JP5440932B2 - 感光層の評価方法 - Google Patents
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Description
また、請求項2の発明は、請求項1の感光層の評価方法において、上記相関データベースは上記感光層の任意のラマン散乱ピーク強度値と、感光層誘電率との相関関係をしめすことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の感光層の評価方法において、上記感光層が共有結合していることを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1、2または3の何れかの感光層の評価方法において、上記感光層表面からラマン散乱光成分を取得するステップにおいて、可視領域の入射光を用いることを特徴とするものである。
このような顕微光学系を備えたラマン分光測定装置を用いて焦点面となる感光層に入射光を照射し、焦点面近傍の微小領域の感光層のラマン散乱光スペクトルを取得する。このラマン散乱光スペクトル解析して感光層の特徴的なラマン散乱ピークの強度を抽出し、予め測定された、感光層の特徴的なラマン散乱ピークの強度とそのときの感光層の誘電率との相関データに基づき誘電率の演算をおこなう。これにより、感光層の深さ方向に関して微小領域の誘電率を測定することができる。また、ラマン分光測定装置を用いているので、デバイス状態のままで、簡易で瞬時に感光層の誘電率を測定できる。なお、本発明における感光層の特徴的なラマン散乱ピークとは感光層を構成する特定の物質に起因するラマン散乱ピークのことである。
ここで、感光層の誘電率の演算に、予め測定された感光層のラマン散乱ピークの強度と誘電率との相関データを用いることのできる理由を説明する。ラマン散乱光の発生は、入射光が分子と相互作用して分子の分極率が変化する場合に観測され、電子やイオンが動かされやすければラマン散乱光の強度も大きくなる。直流から低周波までの電界では全ての分極の寄与が加わっているが、電界の周波数を高くすることで、界面分極や配向分極が周波数についていけなくなりゼロになる。さらに周波数を上げ、光の赤外の領域になるとイオン分極がついていけなくなってゼロになる。この結果、可視光(顕微ラマン励起)領域では電子分極のみが寄与するため、ラマン散乱光の強度にも電子分極の大きさのみが寄与する。一方、誘電体中に光が入射されて電子分極が起きると、光の速度が変化する現象、すなわち、屈折率の変化が起きる。電子分極の程度が大きければ屈折率nも大きくなると言える。理論的には、波長に対して透明物質ならば、屈折率nは物質の誘電率に依って決まる(ε=n2)。よって、感光層のラマン散乱光強度スペクトルを測定する際の入射光を可視領域とすれば、電子分極のみを考慮すればよく、ラマン散乱光の強度と誘電率とは良好な相関関係があるといえる。本発明は、以上の論理を利用したものであり、測定対象となる感光層に対して、予め測定した、特徴的なラマン散乱ピークの強度と感光層の誘電率との相関データの基づき、感光層の誘電率を演算することで、誘電率を測定することができる。
まず、本実施形態の感光層誘電率測定装置で測定される感光層について説明する。図1は、電子写真方式の画像形成装置に用いられる代表的な感光体である有機感光体(OPC)の概略構成図である。この感光体1は、アルミニウム基体2上に、中間層3、電荷発生層4、電荷輸送層5、表面層6を積層した多層膜構造であり、電荷発生層4、電荷輸送層5、表面層6が感光層をなしている。
NA=n・sinθ(ここで、nは膜と対物レンズ27との間の媒質の屈折率、θは光軸と対物レンズの最も外側に入る光線とがなす角を示す。)
まず、予め感光層1のラマン散乱ピーク強度データとその誘電率とを測定し、その相関データを相関データ格納部12に格納する。この相関データとは、いわゆる検量線に相当するものであり、これを作成するために、予め測定対象となる感光層のラマン散乱ピーク強度データと感光層誘電率データを取得するものである。また、NOxガスを曝露した表面層6の誘電率の変化を測定するために、予め表面層6だけのサンプルを作成し、感光層1のラマン散乱ピーク強度データとその誘電率とを測定し、その相関データを相関データ格納部12に格納する。
一般的に誘電率には、界面分極、配向分極、イオン分極、電子分極の4つの寄与が有り、これらの寄与は物質の結合状態と電磁波の周波数に依って異なっている。本発明では、測定対象と成る膜試料が共有結合であれば好適である。また、電磁波が可視光領域の場合は、界面分極、配向分極、イオン分極の寄与は無い為、電子分極だけの寄与となる(佐藤勝昭・越田信義著:応用電子物性工学(コロナ社、1989)P.73参照)。
ε=ε’+iε’’となり、
ε’=n2−κ2
ε’’=2nκ
で与えられる。測定波長に対して透明物質なら消光係数:κ=0となる。よって、εは実数でε=n2と表すことが可能なり、これが上述した誘電率と屈折率の関係になる。
図1に示す感光層を用い、NOxガス曝露前と曝露後の表面近傍の誘電率を、図2の、ラマン分光測定装置を用いた誘電率測定装置で測定した。ラマン分光測定装置7としては、東京インスツルメンツ製 Nanofinder30を用い、表面層6のラマン散乱ピーク強度データと誘電率の相関データを格納した相関データ格納部12と誘電率演算部13を付与したものを用いた。入射光の波長は633nmの可視光領域を用いた。また、対物レンズ17に油浸レンズを用い、屈折率1.516のエマルジョンオイルを対物レンズ17と感光層との間に用いている。トータルのNAは1.4で、分析深さは0.5μmであった。
実施例1において、屈折率1.479のエマルジョンオイルを用いてトータルのNAが1.2とした以外は、実施例1と同じ条件で測定を行い、NOxガス曝露前と曝露後のラマン散乱ピーク強度のデータを抽出して、同様に表面近傍の誘電率測定を行うことができた。
実施例1において、表面層6のラマン散乱ピーク強度と誘電率の相関データを格納した相関データ格納部12のないラマン分光測定装置7(東京インスツルメンツ製 Nanofinder30)を用い、それ以外は実施例1と同じ条件で測定を行った。表面近傍の誘電率εを測定することはできなかった。
実施例1において、抽出されたラマン散乱ピーク強度から誘電率への誘電率演算部13がない、ラマン分光測定装置7(東京インスツルメンツ製 Nanofinder30)を用い、それ以外は実施例1と同じ条件で測定を行った。表面近傍の誘電率εを測定することはできなかった。
実施例1において、エマルジョンオイルの替わりに屈折率1.33の超純水を用い、油浸レンズの替わりに水浸レンズを用いてトータルのNAが1.1となった以外は、実施例1と同じ条件で測定を行った。分析深さが3μmと深くなってしまい表面近傍の誘電率を測定することはできなかった。
この感光層誘電率測定装置では、ラマン分光測定装置7により得た感光層1の深さ方向に関して微小領域のラマン散乱光スペクトルを解析して誘電率を演算することにより、深さ方向に関して微小領域の誘電率を測定することができる。具体的には、感光層1の微小領域のラマン散乱光スペクトルより感光層1の特徴的なラマン散乱ピークの強度を抽出する。そして、予め測定された感光層の特徴的なラマン散乱ピークの強度とそのときの感光層の誘電率との相関データに基づき誘電率の演算をおこなう。ここで、上述のように、入射光が可視領域では、ラマン分光測定装置で検出される変化は電子分極のみを考慮すればよく、ラマン散乱光の強度と誘電率とは相関関係が得られる。また、ラマン分光測定装置はドラム状の感光層であってもデバイス状態のまま測定でき、測定自体も簡易で瞬時に誘電率を測定することができる。
2 アルミニウム基体
3 中間層
4 電荷発生層
5 電荷輸送層
6 表面層
7 ラマン分光測定装置
8 レーザ光源
9 顕微光学系
10 分光器
11 光検出器
12 相関データ格納部
13 誘電率演算部
14 ダイクロイックミラー
15 第1のピンホール
16 第2のピンホール
17 対物レンズ
18 ノッチフィルタ
19 集光レンズ
20 CPU
30 試料(感光層)
31 高圧電源
32 表面電位プローブ
33 ターンテーブル
34 クーロン計
35 記録計
36 電位計
37 モータ
Claims (4)
- ラマン分光法により得られた感光層の深さ方向に関して微小領域にラマン散乱光スペクトルを取得するステップと、該ラマン散乱光スペクトルから該感光層に特徴的なラマン散乱ピークの強度を抽出するステップと、予め測定された感光層のラマン散乱ピークの強度と誘電率との相関データベースに基づいて、該抽出されたラマン散乱ピークの強度から該感光層の誘電率を算出するステップとを有し、算出された誘電率を用いて該感光層の耐NOxガス性を評価することを特徴とする感光層の評価方法。
- 請求項1の感光層の評価方法において、上記相関データベースは上記感光層の任意のラマン散乱ピーク強度値と、感光層誘電率との相関関係をしめすことを特徴とする感光層の評価方法。
- 請求項1または2の感光層の評価方法において、上記感光層が共有結合していることを特徴とする感光層の評価方法。
- 請求項1、2または3の何れかの感光層の評価方法において、上記感光層表面からラマン散乱光成分を取得するステップにおいて、可視領域の入射光を用いることを特徴とする感光層の評価方法。
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