JP2013173283A - 積層多孔フィルム、非水電解液二次電池用セパレータ、及び非水電解液二次電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、フィラー(a)および樹脂バインダー(b)を含有する被覆層(II層)を有する積層多孔フィルムであって、2枚の該積層多孔フィルムの表面同士を熱融着した時のT型剥離強度が30gf/15mm以上であることを特徴とする積層多孔フィルム。
【選択図】 なし
Description
なお、本発明において、「主成分」と表記した場合には、特にことわりのない限り、当該主成分の機能を妨げない範囲で他の成分を含有することを許容する意を包含し、特に当該主成分の含有割合を限定するものではないが、主成分とは例えば組成物中の50質量%以上、好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上(100質量%も含む)を占める意を包含するものである。
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)に用いるポリオレフィン系樹脂としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどのα−オレフィンを重合した単独重合体または共重合体が挙げられる。また、これらの単独重合体または共重合体を2種以上混合することもできる。中でもポリプロピレン系樹脂、または、ポリエチレン系樹脂を用いることが好ましく、特に、本発明の積層多孔フィルムの機械的強度、耐熱性などを維持する観点から、ポリプロピレン系樹脂を用いることが好ましい。
本発明に用いるポリプロピレン系樹脂としては、ホモプロピレン(プロピレン単独重合体)、または、プロピレンと、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンとのランダム共重合体、もしくは、ブロック共重合体などが挙げられる。この中でも積層多孔フィルムの通気特性、機械強度、耐熱性などの観点からホモポリプロピレン、または、プロピレンと前記α−オレフィンとのブロック共重合体が好ましく、ホモプロピレンが特に好ましい。
本発明に用いるポリエチレン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン及びエチレンを主成分とする共重合体、すなわち、エチレンとプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1などの炭素数3〜10のα−オレフィン;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチルなどの不飽和カルボン酸エステル、共役ジエンや非共役ジエンのような不飽和化合物の中から選ばれる1種または2種以上のコモノマーとの共重合体または多元共重合体あるいはその混合組成物が挙げられる。エチレン系重合体のエチレン単位の含有量は通常50質量%を超えるものである。
本発明の積層多孔フィルムにおいて、前記I層はβ晶活性を有することが好ましい。β晶活性は、延伸前の膜状物にβ晶を生成したことを示す一指標として捕らえることができる。延伸前の膜状物中にβ晶を生成していれば、その後延伸を施すことで微細孔が形成されるため、通気特性を有する多孔フィルムを得ることができる。
β晶活性度(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmβ+ΔHmα)〕×100
例えば、前記ポリプロピレン系樹脂がホモポリプロピレンの場合は、主に145℃以上160℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に160℃以上170℃以下の範囲で検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。また、例えばエチレンが1〜5モル%共重合されているランダムポリプロピレンの場合は、主に120以上140℃未満の範囲で検出されるβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)と、主に140℃以上165℃以下の範囲に検出されるα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)から計算することができる。
尚、β晶活性度の上限値は特に限定されないが、β晶活性度が高いほど前記効果がより有効に得られるので100%に近いほど好ましい。
詳細には、前記ポリプロピレン系樹脂の融点を超える温度である170℃の熱処理を施し、徐冷してβ晶を生成・成長させた積層多孔フィルムについて、広角X線回折測定を行い、前記ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(3,0,0)面に由来する回折ピークが2θ=16.0°から16.5°の範囲に検出された場合、β晶活性があると判断している。
ポリプロピレン系樹脂のβ晶構造と広角X線回折測定に関する詳細は、Macromol. Chem.187、643−652(1986)、Prog. Polym. Sci. Vol. 16、361−404(1991)、Macromol. Symp. 89、499−511(1995)、Macromol. Chem. 75、134(1964)及びこれらの文献中に挙げられた参考文献を参照することができる。広角X線回折を用いたβ晶活性の詳細な評価方法については、後述の実施例にて示す。
本発明においては、前記I層を構成するポリオレフィン系樹脂に、β晶核剤を含有することが好ましい。本発明で用いるβ晶核剤としては以下に示すものが挙げられるが、ポリオレフィン系樹脂のβ晶の生成・成長を増加させるものであれば特に制限される訳ではなく、また2種以上を混合して用いても良い。
β晶核剤としては、例えば、アミド化合物;テトラオキサスピロ化合物;キナクリドン類;なのスケールのサイズを有する酸化鉄;1,2−ヒドロキシステアリン酸カリウム、安息香酸マグネシウムもしくはコハク酸マグネシウム、フタル酸マグネシウムなどに代表されるカルボン酸のアルカリもしくはアルカリ土類金属塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウムもしくはナフタレンスルホン酸ナトリウムなどに代表される芳香族スルホン酸化合物;二もしくは三塩基カルボン酸のジもしくはトリエステル類;フタロシアニンブルーなどに代表されるフタロシアニン系顔料;有機二塩基酸である成分Aと周期律表第IIA族金属の酸化物、水酸化物もしくは塩である成分Bとからなる二成分系化合物;環状リン化合物とマグネシウム化合物からなる組成物などが挙げられる。そのほか核剤の具体的な種類については、特開2003−306585号公報、特開平06−289566号公報、特開平09−194650号公報に記載されている。
本発明においては、前述した成分のほか、本発明の効果を著しく阻害しない範囲内で、一般に樹脂組成物に配合される添加剤をI層に適宜添加できる。前記添加剤としては、成形加工性、生産性および多孔フィルムの諸物性を改良・調整する目的で添加される、耳などのトリミングロス等から発生するリサイクル樹脂やシリカ、タルク、カオリン、炭酸カルシウム等の無機粒子、酸化チタン、カーボンブラック等の顔料、難燃剤、耐候性安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、溶融粘度改良剤、架橋剤、滑剤、核剤、可塑剤、老化防止剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤または着色剤などの添加剤が挙げられる。
また開孔を促進するためや、成形加工性を付与するために、本発明の効果を著しく阻害しない範囲で、変性ポリオレフィン系樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂もしくはその変性体、エチレン系重合体、ワックス、または低分子量ポリプロピレンを添加しても構わない。
本発明において、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)は、単層でも積層でもよく、特に制限されるものではない。中でも、前記ポリオレフィン系樹脂を含む層(以下「A層」と称する場合がある)の単層、当該A層の機能を妨げない範囲で、当該A層と他の層(以降「B層」と称する場合がある)との積層が好ましい。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして用いる際には、特開平04−181651号に記載されているような高温雰囲気化で孔閉塞し、電池の安全性を確保する低融点樹脂層を積層させることができる。
具体的には、A層の単層、A層/B層を積層した2層構造、A層/B層/A層、若しくは、B層/A層/B層として積層した3層構造などが例示できる。また、他の機能を持つ層と組み合わせて3層3層の様な形態も可能である。この場合、他の機能を持つそうとの積層順序は途に問わない。更に層数は4層、5層、6層、7層と必要に応じて増やしても良い。
次に、本発明のポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の製造方法について説明するが、本発明はかかる製造方法により製造されるポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)のみに限定されるものではない。
無孔膜状物の多孔化方法としては、特に限定されることなく、湿式による一軸以上の延伸多孔化、乾式による一軸以上の延伸多孔化など、公知の方法を用いてもよい。延伸方法については、ロール延伸法、圧延法、テンター延伸法、同時二軸延伸法などの手法があり、これらを単独あるいは2つ以上組み合わせて一軸延伸あるいは二軸延伸を行う。中でも、多孔構造制御の観点から逐次二軸延伸が好ましい。また必要に応じて、延伸の前後にポリオレフィン系樹脂組成物に含まれている可塑剤を溶剤によって抽出、乾燥させる方法も適用される。
(i)各層を多孔化したのち、多孔化された各層をラミネートしたり接着剤等で接着したりして積層する方法
(ii)各層を積層して積層無孔膜状物を作製し、ついで当該無孔膜状物を多孔化する方法
(iii)各層のうちいずれか1層を多孔化したのち、もう1層の無孔膜状物と積層し、多孔化する方法
(iv)多孔層を作製した後、無機・有機粒子などのコーティング塗布や、金属粒子の蒸着などを行うことにより積層多孔フィルムとする方法
本発明においては、中でも2層の層間接着性を確保するため、前記(ii)のように共押出で積層無孔膜状物を作製した後、多孔化する方法が特に好ましい。
まず、前記ポリオレフィン系樹脂と、必要であれば熱可塑性樹脂、添加剤の混合樹脂組成物を作製する。例えば、ポリプロピレン系樹脂、β晶核剤、及び所望によりその他添加剤等の原材料を、好ましくはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー型ミキサー等を用いて、又は袋の中に全成分を入れてハンドブレンドにて混合した後、一軸あるいは二軸押出機、ニーダー等、好ましくは二軸押出機で溶融押出後カッティングしてペレットを得る。
使用するTダイのギャップは、最終的に必要なフィルムの厚み、延伸条件、ドラフト率、各種条件などから決定されるが、一般的には0.1〜3.0mm程度、好ましくは0.5〜1.0mmである。0.1mm以上であることにより、溶融押出時の背圧が高くなり過ぎず、メルトフラクチャー等の問題がおきにくいため、生産安定性の観点から好ましい。また、3.0mm以下であることにより、ドラフト率が大きくなり過ぎず、ドローレゾナンス等の問題が生じることがないため、生産安定性の観点から好ましい。
キャストロールによる冷却固化温度は本発明において非常に重要であり、無孔膜状物のポリオレフィン系樹脂のβ晶の比率を調整することができる。キャストロールの冷却固化温度は好ましくは80〜150℃、より好ましくは90〜140℃、更に好ましくは100〜130℃である。冷却固化温度を80℃以上とすることで、膜状物中のβ晶の比率を十分に増加させることができるため好ましい。また150℃以下とすることで押出された溶融樹脂がキャストロールへ粘着し巻きついてしまうなどのトラブルが起こりにくく、効率よく無孔膜状物とすることが可能であるので好ましい。
延伸前の無孔膜状物のβ晶比率は、示差走査型熱量計を用いて、該無孔膜状物を25℃から240℃まで加熱速度10℃/分で昇温させた際に、検出されるポリオレフィン系樹脂のα晶由来の結晶融解熱量(ΔHmα)とβ晶由来の結晶融解熱量(ΔHmβ)を用いて下記式で計算される。
β晶比率(%)=〔ΔHmβ/(ΔHmα+ΔHmβ)〕×100
ついで、得られた無孔膜状物を少なくとも二軸延伸することがより好ましい。二軸延伸は同時二軸延伸であっても良いし、逐次二軸延伸であっても良いが、各延伸工程で延伸条件(倍率、温度)を簡便に選択でき、多孔構造を制御しやすい逐次二軸延伸がより好ましい。なお、無孔膜状物及びフィルムの長手方向を「縦方向」、長手方向に対して垂直方向を「横方向」と称する。また長手方向への延伸を「縦延伸」、長手方向に対して垂直方向への延伸を「横延伸」と称する。
一方、横延伸での延伸温度は概ね100〜160℃、好ましくは110〜150℃、更に好ましくは120〜140℃である。また、好ましい延伸倍率は1.2〜10倍であり、より好ましくは1.5〜8倍、更に好ましくは2〜7倍である。前記範囲内で横延伸することで、縦延伸により形成された空孔起点を適度に拡大させ、微細な多孔構造を発現させることができる。
前記延伸工程の延伸速度としては、50〜1200%/分が好ましく、100〜1000%/分が更に好ましく、150〜900%/分であることが更に好ましい。
本発明の積層多孔フィルムは、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、フィラー(a)および樹脂バインダー(b)を含有する被覆層(II層)を有することが重要である。
また後述するように、該セパレータの長手方向の端部に前記II層側表面の非被覆領域を有することが好ましい。
一方、前記II層側表面において被覆領域の占める割合は、前記I層の全表面積の99%以下が好ましく、98%以下がより好ましく、97%以下が更に好ましい。前記II層側表面の被覆領域の占める割合が、前記I層の全表面積の99%以下であることによって、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する際に、前記II層側表面同士で熱融着させる場合であっても、二次電池の充放電時の正極や負極の膨張や収縮によるセパレータのずれを解消することができる。
この際、熱融着による固着部分は、非水電解液二次電池の充放電時の正極や負極の膨張や収縮による変形に耐えられればよいため、前記端部の全領域が非被覆領域のみである必要は無い。具体的な例として、1点又は2点以上を点状に固着することもできる。なお、非水電解液二次電池用セパレータの熱融着は加熱融着、圧接、超音波融着等の任意の方法によって行うことができる。
本発明に用いることができるフィラー(a)としては無機フィラー、有機フィラーなどが挙げられるが、特に制約されるものではない。
なお、本実施の形態において「フィラーの平均粒径」とは、SEMを用いる方法に準じて測定される値である。
本発明に用いる樹脂バインダー(b)としては、前記フィラー(a)と、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)とを良好に接着でき、電気化学的に安定で、かつ積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合に有機電解液に対して安定であれば、特に制限されるものではない。具体的には、ポリエーテル、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアラミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル由来の構造単位が0〜20モル%のもの)、エチレン−エチルアクリレート共重合体などのエチレン−アクリル酸共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン−トリクロロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素系ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリアクリロニトリル、ポリアクリル酸及びその誘導体、ポリメタクリル酸及びその誘導体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、シアノエチルセルロース、ポリビニルアルコール、シアノエチルポリビニルアルコール、ポリビニルブチラゾール、ポリビニルピロリドン、ポリN−ビニルアセトアミド、架橋アクリル樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、マレイン酸変性ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの樹脂バインダー(b)は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。これらの樹脂バインダー(b)の中でもポリオキシエチレン、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリロニトリル樹脂、スチレン−ブタジエンゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸及びその誘導体、マレイン酸変性ポリオレフィンが水中でも比較的安定であることからが好ましい。
本発明の積層多孔フィルムは、前記フィラー(a)と前記樹脂バインダー(b)とを溶媒に溶解又は分散させた分散液を、前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に塗布することによって、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)表面に被覆層(II層)を形成して製造することができる。
このような溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、ヘキサンなどを挙げることができる。また、前記分散液を安定化するため、あるいはポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の塗工性を向上させるために、前記分散液には界面活性剤等の分散剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、酸やアルカリを含めたpH調整剤等の各種添加剤を加えても良い。前記添加剤は、溶媒除去や可塑剤抽出の際に除去できるものが好ましいが、非水電解液二次電池の使用範囲において電気化学的に安定で、電池反応を阻害せず、かつ200℃程度まで安定ならば、積層多孔フィルム内に残存しても良い。
また、表面処理を施す際、前記II層側表面の被覆領域に該当する前記I層の表面の領域のみに対して表面処理を施すことが好ましい。一方で、前記II層の非被覆領域に該当する前記I層の表面の領域に対して表面処理を施さないことで、前記I層に対する損傷が小さくなるため、耐久性を維持することができるという観点で好ましい。
本発明の積層多孔フィルムは、2枚の該積層多孔フィルムの表面同士を熱融着した時のT型剥離強度が30gf/15mm以上であることが重要であり、好ましくは50gf/15mm以上、更に好ましくは100gf/15mm以上である。
前記T型剥離強度が30gf/15mm以上であることによって、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、ヒートシールによって互いに熱融着させることで、非水電解液二次電池の充放電時の正極や負極の膨張や収縮による非水電解液二次電池用セパレータのずれを十分に抑制することができる。
なお、上限に関しては特に限定しないが、1000gf/15mm以下であることが好ましい。
一方、上限については70%以下が好ましく、65%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましい。空孔率が70%以下であれば、積層多孔フィルムの強度が低下しにくく、ハンドリングの観点からも好ましい。なお、本発明の空孔率は実施例に記載の方法で測定している。
透気度はフィルム厚み方向の空気の抜け難さを表し、具体的には100mlの空気が当該フィルムを通過するのに必要な数で表現されている。そのため数値が小さい方が空気が通り抜け易く、数値が大きい方が通り抜け難いことを意味する。すなわち、その数値が小さい方がフィルムの厚み方向の連通性が良いことを意味する。連通性とは、フィルムの厚み方向の孔のつながり度合いである。本発明の積層多孔フィルムの透気度が低ければ様々な用途に使用することができる。例えば非水電解液二次電池用セパレータとして使用する場合、透気度が低いということはリチウムイオンの移動が容易であることを意味し、電池性能に優れるため好ましい。
続いて、本発明の積層多孔フィルムを非水電解液二次電池用セパレータとして収容している非水電解液二次電池について説明する。
正極板、負極版の両極は非水電解液二次電池用セパレータを解して互いに重なるようにして配される。
中でも、エチレンカーボネート1質量%に対してメチルエチルカーボネートを2質量%混合した溶媒中に六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.0mol/Lの割合で溶解した電解質が好ましい。
負極に炭素材料を用いる場合、炭素原料としてはリチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであればよく、例えば黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などを用いることができる。
分散液中のフィラー(a)と樹脂バインダー(b)の総量に占めるフィラー(a)の質量割合をフィラー(a)の含有率とした。
1/1000mmのダイヤルゲージにて、面内においてポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)上に被覆層(II層)が形成されている領域(被覆領域)を不特定に30箇所測定し、その平均値を積層多孔フィルムの厚みとした
JIS P8117に準拠して透気度(秒/100ml)を測定した。
積層多孔フィルムを150×10mm四方に切り出したサンプルをチャック間100mmとなるように印をいれ、150℃に設定したオーブン(タバイエスペック社製、タバイギヤオーブンGPH200)に該サンプルを入れ、1時間静置した。該サンプルをオーブンから取り出し冷却した後、長さを測定し、以下の式にて積層多孔フィルムの縦方向、横方向の収縮率をそれぞれ算出した。
収縮率(%)=[(100−加熱後の長さ)/100]×100
耐熱性は、以下の評価基準において評価した。
○:150℃における収縮率が、縦方向および横方向で15%未満であり、耐熱性が十分である。
△:150℃における収縮率が、縦方向もしくは横方向で15%以上25%未満であり、耐熱性は実用範囲内である。
×:150℃における収縮率が、縦方向若しくは横方向で25%以上であり、実用上耐熱性に問題がある。
T型剥離強度については、JIS K6854−3に準拠して、測定された最大応力をT型剥離強度とした。具体的には、融着した2枚のフィルムを幅15mmに切り出し、融着部が中央になるよう、非融着部を引張試験機(インテスコ社製、インテスコIM−20ST)の上下のチャックに固定し、引張速度300mm/分で測定した(図3)。測定後、得られた最大応力をT型剥離強度とした。
得られた積層多孔フィルムをパーキンエルマー社製の示差走査型熱量計(DSC−7)を用いて、25〜240℃まで走査速度10℃/分で昇温後1分間保持し、次に240〜25℃まで走査速度10℃/分で降温後1分間保持し、次に25〜240℃まで走査速度10℃/分で再昇温させた。その再昇温後にポリプロピレン系樹脂のβ晶に由来する結晶融解ピーク温度(Tmβ)である145〜160℃にピークが検出されるか否かによりβ晶活性の有無を以下の基準にて評価した。
○:Tmβが145〜160℃の範囲内に検出された場合(β晶活性あり)
×:Tmβが145〜160℃の範囲内に検出されなかった場合(β晶活性無し)
なお、β晶活性の測定は、試料量10mgで、窒素雰囲気下にて行った。
積層多孔フィルムを縦60mm×横60mm角に切り出し、図2(A)に示すように、中央部が40mmφの円状に穴の空いたアルミ板(材質:JIS A5052、サイズ:縦60mm、横60mm、厚み1mm)2枚の間に挟み、周囲四方をクリップで固定した。
積層多孔フィルムをアルミ板2枚に拘束した状態のサンプルを測定温度180度、表示温度180℃である送風定温恒温器(ヤマト科学株式会社製、型式:DKN602)に入れ3分間保持した後、設定温度を100℃に変更し、10分以上の温度を掛けて100℃まで徐冷を行った。表示温度が100℃になった時点でサンプルを取り出し、アルミ板2枚で拘束した状態のまま25℃の雰囲気下で5分間冷却してサンプルを得た。得られたサンプルについて、以下の測定条件下で、中央部の40mmφの円状の部分について広角X線回折測定を行った。
・装置:マックサイエンス社製、型番:XMP18A
・X線源:CuKα線、出力:40lV、200mA
・走査方法:2θ/θスキャン、2θ範囲:5〜25°
・走査間隔:0.05°
・走査速度:5°/分
得られた回折プロファイルについて、ポリプロピレン系樹脂のβ晶の(300)面に由来するピークより、β晶活性の有無を以下のように評価した。
○:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出された場合(β晶活性あり)
×:ピークが2θ=16.0〜16.5°の範囲に検出されなかった場合(β晶活性なし)
なお、積層多孔フィルム片が60mm×60mm角に切り出せない場合は、中央部に40mmφの円状の穴に積層多孔フィルムが設置されるように調整し、サンプルを作製しても構わない。
(ポリオレフィン系樹脂フィルム(I層))
ポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ製、ノバテックPP FY6HA、MFR:2.4g/10分)とβ晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを準備した。この試料のポリプロピレン系樹脂100質量%に対して、β晶核剤を0.1質量%の割合で各原料系をドライブレンドし、東芝機械社製の同方向2軸押出機(口径:400mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混合後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂のペレットを作製した。ポリプロピレン系樹脂組成物のβ晶活性度は80%であった。
(ポリオレフィン系樹脂フィルム(I層))
A層として、ポリプロピレン系樹脂(プライムポリマー社製、プライムポリプロ F300SV、密度:0.90g/cm3、MFR:3.0g/10分)と、β晶核剤として、3,9−ビス[4−(N−シクロヘキシルカルバモイル)フェニル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンを準備した。このポリプロピレン系樹脂100質量%に対して、β晶核剤を0.2質量%の割合で各原料をドライブレンドし、東芝機械株式会社製の同方向二軸押出機(口径:40mmφ、L/D:32)に投入し、設定温度300℃で溶融混練後、水槽にてストランドを冷却固化し、ペレタイザーにてストランドをカットし、ポリプロピレン系樹脂のペレットを作製した。
フィラー(a)として日本軽金属社製アルミナ LC−235C(平均粒径:0.5μm)19.7質量%、樹脂バインダー(b)としてクラレ社製ポリビニルアルコール PVA124(鹸化度:98.0〜99.0%、平均重合度:2400)0.3質量%を純水80.0%質量%にサーモジナイザーを用いて分散させた。この時、分散液中の固形分の含有率は、分散液100質量%に対し20質量%であった。
得られた分散液を、製造例1によって作製した前記ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層−a)に目付量#20のバーコーターを用いて片面に塗布面積割合が100%となるように塗布した後、温度60℃で2分間乾燥させ、厚みが5μmとなる被覆層(II層)(以下II層−aと略する場合がある)を片面に形成し積層多孔フィルムを得た。
得られた積層多孔フィルムを、ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層−a)が表面となる面と、被覆層(II層−a)が表面となる面で重ね合わせ、それらを厚さ100μmのPTFEフィルムの間に挟み込み、温度180℃、圧力2.5kg/cm、圧着時間3秒の条件下にてヒートシール幅が15mmとなるように熱圧着を実施した。フィルムの評価結果を表1に示す。
実施例1と同様の分散液を用い、目付量#20のバーコーターを用いてポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層−a)の片面中央に塗布面積割合が90%となるようにバーコーターの幅とフィルムの幅を調整し塗布したこと以外は実施例1と同様の方法で被覆層(II層)(以下II層−bと略する場合がある)を片面に形成し積層多孔フィルムを得た。得られた積層多孔フィルムをポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層−a)が表面となる面と、被覆層(II層−b)が表面となる面で重ね合わせ、実施例1と同様の方法で熱圧着を実施した。フィルムの評価結果を表1に示す。
ポリオレフィン系樹脂多孔フィルムを“I層−b”に変更した以外は実施例1と同様の方法で積層多孔フィルムを得た。得られた積層多孔フィルムをポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層−b)が表面となる面と、被覆層(II層−a)が表面となる面で重ね合わせ、温度180℃、圧力2.5kg/cm、圧着時間3秒の条件下にてヒートシール幅が15mmとなるように熱圧着を実施した。フィルムの評価結果を表1に示す。
20 非水電解液二次電池
21 正極板
22 負極板
24 正極リード体
25 負極リード体
26 ガスケット
27 正極蓋
31 アルミ板
32 サンプル
33 クリップ
34 フィルム縦方向
35 フィルム横方向
41 上部チャック
42 サンプル(非溶着部)
43 サンプル(溶着部)
44 下部チャック
Claims (11)
- ポリオレフィン系樹脂多孔フィルム(I層)の少なくとも片面に、フィラー(a)および樹脂バインダー(b)を含有する被覆層(II層)を有する積層多孔フィルムであって、2枚の該積層多孔フィルムの表面同士を熱融着した時のT型剥離強度が30gf/15mm以上であることを特徴とする積層多孔フィルム。
- 2枚の積層多孔フィルムのうち、一方の前記I層側表面と、他方の前記II層側表面を熱融着した時のT型剥離強度が30gf/15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層多孔フィルム。
- 2枚の積層多孔フィルムのうち、一方の前記II層側表面と、他方の前記II層側表面を熱融着した時のT型剥離強度が30gf/15mm以上であることを特徴とする請求項1に記載の積層多孔フィルム。
- 前記II層側表面が、被覆領域と非被覆領域とを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
- 前記II層側表面において被覆領域の占める割合が、前記I層の全表面積に対して85〜99%であることを特徴とする請求項4に記載の積層多孔フィルム。
- 積層多孔フィルムの長手方向における端部に、前記II層側表面の非被覆領域を有することを特徴とする請求項4または5に記載の積層多孔フィルム。
- 前記II層側表面の被覆領域に該当する前記I層の表面の領域のみに表面処理を施した後、前記II層を積層してなることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
- 前記I層にポリプロピレン系樹脂が含まれていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
- 前記I層がβ晶活性を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の積層多孔フィルム。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の積層多孔フィルムを用いた非水電解液二次電池用セパレータ。
- 請求項10に記載の非水電解液二次電池用セパレータを用いた非水電解液二次電池。
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