以下、図面を参照しながら第1の実施形態に係るX線装置について詳細に説明する。図1は、第1の実施形態に係るX線装置を示す断面図である。
図1に示すように、X線装置は、回転陽極型のX線管装置10、冷却器22、高電圧コネクタ100及び高電圧コネクタ200を備えている。
X線管装置10は、ハウジング20と、ハウジング20内に収納されたX線管30と、ハウジング20の内部に充填され、X線管30とハウジング20との間の空間に充填された冷却液7と、回転駆動装置としてのステータコイル910と、ケーブルアセンブリ60と、ケーブルアセンブリ70と、電気絶縁性部材81と、電気絶縁性部材91とを備えている。
ハウジング20は、分断された2つの分割部20a、20cを有している。分割部20aは、開口端の外縁側に枠部20bを有している。分割部20cは、開口端の外縁側に枠部20dを有している。枠部20dは、枠部20bに対向した側に形成された枠状の溝部が形成されている。
分割部20a、20cは、枠部20b、20dが対向するよう接触され、図示しない締め具により締め付けられている。枠部20b及び枠部20d間の隙間は、上記溝部に設けられた枠状のOリングにより液密にシールされている。上記Oリングは、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
ハウジング20の内面は、冷却液7に接している。ハウジング20には、ゴムベローズ21が設けられ、冷却液7の圧力調整が行われている。ハウジング20は、X線を透過しハウジング20外部に放射するX線放射窓20wを有している。ハウジング20は、開口20o1及び開口20o2を有している。
X線管30は、真空外囲器31を備えている。真空外囲器31は、真空容器32を有している。真空容器32は、例えば、ガラスや、銅、ステンレス、アルミニウム等の非磁性の金属で形成されている。X線放射窓33は、真空容器32に気密に設けられている。ここでは、X線放射窓33は、ベリリウムで形成されている。真空外囲器31の一部は、高電圧絶縁部材40及び高電圧絶縁部材50で形成されている。この実施形態において、高電圧絶縁部材40及び高電圧絶縁部材50は、セラミクスで形成されている。
X線管30は、高電圧供給端子44、高電圧供給端子54、陽極ターゲット35及び陰極36を有している。この実施形態において、高電圧供給端子44及び高電圧供給端子54は、金属端子である。高電圧供給端子44は、高電圧絶縁部材40の外面から真空外囲器31の外側に露出し、陽極ターゲット35に電気的に接続されている。高電圧供給端子54は、高電圧絶縁部材50の外面から真空外囲器31の外側に露出し、陰極36に電気的に接続されている。
陽極ターゲット35は、真空外囲器31内に設けられている。陽極ターゲット35は、円盤状に形成されている。陽極ターゲット35は、この陽極ターゲットの外面の一部に設けられたターゲット層35aを有している。ターゲット層35aは、陰極36から照射される電子が衝突されることによりX線を放出する。陽極ターゲット35は、モリブデンなどの金属で形成されている。ターゲット層35aは、モリブデン、モリブデン合金、タングステン合金等の金属で形成されている。陽極ターゲット35は、管軸を中心に回転可能である。
陰極36は、真空外囲器31内に設けられている。陰極36は、陽極ターゲット35に照射する電子を放出する。陰極36には相対的に負の電圧が印加される。低膨張合金であるKOV部材55は、真空外囲器31内で高電圧供給端子54を覆っている。ここでは、高電圧供給端子54及び高電圧絶縁部材50間、並びにKOV部材55及び高電圧絶縁部材50間は、ろう付けされている。KOV部材55には、陰極支持部材37が取付けられている。陰極36は、陰極支持部材37に取付けられている。
高電圧供給端子54は、陰極支持部材37の内部を通って陰極36に接続されている。高電圧供給端子54は、陰極36に相対的に負の電圧を印加するともに陰極36の図示しないフィラメント(電子放出源)にフィラメント電流を供給するものである。
X線管30は、ロータ920、軸受け930、固定体1及び回転体2を備えている。固定体1は、円柱状に形成され、高電圧絶縁部材40に固定されている。固定体1には、高電圧供給端子44が電気的に接続されている。ここでは、固定体1は、高電圧供給端子44と一体に形成されている。固定体1は回転体2を回転可能に支持する。回転体2は筒状に形成され、固定体1と同軸的に設けられている。回転体2の外面にロータ920が取り付けられている。回転体2には、陽極ターゲット35が取付けられている。軸受け930は、固定体1及び回転体2間に形成されている。回転体2は、陽極ターゲット35とともに回転可能に設けられている。高電圧供給端子44は、固定体1、軸受け930、及び回転体2を介して陽極ターゲット35に相対的に正の電圧を印加する。
ケーブルアセンブリ60は、高電圧ケーブル61と、高電圧コネクタ62と、固定部材67とを有している。高電圧コネクタ62は、電気絶縁部材としての電気絶縁性部材64と、取付リング66と、高電圧供給端子69とを有している。
高電圧ケーブル61は、一端部が高電圧供給端子44に電気的に接続され、他端部がハウジング20内の空間を通って高電圧供給端子69に電気的に接続されている。高電圧供給端子69は、開口20o1を通ってハウジング20の外側に露出している。高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との接続や、高電圧供給端子69と高電圧ケーブル61との接続には、溶接や半田付けなどを利用することができる。
高電圧コネクタ62は、高電圧ケーブル61の他端部に設けられている。取付リング66は、金属などの剛性の高い材料で形成されている。取付リング66の形状は、開口20o1に対応した形状である。取付リング66は、開口20o1に位置している。
なお、開口20o1には、環状の溝部が形成されている。取付リング66及び開口20o1間の隙間は、上記溝部に設けられた環状のOリングによりシールされている。上記Oリングは、取付リング66及び開口20o1間の隙間からハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。上記Oリングは、樹脂やゴムで形成されている。
電気絶縁性部材64は、開口20o1を通ってハウジング20の外側に露出した端面64sを有している。ここでは、端面64sは平面である。なお、高電圧供給端子69は端面64sからハウジング20の外側に突出している。電気絶縁性部材64は、高電圧供給端子69と高電圧ケーブル61との電気的接続部を覆い、冷却液7により冷却される。この実施形態において、電気絶縁性部材64は、電気絶縁性樹脂で形成され、高電圧供給端子69と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くし、取付リング66の内周面に直に接着されている。
より詳しくは、電気絶縁性部材64はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材64を形成する際、予め、高電圧供給端子69及び高電圧ケーブル61を電気的に接続しておく。電気絶縁性部材64の形成がスタートすると、まず、一部が取付リング66で形成された図示しないモールド材槽内部に、高電圧供給端子69と高電圧ケーブル61との電気的接続部、及び高電圧ケーブル61の一部を搬入し、モールド材槽内にモールド材を注入する。その後、注入したモールド材を硬化し、硬化したモールド材を取付リング66とともにモールド材槽から搬出する。これにより、取付リング66が接着された電気絶縁性部材64が形成される。
なお、モールド材を注入する際、真空中での注入が好ましく、図示しない真空槽の内部で行うことが好ましい。真空中でモールド材を注入することにより、モールド材中に残る恐れのある空気等の気泡が残らないようにすることができる。
また、取付リング66は、モールド材槽の一部を形成していなくともよい。この場合、取付リング66は、図示しない接着部材を介して電気絶縁性部材64に間接的に接着されていてもよい。但し、上記接着部材は、取付リング66及び電気絶縁性部材64間を液密にシールするものである。
固定部材67は環状に形成されている。ねじは、固定部材67に形成された貫通孔を通って、取付リング66に形成されたネジ穴に締め付けられている。他のねじは、固定部材67に形成された他の貫通孔を通って、ハウジング20に形成されたネジ穴に締め付けられている。これにより、ハウジング20に対する高電圧コネクタ62の位置を固定することができる。
電気絶縁性部材81は、高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部を覆い、冷却液7に取り囲まれ、冷却液7により直接または間接的に冷却される。
この実施形態において、高電圧供給端子44は、真空外囲器31の外側に、高電圧絶縁部材40の外面から突出して形成されている。電気絶縁性部材81は、電気絶縁性樹脂で形成され、高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くし、高電圧絶縁部材40の外面に直に接着されている。電気絶縁性部材81は、高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部の近傍において、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却される。
より詳しくは、電気絶縁性部材81はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材81を形成する際、予め、高電圧供給端子44及び高電圧ケーブル61を電気的に接続しておく。電気絶縁性部材81の形成がスタートすると、まず、図示しないモールド材槽内部に、高電圧絶縁部材40の外面、高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部、及び高電圧ケーブル61の一部を搬入し、モールド材槽内にモールド材を注入する。その後、注入したモールド材を硬化し、硬化したモールド材をモールド材槽から搬出する。これにより、電気絶縁性部材81が形成される。なお、モールド材を注入する際、真空中での注入が好ましい。
ケーブルアセンブリ70は、高電圧ケーブル71と、高電圧コネクタ72と、固定部材77とを有している。高電圧コネクタ72は、電気絶縁部材としての電気絶縁性部材74と、取付リング76と、高電圧供給端子79とを有している。
高電圧ケーブル71は、一端部が高電圧供給端子54に電気的に接続され、他端部がハウジング20内の空間を通って高電圧供給端子79に電気的に接続されている。高電圧供給端子79は、開口20o2を通ってハウジング20の外側に露出している。高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との接続や、高電圧供給端子79と高電圧ケーブル71との接続には、溶接や半田付けなどを利用することができる。
高電圧コネクタ72は、高電圧ケーブル71の他端部に設けられている。取付リング76は、金属などの剛性の高い材料で形成されている。取付リング76の形状は、開口20o2に対応した形状である。取付リング76は、開口20o2に位置している。
なお、開口20o2には、環状の溝部が形成されている。取付リング76及び開口20o2間の隙間は、上記溝部に設けられた環状のOリングによりシールされている。上記Oリングは、取付リング76及び開口20o2間の隙間からハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。上記Oリングは、樹脂やゴムで形成されている。
電気絶縁性部材74は、開口20o2を通ってハウジング20の外側に露出した端面74sを有している。ここでは、端面74sは平面である。なお、高電圧供給端子79は端面74sからハウジング20の外側に突出している。電気絶縁性部材74は、高電圧供給端子79と高電圧ケーブル71との電気的接続部を覆い、冷却液7により冷却される。この実施形態において、電気絶縁性部材74は、電気絶縁性樹脂で形成され、高電圧供給端子79と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くし、取付リング76の内周面に直に接着されている。
より詳しくは、電気絶縁性部材74はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材74は、電気絶縁性部材64を形成する手法と同一の手法を用いることにより、形成することができる。また、取付リング76は、図示しない接着部材を介して電気絶縁性部材74に間接的に接着されていてもよい。
固定部材77は環状に形成されている。ねじは、固定部材77に形成された貫通孔を通って、取付リング76に形成されたネジ穴に締め付けられている。他のねじは、固定部材77に形成された他の貫通孔を通って、ハウジング20に形成されたネジ穴に締め付けられている。これにより、ハウジング20に対する高電圧コネクタ72の位置を固定することができる。
電気絶縁性部材91は、高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部を覆い、冷却液7に取り囲まれ、冷却液7により直接または間接的に冷却される。
この実施形態において、高電圧供給端子54は、真空外囲器31の外側に、高電圧絶縁部材50の外面から突出して形成されている。電気絶縁性部材91は、電気絶縁性樹脂で形成され、高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くし、高電圧絶縁部材50の外面に直に接着されている。電気絶縁性部材91は、高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部の近傍において、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却される。
より詳しくは、電気絶縁性部材91はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材91は、電気絶縁性部材81を形成する手法と同一の手法を用いることにより、形成することができる。
高電圧コネクタ100は、有底筒状のハウジング101と、ハウジング101内にその先端が挿入されたケーブル102と、ハウジング101内に充填され、ケーブル102の端子を高電圧コネクタ62側に向けて固定する固定部103と、この固定部103と電気絶縁性部材64の端面との間に挿入されたシリコーン樹脂材製のシリコーンプレート104とを備えている。この実施形態において、ケーブル102は高電圧ケーブルである。固定部103は、電気絶縁性樹脂で形成されている。高電圧コネクタ62に対向する固定部103の端面は、平面である。なお、固定部103が電気絶縁性ゴムで形成されている場合には、固定部103は、電気絶縁性部材64の端面に直接密着されていても良い。高電圧コネクタ100は、高電圧供給端子69に高電圧を与えるものである。
高電圧コネクタ100をハウジング20に取り付ける際に、ケーブル102の端子が高電圧供給端子69に接続した状態で、シリコーンプレート104が、それぞれ固定部103の端面と、電気絶縁性部材64の端面とに密着するように押圧する。上記押圧する際、例えば、ねじを、ハウジング101に形成された貫通孔を通して、固定部材67に形成されたネジ穴に締め付ける。
高電圧コネクタ200は、有底筒状のハウジング201と、ハウジング201内にその先端が挿入されたケーブル202と、ハウジング201内に充填され、ケーブル202の端子を高電圧コネクタ72側に向けて固定する固定部203と、この固定部203と電気絶縁性部材74の端面との間に挿入されたシリコーン樹脂材製のシリコーンプレート204とを備えている。この実施形態において、ケーブル202は高電圧ケーブルである。固定部203は、電気絶縁性樹脂で形成されている。高電圧コネクタ72に対向する固定部203の端面は、平面である。なお、固定部203が電気絶縁性ゴムで形成されている場合には、固定部203は、電気絶縁性部材74の端面に直接密着されていても良い。高電圧コネクタ200は、高電圧供給端子79に高電圧を与えるものである。
高電圧コネクタ200をハウジング20に取り付ける際に、ケーブル202の端子が高電圧供給端子79に接続した状態で、シリコーンプレート204が、それぞれ固定部203の端面と、電気絶縁性部材74の端面とに密着するように押圧する。上記押圧する際、例えば、ねじを、ハウジング201に形成された貫通孔を通して、固定部材77に形成されたネジ穴に締め付ける。
ハウジング20には、冷却液7の導入口26及び排出口27が形成されている。ハウジング20の外部には、冷却器22が設けられ、ホースなどの導管を介してハウジング20の導入口26及び排出口27に連結されている。冷却器22は、ハウジング20内の冷却液7を放熱及び循環させるものである。冷却器22は、冷却液循環ポンプ23及び熱交換器24を有している。冷却液循環ポンプ23は、ハウジング20側から取り入れた冷却液7を熱交換器24に吐出し、冷却液7の流れをハウジング20内に作り出す。熱交換器24は、ハウジング20及び冷却液循環ポンプ23間に連結され、冷却液7の熱を外部に放出する。
上記のことから、ハウジング20内に冷却液7の流れる冷却路を形成することができる。冷却液7としては、絶縁油又は水系冷却液を用いることができる。この実施形態において、冷却液7として水系冷却液を用いている。そして、冷却液7により、電気絶縁性部材81、91、高電圧ケーブル61、71などを冷却することができる。
このように構成されたX線管装置10では、ステータコイル910に所定の電流を印加することでロータ920が回転し、陽極ターゲット35が回転する。次に、高電圧コネクタ100、200に所定の高電圧を印加する。
高電圧コネクタ100に印加された高電圧は、高電圧供給端子69、高電圧ケーブル61、高電圧供給端子44、固定体1、軸受け930及び回転体2を介して陽極ターゲット35に供給される。高電圧コネクタ200に印加された高電圧は、高電圧供給端子79、高電圧ケーブル71及び高電圧供給端子54を介して陰極36に供給される。
これにより、陰極36から陽極ターゲット35のターゲット層35aに電子ビームが放射され、陽極ターゲット35からX線が放射され、X線は、X線放射窓33及びX線放射窓20wを透過して外部へ放射される。
上記のように構成された第1の実施形態に係るX線装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、冷却液7と、ケーブルアセンブリ60、70とを備えている。高電圧コネクタ62、72は、X線管30から独立し、X線管30の発生熱の影響が少ないハウジング20に設けられている。
陽極ターゲット35に電気的に接続された高電圧供給端子44は、高電圧絶縁部材40から真空外囲器31の外側に露出している。陰極36に電気的に接続された高電圧供給端子54は、高電圧絶縁部材50から真空外囲器31の外側に露出している。
高電圧ケーブル61は、一端部が高電圧供給端子44に電気的に接続され、他端部がハウジング20内の空間を通って高電圧供給端子69に電気的に接続されている。高電圧ケーブル71は、一端部が高電圧供給端子54に電気的に接続され、他端部がハウジング20内の空間を通って高電圧供給端子79に電気的に接続されている。X線管装置10の管軸に沿った方向において、X線管30と、ハウジング20との間にリセプタクルを設ける構造ではないため、リセプタクルを設ける構造と比べてX線管装置10の小型化を図ることができる。
X線管装置10は、電気絶縁性部材81、91を備えている。電気絶縁性部材81は高電圧絶縁部材40の外面に直に接着され、電気絶縁性部材91は高電圧絶縁部材50の外面に直に接着されている。高電圧絶縁部材40に向けて電気絶縁性部材81に圧力をかける構造や、高電圧絶縁部材50に向けて電気絶縁性部材91に圧力をかける構造ではないため、電気絶縁性部材81や電気絶縁性部材91が熱の影響を受けても良好な絶縁性を保持することができる。X線管装置10は、長期にわたって高い信頼性を得ることができる。
ハウジング20内において、高電圧ケーブル61は、X線管30の外壁付近からハウジング20の内壁付近にわたって冷却液7に浸っているため、陽極ターゲット35から高電圧ケーブル61に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部を覆った電気絶縁性部材81は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却される。このため、陽極ターゲット35から高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
陽極ターゲット35から高電圧ケーブル61の他端部及び高電圧供給端子69に伝達される熱の量を低減できる。高電圧コネクタ62の電気絶縁性部材64の端面64sとシリコーンプレート104との密着性の低下、及びシリコーンプレート104と固定部103の端面との密着性の低下を抑制することができるため、電気絶縁性部材64の端面64sとシリコーンプレート104との密着界面に沿った放電や、シリコーンプレート104と固定部103の端面との密着界面に沿った放電を抑制することができる。高電圧コネクタ62と、高電圧コネクタ100との密着性を維持することができるため、良好な絶縁性を保持することができる。
ハウジング20内において、高電圧ケーブル71は、X線管30の外壁付近からハウジング20の内壁付近にわたって冷却液7に浸っているため、陰極36から高電圧ケーブル71に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部を覆った電気絶縁性部材91は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却される。このため、陰極36から高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
陰極36から高電圧ケーブル71の他端部及び高電圧供給端子79に伝達される熱の量を低減できる。高電圧コネクタ72の電気絶縁性部材74の端面74sとシリコーンプレート204との密着性の低下、及びシリコーンプレート204と固定部203の端面との密着性の低下を抑制することができるため、電気絶縁性部材74の端面74sとシリコーンプレート204との密着界面に沿った放電や、シリコーンプレート204と固定部203の端面との密着界面に沿った放電を抑制することができる。高電圧コネクタ72と、高電圧コネクタ200との密着性を維持することができるため、良好な絶縁性を保持することができる。
電気絶縁性部材81は高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くし、電気絶縁性部材91は高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くしている。これにより、冷却液7として、熱伝達率が高い、水を主成分とする水系冷却液を用いることができる。このため、冷却液7は、陽極ターゲット35から高電圧供給端子44及び高電圧ケーブル61に伝達される熱や、陰極36から高電圧供給端子54及び高電圧ケーブル71に伝達される熱などを最も有効に奪うことができる。また、水系冷却液は、絶縁油に比べて、比熱が大きい(絶縁油の約2倍)ため、冷却液7の温度上昇を低く抑えることができる。
電気絶縁性部材81、91は、セラミクスより安価な樹脂を使用して形成することができる。
樹脂で形成された電気絶縁性部材81、91は高温になるとガスを放出する傾向にあるが、電気絶縁性部材81、91は、真空外囲器31の外側に位置している。セラミクスで形成された高電圧絶縁部材40、50は高温になってもほとんどガスを放出しないため、真空外囲器31の真空度の低下を低減することができる。
上記のことから、小型化を図ることができ、長期にわたって高い信頼性を得ることができるX線管装置10及びX線管装置を備えたX線装置を得ることができる。
次に、第2の実施形態に係るX線装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図2は、第2の実施形態に係るX線装置を示す断面図である。
図2に示すように、X線装置は、回転陽極型のX線管装置10、高電圧コネクタ100及び高電圧コネクタ200を備えている。図示しないが、X線装置は、上記冷却器22も備えている。
高電圧絶縁部材40は、真空外囲器31の外側に開口した穴部41を有している。この実施形態において、穴部41は、管軸に直交した方向に延在している。高電圧供給端子44は、穴部41の底部に位置している。高電圧絶縁部材40は、穴部41を通して高電圧供給端子44を真空外囲器31の外側に露出させている。
高電圧ケーブル61の一端部は、穴部41を通って高電圧供給端子44に電気的に接続されている。この実施形態において、高電圧供給端子44は、奥まって位置し、高電圧供給端子44及び高電圧ケーブル61の接続には、溶接や半田付けなどを利用することは困難なため、例えばスプリングアクションを利用して接続することができる。
電気絶縁性部材81は、電気絶縁性樹脂で形成され、穴部41に充填され、高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くしている。
より詳しくは、電気絶縁性部材81はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材81の形成がスタートすると、まず、穴部41を通して、高電圧供給端子44に高電圧ケーブル61の一端部を押し付けた状態を維持して穴部41にモールド材を注入する。その後、注入したモールド材を硬化することにより、穴部41に電気絶縁性部材81が形成される。
なお、モールド材を注入する際、真空中での注入が好ましい。また、穴部41に空気が残らない方が良好に絶縁性を確保することができるため、モールド材を注入する際、穴部41を全てモールド材で満たした方が好ましい。この実施形態において、モールド材は溢れる程度に穴部41に注入されている。
高電圧絶縁部材50は、真空外囲器31の外側に開口した穴部51を有している。この実施形態において、穴部51は、管軸に直交した方向に延在している。高電圧供給端子54は、穴部51の底部に位置している。高電圧絶縁部材50は、穴部51を通して高電圧供給端子54を真空外囲器31の外側に露出させている。
高電圧ケーブル71の一端部は、穴部51を通って高電圧供給端子54に電気的に接続されている。この実施形態において、高電圧供給端子54は、奥まって位置し、高電圧供給端子54及び高電圧ケーブル71の接続には、溶接や半田付けなどを利用することは困難なため、例えばスプリングアクションを利用して接続することができる。
電気絶縁性部材91は、電気絶縁性樹脂で形成され、穴部51に充填され、高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くしている。
より詳しくは、電気絶縁性部材91はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材91は、電気絶縁性部材81を形成する手法と同一の手法を用いることにより、形成することができる。
上記のように構成された第2の実施形態に係るX線装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、冷却液7と、ケーブルアセンブリ60、70とを備えている。
X線管装置10の管軸に沿った方向において、X線管30と、ハウジング20との間にリセプタクルを設ける構造ではないため、X線管装置10の小型化を図ることができる。
X線管装置10は、電気絶縁性部材81、91を備えている。電気絶縁性部材81はモールド材を穴部41に充填して形成され、電気絶縁性部材91はモールド材を穴部51に充填して形成されている。高電圧絶縁部材40に向けて電気絶縁性部材81に圧力をかける構造や、高電圧絶縁部材50に向けて電気絶縁性部材91に圧力をかける構造ではないため、電気絶縁性部材81や電気絶縁性部材91が熱の影響を受けても良好な絶縁性を保持することができる。X線管装置10は、長期にわたって高い信頼性を得ることができる。
高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部を覆った電気絶縁性部材81は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却され、また高電圧絶縁部材40を介して間接的に冷却される。このため、陽極ターゲット35から高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部を覆った電気絶縁性部材91は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却され、また高電圧絶縁部材50を介して間接的に冷却される。このため、陰極36から高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
電気絶縁性部材81は高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くし、電気絶縁性部材91は高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くしている。
電気絶縁性部材81、91は、セラミクスより安価な樹脂を使用して形成することができる。高電圧コネクタ100、200は、面圧式のコネクタである。
このため、上記第1の実施形態に係るX線装置と同様の効果を得ることができる。
また、上記第1の実施形態に比べ、電気絶縁性部材81、91を形成する際の高電圧ケーブル61、71に加わる熱の悪影響を低減することができる。
上記のことから、小型化を図ることができ、長期にわたって高い信頼性を得ることができるX線管装置10及びX線管装置を備えたX線装置を得ることができる。
ここで、上記第2の実施形態に係るX線装置の変形例について説明する。図3は、上記第2の実施形態に係るX線装置の変形例を示す断面図である。
図3に示すように、高電圧絶縁部材40は、穴部41の他、真空外囲器31の外側に開口した他の穴部42を有している。ここでは、穴部42は、管軸に沿った方向に延在している。高電圧供給端子44は、穴部41及び穴部42の底部に位置している。高電圧絶縁部材40は、穴部41、42を通して高電圧供給端子44を真空外囲器31の外側に露出させている。
高電圧ケーブル61の一端部は、穴部41を通って高電圧供給端子44に電気的に接続されている。高電圧供給端子44は、奥まって位置しているが、高電圧絶縁部材40は、穴部41だけでなく穴部42も有している。このため、穴部42を用いることにより、高電圧供給端子44及び高電圧ケーブル61の接続に、溶接や半田付けなどを利用するが可能となる。
電気絶縁性部材81は、電気絶縁性樹脂で形成され、穴部41、42に充填され、高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くしている。
より詳しくは、電気絶縁性部材81はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材81の形成がスタートすると、まず、穴部41に高電圧ケーブル61の一端部を通し、穴部42を用い、高電圧供給端子44及び高電圧ケーブル61を溶接や半田付けなどを利用して接続する。続いて、穴部41、42にモールド材を注入した後、注入したモールド材を硬化することにより、穴部41、42に電気絶縁性部材81が形成される。
上記のように、高電圧絶縁部材40に穴部42をさらに形成することにより、スプリングアクションを利用すること無しに、溶接や半田付けなどを利用して高電圧供給端子44及び高電圧ケーブル61を接続することができる。
高電圧絶縁部材50は、穴部51の他、真空外囲器31の外側に開口した他の穴部52を有している。ここでは、穴部52は、管軸に沿った方向に延在している。高電圧供給端子54は、穴部51及び穴部52の底部に位置している。高電圧絶縁部材50は、穴部51、52を通して高電圧供給端子54を真空外囲器31の外側に露出させている。
高電圧ケーブル71の一端部は、穴部51を通って高電圧供給端子54に電気的に接続されている。高電圧供給端子54は、奥まって位置しているが、高電圧絶縁部材50は、穴部51だけでなく穴部52も有している。このため、穴部52を用いることにより、高電圧供給端子54及び高電圧ケーブル71の接続に、溶接や半田付けなどを利用するが可能となる。
電気絶縁性部材91は、電気絶縁性樹脂で形成され、穴部51、52に充填され、高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くしている。
より詳しくは、電気絶縁性部材91はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材91の形成がスタートすると、まず、穴部51に高電圧ケーブル71の一端部を通し、穴部52を用い、高電圧供給端子54及び高電圧ケーブル71を溶接や半田付けなどを利用して接続する。続いて、穴部51、52にモールド材を注入した後、注入したモールド材を硬化することにより、穴部51、52に電気絶縁性部材91が形成される。
上記のように、高電圧絶縁部材50に穴部52をさらに形成することにより、スプリングアクションを利用すること無しに、溶接や半田付けなどを利用して高電圧供給端子54及び高電圧ケーブル71を接続することができる。
次に、第3の実施形態に係るX線装置について説明する。この実施形態において、上述した第2の実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図4は、第3の実施形態に係るX線装置を示す断面図である。
図4に示すように、X線装置は、回転陽極型のX線管装置10、高電圧コネクタ100及び高電圧コネクタ200を備えている。図示しないが、X線装置は、上記冷却器22も備えている。
高電圧コネクタ62は、取付リング66及び高電圧供給端子69を有している他、電気絶縁部材としての高電圧絶縁部材65及び電気絶縁性部材64も有している。
高電圧絶縁部材65は、開口20o1を通ってハウジング20の外側に露出した端面65sを有している。ここでは、端面65sは平面である。なお、高電圧供給端子69は端面65sからハウジング20の外側に突出している。
高電圧絶縁部材65は、ハウジング20の内側に開口した穴部68を有している。高電圧供給端子69は、穴部68の底部に位置している。高電圧絶縁部材65は、穴部68を通して高電圧供給端子69をハウジング20の内側に露出させている。高電圧絶縁部材65は、取付リング66の内周面に接着されている。ここでは、高電圧絶縁部材65は、接着部材を介して取付リング66の内周面に間接的に接着されている。
高電圧ケーブル61の他端部は、穴部68を通って高電圧供給端子69に電気的に接続されている。この実施形態において、高電圧供給端子69及び高電圧ケーブル61の接続には溶接や半田付けなどを利用することができ、高電圧供給端子69は高電圧絶縁部材65に取付けられている。
電気絶縁性部材64は、電気絶縁性樹脂で形成され、穴部68に充填され、高電圧供給端子69と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くしている。
より詳しくは、電気絶縁性部材64はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材64の形成がスタートすると、まず、高電圧供給端子69と高電圧ケーブル61との電気的接続部が位置した穴部68に、モールド材を注入する。その後、注入したモールド材を硬化することにより、穴部68に電気絶縁性部材64が形成される。
なお、高電圧コネクタ100は、シリコーンプレート104が、それぞれ固定部103の端面と、高電圧絶縁部材65の端面65sとに密着するように押圧され、ハウジング20に取り付けられる。
高電圧コネクタ72は、取付リング76及び高電圧供給端子79を有している他、電気絶縁部材としての高電圧絶縁部材75及び電気絶縁性部材74も有している。
高電圧絶縁部材75は、開口20o2を通ってハウジング20の外側に露出した端面75sを有している。ここでは、端面75sは平面である。なお、高電圧供給端子79は端面75sからハウジング20の外側に突出している。
高電圧絶縁部材75は、ハウジング20の内側に開口した穴部78を有している。高電圧供給端子79は、穴部78の底部に位置している。高電圧絶縁部材75は、穴部78を通して高電圧供給端子79をハウジング20の内側に露出させている。高電圧絶縁部材75は、取付リング76の内周面に接着されている。ここでは、高電圧絶縁部材75は、接着部材を介して取付リング76の内周面に間接的に接着されている。
高電圧ケーブル71の他端部は、穴部78を通って高電圧供給端子79に電気的に接続されている。この実施形態において、高電圧供給端子79及び高電圧ケーブル71の接続には溶接や半田付けなどを利用することができ、高電圧供給端子79は高電圧絶縁部材75に取付けられている。
電気絶縁性部材74は、電気絶縁性樹脂で形成され、穴部78に充填され、高電圧供給端子79と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くしている。
より詳しくは、電気絶縁性部材74はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材74の形成がスタートすると、まず、高電圧供給端子79と高電圧ケーブル71との電気的接続部が位置した穴部78に、モールド材を注入する。その後、注入したモールド材を硬化することにより、穴部78に電気絶縁性部材74が形成される。
なお、高電圧コネクタ200は、シリコーンプレート204が、それぞれ固定部203の端面と、高電圧絶縁部材75の端面75sとに密着するように押圧され、ハウジング20に取り付けられる。
上記のように構成された第3の実施形態に係るX線装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、冷却液7と、ケーブルアセンブリ60、70とを備えている。X線管装置10は、高電圧コネクタ62、72以外、上記第2の実施形態と同様に形成されている。
X線管装置10の管軸に沿った方向において、X線管30と、ハウジング20との間にリセプタクルを設ける構造ではないため、X線管装置10の小型化を図ることができる。
X線管装置10は、電気絶縁性部材81、91を備えている。高電圧絶縁部材40に向けて電気絶縁性部材81に圧力をかける構造や、高電圧絶縁部材50に向けて電気絶縁性部材91に圧力をかける構造ではないため、電気絶縁性部材81や電気絶縁性部材91が熱の影響を受けても良好な絶縁性を保持することができる。X線管装置10は、長期にわたって高い信頼性を得ることができる。
高電圧供給端子69と高電圧ケーブル61との電気的接続部を覆った電気絶縁性部材64は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却され、また高電圧絶縁部材65を介して間接的に冷却される。このため、陽極ターゲット35から高電圧コネクタ62に熱伝達があっても冷却液7に放熱することができる。
高電圧供給端子79と高電圧ケーブル71との電気的接続部を覆った電気絶縁性部材74は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却され、また高電圧絶縁部材75を介して間接的に冷却される。このため、陰極36から高電圧コネクタ72に熱伝達があっても冷却液7に放熱することができる。
高電圧コネクタ100、200は、面圧式のコネクタである。
このため、上記第2の実施形態に係るX線装置と同様の効果を得ることができる。
電気絶縁性部材64はモールド材を穴部68に充填して形成され、電気絶縁性部材74はモールド材を穴部78に充填して形成されている。上記第1及び第2の実施形態に比べ、電気絶縁性部材64、74を形成する際の高電圧ケーブル61、71に加わる熱の悪影響を低減することができる。
上記のことから、小型化を図ることができ、長期にわたって高い信頼性を得ることができるX線管装置10及びX線管装置を備えたX線装置を得ることができる。
次に、第4の実施形態に係るX線装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図5は、第4の実施形態に係るX線装置を示す断面図である。図6は、図5に示したX線装置の一部を示す分解断面図である。
図5及び図6に示すように、X線装置は、回転陽極型のX線管装置10、高電圧コネクタ100及び高電圧コネクタ200を備えている。図示しないが、X線装置は、上記冷却器22も備えている。
X線管装置10は、接着面82sを有した高電圧絶縁部材82と、高電圧絶縁部材82の接着面82sを高電圧絶縁部材40の外面に接着させる接着部材84と、をさらに備えている。高電圧絶縁部材82は、セラミクスで形成されている。接着部材84は、電気絶縁性及び耐熱性を有する材料として例えばエポキシ系の樹脂で形成されている。
高電圧供給端子44は、第1分割部44aと、第2分割部44bと、を有している。第1分割部44aは、高電圧絶縁部材40から真空外囲器31の外側に露出している。第2分割部44bは、高電圧絶縁部材82に設けられ、高電圧絶縁部材82の内部に位置し、接着面82sから高電圧絶縁部材82の外側に露出し、第1分割部44aに電気的に接続される。この実施形態において、第2分割部44bの側面は、スプリングアクションを利用して第1分割部44aと接触している。
高電圧絶縁部材82は、接着面82sから外れた位置に開口した穴部83を有している。この実施形態において、穴部83は、管軸に直交した方向に延在している。高電圧供給端子44の第2分割部44bは、穴部83の底部に位置している。高電圧絶縁部材82は、穴部83を通して第2分割部44bを真空外囲器31の外側に露出させている。
高電圧ケーブル61の一端部は、穴部83を通って第2分割部44bに電気的に接続されている。この実施形態において、第2分割部44bは、奥まって位置し、第2分割部44b及び高電圧ケーブル61の接続には、溶接や半田付けなどを利用することは困難なため、例えばスプリングアクションを利用して接続することができる。
電気絶縁性部材81は、電気絶縁性樹脂で形成され、穴部83に充填され、第2分割部44bと高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くしている。
より詳しくは、電気絶縁性部材81はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材81の形成がスタートすると、まず、穴部83を通して、第2分割部44bに高電圧ケーブル61の一端部を押し付けた状態を維持して穴部83にモールド材を注入する。その後、注入したモールド材を硬化することにより、穴部83に電気絶縁性部材81が形成される。
電気絶縁性部材81、高電圧絶縁部材82及び第2分割部44bは、ケーブルアセンブリ60の一部を形成している。これにより、ケーブルアセンブリ60を形成した後、接着部材84を用いて高電圧絶縁部材82の接着面82sを高電圧絶縁部材40の外面に接着させることができる。
または、接着部材84を用いて高電圧絶縁部材82の接着面82sを高電圧絶縁部材40の外面にまず接着させ、第1分割部44a及び第2分割部44bを電気的に接続してもよい。この場合、第2分割部44bは、予め第1分割部44aと一体に形成され高電圧絶縁部材40側に設けられていてもよい。次いで、穴部83を通して、第2分割部44bに高電圧ケーブル61の一端部を押し付けた状態を維持して穴部83にモールド材を注入する。その後、注入したモールド材を硬化することにより、穴部83に電気絶縁性部材81が形成される。
X線管装置10は、接着面92sを有した高電圧絶縁部材92と、高電圧絶縁部材92の接着面92sを高電圧絶縁部材50の外面に接着させる接着部材94と、をさらに備えている。高電圧絶縁部材92は、セラミクスで形成されている。接着部材94は、電気絶縁性及び耐熱性を有する材料として例えばエポキシ系の樹脂で形成されている。
高電圧供給端子54は、第1分割部54aと、第2分割部54bと、を有している。第1分割部54aは、高電圧絶縁部材50から真空外囲器31の外側に露出している。第2分割部54bは、高電圧絶縁部材92に設けられ、高電圧絶縁部材92の内部に位置し、接着面92sから高電圧絶縁部材92の外側に露出し、第1分割部54aに電気的に接続される。この実施形態において、第2分割部54bの側面は、スプリングアクションを利用して第1分割部54aと接触している。
高電圧絶縁部材92は、接着面92sから外れた位置に開口した穴部93を有している。この実施形態において、穴部93は、管軸に直交した方向に延在している。高電圧供給端子54の第2分割部54bは、穴部93の底部に位置している。高電圧絶縁部材92は、穴部93を通して第2分割部54bを真空外囲器31の外側に露出させている。
高電圧ケーブル71の一端部は、穴部93を通って第2分割部54bに電気的に接続されている。この実施形態において、第2分割部54bは、奥まって位置し、第2分割部54b及び高電圧ケーブル71の接続には、溶接や半田付けなどを利用することは困難なため、例えばスプリングアクションを利用して接続することができる。
電気絶縁性部材91は、電気絶縁性樹脂で形成され、穴部93に充填され、第2分割部54bと高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くしている。
より詳しくは、電気絶縁性部材91はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材91は、電気絶縁性部材81を形成する手法と同一の手法を用いることにより、形成することができる。
電気絶縁性部材91、高電圧絶縁部材92及び第2分割部54bは、ケーブルアセンブリ70の一部を形成している。これにより、ケーブルアセンブリ70を形成した後、接着部材94を用いて高電圧絶縁部材92の接着面92sを高電圧絶縁部材50の外面に接着させることができる。
または、接着部材94を用いて高電圧絶縁部材92の接着面92sを高電圧絶縁部材50の外面にまず接着させ、第1分割部54a及び第2分割部54bを電気的に接続してもよい。この場合、第2分割部54bは、予め第1分割部54aと一体に形成され高電圧絶縁部材50側に設けられていてもよい。次いで、穴部93を通して、第2分割部54bに高電圧ケーブル71の一端部を押し付けた状態を維持して穴部93にモールド材を注入する。その後、注入したモールド材を硬化することにより、穴部93に電気絶縁性部材91が形成される。
上記のように構成された第4の実施形態に係るX線装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、冷却液7と、ケーブルアセンブリ60、70とを備えている。
X線管装置10の管軸に沿った方向において、X線管30と、ハウジング20との間にリセプタクルを設ける構造ではないため、X線管装置10の小型化を図ることができる。
X線管装置10は、電気絶縁性部材81、91と、高電圧絶縁部材82、92とを備えている。電気絶縁性部材81はモールド材を穴部83に充填して形成され、電気絶縁性部材91はモールド材を穴部93に充填して形成されている。高電圧絶縁部材82に向けて電気絶縁性部材81に圧力をかける構造や、高電圧絶縁部材92に向けて電気絶縁性部材91に圧力をかける構造ではないため、電気絶縁性部材81や電気絶縁性部材91が熱の影響を受けても良好な絶縁性を保持することができる。X線管装置10は、長期にわたって高い信頼性を得ることができる。
高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部を覆った電気絶縁性部材81は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却され、また高電圧絶縁部材82及び高電圧絶縁部材40を介して間接的に冷却される。このため、陽極ターゲット35から高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部を覆った電気絶縁性部材91は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却され、また高電圧絶縁部材92及び高電圧絶縁部材50を介して間接的に冷却される。このため、陰極36から高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
電気絶縁性部材81は第2分割部44b(高電圧供給端子44)と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くし、電気絶縁性部材91は第2分割部54b(高電圧供給端子54)と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くしている。
電気絶縁性部材81、91は、セラミクスより安価な樹脂を使用して形成することができる。高電圧コネクタ100、200は、面圧式のコネクタである。
このため、上記第1の実施形態に係るX線装置と同様の効果を得ることができる。
また、上記第1の実施形態に比べ、電気絶縁性部材81、91を形成する際の高電圧ケーブル61、71に加わる熱の悪影響を低減することができる。
上記のことから、小型化を図ることができ、長期にわたって高い信頼性を得ることができるX線管装置10及びX線管装置を備えたX線装置を得ることができる。
次に、第5の実施形態に係るX線装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図7は、第5の実施形態に係るX線装置を示す断面図である。
図7に示すように、X線装置は、回転陽極型のX線管装置10、高電圧コネクタ100及び高電圧コネクタ200を備えている。図示しないが、X線装置は、上記冷却器22も備えている。
高電圧供給端子44は、第1分割部44aと、第2分割部44bと、を有している。第1分割部44aは、高電圧絶縁部材40から真空外囲器31の外側に露出している。第2分割部44bは、第1分割部44aに電気的に接続される。この実施形態において、第2分割部44bの側面は、スプリングアクションを利用して第1分割部44aと接触している。
電気絶縁性部材81は、電気絶縁性樹脂で形成され、接着面81sを有し、第2分割部44bと高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くし、接着面81sから第2分割部44bを外側に露出させている。
より詳しくは、電気絶縁性部材81はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材81を形成する際、溶接や半田付けなどを利用し、予め、第2分割部44b及び高電圧ケーブル61を電気的に接続しておく。電気絶縁性部材81の形成がスタートすると、まず、図示しないモールド材槽内部に、第2分割部44bと高電圧ケーブル61との電気的接続部、及び高電圧ケーブル61の一部を搬入し、モールド材槽内にモールド材を注入する。その後、注入したモールド材を硬化し、モールド材槽から搬出する。これにより、接着面81sから第2分割部44bを露出させた電気絶縁性部材81が形成される。
X線管装置10は、接着部材84をさらに備えている。接着部材84は、例えばエポキシ系の樹脂で形成され、電気絶縁性部材81の接着面81sを高電圧絶縁部材40の外面に接着させている。
電気絶縁性部材81及び第2分割部44bは、ケーブルアセンブリ60の一部を形成している。これにより、ケーブルアセンブリ60を形成した後、接着部材84を用いて電気絶縁性部材81の接着面81sを高電圧絶縁部材40の外面に接着させることができる。
高電圧供給端子54は、第1分割部54aと、第2分割部54bと、を有している。第1分割部54aは、高電圧絶縁部材50から真空外囲器31の外側に露出している。第2分割部54bは、第1分割部54aに電気的に接続される。この実施形態において、第2分割部54bの側面は、スプリングアクションを利用して第1分割部54aと接触している。
電気絶縁性部材91は、電気絶縁性樹脂で形成され、接着面91sを有し、第2分割部54bと高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くし、接着面91sから第2分割部54bを外側に露出させている。
より詳しくは、電気絶縁性部材91はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材91は、電気絶縁性部材81を形成する手法と同一の手法を用いることにより、形成することができる。
X線管装置10は、接着部材94をさらに備えている。接着部材94は、例えばエポキシ系の樹脂で形成され、電気絶縁性部材91の接着面91sを高電圧絶縁部材50の外面に接着させている。
電気絶縁性部材91及び第2分割部54bは、ケーブルアセンブリ70の一部を形成している。これにより、ケーブルアセンブリ70を形成した後、接着部材94を用いて電気絶縁性部材91の接着面91sを高電圧絶縁部材50の外面に接着させることができる。
上記のように構成された第5の実施形態に係るX線装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、冷却液7と、ケーブルアセンブリ60、70とを備えている。
X線管装置10の管軸に沿った方向において、X線管30と、ハウジング20との間にリセプタクルを設ける構造ではないため、X線管装置10の小型化を図ることができる。
X線管装置10は、電気絶縁性部材81、91を備えている。電気絶縁性部材81は接着部材84を用いて高電圧絶縁部材40に接着され、電気絶縁性部材91は接着部材94を用いて高電圧絶縁部材50に接着されている。高電圧絶縁部材40に向けて電気絶縁性部材81に圧力をかける構造や、高電圧絶縁部材50に向けて電気絶縁性部材91に圧力をかける構造ではないため、電気絶縁性部材81や電気絶縁性部材91が熱の影響を受けても良好な絶縁性を保持することができる。X線管装置10は、長期にわたって高い信頼性を得ることができる。
第2分割部44bと高電圧ケーブル61との電気的接続部を覆った電気絶縁性部材81は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却される。このため、陽極ターゲット35から高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
第2分割部54bと高電圧ケーブル71との電気的接続部を覆った電気絶縁性部材91は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却される。このため、陰極36から高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
電気絶縁性部材81は第2分割部44b(高電圧供給端子44)と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くし、電気絶縁性部材91は第2分割部54b(高電圧供給端子54)と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くしている。
電気絶縁性部材81、91は、セラミクスより安価な樹脂を使用して形成することができる。高電圧コネクタ100、200は、面圧式のコネクタである。
このため、上記第1の実施形態に係るX線装置と同様の効果を得ることができる。
溶接や半田付けなどを利用して第2分割部44b及び高電圧ケーブル61をしっかりと接続した後に、電気絶縁性部材81はモールド成型される。同様に溶接や半田付けなどを利用して第2分割部54b及び高電圧ケーブル71をしっかりと接続した後に、電気絶縁性部材91はモールド成型される。このため、信頼性の高いケーブルアセンブリ60、70を得ることができる。
上記のことから、小型化を図ることができ、長期にわたって高い信頼性を得ることができるX線管装置10及びX線管装置を備えたX線装置を得ることができる。
次に、第6の実施形態に係るX線装置について説明する。この実施形態に係るX線装置は、高電圧絶縁部材82、92を電気絶縁性樹脂を利用して形成した以外、第4の実施形態に係るX線装置と同様に形成されている(図5参照)。より詳しくは、高電圧絶縁部材82、92はモールド材で形成されている。
上記のように構成された第6の実施形態に係るX線装置によれば、上記第4の実施形態に係るX線装置と同様の効果を得ることができる。
高電圧絶縁部材82、92は、セラミクスより安価な樹脂を使用して形成することができる。
X線管30及び高電圧ケーブル61、71から独立した状態で、高電圧絶縁部材82、92のモールド成型などを行うことができる。このため、第6の実施形態においてモールド成型を行うための装置は、上記第5の実施形態においてモールド成型を行うための装置(特殊な装置)に比べて、一般的で小型なものとすることができる。
上記のことから、小型化を図ることができ、長期にわたって高い信頼性を得ることができるX線管装置10及びX線管装置を備えたX線装置を得ることができる。
次に、第7の実施形態に係るX線装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図8は、第7の実施形態に係るX線装置を示す断面図である。
図8に示すように、X線装置は、回転陽極型のX線管装置10、高電圧コネクタ100及び高電圧コネクタ200を備えている。図示しないが、X線装置は、上記冷却器22も備えている。
電気絶縁性部材81は、桶状に形成され、高電圧絶縁部材40に間隔を置いて位置している。電気絶縁性部材81には貫通孔が形成され、上記貫通孔を高電圧ケーブル61が通っている。
電気絶縁性部材91は、桶状に形成され、高電圧絶縁部材50に間隔を置いて位置している。電気絶縁性部材91には貫通孔が形成され、上記貫通孔を高電圧ケーブル71が通っている。
冷却液7は、電気絶縁性部材81及び高電圧絶縁部材40間と、電気絶縁性部材91及び高電圧絶縁部材50間と、にもそれぞれ介在されている。高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部と、高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部とは、冷却液7に接するため、冷却液7は、絶縁油である。
上記のように構成された第7の実施形態に係るX線装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、冷却液7と、ケーブルアセンブリ60、70とを備えている。陽極ターゲット35に電気的に接続された高電圧供給端子44は、高電圧絶縁部材40から真空外囲器31の外側に露出している。陰極36に電気的に接続された高電圧供給端子54は、高電圧絶縁部材50から真空外囲器31の外側に露出している。
高電圧ケーブル61は、一端部が高電圧供給端子44に電気的に接続され、他端部が電気絶縁性部材81の貫通孔及びハウジング20内の空間を通って高電圧供給端子69に電気的に接続されている。高電圧ケーブル71は、一端部が高電圧供給端子54に電気的に接続され、他端部が電気絶縁性部材91の貫通孔及びハウジング20内の空間を通って高電圧供給端子79に電気的に接続されている。X線管装置10の管軸に沿った方向において、X線管30と、ハウジング20との間にリセプタクルを設ける構造ではないため、X線管装置10の小型化を図ることができる。
冷却液7は絶縁油である。面圧式のコネクタを利用すること無しに、高電圧ケーブル61は高電圧供給端子44に接続され、高電圧ケーブル71は高電圧供給端子54に接続されている。このため、X線管装置10は、長期にわたって高い信頼性を得ることができる。
ハウジング20内において、高電圧ケーブル61は、冷却液7に浸っているため、陽極ターゲット35から高電圧ケーブル61に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部や、電気絶縁性部材81は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却される。このため、陽極ターゲット35から高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
陽極ターゲット35から高電圧ケーブル61の他端部及び高電圧供給端子69に伝達される熱の量を低減できる。高電圧コネクタ62の電気絶縁性部材64の端面64sの変形や、シリコーンプレート104の変形を抑制することができる。このため、高電圧コネクタ62と、高電圧コネクタ100との密着性を維持することができ、良好な絶縁性を保持することができる。
ハウジング20内において、高電圧ケーブル71は、冷却液7に浸っているため、陰極36から高電圧ケーブル71に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部や、電気絶縁性部材91は、冷却液7に取り囲まれ冷却液7により直接冷却される。このため、陰極36から高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。
陰極36から高電圧ケーブル71の他端部及び高電圧供給端子79に伝達される熱の量を低減できる。高電圧コネクタ72の電気絶縁性部材74の端面74sの変形や、シリコーンプレート204の変形を抑制することができる。このため、高電圧コネクタ72と、高電圧コネクタ200との密着性を維持することができ、良好な絶縁性を保持することができる。
電気絶縁性部材81、91は、セラミクスより安価な樹脂を使用して形成することができる。なお、高電圧供給端子44とハウジング20との電気絶縁性や、高電圧供給端子54とハウジング20との電気絶縁性が絶縁油により保たれている場合は、電気絶縁性部材81、91を必ずしも設ける必要はない。高電圧コネクタ100、200は、面圧式のコネクタである。
溶接や半田付けなどを利用して高電圧供給端子44及び高電圧ケーブル61はしっかりと接続され、同様に溶接や半田付けなどを利用して高電圧供給端子54及び高電圧ケーブル71はしっかりと接続されている。電気絶縁性部材81は高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くすこと無しに形成され、同様に電気絶縁性部材91は高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部を埋め尽くすこと無しに形成されている。このため、電気的接続部の信頼性の向上を図ることができる。
上記のことから、小型化を図ることができ、長期にわたって高い信頼性を得ることができるX線管装置10及びX線管装置を備えたX線装置を得ることができる。
次に、第8の実施形態に係るX線装置について説明する。この実施形態において、上述した実施形態と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。図9は、第8の実施形態に係るX線装置を示す断面図である。
図9に示すように、X線装置は、回転陽極型のX線管装置10を備えている。図示しないが、X線装置は、上記冷却器22も備えている。
ハウジング20は、筒状に形成されたハウジング本体20eと、蓋部20f、20g、20hとを有している。
高電圧供給端子44が位置する側のハウジング本体20aの開口部には、枠状の段差部が形成されている。上記段差部の内周面には、枠状の溝部が形成されている。管軸に沿った方向において、蓋部20fの周縁部はハウジング本体20aの段差部に接触している。ハウジング本体20aの上記溝部にはC止め輪20iが嵌合されている。
C止め輪20iは、管軸に沿った方向における、ハウジング本体20aに対する蓋部20fの位置を規制している。この実施形態において、蓋部20fのがたつきを防止するため、蓋部20fの位置は固定されている。管軸に直交した方向において、ハウジング本体20eと蓋部20fとの間の隙間は、枠状のOリングにより液密にシールされている。上記Oリングは、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。上記Oリングは、樹脂やゴムで形成されている。
上記のことから、高電圧供給端子44が位置する側のハウジング本体20aの開口部は、蓋部20f、C止め輪20i及びOリングにより液密に閉塞されている。
高電圧供給端子54が位置する側のハウジング本体20aの開口部には、枠状の段差部が形成されている。上記段差部の内周面には、枠状の溝部が形成されている。蓋部20gはハウジング本体20aの内部に位置している。管軸に沿った方向において、蓋部20gの周縁部はハウジング本体20aの段差部とともに後述するX線遮蔽部510を挟んでいる。なお、後述するX線遮蔽体510とX線遮蔽体520との間からハウジング20外部へのX線の漏洩が無ければ、蓋部20gの周縁部がハウジング本体20eの段差部に接触していてもよい。蓋部20hは蓋部20gに対向している。この実施形態において、蓋部20hは、円環部を有し、円環部は蓋部20g側に突出して形成されている。
ハウジング本体20aの上記内周面及び蓋部20g、並びに蓋部20hの隙間は、枠状のOリングにより液密にシールされている。上記Oリングは、ゴムベローズ21の周縁部で形成され、ハウジング20外部への冷却液7の漏れを防止する機能を有している。
ハウジング本体20aの上記溝部にはC止め輪20jが嵌合されている。C止め輪20jは、蓋部20hがOリングへ応力を加えている状態を保持している。上記のことから、高電圧供給端子54が位置する側のハウジング本体20aの開口部は、蓋部20g、蓋部20h、C止め輪20j及びゴムベローズ21により液密に閉塞されている。
図示しないが、ハウジング20は、X線放射窓20w、開口20o1及び開口20o2を有している。この実施形態において、ハウジング20の内面に、鉛板は貼り付けられていない。
蓋部20gは、冷却液7が出入りする開口部20kを有している。蓋部20hには、雰囲気としての空気が出入りする通気孔20mが形成されている。ゴムベローズ21は、ハウジング本体20a内において、蓋部20g及び蓋部20hで囲まれた領域を開口部20kと繋がった第1空間及び通気孔20mと繋がった第2空間に区切っている。
X線管30は、陽極ターゲット35、陰極36、真空外囲器31、高電圧供給端子44及び高電圧供給端子54などを備えている。真空外囲器31は、真空容器32及び高電圧絶縁部材50等を備えている。この実施形態において、真空容器32はガラスで形成され、X線放射窓33を有している。
X線管30の固定体1は、真空容器32及び高電圧絶縁部材6に固定されている。この実施形態において、固定体1の先端部は高電圧供給端子44として機能している。高電圧絶縁部材6は、一端が円錐形をし、他端が閉塞した管状に形成されている。高電圧絶縁部材6は、固定体1と、ハウジング20及びステータコイル910との間を電気的に絶縁するものである。
また、ターゲット層35aと管軸に沿った方向に対向したハウジング20の一端側にX線遮蔽部510が設けられている。X線遮蔽部510は、ターゲット層35aから放射されるX線を遮蔽するものである。X線遮蔽部510は、X線不透過材を含む材料で形成されている。X線遮蔽部510は、第1遮蔽部511及び第2遮蔽部512を有している。
第1遮蔽部511は、ターゲット層35aと管軸に沿った方向に対向した側の蓋部20gに貼り付けられている。第1遮蔽部511は、蓋部20g全体を覆っている。第1遮蔽部511は、開口部20kと対向した個所が開口して形成され、開口部20kによる冷却液7の出入りを維持している。第2遮蔽部512は、第1遮蔽部511上に設けられている。第2遮蔽部512は、開口部20k付近からハウジング20の外部に出射する恐れのあるX線を遮蔽するものである。
X線遮蔽体520は円筒状に形成されている。X線遮蔽体520の一端部は、第1遮蔽部511に近接している。このため、X線遮蔽体510及びX線遮蔽部520間の隙間から出射する恐れのあるX線を遮蔽することができる。
X線遮蔽体520は、管軸に沿って第1遮蔽部511から陽極ターゲット35(ターゲット層35aの表面の延長線上)を越える位置まで延出している。この実施形態において、X線遮蔽体520は、第1遮蔽部511からステータコイル910の手前まで延出している。X線遮蔽体520は、管軸に直交した方向において、それぞれ真空容器32及びハウジング本体20aに隙間を置いて設けられている。
X線遮蔽体520は、真空外囲器31及びハウジング20の少なくとも一方に固定されている。ここでは、X線遮蔽体520は、ハウジング本体20aの内壁に形成された突出部に固定されている。また、X線遮蔽体520は、絶縁部材8により真空外囲器31に固定されている。
X線遮蔽体520は、X線遮蔽部510とともに高電圧ケーブル71が通る通路を形成している。なお、上記通路からハウジング20の外部へのX線漏洩を防止するため、上記通路は隘路であることが好ましい。ハウジング本体20eの一部は、径方向に突出して形成されている。ハウジング本体20eの突出部と、X線遮蔽体520とは、高電圧ケーブル71が通る通路(隘路)を形成している。
図示しないが、X線遮蔽体520は、X線を透過させるX線透過窓を有している。X線透過窓はX線放射窓20wと対向している。ここでは、X線透過窓は、X線遮蔽体520の一部を開口した開口部である。なお、上記通路(高電圧ケーブル71)がハウジング20のX線放射窓20w及びX線遮蔽体520のX線透過窓と対向した位置から外れていることは言うまでもない。
X線遮蔽体520は、X線不透過材を含む材料で形成されている。X線遮蔽体520の厚みは、1乃至5mmである。ここで、X線遮蔽体520の厚みは、それぞれ内周面と外周面との最短距離であり、この実施形態では管軸に垂直な方向における内周面と外周面との距離である。また管軸に垂直な方向において、真空容器32及びハウジング20間の隙間は、3乃至12mmである。この実施形態において、真空容器32及びハウジング20間の隙間は、8mmである。
X線遮蔽体520は、例えばアンチモンなどを鉛に添加した硬質鉛から作ることができる。好ましくはSUSなどからなる円筒状部品の外側にX線不透過材を巻きつけてX線遮蔽体520を形成することが好ましい。
X線遮蔽体510、520に利用するX線不透過材としては、少なくとも、タングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の何れか1つからなる金属、又はタングステン、タンタル、モリブデン、バリウム、ビスマス、希土類金属及び鉛の化合物の少なくとも1つを主材料などとして利用することができる。X線遮蔽体510、520の表面は、防食保護のため、錫、銀、銅、ニッケルなどの金属メッキや樹脂コーティングを形成しても良い。
X線遮蔽体520がある程度の強度と延性を有する場合、X線遮蔽体520は防護体として機能することができる。陽極ターゲット35が高速回転中に破損した場合、高い運動エネルギを有した陽極ターゲット35の破片は、ガラスで形成された真空容器32を破壊し、更にハウジング20の内面に向かう方向へと飛散する。X線遮蔽体520は、高い運動エネルギを有した状態で飛散する陽極ターゲット35の破片のハウジング20への衝突を防護する。
X線遮蔽体520に陽極ターゲット35の破片が衝突しても、X線遮蔽体520は十分な変形を起こすことにより運動エネルギを吸収することができる。X線遮蔽体520及びハウジング20は、隙間を置いて位置しているため、X線遮蔽体520に変形が生じてもハウジング20自体の変形を防止できる。これにより、ハウジング20に生じる恐れのあった亀裂を防止することができる。
図9及び図10に示すように、ハウジング20は、蓋部20nを有している。蓋部20nは、蓋部20fとともにハウジング本体20eの端部を閉塞している。開口20o1及び開口20o2は、蓋部20nに形成されている。開口20o1及び開口20o2は、X線遮蔽体510及びX線遮蔽部520と対向(近接)した位置から外れてハウジング20に形成されている。
X線管装置10は、陽極用のリセプタクル300及び陰極用のリセプタクル400を有している。リセプタクル300、400は、蓋部20fに取付けられている。リセプタクル300、400は、管軸方向に沿って延在している。なお、ハウジング20の長手方向は管軸方向と平行である。
リセプタクル300は、電気絶縁部材としてのハウジング301と、高電圧供給端子としての端子302とを有している。
ハウジング301は、管軸方向に直交した方向におけるX線管30とハウジング20との間の空間まで、開口20o1から延在している。ハウジング301は、ハウジング20の外側に開口した桶状に形成されている。ハウジング301は、ほぼ軸対称なコップ形状であると言うことができる。また、ハウジング301のプラグ差込口がハウジング20の外側に開口していると言うことができる。
ハウジング301の開口側の端部において、ハウジング301の外面には、環状の突出部が形成されている。ハウジング301は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。ハウジング301は、冷却液7により冷却される。
端子302は、ハウジング301の底部に液密に取付けられ、上記底部を貫通している。端子302は、ハウジング301の外側で高電圧ケーブル61の他端部と電気的に接続されている。
電気絶縁性部材64は、電気絶縁性樹脂で形成され、端子302と高電圧ケーブル61との電気的接続部を埋め尽くし、ハウジング301に直に接着されている。より詳しくは、電気絶縁性部材64はモールド材で形成されている。電気絶縁性部材64を利用することにより、端子302と高電圧ケーブル61との電気的接続部と、ハウジング20との電気絶縁性を向上することができる。
管軸方向において、開口20o1と対向した蓋部20nの段差部と、ハウジング301の突出部との間にはOリングが介在されている。蓋部20nの段差部には、雌ねじの加工がなされている。リングナット310は、側面に雄ねじの加工がなされている。リングナット310は、蓋部20nの段差部に締め付けられ、ハウジング301を押圧している。これにより、管軸方向において、Oリングは、蓋部20nの段差部と、ハウジング301の突出部とにより加圧される。これにより、リセプタクル300は蓋部20nに液密に取付けられるため、ハウジング20外部への冷却液7の漏洩を防止することができる。
リセプタクル300及びリセプタクル300に挿入される図示しないプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル300に連結した状態で、プラグから端子302に高電圧(例えば、+70〜+80kV)が供給される。
リセプタクル400は、リセプタクル300と同様に形成されている。リセプタクル400は、リングナット310やOリングなどを利用することにより、リセプタクル300と同様に蓋部20nに設けられている。リセプタクル400は、開口20o2を液密に閉塞するように蓋部20nに取付けられている。リセプタクル400の端子(高電圧供給端子)と高電圧ケーブル71との電気的接続部は、電気絶縁性部材(74)により埋め尽くされている。
上記のように構成された第8の実施形態に係るX線装置によれば、X線管装置10は、X線管30と、ハウジング20と、冷却液7と、ケーブルアセンブリ60、70とを備えている。リセプタクル300、400は、X線管30から独立し、X線管30の発生熱の影響が少ないハウジング20に設けられている。
陽極ターゲット35に電気的に接続された高電圧供給端子44は、真空外囲器31の外側に露出している。陰極36に電気的に接続された高電圧供給端子54は、高電圧絶縁部材50から真空外囲器31の外側に露出している。
高電圧ケーブル61は、一端部が高電圧供給端子44に電気的に接続され、他端部がハウジング20内の空間を通って端子302に電気的に接続されている。高電圧ケーブル71は、一端部が高電圧供給端子54に電気的に接続され、他端部がハウジング20内の空間を通ってリセプタクル400の端子に電気的に接続されている。リセプタクル300、400は、X線管装置10の管軸に直交した方向において、X線管30と、ハウジング20との間に位置している。X線管装置10の管軸に沿った方向において、X線管30と、ハウジング20との間にリセプタクルを設ける従来構造ではないため、従来構造と比べてX線管装置10の小型化を図ることができる。
冷却液7は絶縁油である。面圧式のコネクタを利用すること無しに、高電圧ケーブル61は高電圧供給端子44に接続され、高電圧ケーブル71は高電圧供給端子54に接続されている。このため、X線管装置10は、長期にわたって高い信頼性を得ることができる。
ハウジング20内において、高電圧供給端子44や高電圧ケーブル61は、X線管30の外壁付近からハウジング20の内壁付近にわたって冷却液7に浸っているため、陽極ターゲット35から高電圧ケーブル61に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。陽極ターゲット35から高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができるため、リセプタクル300の良好な絶縁性を保持することができる。
ハウジング20内において、高電圧供給端子54や高電圧ケーブル71は、X線管30の外壁付近からハウジング20の内壁付近にわたって冷却液7に浸っているため、陰極36から高電圧ケーブル71に伝達される熱を冷却液7に放出することができる。陰極36から高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71との電気的接続部に伝達される熱を冷却液7に放出することができるため、リセプタクル400の良好な絶縁性を保持することができる。
X線遮蔽体520は、X線不透過材を含む材料で形成されている。X線遮蔽体520は、X線透過窓以外の方向へのX線を遮蔽することができるため、例えば、X線管装置を医療診断機器に搭載した場合、人体への不要な放射(被曝)を防止することができる。
X線遮蔽体520は、ハウジング20の外部で形成された後、ハウジング20の内部に組み込まれている。ハウジング20の内面に鉛板を貼り付ける必要はなく、上記鉛板を貼り付ける場合に比べて簡単に筒状のX線遮蔽体520を製造することができるため、製造コストを低減することができる。
X線遮蔽体520がある程度の強度と延性を有する場合、X線遮蔽体520は防護体として機能することができる。X線遮蔽体520は、陽極ターゲット35が高速回転中に破損した場合、高い運動エネルギを有した状態で飛散する陽極ターゲット35の破片のハウジング20への衝突を防護する。X線遮蔽体520に陽極ターゲット35の破片が衝突しても、X線遮蔽体520は十分な変形を起こすことにより運動エネルギを吸収することができる。
また、この実施形態において、ハウジング20の内面は、上記従来構造と比べてストレートにできる。このため、X線遮蔽体520をハウジング20の内部へ組込み易くでき、また、X線遮蔽体520をハウジング20の外部へ取り出し易くできる。
これにより、ハウジング20に生じる恐れのあった亀裂を防止することができる。例えば、回転陽極型X線管装置を医療診断機器に搭載した場合、被検査体(例えば人体)に高温の冷却液7がかかってしまう危険性を排除することができる。
上記のことから、小型化を図ることができ、長期にわたって高い信頼性を得ることができるX線管装置10及びX線管装置を備えたX線装置を得ることができる。
次に、上記第8の実施形態に係るX線装置の変形例について説明する。
例えば、X線管装置10は、上記第7の実施形態に係る電気絶縁性部材81、91(図8)を備えていてもよい。これにより、高電圧供給端子44及びハウジング20間の絶縁性や、高電圧供給端子54及びハウジング20間の絶縁性を一層確保することができる。
冷却液7は、絶縁油に替えて水系冷却液を利用することも可能である。但し、この場合、X線管装置10は上記第1乃至第6の実施形態に係る電気絶縁性部材81、91(図1乃至図7)を備え、電気絶縁性部材81、91は高電圧供給端子44(54)と高電圧ケーブル61(71)の一端部との電気的接続部を埋め尽くしている。
電気絶縁性部材81をモールド成型する場合、高電圧供給端子44と高電圧ケーブル61とが電気的に接続され、X線管30がハウジング20内に収容された状態で行われる。電気絶縁性部材91をモールド成型する場合、高電圧供給端子54と高電圧ケーブル71とが電気的に接続され、X線管30がハウジング20内に収容された状態で行われる。
また、水系冷却液を利用する場合、X線装置は、図示しない熱収縮チューブをさらに備えていた方が好ましい。熱収縮チューブは、少なくとも水系冷却液に接する高電圧ケーブル61(71)の表面を被覆し、塩化物を含有しない樹脂で形成されている。高電圧ケーブル61(71)の表面を被覆する際、高電圧ケーブル61(71)より径の大きい熱収縮チューブで高電圧ケーブル61(71)を覆い、熱収縮チューブに熱を加える。これにより、熱収縮チューブが収縮し、高電圧ケーブル61(71)の表面が熱収縮チューブで被覆される。熱収縮チューブは、例えば、エチレンプロピレンゴム、シリコーンゴム、ポリオレフィン及びポリエチレンの何れかの材料で形成することができる。
水系冷却液に接する高電圧ケーブル61(71)の表面は、塩化物を含有しない樹脂で形成された熱収縮チューブで被覆されている。水系冷却液への塩化物イオンの溶出を防止することができるため、金属腐食を低減することができる。上記のことは、高電圧ケーブル61(71)の被覆材(最外周被覆材)が塩素を含む場合に有効である。
また、電気絶縁性部材81、91の形成に樹脂モールド材を利用する場合、上記のような熱収縮チューブは、樹脂モールド材への接着性に優れているため、漏電の防止に寄与することができる。好ましくはさらに、SiO2やTiO2を含む様々なプライマを塗布する処理を施すことにより、樹脂モールド材への接着性を一層向上させることができる。
一方、本願発明者らの経験によれば、高電圧ケーブル61(71)の最外周被覆材が塩化物を含む場合、最外周被覆材をエポキシ樹脂やシリコーン樹脂でモールドしようとしても、接着性が悪いという問題があり、被覆材の表面に、SiO2やTiO2を含む様々なプライマを塗布する処理を施しても接着性が改善されず、接着界面を通した漏電が発生する恐れがある。
X線放射窓20wの位置は、図10に示した例に限定されるものではなく、種々変形可能であり、高電圧ケーブル61、71と対向しない位置であればよい。図11に示すように、X線放射窓20wが位置していてもよい。
図10及び図11に示す例では蓋部20nを利用しているためハウジング20のサイズは図の下方に拡大している。リセプタクル300及びリセプタクル400は、X線管30を挟まずに設けられている。しかしながら、リセプタクル300及びリセプタクル400の位置は図10及び図11に示した例に限定されるものではなく、種々変形可能である。
例えば、図12に示すように、リセプタクル300及びリセプタクル400は、X線管30を挟んで設けられていてもよい。ハウジング20は、蓋部20nの替りに蓋部20p、20qを有している。この例では蓋部20p、20qを利用しているためハウジング20のサイズは図の左右方向に拡大している。なお、リセプタクル300は蓋部20pに液密に取付けられ、リセプタクル400は蓋部20qに液密に取付けられている。
また、リセプタクル300及びプラグや、リセプタクル400及びプラグは、面圧式であってもよい。この場合、プラグは、ハウジング301、401(電気絶縁部材)の内面に密着される。リセプタクル300、400の接続方式が面圧式である場合、リセプタクル300、400の小型化を図ることができる。
上記の場合、図13に示すように、ハウジング20は部分的に円弧状でなくなるが、上下方向や左右方向へのハウジング20のサイズの拡大が無いように、リセプタクル300、400や、蓋部20p、20qを設けることができる。
次に、上述した実施形態に係るX線装置の比較例1、比較例2について説明する。
図14は、上述した実施形態に係るX線装置の比較例1を示す断面図である。
図14に示すように、比較例1のX線管装置10は、第1の実施形態に係るX線管装置10と異なり、高電圧ケーブル61、71、高電圧コネクタ62、72及び電気絶縁性部材81、91無しに形成されている。高電圧供給端子44、54は冷却液7に接するため、冷却液7は絶縁油である。X線管装置10は、陽極用のリセプタクル300及び陰極用のリセプタクル400を有している。
管軸に沿った方向において、リセプタクル300は、X線管30(高電圧絶縁部材40)と、ハウジング20との間に設けられている。リセプタクル300は、有底筒状のハウジング301と、端子302とを有している。ハウジング301は、ハウジング20に気密に取付けられている。ハウジング301は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。端子302は、ハウジング301内に設けられている。端子302は、ケーブルにより高電圧供給端子44と電気的に接続されている。
リセプタクル300及び図示しないプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル300に連結した状態で、リセプタクル300は、高電圧供給端子44に高電圧(例えば、+70〜+80kV)を供給するものである。
管軸に沿った方向において、リセプタクル400は、X線管30(高電圧絶縁部材50)と、ハウジング20との間に設けられている。リセプタクル400は、有底筒状のハウジング401と、端子402とを有している。ハウジング401は、ハウジング20に気密に取付けられている。ハウジング401は、絶縁性の材料として、例えば樹脂で形成されている。端子402は、ハウジング401内に設けられている。端子402は、ケーブルにより高電圧供給端子54と電気的に接続されている。
リセプタクル400及び図示しない他のプラグは、非面圧式であり、着脱可能に形成されている。プラグをリセプタクル400に連結した状態で、リセプタクル400は、高電圧供給端子54に高電圧(例えば、−70〜−80kV)およびフィラメント電流を供給するものである。
上記のように構成された比較例1のX線装置では、X線管装置10はリセプタクルを設ける構造であるため、X線管装置10の小型化を図ることはできない。冷却液7に水系冷却液を利用することができない。高電圧供給端子44、54は冷却液に接しているが、高電圧供給端子44、54に接続されたケーブルはハウジング20の内壁付近まで延出して形成されておらず、ハウジング20より高電圧供給端子44、54付近に位置した端子302、402に接続されている。
図15は、上述した実施形態に係るX線装置の比較例2を示す断面図である。
図15に示すように、比較例2のX線管装置10は、第1の実施形態に係るX線管装置10と異なり、ケーブルアセンブリ60、70及び電気絶縁性部材81、91無しに形成されている。冷却液7としては、水系冷却液や絶縁油を利用することができる。
ハウジング20は、筒状に形成されている。高電圧絶縁部材40の外面は、高電圧供給端子44とともにハウジング20の外側に露出している。高電圧絶縁部材50の外面は、高電圧供給端子54とともにハウジング20の外側に露出している。
高電圧コネクタ100は、有底筒状のハウジング101と、ハウジング101内にその先端が挿入されたケーブル102と、ハウジング101内に充填され、ケーブル102の端子をハウジング101の開口部側に向けて固定する固定部103と、この固定部103と高電圧絶縁部材40の外面との間に挿入されたシリコーン樹脂材製のシリコーンプレート104とを備えている。この実施形態において、ケーブル102は高電圧ケーブルである。固定部103は、電気絶縁性ゴム部である。なお、固定部103は、高電圧絶縁部材40の外面に直接密着されていても良い。高電圧コネクタ100は、高電圧供給端子44に高電圧を与えるものである。
高電圧コネクタ100をハウジング20に取り付ける際に、シリコーンプレート104が、それぞれ固定部103と、高電圧絶縁部材40の外面とに密着するように押圧する。
高電圧コネクタ200は、有底筒状のハウジング201と、ハウジング201内にその先端が挿入されたケーブル202と、ハウジング201内に充填され、ケーブル202の端子をハウジング201の開口部側に向けて固定する固定部203と、この固定部203と高電圧絶縁部材50の外面との間に挿入されたシリコーン樹脂材製のシリコーンプレート204とを備えている。この実施形態において、ケーブル202は高電圧ケーブルである。固定部203は、電気絶縁性ゴム部である。なお、固定部203は、高電圧絶縁部材50の外面に直接密着されていても良い。高電圧コネクタ200は、高電圧供給端子54に高電圧を与えるものである。
高電圧コネクタ200をハウジング20に取り付ける際に、シリコーンプレート204が、それぞれ固定部203と、高電圧絶縁部材50の外面とに密着するように押圧する。
上記のように構成された比較例2のX線装置では、高電圧供給端子44、54は冷却液に接しておらず、高電圧コネクタ100、200に直接接続されている。陽極ターゲット35から高電圧供給端子44に伝達される熱や、陰極36から高電圧供給端子54に伝達される熱を冷却液7に十分に伝達することができないため、X線管に生じる熱の放射性を向上できない問題がある。
X線管に生じる熱は、高電圧コネクタ100、200に伝達される。
すると、高電圧コネクタ100の固定部(電気絶縁性ゴム部)103及びシリコーンプレート104が許容温度を越えて過熱され、高電圧コネクタ100及び高電圧絶縁部材40間の密着性が低下してしまう恐れがある。すると、高電圧コネクタ100及び高電圧絶縁部材40間の密着界面に沿った放電が比較的早期に発生してしまう。
また、高電圧コネクタ200の固定部(電気絶縁性ゴム部)203及びシリコーンプレート204が許容温度を越えて過熱され、高電圧コネクタ200及び高電圧絶縁部材50間の密着性が低下してしまう恐れがある。すると、高電圧コネクタ200及び高電圧絶縁部材50間の密着界面に沿った放電が比較的早期に発生してしまう。
このため、長期にわたって高い信頼性(絶縁性)を得ることができない問題もある。
以上、比較例として図15に示すような平面型の面圧式コネクタを使用した場合について説明したが、平面型に限らず、押圧面がテーパ状の凹面や凸面である場合にも同様の問題がある。
なお、この発明は上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化可能である。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
例えば、ハウジング20の形状は上述した例に限定されるものではなく種々変形可能であり、また複数の部材を組合わせて形成されていてもよい。
X線管装置10は、陽極ターゲット35及び陰極36にそれぞれ高電圧を印加する中性点接地型に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、陽極接地型のX線管装置10の場合、陰極36側においてのみ上述した高電圧絶縁構造を採用すればよい。また、陰極接地型のX線管装置10の場合、陽極ターゲット35側においてのみ上述した高電圧絶縁構造及び冷却構造を採用すればよい。
高電圧コネクタ62の密着面(電気絶縁性部材64の端面64s、高電圧絶縁部材65の端面65s)や、高電圧コネクタ72の密着面(電気絶縁性部材74の端面74s、高電圧絶縁部材75の端面75s)は、平面に限定されるものではなく種々変形可能であり、テーパ状の凸面や、テーパ状の凹面であってもよい。この場合、高電圧コネクタ100、200の押圧面の形状は、良好な密着性が得られるように高電圧コネクタ62、72の密着面の形状に対応していればよい。また、高電圧コネクタ62、72は、面圧式ではないコンベンショナルなリセプタクルを使用することも可能である。
ハウジング20中の冷却液7を水系冷却液とするために必要な周辺技術は、次の特許文献に開示されており、実際のX線管に上述した本発明の実施形態を適用する上でこれらの周辺技術を併用することが有効である。
米国特許第7203280号明細書(モールド関係)
米国特許第7206380号明細書(冷却液関係)
米国特許出願公開第11/401300号明細書(コーティング関係)
上記高電圧絶縁部材としては、アルミナを使用することができるが、窒化アルミニウムやべリリアなど、アルミナよりも熱伝導率が大きいセラミクスを使えばより効果が高くなるものである。
モールド材や電気絶縁性部材としては、エポキシ樹脂やポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などを使用することができるが、熱伝導率をより高くするため、アルミナや窒化アルミニウムなどの熱伝導率の高い絶縁材料の微粉を混合することが好ましい。
この発明は、上記X線装置に限らず、各種X線装置に適用することができる。X線管装置は、回転陽極型のX線管装置に限らず、固定陽極型のX線管装置であってもよい。