JP2018132463A - 検量装置及び検量線作成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】複数の成分に由来する測定データが「互いに統計的に独立である」という条件を満たさない場合にも、独立成分分析や目的成分の検量を精度良く実行できる技術を提供する。【解決手段】検量用データ取得部は、Q個の光学スペクトルとS個の評価用スペクトルを取得し、Q個の光学スペクトルの集合からR個の部分集合を抽出し、各部分集合に独立成分分析を実行してR×N個の成分検量用スペクトルを取得し、成分検量用スペクトルの評価値を総合した部分集合評価値を求め、これに応じてB個の部分集合を選択するとともにB個の部分集合から更新したR個の部分集合を作成し、所定の終了条件が満たされまで部分集合の更新を継続する。その後、それまで処理対象となった成分検量用スペクトルのうちから目的成分検量用スペクトルを選択し、目的成分検量用スペクトルを用いて検量線を作成する。【選択図】図8

Description

本発明は、被検体の測定データから目的成分の成分量を求める検量技術に関する。
従来から、独立成分分析(ICA:Independent Component Analysis)を利用して目的成分の成分量を求める検量方法が知られている。従来の独立成分分析は、複数の成分に由来する信号源(例えば光学スペクトル)が独立成分であるという前提の下に、独立成分としての信号源を推定する方法である。例えば、特許文献1には、緑色野菜の分光測定を行って光学スペクトルを取得し、この光学スペクトルに対して独立成分分析を行うことによってクロロフィルに由来するスペクトルを独立成分として推定し、推定されたスペクトルを用いて新たな緑色野菜サンプルにおけるクロロフィル量を決定する検量技術が開示されている。
特開2013−36973号公報
ところで、独立成分分析を十分正確に行うためには、推定すべき複数の独立成分が、互いに統計的に独立である、という条件が成立していることが必要とされる。しかし、ある種の測定データでは、正確な独立成分分析を行うためのこのような条件が成立しない場合がある。
このような場合には、複数の成分に由来する光学スペクトルを独立成分と見なす通常の独立成分分析を行っても、光学スペクトルを正確に推定することができない可能性がある。そこで、複数の成分に由来する光学スペクトルが「互いに統計的に独立である」という条件を満たさない場合にも、独立成分分析を精度良く行い得る技術や、目的成分の検量を精度良く行い得る技術が望まれている。なお、このような課題は、近赤外領域を含む光学スペクトルを用いた目的成分の検量に限らず、他の測定データや測定信号に対して独立成分分析を行う他の技術にも共通する課題である。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
1)本発明の第1の形態によれば、被検体における目的成分の成分量を求める検量装置が提供される。この検量装置は、前記被検体の分光測定によって得られる光学スペクトルを取得する光学スペクトル取得部と;前記目的成分に対応する目的成分検量用スペクトルと、検量線を表す単回帰式と、を含む検量用データを取得する検量用データ取得部と;前記被検体について測定された前記光学スペクトルと前記目的成分検量用スペクトルとの内積値を計算する内積値算出部と;前記内積値と前記目的成分の成分量との関係を示す前記単回帰式を使用し、前記内積値算出部によって求められた内積値に対応する前記目的成分の成分量を算出する成分量算出部と;を備える。前記検量用データ取得部は、(a)前記目的成分を含むN個(Nは1以上の整数)の成分をそれぞれ含有するQ個(Qは3以上の整数)の第1サンプルを分光測定して得られたQ個の光学スペクトルと、前記目的成分の成分量が既知であるS個(Sは3以上の整数)の第2サンプルを分光測定して得られたS個の評価用スペクトルと、を取得する処理と;(b)前記Q個の光学スペクトルの集合からR個(Rは2以上の整数)の部分集合を抽出する処理と;(c)前記R個の部分集合のそれぞれに対して、各サンプルにおける前記N個の成分の成分量を独立成分とする独立成分分析を実行することによって、前記N個の成分に対応するN個の成分検量用スペクトルを決定して、合計でR×N個の成分検量用スペクトルを取得する処理と;(d)前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、各成分検量用スペクトル又はそれに対応する成分固有スペクトルを変数とする関数を用いた演算を実行することによって各成分検量用スペクトルの評価値を求める処理と;(e)前記R個の部分集合のそれぞれに関して、各部分集合に含まれる前記N個の成分検量用スペクトルの前記評価値を総合した部分集合評価値を求める処理と;(f)前記R個の部分集合の中から、前記部分集合評価値に基づく予め定められた選択規則に従ってB個の部分集合(Bは1以上R未満の整数)を選択する処理と;(g)前記B個の部分集合の各部分集合について、各部分集合に含まれる1つ以上の光学スペクトルを前記Q個の光学スペクトルのうちの他の光学スペクトルに置き換えることによって異なる部分集合を作成する置換処理を実行することにより、前記B個の部分集合から、更新されたR個の部分集合を作成する処理と;(h)予め定めた終了条件が満たされるまで前記処理(c)〜(g)を繰り返す処理と;(i)前記終了条件が満たされた場合に、前記終了条件が満たされるまでに前記処理(d)の処理対象となった複数の成分検量用スペクトルのうちで前記評価値が最高となるような成分検量用スペクトルを前記目的成分検量用スペクトルとする処理と;(j)前記S個の評価用スペクトルと前記目的成分検量用スペクトルとの内積で得られる内積値と、前記S個の第2サンプルに含有される前記目的成分の成分量との関係を示す単回帰式を前記検量線として作成する処理と、を実行する。
この検量装置によれば、各サンプルにおける複数の成分の成分量を独立成分とする独立成分分析を実行するので、複数の成分に由来する光学スペクトルが互いに独立でない場合にも、独立成分分析を精度良く行い、目的成分の検量を精度良く行うことが可能である。また、Q個の光学スペクトルの集合から複数の部分集合を作成及び更新し、各部分集合のそれぞれに対して成分量を独立成分と見なす独立成分分析を実行するので、Q個の光学スペクトルの集合全体における成分量分布がガウス的であることなどの独立性の不足がある場合にも、幾つかの部分集合では成分量分布がより非ガウス的になって独立性が改善されるので、目的成分検量用スペクトルを精度良く求めることが可能である。更に、処理(c)〜(g)を繰り返して部分集合の更新を行うので、評価値の高い部分集合や成分検量用スペクトルを効率的に得ることができる。
2)上記検量装置において、前記検量用データ取得部は、前記処理(c)において、(1)前記各サンプルに対する分光測定で得られた光学スペクトルを列ベクトルとする光学スペクトル行列Xを、前記各サンプルに含有される前記N個の成分のうちの個々の成分に由来する未知の成分固有スペクトルを列ベクトルとする成分固有スペクトル行列Yと、前記各サンプルにおける前記N個の成分の未知の成分量を列ベクトルとする成分量行列Wと、の積に等しいとする式X=YWを使用し、前記成分量行列Wを構成する個々の列ベクトルをそれぞれ独立成分と見なして独立成分分析を実行することによって、前記成分量行列Wと前記成分固有スペクトル行列Yとを決定し;(2)前記独立成分分析によって決定された前記成分固有スペクトル行列Yの一般化逆行列Y†における前記N個の成分のそれぞれに対応する逆行列行ベクトルを、各成分に対応する前記成分検量用スペクトルとして採用するものとしてもよい。
この構成によれば、各成分に対応する成分検量用スペクトルを精度良く決定することが可能である。
3)上記検量装置において、前記処理(d)は、前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、前記S個の評価用スペクトルとの内積を実行することによってS個の内積値を求める処理と;前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、前記S個の第2サンプルにおける前記目的成分の成分量と前記S個の内積値との相関度を求め、前記相関度を各成分検量用スペクトルの前記評価値とする処理と;を含むものとしてもよい。
この構成によれば、高精度の検量に適した成分検量用スペクトルを選択する際の指標となる評価値を、適切に算出することができる。
4)上記検量装置において、前記処理(c)は、前記独立成分分析を実行することによって、前記N個の成分に由来するN個の成分固有スペクトルで構成される成分固有スペクトル行列と、前記成分固有スペクトル行列の一般化逆行列の行ベクトルであるN個の成分検量用スペクトルとを決定することにより、R×N個の成分固有スペクトルと前記R×N個の成分検量用スペクトルとを取得する処理を含むものとしてもよい。また、前記処理(d)は、前記目的成分に対応する参照スペクトルを取得する処理と;前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、各成分検量用スペクトルに対応する成分固有スペクトルと前記参照スペクトルとの類似度を求め、前記類似度を各成分検量用スペクトルの前記評価値とする処理と;を含むものとしてもよい。
この構成によれば、高精度の検量に適した成分検量用スペクトルを選択する際の指標となる評価値を、適切に算出することができる。
5)上記検量装置において、前記処理(c)は、前記独立成分分析を実行することによって、前記N個の成分に由来するN個の成分固有スペクトルで構成される成分固有スペクトル行列と、前記成分固有スペクトル行列の一般化逆行列の行ベクトルであるN個の成分検量用スペクトルとを決定することにより、R×N個の成分固有スペクトルと前記R×N個の成分検量用スペクトルとを取得する処理を含むものとしてもよい。また、前記処理(d)は、 前記目的成分に対応する参照スペクトルを取得する処理と;前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、前記S個の評価用スペクトルとの内積を実行することによってS個の内積値を求める処理と;前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、前記S個の第2サンプルにおける前記目的成分の成分量と前記S個の内積値との相関度を求める処理と;前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、各成分検量用スペクトルに対応する成分固有スペクトルと前記参照スペクトルとの類似度を求める処理と;前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、前記相関度と前記類似度との総合評価値を求め、前記総合評価値を各成分検量用スペクトルの前記評価値とする処理と、を含むものとしてもよい。
この構成によれば、高精度の検量に適した成分検量用スペクトルを選択する際の指標となる評価値を、適切に算出することができる。
6)本発明の第2の形態によれば、上述の第1の形態において検量用データ取得部が実行する検量線作成方法が提供される。
この検量方法によっても、第1の形態と同様に、目的成分検量用スペクトルを精度良く求めることが可能であり、検量を精度良く行うことが可能となる。
本発明は、上述した装置を含む電子機器や、上述した装置の各部の機能を実現するコンピュータープログラム、及び、コンピュータープログラムを格納する一時的でない記録媒体(non-transitory storage medium)等の形態等で実現することが可能である。
成分量を独立成分と見なす独立成分分析の概要を示す説明図。 独立成分分析を利用した検量線作成処理の概要を示す説明図。 目的成分の検量処理の概要を示す説明図。 一実施形態における検量装置の構成を示すブロック図。 検量処理の手順を示すフローチャート。 検量用データ取得処理のフローチャート。 図6のステップS210〜S230の内容を示す説明図。 図6のステップS230〜S270の内容を示す説明図。 部分集合の置換処理(ステップS270)の一例を示す説明図。 図6のステップS290〜S300の内容を示す説明図。 スペクトル評価値の算出処理の具体例1のフローチャート。 スペクトル評価値の算出処理の具体例1の内容を示す説明図。 スペクトル評価値の算出処理の具体例2のフローチャート。 スペクトル評価値の算出処理の具体例2の内容を示す説明図。 スペクトル評価値の算出処理の具体例3のフローチャート。
以下、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A. 成分量を独立成分と見なす独立成分分析の概要:
B. 検量線作成処理及び検量処理の概要:
C. 実施形態における検量装置の構成とその処理内容:
D. 検量用データ取得処理の内容:
E. スペクトル評価値の算出処理の具体例:
F. 変形例:
A. 成分量を独立成分と見なす独立成分分析の概要:
以下に説明する実施形態で使用する独立成分分析は、成分の成分量を独立成分と見なす点で、成分由来の測定データ(例えば光学スペクトル)を独立成分と見なす通常の独立成分分析とは考え方に大きな相違点がある。そこで、まず、通常の独立成分分析と、成分量を独立成分と見なす独立成分分析との相違点について以下に説明する。以下では説明の便宜上、被検体(「サンプル」とも呼ぶ)の光学スペクトルを測定データとして使用する場合について説明するが、成分量を独立成分と見なす独立成分分析は、音声信号や画像などの他の種類の信号やデータにも適用可能である。
通常の独立成分分析では、例えば、複数のサンプルの分光測定で得られる光学スペクトルx1(λ),x2(λ),x3(λ)を、各サンプルに含有されている複数の成分に由来する成分固有スペクトルs1(λ),s2(λ),s3(λ)の線形結合として以下の(1)式のように表現する。
Figure 2018132463
ここで、a11,a12…,a33は各成分の成分量を示す重み係数である。なお、ここでは、説明の便宜上、光学スペクトルのサンプル数と成分の数をいずれも3とする。
上記(1)式を行列で表記すると、次の(2)式となる。
Figure 2018132463
通常の独立成分分析では、上記(2)式を用い、複数の成分に由来する未知の成分固有スペクトルs1(λ),s2(λ),s3(λ)を互いに独立な成分と見なして独立成分分析を実行する。このとき、独立成分分析を十分正確に行うためには、複数の成分固有スペクトルs1(λ),s2(λ),s3(λ)が、互いに統計的に独立である、という条件が成立していることが必要とされる。
ところが、測定データの性質によっては、正確な独立成分分析を行うための上記の条件が成立しない場合がある。この際、複数の成分に由来する光学スペクトルは、「互いに統計的に独立である」という条件を満たさないことがある。このような場合には、上述した(2)式を用いて通常の独立成分分析を行っても、成分固有スペクトルs1(λ),s2(λ),s3(λ)や成分量行列Aを正確に推定できない可能性がある。
本発明の発明者は、上述した通常の独立成分分析の代わりに、成分量を独立成分と見なす独立成分分析を採用することによって、成分固有スペクトルs1(λ),s2(λ),s3(λ)や成分量行列Aを正確に推定又は決定できることを見出した。
成分量を独立成分と見なす独立成分分析では、上記(2)式の代わりに下記の式を使用する。
Figure 2018132463
なお、行列符号に付された上付き文字「T」は、転置行列であることを意味する。この(3)式は、上記(2)式の両辺をそれぞれ転置したものに相当する。
成分量を独立成分と見なす独立成分分析では、上記(3)式において、成分量行列Aの列ベクトル[a111213,[a212223,[a313233をそれぞれ独立成分と見なして、独立成分分析を実行する。これらの列ベクトルは、各サンプルにおける複数の成分の成分量を表している。
成分量を独立成分と見なす独立成分分析は、以下のような考察により採用された分析方法である。上述したように、複数の成分に由来する成分固有スペクトルは、互いに統計的に独立であるという条件を満たさない場合がある。しかし、複数の成分に由来する成分固有スペクトルが統計的に独立で無いとしても、それらの複数の成分の成分量(例えば濃度)が、互いに無関係であり、統計的に独立である、という条件が成り立つならば、各サンプルにおける複数の成分の成分量(すなわち、上記(3)式の成分量行列Aを構成する個々の列ベクトル)を独立成分と見なして独立成分分析を行えば、成分量行列Aを正確に推定又は決定することができる。これと同時に、成分固有スペクトルs1(λ),s2(λ),s3(λ)も正確に推定又は決定することが可能である。
上記(3)式を一般化すると、次の(4)式となる。
Figure 2018132463
ここで、Kはスペクトルの波長λの測定点数、Mはサンプルの数、Nは成分の数、である。成分量amn(m=1〜M,n=1〜N)は、m番目のサンプルにおけるn番目の成分の成分量(例えば濃度)である。
上記(4)式のように転置符号付きの行列X,S,Aを使用するのは不便なので、X=X,Y=S,y(λ)=s(λ),W=A,wmn=amnとおいて、上記(4)式を次の(5)式に書き換え、成分量を独立成分と見なす独立成分分析において使用する。
<成分量を独立成分と見なす独立成分分析で使用する式>
Figure 2018132463
ここで、x(λ)はm番目のサンプルにおける波長λでの分光強度、y(λ)はn番目の成分に由来する波長λでの分光強度、wmnはm番目のサンプルにおけるn番目の成分の成分量である。また、Kはスペクトルの波長λの測定点数、Mはサンプルの数、Nは成分の数である。K,Mはいずれも2以上の整数である。Nは1以上の整数であるが、2以上の整数としてもよい。
上記(5)式は、各サンプルの分光測定で得られた光学スペクトルを列ベクトル[xm(λ1) … xm(λK)]とする光学スペクトル行列Xを、複数の成分の各成分に由来する未知の成分固有スペクトルを列ベクトル[yn(λ1) … yn(λK)]とする成分固有スペクトル行列Yと、各サンプルにおける複数の成分の成分量を表す未知の成分量を列ベクトル[wm1 … wmNとする成分量行列Wとの積に等しいとする式に相当する。
図1は、成分量を独立成分と見なす独立成分分析の概要を示す説明図である。この図では、グルコースやアルブミンを含む水溶液をサンプルとし、複数のサンプルの分光測定で得られた光学スペクトルを独立成分分析の対象とする場合の例を示している。測定スペクトルXdは、分光測定で得られたスペクトルであり、例えば、吸光度スペクトルや拡散反射スペクトルを測定スペクトルXdとして使用可能である。実際の複数の測定スペクトルXdは、極めて近似した曲線を示すが、図1では図示の便宜上、複数の測定スペクトルXdの差異を誇張して描いている。なお、複数のサンプルの測定スペクトルXdは、互いに近似した値を有しているので、そのまま使用した場合には、独立成分分析で得られる結果の精度が十分に高くならない可能性がある。例えば、溶質(含有成分)の濃度に依存して、測定スペクトルに対する溶媒の影響が変化し、独立成分分析の精度が悪化する可能性がある。そこで、前処理として、複数の測定スペクトルXdの平均スペクトルXaveを個々の測定スペクトルXdから減算する差分演算を実行し、その差分スペクトルXを求めている。こうすれば、溶質(含有成分)の濃度に依存して測定スペクトルに対する溶媒の影響が変化する場合にも、前処理によってその影響を除去することができ、独立成分分析の精度を高めることができる。この差分スペクトルXは、上記(5)式における光学スペクトルXとして使用される。この差分スペクトルXを対象として独立成分分析を実行すれば、独立成分分析の精度を向上させることが可能である。なお、拡散反射スペクトルを測定スペクトルXdとして使用する場合には、前処理においてクベルカ−ムンク変換を行うことが好ましい。但し、前処理は省略しても良い。
図1の下部には、上記(5)式に従って、光学スペクトルXを、未知の成分固有スペクトルyn(λ)と、未知の成分量wmnの積で表現する様子が示されている。
独立成分分析では、上記(5)式における成分量行列Wの個々の列ベクトル[wm1 … wmNをそれぞれ独立成分と見なして独立成分分析を実行することによって成分量行列Wを決定し、これに応じて成分固有スペクトル行列Yも同時に決定される。なお、独立成分分析の方法自体は、通常の独立成分分析方法を利用することができる。例えば本願の出願人により開示された特開2013−160574号公報や特開2016−65803号公報に開示された独立成分分析方法を利用してもよく、或いは、他の独立成分分析方法を利用してもよい。
上記(5)式における成分固有スペクトル行列Yが決定されると、新たなサンプルにおける複数の成分の成分量w*は、新たなサンプルの分光測定で得られた光学スペクトルx*に、独立成分分析で得られた成分固有スペクトル行列Yの一般化逆行列Yを積算することによって求めることができる。具体的には、以下の(6)式を用いて、新たなサンプルの成分の成分量w*を求めることができる。
Figure 2018132463
ここで、w*=[w * … w *は新たなサンプルに含まれるN個の成分の成分量、Yは独立成分分析で得られた成分固有スペクトル行列Yの一般化逆行列、y(λkは一般化逆行列Yにおけるn行目の行ベクトルのk番目の要素、x*=[x*(λ) … x*(λ)]は新たなサンプルの分光測定で得られた光学スペクトルである。なお、上記(6)式は、上記(5)式の両辺の左側に、成分固有スペクトル行列Yの一般化逆行列Yを乗じることによって導くことができる。
新たなサンプルの任意のn番目の成分の成分量w *の値は、上記(6)式から導かれる次の(7)式で与えられることが分かる。
Figure 2018132463
ここで、y は成分固有スペクトル行列Yの一般化逆行列Yにおけるn行目の行ベクトルである。なお、この行ベクトルy を「逆行列行ベクトルy 」又は「成分検量用スペクトルy 」と呼ぶ。また、成分固有スペクトル行列Yの一般化逆行列Yを「成分検量用スペクトル行列Y」と呼ぶ。このように、n番目の成分の成分量w *は、独立成分分析で得られた成分固有スペクトル行列Yからその一般化逆行列Yを求め、一般化逆行列Yにおけるn番目の成分に対応する逆行列行ベクトルy (すなわちn番目の成分検量用スペクトルy )と、新たなサンプルの光学スペクトルx*との内積を取ることによって求めることが可能である。但し、独立成分分析で得られる成分固有スペクトル行列Yは、その要素の値自体には意味は無く、その波形が真の成分固有スペクトルに比例するという性質を有する。従って、上記(7)式の内積で得られる成分量w *も、実際の成分量に比例する値である。実際の成分量は、上記(7)式の内積で得られた内積値w *を検量線(後述)に適用することによって求めることが可能である。
以上のように、成分量を独立成分と見なす独立成分分析によれば、複数の成分に由来する成分固有スペクトルが統計的に独立で無い場合にも、成分量行列Wと成分固有スペクトル行列Y(及びその一般化逆行列である成分検量用スペクトル行列Y)を正確に推定又は決定することが可能である。
B. 検量線作成処理及び検量処理の概要:
図2は、成分量を独立成分と見なす独立成分分析(ICA)を利用した検量線作成処理の概要を示す説明図である。図2の左上部には、複数のサンプルの分光測定で得られた測定スペクトルMSの一例が示されている。この測定スペクトルMSは、図1の測定スペクトルXdに対応しており、複数の成分(例えばグルコースとアルブミン)を含むサンプルの分光測定によって得ることができる。通常の検量線作成処理では、複数のサンプルとして、目的成分(例えばグルコース)の成分量(例えば濃度)が既知である既知サンプルを使用する。但し、後述する実施形態では、独立成分分析の対象となる光学スペクトルを取得するための複数のサンプルとして、目的成分の成分量が未知であるサンプル(第1サンプル)を使用できる点で、通常の検量線作成処理と異なる。
検量線の作成の際には、まず、測定スペクトルMSに前処理を行うことによって、前処理後の光学スペクトルOS(図1における前処理後の光学スペクトルX)を作成する。前処理としては、例えば、測定スペクトルMSの正規化を含む前処理を行う。前処理では、正規化に加えて、図1で説明した差分演算を実行することが好ましい。また、前処理において、測定スペクトルMSにおけるベースライン変動を取り除くために、零空間射影法(PNS)を実行してもよい。但し、当初の測定スペクトルMSが、前処理が不要な特性を有する場合(例えば、正規化により測定スペクトルMSに変化が生じない場合)には、前処理は省略可能であり、測定スペクトルMSをそのまま光学スペクトルOSとして使用しても良い。
次に、複数の光学スペクトルOSに対して、成分量を独立成分と見なす独立成分分析を実行することによって、複数の成分検量用スペクトルCS〜CSを求める。なお、括弧内は成分の番号を示している。これらの成分検量用スペクトルCS〜CSは、上述した成分検量用スペクトルy に相当する。
図2の下部は、こうして得られた成分検量用スペクトルCS〜CSを用いて検量線を作成する方法を示している。ここではまず、目的成分の成分量が既知である複数の既知サンプル(第2サンプル)に関する光学スペクトルEDSを取得する。これらの光学スペクトルEDSは、既知サンプルの分光測定で得られた測定スペクトルに対して、必要に応じて上述した前処理を行ったものである。これらの光学スペクトルEDSを「評価用スペクトルEDS」と呼ぶ。次に、個々の評価用スペクトルEDSと、成分検量用スペクトルCSとの内積値を計算する。この内積値の計算は、評価用スペクトルEDSと成分検量用スペクトルCSとをそれぞれ1つのベクトルと見なして、それらの2つのベクトルの内積を取る演算であり、その結果として1つの内積値が得られる。従って、複数の評価用スペクトルEDSに対して同一の成分検量用スペクトルCSとの内積を計算すると、同じ成分検量用スペクトルCSに関して複数の既知サンプルに対応する複数の内積値が得られる。図2の右下部には、複数の既知サンプルに関する内積値Pを横軸にとり、複数の既知サンプルに含有される目的成分の既知の成分量Cを縦軸に取ってプロットした図である。仮に、内積で使用したn番目の成分検量用スペクトルCSが目的成分に対応するスペクトルである場合には、図2の例に示すように、内積値Pと、各既知サンプルの目的成分の成分量Cとが強い相関を有する。そこで、独立成分分析で得られた複数の成分検量用スペクトルCS〜CSのうちで、例えば、最も強い相関(最も大きな相関度)を示す成分検量用スペクトルCSを、目的成分に対応する目的成分検量用スペクトルとして選択することができる。なお、この選択のための評価値としては、相関度以外の評価値を使用することも可能である。図2の例では、1番目の成分検量用スペクトルCSが、目的成分(例えばグルコース)に対応する目的成分検量用スペクトルである。検量線CCは、内積値Pと成分量Cのプロットの単回帰式C=uP+vで与えられる直線として表される。
図3は、検量線を用いた目的成分の検量処理の概要を示す説明図である。検量処理では、図2に示した検量線作成処理で得られた目的成分検量用スペクトルCSと、検量線CCとを利用して行われる。検量処理では、まず、目的成分の成分量が未知である被検体の測定スペクトルTMSを取得する。次に、この測定スペクトルTMSに、必要に応じて前処理を行うことによって前処理後の光学スペクトルTOSを作成する。この前処理は、検量線の作成時に使用した前処理と同じ処理である。なお、検量線の作成時の前処理において、図1で説明した差分演算を行っている場合には、検量線作成時に使用した平均スペクトルXaveを光学スペクトルTOSから減算するようにしてもよい。そして、こうして得られた光学スペクトルTOSと、目的成分検量用スペクトルCSとの内積を取ることによって、光学スペクトルTOSに関する内積値Pを算出する。この内積値Pを検量線CCに適用すれば、被検体に含有される目的成分の成分量Cを決定することが可能である。
C. 実施形態における検量装置の構成とその処理内容:
図4は、一実施形態における検量装置100の構成を示すブロック図である。この検量装置100は、検量用データ取得部110と、光学スペクトル取得部120と、内積値算出部130と、成分量算出部140と、表示部150と、を備えている。また、検量装置100には、測定データを取得するための測定器200が接続されている。この測定器200は、例えば、サンプルの光学スペクトルを測定する分光測定器である。なお、測定器200としては、分光測定器に限らず、目的成分の性質に適した種々の測定器を利用可能である。
なお、検量装置100は、例えば、検量専用の電子機器として実現可能であり、また、汎用のコンピューターによっても実現可能である。更に、検量装置100の各部110〜150の機能は、コンピュータープログラム又はハードウェア回路によって任意に実現可能である。
図5は、検量装置100による検量処理の手順を示すフローチャートである。ステップS110では、検量用データ取得部110(図4)が、目的成分検量用スペクトル(図2の例ではCS)と検量線CCとを含む検量用データを取得する。本実施形態における検量用データ取得処理の詳細については、改めて詳述する。
ステップS120では、光学スペクトル取得部120が、測定器200を用いて被検体の光学スペクトルTOS(図3)を取得する。図3で説明したように、この光学スペクトルTOSは、分光測定で得られた測定スペクトルに、必要に応じて前処理が実行されたものである。従って、光学スペクトル取得部120は、この前処理を実行する機能を有することが好ましい。ステップS130では、内積値算出部130が、光学スペクトルTOSと目的成分検量用スペクトルCSの内積値P(図3)を算出する。ステップS140では、成分量算出部140が、検量線CCを用いて、ステップS130で得られた内積値Pに対応する成分量Cを算出する。この成分量Cは、被検体における目的成分の成分量(例えばグルコース濃度)である。ステップS150では、表示部150にこの成分量Cが表示される。なお、成分量Cを表示する代わりに、他の電子機器にこの成分量Cを転送して、他の所望の処理(例えば、被検体本人に対する電子メールによる通知)を実行するようにしてもよい。
D. 検量用データ取得処理の内容:
図6は、本実施形態における検量用データ取得処理のフローチャートであり、図5のステップS110の詳細工程を示している。図7〜図10は、図6の処理の内容を示す説明図である。
ステップS210では、目的成分(例えばグルコース)を含む複数の成分を含有するQ個(Qは3以上の整数)の第1サンプルを測定してQ個の光学スペクトルOSの集合(図7)を取得し、更に、目的成分の成分量が既知であるS個(Sは3以上の整数)の第2サンプルを測定してS個の評価用データED(図7)を取得する。Q個の光学スペクトルOSの集合は、独立成分分析を行って成分検量用スペクトルを決定するための学習用のサンプルデータである。評価用データEDは、S個のサンプルに対する光学スペクトルである評価用スペクトルEDSと、各サンプルにおける目的成分の既知の成分量と、を含んでいる。Q個の第1サンプルは、目的成分の成分量が既知であってもよいが、目的成分の成分量が未知であるサンプルを使用可能である。この理由は、本実施形態における検量用データ取得処理では、Q個の第1サンプルにおける目的成分の成分量を使用しないからである。なお、第1サンプルの数Qは、3以上の任意の整数であれば良いが、Qが100以上の大きな値である場合に図6の処理による効果が大きい。この理由は、第1サンプルの数Qが大きくなると、成分量分布がガウス分布に近くなるので、成分量を独立成分と見なす独立成分分析を精度良く実行するのが難しくなり、後述する部分集合を作成する意義が顕著になるからである。この理由ついて、以下で補足して説明する。
上述した成分量を独立成分とした独立成分分析を精度良く実行するには、学習用の多数のサンプルデータ(光学スペクトル)が必要であり、そのサンプルデータ集合は以下の条件を満たすことが望まれる。
<条件C1>
複数の光学スペクトルは、特定の目的成分のほかに、被検体の実測時に存在しうる各種の成分が混合したサンプルを測定したデータとなっていること
<条件C2>
目的成分を含む複数の成分の成分量分布が、非ガウス分布に従い、互いに統計的独立となっていること
上記の条件C1に関しては、多様な測定条件下での測定を行うことにより満たすことができると考えられる。しかし、条件C2については、無作為に用意したサンプルデータの集合において満たされている保証はない。特に、多数の異なるサンプルから集めたデータについては、成分量分布が正規分布(ガウス分布)に近くなる可能性がある。一方、サンプルの集合全体ではなく、その部分集合であれば、正規分布から外れた成分量分布が得られると期待される。そこで、本実施形態では、後述するステップS220において、用意した全サンプルの光学スペクトルOSの集合から部分集合を抽出することによって、成分量を独立成分と見なす独立成分分析の精度を向上させている。
なお、成分量が既知である第2サンプルの数Sは、3以上の任意の整数であれば良く、Sが大きいほど検量精度が向上する点で好ましい。また、通常は、第2サンプルの数Sは、第1サンプルの数Qよりも少ない。なお、第2サンプルの一部又は全部を、第1サンプルの一部として使用してもよい。
ステップS220では、Q個の光学スペクトルOSの集合からR個(Rは2以上の整数)の部分集合PA〜PA(図7)を抽出する。なお、R個の部分集合PA〜PAは、それぞれM個(Mは2以上Q未満の整数)の光学スペクトルOSを含むように抽出される。各部分集合PA(r=1〜R)を構成する光学スペクトルOSの数Mは、ステップS230で実行する独立成分分析で求める成分検量用スペクトルの数以上の値に設定される。なお、各部分集合PA(r=1〜R)を構成する光学スペクトルOSの数Mは、互いに異なる値としてもよく、互いに等しい値としてもよい。部分集合PA〜PAの抽出は、乱数等を用いてランダムに行うことが好ましい。なお、各部分集合PA(r=1〜R)の抽出の際には、同じ部分集合PA内に同じ光学スペクトルが2回以上抽出されないように非復元抽出が使用される。Q個の光学スペクトルOSの集合からM個の異なる光学スペクトルを選択する組み合わせの数は、に等しい。部分集合PAの数Rは、この組み合わせの数以下で、かつ、2以上の任意の整数に設定することが可能である。このように、ステップS210で用意したQ個の光学スペクトルOSの集合からR個の部分集合PA〜PAを抽出すれば、上記条件C2を満たす部分集合PAが1つ以上生成されることが期待される。
ステップS230では、R個の部分集合PA〜PAのそれぞれに対して、上述した成分量を独立成分と見なす独立成分分析を行うことによって、個々の部分集合PA(r=1〜R)についてN個(Nは1以上の整数)の成分検量用スペクトルCSr1〜CSrNをそれぞれ求める(図7)。この結果、合計でR×N個の成分検量用スペクトルCSrn(r=1〜R,n=1〜N)を取得することができる。なお、成分数Nは、実際の含有成分の数と一致している必要は無く、独立成分分析の精度が向上するように経験的又は実験的に決定される。Nの値は、1以上の整数に設定することが可能であるが、2以上の整数としてもよい。
このステップS230からステップS280までの処理は、ステップS290において目的成分に対応する最適な目的成分検量用スペクトルを選択するために、部分集合を更新する処理である。ステップS240では、ステップS230で得られた各成分検量用スペクトルCSrnに関して、各成分検量用スペクトルCSrn(=yrn )又はそれに対応する成分固有スペクトル(yrn)を変数とする関数を用いた演算を実行することによって、各成分検量用スペクトルCSの評価値EVrnを算出する(図8)。この評価値EVrnを「スペクトル評価値EVrn」と呼ぶ。
このスペクトル評価値EVrnとしては、例えば、図2で説明した内積値Pと成分量Cとの間の相関を示す相関度を使用することができる。この内積値Pは、S個の評価用スペクトルEDSと各成分検量用スペクトルCSrnの内積を計算することによって得られる。また、成分量Cは、S個の第2サンプルにおける目的成分の既知の成分量Cである。内積値Pと成分量Cの相関度としては、例えば相関係数を使用可能である。この相関度をスペクトル評価値EVrnとして使用する場合には、内積値Pを求める際に、内積演算の関数f(CSrn)を用いた次の演算式が使用される。
Figure 2018132463
この関数f(CSrn)は、成分検量用スペクトルCSrnを変数とする関数の一種である。なお、スペクトル評価値EVrnとしての相関度の演算には、上記(8)式の演算式の他に、更に、内積値Pと成分量Cとの相関度を求める演算式も使用される。
スペクトル評価値EVrnとしては、相関度以外の他の評価値を使用することも可能である。例えば、目的成分に対応する参照スペクトル(標準的なスペクトル)を予め準備しておき、その参照スペクトルと各成分固有スペクトルyrnとの類似度を、スペクトル評価値EVrnとして使用することも可能である。
また、スペクトル評価値EVrnとして、上述した相関度(又は類似度)と他の指標値とを総合した総合的な評価値を使用してもよい。例えば、相関度と他の指標値とを総合した総合的なスペクトル評価値EVrnを使用する場合には、相関度が大きくなるほどスペクトル評価値EVrnも高くなるような演算式を用いてスペクトル評価値EVrnを算出することが好ましい。
上述したスペクトル評価値EVrnの各種の演算の例からも理解できるように、本明細書において「各成分検量用スペクトルCSrn(又は成分固有スペクトルyrn)を変数とする関数を用いた演算」とは、その関数を1回用いてスペクトル評価値EVrnを直接算出する場合に限らず、その関数を用いた計算結果に基づいて更に他の演算を行うことによってスペクトル評価値EVrnを算出する場合も含む広い意味を有している。スペクトル評価値EVrnの算出方法の具体例については更に後述する。
ステップS250では、ステップS230での独立成分分析の対象となったR個の部分集合PA(r=1〜R)のそれぞれに関して、各部分集合PAに含まれるN個の成分検量用スペクトルCSrn(n=1〜N)のスペクトル評価値EVrnを総合した部分集合評価値PEVを求める(図8)。部分総合評価値PEVは、スペクトル評価値EVrnが高くなるほど部分集合評価値PEVも高くなるような関数や演算式を用いることが好ましい。例えば、N個のスペクトル評価値EVrn(n=1〜N)のうちで最も高い値を、部分集合評価値PEVとして採用してもよい。このとき用いる関数は、最も高い値を選択する論理式である。或いは、スペクトル評価値EVrnの単純加算や2乗和などのような他の関数や演算式を利用して部分集合評価値PEVを算出してもよい。
ステップS260では、R個の部分集合PA(r=1〜R)の中から、部分集合評価値PEVに基づく予め定められた選択規則に従って、B個の部分集合PA (b=1〜B)を選択する(図8)。ここで、Bは、1以上R未満の整数である。部分集合の符号「PA 」の右肩に付された文字「」は、R個の部分集合PAの中から選択された部分集合であることを意味する。
B個の部分集合PA を選択する選択規則としては、以下のような規則のいずれかを使用可能である。
(1)R個の部分集合PA(r=1〜R)の中から、部分集合評価値PEVの高い順にB個を選択する。
(2)各部分集合PAの選択確率がその部分集合評価値PEVに対して正の相関を有するように選択確率を設定し、この選択確率を用いてR個の部分集合PA(r=1〜R)の中からB個を選択する。
これらの選択規則は単なる例示であり、部分集合評価値PEVに基づく他の種々の選択規則を採用可能である。
ステップS270では、B個の部分集合PA (b=1〜B)のそれぞれについて、各部分集合PA に含まれる1つ以上の光学スペクトルを、Q個の光学スペクトルOS(図7)のうちの他の光学スペクトルに置き換えることによって、各部分集合PA とは異なる部分集合PAを作成する置換処理を実行する(図8)。ここで、部分集合PAを作成する処理としては、各部分集合PA に含まれる1つ以上の光学スペクトルを、Q個の光学スペクトルOS(図7)のうちの他の光学スペクトルに置き換えずに、B個の部分集合PA (b=1〜B)の中で、部分集合評価値PEVの高い順にC個(Cは1以上B未満の整数)の部分集合PA (d=1〜C)を、そのまま更新後の部分集合PA=PA とするものを含んでも良い。この置換処理では、B個の部分集合PA から、更新されたR個の部分集合PA(r=1〜R)が作成される。なお、更新された部分集合を示す符号「PA」の左肩に付された文字「」は、ステップS220で最初に得られた部分集合PAとは異なる部分集合であることを意味する。
図9は、部分集合の置換処理(ステップS270)の一例を示す説明図である。ここでは、ステップS220で作成された元の部分集合PAと、ステップS270で得られた更新後の部分集合PAの例を示している。各部分集合を示す矩形枠の中で、括弧内に記載された「M」の文字は、部分集合の要素(すなわち、光学スペクトル)を意味している。要素Mの文字「j」は、Q個の光学スペクトルを識別するための序数である。例えば、ステップS220で作成された1番目の部分集合PAは、5つの要素M11,M13,M25,M31,M44で構成されている。また、2番目の部分集合PAは、5つの要素M11,M14,M24,M33,M49で構成されている。図9の例では、ステップS260において、これらの元の部分集合PAの中から、2番目の部分集合PAが上述したB個(B=1)の部分集合PA として選択され、この部分集合PA に置換処理を実行することによって、更新後の部分集合PAが作成されている。例えば、更新後の1番目の部分集合PAは、ステップS260で選択された部分集合PAの中の1番目と3番目の要素M11,M24を、別の要素M07,M51に置換することによって作成されている。また、更新後の2番目の部分集合PAは、ステップS260で選択された部分集合PAの中の2番目と4番目の要素M14,M33を、別の要素M22,M12に置換することによって作成されている。
なお、部分集合PA の中のどの要素を置換するかを選択する第1の選択処理、及び、元のQ個の要素(光学スペクトル)の中から新たな要素を選択する第2の選択処理は、それぞれ予め定めた規則に従って実行することが好ましい。例えば、第1の選択処理と第2の選択処理を、それぞれランダムに行ってもよい。また、第1の選択処理において、置換する要素の数を予め設定しておいても良い。他の置換処理方法として、例えば、選択する部分集合PA の数Bを2以上に設定しておき、選択した部分集合PA の一部の要素同士を交換する方法を採用してもよい。なお、Bを2以上に設定した場合には、選択した個々の部分集合PA から作成される更新後の部分集合PAの個数については、個々の部分集合PA 毎に異なる個数に設定しても良く、互いに同じ個数に設定してもよい。後者の場合には、ステップS260での選択数Bは、ステップS270での更新後の個数Rの整数分の1に設定される。
図6のステップS280では、予め定めた終了条件が満たされたか否かが判定される。終了条件が満たされた場合には後述するステップS290に移行し、終了条件が満たされていない場合には、ステップS230に戻り、上述したステップS230〜S270を再度実行する。すなわち、予め定めた終了条件が満たされるまで、ステップS230〜S270が繰り返される。
ステップS280における終了条件としては、例えば以下のような条件のいずれかを使用可能である。
<終了条件1>ステップS230〜S270の実行回数が予め設定した複数回に達した。
<終了条件2>ステップS230〜S240の実行回数が予め設定した複数回に達した。
<終了条件3>スペクトル評価値EVrnの最高値が予め定めた閾値以上になった。
この終了条件3では、ステップS230〜S270の繰り返し回数が1となる(すなわち、ステップS230〜S270が1回のみ実行される)可能性がある。
なお、ステップS280における終了判定を、ステップS270の後で行う代わりに、ステップS230〜S270の間のいずれかのタイミングで行うようにしてもよい。例えば、上記終了条件2又は終了条件3を使用する場合に、ステップS240とステップS250の間で終了判定を行っても良い。この場合には、終了条件が満たされたときには、その後のステップS250〜S270の処理を行うこと無く、後述するステップS290に移行することが好ましい。この場合にも、実質的に「予め定めた終了条件が満たされるまでステップS230〜S270の処理を繰り返す」という処理を行っているものと考えることが可能であり、図6の処理フローと実質的に同一の処理である。
ステップS290では、上述した終了条件が満たされるまでにステップS240で処理対象となった複数の成分検量用スペクトルCSrnのうちで、スペクトル評価値EVrnが最高となる1つの成分検量用スペクトルCSrnを、目的成分に対応する目的成分検量用スペクトルとして選択する。
図10は、ステップS290〜S300の処理内容を示している。図10の左側は、ステップS230〜S270の処理が(j+1)回繰り返されることによって、(j+1)組の成分検量用スペクトルCSrn+jCSrn(r=1〜R,n=1〜N)が作成され、また、これらの成分検量用スペクトルに対してスペクトル評価値EVrn+jEVrnが得られている状況が描かれている。ステップS290では、これらの中から、スペクトル評価値が最高となる1つの成分検量用スペクトルCSbestを目的成分検量用スペクトルとして選択する。
ステップS300では、こうして選択された目的成分検量用スペクトルCSbestを用いて、S個の評価用スペクトルEDSと目的成分検量用スペクトルCSbestとの内積で得られるS個の内積値Pと、S個の第2サンプルにおける目的成分の既知の成分量Cとの関係を示す単回帰式C=uP+v(図2参照)を検量線として作成する。なお、目的成分検量用スペクトルCSbestに関するS個の内積値Pが、ステップS240で既に求められている場合には、ステップS300でこれらのS個の内積値Pをそのまま利用可能である。
以上のように、本実施形態では、各サンプルにおけるN個の成分の成分量を独立成分とする独立成分分析を実行するので、複数の成分に由来する光学スペクトルが互いに独立でない場合にも、独立成分分析を精度良く行い、目的成分の検量を精度良く行うことが可能である。本実施形態では、更に、Q個の光学スペクトルOSの集合から複数の部分集合PAを抽出し、各部分集合PAのそれぞれに対して成分量を独立成分と見なす独立成分分析を実行している。こうすれば、Q個の光学スペクトルOSの集合全体における成分量分布がガウス的であるなどの独立性の不足がある場合にも、幾つかの部分集合PAでは成分量分布がより非ガウス的になって独立性が改善されるので、目的成分検量用スペクトルを精度良く求めることが可能である。また、図6のステップS230〜S270の処理を繰り返して部分集合PAの更新を行うので、評価値の高い部分集合や成分検量用スペクトルを効率的に得ることができる。
E. スペクトル評価値の算出処理の具体例:
図11は、スペクトル評価値の算出処理(図6のステップS240)の具体例1を示すフローチャートであり、図12はその内容を示す説明図である。
ステップS411では、R個の部分集合PA(r=1〜R)に含まれるR×N個の成分検量用スペクトルCSrn(n=1〜N)のそれぞれに関して、S個の評価用スペクトルEDSとの内積を実行することによってS個の内積値Pを求める(図12)。すなわち、1つの成分検量用スペクトルCSrnに対して、S個の内積値Pがそれぞれ算出される。
ステップS412では、R×N個の成分検量用スペクトルCSrnのそれぞれに関して、S個の第2サンプルにおける目的成分の既知の成分量Cと、その成分検量用スペクトルCSrnについて算出されたS個の内積値Pとの相関度CDrnを求める。図12には、個々の成分検量用スペクトルCSrnに関して、内積値Pと目的成分の成分量Cとの関係をプロットしたグラフが描かれている。相関度CDrnとしては、例えば相関係数を使用可能である。この相関度CDrnは、各成分検量用スペクトルCSrnのスペクトル評価値EVrnとして使用される。この算出処理によれば、高精度の検量に適した成分検量用スペクトルを選択する際の指標となるスペクトル評価値EVrnを、適切に算出することができる。
図13は、スペクトル評価値の算出処理(図6のステップS240)の具体例2を示すフローチャートであり、図14はその内容を示す説明図である。
ステップS421では、目的成分の参照スペクトルRFS(図14)を取得する。目的成分の参照スペクトルRFSは、目的成分(例えばグルコース)に由来すると見なすことができる分光スペクトルであり、図1及び図2で説明した成分固有スペクトルyに対応するものである。参照スペクトルRFSは、種々の方法で取得することが可能であり、例えば以下の方法で取得できる。
<参照スペクトルの取得方法1>
目的成分以外の成分の濃度を一定とし、目的成分の濃度を複数の値に変更した複数の第3サンプル(例えば水溶液)を作成し、それらの複数の第3サンプルの分光測定を行って複数の光学スペクトルを取得し、これらの複数の光学スペクトルに対して主成分分析(PCA)を実行して目的成分の参照スペクトルRFSを取得する。この方法1では、目的成分の成分濃度のみを変更した複数のサンプルを用いるので、主成分分析を行うことによって、目的成分に由来すると見なすことが可能な参照スペクトルRFSを得ることができる。なお、参照スペクトルRFSを求めるための複数の第3サンプルの一部又は全部として、評価用データED(図7)を取得するためのS個(Sは3以上の整数)の第2サンプルの一部又は全部を利用してもよい。
<参照スペクトルの取得方法2>
被検体が人体であり、目的成分が血中成分(例えばグルコース)である場合に、目的成分の成分量(濃度)を変化させた複数の人体ファントム(模擬人体)を作成する。そして、複数の人体ファントムを分光測定して光学スペクトルを取得し、それらの光学スペクトルの変化を目的成分の参照スペクトルRFSとして取得する。
<参照スペクトルの取得方法3>
被検体が人体であり、目的成分が血中成分(例えばグルコース)である場合に、目的成分の成分量(濃度)を変化させた複数の擬似血液を作成する。そして、複数の擬似血液を分光測定して光学スペクトルを取得し、それらの光学スペクトルの変化を目的成分の参照スペクトルRFSとして取得する。
<参照スペクトルの取得方法4>
被検体が人体であり、目的成分が血中成分(例えばグルコース)である場合に、目的成分の水溶液を作成して被験者に摂取してもらう。そして、摂取前後の被験者をそれぞれ分光測定して光学スペクトルを取得し、それらの光学スペクトルの差分を目的成分の参照スペクトルRFSとして取得する。
なお、目的成分の参照スペクトルRFSをそのまま目的成分検量用スペクトルとして使用しない理由は、目的成分検量用スペクトルが、目的成分の検量の対象となる被検体の組成に依存して変わる可能性があるからである。具体的には、例えば、グルコースを含む水溶液を被検体としてそのグルコース濃度を検量するのに適したグルコース検量用スペクトルと、ヒトを被検体として血中のグルコース濃度を検量するのに適したグルコース検量用スペクトルとは、波形が異なる可能性が高い。そこで、図13の処理では、検量の対象とする被検体と同様の組成を有する複数の第1サンプルに対する分光測定(図6のステップS210)で得られた光学スペクトルに対して独立成分分析(図6のステップS230)を実行し、独立成分分析で得られた複数の成分検量用スペクトルに対応する成分固有スペクトルと参照スペクトルRFSとの類似度を、スペクトル評価値として使用する。こうすることによって、複数の成分検量用スペクトルの中で、目的成分に対応するものとして最も相応しいスペクトルを目的成分検量用スペクトルとして選択することが可能となる。
ステップS422では、図6のステップS230の独立成分分析で得られた成分検量用スペクトルCSrnに対応する成分固有スペクトルyrnを取得する(図14)。なお、図1及び(5)〜(7)式で説明したように、成分固有スペクトルyrnは、独立成分分析によって直接求められる成分固有スペクトル行列の行ベクトルであり、成分検量用スペクトル行列は、成分固有スペクトル行列の一般化逆行列として求められる。ステップS422の処理は、独立成分分析を改めて行う処理では無く、図6のステップS230で求められていた成分固有スペクトルyrnを、メモリー(図示せず)から取得する処理である。
ステップS423では、R×N個の成分検量用スペクトルCSrnのそれぞれに関して、対応する成分固有スペクトルyrnと目的成分の参照スペクトルRFSとの類似度LKrnを算出する(図14)。この類似度LKrnは、各成分検量用スペクトルCSrnのスペクトル評価値EVrnとして使用される。
類似度LKrnは種々の方法で算出可能であり、例えば以下のような値を類似度LKrnとして使用できる。
(1)成分固有スペクトルyrnと目的成分の参照スペクトルRFSの相関係数
(2)成分固有スペクトルyrnと目的成分の参照スペクトルRFSの内積
(3)成分固有スペクトルyrnと目的成分の参照スペクトルRFSの差分を多次元ベクトルと見なした場合のノルムの逆数
なお、これらの値を求める際には、成分固有スペクトルyrnと目的成分の参照スペクトルRFSを予め正規化することが好ましい。
なお、目的成分の参照スペクトルRFSは、1つでも良いが、複数としてもよい。複数の参照スペクトルRFSを用いる場合には、まず、個々の参照スペクトルRFSと成分固有スペクトルyrnとの個別類似度を算出し、それらの個別類似度を総合した総合類似度を、その成分固有スペクトルyrnに対応する成分検量用スペクトルCSrnの類似度LKrnとして使用してもよい。総合類似度は種々の方法で算出可能であり、例えば、複数の個別類似度を乗算した値や、複数の個別類似度を加算した値などを総合類似度として利用可能である。
図13〜図14の算出処理によっても、高精度の検量に適した成分検量用スペクトルを選択する際の指標となるスペクトル評価値EVrnを、適切に算出することができる。
図15は、スペクトル評価値の算出処理(図6のステップS240)の具体例3を示すフローチャートである。図15の処理は、上述した図13の処理と図14の処理の両方を合体した処理に相当する。
ステップS431,S432は、図13及び図14で説明したステップS421,S422と同じである。すなわち、ステップS431では、目的成分の参照スペクトルRFSを取得し、ステップS432では、図6のステップS230の独立成分分析で得られた成分検量用スペクトルCSrnに対応する成分固有スペクトルyrnを取得する(図14)。
ステップS433,S434は、図11及び図12で説明したステップS411,S412と同じである。すなわち、ステップS433では、各成分検量用スペクトルCSrnに関して、S個の評価用スペクトルEDSとの内積を実行することによってS個の内積値Pを求める(図12)。ステップS412では、各成分検量用スペクトルCSrnに関して、S個の第2サンプルにおける目的成分の既知の成分量Cと、その成分検量用スペクトルCSrnについて算出されたS個の内積値Pとの相関度CDrnを求める。
ステップS435は、図13及び図14で説明したステップS423と同じである。すなわち、ステップS435では、各成分検量用スペクトルCSrnに関して、対応する成分固有スペクトルyrnと目的成分の参照スペクトルRFSとの類似度LKrnを算出する(図14)。
ステップS436では、各成分検量用スペクトルCSrnに関して、ステップS434で算出された相関度CDrnと、ステップS435で算出された類似度LKrnの総合評価値TErnが算出される。この総合評価値TErnは、各成分検量用スペクトルCSrnのスペクトル評価値EVrnとして使用される。総合評価値は種々の方法で算出可能であり、例えば、以下のような値を総合評価値TErnとして使用できる。
(1)相関度CDrnと類似度LKrnの乗算値
(2)相関度CDrnと類似度LKrnの和
(3)相関度CDrnと類似度LKrnの重み付き加算値
なお、典型的には、相関度CDrnと類似度LKrnを変数とする関数を用いて総合評価値TErnが決まるように、その関数を予め設定しておくことが可能である。このような関数は、相関度CDrnと類似度LKrnの2つの変数のうちの一方が一定で他方が変化する場合に、変化する変数の値が増加するほど大きな総合評価値TErnを与えるような関数とすることが好ましい。
図15の算出処理によっても、高精度の検量に適した成分検量用スペクトルを選択する際の指標となるスペクトル評価値EVrnを、適切に算出することができる。
F. 変形例:
本発明は上述した実施形態やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
・変形例1:
上述した実施形態及び実施例では、主に、グルコースを含有する水溶液をサンプルとした場合を説明したが、本発明は、これ以外のサンプルとする場合にも適用可能である。例えば、塩分を含有する液体、脂質またはアルブミン等の蛋白質またはアルコールを含有する液体をサンプルとする場合にも適用可能である。さらには、生体(ヒト)や、音声、画像等の他の対象物をサンプルとする独立成分分析にも本発明を適用することができる。生体を対象とする場合、生体における中性脂肪またはアルコールまたは血液内のグルコースを目的成分として本発明を適用することが可能である。分光スペクトル以外のデータや信号を独立成分分析の対象とする場合には、「分光スペクトル」という語句を、例えば、「観測データ」や「対象データ」等の他の語句に置き換えることができる。
・変形例2:
本発明を適用できる装置としては、光学的に中赤外分光または近赤外分光またはラマン分光方式の分光計測データから成分濃度を推定する装置にも適用可能である。さらに、本発明は、光学式タンパク質濃度計、光学式中性脂肪濃度計、光学式血糖値計、光学式塩分濃度計、光学式アルコール濃度計のいずれかの装置にも適用可能である。
100…検量装置,110…検量用データ取得部,120…光学スペクトル取得部,130…内積値算出部,140…成分量算出部,150…表示部,200…測定器

Claims (7)

  1. 被検体における目的成分の成分量を求める検量装置であって、
    前記被検体の分光測定によって得られる光学スペクトルを取得する光学スペクトル取得部と、
    前記目的成分に対応する目的成分検量用スペクトルと、検量線を表す単回帰式と、を含む検量用データを取得する検量用データ取得部と、
    前記被検体について取得された前記光学スペクトルと前記目的成分検量用スペクトルとの内積値を計算する内積値算出部と、
    前記内積値と前記目的成分の成分量との関係を示す前記単回帰式を使用し、前記内積値算出部によって求められた内積値に対応する前記目的成分の成分量を算出する成分量算出部と、
    を備え、
    前記検量用データ取得部は、
    (a)前記目的成分を含むN個(Nは1以上の整数)の成分をそれぞれ含有するQ個(Qは3以上の整数)の第1サンプルを分光測定して得られたQ個の光学スペクトルと、前記目的成分の成分量が既知であるS個(Sは3以上の整数)の第2サンプルを分光測定して得られたS個の評価用スペクトルと、を取得する処理と、
    (b)前記Q個の光学スペクトルの集合からR個(Rは2以上の整数)の部分集合を抽出する処理と、
    (c)前記R個の部分集合のそれぞれに対して、各サンプルにおける前記N個の成分の成分量を独立成分とする独立成分分析を実行することによって、前記N個の成分に対応するN個の成分検量用スペクトルを決定して、合計でR×N個の成分検量用スペクトルを取得する処理と、
    (d)前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、各成分検量用スペクトル又はそれに対応する成分固有スペクトルを変数とする関数を用いた演算を実行することによって各成分検量用スペクトルの評価値を求める処理と、
    (e)前記R個の部分集合のそれぞれに関して、各部分集合に含まれる前記N個の成分検量用スペクトルの前記評価値を総合した部分集合評価値を求める処理と、
    (f)前記R個の部分集合の中から、前記部分集合評価値に基づく予め定められた選択規則に従ってB個の部分集合(Bは1以上R未満の整数)を選択する処理と、
    (g)前記B個の部分集合の各部分集合について、各部分集合に含まれる1つ以上の光学スペクトルを前記Q個の光学スペクトルのうちの他の光学スペクトルに置き換えることによって異なる部分集合を作成する置換処理を実行することにより、前記B個の部分集合から、更新されたR個の部分集合を作成する処理と、
    (h)予め定めた終了条件が満たされるまで前記処理(c)〜(g)を繰り返す処理と、
    (i)前記終了条件が満たされた場合に、前記終了条件が満たされるまでに前記処理(d)の処理対象となった複数の成分検量用スペクトルのうちで前記評価値が最高となるような成分検量用スペクトルを前記目的成分検量用スペクトルとする処理と、
    (j)前記S個の評価用スペクトルと前記目的成分検量用スペクトルとの内積で得られる内積値と、前記S個の第2サンプルに含有される前記目的成分の成分量との関係を示す単回帰式を前記検量線として作成する処理と、
    を実行する、検量装置。
  2. 請求項1記載の検量装置であって、
    前記検量用データ取得部は、前記処理(g)において、
    前記更新されたR個の部分集合には、前記B個の部分集合の中で、前記部分集合評価値の高い順にC個(Cは1以上B未満の整数)の部分集合を含む、検量装置。
  3. 請求項1又は2記載の検量装置であって、
    前記検量用データ取得部は、前記処理(c)において、
    (1)前記各サンプルに対する分光測定で得られた光学スペクトルを列ベクトルとする光学スペクトル行列Xを、前記各サンプルに含有される前記N個の成分のうちの個々の成分に由来する未知の成分固有スペクトルを列ベクトルとする成分固有スペクトル行列Yと、前記各サンプルにおける前記N個の成分の未知の成分量を列ベクトルとする成分量行列Wと、の積に等しいとする式X=YWを使用し、前記成分量行列Wを構成する個々の列ベクトルをそれぞれ独立成分と見なして独立成分分析を実行することによって、前記成分量行列Wと前記成分固有スペクトル行列Yとを決定し、
    (2)前記独立成分分析によって決定された前記成分固有スペクトル行列Yの一般化逆行列Yにおける前記N個の成分のそれぞれに対応する逆行列行ベクトルを、各成分に対応する前記成分検量用スペクトルとして採用する、
    検量装置。
  4. 請求項1から3のいずれかの請求項に記載の検量装置であって、
    前記処理(d)は、
    前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、前記S個の評価用スペクトルとの内積を実行することによってS個の内積値を求める処理と、
    前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、前記S個の第2サンプルにおける前記目的成分の成分量と前記S個の内積値との相関度を求め、前記相関度を各成分検量用スペクトルの前記評価値とする処理と、
    を含む、検量装置。
  5. 請求項1から3のいずれかの請求項に記載の検量装置であって、
    前記処理(c)は、
    前記独立成分分析を実行することによって、前記N個の成分に由来するN個の成分固有スペクトルで構成される成分固有スペクトル行列と、前記成分固有スペクトル行列の一般化逆行列の行ベクトルであるN個の成分検量用スペクトルとを決定することにより、R×N個の成分固有スペクトルと前記R×N個の成分検量用スペクトルとを取得する処理を含み、
    前記処理(d)は、
    前記目的成分に対応する参照スペクトルを取得する処理と、
    前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、各成分検量用スペクトルに対応する成分固有スペクトルと前記参照スペクトルとの類似度を求め、前記類似度を各成分検量用スペクトルの前記評価値とする処理と、
    を含む、検量装置。
  6. 請求項1から3のいずれかの請求項に記載の検量装置であって、
    前記処理(c)は、
    前記独立成分分析を実行することによって、前記N個の成分に由来するN個の成分固有スペクトルで構成される成分固有スペクトル行列と、前記成分固有スペクトル行列の一般化逆行列の行ベクトルであるN個の成分検量用スペクトルとを決定することにより、R×N個の成分固有スペクトルと前記R×N個の成分検量用スペクトルとを取得する処理を含み、
    前記処理(d)は、
    前記目的成分に対応する参照スペクトルを取得する処理と、
    前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、前記S個の評価用スペクトルとの内積を実行することによってS個の内積値を求める処理と、
    前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、前記S個の第2サンプルにおける前記目的成分の成分量と前記S個の内積値との相関度を求める処理と、
    前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、各成分検量用スペクトルに対応する成分固有スペクトルと前記参照スペクトルとの類似度を求める処理と、
    前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、前記相関度と前記類似度との総合評価値を求め、前記総合評価値を各成分検量用スペクトルの前記評価値とする処理と、
    を含む、検量装置。
  7. 被検体に含有される目的成分の成分量を求めるために使用する検量線を作成する検量線作成方法であって、
    (a)前記目的成分を含むN個(Nは1以上の整数)の成分をそれぞれ含有するQ個(Qは3以上の整数)の第1サンプルを分光測定して得られたQ個の光学スペクトルと、前記目的成分の成分量が既知であるS個(Sは3以上の整数)の第2サンプルを分光測定して得られたS個の評価用スペクトルと、を取得する工程と、
    (b)前記Q個の光学スペクトルの集合からR個(Rは2以上の整数)の部分集合を抽出する工程と、
    (c)前記R個の部分集合のそれぞれに対して、各サンプルにおける前記N個の成分の成分量を独立成分とする独立成分分析を実行することによって、前記N個の成分に対応するN個の成分検量用スペクトルを決定して、合計でR×N個の成分検量用スペクトルを取得する工程と、
    (d)前記R×N個の成分検量用スペクトルのそれぞれに関して、各成分検量用スペクトル又はそれに対応する成分固有スペクトルを変数とする関数を用いた演算を実行することによって各成分検量用スペクトルの評価値を求める工程と、
    (e)前記R個の部分集合のそれぞれに関して、各部分集合に含まれる前記N個の成分検量用スペクトルの前記評価値を総合した部分集合評価値を求める工程と、
    (f)前記R個の部分集合の中から、前記部分集合評価値に基づく予め定められた選択規則に従ってB個の部分集合(Bは1以上R未満の整数)を選択する工程と、
    (g)前記B個の部分集合の各部分集合について、各部分集合に含まれる1つ以上の光学スペクトルを前記Q個の光学スペクトルのうちの他の光学スペクトルに置き換えることによって異なる部分集合を作成する置換処理を実行することにより、前記B個の部分集合から、更新されたR個の部分集合を作成する工程と、
    (h)予め定めた終了条件が満たされるまで前記工程(c)〜(g)を繰り返す工程と、
    (i)前記終了条件が満たされた場合に、前記終了条件が満たされるまでに前記工程(d)の処理対象となった複数の成分検量用スペクトルのうちで前記評価値が最高となるような成分検量用スペクトルを目的成分検量用スペクトルとする工程と、
    (j)前記S個の評価用スペクトルと前記目的成分検量用スペクトルとの内積で得られる内積値と、前記S個の第2サンプルに含有される前記目的成分の成分量との関係を示す単回帰式を前記検量線として作成する工程と、
    を備える検量線作成方法。
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