上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、気筒#1〜#4からの排気を排出するための排気通路8を有する内燃機関3において、気筒#1〜#4に吸気を供給するための内燃機関の吸気装置であって、気筒#1〜#4に吸気を導入するための吸気通路4と、吸気通路4に設けられた吸気コンプレッサ(実施形態における(以下、本項において同じ)コンプレッサブレード10a)、および、吸気コンプレッサに連結され、排気通路8に設けられた排気タービン(タービンブレード10b)を有し、排気により排気タービンが吸気コンプレッサとともに駆動されることによって、吸気を過給する過給装置9と、内燃機関3が所定の加速運転状態にあるか否かを判定する加速運転状態判定手段(ECU2、ステップ3)と、加速運転状態判定手段により内燃機関3が所定の加速運転状態にあると判定されたときに、排気通路8における排気タービンの下流側の圧力P4を低下させるように制御する圧力制御手段(第2吸気絞り弁17、吸排連通制御弁22、ECU2、図2のステップ7)と、を備えることを特徴とする。
この内燃機関の吸気装置によれば、吸気通路および排気通路に、過給装置の吸気コンプレッサおよび排気タービンがそれぞれ設けられており、内燃機関の排気により、排気タービンが吸気コンプレッサとともに駆動されることによって、吸気が過給される。また、加速運転状態判定手段によって、内燃機関が所定の加速運転状態にあるか否かが判定されるとともに、加速運転状態にあると判定されたときに、圧力制御手段により、排気通路における排気タービンの下流側の圧力が低下するように制御される。
以上のように、内燃機関が所定の加速運転状態にあると判定されたときに、排気タービンの下流側の圧力(以下「排気タービン下流側圧力」という)を強制的に低下させるので、排気タービン膨張比(排気タービン上流側圧力/排気タービン下流側圧力)が増大することで、吸気コンプレッサの回転数が迅速に上昇する。その結果、吸気コンプレッサの下流側の圧力(以下「吸気コンプレッサ下流側圧力」という)が迅速に上昇し、コンプレッサ圧力比(吸気コンプレッサ下流側圧力/吸気コンプレッサ上流側圧力)が迅速に増大する。これにより、加速運転時に、過給圧を迅速に且つ大きく上昇させることができ、したがって、内燃機関の出力の高い応答性や良好な排出ガス特性を得ることができる。
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の内燃機関の吸気装置において、内燃機関3の出力は、操作部材の操作量(アクセル開度AP)に応じて変更され、内燃機関3は、内燃機関3から出力された動力を変速するための変速装置Tに連結されており、内燃機関3の回転数(エンジン回転数NE)、操作部材の操作量、および変速装置Tの変速比(ギヤ段推定値NGEAR)の少なくとも1つである加減速パラメータを検出する加減速パラメータ検出手段(エンジン回転数センサ31、アクセル開度センサ32、車速センサ33、ECU2、ステップ2)をさらに備え、加速運転状態判定手段は、検出された加減速パラメータに応じて、内燃機関3が所定の加速運転状態にあるか否かを判定することを特徴とする。
この構成によれば、内燃機関の回転数、操作部材の操作量、および変速装置の変速比の少なくとも1つである加減速パラメータが、加減速パラメータ検出手段によって検出される。また、検出された加減速パラメータに応じて、内燃機関が所定の加速運転状態にあるか否かが判定される。上記の3つのパラメータはいずれも、内燃機関の加速および減速に伴って変化するので、それらの少なくとも1つである加減速パラメータに応じて、内燃機関が所定の加速運転状態にあるか否かを適切に判定することができる。
なお、本明細書における「検出」には、センサなどによる直接的な検出に加え、演算による算出や推定を含むものとする。
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の内燃機関の吸気装置において、内燃機関3が所定の減速運転状態にあるか否かを判定する減速運転状態判定手段(ECU2、ステップ4)をさらに備え、圧力制御手段は、減速運転状態判定手段により内燃機関3が所定の減速運転状態にあると判定されたときに、吸気通路4における吸気コンプレッサの下流側の圧力P2を低下させるように制御する(図2のステップ6)ことを特徴とする。
内燃機関の加速運転や高負荷運転からの減速運転の開始直後には、内燃機関の回転数が低下するのに伴い、排気タービン上流側圧力がすぐに低下するのに対し、吸気コンプレッサ下流側圧力は、それまでの加速運転や高負荷運転によって比較的高い状態にあり、すぐには低下しないため、吸気コンプレッサの回転数が急激に低下しやすい。上述したように、本発明によれば、内燃機関が所定の減速運転状態にあると判定されたときに、吸気コンプレッサ下流側圧力を強制的に低下させるので、加速運転や高負荷運転からの減速運転の開始直後において、吸気コンプレッサの回転数の急激な低下を確実に防止し、その回転を維持することができる。また、このように減速運転中に吸気コンプレッサの回転が維持されることから、比較的短い減速運転からの加速運転の開始直後においても、所望の過給圧を迅速に且つ確実に得ることができる。
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の内燃機関の吸気装置において、減速運転状態判定手段は、検出された加減速パラメータに応じて、内燃機関3が所定の減速運転状態にあるか否かを判定することを特徴とする。
前述したように、加減速パラメータは、内燃機関の減速および加速に伴って変化するので、検出された加減速パラメータに応じて、内燃機関が所定の減速運転状態にあるか否かを適切に判定することができる。
また、上記目的を達成するために、請求項5に係る発明は、気筒#1〜#4からの排気を排出するための排気通路8を有する内燃機関3において、気筒#1〜#4に吸気を供給するための内燃機関の吸気装置であって、気筒#1〜#4に吸気を導入するための吸気通路4と、吸気通路4に設けられた吸気コンプレッサ(コンプレッサブレード10a)、および、吸気コンプレッサに連結され、排気通路8に設けられた排気タービン(タービンブレード10b)を有し、排気により排気タービンが吸気コンプレッサとともに駆動されることによって、吸気を過給する過給装置9と、排気通路8における排気タービンの上流側の圧力である排気タービン上流側圧力P3を検出する排気タービン上流側圧力検出手段(第3圧力センサ36)と、検出された排気タービン上流側圧力P3が上昇しているとき(ステップ12:YES)に、排気通路8における排気タービンの下流側の圧力P4を低下させるように制御する圧力制御手段(第2吸気絞り弁17、吸排連通制御弁22、ECU2、図7のステップ7)と、を備えることを特徴とする。
この内燃機関の吸気装置によれば、吸気通路および排気通路に、過給装置の吸気コンプレッサおよび排気タービンがそれぞれ設けられており、内燃機関の排気により、排気タービンが吸気コンプレッサとともに駆動されることによって、吸気が過給される。また、排気通路における排気タービンの上流側の圧力が、排気タービン上流側圧力検出手段によって検出されるとともに、検出された排気タービン上流側圧力が上昇しているときに、圧力制御手段により、排気通路における排気タービンの下流側の圧力が低下するように制御される。
排気タービン上流側圧力は、内燃機関の減速運転時には低下し、加速運転時には上昇する。上述したように、本発明によれば、検出された排気タービン上流側圧力が上昇しているとき、すなわち内燃機関の加速運転時に、排気タービン下流側圧力を強制的に低下させるので、排気タービン膨張比(排気タービン上流側圧力/排気タービン下流側圧力)が増大することで、吸気コンプレッサの回転数が迅速に上昇する。その結果、吸気コンプレッサ下流側圧力が迅速に上昇し、コンプレッサ圧力比(吸気コンプレッサ下流側圧力/吸気コンプレッサ上流側圧力)が迅速に増大する。これにより、請求項1の場合と同様、加速運転時に、過給圧を迅速に且つ大きく上昇させることができ、したがって、内燃機関の出力の高い応答性や良好な排出ガス特性を得ることができる。
請求項6に係る発明は、請求項5に記載の内燃機関の吸気装置において、圧力制御手段は、検出された排気タービン上流側圧力P3が低下しているとき(ステップ13:YES)に、吸気通路4における吸気コンプレッサの下流側の圧力を低下させるように制御する(図7のステップ6)ことを特徴とする。
この構成によれば、検出された排気タービン上流側圧力が低下しているとき、すなわち内燃機関の減速運転時に、吸気コンプレッサ下流側圧力を強制的に低下させる。これにより、請求項3の場合と同様、加速運転や高負荷運転からの減速運転の開始直後において、吸気コンプレッサの回転数の急激な低下を確実に防止し、その回転を維持することができる。また、このように減速運転時に吸気コンプレッサの回転が維持されることから、比較的短い減速運転からの加速運転の開始直後においても、所望の過給圧を迅速に且つ確実に得ることができる。
請求項7に係る発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置において、吸気通路4には、吸気コンプレッサの下流側に吸気側連通口6cが設けられ、排気通路8には、排気タービンの下流側に排気側連通口8aが設けられるとともに、吸気側連通口6cと排気側連通口8aに接続され、吸気通路4における吸気コンプレッサの下流側と、排気通路8における排気タービンの下流側とを連通する吸排連通路21をさらに備え、圧力制御手段は、排気通路8における排気タービンの下流側の排気を、吸排連通路21を介して、吸気通路4における吸気コンプレッサの下流側に導入することによって、排気タービンの下流側の圧力P4を低下させることを特徴とする。
この構成によれば、吸気通路における吸気コンプレッサの下流側に設けられた吸気側連通口と、排気通路における排気タービンの下流側に設けられた排気側連通口とに、吸排連通路が接続されている。圧力制御手段は、排気通路における排気タービンの下流側の排気を、吸排連通路を介して、吸気通路における吸気コンプレッサの下流側に導入することによって、排気タービン下流側圧力を低下させる。したがって、この圧力低下制御を、内燃機関が加速運転状態にあると判定されているときや、検出された排気タービン上流側圧力が上昇しているときに行うことによって、請求項1や請求項5による前述した作用を同様に得ることができる。
また、上記のような吸排連通路として、排気の一部を排気通路から吸気通路に還流させるためのEGR通路を共用することも可能であるので、前述したEGR管およびバイパス管を必要とする従来の吸気装置と異なり、単一の吸排連通路を用いて上述した効果を得ることができ、吸気装置の簡素化、小型化および製造コストの削減を図ることができる。
請求項8に係る発明は、請求項7に記載の内燃機関の吸気装置において、吸気通路4に設けられ、吸気通路4における吸気コンプレッサの下流側で且つ吸気側連通口6cの上流側の開度である吸気通路開度(第1吸気通路開度OI1)を調整するための第1調整弁(第2吸気絞り弁17)と、吸排連通路21、吸気側連通口6cおよび排気側連通口8aの1つに設けられ、当該1つの開度である吸排連通路開度OIEを調整するための第2調整弁(吸排連通制御弁22)と、を備え、圧力制御手段は、第1および第2の調整弁を制御することによって、排気タービンの下流側の圧力P4を制御することを特徴とする。
この構成によれば、吸気通路における吸気側連通口の上流側の開度である吸気通路開度が、第1調整弁によって調整され、吸排連通路、吸気側連通口および排気側連通口の1つの開度である吸排連通路開度が、第2調整弁によって調整される。圧力制御手段は、第1および第2の調整弁を制御することによって、排気タービンの下流側の圧力を制御する。したがって、内燃機関が加速運転状態にあると判定されているときや、検出された排気タービン上流側圧力が上昇しているときに、第1調整弁の制御により吸気通路開度を閉じ側に調整するとともに、第2調整弁の制御により吸排連通路開度を開き側に調整することによって、排気通路における排気タービンの下流側の排気を吸排連通路や吸気通路に導入することで、排気タービン下流側圧力を低下させることができる。
請求項9に係る発明は、請求項8に記載の内燃機関の吸気装置において、圧力制御手段は、第1および第2の調整弁を制御することによって、吸気通路開度および吸排連通路開度OIEをそれぞれ閉じ側に調整し(図2のステップ6)、加速運転状態判定手段により内燃機関3が所定の加速運転状態にあると判定されたときに、吸気通路開度を閉じ側に調整するとともに、吸排連通路開度OIEを開き側に調整する(図2のステップ7)ことを特徴とする。
この構成によれば、第1および第2の調整弁の制御によって、吸気通路開度および吸排連通路開度がそれぞれ閉じ側に調整される。これにより、吸気通路における吸気コンプレッサの下流側と吸排連通路が、ほぼ閉じた状態になる。その状態で内燃機関の吸気動作が行われると、吸気通路における吸気コンプレッサの下流側と吸排連通路に、負圧が蓄積される。一方、排気通路における排気タービン下流側圧力は、通常、大気圧とほぼ等しい状態にある。したがって、内燃機関が所定の加速運転状態にあると判定されたときに、第1および第2の調整弁の制御により、吸気通路開度を閉じ側に調整するとともに、吸排連路開度を開き側に調整することによって、大気圧とほぼ等しい状態にある排気タービンの下流側の排気が、負圧状態にある吸排連通路や吸気通路に導入される。これにより、加速運転時、排気タービン下流側圧力を確実に低下させ、過給圧を迅速に且つ大きく上昇させることができ、内燃機関の出力の高い応答性や良好な排出ガス特性を確実に得ることができる。
請求項10に係る発明は、請求項8に記載の内燃機関の吸気装置において、圧力制御手段は、第1および第2の調整弁を制御することによって、吸気通路開度および吸排連通路開度OIEをそれぞれ閉じ側に調整し(図7のステップ6)、排気タービン上流側圧力検出手段により検出された排気タービン上流側圧力P3が上昇しているときに、吸気通路開度を閉じ側に調整するとともに、吸排連通路開度OIEを開き側に調整する(図7のステップ7)ことを特徴とする。
この構成によれば、第1および第2の調整弁の制御によって、吸気通路開度および吸排連通路開度がそれぞれ閉じ側に調整される。また、検出された排気タービン上流側圧力が上昇しているとき、すなわち内燃機関の加速運転時に、第1および第2の調整弁の制御により、吸気通路開度を閉じ側に調整するとともに、吸排連通路開度を開き側に調整する。これにより、大気圧とほぼ等しい状態にある排気タービンの下流側の排気が、負圧状態にある吸排連通路や吸気通路に導入される。したがって、請求項9の場合と同様、加速運転時、排気タービン下流側圧力を確実に低下させ、過給圧を迅速に且つ大きく上昇させることができ、内燃機関の出力の高い応答性や良好な排出ガス特性を確実に得ることができる。
請求項11に係る発明は、請求項8ないし10のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置において、吸気通路4の途中には、断面積が他の部分よりも大きなサージタンク(第1サージタンク6a)が設けられており、吸気側連通口6cは、サージタンクに設けられており、第1調整弁は、吸気通路開度として、吸気通路4における吸気コンプレッサの下流側で且つサージタンクの上流側の開度を調整することを特徴とする。
この構成によれば、吸気通路に、断面積が他の部分よりも大きなサージタンクが設けられており、このサージタンクに、吸気側連通口が設けられている。また、第1調整弁により、吸気通路開度として、吸気通路における吸気コンプレッサの下流側で、かつサージタンクの上流側の開度が調整される。これにより、第1および第2の調整弁の制御によって、吸気通路における吸気コンプレッサの下流側と吸排連通路に負圧を蓄積する場合に、このサージタンクに、より多量の負圧状態の吸気を蓄積することができる。これにより、加速運転時に、排気タービン下流側圧力を確実に低下させることができ、したがって、過給圧を迅速に且つ大きく上昇させることができるという効果を確実に得ることができる。
請求項12に係る発明は、請求項8ないし10のいずれかに記載の内燃機関の吸気装置において、吸気通路4は、吸気コンプレッサの下流側において、互いに並列な第1吸気通路6と第2吸気通路7に分岐しており、吸気側連通口6cは第1吸気通路6に設けられており、第1調整弁は、第1吸気通路6に設けられ、吸気通路開度として、第1吸気通路6における吸気側連通口6cの上流側の開度を調整することを特徴とする。
この構成によれば、吸気通路が、吸気コンプレッサの下流側において、互いに並列な第1吸気通路と第2吸気通路に分岐しており、この第1吸気通路に、吸気側連通口が設けられている。また、第1調整弁は、第1吸気通路に設けられており、吸気通路開度として、第1吸気通路における吸気側連通口の上流側の開度を調整する。以上により、第1吸気通路および吸排連通路に負圧を蓄積すべく、第1調整弁の制御により、第1吸気通路の吸気通路開度を閉じ側に調整した場合に、吸気を、第2吸気通路を介して気筒に導入することができる。したがって、気筒に吸入される吸気を十分に確保しながら、第1吸気通路および吸排連通路に負圧を蓄積することができる。
請求項13に係る発明は、請求項12に記載の内燃機関の吸気装置において、第1吸気通路6の途中には、断面積が他の部分よりも大きなサージタンク(第1サージタンク6a)が設けられており、吸気側連通口6cは、サージタンクに設けられており、第1調整弁は、吸気通路開度として、第1吸気通路6におけるサージタンクの上流側の開度を調整することを特徴とする。
この構成によれば、吸気コンプレッサの下流側に配置された第1吸気通路に、断面積が他の部分よりも大きなサージタンクが設けられており、このサージタンクに、吸気側連通口が設けられている。また、第1調整弁により、吸気通路開度として、第1吸気通路におけるサージタンクの上流側の開度が調整される。これにより、第1および第2の調整弁の制御によって、第1吸気通路と吸排連通路に負圧を蓄積する場合に、このサージタンクに、より多量の負圧状態の吸気を蓄積することができる。これにより、加速運転時に、排気タービン下流側圧力を確実に低下させることができ、したがって、過給圧を迅速に且つ大きく上昇させることができるという効果を確実に得ることができる。
請求項14に係る発明は、請求項12に記載の内燃機関の吸気装置において、気筒は複数の気筒#1〜#4で構成されており、第1吸気通路6は、複数の気筒#1〜#4にそれぞれ連通する複数の第1分岐通路6bを有し、第2吸気通路7は、複数の気筒#1〜#4にそれぞれ連通する複数の第2分岐通路7bを有し、吸気側連通口6cは、複数の第1分岐通路6bの少なくとも1つに設けられ、第1調整弁(第2吸気絞り弁18、弁体18a)は、複数の第1分岐通路6bの少なくとも1つに設けられ、吸気通路開度として、複数の第1分岐通路6bの少なくとも1つにおける吸気側連通口6cの上流側の開度を調整することを特徴とする。
この構成によれば、第1吸気通路が、内燃機関の複数の気筒にそれぞれ連通する複数の第1分岐通路を有し、第2吸気通路が、これらの複数の気筒にそれぞれ連通する複数の第2分岐通路を有している。また、吸気側連通口および第1調整弁が、複数の第1分岐通路の少なくとも1つに設けられており、第1調整弁は、吸気通路開度として、この少なくとも1つの分岐通路における吸気側連通口の上流側の開度を調整する。以上により、第1吸気通路および吸排連通路に負圧を蓄積すべく、第1調整弁の制御により、少なくとも1つの分岐通路における吸気通路開度を閉じ側に調整した場合に、吸気を、少なくとも1つの分岐通路以外の第1分岐通路と第2吸気通路を介して、気筒に導入することができる。したがって、気筒に吸入される吸気を十分に確保しながら、少なくとも1つの分岐通路および吸排連通路に負圧を蓄積することができる。
請求項15に係る発明は、請求項14に記載の内燃機関の吸気装置において、吸排連通路21の途中には、断面積が他の部分よりも大きな容積室21aが設けられており、第2調整弁は、吸排連通路開度OIEとして、吸排連通路21における容積室21aよりも排気通路8側の部位および排気側連通口8aの一方の開度を調整することを特徴とする。
この構成によれば、吸排連通路に、断面積が他の部分よりも大きな容積室が設けられており、第2調整弁が、吸排連通路開度として、吸排連通路における容積室よりも排気通路側の部位および排気側連通口の一方の開度を調整する。以上により、第1および第2の調整弁の制御によって、少なくとも1つの分岐通路と吸排連通路に負圧を蓄積する場合に、この容積室に、より多量の負圧状態の吸気を蓄積することができる。これにより、加速運転時に、排気タービン下流側圧力を確実に低下させることができ、したがって、過給圧を迅速に且つ大きく上昇させることができるという効果を確実に得ることができる。
請求項16に係る発明は、請求項14または15に記載の内燃機関の吸気装置において、吸気側連通口6cは、複数の第1分岐通路6bにそれぞれ設けられており、第1調整弁は、複数の第1分岐通路6bにそれぞれ設けられた複数の第1調整弁(弁体18a)で構成されており、圧力制御手段は、複数の第1調整弁を同調制御することを特徴とする。
この構成によれば、複数の第1調整弁を、同調制御、すなわち同期させて制御するので、前述した内燃機関の加速運転時における第1調整弁に関する制御を、複数の第1調整弁に対して同時に行うことができ、それにより、前述した効果を確実に得ることができる。
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態による内燃機関の吸気装置1を、これを適用した内燃機関3とともに概略的に示している。図1に示すように、この内燃機関(以下「エンジン」という)3は、気筒#1〜#4を有する直列4気筒タイプのディーゼルエンジンであり、車両(図示せず)に駆動源として搭載されている。エンジン3のクランク軸(図示せず)は、変速装置Tを介して車両の駆動輪(図示せず)に連結されている。
この変速装置Tは、ギヤ式の有段自動変速装置であり、エンジン3の動力を、互いに異なる所定の複数の変速比の1つによって変速し、駆動輪に伝達する。また、これらの変速比として、第1速〜第5速およびリバースから成る6つのギヤ段で規定される変速比が設定されており、変速装置Tの動作は、運転者によって操作されるシフトレバー(図示せず)のシフト位置に応じ、後述するECU2によって制御される。
また、吸気装置1は、上記の気筒#1〜#4に吸気を導入するための吸気通路4と、吸気を過給するための過給装置9と、ECU2を備えている。この吸気通路4は、上流側の単一の主吸気通路5と、この主吸気通路5から分岐する、互いに並列な第1吸気通路6および第2吸気通路7を有している。
また、この第1吸気通路6の途中には、断面積がより大きな第1サージタンク6aが設けられており、この第1サージタンク6aは、4つの第1分岐通路6b,6b,6b,6bをそれぞれ介して、気筒#1,#2,#3,#4に接続されている。さらに、第1サージタンク6aには、第1吸気通路6と逆側の端部に、吸気側連通口6cが設けられている。上記の第2吸気通路7の途中には、断面積がより大きな第2サージタンク7aが設けられており、この第2サージタンク7aは、4つの第2分岐通路7b,7b,7b,7bをそれぞれ介して、気筒#1,#2,#3,#4に接続されている。なお、図1では、便宜上、第1および第2の分岐通路6b、7bの符号をそれぞれ1つのみ示している。
上記の過給装置9は、ターボチャージャで構成された過給機10と、これに連結されたアクチュエータ11と、ベーン開度制御弁12を備えている。この過給機10は、主吸気通路5に設けられた回転自在のコンプレッサブレード10aと、排気通路8に設けられた回転自在のタービンブレード10bおよび複数の回動自在の可変ベーン10c(2つのみ図示)と、これらのブレード10a,10bを一体に連結するシャフト10dを有している。この排気通路8は、気筒#1〜#4に接続されており、気筒#1〜#4からの排気は、排気通路8を介して外部に排出される。過給機10は、排気通路8内の排気によりタービンブレード10bが駆動されるのに伴い、これと一体のコンプレッサブレード10aが駆動されることによって、吸気通路4内の吸気を加圧する過給動作を行う。
上記のアクチュエータ11は、負圧によって作動するダイアフラム式のものであり、各可変ベーン10cに連結されている。このアクチュエータ11には、負圧ポンプから負圧供給通路(いずれも図示せず)を介して負圧が供給され、この負圧供給通路の途中にベーン開度制御弁12が設けられている。ベーン開度制御弁12は、電磁弁で構成されており、その開度がECU2からの駆動信号で制御されることにより、アクチュエータ11への供給負圧が変化し、それに伴い、可変ベーン10cの開度が変化することにより、過給機10による過給圧が制御される。
また、主吸気通路5におけるコンプレッサブレード10aの下流側には、上流側から順に、空冷式のインタークーラ15と第1吸気絞り弁16が設けられている。このインタークーラ15は、過給機10の過給動作により吸気の温度が上昇したときなどに、吸気を冷却するものである。上記の第1吸気絞り弁16は、弁体16aと、これを駆動するための直流モータから成るアクチュエータ16bを有している。第1吸気絞り弁16の開度は、このアクチュエータ16bに供給される電流をECU2で制御することによって、制御される。その結果、主吸気通路5におけるコンプレッサブレード10aの下流側の開度(以下「主吸気通路開度」という)が調整され、それにより、主吸気通路5に流入する新気の量が調整される。
さらに、第1吸気通路6における第1サージタンク6aの上流側には、第2吸気絞り弁17が設けられており、この第2吸気絞り弁17は、第1吸気絞り弁16と同様、弁体17aと、これを駆動するための直流モータから成るアクチュエータ17bを有している。第2吸気絞り弁17の開度は、このアクチュエータ17bに供給される電流をECU2で制御することによって、制御される。その結果、第1吸気通路6における第1サージタンク6aの上流側の開度(以下「第1吸気通路開度」という)が調整され、それにより、第1サージタンク6aに流入する新気の量が調整される。
また、吸気装置1は、吸排連通路21および吸排連通制御弁22を備えている。これらの吸排連通路21および吸排連通制御弁22は、主として、吸気通路4に排気の一部をEGRガスとして還流させる、いわゆるEGR動作を行うためのものである。吸排連通路21の一端部は、前述した第1サージタンク6aの吸気側連通口6cに接続されており、吸排連通路21の他端部は、排気通路8に設けられた排気側連通口8aに接続されている。この排気側連通口8aは、排気通路8におけるタービンブレード10bのすぐ下流側に配置されている。この吸排連通路21を介して、吸気通路4におけるコンプレッサブレード10aの下流側と、排気通路8におけるタービンブレード10bの下流側が、互いに連通している。また、吸排連通路21の断面積は、第1吸気通路6や排気通路8のそれよりも小さな値に設定されている。
吸排連通制御弁22は、弁体22aと、これを駆動するための直流モータから成るアクチュエータ22bを有しており、排気通路8における排気側連通口8aの付近に設けられている。また、吸排連通制御弁22は、排気側連通口8aおよび排気通路8の開度の双方を同時に変更可能に構成されており、その動作が、このアクチュエータ22bに供給される電流をECU2で制御することによって、制御される。具体的には、吸排連通制御弁22によって、排気側連通口8aが全閉のとき(図1の実線)、すなわち吸排連通路21が全閉のときには、排気通路8が全開になり、また、吸排連通路21の開度(以下「吸排連通路開度」という)が大きいほど、排気通路8の開度がより小さくなる。さらに、吸排連通路21が全開のとき(図1の二点鎖線)には、吸排連通制御弁22は、排気通路8の全閉位置に位置するが、弁体22aの面積が排気通路8の断面積よりも小さいため、排気通路8の開度は、全閉にはならず、所定の最小値になる。
また、排気通路8における排気側連通口8aの下流側には、エンジン3の排気を浄化する排気浄化装置51が設けられている。この排気浄化装置51は、例えば、排気中の粒子状物質(PM)を捕集するフィルタであるDPF(Diesel Particulate Filter )や、排気中のNOx、COおよびHCなどを浄化する各種の触媒(酸化触媒、NOx触媒、三元触媒など)の組み合わせで構成されている。
また、ECU2には、エンジン回転数センサ31、アクセル開度センサ32および車速センサ33が接続されている。このエンジン回転数センサ31は、エンジン3のクランク軸に設けられたマグネットロータやMREピックアップなどで構成されており、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを検出し、その検出信号をECU2に出力する。また、アクセル開度センサ32は、車両のアクセルペダル(図示せず)の踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを、車速センサ33は車速VPを、それぞれ検出し、それらの検出信号はECU2に出力される。
さらに、第1および第2のサージタンク6a,7aには、第1圧力センサ34および第2圧力センサ35がそれぞれ設けられており、前者34は、第1サージタンク6a内の圧力(以下「第1サージタンク内圧力」という)PS1を検出し、後者35は、第2サージタンク7a内の圧力(以下「第2サージタンク内圧力」という)PS2を検出し、それらの検出信号はECU2に出力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどから成るマイクロコンピュータで構成されている。上述した各種のセンサ31〜35からの検出信号はそれぞれ、I/OインターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPUに入力される。ECU2は、これらの入力信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに従って、エンジン3の運転状態を判別するとともに、判別した運転状態に応じて、吸気通路4に吸入される吸気を制御する。
次に、図2を参照しながら、吸気通路4に吸入される吸気を制御するための吸気絞り弁制御処理を説明する。本処理は、所定時間(例えば10msec)ごとに実行される。まず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、検出されたエンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、エンジン3に要求されるトルク(以下「要求トルク」という)PMCMDを算出する。このマップでは、アクセル開度APが大きいほど、要求トルクPMCMDはより大きな値に設定されている。次いで、検出された車速VPとエンジン回転数NEに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、ギヤ段推定値NGEARを算出する(ステップ2)。このギヤ段推定値NGEARは、推定された現在の変速装置Tのギヤ段を表すものである。
次に、エンジン3が所定の加速運転状態にあるか否かを判定する(ステップ3)。この判定では、次の条件(a)〜(c)の少なくとも1つが成立しているときに、エンジン3が所定の加速運転状態にあると判定される。
(a)エンジン回転数NEの変化量が、正の所定値よりも大きいとき
(b)アクセル開度APの変化量が、正の所定値よりも大きいとき
(c)ギヤ段推定値NGEARの前回値で表される変速段が、ギヤ段推定値NGEARの今回値で表される変速段よりも小さいこと、すなわち、変速装置Tのアップシフト直後であること
なお、エンジン回転数NEの変化量およびアクセル開度の変化量はそれぞれ、その今回値から前回値を減算することによって算出される。
上記ステップ3の答がNOで、エンジン3が所定の加速運転状態にないときには、エンジン3が所定の減速運転状態にあるか否かを判定する(ステップ4)。この判定では、次の条件(d)〜(f)の少なくとも1つが成立しているときに、エンジン3が所定の減速運転状態にあると判定される。
(d)エンジン回転数NEの変化量が、負の所定値よりも小さいとき
(e)アクセル開度APの変化量が、負の所定値よりも小さいとき
(f)ギヤ段推定値NGEARの前回値で表される変速段が、ギヤ段推定値NGEARの今回値で表される変速段よりも大きいこと、すなわち、変速装置Tのダウンシフト直後であること
上記ステップ4の答がNOのとき、すなわち、エンジン3が所定の加速運転状態および減速運転状態のいずれにもないときには、通常運転時用の吸気絞り弁制御処理を実行し(ステップ5)、本処理を終了する。この通常運転時用の吸気絞り弁制御処理の詳細については、後述する。
一方、ステップ4の答がYESで、エンジン3が所定の減速運転状態にあるときには、減速運転時用の吸気絞り弁制御処理を実行し(ステップ6)、本処理を終了する。この減速運転時用の吸気絞り弁制御処理の詳細については、後述する。
一方、ステップ3の答がYESで、エンジン3が所定の加速運転状態にあるときには、加速運転時用の吸気絞り弁制御処理を実行し(ステップ7)、本処理を終了する。この加速運転時用の吸気絞り弁制御処理の詳細については、後述する。
以下、ステップ5〜7でそれぞれ実行される通常運転時用、減速運転時用および加速運転時用の吸気絞り弁制御処理について、順に説明する。
・通常運転時用の吸気絞り弁制御処理
この通常運転時用の吸気絞り弁制御処理では、第1吸気絞り弁16を制御することによって、主吸気通路開度を全開状態に調整する。また、エンジン回転数NEが低〜中回転域にあり、かつ、要求トルクPMCMDが低〜中負荷域にあるときには、前述した吸排連通路21を用いてEGR動作を行うために、第2吸気絞り弁17および吸排連通制御弁22を制御することによって、第1吸気通路開度を閉じ側に、吸排連通路開度を開き側に、それぞれ調整する。この場合、排気通路8におけるタービンブレード10bの下流側の圧力(以下「排気タービン下流側圧力」という)は、大気圧とほぼ等しい状態にある。さらに、上述した第1吸気通路開度の制御と、エンジン3の吸気動作により、第1サージタンク内圧力PS1が、大気圧とほぼ等しい排気タービン下流側圧力よりも低くなる。以上により、排気通路8を流れる排気の一部は、EGRガスとして、吸排連通路21を介して第1サージタンク6aに還流し、エンジン3の吸気動作に伴って、新気とともに気筒#1〜#4に吸入される。これにより、気筒#1〜#4内における燃焼温度が低下することによって、エンジン3におけるNOxの生成が抑制される。
また、通常運転時用の吸気絞り弁制御処理では、エンジン回転数NEが低〜中回転域になく、または、要求トルクPMCMDが低〜中負荷域にないときには、上述したEGR動作を停止するために、第2吸気絞り弁17および吸排連通制御弁22を制御することによって、第1吸気通路開度を開き側に、吸排連通路開度を全閉状態に、それぞれ保持する。これにより、排気が吸排連通路21を介して第1サージタンク6aに還流せず、EGR動作は実行されない。この場合にも、第1吸気絞り弁16を制御することによって、主吸気通路開度を全開状態に調整する。
・減速運転時用の吸気絞り弁制御処理
この減速運転時用の吸気絞り弁制御処理では、その開始に伴い、減圧モード処理および負圧蓄積モード処理が順に実行される。この減圧モード処理は、第1吸気通路6内の吸気を、吸排連通路21を介して、排気通路8におけるタービンブレード10bの下流側に導入することによって、主吸気通路5におけるコンプレッサブレード10aの下流側の圧力(以下「吸気コンプレッサ下流側圧力」という)を低下させ、減圧する処理である。また、負圧蓄積モード処理は、第1サージタンク6aおよび吸排連通路21に負圧を蓄積する処理である。これらの減圧モード処理および負圧蓄積モード処理ではいずれも、第1吸気絞り弁16を制御することによって、主吸気通路開度は全開状態に調整されるとともに、第2吸気絞り弁17および吸排連通制御弁22を制御することによって、第1吸気通路開度および吸排連通路開度が、それぞれ調整される。以下、これらの第1吸気通路開度および吸排連通路開度の調整について、減圧モード処理から順に、説明する。
減圧モード処理では、第1吸気通路開度および吸排連通路開度はいずれも、全開状態に調整される。減圧モード処理の実行前で、吸排連通路開度が全閉状態にあるときには、吸気コンプレッサ下流側圧力は、過給装置9による過給動作によって大気圧よりも高い状態にある。これに対し、排気タービン下流側圧力は、大気圧とほぼ等しい状態にある。このように、吸気コンプレッサ下流側圧力が排気タービン下流側圧力よりも高いため、上述したように主吸気通路開度、第1吸気通路開度および吸排連通路開度がいずれも全開状態に調整されるのに伴い、第1吸気通路6内の吸気が、吸排連通路21を介して、排気通路8におけるタービンブレード10bの下流側に導入される。それにより、吸気コンプレッサ下流側圧力は、排気通路8に導入されることで、低下し、減圧される。
上記の減圧モード処理の実行時間(以下「減圧モード実行時間」という)は、エンジン3の減速運転の開始時、すなわちステップ3の判別がNOからYESに切り換わったときに検出された第2サージタンク内圧力PS2に基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。このマップでは、減圧モード実行時間は、第2サージタンク内圧力PS2が大きいほど、すなわち、吸気コンプレッサ下流側圧力が大きいほど、より長い時間に設定されている。これにより、吸気コンプレッサ下流側圧力を十分に低下させ、減圧することができる。
また、上記の負圧蓄積モード処理では、第1吸気通路開度および吸排連通路開度はいずれも、全閉状態に調整される。これにより、第1吸気通路6、第1サージタンク6aおよび吸排連通路21が互いに連通した状態で、第1吸気通路6および吸排連通路21が閉じた状態に保持される。この状態で、エンジン3の吸気動作が行われると、第1吸気通路6における第2吸気絞り弁17よりも下流側(第1サージタンク6aを含む)と、吸排連通路21に、負圧が蓄積される。また、負圧蓄積モード処理は、その開始後、エンジン3が所定の加速運転状態にあると判定される(ステップ3:YES)まで、継続して実行される。
・加速運転時用の吸気絞り弁制御処理
この加速運転時用の吸気絞り弁制御処理では、その開始に伴い、負圧導入モード処理が実行される。この負圧導入モード処理は、上述した負圧蓄積モード処理で第1サージタンク6aや吸排連通路21などに蓄積された負圧により、排気通路8におけるタービンブレード10bのすぐ下流側の排気を第1吸気通路6に導入することによって、排気タービン下流側圧力を低下させる処理である。
この負圧導入モード処理では、第1吸気絞り弁16の制御によって、主吸気通路開度を全開状態に調整するとともに、第2吸気絞り弁17および吸排連通制御弁22の制御によって、第1吸気通路開度を全閉状態に、吸排連通路開度を全開状態に、それぞれ調整する。これにより、排気通路8におけるタービンブレード10bのすぐ下流側の排気が、第1サージタンク6aや吸排連通路21に蓄積された負圧によって、第1吸気通路6に導入される。それにより、排気タービン下流側圧力は低下する。この場合、前述したように、排気浄化装置51は、排気通路8に形成された、吸排連通路21が連通する排気側連通口8aよりも下流側に設けられているので、排気浄化装置51が排気通路8内の障害物となることによって、排気は、排気側連通口8aよりも排気浄化装置51側から吸排連通路21には流れにくくなる。その結果、排気側連通口8aよりもタービンブレード10b側から吸排連通路21に、排気が流れやすくなり、したがって、排気タービン下流側圧力をより大きく低下させることができる。
また、負圧導入モード処理は、その開始後、検出された第1サージタンク内圧力PS1が大気圧とほぼ等しくなったとき、すなわち、第1サージタンク6aや吸排連通路21などに蓄積された負圧がすべて、排気通路8内の排気を第1吸気通路6に導入するのに費やされたときに、終了される。
さらに、加速運転時用の吸気絞り弁制御処理において、負圧導入モード処理が終了した後には、第1および第2の吸気絞り弁16,17と吸排連通制御弁22は、通常運転時用の吸気絞り弁制御処理と同様にして制御される。
図3は、上述した吸気絞り弁制御処理の動作例を、エンジン3の運転状態が加速運転状態から減速運転状態に変化し、その後再び、加速運転状態に変化した場合について示している。同図において、OIMおよびOI1はそれぞれ、主吸気通路開度および第1吸気通路開度であり、OIEは、吸排連通路開度である。また、RPTは、排気タービン下流側圧力に対する、排気通路8におけるタービンブレード10bの上流側の圧力(以下「排気タービン上流側圧力」という)の比(以下「排気タービン膨張比」という)である。さらに、RPCは、主吸気通路5におけるコンプレッサブレード10aの上流側の圧力(以下「吸気コンプレッサ上流側圧力」という)に対する、吸気コンプレッサ下流側圧力の比(以下「吸気コンプレッサ圧力比」という)である。また、NCは、コンプレッサブレード10aの回転数(以下「コンプレッサ回転数」という)である。
図3に示すように、エンジン3の加速運転からの減速運転の開始後(時点t1以降)、エンジン回転数NEが低下し、それに伴い、排気タービン上流側圧力が大きく低下することによって、排気タービン膨張比RPT(排気タービン上流側圧力/排気タービン下流側圧力)が、大きく低下する。また、減速運転の開始に伴い、減速運転時用の吸気絞り弁制御処理(ステップ6)が開始され、減圧モード処理が開始されると、主吸気通路開度および第1吸気通路開度OIM,OI1がいずれも、全開状態に調整されるとともに、吸排連通路開度OIEが全開状態に調整される。これにより、前述したように吸気コンプレッサ下流側圧力が低下することによって、第1サージタンク内圧力PS1が低下する。また、この場合、吸気コンプレッサ上流側圧力が大気圧とほぼ等しい状態にあるため、吸気コンプレッサ下流側圧力が低下することによって、吸気コンプレッサ圧力比RPC(吸気コンプレッサ下流側圧力/吸気コンプレッサ上流側圧力)は、低下する。以上の結果、減圧モード処理中、コンプレッサ回転数NCは、急激に低下することなく、ほぼ一定の状態で推移する。
一方、図3の破線L1は、減圧モード処理を実行せずに、吸気コンプレッサ下流側圧力を低下させることなく、そのまま推移させた場合における吸気コンプレッサ圧力比RPCを示しており、図3の破線L2は、この場合におけるコンプレッサ回転数NCを示している。破線L1で示すように、吸気コンプレッサ圧力比RPCは、ほとんど低下せずに、高い状態のまま推移し、その結果、破線L2で示すように、コンプレッサ回転数NCは急激に低下する。
そして、減圧モード処理が終了し、負圧蓄積モード処理が開始される(時点t2)と、主吸気通路開度OIMが引き続き全開状態に保持されるとともに、第1吸気通路開度OI1および吸排連通路開度OIEがいずれも、全閉状態に調整される。これにより、前述したように第1サージタンク6aや吸排連通路21に負圧が蓄積され、その結果、第1サージタンク内圧力PS1が大気圧よりも低くなり、負圧状態になる。また、負圧蓄積モード処理中、エンジン回転数NEの低下に伴って、排気タービン膨張比RPTおよび吸気コンプレッサ圧力比RPCは、緩やかに低下する。
そして、エンジン3の加速運転が開始される(時点t3)と、エンジン回転数NEが上昇し、それに伴い、加速運転時用の吸気絞り弁制御処理(ステップ7)が開始され、負圧導入モード処理が開始される。これにより、主吸気通路開度OIMが全開状態に、第1吸気通路開度OI1が全閉状態に、引き続き保持されるとともに、吸排連通路開度OIEが全開状態に調整される。
これにより、前述したように、第1サージタンク6aなどに蓄積された負圧によって、排気通路8におけるタービンブレード10bのすぐ下流側の排気が第1吸気通路6に導入される結果、排気タービン下流側圧力が低下する。このことと、エンジン回転数NEの上昇に伴って排気タービン上流側圧力が上昇することによって、排気タービン膨張比RPTが迅速に且つ大きく増大する。その結果、吸気コンプレッサ下流側圧力が、迅速に且つ大きく上昇し、吸気コンプレッサ圧力比RPCおよびコンプレッサ回転数NCも、迅速に且つ大きく上昇し、ひいては、エンジン回転数NEも、迅速に且つ大きく上昇する。その後、排気タービン膨張比RPTおよび吸気コンプレッサ圧力比RPCは、エンジン回転数NEの上昇に伴って、緩やかに増大し、コンプレッサ回転数NCは、ほぼ一定の状態で推移する。
そして、負圧導入モード処理の開始後、第1サージタンク6aなどに蓄積された負圧がすべて、排気通路8内の排気を第1吸気通路6に導入するのに費やされ、その結果、第1サージタンク内圧力PS1が大気圧にほぼ等しくなる(時点t4)と、負圧導入モード処理が終了され、第1および第2の吸気絞り弁16,17と吸排連通制御弁22が、通常運転時用の吸気絞り弁制御処理と同様にして制御される。これにより、この動作例では、主吸気通路開度OIMおよび第1吸気通路開度OI1が全開状態に調整されるとともに、吸排連通路開度OIEが全閉状態に調整される。それに伴い、第1サージタンク6aに過給圧が導入されることによって、第1サージタンク内圧力PS1は、大気圧を超え、その後、ほぼ一定の状態で推移する。
一方、図3の破線L3は、負圧蓄積モード処理および負圧導入モード処理を実行せずに、排気タービン下流側圧力を低下させることなく、そのまま推移させた場合におけるコンプレッサ回転数NCを示しており、図3の破線L4は、この場合におけるエンジン回転数NEを示している。破線L3で示すように、コンプレッサ回転数NCは、迅速に且つ大きくは上昇せず、緩慢に上昇しており、その応答性が低く、その結果、破線L4で示すように、エンジン回転数NEも、迅速に且つ大きくは上昇せず、緩慢に上昇する。
また、図4は、本実施形態による吸気装置1を適用したエンジン3におけるP−V線図(図4(b))を、比較例(図4(a))とともに示している。この比較例は、負圧蓄積モード処理および負圧導入モード処理を行わずに、過給装置9による過給動作を実行した場合を示している。また、図4において、VTDCは、気筒#1〜#4内のピストン(図示せず)がTDC(上死点)にあるときの気筒#1〜#4の容積(ピストン、シリンダおよびシリンダヘッドで囲まれた部分の容積)であり、VBDCは、ピストンがBDC(下死点)にあるときの気筒#1〜#4の容積である。
また、図4(a)において、P1’、P2’、P3’およびP4’はそれぞれ、比較例における吸気コンプレッサ上流側圧力、吸気コンプレッサ下流側圧力、排気タービン上流側圧力、および排気タービン下流側圧力である。さらに、ハッチングA’およびハッチングB’の面積の和は、タービンブレード10bによる膨張仕事(以下「タービン膨張仕事」という)に相当し、ハッチングB’およびハッチングC’の面積の和は、コンプレッサブレード10aによる圧縮仕事(以下「コンプレッサ圧縮仕事」という)に相当する。これらのタービン膨張仕事およびコンプレッサ圧縮仕事は、互いに等しい。また、PMAX’は、気筒#1〜#4内の圧力の最大値(以下「筒内圧最大値」という)である。
図4(a)に示すように、比較例では、負圧蓄積モード処理および負圧導入モード処理が実行されないことから、排気タービン下流側圧力P4’は、吸気コンプレッサ上流側圧力P1’と等しく、大気圧とほぼ等しい。このため、排気タービン上流側圧力P3’と排気タービン下流側圧力P4’の差(P3’−P4’)が小さくなり、タービン膨張仕事(ハッチングA’+B’)は小さくなる。これにより、コンプレッサ圧縮仕事(ハッチングB’+C’)が小さくなる結果、筒内圧最大値PMAX’も小さくなり、エンジン3の高い出力を得ることができない。
これに対して、図4(b)に示すように、本実施形態による吸気装置1を適用したエンジン3では、負圧蓄積モード処理および負圧導入モード処理の実行によって、排気タービン下流側圧力P4は、大気圧とほぼ等しい吸気コンプレッサ上流側圧力P1よりも低くなる。これにより、上述した比較例と比較して、排気タービン上流側圧力P3と排気タービン下流側圧力P4の差(P3−P4)が大きくなり、タービン膨張仕事(ハッチングA+B)は大きくなる。これにより、コンプレッサ圧縮仕事(ハッチングB+C)が大きくなる結果、筒内圧最大値PMAXも大きくなり、エンジン3の高い出力を得ることができる。
また、本実施形態における各種の要素と本発明の各種の要素との対応関係は、次の通りである。すなわち、ECU2が、本発明における加速運転状態判定手段、圧力制御手段、加減速パラメータ検出手段、および減速運転状態判定手段に相当する。また、第1サージタンク6a、コンプレッサブレード10aおよびタービンブレード10bが、本発明におけるサージタンク、吸気コンプレッサおよび排気タービンにそれぞれ相当する。さらに、第2吸気絞り弁17が、本発明における圧力制御手段および第1調整弁に相当し、吸排連通制御弁22が、本発明における圧力制御手段および第2調整弁に相当する。また、エンジン回転数センサ31、アクセル開度センサ32および車速センサ33が、本発明における加減速パラメータ検出手段に相当する。
さらに、エンジン回転数NE、アクセル開度APおよびギヤ段推定値NGEARが、本発明における加減速パラメータに相当し、アクセル開度APおよびギヤ段推定値NGEARが、本発明における操作部材の操作量および変速装置の変速比に、それぞれ相当する。また、第1吸気通路開度OI1が、本発明における吸気通路開度に相当する。
以上のように、本実施形態によれば、第1サージタンク6aに設けられた吸気側連通口6cと、排気通路8に設けられた排気側連通口8aとに接続された吸排連通路21を介して、吸気通路4におけるコンプレッサブレード10aの下流側と、排気通路8におけるタービンブレード10bの下流側が、互いに連通している。また、第2吸気絞り弁17および吸排連通制御弁22を制御することによって、第1吸気通路開度OI1および吸排連通路開度OIEがそれぞれ調整される。そして、エンジン3が所定の減速運転状態にあると判定されたときに、減圧モード処理を実行することによって、第1吸気通路開度OI1および吸排連通路開度OIEがいずれも、全開状態に調整される。これにより、エンジン3の加速運転や高負荷運転から減速運転の開始直後において、吸気コンプレッサ下流側圧力P2が排気タービン下流側圧力P4よりも高いときに、第1吸気通路6内の吸気が、吸排連通路21を介して排気通路8に導入されるので、吸気コンプレッサ下流側圧力P2を十分に低下させ、減圧することができ、したがって、コンプレッサ回転数NCの急激な低下を確実に防止し、コンプレッサ回転数NCを維持することができる。
また、エンジン3が所定の減速運転状態にあると判定されたときに、負圧蓄積モード処理を実行することによって、第1吸気通路開度OI1および吸排連通路開度OIEがいずれも、全閉状態に調整され、それにより、第1サージタンク6aや吸排連通路21に、負圧が蓄積される。さらに、この負圧蓄積モード処理が、その開始後、エンジン3が所定の加速運転状態にあると判定されるまで、継続して実行される。
そして、エンジン3が所定の加速運転状態にあると判定されたときに、負圧導入モード処理を実行することによって、第1吸気通路開度OI1が引き続き全閉状態に保持され、吸排連通路開度OIEが全開状態に調整される。これにより、上述したように第1サージタンク6aなどに蓄積された負圧によって、排気通路8におけるタービンブレード10bのすぐ下流側の排気が第1吸気通路6に導入される結果、排気タービン下流側圧力P4が低下し、それに伴い、排気タービン膨張比RPTが迅速に増大することで、コンプレッサ回転数NCが迅速に上昇する。その結果、コンプレッサ圧力比RPCが迅速に増大するので、加速運転時、過給圧を迅速に且つ大きく上昇させることができ、したがって、エンジン3の出力の高い応答性や良好な排出ガス特性を確実に得ることができる。
また、エンジン3の減速運転時に、上述したようにコンプレッサ回転数NCが維持されることから、比較的短い減速運転からの加速運転の開始直後においても、所望の過給圧を迅速に且つ確実に得ることができる。さらに、この場合、断面積がより大きな第1サージタンク6aに負圧が蓄積されるので、この第1サージタンク6aに、より多量の負圧状態の吸気を蓄積することができる。それに加え、排気側連通口8aが、排気通路8におけるタービンブレード10bのすぐ下流側に設けられているので、加速運転時に、排気タービン下流側圧力P4を確実に低下させることができ、したがって、過給圧を迅速に且つ大きく上昇させることができるという効果を迅速かつより確実に得ることができる。
また、エンジン3が所定の減速運転状態にあるか否か、および、所定の加速運転状態にあるか否かを、検出されたエンジン回転数NEおよびアクセル開度APとギヤ段推定値NGEARに応じて判定するので、この判定を適切に行うことができる。
さらに、吸気通路4が、コンプレッサブレード10aの下流側において、互いに並列な第1および第2の吸気通路6,7に分岐しており、吸気側連通口21および第2吸気絞り弁17が、第1吸気通路6に設けられている。これにより、負圧蓄積モード処理の実行中、吸気を、第2吸気通路7を介して気筒#1〜#4に導入することができる。したがって、気筒#1〜#4に吸入される吸気を確保しながら、吸排連通路21などに負圧を蓄積することができる。
また、図5は、EGRガスを冷却するためのEGR冷却装置41を設けた場合の吸気装置1Aを、これを適用したエンジン3とともに概略的に示している。同図において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。このEGR冷却装置41は、EGRクーラ41a、バイパス通路41bおよびEGR通路切換弁41cを有している。
このEGRクーラ41aは、水冷式のものであり、第1サージタンク6a内に一体に設けられている。第1サージタンク6aは、EGRクーラ41aによって、2つに仕切られており、第1吸気通路6は、第1サージタンク6aにおけるEGRクーラ41aの上流側の部位に接続され、吸気側連通口6cも、この部位に設けられている。上記のバイパス通路41bは、EGRクーラ41aをバイパスするように設けられており、具体的には、バイパス通路41bの一端部は吸排連通路21に、他端部は、第1サージタンク6aにおけるEGRクーラ41aの下流側の部位に、それぞれ接続されている。また、上記のEGR通路切換弁41cは、吸排連通路21のバイパス通路41bとの接続部に取り付けられている。EGR通路切換弁41cは、ECU2による制御によって、吸排連通路21のEGR通路切換弁41cよりも下流側(エンジン3側)の部分を、吸排連通路21側とバイパス通路41b側に選択的に切り換える。
以上により、EGR通路切換弁41cがバイパス通路41b側に切り換えられた場合には、EGRガスは、バイパス通路41bに通され、EGRクーラ41aで冷却されずに、気筒#1〜#4に流入する。一方、逆側に切り換えられた場合には、EGRガスは、EGRクーラ41aで冷却された後、気筒#1〜#4に流入する。
以上のように、この吸気装置1Aでは、EGRクーラ41aが第1サージタンク6a内に一体に設けられているので、両者を別個に設けた場合と比較して、吸気装置1Aを小型化することができる。また、この吸気装置1Aでは、前述した図2の吸気絞り弁制御処理が同様にして行われ、したがって、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
次に、図6を参照しながら、本発明の第2実施形態による内燃機関の吸気装置1Bについて説明する。この吸気装置1Bと第1実施形態を比較すると、減速運転時用および加速運転時用の吸気絞り弁制御処理の選択・実行が、第1実施形態ではエンジン回転数NEなどに応じて行われるのに対し、この吸気装置1Bでは排気タービン上流側圧力P3に応じて行われる点が、主に異なっている。図6において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。同図に示すように、上述した第1実施形態との相違から、吸気装置1Bでは、排気通路8におけるタービンブレード10bの上流側に、排気タービン上流側圧力P3を検出する第3圧力センサ36が設けられており、その検出信号は、ECU2に出力される。また、吸気装置1Bでは、吸気絞り弁制御処理は、図7に示すフローチャートに従って行われる。同図において、図2の吸気絞り弁制御処理と同じ実行内容の部分については、同じステップ番号を付している。以下、図7の吸気絞り弁制御処理について、図2の吸気絞り弁制御処理と異なる点を中心に説明する。
図7に示すように、前記ステップ1に続くステップ11では、検出された排気タービン上流側圧力P3の今回値から前回値を減算することによって、圧力変化量DP3を算出する。次いで、算出された圧力変化量DP3が、正値である所定の加速判定値DP3Uよりも大きいか否かを判別する(ステップ12)。この答がYESのとき、すなわち、タービン上流側圧力P3が上昇しているときには、エンジン3が加速運転状態にあるとして、前記ステップ7を実行し、加速運転時用の吸気絞り弁制御処理を実行する。
一方、上記ステップ12の答がNOのときには、圧力変化量DP3が、負値である所定の減速判定値DP3Dよりも小さいか否かを判別する(ステップ13)。この答がYESのとき、すなわち、タービン上流側圧力P3が低下しているときには、エンジン3が減速運転状態にあるとして、前記ステップ6を実行し、減速運転時用の吸気絞り弁制御処理を実行する。一方、上記ステップ13の答がNOのときには、エンジン3が加速運転状態および減速運転状態のいずれにもないとして、前記ステップ5を実行し、通常運転時用の吸気絞り弁制御処理を実行する。
また、減圧モード処理の実行時間である減圧モード実行時間は、エンジン3の減速運転の開始時、すなわちステップ13の答がNOからYESに切り換わったときに検出された第2サージタンク内圧力PS2に基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、算出される。さらに、負圧蓄積モード処理は、その開始後、ステップ12の答がYESになるまで、すなわち、エンジン3が加速運転状態にあると判定されるまで、継続して実行される。
以上により、この第2実施形態によれば、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。また、吸気装置1Bに、前述したEGR冷却装置41を設けてもよいことも、もちろんである。なお、第2実施形態では、第3圧力センサ36が、本発明における排気タービン上流側圧力検出手段に相当する。
なお、第1および第2の実施形態において、第1サージタンク6aを省略してもよい。
次に、図8を参照しながら、本発明の第3実施形態による内燃機関の吸気装置1Cについて説明する。この吸気装置1Cは、第1実施形態と比較して、第2吸気絞り弁18の構成が主に異なっている。図8において、第1実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
この吸気装置1Cでは、吸気側連通口6cは、第1実施形態と異なり、第1サージタンク6aには設けられておらず、4つの第1分岐通路6bにそれぞれ設けられている。また、吸排連通路21の吸気通路4側の部位には、断面積がより大きな容積室21aが設けられている。この容積室21aは、上記の4つの吸気側連通口6cに接続されている。
第2吸気絞り弁18は、第1実施形態と異なり、第1吸気通路6には設けられておらず、第1分岐通路6bに設けられている。具体的には、第2吸気絞り弁18は、第1分岐通路6b,6b,6b,6bにおける吸気側連通口6c,6c,6c,6cの上流側にそれぞれ配置された弁体18aと、これらの弁体18a,18a,18a,18aを一体に連結するシャフト18bと、4つの弁体18aを駆動するための直流モータから成るアクチュエータ18cを有している。4つの弁体18aは、シャフト18cによる連結によって、互いに連動するように構成されており、このアクチュエータ18cにより同時に互いに同じ開度になるように駆動される。
第2吸気絞り弁18の開度、すなわち、4つの弁体18aの開度は、アクチュエータ18cに供給される電流をECU2で制御することによって、制御される。この場合、上述した第2吸気絞り弁18の構成から明らかなように、4つの弁体18aの開度は、同調制御される。その結果、各第1分岐通路6bにおける吸気側連通口6cの上流側の開度(以下「第1分岐通路開度」という)が、調整される。
また、第1圧力センサ34は、第1実施形態と異なり、第1サージタンク6aには設けられておらず、容積室21aに設けられており、容積室21a内の圧力(以下「容積室内圧力」という)PSを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
以上の構成の吸気装置1Cでは、前述した図2の吸気絞り弁制御処理が同様にして行われる。この場合、第2吸気絞り弁17に対して行われる前述した制御が、第2吸気絞り弁18に対して同様に行われる。以下、この場合の吸気絞り弁制御処理のうち、減圧モード処理、負圧蓄積モード処理および負圧導入モード処理を簡単に説明する。
減圧モード処理の実行中には、第1および第2の吸気絞り弁16,18と吸排連通制御弁22の制御によって、主吸気通路開度OIM、第1分岐通路開度および吸排連通路開度OIEが、全開状態に調整される。これにより、エンジン3の減速運転時で、吸気コンプレッサ下流側圧力P2が排気タービン下流側圧力P4よりも高いときに、4つの第1分岐通路6b内の吸気が、吸排連通路21を介して、排気通路8におけるタービンブレード10bの下流側に導入される。それにより、第1実施形態と同様、吸気コンプレッサ下流側圧力P2は、排気通路8に導入されることで、低下し、減圧される。
負圧蓄積モード処理の実行中には、第1および第2の吸気絞り弁16,18と吸排連通制御弁22の制御によって、主吸気通路開度OIMが全開状態に調整されるとともに、第1分岐通路開度および吸排連通路開度OIEが、全閉状態にそれぞれ調整される。これにより、第1分岐通路6b,6b,6b,6bおよび吸排連通路21が、互いに連通した状態で、閉じた状態に保持される結果、エンジン3の吸気動作に伴って、容積室21aを含む吸排連通路21と第1分岐通路6bに、負圧が蓄積される。このように、断面積がより大きな容積室21aに負圧が蓄積されるので、この容積室21aの分、負圧状態の吸気をより多く蓄積することができる。
さらに、負圧導入モード処理の実行中には、第1および第2の吸気絞り弁16,18と吸排連通制御弁22の制御によって、主吸気通路開度OIMおよび吸排連通路開度OIEが、全開状態にそれぞれ調整されるとともに、第1分岐通路6bが全閉状態に調整される。これにより、負圧蓄積モード処理の実行中に容積室21aなどに蓄積された負圧によって、排気通路8におけるタービンブレード10bのすぐ下流側の排気が、吸排連通路21を介して、4つの第1分岐通路6bに導入される。それにより、排気タービン下流側圧力P4は、4つの第1分岐通路6bに導入されることで、低下する。したがって、エンジン3の加速運転時、第1実施形態と同様、過給圧を迅速に且つ大きく上昇させることができる。また、負圧導入モード処理は、その開始後、検出された容積室内圧力PSが、大気圧とほぼ等しくなったとき、すなわち、容積室21aなどに蓄積された負圧がすべて、排気通路8内の排気を4つの第1分岐通路6bに導入するのに費やされたときに、終了される。
以上から明らかなように、この第3実施形態によれば、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。また、吸気装置1Cに、前述したEGR冷却装置41を設けてもよいことも、もちろんである。
なお、第3実施形態では、第2吸気絞り弁18が、本発明における圧力制御手段および第1調整弁に相当する。
なお、第1および第3の実施形態では、本発明における加減速パラメータは、エンジン回転数NE、アクセル開度APおよびギヤ段推定値NGEARであるが、エンジン3の減速運転状態および加速運転状態を判定できるパラメータであれば、これに限らず、任意である。また、変速装置Tのギヤ段を、ギヤ段推定値NGEARとして推定しているが、変速装置Tを駆動するアクチュエータの動作状態をセンサなどで検出し、求めてもよい。あるいは、変速装置Tの変速比を、エンジン回転数NEや車速VPに応じて算出してもよい。
次に、図9を参照しながら、本発明の第4実施形態による内燃機関の吸気装置1Dについて説明する。この吸気装置1Dと第3実施形態を比較すると、減速運転時用および加速運転時用の吸気絞り弁制御処理の選択・実行が、第3実施形態ではエンジン回転数NEなどに応じて行われるのに対し、この吸気装置1Dでは排気タービン上流側圧力P3に応じて行われる点が、主に異なっている。換言すれば、吸気装置1Dは、第3実施形態の吸気装置1Cにおいて、第2実施形態で述べた吸気絞り弁制御処理を行うように構成されている。図9において、第3実施形態と同じ構成要素については、同じ符号を用いて示している。同図に示すように、上述した第3実施形態との相違から、吸気装置1Dでは、排気通路8におけるタービンブレード10bの上流側に、排気タービン上流側圧力P3を検出する第3圧力センサ36が設けられており、その検出信号は、ECU2に出力される。
以上の構成の吸気装置1Dでは、前述した図7の吸気絞り弁制御処理が同様にして行われる。この場合、第2吸気絞り弁17に対して行われる前述した制御が、第2吸気絞り弁18に対して同様に行われる。これにより、エンジン3の減速運転時(ステップ13:YES)や加速運転時(ステップ12:YES)、吸気装置1Dにおいて、第3実施形態で述べたような動作が同様にして行われる。したがって、この第4実施形態によれば、第1実施形態による効果を同様に得ることができる。
なお、第3および第4の実施形態では、弁体18aおよび吸気側連通口6cを、4つの第1分岐通路6bにそれぞれ設けているが、4つの第1分岐通路6bのうちの1つないし3つのいずれかに設けてもよい。また、第3および第4の実施形態では、4つの弁体18aが互いに連動するタイプの第2吸気絞り弁18を用いているが、複数の弁体が連動しないタイプのものを用いるとともに、これらの複数の弁体を、ECU2で同調制御してもよい。さらに、第3および第4の実施形態において、容積室21aを省略してもよい。
また、第2および第4の実施形態では、排気タービン上流側圧力P3を、第3圧力センサ36で検出しているが、例えば、エンジン回転数NEなどに応じて算出(推定)してもよい。さらに、第1〜第4の実施形態において、第1吸気絞り弁16を、第2吸気通路7に設けてもよく、あるいは、省略してもよい。このように、第1および第2の実施形態において第2吸気通路7に第1吸気絞り弁16を設ける場合には、第1および第2の吸気絞り弁16,17を、互いに連動するように構成し、同調制御してもよい。また、第1〜第4の実施形態において、吸排連通制御弁22を省略することも可能である。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、排気タービン下流側圧力P4を低下させるための圧力制御手段として、第2吸気絞り弁17や吸排連通制御弁22を用い、負圧蓄積モードにおいて第1サージタンク6aなどに蓄積された負圧によって、タービンブレード10bの下流側の排気を、吸排連通路21を介して第1吸気通路6などに導入するようにしているが、これに限らず、排気タービン下流側圧力P4を低下させることが可能な他の任意の手段を採用することができる。例えば、第1吸気通路6などに負圧を供給する負圧供給装置を用いてもよく、あるいは、タービンブレード10bの下流側に、その圧力を低下させる手段を直接、設けてもよい。
また、実施形態では、吸排連通制御弁22を、吸排連通路開度OIE、すなわち排気側連通口8aの開度を調整可能に構成しているが、吸気側連通口6cの開度や、吸排連通路21の開度を調整可能に構成してもよい。この場合、排気タービン下流側圧力P4を低下させる上で、吸排連通制御弁22を、吸排連通路21における排気通路8に近い側の部位の開度を調整可能に構成するのが好ましい。また、実施形態では、排気側連通口8aおよび排気通路8の開閉を、単一の吸排連通制御弁22で行っているが、それぞれ別個の弁を設けて行ってもよい。さらに、実施形態では、変速装置Tは、有段自動変速装置であるが、有段手動変速装置や、無段自動変速装置でもよいことは、もちろんである。また、
さらに、実施形態では、負圧蓄積モード処理を、エンジン3の減速運転中に行っているが、通常運転中に行ってもよい。あるいは、負圧蓄積モード処理を、エンジン3の減速運転中で、かつ、エンジン3への燃料供給が行われない、いわゆる減速フューエルカット運転中に行うことによって、エンジン3の動力を用いずに、車両の慣性エネルギを用いて、負圧を蓄積することができる。それにより、エンジン3のより良好な燃費を得ることができる。また、実施形態では、負圧蓄積モード処理において、第1吸気通路開度OI1(または第1分岐通路開度)および吸排連通路開度OIEを同時に全閉状態に調整しているが、第1吸気通路開度OI1(または第1分岐通路開度)を全閉状態に調整した後に、吸排連通路開度OIEを全閉状態に調整してもよい。
さらに、実施形態では、減圧モード処理、負圧蓄積モード処理および負圧導入モード処理において、第1吸気通路開度OI1や、吸排連通路開度OIE、第1分岐通路開度を、全開または全閉状態に調整しているが、これらの処理の目的が達成できるのであれば、全開状態よりも若干、閉じた開き側の開度に、全閉状態よりも若干開いた閉じ側の開度に、それぞれ調整してもよい。
また、実施形態は、本発明を4気筒タイプのエンジンに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、単気筒タイプや、4つ以外の複数の気筒を有するタイプのエンジンに適用可能である。それに加え、本発明は、実施形態で例示した車両用のディーゼルエンジンに限らず、ガソリンエンジンや、LPGエンジン、クランク軸を鉛直方向に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジン、その他産業用の各種の内燃機関に、適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。