本発明は、板状の基部と、この基部の周縁に設けられる刃部とを備える構成の回転刃において、刃部の形状を工夫することにより、回転刃の耐久性・切断性の向上を図り、快適な作業性を得ようとするものである。以下、本発明の実施の形態を説明する。
[回転刃の構成]
本発明の第1実施形態について説明する。本実施形態に係る回転刃は、畑や道路などに生い茂った雑草やつる等を切断して刈り払うための刈払機(草刈機)に備えられ、例えばエンジン等の駆動源の駆動力によって回転駆動する。図1、図2、図3、および図4に示すように、本実施形態に係る回転刃1は、板状の基部である回転板部2と、この回転板部2の周縁に設けられる刃部3とを備える。
回転刃1が備える回転板部2および刃部3は、一体の板状の部材により構成される。回転刃1は、例えば鋼板等の金属板によって構成される。回転刃1が鋼板により構成される場合、回転刃1は、材質としての鋼が炭素成分を含む性質上、製造過程において硬化するための熱処理を受ける。ただし、回転刃1は、金属を材料として構成される場合に限定されず、樹脂材料やセラミックス等により構成されてもよい。
回転板部2は、円板状の部分、つまり円形状の平板部分であり、その円形状の中心部分に、取付孔4を有する。取付孔4は、板状の回転板部2を貫通するように形成される。取付孔4は、回転刃1を、刈払機が備える回転軸に取り付けるための孔部である。回転刃1が取り付けられる回転軸は、刈払機が備える駆動源の回転動力によって回転する。つまり、回転刃1は、回転板部2の中心に設けられる取付孔4が用いられて、刈払機が有する回転軸に固定され、駆動源による回転軸の回転にともなって回転する。回転刃1は、円板状の回転板部2の中心位置C1に位置し回転板部2の板面に対して垂直な方向の回転軸線の方向を回転軸方向として回転する(図2、矢印A1参照)。
回転板部2においては、取付孔4の外側の部分に、多数の孔部5が設けられている。孔部5は、取付孔4と同様に板状の回転板部2を貫通するように形成される。これらの孔部5は、回転刃1の軽量化を図るためのものである。本実施形態では、複数の孔部5は、図2に示すように、回転板部2の中心位置C1を中心とする周方向については等間隔で配されるとともに、回転板部2の径方向については中心側から外周側にかけて徐々に径が大きくなるように形成され、所定のパターンを構成する。
刃部3は、回転板部2の一方の板面側または他方の板面側に立った状態で設けられる複数の刃状突起6を有する。本実施形態では、刃部3は、刃状突起6として、回転板部2の一方の板面である第1の板面2A側に立った状態で設けられる第1の刃状突起6Aと、回転板部2の他方の板面である第2の板面2B側に立った状態で設けられる第2の刃状突起6Bとを有する。
刃状突起6(第1の刃状突起6A、第2の刃状突起6B)は、回転板部2に対して、回転板部2のいずれかの板面側に略直角状に突出するように設けられる板状の部分である。刃状突起6は、回転板部2の周縁に設けられた板状の突起が回転板部2に対して略直角状に折り曲げられることにより形成される。このため、刃状突起6を形成するに際しては、
回転板部2に対する突起部分の曲げ加工が行われる。
図2に示すように、本実施形態の回転刃1においては、刃部3は、第1の刃状突起6Aおよび第2の刃状突起6Bをそれぞれ9枚ずつ有し、計18枚の刃状突起6を有する。第1の刃状突起6Aおよび第2の刃状突起6Bは、回転板部2の外周円に沿って等間隔に交互に配置される。
刃状突起6の枚数は、例えば、回転刃1の直径が230mm程度の場合、16枚(表裏各8枚)〜18枚(表裏各9枚)の範囲で設定される。ただし、刃部3が有する刃状突起6の枚数は、本実施形態に限定されるものではなく、回転板部2の外径寸法や刃状突起6の形状・大きさ等によって適宜設定される。また、本実施形態では、第1の刃状突起6Aと第2の刃状突起6Bとが1枚ずつ交互に配置されているが、刃状突起6の配置は本実施形態に限定されるものではない。第1の刃状突起6Aおよび第2の刃状突起6Bの配置としては、例えば、複数枚ずつ交互に配置されたり、互いに異なる枚数ずつ交互に配置されたりしてもよい。また、刃部3が有する第1の刃状突起6Aおよび第2の刃状突起6Bの枚数が互いに異なっていてもよい。
本実施形態の回転刃1が備える刃状突起6について詳細に説明する。図5および図6に示すように、本実施形態の回転刃1において、各刃状突起6は、突起本体部11と、径方向突出部12とを含む。なお、図6において、直線B1は、回転板部2と刃状突起6との境界の位置を示す。つまり、図6に示す直線B1の位置は、図5において破線B2で示す、円板状の回転板部2の円形状に沿う周端位置に対応する。
突起本体部11は、全体として略矩形板状の外形を有し、その板面に垂直な方向が回転板部2の径方向に沿うように、回転板部2のいずれか一方の板面側に立った状態で設けられる部分である。つまり、突起本体部11は、刃状突起6において、回転板部2のいずれか一方の板面側に向けて突出する部分であり、一方の面が回転板部2の中心側を向くように設けられる。
突起本体部11は、回転板部2の回転方向、つまり回転刃1の回転方向(以下「刃回転方向」という。)の一側および他側の両側の端部に切断部としての切断刃13を有する。突起本体部11においては、回転板部2に対して繋がる側に対向する側の辺部が、突起本体部11の突出方向の端部側の辺部となり、刃回転方向に互いに対向する一対の辺部が、刃回転方向の一側および他側の両側の端部となる。この刃回転方向の一側および他側の端部となる辺部に、直線状の切断刃13が形成される。切断刃13は、突起本体部11の直線状の辺部が研磨等によって鋭利化されることにより形成される。
このように、刃状突起6を構成する突起本体部11は、刃回転方向の両側の辺部、つまり刃回転方向の前側および後側の両側の辺部に、直線状の切断刃13を有する。このように刃状突起6を構成する突起本体部11が刃回転方向の両側の辺部に切断刃13を有する構成においては、回転板部2の周方向に互いに隣り合う刃状突起6同士、つまり互いに隣り合う第1の刃状突起6Aと第2の刃状突起6Bとは、平面視で切断刃13を回転板部2の周方向に互いに対向させた状態となる。図5に示す例では、第1の刃状突起6Aの突起本体部11に設けられる一側(図5において右側)の切断刃13と、第2の刃状突起6Bの突起本体部11に設けられる他側(図5において左側)の切断刃13とが、平面視で回転板部2の周方向に互いに対向している。
なお、本実施形態では、突起本体部11は、刃回転方向の両側の辺部に切断刃13を有するが、いずれか一側のみに切断刃13を有する構成であってもよい。つまり、突起本体部11は、刃回転方向の一側および他側の少なくともいずれかの端部に切断刃13を有する構成であればよい。ただし、突起本体部11において刃回転方向の一側のみに切断刃13が設けられる場合、回転刃1は、切断刃13が設けられた側が、刃回転方向の前側となるように回転駆動させられる。
また、本実施形態では、突起本体部11において、回転板部2に対して繋がる側に対向する側の辺部、つまり突起本体部11の突出方向の端部側の辺部(以下「先端辺部」という。)には、切断刃が形成されていない。ただし、突起本体部11の先端辺部に切断刃が形成されてもよい。
図5および図6に示すように、径方向突出部12は、突起本体部11と回転板部2とを繋ぐ部分であり、回転板部2の径方向外側に突出する部分である。径方向突出部12は、回転板部2と突起本体部11とを連結させる部分であり、具体的には、突起本体部11における先端辺部側の反対側(図6において下側)と、回転板部2の周縁に沿う部分との間に設けられる部分である。したがって、径方向突出部12は、上述したように回転板部2に対して折り曲げ形成される刃状突起6において、刃状突起6の曲げ部を含む。
径方向突出部12は、より具体的には、図6に示すように、回転板部2と同一面部をなす平板状の平面部14と、平面部14と突起本体部11とを繋ぐ部分であって刃状突起6の曲げ部を構成する曲面部15とを有する。
平面部14は、回転板部2の板面に沿って回転板部2の径方向外側に向けて突出した部分であり、回転板部2の周縁部を刃状突起6の幅で部分的に径方向外側に延長させた部分である。曲面部15は、回転板部2に対して略直角状に折り曲げ形成された刃状突起6において、湾曲した角部分を構成するR形状部分である。
このように平面部14および曲面部15からなる径方向突出部12は、平面部14により、突起本体部11を回転板部2の周縁に沿う位置から回転板部2の径方向外側に離間させ、曲面部15により、突起本体部11を平面部14に対して、つまり回転板部2に対して略直角状に立った状態(突出した状態)とする。
このように、刃状突起6を構成する径方向突出部12は、同じく刃状突起6を構成する突起本体部11を、回転板部2の径方向外側に突出させることで、突起本体部11の立設位置を、円板状の回転板部2の円形状に沿う周端位置(直線B1の位置)に対して、径方向突出部12の突出長さ(径方向の寸法)D1分、回転板部2の径方向外側に位置させる。言い換えると、径方向突出部12は、刃状突起6が突起本体部11によって立ち上がる位置を、円板状の回転板部2の円形状に沿う周端位置から回転板部2の径方向外側へとずらすための、回転板部2からの延設部分である。
刃状突起6を構成する径方向突出部12の突出長さD1は、回転板部2の外径寸法等によって適宜設定される。
また、略直角状となる突起本体部11の突出角度については、直角状、つまり回転板部2の板面(水平面)に対して90°の状態よりも、突起本体部11が回転板部2の径方向の外側に広がる向きに若干傾いた状態、例えば回転板部2の板面(水平面)に対して110〜120°程度の角度をなす状態とすることにより、比較的背の低い雑草等に対しても切断刃13を良好に作用させることが可能となる。すなわち、比較的背の低い雑草等を切断する観点からは、突起本体部11の突出角度は、回転板部2の板面(水平面)に対して110〜120°程度であることが好ましい。ただし、突起本体部11の突出角度については特に限定されない。
以上のような構成を備える本実施形態の回転刃1によれば、耐久性を向上することができるとともに、切断性を向上することができ、快適な作業性を得ることができる。このような効果が得られることについて、本実施形態の回転刃1に対する従来の構成を比較例として挙げて説明する。
図7および図8に、本実施形態の回転刃1に対する比較例の構成を示す。なお、図7および図8に示す比較例の構成において、本実施形態の回転刃1と共通する部分については同一の符号を用いて説明する。
図7および図8に示すように、比較例の構成では、刃状突起6が径方向突出部12を有さない構成となっている。つまり、比較例の構成では、刃状突起6が、回転板部2の周縁部に対して直接的に折り曲げられることで形成されている。
このような比較例の構成に対し、本実施形態の回転刃1は、上述したように、刃状突起6において突起本体部11と径方向突出部12とを含む。本実施形態の回転刃1によれば、比較例の構成に対して、径方向突出部12によって突起本体部11を回転板部2の径方向外側に位置させることができる分、互いに隣り合う刃状突起6間の平面視における間隔を広くすることができる。つまり、突起本体部11の外形寸法、および刃状突起6の配置間隔(回転板部2の周方向に沿う角度間隔)が同じ場合、本実施形態の回転刃1における隣り合う刃状突起6間の間隔E1(図5参照)は、比較例の構成における隣り合う刃状突起6間の間隔E2(図7参照)よりも広くなる。
また、本実施形態の回転刃1によれば、比較例の構成に対して、刃状突起6が径方向突出部12を有する分、刃状突起6の刃回転方向の前側および後側の面である側面部について、径方向外側に延びる面積を広くすることができる。つまり、刃状突起6が回転板部2と同じ板厚の部分である構成において、回転板部2から径方向外側に突出する径方向突出部12によって、刃状突起6の側面部の面積が増加する。
このように、本実施形態の回転刃1によれば、比較例の構成に比べて、互いに隣り合う刃状突起6間の平面視における間隔、および刃状突起6の側面部における径方向外側に延びる部分の面積を広くすることができることから、回転刃1がその回転によって雑草やつる等を切断するに際し、刃状突起6が雑草やつる等に接触しやすくなり、雑草やつる等の刃部3に対する引っ掛かりが良くなる。これにより、刃状突起6の切断刃13の作用が向上し、回転刃1の切断性が向上する。
回転刃1の切断性が向上することにより、刃状突起6、特に刃状突起6の回転板部2に対する曲げ部が受ける衝撃や抵抗を軽減することができ、刃状突起6の曲げ部における亀裂やひび割れを抑制することができる。結果として、回転刃1の耐久性を向上することができる。また、回転刃1の切断性が向上することによって作業性が向上することから、快適な作業性を得ることができる。
また、図6および図8からわかるように、本実施形態の回転刃1によれば、比較例の構成と比べて、刃状突起6の回転板部2に対する曲げ部の曲げ半径を大きくすることができる。つまり、刃状突起6が有する径方向突出部12は、刃状突起6の曲げ半径を増大させるための部分としても機能する。
こうした点からも、刃状突起6の曲げ部における亀裂やひび割れを抑制することができる。すなわち、刃状突起6の回転板部2に対する曲げ半径が小さいほど、刃状突起6を形成する際の曲げ加工時等において、刃状突起6の曲げ部における亀裂やひび割れが生じやすいことから、刃状突起6の曲げ半径が大きくなることは、刃状突起6の曲げ部における亀裂やひび割れの抑制につながる。
また、刃状突起6の切断刃13に対する雑草やつる等の接触性を向上させる観点からは、本実施形態の回転刃1のように、互いに隣り合う刃状突起6が互いに接することなく、互いに隣り合う刃状突起6間においてある程度の間隔が確保されることが好ましい。
また、本実施形態の回転刃1においては、刃状突起6を構成する径方向突出部12においても、刃回転方向の一側および他側の両側の端部に、切断刃が形成されることが好ましい。つまり、刃状突起6を構成する径方向突出部12においても、突起本体部11における切断刃13と同様に、切断部が形成されることが好ましい。
具体的には、本実施形態の回転刃1においては、図5に示すように、径方向突出部12の刃回転方向の両側の端部に、切断部としての切断刃23が形成される。切断刃23は、例えば、突起本体部11に形成される切断刃13の径方向突出部12側への延長部分として形成される。
切断刃23は、切断刃13と同様に、径方向突出部12の刃回転方向の両側の縁部が研磨等によって鋭利化されることにより形成される。したがって、切断刃23は、例えば、切断刃13の形成にともなって、研磨等によって鋭利化する部分、つまり刃研磨面を突起本体部11側から径方向突出部12側に延長することによって形成される。
ただし、径方向突出部12に形成される切断刃23は、突起本体部11に形成される切断刃13に対して連続して形成される場合に限定されず、また、径方向突出部12の刃回転方向の両側の端部において一部分に設けられてもよい。したがって、切断刃23は、径方向突出部12の刃回転方向の両側の端部において、平面部14の部分だけに形成されたり、曲面部15の部分だけに形成されたり、平面部14および曲面部15の両方の部分に形成されたりする。
このように、回転刃1の好ましい態様として、刃状突起6を構成する径方向突出部12は、刃回転方向の一側および他側の両側の端部に、切断刃23を有する。刃状突起6において、突起本体部11の切断刃13に加え、径方向突出部12においても切断刃23を設けることにより、回転刃1の回転にともなって刃状突起6に対して雑草やつる等が接触する切断刃の部分が増加するので、刃状突起6による切断性をより向上することができる。これにより、刃状突起6の切れ味が増し、刃状突起6が受ける衝撃や抵抗をさらに軽減することができる。結果として、刃状突起6の曲げ部における亀裂やひび割れを効果的に抑制することができるとともに、作業性の向上を図ることができる。
なお、径方向突出部12に設けられる切断刃23は、刃回転方向について、突起本体部11の切断刃13が設けられる側と同じ側に形成される。したがって、例えば、突起本体部11の切断刃13が、刃回転方向の一側または他側のうちいずれか一方のみに形成される場合、径方向突出部12の切断刃23は、少なくとも刃回転方向について切断刃13が形成される側と同じ側に設けられればよい。つまり、径方向突出部12の切断刃23は、径方向突出部12の、刃回転方向の一側および他側のうち突起本体部11の切断刃13が形成された側と同じ側に形成されればよい。
続いて、本実施形態の回転刃1が備える刃状突起6の突起本体部11の形状について詳細に説明する。上記のとおり略矩形板状の外形を有する突起本体部11は、具体的には、図9に示すように、幅方向の寸法が回転板部2に対して繋がる側(径方向突出部12側)から先端辺部側にかけて大きくなる略台形板状の外形を有する。すなわち、突起本体部11においては、切断刃13が形成される刃回転方向の両側の辺部間の間隔(符号F1参照)が、径方向突出部12側(図9において下側)から先端辺部側(同図において上側)にかけて徐々に大きくなる。
そして、突起本体部11においては、上記のとおり切断刃が形成されていない先端辺部の形状が、略V字状をなす形状となっている。詳細には、突起本体部11は、先端辺部を形成する端面として、突起本体部11の幅方向(図9において左右方向)の中央側にかけて下る一対の斜面31・31を有する。各斜面31は、直線状に形成され、突起本体部11において切断刃13が形成される刃回転方向の両側の辺部とともに鋭角形状をなす。つまり、突起本体部11の先端辺部の両側の角部11aは、鋭角状となる。
より詳細には、突起本体部11は、突起本体部11の突出方向(図9における上方向)を高さ方向とした場合、突起本体部11において鋭角状となる先端辺部の両側の角部11aの頂点G1の位置が一対の斜面31・31の交点G2の位置よりも高い位置となるような形状を有する。言い換えると、一対の斜面31・31の交点G2の位置は、突起本体部11の先端辺部において最も低い位置となり、突起本体部11は、この交点G2の位置を通る水平線H1よりも高い位置に、先端辺部の両側の頂点G1を位置させる形状を有する。
本実施形態においては、突起本体部11の先端辺部に設けられる一対の斜面31・31は、同じ長さに形成される。つまり、一対の斜面31・31の交点G2の位置は、突起本体部11における幅方向(図9において左右方向)の中心に位置する。また、突起本体部11において切断刃13が設けられる刃回転方向の両側の側辺部についても、長さおよび鉛直方向(図9において上下方向)に対する傾斜度合いが互いに同じである。したがって、突起本体部11は、図9に示すような突起本体部11の正面視で、左右対称の形状を有する。
以上のように、本実施形態の突起本体部11においては、突出方向の先端部分がV字状の凹形状となっている。このような形状を有する突起本体部11は、突起本体部11の突出方向の端部、つまり刃状突起6の端部が突起本体部11の刃回転方向の一側および他側の各辺部とともに形成する角部11aの少なくとも一方を突起本体部11の突出方向の最端部とする凹形状をなす構成の一態様に含まれる。
すなわち、本実施形態の場合、突起本体部11の突出方向の端部は、突起本体部11の刃回転方向の両側の各辺部とともに形成する角部11aの両方を突起本体部11の突出方向の最端部とするV字状の凹形状をなす。具体的には、本実施形態の突起本体部11においては、先端辺部の両側の鋭角状の角部11aの頂点G1が、突起本体部11の突出方向の最端部となり、一対の斜面31・31によってV字状の凹形状が形成される。
突起本体部11の好ましい形状としては、例えば、図10に示すような形状が挙げられる。図10に示す例では、突起本体部11の先端辺部の形状が、円弧状をなす形状となっている。詳細には、図10に示す例では、突起本体部11は、先端辺部を形成する端面として、突起本体部11の幅方向(図10において左右方向)の中央側にかけて下る円弧状の湾曲面32を有する。湾曲面32は、突起本体部11において切断刃13が形成される刃回転方向の両側の辺部とともに鋭角形状をなす。
そして、図10に示す例においても、図9に示すV字形状の場合と同様に、突起本体部11は、鋭角状となる先端辺部の両側の角部11bの頂点J1の位置が一対の湾曲面32の下端点J2の位置よりも高い位置となるような形状を有する。言い換えると、湾曲面32の下端点J2の位置は、突起本体部11の先端辺部において最も低い位置となり、突起本体部11は、この下端点J2の位置を通る水平線K1よりも高い位置に、先端辺部の両側の頂点J1を位置させる形状を有する。
このような突起本体部11の形状によれば、刃状突起6の切れ味が増すとともに、切れ味の持続性が向上することから、刃状突起6が受ける衝撃や抵抗のさらなる軽減、および作業の快適性の向上を図ることができる。このような効果が得られることについて、本実施形態の回転刃1に対する従来の構成を比較例として挙げて説明する。
図11に、本実施形態の回転刃1に対する比較例の構成を示す。なお、図11に示す比較例の構成において、本実施形態の回転刃1と共通する部分については同一の符号を用いて説明する。図11に示すように、比較例の構成では、突起本体部11の先端辺部が略水平方向に直線状に形成される。つまり、比較例の構成では、突起本体部11の先端辺部を形成する端面131が、回転板部2の板面と平行に形成されている。
このような比較例の構成の突起本体部11の形状によれば、長く生い茂ったつる草等の連続的な切断によって刃状突起6の摩耗が進むことで、切れ味が比較的早く劣化することになる。具体的には、図12(b)に示すように、突起本体部11は、先端辺部の端面131と切断刃13が形成される辺部とにより形成される角部11cが徐々に丸みを帯びるように摩耗する。したがって、比較例の構成において突起本体部11で摩耗が生じることで、先端辺部の端面131と切断刃13が形成される辺部とにより形成される角部11cに、端面131と切断刃13とを滑らかに繋ぐ曲線をなす摩耗面133が形成される。
このように比較例の構成において突起本体部11の摩耗が進行すると、切断刃13の最も重要な部分である刃先先端が突起本体部11の先端辺部の端面131よりも低い状態が生じる。かかる状態は、刃状突起6の切れ味の著しい劣化に繋がる。なお、図12(a)、(b)においては、突起本体部11で摩耗した部分をハッチング部分で示している。
このような比較例の構成に対し、本実施形態の回転刃1のように、刃状突起6を構成する突起本体部11の先端部分がV字状や円弧状の凹形状とされることにより、刃状突起6の摩耗が進むことによっても、切れ味を維持させることができる。具体的には、図12(a)に示すように、突起本体部11は、V字状を形成する先端辺部の斜面31と切断刃13が形成される辺部とにより形成される角部11aが徐々に丸みを帯びるように摩耗する。したがって、突起本体部11においては、摩耗が生じることで、先端辺部の斜面31と切断刃13が形成される辺部とにより形成される角部11aにおいて、斜面31と切断刃13とを滑らかに繋ぐ曲線をなす摩耗面33が形成される。
本実施形態の回転刃1の場合、突起本体部11が、先端辺部の両側の鋭角状の角部11aの頂点(図9、頂点G1、図10、頂点J1参照)が突起本体部11の突出方向の最端部となるようなV字状や円弧状の凹形状を有する。このため、図12(a)に示すように刃状突起6の摩耗が進行することによっても、切断刃13の刃先先端が突起本体部11の先端辺部の斜面31・31の交点G2(または湾曲面32の下端点J2)よりも低くなりにくい。
本実施形態の回転刃1の場合、刃状突起6の摩耗が進行し、切断刃13の刃先先端が斜面31・31の交点G2(または湾曲面32の下端点J2)の位置、つまり水平線H1(水平線K1)の位置に達して初めて、図11に示す比較例の構成のような突起本体部11の形状に近付くことになる。したがって、本実施形態の回転刃1によれば、図11に示す比較例の構成と比べて、摩耗によって切れ味が劣化した状態の形状(例えば図12(b)に示すような形状)となるまでの摩耗量の差分だけ、切れ味の長寿命化を図ることができる。
このように、本実施形態の回転刃1における突起本体部11の形状によれば、刃状突起6の切れ味を持続することができる。また、本実施形態の突起本体部11によれば、先端部分のV字状(または円弧状)の形状によって角部11a(11b)が最端部に位置することから、図11に示すような比較例の構成に対して切れ味を向上することができる。
また、刃状突起6の切れ味およびその持続性を向上させる観点からは、突起本体部11の先端辺部にも切断刃を形成してもよい。この場合、図9に示すように突起本体部11の先端部がV字状に形成される構成においては、斜面31に沿って切断刃が形成され、突起本体部11の先端部側にV字状の切断刃が形成されることになる。また、図10に示すように突起本体部11の先端部が円弧状に形成される構成においては、湾曲面32に沿って切断刃が形成され、突起本体部11の先端部側に円弧状の切断刃が形成されることになる。
このように、突起本体部11の形状としては、V字状や円弧状等であって、先端側の角部が突出方向の最端部となるような凹形状が好ましい。したがって、突起本体部11の形状としては、図9や図10に示すような凹形状のほか、例えば略U字形状をなす凹形状等であってもよい。また、突起本体部11の形状としては、突起本体部11の幅方向(図9において左右方向)について非対称な凹形状であってもよい。この場合、突起本体部11の先端側の角部11aのうち、一方の角部11aが突起本体部11の突出方向の最端部となる。以上のように、突起本体部11は、突起本体部11の突出方向の端部が、両側の角部の少なくとも一方を突起本体部11の突出方向の最端部とする凹形状をなす形状であることが好ましい。
なお、本実施形態では、突起本体部11の形状について、切断刃13が形成される刃回転方向の両側の辺部間の間隔(図9、符号F1参照)が、径方向突出部12側(図9において下側)から先端辺部側(同図において上側)にかけて徐々に大きくなる形状を示しているが、これに限定されない。すなわち、突起本体部11の形状としては、刃回転方向の両側の辺部間の間隔(符号F1)が径方向突出部12側から先端辺部側にかけて徐々に小さくなる形状や、刃回転方向の両側の辺部間の間隔(符号F1)が略一定となる形状等であってもよい。
(変形例1)
本実施形態の回転刃1の変形例について説明する。図13に示すように、この変形例において、各刃状突起6を構成する突起本体部11Aは、回転板部2の径方向に沿う断面視で、全体的に円弧状をなすような湾曲形状を有する。図13に示す例では、突起本体部11Aは、略1/4円弧状の湾曲形状を有し、回転板部2のいずれか一方の板面側、つまり第1の刃状突起6Aの場合は第1の板面2A側、第2の刃状突起6Bの場合は第2の板面2B側に立った状態で設けられる。
このように、刃状突起6を構成する突起本体部11Aは、全体的に湾曲形状を有するものであってもよい。なお、この変形例の突起本体部11Aにおいても、上述したように、刃回転方向の一側および他側の少なくともいずれかの端部に切断刃が設けられる。この変形例の場合、突起本体部11Aの刃回転方向の端部に形成される切断刃は、突起本体部11Aの湾曲形状に沿う曲線状の切断刃となる。
(変形例2)
本実施形態の回転刃1の他の変形例について説明する。図14に示すように、本実施形態の回転刃1は、刃状突起6として、回転板部2の一方の板面側に立った状態で設けられる刃状突起6のみを有する構成であってもよい。図14に示す例では、回転刃1は、回転板部2の一方の板面である第1の板面2A側に立った状態で設けられる第1の刃状突起6Aのみを有する。なお、回転刃1は、回転板部2の他方の板面である第2の板面2B側に立った状態で設けられる第2の刃状突起6Bのみを有する構成であってもよい。
このように、回転刃1は、第1の刃状突起6Aおよび第2の刃状突起6Bを有し、回転板部2の両方の板面側に刃状突起6を突出させる構成のほか、回転板部2のいずれか一方の板面側のみに刃状突起6を突出させる構成であってもよい。つまり、回転刃1において、刃部3は、回転板部2の一方の板面側および他方の板面側の少なくともいずれかの板面側に立った状態で設けられる複数の刃状突起6を有する構成であればよい。
(変形例3)
本実施形態の回転刃1の他の変形例について説明する。本実施形態の回転刃1は、いわゆるチップソーであってもよい。すなわち、回転刃1の刃状突起6において、刃状突起6の刃回転方向の端部に設けられる切断部は、切断用のチップが設けられた部分であってもよい。そこで、この変形例では、刃状突起6において、切断刃13の代わりに、切断用のチップが設けられている。
具体的には、例えば、図15(a)に示すように、刃状突起6の突起本体部11における刃回転方向の両側の角部に、切断用のチップ35が設けられる。チップ35は、回転板部2および刃状突起6を形成する板状の部材とは別体の部材であり、刃状突起6の突起本体部11の角部に設けられる。チップ35は、例えば超硬チップである。
チップ35は、突起本体部11の角部に形成される凹部36に対して圧入等によって嵌め込まれることで設けられる。また、チップ35は、例えば金属ロウ等が用いられて突起本体部11に固定される。
図15(a)に示す例では、チップ35は、一端部に両刃が形成され、全体として略水滴形状を有する。チップ35は、その一端に形成された刃の部分が突起本体部11の角部における頂部に位置するように設けられる。
また、図15(b)に示す例では、刃状突起6の突起本体部11の外形形状に沿うように、直線状のチップ37が設けられている。チップ37は、突起本体部11の角部に形成される直線状の凹部38に嵌め込まれ、適宜金属ロウ等が用いられて固定される。なお、図15(a)、(b)には、上述したように突起本体部11の先端部分がV字状の凹形状をなす場合を例示している。
このように、刃状突起6においては、突起本体部11の辺部が鋭利化されること等によって形成される切断刃13の代わりに、図15(a)、(b)に示すようなチップ35、37を有する構成が採用されてもよい。なお、切断部として刃状突起6の突起本体部11に設けられるチップは、刃回転方向の各端部において複数設けられてもよい。また、突起本体部11に設けられる切断部としては、切断刃13に加えてチップを設けることで、切断刃とチップとを組み合わせた構造であってもよい。
また、上述したように刃状突起6の径方向突出部12に設けられる切断刃23の代わりにあるいは切断刃23に加えて、切断用のチップを設ける構造が採用されてもよい。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。図16および図17に示すように、本実施形態の回転刃41においては、刃部3は、第1の刃状突起6Aおよび第2の刃状突起6Bに加え、回転板部2の径方向外側に突出する刃状突起42をさらに有する。
刃状突起42は、回転板部2に対して、回転板部2の板面の方向に沿って径方向外側に突出するように設けられる板状の部分である。刃状突起42は、例えば、刃状突起6の突起本体部11と略同じ大きさに形成される。
図16に示すように、本実施形態の回転刃41においては、刃状突起42は、回転板部2の周縁部において第1の刃状突起6Aと第2の刃状突起6Bとの間に設けられる。したがって、刃部3は、18枚の刃状突起42を有する。
各刃状突起42は、刃回転方向の一側および他側の両側の端部に、切断刃43を有する。つまり、各刃状突起42においては、刃状突起6の突起本体部11における切断刃13と同様に、刃回転方向の一側および他側の両側の端部に切断刃43が設けられている。なお、刃状突起42の切断刃43は、刃状突起6の径方向突出部12において形成される切断刃23と同様に、刃回転方向の一側および他側のうち突起本体部11の切断刃13が形成された側と同じ側に形成されればよい。
このように、第1の刃状突起6Aおよび第2の刃状突起6Bに加えて刃状突起42を有する構成によれば、第1の刃状突起6Aおよび第2の刃状突起6Bとは異なる方向の切断作用を得ることができるので、回転刃による切断性をより向上することができる。
また、刃状突起42の先端部の形状についても、上述したように突起本体部11に適用される、V字状や円弧状等であって、先端側の角部が突出方向の最端部となるような凹形状を採用することができる。これにより、刃状突起42の切れ味、およびその持続性を向上させることができる。
なお、本実施形態における刃状突起42においても、刃回転方向の端部に設けられる切断刃43の代わりにあるいは切断刃43に加えて、切断用のチップを設ける構造が採用されてもよい。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について説明する。なお、上述した実施形態と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略する。図18から図20に示すように、本実施形態の回転刃61においては、刃部3は、回転板部2の一方の板面側に立った状態で設けられる複数の刃状突起6と、回転板部2の径方向外側に突出する刃状突起42とを有する。つまり、本実施形態の回転刃61は、刃状突起6として回転板部2の一方の板面側のみに立った状態で設けられる第1の刃状突起6Aを有し、さらに、回転板部2の径方向外側に突出する刃状突起42を有する。
図18から図20に示す例では、回転刃61は、回転板部2の一方の板面である第1の板面2A側に立った状態で設けられる第1の刃状突起6Aと、回転板部2の径方向外側に突出する刃状突起42とを、8枚ずつ有する。これらの第1の刃状突起6Aおよび刃状突起42は、回転板部2の周方向に略等間隔に交互に配置される。本実施形態の回転刃61では、刃状突起42の先端部の形状が、刃状突起6の突起本体部11と同様にV字状となっている。なお、本実施形態の回転刃61は、第1の刃状突起6Aの代わりに、回転板部2の他方の板面である第2の板面2B側に立った状態で設けられる第2の刃状突起6Bを有する構成であってもよい。
本実施形態の回転刃61のように第1の刃状突起6Aおよび回転板部2の径方向外側に突出する刃状突起42を有する構成において、第1の刃状突起6Aおよび刃状突起42は、例えば次のようにして形成される。まず、回転板部2の周縁部において、第1の刃状突起6Aまたは刃状突起42を設ける位置に、最終的に刃状突起42となる刃状突起部分と同じ形状部分を形成する。つまり、図18から図20に示す構成例の場合、最終的に刃状突起42となる刃状突起部分と同じ、回転板部2の径方向外側に突出する形状部分を、回転板部2の周縁部において略等間隔を隔てて16箇所に形成する。ここで、各刃状突起部分が有する、刃回転方向の一側および他側のうち両側または一方の側のみに設けられる切断刃(切断刃13、切断刃23、切断刃43)の部分の形状についても、16個の刃状突起部分で共通の形状部分として形成する。
そして、16個の刃状突起部分のうち、最終的に第1の刃状突起6Aとなる8箇所の部分を、回転板部2の板面に対して第1の板面2A側に略直角状に折り曲げる。つまり、16個の刃状突起部分について、回転板部2の周方向に1個おきに位置する8個の刃状突起部分を、回転板部2の板面のうち一方の板面側である第1の板面2A側に略直角に折り曲げる。これにより、折り曲げた8箇所の部分が、第1の刃状突起6Aとして形成され、折り曲げずに残った8箇所の部分が、刃状突起42となる。
このようにして第1の刃状突起6Aおよび刃状突起42を形成することにより、製造工程の簡略化を図ることができる。特に、刃回転方向の一側および他側のうち両側または一方の側のみに設ける切断刃(切断刃13、切断刃23、切断刃43)の部分の形状についても全ての刃状突起部分で共通の形状部分として形成することにより、より簡略な製造工程を実現することができる。この点、第1の刃状突起6Aを形成するために刃状突起を折り曲げる前の段階で、各刃状突起に設ける切断刃を含め刃状突起の全体形状を互いに共通の形状とすることにより、各刃状突起に切断刃を形成するに際しての研磨作業等が単純となり、製造工程の簡略化を図ることができる。なお、図18から図20に示す例では、第1の刃状突起6Aおよび刃状突起42のそれぞれを構成する刃状突起部分は、第1の刃状突起6Aを形成するために刃状突起を折り曲げる前の状態で、切断刃を含め共通の形状を有する。また、本実施形態の回転刃61の製造方法は、上述した例に限定されるものではない。
本実施形態の回転刃61のように、第1の刃状突起6Aおよび第2の刃状突起6Bのいずれか一方のみと、刃状突起42とを有する構成は、例えば、回転板部2の板面のうち刃状突起6が設けられる側の板面が上側となるように回転刃61が刈払機に装着されて用いられることにより、地面に生えた比較的背の低い草の切断に適した構成となる。すなわち、刃状突起6が設けられる側の板面を上側として本実施形態の回転刃61を用いることで、上側のみに刃状突起6が存在して下側には突出した部分が存在しなくなることから、回転刃61を地面に対して平行な姿勢で地面に近付けることができ、地面に生えた比較的背の低い草を良好に切断することができる。ここで、回転刃61は、例えば、地面に直立した状態で生えた比較的背の低い草に対しては、地面に近付いた状態で回転板部2の径方向外側に突出する刃状突起42を略直角に作用させることで、主に刃状突起42の作用によって、草を切断する。
例えば、上述したように回転板部2の両方の板面側に刃状突起6(第1の刃状突起6Aおよび第2の刃状突起6B)を有する構成の場合、下側の刃状突起6と地面との接触を避けるため、少なくとも下側の刃状突起6の突出分、回転刃を地面から浮かして用いる必要がある。この点、本実施形態の回転刃61の場合、下側に刃状突起6が無い分、回転刃61を地面に近付けることができ、地面に生えた比較的背の低い草を良好に切断することができる。したがって、本実施形態の回転刃61によれば、例えば垂れ下がった状態で生い茂るつる草等に対しては、刃状突起6および刃状突起42によって良好な切断作用を得ることができるとともに、地面に生えた比較的背の低い雑草等に対しては、主に刃状突起42によって良好な切断作用を得ることができる。
[刈払機の構成]
次に、上述した回転刃1、41、61の適用例である刈払機について説明する。図21に示すように、本実施形態に係る刈払機50は、上述したような構成を有する第1実施形態の回転刃1と、この回転刃1を回転するための駆動源としてのエンジン52とを備える。なお、刈払機50が備える回転刃は、第2実施形態の回転刃41または第3実施形態の回転刃61であってもよい。
回転刃1は、刈払機50が備える直線的なパイプ状のシャフト53の一端部に取り付けられる。シャフト53の他端側に、エンジン52が設けられる。シャフト53の内部には、エンジン52の駆動力を回転刃1に伝達するための伝動軸を含む伝動機構が設けられる。
回転刃1は、シャフト53の内部に設けられる伝動機構によりエンジン52の駆動力が伝達されることによって高速回転する。回転刃1は、シャフト53の先端部において、シャフト53内の伝動機構を構成するとともにエンジン52の駆動力によって回転する回転軸に固定される。なお、エンジン52とシャフト53内の伝動機構との間には、遠心式のクラッチが設けられている。
エンジン52は、例えば、ガソリン等の液体燃料によって駆動するガソリンエンジンである。エンジン52としては、例えば20〜50cc程度の排気量のものが用いられる。エンジン52は、燃料タンクや、スタータや、点火プラグや、エアクリーナ等を備える。なお、刈払機50が備える駆動源としては、本実施形態のエンジン52のようなガソリンエンジンのほか、ガソリンとオイルの混合液体燃料等の他の燃料を用いたエンジンや、電池等により駆動する電動モータ等、適宜周知のものが採用される。
シャフト53の中途部には、刈払機50の操作に用いられるハンドル54が設けられている。ハンドル54は、パイプ状の部材により構成され、直線状のシャフト53に対して直交するように設けられるとともに、両端側が上側に向けて広がるように湾曲しており、略U字状の形状を有する。
シャフト53には、エンジン52の回転数、つまり回転刃1の回転数を調整するためのスロットル55が設けられる。また、シャフト53における回転刃1の手前側には、草刈作業中における草や小石等の作業者への飛散物をブロックするための防護カバー56が取り付けられている。
以上のような構成を備える刈払機50によれば、回転刃1について、耐久性を向上することができるとともに、切断性を向上することができ、快適な作業性を得ることができる。
なお、図21に示すような刈払機50は、回転刃1を備える刈払機の一適用例であり、回転刃1の適用範囲を限定するものではない。回転刃1を備える刈払機としては、図21に示すようなタイプのほか、例えば、回転刃に対する駆動源の駆動力の伝導機構がフレキシブルシャフトにより構成されるフレキシブルタイプ等であってもよい。また、回転刃1を備える刈払機としては、図21に示すような手持ち式のタイプのほか、エンジン等の駆動源が作業者に背負われた状態となる背負い式のタイプや、走行型の刈払機等であってもよい。このように、本実施形態に係る回転刃1は、適宜周知の種々の刈払機に適用することができる。
以上説明したように、上述した実施形態の回転刃あるいは刈払機によれば、回転刃について、耐久性が増すことから、刃状突起6における亀裂やひび割れの問題を軽減することができ、しかも、切断性・作業性が増すことから、長く生い茂ったつる草やつたや雑草等を効率良く容易に切断することができ、楽で安全で快適な作業を実現することができる。特に、本実施形態の回転刃あるいは刈払機によれば、従来構成に比べて雑草やつる等が刃状突起6の切断刃13と接触しやすくなることから、回転板部2を水平方向と略平行に保った状態で回転刃1を左右あるいは上下の方向に移動させる動作や、回転板部2を鉛直方向と略平行に保った状態で回転刃1を左右あるいは上下の方向に移動させる動作によって、雑草やつる等を切断・粉砕することができ、作業性が向上する。この点、上述したようなフレキシブルタイプの刈払機は、図21に示すような通常のタイプに比べて、回転刃1を上下左右に移動させ易いため、上述した実施形態の回転刃の適用機種として適していると言える。
このように、上述した実施形態の回転刃あるいは刈払機によれば、畑・道路・山道・アスファルト・コンクリート等の地面に生い茂った雑草や、壁面や側面に這い出たつる草・雑草や、樹木の葉先などを、難なく切断・粉砕することが可能となる。また、上述した実施形態の回転刃あるいは刈払機は、ガードレールや壁面・障害物のキワ刈にも適している。また、上述した実施形態の回転刃あるいは刈払機によれば、回転刃が回転板部2の表裏の両面側に突出する刃状突起6を有することから、例えば、回転板部2が水平方向と略平行な状態で刈払機50のシャフト53を上下に振る動作により、下側はもちろん上側の雑草や枝を、回転刃の刃先を斜めにする必要もなく切断・粉砕することができる。このため、上述した実施形態の回転刃を備える刈払機によれば、切断する対象となる雑草やつる等が生い茂る面の向きや傾斜度合い等が変わることによっても、足場を替える動作を少なくすることができ、快適に草刈り作業を行うことができる。
さらに、上述した実施形態の回転刃(回転刃1、回転刃41)あるいは刈払機によれば、回転刃が、回転板部2の表裏の両面側に突出する刃状突起6を有するとともに、各刃状突起6の刃回転方向の両側に切断刃13を有し、表裏および回転方向について対称的な構成を有することから、回転刃を取り付ける向きを考慮することなく使用することができる。つまり、回転刃の取付けの向きには方向性がないため、刈払機において回転刃を取り付ける際に、回転刃の取付けの向きについて注意を払う必要がなくなり、回転刃の取付け作業について作業性を向上することができる。
また、例えば刈払機の使用状況などによって、一方の面側に突出する刃状突起6(例えば第1の刃状突起6A)の方が、他方の面側に突出する刃状突起6(例えば第2の刃状突起6B)よりも切断刃13の摩耗が大きい場合がある。このような場合、上記のとおり回転刃が表裏および回転方向について対称的な構成を有することから、回転刃を適宜裏返して使用し、回転刃の表裏の両側の切断刃13を用いることで、長期間の使用が可能となり、長寿命化を実現することができる。
本発明に係る回転刃は、板状の基部と、該基部の周縁に設けられる刃部とを備える回転刃であって、前記刃部は、前記基部の一方の板面側および他方の板面側の少なくともいずれかの板面側に立った状態で設けられる複数の刃状突起を有し、前記刃状突起は、前記基部の回転方向の一側および他側の少なくともいずれかの端部に切断部を有する突起本体部と、前記突起本体部と前記基部とを繋ぐ部分であり、前記基部の径方向外側に突出する径方向突出部と、を含み、前記突起本体部の突出方向の端部は、前記突起本体部の前記基部の回転方向の一側および他側の各辺部とともに形成する角部の少なくとも一方を前記突出方向の最端部とする凹形状をなすものである。
本発明に係る刈払機は、回転刃と、該回転刃を回転駆動するための駆動源とを備えた刈払機であって、前記回転刃は、板状の基部と、該基部の周縁に設けられる刃部と、を備え、前記刃部は、前記基部の一方の板面側および他方の板面側の少なくともいずれかの板面側に立った状態で設けられる複数の刃状突起を有し、前記刃状突起は、前記基部の回転方向の一側および他側の少なくともいずれかの端部に切断部を有する突起本体部と、前記突起本体部と前記基部とを繋ぐ部分であり、前記基部の径方向外側に突出する径方向突出部と、を含み、前記突起本体部の突出方向の端部は、前記突起本体部の前記基部の回転方向の一側および他側の各辺部とともに形成する角部の少なくとも一方を前記突出方向の最端部とする凹形状をなすものである。