JP2013170244A - 水性樹脂組成物 - Google Patents

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JP2013170244A JP2012036119A JP2012036119A JP2013170244A JP 2013170244 A JP2013170244 A JP 2013170244A JP 2012036119 A JP2012036119 A JP 2012036119A JP 2012036119 A JP2012036119 A JP 2012036119A JP 2013170244 A JP2013170244 A JP 2013170244A
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Hideki Naruse
秀樹 成瀬
Yasushi Iki
康司 壹岐
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Asahi Kasei Chemicals Corp
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Abstract

【課題】増粘剤としてポリカルボン酸系増粘剤又はセルロース系増粘剤を使用するクリヤー塗料又は多彩塗料用として、耐水白化性、耐候性、耐クラック性に優れる塗膜を得ることが可能な水性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】特定のエチレン性不飽和単量体より得られる重合体100質量部に対して、不揮発分として5質量部以上20質量部以下の乳化剤を含有することを特徴とする水性樹脂エマルジョンを含んでなる水性樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、塗料用に好ましく用いられる水性樹脂組成物に関する。
近年、環境問題の観点から水性樹脂塗料が広く用いられている。特に建築物の外壁材のトップコートとして用いられるクリヤー塗料や多彩塗料は、無機顔料が配合されるエナメル塗料と比較して、塗膜が雨水等の水分を吸収することにより生じる白化現象が目立ちやすく、美観が損なわれるため、極めて高いレベルの耐水白化性が求められる。一般に塗装は、スプレー、ローラー、刷毛等により行われるが、塗装作業性の改善や垂直面に塗装した際のタレ防止等を目的として、塗料に増粘剤を適量配合し、所定の粘性に調整して行われる。増粘剤には様々なタイプのものが存在するが、用いる増粘剤により、塗膜の耐水白化性は大きく変化する。特にポリカルボン酸系増粘剤やセルロース系増粘剤は、チキソトロピック性の高い塗料が得られるため、一般に広く用いられているが、ウレタン会合型の増粘剤等と比較すると、塗膜の耐水白化性が著しく劣るという問題があった。例えば、ある水性樹脂エマルジョンについて、ウレタン会合型の増粘剤を配合した水性樹脂組成物から得られる塗膜は水に数日浸漬しても、ほとんど白化現象が生じないにもかかわらず、増粘剤のタイプをポリカルボン酸に変更して同様に塗膜を作製し、同様に水中浸漬すると、著しい白化現象が起こることは、珍しくはない。これは、ポリカルボン酸の吸水性が著しく高いためである。またクリヤー塗料や多彩塗料等のトップコートとして用いられる塗料には、美観上、耐候性、耐クラック性に対するも要求も厳しい。特許文献1には、シリコーン変性剤とエチレン性不飽和単量体とを乳化重合することにより、耐候性、耐クラック性に優れた塗膜を形成し得るシリコーン含有高分子エマルジョンが開示されているが、ポリカルボン酸系増粘剤やセルロース系増粘剤を含む塗膜の耐水白化性について、更なる改善が求められていた。特許文献2には、ガラス転移点(以下Tg)が−5℃以下の重合体とTgが0℃以上の重合体を含むことで、塗膜が耐水性、耐候性、耐汚染性、柔軟性に優れる水系防水コーティング剤が開示されているが、シリコーン成分を含有していないため、長期に渡る塗膜の耐候性の維持という点では不十分である。特許文献3には、エマルジョンと水溶性樹脂を架橋させることで、塗膜が耐候性、耐温水白化性、耐凍害性、耐ブロッキング性等に優れる塗料用水性樹脂組成物が記載されているが、架橋により塗膜表面が硬くなるため、耐汚染性や耐ブロッキング性には優れる一方、高いレベルの耐クラック性が要求される用途には不向きである。
特開2006−273919号公報 特開2001−72918号公報 WO2008/102816号公報
本発明は、耐水白化性、耐候性、光沢保持性、耐クラック性に優れる塗膜を形成し得る水性樹脂組成物の提供を目的とするものである。
本発明者らは、前記問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。即ち、本発明の第1は、
水性樹脂エマルジョンと増粘剤とを含む水性樹脂組成物であって、該水性樹脂エマルジョンが、
(a1)1種以上のエチレン性不飽和カルボン酸エステル:80〜100質量%、及び
(a2)1種以上の(a1)以外のエチレン性不飽和単量体:0〜20質量%
から得られる重合体[A]、並びに該重合体[A]100質量部に対し、固形分として5質量部以上20質量部以下の乳化剤を含有し、該増粘剤がポリカルボン酸系増粘剤又はセルロース系増粘剤であることを特徴とする上記水性樹脂組成物である。
本発明の第2は、
シリコーン変性剤として、下記(b1)〜(b3)の有機シラン化合物1種以上の加水分解縮合物[B]を更に含有することを特徴とする本発明の第1の水性樹脂組成物である。
(b1)下記式(1)で表される有機シラン化合物((b2)又は(b3)に該当するものを除く)
式(1):
Figure 2013170244

(R1は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基、フェニル基、又はシクロヘキシル基、Rは水素原子、又は炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、Rはそれぞれ、独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、又は水酸基であり、n=1〜3、m=0〜1、ただしn+m≦3)
(b2)下記式(2)で表される有機シラン化合物
式(2):
CH−Si−(R) (2)
(Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、又は水酸基)
(b3)環状有機シラン化合物又は下記式(3)で表される有機シラン化合物
式(3):
(CH −Si−(R (3)
(Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、又は水酸基)
本発明の第3は、
前記重合体[A]100質量部に対し、有機シラン化合物(b1)〜(b3)の添加量の合計(縮合前の有機シラン化合物(b1)〜(b3)の質量の合計)が0.1質量部以上200質量部以下であることを特徴とする本発明の第1又は2の水性樹脂組成物である。
本発明の第4は、
前記乳化剤が反応性乳化剤であることを特徴とする本発明の第1〜3のいずれかの水性樹脂組成物である。
本発明の水性樹脂組成物により得られる塗膜は、耐水白化性、耐候性、光沢保持性、耐クラック性に優れるため、塗料または建築仕上げ材として有用である。特には、耐水白化性の要求レベルが極めて高いクリヤー塗料、多彩塗料用として有用である。
本発明について、以下に具体的に説明する。本発明の水性樹脂組成物は、例えば通常の乳化重合法によって得られる水性樹脂エマルジョンに対し、ポリカルボン酸系増粘剤及び/又はセルロース系増粘剤を添加することにより得られるものである。乳化重合の方法に関しては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。すなわち、水性媒体中で重合性単量体、乳化剤、ラジカル重合開始剤および必要に応じて用いられる他の添加剤成分などを基本組成成分とする分散系において、通常60〜90℃の加温下にて単量体成分の乳化重合を行う方法を用いることができる。重合系内への単量体組成物の供給方法としては、単量体を一括して仕込む単量体一括仕込み法や、単量体を連続的に滴下する単量体滴下法、単量体と水と乳化剤とを予め混合乳化しておき、これらを滴下するプレエマルジョン法、あるいはこれらを組み合わせる方法などが挙げられる。
乳化剤
本発明に用いる乳化剤としては、一分子中に少なくとも一つ以上の親水基と一つ以上の親油基を有する化合物を指す。例えば、非反応性のアルキル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸塩、アルキルリン酸塩、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩などのアニオン性乳化剤が挙げられ、また非反応性のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、及びポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルなどのノニオン性乳化剤が挙げられる。
これらの他に親水基と親油基を有する乳化剤の化学構造式の中にエチレン性二重結合を導入した、いわゆる反応性乳化剤を用いても良い。反応性乳化剤のうち、アニオン性乳化剤としては、例えばスルホン酸基、スルホネート基又は硫酸エステル基及びこれらの塩を有するエチレン性不飽和単量体であり、スルホン酸基、又はそのアンモニウム塩かアルカリ金属塩である基(アンモニウムスルホネート基、又はアルカリ金属スルホネート基)を有する化合物であることが好ましい。例えば、アルキルアリルスルホコハク酸塩(例えば、エレミノール(商標)JS−2、JS−5(三洋化成(株)製)等が挙げられる)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル塩(例えば、アクアロン(商標)HS−10(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる)、α−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ポリオキシエチレン硫酸エステル塩(例えば、アデカリアソープ(商標)SE−1025N(旭電化工業(株)製)等が挙げられる)、アンモニウム−α−スルホナト−ω−1−(アリルオキシメチル)アルキルオキシポリオキシエチレン(例えば、アクアロン(商標)KH−10(第一工業製薬(株)製)などが挙げられる)などのスチレンスルホン酸塩が挙げられる。また、反応性乳化剤のうち、ノニオン性乳化剤としては、例えばα−〔1−〔(アリルオキシ)メチル〕−2−(ノニルフェノキシ)エチル〕−ω−ヒドロキシポリオキシエチレン(例えば、アデカリアソープ(商標)NE−20、NE−30、NE−40(旭電化工業(株)製)等が挙げられる)、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル(例えば、アクアロン(商標)RN−10、RN−20、RN−30、RN−50(第一工業製薬(株)製)等が挙げられる)などが挙げられる。
本発明においては、乳化剤の使用量が非常に重要である。増粘剤として、ポリカルボン酸系増粘剤又はセルロース系増粘剤を含む場合には、塗膜の耐水白化性が著しく損なわれる場合が多いが、本発明で規定される量の乳化剤を使用することで、耐水白化性に優れる塗膜を得ることができる。本発明は特定の理論によりその範囲を限定されるものではないが、一般に塗膜に吸収された水は、エマルジョン粒子の間隙部分に偏って存在し、粒子間隙部分と粒子内部との屈折率の差により、白化現象が生じると考えられる。本発明の水性樹脂組成物により得られる塗膜は、エマルジョン粒子内部への吸水性が高いため、粒子間隙部分と粒子内部との屈折率の差が縮まり、優れた耐水白化性を示すと考えられる。使用する乳化剤の量としては、エチレン性不飽和単量体より得られる重合体〔A〕100質量部に対し、固形分として5質量部以上20質量部以下、好ましくは6質量部以上15質量部以下用いることが重要である。用いる乳化剤の構造としては、特に限定はないが、塗膜表面へのブリードアウト抑制の観点から、前述の反応性乳化剤がより好ましい。
重合体[A]
本発明に用いられる重合体[A]は、特定のエチレン性不飽和単量体、より具体的には1種以上のエチレン性不飽和カルボン酸エステル(a1):80〜100質量%、及び1種以上の前記(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2):0〜20質量%から得られる。
エチレン性不飽和カルボン酸エステル(a1)
本発明に用いられるエチレン性不飽和単量体のうち、エチレン性不飽和カルボン酸エステル(a1)の具体例としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、及びヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)
(a1)以外のエチレン性不飽和単量体(a2)の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸などのカルボン酸単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、ダイアセトンメタクリルアミド、マレイン酸アミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミドなどのアミド基含有単量体、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどの芳香族単量体などが挙げられる。また、これらの単量体に加えて、本発明の水性樹脂組成物に要求される様々な品質、物性を改良するために、前記以外の単量体成分をさらに使用することもできる。それらの単量体としては、上記の単量体と共重合可能なその他の重合性単量体が使用できる。例えば、アミノ基、スルホン酸基、リン酸基などの官能基を有する各種の単量体、さらには酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ビニルピロリドン、メチルビニルケトン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなども所望に応じて使用できる。
加水分解縮合物[B]
本発明においては、塗膜に高いレベルの耐候性を付与するために、シリコーン変性剤として、下記(b1)〜(b3)の有機シラン化合物1種以上の加水分解縮合物[B]を含有することが好ましい。
(b1)下記式(1)で表される有機シラン化合物((b2)又は(b3)に該当するものを除く)
式(1):
Figure 2013170244

(R1は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基、フェニル基またはシクロヘキシル基、Rは水素原子、又は炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、Rはそれぞれ、独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、又は水酸基であり、n=1〜3、m=0〜1、ただしn+m≦3)
(b2)下記式(2)で表される有機シラン化合物
式(2):
CH−Si−(R) (2)
(Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、又は水酸基)
(b3)環状有機シラン化合物又は下記式(3)で表される有機シラン化合物
式(3):
(CH −Si−(R (3)
(Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、又は水酸基)
有機シラン化合物(b1)の好ましい具体例としては、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトシキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、及びγ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランなどがあり、またこれらの二種以上を用いてもよい。有機シラン化合物(b1)の使用量としては、重合体[A]100質量部に対して、0.1質量部以上使用することで、得られる塗膜の耐候性が向上する。また(b1)の使用量が多い程耐候性の向上が期待できるが、製造コストの抑制の観点から、重合体[A]100質量部に対して200質量部以下、好ましくは150質量部以下とするのが好ましい。
有機シラン化合物(b2)の好ましい具体例としては、メチルトリメトキシシラン、及びメチルトリエトキシシランなどがあり、またこれらの二種以上を用いてもよい。有機シラン化合物(b2)の使用量としては、重合体[A]100質量部に対して、0.1質量部以上200質量部以下、好ましくは150質量部以下とすることが、塗膜性能と製造コストとのバランスの点で好ましい。
有機シラン化合物(b3)の好ましい具体例としては、環状有機シラン化合物については、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロシロキサン、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、及びテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンを用いることができ、これらの二種以上を用いてもよい。又、式(3)で表される有機シラン化合物については、ジメチルジメトキシシラン、及びジメチルジエトキシシランなどがあり、またこれらの二種以上を用いてもよい。有機シラン化合物(b3)の使用量としては、重合体[A]100質量部に対して、0.1質量部以上200質量部以下、好ましくは150質量部以下とすることが、塗膜性能と製造コストとのバランスの点で好ましい。
有機シラン化合物(b3)を用いることにより、該有機シラン化合物の加水分解縮合物[B]が形成するシリコーン重合体の架橋密度を低くし、重合体の構造が複雑になることを防ぐことができ、これによって、塗膜に柔軟性を付与することができる。一般に柔軟性を有し、耐クラック性に優れる塗膜は、耐候性が劣る傾向があるが、有機シラン化合物(b3)を用いることで、耐候性、耐クラック性共に優れる塗膜を得ることができる。
前記した有機シラン化合物の加水分解縮合物[B]の存在は、29Si−NMR(29Si核磁気共鳴スペクトル)またはH−NMR(プロトン核磁気共鳴スペクトル)によって知ることができる。例えば、有機シラン化合物(b2)の加水分解縮合物は、29Si−NMRのケミカルシフトが−40〜−80PPMにピークを示すことで同定することができる。また、有機シラン化合物(b3)の加水分解縮合物は、29Si−NMRのケミカルシフトが−16〜−26PPMにピークを示すことで同定することができる。
本発明の水性樹脂組成物の製造に用いる重合開始剤には特に制限はなく、例えば一般に用いられるラジカル重合開始剤を用いることができる。ラジカル重合開始剤は、熱又は還元性物質等によってラジカルを生成して重合性単量体の付加重合を起こさせるもので、水溶性又は油溶性の過硫酸塩、過酸化物、アゾビス化合物等がある。具体的には過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、及び2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等があり、好ましくは水溶性のものである。なお、重合速度の促進や低温反応を望む場合には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホオキシレート塩等の還元剤をラジカル重合開始剤と組み合わせて用いることができる。
また必要に応じて、分子量調整剤を使用することができる。具体的にはドデシルメルカプタン、ブチルメルカプタン等が挙げられる。使用方法は特に限定されるものではないが、使用量が多い場合には、重合体の分子量低下による耐候性能低下を招くことがあるため、その量は全単量体質量の2%以下が好ましい。
その他、本発明の水性樹脂組成物には、通常水系塗料に添加配合される成分、例えば、増粘剤(ポリカルボン酸系増粘剤、及びセルロース系増粘剤を除く)、成膜助剤、可塑剤、凍結防止剤、消泡剤、染料、防腐剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を任意に配合することができる。上記増粘剤としては、ポリビニルアルコール(部分鹸化ポリ酢酸ビニル等を含む)、ポリビニルピロリドン等の高分子分散安定剤等、その他ポリエーテル系増粘剤等が挙げられ、これらを単独もしくは複数用いることができる。
一方、ポリカルボン酸系増粘剤、及び/又はセルロース系増粘剤は、本発明の水性樹脂組成物の必須成分である。
ポリカルボン酸系増粘剤とは、一般にカルボキシル基を含有するエチレン性不飽和単量体(例えば、アクリル酸、メタクリル酸など)とエチレン性不飽和カルボン酸エステル(例えばメチルアクリレート、エチルアクリレートなど)との共重合エマルジョンである。このようなエマルジョンは、アンモニア水や水酸化カリウムなどを添加し、pHをアルカリ領域に調整することで、エマルジョン構造が破壊されて高粘度の水溶性樹脂となり、配合物全体の粘度を上昇させる効果を持つ。一般にアルカリ増粘剤と呼ばれるものである。前述の通り、重合体がアルカリ添加後に水へ溶解することが重要であるため、共重合成分であるエチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸エステルがより好ましく、またエステル構造部分については、メチル基やエチル基などの炭素数が小さいものが好ましい。
セルロース系増粘剤とは、粉末状の各種セルロース系化合物(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)を水に溶解させたものである。非常に粘性の高い液体であるため、取り扱い上、5質量%以下に調整して用いるのが一般的である。エマルジョンに添加することで、配合物全体の粘度が大幅に上昇する。
従来の技術においてセルロース系増粘剤、及び/又はポリカルボン酸系増粘剤を使用する場合は、前述したように、塗膜の耐水白化性を著しく損なうため、この問題を解決する本発明の水性樹脂組成物は有効であり、優れた技術的意義を有する。
造膜助剤として具体的には、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ブタンジオールイソブチレート、グルタル酸ジイソプロピル、プロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールメチルエーテル、等が挙げられる。これら成膜助剤は、単独または併用など任意に配合することができる。
可塑剤として、具体的には、フタル酸ジブチル、及びフタル酸ジオクチル等が挙げられる。
凍結防止剤として、具体的には、エチレングリコール、及びプロピレングリコール等が挙げられる。
紫外線吸収剤にはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系があり、いずれも使用可能である。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、及び2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノンなどがある。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニル〕ベンゾトリアゾール)、メチル−3−〔3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネートとポリエチレングリコール(分子量300)との縮合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN1130)、イソオクチル−3−〔3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル〕プロピオネート(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN384)、2−(3−ドデシル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN571)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、及び2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN900)などがある。
トリアジン系紫外線吸収剤として、具体的には、TINUVIN400(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。
光安定剤としては、ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく、その中で塩基性の低いものがより好ましく、塩基定数(pKb)が8以上のものが特に好ましい。具体的には、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−ブチルマロネート、1−〔2−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕エチル〕−4−〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピニルオキシ〕−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル−セバケートの混合物(日本チバガイギー(株)製、製品名:TINUVIN292)、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、及びTINUVIN123(製品名、日本チバガイギー(株)製)などがある。
本発明の水性樹脂組成物の製造において、紫外線吸収剤および/または光安定剤を導入する方法の例としては、乳化重合時に存在させることにより水性樹脂エマルジョンに導入する方法、紫外線吸収剤および/または光安定剤を成膜助剤などと混合して水性樹脂エマルジョンに添加することにより導入する方法、及び紫外線吸収剤および/または光安定剤を成膜助剤と混合し、界面活性剤、水を加え乳化させた後、水性樹脂エマルジョンに添加することにより導入する方法が挙げられる。また、紫外線吸収剤と光安定剤を併用すると、相乗効果により卓越した耐久性を示す。
本発明の水性樹脂組成物の製造において、乳化重合時の系内のpHは、特に限定されるものでないが、pH4以下で乳化重合を実施することにより、シリコーン変性剤〔A〕の縮合反応が速やかに起こり、乳化重合後に縮合反応が進むことを抑制できるため、製品としての貯蔵安定性が向上するので好ましい。
本発明に用いられる水性樹脂エマルジョンは、乳化重合の終了後、有機シラン化合物の加水分解縮合物〔B〕の縮合反応を完結させるために、pH9〜12の条件下で6時間以上保持することが好ましい。更には、副生するアルコールを蒸留することにより、蒸発除去することが好ましい。
本発明に用いられる水性樹脂エマルジョンの平均粒子径は、10〜1000nmであることが好ましい。また、長期の分散安定性を保つため、塩基性物質、例えばアンモニア、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類を始めとする塩基性有機化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属塩を始めとする塩基性無機化合物等を用いてpH5〜10の範囲に調整することが好ましい。
本発明において示される重合体のTgは、実験的にまたは計算により得られる。実験的には、重合体の動的粘弾性測定や示差走査熱量分析(DSC)を行うことにより測定できる。計算では、通常知られているFoxの式:1/Tg=W1 /Tg1 +W2 /Tg2 +・・・+Wn /Tgn(W1、W2、・・・、Wn は、各エチレン性不飽和単量体の質量分率、Tg1、Tg2、・・・、Tgn は各エチレン性不飽和単量体のホモポリマーTg(K:絶対温度))により求めることができる。このとき、計算に使用するホモポリマーのTgは、例えばポリマーハンドブック(John Willey & Sons)に記載されている。
Tgは、塗膜の耐クラック性に大きく影響し、Tgが高い塗膜は柔軟性に劣り、クラックが入りやすくなる場合がある。そのため、耐クラック性に優れる塗膜を得るための重合体のTg(計算値)の上限としては通常50℃、好ましくは40℃である。Tgが低いほど、耐クラック性に優れる塗膜を得る事ができる。しかし一方で、Tgの低い塗膜は耐候性が劣る場合がある。そのため、耐候性に優れる塗膜を得るための重合体のTg(計算値)の下限としては通常0℃、好ましくは10℃である。
なお、製造例及び比較製造例で用いた各エチレン性不飽和単量体のホモポリマーTgを表1に記載する。
Figure 2013170244
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものでない。なお、実施例および比較例中の部および%は、別途明記されていない限りそれぞれ質量部および質量%を示す。また、得られた水性樹脂組成物の塗膜性能評価については、下記に示す配合組成で塗料を調整し、下記に示す試験方法に従って試験を実施した。
<耐候性能評価用 下塗り黒色エナメル塗料の作製>
・顔料ディスパージョンの作製
分散剤:SNディスパーザント5027 5.0部
(商品名、サンノプコ(株)製)
アンモニア水 0.5部
プロピレングリコール 23.5部
水 147.8部
タイペークCR−97(商品名、石原産業(株)製) 333.6部
消泡剤:SNデフォマー1310 2.9部
(商品名、サンノプコ(株)製)
上記、配合物を卓上サンドミルにて20分間分散させ、顔料ディスパージョンを得た。
・黒色エナメル塗料の作製
エマルジョン:ポリデュレックスG633(固形分換算) 50.0部
(商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)
エチレングリコールモノブチルエーテル50%溶液 10.0部
テキサノールCS−12(商品名、チッソ(株)製) 10.0部
上記顔料ディスパージョン 51.3部
増粘剤:アデカノールUH−438の10%水溶液 0.1部
(商品名、旭電化工業(株)製、ウレタン会合タイプ)
カーボンブラック:K14 11.1部
(商品名、東洋インキ(株)製)
上記、配合物を翼径45mmの撹拌羽根を用い、スリーイワンモーター攪拌機にて分散させ、黒色エナメル塗料を得た。
<塗膜性能評価用クリヤー塗料の作製>
実施例及び比較例に示す組成のクリヤー塗料を作製し、下記に示す塗膜性能の評価に用いた。
<試験方法>
・粒子径の測定
得られた水性樹脂エマルジョンの平均粒子径を、リーズ&ノースラップ社製のマイクロトラック粒度分布計にて測定した。
・固形分率の測定
予め質量の分かっているアルミ皿に、表2に示す製造例の水性樹脂エマルジョンを約1g正確に秤量し、恒温乾燥機で105℃にて3時間乾燥した後、シリカゲルを入れたデシケーター中で、30分放冷後に精秤した。当該物質の乾燥後質量を乾燥前質量で割ったものを固形分率とした。
<塗膜性能の評価方法>
・耐水白化性
ガラス板上に前記クリヤー塗料を100μmのアプリケーターで塗工し、室温23℃、湿度50%に調節された室内で24時間養生した。この塗板を23℃の水中に浸漬し、24時間経過後の塗膜外観を目視にて観察し、下記の基準に従って評価した。
◎:ほとんど無色透明
〇:わずかな白化は見られるが、高い透明性を示す
△:透明性はあるが、白化
×:不透明なレベルの著しい白化
・耐候性
前記の下塗り用黒色エナメル塗料をバーコーターにて硫酸アルマイト板に、塗料として約100μmの厚みで塗工し、100℃で1時間乾燥させた。次いで、該黒色エナメル塗膜上に前記クリヤー塗料をバーコーターにて、同様に100μmの厚みで塗工し、50℃で1週間乾燥することにより、耐候性評価用サンプル塗工板を得た。得られた塗板の60度―60度鏡面反射率を初期光沢値として測定した。引き続き、アイスーパーUVテスター SUV−W23(岩崎電気株式会社製)により、下記に示す試験条件にて、曝露600時間経過後の光沢値を測定し、初期光沢値に対する割合(これを光沢保持率と定義する)を算出し、下記の基準に従って評価した。
(アイスーパーUVテスターの試験条件)
照度:1000W/m2
照射:63℃、50%RH、8時間
暗黒・湿潤:30℃、96%RH以上、4時間
(耐候性の判定基準)
◎:光沢保持率90%以上
○:光沢保持率80%以上90%未満
△:光沢保持率70%以上80%未満
×:光沢保持率70%未満
・耐クラック性
ガラス板上に前記クリヤー塗料を250μmのアプリケーターで塗工し、室温23℃・湿度50%に調節された室内で約5時間自然乾燥させた後、塗膜を幅10mm、長さ80mmの大きさで切り出し、100℃のオーブンで1時間養生した。得られた塗膜試験片の引張試験を東洋ボールドウィン(株)製 テンシロン UTM−III−500により、下記に示す試験条件にて測定し、下記の基準に従って評価した。
(テンシロン UTM−III−500の試験条件)
引張速度:50mm/min
試験温度:23℃
(耐クラック性の判定基準)
◎:破断点伸度150%以上
〇:破断点伸度100%以上150%未満
△:破断点伸度50%以上100%未満
×:破断点伸度50%未満
<水性樹脂エマルジョンの製造>
[製造例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下槽および温度計を取り付けた反応容器に水492部および乳化剤として、アクアロンKH−1025(25%水溶液、第一工業製薬(株)製)を25.6部添加し、反応容器を加熱した。反応容器内の液温が80℃に到達したところで、2%過硫酸アンモニウム水溶液(以下APSと略す)を12部添加した。その5分後、重合の第一段階として、エチレン性不飽和単量体(合計400質量部):メチルメタクリレート139.2部、シクロヘキシルメタクリレート40部、ブチルメタクリレート32.8部、ブチルアクリレート183.2部、メタクリル酸2.4部、アクリル酸2.4部、乳化剤:KH−1025を150部、重合開始剤:2%APS水溶液20部、水152部よりなる混合液を作製し、該混合液0をホモミキサーにより乳化し、プレ乳化液を得た。得られたプレ乳化液を90分かけて滴下した。滴下中は反応容器内の液温を80℃に保った。滴下終了後、プレ乳化液の入っていた容器に水20部を投入して容器の底面を簡単にすすぎ、そのすすぎ液を反応容器内に投入して、30分間80℃に保った。
重合の第2段階として、エチレン性不飽和単量体(合計400質量部):メチルメタクリレート211.2部、シクロヘキシルメタクリレート40部、ブチルメタクリレート72部、ブチルアクリレート64部、メタクリル酸5.6部、アクリル酸5.6部、アクリルアミド1.6部、乳化剤:KH−1025を16部、重合開始剤:2%APS水溶液20部、水228部よりなる混合液から、同様にプレ乳化液を作製し、90分かけて滴下した。滴下終了後は第1段階と同様に水20部でプレ乳化液の容器をすすいで反応容器へ投入し、反応容器内の液温を80℃で90分保った後、室温まで冷却した。その水素イオン濃度を測定したところ、pHは2.5〜3.5の範囲であった。更には25質量%アンモニア水を9.6g添加して撹拌し、水性樹脂エマルジョンの固形分が理論値として42%になるよう、水を加えて調整し、110メッシュのフィルターで濾過して水性樹脂エマルジョンを得た。得られた水性樹脂エマルジョンの水素イオン濃度を測定したところ、pHは8〜9の範囲であった。なお、水性樹脂エマルジョン製造時に使用したすべての物質について、重合の第一段階及び第二段階で使用したエチレン性不飽和単量体の合計量100質量部に対する比率として、表2に示した。また乳化剤及び重合開始剤については、固形分として示した。
[製造例2〜4及び10〜11]
重合の第一段階及び第二段階において、シリコーン変性剤として、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン SZ6030(東レ・ダウコーニング(株)製)2.9部、メチルトリメトキシシラン Z6366(東レ・ダウコーニング(株)製)13.5部、ジメチルジメトキシシラン Z6329(東レ・ダウコーニング(株)製)21.6部からなる混合液をプレ乳化液とは別のラインで90分かけて滴下した点以外はすべて、製造例1と同様の方法で乳化重合を行い、水性樹脂エマルジョンを得た。使用したすべての物質の比率を製造例1と同様に、表2に示した。なお、製造例1で使用した乳化剤以外の乳化剤としては、アデカリアソープSE−1025A(25%水溶液、(株)ADEKA製)であり、製造例4及び製造例10において、重合の第一段階及び第二段階において、表2に示す割合で使用した。
[製造例9]
製造例1と同様に、表2に示す比率の物質を用いて乳化重合を行い、水性樹脂エマルジョンを得た。
[製造例5〜8及び12〜15]
製造例2などと同様の方法で乳化重合を行い、重合の第二段階の終了後に非反応性乳化剤として、製造例5及び12ではニューコール562−SN(20%水溶液、日本乳化剤(株)製)、製造例6及び13ではニューコール707−SF(30%水溶液、日本乳化剤(株)製)、製造例7及び14ではネオペレックスG−15(16%水溶液、花王(株)製)、製造例8及び15ではエマルゲン120(20%水溶液、花王(株)製)を、表2に示す割合で添加し、製造例1と同様にして水性樹脂エマルジョンを得た。
Figure 2013170244

表2中、エチレン性不飽和単量体の略称は、表1記載のものと同一である。また、乳化剤、重合開始剤、及びシリコーン変性剤の略称の趣旨は、以下のとおりである。
KH−1025:アクアロンKH−1025
SE−1025A:アデカリアソープSE−1025A
N562−SN:ニューコール562−SN
N707−SF:ニューコール707−SF
G15:ネオペレックスG−15
E120:エマルゲン120
APS:2%過硫酸アンモニウム水溶液
SZ−6030:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン SZ6030
Z6366:メチルトリメトキシシラン Z6366
Z6329:ジメチルジメトキシシラン Z6329
[実施例1]
製造例1で得られた水性樹脂エマルジョン120部を撹拌機で撹拌しながら、造膜助剤として、エチレングリコールモノブチルエーテルの50%水溶液を10部、及びテキサノールCS−12(チッソ(株)製)20部を添加後、20分間撹拌し、クリヤー塗料Aを作製した。クリヤー塗料Aは3点作製した。次にクリヤー塗料Aに対し、ポリカルボン酸系増粘剤として、SNシックナー618(12%水溶液、サンノプコ(株)製)2.5部を添加し、クリヤー塗料Bを作製した。同様にして、クリヤー塗料Aに対して、セルロース系増粘剤として、ヒドロキシエチルセルロース2.5%水溶液を20部添加し、クリヤー塗料Cを作製した。塗膜性能の評価は、耐候性及び耐クラック性についてはクリヤー塗料Aを、耐水白化性についてはクリヤー塗料B又はクリヤー塗料Cを用いて行い、前記判定基準に従って評価した。その結果を表3に示す。
[実施例2〜8及び比較例1〜7]
表3に示す製造例の水性樹脂エマルジョンを用い、実施例1と同様にしてクリヤー塗料A〜Cを作製し、同様の評価を行った。その結果を表3に示す。
Figure 2013170244
本発明の水性樹脂組成物は、高いレベルの耐水白化性が必要とされるクリヤー塗料又は多彩塗料用として好適である。本発明の水性樹脂組成物により得られる塗膜は、耐水白化性、耐候性、光沢保持性、耐クラック性に優れるため、コンクリート、セメントモルタル、スレート板、石膏ボード、押出成形板、発泡性コンクリートなどの無機建材、織布あるいは不織布を基材とした建材、金属建材などの各種下地に対する塗料または建築仕上げ材として有用である。このため、本発明は産業の各分野において高い利用可能性を有する。

Claims (4)

  1. 水性樹脂エマルジョンと増粘剤とを含む水性樹脂組成物であって、該水性樹脂エマルジョンが、
    (a1)1種以上のエチレン性不飽和カルボン酸エステル:80〜100質量%、及び
    (a2)1種以上の(a1)以外のエチレン性不飽和単量体:0〜20質量%
    から得られる重合体[A]、並びに該重合体[A]100質量部に対し、固形分として5質量部以上20質量部以下の乳化剤を含有し、該増粘剤がポリカルボン酸系増粘剤及び/又はセルロース系増粘剤であることを特徴とする上記水性樹脂組成物。
  2. 下記(b1)〜(b3)の有機シラン化合物1種以上の加水分解縮合物[B]を更に含有することを特徴とする請求項1に記載の水性樹脂組成物。
    (b1)下記式(1)で表される有機シラン化合物((b2)又は(b3)に該当するものを除く)
    式(1):
    Figure 2013170244

    (R1は炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜10のアクリル酸アルキル基、炭素数1〜10のメタクリル酸アルキル基、フェニル基、又はシクロヘキシル基、Rは水素原子、又は炭素数1〜16の脂肪族炭化水素基、Rはそれぞれ、独立して、炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、又は水酸基であり、n=1〜3、m=0〜1、ただしn+m≦3)
    (b2)下記式(2)で表される有機シラン化合物
    式(2):
    CH−Si−(R) (2)
    (Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、又は水酸基)
    (b3)環状有機シラン化合物又は下記式(3)で表される有機シラン化合物
    式(3):
    (CH −Si−(R (3)
    (Rはそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルコキシ基、アセトキシ基、又は水酸基)
  3. 前記重合体[A]100質量部に対し、有機シラン化合物(b1)〜(b3)の添加量の合計が0.1質量部以上200質量部以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の水性樹脂組成物。
  4. 前記乳化剤が反応性乳化剤であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の水性樹脂組成物。
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