JP2013161917A - タンデム型有機光電変換素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】真空下のプロセス及び120℃を超える高温下のプロセスを要しない製造方法により製造することが可能であり、かつ十分な光電変換効率及び耐久性を有するタンデム型有機光電変換素子を提供することを目的とする。
【解決手段】第一の電極、第一の光電変換層、第二の光電変換層、及び第二の電極がこの順に積層されてなり、前記第一の光電変換層と前記第二の光電変換層との間に、導電性高分子及び水系溶媒に分散可能な自己分散型ポリマーを共に含有する中間層を有する、タンデム型有機光電変換素子。
【選択図】図4

Description

本発明は、タンデム型有機光電変換素子に関する。
近年、地球温暖化に対処するため、二酸化炭素排出量の削減が切に望まれている。また、近い将来、石油、石炭、及び天然ガスなどの化石燃料が枯渇することが予想されており、これらに替わる地球に優しいエネルギー資源の確保が急務となっている。そこで、太陽光、風力、地熱、原子力など利用した発電技術の開発が盛んに行われているが、中でも太陽光発電は、安全性の高さから特に注目されている。
太陽光発電では、光起電力効果を利用した光電変換素子を用いて、光エネルギーを直接電力に変換する。光電変換素子は、一般的に、一対の電極の間に光電変換層(光吸収層)が挟持されてなる構造を有し、当該光電変換層において光エネルギーが電気エネルギーに変換される。光電変換素子は、光電変換層に用いられる材料や、素子の形態により、単結晶・多結晶・アモルファスのSiを用いたシリコン系光電変換素子、GaAsやCIGS(銅(Cu)、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、セレン(Se)からなる半導体)等の化合物半導体を用いた化合物系光電変換素子、色素増感型光電変換素子(グレッツェルセル)などが提案・実用化されている。
しかしながら、これらの太陽電池を用いた場合の発電コストは、依然として化石燃料を用いて発電・送電する場合のコストと比較して高く、これが太陽光発電の普及の妨げとなっていた。また、基板に重いガラスを用いなければならないため、屋根などに設置する場合に補強工事が必要であり、これらも発電コストを高騰させる一因であった。
太陽光発電における発電コストを低減させるための技術として、陽極と陰極との間(透明電極と対電極との間)に、電子供与性有機化合物(p型有機半導体)及び電子受容性有機化合物(n型有機半導体との混合物を光電変換層として含む、バルクへテロジャンクション(BHJ)型の光電変換素子が提案されている(例えば、非特許文献1及び特許文献1を参照)。
バルクへテロジャンクション型有機光電変換素子は、軽量で柔軟性に富むことから、様々な製品への応用が期待されている。また、構造が比較的単純であり、p型有機半導体およびn型有機半導体を塗布することによって光電変換層を形成できることから、ロール・トゥ・ロールでの大量生産によってコストダウンが期待でき、上述した発電コストの課題を解決できる可能性があると考えられる。さらに、従来のシリコン系光電変換素子、化合物系光電変換素子、色素増感型光電変換素子などの製造とは異なり、160℃よりも高温の製造プロセスを必須に伴うものではないため、安価でかつ軽量なプラスチック基板上への形成も可能であると期待される。
なお、発電コストは、初期の製造コスト以外に素子の光電変換効率及び耐久性等も考慮する必要があり、これらを向上させるための研究が盛んに進められている。
更なる光電変換効率の向上を図るためには、より太陽光エネルギーを効率的よく電気エネルギーへと変換することが必要である。具体的には、(1)光電変換に利用できる太陽光スペクトルの波長域を拡大すること;(2)特定の波長の吸収率を上げること;が求められている。前記非特許文献1では、主に上記(1)を目的として、約900nmまで吸収可能な有機高分子を光電変換材料として用いることによって、5%を超える変換効率を達成するに至っている。
また、上記(1)及び(2)の双方を達成することが可能な技術として、タンデム化技術が期待されている。これは複数の太陽電池(セル)を積層する(すなわち、1つの素子中に複数の光電変換層を設ける)技術であり、積層する光電変換層の光電変換材料を同一のものとすれば光吸収率(吸光度)の増大が見込まれるし、異なる波長を吸収する光電変換層からなる光電変換層を積層すれば利用できる波長域の向上を期待することができる。
このようなタンデム型有機光電変換素子(以下、単に「タンデム型素子」とも称する)は、ボトムセルとトップセルの電気的な接続の仕方でその素子性能が異なり、理論上は直列に接続した場合は開放電圧Vocが上下のセルの和となり、並列に接続した場合は短絡電流密度Jscが上下のセルの和となり、曲線因子FFはいずれの場合もおおよそ単セルの値と同じになることが知られている。しかし、実際には、ボトムセルとトップセルとを接続する中間層の抵抗が十分低くなければ、FFが著しく低下し、理論通りの効率を得ることは難しい。
これまで、並列接続型のタンデム型素子の中間層として、PEDOT−PSS上に金属を蒸着してなる中間層(例えば、特許文献1ではCrを1nm、Auを5nm蒸着;非特許文献2ではAuを12nm蒸着)や、極薄膜の金属層を蒸着により形成した後PEDOT−PSSを積層してなる中間層が開示されている。一方、直列接続型のタンデム型素子では、非特許文献3及び4、並びに特許文献4のように、酸化チタンのような無機物からなる層を中間層として使用している。
国際公開第二008/066933号パンフレット 米国特許出願公開第2009/0211633号明細書 米国特許出願公開第2010/326497号明細書 特開2010−192862号明細書
A.Heeger,Nature Mat.,vol.6(2007),p497 Adv.Mater.,2010,22,E77 Science,317,p222,2007 Adv.Mater.,2011,23,3465
しかしながら、上述の並列接続型のタンデム型素子における中間層は、いずれも金属層を真空下で蒸着により形成する必要があるため、生産プロセスの効率化の点で課題を有していた。
また、上述の並列接続型のタンデム型素子における中間層に含まれる金属層や、直接接続型のタンデム型素子の中間層である酸化チタンのような無機物からなる層は、有機物からなる層と隣接・接合している。無機物(金属)と有機物とは線膨張率や弾性率が異なるため、温度サイクルテスト(JIS C8938−1995等)や曲げ試験によってはがれ等が生じ、電気的な接続が切断され、光電変換効率の低下を引き起こすおそれがあった。
さらに、光電変換素子を効率よく安価に生産するためには、安価なプラスチックフィルム基板を用いて、ロール・トゥ・ロールで連続的に生産できることが求められるが、直列接続型のタンデム型素子において中間層を形成する際、前記非特許文献3では160℃、5分間のアニール工程が、前記非特許文献4では150℃、30分間のアニール工程が必要とされており、プラスチックフィルムの耐熱性(120℃以下)に適応できるプロセスではないといった課題を有していた。
そこで本発明は、真空下のプロセス及び120℃を超える高温下のプロセスを要しない製造方法により製造することが可能であり、かつ十分な光電変換効率及び耐久性を有するタンデム型有機光電変換素子を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った。そして、特定のエマルジョン形成化合物、すなわち界面活性剤を要さずに水系溶媒に分散可能な自己分散型ポリマー(一般に、「自己乳化型ポリマー」又は「ソープフリーポリマー」とも呼ばれる)と、導電性高分子とを用いて中間層を形成することにより、所望の透明性を有し、かつ上記課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明のタンデム型有機光電変換素子は、第一の電極、第一の光電変換層、第二の光電変換層、及び第二の電極がこの順に積層されてなり、前記第一の光電変換層と前記第二の光電変換層との間に、導電性高分子及び水系溶媒に分散可能な自己分散型ポリマーを共に含有する中間層を有することを特徴とする。
本発明によれば、真空下のプロセス及び120℃を超える高温下のプロセスを要しない製造プロセスにより製造することが可能であり、かつ十分な光電変換効率及び耐久性を有するタンデム型有機光電変換素子を提供することが可能となる。
順層型のシングル型有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 逆層型のシングル型有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 本発明の一実施形態に係る順層・直列接続型のタンデム型有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。 本発明の他の一実施形態に係る順層・並列接続型のタンデム型有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。
以下、本発明の好ましい形態を説明する。
<有機光電変換素子>
本発明の一形態は、第一の電極、第一の光電変換層、第二の光電変換層、及び第二の電極がこの順に積層されてなり、第一の光電変換層と第二の光電変換層との間に、導電性高分子及び水系溶媒に分散可能な自己分散型ポリマーを共に含有する中間層を有する、タンデム型有機光電変換素子に関する。
本発明者らの検討によると、自己分散型ポリマーは、接着性が高く、かつ低温でも分散性に優れるため、導電性高分子と混合した場合、ミクロ相分離構造を形成するものと考えられる。すなわち、自己分散型ポリマーから形成される粒子の隙間を導電性高分子が埋めるようなモルホロジーを形成しうる。その結果、中間層全体としては導電性高分子の密度が低減されて透明性が向上し、また、中間層とこれに隣接する層との密着性が改善されつつ、導電性高分子はドメイン構造を形成するために導電性の低下は抑制することができる。さらに、本発明者らは、当該中間層は、120℃以下の低温で形成することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
当該中間層を用いて素子をタンデム化することにより、トップセルとボトムセルといった2つのサブセルを良好な電気的特性で接続することができ、かつ中間層自体の透明性も高いためにボトムセル(光入射側でないセル)にも十分な強度の光を透過させることができる。また、密着性及び柔軟性が高いために、温度サイクルテストに対しても優れた耐久性を示すことができる。
なお、このような効果は、後述のように中間層に補助取り出し電極として金属グリッドを配置した際にも得られうる。中間層に金属グリッドを設けることによりさらに高い曲線因子と光電変換効率を得ることが可能となる。
以下、本形態のタンデム型有機光電変換素子の構造及び各部材について詳細に説明する。
[タンデム型有機光電変換素子の構造]
本形態の有機光電変換素子はタンデム型であることを特徴とする。タンデム型の有機光電変換素子は、単セルからなるいわゆるシングル型の素子を電気的に直列又は並列に複数積層した構成を有する。なお、シングル型の素子の構造についても、基板上に形成された第一の電極(透明電極)を陽極(アノード)、第二の電極(対電極)を陰極(カソード)として機能させる、いわゆる順層型の素子と、第一の電極(透明電極)を陰極(カソード)、第二の電極(対電極)を陽極(アノード)として機能させる、いわゆる逆層型の素子とがある。したがって、例えば2つサブセルが積層されたタンデム型素子では、上述の直列・並列と、順層・逆層とを考慮すると、以下の、4種類の構成のタンデム型有機光電変換素子が考えられる。
(1)順層・直列タンデム型素子:第一の電極(アノード)/第一の光電変換層/中間層(電荷再結合層)/第二の光電変換層/第二の電極(カソード)
(2)逆層・直列タンデム型素子:第一の電極(カソード)/第一の光電変換/中間層(電荷再結合層)/第二の光電変換層/第二の電極(アノード)
(3)順層・並列タンデム型素子:第一の電極(アノード)/第一の光電変換層/中間層(取出し電極;カソード)/第二の光電変換層/第二の電極(アノード)
(4)逆層・並列タンデム型素子:第一の電極(カソード)/第一の光電変換層/中間層(取り出し電極;アノード)/第二の光電変換層/第二の電極(カソード)
本発明においては、上記4種類の構成のいずれも使用することができるが、素子の耐久性を向上させる観点からは、逆層型である(2)及び(4)の構成が好ましく、加えて温度サイクルテストに対する耐性を向上させる観点からは(4)の構成であることがさらに好ましい。
まず、素子の順層型及び逆層型について説明するため、シングル型の有機光電変換素子の構造について説明する。
図1は、順層型のシングル型有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。有機光電変換素子10は、基板11上に、第一の電極12、正孔輸送層17、光電変換層14、電子輸送層18、第二の電極13がこの順に積層されてなる。
図1において、基板11及び第一の電極12は透明な材料からなり、光電変換に用いられる光は、基板11の側から照射され、第一の電極12及び正孔輸送層17を経て、光電変換層14へと届く。光電変換層14は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する層であって、光電変換材料としてp型有機半導体及びn型有機半導体とを含有する。
p型有機半導体は、相対的に電子供与体(ドナー)として機能し、n型有機半導体は、相対的に電子受容体(アクセプター)として機能する。なお、ここでいう電子供与体及び電子受容体は、「光を吸収した際に、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)を形成する」機能を有するものであり、電極のように単に電子を供与あるいは受容するものではなく、光反応によって、電子を供与あるいは受容するものである。
図1において、基板11を介して第一の電極12から入射した光は、光電変換層14における電子受容体あるいは電子供与体(p型有機半導体及びn型有機半導体)で吸収され、電子供与体から電子受容体に電子が移動し、正孔と電子のペア(電荷分離状態)が形成される。
発生した電荷は内部電界、例えば、第一の電極12と第二の電極13との仕事関数が異なる場合では第一の電極12と第二の電極13との電位差によって、電子は電子受容体間を通り、また正孔は電子供与体間を通り、それぞれ異なる電極へ運ばれ、光電流が検出される。
図1の例では、第一の電極12の仕事関数は第二の電極13の仕事関数よりも深く(大きく)、かつ第一の電極12と光電変換層14の間に正孔を運びやすく電子を運びにくい正孔輸送層17が形成され、また第二の電極13と光電変換層14の間に正孔を運びにくく電子を運びやすい電子輸送層18が形成されているため、正孔は第一の電極12へと運ばれ、電子は第二の電極13へ輸送される。すなわち、第一の電極はアノード(陽極)として、第二の電極はカソード(陰極)として機能する。この場合、第二の電極13としては仕事関数が浅く(小さく)比較的酸化されやすい金属が用いられうる。なお、第一の電極及び第二の電極の仕事関数は、あくまで光電変換層14を基準とした際の相対的な仕事関数であり、例えばAdvanced Materials,2011(Vol.23,no.40),p4636−4643のように双極子層が形成される場合は、それらによる準位のシフトも考慮して仕事関数の大小を決定する必要がある。
図2は、逆層型のシングル型有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図2の逆層型のシングル型有機光電変換素子20では、図1の順層型の場合とは反対に、第一の電極12は第二の電極13よりも相対的に仕事関数が浅く(小さく)なるような材料から形成されている。加えて、第一の電極12と光電変換層14の間に電子を運びやすく正孔を運びにくい電子輸送層18が形成され、第二の電極13と光電変換層14の間に電子を運びにくく正孔を運びやすい正孔輸送層17が形成されているため、電子は第一の電極12へと運ばれ、正孔は第二の電極13へと輸送される。すなわち、第一の電極はカソード(陰極)として、第二の電極はアノード(陽極)として機能する。逆層型では、第一の電極(透明電極、金属酸化物からなる電極)よりも同等若しくは深い仕事関数を有する金属、金属酸化物、導電体を第二の電極として用いることができるため、順層型の素子よりも第二の電極の酸素や水分に対する安定性が高く、素子の耐久性を高いものとすることができる。
次に、本形態に係るタンデム型有機光電変換素子の構造について説明する。本形態のタンデム型有機光電変換素子は、上記の順層型又は逆層型サブセルが複数積層されてなる構成を有する。タンデム型有機光電変換素子は、光電変換層が1層のみからなるシングル型の素子よりも太陽光の吸収波長の拡大化及び/又は吸収量の増大を図ることができ、シングル型の素子よりも高い光電変換効率が期待できる。
タンデム型有機光電変換素子としては、上述のように、直列・並列と、順層・逆層とを考慮すると4種類の構成が考えられるが、以下では、上記(1)順層・直列タンデム型素子、及び(3)順層・並列タンデム型素子、について具体的について説明する。これら以外の(2)逆層・直列タンデム型素子及び(4)逆層・並列タンデム型素子の逆層型の素子に関しては、上記シングル型の素子で説明したように、第一電極及び第二電極の仕事関数の関係や、正孔輸送層17及び電子輸送層18を配置する位置を適宜選択することによって作製することができる。
なお、以下の本明細書中では、主に2つのサブセルを含むタンデム型有機光電変換素子について説明するが、本発明は3つ以上のサブセルを含むタンデム型有機光電変換素子であっても勿論構わない。また、当該2つのサブセルのうち透明電極側若しくは光が入射する側に位置するセルを「トップセル」(または第一の光電変換層)と、反射電極(対電極)側若しくは光が入射する側ではない方のセルを「ボトムセル」(または第二の光電変換層)と、それぞれ称する。
図3は、本発明の一実施形態に係る順層・直列接続型のタンデム型有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図3によると、タンデム型有機光電変換素子30は、基板21上に、第一の電極22a、第一の正孔輸送層27a、第一の光電変換層24a、第一の電子輸送層28a、金属グリッド25及び透明導電層26を含む中間層29を有し、さらに第二の正孔輸送層27b、第二の光電変換層24b、第二の電子輸送層28b、第二の電極23がこの順に積層されてなる構成を有する。つまり、図3の形態では2つの順層型の素子(サブセル)が中間層29により直列接続されることによりタンデム化されている。この際、中間層29は電荷再結合層として機能する。本形態では、第一の電極22の仕事関数は第二の電極23の仕事関数よりも深い(大きい)ため、正孔は第一の電極22へ、電子は第二の電極23へと輸送される。この場合、第一の電極はアノード(陽極)として、第二の電極はカソード(陰極)として機能する。
また、上述の図1及び図2で説明したシングル型の素子のように、第一の電極22の仕事関数よりも第二の電極23の仕事関数を深く(大きく)することで、電子を第一の電極22へ、正孔を第二の電極23へと輸送するように設計することもできる(逆層・直列型タンデム型素子)。この場合には、図3における第一の電子輸送層28aは第一の電極22と第一の光電変換層24aとの間に配置され、第一の正孔輸送層27aは第一の光電変換層24aと中間層29との間に配置され、第二の電子輸送層28bは中間層29と第二の光電変換層24bの間に配置され、第二の正孔輸送層27bは第二の光電変換層24bと第二の電極23との間に配置される。この際、第一の電極はカソード(陰極)として、第二の電極はアノード(陽極)として機能する。本形態では、2つの逆層型の素子(サブセル)が中間層29により直列接続されることによりタンデム化され、中間層29は電荷再結合層として機能する。
このような順層型および逆層型のサブセルが直列接続によりタンデム化された素子は、トップセルで発生した電子(あるいは正孔)と、ボトムサブセルで発生した正孔(あるいは電子)とが、中間層29で再結合されることで、出力される開放電圧(Voc)は、トップセルの電圧とボトムセルの電圧とを足し合わせた合算値になる。ただし、短絡電流値(Jsc)は2つのサブセルのうちの低い方に制限されるため、より高い効率を得るためにはトップセルとボトムセルの電流が略等しくなるように2つのサブセルの膜厚を制御することが好ましい。
図4は本発明の他の一実施形態に係る順層・並列接続型のタンデム型有機光電変換素子を模式的に表した断面概略図である。図4におけるタンデム型有機光電変換素子40は、基板21上に、第一の電極22a、第一の正孔輸送層27a、第一の光電変換層24a、第一の電子輸送層28a、金属グリッド25及び透明導電層26を含む中間層29を有し、さらに第二の電子輸送層28b、第二の光電変換層24b、第二の正孔輸送層27b、第二の電極23がこの順に積層されてなる構成を有する。図4の形態では順層型の素子(サブセル)をトップセルとして、逆層型の素子(サブセル)をボトムセルとして用いており、中間層29により並列接続されることによりタンデム化されている。この際、中間層29は取り出し電極として機能する。本形態では、第一の電極22及び第二の電極23の仕事関数は深く(大きく)、中間層29の仕事関数は浅く(小さく)なるように設計されており、正孔は第一の電極22及び第二の電極23へと輸送され、電子は中間層29へと輸送される。この場合、第一の電極22及び第二の電極23はアノード(陽極)として、中間層29はカソード(陰極)として機能する。
また、上述の図1及び図2で説明したシングル型の素子のように、第一の電極22及び第二の電極23の仕事関数を浅く(小さく)、中間層29の仕事関数を深く(大きく)なるように設計することにより、電子を第一の電極22と第二の電極23へ、正孔を中間層29へと輸送するように設計することもできる(逆層・並列型タンデム型素子)。この場合には、図4における電子輸送層28aは、第一の電極22と第一の光電変換層24aとの間に配置され、第一の正孔輸送層27aは第一の光電変換層24aと中間層29との間に配置され、第二の正孔輸送層27bは中間層と第二の光電変換層24bとの間に配置され、第二の電子輸送層28bは第二の光電変換層24bと第二の電極23との間に配置される。この際、第一の電極22及び第二の電極23はカソード(陰極)として、中間層29はアノード(陽極)として機能する。本形態では、2つの逆層型の素子(サブセル)が中間層29により並列接続されることによりタンデム化され、中間層29は取り出し電極として働く。
このような並列接続によりタンデム化された素子は、トップセルで発生した正孔(あるいは電子)と、ボトムセルで発生した正孔(あるいは電子)とが、各々中間層29から出力され、同時に、トップセルで発生した電子(あるいは正孔)と、ボトムセルで発生した電子(あるいは正孔)とが、第一の電極22及び第二の電極23から出力されることで、トップセルとボトムセルとの間で電気的な並列接続が形成され、図4に示されるように接続することで、外部回路200が駆動される。この並列接続が効率よく行われたとき、出力される短絡電流密度(Jsc)は、トップセルの電流とボトムセルの電流とを足し合わせた合算値になる。ただし、開放電圧(Voc)は2つのサブセルのうちの低い方に制限されるため、高い効率を得るためにはトップセルとボトムセルの電圧は略等しくなるように2つのサブセルの光電変換材料を適宜選択することが好ましい。なお、光電変換材料による電圧は、後述する光電変換層に含まれるp型有機半導体のHOMO準位とn型有機半導体のLUMO準位によって主に決定されるため、各サブセルが所望のVocとなるようなp型有機半導体とn型有機半導体の組合せを選択すればよい。これは、直列型タンデム素子が各サブセル間のJscを合わせるために第1及び第2の光電変換層の膜厚を厳密に制御しなければならないことに比べると、直列接続のタンデム型素子よりも最適化が容易であるといった利点がある。
なお、直列型のタンデム型素子(図3)及び並列型のタンデム型素子(図4)はいずれも、第二の光電変換層24bは、第一の光電変換層24aの吸収スペクトルと同じスペクトルの光を吸収する光電変換材料からなる層であってもよいし、異なるスペクトルの光を吸収する光電変換材料からなる層であってもよいが、より広い波長域の光を効率よく電気に変換するためには、互いに異なるスペクトルの光を吸収する光電変換材料からなる層であることが好ましい。
以下、本形態のタンデム型有機光電変換素子の各部材について詳細に説明する。
[中間層]
本発明に関わる中間層は、直列接続のタンデム型素子においては2つのサブセルから抽出される正孔及び電子の両方を取り込み、再結合させる役割を担う。また、並列接続のタンデム型素子における中間層は、2つのサブセルから抽出された正孔又は電子を外部の回路に取り出す機能を有する。したがって、直列・並列のいずれの形態においても中間層は十分な導電性を有するから構成される必要がある。また、これらの中間層は、塗布法によるプロセスにより形成可能なものであることが好ましい。
また、上述の図3及び4で示したように、中間層29は2つの光電変換層(24a,24b)の間に形成されるため、第二の光電変換層24bが高い光電変換効率で発電できるようにするには、中間層が高い透明性を有していることが望ましい。また、素子を安価なプラスチック基板上に形成可能とするためには、プラスチックの耐熱性の上限温度である120℃以下の低温で素子を形成することも求められる。
これらの課題は、一般にはトレードオフの関係にある。例えば、高い導電性を得るためには非特許文献2のように、ある程度中間層の膜厚を厚くする必要があるが、使用する材料が金属であってもPEDOT−PSS等の有機系導電材料であっても、通常透明性は低下してしまう。
また、PEDOT−PSS等を用いる場合、高い導電性を得るためには、非特許文献2のように、ある程度高温(150℃程度)でアニールする必要がある。
本発明では、このようなトレードオフ関係にある複数の課題を、導電性高分子及び自己分散型ポリマーを用いることで解決した。すなわち、導電性高分子と自己分散型ポリマーとを混合することにより、導電性高分子は連続的なドメイン構造を保持しつつ、その間を自己分散型ポリマーの粒子が埋めるような構造を形成すると考えられる。この結果、十分な導電性を確保しつつ、透明性に優れた中間層を形成することに成功した。さらに導電性高分子が微細に分散されたドメイン構造となるためか、低温のアニールでも十分な導電性を得ることが可能となった。更なる効果としては、自己分散型ポリマーは一般に接着性が高いという特性を有するため、中間層に隣接する層が無機物からなる層である場合や、中間層中に金属グリッドを有しているような形態であっても、高い密着性が確保でき、温度サイクルテストに対して高い耐久性を発揮することができるようになった。
なお、本明細書において「金属グリッド」とは、並列接続のタンデム型素子において中間層を取り出し電極として外部回路へと接続する場合、中間層の抵抗を非常に低く(10Ω/cm square以下)しないと曲線因子(FF)が低下し、光電変換効率が低下してしまうが、これを防ぐために導入される、メッシュ状の金属パターンをいう。このような補助電極を中間層内に形成することで、透明性を維持しつつ、導電性をさらに高いものとすることができる。したがって、本形態における中間層は、例えば、上記図4で示した形態のように、導電性高分子及び自己分散型ポリマーを含む導電性層と、必要に応じて配置される金属グリッド(金属細線)と、を組み合わせることにより形成されもよい。なお、金属グリッドは、上記図3に示すように、直列接続のタンデム型素子の中間層に設けられていてもよい。
(自己分散型ポリマー)
本発明において、水系溶媒に分散可能なポリマー分散液とは、ミセル形成を補助する界面活性剤や乳化剤等を必要とせずに、媒体中にナノメートルスケールの微粒子が安定して懸濁した状態にあるコロイド形成性ポリマーである。
本明細書で用いるところでは、用語「分散液」は、微粒子の懸濁を含有する液体媒体に関する。本発明に従って、「媒体」は典型的には水性液体、例えば、水である。本明細書で用いるところでは、「水性」は、かなりの部分の水を有する液体(50重量%以上)を意味する。「コロイド形成」は、水溶液に分散されたときに微粒子を形成する物質に関し、すなわち、「コロイド形成」ポリマーは水溶性ではない。
すなわち、非水溶性のポリマーが界面活性剤、乳化剤等無しに水分を50重量%以上含む溶媒中で安定して(1週間以上)ナノメートルスケールの微粒子の粒径を安定して維持できる(増大、凝集、沈殿がみとめられない)ものを水系溶媒に分散可能自己分散型ポリマー分散液と定義する。
上記コロイド粒子の大きさ(直径)は通常0.001〜1μm(1〜1000nm)程度であるが、得られる中間層の透明性の観点から好ましくは、3〜500nmであり、より好ましくは5〜100nmであり、さらに好ましくは10〜50nmである。上記のコロイド粒子の大きさは、光散乱光度計により測定することができる。なおここでいう粒径とは、1次粒子の粒径をいう。
このような自己分散型ポリマーは、主に、イオン性のものとノニオン性のものに大別される。つまり、水系溶媒中で解離性基(カルボン酸基等)が解離して電荷を帯びることで自己分散可能となるタイプのイオン性のポリマーと、ポリエチレンオキシドのような親水性基によって自己分散するノニオン性のポリマーがある。本形態ではイオン性、ノニオン性のいずれのポリマーも使用可能であるが、得られる素子の耐久性の観点からは、解離性基を有するポリマー(イオン性ポリマー)を用いることが好ましい。解離性基を有する自己分散型ポリマーを用いることにより得られる中間層の導電性や密着性を向上させることができる。特に、アニオン性の解離性基を有するポリマーを使用することが好ましい。
なお基本的にはこれらの自己分散型ポリマーを含む組成物が塗布されて薄膜となった場合も、上記の分散液での粒径がそのまま膜中においても観測され、好ましくは5〜100nmであり、より好ましくは8〜80nmであり、さらに好ましくは10〜50nmである粒径が5nm以上であると、導電性高分子との相溶性が高くなりすぎないため、導電性高分子とのドメインが良好に形成されうる。一方、粒径が100nm以下であると導電性高分子との相溶性が低くなりすぎないため、透明性や導電性が良好に維持されうる。なお、当該自己分散型ポリマーの薄膜中の粒径は原子間力顕微鏡(AFM)により測定することができる。
自己分散型ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、25℃〜80℃であることが好ましく、30〜75℃であることがより好ましく、50〜70℃であることがさらに好ましい。ガラス転移温度が25℃以上であると、中間層に十分な耐熱性を付与することができる。一方、ガラス転移温度(Tg)が80℃以下であると、温度サイクルテストで耐久性を向上できる。ガラス転移温度ガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量測定器(Perkin Elmer社製DTC−7型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定し、JIS K7121(1987)に従い求めることができる。
自己分散型ポリマーが解離性基を有する場合の当該解離性基としては、アニオン性基(スルホ基(−SOH)及びその塩(−SOX;X=陽イオン、以下同様)、カルボキシル基(−COOH)及びその塩(−COOX)、リン酸基(−OPO)及びその塩(−OPOHX、−OPO)等)、カチオン性基(アンモニウム塩(−NHX)等)等が挙げられる。特に限定はないが、導電性高分子との相溶性の観点から、解離性基はアニオン性基であることが好ましい。解離性基の量は、自己分散型ポリマーが水系溶媒に分散可能ある限りにおいては特に制限はないが、可能な限り少ない方が乾燥時間が短縮されるため好ましい。また、アニオン性基、カチオン性基に使用されるカウンター種(陽イオンX)も特に限定はないが、分散安定性の観点から、ハロゲン化物イオンであることが好ましい。
自己分散型ポリマーの構造は特に制限はないが、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリビニルアルコール(PVA)共重合体、ポリエチレン−ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン−ポリウレタン共重合体、ポリブタジエン、ポリブタジエン−ポリスチレン共重合体、ポリアミド(ナイロン)、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアクリレート−ポリエステル共重合体、ポリアクリレート−ポリスチレン共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン−ポリカーボネート共重合体、ポリウレタン−ポリエーテル共重合体、ポリウレタン−ポリアクリレート共重合体、シリコーン共重合体、シリコーン−ポリウレタン共重合体、シリコーン−ポリアクリレート共重合体、ポリフッ化ビニリデン−ポリアクリレート共重合体、ポリフルオロオレフィン−ポリビニルエーテル共重合体を主骨格として有していることが好ましい。また、これらの骨格をベースに、さらに他のモノマーと共重合させた共重合体であってもよい。中でもポリエステル骨格を有するポリマー(ポリエステル系ポリマー、ポリエステル−アクリル樹脂系ポリマー)や、エチレン骨格を有するポリエチレン樹脂ポリマーであることが好ましい。
これらの自己分散型ポリマーは、自ら合成したものを用いてもよいし、市販品を利用してもよい。市販品の一例を以下に示す。例えばアニオン性の解離性基を有する自己分散型ポリマーとしては、ポリゾール(登録商標)FP3000(ポリエステル樹脂、アニオン、コア:アクリル、シェル:ポリエステル、昭和電工社製)、バイロナール(登録商標)MD1480(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナール(登録商標)MD1245(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナール(登録商標)MD1500(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナール(登録商標)MD2000(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナール(登録商標)MD1930(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、プラスコートRZ105(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、プラスコートRZ561(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、プラスコートRZ570(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、プラスコートRZ571(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、ハイテックS−9242(ポリエチレン樹脂、アニオン、東邦化学社製)等が挙げられる。
バイロナール(登録商標)は、親水性官能基を有するモノマーが少量共重合されてなる高分子量ポリエステルであり、分子末端には水酸基を有する。また、プラスコート(登録商標)はテレフタル酸を主成分とした飽和共重合ポリエステル樹脂であり、ポリマー中にハードセグメント、ソフトセグメントを含むことを特徴とする樹脂である。
また、カチオン性の解離性基を有する自己分散型ポリマーとしては、UW−319SX、UW−223SX、UW−550CS(アクリル樹脂、大成ファインケミカル社製)、リカボンド(登録商標)AW71−L,アクアテックスEC−1200,EC−1700,AC−3100,FK−854,ES−330(ポリオレフィン系、中央理化工業社製),NS−600X,NS−620X,NS−650X(アクリル樹脂、高松油脂社製)等を挙げることができる。
一方、解離性基を有さないノニオン性(非解離性)の自己分散型ポリマーとしては、モビニール(登録商標)7720(アクリル樹脂、ノニオン、日本合成化学社製)、モビニール(登録商標)7820(アクリル樹脂、ノニオン、日本合成化学社製)、リカボンド(登録商標)BA−10L、AW−18LK,AW−919,BE−812H,BE−814,BC−331(ポリオレフィン系、中央理化工業社製)等を挙げることができる。
これらの中でも、解離性基を有するタイプの自己分散型ポリマーであることが好ましい。自己分散型ポリマーが解離性基を有することで、より最適なドメインサイズとすることができる。特に導電性高分子にPSS等のアニオン性の材料を使用する場合は、アニオン性の解離性基を有する自己分散ポリマーを用いることにより、最適かつ経時安定性に優れた中間層を得ることができる。
(導電性高分子)
本明細書において、「導電性高分子」とは、JIS K 7194の「導電電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に準拠した方法で測定したシート抵抗が10×Ω/cm squareより低い高分子材料をいう。
導電性高分子は、π共役系導電性高分子とポリ陰イオンとを有してなる導電性高分子であることが好ましい。このような導電性高分子は、後述するπ共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマー、適切な酸化剤及び酸化触媒を後述のポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合することによって容易に製造できる。
上記π共役系導電性高分子としては、特に限定されず、置換又は無置換のポリチオフェン類、ポリピロール類、ポリインドール類、ポリカルバゾール類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリフラン類、ポリパラフェニレンビニレン類、ポリアズレン類、ポリパラフェニレン類、ポリパラフェニレンサルファイド類、ポリイソチアナフテン類、ポリチアジル類等の鎖状導電性高分子を利用することができる。中でも、導電性、透明性、安定性等の観点からポリチオフェン類やポリアニリン類が好ましく、ポリチオフェン類であることがより好ましく、ポリエチレンジオキシチオフェンが最も好ましい。
π共役系導電性高分子の形成に用いられる前駆体モノマーは、分子内にπ共役系を有し、適切な酸化剤の作用によって高分子化した際にもその主鎖にπ共役系が形成されるものである。例えば、ピロール類及びその誘導体、チオフェン類及びその誘導体、アニリン類及びその誘導体等が挙げられる。
前駆体モノマーの具体例としては、ピロール、3−メチルピロール、3−エチルピロール、3−n−プロピルピロール、3−ブチルピロール、3−オクチルピロール、3−デシルピロール、3−ドデシルピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジブチルピロール、3−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシルピロール、3−メチル−4−カルボキシエチルピロール、3−メチル−4−カルボキシブチルピロール、3−ヒドロキシピロール、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3−ブトキシピロール、3−ヘキシルオキシピロール、3−メチル−4−ヘキシルオキシピロール、チオフェン、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−プロピルチオフェン、3−ブチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−ヘプチルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−デシルチオフェン、3−ドデシルチオフェン、3−オクタデシルチオフェン、3−ブロモチオフェン、3−クロロチオフェン、3−ヨードチオフェン、3−シアノチオフェン、3−フェニルチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジブチルチオフェン、3−ヒドロキシチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ブトキシチオフェン、3−ヘキシルオキシチオフェン、3−ヘプチルオキシチオフェン、3−オクチルオキシチオフェン、3−デシルオキシチオフェン、3−ドデシルオキシチオフェン、3−オクタデシルオキシチオフェン、3,4−ジヒドロキシチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、3,4−ジエトキシチオフェン、3,4−ジプロポキシチオフェン、3,4−ジブトキシチオフェン、3,4−ジヘキシルオキシチオフェン、3,4−ジヘプチルオキシチオフェン、3,4−ジオクチルオキシチオフェン、3,4−ジデシルオキシチオフェン、3,4−ジドデシルオキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェン、3,4−プロピレンジオキシチオフェン、3,4−ブテンジオキシチオフェン、3−メチル−4−メトキシチオフェン、3−メチル−4−エトキシチオフェン、3−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシチオフェン、3−メチル−4−カルボキシエチルチオフェン、3−メチル−4−カルボキシブチルチオフェン、アニリン、2−メチルアニリン、3−イソブチルアニリン、2−アニリンスルホン酸、3−アニリンスルホン酸等が挙げられる。
上記ポリ陰イオンは、置換若しくは未置換のポリアルキレン、置換若しくは未置換のポリアルケニレン、置換若しくは未置換のポリイミド、置換若しくは未置換のポリアミド、置換若しくは未置換のポリエステル、及びこれらの共重合体であって、アニオン性基を有する構成単位とアニオン性基を有さない構成単位とからなるものであることが好ましい。
導電性高分子において、ポリ陰イオンは、π共役系導電性高分子を溶媒に可溶化させる機能を有する。また、ポリ陰イオンのアニオン性基は、π共役系導電性高分子に対するドーパントとして機能して、π共役系導電性高分子の導電性と耐熱性を向上させうる。
ポリ陰イオンのアニオン性基としては、π共役系導電性高分子への化学酸化ドープが起こりうる官能基であればよいが、中でも、製造の容易さ及び安定性の観点から、一置換硫酸エステル基、一置換リン酸エステル基、リン酸基、カルボキシル基、スルホ基等が好ましい。さらに、官能基のπ共役系導電性高分子へのドープ効果の観点より、スルホ基、一置換硫酸エステル基、カルボキシル基がより好ましい。
ポリ陰イオンの具体例としては、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアリルスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリビニルカルボン酸、ポリスチレンカルボン酸、ポリアリルカルボン酸、ポリアクリルカルボン酸、ポリメタクリルカルボン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンカルボン酸、ポリイソプレンカルボン酸、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらは単独重合体であってもよいし、上記2種以上の共重合体であってもよい。
また、ポリ陰イオンは、化合物内にさらにF(フッ素原子)を有してもよい。具体的には、パーフルオロスルホン酸基を含有するナフィオン(登録商標)(Dupont社製)、カルボン酸基を含有するパーフルオロ型ビニルエーテルからなるフレミオン(登録商標)(旭硝子社製)等を挙げることができる。
これらのポリ陰イオンうち、スルホン酸基を有する化合物を用いる場合、導電性高分子及び自己分散型ポリマーを含有する層を塗布、乾燥することによって形成した後に、マイクロ波を照射する前に100〜120℃で5分以上の加熱乾燥処理を施してもよい。
さらに、これらのポリ陰イオン中でも、高い導電性が得られるポリスチレンスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸、ポリアクリル酸エチルスルホン酸、ポリアクリル酸ブチルスルホン酸が好ましい。
ポリ陰イオンの重合度は、10〜100000であることが好ましく、溶媒溶解性及び導電性の点からは、50〜10000の範囲であることがより好ましい。当該重合度はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定(確認)することができる。
ポリ陰イオンの製造方法としては、例えば、酸を用いてアニオン性基を有しないポリマーにアニオン性基を直接導入する方法、アニオン性基を有しないポリマーをスルホ化剤によりスルホン酸化する方法、アニオン性基含有重合性モノマーの重合により製造する方法等が挙げられる。
より詳しくは、アニオン性基含有重合性モノマーの重合により製造する方法は、溶媒中、アニオン性基含有重合性モノマーを、酸化剤及び/又は重合触媒の存在下で、酸化重合又はラジカル重合によって製造する方法が挙げられる。具体的には、所定量のアニオン性基含有重合性モノマーを溶媒に溶解させ、これを一定温度に保ち、それに予め溶媒に所定量の酸化剤及び/又は重合触媒を溶解した溶液を添加し、所定時間で反応させる。その反応により得られたポリマーは溶媒によって一定の濃度に調整される。この製造方法において、アニオン性基含有重合性モノマーにアニオン性基を有さない重合性モノマーを共重合させてもよい。
得られたポリマーがポリ陰イオン塩である場合には、ポリ陰イオン酸に変質させることが好ましい。ポリ陰イオン酸に変質させる方法としては、イオン交換樹脂を用いたイオン交換法、透析法、限外濾過法等が挙げられ、これらの中でも、作業が容易な点から限外濾過法が好ましい。
導電性高分子に含まれるπ共役系導電性高分子とポリ陰イオンの比率「π共役系導電性高分子」:「ポリ陰イオン」は質量比で1:1〜20が好ましい。導電性、分散性の観点からより好ましくは1:2〜10の範囲である。
π共役系導電性高分子を形成する前駆体モノマーをポリ陰イオンの存在下で化学酸化重合して、本発明に係る導電性高分子を得る際に使用される酸化剤は、例えばJ.Am.Soc.,85、454(1963)に記載されるピロールの酸化重合に適する、いずれかの酸化剤であることが好ましい。実際的な理由のために、安価でかつ取扱い易い酸化剤、例えば鉄(III)塩、例えばFeCl、Fe(ClO、有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩、又は過酸化水素、重クロム酸カリウム、過硫酸アルカリ(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム)又はアンモニウム、過ホウ酸アルカリ、過マンガン酸カリウム及び銅塩例えば四フッ化ホウ酸銅を用いることが好ましい。加えて、酸化剤として随時触媒量の金属イオン、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン又はバナジウムイオン等の存在下における空気又は酸素も使用することができる。過硫酸塩、ならびに有機酸及び有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩は腐食性でないためこれらを使用することが好ましい。
有機残基を含む無機酸の鉄(III)塩の例としては、炭素数1〜20のアルカノールの硫酸半エステルの鉄(III)塩、例えばラウリル硫酸;炭素数1〜20のアルキルスルホン酸、例えばメタンスルホン酸又はドデカンスルホン酸;脂肪族炭素数1〜20のカルボン酸、例えば2−エチルヘキシルカルボン酸;脂肪族パーフルオロカルボン酸、例えばトリフルオロ酢酸及びパーフルオロオクタノン酸;脂肪族ジカルボン酸、例えばシュウ酸;並びに殊に芳香族の、随時炭素数1〜20のアルキル置換されたスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸及びドデシルベンゼンスルホン酸のFe(III)塩;等が挙げられる。
これらの導電性高分子は、市販の材料も好ましく利用できる。例えば、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸からなる導電性高分子(PEDOT−PSSと略す)が、H.C.Starck社からClevios(登録商標)シリーズとして、Aldrich社からPEDOT−PSSの483095、560596として、Nagase Chemtex社からDenatronシリーズとして市販されている。また、ポリアニリンが、日産化学社からORMECON(登録商標)シリーズとして市販されている。
導電性高分子は、更なる導電性の向上を目的として、第二のドーパントとして有機化合物を含有してもよい。本発明で用いることができる有機化合物には特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、酸素含有化合物が好適に挙げられる。酸素含有化合物としては、酸素を含有する限り特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基含有化合物、カルボニル基含有化合物、エーテル基含有化合物、スルホキシド基含有化合物等が挙げられる。ヒドロキシ基含有化合物としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、グリセリン等が挙げられ、これらの中でも、エチレングリコール、ジエチレングリコールが好ましい。カルボニル基含有化合物としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン等が挙げられる。エーテル基含有化合物としては、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。スルホキシド基含有化合物としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。これらのうち、ジメチルスルホキシド、エチレングリコール、ジエチレングリコールから選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。また、これらは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
透明導電層は、上述のような自己分散型ポリマーを含むが、さらに導電性高分子の導電性増強効果を有するジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等の極性溶媒、水酸基含有非導電性高分子等を含むことができる。これにより、高い導電性、高い透明性、耐水性、平滑性を同時に満たすことができる。
透明な非導電性高分子としては、天然高分子樹脂又は合成高分子樹脂から広く選択して使用することができ、水溶性高分子又は水性高分子エマルジョンが特に好ましい。水溶性高分子としては、天然高分子のデンプン、ゼラチン、寒天等、半合成高分子のヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、合成高分子のポリビニルアルコール、ポリアクリル酸系高分子、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。水性高分子エマルションとしては、アクリル系樹脂(アクリルシリコン変性樹脂、フッ素変性アクリル樹脂、ウレタン変性アクリル樹脂、エポキシ変性アクリル樹脂等)、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。
また、合成高分子樹脂としては、透明な熱可塑性樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、フッ化ビニリデン)や、熱・光・電子線・放射線で硬化する透明硬化性樹脂(例えば、メラミンアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル変性シリケート等のシリコーン樹脂)を使用することができる。また、下記のポリマー(A)も好ましい第二のドーパントとなる合成高分子樹脂である。
本形態において、導電性高分子及び自己分散型ポリマーを含む透明導電層を形成する方法は特に制限はないが、一例を挙げると、実施例に示すように導電性高分子、自己分散型ポリマーを水系溶媒に分散した塗布液を調製し、これを塗布、乾燥することにより形成することができる。
水系溶媒としては、水を50体積%以上含む溶媒であれば特に制限されず、純水(蒸留水、脱イオン水を含む)以外にも、酸、アルカリ、塩等を含む水溶液、親水性の有機溶媒等を含んでいてもよい。具体的には、純水(蒸留水、脱イオン水を含む)、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、DMF、ヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)などの非プロトン性水溶性有機溶媒、水とアルコール系溶媒又は非プロトン性水溶性有機溶媒との混合溶媒等が挙げられる。
塗布液中に含まれる導電性高分子と、自己分散型ポリマーとの配合比は、特に制限はないが、得られる中間層の透明性と導電性の両立の観点から、質量比で10:90〜90:10であることが好ましく、25:75〜75:25であることがより好ましい。
また、塗布液に含まれる水系溶媒の割合は、塗布液の安定性の観点から全固形分濃度(導電性高分子及び自己分散型ポリマー、並びに任意に添加される他の成分を含む全ての固形分濃度)は2〜20質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。であることがより好ましい。
当該塗布液のpHは、高い導電性を示す範囲であることが望ましく、具体的には0.1〜4.0が好ましく、より好ましくは0.5〜3.0であり、さらに好ましくは1.0〜2.0である。
また、当該塗布液は、有機薄膜太陽電池の耐久性の観点から、界面活性剤(乳化剤)や造膜温度をコントロールする可塑剤等は含まないことが好ましい。
塗布液を塗布する方法は特に制限はないが、キャスト法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法等の通常の方法を用いることができる。中でも、スピンコート法、ブレードコーティング法を用いることが特に好ましい。また、塗布の際の塗布液及び/又は塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布・乾燥時の温度変動による析出、ムラを防ぐといった観点から、好ましくは20〜80℃であり、より好ましくは50〜70℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥(加熱処理)条件の一例を挙げると50〜120℃程度の温度で、1〜20分間程度といった条件が例示される。乾燥に使用する装置としては、ホットプレート、温風乾燥、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ、真空乾燥機等が挙げられるが、これ以外の乾燥装置を用いることも勿論可能である。
(金属グリッド)
本発明における中間層は、金属又は金属酸化物からなる金属グリッド(「金属細線」」、「金属細線パターン」とも称される)をさらに有していてもよい。中間層中に金属グリッドを有することにより中間層の導電性が向上し、より高い曲線因子及び光電変換効率が得られうる。特に素子のサイズが大きい場合や並列接続のタンデム型素子の際に有用である。なお、これらの金属グリッドを中間層に配置する場合は、図3及び4のように第一の光電変換層24a及び第一の電子輸送層28aを形成した後、導電性高分子及び自己分散型ポリマーを含む透明導電層26を形成する前に金属グリッド25を形成することが好ましい。金属グリッドの金属細線パターンは、パターンとパターンとの間が空隙であるため、これらの間を導電性高分子及び自己分散型ポリマーを含む透明導電層26が埋めるような素子構成となることが好ましい。
金属グリッドの材料としては、金属又は金属酸化物であるが、導電性の観点から金属が好ましい。金属としては、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム等が挙げられるが、導電性の観点から好ましくは金、銀、銅であり、銀が最も好ましい。またこれらの金属を含む合金でもよく、金属パターンは単層でも複数の層が積層されていてもよい。細線パターンの形状に特に制限はないが、例えば、ストライプ状、あるいはメッシュ状等が挙げられ、電極の導電性及び透明性の観点から決めることができる。
金属グリッドは、金属又は金属酸化物のナノ粒子(以下、それぞれ「金属ナノ粒子」、「金属酸化物ナノ粒子」とも称する)を用いて形成されうる。本明細書において金属ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子とは、粒子径が原子スケールからnmサイズの微粒子状の金属又は金属酸化物のことをいう。金属ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子の平均粒径は10〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。金属ナノ粒子に用いられる金属としては、導電性の観点から銀又は銅が好ましく、銀又は銅単独でもよいし、それぞれの組合せでもよく、銀と銅との合金、銀を銅でめっきしたものや、銅を銀でめっきしたものであってもよい。
金属ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子は、粒子径の短径がnmサイズであれば、形状として粒子状であってもよく、ロッド状やワイヤ状であってもよい。一般に、ナノワイヤとは、金属元素を主要な構成要素とする、原子スケールからnmサイズの直径を有する線状構造体のことをいう。
金属グリッドに金属ナノワイヤ又は金属酸化物ナノワイヤを用いる場合、1つのナノワイヤで長い導電パスを形成するために、平均長さが3μm以上であることが好ましく、3〜500μmであることがより好ましく、3〜300μmであることがさらに好ましい。また、長さの相対標準偏差は40%以下であることが好ましい。また、平均短径には特に制限はなく、透明性の観点から小さいことが好ましいが、導電性の観点からはある程度大きい方が好ましい。したがって、金属ナノワイヤ又は金属酸化物ナノワイヤの平均短径は10〜300nmであることが好ましく、30〜200nmであることがより好ましい。また、短径の相対標準偏差は20%以下であることが好ましい。金属グリッドの金属ナノワイヤ又は金属酸化物ナノワイヤは相互に接触していることが好ましく、さらにメッシュ状に接触していることが好ましい。金属ナノワイヤ又は金属酸化物ナノワイヤを相互に接触、又はメッシュ状に接触させた金属グリッドは、上記の液相成膜法を用いれば容易に得ることができる。
本発明において金属ナノワイヤ又は金属酸化物ナノワイヤの製造手段には特に制限はなく、例えば、液相法や気相法等の公知の手段を用いることができる。また、具体的な製造方法にも特に制限はなく、公知の製造方法を用いることができる。例えば、銀ナノワイヤの製造方法としては、Adv.Mater.,2002,14,833〜837;Chem.Mater.,2002,14,4736〜4745、銅ナノワイヤの製造方法としては特開2002−266007号公報等を参考にすることができる。上記銀ナノワイヤの製造方法によると、水溶液中で簡便に銀ナノワイヤを製造することができることから当該製造を適用することが好ましい。
金属グリッドを含む中間層の形成方法としては、まず中間層のすぐ下に位置する機能層の上に金属グリッド25として、金属又は金属酸化物からなる細線パターンを形成する。細線パターンは、金属又は金属酸化物粒子とバインダーとからなる分散液を塗布、乾燥して膜形成した後、エッチング等によりパターニングすることにより形成されうる。また、銀塩法により、ハロゲン化銀分散液を塗布、乾燥して膜形成した後、露光、現像処理を行いパターン形成してもよい。これらの膜形成方法としては、液相成膜法であれば特に制限はない。具体的には、ロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法、インクジェット法等の塗布法を用いることができる。さらに、金属又は金属酸化物ナノ粒子の分散液を用い、スプレーコート法やインクジェット法、グラビアコート法、フレキソ印刷法により、あるいはマスクを用いて、直接パターン形成してもよい。なお、細線形状は、使用する金属ナノ粒子又は金属酸化物ナノ粒子の分散液の濃度及び粘度や、版の断面形状を変えることにより調整することができる。
金属グリッド25を形成後、パターン形成された金属細線層を被覆するように、導電性高分子及び自己分散型ポリマーを含む分散液を塗布、乾燥して透明導電層26を形成する。この際の具体的な方法としては、上述の液相成膜法を用いることができる。
本形態の中間層を、このような金属グリッド及び透明導電層からなる積層構造とすることにより、金属グリッド又は透明導電層単独では得ることのできない高い導電性を、電極面内において均一に得ることができる。
金属グリッドにおける細線同士の距離(線幅W)は、通常20〜200μmであるが、好ましくは40〜120μmであり、より好ましくは40〜80μmである。細線の線幅が20μm以上であると、所望の導電性が得られうる。一方、線幅が200μm以下であると、所望の透明性が得られうる。また、細線の高さHは、通常0.1〜2.0μmであるが、好ましくは0.2〜1.5μmであり、より好ましくは0.3〜1.0μmである。細線の高さが0.1μm以上であると、所望の導電性が得らうる。一方、細線の高さHが2μm以下であると素子の製造の際に、電流リークや各機能層の膜厚分布不良の問題が起こりにくい。さらに細線のアスペクト比H/Wは、通常0.001〜0.1であるが、好ましくは0.01〜0.03である。細線のアスペクト比が0.001以上であると所望の導電性が得られうる。一方、細線のアスペクト比が0.1以下であると素子の性能低下が生じにくい。さらに、基板と垂直方向の細線の断面の断面積をSとし、S/(W×H)で表される断面形状係数は、通常0.6〜0.9であるが、好ましくは0.7〜0.8である。断面形状係数が、0.6より小さいと細線の断面形状が錐に近く、また0.9より大きいと矩形に近くなるが、0.6〜0.9の範囲であると、細線エッジ部での電流リークが起こりにくく素子の不良が生じにくい。
金属グリッドを形成した後、適宜乾燥、熱処理を施すことができる。乾燥処理の条件は特に制限はないが、基板や金属グリッドが損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80℃から120℃で10秒から10分の乾燥処理をすることができる。本発明において、乾燥終了後、さらに熱処理を行うことで、金属グリッドの導電性を著しく向上することができ、素子性能が向上する。さらに、金属グリッドの耐擦過性や耐水性、隣接する層との接着性を向上することができる。熱処理は、50℃以上の温度で、5分間以上行うことが好ましく、50℃未満では導電性向上効果が小さくなりうる。また、120℃を超える温度であっても、基板や金属グリッドが損傷しない範囲で、例えば0.001秒から数秒の処理を行ってもよい。熱処理は、金属グリッドを形成した後、オンラインで行ってもよく、オフラインで行ってもよいが、塗布、乾燥後、直ちに行うことが導電性向上の点から好ましい。
本形態の中間層は、高い導電性を有する金属グリッドと、金属グリッドよりは比較的導電性が低いが透明性の高い透明導電層を含みうるが、この際の金属グリッドの細線部の表面比抵抗は、100Ω/cm square以下であることが好ましく、10Ω/cm square以下であることがより好ましく、5Ω/cm square以下であることがさらに好ましい。一方、透明導電層の表面比抵抗は、10Ω/cm square以下であることが好ましく、10Ω/cm square以下であることがより好ましく、10Ω/cm square以下であることがさらに好ましい。これらの表面比抵抗は、例えば、JIS K6911、ASTM D257等に準拠して測定することができ、また市販の表面抵抗率計を用いて簡便に測定することができる。
透明導電層に、水酸基含有非導電性高分子が含まれる場合の、導電性高分子と水酸基含有非導電性高分子との比率は、導電性高分子を100質量部とした場合、水酸基含有非導電性高分子が30〜900質量部であることが好ましく、電流リーク防止、水酸基含有非導電性高分子の導電性増強効果、透明性の観点から、水酸基含有非導電性高分子が100質量部以上であることがより好ましい。
透明導電層の乾燥膜厚は30nmから2000nmであることが好ましい。導電性の点から、100nm以上であることがより好ましく、中間層の表面平滑性の点から、200nm以上であることがさらに好ましい。また、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。
透明導電層を塗布した後、適宜乾燥処理を施すことができる。乾燥処理の条件として特に制限はないが、基板や透明導電層が損傷しない範囲の温度で乾燥処理することが好ましい。例えば、80〜120℃で10秒間から10分間の乾燥処理をすることができる。本発明において、乾燥終了後、さらに熱処理を行うことで、水酸基含有非導電性高分子の架橋反応を促進、完了させることができる。これにより中間層の洗浄耐性、溶媒耐性が著しく向上し、さらに素子性能が向上する。
熱処理は、50〜120℃の温度で、30分間以上行うことが好ましい。50℃未満では、反応促進効果が小さく、120℃を超える場合、素材への熱的ダメージが増えるためか、効果が小さくなる。処理温度としては80〜120℃であることがより好ましく、処理時間としては1時間以上であることがより好ましい。処理時間の上限は特にないが、生産性の観点から24時間以下であることが好ましい。熱処理は、金属グリッドを塗布、乾燥した後、オンラインで行ってもよく、オフラインで行ってもよい。オフラインで行う場合、さらに減圧下で行うことが、水分の乾燥促進にもつながり、好ましい。
また、本形態の中間層は高い透明性を有する。具体的には、 JIS K 7361−1:1997に従って測定した全光線透過率の値が75%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
[電荷輸送層]
本形態のタンデム型有機光電変換素子では、光電変換層は、輸送層の上に形成されうる。この輸送層は、トップセル(光入射側のセル)が順層型か逆層型かでどちらの極性のキャリアを運ぶ層かが決定される。
本形態においては、輸送層は正孔輸送層及び電子輸送層のどちらであってもよく、以下、それぞれの層を形成する材料等について記載する。
(正孔輸送層・電子ブロック層)
有機光電変換素子は、光電変換層と陽極との間に正孔輸送層を有することが好ましい。当該正孔輸送層を配置することにより、光電変換層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となる。
正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、スタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT−PSS、ポリアニリン及びそのドープ材料、国際公開第2006/019270号パンフレット等に記載のシアン化合物等を用いることができる。なお、光電変換層に用いられるn型有機半導体のLUMO準位よりも浅いLUMO準位を有する正孔輸送層には、光電変換層で生成した電子を陽極側には流さないような整流効果を有する、電子ブロック機能が付与される。このような正孔輸送層は、電子ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する正孔輸送層を使用する方が好ましい。このような材料としては、特開平5−271166号公報等に記載のトリアリールアミン系化合物、また酸化モリブデン、酸化ニッケル、酸化タングステン等の金属酸化物等を用いることができる。また、光電変換層に用いたp型有機半導体のみからなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。光電変換層を形成する前に、下層に塗布膜を形成すると塗布面をレベリングする効果があり、リーク等の影響が低減するため好ましい。
前述したように正孔輸送層が金属グリッドの下層に位置する場合は、正孔輸送層は架橋処理されていることが好ましい。この場合は、架橋基を有する架橋基を有するトリアリールアミン系化合物、ゾルゲル法により作製されるMoOx、架橋剤を添加したスタルクヴイテック社製、商品名BaytronP等のPEDOT−PSS、ポリアニリン及びそのドープ材料、国際公開第2006/019270号パンフレット等に記載のシアン化合物等を好ましく用いることができる。
(電子輸送層・正孔ブロック層)
本形態の有機光電変換素子は、光電変換層と陰極との中に電子輸送層を形成することが好ましい。電子輸送層を設けることにより、光電変換層で発生した電荷をより効率的に取り出すことが可能となる。
電子輸送層を構成する材料としては、例えば、オクタアザポルフィリン、p型有機半導体のパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)を用いることができる。なお、光電変換層に用いられるp型有機半導体のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する電子輸送層には、光電変換層で生成した正孔を陰極側には流さないような整流効果を有する、正孔ブロック機能が付与される。このような電子輸送層は、正孔ブロック層とも呼ばれ、このような機能を有する電子輸送層を使用する方が好ましい。このような材料としては、バソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型有機半導体、及び酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ガリウム等のn型無機酸化物及びフッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属化合物等を用いることができる。また、光電変換層に用いたn型有機半導体単体からなる層を用いることもできる。これらの層を形成する手段としては、真空蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。
前述したように電子輸送層が金属グリッドの下層に位置する場合は、電子輸送層は架橋処理されていることが好ましい。この場合は、電子輸送層を構成する材料として架橋基を有するバソキュプロイン等のフェナントレン系化合物、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等のn型有機半導体、及びゾルゲル法により作製される酸化チタン、酸化亜鉛等が好ましく用いられる。
なお、前述のように耐久性の観点で有利な逆層型の素子とする場合には、第一の電極上に電子輸送層を形成した後に光電変換層が形成されるため、光電変換材料を含む塗布液に対して不溶である化合物が電子輸送材料として好ましい。そのような観点から、電子輸送材料は、酸化チタンや酸化亜鉛といった無機物、及び国際公開2008−134492号パンフレットに記載のポリエチレンイミンやアミノシランカップリング剤のような架橋可能な有機物であることが好ましい。中でもアミノシランカップリング剤(一例を挙げると、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン)を用いることが好ましい。しい。また、APPLIED PHYSICS LETTERS 95(2009),p043301、 Adv. Funct. Mat.,2010,p.1977、Adv. Mater.,2011,23,3086、J.Am.Chem.Soc.,2011,p.8416、Advanced Materials, 2011 (Vol 23,no.40), p4636−4643、および下記の化合物等、アルコール系溶媒には可溶であるが、発電層を溶解する芳香族系溶媒には溶解しない材料も好ましく用いることができる。
[光電変換層]
本形態のタンデム型光電変換素子には2以上の光電変換層が含まれるが、これらの光電変換層は、p型有機半導体及びn型有機半導体を含むバルクへテロジャンクション構造を有することが好ましい。以下、p型有機半導体及びn型有機半導体について説明する。
(p型有機半導体)
当該光電変換層に用いられるp型有機半導体としては、種々の縮合多環芳香族低分子化合物や共役系ポリマーが挙げられるが、本形態のタンデム型有機光電変換素子は2以上の光電変換層を有しているため、それぞれの層に適したp型有機半導体を使用することが好ましい。
縮合多環芳香族低分子化合物としては、例えば、アントラセン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、へプタセン、クリセン、ピセン、フルミネン、ピレン、ペロピレン、ペリレン、テリレン、クオテリレン、コロネン、オバレン、サーカムアントラセン、ビスアンテン、ゼスレン、ヘプタゼスレン、ピランスレン、ビオランテン、イソビオランテン、サーコビフェニル、アントラジチオフェン等の化合物、ポルフィリンや銅フタロシアニン、テトラチアフルバレン(TTF)−テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯体、ビスエチレンテトラチアフルバレン(BEDTTTF)−過塩素酸錯体、及びこれらの誘導体や前駆体が挙げられる。
また上記の縮合多環を有する誘導体の例としては、国際公開第03/16599号パンフレット、国際公開第03/28125号パンフレット、米国特許第6,690,029号明細書、特開2004−107216号公報等に記載の置換基をもったペンタセン誘導体、米国特許出願公開第2003/136964号明細書等に記載のペンタセンプレカーサ、J.Amer.Chem.Soc.,vol127.No14.4986、J.Amer.Chem.Soc.,vol.123、p9482、J.Amer.Chem.Soc.,vol.130(2008)、No.9、2706等に記載のトリアルキルシリルエチニル基で置換されたアセン系化合物等が挙げられる。
共役系ポリマーとしては、例えば、ポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、又はTechnical Digest of the International PVSEC−17,Fukuoka,Japan,2007,P1225に記載の重合性基を有するようなポリチオフェン、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、国際公開第2008/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Adv.Mater,2007,p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体、Adv.Mater.,vol.19(2007)p2295に記載のポリチオフェン−カルバゾール−ベンゾチアジアゾール共重合体(PCDTBT)、Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、ポリピロール及びそのオリゴマー、ポリアニリン、ポリフェニレン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリアセチレン、ポリジアセチレン、ポリシラン、ポリゲルマン等のσ共役系ポリマー等のポリマー材料が挙げられる。
また、ポリマー材料ではなくオリゴマー材料としては、チオフェン6量体であるα−セクシチオフェンα,ω−ジヘキシル−α−セクシチオフェン、α,ω−ジヘキシル−α−キンケチオフェン、α,ω−ビス(3−ブトキシプロピル)−α−セクシチオフェン等のオリゴマーが好適に用いることができる。
第一の光電変換層(光入射側、すなわちトップセルの光電変換層は第二の光電変換層と比較して短波領域を吸収する層であることが好ましく、具体的には350〜900nm程度の領域の光を吸収する層であることが好ましい。したがって、第一の光電変換層に用いられるp型有機半導体の吸収領域は、350〜900nm程度であることが好ましい。350nmよりも波長が短い光は基板フィルムなどに有害であるため、基板自体に紫外線吸収機能を付与することが多く、これよりも波長が短い光は吸収することは実質的には必要でない。また、第一の光電変換層で900nm以上の光を吸収すると、第二の光電変換層が利用できる光の帯域が少なくなるため、第二の光電変換層の発電電流が低下し、結果としてタンデム型素子全体の発電電流も低下するため好ましくない。よって、第一の光電変換層には、より好ましくは380〜750nmの光を吸収するp型有機半導体を用いることが好ましい。上述のp型有機半導体のうち、このような範囲に吸収スペクトルを有するものであれば、第一の光電変換層に好適であるが、好ましくはポリ3−ヘキシルチオフェン(P3HT)等のポリチオフェン及びそのオリゴマー、ポリフェニレンビニレン及びそのオリゴマー、ポリチエニレンビニレン及びそのオリゴマー、Nature Material,(2006)vol.5,p328に記載のポリチオフェン−チエノチオフェン共重合体、Adv.Mater,2007,p4160に記載のポリチオフェン−チアゾロチアゾール共重合体,Adv.Mater.,vol.19(2007)p2295に記載のポリチオフェン−カルバゾール−ベンゾチアジアゾール共重合体(PCDTBT),ペンタセン又はその誘導体、アントラジチオフェン及びその誘導体、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン又はその誘導体、フタロシアニン誘導体であることが好ましい。
一方、第二の光電変換層は、第一の光電変換層と比較して長波領域の光も吸収することが可能な層であることが好ましく、具体的には350〜2000nm程度の領域の光を吸収する層であることが好ましい。したがって、第二の光電変換層に用いられるp型有機半導体の吸収領域は、350〜2000nm程度であることが好ましい。350nmよりも波長が短い光は基板フィルムなどに有害であるため、基板自体に紫外線吸収機能を付与することが多く、これよりも波長が短い光は吸収することは実質的には必要でない。また、2000nm以上の光を吸収するp型有機半導体は、バンドギャップが小さくなりすぎて起電力が低下し、タンデム化した際の発電効率の向上が見込めなくなるために好ましくない。より好ましくは、380〜1200nmの光を吸収するp型有機半導体である。具体的には、国際公開第2008/000664号パンフレットに記載のポリチオフェン−ジケトピロロピロール共重合体、Nature Mat.vol.6(2007),p497に記載のPCPDTBT等のようなポリチオフェン共重合体、APL2004v85p5081に記載のAPFO−Green1等、ポルフィリン、ベンゾポルフィリン又はその誘導体、フタロシアニン誘導体であることが好ましい。
[n型有機半導体]
本形態のタンデム型有機光電変換素子に用いられるn型有機半導体は、特に限定されないが、例えば、フラーレン、オクタアザポルフィリン等、上述のp型有機半導体の水素原子をフッ素原子に置換したパーフルオロ体(パーフルオロペンタセンやパーフルオロフタロシアニン等)、ナフタレンテトラカルボン酸無水物、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド、ペリレンテトラカルボン酸無水物、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド等の芳香族カルボン酸無水物やそのイミド化物を骨格として含む高分子化合物等を挙げることができる。
中でもn型有機半導体としては、各種のp型有機半導体と高速(〜50フェムト秒)で、かつ効率的に電荷分離を行うことができる、フラーレン誘導体を用いることが好ましい。
フラーレン誘導体としては、フラーレンC60、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC84、フラーレンC240、フラーレンC540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブ、多層ナノチューブ、単層ナノチューブ、ナノホーン(円錐型)等、及びこれらの一部が水素原子、ハロゲン原子、置換又は無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基、シリル基、エーテル基、チオエーテル基、アミノ基、シリル基等によって置換されたフラーレン誘導体を挙げることができる。
中でもN−Methylfulleropyrrolidine、下記式で表される[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッドメチルエステル(略称PCBM)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−nブチルエステル(PCBnB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−イソブチルエステル(PCBiB)、[6,6]−フェニルC61−ブチリックアシッド−n−ヘキシルエステル(PCBH)、Adv.Mater.,vol.20(2008),p2116等に記載のbis−PCBM、特開2006−199674号公報等のアミノ化フラーレン、特開2008−130889号公報等のメタロセン化フラーレン、米国特許第7,329,709号明細書等の環状エーテル基を有するフラーレン、J.Amer.Chem.Soc.,(2009)vol.130,p15429に記載のSIMEF、Appl.Phys.Lett.,vol.87(2005)、p203504に記載のC60MC12等のような、置換基を有してより溶解性が向上したフラーレン誘導体を用いることが好ましい。
[光電変換層の形成方法]
本形態において光電変換層を形成する方法は特に制限はないが、上述のp型有機半導体及びn型有機半導体が混合されたバルクヘテロジャンクション構造を有する光電変換層を形成する方法としては、蒸着法、塗布法(キャスト法、スピンコート法を含む)等を例示することができる。このうち、正孔と電子とが電荷分離する界面の面積を増大させ、高い光電変換効率を有する素子を作製するためには、塗布法を採用することが好ましい。また塗布法は、製造速度を向上させる点でも優れている。
p型有機半導体及びn型有機半導体を含む塗布液を塗布した後は、残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体の結晶化による移動度向上・吸収長波化を図るために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集又は結晶化が促進され、光電変換層のバルクヘテロジャンクション構造を適切な相分離構造とすることができる。その結果、光電変換層におけるキャリアの移動度が向上し、高い光電変換効率を得ることができるようになる。
光電変換層は、p型有機半導体及びn型有機半導体が均一に混在された単一層であってもよいが、p型有機半導体及びn型有機半導体との混合比を変えた層が複数積層されてなる構成を有していてもよい。
[電極]
本形態の有機光電変換素子は、第一の電極及び第二の電極を必須に含む。したがって、第一の電極が陽極として機能し、第二の電極が陰極として機能する場合もあるし、逆に、第一の電極が陰極として機能し、第二の電極が陽極として機能する場合もある。光電変換層14で生成されるキャリア(正孔・電子)は、電極間を移動し、正孔は陽極12へ、電子は陰極16へと到達する。なお、本発明においては主に正孔が流れる電極を陽極と呼び、主に電子が流れる電極を陰極と呼ぶ。さらに、電極が透光性を有するものであるか否かという機能面から、透光性を有する電極を透明電極と呼び、透光性のない電極を対電極と呼び分ける場合もある。図1の順層型の場合、通常、陽極は透光性のある透明電極であり、陰極は透光性のない対電極である。
本形態の電極に使用される材料は、光電変換素子として駆動する限りにおいては特に制限はなく、本技術分野で使用されうる電極材料を適宜採用することができる。中でも、陽極は陰極と比較して相対的に仕事関数が大きい材料から構成されることが好ましく、逆に陰極は陽極と比較して相対的に仕事関数が小さい材料から構成されることが好ましい。なお、電荷輸送層(正孔輸送層又は電子輸送層)が存在する場合は、上記以外の形態であっても十分に光電変換素子として機能する。
上述の図1に示す有機光電変換素子10において、陽極11は、相対的に仕事関数が大きく、透明な(好ましくは、380〜800nmの可視光に対して80%以上の透過率を有する)電極材料から構成されることが好ましい。一方、陰極12は、相対的に仕事関数が小さく(例えば、4eV以下)、通常、透光性の低い電極材料から構成されうる。
このような、図1に示す有機光電変換素子10において、陽極(透明電極)に使用される電極材料としては、例えば、金、銀、白金等の金属;インジウム・スズ酸化物(ITO)、SnO、ZnO等の透明な導電性金属酸化物;金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブ等の炭素材料等が挙げられる。また、陽極の電極材料として導電性高分子を用いることも可能である。陽極に使用されうる導電性高分子としては、例えば、PEDOT−PSS、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリアズレン、ポリイソチアナフテン、ポリカルバゾール、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリフェニルアセチレン、ポリジアセチレン、ポリナフタレン及びこれらの誘導体等が挙げられる。これらの電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。また、これらの材料の形状も特に制限はなく、ナノ粒子、ナノワイヤ、極薄膜等の形状で使用されうる。さらに、各材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成することも可能である。また、本発明においては中間層として記載している、自己分散型ポリマーと導電性高分子からなる粗製物、及びこれらに金属グリッドを複合化した透明導電膜も、本発明における第1及び第2の電極として使用することができる。
一方、図1の有機光電変換素子において、陰極(対電極)に使用される電極材料としては、合金、電子伝導性化合物、及びこれらの混合物が使用されうる。具体的には、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。このうち、電子の取り出し性能や、酸化等に対する耐久性の観点から、仕事関数が低い第一の金属と、第一の金属よりも仕事関数が大きく安定な金属である第二の金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物や、安定な金属であるアルミニウム等を用いることが好ましい。また、これらの材料のうち金属を用いることも好ましく、これにより、第一の電極側から入射し光電変換層で吸収されずに透過した光を、第二の電極で反射させて光電変換に再利用することができ、光電変換効率を向上させることが可能である。また、これらの材料の形状も特に制限はなく、ナノ粒子、ナノワイヤ、極薄膜等の形状で使用されうる。さらに、各材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成することも可能である。
また、図2に示す有機光電変換素子では、光が入射する基板25側に陰極12が位置し、反対側に陽極11が位置する。したがって、図2に示す陽極11は、相対的に仕事関数が大きく、通常、透光性の低い電極材料から構成されることが好ましい。一方、陰極12は、相対的に仕事関数が小さく、透明な電極材料から構成される。
図2の有機光電変換素子において、陰極(透明電極)に使用される電極材料としては、例えば、金、銀、銅、白金、ロジウム、ルテニウム、アルミニウム、マグネシウム、インジウム、スズ、亜鉛等の金属、金属化合物、及び合金(具体的には、インジウム・スズ酸化物(ITO)、SnO、ZnO、IDIXO(In−ZnO));カーボンナノ粒子、カーボンナノワイヤー、カーボンナノ構造体等の炭素材料;が挙げられる。これらの電極材料は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上の材料を混合して使用してもよい。また、これらの材料の形状も特に制限はなく、ナノ粒子、ナノワイヤ、極薄膜等の形状で使用されうる。さらに、各材料からなる層を2種以上積層させて電極を構成することも可能である。このうち、カーボンナノワイヤーを用いることにより、透明で導電性の高い陰極を塗布法により形成できるため好ましい。また、金属系の材料を使用する場合、陽極(対電極)と対向する側に、例えば、金、銀、銅、鉄、ニッケル、クロム、アルミニウム、又はこれらの合金(アルミニウム合金)、金属化合物(銀化合物)等を用いて、補助電極(グリッド電極、バスライン電極とも称される)を作製した後、上述の図1の有機光電変換素子の陽極(透明電極)材料として例示した導電性高分子の膜を設けることで、陰極(透明電極)とすることができる。このように補助電極を設けることにより、素子を大面積化した場合に起こる曲線因子(FF)の低減を抑えることができる。
一方、図2の有機光電変換素子において、陽極(対電極)に使用される電極材料としては、例えば、銀、ニッケル、モリブデン、金、白金、タングステン、及び銅等が挙げられる。
第一の電極及び第二の電極のシート抵抗は、特に制限はないが、数百Ω/cm square以下が好ましく、50Ω/cm square以下がより好ましく、15Ω/cm square以下がさらに好ましい。なお、第一の電極及び第二の電極のシート抵抗の下限は、特に制限されないが、通常、380〜800nmの波長の可視光に対して80%以上の透過率を示す範囲でなるべく低いほど好ましい。通常は0.01Ω/cm square以上、好ましくは0.1Ω/cm square以上であれば本発明の効果を得ることができる。ここで、第一の電極及び第二の電極のシート抵抗は、同じであってもあるいは異なってもよい。また、第一の電極及び第二の電極の膜厚も特に制限はなく、材料によって異なるが、通常、10〜1000nmであり、好ましくは100〜200nmであり、光の透過率又は抵抗の観点から当業者により適宜設定されうる。ここで、第一の電極及び第二の電極の膜厚は、同じであってもあるいは異なってもよい。
また、補助電極を有する場合のシート抵抗は、10Ω/cm square以下であることが好ましく、0.01〜8Ω/cm squareであることがより好ましい。この場合、シート抵抗は補助電極の形状(線幅、高さ、ピッチ、形状)によって決まり、補助電極よりも抵抗の高い材料を使用する場合であっても窓部の抵抗影響はほとんど受けない。
(基板)
本発明の有機光電変換素子は、必要に応じて基板を含みうる。基板は、電極を塗布方式で形成する場合における、塗布液の被塗布部材としての役割を有する。
基板側から光電変換される光が入射する場合、基板はこの光電変換される光を透過させることが可能な、即ちこの光電変換すべき光の波長に対して透明な部材であることが好ましい。基板は、例えば、ガラス基板や樹脂基板等が好適に挙げられるが、軽量性と柔軟性の観点から透明樹脂フィルムを用いることが望ましい。
本発明で透明基板として好ましく用いることができる透明樹脂フィルムには特に制限がなく、その材料、形状、構造、厚み等については公知のものの中から適宜選択することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、変性ポリエステル等のポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン(PE)樹脂フィルム、ポリプロピレン(PP)樹脂フィルム、ポリスチレン樹脂フィルム、環状オレフィン系樹脂等のポリオレフィン類樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂フィルム、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂フィルム、ポリサルホン(PSF)樹脂フィルム、ポリエーテルサルホン(PES)樹脂フィルム、ポリカーボネート(PC)樹脂フィルム、ポリアミド樹脂フィルム、ポリイミド樹脂フィルム、アクリル樹脂フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)樹脂フィルム等を挙げることができるが、可視域の波長(380〜800nm)における透過率が80%以上である樹脂フィルムであれば、本発明に係る透明樹脂フィルムに好ましく適用することができる。中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルホンフィルム、ポリカーボネートフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムであることがより好ましい。
本発明に用いられる透明基板には、塗布液の濡れ性や接着性を確保するために、表面処理を施すことや易接着層を設けることができる。表面処理や易接着層については従来公知の技術を使用できる。例えば、表面処理としては、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、高周波処理、グロー放電処理、活性プラズマ処理、レーザー処理等の表面活性化処理を挙げることができる。また、易接着層としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレタン、ビニル系共重合体、ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ビニリデン系共重合体、エポキシ系共重合体等を挙げることができる。
また、酸素及び水蒸気の透過を抑制する目的で、透明基板にはバリアコート層が予め形成されていてもよい。
(その他の層)
本形態の有機光電変換素子は、上記の各部材(各層)の他に、光電変換効率の向上や、素子の寿命の向上のために、他の部材(他の層)をさらに設けてもよい。その他の部材としては、例えば、正孔注入層、電子注入層、励起子ブロック層、UV吸収層、光反射層、波長変換層などが挙げられる。また、上層に偏在した金属酸化物微粒子をより安定にするため等にシランカップリング剤等の層を設けてもよい。さらに本発明の光電変換層に隣接して金属酸化物の層を積層してもよい。
また、本発明の有機光電変換素子は、太陽光のより効率的な受光を目的として、各種の光学機能層を有していてもよい。光学機能層としては、例えば、反射防止膜、マイクロレンズアレイ等の集光層、陰極で反射した光を散乱させて再度光電変換層に入射させることができるような光拡散層等が挙げられる。
反射防止層としては、各種公知の反射防止層を設けることができるが、例えば、透明樹脂フィルムが二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムである場合は、フィルムに隣接する易接着層の屈折率を1.57〜1.63とすることで、フィルム基板と易接着層との界面反射を低減して透過率を向上させることができるのでより好ましい。屈折率を調整する方法としては、酸化スズゾルや酸化セリウムゾル等の比較的屈折率の高い酸化物ゾルとバインダー樹脂との比率を適宜調整して塗設することで実施できる。易接着層は単層でもよいが、接着性を向上させるためには2層以上の構成にしてもよい。
集光層としては、例えば、支持基板の太陽光受光側にマイクロレンズアレイ上の構造を設けるように加工したり、あるいは所謂集光シートと組み合わせたりすることにより特定方向からの受光量を高めたり、逆に太陽光の入射角度依存性を低減することができる。
マイクロレンズアレイの例としては、基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmが好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚みが厚くなり好ましくない。
また光散乱層としては、各種のアンチグレア層、金属又は各種無機酸化物等のナノ粒子・ナノワイヤ等を無色透明なポリマーに分散した層等を挙げることができる。
<有機光電変換素子の製造方法>
上述の本形態のタンデム型有機光電変換素子の製造方法は特に制限はなく、従来公知の手法を適宜参照することにより製造することができる。以下では逆層型を有する素子の製造方法について説明するが、各工程の順番等を適宜変更することにより、順層や、直列・並列構成の素子を製造することが可能である。
本形態のタンデム型有機光電変換素子の製造方法は、陰極を形成する工程と、前記陰極の上に、p型有機半導体材料及びn型有機半導体材料を含む2以上の光電変換層を形成する工程と、前記2以上の光電変換層の上に、陽極を形成する工程とを必須に含む。以下、本形態のタンデム型有機光電変換素子の製造方法の各工程について、詳細に説明する。
本形態の製造方法では、まず、陰極を形成する。陰極を形成する方法は、特に制限はないが、操作の容易性や、ダイコータ等の装置を用いてロール・ツー・ロールで生産可能なことから、基板の上に、陰極の構成材料を含む液体を塗布し、乾燥させる方法であることが好ましい。またこれ以外にも、市販の薄膜状の電極材料をそのまま使用しても構わない。
上記で陰極を形成した後、必要に応じて、この陰極上に、電子輸送層を形成してもよい。電子輸送層を形成する手段としては、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは溶液塗布法である。溶液塗布法を用いて電子輸送層を形成する場合には、上述した電子輸送材料を適当な溶媒に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法を用いて陰極上に塗布し、乾燥させればよい。溶液塗布法に用いられる塗布法としては、キャスト法、スピンコート法、ブレードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、グラビアコート法、スプレーコーティング法、ディッピング(浸漬)コーティング法、ビードコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法、インクジェット法、スクリーン印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、フレキソ印刷法等の印刷法、Langmuir−Blodgett(LB)法等の通常の方法を用いることができる。中でも、スピンコート法、ブレードコーティング法を用いることが特に好ましい。なお、塗布法に使用する溶液の固形分濃度は、塗布方法や膜厚によっても変動しうるが、0.5〜15質量%が好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。また、なお、塗布の際の塗布液及び/又は塗布面の温度は、特に制限はないが、塗布・乾燥時の温度変動による析出、ムラを防ぐといった観点から、好ましくは30〜120℃であり、より好ましくは50〜120℃である。さらに、乾燥の具体的な形態についても特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。乾燥(加熱処理)条件の一例を挙げると90〜120℃程度の温度で、5〜90分間程度といった条件が例示される。乾燥に使用する装置としては、ホットプレート、温風乾燥、赤外線ヒーター、マイクロウエーブ、真空乾燥機等が挙げられるが、これ以外の乾燥装置を用いることも勿論可能である。
続いて、上記で形成した陰極又は電子輸送層上に、p型有機半導体及びn型有機半導体を含む光電変換層を形成する。光電変換層を形成するための具体的な手法について特に制限はないが、好ましくは、p型有機半導体及びn型有機半導体をそれぞれ、又は一括して、適当な溶媒に溶解・分散させた溶液を、適当な塗布法(具体的な形態については、上述した通りである)を用いて陰極上に塗布し、乾燥させればよい。その後、残留溶媒及び水分、ガスの除去、及び半導体材料の結晶化による移動度向上・吸収長波化を引き起こすために加熱を行うことが好ましい。製造工程中において所定の温度でアニール処理されると、微視的に一部が凝集又は結晶化が促進され、光電変換層を適切な相分離構造とすることができる。その結果、光電変換層の正孔と電子(キャリア)の移動度が向上し、高い効率を得ることができるようになる。このようにして、p型有機半導体及びn型有機半導体が一様に混合され、バルクヘテロジャンクション型の有機光電変換素子とすることができる。
一方、p型有機半導体とn型有機半導体の混合比の異なる複数層からなる光電変換層(例えば、p−i−n構造)を形成する場合には、第一の層を塗布乾燥後に、順次ブレードコーターで塗布することにより形成することも可能である。
なお、ポリアルキレンイミンを含む光電変換層を形成する場合、例えば、P型有機半導体及び/又はn型有機半導体とポリアルキレンイミンと適当な溶媒に溶解・分散させた溶液を調製し、これを塗布、乾燥すればよい。
当該光電変換層を形成する工程は、酸素や水分に曝さないようにするために窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素又は水分によりp型有機半導体が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができる。
なお、本形態では光電変換層を2以上有することを特徴とするが、各光電変換層の間に上述の方法により中間層を作製する。
次に、上記で形成した光電変換層上に、陽極を形成する。陽極を形成するための手段についても特に制限はなく、蒸着法、溶液塗布法のいずれであってもよいが、好ましくは蒸着法(例えば、真空蒸着法)が用いられる。
さらに、光電変換層と陽極との間に正孔輸送層を設ける場合には、蒸着法又は溶液塗布法、好ましくは溶液塗布法を用いて、正孔輸送層が形成される。なお、当該正孔輸送層を形成する工程は、上記光電変換層を形成する工程と同様、窒素雰囲気下のグローブボックス内で行うことが好ましい。このように、窒素雰囲気下で行うことにより、大気中の酸素又は水分により光電変換層が劣化するのを防ぎ、素子の耐久性を高めることができる。
さらに、上述した各種の層以外の層が含まれる場合には、これらの層を形成するための工程を、溶液塗布法や蒸着法等を用いることで適宜追加して行うことができる。また、必要に応じて第一の光電変換層と中間層との間、第二の光電変換層と中間層との間に、電荷輸送層(電子輸送層・正孔輸送層)等をさらに配置してもよい。
上記電極(陰極・陽極)、光電変換層、正孔輸送層、電子輸送層等は、必要に応じてパターニングされうる。パターニングの方法は特に制限はなく、公知の手法を適宜適用することができる。例えば、バルクへテロジャンクション型の光電変換層や正孔輸送層・電子輸送層等で使用される可溶性の材料をパターニングする場合には、ダイコート、ディップコート等の全面塗布後に不要部だけ拭き取ってもよいし、製膜後に炭酸レーザー等を用いてアブレーションする方法、スクライバで直接削り取る方法等でパターニングしてもよいし、インクジェット法やスクリーン印刷等の方法を使用して塗布時に直接パターニングしてもよい。一方、電極等で使用される不溶性の材料の場合は、真空蒸着法や真空スパッタ法、プラズマCVD法、電極材料の微粒子を分散させたインキを用いたスクリーン印刷法やグラビア印刷法、インクジェット法等の各種印刷方法、蒸着膜に対しエッチング又はリフトオフする等の公知の方法を用いることができる。また、別の基板上に形成したパターンを転写することによってパターンを形成してもよい。
また、本形態の有機光電変換素子は、環境中の酸素、水分等による劣化を防止するために、必要に応じて封止されうる。封止の方法は特に制限はなく、有機光電変換素子や有機エレクトロルミネッセンス素子等で用いられる公知の手法によって行われうる。例えば、(1)アルミニウム又はガラス等でできたキャップを接着剤によって接着することによって封止する手法;(2)アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等のガスバリア層が形成されたプラスチックフィルムと有機光電変換素子上を接着剤で貼合する手法;(3)ガスバリア性の高い有機高分子材料(ポリビニルアルコール等)をスピンコートする方法;(4)ガスバリア性の高い無機薄膜(酸化ケイ素、酸化アルミニウム等)又は有機膜(パリレン等)を真空下で堆積する方法;並びにこれらを複合的用いて積層する方法等が挙げられる。
さらに、本形態の有機光電変換素子は、エネルギー変換効率と素子寿命向上の観点から、素子全体を2枚のバリア付き基板で封止した構成でもよく、好ましくは、水分ゲッター、酸素ゲッター等を同封した構成であることがより好ましい。
<有機光電変換素子の用途>
本発明の他の形態によれば、上述のタンデム型有機光電変換素子を有する太陽電池が提供される。本形態のタンデム型有機光電変換素子は、優れた耐久性及び光電変換効率を達成することができるため、これを発電素子とする太陽電池に好適に使用されうる。
また、本発明のさらに他の形態によれば、上述したタンデム型有機光電変換素子がアレイ状に配列されてなる光センサアレイが提供される。すなわち、本形態のタンデム型有機光電変換素子は、その光電変換機能を利用して、光センサアレイ上に投影された画像を電気的な信号に変換する光センサアレイとして利用することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<正孔阻止層材料・化合物1の合成>
Adv. Mater. 2007,19,2010を参考として、化合物Bを合成した。化合物Bの重量平均分子量は4400であった。化合物B 1.0gおよび3,3’−イミノビス(N,N−ジメチルプロピルアミン)(アルドリッチ社製)9.0gを、テトラヒドロフラン100mlおよびN,N−ジメチルホルムアミド100mlの混合溶媒に溶解し、室温(25℃)で48時間撹拌して、反応を行った。反応終了後、溶媒を減圧留去し、さらに水に再沈殿を行うことで、化合物15を1.3g得た(収率90%)。得られた化合物について、H−NMRによって構造を特定した。結果を下記に示す。
7.6〜8.0ppm(br), 2.88ppm(br), 2.18ppm(m), 2.08ppm(s), 1.50ppm(m), 1.05ppm(br)。
<逆層・並列接続のタンデム型有機光電変換素子の評価>
[有機光電変換素子TC−101の作製](比較例)
国際公開第2008/134492号パンフレットを参考として、有機光電変換素子を作成した。ポリエチレンテレフタレート(PET)基板上に、第一の電極としてインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜150nm堆積したもの(シート抵抗12Ω/cm square)を、通常のフォトリソグラフィ技術と湿式エッチングとを用いて10mm幅にパターニングし、第一の電極を形成した。パターン形成した第一の電極を、界面活性剤と超純水による超音波洗浄、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。これ以降は基板をグローブボックス中に持込み、窒素雰囲気下で作業した。
この第一の電極上に、Aldrich社製3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシランの0.05wt%メトキシエタノール溶液を、乾燥膜厚が約5nmになるようにブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、ホットプレート上で120℃、1分間の加熱処理をして、第一の電子輸送層を製膜した。
次いで、o−ジクロロベンゼンに、p型有機半導体であるP3HT(BASF社製:レジオレギュラー ポリ−3−ヘキシルチオフェン)を1.5質量%、n型有機半導体であるPC61BM(フロンティアカーボン製nanom spectra E100H)を1.2質量%で混合した溶液を調製し、ホットプレート上で80℃に加熱しながら一昼夜撹拌して溶解した後、乾燥膜厚が約200nmになるようにブレードコーターを用いて塗布し、80℃で2分間乾燥して、第一の光電変換層を製膜した。
第一の光電変換層の乾燥完了後、再び大気下に取り出し、次いで正孔輸送層として、導電性高分子及びポリアニオンからなるPEDOT−PSS(CLEVIOS(登録商標) P VP AI 4083、ヘレオス株式会社製、導電率1×10−3S/cm)を等量のイソプロパノールで希釈した液を調製し、乾燥膜厚が約30nmになるようにブレードコーターを用いて塗布乾燥した。その後、90℃の温風で20秒間加熱処理して、有機物からなる第一の正孔輸送層(有機材料層)を形成した。なお塗布時の大気の温度、相対湿度は23℃、65%であった。
次に、上記一連の機能層を製膜した第一の正孔輸送層上に、細線幅50μm、細線深さ15μm、線間隔1000μmの形状を有するグラビア版にて、InkTec社製TEC−PRタイプをインクとして用い、Ag金属細線パターンを印刷した。続けてホットプレート上で120℃で30分乾燥させ、格子状の金属細線パターン(金属グリッド)を作製した。印刷後の細線パターンは高さ0.6μm、線幅60μmであった。
前記の金属グリッドを設けた上に、下記に示す導電性高分子及び自己分散型ポリマーを含む塗布液をウェット膜厚10μmになるように塗布し、90℃、1分間乾燥した。その後、ホットプレート上で120℃、30分間の加熱処理を行い、透明導電層を形成した。なお、金属グリッド及び透明導電層からなる中間層は、一部PET基板上(光電変換層等のない部分)に直接形成しておき、後述する方法で中間層自体の透明性、導電性等を評価した。
(導電性高分子及び自己分散型ポリマーを含む塗布液)
導電性高分子:PEDOT−PSS CLEVIOS PH510(固形分濃度1.89%、H.C.Starck社製) 1.59g(0.14g)
自己分散型ポリマー(バインダー):バイロナールMD1245(固形分30%水溶液) 0.23g(0.07g)
ジメチルスルホキシド(DMSO) 0.16g
以上の各成分を混合し、塗布液を調整した。なお塗布液のpHは2であった。
続けて、PEDOT−PSS(Clevios(登録商標)P4083、ヘレウス社製)分散液を、0.45μmのPVDFフィルタで濾過しながら、上記中間層上に膜厚が30nmになるようにブレードコーターを用い塗布し乾燥させた。さらに120℃で5分間乾燥させ、第二の正孔輸送層を形成した。
続けて、o−ジクロロベンゼンに、J.AM.CHEM.SOC.2008,130,p16144に基づいて合成したPSBTBTと、PC61BM(フロンティアカーボン社製、E100H:6,6−フェニル−C61−ブチリックアシッドメチルエステル)と1:1(質量比)で混合したものを3.0質量%の割合で溶解させた溶液Aを、0.45μmのPTFEフィルタで濾過しながら、乾燥膜厚が約100nmになるよう、ブレードコーターを用いて上記第二の正孔輸送層上に製膜し、第二の光電変換層を形成した。
続いて、上記合成した正孔阻止層材料・化合物1を0.02質量%になるようにブタノール:ヘキサフルオロイソプロパノール=1:1に溶解した溶液を調製し、乾燥膜厚が約5nmになるようにブレードコーターを用いて塗布乾燥し第二の電子輸送層を製膜した。
次に、上記一連の機能層を製膜した基板を真空蒸着装置チャンバー内に移動させ、1×10−4Pa以下にまで真空蒸着装置内を減圧した後、蒸着速度1.0nm/秒でAgメタルを100nm積層することで第二の電極(対電極;陰極)を形成した。得られた有機光電変換素子を窒素チャンバーに移動させ、封止用キャビティグラスとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行い、受光部が約5×20mmサイズの有機光電変換素子TC−101を完成させた。
[有機光電変換素子TC−102〜TC−106、110〜113の作製]
上記TC−101の作製において、自己分散型ポリマー(バインダー)を表1に記載のもの(TC-113はバインダーなし)に変更し、かつ自己分散型ポリマー(バインダー)の固形分濃度から乾燥後に0.07gとなる量に変更した以外は、TC−101と同様にして有機光電変換素子TC−102〜TC−106、110〜113を作製した。なおTC112に用いたナイポールLX435は、日本ゼオンせい社製の自己分散型でない(界面活性剤を含む)ポリマーである。
[有機光電変換素子TC−107の作製]
上記TC−101の作製において、導電性高分子PH510をポリアニリンM(固形分濃度6.0%、ティーエ―ケミカル)0.5gに変更した以外は、TC−101と同様にして有機光電変換素子TC−107を作製した。
[有機光電変換素子TC−108の作製]
Adv.Mater.,2002,14,833〜837に記載の方法を参考に、PVP K30(分子量5万;ISP社製)を利用して、平均短径75nm、平均長さ35μmの銀ナノワイヤを作製し、限外濾過膜を用いて銀ナノワイヤを濾別、洗浄処理した後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース60SH−50(信越化学工業社製)を当該銀ナノワイヤに対し25質量%加えた水溶液に再分散し、銀ナノワイヤ分散液を調製した。
そして、上記TC−101の作製において、金属細線パターンの形成を蒸着法ではなく上記銀ナノワイヤ分散液を用いることで形成した。
上記銀ナノワイヤ分散液を、銀ナノワイヤの目付け量が0.06g/mとなるように、銀ナノワイヤ分散液を、バーコート法を用いて塗布し、110℃、5分間乾燥加熱し、銀ナノワイヤ基板を作製した。その後、120℃で30分間加熱することにより、銀ナノワイヤのランダムな網目構造を第一の正孔輸送層上に形成した以外はTC−101と同様にして有機光電変換素子TC−108を作製した。
[有機光電変換素子TC−109の作製]
上記TC−101の作製において、金属細線パターンの形成材料を銀から銅に変更した以外は、TC−101と同様にして有機光電変換素子TC−109を作製した。
[有機光電変換素子TC−114の作製](比較例)
前記TC−113(自己分散型ポリマーなし)の作製において、金属細線パターンの形成材料を銀から金に変更し、かつパターンではなく12nmの均一薄膜とした以外は、TC−113と同様にして有機光電変換素子TC−114を作製した。
<直列接続のタンデム型有機光電変換素子の評価>
[有機光電変換素子TC−115の作製](比較例)
上記特許文献4を参考として作製した。上記TC−101の作製と同様に透明導電膜の形成と洗浄までを実施したのち、第一の電子輸送層を、チタニアゾル(触媒化成工業(株)製PASOL HPW−10R)を水で4倍に希釈した溶液をブレードコートにより塗布し、大気中で120℃、10分間の条件で加熱し、第一の電子輸送層(膜厚約20nm)を得た。
その後、有機光電変換素子TC−101の作製で使用したPSBTBTからなる光電変換層形成用の塗布液を、スピンコートにより塗布し、有機薄膜太陽電池のトップセルの光電変換層(膜厚約100nm)を得た。P3HT(BASF社製:レジオレギュラー ポリ−3−ヘキシルチオフェン)を1.5質量%、n型有機半導体であるPC61BM(フロンティアカーボン製nanom spectra E100H)を1.2質量%で混合した溶液を調製し、ホットプレート上で80℃に加熱しながら一昼夜撹拌して溶解した後、乾燥膜厚が約200nmになるようにブレードコーターを用いて塗布し、80℃で2分間乾燥して、第一の光電変換層を製膜した。
次いでOC1200溶液(Plextronics社製、商品名Plexcore OC1200、シグマアルドリッチ社より購入)をスピンコートにより塗布し、正孔輸送層(膜厚約50nm)を得た。OC1200溶液のpHをpH試験紙(アドバンテック東洋株式会社製、品名「ユニバーサル」、型番「07011030」)で測定したところ、pHは7であった。その後、真空蒸着機により中間層(電荷再結合層)として金を2nm蒸着した。その後、チタニアゾル(触媒化成工業(株)製PASOL HPW−10R)を水で4倍に希釈した溶液をスピンコートにより塗布し、電子輸送層(膜厚約20nm)を得た。なお、加熱処理は特に行わなかった。その後、前記組成物1を、スピンコートにより塗布し、有機薄膜太陽電池のボトムセルの光電変換層(膜厚約100nm)を得た。OC1200溶液(Plextronics社製、商品名Plexcore OC1200、シグマアルドリッチ社より購入)をスピンコートにより塗布し、最後に真空蒸着機により陽極としてAlを厚みが100nmとなるように蒸着し、有機光電変換素子TC−114を作製した。
[有機光電変換素子TC−116の作製](実施例)
有機光電変換素子TC−115の作製において、中間層(電荷再結合層)として金を2nm蒸着する代わりに、TC−105で用いた塗布溶液を用いて電荷再結合層とした以外は同様にして、直列接続の有機光電変換素子TC−116を作成した。
<中間層の評価>
前記の中間層形成時に、PET基板上に一部中間層のみを形成した部分を用いて評価を行った。
(分散液粒径)
大塚電子製ダイナミック光散乱光度計 DLS−8000を用いて、前記導電性高分子及び自己分散型ポリマーを含む塗布液の分散粒子の平均値を測定した。
(透明性)
JIS K 7361−1:1997に準拠して、東京電色社製 HAZE METER NDH5000を用いて、全光線透過率を測定し、下記基準で評価した。なお、中間層として用いるためには、75%以上であることが好ましい。
◎:80%以上
○:75%以上80%未満
△:70%以上75%未満
×:70%未満
(表面抵抗)
JIS K 7194:1994に準拠して、抵抗率計(ロレスタGP(MCP−T610型):(株)ダイヤインスツルメンツ社製)を用いて表面抵抗を測定した。表面抵抗は100Ω/cm square(□)以下であることが好ましく、素子を大面積にするには、30Ω/cm square以下であることが好ましい。
(表面粗さ(Ra、Ry))
AFM(セイコーインスツルメンツ社製SPI3800Nプローブステーション及びSPA400多機能型ユニット)を使用し、約1cm角の大きさに切り取った試料を用いて、前記の方法(JIS B601(1994)に規定される表面粗さに準ずる。)で測定した。
(膜強度)
導電層の膜の強度を、テープ剥離法により評価した。
導電層の上に住友スリーエム社製スコッチテープを用いて圧着/剥離を10回繰り返し、導電層の脱落を目視観察し、下記基準で評価した。
◎:5回の圧着/剥離で変化無し
○:3回の圧着剥離で変化無し
△:1回の圧着剥離で剥離が見られるが8割以上のパターンが残っている
×:1回の圧着剥離で剥離が見られ、残っているパターンが8割未満
<有機光電変換素子の評価>
(光電変換効率の評価)
上記作製した封止した有機光電変換素子に、ソーラーシミュレーター(AM1.5Gフィルタ)の100mW/cmの強度の光を照射し、有効面積を1.0cmにしたマスクを受光部に重ね、短絡電流密度Jsc(mA/cm)及び開放電圧Voc(V)、曲線因子(フィルファクター)FFを、同素子上に形成した4箇所の受光部についてそれぞれ測定し、平均値を求めた。また、測定されたJsc、Voc、FFから下記数式1に従ってエネルギー変換効率η(%)を求めた。
評価の結果を下記の表1に示す。平均値の数字が大きい程エネルギー変換効率(光電変換効率)が良好であることを示す。また最大値と最小値の差が小さいほど安定な変換効率が得られていることを示す。
[耐久性(温度サイクルテスト)]
JIS C8938−1995を参考として、温度サイクルテストを行った。
すなわち、初期の光電変換効率を測定した後、温度を常温(25℃)→+90±2℃→ −40±3℃→常温(25℃)、と変化させるサイクルを20回(参考:JIS C8938−1995は200回)実施したのち、再度ソーラシュミレーターの光を100mW/cm(AM1.5G)の照射強度で照射して、電圧−電流特性を測定し、耐久後の光電変換効率を測定した。
◎:初期の90%以上の光電変換効率が残っている
○:初期の80%以上の光電変換効率が残っている
△:初期の50%以上の光電変換効率が残っている
×:初期の50%未満の光電変換効率が残っている
評価の結果を表1に示す。
表1に示すように、本発明によると、プラスチック基板及び有機半導体デバイス上での形成にも適用できる低温でのプロセスにより、十分に透明性かつ導電性に優れた中間層を形成でき、さらに、得られるタンデム型素子は、光電変換効率及び温度サイクル耐久性に優れることが分かった。
なお、TC−116の素子の結果からも分かるように、並列接続のタンデム型素子だけでなく、直列接続のタンデム型素子(金属グリッドなし)の場合であっても、高い光電変換効率及び耐久性を提供できることが分かった。
10 順層型のシングル型有機光電変換素子、
11、21 基板、
12、22 第一の電極、
13、23 第二の電極、
14 光電変換層、
17 正孔輸送層、
18 電子輸送層、
20 逆層型のシングル型有機光電変換素子、
24a 第一の光電変換層、
24b 第二の光電変換層、
25 金属グリッド、
26 透明導電層、
27a 第一の正孔輸送層、
27b 第二の正孔輸送層、
28a 第一の電子輸送層、
28b 第二の電子輸送層、
29 中間層、
30 順層・直列接続型のタンデム型有機光電変換素子、
40 順層・並列接続型のタンデム型有機光電変換素子、
200 外部回路。

Claims (12)

  1. 第一の電極、第一の光電変換層、第二の光電変換層、及び第二の電極がこの順に積層されてなり、
    前記第一の光電変換層と前記第二の光電変換層との間に、導電性高分子及び水系溶媒に分散可能な自己分散型ポリマーを共に含有する中間層を有する、タンデム型有機光電変換素子。
  2. 前記導電性高分子はポリチオフェンである、請求項1に記載のタンデム型有機光電変換素子。
  3. 前記自己分散型ポリマーは解離性基を有する、請求項1又は2に記載のタンデム型有機光電変換素子。
  4. 前記自己分散型ポリマーの平均粒径は5〜100nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンデム型有機光電変換素子。
  5. 前記自己分散型ポリマーの平均粒径は10〜50nmである、請求項4に記載のタンデム型有機光電変換素子。
  6. 前記自己分散型ポリマーのガラス転移点(Tg)は25〜80℃である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のタンデム型有機光電変換素子。
  7. 前記自己分散型ポリマーのガラス転移点(Tg)は50〜70℃である、請求項6に記載のタンデム型有機光電変換素子。
  8. 前記自己分散型ポリマーはポリエステル骨格を有するポリマーである、請求項1〜7のいずれか1項に記載のタンデム型有機光電変換素子。
  9. 前記中間層は、パターン状に形成された銀を含有する金属グリッドを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のタンデム型有機光電変換素子。
  10. 前記第一の光電変換層と、前記第二の光電変換層とが、前記中間層を介して電気的に直列に接続されてなる請求項1〜9のいずれか1項に記載のタンデム型有機光電変換素子。
  11. 前記第一の光電変換層と、前記第二の光電変換層とが、前記中間層を介して電気的に並列に接続されてなる請求項1〜9のいずれか1項に記載のタンデム型有機光電変換素子。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項に記載のタンデム型有機光電変換素子を有する、太陽電池。
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