JP2013120278A - 偏光板保護フィルムの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】溶液製膜法において、原反フィルムを短時間で乾燥させ、かつ偏光子の劣化が抑制され、リワーク性の良好な偏光板保護フィルムを製造する。
【解決手段】(メタ)アクリル樹脂と、セルロースエステルと、溶媒とを含有するドープを得る工程と;ドープを無端状ベルト上に流延する工程と;流延して得られたドープ膜を乾燥させた後、剥離してウェブを得る工程と;ウェブを第1の温度T1(℃)で乾燥させる工程と;乾燥後のウェブを、第2の温度T2(℃)で幅方向に1.2〜2.0倍、搬送方向に0.95〜1.1倍にそれぞれ延伸して、厚み10〜35μmの偏光板保護フィルムを得る工程と;延伸直後に得られる偏光板保護フィルムを、第3の温度T3(℃)で乾燥させる工程とを含み、前記第1の温度T1(℃)は、30<T1<80を満たし、前記第2の温度T2(℃)は、T1+50<T2≦T1+100を満たし、かつ前記第3の温度T3(℃)は、T2+10<T3<T2+50を満たす、偏光板保護フィルムの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、偏光板保護フィルムの製造方法に関する。
液晶表示装置は、テレビやパソコンなどの液晶ディスプレイとして広く用いられている。液晶表示装置は、通常、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板と、バックライトとを有する。偏光板は、通常、偏光子と、それを挟持する一対の偏光板保護フィルムとを有する。
偏光板保護フィルムとしては、耐熱性が高いことなどから、通常、セルロースエステルフィルムが用いられている。しかしながら、セルロースエステルフィルムは耐湿性が低く、高湿条件下で寸法変化しやすいことから、光学性能が変化しやすいという問題があった。また、セルロースエステルフィルムは、耐湿性を高めるためなどから、多くの添加剤を含有することがある。しかしながら、そのような添加剤を多く含むセルロースエステルフィルムと偏光子とを貼り合わせると、フィルムに含まれる添加剤が溶出し、偏光子を劣化させることがあった。
そのため、セルロースエステルと、耐湿性が高い(メタ)アクリル樹脂とを含む偏光板保護フィルムが提案されている(例えば特許文献1〜2)。これらの偏光板保護フィルムは、セルロースエステルと(メタ)アクリル樹脂とを溶媒に溶解させてドープを得る工程と;ドープを無端状ベルト上に流延した後、乾燥させて原反フィルムを得る工程と;原反フィルムを延伸して偏光板保護フィルムを得る工程とを含む溶液製膜法によって製造されている。
国際公開第2009/047924号 国際公開第2010/052980号
しかしながら、特許文献1および2に記載のような偏光板保護フィルムの製造方法では、原反フィルムに含まれる溶媒量が多いことから、乾燥時間が長くなりやすいという問題があった。
これに対して、原反フィルムの膜厚を小さくすれば、原反フィルムに含まれる溶媒量を低減できるため、乾燥時間を短縮できると考えられる。しかしながら、原反フィルムの膜厚を小さくしすぎると、フィルム強度が不足し、原反フィルムを無端状ベルトから剥離する際に、原反フィルムが破れやすいという問題があった。
一方、特許文献2に記載のように、原反フィルムを高倍率で延伸すれば、原反フィルムの膜厚を小さくできるため、乾燥時間をある程度短縮できると考えられる。しかしながら、未だ十分なものではなく、さらなる乾燥時間の短縮が求められている。
また、得られる偏光板保護フィルムは、溶出しやすい添加剤を多く含有していると、偏光子と貼り合わせた際に偏光子を劣化させることがある。さらに、得られる偏光板保護フィルムを含む偏光板を液晶セルに一旦貼り付けた後、剥離する際に、破れない程度の柔軟性を有すること(リワーク性が高いこと)も求められる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、溶液製膜法において、原反フィルムを短時間で乾燥させることができ、かつ偏光子の劣化が抑制され、リワーク性の良好な偏光板保護フィルムを製造する方法を提供することを目的とする。
[1] (メタ)アクリル樹脂と、セルロースエステルと、溶媒とを含有し、前記(メタ)アクリル樹脂と前記セルロースエステルとの含有比率が、質量比で(メタ)アクリル樹脂:セルロースエステル=95:5〜30:70であるドープを得る工程と、前記ドープを、無端状の金属支持体上に流延する工程と、前記流延して得られたドープ膜を乾燥させた後、前記金属支持体から剥離してウェブを得る工程と、前記ウェブを第1の温度T1(℃)で乾燥させる工程と、前記乾燥させて得られたウェブを、第2の温度T2(℃)で、少なくとも幅方向に1.2〜2.0倍に延伸して、厚み10〜35μmの偏光板保護フィルムを得る工程と、前記延伸した直後に得られる偏光板保護フィルムを、第3の温度T3(℃)で乾燥させる工程と、を含み、前記第1の温度T1(℃)は、30<T1<80を満たし、前記第2の温度T2(℃)は、T1+50<T2≦T1+100を満たし、かつ前記第3の温度T3(℃)は、T2+10<T3<T2+50を満たす、偏光板保護フィルムの製造方法。
[2] 前記乾燥させて得られたウェブの厚みが、40〜200μmである、[1]に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
[3] 前記溶媒が、メチレンクロライドと、炭素数1〜4の直鎖または分岐状の脂肪族アルコールとを含有し、前記炭素数1〜4の直鎖または分岐状の脂肪族アルコールの、前記溶媒全体における含有量が1〜40質量%である、[1]または[2]に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
[4] 前記セルロースエステルは、セルロースアセテートプロピオネートである、[1]〜[3]のいずれかに記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
[5] 前記延伸した直後に得られる偏光板保護フィルムに残留するメチレンクロライドの含有量をM1(質量%)とし、当該偏光板保護フィルムを110℃で20分間乾燥させた後に残留するメチレンクロライドの含有量をM2(質量%)としたとき、100≦M1/M2≦500を満たし、かつM2≦0.1を満たす、[3]に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
本発明によれば、溶液製膜法において、原反フィルムを短時間で乾燥させることができ、かつ偏光子の劣化が抑制され、リワーク性の良好な偏光板保護フィルムを製造することができる。
液晶表示装置の一実施形態の基本構成を示す模式図である。
1.本発明の偏光板保護フィルムの製造方法は、1)(メタ)アクリル樹脂と、セルロースエステルと、溶媒とを含有するドープを得る工程と、2)ドープを無端状ベルト上に流延する工程と、3)流延して得られたドープ膜を乾燥させた後、無端状ベルトから剥離してウェブを得る工程と、4)ウェブを第1の温度T1(℃)で乾燥させる工程と、5)乾燥後に得られたウェブを、第2の温度T2(℃)で延伸して偏光板保護フィルムを得る工程と、6)延伸直後に得られる偏光板保護フィルムを、第3の温度T3(℃)で乾燥させる工程とを含む。
1)ドープを得る工程
(メタ)アクリル樹脂と、セルロースエステルと、必要に応じて添加剤とを、溶媒に溶解させてドープを調製する。
ドープについて
ドープは、前述の通り、(メタ)アクリル樹脂と、セルロースエステルと、それらを溶解させるための溶媒とを含む。
(メタ)アクリル樹脂
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、または(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体でありうる。(メタ)アクリル酸エステルは、好ましくはメチルメタクリレートである。共重合体におけるメチルメタクリレート由来の構成単位の含有割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
共重合体における共重合体モノマーの例には、アルキル部分の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート;アルキル部分の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート;後述のラクトン環構造を形成しうる、水酸基を有するアルキル部分の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレート;アクリル酸、メタクリル酸などのα,β−不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和基含有二価カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物など、アクリロイルモルホリン(ACMO)などのアクリルアミド誘導体;N−ビニルピロリドン(VP)などが含まれる。これらは、一種類で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、共重合体の耐熱分解性や流動性を高めるためには、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアルキルアクリレート;2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルなどの水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートが好ましい。セルロースエステルとの相溶性を高めるためには、アクリロイルモルホリンなどが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、得られる偏光板保護フィルムの耐熱性を高めたり、光弾性係数を調整したりする観点などから、ラクトン環構造を含有することが好ましい。(メタ)アクリル樹脂に含まれるラクトン環構造は、好ましくは下記一般式(1)で表される。
Figure 2013120278
式(1)において、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基は、酸素原子を含んでいてもよい。有機残基の例には、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、直鎖もしくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基(Acはアセチル基)、−CN基などが含まれる。式(1)で示されるラクトン環構造は、後述するように、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートに由来する構造である。
ラクトン環構造を含有する(メタ)アクリル樹脂は、アルキル部分の炭素数が1〜18のアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位をさらに含み、必要に応じて水酸基を含有するモノマー、不飽和カルボン酸、一般式(2)で表されるモノマーなどに由来する構成単位をさらに含んでいてもよい。一般式(2)におけるRは、水素原子またはメチル基を示す。Xは、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基(Ac:アセチル基)、−CN基、アシル基または−C−OR基(Rは水素原子または炭素数1〜20の有機残基)を示す。
Figure 2013120278
ラクトン環構造を含有する(メタ)アクリル樹脂における、式(1)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%であり、より好ましくは10〜80質量%であり、さらに好ましくは15〜70質量%である。ラクトン環構造の含有割合が90質量%超であると、成形加工性が低く、得られるフィルムの可とう性も低くなりやすい。ラクトン環構造の含有割合が5質量%未満であると、必要な位相差を有するフィルムが得られにくく、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が十分でないことがある。
ラクトン環構造を含有する(メタ)アクリル樹脂における、アルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位の含有割合は、好ましくは10〜95質量%であり、より好ましくは20〜90質量%であり、さらに好ましくは30〜85質量%である。
ラクトン環構造を含有する(メタ)アクリル樹脂における、前述の式(1)で表されるラクトン環構造やアルキル(メタ)アクリレートに由来する構成単位以外の残部は、前述の水酸基含有モノマー、不飽和カルボン酸または一般式(2)で表されるモノマーに由来する構成単位としうる。
ラクトン環構造を含有する(メタ)アクリル樹脂は、少なくとも、水酸基を有するアルキル(メタ)アクリレートと、それ以外のアルキル(メタ)アクリレートとを含むモノマー成分を重合反応させて、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るステップ;得られた重合体を加熱処理してラクトン環構造を導入するステップ、を経て製造されうる。
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量Mwは、好ましくは8.0×10〜5.0×10の範囲内であり、より好ましくは9.0×10〜4.5×10の範囲内であり、さらに好ましくは1.0×10〜4.0×10の範囲内である。(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量Mwが8.0×10未満であると、得られるフィルムの脆性が高すぎることがあり、5.0×10超であると、得られるフィルムのヘイズが高かったりする。
(メタ)アクリル樹脂の重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用する)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=2800000〜500迄の13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いることが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂の市販品の例には、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80、BR83、BR85、BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)などが含まれる。
(メタ)アクリル樹脂は、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよい。
セルロースエステル
セルロースエステルは、セルロースを、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸とエステル化反応させて得られる化合物である。セルロースエステルに含まれるアシル基は、脂肪族アシル基または芳香族アシル基であり、好ましくは脂肪族アシル基である。脂肪族アシル基は、直鎖であっても分岐していてもよく、さらに置換基を有してもよい。アシル基で置換されていない部分は、通常、水酸基として存在している。
セルロースエステルは、(メタ)アクリル樹脂との相溶性を高めたり、得られるフィルムの脆性を付与したりする観点から、アシル基の総置換度(Dall)が2.0〜3.0であることが好ましく、2.5〜3.0であることがより好ましい。セルロースエステルのアシル基の総置換度が2.0未満であると、(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルとが十分に相溶せず、得られるフィルムのヘイズが高いことがある。
このうち、炭素数3〜7のアシル基の置換度は、1.2〜3.0であることが好ましく、2.0〜3.0であることがより好ましい。炭素数3〜7のアシル基の置換度が1.2未満であると、(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルとが十分に相溶しにくく、得られるフィルムのヘイズが高かったり、脆性が高かったりするからである。
アシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法で測定することができる。
セルロースエステルの例には、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートなどが含まれ、好ましくはセルロースアセテートプロピオネート、セルロースプロピオネートである。
セルロースエステル樹脂の重量平均分子量Mwは、(メタ)アクリル樹脂との相溶性を高める観点から、7.5×10以上であることが好ましく、7.5×10〜2.4×10の範囲であることがより好ましく、1.0×10〜2.4×10の範囲であることがさらに好ましく、1.6×10〜2.4×10の範囲であることが特に好ましい。重量平均分子量Mwが7.5×10未満であると、得られるフィルムの可とう性が低く、耐熱性が十分でないことがある。一方、重量平均分子量Mwが2.4×10超であると、(メタ)アクリル樹脂との相溶性が低く、得られる偏光板保護フィルムのヘイズが上昇しやすい。
セルロースエステルは、公知の方法で合成することができる。具体的には、セルロースと、少なくとも酢酸またはその無水物を含む炭素原子数3以上の有機酸またはその無水物とを、触媒の存在下でエステル化反応させてセルロースのトリエステル体を合成する。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解して、所望のアシル置換度を有するセルロースエステル樹脂を合成する。得られたセルロースエステル樹脂を、ろ過、沈殿、水洗、脱水および乾燥させた後、セルロースエステル樹脂を得ることができる(特開平10−45804号に記載の方法を参照)。
原料となるセルロースは、例えば綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)およびケナフなどを用いることができる。原料となるセルロースは、一種類だけであってもよいし、二種類以上の混合物であってもよい。
(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルの含有比率(質量比)は、(メタ)アクリル樹脂:セルロースエステル=95:5〜30:70であることが好ましく、90:10〜50:50であることがより好ましく、90:10〜60:40であることがさらに好ましい。
(メタ)アクリル樹脂の含有割合が、(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルの合計に対して95質量%超であると、例えば得られるフィルムの耐熱性が十分でないことがある。一方、(メタ)アクリル樹脂の含有割合が30質量%未満であると、例えば得られるフィルムの耐熱湿性が十分でないことがある。
ドープに含まれる(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルの合計含有量は、乾燥負荷を低減するためには高いことが好ましい。一方で、ドープに含まれる(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルの合計量が高すぎると、濾過しにくく、濾過精度が低下しやすい。そのため、ドープに含まれる(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルの合計量は、好ましくは10〜35質量%であり、より好ましくは15〜25質量%である。
ドープは、必要に応じて糖エステル化合物、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、微粒子(マット剤)などの任意成分をさらに含んでもよい。
糖エステル化合物
糖エステル化合物は、一般式(3)で示される糖エステル化合物であることが好ましい。
Figure 2013120278
式(3)のR〜Rは、置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、または置換もしくは無置換のアリールカルボニル基を表わす。R〜Rは、互いに同じであっても、異なってもよい。
置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基は、炭素原子数2以上の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基であることが好ましい。置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基の例には、メチルカルボニル基(アセチル基)が含まれる。アルキル基が有する置換基の例には、フェニル基などのアリール基が含まれる。
置換もしくは無置換のアリールカルボニル基は、炭素原子数7以上の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基であることが好ましい。アリールカルボニル基の例には、フェニルカルボニル基が含まれる。アリール基が有する置換基の例には、メチル基などのアルキル基が含まれる。
一般式(3)で示される化合物の具体例には、以下のものが含まれる。表中のRは、一般式(3)におけるR〜Rを表す。
Figure 2013120278
一般式(3)で示される糖エステル化合物の含有量は、ドープに含まれる前述の樹脂成分の総量に対して1〜40質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。糖エステル化合物の含有量が40質量%超であると、得られるフィルムがブリードアウトを生じやすい。
可塑剤
可塑剤の例には、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤を含む)、グリコレート系可塑剤、エステル系可塑剤(脂肪酸エステル系可塑剤を含む)、およびアクリル系可塑剤などが含まれる。これらは単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル系可塑剤
ポリエステル系可塑剤は、下記一般式(4)で表されるポリエステル化合物であることが好ましい。
一般式(4)
Figure 2013120278
式(4)中、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基または炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基を表す。Gは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基、または炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。Bは、水素原子またはカルボン酸から誘導される1価の基を表す。nは、1以上の整数を表す。
Aの、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれ、特にコハク酸、アジピン酸が好ましい。Aにおける炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれ、特にフタル酸、テレフタル酸が好ましい。
Gの、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、および1,12-オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。特に、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコールが好ましい。
Gの、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3-ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基であることが好ましい。ポリエステル化合物の、セルロースエステルとの相溶性を高めるためである。
Bの、カルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、およびアセトキシ安息香酸などの芳香族カルボン酸から誘導される1価の基や;酢酸、プロピオン酸、および酪酸などの脂肪族カルボン酸などから誘導される1価の基が含まれる。特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸または安息香酸から誘導される1価の基が好ましい。
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は300〜1800であることが好ましく、300〜600であることがより好ましい。数平均分子量が300未満であるポリエステル系可塑剤は、揮発しやすいだけでなく、鹸化処理時にフィルムから鹸化液に流出しやすい。数平均分子量が1800超であるポリエステル系可塑剤は、低アシル基置換度のセルロースエステルとの相溶性が低く、得られるフィルムの内部ヘイズが高くなりやすい。
ポリエステル系可塑剤の含有量は、ドープに含まれる前述の樹脂成分の総量に対して0.5〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。0.5質量%未満であると、可塑剤としての機能が十分には得られないことがあり、20質量%超であると、ブリードアウトしたり、鹸化液に流出したりすることがある。
多価アルコールエステル系可塑剤
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールと、モノカルボン酸とのエステル化合物(アルコールエステル)であり、好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。多価アルコールエステル系化合物は、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
2価のアルコールエステル系可塑剤の例には、以下のものが含まれる。
Figure 2013120278
3価以上のアルコールエステル系可塑剤の例には、以下のものが含まれる。
Figure 2013120278
Figure 2013120278
Figure 2013120278
多価アルコールエステル系可塑剤の分子量は、特に制限されないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがより好ましい。揮発し難くするためには、分子量が大きいほうが好ましく;透湿性、セルロースエステルとの相溶性を高めるためには、分子量が小さいほうが好ましい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤
多価カルボン酸エステル系可塑剤は、2価以上、好ましくは2〜20価の多価カルボン酸と、アルコール化合物とのエステル化合物である。多価カルボン酸は、2〜20価の脂肪族多価カルボン酸であるか、3〜20価の芳香族多価カルボン酸または3〜20価の脂環式多価カルボン酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、特に制限はないが、300〜1000であることが好ましく、350〜750であることがより好ましい。多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、ブリードアウトを抑制する観点では、大きいほうが好ましく;透湿性やセルロースエステルとの相溶性の観点では、小さいほうが好ましい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の例には、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が含まれる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤であってもよい。フタル酸エステル系可塑剤の例には、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が含まれる。
グリコレート系可塑剤の例には、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が含まれる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類の例には、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が含まれる。
エステル系可塑剤には、脂肪酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤やリン酸エステル系可塑剤などが含まれる。
脂肪酸エステル系可塑剤の例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、およびセバシン酸ジブチル等が含まれる。クエン酸エステル系可塑剤の例には、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、およびクエン酸アセチルトリブチル等が含まれる。リン酸エステル系可塑剤の例には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、およびトリブチルホスフェート等が含まれる。
これらの可塑剤の含有量の合計は、ドープに含まれる前述の樹脂成分の総量に対して0.5〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。可塑剤の含有量が40質量%超であると、得られるフィルムがブリードアウトを生じやすい。
紫外線吸収剤
ドープは、得られる偏光板保護フィルムの耐久性を向上させるために、紫外線吸収剤をさらに含んでもよい。紫外線吸収剤は、波長400nm以下の紫外線を吸収する化合物であり、好ましくは波長370nmでの透過率が10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である化合物である。
紫外線吸収剤の光線透過率は、紫外線吸収剤を溶媒(例えばジクロロメタン、トルエンなど)に溶解した溶液を、常法により、分光光度計により測定することができる。分光光度計は、例えば、島津製作所社製の分光光度計UVIDFC−610、日立製作所社製の330型自記分光光度計、U−3210型自記分光光度計、U−3410型自記分光光度計、U−4000型自記分光光度計等を用いることができる。
紫外線吸収剤は、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体および高分子紫外線吸収剤などであってよく、得られるフィルムの透明性を損なわないためには、好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、さらに好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤がより好ましい。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例には、5-クロロ-2-(3,5-ジ-sec-ブチル-2-ヒドロキシルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、(2-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖および側鎖ドデシル)-4-メチルフェノールなどが含まれる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品の例には、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328(BASFジャパン株式会社製)などのチヌビン類が含まれる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例には、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4-ベンジルオキシベンゾフェノンなどが含まれる。
高分子紫外線吸収剤の例には、特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が含まれる。紫外線吸収剤は、一種類であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。
紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤の種類にもよるが、ドープ中の固形成分全体に対して0.5〜4質量%であることが好ましく、0.6〜3.5質量%であることがより好ましい。
酸化防止剤
ドープは、得られる偏光板保護フィルムの高湿高温下での劣化を抑制するために、酸化防止剤をさらに含んでもよい。酸化防止剤は、偏光板保護フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等による分解を遅延または防止する機能を有する。
酸化防止剤の例には、イオウ系化合物、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、不飽和二重結合を含有する化合物などが含まれる。
イオウ系化合物の例には、住友化学社製Sumilizer TPL−R、Sumilizer TP−Dなどが含まれる。
フェノール系化合物の例には、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有する化合物(例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなど)が含まれる。フェノール系化合物の市販品の例には、BASFジャパン株式会社製Irganox1076、Irganox1010などが含まれる。
リン系化合物の例には、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト等が含まれる。リン系化合物の市販品の例には、住友化学株式会社製SumilizerGP、株式会社ADEKA製ADK STAB PEP−24G、ADK STAB PEP−36およびADK STAB 3010、BASFジャパン株式会社製IRGAFOS P−EPQ、堺化学工業株式会社製GSY−P101などが含まれる。
ヒンダードアミン系化合物の例には、BASFジャパン株式会社製Tinuvin144およびTinuvin770、株式会社ADEKA製ADK STAB LA−52などが含まれる。
不飽和二重結合を含有する化合物の例には、住友化学株式会社製Sumilizer GM、およびSumilizer GSなどが含まれる。
酸化防止剤は、一種類のみであっても二種類以上の混合物であってもよいが、好ましくは二種類以上の混合物であることが好ましい。例えば、リン系化合物、フェノール系化合物および不飽和二重結合を含有する化合物を併用することが好ましい。
酸化防止剤の含有量は、前述の樹脂成分の合計に対して0.05〜5質量%であることが好ましく、0.1〜4質量%であることがより好ましい。
微粒子(マット剤)
ドープは、得られる偏光板保護フィルムの滑り性を向上させるために、微粒子(マット剤)をさらに含んでもよい。
微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。無機微粒子の例には、二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムなどが含まれる。なかでも、二酸化珪素や酸化ジルコニウムが好ましく、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、より好ましくは二酸化珪素である。
二酸化珪素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)などが含まれる。
酸化ジルコニウムの微粒子の例には、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)などが含まれる。
ポリマー微粒子を構成するポリマーの種類には、シリコーン樹脂、フッ素樹脂およびアクリル樹脂などが含まれ、好ましくはシリコーン樹脂であり、より好ましくは三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂である。ポリマー微粒子の例には、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)が含まれる。
なかでも、アエロジルR972V、NAX50、シーホスターKE−P30などが、得られるフィルムの濁度を低く保ちつつ、摩擦係数を低減させうるため特に好ましい。
微粒子は、分散性を高め、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、表面処理されていることが好ましい。表面処理剤の例には、ハロシラン類、アルコキシシラン類、シラザン、シロキサンなどが含まれる。
微粒子の一次粒子径は、5〜50nmであることが好ましく、7〜20nmであることがより好ましい。一次粒子径が大きいほうが、得られるフィルムの滑り性を高める効果は大きいが、透明性が低下しやすい。そのため、微粒子は、粒子径0.05〜0.3μmの二次凝集体として含有されていてもよい。微粒子の一次粒子またはその二次凝集体の大きさは、透過型電子顕微鏡にて倍率50万〜200万倍で一次粒子または二次凝集体を観察し、一次粒子または二次凝集体100個の粒子径の平均値として求めることができる。
微粒子の含有量は、前述の熱可塑性樹脂の合計に対して0.05〜1.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.8質量%であることがより好ましい。
溶媒
溶媒は、特に制限されず、一種類であっても、二種以上の混合物であってもよい。乾燥時間を短縮するためには、良溶媒と貧溶媒との混合物が好ましい。良溶媒とは、(メタ)アクリル樹脂またはセルロースエステルを単独で溶解する溶媒をいう。貧溶媒とは、(メタ)アクリル樹脂またはセルロースエステルを膨潤させるが、単独では溶解しないものをいう。
良溶媒の例には、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、およびアセト酢酸メチルなどが含まれ、好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルであり、より好ましくはメチレンクロライドである。貧溶媒の例には、メタノール、エタノール、n−ブタノールなどの炭素数1〜4の直鎖または分岐状の脂肪族アルコールが含まれる。
良溶媒と貧溶媒の混合物における良溶媒の含有量は、貧溶媒の含有量よりも多いことが好ましい。貧溶媒の割合は、溶媒全体に対して1〜40質量%であることが好ましい。比較的低い温度で蒸発しやすい貧溶媒の含有割合が1質量%未満であると、溶媒全体の乾燥時間を短縮しにくく;40質量%超であると、(メタ)アクリル樹脂またはセルロースエステルを十分に溶解させにくいからである。
(メタ)アクリル樹脂やセルロースエステルの溶媒に溶解させる方法は、例えば加熱および加圧下で溶解させる方法、(メタ)アクリル樹脂やセルロースエステルに貧溶媒を加えて膨潤させた後、良溶媒をさらに加えて溶解させる方法などでありうる。なかでも、常圧における沸点以上に加熱できることから、加熱および加圧下で溶解させる方法が好ましい。具体的には、常圧下で溶媒の沸点以上であり、かつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌溶解すると、塊状未溶解物の発生を抑制できる。加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法などによって行うことができる。
加熱温度は、(メタ)アクリル樹脂やセルロースエステルの溶解性を高める観点では、高いほうが好ましい。一方、加熱温度が高過ぎると、圧力を高める必要があり、生産性が低下する。このため、加熱温度は、45〜120℃であることが好ましく、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃であることがさらに好ましい。圧力は、設定された加熱温度において、溶媒が沸騰しないような範囲に調整することが好ましい。
紫外線防止剤や微粒子などの少量成分は、ドープにバッチ添加してもよいし、別途調製した添加剤溶解液をインライン添加してもよい。添加剤溶液は、添加剤を、前述の溶媒に溶解させたものでありうる。
特に微粒子は、ろ過材への負荷を減らすために、一部または全部をインライン添加することが好ましい。添加剤溶解液をインライン添加する場合は、ドープと混合しやすくするために、添加剤溶解液に少量の(メタ)アクリル樹脂またはセルロースエステルを溶解させていてもよい。添加剤溶解液に含まれる(メタ)アクリル樹脂とセルロースエステルの合計量は、溶媒100質量部に対して好ましくは1〜10質量部であり、より好ましくは3〜5質量部である。
インライン添加は、例えばスタチックミキサー(東レエンジニアリング製)、SWJ(東レ静止型管内混合器 Hi−Mixer)等のインラインミキサー等を用いて行うことができる。
得られるドープは、例えば原料であるセルロースエステルに含まれる不純物などの不溶物を含むことがある。このような不溶物を除去するために、得られたドープを、必要に応じてさらに濾過してもよい。
ドープの濾過は、濾紙等の濾材によって行われる。濾材の絶対濾過精度は、ドープに含まれる不溶物等を高度に除去するためには小さいことが好ましいが、小さすぎると目詰まりが生じやすい。このため、濾材の絶対濾過精度は、0.008mm以下であることが好ましく、0.001〜0.008mmであることがより好ましく、0.003〜0.006mmであることがさらに好ましい。
2)ドープを流延する工程について
前述で得たドープを、加圧ダイから無端状の金属支持体上に流延させる。
加圧ダイの例には、コートハンガーダイ、Tダイなどが含まれる。金属支持体は、表面に鏡面仕上げが施されているものが好ましい。無端状の金属支持体の例には、金属ベルト(例えばステンレススチールベルト)、金属ドラムなどが含まれる。
金属支持体の表面温度は、ドープ膜の乾燥速度を高めるためには高いことが好ましいが、高すぎるとドープ膜が発泡することがある。そのため、金属支持体の表面温度は、−50℃以上溶媒の沸点未満であることが好ましい。ドープ膜の温度は、0〜55℃であることが好ましく、25〜50℃であることがより好ましい。
3)ドープ膜を乾燥した後、剥離してウェブを得る工程
流延したドープ膜を、金属支持体上で、残留溶媒量が一定以下となるまで乾燥させる。乾燥方法の例には、ドープ膜の表面に風を当てる方法、ドープ膜を赤外線ヒータなどで加熱する方法などが含まれる。
ドープ膜を乾燥させるときの雰囲気温度は、40〜100℃であることが好ましい。剥離時のドープ膜の残留溶媒量は、得られる偏光板保護フィルムの平面性を高めるためには、好ましくは50〜120質量%とし、より好ましくは70〜120質量%としうる。
ウェブの残留溶媒量は、下記式で定義される。下記式において、Mは、製造中のウェブまたは製造後のフィルムから任意の時点で採取した試料の質量を示す。Nは、当該試料を110℃で20分加熱したときの、試料の質量を示す。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
そして、残留溶媒量が一定以下となるまで乾燥させたドープ膜を、金属支持体上から剥離して、ウェブを得る。
ドープ膜の剥離は、例えば剥離ロールによって行うことができる。ドープ膜の剥離張力は、好ましくは300N/m以下とし、より好ましくは190N/m以下としうる。
ドープ膜を剥離する位置における、金属支持体の表面温度は、好ましくはー50〜40℃であり、より好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは15〜30℃である。
得られるウェブの厚みは、金属支持体から剥離する際にウェブを破れにくくするためには、好ましくは40μm以上とし、より好ましくは50μm以上としうる。一方、最終的に得られる偏光板保護フィルムの厚みを一定以下とするためには、好ましくは200μm以下とし、より好ましくは180μm以下としうる。
4)ウェブを第1の温度T1(℃)で乾燥させる工程
剥離して得られたウェブを搬送させながら、第1の温度T1(℃)で乾燥させる。第1の温度T1は、好ましくは30℃超であり、より好ましくは35℃以上であり、さらに好ましくは40℃以上としうる。第1の温度T1の上限値は、通常、80℃以下としうる。第1の温度T1が低すぎると、後述する延伸工程の前までにウェブの残留溶媒量を一定以下としにくいため、ウェブが過剰に伸びやすく、膜厚を制御しにくい。一方、第1の温度T1が高すぎると、ウェブの平面性が低下したり、硬くなりすぎて、後述する延伸工程で高倍率延伸しにくくなったりしやすい。
第1の温度T1(℃)でのウェブの乾燥は、ウェブの強度や厚みが所定の範囲となるように制御するためには、後述する延伸工程前のウェブの残留溶媒量が、好ましくは100質量%以下となるように行うことが好ましい。一方、後述する延伸工程前のウェブの残留溶媒量は、得られる偏光板保護フィルムの平面性を低下させないようにするためには、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上としうる。
ウェブの乾燥は、ウェブの上面側と下面側に配置した多数のロールで搬送しながら行ってもよいし、ウェブの両端部をテンターで固定した状態で搬送しながら行ってもよい。
ウェブの乾燥方法は、特に制限されないが、熱風、赤外線、加熱ロールおよびマイクロ波等で乾燥する方法であってよく、簡便である点から、熱風で乾燥する方法が好ましい。
5)乾燥後のウェブを第2の温度T2(℃)で延伸して偏光板保護フィルムを得る工程
第1の温度T1(℃)で乾燥させて得られたウェブを、第2の温度T2で延伸する。延伸により、所望のレターデーションを有する偏光板保護フィルムを得る。偏光板保護フィルムのレターデーションは、ウェブに掛かる張力の大きさを、少なくともウェブの幅方向に調整することによって制御することができる。
ウェブの延伸は、幅方向(TD方向)、ドープの流延方向(MD方向)、または斜め方向の延伸であり、少なくとも幅方向(TD方向)に延伸することが好ましい。ウェブの延伸は、一軸延伸であっても、二軸延伸であってもよい。二軸延伸は、好ましくはドープの流延方向(MD方向)と幅方向(TD方向)への延伸である。二軸延伸は、逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であってもよい。
逐次二軸延伸には、延伸方向の異なる延伸を順次行う方法や、同一方向の延伸を多段階に分けて行う方法などが含まれる。逐次二軸延伸の例には、以下のような延伸ステップが含まれる。
流延方向(MD方向)に延伸−幅方向(TD方向)に延伸−流延方向(MD方向)に延伸−流延方向(MD方向)に延伸
幅方向(TD方向)に延伸−幅方向に延伸(TD方向)−流延方向(MD方向)に延伸−流延方向(MD方向)に延伸
同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方の方向の張力を緩和して収縮させる態様も含まれる。
延伸倍率は、得られる偏光板保護フィルムの膜厚や、求められるレターデーション値にもよるが、各方向に0.95〜3.0倍、好ましくは1.01〜2.0倍、より好ましくは1.2〜2.0倍、さらに好ましくは1.5〜2.0倍としうる。例えば、ウェブの幅方向(TD方向)に延伸する場合、得られる偏光板保護フィルムの膜厚を一定以下に薄くするためには、好ましくは1.2〜2.0倍、より好ましくは1.5〜2.0倍としうる。ウェブの幅方向(TD方向)のみに延伸しても、得られる偏光板保護フィルムの流延方向(MD方向)の延伸倍率が0.95〜1.1倍程度となることもある。
ウェブの延伸方法は、特に制限されず、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して流延方向(MD方向)に延伸する方法(ロール延伸法)、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を流延方向(MD方向)に向かって広げて流延方向(MD方向)に延伸したり、幅方向(TD方向)に広げて幅方向(TD方向)に延伸したり、流延方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の両方に広げて流延方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の両方に延伸する方法など(テンター延伸法)などが挙げられる。これらの延伸方法は、組み合わせてもよい。
延伸後のウェブの残留溶媒量は、延伸後の乾燥時間を短縮するためなどから、好ましくは10質量%以下とし、より好ましくは5質量%以下としうる。
第2の温度T2(℃)は、延伸温度であり、T1+50<T2≦T1+100を満たすことが好ましい。第2の温度T2が(T1+50)℃以下であると、ウェブを延伸に適した柔らかさにできず、高倍率で延伸しにくい。一方、第2の温度T2が(T1+100)℃超であると、ウェブが柔らかくなりすぎて、ウェブの強度が不足しやすい。
ウェブの幅方向(TD方向)に延伸する場合、得られる偏光板保護フィルムの均一性を高めるためには、延伸工程での幅方向(TD方向)の雰囲気温度の分布が少ないことが好ましく、幅方向(TD方向)の雰囲気温度の分布は、±5℃以内であることが好ましく、±2℃以内であることがより好ましく、±1℃以内であることがより好ましい。
テンター延伸装置は、ウェブの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を、左右で独立に制御できるものが好ましい。また、テンター工程は、得られる偏光板保護フィルムの平面性を高めるために、異なる温度領域を有したり、異なる温度領域の間にニュートラルゾーンを有したりすることが好ましい。
延伸直後に得られる偏光板保護フィルムの残留溶媒量をM1(質量%)とし、当該偏光板保護フィルムを110℃で20分間乾燥させた後の残留溶媒量をM2(質量%)としたとき、100≦M1/M2≦500を満たし、かつM2≦0.1を満たすことが好ましい。M1/M2が100未満であると、延伸直後の偏光板保護フィルムの乾燥速度が小さく、乾燥時間が長くなるだけでなく、得られる偏光板保護フィルムの残留溶媒量も多くなりやすい。一方、M1/M2が500超であると、乾燥速度は大きいが、延伸直後に得られる偏光板保護フィルムと、それを搬送する搬送ローラとが良好に密着しにくいため、得られる偏光板保護フィルムの表面平滑性が低下しやすい。
このように、一定以上の厚みのウェブ(原反フィルム)を高倍率で延伸することで、膜厚が小さいフィルムを得ることができる。さらに、フィルムの膜厚を小さくできるので、乾燥時間を短縮することができる。
6)延伸直後の偏光板保護フィルムを、第3の温度T3(℃)で乾燥させる工程
延伸直後に得られる偏光板保護フィルムを、第3の温度T3(℃)でさらに乾燥させる。
第3の温度T3(℃)は、T2+10<T3<T2+50を満たすことが好ましい。第3の温度T3(℃)が(T2+10)(℃)未満であると、乾燥時間が長くなりやすいだけでなく、得られる偏光板保護フィルムの残留溶媒量が多くなりやすい。残留溶媒量が多い偏光板保護フィルムは柔軟性が高すぎるため、フィルム強度が不足し、リワーク性を低下させやすい。一方、第3の温度T3(℃)が(T2+50)超であると、得られる偏光板保護フィルムが脆く、十分な柔軟性を有しないことがある。十分な柔軟性を有しない偏光板保護フィルムは、リワーク性を低下させやすい。
第3の温度T3(℃)での乾燥は、得られる偏光板保護フィルムの残留溶媒量が、好ましくは0.1質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下となるまで行う。得られる偏光板保護フィルムの残留溶媒量が1質量%超であると、偏光板保護フィルムと偏光子とを貼り合わせた際に、偏光板保護フィルム中の溶媒が偏光子を劣化させることがあるからである。
このように、(延伸によって)膜厚が小さくなったフィルムを、比較的高い温度(第3の温度T3)で乾燥させる。そのため、乾燥時間を大幅に短縮でき、かつ得られる偏光板保護フィルムの残留溶媒量を低減できる。
第3の温度T3(℃)で偏光板保護フィルムを乾燥させた後、必要に応じてさらに異なる温度で乾燥させてもよい。
得られた偏光板保護フィルムを、巻き取り装置にて巻き取る。得られる保護フィルの幅は、搬送を容易にする観点などから、4m以下であることが好ましく、1〜4mであることがより好ましく、1.4〜4mであることがさらに好ましく、1.6〜3mであることが特に好ましい。
得られる偏光板保護フィルムの厚みは、乾燥時間を短縮するためなどから、好ましくは35μm以下とし、より好ましくは20μm以下としうる。一方、得られる偏光板保護フィルムに一定以上の強度を付与するためには、好ましくは10μm以上とし、より好ましくは15μm以上としうる。
本発明では、一定以上の厚みのウェブを高倍率で延伸するため、膜厚が小さい偏光板保護フィルムを得ることができる。さらに、(延伸によって)膜厚が小さくなったフィルムを、一定以上の温度(第3の温度T3)で乾燥させる。そのため、乾燥時間を大幅に短縮でき、かつ得られる偏光板保護フィルムの残留溶媒量を低減できる。
このように、偏光板保護フィルムの残留溶媒量を低減することで、偏光子と貼り合わせた際に、偏光子の(残留溶媒による)劣化を抑制できる。さらに、延伸直後の乾燥温度(第3の温度T3)を特定の範囲にすることで、十分な柔軟性を有し、リワーク性の良好な偏光板保護フィルムを得ることもできる。
2.偏光板保護フィルムの物性
偏光板保護フィルムの、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmにて測定されるレターデーションRoは0nm以上であることが好ましく、0〜30nmであることがより好ましい。Rthは70nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがより好ましい。
レターデーションRおよびRthは、それぞれ以下の式で表される。
式(I) R=(nx−ny)×d
式(II) Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(nx:フィルム面内の遅相軸方向の屈折率、ny:フィルム面内において、遅相軸に対して直交する方向の屈折率、nz:厚み方向におけるフィルムの屈折率、d:フィルムの厚み(nm))
レターデーションRおよびRthは、例えば以下の方法によって求めることができる。
1)フィルムの平均屈折率を屈折計により測定する。
2)王子計測機器社製KOBRA−21ADHにより、フィルム法線方向からの波長590nmの光を入射させたときの面内方向のレターデーションRを測定する。
3)王子計測機器社製KOBRA−21ADHにより、フィルム法線方向に対してθの角度(入射角(θ))から波長590nmの光を入射させたときのレターデーション値R(θ)を測定する。θは0°よりも大きく、好ましくは30°〜50°である。
4)測定されたRおよびR(θ)と、前述の平均屈折率と膜厚とから、王子計測機器社製KOBRA−21ADHにより、nx、nyおよびnzを算出し、Rthを算出する。レターデーションの測定は、23℃55%RH条件下で行うことができる。
偏光板保護フィルムは、フィルム面内に遅相軸または進相軸を有する。遅相軸の製膜方向とのなす角θ1(配向角)は、−1°以上+1°以下であることが好ましく、−0.5°以上+0.5°以下であることがより好ましい。配向角θ1が上記範囲を満たしていると、光漏れを抑制できるため、表示画像の輝度を高めることができる。セルロースエステルフィルムの配向角θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器)を用いて測定することができる。
偏光板保護フィルムの、JIS Z 0208に準拠して測定される40℃、90%RHにおける透湿度は、300〜1800g/m・24hであることが好ましく、400〜1500g/m・24hであることがより好ましい。セルロースエステルフィルムの透湿度を低下させるためには、例えばセルロースエステルフィルムに含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度を高くしたり、炭素数3以上のアシル基置換度の割合を多くしたり、可塑剤などの添加剤を多く含有させたりすればよい。
偏光板保護フィルムの、JIS K−7136に準拠して測定されるヘイズは、液晶表示装置において十分な輝度や高いコントラストを得るためには、0.5%以下であることがより好ましく、0.35%以下であることがさらに好ましく、0.05%以下であることが特に好ましい。偏光板保護フィルムのヘイズを低くするためには、セルロースエステルの炭素数3〜7のアシル基の置換度を高めたり、溶媒に貧溶媒を含有させたりすればよい。
偏光板保護フィルムのヘイズは、JIS K−7136に準拠した方法;具体的には、以下の方法で測定することができる。
1)得られた偏光板保護フィルムを、23℃55%RH下で5時間以上調湿する。その後、フィルムの表面に付着したホコリなどをブロワーなどで除去する。
2)次いで、偏光板保護フィルムのヘイズを、23℃55%RHの条件下にて、ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)にて測定する。ヘイズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)としうる。
偏光板保護フィルムの可視光透過率は、90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。偏光板保護フィルムの破断伸度は、10〜80%であることが好ましく、20〜50%であることがより好ましい。
3.偏光板保護フィルムの用途
偏光板保護フィルムは、前述のように偏光板に用いられうる。即ち、偏光板は、偏光子と、その少なくとも一方の面に配置された前述の偏光板保護フィルムと、を含む。
偏光子は、一定方向の偏波面の光のみを通過させる素子である。偏光子の代表的な例は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものと、がある。
偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色して得られるフィルムであってもよいし、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の厚さは、5〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール水溶液を製膜したものであってもよい。ポリビニルアルコール系フィルムは、偏光性能および耐久性能に優れ、色斑が少ないなどことから、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましい。エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムの例には、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載されたエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のフィルムが含まれる。
二色性色素の例には、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素およびアントラキノン系色素などが含まれる。
前述の偏光板保護フィルムは、偏光子の少なくとも一方の面に直接配置されてもよいし、他のフィルムまたは層を介して配置されてもよい。
偏光子の他方の面には、前述の偏光板保護フィルムが配置されてもよいし、それ以外の透明保護フィルムが配置されてもよい。透明保護フィルムの例には、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)等が好ましく用いられる。
偏光板は、通常、偏光子と、前述の偏光板保護フィルムとを貼り合わせるステップを経て得ることができる。貼り合わせに用いられる接着剤の例には、完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液や;ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、水性高分子−イソシアネート系粘着剤、熱硬化型アクリル粘着剤などの硬化型粘着剤が含まれ、好ましくは完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液である。
本発明の製造方法で得られる偏光板保護フィルムは、セルロースエステルだけでなく、(メタ)アクリル樹脂も含む。そのため、可塑剤や糖エステル化合物などの添加剤を含有させなくても、耐湿性が高い偏光板保護フィルムを得ることができる。そのため、偏光板保護フィルムと偏光子とを貼り合わせた状態において、偏光子が、偏光板保護フィルムからブリードアウトした添加剤によって劣化するのを抑制できる。
液晶表示装置は、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板と、を有する。そして、一対の偏光板のうち少なくとも一方を、前述の偏光板保護フィルムを有する偏光板としうる。
図1は、液晶表示装置の一実施形態の基本構成を示す模式図である。図1に示されるように、液晶表示装置10は、液晶セル20と、それを挟持する第一の偏光板40および第二の偏光板60と、バックライト80と、を有する。
液晶セル20の表示方式は、特に制限されず、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、IPS(In−Plane Switching)方式(FFS方式も含む)、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、VA(Vertical Alignment)方式(MVA;Multi−domain Vertical AlignmentやPVA;Patterned Vertical Alignmentも含む)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)方式等がある。視野角が比較的広いなどの観点からは、IPS方式などが好ましく、コントラストが高いなどの観点からは、VA方式などが好ましい。
第一の偏光板40は、視認側に配置されており、第一の偏光子42と、それを挟持する偏光板保護フィルム44(F1)および46(F2)とを有する。第二の偏光板60は、バックライト80側に配置されており、第二の偏光子62と、それを挟持する偏光板保護フィルム64(F3)および66(F4)とを有する。偏光板保護フィルム46(F2)と64(F3)の一方は、必要に応じて省略されてもよい。
偏光板保護フィルム44(F1)、46(F2)、64(F3)および66(F4)の少なくとも一以上を前述の偏光板保護フィルムとしうるが、好ましくは液晶セル側に配置される偏光板保護フィルム46(F2)と64(F3)の少なくとも一方を、前述の偏光板保護フィルムとしうる。
液晶表示装置の大きさは、好ましくは30型以上、より好ましくは30型〜54型としうる。液晶表示装置は、好ましくはデジタルサイネージなどの屋外用途にも好ましく用いられる。
液晶表示装置は、液晶セルと偏光板とを粘着剤を介して貼り合わせるステップを経て製造されうる。粘着剤の例には、前述の硬化型粘着剤が含まれる。
前述のように、一定以下の温度(T3)で乾燥させて得られる偏光板保護フィルムは、フィルム強度を維持しつつ、適度な柔軟性を有する。そのため、当該偏光板保護フィルムを含む偏光板を液晶セルに一旦貼り合わせた後でも、偏光板を裂けさせることなく、液晶セルから容易に剥がすことができる。即ち、当該偏光板保護フィルムを含む偏光板は、良好なリワーク性を有する。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.樹脂の準備
1)(メタ)アクリル樹脂
A:ダイヤナールBR85(三菱レイヨン社製)
2)セルロースエステル
C1:セルロースアセテートプロピオネート(アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、アシル基総置換度2.75)
C2:トリアセチルセルロース(アシル基総置換度2.9)
3)その他
ノルボルネン樹脂(JSR社製アートン)
2.偏光板保護フィルムの作製
(実施例1)
ドープ液の調製
下記成分を加熱しながら十分に溶解して、ドープ液を得た。
〔ドープ液の組成〕
(メタ)アクリル樹脂A(三菱レイヨン社製、ダイヤナールBR85):65質量部
セルロースエステルC1(セルロースアセテートプロピオネート、アセチル基置換度0.19、プロピオニル基置換度2.56、アシル基総置換度2.75):35質量部
メチレンクロライド:300質量部
エタノール:40質量部
得られたドープ液を、無端ベルト流延装置のステンレスベルト支持体上に、温度22℃、幅2000mmで均一に流延させた。ステンレスベルト支持体で、ドープ膜の残留溶媒量が75%になるまで溶媒を蒸発させた後、温度35℃、剥離張力162N/mで、ステンレスベルト支持体からドープ膜を剥離した。剥離して得られたウェブ(原反フィルム)の厚みは191μmであった。
剥離して得られたウェブを、35℃(第1の温度T1)で乾燥させた後、135℃(第2の温度T2)でさらに乾燥させながら、テンターを用いて幅方向に2倍に延伸した。延伸開始時のウェブの残留溶媒量は15質量%であった。延伸直後に得られたウェブを、乾燥ゾーンにて多数のロールで搬送させながら、150℃(第3の温度T3)で乾燥させた。それにより、膜厚20μmの偏光板保護フィルムを得た。
(実施例2)
ドープに含まれる樹脂の組成を、表1に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして偏光板保護フィルムを得た。
(実施例3)
ドープに含まれる溶媒の組成を、表1に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして偏光板保護フィルムを得た。
(比較例1)
ウェブの厚みと延伸倍率を、表1に示されるようにそれぞれ変更した以外は実施例1と同様にして偏光板保護フィルムを得た。
(比較例2〜3)
ウェブの膜厚を、表1に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして偏光板保護フィルムを得た。
(比較例4〜5)
ウェブの乾燥条件のうち第3の温度T3を、表1に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして偏光板保護フィルムを得た。
(比較例6〜8)
ドープに含まれる樹脂の組成を、表1に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして偏光板保護フィルムを得た。
(比較例9)
ウェブ厚みを、表1に示されるように変更した以外は実施例1と同様にして偏光板保護フィルムを得ようとしたが、ウェブをステンレスベルト支持体から剥離できず、偏光板保護フィルムを得ることができなかった。
実施例1〜3および比較例1〜8で得られた偏光板保護フィルムの物性を表1に示す。表1において、A/C比は、(メタ)アクリル樹脂/セルロースエステルの質量比を示し;溶媒組成におけるM/Eは、メチレンクロライド/エタノールの混合溶媒であることを示す。
Figure 2013120278
得られた偏光板保護フィルムの、1)M1/M2、2)リワーク性、3)偏光子劣化、4)水糊との接着性、および5)ヘイズを、以下の方法で評価した。
1)M1/M2の評価
延伸直後で、第3の温度T3(℃)で乾燥させる前のフィルムをサンプリングし、10cm×10cmの大きさに切り出してサンプルフィルムとした。得られたサンプルフィルムに残留するメチレンクロライド量M1(質量%)を測定した。次いで、サンプルフィルムを、110℃で20分間乾燥させた後、得られるサンプルフィルムに残留するメチレンクロライド量M2(質量%)を測定した。そして、M1/M2を算出した。
フィルムに残留するメチレンクロライド量は、下記の方法で測定した。
i)メチレンクロライドをブタノールで一定濃度に希釈した溶媒を準備した。得られた溶媒を、専用のバイアル瓶に入れた後、セプタムとアルミキャップで密閉し、ヒューレット・パッカード社製ヘッドスペースサンプラーHP7694型にセットした。ヘッドスペースサンプラーと接続されるガスクロマトグラフィー(GC)には、検出器として水素炎イオン化検出器(FID)を装着したヒューレット・パッカード社製5971型を用いた。測定条件は以下の通りとした。
ヘッドスペースサンプラー加熱条件:120℃、20分
GC導入温度:150℃
カラム:J&W社製 DB−624
昇温条件:45℃で3分保持した後、8℃/分で100℃まで昇温
メチレンクロライドの濃度を変えた溶媒をいくつか準備し、同様の測定を行った。そして、各測定で得られたチャートにおけるメチレンクロライドのピーク面積を算出し、メチレンクロライドの濃度−ピーク面積のプロットを作成し、検量線とした。
ii)前述の10cm×10cmの大きさに切り出したサンプルフィルムを5mm程度に細かく刻んで専用のバイアル瓶に封入した以外は前記i)と同様にしてヘッドスペース加熱条件にて加熱処理し、得られた揮発成分をガスクロマトグラフィーにて測定した。得られたチャートから、メチレンクロライドのピーク面積を算出し、検量線と照らし合わせて、フィルムに残留するメチレンクロライド量を測定した。フィルムに残留するメチレンクロライド量は、フィルム全体に対する質量割合(質量%)とした。
2)リワーク性の評価
偏光子の作製
厚さ120μmの長尺ロールポリビニルアルコールフィルムを沃素1質量部、ホウ酸4質量部を含む水溶液100質量部に浸漬し、50℃で、搬送方向の延伸倍率6倍に延伸して、厚み35μmの偏光子を得た。
偏光板の作製
以下に示されるように、得られた偏光板保護フィルムをアルカリケン化処理した後、水洗、中和および水洗した。
ケン化工程 2M−NaOH 50℃ 90秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
その後、得られた偏光板保護フィルムを80℃で乾燥させた。
同様にして、コニカミノルタオプト(株)製KC4UYもアルカリケン化処理した。そして、前述の偏光子の一方の面にアルカリケン化処理したKC4UYを、完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として貼り合わせた。同様に、偏光子の他方の面にアルカリケン化処理した前述の偏光板保護フィルムを、完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を接着剤として貼り合わせた。貼り合わせは、偏光子の透過軸と偏光板保護フィルムの面内遅相軸とが平行になるように行った。貼り合わせた積層物を乾燥して、偏光板を得た。
粘着剤組成物の作製
n−ブチルアクリレート(n−BA)75質量部、メチルアクリレート(MA)20質量部、2−ヒドロキシアクリレート(2−HEA)5質量部、酢酸エチル100質量部およびアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.2質量部を反応容器に入れ、反応容器内の空気を窒素ガスで置換した。その後、これらの成分を撹拌しながら、窒素雰囲気下で反応容器内の温度を60℃に昇温し、4時間反応させた。4時間後、トルエン100質量部、α−メチルスチレンダイマー5質量部およびAIBN2質量部を加えて、90℃に昇温し、さらに4時間反応させた。反応後、酢酸エチルで希釈し、固形分20質量%のアクリルポリマー溶液を得た。ポリマー溶液の固形分100質量部にイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン(株)製)1.0質量部を添加し、よく撹拌して粘着剤組成物を得た。
剥離処理したフィルム上に、得られた粘着剤組成物を、乾燥厚みが25μmとなるように塗布して粘着剤層を形成し、粘着シートを得た。
前述の偏光板を100×100mmサイズに打ち抜いた。得られた偏光板の一方の面に、粘着シートの粘着剤層を転写して、粘着剤付き偏光板を得た。粘着剤付き偏光板を、ガラス基板と貼り合わせた。4角の1カ所から、偏光板をガラス基板から少し剥離し、剥離した偏光板を掴みガラス基板を押さえながら対角方向に剥離した。同様の操作を計10枚のサンプルで実施し、以下の基準に従い評価を行った。
○:10枚とも完全に剥離できた
△:1〜5枚で剥離残りが生じた
×:6枚以上剥離残りが生じた
3)偏光子の劣化
前記2)のリワーク性の評価で作製した偏光板の全光線透過率を、日本電色工業(株)製濁度計NDH2000を用いて測定した。全光線透過率の測定では、測定時の光の偏光の影響をキャンセルするために、偏光板の全光線透過率を、1)偏光子の吸収軸が水平方向に対して平行となる位置と、2)偏光子の吸収軸が水平方向に対して直交する方向に対して平行となる位置と、で計2回測定し、それらの平均値を算出した。次いで、偏光板を、60℃90%RHの条件で2000時間保存して耐久性試験を行った後、前述と同様の方法で、耐久性試験後の偏光板の全光線透過率を測定した。得られた値を下記式にそれぞれ当てはめて、耐久性試験前後での全光線透過率の変化量を算出した。
全光線透過率の変化量=(耐久性試験後の全光線透過率)−(耐久性試験前の全光線透過率)
偏光子劣化の評価は、得られた全光線透過率の変化量に基づいて以下のようにして行った。
○:全光線透過率の変化量が5%以下
△:全光線透過率の変化量が5%超10%以下
×:全光線透過率の変化量が10%超
○レベルであることが好ましいが、△レベルであれば実用上問題ない。
4)水糊との接着性
前記2)リワーク性の評価における偏光子の作製方法と同様にして、偏光子を作製した。次いで、偏光板保護フィルムとコニカミノルタオプト(株)製KC4UYとを、それぞれ以下のようにアルカリケン化処理した後、水洗、中和および水洗した。
ケン化工程 1.5N−KOHOH 40℃ 60秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
中和工程 10質量%HCl 30℃ 45秒
水洗工程 水 30℃ 45秒
その後、得られた偏光板保護フィルムとコニカミノルタオプト(株)製KC4UYを、それぞれ80℃で乾燥させた。
そして、前述の偏光子の一方の面に、アルカリケン化処理したKC4UYを、接着剤である完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を介して配置し;偏光子の他方の面に、アルカリケン化処理した前述の偏光板保護フィルムを、完全ケン化型ポリビニルアルコール5%水溶液を介して配置し、積層物を得た。偏光板保護フィルムの面内遅相軸と偏光子の透過軸とが平行になるようにした。得られた積層物を、ロール機により圧力20〜30N/cm、搬送スピード2m/分で貼り合わせた。貼り合わせた積層物を、2分間乾燥させて偏光板とした。
得られた偏光板から、偏光板保護フィルムを引き剥がしたときの、偏光板保護フィルムの剥がれやすさを、以下の基準に基づいて評価した。
○:剥がそうとしたが、剥がれない
×:簡単に剥がれる
5)ヘイズ
得られた偏光板保護フィルムのヘイズを、JIS K−7136に準拠して、以下の手順で測定した。
i)得られた偏光板保護フィルムを、23℃55%RH下で5時間以上調湿した。その後、偏光板保護フィルム表面に付着したホコリなどをブロワー等で除去した。
ii)次いで、偏光板保護フィルムのヘイズを、23℃55%RHの条件下にて、ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)にて測定した。ヘイズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)とした。
○:ヘイズが0.35%以下
△:ヘイズが0.35%超0.5%以下
×:ヘイズが0.5%超
実施例1〜3と比較例1〜9で得られた偏光板保護フィルムの評価結果を表2に示す。
Figure 2013120278
表2に示されるように、実施例1〜3で得られるフィルムは、比較例1〜8で得られるフィルムと比べて、M1/M2が500程度と大きく、乾燥時間を十分に短縮できることがわかる。また、得られる偏光板保護フィルムは、最終厚みが35μm以下と薄く、柔軟性も有することから、リワーク性が良好であることがわかる。また、実施例1〜3で得られるフィルムは可塑剤などの添加剤を含まないため、ブリードアウトを生じにくく、偏光子を劣化させにくいこともわかる。さらに、膜厚が小さい偏光板保護フィルムは、低濃度の鹸化液(水糊)であっても、十分に鹸化できるため、偏光子との接着性も良好であることがわかる。
一方、低倍率延伸して得られた比較例1のフィルムや、膜厚が大きいウェブを高倍率延伸して得られた比較例2のフィルムは、いずれもM1/M2が100未満と小さく、乾燥時間が長いことが示唆される。比較例1では、延伸倍率が低いため、延伸後のフィルムの残留溶媒量が多く、得られる偏光板保護フィルムの残留溶媒量が多いことが示唆される。比較例2では、膜厚が大きいウェブを高倍率で延伸するため、得られる偏光板保護フィルムの膜厚も大きく、得られる偏光板保護フィルムの残留溶媒量が多いことが示唆される。また、比較例2で得られる偏光板保護フィルムは、膜厚が大きいため、低濃度のアルカリ鹸化液では偏光子と十分に接着できないことがわかる。
また、高倍率で延伸しても、延伸前のウェブ厚みが小さすぎる比較例3の製造条件では、得られる偏光板保護フィルムの厚みが小さすぎて、フィルム強度が不足することがわかる。さらに、延伸直後の乾燥温度(第3の温度T3)が高すぎる比較例4の製造条件では、得られる偏光板保護フィルムが脆くなりすぎて柔軟性がなく;延伸直後の乾燥温度(第3の温度T3)が低すぎる比較例5の製造条件では、得られる偏光板保護フィルムに残留するメチレンクロライド量が多いため、フィルム強度が低下しやすい。そのため、いずれもリワーク性が低いことがわかる。
さらに、(メタ)アクリル樹脂を含まない比較例7の偏光板保護フィルムは、偏光子劣化が生じ易く;セルロースエステルを含まない比較例6および8の偏光板保護フィルムは、水糊を用いた偏光子との接着性が低く、リワーク性も低いことがわかる。
本発明によれば、溶液製膜法において、原反フィルムに含まれる溶媒を短時間で乾燥させることができ、かつ偏光子の劣化が抑制され、リワーク性の良好な偏光板偏光板保護フィルムを製造することができる。
10 液晶表示装置
20 液晶セル
40 第一の偏光板
42 第一の偏光子
44 偏光板保護フィルム(F1)
46 偏光板保護フィルム(F2)
60 第二の偏光板
62 第二の偏光子
64 偏光板保護フィルム(F3)
66 偏光板保護フィルム(F4)
80 バックライト

Claims (5)

  1. (メタ)アクリル樹脂と、セルロースエステルと、溶媒とを含有し、前記(メタ)アクリル樹脂と前記セルロースエステルとの含有比率が、質量比で(メタ)アクリル樹脂:セルロースエステル=95:5〜30:70であるドープを得る工程と、
    前記ドープを、無端状の金属支持体上に流延する工程と、
    前記流延して得られたドープ膜を乾燥させた後、前記金属支持体から剥離してウェブを得る工程と、
    前記ウェブを第1の温度T1(℃)で乾燥させる工程と、
    前記乾燥させて得られたウェブを、第2の温度T2(℃)で、少なくとも幅方向に1.2〜2.0倍に延伸して、厚み10〜35μmの偏光板保護フィルムを得る工程と、
    前記延伸した直後に得られる偏光板保護フィルムを、第3の温度T3(℃)で乾燥させる工程と、を含み、
    前記第1の温度T1(℃)は、30<T1<80を満たし、
    前記第2の温度T2(℃)は、T1+50<T2≦T1+100を満たし、かつ
    前記第3の温度T3(℃)は、T2+10<T3<T2+50を満たす、偏光板保護フィルムの製造方法。
  2. 前記乾燥させて得られたウェブの厚みが、40〜200μmである、請求項1に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
  3. 前記溶媒が、メチレンクロライドと、炭素数1〜4の直鎖または分岐状の脂肪族アルコールとを含有し、
    前記炭素数1〜4の直鎖または分岐状の脂肪族アルコールの、前記溶媒全体における含有量が1〜40質量%である、請求項1または2に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
  4. 前記セルロースエステルは、セルロースアセテートプロピオネートである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
  5. 前記延伸した直後に得られる偏光板保護フィルムに残留するメチレンクロライドの含有量をM1(質量%)とし、当該偏光板保護フィルムを110℃で20分間乾燥させた後に残留するメチレンクロライドの含有量をM2(質量%)としたとき、100≦M1/M2≦500を満たし、かつM2≦0.1を満たす、請求項3に記載の偏光板保護フィルムの製造方法。
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