JP2013136675A - 導電性フッ素樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶融成形が可能であり、安定した静電気拡散性を示し、その表面に発泡がなく平滑であり、耐摩耗性に優れており、複写機・プリンターなどの加圧ロールまたは半導体製造装置に用いられる配管・ウエハ保持治具等の幅広い領域で使用できる導電性樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】熱溶融性フッ素樹脂に比表面積が10m2/g以下の酸化亜鉛粉末と混合した白色導電性フッ素樹脂組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、導電性または帯電防止性が要求される物品に用いられる導電性フッ素樹脂組成物に関する。更に詳しくは、白色で溶融成形が可能であり、安定した静電気拡散性を示し、その表面に発泡がなく平滑であり、耐摩耗性に優れているため、例えば複写機・プリンターなどの加圧ロールまたは半導体製造装置に用いられる配管・ウエハ保持治具等に好適に使用される。
テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル) 共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)などの熱溶融性フッ素樹脂は、フッ素樹脂特有の優れた耐熱性・耐薬品性・非粘着性などを有している。これらフッ素樹脂はまた優れた絶縁材料ではあるが、複写機・プリンターなどのOA機器用ロールやチューブまたはベルト用部材あるいはIC及び半導体製造装置に用いられる配管・保持治具やチューブとして使用する場合にはそれぞれに適した導電性または帯電防止性が要求されている。
フッ素樹脂に導電性または帯電防止性を付与する方法としては、一般に導電性付与粒子、例えばカーボンブラックあるいは黒鉛などを添加する方法がよく知られている。特に、PFA に導電性カーボンブラックとして不純物が極めて少ないケッチェンブラックをヘンシェルミキサーで混合したもの(特許文献1)、分子末端をフッ素化させたPFAに導電性カーボンブラックを入れて溶融混合し、電気抵抗が低く、溶融粘度の増加を抑えたもの(特許文献2)などが提案されている。
また、体積抵抗値が1014〜1017Ωcmとなるようにカーボン・酸化亜鉛・酸化スズ・酸化チタン等の導電性付与粒子をフッ素樹脂(PFA)中に分散させて、OA機器の定着ロールとして用いるアイデアが提案(特許文献3)されている。
特開平2−60954 号公報 特開平6−1902 号公報 特開平6−169701 号公報
Journal of Applied Polymer Science、Vol.69、P193 (1998)
フッ素樹脂に導電性を付与する目的で使用される充填材としてはカーボンブラックが良く知られているが、OA機器ロールにカーボンブラックを添加した導電性PFAを用いた場合、カーボンの黒色紙裏汚れが問題になったり、半導電性が求められるローラー定着システムにおいて導電性が良すぎるため定着工程の帯電制御が難しくなると言われている。一方、多くのOA機器ロールに適した静電気拡散性材料領域(帯電しにくく、かつ電荷をゆるやかに拡散させる材料である)の導電性を達成するために混合するカーボンブラック量を減らすと、今度はカーボンブラックが成形後の樹脂中で均一に分散しないという問題が生じる。導電性フッ素樹脂組成物の電気抵抗は、充填材として混合した導電性付与粒子の種類や量だけではなく、導電性付与粒子の分散状態によっても大きく変動することが知
られており(非特許文献1)、とくに導電性付与粒子の混合量が少ない静電気拡散性材料領域の導電性フッ素樹脂組成物では、導電性付与粒子が均一に分散されないと成形体の静電気拡散性が安定せず、また半導電性領域から絶縁領域に外れることがある。このような事情から、カーボンブラックを添加したフッ素樹脂組成物では、目的のOA機器に合わせて静電気拡散性材料領域もしくは静電気絶縁性材料領域で導電性を制御する(例えばカーボンブラックの添加量の増減により導電性を微調整する)ことは困難であった。
また、化学工業や食品工業で用いられる導電性樹脂のライニングでは、カーボンブラックが製品中に黒色異物として検出されることを嫌ったり、樹脂壁が黒色であるとライニング内の流体が見にくいことから白色が好まれる傾向がある。
そこで本発明者らは、安定した静電気拡散性を発揮することが出来かつその調整が容易な導電性付与粒子の探索を行い、成形体の導電性が安定し、成形表面が平滑であり、かつ白色の導電性フッ素樹脂組成物について検討を行った。
本発明者らは上記の課題を解決する導電性付与粒子として酸化亜鉛粉末に着目した。酸化亜鉛粉末は、比表面積が10m2/g以下であれば、混合量が少なくとも樹脂中に均一に拡散しやすく、したがって樹脂に安定的に導電性詳しくは静電気拡散性を付与できることが見出された。また、上記のような酸化亜鉛により付与される静電気拡散性は、表面抵抗が1011Ω/□付近であっても添加量を変化させることで微調整できることも見出された。このような静電気絶縁性領域での導電性の細かな調整は、これまで達成されていなかった。
さらに、酸化亜鉛粉末は一般に、熱溶融性樹脂と溶融混合および溶融成形する工程で発泡の原因となる粒子であるが、この問題も上記のような比表面積が10m2/g以下の酸化亜鉛粉末を用いることで抑制できることも見出された。したがって、熱溶融性フッ素樹脂と比表面積が10m2/g以下の酸化亜鉛粉末を含む組成物は、安定な導電性を有し、耐摩耗性に優れ、発泡が抑えられているため成形表面が平滑であり、さらに本発明の酸化亜鉛粉末は熱溶融性フッ素樹脂に添加混合してもメルトフローレート(MFR)に与える影響(増加)は少なくその用途に応じて導電性を微調整できることから、複写機やプリンターなどの加圧ロールに代表されるOA機器ロールやチューブなどまた半導体用の製造装置に用いられる保持治具やチューブなどの非常に幅広い用途に適用できることが見出された。
すなわち、本発明は、熱溶融性フッ素樹脂に酸化亜鉛粉末を含む組成物であって、酸化亜鉛粉末の比表面積が10m2/g以下であり、該組成物の372℃におけるひも状押出品(ビード)表面に実質的な発泡が観察されないことを特徴とする白色導電性フッ素樹脂組成物に関する。
好ましくは、本発明の白色導電性フッ素樹脂組成物は、酸化亜鉛粉末を5〜40重量%の割合で含有する。
好ましくは、本発明の白色導電性フッ素樹脂組成物に含まれる熱溶融性フッ素樹脂は、テトラフルオロエチレンとパ−フルオロ(アルキルビニルエーテル)の共重合体である。
本発明はまた、上記の白色導電性フッ素樹脂組成物で成形された複写機・プリンター用加圧ロールに関する。
本発明により表面抵抗が101016Ω/□程度の安定した半導電性を示し、また得られた成形体の表面が平滑であり、複写機・プリンターなどの加圧ロールに代表されるOA機
器ロールやチューブ用途や半導体用の製造装置に用いられる保持治具やチューブ用途へ使用できる導電性フッ素樹脂組成物が提供される。
さらに可燃性液体の防爆防止PFA配管や、食品・薬品等のサニタリー配管の内装ライニングにも応用可能となり新規用途への展開が期待される。
熱溶融性フッ素樹脂
本発明の導電性フッ素樹脂組成物は、熱溶融性フッ素樹脂に酸化亜鉛粉末を含むものである。本発明において「熱溶融性フッ素樹脂」とは、加熱により樹脂が溶融状態で流動し、それによって押出機や射出成形機などの従来公知の溶融成形装置を用いて、例えば、溶融物からフィルム、繊維、チューブなどの成形品とすることが出来、その成型品はそれぞれの目的に適用するのに十分な強度及び耐久性(toughness)を示すことができるフッ素樹脂を意味する。本発明において使用できる熱溶融性フッ素樹脂は、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)などである。特に熱溶融性フッ素樹脂は成形性と耐熱性からテトラフルオロエチレン・パ−フルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(以下、PFAという)が好ましい。テトラフルオロエチレンとパ−フルオロ(アルキルビニルエーテル)の共重合体においては、パ−フルオロ(アルキルビニルエーテル)含量が1〜10重量%、とくに3〜8重量%程度の共重合体の使用が好ましく、またパ−フルオロ(アルキルビニルエーテル)のアルキル基が炭素数1〜5、特に1〜3のものが好ましい。そのようなPFA共重合体は、従来法(例えば特公昭48−2223号、特公昭48−20788号)に基づいて製造することができるし、商業的に入手することもできる。例えばこれらは、テフロン(登録商標)PFA(三井・デュポンフロロケミカル株式会社)、ネオフロン(登録商標)PFA(ダイキン工業株式会社)、フルオン(登録商標)PFA(旭硝子株式会社)の商品名で販売されている。
これらの熱溶融性フッ素樹脂の溶融粘度あるいは分子量には特に制限がないが、酸化亜鉛粉末を混合することで樹脂組成物の粘度が高くなるため、押出成形および射出成形を目的とする組成物では、372℃、5000g荷重におけるメルトフローレート(MFR)で表わすと2〜50g/10分程度のものを使用するのが好ましい。
また、混合される熱溶融性フッ素樹脂は、平均粒径が0.2μm程度のコロイド状粒子が凝集した平均粒径が10μm以下、好ましくは7μm以下、更に好ましくは5μm以下の凝集粉末を使用するのがより好ましい。このような凝集粉末は、例えば、平均粒径約0.1〜0.3μm程度の熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子を水中に約1〜75重量%含む乳化重合により得られる熱溶融性フッ素樹脂水性分散液に、電解性物質を加え、機械的撹拌下に熱溶融性フッ素樹脂のコロイド状微粒子を凝集させた後、水性媒体と分離し、必要に応じ水洗し乾燥させることにより得ることができる。
酸化亜鉛
本発明の酸化亜鉛粉末は、白色でありそれ自体が半導電性を示す、またアルミやガリウムの導電物質を表面にドープすることでカーボンブラックほどではないが良好な導電性を示すようになることから、カーボンブラックに代わる白色の半導電材として工業的に広く用いられている。酸化亜鉛粉末には、電気亜鉛冶金から間接法(フランス法)にて製造される不定形粒子のものと、電気炉ダスト等から直接法(アメリカ法)にて製造される花びら状もしくは凝粒子のものがある。本発明で用いられる酸化亜鉛粉末は、特に比表面積が10m2/g以下のものであり、これらは乾式法−フランス法で製造することができ、滑らかな表面を持ち、かつ不純物が極めて少ないものである。ここで乾式法-フランス法とは、溶融させた金属亜鉛を約1000℃に加熱し発生する亜鉛蒸気を空気で酸化させる方
法であり、高純度のものを得ることが出来る。従来は酸化亜鉛と熱可塑性フッ素樹脂との混合において、押出成形時の加熱による酸化亜鉛粉末が原因となる発泡が問題となっていた。本発明では上記の問題に対し、乾式法−フランス法にて製造された不定形粒子を使い、特に比表面積が10m2/g以下の酸化亜鉛粉末を用いることで成形時の発泡が抑えられ、表面平滑なチューブやスリーブを成形できることを見出した。酸化亜鉛の比表面積は、例えば1〜10、2〜9、3〜8、4〜7または5〜6m2/gであり、6m2/g以下、例えば1〜6、2〜6、3〜6、4〜6m2/gであるのが好ましい。10m2/g以上の酸化亜鉛粉末を用いた場合は、酸化亜鉛粉末に巻き込まれた空気等が原因で発泡が生じる。また、酸化亜鉛粉末の粒径については、特に限定するものではないが0.5〜10μmのものが好ましく、20〜50nmの細かな粒子は発泡が多いため良品が得られない。本発明において酸化亜鉛粉末の「比表面積」は、単位量の粉体に含まれる粒子の表面積の総和で表される量で、通常は単位質量の粉体のもつ全表面積SW(m2/g)で示される。比表面積の測定法としては、吸着法、湿潤熱法、透過法および拡散速度法がある。これらの方法の中で気体の吸着を利用する吸着法が最もよく用いられる。これは粉体粒子表面に大きさのわかった分子あるいはイオンを吸着させ、BET等温吸着式を適用し、吸着量から表面積を計算する方法である。
導電性を向上させる目的で酸化亜鉛粉末にアルミやガリウムの異種元素をドープさせた製品は、成形温度が300℃以上である本発明の溶融フッ素樹脂には成形時に発泡が認められるため適さない。本発明の酸化亜鉛は平均粒径10μm以下の熱溶融性フッ素樹脂粉末と混合すると、より均一に酸化亜鉛粒子が熱溶融性フッ素樹脂粉末中に細かくて均一に分散される。そのため得られる成形体の表面状態が他の導電性付与粒子を混合したものより平滑で発泡もなく、半導体製造装置に用いられるウエハ保持治具や溶剤ラインに使用されても導電性を与えることができる。また非常に滑らかな表面が要求されるプリンターなどの定着ロールに代表されるOA機器ロールやチューブなどの用途に適した導電性フッ素樹脂組成物が得られ、その耐摩耗性も従来品よりも優れたものとなっている。
酸化亜鉛粉末の配合量は目的とする導電性のレベルによっても異なるが、組成物中、5〜30重量%、好ましくは10〜25重量%、特に17〜23重量%程度とするのが好ましい。
本発明の導電性フッ素樹脂組成物においては、酸化亜鉛粉末が極めて均一に熱溶融性フッ素樹脂中に分散されているため、電気抵抗が安定し、得られる成形体の表面状態がより平滑で精度もよく、複写機・プリンターなどの定着ロールに代表されるOA機器ロールやチューブ、また半導体用の製造装置に用いられる保持治具やチューブなどの用途に使用することができる。そして液中に遊離することで装置を汚染させることがない導電性フッ素樹脂粉末組成物ができる。
混合方法
本発明においては、このようにして得られる熱溶融性フッ素樹脂粉末と酸化亜鉛粉末を、高速で回転するブレードによって粉末同士を混合する。このようなフッ素樹脂粉末と酸化亜鉛粉末を混合する高速回転ブレードを持つ混合機としては、市販品としては、例えば三井三池製作所製ヘンシェルミキサー、愛工舎製作所製「カッターミキサー」あるいは日本アイリッヒ社製「アイリッヒ・インテンシブ・ミキサー」等がある。
また上記混合は、得られる粉末組成物の平均粒径が0.5〜8μm、好ましくは1〜6μm程度になるように行うことが好ましい。
他の充填材
また、酸化亜鉛粉末が均一に分散された導電性フッ素樹脂粉末組成物から得られる成形体は、成形体内部あるいは成形体間の電気抵抗の変化が少ないため、本発明の導電性フッ
素樹脂粉末組成物においては、任意に他の目的のため添加剤を配合することができる。添加剤の配合は、上記混合機で酸化亜鉛粉末の混合時に行うことができる。このような添加剤として、ガラス、グラファイト、カーボンブラック、アルミナ、マイカ、炭化珪素、窒化硼素、酸化チタン、酸化ビスマス、酸化鉄、ブロンズ、金、銀、銅、ニッケル、ステンレス、二硫化モリブデンなどの粉末または繊維状粉末などを例示することができる。またフラーレン(C60)やカーボンナノチューブなどのナノ材料も添加剤として配合することができる。
成形方法
また、特定の条件下で高速回転ブレードによる混合機で混合して得られる本発明の導電性フッ素樹脂粉末組成物は、通常の溶融押出機を通してペレットにしてから押出成形、射出成形、トランスファー成形、溶融紡糸などの溶融成形に用いることが好ましい。勿論、前記のようにペレット化しない導電性フッ素樹脂粉末組成物を直接成形原料とするか、あるいは成形機ホッパーで粉末組成物の食い込みをよくするためコンパクターで粉末組成物を固めて溶融成形することも可能である。更に、本発明で得られる導電性フッ素樹脂粉末組成物を造粒して粉末成形やコーティング用材料としても用いることができる。
最終的に製造する成形体の種類は、導電性のコントロールが必要なコピー機等の加圧ロール表面または静電防止性が必要な可燃性物質の運搬用のホース、チューブ、容器などが挙げられる。さらに導電性や静電防止性を必要とする多くの用途を対象とするので、特に本発明で限定するようなことはないが、例えば、半導体製造関連導電性治具、ICトレイの内張り、IC組立工場の作業台、帯電防止マット、帯電防止手袋、自動車用内装材、帯電防止壁紙、帯電防止ローラー、帯電防止ベルト等などがある。
例えば、本発明の導電性フッ素樹脂組成物で複写機・プリンター用加圧ロールの芯金等を被覆することで、安定した静電気拡散性を示す加圧ロールを製造することができる。そのような被覆は、当該分野で周知の方法、例えば、チューブの被覆や噴霧、浸漬等の塗装手段により行うことができる。
被覆層の厚みは必要に応じて適宜決めればよいが、充分な加圧ロール性能を発揮するためには1μm以上であることが好ましい。また、コストや熱伝導性等を考慮すると500μm以下であることが好ましい。
本発明の組成物は、372℃におけるひも状押出品(ビード)表面に実質的な発泡が観察されないことによって特徴づけられる。本発明において、「372℃におけるひも状押出品(ビード)表面」は、実施例3に記載されたシリンダーから押し出された棒状の樹脂生成物の表面を意味する。
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。なお、テトラフルオロエチレン・パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)としては、テトラフルオロエチレン・パーフルオロプロピルビニルエーテル(アルキル基の炭素数3、PPVE)共重合体を使用し、導電性フッ素樹脂粉末組成物のビードによる溶融押出成形のよる発泡や表面平滑性、酸化亜鉛粉末の分散状態、圧縮成形シートの帯電性および表面抵抗の測定は下記の方法によった。
[製造例1]
乳化重合によって得られた30重量% PFA水性分散液(平均粒径0.2μm、融点309℃、PPVE=3.5重量%)60kgを、ダウンフロータイプのプロペラ型6枚羽根付き攪拌シャフトと排水手段を有する攪拌槽(100L)に入れ、300rpmで攪拌
しながら60%硝酸500gを加えた。さらに300rpmで10分間攪拌し、水性分散液が凝集した後、450rpmで20分間攪拌することによりPFA凝集粒子を水層上に浮上、浮揚させ、水層と分離した。
その水層を攪拌槽から排出し、次いて攪拌槽に水を入れてPFA凝集粒子を水洗した後、ステンレス製スクリーン(目開き100〜150μm)を通過させた。スクリーン上に残ったPFA凝集粒子を160℃で24時間乾燥させ、PFA微粉を得た。得られたPFA微粉の平均粒径をレーザー回折式の粒度分布測定器(Sympatec GmbH. HEROS & RODOS)で測定したところ、2〜6μmであった。
このPFA粉末と酸化亜鉛−A(平均粒径1μm、比表面積4〜6m2/g)を混合機(三井三池製作所製ヘンシェルミキサー)に投入し、回転数3400rpmで5分間混合した。溶融混練は、東洋精機製溶融混練装置(25mm二軸押出機)にて、380℃、スクリュ回転数、50回転にて溶融混合し、最終的に各配合比の導電性フッ素樹脂粉末組成物(ペレット状)を得た。
[製造例2〜6]
比表面積が10m2/g以下である酸化亜鉛粉末−B(平均粒径0.3〜1μm、比表面積2〜6m2/g)も含めて表1に示す割合で熱溶融性フッ素樹脂に混合し、製造例1と同じ手順で導電性フッ素樹脂粉末組成物を作製した。
[比較例1]
製造例1と同じ手順で熱溶融性フッ素樹脂を得、導電性付与粒子を添加せずに用いた。
[比較例2]
熱溶融性フッ素樹脂に導電性付与粒子としてカーボンブラックを7.5wt%混合し、製造例1と同じ手順で導電性フッ素樹脂粉末組成物を作製した。そのメルトフローレート(MFR)は、熱溶融性フッ素樹脂の7.8(g/10分)から2.5(g/10分)に変化し、成形性に大きく影響を与えている。
[比較例3〜4]
比表面積が10m2/g以上の酸化亜鉛粉末のものを混合した以外は製造例1と同じ手順で導電性フッ素樹脂粉末組成物を作製した。
[実施例1] 帯電性(静電気減衰特性)の測定
以下の手順および測定機器を用い、製造例1〜6および比較例1〜4の組成物から150×150×3tシートを作製し、恒温恒湿下でガーゼ摩擦にて発生させた電位の変化を600秒経過後まで測定した。
測定機器:春日電気(株)製 集電式電位測定器 KS−525型+測定用ゲージ箱
測定方法
(1)150×150×3t シート作製
(2)150×150×3t 切り取り(測定面を同じにする)
(3)シートをオーブンにて、200℃×5Hr乾燥する。
(4)冷却後、恒温室(23±2℃、30±5%)に3日間放置後、測定をする。
(5)ゲージ箱内の測定ノズルのキャップを外し目盛5KVの位置に合わせる(サンプル表面から100mm)装置の電源を入れ、ゼロ調整をする。
(6)ゴム手とビニール手を装着する。
(7)ガーゼとサンプル表面との接触面積 35×100mm
(8)ガーゼの上にテフロン(登録商標)角材を置き、ガーゼに一定加重(90g)をかけるようにする。
(9)ガーゼを1秒間に1往復させる速度(20mm/s)でサンプル表面をこする
(10)1分後にすばやくサンプルをゲージ箱に入れ、測定を開始する。(10秒、
30秒・・・600秒)
その結果を表1に示す。製造例1〜6の組成物は、OA用ロールとしての用途に適した1.5kv以下の安定した静電気拡散性(0.37〜1.4kv)を示した。これに対して、比較例1の組成物(PFAのみ)は、同じ用途では低すぎる導電性(高すぎる絶縁性)を示し、比較例2〜4の組成物は30秒後の電位がすでにゼロであり、高すぎる導電性を示した。また、製造例1〜6の組成物では酸化亜鉛の添加量を調節することにより上記の範囲内で帯電性(静電気減衰特性)を制御できることが示された。
[実施例2] 表面抵抗の測定
実施例1と同様に製造例1〜6および比較例1〜4の組成物から150×150×1.5tシートを作製し、得られた表面に三菱油化製表面抵抗測定機(HIRESTA IP)によりHR100ブローブを当接して10−500V(DC)、10秒間印加した場合の表面抵抗値(Ω/□)を測定した(JIS K69911準拠)。
その結果を以下の表1に示す。なお、この測定器の測定限界は、9×1012Ω/□であり、9×1012Ω/□を越えて測定不可能になった場合は表1に「>1013」と表示されている。また、測定は、任意の5個所を測定し、その平均を測定値にした。また表面抵抗が高い試料については、抵抗値が測定限界を超える場合があるので、最大値、最小値及びその平均値を測定値にした(測定不能になった場合はその値を除いて平均値を計算した)。
製造例1〜6の組成物はいずれも測定限界(9×1012)超の値を示し、OA用ロールとしての用途に必要と考えられている電気抵抗性(一般に1011以上)を有していることが確認された。これに対して比較例2〜4で測定された値は、同じ用途で不十分なものであった。カーボンブラックは7.5重量%添加しただけで表面抵抗値を>1013Ω/□(無添加の樹脂、比較例1)から104〜105Ω/□(比較例2)まで大きく変化させ、このため添加量の増減による導電性の微調整が困難であることが確認された。
[実施例3] メルトフローレート(MFR)の測定
ASTM D−1238−95に準拠した耐食性のシリンダー、ダイ、ピストンを備えた東洋精機製メルトインデクサーを使用し、各5gの試料を372℃±1℃に保持された内径9.53mmのシリンダーに充填し5分間保持した後、5kgの荷重(ピストン及び重り)下に内径2.1mm、長さ8mmのオリフィスを通して押し出し、この時の押し出し速度(g/10分)をMFRとして求めた。
その結果を表1に示す。MFRは1.6を下回るようになると成形不良を引き起こすと言われている。製造例1〜6の組成物はいずれもこの値を上回っており、酸化亜鉛の添加によっても十分な加工性が維持されていることが確認された。
[実施例4] 表面平滑性の評価
各組成物を成形前に用いたPFA樹脂の融点に相当する275〜300℃で10時間ベーキングして、実施例3のMFR測定条件372℃にて約50mm押出してビードを得、それらの表面状態の平滑性を目視にて評価した。
その結果を表1に示す。表中、○は実質的に表面に凹凸がない状態を、×は成形上不適切な凹凸がある状態をあらわす。製造例1〜6の組成物では成形後に凸凹がみられず平滑な表面を形成した。
Figure 2013136675
本発明の導電性フッ素樹脂組成物は、熱溶融性フッ素樹脂中に導電性酸化亜鉛粉末が分散されているため、これから得られる成形体はこれまで困難とされてきた高い電気抵抗領域でも安定した電気抵抗を示し、成形体の表面状態がより平滑であり耐摩耗性に優れた導電性フッ素樹脂組成物品を製造することができる。また半導体製造装置に用いられるウエハ保持治具や溶剤ラインに使用されても導電性粒子が装置の液中に遊離しないことで装置
を汚染させない導電性フッ素樹脂組成物品を製造することができる。
また、本発明の組成物は、押出成形、射出成形、トランスファー成形、溶融紡糸などの溶融成形をすることができ、最終的に製造する成形体の種類は、導電性および静電気拡散性を必要とする一切の成形体が製造可能で、特に本発明で限定するようなことはないが、例えば、チューブ類、シート類、棒類、繊維類、パッキング類、半導体製造関連導電性治具などがある。

Claims (4)

  1. 熱溶融性フッ素樹脂に酸化亜鉛粉末を含む組成物であって、酸化亜鉛粉末の比表面積が10m2/g以下であり、該組成物の372℃におけるひも状押出品(ビード)表面に実質的な発泡が観察されないことを特徴とする白色導電性フッ素樹脂組成物。
  2. 酸化亜鉛粉末を5〜40重量%の割合で含有することを特徴とする請求項1に記載の白色導電性フッ素樹脂組成物。
  3. 熱溶融性フッ素樹脂がテトラフルオロエチレンとパ−フルオロ(アルキルビニルエーテル)の共重合体である請求項1または2に記載の白色導電性フッ素樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の白色導電性フッ素樹脂組成物で成形された複写機・プリンター用加圧ロール。
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