧に基づくフィードバック制御によって、前述の通り、エンジンの運転状態が低回転側の第1領域にあるときには、少なくとも第1ターボ過給機が作動し、エンジンの運転領域が高回転側の第2領域にあるときには、第2ターボ過給機が作動する。これにより、広い運転領域で、応答性良く必要な過給圧が得られて、トルク及び燃費の向上に有利になると共に、エミッション性も向上する。
制御器はまた、排気圧力把握手段によって把握された排気圧力に基づき、所定の上限排気圧力を超えないような流量調整弁のガード開度を設定する。このガード開度は、排気圧力を上限排気圧力以下に維持することが可能な、流量調整弁の最小開度と言い換えることが可能であり、排気圧力が高いほど、ガード開度が大きくなるように設定すればよい。
そうして制御器は、変速機が少なくとも所定以下の低速段にあるときであって、フィードバック制御される流量調整弁の開度が、設定したガード開度よりも小さくなるときには、ガード開度となるように流量調整弁の開度を調整する。尚、流量調整弁の実際の開度とガード開度とを比較してもよいし、フィードバック制御に係る目標開度とガード開度とを比較してもよい。これによって、変速機が所定以下の低速段にあるときには、全開加速等によるエンジン回転数の急上昇に伴い、排気圧力が急激に高まりやすいが、そのようなときであっても、排気圧力の上昇が抑制されて、上限排気圧力を超えてしまうことが未然に回避される。その結果、排気系の信頼性の拘束条件が保証される。
こうして、目標過給圧に基づく目標開度に従って流量調整弁の開度を調整することと、排気圧力に基づいて設定されたガード開度に従って流量調整弁の開度を調整することとを組み合わせることで、燃費及び排気エミッション性を向上させることと、排気系の信頼性を確保することとが両立する。
ここで、ガード開度は、変速機の変速段を考慮して設定してもよい。つまり、変速機が低速段であるほど、排気圧力の上昇速度が高くなって、上限排気圧力を超えやすくなることから、変速機が低速段であるほど、ガード開度が大きくなるように設定してもよい。こうすることで、変速機の変速段に拘わらず、排気圧力が、その上限を超えてしまうことを、確実にかつ適切に回避することが可能になる。
前記排気圧力把握手段は、少なくとも排気流量、並びに、前記第1及び第2コンプレッサの圧力比に基づいて、前記流量調整弁を全閉にしている状態での前記排気圧力を予測する、としてもよい。
排気圧力の予測を行うことによって、排気圧力を検知するためのセンサを省略することができる。
また、流量調整弁のガード開度の設定に際し予測する排気圧力を、流量調整弁を全閉にしている状態での排気圧力とすることによって、流量調整弁の応答遅れ等の要因により制御が不安定になってしまうことが回避されて、制御の安定化が図られる。
前記制御器は、前記エンジン本体の運転状態が、前記第1領域内における前記第2領域との境界付近を通過するような前記車両の加速時に、前記ガード開度に基づく前記流量調整弁の開度調整を行う、としてもよい。
すなわち、エンジン本体の運転状態が第1領域における第2領域との境界付近にあるときには、排気流量が多くなる一方で、第1ターボ過給機が作動する領域であって流量調整弁は全開にならないため、排気圧力が上昇しやすい。そこで、この第2領域との境界付近を通過するような加速時に、前述したガード開度に基づく流量調整弁の開度調整を行うことで、排気圧力が上限を超えてしまうことが回避されて、排気系の信頼性が確実に確保される。
前記変速機は、ロックアップ機構付トルクコンバータを有する自動変速機であり、前記制御器は、所定の低車速以上において前記ロックアップ機構を締結させる、としてもよい。
トルクコンバータを有する自動変速機は、車両の加速時に、トルクコンバータのスリップによってエンジン回転数の急上昇を招きやすいところ、前述したガード開度に基づく流量調整弁の開度調整によって、排気圧力が上限排気圧力を超えてしまうことを未然に回避することが可能になる。
また、前記の構成では、ロックアップ機構を低車速の状態から締結させることによって、トルクコンバータのスリップが抑制されるから、排気圧力の急上昇自体が抑制される。このことによって、ガード開度に基づく流量調整弁の開度調整はあまり行われず、逆に、目標過給圧に基づく流量調整弁の開度調整の方がより多く行われるようになるから、トルク及び燃費の向上、並びに、排気エミッション性の向上に有利になる。
前記制御器は、前記ガード開度に従って前記流量調整弁の開度調整を行うときには、前記エンジンに対する燃料供給量を減量させる、としてもよい。
ガード開度に従って流量調整弁の開度調整を行うときには、第1ターボ過給機の作動が抑制される結果、エンジンの運転状態に応じた目標過給圧に満たないことになり、その分、気筒内に供給される新気量が減少することになり得る。そこで、ガード開度に従って流量調整弁の開度調整を行うときには、エンジンに対する燃料供給量を減量させることにより、スモークの発生が抑制される。
以上説明したように、前記の車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置によると、所定の上限排気圧力を超えないような流量調整弁のガード開度を設定すると共に、目標過給圧に基づいてフィードバック制御される流量制御弁の開度がガード開度以上のときには、目標開度となるように流量調整弁の開度を調整する一方、変速機が少なくとも所定以下の低速段にあるときであって、流量制御弁の開度がガード開度よりも小さくなるときには、ガード開度となるように流量調整弁の開度を調整することにより、燃費及び排気エミッション性を向上させることと、排気系の信頼性を確保することとが両立する。
ディーゼルエンジンの構成を示す概略図である。 ディーゼルエンジンの制御に係るブロック図である。 2ステージターボ過給機の作動マップの一例を示す図である。 予測排気圧力に応じて設定されるガード開度の設定マップの一例である。 排気圧ガード制御を実行したときと、実行しないときとで、(a)排気圧力の変化、(b)レギュレートバルブ開度の変化の相違を示す説明図である。 PCMが実行するエンジン制御のフローチャートである。 排気圧ガード制御を実行したときの(a)エンジン回転数、(b)アクセル開度、(c)燃料噴射量、(d)過給圧、(e)排気圧力、(f)レギュレートバルブ開度、の各変化に係るタイムチャートの実例である。
以下、実施形態に係るディーゼルエンジンを図面に基づいて説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。図1,2は、実施形態に係るエンジン(エンジン本体)1の概略構成を示す。このエンジン1は、車両に搭載されると共に、軽油を主成分とした燃料が供給されるディーゼルエンジンである。このエンジン1が搭載される車両は、自動変速機73を備えたAT車であって、エンジン1の駆動に伴う出力トルクは、クランクシャフト15に対しロックアップクラッチ付のトルクコンバータ72を介して連結された自動変速機73を通じて駆動輪74に伝達されることになる。
エンジン1は、複数の気筒11a(1つのみ図示)が設けられたシリンダブロック11と、このシリンダブロック11上に配設されたシリンダヘッド12と、シリンダブロック11の下側に配設され、潤滑油が貯溜されたオイルパン13とを有している。このエンジン1の各気筒11a内には、ピストン14が往復動可能にそれぞれ嵌挿されていて、このピストン14の頂面にはリエントラント形燃焼室14aを区画するキャビティが形成されている。このピストン14は、コンロッド14bを介してクランクシャフト15と連結されている。
前記シリンダヘッド12には、各気筒11a毎に吸気ポート16及び排気ポート17が形成されているとともに、これら吸気ポート16及び排気ポート17の燃焼室14a側の開口を開閉する吸気弁21及び排気弁22がそれぞれ配設されている。
これら吸排気弁21,22をそれぞれ駆動する動弁系において、排気弁側には、当該排気弁22の作動モードを通常モードと特殊モードとに切り替える油圧作動式の可変機構(図2参照。以下、VVM(Variable Valve Motion)と称する)が設けられている。このVVM71は、その構成の詳細な図示は省略するが、カム山を1つ有する第1カムとカム山を2つ有する第2カムとの、カムプロファイルの異なる2種類のカム、及び、その第1及び第2カムのいずれか一方のカムの作動状態を選択的に排気弁22に伝達するロストモーション機構を含んで構成されており、第1カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22は、排気行程中において一度だけ開弁される通常モードで作動するのに対し、第2カムの作動状態を排気弁22に伝達しているときには、排気弁22が、排気行程中において開弁すると共に、吸気行程中においても開弁するような、いわゆる排気の二度開きを行う特殊モードで作動する。
VVM71の通常モードと特殊モードとの切り替えは、エンジン駆動の油圧ポンプ(図示省略)から供給される油圧によって行われ、特殊モードは、内部EGRに係る制御の際に利用される。尚、こうした通常モードと特殊モードとの切り替えを可能にする上で、排気弁22を電磁アクチュエータによって駆動する電磁駆動式の動弁系を採用してもよい。また、内部EGRの実行としては、排気の二度開きに限定されるものではなく、例えば吸気弁21を2回開く、吸気の二度開きによって内部EGR制御を行ってもよいし、排気行程乃至吸気行程において吸気弁21及び排気弁22の双方を閉じるネガティブオーバーラップ期間を設けて既燃ガスを残留させる内部EGR制御を行ってもよい。尚、VVM71による内部EGR制御は、主に燃料の着火性が低いエンジン1の冷間時に行われる。
前記シリンダヘッド12には、燃料を噴射するインジェクタ18と、エンジン1の冷間時に各気筒11a内の吸入空気を暖めて燃料の着火性を高めるためのグロープラグ19とが設けられている。前記インジェクタ18は、その燃料噴射口が燃焼室14aの天井面から該燃焼室14aに臨むように配設されていて、基本的には圧縮行程上死点付近で、燃焼室14aに燃料を直接噴射供給するようになっている。
前記エンジン1の一側面には、各気筒11aの吸気ポート16に連通するように吸気通路30が接続されている。一方、前記エンジン1の他側面には、各気筒11aの燃焼室14aからの既燃ガス(つまり、排気ガス)を排出する排気通路40が接続されている。これら吸気通路30及び排気通路40には、詳しくは後述するが、吸入空気の過給を行う大型ターボ過給機61と小型ターボ過給機62とが配設されている。
吸気通路30の上流端部には、吸入空気を濾過するエアクリーナ31が配設されている。一方、吸気通路30における下流端近傍には、サージタンク33が配設されている。このサージタンク33よりも下流側の吸気通路30は、各気筒11a毎に分岐する独立通路とされ、これら各独立通路の下流端が各気筒11aの吸気ポート16にそれぞれ接続されている。
吸気通路30におけるエアクリーナ31とサージタンク33との間には、大型及び小型ターボ過給機61、62のコンプレッサ61a,62aと、該コンプレッサ61a,62aにより圧縮された空気を冷却するインタークーラ35と、前記各気筒11aの燃焼室14aへの吸入空気量を調節するスロットル弁36とが配設されている。このスロットル弁36は、基本的には全開状態とされるが、エンジン1の停止時には、ショックが生じないように全閉状態とされる。
前記排気通路40の上流側の部分は、各気筒11a毎に分岐して排気ポート17の外側端に接続された独立通路と該各独立通路が集合する集合部とを有する排気マニホールドによって構成されている。
この排気通路40における排気マニホールドよりも下流側には、上流側から順に、小型ターボ過給機62のタービン62b、大型ターボ過給機61のタービン61bと、排気ガス中の有害成分を浄化する排気浄化装置41と、サイレンサ42とが配設されている。
この排気浄化装置41は、酸化触媒41aと、ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、フィルタという)41bとを有しており、上流側から、この順に並んでいる。酸化触媒41a及びフィルタ41bは1つのケース内に収容されている。前記酸化触媒41aは、白金又は白金にパラジウムを加えたもの等を担持した酸化触媒を有していて、排気ガス中のCO及びHCが酸化されてCO及びHOが生成する反応を促すものである。また、前記フィルタ41bは、エンジン1の排気ガス中に含まれる煤等の微粒子を捕集するものである。尚、フィルタ41bに酸化触媒をコーティングしてもよい。このエンジン1は、後述するように、低圧縮比化によってRawNOxの生成を大幅に低減乃至無くしており、NOx処理用の触媒を省略している。
前記吸気通路30における前記サージタンク33とスロットル弁36との間の部分(つまり小型ターボ過給機62の小型コンプレッサ62aよりも下流側部分)と、前記排気通路40における前記排気マニホールドと小型ターボ過給機62の小型タービン62bとの間の部分(つまり小型ターボ過給機62の小型タービン62bよりも上流側部分)とは、排気ガスの一部を吸気通路30に還流するための排気ガス還流通路51によって接続されている。この排気ガス還流通路51には、排気ガスの吸気通路30への還流量を調整するための排気ガス還流弁51a及び排気ガスをエンジン冷却水によって冷却するためのEGRクーラ52とが配設されている。
大型ターボ過給機61は、吸気通路30に配設された大型コンプレッサ61aと、排気通路40に配設された大型タービン61bとを有している。大型コンプレッサ61aは、吸気通路30におけるエアクリーナ31とインタークーラ35との間に配設されている。一方、大型タービン61bは、排気通路40における排気マニホールドと酸化触媒41aとの間に配設されている。
小型ターボ過給機62は、吸気通路30に配設された小型コンプレッサ62aと、排気通路40に配設された小型タービン62bとを有している。小型コンプレッサ62aは、吸気通路30における大型コンプレッサ61aの下流側に配設されている。一方、小型タービン62bは、排気通路40における大型タービン61bの上流側に配設されている。
すなわち、吸気通路30においては、上流側から順に大型コンプレッサ61aと小型コンプレッサ62aとが直列に配設され、排気通路40においては、上流側から順に小型タービン62bと大型タービン61bとが直列に配設されている。これら大型及び小型タービン61b,62bが排気ガス流により回転し、これら大型及び小型タービン61b,62bの回転により、該大型及び小型タービン61b,62bとそれぞれ連結された前記大型及び小型コンプレッサ61a,62aがそれぞれ作動する。
小型ターボ過給機62は、相対的に小型のものであり、大型ターボ過給機61は、相対的に大型のものである。すなわち、大型ターボ過給機61の大型タービン61bの方が小型ターボ過給機62の小型タービン62bよりもイナーシャが大きい。
吸気通路30には、小型コンプレッサ62aをバイパスする小型吸気バイパス通路63が接続されている。この小型吸気バイパス通路63には、該小型吸気バイパス通路63へ流れる空気量を調整するための小型吸気バイパス弁63aが配設されている。この小型吸気バイパス弁63aは、無通電時には全閉状態(つまり、ノーマルクローズ)となるように構成されている。
一方、排気通路40には、小型タービン62bをバイパスする小型排気バイパス通路64と、大型タービン61bをバイパスする大型排気バイパス通路65とが接続されている。小型排気バイパス通路64には、該小型排気バイパス通路64へ流れる排気量を調整するためのレギュレートバルブ64aが配設され、大型排気バイパス通路65には、該大型排気バイパス通路65へ流れる排気量を調整するためのウエストゲートバルブ65aが配設されている。レギュレートバルブ64a及びウエストゲートバルブ65aは共に、無通電時には全開状態(つまり、ノーマルオープン)となるように構成されている。
これら大型ターボ過給機61と小型ターボ過給機62は、それらが配設された吸気通路30及び排気通路40の部分も含めて、一体的にユニット化されて、過給機ユニット60を構成している。この過給機ユニット60がエンジン1に取り付けられている。
このように構成されたディーゼルエンジン1は、パワートレイン・コントロール・モジュール(以下、PCMという)10によって制御される。PCM10は、CPU、メモリ、カウンタタイマ群、インターフェース及びこれらのユニットを接続するパスを有するマイクロプロセッサで構成されている。このPCM10が制御器を構成する。PCM10には、図2に示すように、エンジン冷却水の温度を検出する水温センサSW1、サージタンク33に取り付けられて、燃焼室14aに供給される空気の圧力を検出する過給圧センサSW2、吸入空気の温度を検出する吸気温度センサSW3、クランクシャフト15の回転角を検出するクランク角センサSW4、車両のアクセルペダル(図示省略)の操作量に対応したアクセル開度を検出するアクセル開度センサSW5、排気中の酸素濃度を検出するOセンサSW6、エアクリーナ31の下流側に配置されかつ新気の流量を検出するエアフローセンサSW7、大型コンプレッサ61aと小型コンプレッサ62aとの中間位置に配置されかつ大型コンプレッサ61a下流側の圧力を検出する中間圧センサSW8、及び、フィルタ41bの上流側と下流側との圧力差を検出するDPF差圧センサSW9の検出信号が入力され、これらの検出信号に基づいて種々の演算を行うことによってエンジン1や車両の状態を判定し、これに応じてインジェクタ18、グロープラグ19,動弁系のVVM71、各種の弁36、51aのアクチュエータへ制御信号を出力する。PCM10はまた、ロックアップクラッチ72a及び自動変速機73に対しても、制御信号を出力する。
このエンジンシステムにおいては、比較的低速の所定車速以下から、ロックアップクラッチ72aを締結するようにしており、ロックアップクラッチの締結領域が比較的広いことが特徴的である。
さらに、PCM10は、エンジンの運転状態において大型及び小型ターボ過給機61、62の動作を制御している。具体的には、PCM10は、小型吸気バイパス弁63a、レギュレートバルブ64a及びウエストゲートバルブ65aの各開度を、エンジン1の運転状態に応じて設定された目標過給圧となるように制御する。詳しくは、図3に作動マップの一例を示すように、PCM10は、低回転側の第1領域(A)では、小型吸気バイパス弁63a及びレギュレートバルブ64aを全開以外の開度とし、ウエストゲートバルブ65aを全閉状態とすることによって、小型ターボ過給機62のみ、又は、大型及び小型ターボ過給機61、62の両方を作動させる。一方、高回転側の第2領域(B)では、小型ターボ過給機62が排気抵抗になるため、小型吸気バイパス弁63a及びレギュレートバルブ64aを全開状態とし、ウエストゲートバルブ65aを全閉状態に近い開度にすることによって、小型ターボ過給機62をバイパスさせて大型ターボ過給機61のみを作動させる。
そうして、このエンジン1は、その幾何学的圧縮比を12以上16未満(例えば14)とした、比較的低圧縮比となるように構成されており、これによって排気エミッション性能の向上及び熱効率の向上を図るようにしている。
(エンジンの燃焼制御の概要)
前記PCM10によるエンジン1の基本的な制御は、主にアクセル開度に基づいて目標トルク(言い換えると目標となる負荷)を決定し、これに対応する燃料の噴射量や噴射時期等をインジェクタ18の作動制御によって実現するものである。目標トルクは、アクセル開度が大きくなるほど、またエンジン回転数が高くなるほど、大きくなるように設定され、目標トルクとエンジン回転数とに基づいて燃料の噴射量が設定される。噴射量は、目標トルクが高くなるほど、また、エンジン回転数が高くなるほど大きくなるように設定される。また、スロットル弁36、及び排気ガス還流弁51aの開度の制御(つまり、外部EGR制御)や、VVM71の制御(つまり、内部EGR制御)によって、気筒11a内への排気の還流割合を制御する。
さらに、PCM10は、定常時には、エンジン1の運転状態に応じて目標過給圧を設定し、その目標過給圧が達成されるように、レギュレートバルブ64a及びウエストゲートバルブ65aの開度調整を行うと共に、小型吸気バイパス弁63aの開閉を制御する過給圧フィードバック制御を行う。
(排気圧ガード制御)
前述の通り、このエンジン1は、小型ターボ過給機62を有するシステムであると共に、車両は、トルクコンバータ72付の自動変速機73を有するため、低速段(例えば3速以下)での全開加速時のような運転状態においては、排気圧力が上昇しやすい。つまり、変速段が低速段であるほどエンジン回転数の上昇速度が高くなるため、排気圧力の急上昇を招きやすく、自動変速機73においてはまた、加速時のキックダウンによって変速段が低速側に変更されることで、排気圧力の急上昇を招きやすい状況になり得る。
このような全開加速は、図3においては、例えば第1領域(A)内の、低負荷中回転の状態からエンジンの負荷が高まって全負荷付近となり、その後、エンジン回転数が高まって、第2領域へ(B)と移行するように、エンジンの運転状態が遷移することに対応する(同図の矢印参照)。
前述したように、レギュレートバルブ64aの開度を、エンジン1の運転状態に対応する目標過給圧に基づいてフィードバック制御していたのでは、低速段での急加速時に、排気圧力が高くなりすぎて、排気系の信頼性の拘束条件を保証できなくなる場合がある。このような状況は、図3において破線で示すような、第1領域(A)内における第2領域(B)との境界付近を通過するような加速時において顕著であり、これは、この破線で囲む領域付近は、排気流量が多い一方で、小型ターボ過給機62の作動領域であって、基本的に、レギュレートバルブ64aは全開ではないためである。
尚、このエンジン1においては、前述したように、ロックアップクラッチ72aを、比較的低車速の状態から締結させるため、急加速時におけるトルクコンバータ72のスリップはなく、そのスリップによるエンジン回転数の急上昇は、基本的には回避されている。
このような排気圧力の急上昇を考慮して、このエンジンシステムでは、目標過給圧に基づくフィードバック制御と、排気圧力が排気系の信頼性の拘束条件から設定される上限圧力を超えないように設定する、レギュレートバルブ64aのガード開度に基づく排気圧ガード制御と、を組み合わせている。ガード開度とは、排気圧力が上限排気圧力以下に維持することが可能となる、レギュレートバルブ64aの最小開度であり、図4に示すように、排気圧力と自動変速機73の変速段とに応じて設定される。図4のマップにおける排気圧力は、実験結果等に基づいて設定されるモデル式に従って算出される予測排気圧力であり、この予測排気圧力は、排気流量、前記第1及び第2コンプレッサ61a、62aの圧力比、並びに、排気系の圧力損失に基づき予測した、レギュレートバルブ64aを閉じた状態での排気圧力である。具体的に、予測排気圧力P_EXpre は、下記モデル式(1)に従って算出される。
P_EXpre=α×G_EX+β×πc+P_loss+PATM+γ …(1)
ここで、G_EX は、排気流量であり、エアフローセンサSW7によって検出された新気の流量と、燃料噴射量とから求められる。πc は、コンプレッサ圧力比であり、大気圧、中間圧センサSW8の検出値、及び、過給圧センサSW2の検出値に基づいて算出される。このエンジン1の過給システムは、大型コンプレッサ61aと小型コンプレッサ62aとを含む2ステージターボ過給機によって構成されるため、コンプレッサ圧力比は、大型コンプレッサ61aの圧力比と小型コンプレッサ62aの圧力比との積である。P_loss は、排気系の圧力損失であり、ここに示すエンジンシステムでは、排気流量及びDPF差圧センサSW9の検出値に基づいて算出される。PATM は大気圧、α、β、γはそれぞれ、実験結果から得られる重回帰係数である。
ガード開度は、図4に示すように、予測排気圧力が高いほど開度が大きくなるように設定されると共に、同図に実線で示す低速段のときには、同図において破線で示す中速段、及び、一点鎖線で示す高速段のときよりも、開度が大きくなるように設定される。つまり、自動変速機73が低速段であるほど、全開加速時等におけるエンジン回転数の上昇速度が高くなるものの、レギュレートバルブ64aの応答遅れ等も考慮して、変速段が低速段ほど、ガード開度を大きく設定して、レギュレートバルブ64aの開度を予め大きくしておく結果、排気圧力の上昇を抑制して、排気圧力が上限排気圧力を超えてしまうことが、未然に回避されるようになる。
尚、図4に示すマップでは、排気流量及び(予測)排気圧力が所定よりも低くなるようなときには、排気圧ガード制御がそもそも不要であるとして、ガード開度を0に設定する一方、排気圧ガード制御が不要な状態と、排気圧力が所定以上になって排気圧ガード制御が必要となり得る状態との間に「つなぎ」を設けるために、ガード開度を、0から次第に大きくなるようにしている。
図5は、排気圧ガード制御のイメージを示しており、同図における実線は、排気圧ガード制御を行った場合、同図における破線は、排気圧ガード制御を行わず、目標過給圧に基づくレギュレートバルブ64aのフィードバック制御のみを行った場合に対応する。
図5(a)は排気圧力の時間変化を、同図(b)はレギュレートバルブ64aの開度の時間変化をそれぞれ示している。先ず、レギュレートバルブ64aの開度が、目標開度(図5(b)の破線参照)となるように、フィードバック制御されている状態で、急加速等によって排気圧力が次第に上昇をし、例えば時刻T1において、その排気圧力が所定の排気圧力を超えるとする。このときに、目標過給圧に基づく目標開度は、一定の状態から開き側に変更される。また、これに並行して、予測排気圧力に基づいて図4に示すマップに従いガード開度が設定される(同図(bの一点鎖線参照)。ここで、時刻T1において、このガード開度が目標開度よりも大きくなったと仮定する。このときには、目標開度に基づいて制御されるレギュレートバルブ64aの開度は、ガード開度よりも小さくなり得るから、目標開度に基づくフィードバック制御を止めて、ガード開度に基づく排気圧ガード制御を行う。これによって、レギュレートバルブ64aの開度は、同図(b)に実線で示すように、ガード開度となるように調整される。
このようにして、レギュレートバルブ64aの開度がガード開度となるように調整される結果、レギュレートバルブ64aの開度は、目標開度よりも大きくされるため、小型タービン62bをバイパスする排気流量が増大して、排気圧力の上昇が抑制される。これにより、同図(a)に破線で示すように、目標開度に基づくフィードバック制御を継続した場合には、排気圧力は、その上限値を超えてしまうのに対し、排気圧ガード制御を行った場合は、排気圧力がその上限値を超えてしまうことが回避される。こうして、排気系の信頼性の拘束条件が保証される。こうした排気圧ガード制御は、ガード開度が図4に示すようなマップに従って設定される結果として、自動変速機73が所定以下の低速段であるときに行われることになる。
この排気圧ガード制御は、一旦開始すると、目標開度に基づいてフィードバック制御されるレギュレートバルブ64aの開度が、ガード開度以上になるまで継続される。従って、目標過給圧に基づいて設定される目標開度がガード開度以上になれば、排気圧ガード制御が終了し、目標開度に基づくフィードバック制御に復帰することになる。
図6は、PCM10が実行する、レギュレートバルブ64aの制御に係るフローチャートである。先ず、スタート後のステップS1では、各種のパラメータ(信号)を読み込み、必要な演算を行う。具体的に、このステップ1では、前述したように、排気流量(エアフローセンサSW7の検出値及び燃料噴射量により算出)と、コンプレッサ圧力比(過給圧センサSW2の検出値、中間圧センサSW8の検出値及び大気圧により算出)と、排気系の圧力損失(前記の排気流量及びDPF差圧センサSW9の検出値により算出)とから、前記の式(1)に従って予測排気圧力を算出すると共に、その予測排気圧力と自動変速機73の変速段とから、図4に示すマップに従って、レギュレートバルブ64aのガード開度を設定する。
また、ステップS1では、エンジン1の運転状態に基づき目標過給圧を設定し、それに対応するレギュレートバルブ64aの目標開度を設定する。
ステップS2では、ステップS1で設定した目標開度に基づき、過給圧のフィードバック制御を行う。これは、2ステージターボ過給機におけるレギュレートバルブ64aの通常の制御に対応する。
続くステップS3では、フィードバック制御されるレギュレートバルブ64aの開度が、ステップS1で設定したガード開度よりも小さいか否かを判定する。ステップS3では、フィードバック制御されるレギュレートバルブ64aの実際の開度がガード開度よりも小さいか否かを判定するようにしてもよいし、フィードバック制御に係る目標開度が、ガード開度よりも小さいか否かを判定するようにしてもよい。ステップS3の判定においてNOのとき、つまり、レギュレートバルブ64aの開度がガード開度以上のときには、そのままリターンをし、過給圧のフィードバック制御(つまり、レギュレートバルブ64aの通常制御)を継続する。一方、ステップS3の判定においてYESのとき、つまり、レギュレートバルブ64aの開度がガード開度よりも小さいときには、ステップS4に移行する。
ステップS4では、過給圧のフィードバック制御を停止し、排気圧ガード制御を行う。すなわち、レギュレートバルブ64aの開度を、設定したガード開度となるように制御する。これによって、レギュレートバルブ64aの開度は、過給圧のフィードバック制御を行う場合よりも大きくなり、前述の通り、排気圧力の上昇が抑制される。続くステップS5では、フィードバック制御に係る目標開度がガード開度よりも小さいか否かを判定し、この判定がYESのときにはステップS4に戻り、排気圧ガード制御を継続する。一方、ステップS5の判定がNOのとき、言い換えると目標開度がガード開度以上になれば、ステップS6に移行して、排気圧ガード制御を終了して、過給圧のフィードバック制御に復帰する。
図7は、図6に示すフローチャートに従って、レギュレートバルブ64aの開度制御を実際に行ったときの、(a)エンジン回転数、(b)アクセル開度、(c)燃料噴射量、(d)過給圧、(e)排気圧、及び(f)レギュレートバルブ開度(制御値)の各パラメータの変化を示している。尚、この図は、自動変速機73が3速のときに、全開加速を行った場合を示しており、エンジン1の運転状態は、図3の矢印で示すように遷移する。
先ず、アクセルペダルが踏み込まれて、同図(b)に示すようにアクセル開度が全開となる全開加速が開始することに伴い、燃料噴射量が増大する(同図(c)参照)。それと共に、エンジン回転数も上昇を開始する(同図(a)参照)。
このようなエンジン1の運転状態に応じて、同図(d)に破線で示すように、目標過給圧が高くなるように設定され、それに応じたバルブ開度となるように、同図(f)に実線で示すレギュレートバルブ64aの目標開度が設定される。目標開度となるようにレギュレートバルブ64aの開度が変更されることにより、実際の過給圧が、目標過給圧に追従するように次第に高まる(同図(d)の実線参照)と共に、排気圧力も次第に高まる(同図(e)の実線参照)。
一方で、同図(e)に破線で示すように、前述のモデル式(1)に従って予測排気圧が算出され、それに応じて、同図(f)に破線で示すようにガード開度が設定される。尚、図7の例では、排気流量が所定以上のときにガード開度を設定(演算)するように構成しているため、所定の時刻までは、ガード開度の値は0のままとなっている(図4のマップも参照)。
こうして設定した目標開度(同図(f)の実線)とガード開度(同図(f)の破線)とを比較し、目標開度の方が大きい(又は、目標開度とガード開度とが等しい)ときには、その目標開度に従ってレギュレートバルブ64aの開度を制御する(つまり、過給圧フィードバック制御)。一方、ガード開度の方が大きいときには、ガード開度に従ってレギュレートバルブ64aの開度を制御する(排気圧ガード制御)。図7の例では、同図(f)に破線で囲むように、時刻T2においてガード開度の方が目標開度よりも大きくなるため、このタイミングで、それまでの過給圧フィードバック制御から、排気圧ガード制御に切り替わる。
その結果、予測排気圧力(これは、前述したように、レギュレートバルブ64aを全閉にしたと仮定したときの排気圧力である)は、同図(e)に破線で示すように、時刻T2以降も上昇を続けて、排気圧力の上限値を超えてしまうのに対し、排気圧ガード制御に切り替えることによって、実際の排気圧力は、同図(e)に実線で示すように、排気圧力の上昇が抑制されて、上限値を超えることが回避されている。
尚、同図(d)に示すように、実過給圧(実線参照)は、排気圧ガード制御を行うことにより目標過給圧(破線参照)にまでは到達しない。そこで、気筒11a内へ供給される新気量が、その分、減ってしまうことを考慮して、排気圧ガード制御の実行時は、燃料噴射量を減量するようにしてもよい。この減量制御は、図6のフローにおいてはステップS4で行えばよい。
予測排気圧力に応じて設定されるガード開度に基づく制御は、一種のフィードフォワード制御ということができ、目標過給圧に基づくフィードバック制御と、ガード開度に基づくフィードフォワード制御との組み合わせは、燃費及び排気エミッション性の向上と、排気系の信頼性の確保とを両立させることが可能になる。
尚、前述した排気圧ガード制御は、例えばタービンの直径φ(mm)と、そのターボ過給機の出力W(kW)との関係が、φ≦0.2W+16を、満足するような小型ターボ過給機を有するエンジンシステムにおいて、特に有効である。つまり、前記の関係式を満足するような小型ターボ過給機を有するエンジンシステムは、加速過渡時に排圧が上昇しやすいが、前記排気圧ガード制御によって排気系の信頼性の拘束条件を保証することが可能になる。
また、前記の構成では、排気圧力を予測し、その予測した排気圧力に基づいて排気圧ガード制御を行うようにしているが、例えば小型タービン62bよりも上流側に排気圧力センサを配置し、その排気圧力センサが検出した排気圧力に基づいて、排気圧ガード制御への切り替えを行うようにしてもよい。この場合、ガード開度は、排気圧力センサが検出した排気圧力に基づいて設定すればよく、例えば図4に示すマップの横軸を、排気圧力センサの検出値に置き換えてもよい。
さらに、前記の例では、ロックアップクラッチ72aを比較的低車速の状態から締結させるようにしているが、このような特徴的な制御を行わない車両についても、ここに開示する技術を適用可能であることは言うまでもない。逆に、ロックアップクラッチ72aが締結されない状態では、加速時等においてトルクコンバータ72のスリップが生じて、エンジン1の回転数が急上昇しやすく、それに伴い、排気圧力も急上昇してしまうが、前述した排気圧ガード制御によって、排気圧力が上限排気圧力を超えてしまうことを、未然に回避することが可能になる。つまり、排気圧ガード制御が、さらに有効となる。
また、自動変速機に限らず手動変速機を備えた車両に、ここに開示する技術を適用してもよい。手動変速機搭載の車両においては、エンジン回転数の急上昇は、自動変速機搭載の車両と比較して抑制されるが、手動変速機搭載の車両においても、排気圧力の急上昇という技術的課題が存在し、前述した排気圧ガード制御は、排気系の信頼性の拘束条件を満足させることが可能になる。
1 ディーゼルエンジン(エンジン)
10 PCM(制御器)
11a 気筒
30 吸気通路
40 排気通路
61 大型ターボ過給機(第2ターボ過給機)
61a 大型コンプレッサ(第2コンプレッサ)
61b 大型タービン(第2タービン)
62 小型ターボ過給機(第1ターボ過給機)
62a 小型コンプレッサ(第1コンプレッサ)
62b 小型タービン(第1タービン)
64 小型排気バイパス通路(バイパス路)
64a レギュレートバルブ(流量調整弁)

Claims (5)

  1. 車両に搭載されたエンジンと、
    前記エンジンの出力を変速して駆動輪に伝達するよう構成された変速機と、
    前記エンジンの排気通路に配置された第1タービン、及び、前記エンジンの吸気通路に配置された第1コンプレッサを有しかつ、前記エンジンの運転状態が予め設定された低回転側の第1領域にあるときに作動をする第1ターボ過給機と、
    前記排気通路における前記第1タービンよりも下流側に配置された第2タービン、及び、前記吸気通路に配置された第2コンプレッサを有しかつ、前記エンジンの運転状態が、前記第1領域よりも高回転側の第2領域にあるときに少なくとも作動をする第2ターボ過給機と、
    前記第1タービンをバイパスするバイパス路に配置されかつ、その開度を調整することによって前記第1ターボ過給機の作動を制御するよう構成された流量調整弁と、
    前記第1タービンよりも上流側における排気圧力を直接的又は間接的に把握するように構成された排気圧力把握手段と、
    前記エンジンの運転状態に応じた目標過給圧に基づき設定された目標開度となるように前記流量調整弁の開度をフィードバック制御する制御器と、を備え、
    前記制御器は、前記排気圧力把握手段によって把握された排気圧力に基づき、所定の上限排気圧力を超えないような前記流量調整弁のガード開度を設定すると共に、前記変速機が少なくとも所定以下の低速段にあるときであって、前記フィードバック制御される前記流量調整弁の開度が前記ガード開度よりも小さくなるときには、前記ガード開度となるように前記流量調整弁の開度を調整する車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置において、
    前記排気圧力把握手段は、少なくとも排気流量、並びに、前記第1及び第2コンプレッサの圧力比に基づいて、前記流量調整弁を全閉にしている状態での前記排気圧力を予測する車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置。
  3. 請求項1又は2に記載の車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置において、
    前記制御器は、前記エンジン本体の運転状態が、前記第1領域内における前記第2領域との境界付近を通過するような前記車両の加速時に、前記ガード開度に基づく前記流量調整弁の開度調整を行う車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置において、
    前記変速機は、ロックアップ機構付トルクコンバータを有する自動変速機であり、
    前記制御器は、所定の低車速以上において前記ロックアップ機構を締結させる車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置において、
    前記制御器は、前記ガード開度に従って前記流量調整弁の開度調整を行うときには、前記エンジンに対する燃料供給量を減量させる車両搭載のターボ過給機付エンジンの制御装置。
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