JP2013152192A - 有機化合物分析装置及び有機化合物分析方法 - Google Patents

有機化合物分析装置及び有機化合物分析方法 Download PDF

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Abstract

【課題】低波数領域でのラマン散乱分光によることで、従来の赤外吸収分光法に比べ、よりシャープな振動ピークが非破壊かつ非接触にて得られ、有機化合物の分子構造や原子間の結合状態等の分子構造の分離に有利であり、有機化合物の同定や分子構造の特定が簡易化された有機化合物分析装置及び有機化合物分析方法を提供する。
【解決手段】分析装置100は、レーザー光源10と、レーザー光源からの励起光をNiサンプル基板80に集光する対物レンズ20と、レーザー光源からの励起光を反射すると共に、Niサンプル基板80から出射した散乱光のうち励起光に対する振動数の差が900cm−1以下のラマン散乱光を少なくとも透過するダイクロイックビームスプリッター30と、ダイクロイックビームスプリッターを透過した透過光中のレーリー散乱光をラマン散乱光と分離するラマン分光用エッジフィルタ40と、ラマン散乱光を分光する分光器50とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、有機化合物分析装置及び有機化合物分析方法に関する。
従来から、物質の同定あるいは特徴を評価、確認するための手法として、例えば、ラマン散乱分光法、赤外吸収分光法、和周波発生法、電子エネルギー損失分光法等の各種分光法が知られており、種々の分野で広く利用されている。
シリコン膜からなる半導体薄膜のチャネル領域におけるラマン散乱法によるラマンピークは、その波数が517/cm以下であることが知られており(例えば、特許文献1参照)、例えばシラノール構造を有する化合物の有無の検証などに利用されている。
具体的な例として、金属被覆ナノ結晶多孔質シリコン基体を使用し、アミノ酸や糖、薬剤などの分析対象物質を検出、同定するラマン分光分析法や、分極軸方位を同定する基準ラマンシフトを決定しておき、基準ラマンシフトのラマン散乱光の強度を見て分極軸方位を同定する結晶評価方法などが提案されている(例えば、特許文献2〜3参照)。また、ラマン散乱法を利用して、400〜2500cm−1程度の波数領域で、試料溶液ドロップ中におけるタンパク質の結晶化や結晶性を判定、判別する方法が開示されている(例えば、特許文献4参照)。
また、光を試料上に収束させて発生させたラマン信号が通過するフィルタを用いたラマン分光システムが開示されている(例えば、特許文献5参照)。
国際公開第2006/030522号パンフレット 特開2006−514286号公報 特開2007−3330号公報 特開2007248280号公報 特開2007−535680号公報
上記のように、従来から物質の同定やその特徴を把握するための手法の1つとしてラマン散乱分光法は広く利用されてはいるものの、従来から行なわれている分析手法では、必ずしも有用な手法とならない場合がある。
すなわち、振動ピークの近い複数の官能基が分子内に混在する化合物や、振動ピークが低波数域に現れるような官能基を持つ化合物に対しては、明瞭なピーク波形が得られ難い。例えば、Si−O部位とフッ化アルキル部位(C−F部位)とが一分子中に存在する化合物の場合、一般に用いられる赤外吸収分光法の分子の指紋領域(1000cm−1〜1800cm−1)で計測しようとすると、図10に示されるように、Si−O部位とC−F部位の振動ピークが重なって現れるために、信号の分離が難しい。これは、アルキル部位の鎖長が長いなど、比較的複雑な構造を持つ化合物であるほど顕著になる。また、分子中にビフェニル環等の芳香環部位を有する化合物の場合、このような芳香環部位に由来する振動ピークも重なりやすく、明瞭なスペクトルとして他ピークと分離しにくい。そのため、このような有機化合物は、その分子構造や分子中における結合状態を必ずしも把握することができない課題がある。
本発明は、上記状況に鑑みなされたものであり、低波数領域でのラマン散乱分光によることで、従来の赤外吸収分光法に比べ、よりシャープな振動ピークが非破壊かつ非接触にて得られ、有機化合物の分子構造や原子間の結合状態等の分子構造の分離に有利であり、有機化合物の同定や分子構造の特定が簡易化された有機化合物分析装置及び有機化合物分析方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
前記課題を達成するための具体的手段は以下の通りである。即ち、第1の発明は、
<1> 励起光を照射する光源と、有機化合物を含む対象物に対向して配置され、前記対象物の計測位置に前記励起光を集光する対物レンズと、前記励起光が入射された前記対象物から出射した散乱光が通過する光路上に配置され、前記散乱光のうち、前記励起光に対する振動数の差が900cm−1以下のラマン散乱光と前記励起光と同波長の散乱光の少なくとも一部とを分光する第1の分光鏡と、前記分光鏡により分光(反射又は透過)された後のラマン散乱光を含む光中の、前記励起光と同波長の散乱光と、ラマン散乱光とを分離する分光フィルタと、前記励起光が入射された前記対象物から出射した散乱光の強度の検出が可能な検出器を有し、前記分光フィルタを透過した透過光から前記ラマン散乱光を分光する分光手段とを備え、前記対象物における有機化合物の化学構造を分析する有機化合物分析装置である。
<2> 前記有機化合物は、シラノール基を有するシラン系化合物である前記<1>に記載の有機化合物分析装置である。
<3> 前記有機化合物は、シラノール基と、フルオロアルキル基、フルオロエーテル基、及び芳香族基から選ばれる有機基と、を有する化合物である前記<1>又は前記<2>に記載の有機化合物分析装置である。
<4> 前記有機化合物は、シラノール基と、フルオロアルキル基と、前記シラノール基のSi原子とフルオロアルキル基の炭素原子とに結合された2価の芳香族基とを含む化合物である前記<1>〜前記<3>のいずれか1つに記載の有機化合物分析装置である。
<5> 励起光の波長以上の波長を有する光と励起光より短波長の光とを分光する第2の分光鏡と、前記第2の分光鏡で分光(反射又は透過)された前記励起光より短波長の光が入射することで顕微画像を表示する画像表示手段とを更に備えた前記<1>〜前記<4>のいずれか1つに記載の有機化合物分析装置である。
第1の発明において、励起光に対する振動数の差が900cm−1以下(下限としては例えば10cm−1以上、更には100cm−1以上とすることができる)であるラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光を900cm−1以下の低波数領域で分光分析を行ない、低波数領域でのラマンスペクトルを分光分析することで、有機化合物の化学構造に固有のスペクトルが明瞭に捉えられる。これにより、有機化合物の分子構造や原子間の結合状態を非破壊かつ非接触にて簡易に把握し、有機化合物の同定や分子構造の特定が容易に行なえる。
特に有機化合物として、シラノール基を有するシラン系化合物、更にはシラノール基とフルオロアルキル基、フルオロエーテル基、及び芳香族基から選ばれる有機基とを有する化合物における化学構造固有のスペクトルがシャープに得られ、該化合物の分子構造や原子間の結合状態を特定するのに有効である。
次に、第2の発明は、
<6> 有機化合物を含む対象物に励起光を入射し、励起光が入射された前記対象物から出射した散乱光のうち、前記励起光に対する振動数の差が900cm−1以下であるラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光を900cm−1以下の波数領域で分光分析して得られるラマン散乱スペクトルから、前記有機化合物の化学構造固有の振動ピークを分離することにより、前記有機化合物の化学構造を分析する有機化合物分析方法である。
<7> 前記有機化合物は、シラノール基を有するシラン系化合物である前記<6>に記載の有機化合物分析方法である。
<8> 前記有機化合物は、シラノール基と、フルオロアルキル基、フルオロエーテル基、及び芳香族基から選ばれる有機基と、を有する化合物である前記<6>又は前記<7>に記載の有機化合物分析方法である。
<9> 前記有機化合物が付与された基材を用い、前記基材の化合物付与面に前記励起光を入射して前記有機化合物の化学構造を分析する前記<6>〜前記<8>のいずれか1つに記載の有機化合物分析方法である。
<10> 対象物から出射した前記散乱光のうち、励起光より短波長の光を分光して顕微画像を表示する前記<6>〜前記<9>のいずれか1つに記載の有機化合物分析方法である。
第2の発明においても、上記第1の発明と同様に、有機化合物の化学構造に固有のスペクトルが明瞭(ピーク強度が大きくシャープ)に捉えられるので、有機化合物(特にシラノール基(及び好ましくはフルオロアルキル基、フルオロエーテル基、及び芳香族基から選ばれる有機基)を有するシラン系化合物)の分子構造や原子間の結合状態を簡易に把握し、有機化合物の同定や分子構造の特定が容易に行なえる。
本発明によれば、低波数領域でのラマン散乱分光によることで、従来の赤外吸収分光法に比べ、よりシャープな振動ピークが非破壊かつ非接触にて得られ、有機化合物の分子構造や原子間の結合状態等の分子構造の分離に有利であり、有機化合物の同定や分子構造の特定が簡易化された有機化合物分析装置及び有機化合物分析方法が提供される。
また、本発明によれば、基板の種類による光学配置の変更が不要であると共に、広い波数領域に亘る計測途中にビームスプリッターや検出器を変えることなく連続した計測が行なえる。
ラマン散乱分光法を利用した本実施形態の分析装置の構成例を示す概略図である。 対象物である塗布基板をその塗布膜を対物レンズに対向させて試料台に載せた状態を示す概略図である。 ラマン散乱分光法によるラマンスペクトルを示すグラフである。 図3の500cm−1以下の低波数領域でのラマンスペクトルを拡大して示すグラフである。 図3の500cm−1以上の高波数領域でのラマンスペクトルを拡大して示すグラフである。 本実施例において顕微鏡で表示された顕微画像を示す図である。 基板を変えて計測したラマンスペクトルを対比して示すグラフである。 ATR−IRを利用した検知装置の構成例を示す概略断面図である。 ラマン測定と同様な方法で形成した塗布膜を計測した比較例1のATR−IRスペクトルを示すグラフである。 Si−O部位の振動ピークとC−F部位の振動ピークが重なって現れることを説明するための参考図である。
以下、本発明の有機化合物分析装置について詳細に説明すると共に、該説明を通じて本発明の有機化合物分析方法の詳細をも詳述することとする。
本発明の有機化合物分析装置及び有機化合物分析方法に係る実施形態について、図1〜図2を参照して説明する。本実施形態は、励起光として波長532nmのレーザー光を用い、有機化合物を含有する溶液をNi基板に塗布することで離型処理が施された塗布基板を被検対象物とした場合を例に説明する。塗布基板の詳細については後述する。
図1に示すように、本実施形態の分析装置100は、レーザー光源10と、レーザー光源からの励起光を対象物である塗布基板80に集光する対物レンズ20と、レーザー光源からの励起光を反射すると共に、塗布基板80の塗布面(試料面)から出射した散乱光のうち所定のラマン散乱光を透過する第1の分光鏡の一例であるダイクロイックビームスプリッター30と、ダイクロイックビームスプリッターを透過した透過光中のレーリー散乱光とラマン散乱光とを分離する分光フィルタの一例であるラマン分光用エッジフィルタ40と、ラマン散乱光を分光する分光手段の一例である分光器50とを備えている。
本発明においては、励起光に対する振動数の差が900cm−1以下(下限としては例えば10cm−1以上、更には100cm−1以上とすることができる)であるラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光を900cm−1以下の波数領域(下限としては例えば10cm−1以上、更には100cm−1以上の波数領域とすることができる)で分光分析を行ない、特に低波数領域でのラマンスペクトルを分光分析することで、有機化合物の化学構造固有の振動ピークが明瞭に捉えられる。得られたスペクトルを既知の置換基毎のスペクトルに照らし、スペクトル中に現れる強度ピークを化合物分子中の基に対応させて分離する。これにより、従来の手法(赤外吸収分光法)では分離することが困難であった分子構造情報を取得することができる。
また、光学配置について、例えば従来の赤外吸収分光法では、赤外光を反射する基板(例:金属)の場合には反射型の光学配置とし、赤外光を透過する基板(例:シリコンやゲルマニウム等)の場合には透過型の光学配置とする必要があるのに対し、ラマン散乱分光法を利用した本発明では、基板の種類により光学配置を変更する必要がないとの利点がある。また、例えば従来の赤外吸収分光法による場合は赤外光を反射も透過もしない基板に対する測定が困難であるのに対し、本発明では基板に対する制約が解消され、基板の種類によらず任意の基板を選択して、有機化合物の同定や分子構造の特定が容易に行なえる。
更には、本発明においては、波数によりビームスプリッターや検出器を変える必要のある例えば赤外吸収分光法に比べ、広い波数領域に亘る計測を行なう場合でも計測途中にビームスプリッターや検出器を変えることなく連続した計測を好適に行なうことが可能である。
レーザー光源10は、対象物となる有機化合物が塗布された塗布基板80の塗布面(試料面)に対して、波長532nmのNdYVOレーザー(励起光)を出力0.5Wにて照射する。光源には、紫外光、赤外光などを照射することが可能なレーザー、水銀灯などの公知の光源を適宜選択することができるが、照射強度の観点から光源としてはレーザーが好ましい。光源波長については、特に制限されるものではなく、例えば、488nm、514nm、532nm、633nm、785nm等のいずれであってもよい。
レーザー光源10から照射されたレーザー光は、図1に示すように、光反射ミラー71で光路が折り曲げられ、第1の分光鏡の一例であるダイクロイックビームスプリッター30に入射する。入射したレーザー光は、ダイクロイックビームスプリッター30で反射されて第2の分光鏡であるダイクロイックビームスプリッター35に入射した後、ダイクロイックビームスプリッター35で再び光路が折り曲げられて、対物レンズ20に入射する。対物レンズ20に励起光が入射すると、励起光は、対物レンズによって対象物である塗布基板における所定の計測位置に集光されることになる。レーザー光は、対物レンズに直接あるいは反射回数を抑えて入射されることが好ましいが、本実施形態においては、反射ミラー71及びダイクロイックビームスプリッター35を設けて光路を折り曲げることで、装置の小型化が図られている。
対象物である塗布基板に励起光が入射すると、塗布基板の塗布面から散乱光が発生する。この散乱光は、励起光と同波長のレーリー散乱光のほか、励起光に比べて波長の長い(即ち、振動数が減衰した)ラマン散乱光を含んでいる。この散乱光は、再び対物レンズ20を通ってダイクロイックビームスプリッター35に入射する。ダイクロイックビームスプリッター35で少なくともラマン散乱光を含む光の光路が折り曲げられ、ラマン散乱光を含む光は、ダイクロイックビームスプリッター30に入射する。このダイクロイックビームスプリッター30では、励起光と同波長のレーリー散乱光の光路が折り曲げられ、励起光に対する振動数の差が900cm−1以下のラマン散乱光は選択的に透過する。このとき、ダイクロイックビームスプリッター30を透過した透過光には、ラマン散乱光以外のレーリー散乱光が残っている場合があるため、ダイクロイックビームスプリッター30を透過した透過光をラマン分光用エッジフィルタ40に入射する。このような光路を設けることで、励起光の波長に近いラマン散乱光が、励起光に妨害されることなく分光器50に選択的に入射されるようになっている。
光反射ミラー71は、レーザー光を反射する性質を有する反射材であればよいが、対象物への光強度を損なわない観点から、反射時に光の減衰が少ない鏡面であるものが好ましい。
光反射ミラー71で折り曲げられた光路上には、NDフィルタ75が配設されており、ダイクロイックビームスプリッター30に入射するレーザーの光量が調節されるようになっている
対物レンズ20は、対象物である塗布基板の塗布面(試料面)と対向する位置に配置されており、レーザー光源からの励起光を対象物の計測位置に集光する。対物レンズは、通常、対物レンズの性能を最大限に引き出す観点から、対物レンズと対象物である塗布基板との間を光学オイル(イマージョンオイル: 屈折率1.51)で満たすことが行なわれる。本実施形態では、光学オイルを付与せずとも高解像な100×観測することが可能な対物レンズを採用することで、対物レンズは光学オイルを用いずエア層を介して配置されている。オイルを使用しない構成とすることで、オイルに含まれる有機物成分からの偽信号を根本的に除去することができる。かかる観点から、対物レンズが対象物との間に光学オイルを介さずに配置された態様が好ましい。このような対物レンズとして、オリンパス社製の対物レンズPLFLN100×を使用することができる。
対物レンズと対象物である塗布基板との間の距離については、対物レンズの性能を最大限生かす観点から、作動距離が0.2mm以内であることが好ましい。
ダイクロイックビームスプリッター30は、レーザー光源10からの励起光であるレーザー光を反射して、対象物に入射するための励起光の光路を折り曲げる機能を持つと共に、励起光が対物レンズを通って対象物の計測位置に集光したときは、対物レンズを通して入射された塗布基板の照射面(試料面)から出射した散乱光のうち、励起光に対する振動数の差が900cm−1以下のラマン散乱光を選択的に透過する機能をあわせ持っている。
具体的には、ダイクロイックビームスプリッター30は、励起光である波長532nmのレーザー光を反射し、538.9nm〜824.8nmの光を透過する分光フィルタである。このようなビームスプリッターとしては、例えば、(株)オプトラインから提供されているLPD01−532RU−25、LPD01−532RS−25等(以上、Semrock社製のLPD01シリーズ(Uグレード、Sグレード))などが使用可能である。本実施形態では、LPD01−532RU−25×36×2.0を用いている。
また、ダイクロイックビームスプリッターは、照射される励起光の波長により所望とするラマン散乱光を選択的に透過するのに適当なものが選択され、例えば、励起光として、波長488nmの光を照射する場合は、LPD01−488RU−25、LPD01−488RS−25等が、波長514nm付近の光を照射する場合は、LPD01−514RU−25、LPD01−514RS−25等(以上、いずれも(株)オプトラインから提供されているSemrock社製のLPD01シリーズ(Uグレード、Sグレード))を好適に使用することができる。
例えば励起光として波長532nmの光を照射した場合、対象物から出射したラマン散乱光の波長は532nmより長波長領域になる。この場合、励起光が532nmであることから、透過領域の538.9nmは約240cm−1に相当する。ダイクロイックビームスプリッター30は、240cm−1(励起光の波長が532nmである場合は538.9nm)までは約80%の透過性能を示し、透過率が80%以下にはなるが、励起光の532nm付近までのラマン散乱光の透過が可能である。
本発明においては、ダイクロイックビームスプリッター30は、波数差にして100cm−1程度もしくはそれ以下の僅かな波数差しかない2つの光のうち、波数の小さい(すなわち波長の長い)ストークス側のラマン散乱光については透過し、波数の大きい(すなわち波長の短い)励起光については反射するものであれば、基本的に励起波長の制限はない。図1では、ダイクロイックビームスプリッター30で反射された励起光がダイクロイックビームスプリッター35へ送られる仕様となっている。なお、2つの光を空間的に分離できれば、ダイクロイックビームスプリッター30として波数差に対して透過と反射の特性が逆のものを用いてもよい。その場合は、透過した光(励起光)がダイクロイックビームスプリッター35へ送られることになる。
ダイクロイックビームスプリッター35は、ダイクロイックビームスプリッター30と対物レンズ20との間を通過するレーザー光の光路上に設けられている。ダイクロイックビームスプリッター30で反射された励起光は、ダイクロイックビームスプリッター35で光路が折り曲げられ、対物レンズに入射する。ダイクロイックビームスプリッター35は、ダイクロイックビームスプリッター30で反射された励起光を少なくとも反射すると共に、対象物である塗布基板から出射した散乱光が対物レンズを通して入射したときには、散乱光の少なくとも一部を反射し、他の一部を透過する機能を有している。
ダイクロイックビームスプリッター30からの励起光がダイクロイックビームスプリッター35に入射したときには、その光が減衰しないように励起光をダイクロイックビームスプリッター35で反射し、励起光は対物レンズ20に入射する。一方、対象物からの散乱光が対物レンズ20を通過してダイクロイックビームスプリッター35に入射したときには、その散乱光のうち、ラマン散乱光を含む光をダイクロイックビームスプリッター35で選択的に反射して、後の分光分析に供される。本実施形態では、ダイクロイックビームスプリッター35は、波長513nm〜725nmの光を反射する特性のものを用いており、この場合は散乱光中の波長446nm〜500nmの光はダイクロイックビームスプリッター35を透過することで除かれる。
ダイクロイックビームスプリッター35の特性については、励起光と測定するラマン散乱光の波長範囲(最大で4000cm−1)を反射するものであれば、基本的にはいずれのものでもよい。本実施形態では、励起光を波長532nmの光に設定した場合を示しており、この場合のダイクロイックビームスプリッター35として波長513nm〜725nmの光を反射するものを用いており、上記仕様を満たしている。
このようなビームスプリッターとしては、例えば、(株)オプトラインから提供されているFF505−SDi01−25×36(Semrock社製)などが使用可能である。本実施形態では、FF505−SDi01−25×36を用いている。
ダイクロイックビームスプリッター35を透過する光の光路上には、画像表示手段の一例である顕微鏡90が配設されている。ダイクロイックビームスプリッター35を透過した励起光より短波長側の光は、本発明で計測するストークス側のラマン散乱光を含まないため除去されるが、顕微鏡90には、この光が入射する。これにより、この波長領域の色の顕微画像が取得可能になる。顕微画像は、二次元画像であり、塗布基板80おける塗布状態(塗膜の均一性、膜厚変化など)など、形態的な情報を取得することができる。例えば図6に示すように、塗布条件により散乱もしくは回折の模様は変わるものの、試料の有無を散乱光の模様の変化として検出することが可能である。
なお、ダイクロイックビームスプリッター35についても、2つの光を空間的に分離できれば、波数差に対して透過と反射の特性が逆になってもよい。この場合は、励起光とラマン散乱光は透過してダイクロイックビームスプリッター30に送られ、反射光は顕微画像の取得に用いることができる。
ラマン分光用エッジフィルタ40は、ダイクロイックビームスプリッター30で除去しきれなかった励起光と同波長(本実施形態では波長532nm)のレーリー散乱光を除去するためのフィルタである。本実施形態で使用したエッジフィルタは、励起光より波長の長い波長領域535.4nm〜1200nmの光を透過する。ラマン分光用エッジフィルタ40を配設することによって、励起波長(本実施形態では励起光の波長532nm)に近い微弱なラマンスペクトルをより選択的に取得することが可能である。なお、波長535.4nmでは、ラマンシフト(波数差)に換算すると約120cm−1に相当する。
ラマン分光用エッジフィルタとしては、例えば、(株)オプトラインから提供されているLP03−532RE−25、LP03−532RU−25、LP03−532RS−25等(以上、Semrock社製のLP03シリーズ(Eグレード、Uグレード、Sグレード))などが使用可能である。これらのエッジフィルタは、低波数域のラマン散乱光を好適に透過する。本実施形態では、LP03−532RE−25を用いている。
ラマン分光用エッジフィルタとしては、励起波長(本実施形態では励起光の波長532nm)に近い微弱なラマンスペクトルをより選択的に取得するという観点から、励起光の波数との差(ラマンシフト)が100cm−1以上、好ましくは10cm−1以上の散乱光を透過することができる分光フィルタを用いることが好ましい。なお、ラマン分光用エッジフィルタの代わりに、励起光の波長より長波長側、すなわちストークス側のみならず、励起光の波長の低波長側、すなわちアンチストークス側の散乱光も併せて透過できるラマン分光用ノッチフィルタに置き換えることも可能である。
分光器50は、回折格子と回折格子で分けられた散乱光の強度の検出が可能なCCD検出器とを有しており、ラマン分光用エッジフィルタ40を透過してきた透過光からラマン散乱光を分光するものである。
様々な波長の光を含む散乱光は、分光器内に設置された回折格子により各波長成分を空間的に分離し、それらの波長により空間分離された散乱光の強度が2次元的な広がりをもつCCD検出器により検出される。分光器としては、HORIBA scientific社製のiHR320が、CCD検出器としては、Princeton Instrument社製のSpec−10などが好適に用いられる。
また、ラマン分光用エッジフィルタ40と分光器50との間には、集光レンズ77が配置されており、ラマン分光用エッジフィルタ40を透過したラマン散乱光は、この集光レンズによって集光されて分光器に入射されるようになっている。
本実施形態では、レーザー光源から励起光が照射されると、光反射ミラー71、NDフィルタ75、ダイクロイックビームスプリッター30、ダイクロイックビームスプリッター35、及び対物レンズ20を経由して対象物に励起光が入射すると、対象物の試料面から出斜した散乱光は、ダイクロイックビームスプリッター35で反射されて、ダイクロイックビームスプリッター30とラマン分光用エッジフィルタ40とを通過し、ラマン散乱光を含む光が分光器50に入射する。分光器50内では、回折格子により各波長成分の光に空間的に分けられる。分けられた各波長の散乱光の強度がCCD検出器により検出され、ラマンスペクトルが得られる。
以上のようにして、有機化合物を含む対象物(上記の実施形態では、有機化合物を含む塗布膜が設けられた塗布基板の塗布膜)に励起光を入射し、励起光が入射された対象物の塗布膜から出射した散乱光のうち、励起光に対する振動数の差が900cm−1以下であるラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光を900cm−1以下の波数領域で分光分析して得られるラマン散乱スペクトルから、有機化合物の化学構造固有の振動ピークを分離する。これにより、有機化合物の化学構造を分析、同定することが可能である。
本発明は、励起光に対する振動数の差が900cm−1以下のラマン散乱光を検出するものであり、振動数の差の下限には特に制限はないが、例えば10cm−1以上、更には100cm−1以上とすることができる。
被検対象物として用いた塗布基板80は、基材として樹脂等にNiメッキによりニッケル層(Ni層)が形成されたNi基板と、Ni基板のNi層表面に有機化合物を含有する溶液を塗布することで形成された塗布膜(試料膜)とを有し、Ni基板が塗布膜で離型処理されたものである。
有機化合物としては、特に制限されるものではなく、いずれの化合物も使用可能である。有機化合物のうち、本発明のラマン散乱分光法を利用した分析手法での分子構造解析に適する観点から、例えば、シラノール基、フルオロアルキル基、フルオロエーテル基、芳香族基などの有機基を有する化合物が好適に挙げられる。
一般にシラノール基を有する化合物は、その分子中にフルオロアルキル基や芳香族環などが混在する複雑な構造を有している場合、分子の構造分析が難しいとされる。例えば、Si−O部位と長鎖のフッ化アルキル部位(C−F部位)とが分子中に存在する化合物の場合、よく用いられる赤外吸収分光法の指紋領域での計測では、図10のようにSi−O部位とC−F部位の振動波数領域が近い領域に現れるため、信号の分離が難しい。また、分子中にビフェニル環等の芳香環部位を有する化合物の場合、芳香環部位に由来する振動ピークとも分離が難しく、明瞭なスペクトルとして区分し難い。すなわち、振動波数領域の近い官能基が分子内に混在する化合物や、振動波数ピークが900cm−1以下の低波数域に現れるような官能基を持つ化合物に対しては、明瞭なピーク波形が得られ難く、したがって分子構造や結合状態を把握し難いものである。
シラノール基を有する化合物は、分子中に少なくともシラノール基を有する化合物であれば、特に制限されるものではなく、例えば、
(CH−Si(Y)−(R)3−n ・・・(1)
で表される化合物が知られている。前記一般式(1)において、Yはフルオロアルキル基、フルオロエーテル基等、又はこれらを含む基などの反応性官能基を表し、Rはアルコキシ基、アルコキシカルボニル基などの加水分解性基を表す。また、nは0〜3の整数を表す。
本発明においては、Yは、離型作用の付与に適する基が好適であり、パーフルオロアルキル基やパーフルオロポリエーテル基が好ましい。計測に用いる光の波長のスケールに対して充分平坦な基材面に対し、シラノール基(Si−O部位)とC−F部位を有する化合物が(例えば離形剤として)凹凸や欠陥なく密に結合されている場合、シラノール基とC−F結合を有するフルオロアルキル基やフルオロエーテル基とは互いに伸縮振動領域が重なるため、本発明の計測原理上、分子構造の選択性を発揮する上で好適な基である。
Yがフルオロアルキル基を表す場合、アルキル部位の炭素数は、特に制限されるものではなく、1〜40が適当な範囲であり、本発明の分析手法に適する点で、好ましくはアルキル部位の炭素数は10〜40である。中でも、Yは、後述のように、フルオロアルキル部位とSi原子との間にビフェニレン基などの2価の芳香族基を含む場合、比較的耐熱性が高い点から、アルキルの炭素数は1〜15(更には5〜15、中でも10〜15)が好ましい範囲である。
また、Yがフルオロエーテル基を表す場合、炭素数は、特に制限されるものではなく、5〜30の範囲が適当な範囲である。
Rで表されるアルコキシ基、アルコキシカルボニル基のアルキル部位は、加水分解のしやすさの点から、炭素数は1〜3程度が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などであってもよい。
前記シラノール基を有する化合物の例としては、基材上に付与されたときに化合物同士が結合して密な構造をとり機械的強度が高められる点で、トリアルコキシシランが好ましく、さらに離型作用を付与する観点からは、パーフルオロアルキル基やパーフルオロポリエーテル基を含むパーフルオロアルキルトリアルコキシシラン(例:パーフルオロアルキルトリメトキシシラン、パーフルオロアルキルトリエトキシシラン等)やパーフルオロポリエーテルトリアルコキシシランが好ましい。
前記パーフルオロアルキルトリアルコキシシランは、アルコキシ部位がメトキシ又はエトキシであってもよく、パーフルオロアルキル部位とSi原子との間に、2価の芳香族基(例:フェニレン、ビフェニレンなど)や、炭素数が2〜10のアルキレン基(例:エチレン、プロピレンなど)等、又はこれら2つ以上が結合した基が含まれてもよい。
これらの中でも、特に離型作用の付与に適する点で、パーフルオロアルキルトリアルコキシシランやパーフルオロポリエーテルアルコキシシランが好ましく、例えば、パーフルオロブチルトリメトキシシラン、パーフルオロヘキシルトリエトキシシラン、パーフルオロポリエーテルトリメトキシシラン、パーフルオロポリエーテルトリエトキシシラン、下記の化合物a〜bなどであってもよい。
塗布基板80を構成する基材としては、特に制限されるものではなく、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属材料、石英、ガラス、半導体、及び前記金属材料がメッキされた基板などから適宜選択することができる。
対象物である塗布基板の塗布膜(試料膜)は、上記のような有機化合物を含む溶液やエマルジョンを塗布する等によって形成することができる。塗布による場合、バーコーター等を用いて塗布液を基材上に塗布する塗布法、塗布液中に基材を浸漬する浸漬法等のいずれでもよい。塗布膜は、基材面に厚みのある層が形成されてもよい。
上記では、対象物として、有機化合物を含有する溶液を用いた塗布膜が形成された塗布基板を中心に説明したが、対象物は基板上に塗布されて膜状に設けられている必要はなく、有機化合物を含む粉末に対して直接、励起光を当ててラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光を分光分析することも可能である。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
−被検サンプルの作製−
(1)基材の準備
基材として、サイズ2cm×2cmの樹脂基板にNiメッキが施されたNi基板(鏡面品、ニッケル:99%)、厚み0.3mm)を用意した。
(2)塗布(離型処理)
まず、用意したNi基板に対して、メタノール中、及びアセトン中でそれぞれ15分間、超音波洗浄器(US CLEANER, US−2R、アズワン社製)にて超音波洗浄を行なった。その後、乾燥させた。
続いて、分子中にパーフルオロドデシル基とビフェニル基とシラノール基を有する下記の化合物aを、ノベックHFE−7300(3M社製のハイドロフルオロエーテル;1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロ−3−メトキシ−4−(トリフルオロメチル)ペンタン)とテトラヒドロフラン(THF;昭和製薬社製、一級、98.0%)との4:1(=HFE-7300:THF[質量比])混合溶液に溶解した0.4質量%溶液(C10溶液)を調製した。
調製したC10溶液を、洗浄後のNi基板の表面にパスツールを用いて滴下した。このとき、2cm×2cmのNi基板の中心部に15滴程度(約45μL(マイクロリットル))のC10溶液を垂らすことで、基板のほぼ全面に試料を載せた。このようにして、Ni基板の表面に試料膜を形成することで、離型処理を施した。
離型処理を終了したNi基板をドラフト内で約20分間自然乾燥させて、ノベックHFE−7300とTHFの混合溶媒を揮発させ、測定用の被検サンプルとしてNiサンプル基板とした。
−ラマン散乱分光法による計測−
図1に示すように構成されたラマン分光分析装置100を準備し、その試料台21に上記で作製したNiサンプル基板を載せた。具体的には、図2に示すように、このNiサンプル基板80を、離型処理された面(試料膜83の表面(試料面))が試料台21と向き合うように試料台上に置いた。このとき、試料台21に形成されている円形窓において、試料面と対物レンズ20とは互いに対向し、対物レンズを通過した励起光が試料面に入射されるようになっている。試料台21は、二次元方向(X−Y方向)に移動可能であり、試料台の位置調整により、試料面の所望位置に励起光を照射することができる。
Niサンプル基板を試料台21に配置した後、ラマン分光分析装置100を起動し、下記の測定条件にてラマン散乱分光法による計測を行なった。ラマン散乱分光法を利用した計測は、本明細書中で既述した方法により行なった。このとき、データ解析用ソフトウエアとして、WinSpec(Prinston Instrument)を用いた。
図1のようにダイクロイックビームスプリッター30とラマン分光用エッジフィルタ40とを通過した光は分光器50に入射し、分光器50内の回折格子により、各波長成分の光に空間的に分けられる。分けられた各波長の散乱光の強度がCCD検出器により検出され、ラマンスペクトルが得られる。得られたスペクトルを図3に示す。
=測定条件=
・分光器 :iHR320(HORIBA社製)
・検出器 :CCD検出器(Prinston Instrument社製)
・積算回数 :1024回
・スリット幅 :10μm
・中心波長 :596.0nm
・回折格子 :600 line/mm
・Blaze波長:500nm
・分解能 :約2cm−1
・対物レンズ(PLFLN100×、オリンパス(株)製)
・ダイクロイックビームスプリッターA(図1中の符号30)
(LPD01−532RU−25×36×2.0、(株)オプトライン製)
・ダイクロイックビームスプリッターB(図1中の符号35)
(FF505−SDi01−25×36、(株)オプトライン製)
・ラマン分光用エッジフィルタ
(LP03−532RE−25、(株)オプトライン製)
上記のようにラマン散乱分光分析を行なった結果、図3に示されるように、75cm−1〜950cm−1の波数領域において、C10溶液の化合物aの分子構造に由来するスペクトルを、従来から行なわれている手法(赤外吸収分光法)に比べて、より明瞭なピークとして捉えることができた。
図3のスペクトルについて、約500cm−1を境界として500cm−1以下の低波数側と500cm−1以上の高波数側とに分けて具体的に図4〜図5に示す。本実施例では、図4に示されるように500cm−1以下において、後述する比較例1(図9参照)に示されるように従来の手法ではピークが重なるために判別が難しかった、シラノール基(Si−O−)由来のピークとフルオロアルキル基(F(CF−)由来のピークとのスペクトルが、大きいピーク強度で且つシャープに現れ、分子中の各基の存在及び結合状態を把握できることが確認された。さらに、比較例1のように従来は捉えることが困難であったビフェニル基由来のピークをも捉えることが可能であった。このように、シラノール基とともに比較的長鎖のフルオロアルキル基やビフェニル基等の芳香環が存在するような複雑な構造の有機化合物であっても、その分子構造を詳細に分析することが可能であることが明らかとなった。
図3のスペクトルを、後述する比較例1の結果を示す図9のスペクトルと対比すると明らかなように、特に100cm−1〜900cm−1の波数領域にて、有機化合物の分析に有用なピークを分離して観察可能であることが理解できる。
また、500cm−1以上の波数領域においては、図5に示されるように、従来の手法では捉えられなかった分子構造中の細部に亘る各種構造(CHやCH等のアルキル部位、SiC部位など)が把握できることが確認された。したがって、例えばシラノール基とともに比較的長鎖のフルオロアルキル基やビフェニル基等の芳香環を有する等の複雑な分子構造を持つ化合物の分子構造を詳細に分析するのに特に有効である。
図6に顕微鏡90による顕微画像を示す。
図6に示されるように、本実施例の塗布条件では、試料が塗布されていない場合、集光している部分の輝点が白く1点で中心がはっきりしており、同心円状のパターンが明瞭であるが、試料が塗布されている場合、中央が不明瞭になり放射状の散乱光の模様が顕著になっている。このように、塗布条件によって散乱もしくは回折の模様は変わるが、試料の有無を散乱光の模様の変化として検出することができた。
(実施例2)
実施例1において、Niサンプル基板の作製に用いたNi基板を、下記のSi基板、石英基板に代えたこと以外は、実施例1と同様にして、ラマン散乱分光法による計測を行なった。測定結果を図7に示す。また、実施例1と同様に顕微鏡に表示された顕微画像を図6に示す。
[基板種]
・Si基板:アドバンテック社製のシリコンウエハ
〔結晶方位:<100±1°>、抵抗値:80〜120Ωcm、厚み:525±25um;ダイアモンドカッターで2cm角に切断〕
・石英基板:信越化学工業社製のVIOSIL−SQ
図7に示されるように、Ni基板を用い場合と同様に、Si基板、石英基板についても同様の結果が得られた。すなわち、全反射赤外吸収法(ATR−IR)等の従来の手法では、基板の種類により測定が制限されたが、本発明においては、基板の種類に関わらず、明瞭なスペクトルが得られ、いずれの場合も化合物の分析に有用であることが示された。
(比較例1):全反射赤外吸収法(ATR−IR)
−比較用被検サンプルの作製−
実施例1のNi基板をニラコ製のニッケル箔(厚み:0.05mm、ニッケル:99%)に代え、このニッケル箔の表面に実施例1と同様の方法により試料膜を塗布形成し、測定用のNiサンプル基板とした。図8に示すように、比較用のNiサンプル基板120は、ニッケル箔121と、そのNi表面に形成された試料膜122とを有している。
−ATR−IRによる計測−
装置として、図8に示すように構成されたATR−IRによる分析装置を準備した。この装置は、中心部が開口した円盤状(不図示)の試料台111と、試料台111の開口部112に配設されたプリズム113と、赤外光を発する光源114と、プリズム113に入射した偏光がNiサンプル基板120の試料面で反射して出射した光を取り込む分光器の検出器116と、検出器116と電気的に接続された処理部(コンピュータ;PC)125とを備えている。分光器には、検出器(ディテクタ)116と不図示の干渉計とが設けられている。
上記のNiサンプル基板120を、図8に示すように離型処理された面(試料面)が試料台111と向き合うように、試料台111の開口部に配設されたプリズム(屈折率ηのダイヤモンド単結晶、但し、η>η)と密着させて配置し、下記の測定条件にて、ATR−IRによる計測を行なった。得られたスペクトルを図9に示す。なお、ATR結晶として単結晶ダイヤモンドを選定した。単結晶ダイヤモンドの透過波数領域は、4500〜100cm−1である。
ATR−IRによる計測の詳細は、以下の通りである。
光源114からの赤外光がプリズム113に入射されると、プリズムと試料との界面で全反射して出てきた光は検出器116で受光される。検出器116で検出された光は、インターフェログラムとして処理部(PC)125に取り込まれる。取り込まれたインターフェログラムに対して、処理部125のソフトウエアを起動してアポダイゼーション処理を施し、誤差を補正した後、フーリエ変換処理を行なって各波数[cm−1]に分離され、スペクトルが得られる。このとき、データ解析用ソフトウエアとして、OMNICソフトウエア(ver.7.2a)を用いた。スペクトルでは、アドバンスドATR補正を行なった。アドバンストATR補正は、「ピーク強度の相対的な変化」と「低波数側へのピークシフトによる線形のゆがみ」を正確に補正できるプログラムであり、以下に補正式と補正条件を示す。なお、OMINCソフトウェア上において、補正式は、中赤外(〜400cm−1)にカスタマイズされている。
=測定条件=
・分光器 :Nicolet 6700(Thermo Fisher Scientific社製)
・検出器(1):DLaTGS/KBr
(DLaTGS:L−アラニンでドープした硫酸三グリシン、12,500cm−1〜350cm−1
・検出器(2):DLaTGS/PE(DLaTGS:L−アラニンでドープした硫酸三グリシン、700cm−1〜50cm−1
・積算回数:32
・分解能 :4cm−1
・ゲイン :1
・ミラー速度:0.6329cm/sec
・赤外光のビーム径:約7.5mm
・ビームスプリッター(1):KBr/Ge(7400cm−1〜350cm−1
・ビームスプリッター(2):Solid(700cm−1〜15cm−1
=補正条件=
・サンプルの屈折率:1.35
・ATR結晶 :Diamond
・入射角 :45.0
・反射回数 :1
図9に示されるように、ATR−IRによる計測では、実施例1の計測結果である図3と比較して、得られるスペクトル強度は小さく、分子中の各種構造を特定するのが困難であった。図9では、振動ピークの波数が重なって判別し難いシラノール基とフルオロアルキル基のピークは現れてはいるものの、その波形はブロードで、ピーク強度はラマン散乱分光法を利用した実施例1等でのスペクトルに比べて大幅に小さいものであった。また、ビフェニル基由来のスペクトルは得られず、分子構造中にあるCHやCH等のアルキル部位、SiC部位などの細部に亘る各種構造についても特定することは困難であった。
また、図9では、75cm−1〜950cm−1の範囲のスペクトルを示してあるが、ATR−IRによる計測では、実際には検出器とビームスプリッターとを600cm−1を境に切り換えなければならず、ラマン散乱分光法を利用した実施例1等との間で実用性の面で差異があった。
本発明は、広く有機化合物の分子構造を把握、特定する分析手法、及び分子構造の把握、特定が求められる分野に広く利用可能である。例えば、分子中にシラノール基を有するシラン系化合物の分子構造の特定に利用可能であり、特に分子中にシラノール基と共に(好ましくは長鎖の)フルオロアルキル基、フルオロエーテル基、芳香族基(例えばビフェニル基)などを有するような複雑な構造を持つ有機化合物(例えばシランカップリング剤など)の分子構造の特定に有用である。
更には、シラノール基を有する化合物を含有する塗膜や、撥水・撥油性を示す表面加工を行なう分野、ナノメートルオーダーのパターンが形成されたモールド(型)を用いてナノオーダーパターンを形成するナノインプリント技術の分野に好適である。
10・・・レーザー光源
20・・・対物レンズ
30・・・ダイクロイックビームスプリッター(分光鏡)
35・・・ダイクロイックビームスプリッター
40・・・ラマン分光用エッジフィルタ(分光フィルタ)
50・・・分光器
71・・・光反射ミラー
77・・・集光レンズ
80・・・Niサンプル基板(対象物)
83・・・試料膜

Claims (10)

  1. 励起光を照射する光源と、
    有機化合物を含む対象物に対向して配置され、前記対象物の計測位置に前記励起光を集光する対物レンズと、
    前記励起光が入射された前記対象物から出射した散乱光が通過する光路上に配置され、前記散乱光のうち、前記励起光に対する振動数の差が900cm−1以下のラマン散乱光と前記励起光と同波長の散乱光の少なくとも一部とを分光する第1の分光鏡と、
    前記分光鏡により分光された後のラマン散乱光を含む光中の、前記励起光と同波長の散乱光と、ラマン散乱光とを分離する分光フィルタと、
    前記励起光が入射された前記対象物から出射した散乱光の強度の検出が可能な検出器を有し、前記分光フィルタを透過した透過光から前記ラマン散乱光を分光する分光手段と、
    を備え、前記対象物における有機化合物の化学構造を分析する有機化合物分析装置。
  2. 前記有機化合物は、シラノール基を有するシラン系化合物である請求項1に記載の有機化合物分析装置。
  3. 前記有機化合物は、シラノール基と、フルオロアルキル基、フルオロエーテル基、及び芳香族基から選ばれる有機基と、を有する化合物である請求項1又は請求項2に記載の有機化合物分析装置。
  4. 前記有機化合物は、シラノール基と、フルオロアルキル基と、前記シラノール基のSi原子とフルオロアルキル基の炭素原子とに結合された2価の芳香族基とを含む化合物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の有機化合物分析装置。
  5. 励起光の波長以上の波長を有する光と励起光より短波長の光とを分光する第2の分光鏡と、
    前記第2の分光鏡で分光された前記励起光より短波長の光が入射することで顕微画像を表示する画像表示手段と、
    を更に備えた請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の有機化合物分析装置。
  6. 有機化合物を含む対象物に励起光を入射し、励起光が入射された前記対象物から出射した散乱光のうち、前記励起光に対する振動数の差が900cm−1以下であるラマン散乱光を検出し、検出されたラマン散乱光を900cm−1以下の波数領域で分光分析して得られるラマン散乱スペクトルから、前記有機化合物の化学構造固有の振動ピークを分離することにより、前記有機化合物の化学構造を分析する有機化合物分析方法。
  7. 前記有機化合物は、シラノール基を有するシラン系化合物である請求項6に記載の有機化合物分析方法。
  8. 前記有機化合物は、シラノール基と、フルオロアルキル基、フルオロエーテル基、及び芳香族基から選ばれる有機基と、を有する化合物である請求項6又は請求項7に記載の有機化合物分析方法。
  9. 前記有機化合物が付与された基材を用い、前記基材の化合物付与面に前記励起光を入射して前記有機化合物の化学構造を分析する請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の有機化合物分析方法。
  10. 前記対象物から出射した前記散乱光のうち、励起光より短波長の光を分光して顕微画像を表示する請求項6〜請求項9のいずれか1項に記載の有機化合物分析方法。
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