JP2013154425A - 切断用ブレード - Google Patents
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Abstract
【解決手段】円形薄板状のブレード本体1を有する切断用ブレード10であって、前記ブレード本体1は、ボンド相2に砥粒3及びフィラー4が分散された基層11と、前記基層11に、前記ブレード本体1の厚さ方向の外側から積層される被覆層12と、を備え、前記基層11のフィラー4は、仮想四面体の中心から各頂点に向かって針状部が四方に延びた3次元形状体を少なくとも含み、前記基層11のボンド相2には、気孔6が分散されており、前記被覆層12には、気孔6が形成されていないことを特徴とする。
【選択図】図2
Description
すなわち、本発明は、円形薄板状のブレード本体を有する切断用ブレードであって、前記ブレード本体は、ボンド相に砥粒及びフィラーが分散された基層と、前記基層に、前記ブレード本体の厚さ方向の外側から積層される被覆層と、を備え、前記基層のフィラーは、仮想四面体の中心から各頂点に向かって針状部が四方に延びた3次元形状体を少なくとも含み、前記基層のボンド相には、気孔が分散されており、前記被覆層には、気孔が形成されていないことを特徴としている。
このため、このようなフィラーが添加された基層のボンド相は、異方性(ここで言う異方性とは、例えば従来の針状又は繊維状のフィラーが製造時の成形等により所定方向に配列されるような状態を差す)が緩和されることとなり、どの方向に対しても略同一の耐摩耗性を確保でき、結果的に耐摩耗性に優れるものとなる。また、成型後のボンド相においては、特定方向への収縮率が高くなるといった事態を回避でき、製品としての寸法精度の向上が図れる。これに伴い、切断性能が向上するとともに、被切断材の加工品位が高められる。
すなわち、切断用ブレードの製造時に、例えばスラリー状とされたボンド相素材内を浮力などにより意図せず気孔が移動するようなことが3次元形状体により規制されて、製造された切断用ブレードにおいては、これら気孔が、ボンド相に偏析するようなことが防止されるとともに、略均一に分散配置される。これにより、上述した切断抵抗を低減する効果が、ブレード本体の切れ刃において均一に得られることになり、切断加工がより高精度に安定して行える。
具体的に、被覆層の厚さが2μm未満である場合、上述したブレード本体の側面摩耗を抑制する効果が得られにくくなる可能性がある。また、被覆層の厚さが20μmを超える場合、基層に気孔を分散した効果(切断抵抗の低減)が得られにくくなるとともに、チッピング等が抑制されにくくなる可能性がある。
具体的に、基層に占める気孔の体積比率が10%未満である場合、被切断材と、該被切断材に切り込むブレード本体の切れ刃のうち基層の露出部分(外周面におけるブレード厚さ方向の中央)との接触面積が大きくなり、上述した効果が得られにくくなる可能性がある。
また、基層に占める気孔の体積比率が70%を超える場合、切断時のブレード本体の摩耗量が大きくなり、工具寿命が短くなる可能性がある。
従って、気孔の、基層に占める体積比率は、10〜70%であることが好ましい。
具体的に、基層に占めるフィラーの体積比率が10%未満である場合、該フィラーの3次元形状体によって気孔の移動を規制する効果が得られにくくなるとともに、ボンド相に気孔が均一に分散されにくくなる可能性がある。
また、基層に占めるフィラーの体積比率が40%を超える場合、製造時に作製されるスラリーの粘度が高くなり、シート成形しにくくなる可能性がある。
従って、フィラーの、基層に占める体積比率は、10〜40%であることが好ましい。
また、基層に占めるフィラーの体積比率が上述の範囲内とされることで、該フィラーの3次元形状体が有する機能、つまり異方性を緩和する機能を十分発揮できるとともに該機能が過剰となるようなことも防止され、もって、耐摩耗性並びに切断性能のさらなる向上が図れるとともに、チッピング等の発生も確実に抑えることができる。
本実施形態の切断用ブレード10は、半導体デバイス(電子材料部品)に用いられる例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、炭化珪素(SiC)、石英、水晶等の硬脆材料を被切断材とした精密切断加工に使用されるものである。具体的に、この切断用ブレード10は、例えば発振子等、強ピッチで溝加工を必要とされる分野や、切断することによって個片化する製法をとる電子材料製造分野に適している。
砥粒3は、ダイヤモンド砥粒及びcBN砥粒の少なくともいずれかからなる。基層11のボンド相2において、複数の砥粒3同士は、互いの間隔が均一となるように分散されている。
フィラー4には、上述したもの以外に、前記3次元結晶構造のフィラー4aにおける針状部4aa(またはその先端部分)が折れてなる、単なる針状のフィラーも含まれる。
また、前記酸化亜鉛の結晶構造体からなるフィラー4のうち、前記3次元結晶構造のフィラー4aと酸化亜鉛の結晶構造体からなる他の形状のフィラー(4b、4c、4d)との体積比は、10:90〜90:10の範囲に設定されている。
そして、金属酸化物の結晶構造体からなるフィラー4の、基層11に占める体積比率は、10〜40%である。
金属酸化物の結晶構造体からなるフィラー4同士、及び、粉末状のフィラー5同士は、ボンド相2にそれぞれ略均一に分散されている。
気孔6は、内部に気孔を有する中空ビーズ体7がボンド相2に分散されて形成されている。このような中空ビーズ体7としては、内部に空隙が形成された公知のガラスビーズ等を用いることができる。これら気孔6(中空ビーズ体7)同士は、ボンド相2に略均一に分散されている。
そして、気孔6の、基層11に占める体積比率は、10〜70%である。
そして、被覆層12には、気孔が形成されておらず、また被覆層12は、基層11よりも硬度が高くされている。本実施形態では、被覆層12の厚さは、2〜20μmの範囲内とされている。
被覆層12においても、砥粒3同士は略均一に分散されている。
まず、基層11となるスラリーを作製する。
例えばフェノール樹脂(ボンド相2)素材を所定量秤量し、IPA溶媒を10ml加えてフェノール樹脂素材を溶解させる。次に、溶解させた樹脂溶液に、上述した砥粒3、酸化亜鉛の結晶構造体からなるフィラー4、WCからなる粉末状のフィラー5、及び中空ガラスビーズからなり、内部に気孔を有する中空ビーズ体7を添加して混ぜ合わせることにより、スラリーを形成する。ここで、上記フィラー4には、仮想四面体の中心から各頂点に向かって針状部4aaが四方に延びた3次元結晶構造のフィラー(3次元形状体)4aが少なくとも含まれる。尚、上記中空ビーズ体7としては、例えば、製品名:グラスバブルズS60HS(住友スリーエム株式会社)を用いることができる。
また、上記樹脂溶液に、シランカップリング剤を混合してもよい。
次いで、上記スラリーを、ドクターブレード法により、例えば厚さ0.3mmのシート状に成形する。
このシートを乾燥させた後、該シートから直径70mmの円板状ブレードをくり抜くことにより、基層11素材を形成する。
次いで、上記基層11素材を、ホットプレスにて圧縮成型する。成型条件は、例えば、熱板200℃、180℃雰囲気で30分間、圧力10tonである。
こうして基層11素材を圧縮成型したものを、所定サイズとなるように外周部と内周部を切断あるいは研削加工する。
本実施形態では、被覆層12を形成する工程として、無電解めっきを用いている。
具体的に、この被覆層形成工程は、表面洗浄工程と、エッチング工程と、キャタリスト工程と、めっき工程とを備えている。
エッチング工程では、基層11素材の表面を化学的に粗化する。このエッチング条件としては、例えば、三酸化クロム400g/L、98%硫酸400g/L、三価クロム10g/L、温度70℃、処理時間10分である。
キャタリスト工程では、基層11素材の表面に、無電解めっきの核となる触媒金属を吸着させる。このキャタリスト条件としては、例えば、商品名:ブラウンシューマーI(登録商標)(日本カニゼン株式会社製)、温度30℃、時間3分である。
めっき工程では、基層11素材の表面に、無電解めっきを形成する。このめっき条件としては、例えば、無電解銅めっき30℃・15分、無電解Niめっき40℃・10分である。
また、被覆層12を樹脂材料で形成する場合は、上述のスラリー形成工程及び成形工程にて、樹脂溶液に砥粒3を添加して混ぜ合わせたスラリーを別途用意し、該スラリーをシート状に成形してなる被覆層12素材を、上記基層11素材に積層させて、圧縮工程で圧縮成型すればよい。
尚、上述した各工程における材料の種類や名称、成形寸法、各種条件等は、本実施形態に限定されるものではない。
このため、このようなフィラー4aが添加された基層11のボンド相2は、異方性(ここで言う異方性とは、例えば従来の針状又は繊維状のフィラーが製造時の成形等により所定方向に配列されるような状態を差す)が緩和されることとなり、どの方向に対しても略同一の耐摩耗性を確保でき、結果的に耐摩耗性に優れるものとなる。また、成型後のボンド相2においては、特定方向への収縮率が高くなるといった事態を回避でき、切断用ブレード10の製品としての寸法精度の向上が図れる。これに伴い、切断性能が向上するとともに、切断されたチップ(被切断材)の加工品位が高められる。
すなわち、切断用ブレード10の製造時に、例えばスラリー状とされたボンド相2素材内を浮力などにより意図せず気孔6(つまり中空ビーズ体7)が移動するようなことが3次元形状体であるフィラー4aにより規制されて、製造された切断用ブレード10においては、これら気孔6が、ボンド相2に偏析するようなことが防止されるとともに、略均一に分散配置される。これにより、上述した切断抵抗を低減する効果が、ブレード本体1の切れ刃において均一に得られることになり、切断加工がより高精度に安定して行える。
具体的に、被覆層12の厚さが2μm未満である場合、上述したブレード本体1の側面1B摩耗を抑制する効果が得られにくくなる可能性がある。また、被覆層12の厚さが20μmを超える場合、基層11に気孔6を分散した効果(切断抵抗の低減)が得られにくくなるとともに、チッピング等が抑制されにくくなる可能性がある。
具体的に、基層11に占める気孔6の体積比率が10%未満である場合、被切断材と、該被切断材に切り込むブレード本体1の切れ刃のうち基層11の露出部分(外周面1Aにおけるブレード厚さ方向の中央)との接触面積が大きくなり、上述した効果が得られにくくなる可能性がある。
また、基層11に占める気孔6の体積比率が70%を超える場合、切断時のブレード本体1の摩耗量が大きくなり、工具寿命が短くなる可能性がある。
従って、気孔6の、基層11に占める体積比率は、10〜70%であることが好ましい。
具体的に、基層11に占めるフィラー4の体積比率が10%未満である場合、該フィラー4の3次元形状体4aによって気孔6の移動を規制する効果が得られにくくなるとともに、ボンド相2に気孔6が均一に分散されにくくなる可能性がある。
また、基層11に占めるフィラー4の体積比率が40%を超える場合、製造時に作製されるスラリーの粘度が高くなり、シート成形しにくくなる可能性がある。
従って、フィラー4の、基層11に占める体積比率は、10〜40%であることが好ましい。
また、基層11に占めるフィラー4の体積比率が上述の範囲内とされることで、金属酸化物の結晶構造体のうち3次元結晶構造のフィラー4aが有する機能、つまり異方性を緩和する機能を十分発揮できるとともに該機能が過剰となるようなことも防止され、もって、耐摩耗性並びに切断性能のさらなる向上が図れるとともに、チッピング等の発生も確実に抑えることができる。
尚、ボンド相2に、酸化亜鉛の結晶構造のフィラー4のみで比較的硬度が高いWCからなる粉末状のフィラー5を有さない場合には、ボンド相2の摩耗が必要以上に進んでしまい、切断用ブレード10としての寿命が短くなってしまう可能性がある。
本実施形態では、フィラーとして、酸化亜鉛の結晶構造フィラー4の他に該結晶構造のフィラー4よりも硬度が高いWC粉末状のフィラー5を用いているので、ボンド相2の摩耗が進むのを適宜抑えることができ、これによって、前述したように切断性能の向上並びにチッピング等の発生を抑制する他、長寿命化を図ることもできる。
尚、針状部4aaの長さが0.1μm未満であると、フィラーとしての大きさを確保することができず、該フィラーを添加する際の効果である、機械的強度を補う効果が得られにくくなる。また、針状部4aaの長さが100μmを超えると、針状部4aa自体が損傷しやすくなり、例えばボンド相2に添加する際あるいは成型時において、針状部4aaが折れたりあるいは曲がったりするおそれがあり、3次元結晶構造の利点が得られにくくなる。
3次元結晶構造のフィラー4aの表面に微細な凹凸が生じており、この凹凸のうち凹所の底部にはボンド相2が進入しにくい。しかしながら、3次元結晶構造のフィラー4aの表面がシランカップリング剤で予めコーティンされていると、3次元結晶構造のフィラー4aの表面の濡れ性が改善されて、ボンド相2と十分なじむこととなり、このため、3次元結晶構造のフィラー4aの表面の凹所の底部にまで、ボンド相2が進入する。この結果、ボンド相2の3次元結晶構造のフィラー4aに対する保持力が高まり、3次元結晶構造のフィラー4aがボンド相2からむやみに脱落するのを回避できる。
尚、3次元結晶構造のフィラー4aの表面をシランカップリング剤で予めコーティング処理する方法としては、公知の乾式処理法やスラリー法が採用される。
また、被覆層12が、基層11をブレード厚さ方向の両外側から覆うように一対設けられているとしたが、基層11の両外側のうち一方のみに被覆層12が設けられていてもよい。ただし、本実施形態のように、基層11の両外側に被覆層12がそれぞれ設けられることにより、ブレード本体1の切断性能が安定し、変形や反りも抑制されることから、好ましい。
具体的には、上述の実施形態の製造方法により切断用ブレードを複数作製し、これら切断用ブレードのうち、基層11のボンド相2に気孔6を有するものと、有しないものとを作製し、上記ボンド相2に気孔6を有しないものを比較例1とした。また、ボンド相2に気孔6を有するもののうち、基層11に被覆層12が積層されていないものを比較例2とした(尚、比較例1にも被覆層12は形成していない)。そして、上述した実施形態に準ずる切断用ブレード10、すなわちブレード本体1の基層11に気孔6が分散され、かつ、該基層11に被覆層12が積層されたものを作製し、被覆層12の厚さを、1μm、2μm、5μm、10μm、15μm、20μm、30μmとして、この順に実施例1〜7とした。尚、基層11の組成(気孔6分を含めない体積比率)としては、砥粒3を25%、ZnO(フィラー4)を7.5%、WC(フィラー5)を18.75%とし、残部を、基層11に占める気孔6の割合(気孔率)が40%となるように設定された中空ビーズ体7及びフェノール系樹脂(ボンド相2)とした。また、ボンド相2に分散される砥粒3の集中度は、100とした。また、被覆層12は、上述の実施形態に準じて、無電解めっきにより形成した。
一方、比較例1、2では、最大チッピング量が大きくなり、角欠けも確認された。なかでも、基層11に気孔6を有しない比較例1では、最大チッピング量が最大となっていた。
2 ボンド相
3 砥粒
4 フィラー
4a 3次元結晶構造のフィラー(3次元形状体)
4aa 針状部
6 気孔
7 中空ビーズ体
10 切断用ブレード
11 基層
12 被覆層
Claims (6)
- 円形薄板状のブレード本体を有する切断用ブレードであって、
前記ブレード本体は、
ボンド相に砥粒及びフィラーが分散された基層と、
前記基層に、前記ブレード本体の厚さ方向の外側から積層される被覆層と、を備え、
前記基層のフィラーは、仮想四面体の中心から各頂点に向かって針状部が四方に延びた3次元形状体を少なくとも含み、
前記基層のボンド相には、気孔が分散されており、
前記被覆層には、気孔が形成されていないことを特徴とする切断用ブレード。 - 請求項1に記載の切断用ブレードであって、
前記気孔は、内部に気孔を有する中空ビーズ体が前記ボンド相に分散されて形成されていることを特徴とする切断用ブレード。 - 請求項1又は2に記載の切断用ブレードであって、
前記被覆層は、前記基層よりも硬度が高いことを特徴とする切断用ブレード。 - 請求項1〜3のいずれか一項に記載の切断用ブレードであって、
前記被覆層の厚さが、2〜20μmの範囲内であることを特徴とする切断用ブレード。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の切断用ブレードであって、
前記気孔の、前記基層に占める体積比率が、10〜70%であることを特徴とする切断用ブレード。 - 請求項1〜5のいずれか一項に記載の切断用ブレードであって、
前記フィラーの、前記基層に占める体積比率が、10〜40%であることを特徴とする切断用ブレード。
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