JP2013139496A - ポリグリコール酸系樹脂組成物およびその製造方法、並びにそれを用いた延伸成形用積層体および延伸積層体 - Google Patents

ポリグリコール酸系樹脂組成物およびその製造方法、並びにそれを用いた延伸成形用積層体および延伸積層体 Download PDF

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Abstract

【課題】隣接する熱可塑性樹脂層との間においてデラミネーションが発生しにくいポリグリコール酸系樹脂層を形成することができ、しかも、熱処理による溶融粘度の低下が抑制されているポリグリコール酸系樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】ポリグリコール酸系樹脂、該ポリグリコール酸系樹脂100質量部に対してポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマー0.5質量部以上10質量部以下、ならびに該熱可塑性エラストマー1質量部に対して溶解度パラメータが10.2〜11.0(cal/cm1/2である酸化防止剤0.001質量部以上0.1質量部以下を含有することを特徴とするポリグリコール酸系樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリグリコール酸系樹脂組成物およびその製造方法、並びにそれを用いた延伸成形用積層体および延伸積層体に関する。
ポリグリコール酸は微生物分解性や加水分解性に優れているため、環境に対する負荷が小さい生分解性高分子材料として注目されている。また、ポリグリコール酸はガスバリア性や耐熱性、機械的強度に極めて優れており、このようなポリグリコール酸の特性を利用した多層中空容器(例えば、特開平10−138371号公報(特許文献1))や積層フィルム(特開2005−169978号公報(特許文献2)、特開2008−221733号公報(特許文献3))が提案されている。
特開平10−138371号公報 特開2005−169978号公報 特開2008−221733号公報
しかしながら、ポリグリコール酸系樹脂からなる層を備える多層中空容器や積層フィルムは、保管条件や使用条件によって、ポリグリコール酸系樹脂からなる層と熱可塑性樹脂層との間でデラミネーション(層間剥離)が発生する場合があった。
そこで、本発明者らは、上記従来技術の有する課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリグリコール酸系樹脂からなる層を、ポリグリコール酸系樹脂と熱可塑性エラストマーとを含有するポリグリコール酸系樹脂組成物から形成することによって、前記デラミネーションの発生を抑制できることを見出した。
一方、ポリグリコール酸系樹脂には、通常、ポリグリコール酸系樹脂からなる層の特性の低下を引き起こす残存モノマーであるグリコリドや低分子量成分、低揮発成分などを除去するために熱処理が施されている。このような熱処理は、窒素、アルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことももちろん可能であるが、生産コストの観点から工業的には乾燥空気を用いることが有利である。また、このような熱処理は、ポリグリコール酸に各種添加剤を添加して樹脂組成物を調製する際には、除去効率を高めるため、および生産コストの観点から、この樹脂組成物に施すことが一般的である。ところが、ポリグリコール酸系樹脂と熱可塑性エラストマーとを含有するポリグリコール酸系樹脂組成物にこのような熱処理を施すと、ポリグリコール酸系樹脂組成物の溶融粘度が低下し、得られるポリグリコール酸系樹脂からなる層の力学特性の変化(弾性率の変化)や表面状態の変化、機械的強度の低下やその他の特性の変化があり、実用上に問題があった。
本発明は、これらの課題に鑑みてなされたものであり、隣接する熱可塑性樹脂層との間においてデラミネーションが発生しにくいポリグリコール酸系樹脂層を形成することができ、しかも、熱処理による溶融粘度の低下が抑制されているポリグリコール酸系樹脂組成物、並びに前記ポリグリコール酸系樹脂層とそれに隣接する熱可塑性樹脂層とを備える延伸成形用積層体および延伸積層体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリグリコール酸系樹脂に熱可塑性エラストマーと特定の溶解度パラメータを有する酸化防止剤とを混合することによって、熱処理による溶融粘度の低下が抑制されたポリグリコール酸系樹脂組成物が得られ、しかも、このようなポリグリコール酸系樹脂組成物によって形成されたポリグリコール酸系樹脂層は、それに隣接する熱可塑性樹脂層との間においてデラミネーションが発生しにくいものであることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のポリグリコール酸系樹脂組成物は、ポリグリコール酸系樹脂、該ポリグリコール酸系樹脂100質量部に対してポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマー0.5質量部以上10質量部以下、ならびに該熱可塑性エラストマー1質量部に対して溶解度パラメータが10.2〜11.0(cal/cm1/2である酸化防止剤0.001質量部以上0.1質量部以下を含有することを特徴とするものである。
また、本発明のポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法は、
ポリグリコール酸系樹脂、該ポリグリコール酸系樹脂100質量部に対してポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマー0.5質量部以上10質量部以下、ならびに該熱可塑性エラストマー1質量部に対して溶解度パラメータが10.2〜11.0(cal/cm1/2である酸化防止剤0.001質量部以上0.1質量部以下を混合してポリグリコール酸系樹脂組成物を調製する混合工程と、
前記混合工程で得られたポリグリコール酸系樹脂組成物に120〜225℃の温度で熱処理を施す加熱工程と、
を含むことを特徴とする方法である。
本発明の延伸成形用積層体は、前記本発明のポリグリコール酸系樹脂組成物により形成されたポリグリコール酸系樹脂層と、前記ポリグリコール酸系樹脂層に隣接した熱可塑性樹脂層とを備えることを特徴とするものである。また、本発明の延伸積層体は、このような延伸成形用積層体に延伸処理を施したものである。
本発明によれば、熱処理による溶融粘度の低下が抑制されたポリグリコール酸系樹脂組成物が得られ、さらに、隣接する熱可塑性樹脂層との間でデラミネーションが発生しにくいポリグリコール酸系樹脂層を備える延伸積層体を得ることが可能となる。
実施例および比較例で得られたポリグリコール酸系樹脂組成物の溶融粘度保持率と、それに含まれる酸化防止剤の溶解度パラメータとの関係を示すグラフである。 実施例および比較例で作製した延伸積層体(ボトル)のデラミネーション発生頻度と、それに含まれる酸化防止剤の溶解度パラメータとの関係を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
先ず、本発明のポリグリコール酸系樹脂組成物(以下、「PGA系樹脂組成物」という。)について説明する。本発明のPGA系樹脂組成物は、ポリグリコール酸系樹脂(以下、「PGA系樹脂」という。)、ポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマー、ならびに特定の溶解度パラメータを有する酸化防止剤を所定の割合で含有するものである。
(PGA系樹脂)
本発明に用いられるPGA系樹脂としては、下記式(1):
−[O−CH−C(=O)]− (1)
で表されるグリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸の単独重合体(以下、「PGA単独重合体」という。グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合体を含む。)、前記グリコール酸繰り返し単位を含むポリグリコール酸共重合体(以下、「PGA共重合体」という。)などが挙げられる。このようなPGA系樹脂は、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
前記PGA共重合体を製造する際に、グリコール酸モノマーとともに使用されるコモノマーとしては、シュウ酸エチレン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなど)、カーボネート類(例えば、トリメチレンカーボネートなど)、エーテル類(例えば、1,3−ジオキサンなど)、エーテルエステル類(例えば、ジオキサノンなど)、アミド類(ε−カプロラクタムなど)などの環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物を挙げることができる。これらのコモノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このようなコモノマーのうち、耐熱性の観点からヒドロキシカルボン酸が好ましい。
また、前記PGA系樹脂をグリコリドの開環重合によって製造する場合に使用する触媒としては、ハロゲン化スズ、有機カルボン酸スズなどのスズ系化合物;アルコキシチタネートなどのチタン系化合物;アルコキシアルミニウムなどのアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモン、酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物といった公知の開環重合触媒が挙げられる。
前記PGA系樹脂は従来公知の重合方法により製造することができるが、その重合温度としては、120〜300℃が好ましく、130〜250℃がより好ましく、140〜240℃が特に好ましく、150〜230℃が最も好ましい。重合温度が前記下限未満になると、重合が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、生成した樹脂が熱分解する傾向にある。
また、前記PGA系樹脂の重合時間としては、2分間〜50時間が好ましく、3分間〜30時間がより好ましく、5分間〜20時間が特に好ましい。重合時間が前記下限未満になると、重合が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると、生成した樹脂が着色する傾向にある。
本発明に用いられるPGA系樹脂において、前記式(1)で表されるグリコール酸繰り返し単位の含有量としては、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%が特に好ましい。グリコール酸繰り返し単位の含有量が前記下限未満になると、PGA系樹脂組成物を用いて形成したPGA系樹脂層のガスバリア性が低下する傾向にある。
前記PGA系樹脂の重量平均分子量としては、3万〜80万が好ましく、5万〜50万がより好ましい。PGA系樹脂の重量平均分子量が前記下限未満になると、PGA系樹脂組成物を用いて形成したPGA系樹脂層の機械的強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶融押出や射出成形が困難となる傾向にある。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリメチルメタクリレート換算値である。
また、前記PGA系樹脂の溶融粘度(温度:270℃、剪断速度:122sec−1)としては、50〜3000Pa・sが好ましく、100〜2000Pa・sがより好ましく、100〜1000Pa・sが好ましい。溶融粘度が前記下限未満になると、PGA系樹脂組成物を用いて形成したPGA系樹脂層の機械的強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶融押出や射出成形が困難となる傾向にある。
(熱可塑性エラストマー)
本発明に用いられる熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)およびポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPUE)が挙げられる。これらの熱可塑性エラストマーは、1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このような熱可塑性エラストマーをPGA系樹脂に添加することによって、隣接する熱可塑性樹脂層との間においてデラミネーションが発生しにくいPGA系樹脂層を形成することができる。また、耐デラミネーション性がより高くなるという観点から、TPEEが好ましい。
前記TPEEとしては、ハードセグメントとしてポリブチレンテレフタレート単位といった芳香族ポリエステル単位を含有し、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテル単位や脂肪族ポリエステル単位を含有するブロック共重合体など公知のTPEEが挙げられる。また、前記TPUEとしては、ポリエステルタイプのもの、ポリエーテルタイプのものなど公知のTPUEが挙げられる。
(酸化防止剤)
本発明に用いられる酸化防止剤は、溶解度パラメータ(以下、「SP値」と略す)が10.2〜11.0(cal/cm1/2のことが望ましい。このような酸化防止剤を前記熱可塑性エラストマーとともにPGA系樹脂に混合することによって、本発明のPGA系樹脂組成物を製造する際の熱処理によるPGA系樹脂組成物の溶融粘度の低下を抑制することができる。さらに、このようなPGA系樹脂組成物を用いることにより、隣接する熱可塑性樹脂層との間でデラミネーションが発生しにくいポリグリコール酸系樹脂層を形成することが可能となる。
一方、前記SP値が10.2(cal/cm1/2未満の酸化防止剤や11.0(cal/cm1/2を超える酸化防止剤を前記熱可塑性エラストマーとともにPGA系樹脂に混合しても、熱処理によるPGA系樹脂組成物の溶融粘度の低下を抑制することができなかったり、あるいは、PGA系樹脂層とそれに隣接する熱可塑性樹脂層との間でデラミネーションが発生したりする。
なお、酸化防止剤のSP値は、フェダー法(Fedor法)により算出することができる。すなわち、フェダーにより提案された下記式(i):
δ=(ΣEcoh/ΣV)1/2 (i)
(式(i)中、δは対象化合物のSP値を表し、Ecohは対象化合物の構成単位の凝集エネルギー(cal/mol)を表し、Vは対象化合物の構成単位のモル分子容(cm/mol)を表す。)
を用いて酸化防止剤のSP値(単位:(cal/cm1/2)を求めることができる。
本発明にかかるSP値が10.2〜11.0(cal/cm1/2の酸化防止剤としては、2,4−ビス[(オクチルチオ)メチル]−o−クレゾール(下記式(1)、SP値:10.38(cal/cm1/2)、
1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(下記式(2)、SP値:10.87(cal/cm1/2)、
2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](下記式(3)、SP値:10.93(cal/cm1/2)、
などのフェノール系酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤は、BASF社製「IRGANOX1520L」(下記式(1))、(株)ADEKA製「アデカスタブAO−330」(下記式(2))、BASF社製「IRGANOX1035」(下記式(3))などの市販品として入手することが可能である。
Figure 2013139496
なお、SP値が10.2(cal/cm1/2未満の酸化防止剤としては、
オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(下記式(4)、SP値:9.59(cal/cm1/2、(株)ADEKA製「アデカスタブAO−50」)、
1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](下記式(5)、SP値:9.89(cal/cm1/2、BASF社製「IRGANOX259」)、
4,6−ビス(ドデシルチオメチル)−o−クレゾール(下記式(6)、SP値:9.97(cal/cm1/2、BASF社製「IRGANOX1726」)、
などがある。
Figure 2013139496
また、SP値が11.0(cal/cm1/2を超える酸化防止剤としては、
3,9−ビス[2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルルオキシ]−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(下記式(7)、SP値:11.02(cal/cm1/2、住友化学(株)製「SUMILIZER GA−80」)、
4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(下記式(8)、SP値:11.26(cal/cm1/2、(株)ADEKA製「アデカスタブAO−40」)、
N,N’−ビス[2−[2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エチルカルボニルオキシ]エチル]オキサミド(下記式(9)、SP値:11.57(cal/cm1/2、Chemtura社製「ナウガードXL−1」)、
1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(下記式(10)、SP値:11.61(cal/cm1/2、(株)ADEKA製「アデカスタブAO−30」)、
などがある。
Figure 2013139496
(その他の添加剤)
本発明に用いられるPGA系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、核剤(好ましくは、窒化ホウ素粒子)、末端封止剤、熱線吸収剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤やその他の熱可塑性樹脂を添加してもよい。
<PGA系樹脂組成物>
本発明のPGA系樹脂組成物は、PGA系樹脂と、TPEEおよびTPUEからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマーと、特定のSP値を有する前記酸化防止剤と、必要に応じてその他の添加剤とを含有するものである。
本発明のPGA系樹脂組成物において、前記熱可塑性エラストマーの含有量は、前記PGA系樹脂100質量部に対して0.5質量部以上10質量部以下である。熱可塑性エラストマーの含有量が0.5質量部未満になると、隣接する熱可塑性樹脂層との間でデラミネーションが発生しにくいPGA系樹脂層を形成することが困難となり、他方、10質量部を超えると、PGA系樹脂層のガスバリア性が著しく低下する。したがって、隣接する熱可塑性樹脂層との間でデラミネーションが発生しにくいPGA系樹脂層を形成するという観点からは、前記熱可塑性エラストマーの含有量としては、前記PGA系樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましい。他方、PGA系樹脂層のガスバリア性を維持するという観点においては、前記熱可塑性エラストマーの含有量としては、前記PGA系樹脂100質量部に対して、8質量部以下が好ましく、6質量部以下がより好ましい。
また、本発明のPGA系樹脂組成物において、特定のSP値を有する前記酸化防止剤の含有量は、前記熱可塑性エラストマー1質量部に対して0.001質量部以上0.1質量部以下である。前記酸化防止剤の含有量が0.001質量部未満になると、PGA系樹脂組成物の熱処理による溶融粘度の低下が抑制できず、他方、0.1質量部を超えると、PGA系樹脂層のガスバリア性が低下し、また、表面状態が変化するため、デラミネーションの発生を抑制する効果が低下する。したがって、PGA系樹脂組成物の熱処理による溶融粘度の低下を十分に抑制するという観点からは、前記酸化防止剤の含有量としては、前記熱可塑性エラストマー1質量部に対して、0.002質量部以上が好ましく、0.003質量部以上がより好ましい。他方、PGA系樹脂層のガスバリア性および表面状態を維持するという観点においては、前記酸化防止剤の含有量としては、前記熱可塑性エラストマー1質量部に対して、0.08質量部以下が好ましく、0.05質量部以下がより好ましい。
このようなPGA系樹脂組成物は、各成分を所定の含有量となるように混合することによって得ることができる。この混合方法としては特に制限はなく、例えば、各成分をドライブレンドした後、ブレンド物を押出機や混練機を用いて溶融混練する方法が挙げられる。
また、本発明のPGA系樹脂組成物には、通常、PGA系樹脂に含まれていたグリコリドなどの残存モノマーが含まれている。この残存モノマーは、PGA系樹脂組成物の特性(例えば、PGA系樹脂層を形成した場合には、その機械的強度)が低下する原因となるため、通常、乾燥空気雰囲気下の熱処理によって残存量が0.1質量%以下となるようにPGA系樹脂組成物から除去される。
このような熱処理における加熱温度は、通常、120〜225℃であり、150〜220℃であることが好ましい。熱可塑性エラストマーを含有するPGA系樹脂組成物をこのような温度で空気中で加熱すると、通常、熱可塑性エラストマーが熱分解されるため、PGA系樹脂組成物の溶融粘度が低下するという問題がある。本発明のPGA系樹脂組成物においては、特定のSP値を有する酸化防止剤が含まれているため、上記のような温度で熱処理を施しても、熱可塑性エラストマーの熱分解が起こらず、溶融粘度の低下が抑制され、また、隣接する熱可塑性樹脂層との間でデラミネーションが発生しにくいPGA系樹脂層を形成することが可能となる。酸化防止剤が有効に作用する機構は必ずしも明確ではないが、熱可塑性エラストマーに溶解ないし、良好に相互作用し、かつ酸素により生成するラジカルを抑制する機構が推定される。
<延伸成形用積層体>
次に、本発明の延伸成形用積層体について説明する。本発明の延伸成形用積層体は、このような本発明のPGA系樹脂組成物により形成されたPGA系樹脂層と、このPGA系樹脂層に隣接した熱可塑性樹脂層とを備えるものである。このような延伸成形用積層体は、前記PGA系樹脂組成物と前記熱可塑性樹脂とを用いて製造することができる。従って、本発明の延伸成形用積層体中のPGA系樹脂層の組成は、前記PGA系樹脂組成物の組成と同様となる。
本発明に用いられる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸といったポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体といったポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン、スチレン・ブタジエン共重合体といったポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン・ビニルアルコール系樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂、ナイロン系樹脂、スルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。このような熱可塑性樹脂のうち、用途に応じた所望の透明性およびガスバリア性をともに満足する延伸積層体が得られるという観点から、ポリエステル系樹脂が好ましく、ジオール成分とジカルボン酸成分の少なくとも一方が芳香族化合物である芳香族ポリエステル系樹脂がより好ましく、芳香族ジカルボン酸から得られた芳香族ポリエステル系樹脂が特に好ましい。
本発明の延伸成形用積層体の厚さとしては特に制限はないが、延伸成形用積層体がボトルのプリフォームの場合、通常、2〜10mm程度である。このような延伸成形用積層体において、PGA系樹脂層の厚さとしては特に制限はなく、主に延伸積層体に要求されるガスバリア性に応じて設定されるが、延伸成形用積層体全体の厚さに対して1〜10%(質量基準にほぼ等しい)が好ましい。PGA系樹脂層の厚さが前記上限を超えると、ブロー成形が困難になる傾向にある。
本発明の延伸成形用積層体の製造方法としては特に制限はないが、PGA系樹脂層と熱可塑性樹脂層とが隣接しているという観点から、前記PGA系樹脂組成物と前記熱可塑性樹脂とを共押出または共射出して製造することが好ましい。前記共押出または共射出の方法としては特に制限はなく、公知の方法を採用することができる。
このような共押出成形や共射出成形により得られる延伸成形用積層体の代表的なものとしては、ボトル用プリフォーム、中空容器などの多層延伸成形用プリフォームが挙げられる。
<延伸積層体>
次に、本発明の延伸積層体について説明する。本発明の延伸積層体は、上述した本発明の延伸成形用積層体に延伸処理を施してなるものであり、前記PGA系樹脂(通常は結晶化したもの)、本発明にかかる熱可塑性エラストマーおよび本発明にかかる酸化防止剤を含有するPGA系樹脂層と、前記熱可塑性樹脂層とが共延伸された延伸積層体である。このような延伸積層体は、PGA系樹脂層に特定の熱可塑性エラストマーと特定の酸化防止剤を所定量含んでいるため、PGA系樹脂層と熱可塑性樹脂層との間においてデラミネーションが発生しにくいものとなる。このような延伸積層体の代表的なものとしてはボトル、中空容器などの多層延伸成形容器が挙げられる。
本発明の延伸積層体の厚さとしては特に制限はないが、延伸積層体がボトルの場合、通常、100〜5000μm程度である。このような延伸積層体において、PGA系樹脂層の厚さとしては特に制限はないが、延伸積層体全体の厚さに対して1〜10%(質量基準にほぼ等しい)が好ましい。
前記延伸処理としては特に制限はなく、ブロー成形などの公知の延伸方法が挙げられる。また、一軸延伸であっても二軸延伸であってもよい。延伸倍率としては特に制限はなく、通常、面積倍率で2倍以上、好ましくは4〜25倍である。なお、このような延伸処理を施すことによって、ヘイズが低く、透明性に優れた延伸積層体を得ることができる。本発明の延伸積層体のヘイズとしては特に制限はないが、厚さ300μmの延伸積層体について測定した場合に、0.1〜10%が好ましく、0.5〜7%がより好ましく、0.8〜5%がさらに好ましく、1〜3%が特に好ましい。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例で使用した酸化防止剤、実施例および比較例で得られたPGA系樹脂組成物および延伸積層体(ボトル)の特性は以下の方法により評価した。
<溶解度パラメータ>
酸化防止剤の溶解度パラメータ(SP値)はフェダー法(Fedor法)により算出した。すなわち、フェダーにより提案された下記式(i):
δ=(ΣEcoh/ΣV)1/2 (i)
(式(i)中、Ecohは対象化合物の構成単位の凝集エネルギー(cal/mol)を表し、Vは対象化合物の構成単位のモル分子容(cm/mol)を表す。)
を用いて酸化防止剤のSP値δ(単位:(cal/cm1/2)を求めた。
<溶融粘度>
PGA系樹脂組成物の溶融粘度MVを、キャピラリーレオメーター((株)安田精機製作所製「セミオートマチック キャピラリーレオメーター(軽荷重式)」(Cat.No.140−SAS−2002)、シリンダー径:9.55mm、オリフィス長:10mm、オリフィス径:1mm)を用いて、温度270℃、剪断速度122sec−1の条件で測定した。
<耐デラミネーション性>
得られたボトルについて高温高湿下での加速劣化試験を行い、耐デラミネーション性を評価した。すなわち、ボトルに4.2気圧の炭酸水を充填して栓を閉め、38℃、85%RHの雰囲気下に1日間保管した後、PET層とPGA樹脂層の間のデラミネーション発生の有無を観察した。この耐久性試験を20本のボトルについて実施し、デラミネーションが発生しなかったボトルの本数を測定した。
(実施例1)
(1)PGA系樹脂組成物の調製
PGA樹脂((株)クレハ製、重量平均分子量:19万、溶融粘度(温度270℃、剪断速度122sec−1):600Pa・s、ガラス転移温度:38℃、融点:220℃)100質量部に、熱可塑性エラストマーとしてポリエステル系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル3078FG」)5質量部と、SP値が10.38(cal/cm1/2の酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1520L」)0.1質量部とをドライブレンドした。このブレンド物を、供給部から排出部までの間に設けた3個の区間の温度を供給部から順に200℃、230℃、240℃に設定し、ダイスの温度を215℃に設定した小型二軸混練機((株)東洋精機製作所製「2D25S」)に供給して、スクリュー回転数30rpmで溶融混練を行い、吐出量2kg/hで吐出してペレット状のPGA系樹脂組成物を得た。
(2)PGA系樹脂組成物の熱処理
前記(1)で得られたPGA系樹脂組成物を熱風循環式乾燥機(富山産業(株)製「ミニジェットオーブン」)に入れ、170℃で17時間静置して乾燥空気雰囲気下で熱処理を行なった。
(3)溶融粘度保持率の算出
前記(2)で得られた熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVを前記方法に従って測定した。また、酸化防止剤を添加しなかった以外は前記(1)と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製し、このPGA系樹脂組成物(熱処理なし)の溶融粘度MVを前記方法に従って測定した。得られた溶融粘度MVおよびMVから、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率((MV/MV)×100)を算出した。その結果を表1および図1に示す。
(実施例2)
酸化防止剤として、SP値が10.93(cal/cm1/2の酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1035」)0.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1および図1に示す。
(実施例3)
酸化防止剤として、SP値が10.87(cal/cm1/2の酸化防止剤((株)ADEKA製「アデカスタブAO−330」)0.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1および図1に示す。
(実施例4)
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの量を3質量部に、酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1520L」)の量を0.03質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1に示す。
(実施例5)
酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1520L」)の量を0.01質量部に変更した以外は実施例4と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1に示す。
(実施例6)
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの量を3質量部に、酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1035」)の量を0.03質量部に変更した以外は実施例2と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1に示す。
(比較例1)
酸化防止剤を混合しなかった以外は実施例4と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1に示す。
(比較例2)
酸化防止剤として、SP値が9.59(cal/cm1/2の酸化防止剤((株)ADEKA製「アデカスタブAO−50」)0.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1および図1に示す。
(比較例3)
酸化防止剤として、SP値が9.89(cal/cm1/2の酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX259」)0.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1および図1に示す。
(比較例4)
酸化防止剤として、SP値が9.97(cal/cm1/2の酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1726」)0.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1および図1に示す。
(比較例5)
酸化防止剤として、SP値が11.02(cal/cm1/2の酸化防止剤(住友化学(株)製「SUMILIZER GA−80」)0.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1および図1に示す。
(比較例6)
酸化防止剤として、SP値が11.26(cal/cm1/2の酸化防止剤((株)ADEKA製「アデカスタブAO−40」)0.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1および図1に示す。
(比較例7)
酸化防止剤として、SP値が11.57(cal/cm1/2の酸化防止剤(Chemtura社製「ナウガードXL−1」)0.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1および図1に示す。
(比較例8)
酸化防止剤として、SP値が11.61(cal/cm1/2の酸化防止剤((株)ADEKA製「アデカスタブAO−30」)0.1質量部を用いた以外は実施例1と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。実施例1と同様にして、このPGA系樹脂組成物に熱処理を施し、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度MVの保持率を求めた。その結果を表1および図1に示す。
Figure 2013139496
表1および図1に示した結果から明らかなように、SP値が9.97〜11.0(cal/cm1/2の範囲にある酸化防止剤を混合した場合(実施例1〜6および比較例4)には、PGA系樹脂組成物の熱処理後の溶融粘度の保持率は高い値(85%以上)を示した。これに対して、SP値が9.89(cal/cm1/2以下の酸化防止剤を混合した場合(比較例2〜3)には、溶融粘度の保持率は低い値(80%以下)となった。また、SP値が11.0(cal/cm1/2を超える酸化防止剤を混合した場合(比較例5〜8)には、PGA系樹脂組成物の熱処理後の溶融粘度の保持率は、特に低い値(70%以下)を示した。
このように、SP値が9.97〜11.0(cal/cm1/2の範囲にある酸化防止剤を混合することによって、前記熱可塑性エラストマーの熱分解が抑制され、PGA系樹脂組成物の熱安定性が向上することが確認された。
(実施例7)
(1)PGA系樹脂組成物の調製
酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1520L」、SP値:10.38(cal/cm1/2)の量を0.1質量部に変更した以外は実施例4と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製した。
(2)3層プリフォームの作製
前記(1)で得られたPGA系樹脂組成物を中間層用樹脂として使用し、内外層用樹脂としてポリエチレンテレフタレート(遠東紡社製「CB602S」、重量平均分子量:2万、溶融粘度(温度290℃、剪断速度122sec−1):550Pa・s、ガラス転移温度:75℃、融点:249℃)を使用し、各層用のバレルおよびランナーごとに温度制御可能な共射出成形機を使用して、ポリエチレンテレフタレート(PET)/PGA/ポリエチレンテレフタレート(PET)の3層(PGA系樹脂組成物の充填量:3質量%)からなる厚さ3.0mmのボトル用プリフォーム(以下、「3層プリフォーム」という)を作製した。中間層用バレルおよびランナーの温度はそれぞれ250℃および245℃に設定し、内外層用バレルおよびランナーの温度はともに290℃に設定した。
(3)ボトルの作製
前記(2)で得られた3層プリフォームを115℃でブロー成形してPET/PGA/PETの3層(PGA系樹脂組成物の充填量:3質量%)からなる厚さ300μmの無色透明なボトルを得た。前記方法に従って、得られたボトルの耐デラミネーション性を評価した。その結果を表2および図2に示す。
(実施例8)
酸化防止剤として、SP値が10.93(cal/cm1/2の酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1035」)0.1質量部を用いた以外は実施例7と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製し、3層プリフォームおよびボトルを作製した。前記方法に従って、得られたボトルの耐デラミネーション性を評価した。その結果を表2および図2に示す。
(実施例9)
酸化防止剤として、SP値が10.87(cal/cm1/2の酸化防止剤((株)ADEKA製「アデカスタブAO−330」)0.05質量部を用いた以外は実施例7と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製し、3層プリフォームおよびボトルを作製した。前記方法に従って、得られたボトルの耐デラミネーション性を評価した。その結果を表2に示す。
(実施例10)
ポリエステル系熱可塑性エラストマーの量を2質量部に、酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1520L」)の量を0.05質量部に変更した以外は実施例7と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製し、3層プリフォームおよびボトルを作製した。前記方法に従って、得られたボトルの耐デラミネーション性を評価した。その結果を表2に示す。
(比較例9)
酸化防止剤を混合しなかった以外は実施例7と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製し、3層プリフォームおよびボトルを作製した。前記方法に従って、得られたボトルの耐デラミネーション性を評価した。その結果を表2に示す。
(比較例10)
酸化防止剤として、SP値が9.89(cal/cm1/2の酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX259」)0.1質量部を用いた以外は実施例7と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製し、3層プリフォームおよびボトルを作製した。前記方法に従って、得られたボトルの耐デラミネーション性を評価した。その結果を表2および図2に示す。
(比較例11)
酸化防止剤として、SP値が9.97(cal/cm1/2の酸化防止剤(BASF社製「IRGANOX1726」)0.1質量部を用いた以外は実施例7と同様にしてペレット状のPGA系樹脂組成物を調製し、3層プリフォームおよびボトルを作製した。前記方法に従って、得られたボトルの耐デラミネーション性を評価した。その結果を表2および図2に示す。
Figure 2013139496
表2および図2に示した結果から明らかなように、SP値が10.2〜11.0(cal/cm1/2の範囲にある酸化防止剤を混合した場合(実施例7〜10)には、PET層とPGA樹脂層の間のデラミネーションの発生が抑制され、耐デラミネーション性に優れた延伸積層体(ボトル)が得られることが確認された。これに対して、SP値が10.2(cal/cm1/2未満の酸化防止剤を混合した場合(比較例10〜11)には、PET層とPGA樹脂層の間でデラミネーションが発生し、延伸積層体(ボトル)の耐デラミネーション性は劣るものであった。
このように、PGA系樹脂組成物の熱安定性を向上させる酸化防止剤のSP値に比べて狭い範囲のSP値(10.2〜11.0(cal/cm1/2)を有する酸化防止剤を混合することによって、デラミネーションの発生が抑制されることが確認された。これは、前記範囲のSP値を有する酸化防止剤が前記熱可塑性エラストマーとの相溶性が高く、PGA樹脂層の表面状態が変化しにくいことに起因すると考えられる。このような特性はPGA系樹脂組成物に熱処理を施しても失われるものではないと考えられ、実施例7〜10で調製したPGA系樹脂組成物に実施例1と同様の熱処理を施しても、PET層とPGA樹脂層の間のデラミネーションの発生が抑制され、耐デラミネーション性に優れた延伸積層体(ボトル)が得られると考えられる。
また、実施例7〜10で調製したPGA系樹脂組成物は、実施例1〜6で調製したPGA系樹脂組成物に比べて、前記熱可塑性エラストマーに対する酸化防止剤の含有量が多いものである。従って、実施例7〜10で調製したPGA系樹脂組成物に熱処理を施しても前記熱可塑性エラストマーの熱分解は十分に抑制されると考えられ、実施例7〜10においても、実施例1〜6の場合と同様に、熱処理後のPGA系樹脂組成物の溶融粘度の保持率は高い値(85%以上)を示すと考えられる。
以上説明したように、本発明によれば、熱処理による溶融粘度の低下が抑制されたポリグリコール酸系樹脂組成物を得ることが可能となる。また、本発明のポリグリコール酸系樹脂組成物を用いることによって、隣接する熱可塑性樹脂層との間でデラミネーションが発生しにくいポリグリコール酸系樹脂層を形成することが可能となる。
したがって、本発明のポリグリコール酸系樹脂組成物は、多層フィルムや多層シート、多層中空容器などの延伸積層体を構成するポリグリコール酸系樹脂層の原材料などとして有用である。

Claims (4)

  1. ポリグリコール酸系樹脂、該ポリグリコール酸系樹脂100質量部に対してポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマー0.5質量部以上10質量部以下、ならびに該熱可塑性エラストマー1質量部に対して溶解度パラメータが10.2〜11.0(cal/cm1/2である酸化防止剤0.001質量部以上0.1質量部以下を含有することを特徴とするポリグリコール酸系樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載のポリグリコール酸系樹脂組成物により形成されたポリグリコール酸系樹脂層と、前記ポリグリコール酸系樹脂層に隣接した熱可塑性樹脂層とを備えることを特徴とする延伸成形用積層体。
  3. 請求項2に記載の延伸成形用積層体に延伸処理を施してなるものであることを特徴とする延伸積層体。
  4. ポリグリコール酸系樹脂、該ポリグリコール酸系樹脂100質量部に対してポリエステル系熱可塑性エラストマーおよびポリウレタン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択される少なくとも1種の熱可塑性エラストマー0.5質量部以上10質量部以下、ならびに該熱可塑性エラストマー1質量部に対して溶解度パラメータが10.2〜11.0(cal/cm1/2である酸化防止剤0.001質量部以上0.1質量部以下を混合してポリグリコール酸系樹脂組成物を調製する混合工程と、
    前記混合工程で得られたポリグリコール酸系樹脂組成物に120〜225℃の温度で熱処理を施す加熱工程と、
    を含むことを特徴とするポリグリコール酸系樹脂組成物の製造方法。
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