JP2013133378A - 炭素繊維強化熱可塑性樹脂およびその成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】炭素繊維を10〜70質量%含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂であって、熱可塑性樹脂中で炭素繊維が2次元ランダム配向しており、長さが3mm〜30mm、幅が1mm〜10mm、厚みが0.5mm〜10mmの炭素繊維強化熱可塑性樹脂を射出成形する。
【選択図】図1
Description
炭素繊維のみならず、アラミド繊維やガラス繊維等により強化された熱可塑性樹脂類全般について言えることだが、それら繊維強化熱可塑性樹脂の成形品には、含有している強化繊維が長いほど、その機械特性が高くなる傾向がある。
1. 炭素繊維を10〜70質量%含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂であって、熱可塑性樹脂中で炭素繊維が2次元ランダム配向しており、長さが3mm〜30mm、幅が1mm〜10mm、厚みが0.5mm〜10mmの炭素繊維強化熱可塑性樹脂。
2. 炭素繊維の質量平均繊維長が1〜10mmである上記の炭素繊維強化熱可塑性樹脂。
3. 形状が不定形破砕状である上記の炭素繊維強化熱可塑性樹脂。
4. 炭素繊維を10〜70質量%含み、熱可塑性樹脂中で該炭素繊維が2次元ランダム配向している炭素繊維強化熱可塑性樹脂の成形品を切断または破砕することによる上記の炭素繊維強化熱可塑性樹脂の製造方法。
5. 上記の炭素繊維強化熱可塑性樹脂を射出成形することを特徴とする成形品の製造方法。
6. 下記式で定義される炭素繊維長残存率が40%以上である上記の成形品の製造方法。
炭素繊維長残存率=100×(成形品中の炭素繊維の質量平均繊維長)/(炭素繊維強化熱可塑性樹脂中の炭素繊維の質量平均繊維長)
7. 炭素繊維強化熱可塑性樹脂とともに、非強化の熱可塑性樹脂(B)とを用いて射出成形を行い、炭素繊維含有量が5〜65質量%の成形品を製造する上記の製造方法。
8. 上記の製造方法で得られる成形品であって、該成形品中の炭素繊維の質量平均繊維長が0.4〜10mmである成形品。
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂(CFRTP)は、炭素繊維を10〜70質量%含み、熱可塑性樹脂中で炭素繊維が2次元ランダム配向している、長さが3mm〜30mm、幅が1mm〜10mm、厚みが1mm〜10mmのものであり、好ましくは長さが3mm〜20mm、幅が1mm〜8mm、厚みが1mm〜6mmのものであり、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂は、成形材料、特射出成形に使用する成形材料として特に好適である。
そのような炭素繊維が2次元ランダム配向しているCFRTPは、後述するとおり、炭素繊維と、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とをシート上に散布した後に、加熱して熱可塑性樹脂を溶融し炭素繊維に含浸させることに等により得ることができる。
上記のように本発明のCFRTPが直方体以外の形状の場合、上記の長さ、幅、および厚みは、該CFRTPの最長部を長さとし、これをX軸方向とした場合のY軸方向の寸法を幅、Z軸方向の寸法を厚みとして定義される。
質量平均繊維長は、個々の繊維の繊維長をLi[mm]とし、次式に基づき求める。
質量平均繊維長[mm]=(ΣLi2)/(ΣLi)
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂を構成する炭素繊維としては、ポリアクリロニトリル(PAN)系、石油・石炭ピッチ系、レーヨン系、リグニン系など、何れの炭素繊維も使用することができる。特に、PANを原料としたPAN系炭素繊維が、工業規模における生産性及び機械的特性に優れており好ましい。
具体的に炭素繊維としては、平均直径5〜10μmのものが好ましく、更には、1000〜50000本の単繊維が繊維束となったものが好ましい。
炭素繊維はサイジング剤が付着されたものを用いることが好ましく、サイジング剤は強化繊維100重量部に対し、0超〜10重量部であることが好ましい。
上記のような平均直径、繊維束、またはサイジング剤が付着済みの炭素繊維としては、やはりPAN系の炭素繊維が物性や入手し易さの点から好ましい。
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂を構成する熱可塑性樹脂の種類としては例えば塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂(AS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ボリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリ乳酸樹脂などが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、単体であっても良いし、2 種以上のブレンド物であっても良く、また2 種以上からなるポリマーアロイであっても良い。
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂中には、難燃剤、耐UV剤、光安定剤、酸化防止剤、熱安定剤、顔料、離型剤、軟化剤、可塑剤、界面活性剤の添加剤を含んでいてもよい。特に、成形品を製造する場合、マトッリクス成分である熱可塑樹脂の融点またはガラス転移点以上の温度に加熱するため、予め、酸化防止剤や熱安定剤を含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂であると好ましい。
後述するとおり、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂としては、熱可塑性樹脂中で該炭素繊維が2次元ランダム配向している炭素繊維強化熱可塑性樹脂の成形品(2次元ランダム成形品)を回収し、切断または破砕して得られた、つまり、再生された炭素繊維強化熱可塑性樹脂であってもよいので、上記の2次元ランダム成形品で酸化防止剤などを含むものから再生させることにより、当該酸化防止剤などを含む、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂を容易かつ効率よく得ることができる。
本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂を製造する方法としては、種々の方法を用いることができるが、炭素繊維を10〜70質量%含み、熱可塑性樹脂中で該炭素繊維が2次元ランダム配向している炭素繊維強化熱可塑性樹脂の成形品(本発明を説明するにおいて、2次元ランダム成形品と称することがある)を切断または破砕することによる製造方法が好ましい。
1)カット工程:炭素繊維をカットする工程。
2)開繊工程:カットされた炭素繊維を管内に導入し、空気を繊維に吹き付ける事により、繊維束を開繊させる工程。
3)散布工程:開繊させた炭素繊維を拡散させると同時に、繊維状又はパウダー状の熱可塑性樹脂とともに散布する散布工程。
4)定着工程:散布された炭素繊維および熱可塑性樹脂を定着させランダムマットとする工程。
5)含浸、成形工程:炭素繊維および熱可塑性樹脂を定着したランダムマットを加熱して熱可塑性樹脂を炭素繊維に含浸させ、成形する工程。
・カット工程
具体的にはナイフを用いて炭素繊維をカットする工程である。ナイフとしてはロータリーカッター等が好ましく、カット工程の具体的な模式図を図1に示す。ロータリー分繊カッターの好ましい例について、正面と側面の概略図を図2に、およびナイフ角度の説明図を図3に示す。
所望の大きさの繊維束とするために、カットに供する繊維束として、ストランド幅が細めのものを用いる、あるいは縦方向に切ってストランド幅を細くすることも好ましい。その場合、図4のような、繊維方向に平行な刃を有したカッターを用いて、特定の繊維長にカットすると同時に繊維束を縦方向にスリットすることも好ましい。
ロータリーカッターとしては、角度を規定した螺旋状ナイフ又は分繊ナイフを用いることが好ましい。
開繊工程はカットされた強化繊維を管内に導入し、空気を繊維に吹き付ける事により、繊維束を開繊させる工程である。開繊の度合いについては、空気の圧力等により適宜コントロールする事が出来る。炭素繊維開繊方法は、空気を炭素繊維に吹き付ける事を特徴としている。開繊工程において好ましくは圧縮空気吹き付け孔より、風速5〜500m/secにて空気を直接繊維束に吹き付ける事により、より完全に炭素繊維を開繊させる事ができる。具体的には炭素繊維の通る管内にΦ1mm程度の孔を数箇所あけ、外側より0.2〜0.8MPa程度の圧力をかけ、圧縮空気を繊維束に直接吹き付けることにより、繊維束を容易に開繊する事ができる。
散布工程は開繊させた炭素繊維を、拡散させると同時に、繊維状又は粒子状の熱可塑性樹脂とともに吸引し、炭素繊維と熱可塑性樹脂を同時に散布する散布工程である。開繊させた炭素繊維と、繊維状又は粒子状の熱可塑性樹脂とを好ましくは同時に、シート上、具体的には開繊装置下部に設けた通気性シート上に散布する。
散布工程において、熱可塑性樹脂の供給量は、炭素繊維が10〜70質量%含むようにするため、熱可塑性樹脂の量は、30〜90質量%であることが好ましい。より好ましい熱可塑性樹脂の量は、35〜85質量%、更に好ましい熱可塑性樹脂の量は、40〜60質量%である。
ここで、炭素繊維と、繊維状又は粒子状の熱可塑性樹脂は、炭素繊維が2次元配向する様に散布することが好ましい。開繊した炭素繊維を2次元配向させながら散布するためには、散布方法及び下記の定着方法が重要となる。炭素繊維の散布方法には、円錐形等のテーパ管を用いることが好ましい。円錐等の管内では、空気が拡散し、管内の流速が減速し、このとき炭素繊維には回転力が与えられる。このベンチュリ効果を利用して開繊させた炭素繊維を好ましく拡散させ散布することができる。
また下記の定着工程と散布工程は同時に行う、すなわち散布して堆積させつつ定着させても良く、吸引機構を持つ可動式の通気性シート上に散布し、マット状に堆積させその状態で定着させることが好ましい。
ここで炭素繊維および熱可塑性樹脂は、均等に斑無く散布することが好ましい。
定着工程は、散布された炭素繊維および熱可塑性樹脂を定着させる工程である。好ましくは通気性シート下部よりエアを吸引して繊維を定着させる。炭素繊維と同時に散布された熱可塑性樹脂も混合されつつ、繊維状であればエア吸引により、粒子状であっても炭素繊維に伴って定着される。
通気性のシートを通して、下部より吸引する事により、2次元配向の度合が高いマットを得る事ができる。又、発生する負圧を用いて粒子状、又は繊維状の熱可塑性樹脂を吸引し、更に、管内で発生する拡散流により、炭素繊維と容易に混合する事ができる。得られる強化基材は、炭素繊維の近傍に熱可塑性樹脂が存在する事により、含浸工程において、樹脂の移動距離が短く、比較的短時間で樹脂の含浸が可能となる。なお、予め、用いるマトリックス樹脂と同じ材質の通気性の不織布等を定着部にセットし、不織布上に炭素繊維及び粒子を吹き付ける事も可能である。散布および定着工程は同時に行う、すなわち散布しつつ定着させてもよい。
この定着工程により、二次元配向性のあるランダムマットとすることができる。
ランダムマットを加熱することにより、熱可塑性樹脂を炭素繊維に含浸させ、更に成形することにより、前記の2次元ランダム成形品を得ることができる。上述のランダムマットは炭素繊維と繊維状および/または粒子状の熱可塑性樹脂が混合して存在しているので、型内で繊維と樹脂を流動させる必要がなく、熱可塑性樹脂を容易に含浸できることを特徴とする。含浸方法としては、加熱とともに加圧しても良く、また成形方法としてはプレス成形が好ましい。
この含浸、成形工程においては、前記定着工程において得られたランダムマットをそのまま含浸処理し、成形を行ってもよく、また、ランダムマットを加熱、加圧して含浸処理のみを行いプリプレグとし、このプリプレグを用いて成形を行っても良い。
含浸処理および成形時の加熱温度としては、ランダムマットに含まれる熱可塑性樹脂が結晶性の場合は熱可塑性樹脂の融点以上で熱分解温度以下の温度、非晶性の場合は熱可塑性樹脂のガラス転移温度以上で熱分解温度以下の温度が好ましい。
前記のランダムマットやプリプレグについて含浸や成形処理を行う際、ランダムマットやプリプレグ1枚だけを用いても良く、複数枚を積層して用いても良い。含浸処理や成形において、ランダムマットやプリプレグ複数枚用いる時の枚数について特に制限は無いが、多くの場合2〜10枚程度で十分である。
上記のようにして得られた2次元ランダム成形品を切断または破砕することにより、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂を得ることができ、その際、当然、切断と破砕とを組み合わせてもよい。
2次元ランダム成形品を切断または破砕する方法としては、特に限定されず、剪断式、衝撃式、および切断式など各種方式の切断機、破砕機、粉砕機を使用することができるが、形状を制御しつつ、効率よく目的とする炭素繊維強化熱可塑性樹脂を得ることができるという点で、剪断式の粉砕機がより好ましい。
なお、切断または破砕される2次元ランダム成形品としては、前述したようなランダムマットをプレス成形する等して得られる自動車の内板、外板、構成部材やOA機器や家電製品等の部品として使用された後、回収されたものや、それら部品の成形時に発生する廃材等が含まれる。また、それら自動車の内板などを生産する際に生じた成形不良品等も用いることができる。
本発明の成形品の製造方法は、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂を射出成形することによるものである。射出成形で用いる成形機は、長繊維射出成形用に市販されている成形機を用いることができる。
また、本発明の成形品の製造方法は、前記のとおり2次元ランダム成形品を切断または破砕することにより得られる炭素繊維強化熱可塑性樹脂を、射出成形する製造方法でもある。
また、本発明の成形品の製造方法は、下記の式(1)で定義される炭素繊維長残存率が40%以上であると好ましく、50%以上であるとより好ましい。この炭素繊維長残存率の上限については、当然100%であるのが好ましいが、80%以下でもよく、60%以下でも十分な場合が多い。
炭素繊維長残存率=100×(成形品中の炭素繊維の質量平均繊維長)/(炭素繊維強化熱可塑性樹脂中の炭素繊維の質量平均繊維長) (1)
また、本発明の成形品の製造方法は、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂とともに、非強化の熱可塑性樹脂(B)とを用いて射出成形を行い、炭素繊維含有量が5〜65質量%の成形品を製造する製造方法でもある。この場合の、非強化の熱可塑性樹脂(B)は、本発明の炭素繊維強化熱可塑性樹脂のマトリックス成分である熱可塑性樹脂と同種のものであってもよく、別の種類のものであってもよく、また複数の種類の混合物であってもよい。非強化の熱可塑性樹脂(B)として好ましいものは、本発明のCFRTPに含まれる熱可塑性樹脂について述べたものと同様である。
当該製造方法により得られる成形品の炭素繊維含有量は、10〜65質量%であるとより好ましく、15〜60質量%であると更に好ましい。
上記のとおり、本発明は炭素繊維強化熱可塑性樹脂に関するものであるが、ガラス繊維やアラミド(芳香族ポリアミド)繊維など他の強化繊維を含むものであってもよい。
更に本発明において、炭素繊維を綿、麻、ジュート、ウール、絹、ポリ乳酸繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、アクリル繊維、パラ系アラミド繊維、メタ系アラミド繊維、ボロン繊維、アゾール繊維、アルミナ繊維、またはガラス繊維に置き換えると、それらの繊維による繊維強化熱可塑性樹脂、該繊維強化熱可塑性樹脂の製造方法、該繊維強化熱可塑性樹脂を用いた成形品の製造方法、および該製造方法による成形品の発明とすることができる。
(1) 炭素繊維が2次元ランダム配向していることの確認
炭素繊維強化熱可塑性樹脂中において、炭素繊維が2次元ランダム配向していることを確認するために、炭素繊維強化熱可塑性樹脂の試料の任意の方向、及びこれと直行する方向、及びこれと垂直する方向を基準とする線膨張係数を測定した。それら各方向について測定された線膨張係数の値のうち小さいもの2つが、10×10−6/Kより小さく、残り一つの方向の線膨張係数の値が100×10−6/K以上であり、且つ、線膨張係数の値が小さい2方向の線膨張係数のうち、大きいものを小さいもので割った比が2以下のとき、その炭素繊維強化熱可塑性樹脂は、炭素繊維が2次元ランダム配向しているものとした。
線膨張係数の測定は、真空理工製縦型熱膨張計DL−7000型を用い、昇温速度2℃/分で測定し、−40℃から80℃の平均線膨張係数を算出し、線膨張係数とした。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂を用いて、射出成形機(日本製鋼社 製 JSW180H)、物性測定用テストピース金型(ISO 527規定、厚み2mmの引張試験片、金型温度80℃)、試験機としてインストロン製5982型を使用し、試験速度 10mm/min で実施した。
炭素繊維強化熱可塑性樹脂、またはそれを射出成形して得られた成形品の試料をルツボに入れ、550℃にて1.5時間有酸素雰囲気下で加熱し樹脂成分を燃焼除去した。残った炭素繊維を界面活性剤入りの水に投入し、超音波振動により十分に攪拌させた。攪拌させた分散液を計量スプーンによりランダムに採取し評価用サンプルを得て、ニレコ社製画像解析装置Luzex APにて、繊維数3000本の長さを計測し、長さ平均を算出し、前記の式にて炭素繊維の質量平均繊維長を求めた。更に、炭素繊維強化熱可塑性樹脂試料中の炭素繊維、および成形品試料中の炭素繊維の質量平均繊維長から、前記の式により、炭素繊維長残存率を算出した。
炭素繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24K(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)を開繊して、繊維幅を20mmとしたものを使用した。カット装置には、超硬合金を用いて螺旋状ナイフを表面に配置したロータリーカッターを用い、刃のピッチを10mmとし、強化繊維を繊維長15mmにカットするようにした。開繊装置として、径の異なるSUS304製のニップルを溶接し、二重管を製作した。内側の管に小孔を設け、外側の管との間にコンプレッサーを用いて圧縮空気を送気した。この時、小孔からの風速は、420m/secであった。この管をロータリーカッターの直下に配置し、さらに、その下部にはテーパ管を溶接した。テーパ管の側面より、マトリックス成分である熱可塑性樹脂を供給した。この熱可塑性樹脂としては、宇部興産社製のナイロン6樹脂“UBEナイロン”(登録商標)1015Bペレットを冷凍粉砕し、更に、20メッシュ、及び100メッシュにて分級した粒子を用いた。ナイロンパウダーの平均粒径は約700μmであった。次に、テーパ管出口の下部に、XY方向に移動可能なテーブルを設置し、テーブル下部よりブロワにて吸引を行った。そして、強化繊維の供給量を200g/min、マトリックス樹脂の供給量を450g/min、にセットし、装置を稼動して、炭素繊維と熱可塑性樹脂(ナイロン6)が混合された繊維の目付け量が240g/m2のランダムマットを得た。得られたランダムマットを3枚積層し、260℃に加熱したプレス装置にて、2MPaにて3分間加熱し、厚さ2.0mmの成形板(X)を得た。得られた成形板(X)をパネルソーで、長さ4mm×幅4mm×厚さ2mmにカットし、射出成形用の炭素繊維強化熱可塑性樹脂(Y)を得た。この炭素繊維強化熱可塑性樹脂(Y)は、炭素繊維の含有量が30質量%、質量平均繊維長が3.5mm、線膨張係数が、縦方向:6×10−6/K、横方向:4×10−6/K、厚み方向:110×10−6/Kであり、熱可塑性樹脂中に炭素繊維が2次元ランダム配向しているものであった。
得られた炭素繊維強化熱可塑性樹脂(Y)を、射出成形機を用いて、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpm、背圧5MPaの成形条件でISO 527のダンベル形状引張試験片を作製した。引張試験を行った結果、引張強度300MPa、引張弾性率25GPa、炭素繊維の含有量は30質量%、炭素繊維の質量平均繊維長は1.9mm(炭素繊維長残存率=54.3%)であった。
実施例1で得られた炭素繊維強化熱可塑性樹脂(Y)と非強化のナイロン6樹脂(宇部興産社製のナイロン6樹脂“UBEナイロン”[登録商標]1015Bペレット)を66対34の重量比で混合し、射出成形機を用い、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数スクリュー回転数100rpm、背圧5MPaの成形条件でISO 527のダンベル形状引張試験片を作製した。引張試験を行った結果、引張強度210MPa、引張弾性率17GPa、炭素繊維の含有量は20質量%、炭素繊維の質量平均繊維長は2.0mm(炭素繊維長残存率=57.1%)であった。
実施例1で得られた成形板(X)を幅350mm×長さ300mmにカットし、IRオーブンにて260℃まで予備加熱を行い、金型温度120℃に温度調節した図5に記載の形状を有する上下一対からなる金型へ沿わせ、コールドプレスにて40秒間加圧保持後、厚さ2.0mmの波板形状の成形品を取り出した。得られた波板形状の成形品をパネルソーで、長さ4mm×幅4mmにカットし、射出成形用に再生された炭素繊維強化熱可塑性樹脂(Z)を得た。この再生炭素繊維強化熱可塑性樹脂(Z)は、炭素繊維の含有量が30質量%、質量平均繊維長が3.2mm、線膨張係数が縦方向:7×10−6/K、横方向:5×10−6/K、厚み方向:120×10−6/Kであり、熱可塑性樹脂中に炭素繊維が2次元ランダム配向しているものであった。得られた再生炭素繊維強化熱可塑性樹脂(Z)を、射出成形機を用い、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpm、背圧5MPaの成形条件でISO 527のダンベル形状引張試験片を作製した。引張試験を行った結果、引張強度290MPa、引張弾性率24GPa、炭素繊維の含有量は30質量%、炭素繊維の質量平均繊維長は1.8mm(炭素繊維長残存率=56.3%)であった。
実施例3で得られた厚さ2.0mmの波板形状の成形品をホーライ社製の剪断式粉砕機 P3060(直径9mmの穴が空いたメッシュ)で粉砕し、長さが20mm以下のフレーク状(不定形破砕状)の再生炭素繊維強化熱可塑性樹脂(XZ)を得た。この再生炭素繊維強化熱可塑性樹脂(XZ)は、炭素繊維の含有量が30質量%、質量平均繊維長が2.8mm、線膨張係数は、縦方向:7×10−6/K、横方向:5×10−6/K、厚み方向:110×10−6/Kであり、熱可塑性樹脂中に炭素繊維が2次元ランダム配向しているものであった。得られた再生炭素繊維強化熱可塑性樹脂(XZ)と非強化のナイロン6樹脂(宇部興産社製のナイロン6樹脂“UBEナイロン”[登録商標]1015Bペレット)を66対34の重量比で混合し、射出成形機を用い、シリンダー温度280℃、スクリュー回転数100rpm、背圧5MPaの成形条件でISO 527のダンベル形状引張試験片を作製した。引張試験を行った結果、引張強度200MPa、引張弾性率17GPa、炭素繊維の含有量は20質量%、炭素繊維の質量平均繊維長は1.6mm(炭素繊維長残存率=57.1%)であった。
炭素繊維として、東邦テナックス社製の炭素繊維“テナックス”(登録商標)STS40−24K(平均繊維径7μm、繊維幅10mm)を、マトリックス樹脂として、宇部興産社製のナイロン6樹脂“UBEナイロン”(登録商標)1015Bペレットを用い、押出機と含侵ノズルからなる装置で電線被覆の要領で製造し、炭素繊維がペレットの長さ方向に対して実質的に平行に配列したペレット長3mmの炭素繊維強化ナイロン6樹脂ペレット(炭素繊維含有量20質量%、炭素繊維長3mm)を得た。上記ペレットを用い、実施例1の成形条件でISO 527のダンベル形状引張試験片を作製した。試験片は、分散不良によるペレットが混入および、未含侵のドライファイバーが観察され、物性試験可能な試験片は得られなかった。
比較例1で得たペレット長3mmの炭素繊維強化ナイロン6樹脂ペレット(炭素繊維含有量20質量%)を用い、射出成形機のシリンダー温度280℃、回転数50rpm、背圧25MPaの成形条件でISO 527のダンベル形状引張試験片を作製した。引張試験を行った結果、引張強度160MPa、引張弾性率14GPa、炭素繊維の質量平均繊維長は0.3mm(炭素繊維長残存率=10.0%)であった。
2. ピンチローラー
3. ゴムローラー
4. ロータリーカッター本体
5. 刃
6. カットされた炭素繊維
7. 周方向と刃の配列のなす角
Claims (8)
- 炭素繊維を10〜70質量%含む炭素繊維強化熱可塑性樹脂であって、熱可塑性樹脂中で炭素繊維が2次元ランダム配向しており、長さが3mm〜30mm、幅が1mm〜10mm、厚みが0.5mm〜10mmの炭素繊維強化熱可塑性樹脂。
- 炭素繊維の質量平均繊維長が1〜10mmである請求項1に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂。
- 形状が不定形破砕状である請求項1または2に記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂。
- 炭素繊維を10〜70質量%含み、熱可塑性樹脂中で該炭素繊維が2次元ランダム配向している炭素繊維強化熱可塑性樹脂の成形品を切断または破砕することによる、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維強化熱可塑性樹脂を射出成形することを特徴とする成形品の製造方法。
- 下記式で定義される炭素繊維長残存率が40%以上である請求項5に記載の成形品の製造方法。
炭素繊維長残存率=100×(成形品中の炭素繊維の質量平均繊維長)/(炭素繊維強化熱可塑性樹脂中の炭素繊維の質量平均繊維長) - 炭素繊維強化熱可塑性樹脂とともに、非強化の熱可塑性樹脂(B)とを用いて射出成形を行い、炭素繊維含有量が5〜65質量%の成形品を製造する請求項5または6に記載の成形品の製造方法。
- 請求項5〜7のいずれかに記載の製造方法で得られる成形品であって、該成形品中の炭素繊維の質量平均繊維長が0.4〜10mmである成形品。
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