本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。本実施形態に係る剥離装置1は、図1及び図10等に示すように、延在方向Lに直交する断面形状が長方形状の線材2(平角線材)に対して、当該線材2の表面に形成された被覆層3の剥離を行う装置である。本明細書では、線材2における延在方向Lに沿った領域であって、被覆層3の剥離対象となる領域を「剥離対象領域2a」とする。被覆層3は、樹脂やセラミックス等の電気的絶縁材料により形成され、図10に示すように、銅やアルミニウム等の導電性材料により形成された導体部分4の外周全域(当該導体部分4の延在方向Lに直交する断面の外周全域)に形成されている。このような線材2は、例えば、電動機や発電機等の回転電機用のコイルに用いられる。なお、本実施形態では、図10に示すように、被覆層3の剥離前の線材2の延在方向Lに直交する断面形状と、上記導体部分4の延在方向Lに直交する断面形状との双方が、長方形状とされている。
以下の説明では、特に区別して明記している場合を除き、「周方向」及び「径方向」は、線材2の延在方向Lを基準軸とする方向である。すなわち、剥離装置1の各部についての各方向は、図1に示すように剥離装置1に配置された(セットされた)状態での線材2の延在方向Lを基準軸として定義している。また、以下の説明における各部材についての方向や位置等に関する用語は、製造上許容され得る誤差による差異を有する状態を含む概念として用いている。
1.剥離装置の全体構成
剥離装置1は、図1及び図2に示すように、切削駆動機構10aと線材移動規制機構10bとを備えている。なお、図2は、図1と同じ状態においての剥離装置1の部分断面図を示している。詳細は後述するが、本実施形態では、切削駆動機構10aと線材移動規制機構10bとは、共通の部品を用いて一体的に形成されている。剥離装置1は、これらの切削駆動機構10a及び線材移動規制機構10bを作動させて、線材2の表面に形成された被覆層3を剥離する。
切削駆動機構10aは、切削部材30,40を、戻り方向側位置と切削方向側位置との間で往復動作方向A1,A2に沿って往復移動動作(往復動作)させる機構である。本実施形態では、第一切削部材30と第二切削部材40との2つの切削部材が備えられており、往復動作方向A1,A2は、第一切削部材30及び第二切削部材40のそれぞれについて個別に設定される。以下では、図2に示すように、第一切削部材30の往復動作方向を第一往復動作方向A1とし、第二切削部材40の往復動作方向を第二往復動作方向A2とする。
図7、図9、及び図11は第一切削部材30が切削方向側位置に位置する状態を示し、図13、図15、及び図17は第二切削部材40が切削方向側位置に位置する状態を示している。また、図1及び図2は第一切削部材30及び第二切削部材40の双方が戻り方向側位置に位置する状態を示している。被覆層3は、戻り方向側位置から切削方向側位置へ向かう方向である切削方向X1,X2(すなわち、往復動作方向A1,A2における一方側)に向かって移動する切削部材30,40により切削されることで剥離される。以下では、図2に示すように、第一切削部材30の切削方向を第一切削方向X1とし、第二切削部材40の切削方向を第二切削方向X2とする。
図3〜図6に示すように、切削部材30,40は一対の刃部31,41を有し、一対の刃部31,41の間に切削隙間32,42が形成されている。本実施形態では、一対の刃部31,41は、切削部材30,40における切削方向X1,X2側の端部に備えられているため、切削隙間32,42は、切削部材30,40における切削方向X1,X2側の端部に形成されている。そして、図10及び図11、或いは図16及び図17に示すように、線材2における互いに反対方向を向く2つの側面部(線材幅方向W1,W2における両側の2つの側面部)の被覆層3が、同時に(すなわち1つの工程で)剥離される。なお、線材幅方向W1,W2は、線材2の延在方向Lに直交する方向である。本実施形態では、被覆層3の剥離対象の線材2は、上述したように延在方向Lに直交する断面形状が長方形状の平角線材である。すなわち、線材2の断面形状には、一対の長辺部と一対の短辺部とが含まれ、これらの長辺部と短辺部とは互いに直交する方向に延びる。以下では、図10に示すように、上記長辺部に平行な線材幅方向を第一線材幅方向W1とし、上記短辺部に平行な線材幅方向を第二線材幅方向W2とする。
切削隙間32,42を基準とした戻り方向側位置及び切削方向側位置のそれぞれは、本実施形態では、図2及び図11、或いは、図2及び図17から明らかなように、周方向に互いに180度ずれた位置に設定されている。すなわち、戻り方向側位置と切削方向側位置との間の切削部材30,40(具体的には切削隙間32,42)の往復動作の軌跡は、延在方向Lに見て、径方向に平行であるとともに径方向の中心部を通る直線となる。なお、剥離対象領域2aの側面部の被覆層3を確実に剥離すべく、図11及び図17に示すように、本実施形態では、切削方向側位置は、剥離対象領域2aの切削方向X1,X2側の端部が切削隙間32,42に収まる位置よりも切削方向X1,X2側に設定されている。また、本実施形態では、切削方向側位置は、戻り方向側位置より径方向の内側に設定されているため、切削方向側位置は線材側位置であり、戻り方向側位置は非線材側位置である。
更に、本実施形態では、第一切削部材30及び第二切削部材40のそれぞれは、図2に示すように、延在方向Lにおける同一の位置(すなわち、延在方向Lに直交する同一の面内)において、往復動作するように構成されている。すなわち、第一切削部材30及び第二切削部材40のそれぞれの往復動作の軌跡は、同一の延在方向Lの位置において径方向の中心部を交差するように構成されている。そのため、線材2の固定状態で第一切削部材30及び第二切削部材40のそれぞれを往復動作させることで、第一切削部材30の往復動作の軌跡と第二切削部材40の往復動作の軌跡とを、同一の剥離対象領域2aにおいて交差させることが可能となっている。
線材移動規制機構10bは、図1及び図2に示すように、線材2の剥離対象領域2aに対して切削方向X1,X2側から当接する切削方向側当接部材50,60を有し、剥離対象領域2aの切削方向X1,X2側への移動を規制する機構である。なお、剥離対象領域2aの延在方向Lの長さや延在方向Lの位置は、線材2の用途に基づき予め設定される。本実施形態では、剥離対象領域2aの延在方向Lの長さは、図8及び図14に示すように、切削部材30,40の刃幅ΔT1,ΔT2(一対の刃部31,41の延在方向Lの長さ)と一致する。以下では、第一切削部材30(第一刃部31)の刃幅を第一刃幅ΔT1とし、第二切削部材40(第二刃部41)の刃幅を第二刃幅ΔT2とする。なお、一対の第一刃部31は延在方向Lの長さが互いに同一とされ、一対の第二刃部41は延在方向Lの長さが互いに同一とされる。本実施形態では、第一刃幅ΔT1と第二刃幅ΔT2とは同じ値とされる。
本実施形態では、線材移動規制機構10bは、切削方向側当接部材50,60に加えて、剥離対象領域2aに対して切削方向X1,X2とは反対方向である戻り方向Y1,Y2側から当接する戻り方向側当接部材70,80を備え、剥離対象領域2aの戻り方向Y1,Y2側への移動も規制する。以下では、第一切削方向X1の反対方向を第一戻り方向Y1とし、第二切削方向X2の反対方向を第二戻り方向Y2とする。線材移動規制機構10bは、少なくとも剥離対象領域2aが切削隙間32,42に収まっている間、戻り方向側当接部材70,80と切削方向側当接部材50,60とにより剥離対象領域2aを挟んで当該剥離対象領域2aの移動を規制するように構成されている。すなわち、線材移動規制機構10bは、少なくとも剥離対象領域2aが切削隙間32,42に収まっている間、剥離対象領域2aを往復動作方向A1,A2における両側から挟んで保持することで、当該剥離対象領域2aの移動(少なくとも往復動作方向A1,A2に沿った移動)を規制する。
本実施形態に係る剥離装置1は、複数の切削部材30,40を、周方向の互いに異なる位置に備えている。本実施形態では、剥離装置1は、2つの切削部材30,40を備え、具体的には、周方向の互いに異なる位置に配置された第一切削部材30と第二切削部材40とを備えている。本実施形態では、被覆層3の剥離対象の線材2は、上述したように延在方向Lに直交する断面形状が長方形状の平角線材である。このような線材2の形状に合わせて、第一切削部材30及び第二切削部材40は、図2に示すように、周方向における互いに90度異なる位置に配置され、切削駆動機構10aによる第一切削部材30及び第二切削部材40のそれぞれの往復動作の軌跡が、剥離対象領域2aにおいて直交するように構成されている。これにより、第一切削部材30及び第二切削部材40のそれぞれを往復動作させることで、第一線材幅方向W1の両側の側面部に形成された被覆層3を第一切削部材30及び第二切削部材40の一方(本例では第一切削部材30)で剥離するとともに(図10及び図11参照)、第一線材幅方向W1に直交する第二線材幅方向W2の両側の側面部に形成された被覆層3を第一切削部材30及び第二切削部材40の他方(本例では第二切削部材40)で剥離することが可能となっている(図16及び図17参照)。
詳細は省略するが、線材2の剥離対象領域2aは、剥離装置1による被覆層3の剥離工程の後に実行される線材切断工程において切断対象領域とされ、線材切断工程の実行により、延在方向Lの両側に被覆層3が剥離された部分を有する線材片が形成される。そして、例えば、このようにして形成された線材片をセグメント導体として用い、被覆層3の剥離部分において複数の線材片を電気的に順次接続することで、回転電機用のコイルが製造される。
2.切削駆動機構の構成
切削駆動機構10aは、線材2の剥離対象領域2aが切削隙間32,42に収まるまで切削部材30,40を切削方向X1,X2に向けて移動させる切削動作と、切削部材30,40を戻り方向Y1,Y2に向けて移動させる戻し動作と、を行なう機構である。具体的には、切削駆動機構10aは、切削部材30,40を戻り方向側位置から切削方向側位置まで移動させることで切削動作を行い、切削部材30,40を切削方向側位置から戻り方向側位置まで移動させることで戻し動作を行う。
上述したように、本実施形態では、切削方向側位置は、剥離対象領域2aの切削方向X1,X2側の端部が切削隙間32,42に収まる位置よりも切削方向X1,X2側に設定されている(図11及び図17参照)。すなわち、「切削動作」は、より正確には、切削部材30,40を切削方向X1,X2に向けて、線材2の剥離対象領域2aが切削隙間32,42に収まるまで少なくとも移動させる動作であり、本実施形態に係る「切削動作」は、剥離対象領域2aの切削方向X1,X2側の端部が切削隙間32,42に収まった後も、切削部材30,40を切削方向X1,X2に向けて予め設定された距離だけ移動させる動作とされる。
本実施形態では、図1、図7、及び図13に示すように、切削駆動機構10aは、回転運動を往復運動に変える機構(すなわちカム機構)として構成されている。具体的には、切削駆動機構10aは、第一カム溝91を有するとともに延在方向Lを回転軸として回転可能な第一回転体11を備えており、以下に述べるように、当該第一回転体11の回転位置に応じて、第一切削部材30の径方向の位置と第二切削部材40の径方向の位置とが定まるように構成されている。
具体的には、第一回転体11は、図1に示すように、厚さ方向が延在方向Lに平行な円環板状に形成されている。そして、第一回転体11は、固定部材である板状部材17に対して回転可能に支持されており、第一回転体11の回転位置は、当該第一回転体11を回転駆動する駆動機構(図示せず)により制御される。この駆動機構は、例えば、歯車又はベルト等を伝動部材として用いた機構とされる。第一カム溝91は、第一回転体11の延在方向Lにおける剥離対象領域2a側の板面(板状部材17とは反対側の面)に形成されている。そして、第一カム溝91は、図2に示すように、径方向の位置が周方向に沿って不均一に形成されており、具体的には、円弧状に延びる第一大径部91aと、第一大径部91aより径方向内側に位置する第一小径部91bと、径方向位置が周方向に沿って連続的に変化するように形成されて第一大径部91aと第一小径部91bとを接続する第一接続部91cと、を有するように形成されている。各周方向位置における第一カム溝91の径方向位置は、第一回転体11の回転位置に応じて定まる。
図1に示すように、第一回転体11の径方向内側には、支持部材18が配置されている。支持部材18は、板状部材17に対して回転不能に固定されており、支持部材18の径方向の中心部には、線材2を挿通するための延在方向Lの貫通孔18aが形成されている。また、支持部材18の延在方向Lにおける剥離対象領域2a側の板面(板状部材17とは反対側の面)には、可動部材14a〜14dを径方向に移動可能に支持するガイド機構(図示せず)が配置されている。なお、可動部材14a〜14dは、詳細は後述するが、切削部材30,40や当接部材50,60,70,80を支持するための部材である。本例では、図1及び図2に示すように、第一可動部材14a、第二可動部材14b、第三可動部材14c、及び第四可動部材14dの4つの可動部材が、記載の順に、周方向に沿って90度の間隔毎に配置されている。
第一可動部材14aは、第一カム溝91により案内される被案内部である第一被案内部材15aを有し、当該第一被案内部材15aと一体的に径方向に移動するように構成されている。本実施形態では、第一被案内部材15a、並びに後述する第二被案内部材15b、第三被案内部材15c、第四被案内部材15dは、円柱状のローラフォロアにより構成されている。第一可動部材14aの径方向内側の端部には、第一切削部材30が固定されている。そして、第一カム溝91の第一大径部91aの径方向位置は、図1及び図2に示すように、第一被案内部材15aが当該第一大径部91aにより案内される状態で第一切削部材30が戻り方向側位置に位置するように設定されている。また、第一カム溝91の第一小径部91bの径方向位置は、図7に示すように、第一被案内部材15aが当該第一小径部91bにより案内される状態で第一切削部材30が切削方向側位置に位置するように設定されている。
よって、第一被案内部材15aが案内される第一カム溝91における部位が第一大径部91a、第一小径部91b、及び第一大径部91aの順に変化するように、第一回転体11を回転させることで、第一切削部材30を往復動作させることができる。具体的には、第一切削部材30が戻り方向側位置から切削方向側位置を経て戻り方向側位置に戻るように、往復動作を一度行わせることができる。この際、第一被案内部材15aが案内される第一カム溝91における部位が、第一大径部91aから第一接続部91cを経て第一小径部91bへと変化する際に、第一切削部材30の切削動作が行われ、第一被案内部材15aが案内される第一カム溝91における部位が、第一小径部91bから第一接続部91cを経て第一大径部91aへと変化する際に、第一切削部材30の戻し動作が行われる。すなわち、切削動作及び戻し動作が記載の順に実行される。
図10は、第一切削部材30の切削動作の途中段階(後述する第一保持工程P11の終了時、図19参照)での第一切削部材30と剥離対象領域2aとの位置関係を示し、図11は、第一切削部材30の切削動作の終了段階(後述する第一切削工程P12の終了時、図19参照)での第一切削部材30と剥離対象領域2aとの位置関係を示している。図10に示すように、第一切削部材30の切削隙間32の幅(第一線材幅方向W1の幅)である第一隙間幅ΔS1は、被覆層3の剥離前の線材2の第一線材幅方向W1における幅である第一線材幅ΔR1以下に設定されている。また、第一線材幅方向W1の位置関係において、切削隙間32の中央部と線材2の中央部との位置が合うように、第一切削部材30が線材2に対して配置される。よって、図11に示すように、一度の切削動作により、剥離対象領域2aにおける第一線材幅方向W1の両側の側面部の被覆層3が削り取られる。
なお、本実施形態では、第一隙間幅ΔS1は、第一線材幅ΔR1以下であるという制約の下で、第一線材幅方向W1における導体部分4の幅に基づき設定されている。例えば、第一隙間幅ΔS1を、第一線材幅方向W1における導体部分4の幅と同じ値に設定し、或いは、第一線材幅方向W1における導体部分4の幅より誤差分だけ小さく設定することができる。なお、誤差分は、例えば、各部材の寸法や配置位置の第一線材幅方向W1における公差に基づく量とすることができる。このような誤差分を考慮することで、剥離対象領域2aにおける第一線材幅方向W1の両側の側面部の被覆層3の全てを、第一切削部材30により確実に削り取ることが容易となる。なお、第一切削部材30の少なくとも第一刃部31は、導体部分4より硬度の高い材料で形成されており、本実施形態では、第一隙間幅ΔS1は第一線材幅方向W1における導体部分4の幅より誤差分だけ狭く設定されている。よって、第一線材幅方向W1における少なくとも一方側の側面部(実際上、両側の側面部)において、被覆層3とともに導体部分4の一部(実用上問題のない程度の割合)も削り取られる。すなわち、本実施形態では、第一切削部材30による線材の切削厚さ(後述する)は、設計上、被覆層3の厚さより大きくなっている。
第二可動部材14bは、図1及び図2に示すように、周方向の配設位置が異なる点を除いて第一可動部材14aと同様に構成されており、第一被案内部材15aに対応する第二被案内部材15bを備えている。第二可動部材14bの径方向内側の端部には、第二切削部材40が固定されている。そして、第二被案内部材15bが案内される第一カム溝91における部位が、第一大径部91a、第一小径部91b、及び第一大径部91aの順に変化するように第一回転体11を回転させることで、第二切削部材40についての切削動作及び戻し動作を順に実行することができる。また、第二切削部材40の第二切削隙間42の幅(第二線材幅方向W2の幅)である第二隙間幅ΔS2(図16参照)は、被覆層3の剥離前の線材2の第二線材幅方向W2における幅である第二線材幅ΔR2に第一線材幅ΔR1が置き換わる点を除いて、第一隙間幅ΔS1と同様に設定されている。すなわち、第二隙間幅ΔS2は、第二線材幅ΔR2以下に設定され、本実施形態では、第二隙間幅ΔS2は、第二線材幅ΔR2以下であるという制約の下で、第二線材幅方向W2における導体部分4の幅に基づき設定されている。
本実施形態では、以下のような構成を備えることで、第一回転体11を周方向における一方側に向けて180度(すなわち半周)回転させる間に、第一切削部材30の往復動作と第二切削部材40の往復動作とが互いに異なるタイミングで実行されるように構成されている。すなわち、図2に示すように、第一カム溝91は、延在方向Lを対称軸とする180度の回転対称性を有する形状に形成されており、第一小径部91bは、互いに180度異なる周方向の位置のそれぞれに設けられている。また、第一小径部91b及び当該第一小径部91bの周方向の両側の2つの第一接続部91cが占める周方向の範囲は、90度未満の周方向範囲とされている。そして、本実施形態では、同一の剥離対象領域2aに対して、第一切削部材30が往復動作した後に第二切削部材40が往復動作するように、すなわち、複数の切削部材30,40が順に往復動作するように、第一回転体11の回転方向や初期位置が設定されている。
例えば、図1に示すように第一回転体11の回転方向(白抜き矢印の指す向き、すなわち、図2における反時計回り方向側)及び初期位置を設定することができる。この場合、第一切削部材30及び第二切削部材40の双方が戻り方向側位置に位置する図1に示す状態から、第一回転体11を回転方向側に45度回転させることで、第二切削部材40の位置は戻り方向側位置から変化せずに第一切削部材30が切削方向側位置に位置する図7に示す状態となる。図7に示す状態から更に第一回転体11を回転方向側に90度(すなわち、初期位置から135度)回転させることで、第一切削部材30が戻り方向側位置に戻るとともに第二切削部材40が切削方向側位置に位置する図13に示す状態となる。
そして、図13に示す状態から更に第一回転体11を回転方向側に45度(すなわち、初期位置から180度)回転させることで、第一切削部材30及び第二切削部材40の双方が戻り方向側位置に位置する図1に示す状態(但し、第一回転体11の回転位置は初期位置とは180度異なる)に戻る。よって、次の剥離対象領域2aに対する第一切削部材30及び第二切削部材40のそれぞれの往復動作は、第一回転体11を初期位置に戻すことなく、第一回転体11の回転位置が初期位置とは180度ずれた状態から第一回転体11を回転方向側に180度回転させることで実現される。すなわち、本実施形態では、第一回転体11の回転方向を一方向にすることができ、第一回転体11を回転駆動する駆動機構(図示せず)の簡素化を図ることが可能となっている。
3.線材移動規制機構の構成
図1に示すように、線材移動規制機構10bは、切削方向側当接部材50,60を備え、本実施形態では更に、戻り方向側当接部材70,80を備えている。線材移動規制機構10bは、複数の切削部材30,40のそれぞれに対応する戻り方向側当接部材70,80及び切削方向側当接部材50,60からなる当接部材組(当接部組)を、切削部材30,40と同数備えている。具体的には、線材移動規制機構10bは、第一切削部材30に対応する第一切削方向側当接部材50及び第一戻り方向側当接部材70を備え、第二切削部材40に対応する第二切削方向側当接部材60及び第二戻り方向側当接部材80を備えている。本実施形態では、第一切削方向側当接部材50、第二切削方向側当接部材60、第一戻り方向側当接部材70、及び第二戻り方向側当接部材80が、それぞれ、本発明における「第一切削方向側当接部」、「第二切削方向側当接部」、「第一戻り方向側当接部」、及び「第二戻り方向側当接部」に相当する。
3−1.切削方向側当接部材の構成
第一切削方向側当接部材50は、図3及び図4に示すように、第一本体部51と第一取付部54とを備えている。なお、図3及び図4、並びに後に参照する図5及び図6では、各部材の構成の理解を容易にすべく、各部材を往復動作方向A1,A2に沿って互いに離間させて示している。第一切削方向側当接部材50は、図2に示すように、第一切削部材30とは周方向における180度異なる位置に配置される。そして、第一取付部54は、第一切削方向側当接部材50を当該部材を支持する部材に取り付けるための部分であり、本実施形態では、図8に示すように、当該第一取付部54を介して第一切削方向側当接部材50が第三可動部材14cに固定されている。
第一本体部51は、図3及び図4に示すように、第一戻り方向Y1側に突出した状態で延在方向Lに沿って線状に延びる第一突出部52と、第一突出部52より第一切削方向X1側に位置して当該第一突出部52を支持する第一支持部53とを備えている。そして、第一突出部52の第一戻り方向Y1側の面が、剥離対象領域2aとの当接面である第一切削方向側当接面52aとされる。第一突出部52の延在方向Lの長さは、図8に示すように第一刃幅ΔT1より大きく設定される。すなわち、第一突出部52は、延在方向Lの長さが剥離対象領域2aより大きく設定され、本実施形態では、第一突出部52の延在方向Lの長さは、後述する第一貫通幅ΔU1と等しくなっている。本実施形態では、第一突出部52が、本発明における第一切削方向側当接部についての「第一部分」に相当し、第一支持部53が、本発明における第一切削方向側当接部についての「第二部分」に相当する。
また、第一突出部52は、図10に示すように、第一線材幅方向W1の幅が第一切削隙間32より小さく設定される。本実施形態では、第一突出部52は、第一線材幅方向W1の幅が導体部分4よりも小さく設定されている。これにより、図9及び図11に示すように、第一突出部52が第一切削隙間32に収まるように第一切削部材30を第一切削方向側当接部材50に対して配置することが可能となっている。なお、本実施形態では、第一突出部52は、第一線材幅方向W1の幅が後述する第一戻り方向側当接部材70の第一当接部71と等しくなっている。
図3及び図4に示すように、第一突出部52の延在方向Lの両側には、第一移動規制溝56が形成されている。第一移動規制溝56は、第一線材幅方向W1の両側に第一往復動作方向A1に沿って延びる側壁部を有し、第一移動規制溝56の第一線材幅方向W1の幅は、第一線材幅ΔR1(図10参照)より僅かに大きく形成されている。すなわち、第一移動規制溝56は、第一線材幅方向W1の幅が第一突出部52よりも大きく形成されている。また、上記側壁部は、第一切削方向側当接面52aより第一戻り方向Y1側まで延びるように形成されている。これにより、図8及び図10に示すように、剥離対象領域2aが第一切削方向側当接面52aに当接した状態で、第一移動規制溝56により、線材2の第一線材幅方向W1における移動を剥離対象領域2aに対して延在方向Lの両側で規制することが可能となっている。なお、線材2の第一切削方向X1側の部分が第一移動規制溝56内に確実に挿入されるように、上記側壁部の第一戻り方向Y1側の端部には、図3及び図10に示すように、第一戻り方向Y1に向かうに従って第一線材幅方向W1における線材2の中央部(すなわち第一移動規制溝56の中央部)とは反対側に向かう第一面取り部56aが接続されている。
本実施形態では、図3に示すように、第一支持部53は、第一線材幅方向W1における線材2の中央部(すなわち、第一突出部52の中央部)に対して少なくとも一方側に、第一切削方向X1に向かうに従って線材2の中央部側とは反対側に向かう第一傾斜面53aを有している。本実施形態では、第一傾斜面53aは、第一線材幅方向W1における線材2の中央部に対して両側に形成されており、第一傾斜面53aのそれぞれは、第一突出部52の第一線材幅方向W1の側面であって、線材2の中央部に対して第一線材幅方向W1の同じ側に位置する側面に接続されている。これにより、図11に示すように第一切削部材30により被覆層3を削り取る際に生じる削りくず(切りくず)を、第一線材幅方向W1の両側において、第一切削方向X1側に適切に排出することが可能となっている。
更に、本実施形態では、第一移動規制溝56は、図3及び図8に示すように、底面(第一戻り方向Y1側を向く面)の第一往復動作方向A1における位置が第一切削方向側当接面52aと同じ位置となるように形成されている。よって、図8に示すように、剥離対象領域2aが第一切削方向側当接面52aに当接した状態で、第一移動規制溝56は、線材2における剥離対象領域2aに対して延在方向Lの両側に位置する部分に対して、第一切削方向X1側から当接する。すなわち、本実施形態では、線材2は、第一切削方向側当接部材50により、当該第一切削方向側当接部材50の延在方向Lの全域で第一切削方向X1側から支持される。
第二切削方向側当接部材60は、図5及び図6に示すように、周方向の配設位置が異なる点、及び第一切削方向側当接面52aに対応する第二切削方向側当接面62aの構成が第一切削方向側当接面52aとは異なる点を除いて、第一切削方向側当接部材50と同様に構成されている。すなわち、第二切削方向側当接部材60は、第一本体部51に対応する第二本体部61、第一突出部52に対応する第二突出部62、第一支持部53に対応する第二支持部63、第一傾斜面53aに対応する第二傾斜面63a、第一取付部54に対応する第二取付部64、第一移動規制溝56に対応する第二移動規制溝66、第一面取り部56aに対応する第二面取り部66aを備えている。これらの第二切削方向側当接部材60の各部は、第一往復動作方向A1、第一切削方向X1、第一戻り方向Y1、及び第一線材幅方向W1が、それぞれ、第二往復動作方向A2、第二切削方向X2、第二戻り方向Y2、及び第二線材幅方向W2に置き換わる点を除いて、第一切削方向側当接部材50における対応する部位と同様に構成されている。そして、本実施形態では、図14に示すように、第二切削方向側当接部材60は、第二取付部64を介して第四可動部材14dに固定されている。本実施形態では、第二突出部62が、本発明における第二切削方向側当接部についての「第一部分」に相当し、第二支持部63が、本発明における第二切削方向側当接部についての「第二部分」に相当する。
図14に示すように、第二突出部62の延在方向Lの長さは、第二刃幅ΔT2より大きく設定され、本実施形態では、後述する第二貫通幅ΔU2と等しくなっている。また、図16に示すように、第二突出部62は、第二線材幅方向W2の幅が第二切削隙間42より小さく設定され、本実施形態では、第二突出部62の第二線材幅方向W2の幅は、導体部分4よりも小さく設定されている。なお、本実施形態では、第二突出部62は、第二線材幅方向W2の幅が後述する第二戻り方向側当接部材80の第二当接部81と等しくなっている。
第二移動規制溝66は、図16に示すように、第二線材幅方向W2の幅が第二線材幅ΔR2より僅かに大きく形成されている。そして、第二移動規制溝66が有する、第二線材幅方向W2の両側において第二往復動作方向A2に沿って延びる側壁部は、第二突出部62の第二戻り方向Y2側の面である第二切削方向側当接面62aより第二戻り方向Y2側まで延びるように形成されている。本実施形態では、第二支持部63は、第二線材幅方向W2における線材2の中央部(すなわち、第二突出部62の中央部)に対して両側に、第二傾斜面63aを有している。すなわち、本実施形態では、第一切削方向側当接部材50及び第二切削方向側当接部材60の双方が、線材幅方向W1,W2における線材2の中央部に対して両側に、傾斜面53a,63aを備えている。
ところで、第二切削方向側当接部材60は、第一切削部材30及び第二切削部材40の内の往復動作の順が後である第二切削部材40に対応する切削方向側当接部材である。すなわち、図14及び図16に示すように、第二切削部材40の往復動作を行う際の剥離対象領域2aにおける第二切削方向側当接部材60側(第二切削方向X2側)の側面部は、第一切削部材30により被覆層3が削り取られた側面部である。このような剥離対象領域2aの側面部に対して第二切削方向側当接面62aを確実に当接させるべく、第二切削方向側当接面62aは、図5、図6、及び図14に示すように、延在方向Lに隣接する隣接部65に対して第二戻り方向Y2側に突出するように形成されている。
図14に示すように、第二切削方向側当接面62aは、延在方向Lの長さが剥離対象領域2aの延在方向Lの長さ以下に設定される。上述したように、本実施形態では、剥離対象領域2aの延在方向Lの長さは、刃幅ΔT1,ΔT2と同一の値とされる。本実施形態では、延在方向Lにおいて誤差が生じた場合にも第二切削方向側当接面62aを延在方向Lの全域で剥離対象領域2aに対して当接させることを可能とすべく、第二切削方向側当接面62aの延在方向Lの長さが、剥離対象領域2aの延在方向Lの長さより予め定められた量だけ短い値に設定されている。この予め定められた量は、例えば、各部材の寸法や配置位置の延在方向Lにおける公差に基づく量とすることができる。
また、第二切削方向側当接面62aは、延在方向Lに隣接する隣接部65に対する第二戻り方向Y2側への突出量ΔP(図16参照)が、第一切削部材30による線材2の切削厚さ以上に設定される。なお、ここでいう「切削厚さ」は、設計上の厚さであり、第一切削部材30による線材2の設計上の切削厚さは、図10から明らかなように、{(ΔR1−ΔS1)/2}により導出される。本実施形態では、第一切削部材30による線材2の実際の切削厚さが第一線材幅方向W1の両側で不均一になった場合にも、第二切削方向側当接面62aを剥離対象領域2aに対して当接させることを可能とすべく、突出量ΔPが、{(ΔR1−ΔS1)/2}に予め定められた量を加算した値に設定されている。この予め定められた量は、例えば、各部材の寸法や配置位置の第一線材幅方向W1における公差に基づく量とすることができる。このような構成を備えるため、本実施形態では、設計上、図14及び図16に示すように、第二切削方向側当接部材60における第二切削方向側当接面62aのみが、線材2(剥離対象領域2a)に対して第二切削方向X2側から当接する。すなわち、設計上、第二移動規制溝66の底面(第二戻り方向Y2側を向く面)は、線材2に当接しない構成となっている。
3−2.戻り方向側当接部材の構成
第一戻り方向側当接部材70は、図3及び図4に示すように、第一当接部71と第一支持部72とを備えている。第一戻り方向側当接部材70は、図2に示すように、第一切削部材30と同じ周方向の位置に配置される。そして、図10に示すように、第一当接部71の第一切削方向X1側の面が、剥離対象領域2aとの当接面である第一戻り方向側当接面71aとされる。
図3及び図4に示すように、第一支持部72は、第一当接部71を挟んだ延在方向Lの両側に設けられており、図8に示すように、一対の第一支持部72のそれぞれには、第一連結部材16aが連結されている。そして、本実施形態では、図8に示すように、第一戻り方向側当接部材70は、第一連結部材16aを介して第一可動部材14aに取り付けられている。すなわち、本実施形態では、第一戻り方向側当接部材70は、第一切削部材30と同様、第一可動部材14aに取り付けられている。なお、詳細は後述するが、第一戻り方向側当接部材70は、第一切削部材30とは異なり、第一可動部材14aに対して径方向に移動可能に構成されている。
なお、本実施形態では、図4に示すように、第一支持部72の第一切削方向X1側の面は、第一往復動作方向A1の位置が第一戻り方向側当接面71aと同じ位置に形成されている。そのため、図8に示すように、剥離対象領域2aが第一戻り方向側当接面71aに当接した状態で、第一支持部72の第一切削方向X1側の面が、線材2における剥離対象領域2aに対して延在方向Lの両側に位置する部分に対して、第一戻り方向Y1側から当接する。
図8に示すように、第一戻り方向側当接部材70は、延在方向Lの長さが剥離対象領域2aより大きく(本例では5〜6倍程度)設定されている。上述したように、本実施形態では、剥離対象領域2aの延在方向Lの長さは、刃幅ΔT1,ΔT2と同一の値とされる。そして、第一戻り方向側当接部材70は、図3に示すように、第一線材幅方向W1における線材2の中央部(すなわち、第一当接部71の中央部)を挟んだ両側のそれぞれに、切削駆動機構10aによる第一切削部材30の往復動作方向(すなわち、第一往復動作方向A1)に貫通する第一貫通部73を有している。具体的には、第一当接部71の第一線材幅方向W1の側面と、一対の第一支持部72のそれぞれの延在方向Lの中央部側を向く側面(すなわち、延在方向Lに対向する2つの側面)とにより三方を囲まれた空間として第一貫通部73が形成されている。そして、第一貫通部73は、第一当接部71の上記側面とは反対側に開口するように形成されている。すなわち、第一貫通部73は、第一線材幅方向W1における線材2の中央部側(すなわち第一当接部71側)とは反対側に開口するように形成されている。なお、本実施形態では、図3及び図4に示すように、第一貫通部73の延在方向Lの幅は第一線材幅方向W1に沿って一様となっている。また、一対の第一貫通部73は、延在方向Lの幅が互いに等しく形成されており、本実施形態では更に、第一線材幅方向W1の幅も互いに等しく形成されている。
一対の第一貫通部73のそれぞれは、延在方向Lの幅が第一刃部31より大きく設定されている。すなわち、第一貫通部73の延在方向Lの幅を第一貫通幅ΔU1とすると、図8に示すように、第一貫通幅ΔU1は、第一刃幅ΔT1より大きく設定されている。また、図10に示すように、第一当接部71は、第一線材幅方向W1の幅が第一切削隙間32(第一隙間幅ΔS1)より小さく設定されている。そして、図9に示すように、切削方向側位置において第一戻り方向側当接部材70と第一往復動作方向A1の同じ位置に配置される部分を含む第一切削部材30の先端部(第一切削方向X1側の部分)は、延在方向Lの長さが第一刃幅ΔT1以下(本例では第一刃幅ΔT1と同一)となるように形成されている。また、図11に示すように、第一切削部材30は、第一切削隙間32から第一戻り方向Y1側に連続するように形成された第一線材幅方向W1の隙間(以下、「第一連続隙間」という。)を有している。そして、この第一連続隙間は、第一戻り方向Y1側の端部が、第一切削部材30が切削方向側位置に配置された状態(図11の状態)における第一当接部71より第一戻り方向Y1側に位置するように形成されているとともに、第一往復動作方向A1の全域において、第一線材幅方向W1の幅が第一隙間幅ΔS1以上となるように形成されている。
上記のような構成を備えることで、図9及び図11に示すように、第一切削部材30の先端部を第一貫通部73に対して第一戻り方向Y1側から挿入して、被覆層3を削り取ることが可能となっている。なお、第一貫通幅ΔU1と第一刃幅ΔT1との差は、例えば、各部材の寸法や配置位置の延在方向Lにおける公差に基づく量とすることができる。また、第一当接部71の第一線材幅方向W1の幅と第一隙間幅ΔS1との差は、例えば、各部材の寸法や配置位置の第一線材幅方向W1における公差に基づく量とすることができる。
第二戻り方向側当接部材80は、図5及び図6に示すように、周方向の配設位置が異なる点、及び第一戻り方向側当接面71aに対応する第二戻り方向側当接面81aの構成が第一戻り方向側当接面71aとは異なる点を除いて、第一戻り方向側当接部材70と同様に構成されている。すなわち、第二戻り方向側当接部材80は、第一当接部71に対応する第二当接部81、第一支持部72に対応する第二支持部82、第一貫通部73に対応する第二貫通部83を備えている。これらの第二戻り方向側当接部材80の各部は、第一往復動作方向A1、第一切削方向X1、第一戻り方向Y1、及び第一線材幅方向W1が、それぞれ、第二往復動作方向A2、第二切削方向X2、第二戻り方向Y2、及び第二線材幅方向W2に置き換わる点を除いて、第一戻り方向側当接部材70における対応する部位と同様に構成されている。そして、本実施形態では、図14に示すように、第二戻り方向側当接部材80は、第一連結部材16a(図8参照)に対応する第二連結部材16bを介して第二可動部材14bに取り付けられている。詳細は後述するが、第二戻り方向側当接部材80は、第二切削部材40とは異なり、第二可動部材14bに対して径方向に移動可能に構成されている。
一対の第二貫通部83(図5及び図6参照)のそれぞれは、図14に示すように、延在方向Lの幅である第二貫通幅ΔU2が第二刃幅ΔT2より大きく設定されている。また、図16に示すように、第二当接部81は、第二線材幅方向W2の幅が第二切削隙間42(第二隙間幅ΔS2)より小さく設定されている。そして、図15に示すように、切削方向側位置において第二戻り方向側当接部材80と第二往復動作方向A2の同じ位置に配置される部分を含む第二切削部材40の先端部(第二切削方向X2側の部分)は、延在方向Lの長さが第二刃幅ΔT2(図14参照)以下(本例では第二刃幅ΔT2と同一)となるように形成されている。また、図17に示すように、第二切削部材40は、第二切削隙間42から第二戻り方向Y2側に連続するように形成された第二線材幅方向W2の隙間(以下、「第二連続隙間」という。)を有している。そして、この第二連続隙間は、第二戻り方向Y2側の端部が、第二切削部材40が切削方向側位置に配置された状態(図17の状態)における第二当接部81より第二戻り方向Y2側に位置するように形成されているとともに、第二往復動作方向A2の全域において、第二線材幅方向W2の幅が第二隙間幅ΔS2以上となるように形成されている。
図14及び図16に示すように、第二切削部材40の往復動作を行う際の剥離対象領域2aにおける第二戻り方向側当接部材80側(第二戻り方向Y2側)の側面部は、第一切削部材30により被覆層3が削り取られた側面部である。このような剥離対象領域2aの側面部に対して第二戻り方向側当接面81aを確実に当接させるべく、第二戻り方向側当接面81aは、図5、図6、及び図14に示すように、延在方向Lに隣接する隣接部85に対して第二切削方向X2側に突出するように形成されている。
図14に示すように、第二戻り方向側当接面81aは、延在方向Lの長さが剥離対象領域2aの延在方向Lの長さ以下に設定され、本実施形態では、第二切削方向側当接面62aの延在方向Lの長さは、上述した第二切削方向側当接面62aと同様、剥離対象領域2aの延在方向Lの長さより予め定められた量だけ短い値に設定されている。また、第二戻り方向側当接面81aは、延在方向Lに隣接する隣接部85に対する第二切削方向X2側への突出量ΔQ(図16参照)が、第一切削部材30による線材2の切削厚さ以上に設定され、本実施形態では、上述した第二切削方向側当接面62aの突出量ΔPと同様、突出量ΔQは、第一切削部材30による線材2の設計上の切削厚さに予め定められた量を加算した値に設定されている。よって、本実施形態では、設計上、図14及び図16に示すように、第二戻り方向側当接部材80における第二戻り方向側当接面81aのみが、線材2(剥離対象領域2a)に対して第二戻り方向Y2側から当接する。
3−3.往復動作機構の構成
次に、線材移動規制機構が備える、切削方向側当接部材50,60及び戻り方向側当接部材70,80のそれぞれを往復動作させるための往復動作機構について説明する。切削方向側当接部材50,60及び戻り方向側当接部材70,80のそれぞれは、剥離対象領域2aの移動を規制する規制位置と、剥離対象領域2aの移動を規制しない(すなわち許容する)非規制位置と、の間を径方向に沿って往復動作するように構成されている。なお、規制位置及び非規制位置のそれぞれは、第一切削方向側当接部材50、第二切削方向側当接部材60、第一戻り方向側当接部材70、及び第二戻り方向側当接部材80のそれぞれについて個別に設定される。
図7、図9、及び図11は、第一切削方向側当接部材50がその規制位置に位置するとともに、第一戻り方向側当接部材70がその規制位置に位置する状態を示している。また、図13、図15、及び図17は、第二切削方向側当接部材60がその規制位置に位置するとともに、第二戻り方向側当接部材80がその規制位置に位置する状態を示している。これらの図から明らかなように、切削方向側当接部材50,60についての規制位置は、当該切削方向側当接部材50,60(具体的には、切削方向側当接面52a,62a)が剥離対象領域2aに対して切削方向X1,X2側から当接する位置である。また、戻り方向側当接部材70,80についての規制位置は、当該戻り方向側当接部材70,80(具体的には、戻り方向側当接面71a,81a)が剥離対象領域2aに対して戻り方向Y1,Y2側から当接する位置である。
また、図1及び図2は、第一切削方向側当接部材50、第二切削方向側当接部材60、第一戻り方向側当接部材70、及び第二戻り方向側当接部材80の全てが非規制位置に位置する状態を示している。なお、第一切削方向側当接部材50及び第一戻り方向側当接部材70のそれぞれの非規制位置は、図13に示すように、第二切削部材40、第二切削方向側当接部材60、及び第二戻り方向側当接部材80のそれぞれの往復動作のために必要な空間から第一往復動作方向A1(図2参照)に離間した位置に設定されている。また、第二切削方向側当接部材60及び第二戻り方向側当接部材80のそれぞれの非規制位置は、図7に示すように、第一切削部材30、第一切削方向側当接部材50、及び第一戻り方向側当接部材70のそれぞれの往復動作のために必要な空間から第二往復動作方向A2(図2参照)に離間した位置に設定されている。
本実施形態では、線材移動規制機構10bは、上述した切削駆動機構10aと一体的に形成されており、切削駆動機構10aと同様、カム機構として構成されている。具体的には、図1に示すように、線材移動規制機構10bは、切削駆動機構10aを構成する第一回転体11に加えて、第二カム溝92を有するとともに延在方向Lを回転軸として回転可能な第二回転体12を備えた機構とされている。そして、本実施形態では、以下に説明するように、第一回転体11の回転位置に応じて、第一戻り方向側当接部材70の径方向の位置と第二戻り方向側当接部材80の径方向の位置とが定まり、第二回転体12の回転位置に応じて、第一切削方向側当接部材50の径方向の位置と第二切削方向側当接部材60の径方向の位置とが定まるように構成されている。
第一戻り方向側当接部材70は、図1及び図2に示すように、第一可動部材14aの径方向の内側の端部に取り付けられている。具体的には、図8及び図9に示すように、第一戻り方向側当接部材70は、第一連結部材16aを介して第一可動部材14aに取り付けられており、第一連結部材16aは、第一可動部材14aに対して径方向に相対移動可能に構成されている。また、第一連結部材16aは、付勢部材(図示せず)により第一切削方向X1側に付勢されている。
第一戻り方向側当接部材70は、第一切削部材30が切削動作を行う際に、第一戻り方向側当接面71aが剥離対象領域2aに当接する(図8、図10参照)までは、当該第一切削部材30とともに第一切削方向X1側に移動する。なお、本実施形態では、図2に示すように、第一切削部材30が戻り方向側に位置するとともに第一戻り方向側当接部材70が非規制位置に位置する状態においても、第一切削部材30の先端部(第一切削方向X1側の部分)が第一戻り方向側当接部材70と延在方向Lに見て重なる位置に配置されるように構成されている。
図8及び図10に示すように、第一切削部材30の切削動作に伴い第一戻り方向側当接面71aが剥離対象領域2aに当接した時点では、第一切削隙間32は剥離対象領域2aより第一戻り方向Y1側に位置する。また、詳細は後述するが、第一戻り方向側当接面71aが剥離対象領域2aに当接する時点と同時又はそれより前の時点で、第一切削方向側当接面52aが剥離対象領域2aに当接するように構成されている。よって、第一戻り方向側当接面71aが剥離対象領域2aに当接した後に引き続き行われる第一切削部材30の切削動作では、図9に示すように、第一切削部材30及び第一可動部材14aのみが第一切削方向X1側に移動し、第一戻り方向側当接部材70は、剥離対象領域2aを介して第一切削方向側当接部材50から受ける抗力と、上記付勢部材による付勢力とにより、径方向の位置が図8に示す位置(すなわち、規制位置)に維持される。この際、剥離対象領域2aは、上記付勢力に応じた力により第一往復動作方向A1の両側から保持されるため、第一往復動作方向A1に加えて第一往復動作方向A1に直交する方向(例えば延在方向L)における剥離対象領域2aの移動が規制される。
また、第一切削部材30が戻し動作を行う際には、第一切削隙間32が剥離対象領域2aより第一戻り方向Y1側の位置に戻るまでの間は、図12に示すように、第一戻り方向側当接部材70の径方向位置は、上記付勢部材による付勢力により規制位置に維持される。そして、図12に示す状態から引き続き行われる第一切削部材30の戻し動作では、第一戻り方向側当接部材70が第一切削部材30とともに第一戻り方向Y1側に移動することで第一戻り方向側当接面71aが剥離対象領域2aから離間し、第一戻り方向側当接部材70は、図2に示す非規制位置に戻される。なお、詳細は後述するが、第一戻り方向側当接面71aが剥離対象領域2aから離間する時点と同時又はそれより後の時点で、第一切削方向側当接面52aが剥離対象領域2aから離間するように構成されている。よって、本実施形態では、剥離対象領域2aが第一切削隙間32に収まっている間、第一戻り方向側当接部材70と第一切削方向側当接部材50とにより剥離対象領域2aが保持される構成となっている。
第二戻り方向側当接部材80は、図1及び図2に示すように、第二可動部材14bの径方向の内側の端部に取り付けられている。具体的には、図13及び図14に示すように、第二戻り方向側当接部材80は、第二連結部材16bを介して第二可動部材14bに取り付けられており、第二連結部材16bは、第二可動部材14bに対して径方向に相対移動可能に構成されている。また、第二連結部材16bは、付勢部材(図示せず)により第二切削方向X2側に付勢されている。
第二戻り方向側当接部材80は、第一切削部材30、第一切削隙間32、第一戻り方向側当接面71a、第一切削方向側当接面52a、第一往復動作方向A1、第一切削方向X1、及び第一戻り方向Y1が、それぞれ、第二切削部材40、第二切削隙間42、第二戻り方向側当接面81a、第二切削方向側当接面62a、第二往復動作方向A2、第二切削方向X2、及び第二戻り方向Y2に置き換わる点を除いて、第一戻り方向側当接部材70と同様に動作する。すなわち、第二戻り方向側当接部材80は、第二切削部材40の切削動作時には、第二戻り方向側当接面81aが剥離対象領域2aに当接するまでは、第二切削部材40とともに第二切削方向X2側に移動する(図14及び図16参照)。また、第二戻り方向側当接部材80は、第二切削部材40の戻し動作時には、第二切削隙間42が剥離対象領域2aより第二戻り方向Y2側の位置に戻った後に(図18参照)、第二切削部材40とともに第二戻り方向Y2側に移動する。そして、本実施形態では、剥離対象領域2aが第二切削隙間42に収まっている間、第二戻り方向側当接部材80と第二切削方向側当接部材60とにより剥離対象領域2aが保持される構成となっている。
第一切削方向側当接部材50と第二切削方向側当接部材60とは、第二回転体12の回転に伴い往復動作する。第二回転体12は、図1に示すように、第一回転体11と同様、厚さ方向が延在方向Lに平行な円環板状に形成されているとともに、板状部材17に対して回転可能に支持されている。本実施形態では、第二回転体12は、連結部材13により周方向の複数箇所で第一回転体11に固定されており、第一回転体11と一体回転するように構成されている。すなわち、第二回転体12は、第一回転体11を介して板状部材17に対して支持されており、第一回転体11を回転駆動する駆動機構(図示せず)により、第二回転体12の回転位置も制御される。
第二カム溝92は、第二回転体12の延在方向Lにおける剥離対象領域2a側の板面(板状部材17側の面)に形成されている。第二カム溝92は、図2に示すように、第一カム溝91と同様、径方向の位置が周方向に沿って不均一に形成されており、具体的には、第一大径部91aに対応する第二大径部92aと、第一小径部91bに対応する第二小径部92bと、第一接続部91cに対応する第二接続部92cと、を有するように形成されている。なお、第二カム溝92の第二小径部92bは、第一カム溝91の第一小径部91bとは異なり円弧状に延びるように形成されており、当該第一小径部91bより周方向の広い範囲に亘って形成されている。そして、第二カム溝92により、第三可動部材14cと一体的に径方向に移動する第三被案内部材15cと、第四可動部材14dと一体的に径方向に移動する第四被案内部材15dとが案内される。
第三可動部材14cの径方向内側の端部には、図1及び図2に示すように、第一切削方向側当接部材50が固定されている。そして、第二カム溝92の第二大径部92aの径方向位置は、図1及び図2に示すように、第三被案内部材15cが当該第二大径部92aにより案内される状態で第一切削方向側当接部材50が非規制位置に位置するように設定されている。また、第二カム溝92の第二小径部92bの径方向位置は、図7に示すように、第三被案内部材15cが当該第二小径部92bにより案内される状態で第一切削方向側当接部材50が規制位置に位置するように設定されている。よって、第一切削方向側当接部材50は、第二回転体12の回転に伴い、当該第一切削方向側当接部材50の規制位置と非規制位置との間を、径方向(具体的には第一往復動作方向A1)に沿って往復動作する。
上記のように、第一切削方向側当接部材50は、第三被案内部材15cが第二小径部92bにより案内される状態で、規制位置に位置する。すなわち、第一戻り方向側当接部材70が規制位置に位置する期間に対する、第一切削方向側当接部材50が規制位置に位置する期間の時間的関係は、第二カム溝92の形状により設定することができる。そして、第一戻り方向側当接面71aが剥離対象領域2aに当接する時点と同時又はそれより前の時点(本例では後者)で、第一切削方向側当接面52aが剥離対象領域2aに当接し、第一戻り方向側当接面71aが剥離対象領域2aから離間する時点と同時又はそれより後の時点(本例では後者)で、第一切削方向側当接面52aが剥離対象領域2aから離間するように、第二カム溝92の形状(具体的には、第二小径部92bの周方向位置及び周方向長さ)が設定されている。
第四可動部材14dは、周方向の配設位置が異なる点を除いて第三可動部材14cと同様に構成されている。第四可動部材14dの径方向内側の端部には、図1及び図2に示すように、第二切削方向側当接部材60が固定されている。第二切削方向側当接部材60は、第二回転体12の回転に伴い、当該第二切削方向側当接部材60の規制位置と非規制位置との間を、径方向(具体的には第二往復動作方向A2)に沿って往復動作する。そして、第二戻り方向側当接面81aが剥離対象領域2aに当接する時点と同時又はそれより前の時点(本例では後者)で、第二切削方向側当接面62aが剥離対象領域2aに当接し、第二戻り方向側当接面81aが剥離対象領域2aから離間する時点と同時又はそれより後の時点(本例では後者)で、第二切削方向側当接面62aが剥離対象領域2aから離間するように構成されている。
4.被覆層の剥離方法
本実施形態に係る剥離装置1において実行される被覆層3の剥離方法について説明する。図19に示すように、本実施形態に係る剥離方法では、線材搬送工程P01、第一剥離工程P10、及び第二剥離工程P20が順に実行される。以下、各工程について順に説明する。
4−1.線材搬送工程
線材搬送工程P01は、線材2の剥離対象領域2aが第一切削隙間32及び第二切削隙間42と同じ延在方向Lの位置となるように(図1参照)、線材2を搬送する工程である。本実施形態では、線材搬送工程P01の実行により剥離対象領域2aが上記の位置に合った後、線材2に所定の張力が発生する状態で線材2が延在方向Lの両側において固定される。これにより、剥離対象領域2aを切削方向側当接部材50,60と戻り方向側当接部材70,80とで挟んで保持する際に、線材2が撓んだり揺れたりすることを抑制することが可能となっている。
4−2.第一剥離工程
第一剥離工程P10は、図19に示すように、第一保持工程P11、第一切削工程P12、第一戻し工程P13、及び第一保持解除工程P14を順に実行する工程である。第一保持工程P11は、第一切削部材30を切削動作させることにより当該部材を第一切削方向X1側に移動させて、図1及び図2に示す状態から図8及び図10に示す状態に移行させる工程である。なお、図10に示すように、第一切削方向側当接部材50は、第一戻り方向Y1側の端面50aが、第一切削方向側当接面52aに当接する状態の線材2の第一戻り方向Y1側の端面より第一切削方向X1側に位置するように形成されている。第一切削工程P12は、第一保持工程P11の実行完了後も引き続き第一切削部材30を切削動作させ、図8及び図10に示す状態から図7、図9、及び図11に示す状態に移行させる工程である。これにより、剥離対象領域2aにおける第一線材幅方向W1の両側の側面部の被覆層3が削り取られる。このように、第一切削部材30を切削動作させることで、第一保持工程P11及び第一切削工程P12が順に実行される。
第一戻し工程P13は、図7、図9、及び図11に示す状態から第一切削部材30を戻し動作させることにより当該部材を第一戻り方向Y1側に移動させて、図12に示す状態に移行させる工程である。第一保持解除工程P14は、第一戻し工程P13の実行完了後も引き続き第一切削部材30を戻し動作させ、図12に示す状態から図1及び図2と同様の状態に移行させる工程である。すなわち、第一切削部材30を戻し動作させることで、第一戻し工程P13及び第一保持解除工程P14が順に実行される。なお、第一保持工程P11の実行完了時点から第一保持解除工程P14の実行開始時点までの期間は、剥離対象領域2aが、第一戻り方向側当接部材70と第一切削方向側当接部材50とにより挟まれて保持された状態となる。
4−3.第二剥離工程
第二剥離工程P20は、図19に示すように、第二保持工程P21、第二切削工程P22、第二戻し工程P23、及び第二保持解除工程P24を順に実行する工程である。第二保持工程P21は、第二切削部材40を切削動作させることにより当該部材を第二切削方向X2側に移動させて、図1及び図2と同様の状態から図14及び図16に示す状態に移行させる工程である。なお、図16に示すように、第二切削方向側当接部材60は、第二戻り方向Y2側の端面60aが、第二切削方向側当接面62aに当接する状態の線材2の第二戻り方向Y2側の端面より第二切削方向X2側に位置するように形成されている。第二切削工程P22は、第二保持工程P21の実行完了後も引き続き第二切削部材40を切削動作させ、図14及び図16に示す状態から図13、図15、及び図17に示す状態に移行させる工程である。これにより、剥離対象領域2aにおける第二線材幅方向W2の両側の側面部の被覆層3が削り取られる。このように、第二切削部材40を切削動作させることで、第二保持工程P21及び第二切削工程P22が順に実行される。
第二戻し工程P23は、図13、図15、及び図17に示す状態から第二切削部材40を戻し動作させることにより当該部材を第二戻り方向Y2側に移動させて、図18に示す状態に移行させる工程である。第二保持解除工程P24は、第二戻し工程P23の実行完了後も引き続き第二切削部材40を戻し動作させ、図18に示す状態から図1及び図2に示す状態(但し、剥離対象領域2aの形状は、図1及び図2とは異なる)に移行させる工程である。すなわち、第二切削部材40を戻し動作させることで、第二戻し工程P23及び第二保持解除工程P24が順に実行される。なお、第二保持工程P21の実行完了時点から第二保持解除工程P24の実行開始時点までの期間は、剥離対象領域2aが、第二戻り方向側当接部材80と第二切削方向側当接部材60とにより挟まれて保持された状態となる。また、本実施形態では、図14に示すように、第二戻り方向側当接部材80における剥離対象領域2aとの当接部である第二戻り方向側当接面81aと、第二切削方向側当接部材60における剥離対象領域2aとの当接部である第二切削方向側当接面62aとは、延在方向Lの長さが互いに等しく設定されている。
同一の線材2に未だ被覆層3を剥離していない剥離対象領域2aがある場合には、再度、線材搬送工程P01からの各処理が実行される。また、詳細は省略するが、線材2の外周における角部(線材2の長方形状の断面における頂点に対応する部分)に円弧状部や面取り部が形成されていること等により、当該各部に被覆層3が残る場合には、残っている被覆層3を更に別の工程により剥離する構成とすることができる。
5.その他の実施形態
最後に、本発明に係る剥離装置の、その他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。
(1)上記の実施形態では、切削駆動機構10a及び線材移動規制機構10bの双方が、カム機構として構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、切削駆動機構10a及び線材移動規制機構10bの少なくとも一方が、カム機構とは異なる機構(例えばシリンダ機構等)により切削部材30,40又は当接部材50,60,70,80を往復動作させる構成とすることもできる。また、上記の実施形態では、切削部材30,40と戻り方向側当接部材70,80とが同一の可動部材14a,14bに取り付けられた構成を例として説明したが、切削部材30,40と戻り方向側当接部材70,80とが互いに別の可動部材に取り付けられる構成とすることもできる。この場合、例えば、戻り方向側当接部材70,80のための専用のカム溝を備える構成とすることができる。このような専用のカム溝は、例えば、第一回転体11における第一カム溝91とは異なる径方向位置や、第二回転体12における第二カム溝92とは異なる径方向位置に設けることができる。また、戻り方向側当接部材70,80が可動部材に対して径方向に移動不能に固定される構成とすることができ、この場合には、線材2の損傷を抑制すべく、切削方向側当接部材50,60が可動部材に対して径方向に移動可能に取り付けられる構成とすると好適である。
(2)上記の実施形態では、第一切削方向側当接部材50及び第二切削方向側当接部材60の双方が、線材幅方向W1,W2における線材2の中央部に対して両側に傾斜面53a,63aを備えた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一切削方向側当接部材50及び第二切削方向側当接部材60の少なくとも一方が、線材幅方向W1,W2における線材2の中央部に対して片側のみに傾斜面53a,63aを備える構成とすることができる。また、第一切削方向側当接部材50及び第二切削方向側当接部材60の少なくとも一方が、傾斜面53a,63aを備えない構成とすることもできる。このような場合において、鉛直方向の上側を向く傾斜面のみが備えられる構成とすることができる。例えば、図2における上下方向が鉛直方向と一致する場合には、第一切削方向側当接部材50が、第一線材幅方向W1における線材2の中央部に対して両側に第一傾斜面53aを備え、第二切削方向側当接部材60が、第二線材幅方向W2における線材2の中央部に対して鉛直方向上方側(図2における上側)のみに第二傾斜面63aを備える構成とすることができる。
(3)上記の実施形態では、第一刃幅ΔT1と第二刃幅ΔT2とが同じ値とされた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、線材2の用途等によっては、第一刃幅ΔT1と第二刃幅ΔT2とが互いに異なる値に設定される構成とすることも可能である。
(4)上記の実施形態では、第一切削方向側当接面52a及び第二切削方向側当接面62aの内の第二切削方向側当接面62aのみが、延在方向Lに隣接する隣接部に対して戻り方向Y1,Y2側に突出するように形成されるとともに、第一戻り方向側当接面71a及び第二戻り方向側当接面81aの内の第二戻り方向側当接面81aのみが、延在方向Lに隣接する隣接部に対して切削方向X1,X2側に突出するように形成されている構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、第一切削方向側当接面52aが延在方向Lに隣接する隣接部に対して第一戻り方向Y1側に突出するように形成された構成とすることができる。この場合、第一切削方向側当接面52aの延在方向Lの長さは、当然ながら、剥離対象領域2aの延在方向Lの長さとは無関係に設定することができ、第二切削方向側当接面62aとは異なり、延在方向Lの長さを剥離対象領域2aより大きくすることも可能である。また、第一切削方向側当接面52aの延在方向Lに隣接する隣接部に対する第一戻り方向Y1側への突出量は、当然ながら、線材2の切削厚さとは無関係に設定することができる。また、第一戻り方向側当接面71aが延在方向Lに隣接する隣接部に対して第一切削方向X1側に突出するように形成された構成とすることもできる。この場合、第一戻り方向側当接面71aの延在方向Lの長さは、当然ながら、剥離対象領域2aの延在方向Lの長さとは無関係に設定することができ、第二戻り方向側当接面81aとは異なり、延在方向Lの長さを剥離対象領域2aより大きくすることも可能である。また、第一戻り方向側当接面71aの延在方向Lに隣接する隣接部に対する第一切削方向X1側への突出量は、当然ながら、線材2の切削厚さとは無関係に設定することができる。
(5)上記の実施形態では、第二切削方向側当接面62aの延在方向Lに隣接する隣接部65に対する第二戻り方向Y2側への突出量ΔPが、第一切削部材30による線材2の切削厚さ以上に設定される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、突出量ΔPが第一切削部材30による線材2の切削厚さより小さい値に設定される構成とすることもできる。この場合、上記の実施形態とは異なり、設計上、隣接部65を含む第二移動規制溝66の底面が、線材2に対して第二切削方向X2側から当接する構成となり、第二切削部材40の切削動作に伴い剥離対象領域2aが第二切削方向X2側に弾性変形した際に、第二切削方向側当接面62aが当該剥離対象領域2aに対して当接する構成となる。この場合、線材2に許容される変形量に応じて突出量ΔPを設定することができる。
(6)上記の実施形態では、第二戻り方向側当接面81aの延在方向Lに隣接する隣接部85に対する第二切削方向X2側への突出量ΔQが、第一切削部材30による線材2の切削厚さ以上に設定される構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、突出量ΔQが第一切削部材30による線材2の切削厚さより小さい値に設定される構成とすることもできる。この場合、上記の実施形態とは異なり、設計上、隣接部85を含む第二当接部81の第二切削方向X2側の面が、線材2に対して第二戻り方向Y2側から当接する構成となり、第二切削部材40の戻し動作に伴い剥離対象領域2aが第二戻り方向Y2側に弾性変形した際に、第二戻り方向側当接面81aが当該剥離対象領域2aに対して当接する構成となる。この場合、線材2に許容される変形量に応じて突出量ΔQを設定することができる。
(7)上記の実施形態では、複数(具体的には2つ)の切削部材30,40のそれぞれの往復動作の軌跡が、剥離対象領域2aにおいて交差するように構成されている場合を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、複数の切削部材30,40のそれぞれの往復動作が延在方向Lの異なる位置で実行され、線材2を搬送する工程を間に挟んで異なる切削部材30,40による往復動作が実行される構成とすることも可能である。
(8)上記の実施形態では、剥離装置1に2つの切削部材30,40が備えられた構成を例として説明した。しかし、本発明の実施形態はこれに限定されるものではなく、線材2の断面形状等によっては、剥離装置1が3つ以上の切削部材を備える構成とすることもできる。また、線材2の用途等によって、或いは線材2を回転させる機構が備えられる場合等には、剥離装置1が複数ではなく単数の切削部材を備える構成とすることもできる。
(9)その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されない。すなわち、本願の特許請求の範囲に記載されていない構成に関しては、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。