JP2013160575A - 検量線作成方法およびその装置、並びに目的成分検量装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】1つの観測データから高精度な検量を可能とする。
【解決手段】検量線作成方法は、(a)被検体の複数のサンプルについての観測データを取得する工程と、(b)各サンプルについての目的成分の含有量を取得する工程と、(c)サンプル毎のを複数の独立成分に分離したときの複数の独立成分を推定し、サンプル毎に前記目的成分に対応する混合係数を求める工程と、(d)検量線の回帰式を求める工程とを含む。前記工程(c)は、観測データの正規化を含む第1前処理と、白色化を含む第2前処理と、独立成分分析処理とをこの順に実行することによって独立成分行列を求める工程を含む。前記第2前処理では因子分析による白色化を実行する。
【選択図】図3C

Description

本発明は、被検体の観測データから、前記被検体についての目的成分の含有量を導くことに用いる検量線を作成する技術と、被検体についての目的成分の含有量を求める技術とに関する。
従来、被検体の複数の異なる位置で観測された観測データについて独立成分分析を行い、その独立成分分析により算出された独立成分を基本関数とし、観測データを基本関数の線形和で表すことで、目的成分の濃度などを解析する方法が提案されている(特許文献1参照)。
特開2007−44104号公報
しかしながら、前記従来の技術では、被検体についての目的成分の検量を行う度に、その被検体について複数の異なる観測データが必要であり、1つの観測データから検量を高精度に行うことができないという問題があった。
また、観測データには、いろいろなノイズが含まれている場合がある。この場合には、独立成分分析や、それを用いた検量の精度が悪化してしまうという問題もあった。
更に、被検体によっては、被検体の組成や構造のバラツキに起因して、観測データが変動してしまう場合もある。このような場合にも、独立成分分析や、それを用いた検量の精度が悪化してしまうという問題があった。
本発明は、前記の課題を解決するためになされたものであり、被検体についての目的成分の検量を行う際に、その被検体に関する1つの観測データから高精度な検量を可能とすることを目的とする。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1] 被検体の観測データから、前記被検体についての目的成分の含有量を導くことに用いる検量線を作成する検量線作成方法であって、
(a)コンピューターが、前記被検体の複数のサンプルについての前記観測データを取得する工程と、
(b)前記コンピューターが、前記各サンプルについての前記目的成分の含有量を取得する工程と、
(c)前記コンピューターが、前記サンプル毎の観測データを複数の独立成分に分離したときの複数の独立成分を推定し、前記複数の独立成分に基づいて、前記サンプル毎に前記目的成分に対応する混合係数を求める工程と、
(d)前記コンピューターが、前記複数のサンプルの前記目的成分の含有量と、前記サンプル毎の前記混合係数とに基づいて、前記検量線の回帰式を求める工程と、
を含み、
前記工程(c)は、
(i)前記コンピューターが、前記各サンプルの前記独立成分を含む独立成分行列を求める工程と、
(ii)前記コンピューターが、前記独立成分行列から、前記各サンプルにおける前記独立成分毎の独立成分要素の比率を規定するベクトルの集合を示す推定混合行列を求める工程と、
(iii)前記コンピューターが、前記推定混合行列に含まれる前記ベクトル毎に、前記複数のサンプルの前記目的成分の含有量に対する相関を求め、前記相関が最も高いと判定される前記ベクトルを、前記目的成分に対応する混合係数として選択する工程と、
を含み、
前記工程(i)において、前記コンピューターが、前記観測データの正規化を含む第1前処理と、白色化を含む第2前処理と、独立成分分析処理とをこの順に実行することによって前記独立成分行列を求め、
前記コンピューターが、前記第2前処理では因子分析による白色化を実行する、検量線作成方法。
適用例1の検量線作成方法によれば、被検体の複数のサンプルについて、各サンプルから取得した観測データと目的成分の含有量から、被検体の観測データから被検体に含まれる目的成分量を導くための検量線が作成される。このため、この検量線を用いれば、被検体の観測データが一つであっても、目的成分の含有量を精度良く求めることができる。したがって、適用例1の検量線作成方法によって予め検量線を作成しておけば、検量に際して、被検体について一の観測データを取得するだけで済む。この結果、実測値である一の観測データから目的成分量を高精度に求めることができる。また、推定混合行列が求められ、推定混合行列のうちでサンプルの目的成分の含有量に対する相関の強いベクトルが抜き出されることから、推定精度の高い混合係数を得ることができる。更に、第2前処理において因子分析による白色化を行うので、吸光度スペクトルに含まれるノイズ(特にランダムノイズ)の影響を低減して、検量精度を高めることが可能である。
[適用例2] 適用例1に記載の検量線作成方法であって、
前記コンピューターが、前記独立成分分析処理における独立性指標としてβダイバージェンスを用いる、検量線作成方法。
この方法では、独立成分分析処理における独立性指標としてβダイバージェンスを使用するので、観測データに含まれるスパイクノイズのような外れ値の影響を低減して、検量精度を高めることが可能である。
[適用例3] 被検体の観測データから、前記被検体についての目的成分の含有量を導くことに用いる検量線を作成する検量線作成装置であって、
前記被検体の複数のサンプルについての前記観測データを取得するサンプル観測データ取得部と、
前記各サンプルについての前記目的成分の含有量を取得するサンプル目的成分量取得部と、
前記サンプル毎の観測データを複数の独立成分に分離したときの複数の独立成分を推定し、前記複数の独立成分に基づいて、前記サンプル毎に前記目的成分に対応する混合係数を求める混合係数推定部と、
前記複数のサンプルの前記目的成分の含有量と、前記サンプル毎の前記混合係数とに基づいて、前記検量線の回帰式を求める回帰式算出部と、
を含み、
前記混合係数推定部は、
前記各サンプルの前記各独立成分を含む独立成分行列を求める独立成分行列算出部と、
前記独立成分行列から、前記各サンプルにおける前記独立成分毎の独立成分要素の比率を規定するベクトルの集合を示す推定混合行列を求める推定混合行列算出部と、
前記推定混合行列に含まれる前記ベクトル毎に、前記複数のサンプルの前記目的成分の含有量に対する相関を求め、前記相関が最も高いと判定される前記ベクトルを、前記目的成分に対応する混合係数として選択する混合係数選択部と、
を含み、
前記独立成分行列算出部は、前記観測データの正規化を含む第1前処理と、白色化を含む第2前処理と、独立成分分析処理とをこの順に実行することによって前記独立成分行列を求め、
前記独立成分行列算出部は、前記第2前処理では因子分析による白色化を実行する、検量線作成装置。
適用例3の検量線作成装置によれば、適用例1に記載の検量線作成方法と同様に、検量に際して、被検体について一の観測データを取得するだけで済む。したがって、実測値である一の観測データから目的成分量を高精度に求めることができるという効果を奏する。また、第2前処理において因子分析による白色化を行うので、吸光度スペクトルに含まれるノイズ(特にランダムノイズ)の影響を低減して、検量精度を高めることが可能である。
[適用例4] 適用例3に記載の検量線作成装置であって、
前記独立成分行列算出部は、前記独立成分分析処理における独立性指標としてβダイバージェンスを用いる、検量線作成装置。
この装置では、独立成分分析処理における独立性指標としてβダイバージェンスを使用するので、観測データに含まれるスパイクノイズのような外れ値の影響を低減して、検量精度を高めることが可能である。
[適用例5] 適用例3又は4に記載の検量線作成装置であって、更に、
前記独立成分行列算出部によって算出された前記独立成分行列と、前記混合係数選択部によって選択された混合係数が前記推定混合行列のいずれの位置にあるかを示す目的成分順位と、前記回帰式算出部によって算出された回帰式とを記憶する記憶部
を含む検量線作成装置。
この構成によれば、検量線作成装置は、独立成分行列、目的成分順位、および回帰式を記憶部に記憶しておくことができる。
[適用例6] 被検体についての目的成分の含有量を求める目的成分検量装置であって、
前記被検体についての観測データを取得する被検体観測データ取得部と、
前記目的成分に対応する独立成分を少なくとも含む検量用データを取得する検量用データ取得部と、
前記被検体についての観測データと前記検量用データとに基づいて、前記被検体についての前記目的成分に対する混合係数を求める混合係数算出部と、
予め用意した、前記目的成分に対応する混合係数と含有量との関係を示す回帰式の定数と、前記混合係数算出部によって求められた混合係数に基づいて、前記目的成分の含有量を算出する目的成分量算出部と、
を含み、
前記混合係数算出部は、前記観測データの正規化を含む第1前処理と、白色化を含む第2前処理とをこの順に実行するとともに、前記第2前処理では因子分析による白色化を実行する、目的成分検量装置。
この目的成分検量装置によれば、被検体について一の観測データを取得するだけでも、被検体についての目的成分の含有量を高精度に求めることができる。また、第2前処理において因子分析による白色化を行うので、吸光度スペクトルに含まれるノイズ(特にランダムノイズ)の影響を低減して、検量精度を高めることが可能である。
[適用例7] 適用例6に記載の目的成分検量装置であって、
前記検量用データ取得部は、
前記目的成分に対応するものとして予め求められている独立成分を、前記検量用データとして取得し、
前記混合係数算出部は、
前記独立成分と前記被検体についての観測データとの内積を求め、該内積値を前記混合係数とする、目的成分検量装置。
この目的成分検量装置によれば、被検体についての目的成分と相関の高い混合係数を高精度かつ容易に求めることができる。
[適用例8] 適用例6に記載の目的成分検量装置であって、
前記検量用データ取得部は、
複数のサンプルについての各観測データを複数の独立成分に分離したときの複数の独立成分を、前記検量用データとして取得し、
前記混合係数推定部は、
前記被検体についての観測データと前記複数の独立成分とに基づいて前記被検体についての推定混合行列を算出し、前記算出した推定混合行列から前記目的成分に対応する混合係数を抽出する、目的成分検量装置。
この目的成分検量装置によれば、被検体についての目的成分と相関の高い混合係数を高精度に求めることができる。
さらに、本発明は、前記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、検量線作成方法で求められた回帰線をメモリーに記憶する目的成分検量装置としての形態、目的成分検量装置に含まれる各部の構成を機能として実現するコンピュータープログラムとしての形態、このコンピュータープログラムやこのコンピュータープログラムを記録した記録媒体(non-transitory storage medium)等の形態等で実現することが可能である。
本発明の一実施例としての検量線作成方法を示すフローチャートである。 鮮度が相違する緑色野菜についての光の波長と分光反射率との関係を示すグラフである。 工程4及び工程5で用いられるパーソナルコンピューター100とその周辺装置を示す説明図である。 工程4及び工程5で用いられる装置400の機能ブロック図である。 独立成分行列算出部の内部構成の一例を示す機能ブロック図である。 ハードディスクドライブ30に保存された測定データセットDS1を模式的に示す説明図である。 CPU10で実行される混合係数推定処理を示すフローチャートである。 推定混合行列Aを説明するための説明図である。 相関が高い散布図の一例を示す説明図である。 相関が低い散布図のグラフの一例を示す説明図である。 コンピューター100のCPU10で実行される回帰式の算出処理を示すフローチャートである。 目的成分の検量を行う際に使用する装置500の機能ブロック図である。 コンピューター100のCPU10で実行する目的成分検量処理を示すフローチャートである。 しょ糖と食塩の混合物の吸光度に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+PCA+尖度)の検量精度を示す図である。 しょ糖と食塩の混合物の吸光度に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+FA+尖度)の検量精度を示す図である。 しょ糖と食塩の混合物の吸光度に関する独立成分分析(アルゴリズムはPNS+PCA+尖度)の検量精度を示す図である。 しょ糖と食塩の混合物の吸光度に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+PCA+βダイバージェンス)の検量精度を示す図である。 しょ糖と食塩の混合物の吸光度に関する独立成分分析(アルゴリズムはPNS+PCA+βダイバージェンス)の検量精度を示す図である。 しょ糖と食塩の混合物の吸光度に関する独立成分分析(アルゴリズムはPNS+FA+尖度)の検量精度を示す図である。 しょ糖と食塩の混合物の吸光度に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+FA+βダイバージェンス)の検量精度を示す図である。 しょ糖と食塩の混合物の吸光度に関する独立成分分析(アルゴリズムはPNS+FA+βダイバージェンス)の検量精度を示す図である。 図12A〜図12Hにおける検量精度を比較して示す図である。 人の音声の混合信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+PCA+尖度)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+FA+尖度)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはPNS+PCA+尖度)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+PCA+βダイバージェンス)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはPNS+PCA+βダイバージェンス)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはPNS+FA+尖度)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+FA+βダイバージェンス)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはPNS+FA+βダイバージェンス)の検量精度を示す図である。 図14A〜図14Hにおける検量精度を比較して示す図である。 人の音声の混合信号にガウシアンノイズを付加した信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+PCA+尖度)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号にガウシアンノイズを付加した信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+FA+尖度)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号にベースライン変動を付加した信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+PCA+尖度)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号にベースライン変動を付加した信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはPNS+PCA+尖度)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号にスパイクノイズを付加した信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+PCA+尖度)の検量精度を示す図である。 人の音声の混合信号にスパイクノイズを付加した信号に関する独立成分分析(アルゴリズムはSNV+PCA+βダイバージェンス)の検量精度を示す図である。 図16A〜図16Fにおける検量精度を比較して示す図である。
以下、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.検量線作成方法:
B.目的成分の検量方法:
C.各種のアルゴリズムとその検量精度への影響:
D.変形例:
本実施形態では、以下の略語を使用する。
・ICA:独立成分分析(Independent Component Analysis)
・SNV:標準正規変量変換(Standard Normal Variate transformation)
・PNS:零空間射影法(Project on Null Space)
・PCA:主成分分析(Principal Components Analysis)
・FA:因子分析(Factor Analysis)
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。本発明の一実施例は、観測データとして緑色野菜の分光反射率のスペクトルから前記緑色野菜に含まれるクロロフィル量を導くための検量線を作成する方法に関するものである。緑色野菜は、例えば、ほうれん草、こまつな、ピーマン等である。
A.検量線作成方法:
図1は、本発明の一実施例としての検量線作成方法を示すフローチャートである。図示するように、この検量線作成方法は、工程1から工程5までの5つの工程によって構成される。各工程1〜5はこの順に実行される。各工程1〜5について、順に説明する。
[工程1]
工程1は、準備工程であり、作業者により行なわれるものである。作業者は、鮮度が相違する同一種類の複数の緑色野菜(例えば、ほうれん草)を、それぞれサンプルとして用意(準備)する。本実施例ではn個(nは2以上の整数)のサンプルを使用する。
[工程2]
工程2は、スペクトルの測定工程であり、作業者により分光計測器を用いて行なわれるものである。作業者は、工程1で用意した複数のサンプルのそれぞれを分光計測器で撮影することにより、各サンプルについての分光反射率のスペクトルを測定する。分光計測器は、被計測体からの光を分光器に通し、分光器から出力されるスペクトルを撮像素子の撮像面で受けることにより、前記スペクトルを測定する周知の機器である。分光反射率のスペクトルと吸光度のスペクトルとの間には、次式(1)で表される関係が成り立つ。
Figure 2013160575
測定された分光反射率のスペクトルは、式(1)を用いて吸光度スペクトルに変換される。吸光度に変換するのは、後述する独立成分分析において分析される混合信号には線形結合が成立する必要があり、ランベルト・ベールの法則から、吸光度について線形結合が成立するためである。したがって、工程2においては、分光反射率スペクトルの代わりに吸光度スペクトルを測定してもよい。測定結果としては、被計測体の波長に対する特性を示す吸光度分布のデータが出力される。この吸光度分布のデータは、スペクトルデータとも呼ぶ。
工程2は、詳しくは、作業者は、サンプル毎に所定部位を撮影して、その所定部位のスペクトルを測定する。ここで、所定部位とは、各サンプル内の部位であればいずれの部位でもよいが、サンプル全体の鮮度と鮮度が大きく異ならない部位が好ましい。例えば、一のサンプルにおいて、ある部分が極端に鮮度が劣っている場合には、その劣った鮮度の部分を避けた部位を前記測定する所定部位とする。
図2は、鮮度が相違する緑色野菜についての光の波長と分光反射率との関係を示すグラフである。図示するように、新鮮な野菜、やや萎びた野菜、萎びた野菜によって、スペクトル波形が相違する。新鮮な野菜、あるいはやや萎びた野菜は、約700nm辺りを境界にそれ以下の波長範囲で反射率が急減している。この理由は、700nm以下の波長でクロロフィルによる光の吸収が起こるためである。一方、萎びた野菜では、クロロフィルが減少しているので、特に700nm以下の波長領域で反射率が大幅に上昇している。このように、緑色野菜の鮮度はスペクトル波形を変化させることから、工程2によって、各サンプルについてのスペクトルを測定するようにしている。
なお、分光反射率スペクトルや吸光度スペクトルを分光器で測定する代わりに、これらのスペクトルを他の測定値から推定するようにしてもよい。例えば、サンプルをマルチバンドカメラで測定し、得られたマルチバンド画像から分光反射率や吸光度スペクトルを推定するようにしてもよい。このような推定方法としては、例えば、特開2001−99710号公報に記載された方法などを利用することができる。
[工程3]
工程3は、クロロフィル量の測定工程であり、作業者により行なわれるものである。作業者は、工程1で用意した複数のサンプルのそれぞれを化学分析して、各サンプルについての目的成分の含有量であるクロロフィル量を測定する。詳しくは、各サンプルから所定部位を抽出して、その所定部位から目的成分であるクロロフィルを抽出し、その量を測定する。ここで、「所定部位」はサンプルのいずれの部分でもよいが、工程2でスペクトルを測定した部位と一致するのが好ましい。
[工程4]
工程4は、混合係数の推定工程であり、パーソナルコンピューターを用いて行なわれるものである。図3Aは、工程4および後述する工程5で用いられるパーソナルコンピューター100とその周辺装置を示す説明図である。図示するように、パーソナルコンピューター(以下、単に「コンピューター」と呼ぶ)100は、分光計測器200とキーボード300に電気的に接続されている。
コンピューター100は、コンピュータープログラム(以下、単に「プログラム」と呼ぶ)を実行することにより種々の処理や制御を行うCPU10と、データの退避場所であるメモリー20(記憶部)と、プログラムやデータ・情報を保存するハードディスクドライブ30と、入力インターフェイス(I/F)50と、出力インターフェイス(I/F)60とを備えた周知な装置である。
図3Bは、工程4及び工程5で使用する装置の機能ブロック図である。この装置400は、サンプル観測データ取得部410と、サンプル目的成分量取得部420と、混合係数推定部430と、回帰式算出部440とを有する。混合係数推定部432は、独立成分行列算出部432、推定混合行列算出部434、および混合係数選択部436を含んでいる。なお、サンプル観測データ取得部410およびサンプル目的成分量取得部420は、例えば図3AのCPU10が入力I/F50とメモリー20と協働して実現される。混合係数推定部430、独立成分行列算出部432、推定混合行列算出部434、および混合係数選択部436は、例えば図3AのCPU10がメモリー20と協働して実現される。また、回帰式算出部440は、例えば図3AのCPU10がメモリー20と協働して実現される。なお、これらの各部は、図3Aに示したパーソナルコンピューター以外の他の具体的な装置やハードウェア回路によっても実現可能である。
図3Cは、独立成分行列算出部432の内部構成の一例を示す機能ブロック図である。独立成分行列算出部432は、第1前処理部450と、第2前処理部460と、独立成分分析処理部470とを有している。これらの3つの処理部450,460,470は、この順番に処理対象データ(本実施形態では吸光度スペクトル)を処理することによって、独立成分行列(後述)を求める。これらの各部の処理内容については後述する。
図3Aに示した分光計測器200は、工程2で使用されたものである。コンピューター100は、工程2で分光計測器200により測定された分光分布から得られた吸光度スペクトルを、スペクトルデータとして入力I/F50を介して取得する(図3Bのサンプル観測データ取得部410に対応)。また、コンピューター100は、工程3で測定されたクロロフィル量を、作業者によるキーボード300の操作を受けて入力I/F50を介して取得する(図3Bのサンプル目的成分量取得部420に対応)。なお、工程3で測定されたクロロフィル量は、クロロフィルを測定した所定部位の単位質量当たり(例えば100グラム当たり)のクロロフィルの質量として、コンピューター100に入力するようにしてもよい。或いは、クロロフィル量を、質量の絶対値として入力するようにしてもよい。
上記のスペクトルデータとクロロフィル量の取得の結果、コンピューター100のハードディスクドライブ30には、スペクトルデータとクロロフィル量とを含むデータセット(以下、「測定データセット」と呼ぶ)DS1が保存される。
図4は、ハードディスクドライブ30に保存された測定データセットDS1を模式的に示す説明図である。図示するように、測定データセットDS1は、工程1で用意した複数のサンプルを識別するためのサンプル番号B1,B2,…,Bnと、各サンプルについてのクロロフィル量C1,C2,…,Cnと、各サンプルについてスペクトルデータX1,X2,…,Xnとを含むデータ構造である。測定データセットDS1において、各クロロフィル量C1,C2,…,Cnおよび各スペクトルデータX1,X2,…,Xnは、いずれのサンプルについてのものであるかが判るように、各サンプル番号B1,B2,…,Bnと対応づけがなされている。
CPU10は、ハードディスクドライブ30に格納された所定のプログラムをメモリー20にロードし、そのプログラムを実行することで、工程4の作業である、混合係数を推定する処理を行う。ここで、前記所定のプログラムは、外部からインターネット等のネットワークを用いてダウンロードする構成とすることもできる。工程4において、CPU10は図3Bの混合係数推定部430として機能する。
図5は、CPU10で実行される混合係数推定処理を示すフローチャートである。処理が開始されると、CPU10は、まず、独立成分分析を行う(ステップS110)。
独立成分分析(Independent Component Analysis, ICA) は、多次元信号解析法の1つであり、独立な信号が重なり合った混合信号をいくつかの異なる条件で観測し、それを基に独立な原信号を分離する技術である。独立成分分析を用いれば、工程2により得られたスペクトルデータを、クロロフィルを始めとするm個の独立成分(未知)が混合されたものと捕らえることで、工程2により得られたスペクトルデータ(観測データ)から独立成分のスペクトルを推定することが可能となる。
本実施形態において、独立成分分析は、図3Cに示した3つの処理部450,460,470がこの順に処理を行うことによって実行される。第1前処理部450は、標準正規変量変換(SNV)452と、零空間射影法(PNS)454のうちの一方又は両方を用いた前処理を実行することが可能である。SNV452は、処理対象データの平均値を減算し、その標準偏差で除算することによって、平均値が0で標準偏差が1である正規化されたデータを得る処理である。PNS454は、処理対象データに含まれるベースライン変動を取り除くための処理である。スペクトルの測定では、さまざまな要因により、測定データごとにデータの平均値が上下するなどのベースライン変動と呼ばれるデータ間のばらつきが発生する。そのため、独立成分分析処理を行う前に、この変動要因を取り除くことが好ましい。PNSは、任意のベースライン変動を取り除くことの出来る前処理として使用することが可能である。なお、PNSについては、例えば、Zeng-Ping Chen, Julian Morris, and Elaine Martin, “Extracting Chemical Information from Spectral Data with Multiplicative Light Scattering Effects by Optical Path-Length Estimation and Correction”, 2006に説明されている。
なお、図1の工程2で得られたスペクトルデータに対してSNV452を行う場合にはPNS454による処理を行う必要は無い。一方、PNS454による処理を行う場合には、その後に何らかの正規化処理(例えばSNV452)を行うことが好ましい。
なお、第1前処理として、SNVやPNS以外の処理を行うようにしても良い。第1前処理では何らかの正規化処理を行うことが好ましいが、正規化処理を省略してもよい。以下では、第1前処理部450を「正規化処理部」とも呼ぶ。これらの2つの処理452,454の内容については、更に後述する。なお、独立成分行列算出部432に与えられる処理対象データが正規化済みのデータである場合には、第1前処理を省略することも可能である。
第2前処理部460は、主成分分析(PCA)462と、因子分析(FA)464のうちのいずれか一方を用いた前処理を実行することが可能である。また、第2前処理として、PCAやFA以外の処理を用いるようにしても良い。以下では、第2前処理部460を「白色化処理部」とも呼ぶ。一般的なICAの手法では、第2前処理として、処理対象データの次元圧縮と、無相関化を行う。この第2前処理によって、ICAで求めるべき変換行列が直交変換行列に限定されるため、ICAの計算量を削減できる。このような第2前処理を「白色化」とよび、多くの場合にPCAが用いられる。しかし、PCAは、処理対象データにランダムノイズが含まれる場合、その影響を受けて結果に誤差が生じる場合がある。そこで、ランダムノイズの影響を低減するために、PCAの代わりに、ノイズに対するロバスト性を持つFAを用いて白色化を行うことが好ましい。図3Cの第2前処理部460は、PCAとFAのいずれか一方を選択して白色化を実行することが可能である。これらの2つの処理462,464の内容については、更に後述する。なお、白色化処理は省略しても良い。
独立成分分析処理部(ICA処理部)470は、第1前処理と第2前処理が行われたスペクトルデータに対して、ICAを実行することによって、独立成分のスペクトルを推定する。ICA処理部470は、独立性指標として尖度を用いる第1処理472と、独立性指標としてβダイバージェンスを用いる第2処理474のうちのいずれか一方を用いた分析を実行することが可能である。ICAは、一般に、独立成分の分離のための指標として、分離したデータ同士の独立性を表す高次統計量を独立性指標として用いる。尖度は、典型的な独立性指標である。しかし、処理対象データにスパイクノイズのような外れ値が入っている場合には、その外れ値も含めた統計量が独立性指標として計算されてしまう。このため、処理対象データについての本来の統計量と、算出された統計量との間に誤差が生じ、分離精度の低下を引き起こす場合がある。そこで、処理対象データ中の外れ値からの影響を低減するために、その影響を受けにくい独立性指標を使用することが好ましい。この様な特性を持つ独立性指標として、βダイバージェンスを使用可能である。尖度とβダイバージェンスの内容については、更に後述する。なお、ICAの独立性指標としては、尖度やβダイバージェンス以外の指標を利用するようにしても良い。
独立成分分析の典型的な処理内容について、次に詳しく説明する。m個の未知成分(ソース)のスペクトルS(以下、このスペクトルを単に「未知成分」と呼ぶこともある)が下記の式(2)のベクトルで与えられたとし、工程2により得られたn個のスペクトルデータXが下記の式(3)のベクトルで与えられたとする。なお、式(2)に含まれる各要素(S1、S2、・・・Sm)は、それぞれがベクトル(スペクトル)となっている。すなわち、例えば要素S1は式(4)のように表される。式(3)に含まれる要素(X1、X2、・・・、Xn)もベクトルであり、例えば要素X1は式(5)のように表される。添え字のl(エル)はスペクトルを測定した波長帯の数である。なお、未知成分のスペクトルSの要素数mは、1以上の整数であり、サンプルの種類(ここでは、ほうれん草)に応じて予め経験的又は実験的に決められている。
Figure 2013160575
Figure 2013160575
Figure 2013160575
Figure 2013160575
各未知成分は統計的に独立であるとする。これら未知成分SとこれらスペクトルデータXとの間に、次式(6)の関係が成立する。
Figure 2013160575
式(6)におけるAは混合行列であり、次式(7)で示すこともできる。なお、ここでも"A"の文字は、式(7)に示すように太字で示す必要があるが、明細書の使用文字の制限からここでは普通文字で表す。以下、行列を表す他の太字について、同様に普通文字で表すものとする。
Figure 2013160575
混合行列Aに含まれる混合係数aijは、未知成分Sj(j=1〜m)が、観測データであるスペクトルデータXi(i=1〜n)へ寄与する度合いを示す。
混合行列Aが既知の場合、未知成分Sの最小二乗解は、Aの擬似逆行列A+を用いてA+・Xと簡単に求めることができるが、本実施例の場合、混合行列Aも未知なので、観測データXのみから、未知成分Sと混合行列Aを推定しなければならない。すなわち、次式(8)に示すように、観測データXのみから、mラnの分離行列Wを用いて、独立成分のスペクトルを示す行列(以下、「独立成分行列」と呼ぶ)Yを算出する。次式(8)における分離行列Wを求めるアルゴリズムとしては、Infomax、FastICA (Fast Independent Component Analysis)、JADE (Joint Approximate Diagonalization of Eigenmatrices) など種々のものを採用することが可能である。
Figure 2013160575
独立成分行列Yは未知成分Sの推定値に該当する。よって、下記の式(9)を得ることができ、式(9)を変形して下記の式(10)を得ることができる。
Figure 2013160575
Figure 2013160575
式(10)で得られる推定混合行列A(明細書の使用文字の制限からこのように表記しただけで、実際は式(10)の左辺の符号付き文字を意味する。他の文字も同じ)は、次式(11)で示すこともできる。
Figure 2013160575
図5のステップS110では、CPU10は、上述した分離行列Wを求める処理までを行う。詳しくは、工程2で得られハードディスクドライブ30に予め保存したサンプル毎のスペクトルデータXを入力として、この入力に基づいて、前述したInfomax、FastICA、JADE などのいずれかのアルゴリズムを用いて、分離行列Wを求める。なお、前述した図3Cに示すように、独立成分分析の前処理として、第1前処理部450による正規化処理と、第2前処理部460による白色化処理とを行うことが好ましい。
ステップS110の実行後、CPU10は、その分離行列Wと、工程2で得られハードディスクドライブ30に予め保存したサンプル毎のスペクトルデータXとに基づいて、独立成分行列Yを算出する処理を行う(ステップS120)。この算出処理は、前述した式(8)に従う演算を行うものである。ステップS110、S120の処理において、CPU10は図3Bの独立成分行列算出部432として機能する。
続いて、CPU10は、前記ハードディスクドライブ30に予め保存したサンプル毎のスペクトルデータXと、ステップS120で算出した独立成分行列Yとに基づいて、推定混合行列Aを算出する処理を行う(ステップS130)。この算出処理は、前述した式(10)に従う演算を行うものである。
図6は、推定混合行列Aを説明するための説明図である。図示するよう表TBは、縦方向に各サンプル番号B1,B2,…,Bnをとり、横方向に独立成分行列Yの各要素(以下、「独立成分要素」と呼ぶ)Y1,Y2,…,Ymをとったものである。サンプル番号Bi(i=1〜n)と独立成分要素Yj(j=1〜m)から定まる表TB中の要素は、推定混合行列Aに含まれる係数ij(式(11)参照)と同一である。この表TBからも、推定混合行列Aに含まれる係数ijは、サンプルのそれぞれにおける独立成分要素Y1,Y2,…,Ymの比率を表したものであることがわかる。図6に例示した目的成分順位kについては後述する。ステップS130の処理において、CPU10は図3Bの推定混合行列算出部434として機能する。
ステップS130までの処理によって、推定混合行列Aが得られる。すなわち、推定混合行列Aに含まれる係数(推定混合係数)ijが得られる。その後、ステップS140に進む。
ステップS140では、CPU10は、工程3で測定されたクロロフィル量C1,C2,…,Cnと、ステップS130で算出された推定混合行列Aに含まれる各列の成分(以下、ベクトルαと呼ぶ)との間の相関(類似性の度合い)を求める。詳しくは、クロロフィル量C(C1,C2,…,Cn)と第1列目のベクトルα11121,…,n1)との相関を求め、次いで、クロロフィル量C(C1,C2,…,Cn)と第2列目のベクトルα21222,…,n2)との相関を求め、こうして順次各列についてクロロフィル量Cに対する相関を求め、最後に、クロロフィル量C(C1,C2,…,Cn)と第m列目のベクトルαm1m2m,…,nm)との相関を求める。
上記相関は、次式(12)に従う相関係数Rによって求めることができる。この相関係数Rは、ピアソンの積率相関係数と呼ばれるものである。
Figure 2013160575
図7は、散布図のグラフである。図示の散布図は、縦軸にクロロフィル量Cを、横軸に推定混合行列Aの係数(以下、「推定混合係数」と呼ぶ)aをとり、クロロフィル量Cの各要素C1,C2,…,Cnと、推定混合行列Aの縦方向のベクトルαに含まれる推定混合係数1j2j,…,nj(j=1〜m)とから定まる点をプロットしたものである。図示の例では、プロットした各点は比較的、直線Lの付近に集まっている。こうした場合、クロロフィル量Cと推定混合係数aとの相関が高い。これに対して、クロロフィル量Cと推定混合係数aとの相関が低くなると、図8に示すように、プロットした各点は直線状に並ばず、拡がってしまう。すなわち、クロロフィル量Cと推定混合係数aとの相関が高いほど、プロット点は直線状に集まる傾向が高くなる。式(12)に示した相関係数Rは、プロット点が直線状に集まる傾向の程度を表す。
図5のステップS140の結果、独立成分(独立成分スペクトル)Yj毎の相関係数Rj(j=1,2,…,m)が得られる。その後、CPU10は、ステップSS140で得られた相関係数Rjの中から最も相関が高いもの、すなわち値が1に近いものを特定する。前述した散布図で言えば、プロットされた点が最も直線状に集まる相関係数Rjを特定する。そして、最も高い相関係数Rが得られた列ベクトルαを、推定混合行列Aの中から選択する(ステップS150)。
ステップS150における選択は、図6の表TBでいえば、複数の列の中から一の列を選択することである。この選択された列の要素が、目的成分であるクロロフィルに対応する独立成分の混合係数である。前記選択の結果、ベクトルαk1k2k,…,nk)が得られる。ここで、kは1〜mのいずれかの整数をとる。なお、このkの値を、何番目の独立成分が目的成分に当たるかを示す目的成分順位としてメモリー20に一時的に保存する。このベクトルαkに含まれる1k2k,…,nkが適用例1における「目的成分に対応する混合係数」に相当する。なお、図6の例では、目的成分順位k=2が、独立成分Y2に対応する列ベクトルα2=(1222,…,n2)を示している。なお、本明細書において、「順位」という語句は、「行列内の位置を示す値」という意味で使用されている。ステップS140、S150の処理において、CPU10は図3Bの推定係数選択部436として機能する。ステップS150の実行後、CPUは、この混合係数の算出処理を終える。この結果、工程4が完了し、その後、工程5に進む。
[工程5]
工程5は、回帰式の算出工程であり、工程4を実行した時と同じくコンピューター100を用いて行なわれるものである。工程5では、コンピューター100は、検量線の回帰式を算出する処理を実行する。なお、工程5は、工程4までのデータを別のコンピューターに移して実行してもよい。
図9は、コンピューター100のCPU10で実行される回帰式の算出処理を示すフローチャートである。処理が開始されると、CPU10は、まず、工程3で測定されたクロロフィル量C(C1,C2,…,Cn)と、ステップS150で選択されたベクトルαk1k2k,…,nk)とに基づいて、回帰式Fを算出する(ステップS210)。図7に示した散布図が最も相関の高いものである場合には、図中の直線Lが回帰式Fに相当する。回帰式の算出法については、周知であることから、ここでは詳しくは説明しないが、例えば、直線Lから各プロット点までの距離(残差)を0に近づけるように、最小二乗法を用いて直線Lを求める。回帰式Fは、次式(13)にて表すことができる。ステップS210では、式(13)における定数u,vが求められることになる。
Figure 2013160575
ステップS210の実行後、CPU10は、ステップS210で求められた回帰式Fの定数u,vと、ステップS150で得られた目的成分順位k(図6)と、混合係数の算出処理(図5)のステップS120で算出された独立成分行列Yとを、検量用データセットDS2としてハードディスクドライブ30に保存する(ステップS220)。その後、CPU10は、「リターン」に抜けて、この回帰式の算出処理を一旦終了する。この結果、検量線の回帰線を求めることができ、図1に示した検量線作成方法も終了する。ステップS210、S220の処理において、CPU10は図3Bの回帰式算出部440として機能する。
B.目的成分の検量方法:
目的成分の検量方法について、次に説明する。被検体は、検量線を作成したときに用いたサンプルと同じ成分で構成されるものとする。具体的には、目的成分の検量方法は、コンピューターを用いて行なわれるものである。なお、ここでのコンピューターは、検量線を作成する際に用いたコンピューター100であってもよいし、他のコンピューターであってもよい。
図10は、目的成分の検量を行う際に使用する装置の機能ブロック図である。この装置500は、被検体観測データ取得部510と、検量用データ取得部520と、混合係数算出部530と、目的成分量算出部540とを有する。混合係数算出部530は、前処理部532を含んでいる。この前処理部532は、図3Cの第1前処理部450と第2前処理部460の両者の機能を有している。被検体観測データ取得部510は、例えば図3AのCPU10が入力I/F50とメモリー20と協働して実現される。検量用データ取得部520は、例えば図3AのCPU10がメモリー20とハードディスクドライブ30と協働して実現される。混合係数算出部530、および目的成分量算出部540は、例えば図3AのCPU10がメモリー20と協働して実現される。図10の各機能を実現するコンピューターは、検量線を作成する際に用いたコンピューター100であるとし、ハードディスクドライブ等の記憶部に前述した検量用データセットDS2が保存されている。
図11は、コンピューター100のCPU10で実行する目的成分検量処理を示すフローチャートである。この目的成分検量処理は、CPU10がハードディスクドライブ30に格納された所定のプログラムをメモリー20にロードし、そのプログラムを実行することで、実現される。図示するように、処理が開始されると、まず、CPU10は、被検体である緑色野菜を分光計測器で撮影する処理を行う(ステップS310)。ステップS310による撮影は工程2と同様にして行うことができ、この結果、被検体の吸光度スペクトルXpが得られる。検量処理で使用する分光計測器は、誤差を抑制するため検量線の作成に使用した分光計測器と同一機種であることが好ましい。誤差をさらに抑制するためには、同一の機体であることがより好ましい。なお、図1の工程2と同様に、分光反射率スペクトルや吸光度スペクトルを分光器で測定する代わりに、これらのスペクトルを他の測定値から推定するようにしてもよい。一の被検体を一回撮像した場合に得られる被検体の吸光度のスペクトルXpは、次式(14)のようにベクトルで表される。
Figure 2013160575
ステップS310の処理において、CPU10は図10の被検体観測データ取得部510として機能する。次いで、CPU10は、ハードディスクドライブ30から検量用データセットDS2を取得し、メモリー20に格納する(ステップS315)。 ステップS315の処理において、CPU10は図10の検量用データ取得部520として機能する。
ステップS315の実行後、ステップS310で得られた被検体の吸光度スペクトルXpに対して前処理を実行する(ステップS325)。この前処理としては、検量線の作成時に図1の工程4(より具体的には図5のステップS110)において使用された前処理(すなわち第1前処理部450による正規化処理及び第2前処理部460による白色化処理)と同じ処理を実行することが好ましい。
その後、CPU10は、検量用データセットDS2に含まれる独立成分行列YとステップS325で得られた前処理ずみのスペクトルとに基づいて、被検体についての推定混合行列Aを求める処理を行う(ステップS335)。詳しくは、前述した式(10)に従う演算処理を行うもので、検量用データセットDS2に含まれる独立成分行列Yの逆行列(擬似逆行列)Y+を求め、ステップS325で得られた前処理ずみのスペクトルに前記擬似逆行列Y+を掛けることで、推定混合行列Aを求める。
検量処理における推定混合行列Aは、次式(15)に示すように、各独立成分に対応した混合係数からなる行ベクトル(1ラm行列)である。そこで、ステップS335の実行後、CPU10は、ハードディスクドライブ30から検量用データセットDS2に含まれる目的成分順位kを読み出し、ステップS335で求めた推定混合行列Aの中から、目的成分順位kに対応するk番目の成分の混合係数αkを抜き出し、当該混合係数αkを目的成分であるクロロフィルの混合係数として、メモリー20に一旦保存する(ステップS340)。ステップS325,S335,S340の処理において、CPU10は図10の混合係数算出部530として機能することになる。
Figure 2013160575
続いて、CPU10は、ハードディスクドライブ30から検量用データセットDS2に含まれる回帰式の定数u,vを読み出し、この定数u,vとステップS340で得られた目的成分であるクロロフィルの混合係数αkとを前述した式(13)の右辺に代入することで、クロロフィルの含有量Cを求める(ステップS350)。含有量Cは、被検体の単位質量当たり(例えば100グラム当たり)のクロロフィルの質量として求められる。ステップS350の処理において、CPU10は図10の目的成分量算出部540として機能することになる。その後、「リターン」に抜けて、この目的成分検量処理を終了する。
なお、本実施例では、ステップS350によって求められた含有量C(単位質量当たりの質量)を被検体のクロロフィルの含有量としていたが、これに替えて、ステップS350によって求められた含有量Cを、ステップS325による正規化で用いた正規化係数で補正して、この補正後の値を求めるべき含有量としてもよい。具体的には、含有量Cに標準偏差を乗算することによって、含有量の絶対値(グラム)を求めるようにしてもよい。この構成によれば、目的成分の種類によっては、含有量Cをより精度の高いものとすることが可能となる。
以上のように構成された実施例の検量線作成方法によれば、被検体である緑色野菜の実測値である一のスペクトルからクロロフィル量を高精度に求めることができる。
C.各種のアルゴリズムとその検量精度への影響:
以下では、図3Cに示した第1前処理部450と、第2前処理部460と、独立成分分析処理部470とにおいて利用される各種のアルゴリズムと、それらの検量精度への影響について順次説明する。
C−1.第1前処理(SNV/PNSを利用した正規化処理):
第1前処理部450が行う第1前処理としては、SNV(標準正規変量変換)とPNS(零空間射影法)を利用可能である。
SNVは、以下の式(16)で与えられる。
Figure 2013160575
ここで、zは処理後のデータ、xは処理対象データ(本実施例では吸光度スペクトル)、xaveは処理対象データxの平均値、σは処理対象データxの標準偏差である。標準正規変量変換の結果、平均値が0で標準偏差が1である正規化されたデータzが得られる。
PNSを行うと、処理対象データに含まれるベースライン変動を低減することが可能である。処理対象データ(本実施例では吸光度スペクトル)の測定では、さまざまな要因により、測定データごとにデータの平均値が上下するなどのベースライン変動と呼ばれるデータ間のばらつきが発生する。そのため、ICA(独立成分分析)を行う前に、この変動要因を取り除くことが好ましい。PNSは、処理対象データのベースライン変動を低減することのできる前処理として使用することが可能である。特に、赤外領域を含む吸収光スペクトル又は反射光スペクトルの測定データについては、このようなベースライン変動が多いので、PNSを適用する利点が大きい。以下では、測定で得られるデータ(単に「測定データx」とも呼ぶ)に含まれるベースライン変動を、PNSによって取り除く原理について説明する。また、典型的な例として、測定データが赤外領域を含む吸収光スペクトル又は反射光スペクトルである場合について説明を行う。但し、他の種類の測定データ(例えば音声データなど)についても同様にPNSを適用可能である。
一般に、理想系において、測定データx(処理対象データx)は、m個(mは2以上の整数)の独立成分si(i=1〜m)とそれぞれの混合比ciを用いて、以下の式(17)で表わされる。
Figure 2013160575
ここで、Aは混合比ciで形成される行列(混合行列)である。
ICA(独立成分分析)においても、このモデルを前提として処理が実行される。しかし、実際の測定データには、さまざまな変動要因(試料の状態や測定環境の変化など)が存在している。そこで、それらを考慮したモデルとして、以下の式(18)によって測定データxを表現するモデルが考えられる。
Figure 2013160575
ここで、bはスペクトルの振幅方向の変動量を表すパラメーター、a,d,eはそれぞれ定数ベースライン変動E(「平均値変動」とも呼ぶ)、波長に線形依存する変動λ、波長に2次依存する変動λ2の量を表すパラメーターであり、εはそれ以外の変動成分である。また、定数ベースライン変動Eは、E={1, 1, 1, …1}Tで与えられ、そのデータ長が測定データxのデータ長(波長域の区分数)と等しい定数ベクトルである。波長に依存する変動λ,λ2は、λ={λ1, λ2, …λNT,λ2={λ1 2, λ2 2, …λN 2Tで与えられ、ここでNは測定データxのデータ長である。なお、波長に依存する変動としては、3次以上の高次の変動も考慮することができ、一般に、g次の変動λg(gは2以上の整数)まで考慮することが可能である。これらの変動は、ICAや検量における誤差要因となるため、事前に取り除くことが望ましい。
PNSでは、上述したそれぞれのベースライン変動成分E,λ,λ2…λgからなる空間を考え、測定データxを、それら変動成分を含まない空間(零空間)に射影することで、ベースライン変動成分E,λ,λ2…λg(gは2以上の整数)を低減したデータを得ることができる。具体的な演算として、PNSによる処理後のデータzは、以下の式(19)で算出される。
Figure 2013160575
ここで、P+はPの擬似逆行列である。kiは、式(18)の構成成分siを、変動成分を含まない零空間に射影したものである。また、ε*は、式(18)の変動成分εを零空間に射影したものである。
なお、PNSの処理後に、正規化(例えばSNV)を行えば、式(18)におけるスペクトルの振幅方向の変動量bの影響も取り除くことができる。
このようなPNSによる前処理を行ったデータに対してICAを行うと、得られる独立成分は、式(19)の成分kiの推定値となり、真の構成成分siとは異なるものとなる。しかし、混合比ciは、元の式(18)における値から変化しないため、混合比ciを使用した検量処理(図11)には影響しない。このように、ICAの前処理としてPNSを実行すると、ICAによって真の構成成分siを得ることはできないので、通常は、ICAの前処理にPNSを適用するという発想は生じ得ない。一方、本実施例では、PNSをICAの前処理として行っても検量処理には影響しないので、PNSを前処理として実行すれば、より精度良く検量を行うことが可能である。
なお、PNSの詳細については、例えば、Zeng-Ping Chen, Julian Morris, and Elaine Martin, “Extracting Chemical Information from Spectral Data with Multiplicative Light Scattering Effects by Optical Path-Length Estimation and Correction”, 2006に説明されている。
C−2.第2前処理(PCA/FAを利用した白色化処理):
第2前処理部460が行う第2前処理としては、PCA(主成分分析)とFA(因子分析)を利用可能である。
一般的なICAの手法では、前処理として、処理対象データの次元圧縮と、無相関化を行う。この前処理によって、ICAで求めるべき変換行列が直交変換行列に限定されるため、ICAの計算量を削減できる。このような前処理を「白色化」とよび、多くの場合にPCAが用いられる。PCAを用いた白色化については、例えばAapo Hyvarinen, Juha Karhumen, Erkki Oja, "Independent Comonent Analysis", 2001, John Wiley &Sons, Inc.(「独立成分分析」、2005年2月、東京電気大学出版部発行)の第6章に詳述されている。
しかしながら、PCAでは、処理対象データにランダムノイズが含まれる場合、そのランダムノイズの影響を受けて、処理結果に誤差が生じる場合がある。そこで、ランダムノイズの影響を低減するために、PCAの代わりに、ノイズに対するロバスト性を持つFA(因子分析)を用いて白色化を行うことが好ましい。以下では、FAによる白色化の原理を説明する。
前述したように、一般にICAでは、処理対象データxを、構成成分siの線形和として表す線形混合モデル(上記式(17))を仮定し、混合比ciと構成成分siとを求める。しかし、実際のデータには、構成成分si以外のランダムノイズが付加されていることが多い。そこで、ランダムノイズを考慮したモデルとして、以下の式(20)によって測定データxを表現するモデルが考えられる。
Figure 2013160575
ここで、ρはランダムノイズである。
そして、このノイズ混合モデルを考慮した白色化を行い、その後、ICAを行って混合行列Aと独立成分siの推定を得ることができる。
本実施例のFAでは、独立成分siとランダムノイズρとがそれぞれ正規分布N(0,Im),N(0,Σ)に従うと仮定する。なお、一般に知られているように、正規分布N(x1,x2)の第1のパラメーターx1は期待値を示し、第2のパラメーターx2は標準偏差を示す。このとき、処理対象データxは、正規分布に従う変数の線形和となるので、処理対象データxもやはり正規分布に従う。ここで、処理対象データxの共分散行列をV[x]とすると、処理対象データxが従う正規分布はN(0,V[x])と表現できる。このとき、処理対象データxの共分散行列V[x]に関する尤度関数を、下記の手順で計算できる。
まず、独立成分siが互いに直交すると仮定すると、処理対象データxの共分散行列V[x]は以下の式(21)で計算される。
Figure 2013160575
ここで、Σはノイズρの共分散行列である。
このように、共分散行列V[x]は、混合行列Aとノイズの共分散行列Σとで表すことができる。このとき、対数尤度関数L(A,Σ)は以下の式で与えられる。
Figure 2013160575
ここで、nはデータxのデータ個数、mは独立成分の個数であり、演算子trは行列のトレース(対角成分の和)を示し、演算子detは行列式を示す。また、Cはデータxから標本計算で求められる標本共分散行列であり、以下の式で計算される。
Figure 2013160575
上記式(22)の対数尤度関数L(A,Σ)を用いた最尤法により、混合行列Aとノイズの共分散行列Σとを求めることができる。この混合行列Aとしては、上記式(20)のランダムノイズρの影響がほとんど無いものが得られる。これがFAの基本的な原理である。なお、FAのアルゴリズムとしては、最尤法以外のアルゴリズムを利用した種々のアルゴリズムが存在する。本実施例においても、このような各種のFAを利用可能である。
ところで、FAで得られる推定値は、あくまでAATの値であり、この値に適合する混合行列Aを決めた場合に、ランダムノイズの影響を低減しつつデータを無相関化することが可能だが、回転の自由度が残るために複数の構成成分siを一意に決めることができない。一方、ICAは、複数の構成成分siが互いに直交するように複数の構成成分siの回転の自由度を減らす処理である。そこで、本実施例では、FAで求める混合行列Aの値を白色化行列(白色化済の行列)として用い、残された回転に対する任意性をICAにより特定する。これにより、ランダムノイズにロバストな白色化処理を行った後に、ICAを実行することにより、互いに直交する独立な構成成分siを決定することが可能である。また、このような処理の結果、ランダムノイズの影響を低減して、構成成分siに関する検量精度を向上させることができる。
C−3.ICA(独立性指標としての尖度及びβダイバージェンス):
ICA(独立成分分析)では、一般に、独立成分の分離のための指標として、分離したデータ同士の独立性を表す高次統計量を独立性指標として用いられる。尖度は、典型的な独立性指標である。独立性指標として尖度を用いたICAについては、例えばAapo Hyvarinen, Juha Karhumen, Erkki Oja, "Independent Comonent Analysis", 2001, John Wiley &Sons, Inc.(「独立成分分析」、2005年2月、東京電気大学出版部発行)の第8章に詳述されている。
しかし、処理対象データにスパイクノイズのような外れ値が入っている場合には、その外れ値も含めた統計量が独立性指標として計算されてしまう。このため、処理対象データについての本来の統計量と、算出された統計量との間に誤差が生じ、分離精度の低下を引き起こす場合がある。そこで、処理対象データ中の外れ値からの影響を受けにくい独立性指標を使用することが好ましい。この様な特性を持つ独立性指標として、βダイバージェンスを使用可能である。以下では、ICAにおける独立性指標としてのβダイバージェンスの原理を説明する。
前述したように、一般にICAでは、処理対象データxを、構成成分siの線形和として表す線形混合モデル(上記式(17))を仮定し、混合比ciと構成成分siとを求める。ICAにより求められる構成成分sの推定値yは、分離行列Wを用いてy=W・yと表わされる。このとき分離行列Wは混合行列Aの逆行列であることが望まれる。
ここで、分離行列Wの推定値^Wの対数尤度関数L(^W)は、以下の式で表すことができる。
Figure 2013160575
ここで、積算記号Σの要素は、各データ点x(t)における対数尤度である。この対数尤度関数L(^W)を、ICAにおける独立性指標として用いることができる。竈ダイバージェンスの手法は、この対数尤度関数L(^W)に適当な関数を作用させることにより、データ中のスパイクノイズのような外れ値に対して、その影響を抑えるように対数尤度関数L(^W)を変換しようとする方法である。
βダイバージェンスを独立性指標として利用する場合には、まず、予め選択された関数Φβを用いて対数尤度関数L(^W)を以下の式で変換する。
Figure 2013160575
そして、この関数LΦ(^W)を新たな尤度関数と考える。
スパイクノイズのような外れ値の影響を小さくするための関数Φβとしては、対数尤度の値(関数Φβの括弧内の値)が小さくなるほど、関数Φβの値が指数関数的に減衰するような関数が考えられる。このような関数Φβとしては、例えば以下を使用することができる。
Figure 2013160575
この関数では、βの値が大きいほど、各データ点z(上述の式(25)では対数尤度)に対する関数値が小さくなる。このβの値は経験的に決定することができ、例えば約0.1に設定することが可能である。なお、この関数Φβとしては、式(26)のものに限らず、βの値が大きいほど各データ点zに対する関数値が小さくなるような他の関数を利用することも可能である。
このようなβダイバージェンスを独立性指標として使用すると、スパイクノイズのような外れ値の影響を適切に抑えることができる。上記式(25)のような尤度関数LΦ(^W)を考える場合に、この尤度の最大化に対応して最小化される確率分布間の擬似距離がβダイバージェンスである。このようなβダイバージェンスを独立性指標として使用したICAを実行すれば、スパイクノイズのような外れ値の影響を低減して、構成成分siに関する検量精度を向上させることができる。
なお、βダイバージェンスを用いたICAについては、例えば、Minami Mihoko, Shinto Eguchi, “Robust Blind Source Separation by β-Divergence”, 2002に説明されている。
C−4.アルゴリズムの検量精度への影響評価(その1):
図12A〜図12Hは、アルゴリズムの組み合わせが異なる8種類の処理条件で処理して得られた検量精度を比較して示す図であり、図13は図12A〜図12Hにおける検量精度をまとめたものである。この影響評価では、しょ糖と食塩の混合比率が異なる8種類の混合物の吸光度を分光光度計で測定して処理対象データを取得し、図5及び図9の手順に従って検量線(図7に類似のもの)を作成した。なお、検量対象は、しょ糖の濃度(単位体積当たりの割合)である。図12A〜図12Hは、こうして得られた検量線を使用した時に得られる検量値と真値との関係を示したものである。
検量精度を示す指標値としては、以下の2つを使用している。
・R2:実測値と独立成分分析で得られた検量値との間の相関係数Rの2乗
・SEP:実測値と独立成分分析で得られた検量値との間の予測標準偏差
一般に、R2が大きいほど(1に近いほど)検量精度が良く、また、SEPが小さいほど検量精度が良い。
処理条件1は、第1前処理でSNV(標準正規変量変換)を使用し、第2前処理でPCA(主成分分析)を使用し、ICA(独立成分分析)の独立性指標として尖度を使用している。処理条件2は、第2前処理でFA(因子分析)を使用している以外は処理条件1と同じである。処理条件3は、第1前処理でPNS(零空間射影法)を使用している以外は処理条件1と同じである。なお、第1前処理でPNSを使用した場合(処理条件3,5,6,8)には、PNSの後にSNVを行っている。
<第1前処理でPNS(零空間射影法)を使用する効果>
第1前処理でPNSを使用する効果は、図13の処理条件1と処理条件3を比較すれば理解できる。すなわち、第1前処理でPNSを使用した処理条件3では、SNVのみを使用した処理条件1と比べて、相関係数Rと予測標準誤差SEPがいずれも改善されており、検量精度が向上している。この点は、処理条件4と処理条件5との比較や、処理条件7と処理条件8との比較からもほぼ同様に理解できる。前述したように、PNSは、ベースライン変動の影響を低減する上で効果が大きなアルゴリズムである。図13に示した8つの分析結果では、測定データとして赤外領域を含む吸光度スペクトルを処理対象としている。特に赤外領域を含む吸収光スペクトル又は反射光スペクトルの測定データについてはベースライン変動が多いので、PNSを適用する利点が大きいことが理解できる。
<第2前処理でFA(因子分析)を使用する効果>
第2前処理でFAを使用する効果は、図13の処理条件1と処理条件2を比較すれば理解できる。すなわち、第2前処理でFAを使用した処理条件2では、PCAを使用した処理条件1と比べて、相関係数Rと予測標準誤差SEPのいずれもわずかに改善されており、検量精度が向上している。この点は、処理条件4と処理条件7との比較からもほぼ同様に理解できる。但し、図13において、第2前処理でFAを使用する効果は、第1前処理でPNSを使用する効果よりもやや少ない。この理由は、FAは、主としてランダムノイズの影響を低減するのに有効であり、図13の分析で使用した測定データにはランダムノイズが少なかったからであると推定される。
<ICAの独立性指標としてβダイバージェンスを使用する効果>
ICAの独立性指標としてβダイバージェンスを使用する効果は、図13の処理条件1と処理条件4を比較すれば理解できる。すなわち、ICAの独立性指標としてβダイバージェンスを使用した処理条件4では、尖度を使用した処理条件1と比べて、相関係数Rと予測標準誤差SEPのいずれもわずかに改善されており、検量精度が向上している。この点は、処理条件6と処理条件8との比較からもほぼ同様に理解できる。但し、図13において、ICAの独立性指標としてβダイバージェンスを使用する効果はわずかであり、処理条件2と処理条件7との比較ではβダイバージェンスを使用した方が検量精度がやや悪化している。この理由は、βダイバージェンスは、主としてスパイクノイズのような外れ値の影響を低減するのに有効であり、図13の分析で使用した測定データにはスパイクノイズが少なかったからであると推定される。
C−5.アルゴリズムの検量精度への影響評価(その2):
図14A〜図14Hは、各種の変動が存在するときの各種のアルゴリズムの影響を評価した結果を示す図であり、図15は図14A〜図14Hにおける検量精度をまとめたものである。この影響評価では、2つの人音声v1,v2をランダムな割合で混合した40種類のサンプル音声信号を処理対象データとして作成し、図5及び図9の手順に従って検量線を作成した。検量対象は、第1の人音声v1の割合である。なお、音声信号を処理対象データとした理由は、種々の変動を含む処理対象データに対する各種のアルゴリズムの影響を確認するためである。
図14A〜図14Hは、こうして得られた検量線を使用した時に得られる検量値と真値との関係を示したものである。なお、サンプル音声信号には、以下の3種類の変動を付加した。
(1)ガウシアンノイズ:分散が0.05のガウシアンノイズを付加した。
(2)スパイクノイズ:母数5のχ2分布に従うスパイクノイズを1%の割合で付加した。
(3)ベースライン変動:定数ベースライン変動Eと、波長に線形依存する変動λと、波長に2次依存する変動λ2を、それぞれ10-1,10-5,10-6のオーダーでランダムに付加した。
図15の8種類の処理条件は、図13に示したものと同じである。なお、図15においてSNVが括弧の中に記載されているのは、サンプル音声信号を、予め平均値0で標準偏差が1の正規化された信号として作成したので、SNVを行った信号であると考えることができるからである。
<第1前処理でPNS(零空間射影法)を使用する効果>
第1前処理でPNSを使用する効果は、図15の処理条件1と処理条件3の比較ではやや小さいが、処理条件2と処理条件6との比較ではかなり効果が大きい。また、処理条件4と処理条件5との比較、及び、処理条件7と処理条件8との比較でも、PNSの効果がかなり大きいことが理解できる。すなわち、第1前処理でPNSを使用する効果は、第2前処理でFAを使用することと、ICAの独立性指標としてβダイバージェンスを使用することと、の少なくとも一方を採用したときに、より顕著になる。
<第2前処理でFA(因子分析)を使用する効果>
第2前処理でFAを使用する効果は、図15の処理条件1と処理条件2の比較から理解できるようにかなり大きく、同様に、処理条件3と処理条件6との比較、処理条件4と処理条件7との比較、及び、処理条件5と処理条件8との比較からも、その効果がかなり大きなことが理解できる。また、第2前処理でFAを使用する効果は、第1前処理でPNSを使用することと、ICAの独立性指標としてβダイバージェンスを使用することと、の少なくとも一方を採用したときに、より顕著になる。
<ICAの独立性指標としてβダイバージェンスを使用する効果>
ICAの独立性指標としてβダイバージェンスを使用する効果は、図15の処理条件1と処理条件4の比較ではやや小さいが、処理条件3と処理条件5との比較ではかなり効果が大きく、同様に、処理条件2と処理条件7や、処理条件6と処理条件8との比較でもかなり効果が大きい。すなわち、ICAの独立性指標としてβダイバージェンスを使用する効果は、第1前処理でPNSを使用することと、第2前処理でFAを使用することと、の少なくとも一方を採用したときに、より顕著になる。
以上のような図15の評価結果から理解できるように、第1前処理でPNSを使用する効果や、第2前処理でFAを使用する効果、及びICAの独立性指標としたβダイバージェンスを使用する効果は、各種の変動が存在するようなデータを処理対象とした場合により顕著である。
C−6.アルゴリズムの検量精度への影響評価(その3):
図16A〜図16Fは、ガウシアンノイズとベースライン変動とスパイクノイズの3種類の変動のうちの1種類のみが存在するときの各種のアルゴリズムの影響を評価した結果を示す図であり、図17は図16A〜図16Fにおける検量精度をまとめたものである。この影響評価では、図15と同様に、2つの人音声v1,v2をランダムな割合で混合した40種類のサンプル音声信号を処理対象データとして作成し、図5及び図9の手順に従って検量線を作成した。但し、サンプル音声信号には、ガウシアンノイズとベースライン変動とスパイクノイズの3種類の変動のうちの1種類のみを付加した。
図17に示すように、ガウシアンノイズを付加したデータについては、処理条件1と処理条件2で処理を行った。処理条件1と処理条件2は、第2前処理としてPCAを使用するかFAを使用するかが相違する。ガウシアンノイズを付加したデータについては、第2前処理でFAを使用すれば、PCAを使用した場合に比べてかなり検量精度が向上している。この比較から、FAは、ガウシアンノイズのようなランダムノイズの影響を低減するのに有効であることが確認できた。
また、図17に示すように、ベースライン変動を付加したデータについては、処理条件1と処理条件3で処理を行った。処理条件1と処理条件3は、第1前処理としてSNVを使用するかPNSを使用するかが相違する。ベースライン変動を付加したデータについては、第1前処理でPNSを使用すれば、SNVのみを使用した場合に比べて検量精度が顕著に向上している。この比較から、PNSは、ベースライン変動の影響を低減するのに有効であることが確認できた。
更に、図17に示すように、スパイクノイズを付加したデータについては、処理条件1と処理条件4で処理を行った。処理条件1と処理条件4は、ICAの独立性指標として尖度を使用するかβダイバージェンスを使用するかが相違する。スパイクノイズを付加したデータについては、ICAの独立性指標としてβダイバージェンスを使用すれば、尖度を使用した場合に比べて検量精度が顕著に向上している。この比較から、βダイバージェンスは、スパイクノイズの影響を低減するのに有効であることが確認できた。
D.変形例:
この発明は前記実施例やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
・変形例1:
前記実施例では、被検体観測データ取得部510(図10)は、検量用データセットDS2をハードディスクドライブ30から取得することで、目的成分に対応する独立成分を含む独立成分行列Yを取得し、混合係数算出部530(図10)は、被検体の吸光度スペクトルと独立成分行列Yとに基づいて被検体についての推定混合行列Aを求め、その推定混合行列Aの中から目的成分順位kに対応するk列目の混合係数αkを抽出することによって、被検体についての目的成分の混合係数を求めていたが、本発明ではこれに限られない。例えば、次の(i)、(ii)を順に行う構成とすることができる。
(i)ハードディスクドライブ30に格納された検量用データセットDS2を読み出して、前記検量用データセットDS2に含まれる独立成分行列Yの中から目的成分順位kに対応するk列目の要素(独立成分)Ykを取得する。この独立成分Ykは、クロロフィル量に対して最も相関が強いもので、クロロフィル量に対応したものである。
(ii)次いで、前記抽出した独立成分Ykと、観測データである被検体のスペクトルXp(例えば、ステップS320で得られた正規化ずみのスペクトル)との内積を求め、その内積値を目的成分の混合係数αkとする。すなわち、次式(27)に従う演算を行う。
Figure 2013160575
ここでは、観測データは独立成分の線形和であり、また、独立成分同士の直交性が十分に高いと仮定しているので、観測データであるスペクトルと目的成分の独立成分行列との内積を算出することによりその独立成分についての値だけが残り、他の成分はすべて0になる。これにより目的成分の混合係数αkの算出が容易となる。但し、独立成分同士の直交性が十分に高くない場合には、式(27)の演算を使用せずに、式(15)の推定混合行列Aを求めるようにすることが好ましい。
前記(i)の処理において、CPU10は検量用データ取得部として機能する。前記(ii)の処理において、CPU10は混合係数算出部として機能する。なお、検量用データ取得部は、前記(i)の構成に換えて、前記独立成分行列Yの中から目的成分順位kに対応するk列目の要素(独立成分)Ykが予め記憶されているハードディスクドライブ30等の記憶部から、独立成分Ykを取得する構成とすることもできる。内積を用いる場合、必要となるのは目的成分に対応した独立成分のみであるため、ほかの独立成分は必要ないためである。この場合には、独立成分はベクトルとなり、目的成分順位を保存する必要もなくなる。
・変形例2:
前記実施例および変形例では、被検体を緑色野菜として、クロロフィル量を検出する構成としたが、緑色野菜のクロロフィル量に換えて、肉におけるオレイン酸、人肌におけるコラーゲン等、種々の被検体および目的成分に対応することができる。要は、被検体と同じ成分で構成されるサンプルを用意して検量線の作成を行うようにすれば、種々の被検体および目的成分に対応することが可能となる。前記実施例および変形例では、吸光度スペクトルを観測データとして検量する構成としたが、観測データを、吸光度スペクトルに換えて、複数の音源から発せられる音声を混合した音声データとしても、同様の構成により、特定音源からの音の大きさを検量できる。要は、信号源についての統計的性質を知るに十分な量の情報を有する信号であれば、本発明は、種々の観測データに適用することが可能である。
・変形例3:
前記実施例および変形例では、混合係数推定工程として、独立成分行列を求め、推定混合行列を求め、その推定混合行列から目的成分に対応する混合係数を抜き出す構成としたが、必ずしもこの構成とする必要はない。要は、サンプル毎の観測データに含まれる、当該観測データを複数の独立成分に分離したときの各独立成分を推定し、前記各独立成分に基づいて、前記目的成分に対応する混合係数を前記サンプル毎に求める構成であれば、いずれの構成とすることもできる。
・変形例4:
前記実施例および変形例における検量線作成方法では、サンプルについての目的成分の含有量を実測する構成としたが、これに換えて、目的成分の含有量が既知であるサンプルを用意して、その含有量をキーボード等から入力する構成としてもよい。
・変形例5:
前記実施例および変形例では、未知成分のスペクトルSの要素数mは予め経験的又は実験的に決められるとしたが、未知成分のスペクトルSの要素数mはMDL(Minimum Description Length)やAIC(Akaike Information Criteria)として知られる情報量基準などによって決定してもよい。MDLなどを用いる場合、未知成分のスペクトルSの要素数mはサンプルの観測データから演算によって自動的に決めることができる。なお、MDLについては、例えば”Independent component analysis for noisy data ‐ MEG data analysis, 2000”に説明されている。
・変形例6:
前記実施例および変形例では、検量処理の対象となる被検体は、検量線を作成したときに用いたサンプルと同じ成分で構成されるとしたが、変形例1のように内積を用いて混合係数を求める場合、被検体に検量線を作成したときに用いたサンプルと同じ成分以外の未知成分が含まれる、としてもよい。独立成分同士の内積は0と仮定するため、未知成分に対応する独立成分とも内積0と考えられるためであり、内積で混合係数を求める場合には未知成分の影響は無視できる。
・変形例7:
前記実施例および変形例において用いたコンピューターは、パーソナルコンピューターに換えて専用の装置とすることができる。例えば、目的成分の検量方法を実現するパーソナルコンピューターを専用の検量装置とすることができる。
・変形例8:
前記実施例では、サンプルや被検体についての分光反射率のスペクトルの入力を、分光計測器により測定されたスペクトルを入力することで行っていたが、本発明はこれに限られない。例えば、波長帯域の相違する複数のバンド画像から分光スペクトルを推定し、この分光スペクトルを入力する構成としてもよい。前記バンド画像は、例えば、透過波長帯域を変更可能なフィルターを備えるマルチバンドカメラによってサンプルや被検体を撮影することで得られる。
・変形例9:
前記実施例および各変形例において、ソフトウェアによって実現した機能は、ハードウェアによって実現するものとしてもよい。
なお、前述した各実施例および各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。
10…CPU
20…メモリー
30…ハードディスクドライブ
50…入力インターフェイス
60…出力インターフェイス
100…パーソナルコンピューター
200…分光計測器
300…キーボード
400…検量線作成装置
410…サンプル観測データ取得部
420…サンプル目的成分量取得部
430…混合係数推定部
432…独立成分行列算出部
434…推定混合行列算出部
436…混合係数選択部
440…回帰式算出部
450…第1前処理部(正規化処理部)
452…標準正規変量変換(SNV)
454…零空間射影法(PNS)
460…第2前処理部(白色化処理部)
462…主成分分析(PCN)
464…因子分析(FA)
470…独立成分分析処理部
472…第1処理
474…第2処理
500…検量装置
610…被検体観測データ取得部
620…検量用データ取得部
630…混合係数算出部
632…前処理部
640…目的成分量算出部

Claims (8)

  1. 被検体の観測データから、前記被検体についての目的成分の含有量を導くことに用いる検量線を作成する検量線作成方法であって、
    (a)コンピューターが、前記被検体の複数のサンプルについての前記観測データを取得する工程と、
    (b)前記コンピューターが、前記各サンプルについての前記目的成分の含有量を取得する工程と、
    (c)前記コンピューターが、前記サンプル毎の観測データを複数の独立成分に分離したときの複数の独立成分を推定し、前記複数の独立成分に基づいて、前記サンプル毎に前記目的成分に対応する混合係数を求める工程と、
    (d)前記コンピューターが、前記複数のサンプルの前記目的成分の含有量と、前記サンプル毎の前記混合係数とに基づいて、前記検量線の回帰式を求める工程と、
    を含み、
    前記工程(c)は、
    (i)前記コンピューターが、前記各サンプルの前記独立成分を含む独立成分行列を求める工程と、
    (ii)前記コンピューターが、前記独立成分行列から、前記各サンプルにおける前記独立成分毎の独立成分要素の比率を規定するベクトルの集合を示す推定混合行列を求める工程と、
    (iii)前記コンピューターが、前記推定混合行列に含まれる前記ベクトル毎に、前記複数のサンプルの前記目的成分の含有量に対する相関を求め、前記相関が最も高いと判定される前記ベクトルを、前記目的成分に対応する混合係数として選択する工程と、
    を含み、
    前記工程(i)において、前記コンピューターが、前記観測データの正規化を含む第1前処理と、白色化を含む第2前処理と、独立成分分析処理とをこの順に実行することによって前記独立成分行列を求め、
    前記コンピューターが、前記第2前処理では因子分析による白色化を実行する、検量線作成方法。
  2. 請求項1に記載の検量線作成方法であって、
    前記コンピューターが、前記独立成分分析処理における独立性指標としてβダイバージェンスを用いる、検量線作成方法。
  3. 被検体の観測データから、前記被検体についての目的成分の含有量を導くことに用いる検量線を作成する検量線作成装置であって、
    前記被検体の複数のサンプルについての前記観測データを取得するサンプル観測データ取得部と、
    前記各サンプルについての前記目的成分の含有量を取得するサンプル目的成分量取得部と、
    前記サンプル毎の観測データを複数の独立成分に分離したときの複数の独立成分を推定し、前記複数の独立成分に基づいて、前記サンプル毎に前記目的成分に対応する混合係数を求める混合係数推定部と、
    前記複数のサンプルの前記目的成分の含有量と、前記サンプル毎の前記混合係数とに基づいて、前記検量線の回帰式を求める回帰式算出部と、
    を含み、
    前記混合係数推定部は、
    前記各サンプルの前記各独立成分を含む独立成分行列を求める独立成分行列算出部と、
    前記独立成分行列から、前記各サンプルにおける前記独立成分毎の独立成分要素の比率を規定するベクトルの集合を示す推定混合行列を求める推定混合行列算出部と、
    前記推定混合行列に含まれる前記ベクトル毎に、前記複数のサンプルの前記目的成分の含有量に対する相関を求め、前記相関が最も高いと判定される前記ベクトルを、前記目的成分に対応する混合係数として選択する混合係数選択部と、
    を含み、
    前記独立成分行列算出部は、前記観測データの正規化を含む第1前処理と、白色化を含む第2前処理と、独立成分分析処理とをこの順に実行することによって前記独立成分行列を求め、
    前記独立成分行列算出部は、前記第2前処理では因子分析による白色化を実行する、検量線作成装置。
  4. 請求項3に記載の検量線作成装置であって、
    前記独立成分行列算出部は、前記独立成分分析処理における独立性指標としてβダイバージェンスを用いる、検量線作成装置。
  5. 請求項3又は4に記載の検量線作成装置であって、更に、
    前記独立成分行列算出部によって算出された前記独立成分行列と、前記混合係数選択部によって選択された混合係数が前記推定混合行列のいずれの位置にあるかを示す目的成分順位と、前記回帰式算出部によって算出された回帰式とを記憶する記憶部
    を含む検量線作成装置。
  6. 被検体についての目的成分の含有量を求める目的成分検量装置であって、
    前記被検体についての観測データを取得する被検体観測データ取得部と、
    前記目的成分に対応する独立成分を少なくとも含む検量用データを取得する検量用データ取得部と、
    前記被検体についての観測データと前記検量用データとに基づいて、前記被検体についての前記目的成分に対する混合係数を求める混合係数算出部と、
    予め用意した、前記目的成分に対応する混合係数と含有量との関係を示す回帰式の定数と、前記混合係数算出部によって求められた混合係数に基づいて、前記目的成分の含有量を算出する目的成分量算出部と、
    を含み、
    前記混合係数算出部は、前記観測データの正規化を含む第1前処理と、白色化を含む第2前処理とをこの順に実行するとともに、前記第2前処理では因子分析による白色化を実行する、目的成分検量装置。
  7. 請求項6に記載の目的成分検量装置であって、
    前記検量用データ取得部は、
    前記目的成分に対応するものとして予め求められている独立成分を、前記検量用データとして取得し、
    前記混合係数算出部は、
    前記独立成分と前記被検体についての観測データとの内積を求め、該内積値を前記混合係数とする、目的成分検量装置。
  8. 請求項6に記載の目的成分検量装置であって、
    前記検量用データ取得部は、
    複数のサンプルについての各観測データを複数の独立成分に分離したときの複数の独立成分を、前記検量用データとして取得し、
    前記混合係数推定部は、
    前記被検体についての観測データと前記複数の独立成分とに基づいて前記被検体についての推定混合行列を算出し、前記算出した推定混合行列から前記目的成分に対応する混合係数を抽出する、目的成分検量装置。
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