JP2013167067A - 地中構造物の水平抵抗の評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】少なくとも上部が山留め壁としてソイルセメント壁で囲繞されると共に該ソイルセメント壁と一体化された地中構造物の水平抵抗をより正確に評価する。
【解決手段】上部が山留め壁としてのソイルセメント柱列壁20で囲繞されると共に該ソイルセメント柱列壁20と一体化された杭10の水平抵抗の評価方法であって、杭10の水平抵抗を評価するうえでの有効幅Dを、杭10の直径dとその両側のソイルセメント柱列壁20の厚みとを合わせた幅d´とすることを特徴とする。
【選択図】図15

Description

本発明は、地中構造物の水平抵抗の評価方法に関する。
杭頭に作用する水平力に対する杭の水平抵抗力及び水平変位量を、水平抵抗算定式により評価することが行われており、代表的な算定法として、杭を曲げ剛性を有する線材、そして、地盤をばねと仮定した解析モデルを用いた算定法が知られている(例えば、非特許文献1参照)。
また、場所打ちコンクリート杭の工事では、周囲の線路等の構造物の変状を防止するために、杭孔を掘削する前に、その周囲に山留め壁としてのソイルセメント壁を構築することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
社団法人 日本建築学界 編集・著作・発行,「建築基礎構造設計指針」,1988年1月25日 第1版第1刷発行,p.262〜273
特開2011−74675号公報
杭等の地中構造物に作用する水平力に対する地中構造物の水平抵抗力及び水平変位量を評価する際には、上記のソイルセメント柱列壁等の周囲の構造物の影響を考慮することが望ましいが、従来は、杭を囲繞するソイルセメント柱列壁を考慮しての評価は行われていなかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、少なくとも上部が山留め壁としてのソイルセメント壁で囲繞されると共に該ソイルセメント壁と一体化された地中構造物の水平抵抗をより正確に評価することを課題とするものである。
本発明に係る地中構造物の水平抵抗の評価方法は、少なくとも上部が山留め壁としてのソイルセメント壁で囲繞されると共に該ソイルセメント壁と一体化された地中構造物の水平抵抗の評価方法であって、前記地中構造物の水平抵抗を評価するうえでの有効幅を、前記ソイルセメント壁の厚みを含めた幅とすることを特徴とする。
前記地中構造物の水平抵抗の評価方法において、前記水平抵抗として、前記構造物に作用する水平地盤反力を評価してもよい。
前記地中構造物の水平抵抗の評価方法において、前記地中構造物は杭であってもよく、前記杭の水平抵抗を評価するうえでの有効幅を、前記杭の直径とその両側の前記ソイルセメントの厚みとを合わせた幅としてもよい。
本発明によれば、少なくとも上部が山留め壁としてのソイルセメント壁で囲繞されると共に該ソイルセメント壁と一体化された地中構造物の水平抵抗をより正確に評価することができる。
一実施形態に係る杭を示す立断面図である。 一実施形態に係る杭を示す平面図である。 地盤改良装置を示す立面図である。 掘削ビットを示す正面図である。 掘削ビットを示す側面図である。 掘削ビットを示す底面図である。 杭の施工手順を示す立断面図である。 杭の施工手順を示す平面図である。 杭の施工手順を示す平面図である。 杭の施工手順を示す立断面図である。 杭の施工手順を示す立断面図である。 杭の施工手順を示す立断面図である。 杭の施工手順を示す立断面図である。 杭の水平抵抗の評価方法の概念図である。 杭の水平抵抗の評価方法を説明するための平面図である。 他の実施形態に係る地下躯体を示す平面図である。
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る杭10を示す立断面図であり、図2は、該杭10を示す平面図である。これらの図に示すように、杭10は、頭部が地盤から突出していない円柱形状の場所打ちコンクリート杭であり、線路3(図7等参照)の近傍に打設されている。また、杭10の上部は、円筒形状のソイルセメント柱列壁20で囲繞されており、このソイルセメント柱列壁20と一体化されている。
ソイルセメント柱列壁20は、線路3の変状を防止するために杭10の施工に先立って構築された山留め壁(防護壁)であり、円環状に連結された複数の円柱形状のソイルセメント柱22を備える。隣接するソイルセメント柱22の中心間距離はソイルセメント柱22の直径よりも小さくなっており、隣り合うソイルセメント柱22同士は、部分的に重なり合っている。ここで、ソイルセメント柱列壁20の強度は地盤の強度より高く、杭10の強度の1/10程度である。
以下、ソイルセメント柱列壁20が一体的に構築された杭10の施工方法について説明する。図3は、ソイルセメント柱列壁20を構築するために用いられる地盤改良装置100を示す立面図である。この図に示すように、地盤改良装置100は、装軌車両110と、装軌車両110の台座部112から鉛直方向に延びるレール120と、レール120に昇降可能に取り付けられた起振装置130と、起振装置130と共に昇降可能にレール120に支持され起振装置130に接続されたロッド140と、起振装置130及びロッド140と共に昇降可能にレール120に支持されロッド140を軸心周りに回転させる回転装置150と、ロッド140の先端に取り付けられた掘削ビット160と、セメントミルク供給装置170とを備えている。
起振装置130は、偏心重錘を回転させることにより起振力を生じさせて、その起振力をロッド140に与える装置である。また、セメントミルク供給装置170は、ロッド140の内部を通じて掘削ビット160の先端までセメントミルクを供給し、掘削ビット160の先端からセメントミルクを吐出させる。
図4は、掘削ビット160を示す正面図であり、図5は、掘削ビット160を示す側面図である。また、図6は、掘削ビット160を示す底面図である。これらの図に示すように、掘削ビット160は、ロッド140に接続される軸部162と、軸部162の下部に側方に延びるように設けられた攪拌翼164と、軸部162における攪拌翼164の上側に外径方向に延びるように設けられた攪拌翼166と、軸部162の下端に設けられたビット168と、攪拌翼164に設けられた複数のビット169とを備えている。
図7〜図13は、杭10の施工手順を示す立断面図又は平断面図である。杭10の施工では、まず、図7に示すように、杭10の構築位置の周囲に円筒状のソイルセメント柱列壁20を地下水位以深まで構築する。
図8に示すように、ソイルセメント柱列壁20を構築する工程では、まず、ソイルセメント柱22を一つおきに構築し、つぎに、図9に示すように、間隔を空けて構築したソイルセメント柱22の間にソイルセメント柱22を構築する。
図10に示すように、各ソイルセメント柱22を構築する工程では、地盤改良装置100の回転装置150によりロッド140を介して掘削ビット160を回転させながら支持層に到達するまで地盤を掘削する。この際、起振装置130によりロッド140を介して掘削ビット160に起振力を与え、掘削ビット160を上下に振動させる。この振動が地盤に伝わり、地盤中の大きな礫や岩を移動させることにより、掘削効率が向上される。
また、各ソイルセメント柱22を構築する工程では、上記の掘削作業と並行して、セメントミルク供給装置170により、掘削孔内にセメントミルクを噴射させることで、掘削土とセメントミルクとを攪拌翼164、166で攪拌混合する。この際、セメントミルクを含んだ状態の土砂が起振装置130からの振動で液状化して軟化することにより、掘削効率が向上される。
また、間隔を空けて構築したソイルセメント柱22の間にソイルセメント柱22を構築する工程では、既に構築されたソイルセメント柱22の側部を切削しながら地盤を掘削すると共に、掘削孔内にセメントミルクを噴射して掘削土とセメントミルクとを攪拌混合することにより、新たに構築するソイルセメント柱22とその両側の既に構築されたソイルセメント柱22とを一体化させる。
以上のように円筒状のソイルセメント柱列壁20を構築した後に、図11に示すように、ソイルセメント柱列壁20の内側を、掘削機300により所定深さまで掘削する。この際、掘削孔内に安定液を満たすことになるが、止水性を有するソイルセメント柱列壁20が掘削孔の周囲を囲繞していることにより、安定液が周囲に漏れ出すことを防止できる。
次に、図12に示すように、掘削孔内に鉄筋籠12を建て込む。そして、図13に示すように、掘削孔内にトレミー管310を挿入し、トレミー管310を通して掘削孔内にコンクリートを打設する。打設したコンクリートが硬化することで杭10の構築が完了する。
以上のようにして構築する杭10の構造設計をする際には、地震により杭頭に作用する水平力に対する杭10の水平抵抗を評価するが、その評価方法の一実施例について説明する。
図14に示すように、本実施例に係る杭1の水平抵抗の評価方法では、杭1を曲げ剛性を有する線材、そして、地盤2をばねと仮定した解析モデルを用いた算定法により、杭1の水平抵抗力及び杭の水平変位量を求める。この算定法では、想定する解析モデルに関する下記(1)の基本微分方程式の解を利用して、杭1の水平抵抗力及び杭1の水平変位量を求める。例えば、杭1が地上に突出しておらず、且つ、杭頭が固定されていない場合には、杭1の水平変位量δは下記(2)式に示す値になり、杭1の水平抵抗力、即ち水平地盤反力の指標としての地盤2のばね定数Q/δは、下記(3)式に示す値になる。
(E:杭のヤング率、I:杭の断面2次モーメント、k::下記(5)式で示す水平地盤反力係数、D:杭径)
(Q:水平方向の荷重、β:下記(4)式で示す杭と地盤との相対剛性値)
ここで、杭径Dが大きいほど、杭と地盤との相対剛性値βが大きくなり、地盤のばね定数Q/δが大きくなる。
ところで、上述したように本実施形態では、ソイルセメント柱列壁20の強度は地盤の強度に比して格段に高く、また、ソイルセメント柱列壁20と杭10の上部とが一体化されていることにより、杭10の頭部に水平力が作用した際、ソイルセメント柱列壁20は杭10の頭部と一体で水平方向に変位する。このため、図15に示すように、杭10の頭部に水平力が作用した際、水平地盤反力は、杭10に対してその直径d分の幅のみならず、ソイルセメント柱列壁20の直径d´分(直径dとその両側のソイルセメント柱列壁20の厚みとを合わせた分)の幅に作用すると考えるのが実態に即している。そこで、本実施例に係る杭10の水平抵抗の評価方法では、杭10の有効幅(水平力に対して直交する方向の幅)である杭径Dを、D=dではなく、D=d´として、上記(1)〜(5)式により、杭10の水平変位量δ及び杭10の水平抵抗力(地盤のばね定数Q/δ)を評価する。
これにより、例えば、杭径が2800mmの杭10の外周に直径600mmのソイルセメント柱22からなる(即ち直径3400mmの)ソイルセメント柱列壁20を構築する場合において、杭径Dを3400mmとして杭10の水平抵抗力(地盤のばね定数Q/δ)を評価することで、杭径Dを2800mmとする場合に比して、約1.3倍の水平抵抗力が算定される。従って、杭10の構造設計において杭径dや鉄筋量を過大に設計することを防止でき、施工コストを低減できる。
図16は、他の実施形態に係る建物の地下躯体210を示す平面図である。この図に示すように、地下躯体210は、平面視にて矩形状の鉄筋コンクリート製の地下構造物である。また、地下躯体210は、矩形筒状のソイルセメント柱列壁220で囲繞されており、このソイルセメント柱列壁220と一体となっている。
ソイルセメント柱列壁220は、地下躯体210の施工に先立って構築された山留め壁(防護壁)であり、円環状に連結された複数の円柱形状のソイルセメント柱22を備える。隣接するソイルセメント柱22の中心間距離はソイルセメント柱22の直径よりも小さくなっており、隣り合うソイルセメント柱22同士は、部分的に重なり合っている。ここで、ソイルセメント柱列壁220の強度は地盤の強度より高く、地下躯体210のコンクリート強度の1/10程度である。
以上のような構成の地下躯体210の構造設計において、地震により上端に作用する水平力に対する10の水平抵抗を評価する際には、上述の実施形態に係る杭10と同様、地盤反力が作用する有効幅を、地下躯体210の幅dではなく、ソイルセメント柱列壁220の幅d´として、地下躯体210の水平変位量δ及び地下躯体210の水平抵抗力(地盤のばね定数Q/δ)を評価する。これにより、地下躯体210の水平抵抗をより正確に評価することができる。
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の実施形態では、地中構造物として場所打ちコンクリート杭と地下躯体とを例に挙げて本発明を説明したが、鋼管杭や既製コンクリート杭や壁杭等の他の地中構造物にも本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態では、掘削土とソイルセメントとを攪拌混合することにより構築するソイルセメント柱列壁を例に挙げて本発明を説明したが、ジェットグラウト工法のようにセメントを噴射して土砂と混合することにより構築するソイルセメント壁にも本発明を適用することができる。また、ソイルセメント壁は、ソイルセメント柱列壁に限られるものではない。さらに、上述の実施形態では、地中構造物の上部のみをソイルセメント壁で囲繞したが、地中構造物の上下方向の全体をソイルセメント壁で囲繞してもよい。
1 杭(地中構造物)、2 地盤、3 線路、10 杭(地中構造物)、12 鉄筋籠、20 ソイルセメント柱列壁(ソイルセメント壁)、22 ソイルセメント柱、100 地盤改良装置、110 装軌車両、112 台座部、120 レール、130 起振装置、140 ロッド、150 回転装置、160 掘削ビット、162 軸部、164、166 攪拌翼、168、169 ビット、170 セメントミルク供給装置、210 地下躯体(地中構造物)、220 ソイルセメント柱列壁(ソイルセメント壁)、300 掘削機、310 トレミー管

Claims (3)

  1. 少なくとも上部が山留め壁としてのソイルセメント壁で囲繞されると共に該ソイルセメント壁と一体化された地中構造物の水平抵抗の評価方法であって、
    前記地中構造物の水平抵抗を評価するうえでの有効幅を、前記ソイルセメント壁の厚みを含めた幅とすることを特徴とする地中構造物の水平抵抗の評価方法。
  2. 前記水平抵抗として、前記構造物に作用する水平地盤反力を評価することを特徴とする請求項1に記載の地中構造物の水平抵抗の評価方法。
  3. 前記地中構造物は杭であり、前記杭の水平抵抗を評価するうえでの有効幅を、前記杭の直径とその両側の前記ソイルセメントの厚みとを合わせた幅とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地中構造物の水平抵抗の評価方法。
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