JP2019177452A - カーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、このクリープフィード研削の問題点は、砥石と工作物との干渉域において、砥粒の接触弧長さが長くなり摩擦熱の発生が増加され、研削熱が大きくなることである。このため、砥石結合剤の熱劣化に伴う砥粒の後退が起こり、十分な砥粒突き出し量が得られないことにより研削抵抗の上昇や研削焼けが発生する。
このような課題を解決するために、耐熱性、放熱性、高温耐摩耗性を改善したレジンボンドを用いた高性能な砥石が社会的に求められている。
前記円盤状台板は、ポリイミド樹脂などの合成樹脂材の中にカーボンナノチューブを混練し、加熱、加圧して円盤状台板を成形し、それにより該台板の比弾性率を向上させている。
しかしながら、その方法では、隣接する樹脂粉の境界面にカーボンナノチューブが存在することになり、成形体におけるカーボンナノチューブの分散状態は均一とはいえない。
そのようにカーボンナノチューブが不均一に分散すると、均一な強度を得ることができず、成形体の強度低下をより招くという課題があった。
尚、特許文献1には、この強度低下の課題を解決するための手段については言及されず、そもそも砥粒層にカーボンナノチューブを混入することについては全く示唆されていない。
尚、前記レジンボンド樹脂の中に、付加物質として金属粉末、セラミックス粉末のいずれかを含むことが好ましい。
レジンボンド樹脂の中に付加物質を含まない場合、前記カーボンナノチューブの濃度とは、砥石を除くレジンボンド樹脂のみに対する濃度のことを示す。
また、レジンボンド樹脂の中に付加物質を含む場合、前記カーボンナノチューブの濃度とは、砥石及び付加物質を除くレジンボンド樹脂のみに対する濃度のことを示す。
また、任意断面における1μm2におけるレジンボンド樹脂の面積に対するカーボンナノチューブの面積の変動係数についても、砥石、付加物質を除くレジンボンド樹脂の面積に対するカーボンナノチューブの面積の変動係数のことを示す。
また、前記砥粒は、ダイヤモンドまたはCBN(立方晶窒化ホウ素)であることが望ましい。
カーボンナノチューブの濃度が74.0vol%以上では、理論上、空隙が出て充填密度が出せないため好ましくない。一方、前記カーボンナノチューブの濃度の下限値は特に限定されるものではないが、0.72vol%以上であることが好ましい。
更に説明すると、強度については、15.1vol%未満の場合には、カーボンナノチューブの濃度の増加によって向上するが、前記カーボンナノチューブの濃度が15.1vol%を超える場合には低下する。しかしながら、それでも十分な強度を有するため、前記カーボンナノチューブの濃度範囲において、成形体が高弾性率、高耐熱性、及び高放熱性の点で優れた特性を有するといえる。
本発明は、任意断面における1μm2におけるレジンボンド樹脂の面積に対するカーボンナノチューブの面積の標準偏差を平均値で除した変動係数が、0.1以下である点に特徴を有する。
任意断面における1μm2におけるカーボンナノチューブの面積の変動係数が、0.1を超える場合には、カーボンナノチューブが局在化している、或いは、カーボンナノチューブが均一に分散されていないため、強度が低く好ましくない。
また、砥石のうち、砥粒及び付加物質を含まないカーボンナノチューブ複合樹脂成形体の曲げ弾性率を少なくとも、4000MPaとすることができる。
また、砥石のうち、砥粒及び付加物質を含まないカーボンナノチューブ複合樹脂成形体の熱拡散率を、少なくとも3×10−3cm2/s以上とすることができる。
尚、前記樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子と砥粒とを所定量混合する工程において、金属粉末またはセラミックス粉末からなる付加物質を添加する工程を含み、砥粒は全体の12.5〜37.5vol%程度、砥粒を除く部分に対する付加物質の割合が10〜70vol%であることが望ましい。
加えて、前記樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子の樹脂が前駆体であるポリアミック酸であり,ポリアミック酸のイミド化率が80%以下であり,樹脂中のカルボキシル基とイミノ基が加熱によって反応し,イミド化が進み、ポリイミド樹脂を成形することが望ましい。
(カーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石)
図1に示すようにカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石100は、円盤状の基体10とその外周面に配置された砥粒層11とを有する。円盤状の基体10は、例えば鋼鉄等の金属、アルミ等の軽金属により形成され、その外周面に前記砥粒層11が接着剤または焼嵌め等の物理的結合により結合され配置されている(図示しないが、円盤状の基体が省かれて、全て砥粒層のみで構成される場合もある)。
本発明は、前記砥粒12と前記付加物質を除くレジンボンド3中において、カーボンナノチューブの濃度が74.0vol%以下であり、かつ任意断面における1μm2におけるカーボンナノチューブの面積の変動係数が、0.1以下である点に特徴を有している。
尚、本発明に係るカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石において、カーボンナノチューブ濃度とは、レジンボンド3の中に付加物質を含まない場合、砥石12を除くレジンボンド3のみに対する濃度のことを示す。
また、レジンボンド3の中に付加物質を含む場合、前記カーボンナノチューブの濃度とは、砥石12及び付加物質を除くレジンボンド3のみに対する濃度のことを示す。
カーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石100におけるカーボンナノチューブ1の濃度が高くなるにつれて、電気伝導性、熱伝導性、弾性率などに優れた特性を有する。
しかしながら、レジンボンド3中におけるカーボンナノチューブ1の濃度が高すぎると、理論上充填が困難となり、空隙ができることとなり、好ましくない。
そのため、本発明にかかるカーボンナノチューブ複合樹脂成形体100にあっては、砥石12や付加物質を除くレジンボンド3に対するカーボンナノチューブの濃度が74.0vol%以下になされている。
一方、前記カーボンナノチューブの濃度の下限値は特に限定されるものではないが、本発明者らの実験では、カーボンナノチューブの濃度が0.72vol%の場合でも、所定の効果をえることができるため、好ましくは、カーボンナノチューブの濃度が0.72vol%以上である。
そのため、カーボンナノチューブの分散の一つの指標として、任意断面における、1μm2におけるカーボンナノチューブの面積の変動係数で特定する。
即ち、カーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石100において、任意断面における1μm2におけるカーボンナノチューブの面積の変動係数が0.1以下となされている場合には、カーボンナノチューブが均一に分散され、所定の強度、耐熱性を得ることができる。
この変動係数が小さいほど、単位面積あたりのカーボンナノチューブの面積のばらつきが小さく、均一に配合されていることを意味する。
したがって、カーボンナノチューブの面積の変動係数は、より小さいことが好ましく、前記変動係数が、0.1を超える場合には、カーボンナノチューブが均一に分散されていないため、強度、耐熱性が低く、好ましくない。
次に、前記カーボンナノチューブ複合樹脂成形体100を製造するために必要な樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子の構造について説明する。
図2、図3に示すように樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子6は、複数本の樹脂被覆カーボンナノチューブ5が、表面の樹脂層2同士で連結することにより形成されている。図示するように、連結した複数の樹脂被覆カーボンナノチューブ5の間には、空隙4が形成されている。
前記樹脂層2は、例えばポリアミック酸を含む樹脂(前駆体)であり、イミド化率は80%以下であることが望ましい。
言い換えれば、成形体中におけるカーボンナノチューブ1の濃度は、カーボンナノチューブ1基材に対する樹脂層2の厚さにより調整することができる。
即ち、カーボンナノチューブの濃度を高くする場合には、カーボンナノチューブ1を被覆する樹脂層2の厚さをより薄く形成し、濃度を低くする場合には、カーボンナノチューブ1を被覆する樹脂層2の厚さをより厚くなるよう形成すればよい。
尚、カーボンナノチューブの濃度をより高くすれば、成形体としての強度、弾性率、放熱性、耐熱性をより高くすることができる。
次に前記樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子6の製造方法について説明する。
前記樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子6は、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液に多数本のカーボンナノチューブ1を混合し、再沈殿させる方法により生成することができる。
具体的に説明すると、カーボンナノチューブ(Nanocyl NC7000)とポリアミック酸ワニス(宇部興産製 U-Varnish A)を任意の割合で混合する。混合溶液を貧溶媒中へ滴下し再沈後、吸引濾過し任意の被覆量のポリアミック酸被覆CNT、即ち樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子6を得る。
続いて、前記樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子6を用いた、カーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石100の製造方法について説明する。
先ず、図5(a)に示す前記樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子6の他、例えばダイヤモンドの砥粒12と、好ましくは付加物質として例えばセラミックス粉や金属粉(銅、ニッケルなど)を混合し混合体を形成する。ここで成形後のレジンボンド3中における砥粒12と付加物質の配合比は、砥粒は全体の12.5〜37.5vol%程度、砥粒を除く部分に対するセラミックスや金属の微粉の割合は10〜70vol%が好ましい。
加熱された樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子6の樹脂層2は、化学反応によりポリイミド化し、隣接する樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子6間において樹脂層2同士が連結する。
このとき、カーボンナノチューブは前記したように樹脂で被覆されているために、凝集が抑制され、均一な分散状態を保ったままで、樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子6の樹脂層2が化学反応によりポリイミド化する。
これにより、図5(b)に示すようにレジンボンド3中のカーボンナノチューブ1が所定濃度で、かつ均一に分散されたカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石100を得ることができる。
尚、図5では、樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子6を球状に示しているが、実際は、図2に示すように、樹脂被覆カーボンナノチューブが絡み合った形状に形成されている。
例えば、砥粒12としてCBN(立方晶窒化ホウ素)を用いてもよい。
実験1では、レジンボンド中におけるカーボンナノチューブの濃度(vol%)がカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石の曲げ強度(MPa)に与える影響について検証した(砥粒及び付加物質を含まない成形体に対し曲げ強度の検証を行った)。曲げ強度の測定は、3点曲げ試験により実施した。
カーボンナノチューブとしては、平均長さ1.5μm、直径約10nmのものを用い、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液に多数本のカーボンナノチューブを混合し、再沈殿させる方法により生成した樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子を用いた。
そして、前記混合体に対し、真空ホットプレス装置(図示せず)を用いて、数Paの減圧下、380℃で数時間加熱し、カーボンナノチューブ複合樹脂成形体を得た。
尚、カーボンナノチューブの濃度は、樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子の樹脂被覆の厚さを変化させることにより、変化させた。このときの被覆樹脂であるポリアミック酸のイミド化率は、23.5%であった。
具体的には、ミキサとして日本コークス製MP5を用い、イミド化率がほぼ100%であるポリイミド粉(宇部興産製UIP−R)をカーボンナノチューブと混合し、ポリイミド粉表面にカーボンナノチューブを付着させた複合粒子を形成した。そして、その複合粒子を金型に充填し、真空ホットプレスにより温度約400℃、プレス圧約200MPaで成形した。
比較例1のカーボンナノチューブの濃度を7.34vol%とし、比較例2のカーボンナノチューブの濃度を2.16vol%とした。
尚、カーボンナノチューブの濃度は混合機に投入するカーボンナノチューブの量により変化させた。
その結果、実施例1、実施例2、実施例3の変動係数は、いずれも0.1以下であり、比較例1と比較例2の変動係数は、いずれも約1.1であった。
これにより、実施例1〜3は比較例1、2に比べて、カーボンナノチューブが均一に分散されていることが確認された。
その結果を図6の棒グラフに示す。図6のグラフにおいて、縦軸は最大曲げ応力(MPa)である。
このグラフに示されるように、例えばカーボンナノチューブの濃度2.16vol%の場合、比較例2の結果に対し実施例1の結果は約302%強度が向上した。また、カーボンナノチューブの濃度7.34vol%の場合、比較例1の結果に対し実施例2の結果は約572%強度が向上した。
この結果より、比較例では、カーボンナノチューブ濃度が高くなるについて強度が下がるのに対して、実施例ではカーボンナノチューブ濃度が高くなるにつれて強度が高くなることを確認することができた。
また、カーボンナノチューブの濃度が15.1vol%の実施例3の結果は、実施例1,2の結果よりも高い曲げ応力が得られた。
実験2では、レジンボンド中におけるカーボンナノチューブの濃度(vol%)を種々変えて、成形体の最大曲げ応力(MPa)と曲げ弾性率(MPa)に与える影響について検証した(砥粒及び付加物質を含まない成形体に対し最大曲げ応力と曲げ弾性率の検証を行った)。
実施例4〜10のいずれも、実施例1から実施例3と同様に、樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子を、再沈殿法により生成し、所定量の樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子を加熱して反応成形することによりカーボンナノチューブ複合樹脂成形体を得た。
このとき、実施例4のカーボンナノチューブの濃度は0.72vol%とし、実施例5のカーボンナノチューブの濃度は2.16vol%とし、実施例6のカーボンナノチューブの濃度は3.62vol%とした。また、実施例7のカーボンナノチューブの濃度は7.34vol%とし、実施例8のカーボンナノチューブの濃度は15.1%、実施例9のカーボンナノチューブの濃度は41.6vol%とし、実施例10のカーボンナノチューブの濃度は74.0vol%とした。
その結果、実施例4〜実施例10の変動係数は、いずれも0.1以下であった。
これにより、実施例4〜10は比較例1,2に比べて、カーボンナノチューブが均一に分散されていること確認された。
実験2「カーボンナノチューブの濃度の効果」の結果を図7のグラフに示す。
また、最大曲げ応力は、カーボンナノチューブ濃度が15.1vol%までは増加し、237MPaに達する。カーボンナノチューブ濃度が41.6vol%、74.0vol%では、濃度15.1vol%に比べて最大曲げ応力は下がるものの、120MPa以上の曲げ応力を有することがわかった。
即ち、本発明のカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石のように、カーボンナノチューブの面積の変動係数が、0.1以下の範囲内にあり、高濃度のカーボンナノチューブを有することにより、最大曲げ応力と曲げ弾性率が向上することを確認した。
実験3では、樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子における樹脂部のイミド化率が成形体における最大曲げ応力に与える影響について検証した。
本実験の実施例においてカーボンナノチューブの濃度は,7.34vol%で固定し、樹脂被覆カーボンナノチューブの樹脂のイミド化率を実施例11では23.5%、実施例12では49.1%、実施例13では78.8%、実施例14では100%とした。そして、各実施例において所定量の樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子を加熱して反応成形することによりカーボンナノチューブ複合樹脂成形体を得た。
また、500℃で1時間処理した試料の吸光度比をイミド化率100%とし、1775cm−1/1500cm−1=0をイミド化率0%と定義した。
その結果、実施例11〜実施例14の変動係数は、いずれも0.1以下であった。
図8のグラフに示すように、イミド化率80%までは、最大曲げ応力は200MPa以上であるが、イミド化率100%では最大曲げ応力が大幅に低下した。これはイミド化率が高く,成形中に反応が起こらないため、樹脂同士の結合が弱いことに起因すると考えられる。
実験4では、本発明のカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石の高温耐摩擦性を検証した(砥石及び付加物質を除く成形体に対し試験)。
実施例15では、所定量の樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子を加熱して反応成形することによりカーボンナノチューブ濃度が1.04vol%のカーボンナノチューブ複合ポリイミド樹脂成形体を得た。
比較例3では、ミキサとして日本コークス製MP5を用いてカーボンナノチューブ(Nanocyl製NC7000,直径約10nm,平均長さ1.5μm)とポリイミド粉(宇部興産製UIP−R)とを混合し、ポリイミド粉表面にカーボンナノチューブを付着させた複合粒子を形成した。そして、比較例1と同様条件の加熱成形により成形体を得た。
その結果、実施例15の変動係数は、0.1以下であり、比較例3の変動係数は、約1.1であった。
これにより、実施例15は比較例3に比べて、カーボンナノチューブが均一に分散されていること確認された。
図9は、実験4の結果を示す棒グラフである。図9のグラフにおいて縦軸は摩耗体積(mm3)である。
図9のグラフに示すように、比較例3では摩耗体積が1.4mm3、実施例15では摩耗体積が0.25mm3であった。即ち、比較例3に比べて、実施例15では,カーボンナノチューブの複合化と反応成形の効果により摩耗体積が著しく減少した(実施例15の摩耗体積は,比較例3の約17%程度)。このことから、本発明のカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石の高温耐摩擦性が示された。
実験5では、本発明のカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石におけるカーボンナノチューブ濃度が熱拡散率(cm2/s)に与える影響について検証した。
実施例は、前記した実施例5、7、9、10(それぞれカーボンナノチューブ濃度2.16vol%,7.34vol%,41.6vol%,74.0vol%)のカーボンナノチューブ複合樹脂成形体の熱拡散率(cm2/s)を求めた。
比較例4として、ポリイミド粉(宇部興産製UIR−P)のみを真空ホットプレス装置でプレス成形し、カーボンナノチューブ濃度0vol%の成形体を得て、その熱拡散率を求めた。
このグラフに示されるように、熱拡散率はカーボンナノチューブ濃度に従って増加することが確認できる。実施例10のカーボンナノチューブ濃度74.0vol%では熱拡散率が4.54×10−3cm2/sに達する。比較例4(カーボンナノチューブ濃度0vol%)は、熱拡散率が2.364×10−3cm2/sであることから、実施例10では比較例4に比べて1.92倍程度、放熱性が向上することを確認した。
実験6では、本発明のカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石の寿命性能について検証した。尚、本実験6でいうカーボンナノチューブ濃度とは、砥石及び付加物質を除くレジンボンド樹脂に対するカーボンナノチューブの体積率を示す。
具体的には、直径約180mmの円盤状のレジンボンド砥石を用いて円筒状被削材の外周をつるまき状に研削加工し、被削材の加工した溝先端半径を測定し、その変化量に基づき砥石寿命を評価した。即ち、砥石の先端形状が被削材に転写されるため、図11に示すように加工初期と加工後の溝先端半径を測定することによって、砥石の摩耗状態を確認することができる。
この実験6において使用する砥石形状の断面は、図12に示す通りである。図示するように先端35の形状は砥石(砥粒)の摩滅を促進させるため、V字形状(先端角度60°)とした。
図13に示すように被削材40は、円筒状(全長107mm、径10mm、被研削長60mm)の超微粒超硬合金により形成し、その一端をコレットチャック41により保持するとともに図示する矢印の方向に回転させた(ワーク回転数10rpm)。
尚、クーラントには、不水溶性研削油(粘度22cst、40℃、0.5MPa)を使用した。
そして、前記得られたカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石を用いて、上記の試験を行った。
また、比較例6として、カーボンナノチューブとポリイミド粉とを混合しダイヤモンド砥石とともに焼結し製造した円盤状のレジンボンド砥石(カーボンナノチューブ濃度2.16vol%)を用い、実施例16と同様の条件で試験を行った。
その結果、実施例16の変動係数は、0.1以下であり、比較例6の変動係数は、約1.1であった。
これにより、実施例16は比較例6に比べて、カーボンナノチューブが均一に分散されていること確認された。
図14のグラフに示すように実施例16、比較例5、6の砥石は、いずれも加工長さ1000mm付近までは摩耗状態が安定しているが、比較例5、6の砥石ではそれ以降,急激に摩耗が進む傾向が見られた。
また、カーボンナノチューブを含む比較例6の砥石は従来砥石よりも摩耗の進行が僅かに遅いが、1500mm付近から急激に摩耗する傾向にあり、グラフの傾きは比較例5の砥石と同等である。
実施例16の砥石は、加工長さ1000mm付近から摩耗が徐々に進行するが、比較例5、6の砥石に見られるような急激な摩耗はなく、加工長さ1500mm付近から安定領域となることが分かる。本試験の結果を基に各砥石における加工後の溝先端半径を砥石寿命に置き換えて比較例5と比較すると、カーボンナノチューブを含む比較例6では1.3倍となり、実施例16では3.6倍となった。即ち、ポリイミドとカーボンナノチューブとを反応成形した砥石とすることにより砥石寿命を従来比で3.6倍に改善できることを確認した。
この表に示されるようにレジンボンドに対するカーボンナノチューブの濃度が74.0vol%以下であり、かつ任意断面における1μm2におけるレジンボンドの面積に対するカーボンナノチューブの面積の変動係数が、0.1以下である本発明のカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石であれば、砥粒の保持力、強度、放熱性、耐熱性、及び高温耐摩擦性を従来よりも向上できることを確認した。
2 樹脂層(前駆体)
3 レジンボンド
4 空隙
5 樹脂被覆カーボンナノチューブ
6 樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子
10 基体
11 砥粒層
12 砥粒
100 カーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石
Claims (7)
- ポリイミドからなるレジンボンドの中に複数の砥粒とカーボンナノチューブとが配合されたカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石であって、
レジンボンド樹脂に対するカーボンナノチューブの濃度が74.0vol%以下であり、かつ任意断面における1μm2におけるレジンボンド樹脂の面積に対するカーボンナノチューブの面積の変動係数が、0.1以下であることを特徴とするカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石。 - 前記レジンボンドの中に、付加物質としてセラミックス、金属粉末のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載されたカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石。
- 前記砥粒は、ダイヤモンドまたはCBN(立方晶窒化ホウ素)であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石。
- ポリイミドからなるレジンボンドの中に複数の砥粒とカーボンナノチューブとが配合されたカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石の製造方法であって、
レジンボンドの前駆体にカーボンナノチューブを混合し、再沈殿法により樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子を生成する工程と、
前記樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子と砥粒とを所定量混合する工程と、
前記混合した樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子を砥粒とを成形するとともに加熱し、化学反応によりレジンボンドを形成し、砥石を得る工程と、
を備えることを特徴とするカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石の製造方法。 - 前記樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子と砥粒とを所定量混合する工程において、
金属粉末またはセラミックス粉末からなる付加物質を添加する工程を含み、
砥粒は全体の12.5〜37.5vol%、砥粒を除く部分に対するセラミックスあるいは金属粉末の割合が10〜70vol%であることを特徴とする請求項4に記載されたカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石の製造方法。 - 樹脂の前駆体にカーボンナノチューブを混合し、再沈殿法により樹脂被覆カーボンナノチューブ粒子を生成する工程において、
前記カーボンナノチューブを被覆する樹脂層の厚さによりレジンボンド中におけるカーボンナノチューブの濃度を制御することを特徴とする請求項4または請求項5に記載されたカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石の製造方法。 - 前記砥粒は、ダイヤモンドまたはCBN(立方晶窒化ホウ素)であることを特徴とする請求項4乃至請求項6のいずれかに記載されたカーボンナノチューブ複合レジンボンド砥石の製造方法。
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