以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本実施形態は、本発明の車車間通信装置及び追従走行制御装置を運転支援システム100に適用した場合について説明するものである。図1に、本実施形態の運転支援システム100の全体構成を示す。同図に示すように、本運転支援システムは、VSC_ECU1、舵角センサ2、Gセンサ3、ヨーレートセンサ4、ENG_ECU5、無線通信装置6、レーダ7、操作SW8、情報提示装置9、通信ECU10、及び車両制御ECU11によって構成される。
また、本実施形態では、図2に示すように、複数の車両(車両A、B)の各々に運転支援システム100が搭載された場合を例に挙げて説明を行う。ここで、車両Bは車両Aの先行車であるものとする。
図1に戻って、VSC_ECU1は、自車に制動力を印加するブレーキアクチュエータ(図示せず)を制御するもので、自車の横滑りを抑制するVSC(Vehicle Stability Control、登録商標)の制御機能を備える。このVSC_ECU1は、車内LANから要求減速度の情報を受信し、この要求減速度が自車に発生するように、ブレーキアクチュエータを制御する。また、VSC_ECU1は、自車の速度(車速)Vo、及びブレーキ圧力の情報を車内LANに送信する。舵角センサ2は、自車のステアリングの操舵角θの情報を検出するセンサであり、検出した操舵角θの情報を車内LANに送信する。
Gセンサ3は、自車の前後方向に発生する加速度(前後G)と、横(左右)方向に発生する加速度(横G)を検出する加速度センサであり、検出した前後G及び横Gの情報を車内LANに送信する。ヨーレートセンサ4は、自車の鉛直軸まわりの角速度(ヨーレート)を検出するセンサであり、検出したヨーレートの情報を車内LANに送信する。ENG_ECU5は、車内LANから要求加速度の情報を受信し、自車が要求加速度を発生するように、図示しないスロットルアクチュエータを制御する。また、要求減速度の情報を受信した場合にも、スロットルアクチュエータを制御してエンジンブレーキを発生させる。
無線通信装置6は、送受信アンテナを備え、自車位置の周囲に存在する他車両との間で、電話網を介さずに無線通信によって自車の情報の配信や他車両の情報の受信(つまり、車車間通信)を行う。例えば、700MHz帯の電波を用いた無線通信の場合には、自車両位置を中心とした例えば半径約1kmの範囲に存在する相手車両との間で車車間通信を行い、5.9GHz帯の電波を用いた無線通信の場合には、自車位置を中心とした例えば半径約500mの範囲に存在する相手車両との間で車車間通信を行う。
無線通信装置6は、通信ECU10の指示に従って、例えば自車速Vo、操舵角θといった情報を一定の送信周期で送信するものとする。本実施形態では、一例として100msecごとに送信する場合を例に挙げて以降の説明を行う。また、無線通信装置6は、自車以外の車両である他車に搭載されている運転支援システム100に含まれる無線通信装置6から送信される他車の車両情報を受信するものとする。無線通信装置6は、受信した情報を通信ECU10に出力する。
レーダ7は、例えば周知のレーザレーダであって、レーザ光を自車前方の所定範囲に照射し、その反射光を受信して、先行車との車間距離D、先行車との相対速度Vr1、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等を検出し、車両制御ECU11へ出力する。なお、先行車との車間距離D、先行車との相対速度Vr1、自車幅中心軸と先行車の中心軸とのズレ量(横ずれ量)等の検出は、車両制御ECU11で行う構成としてもよい。本実施形態では上記検出はレーダ7の信号をもとに車両制御ECU11で行うものとして以降の説明を続ける。操作SW8は、自車のドライバが操作するスイッチ群であり、スイッチ群の操作情報は車両制御ECU11へ出力される。
情報提示装置9は、情報を提示する装置であって、例えばテキストや画像を表示する表示装置であるものとする。なお、表示装置以外に、音声を出力する音声出力装置を用いる構成としてもよい。
通信ECU10は、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。通信ECU10は、無線通信装置6から入力された情報に基づき、各種の処理を実行する。なお、通信ECU10が請求項の車車間通信装置に相当する。
例えば、通信ECU10は、センサ情報取得処理を実行する。センサ情報取得処理では、車内LAN経由で各種センサや各種ECUから車両情報(車両情報値)を逐次取得する。本実施形態の例では、VSC_ECU1から自車速Voを逐次取得するとともに、舵角センサ2から操舵角θを逐次取得するものとして以降の説明を続ける。
センサ情報取得処理では、自車速Vo及び操舵角θを取得するとともに、これらの情報を取得した時刻の情報(以下、タイムスタンプ)も取得するものとする。タイムスタンプについては、図示しない計時手段から取得する構成とすればよい。本実施形態では、センサ情報取得処理で自車速Vo及び操舵角θを取得した1/1000secまでの時刻の情報をタイムスタンプとするものとして以降の説明を続ける。
通信ECU10は、無線通信装置6での情報の送受信を制御する。また、通信ECU10は、無線通信装置6で他車から受信した後述の軌跡決定用情報を、例えば車両制御ECU11に出力する。
さらに、通信ECU10は、自車を追従対象とする追従車の無線通信装置6と自車の無線通信装置6との車車間通信の途絶を検出する送信側途絶検出処理、及び途絶からの回復を検出する送信側回復検出処理を実行する。そして、途絶の検出前、途絶中、途絶後の回復時のそれぞれに応じた処理を行う。よって、通信ECU10が請求項の車車間通信装置における通信途絶検出手段及び通信回復検出手段に相当する。車車間通信の途絶、及び途絶からの回復の検出については後に詳述する。
通信ECU10は、車車間通信の途絶の検出前は、送信側通常時処理を実行する。送信側通常時処理では、センサ情報取得処理で逐次取得した自車速Vo及び操舵角θを、無線通信装置6から100msecごとの送信周期で送信させる。例えば、自車速Vo及び操舵角θを1組ずつ、一定の送信周期ごとに送信させる。
なお、車両の時々刻々の速度及び操舵角が判れば、その車両の走行軌跡を決定することができるので、自車速Vo及び操舵角θは、自車の走行軌跡が決定可能となる情報である。よって、以降は自車速Vo及び操舵角θの情報を軌跡決定用情報と呼ぶ。また、本実施形態では、自車を追従対象とする追従車において、自車から送信した軌跡決定用情報を用いて、自車に対する追従走行制御を行うものとする。よって、通信ECU10が請求項の逐次送信手段に相当する。なお、軌跡決定用情報が請求項の車両情報に相当する。
また、通信ECU10は、送信側通常時処理で軌跡決定用情報を無線通信装置6から逐次送信させる場合には、送信元を識別することができるようにするための識別情報を付加して送信させる。さらに、通信ECU10は、送信側通常時処理で軌跡決定用情報を無線通信装置6から逐次送信させる場合には、前述のタイムスタンプも付加して送信させる。識別情報としては、自車を特定するための車両IDや自車の無線通信装置6を特定するための機器IDを用いることができる。本実施形態では、識別情報として無線通信装置6の機器IDを用いる場合を例に挙げて以降の説明を行う。
また、通信ECU10は、車車間通信の途絶中は、送信側途絶中処理を実行する。送信側途絶中処理では、センサ情報取得処理で逐次取得する軌跡決定用情報を、電気的に書き換え可能なEEPROMやRAM等のメモリ中の領域(以下、車両情報データベース)に逐次蓄積していく。よって、通信ECU10が請求項の蓄積手段に相当する。
通信ECU10は、途絶中に新たな軌跡決定用情報を逐次蓄積していく場合には、それまでに蓄積した軌跡決定用情報に対して平滑化を行った上で蓄積する構成とすることが好ましい。一例としては、それまでに蓄積した軌跡決定用情報(例えば直近の数個の軌跡決定用情報)に対して平均化を行った上で蓄積する構成としてもよいし、カルマンフィルタを用いて推定した値を蓄積する構成としてもよい。これによれば、蓄積済みの自車速Vo及び操舵角θの値から大きく乖離した誤検出時のデータ等を均し、データの合理性を保つことができる。
さらに、通信ECU10は、途絶後の回復時には、送信側回復後処理を実行する。送信側回復後処理では、途絶中に車両情報データベースに蓄積した、途絶中に無線通信装置6から逐次送信させる筈だった軌跡決定用情報(以下、軌跡決定用情報群)を読み出して、無線通信装置6から一括して送信させる。よって、通信ECU10が請求項の一括送信手段に相当する。
ここで、図3を用いて、軌跡決定用情報群を一括して送信させる場合の送信パケットについての説明を行う。軌跡決定用情報群を一括して送信させる場合には、軌跡決定用情報群の各軌跡決定用情報(自車速Voの情報である速度情報及び操舵角θの情報である操舵角情報)に、各軌跡決定用情報をセンサ情報取得処理で取得したときの前述のタイムスタンプを付加して送信させる。タイムスタンプは、前述したように例えば1/1000secまでの時刻の情報であり、「1500060000」は15時00分06.0000秒を示している。
また、送信パケットのヘッダには、例えば送信元を識別できるようにするための識別情報(例えば自車の無線通信装置6の機器IDとする)や軌跡決定用情報群の一括送信であることを示すデータ種別情報等を付加するものとする。
続いて、通信ECU10での軌跡決定用情報の送信に関する通信処理について、図4のフローチャートを用いて説明を行う。図4のフローは、例えば自車が追従車の追従対象となったときに開始されるものとする。
自車が追従対象となったことは、自車を追従対象と選択していることを示す追従対象選択情報を車車間通信で通信ECU10が取得したか否かで判定する構成とすればよい。追従車での追従対象の選択時の処理については後に詳述する。ここでは、自車の無線通信装置6の機器IDが付与された追従対象選択情報を取得した場合に、自車を追従対象と選択していることを示す追従対象選択情報を取得したと判定するものとして以降の説明を続ける。
まず、ステップS1では、追従車情報取得処理を実行してステップS2に移る。追従車情報取得処理では、自車の追従車から車車間通信で一定周期ごと(本実施形態の例では100msecごと)に送信されてくる筈の情報を、無線通信装置6を介して取得する。追従車の情報か否かについては、送信されてくる情報に含まれる、送信元を識別できるようにするための識別情報をもとに識別する構成とすればよい。例えば識別情報は、送信元の無線通信装置6の機器IDとする。
ステップS2では、送信側途絶検出処理を行う。送信側途絶検出処理では、追従車から100msecごとに送信されてくる筈の情報を追従車情報取得処理で1回以上取得できなかったことをもとに、追従車との車車間通信の途絶を検出する。つまり、追従車から一定周期ごとに送信されてくる筈の情報の受信を無線通信装置6で1回以上行わなかったことをもとに、追従車との車車間通信の途絶を検出する。
なお、追従車から一定周期ごとに送信されてくる筈の情報を追従車情報取得処理で1回以外の所定回数以上取得できなかったことをもとに、途絶を検出する構成としてもよい。これによれば、一定周期ごとの車車間通信を受信できなかった回数で車車間通信の途絶を検出することができる。
また、追従車から一定周期ごとに送信されてくる筈の情報を所定時間(例えば100msec)以上取得できなかったことをもとに、途絶を検出する構成としてもよい。なお、本実施形態では、車車間通信の送信周期が一定の場合を例に挙げて説明を行ったが、送信周期が可変の構成とした場合にも、この構成によれば、車車間通信を受信できなかった時間で車車間通信の途絶を検出することができる。
そして、ステップS2では、送信側途絶検出処理で車車間通信の途絶を検出した場合(ステップS2でYES)には、ステップS4に移る。また、送信側途絶検出処理で車車間通信の途絶を検出しなかった場合(ステップS2でNO)には、ステップS3に移る。ステップS3では、前述の送信側通常時処理を実行してステップS1に戻り、フローを繰り返す。また、ステップS4では、前述の送信側途絶中処理を実行してステップS5に移る。
ステップS5では、送信側回復検出処理を行う。送信側回復検出処理では、送信側途絶検出処理での途絶の検出後、追従車から100msecごとに送信されてくる情報を1回でも取得したことをもとに、追従車との車車間通信の回復を検出する。つまり、追従車から送信されてくる情報の受信を無線通信装置6で1回行なったことをもとに、追従車との車車間通信の回復を検出する。
なお、追従車から送信されてくる情報を1回以外の複数回以上取得できたことをもとに、回復を検出する構成としてもよい。これによれば、追従車から一定周期ごとに送信されてくる情報を複数回受信して、車車間通信の回復が確かとなったところで車車間通信の回復を検出することができる。
そして、ステップS5では、送信側回復検出処理で車車間通信の回復を検出した場合(ステップS5でYES)には、ステップS6に移る。また、送信側回復検出処理で車車間通信の回復を検出しなかった場合(ステップS5でNO)には、ステップS4に戻ってフローを繰り返す。ステップS6では、前述の送信側回復後処理を実行してステップS1に戻り、フローを繰り返す。
以上の構成によれば、追従車と被追従車との間での車車間通信が途絶した場合にも、途絶中に送信する筈だった軌跡決定用情報を車車間通信の回復後に一括して追従車に送信することができる。また、軌跡決定用情報は、追従車の追従走行制御に用いる情報であるので、追従車側では、一括して送信された軌跡決定用情報を用いて、車車間通信の途絶中に受信できなかった分の軌跡決定用情報を補って追従走行制御に用いることが可能になる。従って、追従車と被追従車との間での車車間通信の途絶が生じた場合にも、追従車が追従走行をより良好に行うことが可能になる。
図1に戻って、車両制御ECU11は、主にマイクロコンピュータとして構成され、何れも周知のCPU、ROM、RAM、I/O、及びこれらを接続するバスによって構成される。車両制御ECU11は、VSC_ECU1、舵角センサ2、Gセンサ3、ヨーレートセンサ4、ENG_ECU5、レーダ7、操作SW8、通信ECU10から入力された各種情報に基づき、各種の処理を実行する。なお、車両制御ECU11が請求項の車両用挙動制御装置に相当する。
車両制御ECU11は、車内LAN等により接続される各種機器を利用して追従走行制御を行う。なお、追従走行制御は、ドライバが操作SW8を操作して、追従走行制御開始指示を行ったことにより開始し、また、ドライバの終了操作により、追従走行制御は終了する。
追従走行制御は、自車にとっての追従対象とすべき車車間通信が可能な車両の決定(以下、追従先行車決定処理)が行われた上で開始されるものとする。ここで、被追従車決定処理について説明を行う。被追従車決定処理では、レーダ7で検出した直近の先行車が車車間通信で車両情報を受信している車両であるか否かを判定する。この判定は、レーダ7で検出した直近の先行車と、受信した車両情報から特定される車両情報の送信元の車両とが、自車両に対する速度及び距離や相対位置に関して近似しているか否かに応じて行われる。
例えば、速度及び距離を利用する場合には、運転支援システム100において、後方も照射範囲とするレーダ7の信号をもとに直近の後続車との距離も検出し、この直近の後続車との距離の情報を車両情報に含ませて無線通信装置6を介して送信する構成とすればよい。そして、レーダ7の信号をもとに検出された直近の先行車の速度及び自車からの距離と、受信した車両情報に含まれる他車の速度及び他車の直近の後続車との距離とが近似しているか否かに応じて上記判定を行う構成とすればよい。
また、相対位置を利用する場合には、運転支援システム100において、図示しない位置検出器で位置情報を逐次検出し、この位置情報を車両情報に含ませて無線通信装置6を介して送信する構成とすればよい。そして、レーダ7の信号をもとに検出された直近の先行車の相対位置と、車両情報の送信元の他車の相対位置とが近似しているか否かに応じて上記判定を行う構成とすればよい。車両情報の送信元の他車の相対位置については、受信した車両情報に含まれる他車の位置情報と自車の位置検出器で検出した位置情報とから算出する構成とすればよい。
なお、他車の相対位置を算出する場合には、同時点における自車の位置情報と他車の位置情報との対応付けを、例えば位置情報を検出した時点のGPS時刻を用いて行った上で算出するものとする。
さらに、被追従車決定処理では、レーダ7で検出した直近の先行車が車車間通信で車両情報を受信している車両であると判定した場合には、この先行車を追従対象の車両として選択可能であることを示す旨の提示(以下、選択可能提示)を情報提示装置9によって行う。そして、選択可能提示中もしくは選択可能提示後の一定時間内にドライバが操作SW8を操作し、この先行車を追従走行先の車両として選択した場合に、この先行車を自車にとっての先行車とすべき車車間通信が可能な車両(以下、被追従車)と決定する。
被追従車決定処理で被追従車を決定した場合には、車両制御ECU11は、自車の先行車を追従走行の追従先と選択していることを示す追従先選択情報を、通信ECU10及び無線通信装置6を介して送信させる。例えば、追従先選択情報は、一定の送信周期で送信する車両情報とともに送信する構成とすればよい。また、追従先選択情報には、追従先の先行車を特定可能なように、当該先行車の車両情報に付与されていた当該先行車の無線通信装置6の機器IDを付与する構成とすればよい。これにより、無線通信装置6を介して追従先選択情報を取得した被追従車の通信ECU10において、自車が追従対象に選択されているか否かを判定することが可能になる。
また、被追従車決定処理で被追従車を決定した場合には、車両制御ECU11は、レーダ7の信号をもとに、レーダ7で検出していた被追従車との距離を検出し、検出したこの距離(つまり、被追従車との初期車間距離)を目標車間距離Dtとして設定する。
車両制御ECU11は、無線通信装置6で被追従車から受信した軌跡決定用情報や軌跡決定用情報群を、通信ECU10を介して取得する。なお、本実施形態では、車両制御ECU11を介して取得する構成を例に挙げて説明を行うが、必ずしもこれに限らない。例えば、車両制御ECU11が通信ECU10を介さずに、無線通信装置6で被追従車から受信した軌跡決定用情報や軌跡決定用情報群を取得する構成としてもよい。
また、車両制御ECU11は、被追従車から受信した軌跡決定用情報や軌跡決定用情報群を用いて追従走行制御を行う。よって、車両制御ECU11が請求項の挙動制御手段に相当する。ここで言うところの追従走行制御には、被追従車との車間距離を考慮した追従走行制御(以下、対車両制御)とカーブ路を目標旋回速度で走行することを考慮した追従走行制御(以下、カーブ考慮制御)とがある。
まず、対車両制御の内容を詳しく説明する。車両制御ECU11は、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて対車両制御を行う。ここで、補正接近離間状態評価指標KdB_cについての説明を行う。補正接近離間状態評価指標KdB_cは、先行車の速度を考慮して接近離間状態評価指標KdBを補正したものである。
接近離間状態評価指標KdBは、前方物体のドライバの目に映る像を想定し、当該想定した像の面積の単位時間当たりの変化度合いを表す指標である。この接近離間状態評価指標KdBおよび補正接近離間状態評価指標KdB_cは、例えば、それぞれ、下記式1、2で表される。なお、式1、2において、Dは自車と先行車との車間距離、Vrは自車に対する先行車の相対速度、aは乗数、Vpは先行車の速度である。
上記式2に示すように、補正接近離間状態評価指標KdB_cは、先行車に接近する相対速度Vrの絶対値が高くなるほど大きくなる。また、先行車の速度Vpが高いほど小さくなる。また、車間距離が短くなるほど大きくなる。また、車間距離Dは三乗項であることから、車間距離Dが短くなる変化に対する補正接近離間状態評価指標KdB_cの増加勾配は、車間距離Dが短くなるほど急峻になる。
補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて速度制御を行うと、ドライバにとって違和感のない速度制御を行うことができることが学会等で既に認められている。従って、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いて追従走行制御を行うことで、ドライバにとって違和感のない滑らかな加減速制御を行うことが可能になる。
車両制御ECU11は、対車両制御において、KdB_cの現在値(以下、対車両KdB_c)を逐次算出する。対車両KdB_cは、式2に示した評価指標算出式から算出する。従って、対車両KdB_cの算出には、被追従車との相対速度Vr1、被追従車の速度Vp、車間距離Dを決定する必要がある。
速度Vpには、無線通信装置6で被追従車から逐次受信した軌跡決定用情報のうちの自車速Voを用いるものとする。これは、車速Vpは、被追従車にとっては自車速Voであるためである。また、相対速度Vr1は、VSC_ECU1から逐次取得する自車速Voと無線通信装置6を介して逐次取得する被追従車の速度Vpとから逐次算出する。車間距離Dは、逐次算出される相対速度Vr1をもとにして目標車間距離Dtからの距離増減分を算出することで決定する構成とすればよい。そして、これらを式2に代入することで、対車両KdB_cを逐次算出する。
対車両制御では、例えば特開2008−74378号公報に開示されているように、補正接近離間状態評価指標KdB_cの現在値が減速用閾値を上回る値である場合に減速制御を開始する。そして、補正接近離間状態評価指標KdB_cと車間距離Dとから定まる相対速度目標値に被追従車との実際の相対速度Vr1を合わせるための要求減速度を算出し、算出した要求減速度となるように減速制御を行う。これにより、ドライバにとって違和感のない滑らかな減速制御を行いつつ、被追従車との適切な車間距離を維持する。
また、車両制御ECU11は、補正接近離間状態評価指標KdB_cを用いてカーブ考慮制御を行う。カーブ考慮制御において、車両制御ECU11は、自車である追従車の無線通信装置6と被追従車の無線通信装置6との車車間通信の途絶を検出する受信側途絶検出処理、及び途絶からの回復を検出する受信側回復検出処理を実行する。そして、途絶の検出前、途絶中、途絶後の回復時のそれぞれに応じた処理を行う。よって、車両制御ECU11が請求項の車両用挙動制御装置における通信途絶検出手段及び通信回復検出手段に相当する。
車両制御ECU11は、車車間通信の途絶の検出前は、受信側通常時処理を実行する。
以下で、送信側通常時処理では、センサ情報取得処理で逐次取得した自車速Vo及び操舵角θを、無線通信装置6から100msecごとの送信周期で送信させる。
ここで、受信側通常時処理についての説明を行う。受信側通常時処理では、無線通信装置6を介して逐次取得する走行軌跡決定用情報(詳しくは、被追従車の車速Vp及び操舵角θ)をもとに、被追従車の走行軌跡を決定する走行軌跡決定処理を行う。よって、車両制御ECU11が請求項の逐次取得手段及び走行軌跡決定手段に相当する。
一例としては、追従先行車との距離を求めるのに用いたレーダ7の信号が得られた時間に対する車車間通信による追従先行車の車速及び操舵角θの取得の時間遅れと、取得した当該車速とをもとに、当該時間遅れの間に追従先行車が走行した距離を推定する。そして、この推定した距離を、レーダ7の信号をもとに検出した自車と追従先行車との距離から差し引いて、被追従車の初期位置を決定する。
その後は、車車間通信による追従先行車の車速及び操舵角θの送信間隔と当該車速とをもとに、追従先行車の初期位置からの走行距離を逐次算出するとともに、当該操舵角θをもとに進行方向を算出することで、走行軌跡点を逐次算出していく。なお、自車位置以外を起点とする構成としてもよい。また、ここで言うところの「相当する長さ」とは、上記2次元座標上の長さに変換した場合の長さを示している。
また、車両制御ECU11は、自車のVSC_ECU1から逐次取得する自車速Vo、及び自車の舵角センサ2から逐次取得する操舵角θをもとに、上述の2次元座標上の自車の現在位置も逐次算出することで、自車の現在位置を取得する現在位置取得処理を行うものとする。
車両制御ECU11は、走行軌跡決定処理で決定した被追従車の走行軌跡から、自車の現在位置を起点とした前方の仮想的な道路外形(以下、仮想道路外形)を推定する道路外形推定処理を行う。具体的には、走行軌跡決定処理によって決定した走行軌跡を中心線として、左右に所定の幅を持たせた仮想道路外形を推定する。一例としては、走行軌跡を中心線として左右に1.75mの距離に相当する長さだけ幅を持たせた道路境界を有する仮想道路外形を推定する。なお、走行軌跡を中心線として左右に持たせる幅は、左右で異なる値としてもよい。また、走行軌跡から車幅方向に所定の距離(例えば1.75m)だけ離れた道路外側の線(つまり、仮想的な道路外側境界)を推定し、この線を仮想道路外形とする構成としてもよい。
続いて、車両制御ECU11は、道路外形推定処理で推定した前方の仮想道路外形をもとに、自車の前方にカーブ路が存在するかを判定するカーブ路判定処理を行う。一例としては、自車の現在位置前方の所定距離内の仮想道路外形において、曲率が所定値以上の部分が存在する場合に、自車の前方にカーブ路が存在すると判定する構成とすればよい。一方、曲率が所定値以上の部分が存在しない場合には、自車の前方にカーブ路が存在しないと判定する構成とすればよい。
なお、曲率は、仮想道路外形のうちの例えば外側境界をもとに算出する構成とすればよい。ここで言うところの所定距離とは、カーブ路に進入する前に余裕を持って減速を行うことができる程度の距離を考慮して設定される値であって、任意に設定可能な値である。また、所定値とは、カーブ路と言える程度の曲率に相当する値であって、任意に設定可能な値である。なお、仮想道路外形のうちの内側境界をもとに曲率を算出する構成としてもよい。
本実施形態で言うところのカーブ路とは、追従先行車の走行軌跡から推定される道路外形からなるものであって、現実のカーブ路だけでなく、追従先行車が交差点を右左折する場合の走行軌跡から推定される道路外形が示すカーブ路も含む、仮想的なカーブ路を示している。
車両制御ECU11は、カーブ路判定処理で自車の前方に仮想的なカーブ路が存在すると判定した場合に、道路外形推定処理で推定したそのカーブ路の仮想道路外形から、そのカーブ路の曲率半径を決定する。よって、車両制御ECU11が請求項の曲率半径決定手段に相当する。
具体的には、カーブ路の仮想道路外形を複数に区切った場合の各区間の曲線からカーブ路内の各区間における曲率半径を算出する構成とすればよい。なお、曲線は、道路外形のうちの外側境界を示す曲線を用いる構成とすればよい。例えば、カーブ路の入口位置におけるカーブ路の曲率半径としては、カーブ路の入口位置を含む区間の曲線から算出した曲率半径を用いる構成とすればよい。カーブ路の入口位置の決定については以下で詳述する。
車両制御ECU11は、カーブ路判定処理で自車の前方に仮想的なカーブ路が存在すると判定した場合に、そのカーブ路の入口位置を決定する入口決定処理、及び出口位置を決定する出口決定処理を行う。
入口決定処理では、被追従車の走行軌跡を決定するのに用いた被追従車の操舵角θをもとに、カーブ路の入口位置を決定する。詳しくは、当該操舵角θが最初に入口判定閾値θiに達した地点をカーブ路の入口位置と決定する。出口決定処理では、被追従車の走行軌跡を決定するのに用いた被追従車の操舵角θをもとに、カーブ路の出口位置を決定する。詳しくは、当該操舵角θが入口判定閾値θiに達した後、最初に出口判定閾値θoに達した地点をカーブ路の出口位置と決定する。
入口判定閾値θiは、直進と言えない程度の操舵角以上の値であって任意に設定可能な値である。出口判定閾値θoは、ヒステリシスを考慮して入口判定閾値θiよりも小さい値が設定される。
また、車両制御ECU11は、カーブ路判定処理で自車の前方に仮想的なカーブ路が存在すると判定した場合に、自車がそのカーブ路内に位置するかカーブ路外に位置するかに応じた加減速制御を行う。以下では、この加減速制御に関する処理について図5のフローチャートを用いて説明を行う。
まず、ステップS21では、入口距離算出処理を行って、ステップS22に移る。入口距離算出処理では、入口決定処理で決定したカーブ路の入口位置と現在位置取得処理で取得した自車の現在位置との距離を、自車からカーブ路の入口位置までの距離(カーブ路入口距離Ds)として算出する。
ステップS22では、カーブ路進入判定処理を行う。カーブ路進入判定処理では、入口距離算出処理で算出したカーブ路入口距離Dsをもとに、自車がカーブ路に進入したか否かを判定する。例えば、Dsが0よりも大きい値の場合には、自車がカーブ路に進入していないと判定し、Dsが0以下の場合には、自車がカーブ路に進入したと判定する構成とすればよい。そして、進入したと判定した場合(ステップS22でYES)には、ステップS27に移る。また、進入していないと判定した場合(ステップS22でNO)には、ステップS23に移る。
ステップS23では、カーブ進入時目標旋回速度設定処理を行って、ステップS24に移る。カーブ進入時目標旋回速度設定処理では、カーブ路の入口位置における曲率半径R0、及び予め設定した自車がカーブ路を走行する際に目標とする目標横加速度Gytから、カーブ路の入口位置を通過する際の目標旋回速度(以下、カーブ進入時目標旋回速度Vt1)を式3によって算出する。
そして、算出した目標旋回速度をカーブ進入時目標旋回速度Vt1として設定する。なお、目標横加速度Gytは、デフォルトの値を用いる構成としてもよいし、予め操作SW8を介してドライバからの入力を受け付けた値を用いる構成としてもよい。
ステップS24では、カーブ路入口距離Dsとカーブ路の入口位置に対する自車の相対速度(以下、対カーブ入口相対速度Vr2)を考慮した補正接近離間状態評価指標KdB_cの現在値(以下、第1カーブ時KdB_c)を算出し、ステップS25に移る。対カーブ入口相対速度Vr2は、カーブ進入時目標旋回速度Vt1と自車速Voとの速度差であり、以下の式4によって算出するものとする。また、第1カーブ時KdB_cは、式5に示した評価指標算出式から算出する。
前述の式2は、先行車が存在する状況において自車のドライバが減速開始を行なうタイミングをよく示す指標であることが証明されている。そして、式5は、式2において、Dに代えてカーブ路入口距離Dsを用い、Vpに代えてカーブ進入時目標旋回速度Vt1を用い、Vr1に代えて、このVt1と自車速Voとの速度差である対カーブ入口相対速度Vr2を用いている。従って、式5は、カーブ路の入口位置における自車速Voをカーブ進入時目標旋回速度Vt1としようとする場合に、ドライバが減速操作を開始する条件を示しているといえる。
また、式5は、カーブ路の入口位置に対する接近離間状態を、カーブ進入時目標旋回速度Vt1を考慮して表す指標であって、対カーブ入口相対速度Vr2が高くなるほど大きくなるとともに、カーブ路の入口位置までの距離Dsが短くなるほど増加勾配が急峻になる指標である。
ステップS25では、自車の減速を開始する(つまり、減速開始点に到達した)かどうかを判定するため、ステップS24にて算出した第1カーブ時KdB_cが減速用閾値を上回ったかどうかを判定する。よって、車両制御ECU11が請求項の到達判定手段に相当する。
そして、上回ったと判定した場合(ステップS25でYES)には、ステップS26に移る。また、上回っていないと判定した場合(ステップS25でNO)には、ステップS22に戻ってフローを繰り返す。
ステップS26では、カーブ進入時要求減速度算出処理を行って、ステップS22に戻る。カーブ進入時要求減速度算出処理では、第1カーブ時KdB_cとカーブ路入口距離Dsとから定まる相対速度目標値に実際の対カーブ入口相対速度Vr2を合わせるための要求減速度を算出する。この要求減速度を、減速開始点に到達したときから逐次算出しながら出力すると、自車速Voがカーブ路の入口位置に達するときにカーブ進入時目標旋回速度Vt1になるように滑らかな減速制御が行われる。
ステップS27では、カーブ走行時目標旋回速度設定処理を行って、ステップS28に移る。カーブ走行時目標旋回速度設定処理では、カーブ路内の自車の走行位置における曲率半径Rn、及び前述の目標横加速度Gytから、カーブ路内を走行する際の目標旋回速度(以下、カーブ内目標旋回速度Vt2)を式6によって算出する。
曲率半径Rnについては、例えばカーブ路内を走行中の被追従車から取得した軌跡決定用情報をもとに走行軌跡決定処理で決定されるカーブ路内の走行軌跡から、カーブ路内の各地点における曲率半径Rnを算出しておく構成とすればよい。
ステップS28では、閾値判定処理を行って、ステップS29に移る。閾値判定処理では、仮想的なカーブ路の道路境界までの距離である道路境界距離Doと当該道路境界までの適正距離である適正境界距離Dcとの差分、及びカーブ路の仮想的な道路境界に対する自車の相対速度(以下、対カーブ境界相対速度Vr3)を考慮した補正接近離間状態評価指標KdB_cの現在値(以下、第2カーブ時KdB_c)を算出する。
道路境界距離Doは、自車の進行方向の延長線上に位置するカーブ路の道路境界と自車との距離である。道路境界距離Doは、前述の2次元座標における自車の現在位置と仮想的な道路外形とから算出する構成とすればよい。詳しくは、自車の現在位置と自車の進行方向の延長線上に位置する仮想的な道路外形の道路境界との距離から算出する構成とすればよい。
適正境界距離Dcは、以下の式7により算出する。適正境界距離Dcは、自車が適正旋回半径Rn−Lの円軌道上を走行する場合の自車先端から自車正面に位置するカーブ路の道路境界までの距離を意味する。適正旋回半径Rn−Lは、カーブ路内の自車の走行位置における曲率半径Rnから、車両幅方向における車幅方向中心線から道路境界までの距離Lを差し引くことで算出する構成とすればよい。なお、Lは推定した道路外形に対する自車の横位置であり、現在位置取得処理で取得した自車の現在位置と当該道路外形の道路境界との距離から決定する。
対カーブ境界目標相対速度Vr3は、カーブ内目標旋回速度Vt2と自車速Voとの速度差であり、Vr3=Vt2−Voの式によって算出するものとする。また、第2カーブ時KdB_cは、式8に示した評価指標算出式から算出する。
前述の式2は、先行車が存在する状況において自車のドライバが減速開始を行なうタイミングをよく示す指標であることが証明されている。そして、式8は、式2において、Dに代えて道路境界距離Doと適正境界距離Dcとの差分(Do−Dc)を用い、Vpに代えてカーブ内目標旋回速度Vt2を用い、Vr1に代えて、このVt2と自車速Voとの速度差である対カーブ境界相対速度Vr3を用いている。従って、式8は、適正境界距離Dcにおける自車速Voをカーブ内目標旋回速度Vt2としようとする場合に、ドライバが減速操作を開始する条件を示しているといえる。
また、式8は、カーブ路の道路境界(より詳しくは、道路境界から適正境界距離Dcだけ離れた地点)に対する接近離間状態を、カーブ内目標旋回速度Vt2を考慮して表す指標であって、対カーブ境界相対速度Vr3が高くなるほど大きくなるとともに、道路境界距離Doと適正境界距離Dcとの差分(Do−Dc)が小さくなるほど増加勾配が急峻になる指標である。
さらに、閾値判定処理では、自車の加減速を開始するかどうかを判定するため、算出した第2カーブ時KdB_cが減速用閾値を上回ったかどうか、加速用閾値を下回ったかどうかを判定する。
そして、第2カーブ時KdB_cが減速用閾値を上回ったと判定した場合(ステップS29でYES)には、ステップS31に移る。また、第2カーブ時KdB_cが減速用閾値を上回っていないと判定した場合(ステップS29でNO)には、ステップS30に移る。
続いて、ステップS30では、第2カーブ時KdB_cが加速用閾値を下回ったと判定した場合(ステップS30でYES)には、ステップS32に移る。また、第2カーブ時KdB_cが加速用閾値を下回ったと判定しなかった場合(ステップS30でNO)には、要求加減速度を0と算出してステップS33に移る。
ステップS31では、カーブ内走行時要求減速度算出処理を行って、ステップS33に移る。カーブ内走行時要求減速度算出処理では、第2カーブ時KdB_cと差分(Do−Dc)とから定まる相対速度目標値に実際の対カーブ境界相対速度Vr3を合わせるための要求減速度を算出する。この要求加減速度を出力すると、自車速Voがカーブ内目標旋回速度Vt2になるように滑らかな減速制御が行われる。
ステップS33では、カーブ路脱出判定処理を行う。カーブ路脱出判定処理では、出口決定処理で決定したカーブ路の出口位置と現在位置取得処理で取得した自車位置とをもとに、自車がカーブ路に脱出したか否かを判定する。そして、脱出したと判定した場合(ステップS33でYES)には、フローを終了する。また、脱出していないと判定した場合(ステップS33でNO)には、ステップS27に戻ってフローを繰り返す。
続いて、車両制御ECU11での途絶の検出前、途絶中、途絶後の回復時のそれぞれに応じた処理について、図6のフローチャートを用いて説明を行う。図6のフローは、例えば被追従車決定処理で被追従車を決定したときに開始される。
まず、ステップS41では、被追従車情報取得処理を実行してステップS42に移る。被追従車情報取得処理では、被追従車から車車間通信で一定周期ごと(本実施形態の例では100msecごと)に送信されてくる筈の軌跡決定用情報を、無線通信装置6を介して取得する。被追従車の情報か否かについては、送信されてくる情報に含まれる機器IDをもとに識別する。
ステップS42では、受信側途絶検出処理を行う。受信側途絶検出処理では、被追従車から100msecごとに送信されてくる筈の情報を被追従車情報取得処理で1回以上取得できなかったことをもとに、被追従車との車車間通信の途絶を検出する。つまり、被追従車から一定周期ごとに送信されてくる筈の情報の受信を無線通信装置6で1回以上行わなかったことをもとに、被追従車との車車間通信の途絶を検出する。
なお、被追従車から一定周期ごとに送信されてくる筈の情報を被追従車情報取得処理で1回以外の所定回数以上取得できなかったことをもとに、途絶を検出する構成としてもよい。また、被追従車から一定周期ごとに送信されてくる筈の情報を所定時間(例えば100msec)以上取得できなかったことをもとに、途絶を検出する構成としてもよい。
そして、ステップS42では、受信側途絶検出処理で車車間通信の途絶を検出した場合(ステップS42でYES)には、ステップS44に移る。また、受信側途絶検出処理で車車間通信の途絶を検出しなかった場合(ステップS42でNO)には、ステップS43に移る。ステップS43では、前述の受信側通常時処理を実行してステップS41に戻り、フローを繰り返す。
また、ステップS44では、受信側途絶中処理を実行してステップS45に移る。ここで、図7のフローチャートを用いて受信側途絶中処理についての説明を行う。
まず、ステップS401では、前述の減速開始点に到達したか否かを判定する。詳しくは、カーブ路入口距離Ds、カーブ進入時目標旋回速度Vt1、及びカーブ入口相対速度Vr2から、前述の第1カーブ時KdB_cを算出する。続いて、算出した第1カーブ時KdB_cが減速用閾値を上回ったかどうかを判定し、上回っていた場合に減速開始点に到達したと判定し、上回っていなかった場合に到達していないと判定する。
カーブ路入口距離Dsは、自車の現在位置と、車車間通信の途絶を検出するまでに受信側通常時処理で決定しておいたカーブ路の入口位置とから算出する。また、カーブ進入時目標旋回速度Vt1は、車車間通信の途絶を検出するまでに受信側通常時処理で決定しておいたものを用いる。そして、カーブ入口相対速度Vr2は、上記Vt1と自車速Voとの速度差から算出する。
そして、減速開始点に到達したと判定した場合(ステップS401でYES)には、ステップS403に移る。また、減速開始点に到達していないと判定した場合(ステップS401でNO)には、ステップS402に移る。
ステップS402では、受信側回復検出処理を行う。受信側回復検出処理では、受信側途絶検出処理での途絶の検出後、被追従車から100msecごとに送信されてくる情報を例えば1回でも取得したことをもとに、被追従車との車車間通信の回復を検出する。
そして、ステップS402では、受信側回復検出処理で車車間通信の回復を検出した場合(ステップS402でYES)には、カーブ考慮制御を続行するものとしてステップS45に移る。また、受信側回復検出処理で車車間通信の回復を検出しなかった場合(ステップS402でNO)には、ステップS401に戻ってフローを繰り返す。ステップS403では、カーブ考慮制御を解除(つまり、制御解除)してステップS45に移る。よって、車両制御ECU11が請求項の切替手段に相当する。
ステップS45では、制御解除した場合(ステップS45でYES)には、フローを終了する。一方、制御解除しなかった場合(ステップS45でNO)には、ステップS46に移る。ステップS46では、受信側回復後処理を行って、ステップS47に移る。ここで、図8のフローチャートを用いて、受信側回復後処理についての説明を行う。
まず、ステップS601では、ステップS401と同様にして、減速開始点に到達したか否かを判定する。そして、減速開始点に到達したと判定した場合(ステップS601でYES)には、ステップS604に移る。また、減速開始点に到達していないと判定した場合(ステップS601でNO)には、ステップS602に移る。
ステップS602では、一括取得処理を行って、ステップS603に移る。一括取得処理では、被追従車から送信される軌跡決定用情報群を、無線通信装置6を介して取得する。よって、車両制御ECU11が請求項の一括取得手段に相当する。なお、受信側回復検出処理において軌跡決定用情報群を既に取得していた場合は、この処理を省略し、ステップS603に移る構成とすればよい。
ステップS603では、補完処理を行って、ステップ47に移る。補完処理では、車車間通信の途絶から回復までの間に取得出来なかった軌跡決定用情報を、一括取得処理で取得した軌跡決定用情報群の各軌跡決定用情報で補う。
具体例としては、途絶によって取得出来なかった分の軌跡決定用情報により、走行軌跡決定処理で決定出来ていなかった分の走行軌跡を、軌跡決定用情報群の各軌跡決定用情報を用いて決定する。各軌跡決定用情報について、タイムスタンプが示す時刻順に走行軌跡点を逐次算出していくことで、走行軌跡の欠損分を補う構成とすればよい。そして、走行軌跡の欠損分を補った後は、欠損分を補った走行軌跡をもとに道路外形推定処理等の受信側通常時処理の各処理を行って、自車のカーブ考慮制御を行うものとする。また、ステップS604では、カーブ考慮制御を解除してステップS47に移る。
ステップS47では、カーブ考慮制御を解除(つまり、制御解除)した場合(ステップS47でYES)には、フローを終了する。一方、制御解除しなかった場合(ステップS47でNO)には、ステップS41に戻ってフローを繰り返す。
カーブ考慮制御を解除する場合には、車両制御ECU11が、例えば追従走行制御を解除することを情報提示装置9に提示させる構成とすればよい。他にも、VSC_ECU1やENG_ECU5に指示を行い、強制的に一定の減速を行わせる構成としてもよい。
さらに、図9及び図10を用いて、車車間通信の途絶が生じない場合と車車間通信の途絶及び回復が生じる場合との被追従車と追従車との通信シーケンスについての一例を示す。まず、図9を用いて、車車間通信の途絶が生じない場合の被追従車と追従車との通信シーケンスについて説明を行う。
被追従車からは、軌跡決定用情報を一定周期ごとに送信するので、被追従車から軌跡決定用情報が送信され、その軌跡決定用情報を追従車が受信する(t1)。追従車では、受信した軌跡決定用情報を用いて、前述した対車両制御やカーブ考慮制御といった追従走行制御が行われる(t2)。
また、追従車からも、車両情報(例えば軌跡決定用情報でもよい)を一定周期ごとに送信するので、追従車から車両情報が送信され、その車両情報を被追従車が受信する(t3)。
車車間通信の途絶が生じない場合には、t1〜t3の一連の処理が一定周期ごとに繰り返されることになる(t4〜t6、t7〜t9)。
続いて、図10を用いて、車車間通信の途絶及び回復が生じる場合の被追従車と追従車との通信シーケンスについて説明を行う。車車間通信の途絶が生じていない場合には、前述のt1〜t3の一連の処理と同様の一連の処理が行われる(t21〜t23)。
追従車と被追従車との間に割り込んだトラック等の大型車両やカーブ路や交差点等での遮蔽物の存在によって車車間通信が途絶した場合、被追従車から送信される軌跡決定用情報は追従車で受信されない(t24)。また、追従車から送信される車両情報も被追従車で受信されない(t25)。
この場合、被追従車及び追従車ではそれぞれ車車間通信の途絶を検出する(t26、t27)。そして、被追従車では、前述した送信側途絶中処理を開始する(t28)。また、追従車では、前述した受信側途絶中処理を開始する(t29)。
その後、例えば追従車から送信される車両情報を被追従車が受信したときに(t30)、被追従車が車車間通信の回復を検出し(t31)、被追従車が前述の送信側回復後処理を開始する(t32)。そして、被追従車から途絶中に蓄積していた軌跡決定用情報群が送信され、追従車がこれを受信する(t33)。
続いて、軌跡決定用情報群を受信した追従車が車車間通信の回復を検出し(t34)、追従車が前述の受信側回復後処理を開始する(t35)。そして、追従車では、受信した軌跡決定用情報群を用いることで、途絶中に取得出来なかった軌跡決定用情報を補って、前述したカーブ考慮制御といった追従走行制御が行われる(t36)。車車間通信が回復した後は、再度途絶が生じるまでは、前述のt1〜t3の一連の処理と同様の一連の処理が一定周期ごとに繰り返されることになる(t37〜t39)。
以上の構成によれば、減速開始点に達する前に、車車間通信の回復後に被追従車から一括して送信される軌跡決定用情報群を用いて、カーブ考慮制御途絶中に決定出来なかった分の被追従車の走行軌跡を決定した上で、この走行軌跡を用いてカーブ考慮制御を行うことができる。よって、自車は、減速開始点で減速を開始して、カーブ路に進入するまでに目標旋回速度まで減速を完了して、カーブ路の走行を行うことが可能になる。また、一括して送信された軌跡決定用情報群によって、それまで欠損していたカーブ路内の走行軌跡を決定出来た場合には、カーブ路内を目標旋回速度で走行するようにカーブ考慮制御を行うことも可能になる。
さらに、減速開始点に達する前に、被追従車との間での車車間通信の途絶が回復しなかった場合には、カーブ考慮制御を解除するので、減速開始点で減速が開始できなくなってしまう場合に、強制的に減速を開始する制御を可能にしたり、運転者の操作によって減速を行う制御に移行したりすることが可能になる。
なお、前述の対車両制御とカーブ考慮制御とは併用される構成とすることが好ましい。この場合、対車両制御とカーブ考慮制御とのそれぞれで算出される要求加減速度のうち、より小さい方の値を出力する構成とすればよい。これによれば、被追従車との車間距離が小さくなり過ぎないように速度制御を行いながらも、カーブ路内を走行する際のドライバの危険感に合った速度制御も行うことが可能になる。
また、前述の実施形態では、車車間通信の途絶の検出前に、被追従車が自車速Vo及び操舵角θを1組ずつ、一定の送信周期ごとに送信させる構成を示したが、必ずしもこれに限らない。例えば、車車間通信の途絶の検出前に、センサ情報取得処理で逐次取得した自車速Vo及び操舵角θを2組ずつなどの複数組ずつ、一定の送信周期ごとに送信させる構成としてもよい。
他にも、センサ情報取得処理で逐次取得した自車速Vo及び操舵角θをもとに被追従車で走行軌跡を逐次決定し、決定した走行軌跡を逐次送信させる構成としてもよい。この場合には、センサ情報取得処理で逐次取得した所定組数以下(例えば10組等)の自車速Vo及び操舵角θから走行軌跡を決定して送信させる構成とすればよい。
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。