JP2013136038A - リポソームおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機溶媒を使用することなく、簡便に製造することができる高内包率のリポソームおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】フォスファチジルコリンを20〜40質量%含有するリン脂質でリポソームの脂質二分子膜を形成する。また、上記リン脂質組成を有するリン脂質混合物と、水性媒体と、親水性物質とを混合することにより、内水相に上記親水性物質が封入されたリポソームを得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、高内包率のリポソームおよびその製造方法に関し、さらに詳述すると、リン脂質を原料として有機溶媒を使用することなく簡便に製造することができる高内包率のリポソームおよびその製造方法に関する。
リポソームは、脂質二分子膜による閉鎖小胞体であり、内水相には親水性物質を、二分子膜内部には疎水性成分を封入することが可能である。そのため、リポソームは、医薬品ではDDS基材として治療薬、診断薬などに利用され、化粧品ではナノカプセルとして利用され、食品では抗酸化剤、食品添加物、香料等を封入して利用されている。
従来、リポソームの製造方法としては、(a)Bangham法、(b)超音波処理法、(c)有機溶媒抽出法、(d)界面活性剤除去法、(e)凍結融解法、(f)逆相蒸発法等が知られている。(a)Bangham法は、容器内でリン脂質をクロロホルムに溶解し、次いでクロロホルムを蒸発させて容器内面上に脂質薄膜を作製した後、上記薄膜に水を加えて薄膜を膨潤させ、さらに容器を振盪することにより、MLV(multi−lamellar vesicle)形状のリポソームを得る方法である。(b)超音波処理法は、Bangham法でMLV形状のリポソームを得た後、上記リポソームに超音波処理を施すことにより、SUV(small uni−lamellar vesicle)形状のリポソームを得る方法である。(c)有機溶媒抽出法は、有機溶媒に溶かしたリン脂質を水溶液に注入することにより、SUV形状あるいはLUV(large uni−lamellar vesicle)形状のリポソームを得る方法である。(d)界面活性剤除去法は、容器内でリン脂質をクロロホルムに溶解し、次いでクロロホルムを蒸発させて容器内面上に脂質薄膜を作製した後、上記薄膜に界面活性剤を含む水を加えて薄膜を膨潤させ、さらに容器を激しく振盪してミセルを形成し、界面活性剤を除去することにより、SUV形状のリポソームを得る方法である。(e)凍結融解法は、有機溶媒を用いて作製したリン脂質薄膜に水を加えて激しく振盪した後、リン脂質薄膜を液体窒素で凍結し、室温で放置して溶解することにより、LUV形状のリポソームを得る方法である。(f)逆相蒸発法は、有機溶媒にリン脂質膜を溶かし、さらに水を加えて振盪した後、有機溶媒を減圧除去することにより、LUV形状のリポソームを得る方法である。なお、上述した方法の中では、Bangham法が最も一般的なリポソームの製造方法である。
上述したリポソームの製造方法(a)〜(f)は、いずれも、製造工程でリン脂質をクロロホルムなどの有機溶媒に溶解しているため、その後の工程でリポソームから有機溶媒を除去している。しかし、これらの方法(a)〜(f)では、リポソームから有機溶媒を完全に除去することは難しい。また、有機溶媒によりリポソーム膜が軟化したり、有機溶媒を除去する際にリポソームに熱を加えたり、有機溶媒を除去する際にリポソームをフィルターに通したりすると、内包させた成分の劣化やリポソーム膜からの漏れが生じるという問題があった。さらに、(a)〜(f)のいずれの方法も、リポソームの製造工程が煩雑であるという問題があった。
これに対し、有機溶媒を使用しないリポソームの製造方法として、特許文献1〜4のものが提案されている。特許文献1の方法は、リン脂質を水性媒体中に分散させた後、この分散液を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥品を薬剤含有水性媒体中に再分散させる方法である(特許請求の範囲)。特許文献2の方法は、リポソーム膜成分物質を水性溶液と膜成分物質の相転移温度(Tc)以上にて練合して水和させ、次に必要量の水性溶液を加えてTc以上にて撹拌する方法である(特許請求の範囲)。特許文献3の方法は、リポソーム膜構成成分として40〜70℃に融点を持つリン脂質を用い、特定の第1〜第4工程によってリポソーム含有製剤を製造する方法である(請求項10)。特許文献4の方法は、(a)水性溶媒中に脂質を分散させて、マルチラメラ小胞体を形成する工程;(b)マルチラメラ小胞体を急激に凍結して、凍結脂質−水性媒質混合物を得る工程;(c)該凍結資質−水性媒質混合物を温めて、水性媒質を溶かす工程;(b)工程と(c)工程の凍結−解凍工程サイクルを少なくとも3回繰り返す工程;及び(d)得られたマルチラメラ小胞体分散系を濾過する工程;を含む方法である。
特開昭57−82311号公報 特開昭60−7934号公報 特開2006−298839号公報 特開平8−175975号公報
リポソームの評価のための重要な指標として、内包率がある。内包率とは、リポソームの製造時に内水相に保持させるために添加した親水性物質中の何%が内水相中に保持されているかを示す数値であり、下記式により算出される。
・内包率(%)=(内水相に保持されている親水性物質量/添加した親水性物質量)×100
内水相が高いほど、リポソームの使用量を少なくできることや、工業的に生産効率がよいことから、内包率が高いリポソームが望まれている。
しかし、特許文献1〜3の製造方法では、高内包率のリポソームを得ることが難しかった。また、特許文献4の製造方法は、少なくとも約30パーセントの取り込み効率(内包率)を有するリポソームを得るものであるが、この方法では凍結−解凍工程を繰り返すため、リポソームの製造工程が煩雑になるものであった。また、凍結−解凍工程を繰り返すと、熱履歴が多くなり、親水性物質が熱に弱い場合には劣化するなどの問題があった。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、有機溶媒を使用することなく、簡便に製造することができる高内包率のリポソームおよびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、上記目的を達成するため、リン脂質により形成された脂質二分子膜を有するリポソームにおいて、前記リン脂質は、フォスファチジルコリンを20〜40質量%含有することを特徴とするリポソームを提供する。この場合、前記リン脂質は、さらに、フォスファチジルエタノールアミンを18〜28質量%、フォスファチジルイノシトールを10〜21質量%含有することがより好ましい。
また、本発明は、上記目的を達成するため、リン脂質により形成された脂質二分子膜を有するリポソームの製造方法において、フォスファチジルコリンを20〜40質量%含有するリン脂質混合物と、水性媒体と、親水性物質とを混合することにより、内水相に前記親水性物質が封入されたリポソームを得ることを特徴とするリポソームの製造方法を提供する。この場合、前記リン脂質混合物は、さらに、フォスファチジルエタノールアミンを18〜28質量%、フォスファチジルイノシトールを10〜21質量%含有することを特徴とすることがより好ましい。
本発明に係るリポソームは、高い内包率を有し、また、有機溶媒を使用することなく、簡単な工程で製造することができる。本発明に係るリポソームの製造方法は、有機溶媒を使用することなく、高内包率のリポソームを簡単な工程で製造することができる。また、リポソームを低温で製造することができるため、内包する親水性物質が熱により劣化することがなく、安定した製品を提供することができる。
リポソームの内包率測定方法を示す説明図である。 リン脂質混合物のPC含有量と内包率との関係を示すグラフである。 リン脂質混合物の濃度と内包率との関係を示すグラフである。 リン脂質混合物の飽和脂肪酸含有量と内包率との関係を示すグラフである。 リポソームのフリーズフラクチャーTEM(透過型電子顕微鏡)観察における電子顕微鏡写真である。
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。
本発明に係るリポソームにおいて、脂質二分子膜を形成するリン脂質は、フォスファチジルコリン(PC)を20〜40質量%含有する。この場合、上記リン脂質は、さらに、フォスファチジルエタノールアミン(PE)を18〜28質量%、フォスファチジルイノシトール(PI)を10〜21質量%含有することが適当である。より好ましい含有量は、PCが23〜34質量%、PEが22〜28質量%、特に24〜27質量%、PIが13〜21質量%、特に15〜20質量%である。また、上記脂質二分子膜を形成するリン脂質は、フォスファチジン酸(PA)、リゾホスファチジルコリン(LPC)などの他のリン脂質を含んでいてもよい。さらに、上記リン脂質には、脂質の抗酸化の目的で、脂質の物性が変わらない程度の抗酸化剤を添加してもよい。
上述した脂質二分子膜を形成するリン脂質の脂肪酸組成は、飽和脂肪酸:不飽和脂肪酸の質量比が20〜80:80〜20であることが好適である。これにより、さらに高内包率のリポソームとすることができる。より好ましい上記質量比は、20〜60:80〜40である。
本発明に係るリポソームの製造方法においては、フォスファチジルコリンを20〜40質量%含有するリン脂質混合物と、水性媒体と、親水性物質とを混合する。この場合、上記リン脂質混合物は、さらに、フォスファチジルエタノールアミンを18〜28質量%、フォスファチジルイノシトールを10〜21質量%含有することを特徴とすることが適当である。リン脂質混合物における上記各成分のより好ましい含有割合、および、含んでいてもよい他のリン脂質や成分については、本発明に係るリポソームについて述べたのと同様である。
また、上記水性媒体としては、例えば、水、食塩水、糖水溶液、緩衝液等を挙げることができる。上記親水性物質としては、水溶性のものであれば、用途に応じて適宜選択することができる。上記親水性物質としては、たんぱく質類、ペプチド類、アミノ酸類、抗生物質類、核酸類、有機酸類、糖類、テルペン配糖体類、生菌類、ビタミン、ポリフェノール、ミネラル、香料等が挙げられる。また、以上の物質は、親水性である限り、誘導体や塩の形態で使用することもできる。これらの物質は単独で用いてもよく、2種以上を合わせて使用することもできる。
上述したリン脂質混合物と水性媒体と親水性物質との混合液において、水性媒体に対するリン脂質混合物の濃度は10質量%以上であることが適当である。これにより、さらに高内包率のリポソームを得ることができる。好ましい上記濃度は、10〜30質量%、より好ましくは13〜26質量%である。
前記リン脂質混合物の脂肪酸組成は、飽和脂肪酸:不飽和脂肪酸の質量比が20〜80:80〜20であることが好適である。これにより、さらに高内包率のリポソームを得ることができる。より好ましい上記質量比は、本発明に係るリポソームについて述べたのと同様である。
本発明に係るリポソームの製造方法においては、リン脂質混合物と水性媒体と親水性物質との混合液を、上記リン脂質混合物の相転移温度以上の温度で混合することが適当であり、これにより高内包率のリポソームを確実に得ることができる。
また、リン脂質混合物と水性媒体と親水性物質とを混合する際に、水が凍らない温度であれば、低温でもリポソームの調製が可能である。凍結すると、混合を容易に行うことができない虞がある。また、高温になると、親水性物質によっては、熱により変性したり、劣化したりする虞がある。リン脂質混合物と水性媒体と親水性物質とを混合する温度は、0〜70℃が好ましい。
リン脂質混合物と水性媒体と親水性物質との混合液を調製する方法としては、以下のいずれの方法も可能である
(1)水性媒体に親水性物質を溶解した後、リン脂質混合物を加えて混合する方法。
(2)リン脂質混合物と水性媒体と親水性物質とを混合する方法。
(3)リン脂質混合物と水性媒体とを混合した後、親水性物質を加えて混合する方法。
親水性物質の分子が脂質膜を透過できない場合は、(1)の方法で調製することが好ましく、親水性物質の分子量によって適宜調製することができる。また、リン脂質濃度が高い場合は、粘度が高くなるため、(1)の方法で行うことが好ましい。また、混合時にせん断をかけることもできる。せん断をかけると粒子径を調整でき、内包率が高くなるので好ましい。
リン脂質混合物の調製方法としては、例えば、卵黄レシチン、大豆レシチン、水添卵黄レシチン、水添大豆レシチンなどのレシチンを適宜用い、PC、PE、PIの組成が本発明の組成となる混合物とすることもできるし、卵黄や大豆由来の天然物を精製、または合成して得たジミリストリルPC(DMPC)、ジパルミトイルPC(DDPC)、ジステアロイルPC(DSPC)、ジオレイルPC(DOPC)、ジミリストリルPE(DMPE)、ジパルミトイルPE(DDPE)、ジステアロイルPE(DSPE)、ジオレイルPE(DOPE)、ジミリストリルPI(DMPI)、ジパルミトイルPI(DDPI)、ジステアロイルPI(DS PI)、ジオレイルPI(DOPI)等を適宜用い、PC、PE、PIの組成が本発明の組成となる混合物を得ることもできる。上記物質を混合してリン脂質混合物を調製する際、より分散性を高めるために上記物質を有機溶媒に溶解し、溶媒を除去することで混合物を得ることもできる。
本発明のリポソームは、MLV形状、SUV形状、LUV形状などの任意の中空形状とすることができる
本発明のリポソームは、例えば、医薬品分野、化粧品分野、食品分野等の種々の分野で使用することが可能である。
本発明者は、特定のリン脂質組成を持ったリン脂質混合物と水性媒体とを混合すること、特に上記水性媒体に対するリン脂質混合物の濃度を特定の範囲とすることにより、高い内包率のリポソームを簡単な工程で製造できることを見出し、本発明をなすに至ったものである。以下に、本発明者が行った実験を示す。以下の実験では、高内包率のリポソームが得られるリン脂質組成の範囲、リン脂質濃度の範囲、および、リン脂質の脂肪酸組成の範囲について検討を行った。また、得られたリポソームの電子顕微鏡観察を行った。
実験に用いたリン脂質混合物は、以下の通りである。
・リン脂質1:辻製油株式会社製の大豆レシチン「SLP−ホワイト」(商品名)
・リン脂質2:辻製油株式会社製の大豆レシチン「SLP−PIパウダー」(商品名)
・リン脂質3:辻製油株式会社製の大豆レシチン「SLP−PC70」(商品名)
・リン脂質4:辻製油株式会社製の水素添加大豆レシチン「SLP−ホワイトH」(商品名)
(1)実験1:リン脂質1を用いて製造したリポソームについて
[リポソームの製造]
リン脂質1におけるPC、PEおよびPIの含有量(平均値)は、表1に示すとおりである。このリン脂質1を用いるとともに、内包率測定用モデル物質としてグルコースを使用し、次のようにして内包率測定用試料を調製した。1gのリン脂質1をバイヤル瓶に測りとり、0.3Mグルコース溶液を5ml加えた(水性媒体(精製水)に対するリン脂質濃度:16.8質量%)。本例では、精製水を水性媒体、グルコースを親水性物質として扱っているが、グルコース溶液を水性媒体として扱うこともできる。この混合液をボルテックスミキサーで撹拌し、グルコース溶液中にリン脂質を分散させた。分散状態が悪い場合は、混合液を60℃程度に加熱してもよい。また、マグネティックスターラーで撹拌してもよい。以上の操作で、高濃度のリポソームを含むリポソーム含有液(内包率測定用試料)を調製することができた。
[内包率の測定]
得られたリポソーム含有液を、ゲルろ過により内水相を含んだリポソームと外水相とに分離し、それぞれのグルコース濃度をグルコーステストキットで定量し、内包率を算出した。上記リポソーム含有液は、図1に示すようにリポソームがリポソーム集合体として集合しているため、粘度が高く、そのままではゲルろ過で分離することができないので、初めに希釈の手順を行った。希釈することで、リポソームが、ゲルろ過で分離できる程度に水性媒体中に分散した。具体的には、0.15MのNaCl水溶液(等張液)でリポソーム含有液を5倍に希釈し、リポソームを水性媒体中によく分散させた。等張液で希釈しないと、リポソームが破裂する。希釈したリポソーム含有液を、ゲルろ過により内水相を含むリポソームと外水相に分離した(図1参照)。
ゲルろ過用充填剤としてはセファロースCL6B(商品名)を用い、溶離液としては0.15MのNaCl水溶液(等張液)を用いた。リポソームはイソプロピルアルコールで破壊し、内水相のグルコース濃度を測定し、それをIinとした。また、分離前のリポソームについても同様にリポソームを破壊してグルコース濃度を測定し、それをIallとした。グルコース濃度はグルコーステストキットワコーII(商品名)により定量し、以下の計算式より内包率を算出した。
内包率I(%)=(Iin/Iall) ×100
本例では、混合液を3℃で攪拌した場合の内包率が52.4%、20℃で攪拌した場合の内包率が52.7%、60℃で攪拌した場合の内包率が50.0%であった。
(2)実験2:リン脂質組成の範囲について
実験1のように、リン脂質1を用いて製造したリポソームは、高い内包率を示した。そこで、リン脂質組成と内包率との関係について検討を行った。この場合、PC含有量が低いリン脂質2とPC含有量が高いリン脂質3の二種類の脂質(表1参照)を混合することにより、表2に示したリン脂質組成が異なるリン脂質混合物1〜7を調製し、実験1と同様にしてリポソームを製造し、内包率を測定した。表2に、リン脂質混合物1〜7のリン脂質含有量、および、リン脂質混合物1〜7を用いて得られたリポソームの内包率を示す。また、リン脂質混合物のPC含有量と内包率との関係を図2に示す。
なお、上記のようにリン脂質組成を調べる場合、二種類のリン脂質を混合して、所定の組成にする必要がある。しかし、そのまま二種類のリン脂質を混合すると、リポソームができるリン脂質とできないリン脂質とが分離し、それぞれのリン脂質でリポソームを形成してしまうことがある。そこで、本実験では、一度クロロホルムで二種類のリン脂質を溶解・混合し、溶媒を除去してからグルコース水溶液に分散させた。クロロホルムは、二種類のリン脂質を混ぜ、それぞれの範囲を確認するためのみに用いた。十分にリン脂質が混合されていれば、有機溶媒を用いずにリポソームを調製することができる。
表2および図2の結果より、リン脂質組成が、PCが20〜40質量%のときに、高い内包率(30%以上)のリポソームが得られることがわかった。また、PEが18〜28質量%、PIが10〜21質量%であると、より好ましいことがわかった。
(3)実験3:リン脂質濃度の範囲について
リン脂質濃度の範囲については、リン脂質1を用いて検討を行った。この場合、水(水性媒体)に対するリン脂質濃度を表3に示す濃度1〜9として、リポソームを製造した。リポソームの製造方法と内包率の測定方法は、実験1と同様である。結果を表3および図3に示す。
表3および図3の結果より、リン脂質濃度が10質量%以上の範囲で、高い内包率(30%以上)のリポソームが得られることがわかった。また、本発明者が電子顕微鏡観察で確認したところ、リン脂質濃度が30質量%を超えると、生成物はリポソームとラメラ構造体とが混在した状態となる。ラメラ構造体は層状の構造であり、リポソームの形態はとらない。よって、リン脂質濃度が30質量%を超えると、リポソーム形成は飽和となり、残りのリン脂質はラメラ構造体の形成に使用されると考えられ、したがってリン脂質の使用量が無駄に増え、コストが高くなる。また、リン脂質濃度が30質量%を超えると、製造時における混合液の粘度が高くなり、混合液の攪拌効率が低下して、リポソームが製造しにくくなる。よって、リン脂質濃度が10〜30質量%であると、より好ましいことがわかった
(4)実験4:リン脂質の脂肪酸組成の範囲について
リン脂質の脂肪酸組成の範囲については、飽和脂肪酸含有量が高いリン脂質1と、リン脂質1に水素添加を行った飽和脂肪酸含有量が低いリン脂質4とを混合することにより、表4に示した脂肪酸組成が異なるリン脂質混合物8〜14を調製し、実験1と同様(混合温度は60℃)にしてリポソームを製造し、内包率を測定した。リン脂質4は、表1のリン脂質1と同様のPC、PE、PI含有量を有する。また、リン脂質1、4は、実験2の場合と同様に、クロロホルムで溶解・混合した後にリポソームを製造した。表5にリン脂質1、4の飽和脂肪酸含有量、不飽和脂肪酸含有量を示す。
表4にリン脂質混合物10〜15におけるリン脂質の混合比率、リン脂質混合物8〜14の脂肪酸組成、および、リン脂質混合物8〜14を用いて得られたリポソームの内包率を示す。さらに、リン脂質混合物の飽和脂肪酸含有量と内包率との関係を図4に示す。
表4および図4の結果より、リン脂質混合物の脂肪酸組成において、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸との質量比が20〜80:80〜20であるときに、高い内包率(30%以上)のリポソームが得られることがわかった。
(5)実験5:リポソームの電子顕微鏡観察
本発明の製造方法により得られたリポソーム含有液中のリポソームがどのような状態になっているのかを確認するため、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察を行った。この場合、実験3の濃度4で得られたリポソーム含有液中のリポソームのフリーズフラクチャーTEM観察を行った。この方法は凍結割断面のレプリカを作製し、TEMで観察する方法である。具体的には、試料を液体プロパン中で急速凍結し、次いで試料を割断し、さらに試料に45℃で白金を蒸着し、90℃で炭素を蒸着した後、剥離して洗浄することにより、TEM観察用のレプリカを作製した。電子顕微鏡写真を図5に示す。図5では、リポソームのようなものが、詰まって集まっているように見える。

Claims (8)

  1. リン脂質により形成された脂質二分子膜を有するリポソームにおいて、前記リン脂質は、フォスファチジルコリンを20〜40質量%含有することを特徴とするリポソーム。
  2. 前記リン脂質は、さらに、フォスファチジルエタノールアミンを18〜28質量%、フォスファチジルイノシトールを10〜21質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のリポソーム。
  3. 前記リン脂質の脂肪酸組成において、飽和脂肪酸:不飽和脂肪酸の質量比が20〜80:80〜20であることを特徴とする請求項1または2に記載のリポソーム。
  4. リン脂質により形成された脂質二分子膜を有するリポソームの製造方法において、フォスファチジルコリンを20〜40質量%含有するリン脂質混合物と、水性媒体と、親水性物質とを混合することにより、内水相に前記親水性物質が封入されたリポソームを得ることを特徴とするリポソームの製造方法。
  5. 前記リン脂質混合物は、さらに、フォスファチジルエタノールアミンを18〜28質量%、フォスファチジルイノシトールを10〜21質量%含有することを特徴とする請求項4に記載のリポソームの製造方法。
  6. 前記リン脂質混合物と水性媒体と親水性物質との混合液において、前記水性媒体に対する前記リン脂質混合物の濃度が10質量%以上であることを特徴する請求項4または5に記載のリポソームの製造方法。
  7. 前記リン脂質混合物の脂肪酸組成において、飽和脂肪酸:不飽和脂肪酸の質量比が20〜80:80〜20であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載のリポソームの製造方法。
  8. 前記混合液を、該混合液の凍結温度以上の温度で混合することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のリポソームの製造方法。
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