JP2013177273A - グラフェン薄膜の製造方法及びグラフェン薄膜 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】単結晶基板の表面にエピタキシャルな金属膜を成膜した基板に、炭素含有分子を含有する原料ガスを供給して化学気相成長(CVD)により、前記エピタキシャルな金属膜の表面にグラフェン薄膜を成長させる工程を含むグラフェン薄膜の製造方法において、
二層グラフェンの核を生成する条件でガス供給を行う第1の原料ガス供給工程と、
生成した前記二層グラフェンの核から二層グラフェンを成長させる条件でガス供給を行う第2の原料ガス供給工程と、
を含むことを特徴とするグラフェン薄膜の製造方法。
【選択図】図3
Description
グラフェンは、電子とホールの非常に高い移動度(10,000-200,000 cm2/Vs)が報告されており、この移動度はシリコンやGaAsなどを上回る。二次元シートであるため、リソグラフィやエッチングなど半導体の作製技術を適用でき、様々な構造体を得ることができる。さらに、透明性に優れ、機械的にも柔軟であることから、フレキシブルトランジスタや透明電極など多様なデバイスへの応用の可能性を有している。
特に二層グラフェンは、垂直電場を印加することによってバンドギャップを0.2〜0.3eV程度開くことができ、半導体応用に有用であることが示されており、バンドギャップをもたない単層グラフェンの膜よりも半導体としての利用の可能性は高いといえる。さらに、二層グラフェンは、シート抵抗を単層のものよりも下げることができ、かつ光透過率も十分に優れていることから、透明電極も期待できる。これらに加え、二層グラフェンのうち一層のみを化学修飾するなど、グラフェンの加工・応用の可能性も広げることができる。
当該製造方法では、エピタキシャルな金属膜の全面にグラフェン薄膜できる。一方で、得られるグラフェン薄膜は、均一な単層グラフェンや、単層から三層以上の多層グラフェンを含む不均一な膜単層がほとんどであり、上記の重要性にもかかわらず二層グラフェンを多く含むグラフェン薄膜を、再現性よく、大面積に確実に合成できるとはいえなかった。さらに、CVD法で合成した多層グラフェンは、積層が乱れた乱層構造を有することが多く、積層様式を制御した合成法が望まれていた。
<1> 単結晶基板の表面にエピタキシャルな金属膜を成膜した基板に、炭素含有分子を含有する原料ガスを供給して化学気相成長(CVD)により、前記エピタキシャルな金属膜の表面にグラフェン薄膜を成長させる工程を含むグラフェン薄膜の製造方法において、
二層グラフェンの核を生成する条件でガス供給を行う第1の原料ガス供給工程と、
生成した前記二層グラフェンの核から二層グラフェンを成長させる条件でガス供給を行う第2の原料ガス供給工程と、
を含むグラフェン薄膜の製造方法。
<2> 単結晶基板の表面にエピタキシャルな金属膜を成膜した基板に、炭素含有分子を含有する原料ガスを供給して化学気相成長(CVD)により、前記エピタキシャルな金属膜の表面にグラフェン薄膜を成長させる工程を含むグラフェン薄膜の製造方法において、
前記エピタキシャルな金属膜が、Cu又はCu合金からなる膜であり、
前記炭素含有分子を含有する原料ガスの炭素換算濃度を、5ppm以上250ppm以下で供給する第1の原料ガス供給工程と、
前記炭素含有分子を含有する原料ガスの炭素換算濃度を、300ppm以上5000ppm以下で供給する第2の原料ガス供給工程と、
を含むグラフェン薄膜の製造方法。
<3> 第1の原料ガス供給工程における前記原料ガスの炭素換算濃度が、20ppm以上150ppm以下であり、
第2の原料ガス供給工程における前記原料ガスの炭素換算濃度が、300ppm以上1000ppm以下である前記<2>記載のグラフェン薄膜の製造方法。
<4> 第1の原料ガス供給工程において、前記原料ガスの炭素換算濃度が、目的とする濃度に到達するまでの時間が、ガス供給開始から3分以内である前記<2>または<3>に記載のグラフェン薄膜の製造方法。
<5> 化学気相成長における雰囲気温度が、1000℃以上1100℃以下である前記<2>から<4>のいずれかに記載のグラフェン薄膜の製造方法。
<6> 前記気体状の炭素含有分子が、メタンである前記<1>から<5>のいずれかに記載のグラフェン薄膜の製造方法。
<7> 単結晶基板がα-Al2O3、MgO、または水晶(SiO2)の単結晶基板である前記<1>から<6>のいずれかに記載のグラフェン薄膜の製造方法。
<8> グラフェン薄膜の合成前に、基板の水素アニールを行う前記<1>から<7>のいずれかに記載のグラフェン薄膜の製造方法。
<9> 化学気相成長における雰囲気圧力が、1Pa以上1MPa以下である前記<1>から<8>のいずれかに記載のグラフェン薄膜の製造方法。
<10> 前記<1>から<9>のいずれかに記載の方法で製造されてなるグラフェン薄膜。
<11> グラフェン薄膜が複数のグラフェンドメインを有し、当該グラフェンドメインの総面積の30%以上が二層グラフェンである前記<10>記載のグラフェン薄膜。
<12> 二層グラフェンのドメインサイズの平均が0.01μm2以上である前記<10>または<11>に記載のグラフェン薄膜。
<13> 二層グラフェンが、単結晶基板に対してエピタキシャルに堆積した金属に対して、さらにエピタキシャルに生成し、AB積層した二層グラフェンである前記<10>から<12>のいずれかに記載のグラフェン薄膜。
製造されたグラフェン薄膜は、二層グラフェンに由来するバンドギャップの開きやシート抵抗の低減などの特性を有し、エレクトロニクス用材料として使用することができる。
二層グラフェンの核を生成する条件でガス供給を行う第1の原料ガス供給工程と、
生成した前記二層グラフェンの核から二層グラフェンを成長させる条件でガス供給を行う第2の原料ガス供給工程と、
を含むグラフェン薄膜の製造方法である。
また、炭素溶解度の高い金属(Co、NiやFeなど)の場合では、単層グラフェンを選択的に生成することすら容易ではなく、通常、層数が不均一の単層―多層グラフェンが生成する。
すなわち、本発明のグラフェン薄膜の製造方法の第1の態様では、炭素含有分子を含有する原料ガスの供給条件を制御して、二層グラフェンの核を生成する条件でガス供給を行う第1の原料ガス供給工程と、生成した前記二層グラフェンの核から二層グラフェンを成長させる条件でガス供給を行う第2の原料ガス供給工程を含む。
このような方法でグラフェン薄膜を行うと、二層グラフェンの核から二層グラフェンが成長し、大面積で、均質な二層グラフェンドメインを含むグラフェン薄膜、さらには結晶方位の向きが揃ったグラフェン薄膜を得ることができる。
なお、二層グラフェンの核を生成する条件のみでガス供給を続けても、二層グラフェンのドメインが発達できないため、十分な面積を持つ二層グラフェンを得ることはできない。
金属膜の金属種としては、Co、Ni、Fe、Cu、Pt、Pd、Ru、Au、Ir、Ti、Al、Ag、Mg、Mn、Cr、Snなどの遷移金属や貴金属が挙げられる。
なお、単結晶基板の表面にエピタキシャルな金属膜を成膜する際には、例えば、単結晶基板の上にスパッタリングを行う。高温でスパッタリングした方が、より高品質な膜が得られる。この高温でのスパッタリングにより、単結晶基板の方位に配向したエピタキシャルな金属膜が得られる。
ここで、「Cuを含む合金」とはCuとCu以外の金属からなる合金であり、「Cu以外の金属」は、上記の金属膜の金属種で例示した金属種が挙げられ、これらを1種類あるいは2種類以上を含んでいてもよい。Cuを含む合金におけるCu以外の金属の割合は、特に制限されないが、通常10質量%以下である。
なお、炭素溶解度の低い金属としては、Cu以外にもIr、Pt、AuやRuなどが挙げられ、これらの金属種あるいはこれらを含む合金も二層グラフェンの製造に好適な金属膜となる。
前記エピタキシャルな金属膜が、Cu又はCu合金からなる膜であり、
前記炭素含有分子を含有する原料ガスの炭素換算濃度を、5ppm以上250ppm以下で供給する第1の原料ガス供給工程と、
前記炭素含有分子を含有する原料ガスの炭素換算濃度を、300ppm以上5000ppm以下で供給する第2の原料ガス供給工程と、
を含むグラフェン薄膜の製造方法である。
これは、上述の本発明の製造方法の第1の態様にて説明したように、第1の原料ガス供給工程において、二層グラフェンの核が生成し、第2の原料ガス供給工程において、生成した二層グラフェンの核から二層グラフェンが成長するためと推測される。
また、第2の原料ガス供給工程における前記原料ガスの炭素換算濃度が低すぎると、十分な面積を有する二層グラフェンドメインを得ることができず、高すぎると三層以上の多層グラフェンが生成しやすくなる。
特にこのような条件でグラフェンの製造を行うと、大面積で、均質な二層グラフェンドメインを含むグラフェン薄膜、特には二層とも下地に対してエピタキシャルに結晶方位の向きを揃えてAB積層したグラフェン薄膜を得ることができる。
また、第2の原料ガス供給工程におけるガスの供給時間は、通常、1〜300分、好ましくは、10〜180分である。
一方で、例えば、炭素含有分子を含有する原料ガスの炭素換算濃度が、徐々に上昇する、10ppm/分のような条件で、グラフェン製造を行うと、二層グラフェンが生成しにくくなるなどの問題が生じる場合があるため、第2の態様において、通常、第1及び第2の原料ガス供給工程のみでグラフェン薄膜の製造が行われる。
サファイアの単結晶基板の種類にはc面(0001)、a面(11-20)、r面(1-102)がある。この中でも、好ましくは、α-Al2O3(サファイア)のc面とMgO(111)である。
スパッタするときの単結晶基板の熱処理温度は、単結晶基板や金属膜の種類にもよるが、20〜800℃が好ましく、より好ましくは200〜500℃である。
その原料ガスを供給条件については、上述の通りである。
炭化水素としては、具体的には、例えば、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブタジエン、ペンタン、ペンテン、シクロペンタジエン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
この中でも、炭素数4以下の炭化水素が好ましく、特に好ましくは炭素数1のメタンである。
このとき、チャンバ内に、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガスや水素ガスと共に供給してもよい。
特に上記の本発明の製造方法の第2の態様では、大気圧又は大気圧近傍が好適な圧力条件であるため、必ずしも減圧系等の装置を必要とせず、安価な設備で二層グラフェンを含むグラフェン薄膜できるというメリットもある。同時に金属の蒸発も抑制しやすい。
特に金属膜に、Cu又はCu合金を使用する場合には、1000〜1150℃が好ましく、より好ましくは1050〜1090℃である。なお、銅の融点は1083℃であるが、これに近い温度で反応させると蒸発も起こるが、平滑な金属面を出しやすく、グラフェンの薄膜を得る点で有利である。
なお、面積の評価は、必要に応じて走査型電子顕微鏡(SEM)による観察や、後述するようにSiO2/Si等の基板に転写した後の光学顕微鏡観察により行うことができる。
このような場合には、単層グラフェン膜全体の面積の30%以上、特には90%以上が、二層グラフェンであることが好ましい。
また、ドメインサイズが1μm2以上、望ましくは100μm2以上の二層グラフェンを有することが好ましい。
本発明の製造方法は、AB積層したエピタキシャル二層グラフェンが、サファイアの基板に対して既知の六員環の方向で生成しやすいという利点がある。
すなわち、ラマン分光法による評価において、単層グラフェンは、2Dバンドの強度がGバンドの強度よりも大きく、二層グラフェンは、2Dバンドの強度がGバンドの強度とほぼ等しく、三層以上の多層グラフェンは、2Dバンドの強度がGバンドの強度よりも小さいことから、それぞれの層数のグラフェンを評価できる。加えて、2Dバンドの半値幅からも層数を見積もることができる。単層グラフェンでは2Dバンドの半値幅は20〜35cm-1であるのに対し、二層グラフェンでは35〜55cm-1であり、多層グラフェンでは40〜70cm-1である。また、ラマンマッピングを行うことで、指定した範囲内での層数の特定や欠陥の有無などを見ることができる。
あるいは、PMMA等の高分子をグラフェン膜の生成した基板表面にスピンコートし、必要に応じて熱で剥離するサーマルテープを高分子の上に貼り付ける。そして高分子で覆われた基板をエッチング溶液に浸漬すると、高分子とグラフェンが(サーマルテープを使用している場合はサーマルテープ/高分子/グラフェンが)、液面に浮遊する。それをピンセット等で回収し、純水、もしくは塩酸に浸した後に純水で数回洗浄し、シリコン基板に移す。ゆっくり乾燥させた後、サーマルテープを用いた場合には加熱して剥がし、基板をアセトンに浸して高分子を溶解させ、基板上にグラフェンだけを残す。この転写方法によれば、PMMA等の高分子(あるいはサーマルテープと高分子)によって、グラフェンの形状を乱すことなく回収でき、洗浄も可能である。最後に、アセトン等の有機溶媒、もしくは加熱処理により高分子を除去させてグラフェンを得ることができる。
下記の実施例において、単結晶基板としてサファイア(α-Al2O3)のc面(0001)を用いた。
これにより、膜厚約500nmのCu膜をエピタキシャル的に堆積させた。スパッタ後のXRDとEBSD測定により、Cu金属膜の薄膜がエピタキシャル的に成長していることが確認された。
CVD法によるグラフェンの合成は、以下の手順で行った。
水平型の管状炉を用い、外径30mm、内径26mmの管状炉に取り付けた石英管の中央部にCu/c面サファイア単結晶基板(10mm×10mm)を設置した。この基板の試料台の端には磁石を組み込み、電気炉の石英管の外から磁石でスライドさせることできる。そのため試料の基板を電気炉の高温部と低温部との間で移動させ、試料の急冷却等を行うことができる。
昇温過程から冷却過程までの温度と使用ガスの標準的な条件を図1に示す。
(I)昇温工程
ロータリーポンプで石英管を真空引き下の後、Ar(780sccm)、H2(20sccm)を流しながら大気圧に戻し、60分かけて1075℃まで昇温した。
(II)アニール工程
次いで、Cu表面の還元やCu膜の結晶化促進のため、ガス流量はそのままにして1075℃において1時間保持した。
(III)原料ガス供給工程
次いで、原料ガス供給工程として、後述するガス供給条件にて、炭素含有分子として、CH4を含む原料ガスを供給した(図1 III)。図2にガス供給条件の典型例を示す。なお、導入するCH4の濃度は堀場製作所製VA-3000で反応中は常にモニタリングした。
(IV)冷却工程
反応終了後、CH4の供給を止め、供給ガスをAr(780sccm)、H2(20sccm)に切り替え、マグネットホルダーを用いて、すばやく基板を加熱ゾーンから取り出して急冷した。その後、すぐに管状炉の電源を切った。基板が室温まで冷えるまで待った後、石英管を開封して、基板を管状炉から取り出した。
合成したグラフェンの詳細な評価を行うために、単結晶基板上に形成したグラフェン薄膜をSiO2/Si基板(SiO2層の厚さは300nm)上に転写した。グラフェン薄膜をSiO2/Si基板上に転写することで、光学顕微鏡によりグラフェンの層数の違いによるコントラストを容易に観察することができ、ラマン分光においてもグラフェンから得られるピークが強くなり正確な評価が可能となる。
グラフェンの評価は「3.転写」によりグラフェンをc面サファイア上からSiO2/Si基板上に転写してから行った。
(1)光学顕微鏡観察
グラフェンの観察のために光学顕微鏡(ニコン ECLIPSE ME600)を用いた。
SiO2/Si基板上に転写後のグラフェンの観察を行うことで、そのコントラストの違いからグラフェンの層数を評価できる。
(2)ラマン分光法による評価
グラフェンの層数を評価するためにラマン分光装置(東京インスツルメンツ Nanofinder30)を用いた。
ラマン分光装置によりグラフェンを測定すると、アモルファス由来のDバンド、グラファイト構造由来のGバンド(1580-1590cm-1付近)、グラフェン由来の2Dバンド(2675-2715cm-1付近)を得ることができ、これらを用いてグラフェンの層数を評価することが可能である。
得られたピークにおいて、IG(Gバンド強度)<I2D(2Dバンド強度)であれば単層グラフェン、IG≒I2Dであれば二層グラフェン、IG>I2Dであれば三層以上のグラフェンであると判断することができる。また、どの程度の領域を単層、二層、多層グラフェンが占めているかを調べるためにラマン分光装置のマッピング機能を用いて測定も行った。
上記「2.グラフェンの合成」において、(III)原料ガス供給工程をガス供給条件(1)(図2参照)として、製造例1のグラフェン薄膜を得た。
[ガス供給条件(1)]
Arガスで2010ppmに希釈されたCH4ボンベを用いた。(II)アニール工程後、H2を20sccmに保ったまま、Arを740sccm流し、希釈CH4ガスを40sccm加えた。これによりCH4濃度を120ppmに維持した(第1の原料ガス供給工程)。なおこの際、120ppmのCH4濃度に到達するまでの時間は2分以内となるようにした。
10分後、Arガスを580sccmまで減らし、希釈CH4ガスを200sccmまで増やした。これにより管内を流れるCH4ガスの濃度を500ppmまで上げた。そのままの状態で90分保持した(第2の原料ガス供給工程)。
第1の原料ガス供給工程の10分間をメタン濃度120ppmを維持し、その後、第2の原料ガス供給工程の90分をメタン濃度530ppmとする、という条件を採用することにより、複数の均一な二層グラフェンドメインを有するグラフェン薄膜を合成することができた。
上記「2.グラフェンの合成」において、(III)原料ガス供給工程をガス供給条件(2)(図2参照)として、製造例2のグラフェン薄膜を得た。
[ガス供給条件(2)]
Arガスで2010ppmに希釈されたCH4ボンベを用いた。(II)アニール工程後、H2を20sccmに保ったまま、Arを580sccmに減らし、同時に希釈CH4ガスを200sccm流した。CH4導入時間は、100分とした。
なお、条件(2)では、初期CH4濃度の立ち上がりを早くするため、希釈CH4ガスを流す量を多くしており、2分以内に反応系内を所定のCH4濃度(CH4 500ppm)に上げることができる。
製造例1と同様に金属表面全面に広がった単層グラフェンが観察されると同時に、十分なサイズの二層グラフェンも見られた。しかし、同時に大きなサイズの多層グラフェンも共存していた。このように良好な二層グラフェンは得られなかった。
上記「2.グラフェンの合成」において、(III)原料ガス供給工程をガス供給条件(3)(図2参照)として、製造例3のグラフェン薄膜を得た。
[ガス供給条件(3)]
(II)アニール工程後、Ar(780sccm)とH2(20sccm)を流したまま、高純度CH4ボンベ(純度99.999%)を用いCH4ガスを0.4sccm加えた。この場合、CH4の流速が遅いため、ゆっくりとメタン濃度が上昇し、およそ15〜20分で所定の濃度(CH4 500ppm)に達する。CH4導入時間は、100分とした。
上記「2.グラフェンの合成」において、(III)原料ガス供給工程をガス供給条件(4)として、製造例4のグラフェン薄膜を得た。
[ガス供給条件(4)]
(II)アニール工程後、Ar(780sccm)とH2(20sccm)を流したまま、高純度CH4ボンベ(純度99.999%)を用いCH4ガスを1.6sccm加えた。この場合、CH4の流速が遅いため、ゆっくりとメタン濃度が上昇し、およそ15〜20分で所定の濃度(CH42000ppm)に達する。CH4導入時間は、100分とした。
金属表面全面に広がった単層グラフェンが観察された。二層グラフェンは10%未満であり、製造例3のCH4500ppmの条件と二層グラフェンの割合に大きな違いは見られなかった。製造例3と同様に、メタン濃度が2000ppmに達するまでに、5〜10分程度要するため、二層グラフェンの成長に必要な二層グラフェンの核生成が起こらなかったためと考えられる。図6には単層グラフェンが破れて、基板のシリコン表面が露出している。めくれ上がった単層グラフェンがかさなることで、光学顕微鏡のコントラストが強まり、二層グラフェンと同程度のコントラストになっていることが分かる。
第2の原料ガス供給工程における反応時間と、グラフェンドメインのサイズを評価するために、上記<製造例1>において、(III)原料ガス供給工程の第1の原料ガス供給工程のガス供給時間を10分、第2の原料ガス供給工程のガス供給時間を10分とした以外は、ガス供給条件(1)と同様にして、製造例5のグラフェン薄膜を得た。
図7では、二層グラフェンのドメインは数μmとそれほど大きくない。一方、第2の原料ガス供給工程のガス供給時間を90分とした図3は10μm程度の十分な大きさをもった二層グラフェンのドメインが生成している。このことから、第2の原料ガス供給工程の時間に、二層グラフェンのドメインが徐々に成長していることが示唆された。
上記<製造例1>において、(III)原料ガス供給工程の第1の原料ガス供給工程のメタン濃度を230ppm、第2の原料ガス供給工程のメタン濃度を530ppmとした以外は、ガス供給条件(1)と同様にして、製造例6のグラフェン薄膜を得た。
単層グラフェンが金属表面を全面覆って成長している。さらに、10μm程度の十分な大きさをもった二層グラフェンのドメインが生成している。しかし、図3と比べると多層グラフェンの成長も起こっていることがわかる。このことから、第1の原料ガス供給が多すぎた場合には二層とともに三層以上のグラフェンの核生成がおこるため、多層グラフェンが生成しやすくなったと考えられる。
上記<製造例1>において、(III)原料ガス供給工程の第1の原料ガス供給工程のメタン濃度を120ppm、第2の原料ガス供給工程のメタン濃度を2050ppmとした以外は、ガス供給条件(1)と同様にして、製造例7のグラフェン薄膜を得た。
製造例1のグラフェン薄膜と比較して、第2の原料ガス供給工程のメタン濃度を高めた分、グラフェンの生成が進み、三層以上の多層グラフェンのドメインが大きくなった。
第1の原料ガス供給工程の10分間に、120ppmのメタンを供給しただけでは単層グラフェンが全面を覆っていなかったため、二層グラフェンのドメインの巨大化に加えて、多層グラフェンの核形成と巨大化が同時に起こったのではないかと考えられる。
本発明の製造方法にて得られたグラフェン薄膜における二層グラフェンについて、シリコン基板に転写した膜(表面に300nmのシリコン酸化膜を有する基板)のラマン分光法による評価を行った結果を、図10Aに示す。また、2Dバンド部分の拡大図を図10Bに示す。
また、参考のために、CVDで合成して観察された単層、及び多層(三層以上)のグラフェンのラマン分光法による評価を行った結果を、図10Aに併せて示す。Gバンドと2Dバンドの強度比が、層数と対応しているのが知られている。この方法を用いて、光学顕微鏡のコントラストが層数と対応していることが確認できた。
二層グラフェンがAB積層していない場合、2Dバンドはブロードで、一本のローレンツ曲線で近似出来る形状を示すが、AB積層した場合、特徴的な4つのローレンツ型のピークに分離することができる。
図10Bからわかるように、本発明の製造方法にて得られた二層グラフェンの2Dバンドをピーク分離したところ、特徴的な4つのピークに分離でき、AB積層した二層グラフェンであることが明らかになった。
Claims (13)
- 単結晶基板の表面にエピタキシャルな金属膜を成膜した基板に、炭素含有分子を含有する原料ガスを供給して化学気相成長(CVD)により、前記エピタキシャルな金属膜の表面にグラフェン薄膜を成長させる工程を含むグラフェン薄膜の製造方法において、
二層グラフェンの核を生成する条件でガス供給を行う第1の原料ガス供給工程と、
生成した前記二層グラフェンの核から二層グラフェンを成長させる条件でガス供給を行う第2の原料ガス供給工程と、
を含むことを特徴とするグラフェン薄膜の製造方法。 - 単結晶基板の表面にエピタキシャルな金属膜を成膜した基板に、炭素含有分子を含有する原料ガスを供給して化学気相成長(CVD)により、前記エピタキシャルな金属膜の表面にグラフェン薄膜を成長させる工程を含むグラフェン薄膜の製造方法において、
前記エピタキシャルな金属膜が、Cu又はCu合金からなる膜であり、
前記炭素含有分子を含有する原料ガスの炭素換算濃度を、5ppm以上250ppm以下で供給する第1の原料ガス供給工程と、
前記炭素含有分子を含有する原料ガスの炭素換算濃度を、300ppm以上5000ppm以下で供給する第2の原料ガス供給工程と、
を含むことを特徴とするグラフェン薄膜の製造方法。 - 第1の原料ガス供給工程における前記原料ガスの炭素換算濃度が、20ppm以上150ppm以下であり、
第2の原料ガス供給工程における前記原料ガスの炭素換算濃度が、300ppm以上1000ppm以下である請求項2記載のグラフェン薄膜の製造方法。 - 第1の原料ガス供給工程において、前記原料ガスの炭素換算濃度が、目的とする濃度に到達するまでの時間が、ガス供給開始から3分以内である請求項2または3に記載のグラフェン薄膜の製造方法。
- 化学気相成長における雰囲気温度が、1000℃以上1100℃以下である請求項2から4のいずれかに記載のグラフェン薄膜の製造方法。
- 前記気体状の炭素含有分子が、メタンである請求項1から5のいずれかに記載のグラフェン薄膜の製造方法。
- 単結晶基板がα-Al2O3、MgO、または水晶(SiO2)の単結晶基板である請求項1から6のいずれかに記載のグラフェン薄膜の製造方法。
- グラフェン薄膜の合成前に、基板の水素アニールを行う請求項1から7のいずれかに記載のグラフェン薄膜の製造方法。
- 化学気相成長における雰囲気圧力が、1Pa以上1MPa以下である請求項1から8のいずれかに記載のグラフェン薄膜の製造方法。
- 請求項1から9のいずれかに記載の方法で製造されてなることを特徴とするグラフェン薄膜。
- グラフェン薄膜が複数のグラフェンドメインを有し、当該グラフェンドメインの総面積の30%以上が二層グラフェンである請求項10記載のグラフェン薄膜。
- 二層グラフェンのドメインサイズの平均が0.01μm2以上である請求項10または11に記載のグラフェン薄膜。
- 二層グラフェンが、AB積層した二層グラフェンである請求項10から12のいずれかに記載のグラフェン薄膜。
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