JP2013178230A - 物理量計測装置及び物理量計測方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の物理量計測装置20は、物理量信号出力装置21から出力される物理量に基づく信号から物理量を計測するものである。補正信号出力部33は、ある測定時刻に得られた物理量に基づく信号と、測定時刻よりも前に得られた補正信号と、フィルタ係数とに基づいて新たな補正信号とを出力する。大小関係判定部31は、物理量に基づく信号と測定時刻よりも前に得られた補正信号の大小関係を判定する。第1フィルタ係数出力部32は、複数の前記大小関係に基づいて第1フィルタ係数を出力する。
【選択図】図2
Description
このような構成により、目的信号を歪ませたり、背景雑音に対して適応してしまうことなく、確実な適応動作を可能とした適応フィルタを用いた信号処理装置を実現することができるというものである。
さらに、特許文献3のものでは、地磁気強度が小さい場合には、雑音抑圧のために平滑化強度を強い値を選ぶことになり、急峻な信号変化の場合にフィルタの応答性の低下が顕在化するという問題がある。また、磁気センサの向く方向がゆっくりとした連続した変化をする場合、すなわち、直前に得た方位情報と現在の方位情報の差が小さい状況が連続的に発現する場合に、方位情報が変化していないと判定されて平滑化強度が強い値に固定されてしまい、方位の追従性の劣化をまねき、結果として方位角の誤差が観測されてしまうという問題がある。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、応答性が良く、かつ、物理量信号出力装置から出力される信号に含まれるノイズ成分を効率的に除去して高精度な物理量計測が可能な物理量計測装置及び物理量計測方法を提供することにある。
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、物理量信号出力装置(21,41,61)から出力される物理量に基づく信号から物理量を演算する物理量演算装置(22,42,62)を備えた物理量計測装置(20,40,60)において、前記物理量演算装置(62)が、前記物理量信号出力装置(61)が検出する物理量の変動状態を推定する変動状態推定部(71a)と、該変動状態推定部(71a)により推定された変動状態に基づいてフィルタ係数を決定し、該フィルタ係数を出力するフィルタ係数出力部(71b)と、該フィルタ係数出力部(71b)により出力されたフィルタ係数と前記物理量信号出力装置(61)から出力される出力値とに基づいて、該出力値の補正値を出力する補正信号出力部(73)とを備えたことを特徴とする。(図9)
前記物理量に基づく信号と前記補正信号の差分値、または、互いに異なる補正信号の差分値が相対的に小さい場合は、前記補正信号が前記新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第2フィルタ係数として出力することを特徴とする。
Snew=a×Sin+(1−a)×Sold ・・・(1)
a=max(a1,a2) ・・・(2)
(Snew:新たな補正信号、Sin:物理量に基づく信号、Sold:補正信号、a:フィルタ係数選択部により選択された係数、a1:第1フィルタ係数、a2:第2フィルタ係数)の前記(1)式で表される関係式によって新たな補正信号を出力し、前記フィルタ係数選択部は、前記式(2)で表される関係式によって前記フィルタ係数を選択することを特徴とする。
また、請求項13に記載の発明は、物理量信号出力装置から出力される物理量に基づく信号から物理量を計測する物理量計測方法において、物理量に基づく信号を検出部により検出する検出ステップと、該検出するステップにより検出された物理量の変動状態を変動状態推定部により推定する変動状態推定ステップと、該変動状態推定ステップにより推定された変動状態に基づいてフィルタ係数を決定し、該フィルタ係数をフィルタ係数出力部により出力するフィルタ係数出力ステップと、該フィルタ係数出力ステップにより出力されたフィルタ係数と前記検出部から出力される出力値とに基づいて、該出力値の補正値を補正信号出力部により出力する補正信号出力ステップとを有することを特徴とする。
Snew=a×Sin+(1−a)×Sold ・・・(3)
a=max(a1,a2) ・・・(4)
(Snew:新たな補正信号、Sin:物理量に基づく信号、Sold:補正信号、a:フィルタ係数選択部により選択された係数、a1:第1フィルタ係数、a2:第2フィルタ係数)の前記式(3)で表される関係式によって新たな補正信号を出力し、前記フィルタ係数選択部は、前記式(4)で表される関係式によって前記フィルタ係数を選択するステップであることを特徴とする。
また、請求項25に記載の発明は、請求項13乃至24のいずれかに記載の発明において、物理量に基づく信号を出力する物理量信号を用いて、コンピュータにより請求項13乃至24のいずれかに記載の各演算ステップを実行させるためのプログラムである。
また、請求項26に記載の発明は、請求項25に記載の各演算ステップを実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
物理量信号出力装置21は、目的となる物理量を計測するために必要な物理量に基づく信号(以下、物理量信号という)を出力することが可能な物理量計測素子を有していれば特に制限されない。
物理量信号は、物理量計測素子から得られる信号そのものであってもよいし、物理量計測素子から得られる信号を感度補正演算、オフセット補正演算、符号反転演算等の演算処理をしたものであってもよいし、物理量計測素子から得られる信号または演算処理された信号をA/D変換した信号であってもよい。
複数の物理量計測素子を用いる場合、大小関係判定部と第1フィルタ係数出力部と補正信号出力部は、物理量計測素子の個数に応じてそれぞれが備わっているようにしてもよいし、個数に依らず1つずつ備わっているようにしてもよい。また、図4に基づいて後述する差分値算出部と第2フィルタ係数出力部とフィルタ係数選択部についても、物理量計測素子の個数に応じてそれぞれが備わっているようにしてもよいし、個数に依らず1つずつ備わっているようにしてもよい。
補正信号出力部33は、ある測定時刻に得られた物理量信号Sinと測定時刻よりも前に得られた補正信号Soldと、フィルタ係数aが入力され、新たな補正信号Snewを出力する。
Snew=a×Sin+(1−a)×Sold ・・・(1)
(Snew:新たな補正信号、Sin:ある測定時刻に得られた物理量信号、測定時刻よりも前に得られたSold:補正信号、a:フィルタ係数(0〜1の値))
ここで、2つの信号の大小関係とは、2つの信号のどちらが大きいか(どちらが小さいか)に関する情報である。測定時刻よりも前に得られた補正信号は、大小関係判定対象となる物理量信号が出力されるよりも前に得られた出力された補正信号であればよい。例えば、物理量信号が物理量演算装置に周期的に入力される場合は、一つ以上前の周期に出力された補正信号であればよい。
よって、例えば、上述した式(1)によって新たな補正信号を導出する例の場合、大小関係の差が大きい時はフィルタ係数を大きくして物理量信号の寄与度を大きくし、大小関係の差が小さい時はフィルタ係数を小さくして物理量信号の寄与度を小さくすることで、ノイズの影響が大きい時にはノイズの影響を除去することが可能になる。
上述した実施例1では、図2に記載の構成の物理量演算装置に、物理量信号として、(1)一定値状の物理量信号(一定値+ノイズ)、(2)正弦波状の物理量信号(正弦波+ノイズ)、(3)方形波状の物理量信号(方形波+ノイズ)、のそれぞれを入力した。それぞれの入力に対する補正信号を図6(a)乃至(c)に示す。
(2)正弦波状の物理量信号に対する補正信号は、ノイズ成分がキャンセルされ、かつ、入力信号に対して遅延を生じていない。
(3)方形波状の物理量信号に対する補正信号は、信号が急激に変化する領域において多少の遅延が生じている。
第2フィルタ係数出力部55は、ある測定時刻に得られた物理量に基づく信号と、測定時刻の直前に得られた補正信号の差分値及びある測定時刻に得られた物理量に基づく信号と、測定時刻の2つ前の時刻に得られた補正信号との差分値に基づいて第2フィルタ係数a2を出力する。また、第2フィルタ係数出力部55は、物理量に基づく信号と補正信号の差分値又は互いに異なる補正信号の差分値が相対的に大きい場合は、物理量に基づく信号が前記新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第2フィルタ係数として出力し、物理量に基づく信号と補正信号の差分値又は互いに異なる補正信号の差分値が相対的に小さい場合は、補正信号が新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第2フィルタ係数として出力する。
デジタル信号に基づいて第2フィルタ係数を決定するためには、所望の入出力特性に応じたテーブルを有していれば実現可能である。また、第2フィルタ係数を差分値の関数として演算するように回路を構成することでも実現可能である。
(a:フィルタ係数、a1:第1フィルタ係数、a2:第2フィルタ係数)
上述した実施例2では、図4に示した物理量演算装置に、上述した実施例1と同様の3種の物理量信号のそれぞれを入力した。それぞれの入力に対する補正信号を図7(a)乃至(c)に示す。
(2)正弦波状の物理量信号に対する補正信号は、ノイズ成分がキャンセルされ、かつ、入力信号に対して遅延を生じていない。
(3)方形波状の物理量信号に対する補正信号は、ノイズ成分はキャンセルされ、かつ、信号が急激に変化する領域においても遅延を生じていない。
図8(a)乃至(c)は、比較例における出力信号を示す図である。図8(a)乃至(c)に示す比較例では、図1に示した従来の物理量演算装置に、上述した実施例1と同様の3種の物理量信号のそれぞれを入力した。それぞれの入力に対する出力信号を図8(a)乃至(c)に示す。
(2)正弦波状の物理量信号に対する補正信号は、ノイズ成分はキャンセルされているが、入力信号に対してやや遅延が生じている。
(3)方形波状の物理量信号に対する補正信号は、信号が急激に変化する領域において多少の遅延が生じている。
本発明の物理量計測装置は、目的となる物理量を計測するために必要な物理量信号を出力する物理量計測素子を有する物理量信号出力装置と、上述した各物理量演算装置とを備えたものである。
つまり、本発明に係る物理量計測装置60は、検出部61と物理量演算装置62と制御部63とを備え、物理量演算装置62は、変動状態推定部71aとフィルタ係数出力部71bとからなる演算部71と、記憶部72と補正信号出力部73とを備えている。
また、フィルタ係数出力部71bは、第1の変動状態推定部に基づいて第1フィルタ係数を出力する第1フィルタ係数出力部32,52と、第2の変動状態推定部に基づいて第2フィルタ係数を出力する第2フィルタ係数出力部55と、第1及び第2フィルタ係数のいずれか一方を前記フィルタ係数として選択するフィルタ係数選択部56とを有する。
<検出部>
検出部61は、物理量計測素子、すなわち、目的となる物理量を検出し、電気信号に変換する機能を有する。例えば、目的となる物理量が磁気である場合は、ホール素子や磁気抵抗効果素子などが用いられ、目的となる物理量が加速度である場合は、機械式の加速度センサや、静電容量型やピエゾ抵抗型のMEMS(微小電気機械構造素子)の加速度センサ等が用いられる。物理量を検出し電気信号に変換する機能のほかに、増幅する機能、アナログ信号をデジタル信号に変換する機能を含んでいる。また、目的となる物理量の計測次元に応じて複数の物理量検出素子を検出部の構成要素として用いることも可能であり、例えば、3次元磁気センサであれば、互いに異なる3つの軸にそれぞれ感磁特性を有する3つの磁気センサを検出部が有することでもよい。
演算部71は、記憶部72に保存された測定値に対してフィルタ処理を行うものである。フィルタ処理を行うために、演算部71は、さらにフィルタ係数出力部71bとデータ変動状態推定部(単に「変動状態推定部」ともいう)71aを有し、それらの動作は、制御部63によって制御される。
式(1)によれば、新たな補正測定値Snewは、フィルタ係aが大きい、すなわち、1に近いほどSinの影響をより強く受け、フィルタ係数が小さい、すなわち、0に近いほどSoldの影響をより強く受ける。Soldはある測定時刻よりも前に得られた測定値の平均のような意味合いをもち、フィルタ係数aが小さいほど平均する過去の測定値の数が多いことに相当し、平均により熱雑音などの影響が低減されている。したがって、小さなフィルタ係数を設定することで、Sinにノイズが重畳している場合に、Snewに対するSinに重畳されたノイズの寄与を低減する。フィルタ係数は、後述するデータ変動状態推定部が算出するデータ変動状態の情報に基づき設定される。フィルタ係数出力部71bは、記憶部72に保存された複数の測定データから最新の測定データ(Sinに相当)を取り出し、また、記憶部72に保存されている原補正測定値(Soldに相当)を取り出し、上述したフィルタ演算を行う。得られた新たな補正測定値(Snewに相当)は、記憶部72に保存されるとともに、補正信号出力部73に送られて外部に出力される。
測定値が得られる都度、測定値は記憶部72に保存される。測定値は所定の測定回数分だけ保存されるが、その所定の測定回数は固定値もしくは動的な値として制御部63が調整する。データ変動状態推定部71aは、記憶部72に保存された複数回数分の測定データのなかのいくつかの測定データもしくは記憶部72に保存された補正測定値のデータ分布状態からデータの変動に関する情報をある指標に基づき推定し、その結果をフィルタ係数出力部71bに出力する。推定されたデータ分布状態に関する情報に基づき、フィルタ係数出力部71bは、フィルタ係数を設定する。データが大きく変動している場合は、追従性をよくするようなフィルタ係数を設定し、データの変動が小さい場合は、ノイズの寄与を下げるためのフィルタ係数を設定する。ラグフィルタの場合で言えば、追従性をよくするためにはフィルタ係数aを大きく、ノイズの寄与を下げるためにはフィルタ係数aを小さくする。
センサ装置が測定した測定値が、パルス的もしくは矩形波的に急激に変動する場合には、追従性をよくし、かつデータ変化がない場合はノイズの寄与を低減することが望まれる。
判定法Aで変動状態と推定されれば、判定法Bでデータ変動がいかように判定されようとも、判定法Aでデータ変動が大である場合に設定するフィルタ係数を用いればよい。したがって、判定法Aと判定法Bを組み合わせることで、測定値が大きく変動している状態(変動状態)か、ゆっくりと変動している状態(準静止状態)か、それとも変動していない状態か(静止状態)の判断ができることになる。
最新に測定された測定値と最新の補正測定値との差分値
最新に測定された測定値と複数回以前に演算された補正測定値との差分値
判定法Aは、最新の測定値と、時間的に近傍の少数の測定値もしくは補正測定値を比較して、短時間での変動を判定するなどの手法で、急峻な測定値の変化を時間遅れなしに判定するのに適する方法であり、上記に挙げた例以外の方法を適用することも可能である。
次に、判定法Bの例について説明する。
2.判定に用いる複数データの中で、ある時点における複数データの平均値と、最新測定値との差分。
3.判定に用いる複数データの中で、ある時点における複数データの平均値と、ある時点とは異なる時点における複数データの平均値との差分。例えば、判定に用いる複数データの中で時間的に古い複数データの平均値と時間的に新しい複数データの平均値の差分。
また、判定法Bとして複数データの分布状態に基づいてデータ分布判定を行う場合の例としては、以下の様な判定指標を用いることができる。複数データはその取得時間が時間的に近接し、連続的に取得された一群のデータであることが好ましい。
5.判定に用いる複数データの最大値と最小値の差分。
6.判定に用いる複数データの標準偏差または分散。
7.判定に用いる複数データの平均値と各データとの差分の絶対値の総和。
判定法Bは、判定法Aよりも時間的に広い時間幅で、複数個の測定値や補正測定値を用いてその分布状態や時間的変動状態を判定することで、判定法Aでは判断できないゆっくりとした測定値の変化(準静止状態)を判断するのに適する。
上述した判定方法をどのように選択するかは、本発明を適用する態様において、目標とする出力特性や信号の性質、装置の演算性能等から適切なものを選択すればよい。
本発明においては、対象とする装置の制約や実際のデータの変動状態に応じて、変動状態の判定に用いる手法を選択し、それを組み合わせることが効果的である。
ここで、組み合わせる判定法はここで述べた判定法Aや判定法Bの具体例に限らず他の手法でもよいが、追従性を重視した判定法Aと、ゆっくりとした変動を判定するための判定法Bの組み合わせに例示されるように、相互に別の視点で判定する方法や相互に補完できる判定法の組み合わせが望ましい。
図10は、本発明に係る物理量計測装置の実施例3におけるフィルタ係数を2種用いた場合を説明するためのフローチャートを示す図である。新規データが入力されると(ステップS1)、その新規データがデータバッファに追加され(ステップS2)、分布状態を判定し(ステップS3)、静止状態か変動状態かのデータ変動状態を推定し(ステップS4;判定法B)、フィルタ係数の選択を行う(ステップS5)。選択されたフィルタ係数に応じて、フィルタ係数1にて演算し(ステップS6)、あるいはフィルタ係数2にて演算し(ステップS7)、それぞれのフィルタ演算結果を出力する(ステップS8)。また、補正後のデータを用いて分布状態を判定する場合は、フィルタ係数1乃至フィルタ係数2にて演算された結果をデータバッファに追加してもよい(ステップS9)。
判定法Aとしては直近に演算出力された補正値と最新に得られた測定値の差分を用いて変動状態を推定し、判定法Bとしては、直近6回出力された補正値の平均値と最新に得られた測定値との差分を閾値判定する。判定閾値は信号に重畳されているノイズと、想定する応答特性により適宜選択する。
図12(a)乃至(c)は、参考例における補正信号を示す図である。
変動状態の推定には、直近に演算出力された補正値と最新に得られた測定値の差分を用いる。判定閾値は信号に重畳されているノイズと、想定する応答特性により適宜選択する。フィルタ演算としては、上述した式(1)に示したラグフィルタを用い、変動していると推定した場合には、フィルタ係数a=0.5とする。変動していないと推定した場合は、フィルタ係数=1/32を選択した。
図13(a)乃至(c)は、実施例3における補正信号の分布・変動状態をもとにフィルタ係数を選択する方法で補正信号を演算した場合の補正信号出力を示す図である。
先行技術を適用した参考例である図12(a)乃至(c)に対して、本発明を適用した図13(a)乃至(c)では、
(2)正弦波状の物理量信号に対する補正信号は、参考例よりも遅延が少なく、また、波形のノイズの抑圧も良好である。
(3)方形波状の物理量信号に対する補正信号は、ノイズ成分が参考例よりも良好に抑圧され、信号が急激に変化する領域においても遅延を生じていない。
ということがわかる。
フィルタ演算としては、上述した式(1)に示したラグフィルタを用いる。判定法Aにより変動していると推定した場合には、フィルタ係数a=0とし、最新に得られた測定値をそのまま出力する。判定法Aでは変動していないと推定されたが、判定法Bにより変動していると推定した場合は準静止の変動であると判断し、フィルタ係数としては0.5を選ぶ。判定法Bでも変動していないと推定した場合にはフィルタ係数=1/32とした。
このように、複数データの分布や時間的変動などからデータの変動状態を推定し、その結果に基づいて適切なフィルタ係数を設定することで、測定値の追従性と、ノイズの低減を両立することができる。複数データは補正信号算出時点から見て直近の過去に取得されたものを用いることが一般的だが、本発明の応用によっては、補正信号を算出する時点の未来の信号を用いる概念もあり得る。実時間上での測定ではない応用の場合などでは実用的である。
また、フィルタ係数出力ステップが、第1の変動状態推定ステップに基づいて第1フィルタ係数を出力する第1フィルタ係数出力ステップと、第2の変動状態推定ステップに基づいて第2フィルタ係数を出力する第2フィルタ係数出力ステップと、第1及び第2フィルタ係数のいずれか一方をフィルタ係数として選択するフィルタ係数選択ステップとを有する。
また、フィルタ係数選択ステップは、第1フィルタ係数及び第2フィルタ係数のうち、物理量に基づく信号が新たな補正信号に与える寄与度がより大きくなる一方を選択するステップである。
Snew=a×Sin+(1−a)×Sold ・・・(3)
a=max(a1,a2) ・・・(4)
(Snew:新たな補正信号、Sin:物理量に基づく信号、Sold:補正信号、a:フィルタ係数選択部により選択された係数、a1:第1フィルタ係数、a2:第2フィルタ係数)
また、物理量に基づく信号を出力する物理量信号出力ステップと、上述した物理量演算方法のステップとを有する物理量測定方法の可能である。
また、物理量に基づく信号を出力する物理量信号を用いて、コンピュータにより上述した各演算ステップを実行させるためのプログラムも可能である。また、上述した各演算ステップを実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体の可能である。
2 第2の適応フィルタ
11−1,11−2 フィルタ部
12−1,12−2 減算器
14−1 適応モード制御部
15−1,15−2 フィルタ更新演算部
20,40,60 物理量計測装置
21,41,61 物理量信号出力装置(検出部)
22,42,62 物理量演算装置
31,51 大小関係判定部
32,52 第1フィルタ係数出力部
33,53,73 補正信号出力部
54 差分値算出部
55 第2フィルタ係数出力部
56 フィルタ係数選択部
63 制御部
72 記憶部
71 演算部
71a 変動状態推定部
71b フィルタ係数出力部
Claims (26)
- 物理量信号出力装置から出力される物理量に基づく信号から物理量を演算する物理量演算装置を備えた物理量計測装置において、
前記物理量演算装置が、
前記物理量信号出力装置が検出する物理量の変動状態を推定する変動状態推定部と、
該変動状態推定部により推定された変動状態に基づいてフィルタ係数を決定し、該フィルタ係数を出力するフィルタ係数出力部と、
該フィルタ係数出力部により出力されたフィルタ係数と前記物理量信号出力装置から出力される出力値とに基づいて、該出力値の補正値を出力する補正信号出力部と
を備えたことを特徴とする物理量計測装置。 - 前記変動状態推定部が、
複数の測定時刻に得られた物理量の分布状態に基づいて物理量の変動状態を推定する第1の変動状態推定部と、
ある測定時刻に得られた物理量に基づく信号と、該測定時刻に近接する測定時刻に得られた物理量に基づく信号とに基づいて物理量の変動状態を推定する第2の変動状態推定部とを有し、
前記フィルタ係数出力部が、前記第1の変動状態推定部又は前記第2の変動状態推定部により推定された物理量の変動状態に基づいて、フィルタ係数を決定し、該フィルタ係数を出力することを特徴とする請求項1に記載の物理量計測装置。 - 前記第2の変動状態推定部が、物理量の変動量が所定の閾値より小さいかどうかを判定する変動状態判定部を有し、前記第1の変動状態推定部が、前記変動状態判定部からの判定結果に基づき、前記複数の測定時刻に得られた物理量の分布状態に基づいて物理量の変動状態を推定することを特徴とする請求項2に記載の物理量計測装置。
- 前記フィルタ係数出力部が、
前記第1の変動状態推定部に基づいて第1フィルタ係数を出力する第1フィルタ係数出力部と、前記第2の変動状態推定部に基づいて第2フィルタ係数を出力する第2フィルタ係数出力部と、前記第1及び第2フィルタ係数のいずれか一方を前記フィルタ係数として選択するフィルタ係数選択部とを有することを特徴とする請求項2又は3に記載の物理量計測装置。 - 前記補正信号出力部が、ある測定時刻に得られた物理量に基づく信号と、前記測定時刻よりも前に得られた補正信号と、フィルタ係数とに基づいて新たな補正信号とを出力し、
前記変動状態推定部が、前記物理量に基づく信号と前記測定時刻よりも前に得られた補正信号の大小関係を判定する大小関係判定部を備え、
前記フィルタ係数出力部が、複数の前記大小関係に基づいて第1フィルタ係数を出力する第1フィルタ係数出力部を備えていることを特徴とする請求項1に記載の物理量計測装置。 - ある測定時刻に得られた物理量に基づく信号と前記測定時刻よりも前に得られた補正信号の差分値又は互いに異なるタイミングで得られた前記測定時刻よりも前に得られた補正信号の差分値を算出する差分値算出部と、
該差分値算出部により算出された前記差分値に基づいて第2フィルタ係数を出力する第2フィルタ係数出力部と、
前記第1及び第2フィルタ係数のいずれか一方を前記フィルタ係数として選択するフィルタ係数選択部とを更に備えたことを特徴とする請求項5に記載の物理量計測装置。 - 前記第1フィルタ係数出力部が、前記所望サイクル中において、前記物理量に基づく信号と前記補正信号の大小関係が、相対的にいずれか一方の信号に偏っている場合は、前記物理量に基づく信号が前記新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第1フィルタ係数として出力し、
前記物理量に基づく信号と前記補正信号の大小関係に、相対的な偏りがないときは、前記補正信号が前記新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第1フィルタ係数として出力することを特徴とする請求項5又は6に記載の物理量計測装置。 - 前記第2フィルタ係数出力部が、ある測定時刻に得られた前記物理量に基づく信号と、該測定時刻の直前に得られた補正信号の差分値及びある測定時刻に得られた前記物理量に基づく信号と、該測定時刻の2つ前の時刻に得られた補正信号との差分値に基づいて第2フィルタ係数を出力することを特徴とする請求項6又は7に記載の物理量計測装置。
- 前記第2フィルタ係数出力部が、前記物理量に基づく信号と前記補正信号の差分値又は互いに異なる補正信号の差分値が相対的に大きい場合は、前記物理量に基づく信号が前記新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第2フィルタ係数として出力し、
前記物理量に基づく信号と前記補正信号の差分値、または、互いに異なる補正信号の差分値が相対的に小さい場合は、前記補正信号が前記新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第2フィルタ係数として出力することを特徴とする請求項6,7又は8に記載の物理量計測装置。 - 前記フィルタ係数選択部が、第1フィルタ係数及び第2フィルタ係数のうち、前記物理量に基づく信号が前記新たな補正信号に与える寄与度がより大きくなる一方を選択することを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の物理量計測装置。
- 前記補正信号出力部が、
Snew=a×Sin+(1−a)×Sold ・・・(1)
a=max(a1,a2) ・・・(2)
(Snew:新たな補正信号、Sin:物理量に基づく信号、Sold:補正信号、a:フィルタ係数選択部により選択された係数、a1:第1フィルタ係数、a2:第2フィルタ係数)
の前記(1)式で表される関係式によって新たな補正信号を出力し、前記フィルタ係数選択部は、前記式(2)で表される関係式によって前記フィルタ係数を選択することを特徴とする請求項6乃至10のいずれかに記載の物理量計測装置。 - 前記物理量信号出力装置は、目的となる物理量を計測するために必要な物理量信号を出力する物理量計測素子を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の物理量計測装置。
- 物理量信号出力装置から出力される物理量に基づく信号から物理量を計測する物理量計測方法において、
物理量に基づく信号を検出部により検出する検出ステップと、
該検出するステップにより検出された物理量の変動状態を変動状態推定部により推定する変動状態推定ステップと、
該変動状態推定ステップにより推定された変動状態に基づいてフィルタ係数を決定し、該フィルタ係数をフィルタ係数出力部により出力するフィルタ係数出力ステップと、
該フィルタ係数出力ステップにより出力されたフィルタ係数と前記検出部から出力される出力値とに基づいて、該出力値の補正値を補正信号出力部により出力する補正信号出力ステップと
を有することを特徴とする物理量計測方法。 - 前記変動状態推定ステップが、
複数の測定時刻に得られた物理量の分布状態に基づいて物理量の変動状態を推定する第1の変動状態推定ステップと、
ある測定時刻に得られた物理量に基づく信号と、該測定時刻に近接する測定時刻に得られた物理量に基づく信号とに基づいて物理量の変動状態を推定する第2の変動状態推定ステップとを有し、
前記フィルタ係数出力ステップが、前記第1の変動状態推定ステップ又は前記第2の変動状態推定ステップにより推定された物理量の変動状態に基づいて、フィルタ係数を決定し、該フィルタ係数を出力することを特徴とする請求項13に記載の物理量計測方法。 - 前記第2の変動状態推定ステップが、物理量の変動量が所定の閾値より小さいかどうかを判定する変動状態判定ステップを有し、前記第1の変動状態推定ステップが、前記変動状態判定ステップからの判定結果に基づき、前記複数の測定時刻に得られた物理量の分布状態に基づいて物理量の変動状態を推定することを特徴とする請求項14に記載の物理量計測方法。
- 前記フィルタ係数出力ステップが、
前記第1の変動状態推定ステップに基づいて第1フィルタ係数を出力する第1フィルタ係数出力ステップと、前記第2の変動状態推定ステップに基づいて第2フィルタ係数を出力する第2フィルタ係数出力ステップと、前記第1及び第2フィルタ係数のいずれか一方を前記フィルタ係数として選択するフィルタ係数選択ステップとを有することを特徴とする請求項14又は15に記載の物理量計測方法。 - 前記補正信号出力ステップが、ある測定時刻に得られた物理量に基づく信号と、前記測定時刻よりも前に得られた補正信号と、フィルタ係数とに基づいて新たな補正信号を出力し、
前記変動状態推定ステップが、前記物理量に基づく信号と前記測定時刻よりも前に得られた補正信号の大小関係を判定する大小関係判定ステップを有し、
前記フィルタ係数出力ステップが、複数の前記大小関係に基づいて第1フィルタ係数を出力する第1フィルタ係数出力ステップを有することを特徴とする請求項13に記載の物理量計測方法。 - 前記物理量に基づく信号と前記補正信号の大小関係を判定する大小関係判定ステップと、複数の前記大小関係に基づいて第1のフィルタ係数を出力する第1フィルタ係数出力ステップとに加えて、
前記物理量に基づく信号と前記補正信号の差分値又は互いに異なるタイミングで得られた補正信号の差分値を算出する差分値算出ステップと、
前記差分値に基づいて第2フィルタ係数を出力する第2フィルタ係数出力ステップと、
前記第1及び第2フィルタ係数のいずれか一方を前記フィルタ係数として選択するフィルタ係数選択ステップとにより前記フィルタ係数を求めることを特徴とする請求項17に記載の物理量計測方法。 - 前記第1フィルタ係数出力ステップが、
前記所望サイクル中において、前記物理量に基づく信号と前記補正信号の大小関係が、相対的にいずれか一方の信号に偏っている場合は、前記物理量に基づく信号が前記新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第1フィルタ係数として出力し、
前記物理量に基づく信号と前記補正信号の大小関係に、相対的な偏りがないときは、前記補正信号が前記新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第1フィルタ係数として出力するステップであることを特徴とする請求項17又は18に記載の物理量計測方法。 - 前記第2フィルタ係数出力ステップが、
ある測定時刻に得られた前記物理量に基づく信号と、該測定時刻の直前に得られた補正信号の差分値及びある測定時刻に得られた前記物理量に基づく信号と、該測定時刻の2つ前の時刻に得られた補正信号との差分値に基づいて第2フィルタ係数を出力するステップであることを特徴とする請求項18又は19に記載の物理量計測方法。 - 前記第2フィルタ係数出力ステップが、
前記物理量に基づく信号と前記補正信号の差分値又は互いに異なる補正信号の差分値が相対的に大きい場合は、前記物理量に基づく信号が前記新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第2フィルタ係数として出力し、
前記物理量に基づく信号と前記補正信号の差分値又は互いに異なる補正信号の差分値が相対的に小さい場合は、前記補正信号が前記新たな補正信号に与える寄与度を大きくし得る係数を第2フィルタ係数として出力するステップであることを特徴とする請求項18,19又は20に記載の物理量計測方法。 - 前記フィルタ係数選択ステップが、
第1フィルタ係数及び第2フィルタ係数のうち、前記物理量に基づく信号が前記新たな補正信号に与える寄与度がより大きくなる一方を選択するステップであることを特徴とする請求項18乃至21のいずれかに記載の物理量計測方法。 - 前記補正信号出力ステップが、
Snew=a×Sin+(1−a)×Sold ・・・(3)
a=max(a1,a2) ・・・(4)
(Snew:新たな補正信号、Sin:物理量に基づく信号、Sold:補正信号、a:フィルタ係数選択部により選択された係数、a1:第1フィルタ係数、a2:第2フィルタ係数)
の前記式(3)で表される関係式によって新たな補正信号を出力し、前記フィルタ係数選択部は、前記式(4)で表される関係式によって前記フィルタ係数を選択するステップであることを特徴とする請求項18乃至22のいずれかに記載の物理量計測方法。 - 物理量に基づく信号を出力する物理量信号出力ステップが、目的となる物理量を計測するために必要な物理量信号を物理量計測素子により出力することを特徴とする請求項13乃至23のいずれかに記載の物理量計測方法。
- 物理量に基づく信号を出力する物理量信号を用いて、コンピュータにより請求項13乃至24のいずれかに記載の各演算ステップを実行させるためのプログラム。
- 請求項25に記載の各演算ステップを実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
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