JP2013185033A - 蓄電素子用セパレータ及びその製造方法 - Google Patents

蓄電素子用セパレータ及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロースで形成されていても、取り扱い性及び生産性を向上できる蓄電素子用セパレータを提供する。
【解決手段】ミクロ相分離構造を有するセルロース多孔質膜で蓄電素子用セパレータを形成する。このセパレータは、平均厚み20μm以下、透気度100秒/100ml以下、平均孔径0.01〜5μm、空孔率30〜80%、最大孔径10μm以下であってもよい。前記セルロース多孔質膜のセルロースは平均アシル置換度1以下であってもよい。このセパレータは、セルロースアシレートをミクロ相分離させて多孔質化するミクロ相分離工程、多孔質化したセルロースアシレートを加水分解して脱アシル化する加水分解工程を含む製造方法により得られたセパレータであってもよい。
【選択図】なし

Description

本発明は、ミクロ相分離構造を有するセルロース多孔質膜で形成された蓄電素子用セパレータ及びその製造方法に関する。
従来から、電池、コンデンサ、キャパシタなどの蓄電素子(蓄電デバイス)のセパレータには、電解液の透過性などの特性が必要とされるが、セパレータとしてはシャットダウン機能を有するオレフィン系多孔膜が使用されていた。しかし、近年では、電気・電子機器の小型化や長寿命化などにより、電池やキャパシタのセパレータにもさらに高度な性能が要求されており、セパレータに対する更なる改良が求められている。例えば、リチウム二次電池は、電気自動車(EV)の駆動源や定置用蓄電システムとして広く普及しており、電池の高容量化及び大出力化の要求に伴って、セパレータにも耐熱性及び薄肉性が求められている。しかし、オレフィン系多孔膜では、耐熱性が低く、例えば、電気自動車などに搭載するにはリスクの高い材料であった。そこで、耐熱性及び薄肉性を向上できるセパレータとして、耐熱性に優れ、電気化学的に安定なセルロース繊維の利用が検討されている。
特許第3805851号公報(特許文献1)には、繊維径1μm以下の微細なセルロースを原料として抄紙により湿紙を製造し、この湿紙に存在する空隙構造を保持したまま、セルロース繊維間の空隙構造に保持された水を溶媒置換した後、乾燥させて得られるセパレータであって、厚み15〜100μmであり、低密度であるとともに、気密度が高いセパレータが開示されている。この文献には、微細なセルロースとしては、ディスクリファイナー叩解処理されたミクロフィブリル化セルロースが記載されている。
また、特許第4628764号公報(特許文献2)には、膜厚が5〜50μmであり、空孔率が60〜90%であり、バブルポイント法により得られる最大孔径が0.03〜0.25μmであり、最大繊維太さが1000nm以下であるセルロース繊維からなる蓄電デバイス用セパレータの製造方法として、微細セルロース繊維を水等の分散媒体へ高度に分散させた分散液を抄紙法や塗布法により製膜する方法や、静置培養により得られたバクテリアセルロースのゲルを乾燥させる方法において、乾燥の際に、水又は水が主体の分散媒体に対して、より疎水性の有機溶媒に置換した後に乾燥させる方法により得られるセパレータが開示されている。この文献の実施例では、超高圧ホモジナイザーを用いて、圧力175MPaで分散処理し、セルロースナノファイバーを調製している。
しかし、これらの方法で得られるセパレータは、セルロースナノファイバーを用いるため、取り扱い性が低く、溶媒置換を行うため、生産性も低い。さらに、ディスクリファイナーやホモジナイザーでミクロフィブリル化されたセルロース繊維では、繊維を均一にミクロフィブリル化するのが困難であり、大繊維径により孔径の大きな部分が存在し、電池セパレータとして利用すると短絡し易い。
特許第3805851号公報(特許請求の範囲、段落[0031][0032]]、実施例) 特許第4628764号公報(請求項1、段落[0046]、実施例)
従って、本発明の目的は、セルロースで形成されていても、取り扱い性及び生産性を向上できる蓄電素子用セパレータ及びその製造方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、孔径が小さく、かつ均一で、電池セパレータなどに利用しても、短絡を抑制できる蓄電素子用セパレータ及びその製造方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、薄肉で耐熱性が高く、かつ電気化学的に安定な蓄電素子用セパレータ及びその製造方法を提供することにある。
本発明者は、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、蓄電素子用セパレータを、ミクロ相分離構造を有するセルロース多孔質膜で形成することにより、セルロースで形成されていても、取り扱い性及び生産性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の蓄電素子用セパレータは、ミクロ相分離構造を有するセルロース多孔質膜で形成されている。本発明のセパレータの平均厚みは20μm以下であってもよい。本発明のセパレータの透気度は100秒/100ml以下であってもよい。前記セルロース多孔質膜の平均孔径は0.01〜5μmであり、空孔率は30〜80%であってもよい。前記セルロース多孔質膜の最大孔径は10μm以下であってもよい。前記セルロース多孔質膜のセルロースは平均アシル置換度1以下であってもよい。本発明のセパレータは、セルロースアシレートをミクロ相分離させて多孔質化するミクロ相分離工程、多孔質化したセルロースアシレートを加水分解して脱アシル化する加水分解工程を含む製造方法により得られたセパレータであってもよい。本発明のセパレータは繊維構造を有さない構造であってもよい。
本発明には、セルロースアシレートをミクロ相分離させて多孔質化するミクロ相分離工程、多孔質化したセルロースアシレートを加水分解して脱アシル化する加水分解工程を含む前記セパレータの製造方法も含まれる。前記ミクロ相分離工程において、セルロースアシレートに対する良溶媒及び貧溶媒を用いて乾式相転換法により多孔質化してもよい。
本明細書において、「膜」とは、薄膜、フィルム、シートなどの二次元的構造体を意味する。
本発明では、蓄電素子用セパレータが、ミクロ相分離構造を有するセルロース多孔質膜で形成されているため、セルロースで形成されていても、取り扱い性及び生産性を向上できる。また、孔径が小さく、かつ均一であるため、電池セパレータなどに利用しても、短絡を抑制できる。さらに、薄肉で耐熱性が高く、電気化学的にも安定である。
[蓄電素子用セパレータの製造方法]
本発明の蓄電素子用セパレータは、ミクロ相分離構造を有するセルロース多孔質膜で形成されており、例えば、セルロースアシレートをミクロ相分離させて多孔質化するミクロ相分離工程、多孔質化したセルロースアシレートを加水分解して脱アシル化する加水分解工程を含む製造方法により得られる。
(ミクロ相分離工程)
ミクロ相分離工程は、セルロースアシレートをミクロ相分離させて多孔質化できればよく、セルロースアシレートを含むドープ又は塗布液(溶液又は分散液)の組成変化により相分離したゲル相の凝固により形成される工程であれば特に限定されないが、通常、セルロースアシレートに対する良溶媒及び貧溶媒を用いる相転換法が用いられ、セルロースアシレートの良溶媒溶液を流延又は塗布し、セルロースアシレートに対する貧溶媒に浸漬する湿式相転換法であってもよいが、生産性などの点から、乾式相転換法が好ましい。
乾式相転換法では、セルロースアシレートと、このセルロースアシレートに対する良溶媒と、前記セルロースアシレートに対する貧溶媒とを含む均一なドープを支持体に流延又は塗布し、溶媒を蒸発させてミクロ相分離を生じさせることにより多孔質膜を製造できる。特に、乾式相転換法では、良溶媒よりも沸点の高い溶媒(高沸点溶媒)を貧溶媒として使用する。
原料セルロースアシレートとしては、例えば、セルロースジアセテート(DAC)やセルローストリアセテート(TAC)などのセルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネートやセルロースブチレートなどのセルロースC3−4アシレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)やセルロースアセテートブチレート(CAB)などのセルロースアセテートC3−4アシレート、セルロースアセテートフタレートなどが挙げられる。これらのセルロースアシレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのセルロースアシレートのうち、セルロースアセテート(セルロースジアセテートなど)やセルロースアセテートプロピオネートなどのセルロースC2−4アシレート(特にセルロースC2−3アシレート)が好ましい。
セルロースアシレートの粘度平均重合度は、例えば、50〜800、好ましくは75〜500、さらに好ましくは100〜250(特に100〜200)程度である。粘度平均重合度が小さすぎると多孔質膜の孔径が小さくなり、非多孔質膜となり易く、大きすぎると孔径が大きくなり易い。
セルロースアシレートの粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斎藤秀夫、繊維学会誌、第18巻1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。すなわち、メチレンクロライド/メタノール=9/1(重量比)の混合溶液に精秤したセルロースアシレートを溶解し、所定の濃度c(2.00g/リットル)の溶液を調整する。この溶液をオストワルド粘度計に注入し、25℃で粘度計の刻線間を溶液が通過する時間t(秒)を測定する。一方、前記混合溶剤単独についても同様にして通過する時間(秒)t0を測定し、下記式に従って、粘度平均重合度を算出する。
ηrel=t/t0[η]=(lnηrel)/cDP=[η]/(6×10−4
(式中、tは溶液の通過時間(秒)、t0は溶媒の通過時間(秒)、cは溶液のセルロースエステル濃度(g/L)、ηrelは相対粘度、[η]は極限粘度、DPは平均重合度を示す)。
セルロースアシレートの平均アシル置換度は、1〜3程度の範囲から選択でき、例えば、1〜2.9、好ましくは1.5〜2.7、さらに好ましくは2.2〜2.6程度であってもよい。セルロースアセテートの場合、平均酢化度は、例えば、42〜62.4%、好ましくは43〜60%、さらに好ましくは44〜57%(特に45〜55%)程度である。置換度(酢化度)が小さすぎると溶媒に対する溶解度が低下する。
セルロースアシレートの良溶媒とは、セルロースアシレートに対する溶解性を有するか、又は溶解性の高い溶媒を意味し、例えば、アセトンやメチルエチルケトンなどのC3−5ジアルキルケトン類、酢酸メチルや酢酸エチルなどの酢酸C1−4アルキルエステル類、ジオキサンやジメトキシエタンなどの環状又は鎖状C4−6エーテル類、メチルセロソルブやエチルセロソルブなどのC1−4アルキル−セロソルブ類、メチルセロソルブアセテートやエチルセロソルブアセテートなどのC1−4アルキル−セロソルブアセテート類などが挙げられる。これらの良溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの良溶媒のうち、アセトンなどのC3−5ジアルキルケトン類、メチルセロソルブなどのC1−2アルキル−セロソルブ類が好ましく、C3−4ジアルキルケトン類(特にアセトン)が特に好ましい。
良溶媒の沸点は35〜200℃程度の範囲から選択でき、例えば、35〜150℃、好ましくは40〜130℃、さらに好ましくは45〜100℃程度である。
セルロースアシレートの貧溶媒とは、セルロースアシレートに対する溶解性がないか、又は溶解性の低い溶媒を意味し、例えば、水、エタノールやプロパノールなどのC1−4アルキルアルコール、ギ酸アミルなどのギ酸C5−8アルキルエステル、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ジメチルヘキサノールなどのC1−4アルキル基が置換していてもよいC4−8シクロアルカノール、エチルプロピルケトンやジプロピルケトンなどのC6−10ジアルキルケトン類、ジブチルエーテルやジヘキシルエーテルなどのC7−10ジアルキルエーテル類、安息香酸メチルや安息香酸エチルなどの安息香酸C1−4アルキルエステル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。これらの貧溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの貧溶媒のうち、前記良溶媒との相容性などの点から、水、n−プロパノールやイソプロパノールなどのC2−4アルキルアルコール、シクロヘキサノールなどのC5−7シクロアルカノールが好ましい。良溶媒と貧溶媒との組み合わせの相容性が高いと、セルロースアシレートを含むドープが均一な溶液を形成できる。相容性が低いと、ドープが相分離を起こし、膜の多孔化が困難となる場合がある。
貧溶媒の沸点は、良溶媒よりも高ければよいが、両溶媒の沸点差(貧溶媒の沸点−両溶媒の沸点)は、例えば、10〜200℃、好ましくは20〜180℃、さらに好ましくは25〜150℃(特に30〜120℃)程度である。なお、混合溶媒の場合は、全ての組み合わせについて、このような関係にあるのが好ましい。
貧溶媒の沸点は例えば、50〜300℃程度の範囲から選択でき、例えば、50〜250℃、好ましくは80〜200℃、さらに好ましくは90〜180℃程度である。
セルロースアシレートに対する良溶媒の割合は、セルロースアシレート100重量部に対して、例えば、100〜3000重量部、好ましくは200〜2000重量部、さらに好ましくは300〜1000重量部(特に500〜800重量部)程度である。良溶媒の割合が少なすぎると、ドープの粘度が高くなり、均一な薄膜を形成するのが困難となり、逆に多すぎると、取り扱い性及び生産性が低下する。
良溶媒と貧溶媒との割合(重量比)は、良溶媒/貧溶媒=20/80〜70/30、好ましくは30/70〜60/40、さらに好ましくは30/60〜55/45(特に35/65〜50/50)程度である。良溶媒の割合が少なすぎると、孔径が大きくなり、逆に多すぎると、非多孔質となり易い。
セルロースアシレートの割合は、セルロースアシレートの重合度などに応じて適宜選択でき、例えば、ドープ全体に対して1〜30重量%、好ましくは2〜25重量%、さらに好ましくは3〜10重量%程度である。セルロースアシレートの割合が少なすぎると、製膜性及び生産性が低下し、逆に多すぎると、ドープの粘度が高くなり、均一な薄膜を形成するのが困難となる。
ドープを支持体に流延又は塗布する方法としては、慣用のコーティング法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター法などが汎用される。
ドープの塗布量は、後述するセパレータの厚みに応じて適宜選択でき、例えば、1〜300g/m、好ましくは3〜200g/m、さらに好ましくは5〜100g/m程度である。
支持体は、表面が平滑で、加水分解工程後に容易に剥離可能であればよく、紙、塗工紙、プラスチックフィルム、ガラス板、セラミックス板、金属板などが挙げられる。さらに、支持体はドラム状あってもよい。これらのうち、ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルムなど)などのプラスチックフィルムなどが汎用でき、プラスチックフィルムは離型処理されていてもよい。
ドープは、慣用の添加剤、例えば、無機充填剤、着色剤、安定化剤(酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤など)、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤などを含んでいてもよい。
乾式相転換法では、支持体にドープを塗布した後、塗布されたドープ液を乾燥する乾燥工程に供される。乾燥工程では、沸点の低い良溶媒が優先的に蒸発するが、良溶媒の蒸発の進行に伴い、セルロースアシレートの溶解性は低下し、セルロースアシレートはミセルを形成し貧溶媒相と相分離する。さらに、貧溶媒の蒸発が進むと、ミセル同士が接触して網目構造が形成され、貧溶媒の蒸発の完了により、多孔質膜が形成される。
乾燥温度は、良溶媒の沸点よりも高い温度で乾燥するのが好ましく、例えば、5℃以上(例えば、5〜100℃)、好ましくは10℃以上(例えば、10〜80℃)、さらに好ましくは30℃以上(例えば、30〜50℃)程度高い温度で乾燥するのが好ましい。さらに、乾燥温度は、貧溶媒の沸点に対して、(貧溶媒の沸点+10℃)以下の温度で乾燥するのが好ましく、貧溶媒の沸点以下の温度(例えば、貧溶媒の沸点よりも5〜80℃程度低い温度)で乾燥するのが特に好ましい。乾燥時間は、例えば、2秒〜30分、好ましくは10秒〜20分、さらに好ましくは30秒〜10分程度である。
乾燥処理の前に、均一なミクロ相分離を促進させるために、湿潤下で加湿処理を行ってもよい。加湿処理は、相対湿度50〜100%RH、好ましくは60〜100%RH、さらに好ましくは70〜100%RHの高湿度雰囲気下に放置してもよい。加湿処理における温度は、例えば、10〜50℃、好ましくは20〜40℃、さらに好ましくは25〜35℃程度である。
(加水分解工程)
加水分解工程では、ミクロ相分離により多孔質化したセルロースアシレートを加水分解して脱アシル化する。本発明では、原料のセルロースアシレートを加水分解してセルロースを生成するため、原料としてセルロースを用いた方法に比べて、生産性が高く、かつミクロ相分離により簡便に均一な孔径を有する多孔質膜を調製できる。
詳細には、脱アシル化の方法としては、水の存在下、酸やアルカリなどを用いて加水分解する方法であれば、特に限定されないが、例えば、支持体に積層された多孔質化したセルロースアシレートをアルカリ水溶液中に浸漬する方法が汎用される。
アルカリ水溶液中に含まれる塩基としては、例えば、アルカリ金属化合物[水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウムなど)、有機酸塩(酢酸ナトリウム、酢酸カリウムなどの酢酸塩など)など]、アルカリ土類金属化合物[水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなど)、炭酸塩(炭酸カルシウム、炭酸水素カルシウムなど)、有機酸塩(酢酸マグネシウム、酢酸カルシウムなどの酢酸塩など)など]などが例示できる。これらのうち、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物などが汎用される。水溶液中における塩基の濃度は、例えば、1〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%程度である。
脱アシル化は、加熱下で行ってもよく、例えば、30〜80℃、好ましくは40〜70℃、さらに好ましくは45〜60℃程度の温度で加熱した水溶液中に浸漬してもよい。
脱アシル化した得られたセルロース(セルロース多孔質膜)において、セパレータ(特に電池セパレータ)の特性を損なわない点から、平均アシル置換度は1以下、好ましくは0.5以下(例えば、0.01〜0.5)、さらに好ましくは0.3以下(例えば、0.03〜0.3)程度である。
脱アシル化後のセルロース多孔質膜は、水や低級アルコール(例えば、イソプロパノールなど)などを用いて、洗浄してもよい。洗浄は、複数回繰り返してもよい。洗浄後のセルロース多孔質膜は、溶媒を除去するため、40〜100℃(例えば、50〜90℃)程度の温度で加熱して乾燥してもよい。
本発明の蓄電素子用セパレータは、このようにして得られたセルロース多孔質膜を、支持体から剥離することにより得られる。
[蓄電素子用セパレータ]
本発明の蓄電素子用セパレータは、ミクロ相分離構造を有するセルロース多孔質膜で形成されている。このミクロ相分離構造において、粒子間に形成される細孔の形状は、通常、不定形であり、不規則で非円形である。さらに、本発明のセパレータは、ミクロ相分離構造で多孔質構造が形成されているため、実質的に繊維構造を有さない。
本発明のセパレータの平均厚みは、用途に応じて1〜100μm(例えば、2〜50μm)程度の範囲から選択できるが、電池特性の要求から20μm以下程度に薄肉化するのが好ましく、例えば、1〜20μm、好ましくは1.5〜15μm、さらに好ましくは2〜10μm(特に2.5〜8μm)程度であってもよい。セパレータの厚みが大きすぎると、電池セパレータなどに利用する場合、小型化に対応できず、逆に小さすぎると、セパレータ特性が低下する。
本発明のセパレータの透気度は、用途に応じて選択でき、例えば、JIS P8117に準拠した方法で、500秒/100ml以下に調整することも可能であり、例えば、100秒/100ml以下、好ましくは50秒/100ml以下、さらに好ましくは30秒/100ml以下(例えば、10〜30秒/100ml程度)に調整することも可能である。透気度が大きすぎると、孔径が大きくなり、電池セパレータとして利用した場合、短絡し易くなり、逆に小さすぎると、セパレータ特性が低下する。
セパレータ(セルロース多孔質膜)の平均孔径は、例えば、0.01〜5μm、好ましくは0.03〜4μm、さらに好ましくは0.05〜3μm(特に0.1〜2μm)程度である。平均孔径が大きすぎると、電池セパレータとして利用した場合、短絡し易くなり、逆に小さすぎると、セパレータ特性が低下する。セパレータ(セルロース多孔質膜)の最大孔径は、例えば、10μm以下、好ましくは8μm以下程度である。最大孔径が大きすぎると、電池セパレータとして利用した場合、短絡し易くなる。
セパレータ(セルロース多孔質膜)の空孔率は、例えば、10〜90%、好ましくは15〜85%、さらに好ましくは30〜80%程度である。空孔率が大きすぎると、電池セパレータとして利用した場合、短絡し易くなり、逆に小さすぎると、セパレータ特性が低下する。
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で得られたセパレータの評価は以下の方法で測定した。
[平均アシル化度]
酢酸セルロースの場合、滴定法(0.2モル/リットルNaOH)により、以下の式に基づいて、酢化度(%)(試料中の酢酸分の割合)を測定し、置換度に換算した。なお、セルロースアセテートプロピオネートも酢化度の測定方法に準じて測定した。
酢化度=[(A−B)×F×1000×60.05]/(試料重量)×100
(式中、A:試料の0.2モル/リットルの滴定ml数、B:ブランクテストの0.2モル/リットルNaOHの滴定ml数、F:0.2モル/リットルNaOHのファクターを示す)
置換度=酢化度×162.14/(6005.2−酢化度×42.037)。
[セパレータの平均厚み]
JIS L1085に準拠し、厚み測定器((株)尾崎製作所製「FFA−12」、測定子16mmφ)を用いて、セパレータの任意の箇所10点を測定し、その平均値を求めた。
[平均孔径、最大孔径]
孔径5000倍の走査型電子顕微鏡(SEM)写真の任意の位置に10本線を引き、線と交差する孔の数と径を測定し、算出した。
[空孔率]
厚み及び坪量に基づいて、空孔率を算出した。
[透気度]
JIS P8117に準拠して、ガーレー法で空気100mlが透気する時間を測定した。
[ピンホールの有無]
セパレータにおけるピンホールの有無を目視観察で評価し、以下の基準で評価した。
○:ピンホール無し
×:ピンホール有り。
[200℃での寸法変化]
50mm角に切り出したセパレータを、ステンレスの板上に載せ、ラバーヒーター上で200℃まで加熱した。このときの縦横の寸法変化を目視で観察した。
[電解液への溶出]
電解液(1M−LiPF、エチレンカーボネート/ジエチレンカーボネート=50/50(重量比))の溶媒にセパレータを浸し、目視観察し、以下の基準で評価した。
○:セパレータが溶出しなかった
×:セパレータが溶出した。
実施例1
酢酸セルロース(CA、(株)ダイセル製「LM−80」、平均酢化度52%)7重量部、アセトン(沸点約56℃)43重量部、シクロヘキサノール(沸点161℃)50重量部を混合し、ドープを作製した。支持体として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、帝人デュポンフィルム(株)製「テトロンG2」、50μm)上にバーコーター♯40で前記ドープを塗布し、90℃の乾燥機で5分間乾燥した。
得られた酢酸セルロース多孔質膜を支持体ごと50℃に加熱した5重量%水酸化ナトリウム溶液に5分間浸漬し、加水分解により脱アセチルを行った。その後、水で2回、イソプロパノールで1回洗浄を行い、80℃で1時間乾燥した後、支持体から剥離して、セルロース多孔質膜を得た。セルロース多孔質膜の平均アセチル化度は0.05%であった。
得られたセルロース多孔質膜は、平均厚み6μm、平均孔径0.43μm、最大孔径3.0μm、透気度22秒/100mlであった。さらに、ピンホール及び200℃での寸法変化、電解液への溶出はなかった。
実施例2
酢酸セルロース(LM−80)5重量部、アセトン35重量部、水24重量部、イソプロパノール(沸点82.4℃)36重量部を混合し、ドープを作製する以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質膜を製造した。セルロース多孔質膜の平均アセチル化度は0.04%であった。
得られたセルロース多孔質膜は、平均厚み3μm、平均孔径0.22μm、最大孔径2.1μm、透気度18秒/100mlであった。さらに、ピンホール及び200℃での寸法変化、電解液への溶出はなかった。
実施例3
セルロースアセテートプロピオネート(CAP、イーストマン社製「CAP」)6重量部、アセトン34重量部、1−プロパノール(沸点97.15℃)40重量部、水20重量部を混合し、ドープを作製した。支持体として、PETフィルム(テトロンG2)上にバーコーター♯40で前記ドープを塗布し、30℃、70%RH下で1分間放置し、次いで90℃の乾燥機で5分間乾燥した。その後は、実施例1と同様にして、加水分解を行い、セルロース多孔質膜を製造した。セルロース多孔質膜の平均アシル化度は0.08%であった。
得られたセルロース多孔質膜は、平均厚み4μm、平均孔径0.38μm、最大孔径1.8μm、透気度13秒/100mlであった。さらに、ピンホール及び200℃での寸法変化、電解液への溶出はなかった。
実施例4
バーコーターの代わりに、支持体とのクリアランスを300μmとしてドクタープレートで塗布する以外は実施例1と同様にしてセルロース多孔質膜を製造した。
得られたセルロース多孔質膜は、平均厚み28μm、平均孔径0.77μm、最大孔径2.7μm、透気度310秒/100mlであった。さらに、ピンホール及び200℃での寸法変化、電解液への溶出はなかった。
比較例1
実施例1の酢酸セルロース多孔質膜を、脱アセチル化せずに、電解液の溶媒に浸したところ、酢酸セルロース多孔質膜が電解液に溶出した。
比較例2
市販のポリエチレン単層タイプのセパレータでは200℃まで加熱すると、収縮してセパレータとして使用できなかった。
実施例及び比較例で得られたセパレータの評価結果を表1に示す。
Figure 2013185033
本発明の蓄電素子用セパレータは、電池(リチウム電池、リチウム二次電池、燃料電池、アルカリ二次電池、ニッケル水素二次電池、ニッケル−カドミウム電池、鉛蓄電池など)、コンデンサ、キャパシタなどの蓄電素子のセパレータ、特に、電気自動車(EV)の駆動源や定置用蓄電システムなどに利用されるリチウム二次電池のセパレータに有用である。

Claims (10)

  1. ミクロ相分離構造を有するセルロース多孔質膜で形成された蓄電素子用セパレータ。
  2. 平均厚みが20μm以下である請求項1記載のセパレータ。
  3. 透気度が100秒/100ml以下である請求項1又は2記載のセパレータ。
  4. セルロース多孔質膜の平均孔径が0.01〜5μmであり、空孔率が30〜80%である請求項1〜3のいずれかに記載のセパレータ。
  5. セルロース多孔質膜の最大孔径が10μm以下である請求項1〜4のいずれかに記載のセパレータ。
  6. セルロース多孔質膜のセルロースが平均アシル置換度1以下である請求項1〜5のいずれかに記載のセパレータ。
  7. セルロースアシレートをミクロ相分離させて多孔質化するミクロ相分離工程、多孔質化したセルロースアシレートを加水分解して脱アシル化する加水分解工程を含む製造方法により得られた請求項1〜6のいずれかに記載のセパレータ。
  8. 繊維構造を有していない請求項1〜7のいずれかに記載のセパレータ。
  9. セルロースアシレートをミクロ相分離させて多孔質化するミクロ相分離工程、多孔質化したセルロースアシレートを加水分解して脱アシル化する加水分解工程を含む請求項1〜8のいずれかに記載のセパレータの製造方法。
  10. ミクロ相分離工程において、セルロースアシレートに対する良溶媒及び貧溶媒を用いて乾式相転換法により多孔質化する請求項9記載の製造方法。
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