JP2017062138A - 中性脂肪濃度検量装置、電子機器、及び、検量線作成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】中性脂肪に関する検量を精度良く行う技術を提供する。【解決手段】被検体についての中性脂肪濃度を求める中性脂肪濃度検量装置は、前記被検体についての観測分光データを取得する被検体観測データ取得部と、中性脂肪に対応する独立成分又は主成分と、検量用の単回帰式と、含む検量用データを取得する検量用データ取得部と、前記被検体についての観測分光データと前記検量用データとに基づいて、前記被検体についての中性脂肪に対する混合係数を求める混合係数算出部と、前記中性脂肪に対応する混合係数と中性脂肪濃度との関係を示す前記単回帰式と、前記混合係数算出部によって求められた混合係数とに基づいて、前記中性脂肪濃度を算出する目的成分量算出部と、を含み、前記混合係数算出部は、前記中性脂肪に対する独立成分又は主成分として、予め選択された波長にピークを有する成分を使用する。【選択図】図2
Description
本発明は、中性脂肪を含む被検体の観測データから被検体の中性脂肪濃度を求める技術に関する。
特許文献1には、近赤外光を用いて生体の吸光スペクトルを測定し、この吸光スペクトに応じて中性脂肪濃度の定量を行う技術が記載されている。この従来技術では、1728±10nmより選択した1波長と、1661±10nmあるいは1668±10nmあるいは1679±10nmあるいは1685±10nmあるいは1721±10nmあるいは1728±10nmあるいは1742±10nmあるいは1754±10nmより選択した1波長の少なくとも2波長あるいは2波長帯を選択して、第2の波長域あるいは2波長帯を選択して、第2の波長域あるいは第3の波長域と組み合わせて、中性脂肪濃度を定量している。
しかし、上記従来技術では、中性脂肪の情報を多く含む波長範囲を選択しているものの、他の生体成分の情報が重なりあって含まれていることには変わりはなく、中性脂肪の情報だけを分離抽出することは原理的に難しい。そのため、十分な検量精度が得られない場合があるという問題があった。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
(1)本発明の第1の形態によれば、目的成分としての中性脂肪を含む被検体についての中性脂肪濃度を求める中性脂肪濃度検量装置が提供される。この中性脂肪濃度検量装置は、前記被検体についての観測分光データを取得する被検体観測データ取得部と、中性脂肪に対応する独立成分又は主成分と、検量用の単回帰式と、含む検量用データを取得する検量用データ取得部と、前記被検体についての観測分光データと前記検量用データとに基づいて、前記被検体についての中性脂肪に対する混合係数を求める混合係数算出部と、前記中性脂肪に対応する混合係数と中性脂肪濃度との関係を示す前記単回帰式と、前記混合係数算出部によって求められた混合係数とに基づいて、前記中性脂肪濃度を算出する目的成分量算出部と、を含み、前記混合係数算出部は、前記中性脂肪に対する独立成分又は主成分として、予め選択された波長にピークを有する成分を使用する。
この中性脂肪濃度検量装置によれば、中性脂肪に対応する波長として予め選択された波長にピークを有する独立成分又は主成分を用いて中性脂肪濃度の検量が行われるので、中性脂肪濃度に関する検量精度を高めることが可能である。
この中性脂肪濃度検量装置によれば、中性脂肪に対応する波長として予め選択された波長にピークを有する独立成分又は主成分を用いて中性脂肪濃度の検量が行われるので、中性脂肪濃度に関する検量精度を高めることが可能である。
(2)上記中性脂肪濃度検量装置において、前記予め選択された波長は、930±30nm又は945±30nmの一方と、1060±30nmとの少なくとも1つの波長としてもよい。
この構成によれば、中性脂肪に対応する波長として、930±30nm又は945±30nmの一方と、1060±30nmとの少なくとも1つの波長が選択されるので、中性脂肪濃度に関する検量精度をより高めることが可能である。
この構成によれば、中性脂肪に対応する波長として、930±30nm又は945±30nmの一方と、1060±30nmとの少なくとも1つの波長が選択されるので、中性脂肪濃度に関する検量精度をより高めることが可能である。
(3)上記中性脂肪濃度検量装置において、前記予め選択された波長は、1150±30nm又は1182±30nmの波長としてもよい。
この構成によれば、中性脂肪に対応する波長として、1150±30nm又は1182±30nmの波長が選択されるので、中性脂肪濃度に関する検量精度をより高めることが可能である。
この構成によれば、中性脂肪に対応する波長として、1150±30nm又は1182±30nmの波長が選択されるので、中性脂肪濃度に関する検量精度をより高めることが可能である。
(4)本発明の第2の形態によれば、中性脂肪を含む被検体の観測分光データから、前記被検体の中性脂肪濃度を導くことに用いる検量線を作成する検量線作成方法が提供される。この検量線作成方法は、前記被検体の複数のサンプルについての前記観測分光データを取得するサンプル観測データ取得工程と、前記各サンプルについての中性脂肪濃度を取得する中性脂肪濃度取得工程と、前記サンプル毎の観測分光データを複数の独立成分又は主成分に分離したときの複数の独立成分又は主成分を推定する推定工程と、前記複数のサンプルの中性脂肪濃度と、前記サンプル毎の前記観測分光データにおける前記独立成分又は主成分の混合係数とに基づいて、前記検量線の回帰式を求める回帰式算出工程と、を含み、前記推定工程は、前記独立成分又は主成分として、予め選択された波長にピークを有する成分波形信号を選択する工程である。
この検量線作成方法によれば、中性脂肪に対応する波長として予め選択された波長にピークを有する独立成分又は主成分を用いて中性脂肪濃度の検量が行われるので、中性脂肪濃度に関する検量精度を高めることができる。
この検量線作成方法によれば、中性脂肪に対応する波長として予め選択された波長にピークを有する独立成分又は主成分を用いて中性脂肪濃度の検量が行われるので、中性脂肪濃度に関する検量精度を高めることができる。
本発明は、上述した形態以外の種々の形態でも実現可能であり、例えば、上述した装置を含む電子機器や、上述した装置の各部の機能を実現するコンピュータープログラム、及び、コンピュータープログラムを格納する一時的でない記録媒体(non-transitory storage medium)等の形態等で実現することが可能である。
以下、本発明の実施の形態を以下の順序で説明する。
A.検量線作成処理及び検量処理の概要:
B.中性脂肪濃度用の検量線作成方法:
C.検量線作成方法:
D.目的成分の検量方法:
E.各種のアルゴリズムとその影響:
F.変形例:
A.検量線作成処理及び検量処理の概要:
B.中性脂肪濃度用の検量線作成方法:
C.検量線作成方法:
D.目的成分の検量方法:
E.各種のアルゴリズムとその影響:
F.変形例:
本実施形態では、以下の略語を使用する。
・ICA:独立成分分析(Independent Component Analysis)
・SNV:標準正規変量変換(Standard Normal Variate transformation)
・PNS:零空間射影法(Project on Null Space)
・PCA:主成分分析(Principal Components Analysis)
・FA:因子分析(Factor Analysis)
・ICA:独立成分分析(Independent Component Analysis)
・SNV:標準正規変量変換(Standard Normal Variate transformation)
・PNS:零空間射影法(Project on Null Space)
・PCA:主成分分析(Principal Components Analysis)
・FA:因子分析(Factor Analysis)
A.検量線作成処理及び検量処理の概要:
図1は、独立成分分析を利用した検量線作成処理及の概要を示す説明図である。図1(A)は、複数のサンプルについての観測データ(「測定データ」とも呼ぶ)の一例が示されている。この観測データは分光吸光度であり、例えば、中性脂肪などの複数の化学成分を含むサンプルの分光測定によって得ることができる。検量線作成処理で使用する複数のサンプルとしては、目的成分(例えば中性脂肪)の含有量が既知であるサンプルを使用する。この代わりに、複数のサンプルに含まれる目的成分の含有量を、分析装置で測定してもよい。
図1は、独立成分分析を利用した検量線作成処理及の概要を示す説明図である。図1(A)は、複数のサンプルについての観測データ(「測定データ」とも呼ぶ)の一例が示されている。この観測データは分光吸光度であり、例えば、中性脂肪などの複数の化学成分を含むサンプルの分光測定によって得ることができる。検量線作成処理で使用する複数のサンプルとしては、目的成分(例えば中性脂肪)の含有量が既知であるサンプルを使用する。この代わりに、複数のサンプルに含まれる目的成分の含有量を、分析装置で測定してもよい。
検量線の作成の際には、まず、観測データに前処理を行うことによって、観測データに含まれる変動や雑音を低減する(図1(B))。前処理としては、例えば、観測データの正規化を含む第1前処理と、白色化を含む第2前処理とが行われる。第1前処理では、観測データのさまざまな変動要因(サンプルの状態や測定環境の変化など)による影響を減少するために、零空間射影法を実行することが好ましい。次に、前処理後の観測データに対して独立成分分析処理を実行することによって、複数の独立成分IC1,IC2…(図1(C))が得られる。これらの独立成分IC1,IC2…は、各サンプルに含まれる個々の物質成分に対応するデータであり、互いに統計的に独立な成分である。各サンプルの観測データは、これらの独立成分IC1,IC2…の線形結合として再現可能である。図1(C)では、2つの独立成分IC1,IC2のみが例示されているが、独立成分の数は2以上の任意の数に適宜設定される。なお、実施形態の説明において、「目的成分」という用語は、サンプルに含まれる物質又は化学成分を意味しており、一方、「独立成分」という用語は、サンプルの観測データと同じデータ長を有するデータを意味する。
次に、図1(D)〜(F)に示すように、前処理後の観測データと、独立成分(例えばIC1)との内積を計算する。図1(D)の観測データは、図1(B)と同じものである。1つの観測データと、1つの独立成分IC1との内積を取ると、その観測データに関して1つの内積値が得られる。従って、複数の観測データに対して同じ独立成分IC1との内積を計算すると、複数のサンプルに関して同じ独立成分IC1に対する複数の内積値が得られる。図1(F)は、複数のサンプルに関する内積値Pを横軸にとり、複数のサンプルに含まれている目的成分の既知の含有量Cを縦軸に取ってプロットした図である。仮に、内積で使用した独立成分IC1が目的成分に対応する独立成分である場合には、図1(F)に示すように、内積値Pと、各サンプルの目的成分の含有量Cとが強い相関を有する。そこで、図1(C)で得られた複数の独立成分IC1,IC2…のうちで最も強い相関を示す独立成分を、目的成分に対応する独立成分として選択することができる。図1の例では、独立成分IC1が、検量の目的成分(例えば中性脂肪)に対応する独立成分である。検量線は、図1(F)のプロットの単回帰式C=uP+vで与えられる直線として表される。なお、内積値Pは、各サンプルにおける独立成分IC1の含有量に比例する値なので、「混合係数」とも呼ぶ。
図2は、検量線を用いた目的成分の検量処理の概要を示す説明図である。検量処理では、図1に示した検量線作成処理で得られた目的成分の独立成分IC1(図1(E))と、検量線(図1(F))とを利用して行われる。検量処理では、まず、目的成分の含有量が未知であるサンプルの観測データを取得する(図2(A))。次に、この観測データに前処理を行う(図2(B))。この前処理は、検量線の作成時に使用した前処理と同じ処理とすることが好ましい。そして、この前処理後の観測データと、独立成分IC1(図2(B))との内積を取ることによって、観測データに関する内積値Pを算出する(図2(C)。この内積値Pを、検量線(図2(D))に適用することによって、目的成分の含有量Cを決定することが可能である。なお、図1の検量線作成処理や図2の検量処理の詳細については、後に詳述する。
B.中性脂肪濃度用の検量線作成方法:
図3は、中性脂肪濃度用の検量線作成処理のフローチャートである。この例では、被検体は人体(例えば手)であり、目的成分は中性脂肪である。なお、図3のステップT110〜T160の右側には、後述する図5における工程1〜工程5との対応関係が示されている。「工程2」を、「サンプル観測データ取得工程」とも呼び、「工程3」を、「中性脂肪濃度取得工程」とも呼ぶ。また、「工程4」を「推定工程」とも呼び、「工程5」を「回帰式算出工程」とも呼ぶ。
図3は、中性脂肪濃度用の検量線作成処理のフローチャートである。この例では、被検体は人体(例えば手)であり、目的成分は中性脂肪である。なお、図3のステップT110〜T160の右側には、後述する図5における工程1〜工程5との対応関係が示されている。「工程2」を、「サンプル観測データ取得工程」とも呼び、「工程3」を、「中性脂肪濃度取得工程」とも呼ぶ。また、「工程4」を「推定工程」とも呼び、「工程5」を「回帰式算出工程」とも呼ぶ。
ステップT110では、人体を分光測定することによってスペクトルデータ(「観測分光データ」又は「測定データ」とも呼ぶ)を取得する。ステップT120では、ステップT110と同じ人体から採血を行い、生化学分析を行うことによって、血液中の中性脂肪濃度を正確に求める。これらのステップT110,T120を複数回繰り返すことによって、複数のサンプルに関するスペクトルデータと中性脂肪濃度とを取得する。
ステップT130では、図1(A)〜(C)に示した手順に従って、複数のサンプルのスペクトルデータから複数の独立成分を推定する。ステップT140では、こうして得られた複数の独立成分の中から、予め選択された特定の波長にピークを有する独立成分を選択する。この特定の波長は、中性脂肪に対応する好ましい波長として予め選択されたものである。特定の波長としては、以下の何れかを使用することが可能である。
図4A及び図4Bは、900〜1100nmの波長帯のスペクトルデータを検量に用いる場合における好ましい独立成分の例を示している。図4A(1)に示す第1の独立成分IC1aは、930±α[nm]にピークを有し、1060±α[nm]にはピークを有さない独立成分である。図4A(2)に示す第2の独立成分IC1bは、930±α[nm]にはピークを有さず、1060±α[nm]にピークを有する独立成分である。図4A(3)に示す第3の独立成分IC2cは、930±α[nm]と1060±α[nm]の両方にピークを有する独立成分である。図4A(4)に示す第4の独立成分IC2cは、930±α[nm]と1060±α[nm]の両方にピークを有し、かつ水に由来する1000±α[nm]のピークを有する独立成分である。図4B(1)に示す第5の独立成分IC1eは、945±α[nm]にピークを有し、1060±α[nm]にはピークを有さない独立成分である。図4B(2)に示す第6の独立成分IC1fは、945±α[nm]と1060±α[nm]の両方にピークを有する独立成分である。図4B(3)に示す第7の独立成分IC2gは、945±α[nm]と1060±α[nm]の両方にピークを有し、かつ水に由来する1000±α[nm]のピークを有する独立成分である。αは、中性脂肪に特有なピークの範囲を限定するための値である。αの値としては、30が好ましく、20が更に好ましい。なお、第3の独立成分IC1cは、第1の独立成分IC1aと第2の独立成分IC1bとの和を取ったものに相当する。
900〜1100nmの波長帯のスペクトルデータを検量に用いる場合には、図1に示した独立成分分析で得られた複数の独立成分の中から、930±30nm又は945±30nmの一方と、1060±30nmとの少なくとも1つにピークを有する独立成分が選択される。このような独立成分は、図4A及び図4Bに示した7つの独立成分IC1a〜IC1gに近い波形を有する成分波形信号となる。独立成分(成分波形信号)の選択は、例えば、以下のように実行される。
<ケース1>
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、930±α[nm]にピークを有する独立成分は存在するが、1060±α[nm]にピークを有する独立成分が存在しない場合には、930±α[nm]にピークを有する独立成分(図4A(1)の第1の独立成分IC1aに近いもの)がステップT140で選択される。
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、930±α[nm]にピークを有する独立成分は存在するが、1060±α[nm]にピークを有する独立成分が存在しない場合には、930±α[nm]にピークを有する独立成分(図4A(1)の第1の独立成分IC1aに近いもの)がステップT140で選択される。
<ケース2>
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、930±α[nm]にピークを有する独立成分は存在せず、1060±α[nm]にピークを有する独立成分が存在する場合には、1060±α[nm]にピークを有する独立成分(図4A(2)の第2の独立成分IC1bに近いもの)がステップT140で選択される。
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、930±α[nm]にピークを有する独立成分は存在せず、1060±α[nm]にピークを有する独立成分が存在する場合には、1060±α[nm]にピークを有する独立成分(図4A(2)の第2の独立成分IC1bに近いもの)がステップT140で選択される。
<ケース3>
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、930±α[nm]と1060±α[nm]の両方にピークを有する独立成分が存在する場合には、その独立成分(図4A(3)の第3の独立成分IC1cに近いもの)がステップT140で選択される。
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、930±α[nm]と1060±α[nm]の両方にピークを有する独立成分が存在する場合には、その独立成分(図4A(3)の第3の独立成分IC1cに近いもの)がステップT140で選択される。
<ケース4>
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、930±α[nm]と1000±α[nm]と1060±α[nm]とにピークを有する独立成分が存在する場合には、930±α[nm] と1000±α[nm]と1060±α[nm]とにピークを有する独立成分(図4A(4)の第4の独立成分IC1dに近いもの)がステップT140で選択される。
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、930±α[nm]と1000±α[nm]と1060±α[nm]とにピークを有する独立成分が存在する場合には、930±α[nm] と1000±α[nm]と1060±α[nm]とにピークを有する独立成分(図4A(4)の第4の独立成分IC1dに近いもの)がステップT140で選択される。
<ケース5>
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、945±α[nm]にピークを有する独立成分は存在するが、1060±α[nm]にピークを有する独立成分が存在しない場合には、945±α[nm]にピークを有する独立成分(図4B(1)の第5の独立成分IC1eに近いもの)がステップT140で選択される。
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、945±α[nm]にピークを有する独立成分は存在するが、1060±α[nm]にピークを有する独立成分が存在しない場合には、945±α[nm]にピークを有する独立成分(図4B(1)の第5の独立成分IC1eに近いもの)がステップT140で選択される。
<ケース6>
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、945±α[nm]と1060±α[nm]にピークを有する独立成分が存在する場合には、945±α[nm]と1060±α[nm]にピークを有する独立成分(図4B(2)の第6の独立成分IC1fに近いもの)がステップT140で選択される。
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、945±α[nm]と1060±α[nm]にピークを有する独立成分が存在する場合には、945±α[nm]と1060±α[nm]にピークを有する独立成分(図4B(2)の第6の独立成分IC1fに近いもの)がステップT140で選択される。
<ケース7>
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、945±α[nm]と1000±α[nm]と1060±α[nm]とにピークを有する独立成分が存在する場合には、945±α[nm] と1000±α[nm]と1060±α[nm]とにピークを有する独立成分(図4B(3)の第7の独立成分IC1gに近いもの)がステップT140で選択される。
独立成分分析で得られた複数の独立成分の中に、945±α[nm]と1000±α[nm]と1060±α[nm]とにピークを有する独立成分が存在する場合には、945±α[nm] と1000±α[nm]と1060±α[nm]とにピークを有する独立成分(図4B(3)の第7の独立成分IC1gに近いもの)がステップT140で選択される。
なお、上記ケース3の場合に、図4Aに示した3つの独立成分IC1a〜IC1cのそぞれに関して図1(F)で示したグラフにおける内積値Pと成分含有量C(すなわち中性脂肪濃度)の相関を求め、相関が最も高い1つの独立成分を選択するようにしてもよい。こうすれば、検量精度をより高めることが可能である。上記ケース5の場合も同様である。つまり、図4A及び図4Bに示した3つの独立成分IC1b、IC1e、IC1fのそぞれに関して図1(F)で示したグラフにおける内積値Pと成分含有量C(すなわち中性脂肪濃度)の相関を求め、相関が最も高い1つの独立成分を選択するようにしてもよい。
図4Cは、1100〜1250nmの波長帯のスペクトルデータを検量に用いる場合における好ましい独立成分の例を示している。図4C(1)に示す第1の独立成分IC2aは、1150±α[nm]にピークを有し、1182±α[nm]にはピークを有さない独立成分である。図4B(2)に示す第2の独立成分IC2bは、1150±α[nm]にはピークを有さず、1182±α[nm]にピークを有する独立成分である。図4A(3)に示す第3の独立成分IC2cは、1150±α[nm]と1182±α[nm]の両方にピークを有する独立成分である。図4A(4)に示す第4の独立成分IC2dは、1150±α[nm]と1182±α[nm]の両方にピークが重なり、一つのブロードなピークを有する独立成分である。図4A及び図4Bの場合と同様に、αの値は30が好ましく、20が更に好ましい。また、第3の独立成分IC2cは、第1の独立成分IC2aと第2の独立成分IC2bとの和を取ったものに相当する。
1100〜1250nmの波長帯のスペクトルデータを検量に用いる場合には、図1に示した独立成分分析で得られた複数の独立成分の中から、1150±α[nm]と1182±α[nm]の一方又は両方にピークを有する独立成分が選択される。このような独立成分は、図4Bに示した4つの独立成分IC2a〜IC2dに近い波形を有するものとなる。独立成分の選択は、900〜1100nmの波長帯を用いた場合と同様に行われる。
なお、ステップT140における独立成分の選択は、検量線作成装置を操作する操作者が手動で行ってもよく、或いは、検量線作成装置内の独立成分選択部が自動的に実行するようにしてもよい。
ところで、上述した波長のピークは、中性脂肪が持つCH基とCH2基による光吸収に由来するものと考えられる。一般に、900〜1100nmの帯域ではCH基とCH2基の3倍音の光吸収が現れ、1100〜1250nmの帯域では2倍音の光吸収が現れる。また、例えば人体や血液に対する900〜1100nm帯域の独立成分に現れる2つのピークの波長は、生体分子との相互作用によってCH基やCH2基の単体の吸収ピークよりもやや長波長側にシフトしたものとなる。2つのピークを個別に扱うのは、水の吸収帯の影響を受けることなどの原因によって、2つのピークがそれぞれ別々の独立成分に現れることがあるからである。本願の発明者の実験によれば、人体を観測したスペクトルデータを用いた独立成分では2つのピークが現れることが多い。従って、人体を被検体とする場合には、2つのピークを有する独立成分IC1cやIC1f(又はIC2c)を用いることが好ましい。但し、独立成分の具体的な波形は、人体からスペクトルデータを測定する際の被測定部位(例えば手や足)の位置にも依存する可能性がある。一方、中性脂肪水溶液を被検体とした場合には、CH2基由来のピークはより短波長側にシフトしてしまい、ピークが1つになる可能性がある。
こうして独立成分の選択が終了すると、図3のステップT150において、選択した独立成分を用いて、複数のサンプルに関する内積値Pを算出する(図1(D)〜(E)参照)。なお、独立成分の選択の際に内積値Pを算出している場合には、ステップT150は省略可能である。ステップT160では、複数のサンプルに関する内積値Pと、ステップT120で測定した中性脂肪濃度Cとの関係から、検量線の回帰式を算出する。
なお、上記ステップT140で選択された独立成分は、図2で説明した検量処理においてもそのまま使用されて検量が実行される。
また、本実施形態では、中性脂肪に対応する独立成分の特徴が明確になっているので、被検体毎にサンプルデータを一から集めなくても検量を行うことができる。例えば、被験者Aの測定データを用いて決定した独立成分と検量線とを用いて、別の被験者Bの中性脂肪濃度の検量を行うことも可能である。
なお、図3のステップT130で推定された複数の独立成分の中に上述した特有のピークを有するものがない場合には、中性脂肪情報を十分に含んだ測定データが取得できていないものと判断できる。したがって、測定条件や、独立成分分析におけるアルゴリズムパラメータが適切であるか否かを判定するための指標としても有効である。すなわち、推定された複数の独立成分の中に上述した特有のピークを有するものがない場合には、測定条件や、独立成分分析におけるアルゴリズムパラメータの一部を変更して、図3の処理を再度行うことが好ましい。
C.検量線作成方法:
図5は、本発明の一実施形態としての検量線作成方法を示すフローチャートである。この検量線作成方法は、工程1から工程5までの5つの工程によって構成される。各工程1〜5はこの順に実行される。各工程1〜5について、順に説明する。なお、このC節以降では、特に注記しない限り、図3,図4A,図4Bで説明した中性脂肪濃度以外の目的成分の検量においても利用できる方法について説明を行うものとする。
図5は、本発明の一実施形態としての検量線作成方法を示すフローチャートである。この検量線作成方法は、工程1から工程5までの5つの工程によって構成される。各工程1〜5はこの順に実行される。各工程1〜5について、順に説明する。なお、このC節以降では、特に注記しない限り、図3,図4A,図4Bで説明した中性脂肪濃度以外の目的成分の検量においても利用できる方法について説明を行うものとする。
[工程1]
工程1は、準備工程であり、作業者により行なわれるものである。作業者は、目的成分の含有量が相違する同一種類の複数のサンプル(例えば、中性脂肪水溶液や人体)を用意(準備)する。本実施例ではn個(nは2以上の整数)のサンプルを使用する。人体をサンプルとする場合には、被検体としての人体は1つでも良く、異なる日時における同じ人体を複数のサンプルとして使用することが可能である。
工程1は、準備工程であり、作業者により行なわれるものである。作業者は、目的成分の含有量が相違する同一種類の複数のサンプル(例えば、中性脂肪水溶液や人体)を用意(準備)する。本実施例ではn個(nは2以上の整数)のサンプルを使用する。人体をサンプルとする場合には、被検体としての人体は1つでも良く、異なる日時における同じ人体を複数のサンプルとして使用することが可能である。
[工程2]
工程2は、スペクトルの測定工程であり、作業者により分光計測器を用いて行なわれるものである。作業者は、工程1で用意した複数のサンプルのそれぞれを分光計測器で撮影することにより、各サンプルについての分光反射率のスペクトルを測定する。分光計測器は、被計測体からの光を分光器に通し、分光器から出力されるスペクトルを撮像素子の撮像面で受けることにより、前記スペクトルを測定する周知の機器である。分光反射率のスペクトルと吸光度のスペクトルとの間には、次式で表される関係が成り立つ。
工程2は、スペクトルの測定工程であり、作業者により分光計測器を用いて行なわれるものである。作業者は、工程1で用意した複数のサンプルのそれぞれを分光計測器で撮影することにより、各サンプルについての分光反射率のスペクトルを測定する。分光計測器は、被計測体からの光を分光器に通し、分光器から出力されるスペクトルを撮像素子の撮像面で受けることにより、前記スペクトルを測定する周知の機器である。分光反射率のスペクトルと吸光度のスペクトルとの間には、次式で表される関係が成り立つ。
測定された分光反射率のスペクトルは、式(4)を用いて吸光度スペクトルに変換される。吸光度に変換するのは、後述する独立成分分析において分析される混合信号には線形結合が成立する必要があり、ランベルト・ベールの法則から、吸光度について線形結合が成立するためである。したがって、工程2においては、分光反射率スペクトルの代わりに吸光度スペクトルを測定してもよい。測定結果としては、被計測体の波長に対する特性を示す吸光度分布のデータが出力される。この吸光度分布のデータは、スペクトルデータとも呼ぶ。
なお、分光反射率スペクトルや吸光度スペクトルを分光器で測定する代わりに、これらのスペクトルを他の測定値から推定するようにしてもよい。例えば、サンプルをマルチバンドカメラで測定し、得られたマルチバンド画像から分光反射率や吸光度スペクトルを推定するようにしてもよい。このような推定方法としては、例えば、特開2001−99710号公報に記載された方法などを利用することができる。
[工程3]
工程3は、目的成分の含有量の測定工程であり、作業者により行なわれるものである。作業者は、工程1で用意した複数のサンプルのそれぞれを化学分析して、各サンプルについての目的成分の含有量(例えば中性脂肪量)を測定する。工程1で準備したサンプルにおける目的成分の含有量が既知の場合には、この工程3は省略可能である。
工程3は、目的成分の含有量の測定工程であり、作業者により行なわれるものである。作業者は、工程1で用意した複数のサンプルのそれぞれを化学分析して、各サンプルについての目的成分の含有量(例えば中性脂肪量)を測定する。工程1で準備したサンプルにおける目的成分の含有量が既知の場合には、この工程3は省略可能である。
[工程4]
工程4は、混合係数の推定工程であり、典型的にはコンピューターを用いて行なわれるものである。図6は、工程4および後述する工程5で用いられるコンピューター100とその周辺装置を示す説明図である。コンピューター100は、分光計測器200に電気的に接続されている。
工程4は、混合係数の推定工程であり、典型的にはコンピューターを用いて行なわれるものである。図6は、工程4および後述する工程5で用いられるコンピューター100とその周辺装置を示す説明図である。コンピューター100は、分光計測器200に電気的に接続されている。
コンピューター100は、コンピュータープログラムを実行することにより種々の処理や制御を行うCPU10と、データの退避場所であるメモリー20(記憶部)と、コンピュータープログラムやデータを保存するハードディスクドライブ30と、入力インターフェイス50と、出力インターフェイス60とを備えた周知な装置である。
図7は、工程4及び工程5で使用する装置の機能ブロック図である。この装置400は、サンプル観測データ取得部410と、サンプル目的成分量取得部420と、混合係数推定部430と、回帰式算出部440とを有する。混合係数推定部432は、独立成分行列算出部432、推定混合行列算出部434、混合係数選択部436、及び、独立成分選択部438を含んでいる。なお、サンプル観測データ取得部410およびサンプル目的成分量取得部420は、例えば図6のCPU10が入力I/F50とメモリー20と協働して実現される。混合係数推定部430、独立成分行列算出部432、推定混合行列算出部434、混合係数選択部436、及び、独立成分選択部438は、例えば図6のCPU10がメモリー20と協働して実現される。また、回帰式算出部440は、例えば図6のCPU10がメモリー20と協働して実現される。なお、これらの各部は、図6に示したコンピューター以外の他の具体的な装置やハードウェア回路によっても実現可能である。
独立成分選択部438は、図3のステップT140で説明した独立成分の選択処理を実行する機能を有する。独立成分選択部438は、検量線作成装置400を操作する操作者が入力部(図示省略)を用いて選択指示を入力すると、この入力に応じて独立成分の選択を実行するように構成されていてもよい。或いは、操作者の指示を必要とせずに独立成分選択部438が自動的に独立成分の選択を実行するように構成されていてもよい。なお、図3の手順で独立成分の選択を行う場合には、図7に示した推定混合号列算出部434と混合係数選択部436は省略可能である。以下では、混合係数推定部430を単に「推定部430」とも呼び、また、サンプル目的成分量取得部420を「中性脂肪濃度取得部」とも呼ぶ。
図8は、独立成分行列算出部432の内部構成の一例を示す機能ブロック図である。独立成分行列算出部432は、第1前処理部450と、第2前処理部460と、独立成分分析処理部470とを有している。これらの3つの処理部450,460,470は、この順番に処理対象データ(本実施形態では吸光度スペクトル)を処理することによって、独立成分行列(後述)を求める。これらの各部の処理内容については後述する。
図6に示した分光計測器200は、工程2で使用されたものである。コンピューター100は、工程2で分光計測器200により測定された分光分布から得られた吸光度スペクトルを、スペクトルデータとして入力I/F50を介して取得する(図7のサンプル観測データ取得部410に対応)。また、コンピューター100は、工程3で測定された目的成分の含有量を、作業者によるキーボードの操作等によって取得する(図7のサンプル目的成分量取得部420に対応)。
上記のスペクトルデータと目的成分含有量の取得の結果、コンピューター100のハードディスクドライブ30には、スペクトルデータと目的成分含有量とを含むデータセット(以下、「測定データセット」と呼ぶ)DS1が保存される。
図9は、ハードディスクドライブ30に保存された測定データセットDS1を模式的に示す説明図である。図示するように、測定データセットDS1は、工程1で用意した複数のサンプルを識別するためのサンプル番号B1,B2,…,Bnと、各サンプルについての目的成分含有量C1,C2,…,Cnと、各サンプルについてスペクトルデータX1,X2,…,Xnとを含むデータ構造である。測定データセットDS1において、目的成分含有量C1,C2,…,CnおよびスペクトルデータX1,X2,…,Xnは、いずれのサンプルについてのものであるかが判るように、サンプル番号B1,B2,…,Bnと対応づけがなされている。
CPU10は、ハードディスクドライブ30に格納された所定のプログラムをメモリー20にロードし、そのプログラムを実行することで、工程4の作業である、混合係数を推定する処理を行う。ここで、前記所定のプログラムは、外部からインターネット等のネットワークを用いてダウンロードする構成とすることもできる。工程4において、CPU10は図7の混合係数推定部430として機能する。
図10は、CPU10で実行される混合係数推定処理を示すフローチャートである。処理が開始されると、CPU10は、まず、独立成分分析を行う(ステップS110)。
独立成分分析(Independent Component Analysis, ICA) は、多次元信号解析法の1つであり、独立な信号が重なり合った混合信号をいくつかの異なる条件で観測し、それを基に独立な原信号を分離する技術である。独立成分分析を用いれば、工程2により得られたスペクトルデータを、目的成分を始めとするm個の独立成分(未知)が混合されたものと捕らえることで、工程2により得られたスペクトルデータ(観測データ)から独立成分のスペクトルを推定することが可能となる。
本実施形態において、独立成分分析は、図8に示した3つの処理部450,460,470がこの順に処理を行うことによって実行される。第1前処理部450は、標準正規変量変換(SNV)452と、零空間射影法(PNS)454のうちの一方又は両方を用いた前処理を実行することが可能である。SNV452は、処理対象データの平均値を減算し、その標準偏差で除算することによって、平均値が0で標準偏差が1である正規化されたデータを得る処理である。PNS454は、処理対象データに含まれるベースライン変動を取り除くための処理である。スペクトルの測定では、さまざまな要因により、測定データごとにデータの平均値が上下するなどのベースライン変動と呼ばれるデータ間のばらつきが発生する。そのため、独立成分分析処理を行う前に、この変動要因を取り除くことが好ましい。PNSは、任意のベースライン変動を取り除くことの出来る前処理として使用することが可能である。なお、PNSについては、例えば、Zeng-Ping Chen, Julian Morris, and Elaine Martin, “Extracting Chemical Information from Spectral Data with Multiplicative Light Scattering Effects by Optical Path-Length Estimation and Correction”, 2006に説明されている。
なお、図5の工程2で得られたスペクトルデータに対してSNV452を行う場合にはPNS454による処理を行う必要は無い。一方、PNS454による処理を行う場合には、その後に何らかの正規化処理(例えばSNV452)を行うことが好ましい。
なお、第1前処理として、SNVやPNS以外の処理を行うようにしても良い。第1前処理では何らかの正規化処理を行うことが好ましいが、正規化処理を省略してもよい。以下では、第1前処理部450を「正規化処理部」とも呼ぶ。これらの2つの処理452,454の内容については、更に後述する。なお、独立成分行列算出部432に与えられる処理対象データが正規化済みのデータである場合には、第1前処理を省略することも可能である。
第2前処理部460は、主成分分析(PCA)462と、因子分析(FA)464のうちのいずれか一方を用いた前処理を実行することが可能である。また、第2前処理として、PCAやFA以外の処理を用いるようにしても良い。以下では、第2前処理部460を「白色化処理部」とも呼ぶ。一般的なICAの手法では、第2前処理として、処理対象データの次元圧縮と、無相関化を行う。この第2前処理によって、ICAで求めるべき変換行列が直交変換行列に限定されるため、ICAの計算量を削減できる。このような第2前処理を「白色化」とよび、多くの場合にPCAが用いられる。しかし、PCAは、処理対象データにランダムノイズが含まれる場合、その影響を受けて結果に誤差が生じる場合がある。そこで、ランダムノイズの影響を低減するために、PCAの代わりに、ノイズに対するロバスト性を持つFAを用いて白色化を行うことが好ましい。図8の第2前処理部460は、PCAとFAのいずれか一方を選択して白色化を実行することが可能である。これらの2つの処理462,464の内容については、更に後述する。なお、白色化処理は省略しても良い。
独立成分分析処理部(ICA処理部)470は、第1前処理と第2前処理が行われたスペクトルデータに対して、ICAを実行することによって、独立成分のスペクトルを推定する。ICA処理部470は、独立性指標として尖度を用いる第1処理472と、独立性指標としてβダイバージェンスを用いる第2処理474のうちのいずれか一方を用いた分析を実行することが可能である。ICAは、一般に、独立成分の分離のための指標として、分離したデータ同士の独立性を表す高次統計量を独立性指標として用いる。尖度は、典型的な独立性指標である。しかし、処理対象データにスパイクノイズのような外れ値が入っている場合には、その外れ値も含めた統計量が独立性指標として計算されてしまう。このため、処理対象データについての本来の統計量と、算出された統計量との間に誤差が生じ、分離精度の低下を引き起こす場合がある。そこで、処理対象データ中の外れ値からの影響を低減するために、その影響を受けにくい独立性指標を使用することが好ましい。この様な特性を持つ独立性指標として、βダイバージェンスを使用可能である。尖度とβダイバージェンスの内容については、更に後述する。なお、ICAの独立性指標としては、尖度やβダイバージェンス以外の指標を利用するようにしても良い。
独立成分分析の典型的な処理内容について、次に詳しく説明する。m個の未知成分(ソース)のスペクトルS(以下、このスペクトルを単に「未知成分」と呼ぶこともある)が下記の式(5)のベクトルで与えられたとし、工程2により得られたn個のスペクトルデータXが下記の式(6)のベクトルで与えられたとする。なお、式(5)に含まれる各要素(S1、S2、・・・Sm)は、それぞれがベクトル(スペクトル)となっている。すなわち、例えば要素S1は式(7)のように表される。式(6)に含まれる要素(X1、X2、・・・、Xn)もベクトルであり、例えば要素Xjは式(8)のように表される。要素Xjの添え字のjはスペクトルを測定した波長帯の数である。なお、未知成分のスペクトルSの要素数mは、1以上の整数であり、サンプルの種類に応じて予め経験的又は実験的に決められている。
各未知成分は統計的に独立であるとする。これら未知成分SとこれらスペクトルデータXとの間に、次式の関係が成立する。
式(9)におけるAは混合行列であり、次式(10)で示すこともできる。なお、ここでも“A”の文字は、式(10)に示すように太字で示す必要があるが、明細書の使用文字の制限からここでは普通文字で表す。以下、行列を表す他の太字について、同様に普通文字で表すものとする。
混合行列Aに含まれる混合係数ai jは、未知成分Sj(j=1〜m)が、観測データであるスペクトルデータXi(i=1〜n)へ寄与する度合いを示す。
混合行列Aが既知の場合、未知成分Sの最小二乗解は、Aの擬似逆行列A+を用いてA+・Xと簡単に求めることができるが、本実施形態の場合、混合行列Aも未知なので、観測データXのみから、未知成分Sと混合行列Aを推定しなければならない。すなわち、次式(11)に示すように、観測データXのみから、m×nの分離行列Wを用いて、独立成分のスペクトルを示す行列(以下、「独立成分行列」と呼ぶ)Yを算出する。次式(11)における分離行列Wを求めるアルゴリズムとしては、Infomax、FastICA (Fast Independent Component Analysis)、JADE (Joint Approximate Diagonalization of Eigenmatrices) など種々のものを採用することが可能である。
独立成分行列Yは未知成分Sの推定値に該当する。よって、下記の式(12)を得ることができ、式(12)を変形して下記の式(13)を得ることができる。
式(13)で得られる推定混合行列∧A(明細書の使用文字の制限からこのように表記しただけであり、実際は式(13)の左辺の符号付き文字を意味する。他の文字も同じ)は、次式で示すこともできる。
図10のステップS110では、CPU10は、上述した分離行列Wを求める処理までを行う。詳しくは、工程2で得られハードディスクドライブ30に予め保存したサンプル毎のスペクトルデータXを入力として、この入力に基づいて、前述したInfomax、FastICA、JADE などのいずれかのアルゴリズムを用いて、分離行列Wを求める。なお、前述した図8に示すように、独立成分分析の前処理として、第1前処理部450による正規化処理と、第2前処理部460による白色化処理とを行うことが好ましい。
ステップS110の実行後、CPU10は、その分離行列Wと、工程2で得られハードディスクドライブ30に予め保存したサンプル毎のスペクトルデータXとに基づいて、独立成分行列Yを算出する処理を行う(ステップS120)。この算出処理は、前述した式(11)に従う演算を行うものである。ステップS110、S120の処理において、CPU10は図7の独立成分行列算出部432として機能する。
続いて、CPU10は、前記ハードディスクドライブ30に予め保存したサンプル毎のスペクトルデータXと、ステップS120で算出した独立成分行列Yとに基づいて、推定混合行列∧Aを算出する処理を行う(ステップS130)。この算出処理は、前述した式(13)に従う演算を行うものである。
図11は、推定混合行列∧Aを説明するための説明図である。この表TBは、縦方向に各サンプル番号B1,B2,…,Bnをとり、横方向に独立成分行列Yの各要素(以下、「独立成分要素」と呼ぶ)Y1,Y2,…,Ymをとったものである。サンプル番号Bi(i=1〜n)と独立成分要素Yj(j=1〜m)から定まる表TB中の要素は、推定混合行列∧Aの要素∧ai j(式(14)参照)と同一である。この表TBからも、推定混合行列∧Aの要素∧ai jは、サンプルのそれぞれにおける独立成分要素Y1,Y2,…,Ymの比率を表したものであることがわかる。図11に例示した目的成分順位kについては後述する。ステップS130の処理において、CPU10は図7の推定混合行列算出部434として機能する。
ステップS130までの処理によって、推定混合行列∧Aが得られる。すなわち、推定混合行列∧Aの要素(推定混合係数)∧ai jが得られる。なお、推定混合係数∧ai jは、図1の例では、図1(D)〜(F)で算出される内積値Pに相当する。その後、ステップS160又はステップS140に進む。
ステップS160では、図3のステップT140で説明した方法に従って、独立成分が選択される。この選択は、図7の独立成分選択部438によって行われる。ステップT170では、選択した独立成分を用いて、複数のサンプルに関する内積値Pを算出し、これらの内積値Pを要素とする混合係数ベクトル∧αを求める。この混合係数ベクトル∧αは、図11に示す1列分の混合係数に相当する。こうして、図10の処理も終了する。なお、ステップS160における独立成分の選択が実行されない場合には、以下で説明するステップS140,S150によって独立成分が選択される。ステップS160〜T170の処理とステップS140〜S150の処理のいずれが実行されるかについては、操作者が任意に指定できるように、検量線作成装置400(図7)が構成されていることが好ましい。
ステップS140では、CPU10は、工程3で測定された目的成分含有量C1,C2,…,Cnと、ステップS130で算出された推定混合行列∧Aに含まれる各列の成分(以下、混合係数ベクトル∧αと呼ぶ)との間の相関(類似性の度合い)を求める。詳しくは、目的成分含有有量C(C1,C2,…,Cn)と第1列目の混合係数ベクトル∧α1(∧a11,∧a21,…,∧an1)との相関を求め、次いで、目的成分含有量C(C1,C2,…,Cn)と第2列目の混合係数ベクトル∧α2(∧a12,∧a22,…,∧an2)との相関を求め、こうして順次各列について目的成分含有量Cに対する相関を求める。
上記相関の高さを示す指標としては、次式に従う相関係数Rを使用できる。この相関係数Rは、ピアソンの積率相関係数と呼ばれるものである。
図10のステップS140の結果、独立成分(独立成分スペクトル)Yj毎の相関係数Rj(j=1,2,……,m)が得られる。その後、CPU10は、ステップSS140で得られた相関係数Rjの中から最も相関が高いもの、すなわち値が1に近いものを特定する。そして、最も高い相関係数Rが得られた列ベクトル∧αを、推定混合行列∧Aの中から選択する(ステップS150)。
ステップS150における選択は、図11の表TBでいえば、複数の列の中から一の列を選択することである。この選択された列の要素が、目的成分に対応する独立成分の混合係数である。前記選択の結果、混合係数ベクトル∧αk(∧a1k,∧a2k,…,∧ank)が得られる。ここで、kは1〜mのいずれかの整数をとる。なお、このkの値を、何番目の独立成分が目的成分に当たるかを示す目的成分順位としてメモリー20に一時的に保存してもよい。この混合係数ベクトル∧αkに含まれる要素∧a1k,∧a2k,…,∧ankが「目的成分に対応する混合係数」に相当する。なお、図11の例では、目的成分順位k=2が、独立成分Y2に対応する混合係数ベクトル∧α2=(∧a12,∧a22,…,∧an2)を示している。なお、本明細書において、「順位」という語句は、「行列内の位置を示す値」という意味で使用されている。ステップS140、S150の処理において、CPU10は図7の推定係数選択部436として機能する。ステップS150の実行後、CPUは、この混合係数の算出処理を終える。この結果、工程4が完了し、その後、工程5に進む。
[工程5]
工程5は、回帰式の算出工程であり、工程4を実行した時と同じくコンピューター100を用いて行なわれるものである。工程5では、コンピューター100は、検量線の回帰式を算出する処理を実行する。なお、工程5は、工程4までのデータを別のコンピューターや装置に移して実行してもよい。
工程5は、回帰式の算出工程であり、工程4を実行した時と同じくコンピューター100を用いて行なわれるものである。工程5では、コンピューター100は、検量線の回帰式を算出する処理を実行する。なお、工程5は、工程4までのデータを別のコンピューターや装置に移して実行してもよい。
図12は、コンピューター100のCPU10で実行される回帰式の算出処理を示すフローチャートである。処理が開始されると、CPU10は、まず、工程3で測定された目的成分含有量C(C1,C2,…,Cn)と、ステップS150(又はステップS170)で得られた混合係数ベクトル∧αk(∧a1k,∧a2k,…,∧ank)とに基づいて、回帰式を算出する(ステップS210)。この回帰式は、次式(16)にて表すことができる。ステップS210では、式(16)における定数u,vが求められることになる。
ステップS210の実行後、CPU10は、ステップS210で求められた回帰式の定数u,vと、ステップS150で決定された目的成分順位k(図11)に対応する独立成分Yk(又はステップS160で選択された独立成分)とを、検量用データセットDS2としてハードディスクドライブ30に保存する(ステップS220)。その後、CPU10は、「リターン」に抜けて、この回帰式の算出処理を一旦終了する。この結果、検量線の回帰線を求めることができ、図5に示した検量線作成方法も終了する。ステップS210、S220の処理において、CPU10は図7の回帰式算出部440として機能する。
D.目的成分の検量方法:
目的成分の検量方法について、次に説明する。被検体は、検量線を作成したときに用いたサンプルと同じ成分で構成されるものとする。具体的には、目的成分の検量方法は、コンピューターを用いて行なわれるものである。なお、ここでのコンピューターは、検量線を作成する際に用いたコンピューター100であってもよいし、他のコンピューターであってもよい。
目的成分の検量方法について、次に説明する。被検体は、検量線を作成したときに用いたサンプルと同じ成分で構成されるものとする。具体的には、目的成分の検量方法は、コンピューターを用いて行なわれるものである。なお、ここでのコンピューターは、検量線を作成する際に用いたコンピューター100であってもよいし、他のコンピューターであってもよい。
図13は、目的成分の検量を行う際に使用する装置の機能ブロック図である。この中性脂肪濃度検量装置500は、被検体観測データ取得部510と、検量用データ取得部520と、混合係数算出部530と、目的成分量算出部540と、不揮発性記憶装置550とを有する。混合係数算出部530は、前処理部532を含んでいる。この前処理部532は、図8の第1前処理部450と第2前処理部460の両者の機能を有している。混合計算算出部530は、図2(A)〜(C)で説明した内積演算を行う機能を有しているので、「内積演算部」と呼ぶことも可能である。被検体観測データ取得部510は、例えば図6のCPU10が入力I/F50とメモリー20と協働して実現される。検量用データ取得部520は、例えば図6のCPU10がメモリー20とハードディスクドライブ30と協働して実現される。混合係数算出部530、および目的成分量算出部540は、例えば図6のCPU10がメモリー20と協働して実現される。不揮発性記憶装置550には、検量用データセットDS2(独立成分及び回帰式の定数u,v)が格納されている。なお、図13の装置は、図6のコンピュータとは異なる別の装置又は電子機器として実装してもよい。この場合に、図13の装置又はこれを備える電子機器は、分光計測器を有することが好ましい。
図14は、コンピューター100のCPU10で実行する目的成分検量処理を示すフローチャートである。この目的成分検量処理は、CPU10がハードディスクドライブ30に格納された所定のプログラムをメモリー20にロードし、そのプログラムを実行することで、実現される。まず、CPU10は、被検体を分光計測器で撮影する処理を行う(ステップS310)。ステップS310による撮影は工程2と同様にして行うことができ、この結果、被検体の吸光度スペクトルXpが得られる。検量処理で使用する分光計測器は、誤差を抑制するため検量線の作成に使用した分光計測器と同一機種であることが好ましい。誤差をさらに抑制するためには、同一の機体であることがより好ましい。なお、図5の工程2と同様に、分光反射率スペクトルや吸光度スペクトルを分光器で測定する代わりに、これらのスペクトルを他の測定値から推定するようにしてもよい。一の被検体を一回撮像した場合に得られる被検体の吸光度のスペクトルXpは、次式のようにベクトルで表される。
ステップS310の処理において、CPU10は図13の被検体観測データ取得部510として機能する。次いで、CPU10は、ハードディスクドライブ30(図13の不揮発性記憶装置550)から検量用データセットDS2を取得し、メモリー20に格納する(ステップS320)。ステップS320の処理において、CPU10は図13の検量用データ取得部520として機能する。
ステップS320の実行後、ステップS310で得られた被検体の観測データ(吸光度スペクトルXp)に対して前処理を実行する(ステップS330)。この前処理としては、検量線の作成時に図5の工程4(より具体的には図10のステップS110)において使用された前処理(すなわち第1前処理部450による正規化処理及び第2前処理部460による白色化処理)と同じ処理を実行することが好ましい。
その後、CPU10は、検量用データセットDS2に含まれる独立成分とステップS330で得られた前処理済みのスペクトル(前処理済みの観測データ)との内積値Pを求める(ステップS340)。ステップS340の処理は、前述した図2(B),(C)の処理に相当する。なお、この内積値Pは、検量線の作成時において、図10のステップS130で算出した混合係数に相当する。従って、内積値Pを「混合係数」とも呼ぶ。
ステップS330,S340の処理において、CPU10は図13の混合係数算出部530として機能することになる。
続いて、CPU10は、ハードディスクドライブ30(図13の不揮発性記憶装置550)から検量用データセットDS2に含まれる回帰式の定数u,vを読み出し、この定数u,vとステップS340で得られた内積値Pとを前述した式(16)の右辺に代入することで、目的成分の含有量Cを求める(ステップS350)。この際、必要に応じて定数u,vを調整してもよい。含有量Cは、例えば、被検体の単位容積又は単位質量当たり(例えば、1dL当たり、又は、100グラム当たり)の目的成分の質量として求められる。ステップS350の処理において、CPU10は図13の目的成分量算出部540として機能することになる。その後、「リターン」に抜けて、この目的成分検量処理を終了する。
なお、本実施形態では、ステップS350によって求められた含有量Cを被検体の目的成分の含有量としていたが、これに替えて、ステップS350によって求められた含有量Cを、ステップS330による正規化で用いた正規化係数で補正して、この補正後の値を求めるべき含有量としてもよい。具体的には、含有量Cに標準偏差を乗算することによって、含有量の絶対値(グラム)を求めるようにしてもよい。この構成によれば、目的成分の種類によっては、含有量Cをより精度の高いものとすることが可能となる。
以上の検量方法によれば、被検体の実測値である一のスペクトルから目的成分の含有量を高精度に求めることができる。
[実験結果]
図15は、本願の発明者による実験結果である。図15(A)は、独立成分回帰分析を用いた結果を示し、図15(B)は、PLS回帰分析を用いた結果を示す。図15(A)及び図15(B)において、横軸を真の中性脂肪濃度(mg/dl)とし、縦軸を各分析により得られた検量線濃度(mg/dl)とする。本実験では、人体を被検体とした観測分光データとそのデータを取得した人体の血液中における中性脂肪濃度とのセットを30セット用意し、検量回帰式作成に15セット用い、残りの15セットを検量精度(SEP)算出に用いた。検量線作成処理を行った結果、図4A(1)に示した第1の独立成分IC1aを用いて、図15(A)に示すように、検量精度SEP(予測標準偏差)として18.65mg/dLが得られた。一方、図15(B)に示すように、PLS回帰分析の中性脂肪濃度の検量では、検量精度SEPとして21.56mg/dLが得られた。この結果から、独立成分回帰分析を用いた場合、PLS回帰分析を用いた場合に比べて高い検量精度を達成することが可能であることがわかった。
図15は、本願の発明者による実験結果である。図15(A)は、独立成分回帰分析を用いた結果を示し、図15(B)は、PLS回帰分析を用いた結果を示す。図15(A)及び図15(B)において、横軸を真の中性脂肪濃度(mg/dl)とし、縦軸を各分析により得られた検量線濃度(mg/dl)とする。本実験では、人体を被検体とした観測分光データとそのデータを取得した人体の血液中における中性脂肪濃度とのセットを30セット用意し、検量回帰式作成に15セット用い、残りの15セットを検量精度(SEP)算出に用いた。検量線作成処理を行った結果、図4A(1)に示した第1の独立成分IC1aを用いて、図15(A)に示すように、検量精度SEP(予測標準偏差)として18.65mg/dLが得られた。一方、図15(B)に示すように、PLS回帰分析の中性脂肪濃度の検量では、検量精度SEPとして21.56mg/dLが得られた。この結果から、独立成分回帰分析を用いた場合、PLS回帰分析を用いた場合に比べて高い検量精度を達成することが可能であることがわかった。
E.各種のアルゴリズムとその影響:
以下では、図8に示した第1前処理部450と、第2前処理部460と、独立成分分析処理部470とにおいて利用される各種のアルゴリズムについて順次説明する。
以下では、図8に示した第1前処理部450と、第2前処理部460と、独立成分分析処理部470とにおいて利用される各種のアルゴリズムについて順次説明する。
E−1.第1前処理(SNV/PNSを利用した正規化処理):
第1前処理部450が行う第1前処理としては、SNV(標準正規変量変換)とPNS(零空間射影法)を利用可能である。
第1前処理部450が行う第1前処理としては、SNV(標準正規変量変換)とPNS(零空間射影法)を利用可能である。
SNVは、以下の式で与えられる。
ここで、zは処理後のデータ、xは処理対象データ(本実施例では吸光度スペクトル)、xaveは処理対象データxの平均値、σは処理対象データxの標準偏差である。標準正規変量変換の結果、平均値が0で標準偏差が1である正規化されたデータzが得られる。
PNSを行うと、処理対象データに含まれるベースライン変動を低減することが可能である。処理対象データ(本実施形態では吸光度スペクトル)の測定では、さまざまな要因により、測定データごとにデータの平均値が上下するなどのベースライン変動と呼ばれるデータ間のばらつきが発生する。そのため、ICA(独立成分分析)を行う前に、この変動要因を取り除くことが好ましい。PNSは、処理対象データのベースライン変動を低減することのできる前処理として使用することが可能である。特に、赤外領域を含む吸収光スペクトル又は反射光スペクトルの測定データについては、このようなベースライン変動が多いので、PNSを適用する利点が大きい。以下では、測定で得られるデータ(単に「測定データx」とも呼ぶ)に含まれるベースライン変動を、PNSによって取り除く原理について説明する。また、典型的な例として、測定データが赤外領域を含む吸収光スペクトル又は反射光スペクトルである場合について説明を行う。但し、他の種類の測定データ(例えば音声データなど)についても同様にPNSを適用可能である。
一般に、理想系において、測定データx(処理対象データx)は、m個(mは2以上の整数)の独立成分si(i=1〜m)とそれぞれの混合比ciを用いて、以下の式で表わされる。
ここで、Aは混合比ciで形成される行列(混合行列)である。
ICA(独立成分分析)においても、このモデルを前提として処理が実行される。しかし、実際の測定データには、さまざまな変動要因(試料の状態や測定環境の変化など)が存在している。そこで、それらを考慮したモデルとして、以下の式によって測定データxを表現するモデルが考えられる。
ここで、bはスペクトルの振幅方向の変動量を表すパラメーター、aは定数ベースライン変動E(「平均値変動」とも呼ぶ)の量を表すパラメーター、b1…bgは波長に依存するg個(gは1以上の整数)の変動f1(λ)〜fg(λ)の量を表すパラメーターであり、εはそれ以外の変動成分である。また、定数ベースライン変動Eは、E={1,1,1,…1}T(右肩のTは転置を示す)で与えられ、そのデータ長が測定データxのデータ長N(波長域の区分数)と等しい定数ベクトルである。波長を表す変数λとしては、1からNまでのN個の整数が使用される。すなわち、この変数λは、測定データxのデータ長N(Nは2以上の整数)の序数に相当する。このとき、波長に依存する変動f1(λ)…fg(λ)は、f1(λ)={f1(1), f1(2), …f1(N)}T,…,fg(λ)={fg(1), fg(2), …fg(N)}Tで与えられる。これらの変動は、ICAや検量における誤差要因となるため、事前に取り除くことが望ましい。
関数f(λ)としては、λの値が1からNまでの範囲においてλの増加に応じて関数f(λ)の値が単調に増加する1変数関数を使用することが好ましい。零空間射影法において、指数αが整数であるλのべき乗関数λα以外の他の関数を使用することによって、測定データに含まれる変動をより低減することが可能である。
好ましい関数f(λ)の関数形とその個数gと決定する方法としては、実験的なトライアンドエラーを採用してもよく、或いは、既存のパラメーター推定アルゴリズム(例えばEM(期待値最大化法)アルゴリズム)を用いてもよい。
PNSでは、上述したそれぞれのベースライン変動成分E,f1(λ)〜fg(λ)からなる空間を考え、測定データxを、それら変動成分を含まない空間(零空間)に射影することで、ベースライン変動成分E,f1(λ)〜fg(λ)を低減したデータを得ることができる。具体的な演算として、PNSによる処理後のデータzは、以下の式で算出される。
ここで、P+はPの擬似逆行列である。kiは、式(20)の構成成分siを、変動成分を含まない零空間に射影したものである。また、ε*は、式(20)の変動成分εを零空間に射影したものである。
なお、PNSの処理後に、正規化(例えばSNV)を行えば、式(20)におけるスペクトルの振幅方向の変動量bの影響も取り除くことができる。
このようなPNSによる前処理を行ったデータに対してICAを行うと、得られる独立成分は、式(21)の成分kiの推定値となり、真の構成成分siとは異なるものとなる。しかし、混合比ciは、元の式(20)における値から変化しないため、混合比ciを使用した検量処理(図2,図14)には影響しない。このように、ICAの前処理としてPNSを実行すると、ICAによって真の構成成分siを得ることはできないので、通常は、ICAの前処理にPNSを適用するという発想は生じ得ない。一方、本実施形態では、PNSをICAの前処理として行っても検量処理には影響しないので、PNSを前処理として実行すれば、より精度良く検量を行うことが可能である。
なお、PNSの詳細については、例えば、Zeng-Ping Chen, Julian Morris, and Elaine Martin, “Extracting Chemical Information from Spectral Data with Multiplicative Light Scattering Effects by Optical Path-Length Estimation and Correction”, 2006に説明されている。
E−2.第2前処理(PCA/FAを利用した白色化処理):
第2前処理部460が行う第2前処理としては、PCA(主成分分析)とFA(因子分析)を利用可能である。
第2前処理部460が行う第2前処理としては、PCA(主成分分析)とFA(因子分析)を利用可能である。
一般的なICAの手法では、前処理として、処理対象データの次元圧縮と、無相関化を行う。この前処理によって、ICAで求めるべき変換行列が直交変換行列に限定されるため、ICAの計算量を削減できる。このような前処理を「白色化」とよび、多くの場合にPCAが用いられる。PCAを用いた白色化については、例えばAapo Hyvarinen, Juha Karhumen, Erkki Oja, "Independent Comonent Analysis", 2001, John Wiley &Sons, Inc.(「独立成分分析」、2005年2月、東京電気大学出版部発行)の第6章に詳述されている。
しかしながら、PCAでは、処理対象データにランダムノイズが含まれる場合、そのランダムノイズの影響を受けて、処理結果に誤差が生じる場合がある。そこで、ランダムノイズの影響を低減するために、PCAの代わりに、ノイズに対するロバスト性を持つFA(因子分析)を用いて白色化を行うことが好ましい。以下では、FAによる白色化の原理を説明する。
前述したように、一般にICAでは、処理対象データxを、構成成分siの線形和として表す線形混合モデル(上記式(19))を仮定し、混合比ciと構成成分siとを求める。しかし、実際のデータには、構成成分si以外のランダムノイズが付加されていることが多い。そこで、ランダムノイズを考慮したモデルとして、以下の式によって測定データxを表現するモデルが考えられる。
ここで、ρはランダムノイズである。
そして、このノイズ混合モデルを考慮した白色化を行い、その後、ICAを行って混合行列Aと独立成分siの推定を得ることができる。
本実施形態のFAでは、独立成分siとランダムノイズρとがそれぞれ正規分布N(0,Im),N(0,Σ)に従うと仮定する。なお、一般に知られているように、正規分布N(x1,x2)の第1のパラメーターx1は期待値を示し、第2のパラメーターx2は標準偏差を示す。このとき、処理対象データxは、正規分布に従う変数の線形和となるので、処理対象データxもやはり正規分布に従う。ここで、処理対象データxの共分散行列をV[x]とすると、処理対象データxが従う正規分布はN(0,V[x])と表現できる。このとき、処理対象データxの共分散行列V[x]に関する尤度関数を、下記の手順で計算できる。
このように、共分散行列V[x]は、混合行列Aとノイズの共分散行列Σとで表すことができる。このとき、対数尤度関数L(A,Σ)は以下の式で与えられる。
ここで、nはデータxのデータ個数、mは独立成分の個数であり、演算子trは行列のトレース(対角成分の和)を示し、演算子detは行列式を示す。また、Cはデータxから標本計算で求められる標本共分散行列であり、以下の式で計算される。
上記式(24)の対数尤度関数L(A,Σ)を用いた最尤法により、混合行列Aとノイズの共分散行列Σとを求めることができる。この混合行列Aとしては、上記式(22)のランダムノイズρの影響がほとんど無いものが得られる。これがFAの基本的な原理である。なお、FAのアルゴリズムとしては、最尤法以外のアルゴリズムを利用した種々のアルゴリズムが存在する。本実施形態においても、このような各種のFAを利用可能である。
ところで、FAで得られる推定値は、あくまでAATの値であり、この値に適合する混合行列Aを決めた場合に、ランダムノイズの影響を低減しつつデータを無相関化することが可能だが、回転の自由度が残るために複数の構成成分siを一意に決めることができない。一方、ICAは、複数の構成成分siが互いに直交するように複数の構成成分siの回転の自由度を減らす処理である。そこで、本実施形態では、FAで求める混合行列Aの値を白色化行列(白色化済の行列)として用い、残された回転に対する任意性をICAにより特定する。これにより、ランダムノイズにロバストな白色化処理を行った後に、ICAを実行することにより、互いに直交する独立な構成成分siを決定することが可能である。また、このような処理の結果、ランダムノイズの影響を低減して、構成成分siに関する検量精度を向上させることができる。
E−3.ICA(独立性指標としての尖度及びβダイバージェンス):
ICA(独立成分分析)では、一般に、独立成分の分離のための指標として、分離したデータ同士の独立性を表す高次統計量を独立性指標として用いられる。尖度は、典型的な独立性指標である。独立性指標として尖度を用いたICAについては、例えばAapo Hyvarinen, Juha Karhumen, Erkki Oja, "Independent Comonent Analysis", 2001, John Wiley &Sons, Inc.(「独立成分分析」、2005年2月、東京電気大学出版部発行)の第8章に詳述されている。
ICA(独立成分分析)では、一般に、独立成分の分離のための指標として、分離したデータ同士の独立性を表す高次統計量を独立性指標として用いられる。尖度は、典型的な独立性指標である。独立性指標として尖度を用いたICAについては、例えばAapo Hyvarinen, Juha Karhumen, Erkki Oja, "Independent Comonent Analysis", 2001, John Wiley &Sons, Inc.(「独立成分分析」、2005年2月、東京電気大学出版部発行)の第8章に詳述されている。
しかし、処理対象データにスパイクノイズのような外れ値が入っている場合には、その外れ値も含めた統計量が独立性指標として計算されてしまう。このため、処理対象データについての本来の統計量と、算出された統計量との間に誤差が生じ、分離精度の低下を引き起こす場合がある。そこで、処理対象データ中の外れ値からの影響を受けにくい独立性指標を使用することが好ましい。この様な特性を持つ独立性指標として、βダイバージェンスを使用可能である。以下では、ICAにおける独立性指標としてのβダイバージェンスの原理を説明する。
前述したように、一般にICAでは、処理対象データxを、構成成分siの線形和として表す線形混合モデル(上記式(19))を仮定し、混合比ciと構成成分siとを求める。ICAにより求められる構成成分sの推定値yは、分離行列Wを用いてy=W・yと表わされる。このとき分離行列Wは混合行列Aの逆行列であることが望まれる。
ここで、分離行列Wの推定値^Wの対数尤度関数L(^W)は、以下の式で表すことができる。
ここで、積算記号Σの要素は、各データ点x(t)における対数尤度である。この対数尤度関数L(^W)を、ICAにおける独立性指標として用いることができる。βダイバージェンスの手法は、この対数尤度関数L(^W)に適当な関数を作用させることにより、データ中のスパイクノイズのような外れ値に対して、その影響を抑えるように対数尤度関数L(^W)を変換しようとする方法である。
スパイクノイズのような外れ値の影響を小さくするための関数Φβとしては、対数尤度の値(関数Φβの括弧内の値)が小さくなるほど、関数Φβの値が指数関数的に減衰するような関数が考えられる。このような関数Φβとしては、例えば以下を使用することができる。
この関数では、βの値が大きいほど、各データ点z(上述の式(27)では対数尤度)に対する関数値が小さくなる。このβの値は経験的に決定することができ、例えば約0.1に設定することが可能である。なお、この関数Φβとしては、式(28)のものに限らず、βの値が大きいほど各データ点zに対する関数値が小さくなるような他の関数を利用することも可能である。
このようなβダイバージェンスを独立性指標として使用すると、スパイクノイズのような外れ値の影響を適切に抑えることができる。上記式(27)のような尤度関数LΦ(^W)を考える場合に、この尤度の最大化に対応して最小化される確率分布間の擬似距離がβダイバージェンスである。このようなβダイバージェンスを独立性指標として使用したICAを実行すれば、スパイクノイズのような外れ値の影響を低減して、構成成分siに関する検量精度を向上させることができる。
なお、βダイバージェンスを用いたICAについては、例えば、Minami Mihoko, Shinto Eguchi, “Robust Blind Source Separation by β-Divergence”, 2002に説明されている。
F.変形例:
この発明は前記実施例やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
この発明は前記実施例やその変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
・変形例1:
前記実施形態では、未知成分のスペクトルSの要素数mは予め経験的又は実験的に決められるとしたが、未知成分のスペクトルSの要素数mはMDL(Minimum Description Length)やAIC(Akaike Information Criteria)として知られる情報量基準などによって決定してもよい。MDLなどを用いる場合、未知成分のスペクトルSの要素数mはサンプルの観測データから演算によって自動的に決めることができる。なお、MDLについては、例えば”Independent component analysis for noisy data ? MEG data analysis, 2000”に説明されている。
前記実施形態では、未知成分のスペクトルSの要素数mは予め経験的又は実験的に決められるとしたが、未知成分のスペクトルSの要素数mはMDL(Minimum Description Length)やAIC(Akaike Information Criteria)として知られる情報量基準などによって決定してもよい。MDLなどを用いる場合、未知成分のスペクトルSの要素数mはサンプルの観測データから演算によって自動的に決めることができる。なお、MDLについては、例えば”Independent component analysis for noisy data ? MEG data analysis, 2000”に説明されている。
・変形例2:
前記実施形態では、検量処理の対象となる被検体は、検量線を作成したときに用いたサンプルと同じ成分で構成されるとしたが、被検体に検量線を作成したときに用いたサンプルと同じ成分以外の未知成分が含まれる、としてもよい。独立成分同士の内積は0と仮定するため、未知成分に対応する独立成分とも内積0と考えられるためであり、内積で混合係数を求める場合には未知成分の影響は無視できる。
前記実施形態では、検量処理の対象となる被検体は、検量線を作成したときに用いたサンプルと同じ成分で構成されるとしたが、被検体に検量線を作成したときに用いたサンプルと同じ成分以外の未知成分が含まれる、としてもよい。独立成分同士の内積は0と仮定するため、未知成分に対応する独立成分とも内積0と考えられるためであり、内積で混合係数を求める場合には未知成分の影響は無視できる。
・変形例3:
前記実施形態において用いたコンピューターは、専用の装置として構成してもよい。例えば、ハードウェア回路のみで図7や図13に示した装置を実現してもよい。或いは、図7や図13に示した装置の機能の一部をハードウェア回路で実現し、他の一部をソフトウェアで実現してもよい。
前記実施形態において用いたコンピューターは、専用の装置として構成してもよい。例えば、ハードウェア回路のみで図7や図13に示した装置を実現してもよい。或いは、図7や図13に示した装置の機能の一部をハードウェア回路で実現し、他の一部をソフトウェアで実現してもよい。
・変形例4:
前記実施形態では、サンプルや被検体についての分光反射率のスペクトルの入力を、分光計測器により測定されたスペクトルを入力することで行っていたが、本発明はこれに限られない。例えば、波長帯域の相違する複数のバンド画像から分光スペクトルを推定し、この分光スペクトルを入力する構成としてもよい。前記バンド画像は、例えば、透過波長帯域を変更可能なフィルターを備えるマルチバンドカメラによってサンプルや被検体を撮影することで得られる。
前記実施形態では、サンプルや被検体についての分光反射率のスペクトルの入力を、分光計測器により測定されたスペクトルを入力することで行っていたが、本発明はこれに限られない。例えば、波長帯域の相違する複数のバンド画像から分光スペクトルを推定し、この分光スペクトルを入力する構成としてもよい。前記バンド画像は、例えば、透過波長帯域を変更可能なフィルターを備えるマルチバンドカメラによってサンプルや被検体を撮影することで得られる。
・変形例5:
上記実施形態では、独立成分分析を用いて独立成分を選択する際に中性脂肪に適した波長のピークを有するものを選択していたが、この代わりに、主成分分析やPLS回帰分析等の手法を用いて主成分を選択する際に、中性脂肪に適した波長のピークを有するものを選択するようにしてもよい。この場合にも、独立成分の代わりに主成分を用いて中性脂肪濃度の検量線作成処理や検量処理を実行することによって検量精度を高めることが可能である。
上記実施形態では、独立成分分析を用いて独立成分を選択する際に中性脂肪に適した波長のピークを有するものを選択していたが、この代わりに、主成分分析やPLS回帰分析等の手法を用いて主成分を選択する際に、中性脂肪に適した波長のピークを有するものを選択するようにしてもよい。この場合にも、独立成分の代わりに主成分を用いて中性脂肪濃度の検量線作成処理や検量処理を実行することによって検量精度を高めることが可能である。
なお、前述した各実施例および各変形例における構成要素の中の、独立請求項で記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略可能である。
10…CPU、20…メモリー、30…ハードディスクドライブ、50…入力インターフェイス、60…出力インターフェイス、100…パーソナルコンピューター、200…分光計測器、400…検量線作成装置、410…サンプル観測データ取得部、420…サンプル目的成分量取得部(中性脂肪濃度取得部)、430…混合係数推定部(推定部)、432…独立成分行列算出部、434…推定混合行列算出部、436…混合係数選択部、438…独立成分選択部、440…回帰式算出部、450…第1前処理部(正規化処理部)、452…標準正規変量変換(SNV)、454…零空間射影法(PNS)、460…第2前処理部(白色化処理部)、462…主成分分析(PCN)、464…因子分析(FA)、470…独立成分分析処理部、472…第1処理、474…第2処理、500…検量装置、510…被検体観測データ取得部、520…検量用データ取得部、530…混合係数算出部(内積演算部)、532…前処理部、540…目的成分量算出部、550…不揮発性記憶装置
Claims (7)
- 目的成分としての中性脂肪を含む被検体についての中性脂肪濃度を求める中性脂肪濃度検量装置であって、
前記被検体についての観測分光データを取得する被検体観測データ取得部と、
中性脂肪に対応する独立成分又は主成分と、検量用の単回帰式と、含む検量用データを取得する検量用データ取得部と、
前記被検体についての観測分光データと前記検量用データとに基づいて、前記被検体についての中性脂肪に対する混合係数を求める混合係数算出部と、
前記中性脂肪に対応する混合係数と中性脂肪濃度との関係を示す前記単回帰式と、前記混合係数算出部によって求められた混合係数とに基づいて、前記中性脂肪濃度を算出する目的成分量算出部と、
を含み、
前記混合係数算出部は、前記中性脂肪に対する独立成分又は主成分として、予め選択された波長にピークを有する成分を使用する、中性脂肪濃度検量装置。 - 請求項1に記載の中性脂肪濃度検量装置であって、
前記予め選択された波長は、
930±30nm又は945±30nmの一方と、1060±30nmとの少なくとも1つの波長である、中性脂肪濃度検量装置。 - 請求項1に記載の中性脂肪濃度検量装置であって、
前記予め選択された波長は、
1150±30nm又は1182±30nmの波長である、中性脂肪濃度検量装置。 - 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の中性脂肪濃度検量装置を備える電子機器。
- 中性脂肪を含む被検体の観測分光データから、前記被検体の中性脂肪濃度を導くことに用いる検量線を作成する検量線作成方法であって、
前記被検体の複数のサンプルについての前記観測分光データを取得するサンプル観測データ取得工程と、
前記各サンプルについての中性脂肪濃度を取得する中性脂肪濃度取得工程と、
前記サンプル毎の観測分光データを複数の独立成分又は主成分に分離したときの複数の独立成分又は主成分を推定する推定工程と、
前記複数のサンプルの中性脂肪濃度と、前記サンプル毎の前記観測分光データにおける前記独立成分又は主成分の混合係数とに基づいて、前記検量線の回帰式を求める回帰式算出工程と、
を含み、
前記推定工程は、前記独立成分又は主成分として、予め選択された波長にピークを有する成分波形信号を選択する工程である、検量線作成方法。 - 請求項5に記載の検量線作成方法であって、
前記予め選択された波長は、
930±30nm又は945±30nmの一方と、1060±30nmとの少なくとも1つの波長である、検量線作成方法。 - 請求項5に記載の検量線作成方法であって、
前記予め選択された波長は、
1150±30nm又は1182±30nmの波長である、検量線作成方法。
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-
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