JP2013020213A - 輝度向上フィルムとその製造方法、それを含む偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

輝度向上フィルムとその製造方法、それを含む偏光板および液晶表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2013020213A
JP2013020213A JP2011155900A JP2011155900A JP2013020213A JP 2013020213 A JP2013020213 A JP 2013020213A JP 2011155900 A JP2011155900 A JP 2011155900A JP 2011155900 A JP2011155900 A JP 2011155900A JP 2013020213 A JP2013020213 A JP 2013020213A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
liquid crystal
polarizing plate
cellulose ester
polarizer
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2011155900A
Other languages
English (en)
Inventor
Koichi Saito
浩一 齋藤
Hiroshi Bekku
啓史 別宮
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Advanced Layers Inc
Original Assignee
Konica Minolta Advanced Layers Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Advanced Layers Inc filed Critical Konica Minolta Advanced Layers Inc
Priority to JP2011155900A priority Critical patent/JP2013020213A/ja
Publication of JP2013020213A publication Critical patent/JP2013020213A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Liquid Crystal (AREA)
  • Polarising Elements (AREA)

Abstract

【課題】温度や湿度などの環境条件による位相差の変動が抑制された輝度向上フィルム、および輝度ムラが抑制された液晶表示装置を提供する。
【解決手段】セルロースエステルフィルムからなるλ/4板と、前記λ/4板上に配置されたコレステリック液晶層とを含み、前記セルロースエステルフィルムに含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度が1.0超2.0未満である、輝度向上フィルム。
【選択図】図4

Description

本発明は、輝度向上フィルムとその製造方法、それを含む偏光板および液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、薄型かつ軽量であり、消費電力も低いことから、広く使用されている。液晶表示装置は、通常、液晶セルと、それを挟持する第一および第二の偏光板と、を有する。第一の偏光板は、第一の偏光子と、それを挟持する一対の偏光板保護フィルムF1およびF2と、を有し;第二の偏光板は、第二の偏光子と、それを挟持する一対の偏光板保護フィルムF3およびF4とを有する。そして、偏光板保護フィルムF1、F2、F3およびF4が、この順に配置されている。
偏光板保護フィルムとして、種々のフィルムが提案されている(例えば特許文献1)。また、バックライトの光の利用効率を高めて、液晶表示装置の輝度を向上させるための輝度向上フィルムが検討されている(例えば、特許文献2〜3)。特許文献2では、ポリカーボネートフィルムからなるλ/4板と、ホメオトロピック液晶層と、コレステリック液晶フィルムとが順に積層された輝度向上フィルムが提案されている。特許文献3では、ポリカーボネートフィルムからなるλ/4板と、光学異方性層と、コレステリック液晶フィルムとが順に積層された輝度向上フィルムが提案されている。
コレステリック液晶層は、その螺旋ピッチに応じた波長領域の円偏光のみを選択的に反射する性質を有する。それにより、一定の波長帯域の円偏光のみを透過分離し、残りを反射する機能を有する。そして、コレステリック液晶層を透過した円偏光は、λ/4板によって直線偏光に変換されて偏光子の透過軸を透過する。一方、コレステリック液晶層を反射した円偏光は、反射板で反射されて光源として再利用される。
ところで、特許文献2および3の輝度向上フィルムを構成するλ/4板は、フィルムのMD方向またはTD方向に延伸されたフィルムであるため、遅相軸がフィルムのMD方向またはTD方向と略平行であった。そのため、偏光子と貼り合わせて円偏光板を作製するためには、貼り合わされるλ/4板の遅相軸が、その長手方向または幅方向に対して斜めになるように切り取る必要があった。また、λ/4板がポリカーボネートフィルムであるため、鹸化処理によって偏光子と貼り合わせすることができなかった。そのため、製造工程が複雑であるだけでなく、生産性が低かった。
これに対して、セルロースエステルフィルムからなるλ/4板と、コレステリック液晶層とが積層された輝度向上フィルムが提案されている(特許文献4)。この輝度向上フィルムを構成するλ/4板は、斜め方向に延伸されたフィルムであるため、遅相軸がフィルムのMD方向またはTD方向に対して斜めである。そのため、偏光子とロールtoロールで貼り合わせることで、円偏光板を作製することができる。また、λ/4板がセルロースエステルフィルムであるため、鹸化処理によって偏光子と貼り合わせることもできる。そのため、製造工程が簡易であるだけでなく、生産性を向上できる。
特表2010−529216号公報 特開2003−177242号公報 特開2006−284903号公報 特開2009−258217号公報
しかしながら、λ/4板がセルロースエステルフィルムであると、温度や湿度などの環境条件によって位相差が変動しやすかった。また、セルロースエステルフィルムに添加されている低分子量の添加剤がブリードアウト(溶出)し、セルロースエステルフィルム上に配置されるコレステリック液晶層のコレステリック液晶の配向ムラを生じさせることがあった。これらの要因により、液晶表示装置の輝度ムラを生じることがあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、少なくとも温度や湿度などの環境条件による位相差の変動が抑制された輝度向上フィルムを提供すること、それにより輝度ムラが抑制された液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明者らは、温度や湿度などの環境条件によるセルロースエステルフィルムの位相差の変動は、セルロースエステルフィルムの総アシル基置換度を極端に低くして配向度を高めて、膜厚を薄くすることによって低減できることを見出した。さらに、コレステリック液晶層におけるコレステリック液晶の配向ムラは、セルロースエステルフィルムに含まれる添加剤を高分子量として、ブリードアウトを抑制することによって低減できることを見出した。本発明はこのような知見に基づきなされたものである。
[1] セルロースエステルフィルムからなるλ/4板と、前記λ/4板上に配置されたコレステリック液晶層とを含み、前記セルロースエステルフィルムに含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度が1.0超2.0未満である、輝度向上フィルム。
[2] 前記セルロースエステルフィルムの厚みが、30〜100μmである、[1]に記載の輝度向上フィルム。
[3] 前記セルロースエステルフィルムに含まれるセルロースエステルの炭素数3以上のアシル基の置換度が0.9超2.0未満である、[1]または[2]に記載の輝度向上フィルム。
[4] 前記セルロースエステルフィルムが、重量平均分子量2000〜10000の(メタ)アクリレート重合体またはポリエステル化合物をさらに含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の輝度向上フィルム。
[5] 偏光子と、前記偏光子の一方の面に配置された[1]〜[4]のいずれかに記載の輝度向上フィルムと、を含み、前記輝度向上フィルムのλ/4板が、前記偏光子側に配置され、かつ前記輝度向上フィルムのλ/4板の面内の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とが10°〜80°で交差している、偏光板。
[6] 前記偏光子の他方の面に配置された偏光板保護フィルムをさらに有し、前記偏光板保護フィルムが(メタ)アクリレート樹脂フィルムである、[5]に記載の偏光板。
[7] 第一の偏光板、液晶セル、第二の偏光板およびバックライトを、視認側からこの順に含む液晶表示装置であって、前記第二の偏光板は、第二の偏光子と、前記第二の偏光子の前記バックライト側の面に配置された[1]〜[4]のいずれかに記載の輝度向上フィルムを含み、前記輝度向上フィルムのλ/4板が前記第二の偏光子側に配置され、かつ前記輝度向上フィルムのλ/4板の面内の遅相軸と前記第二の偏光子の吸収軸とが10°〜80°で交差している、液晶表示装置。
[8] 前記液晶セルは、画素電極および対向電極が配置された第一の基板と、それと対向する第二の基板と、前記第一および第二の基板間に挟持され、電圧無印加時に前記基板に対して水平に配向した液晶分子を含む液晶層とを有し、前記第二の偏光板は、前記第二の偏光子の前記液晶セル側の面に配置された偏光板保護フィルムをさらに有し、かつ前記偏光板保護フィルムが(メタ)アクリレート樹脂フィルムである、[7]に記載の液晶表示装置。
[9] 総アシル基置換度が1.0超2.0未満であるセルロースエステルを主成分として含むウェブを、ウェブの搬送方向に対して斜め方向に延伸してλ/4板を得るステップと;前記λ/4板上に、重合性メソゲン化合物と、重合性カイラル剤と、光異性化材料とを含む混合物を塗布した後、重合させてコレステリック液晶層を形成するステップと;を有する、輝度向上フィルムの製造方法。
本発明の輝度向上フィルムは、少なくとも温度や湿度などの環境条件による位相差の変動が抑制されている。それにより、本発明の輝度向上フィルムを含む液晶表示装置は、輝度ムラが抑制されている。
延伸装置の一例を示す模式図である。 一対のレールの把持手段を示す模式図である。 一対のレールの配置態様を説明する模式図である。 本発明に係る偏光板の一実施形態を示す模式図である。 本発明に係る偏光板の一実施形態を示す模式図である。 本発明に係る液晶表示装置の一実施形態の基本構成を示す模式図である。 実施例の輝度向上フィルムの輝度ムラの評価系を示す模式図である。
1.輝度向上フィルム
本発明の輝度向上フィルムは、λ/4板と、その上に配置されたコレステリック液晶層とを含む。
λ/4板について
本発明におけるλ/4板は、セルロースエステルを主成分とするセルロースエステルフィルムである。セルロースエステルフィルムに含まれるセルロースエステルは、炭素数2〜22の脂肪族カルボン酸エステルまたは芳香族カルボン酸エステルであり、好ましくは炭素数7以下の脂肪族カルボン酸エステルである。
セルロースエステルに含まれる脂肪族アシル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、環を形成してもよい。通常、脂肪族アシル基の炭素数が多すぎると、レターデーションが発現しにくい。そのため、脂肪族アシル基の炭素数は、2〜7であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることがさらに好ましい。脂肪族アシル基は、一種類だけでも、二種類以上であってもよい。
セルロースエステルの例には、セルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレートなどが含まれ、好ましくはセルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートであり、より好ましくはセルロースプロピオネート、セルロースアセテートプロピオネートである。
本発明では、温度や湿度の影響によるセルロースエステルフィルムの位相差の変動を低減するために、セルロースエステルフィルムの厚みをできるだけ薄くすることが好ましい。一方で、フィルム厚みが薄いと、レターデーションが得られにくい。そのため、セルロースエステルの総アシル置換度を低くすることで、セルロースエステルの配向性を高めて、高いレターデーションを発現させることが好ましい。
即ち、セルロースエステルの総アシル基置換度は、フィルム厚みが薄くても高いレターデーションRを発現させるために、1.0超2.0未満であることが好ましく、1.6〜1.9であることがより好ましい。また、セルロースエステルフィルムの吸湿性を低下させたり、フィルムを柔らかくして延伸しやすくしたりするためなどから、脂肪族アシル基のうち、炭素数3以上のアシル基の置換度が0.9超2.0未満であることが好ましく、1.5〜1.9であることがより好ましい。セルロースエステルのアシル基置換度は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)は、6.0×10〜3.0×10であることが好ましく、7.0×10〜2.0×10であることがより好ましい。セルロースエステルの重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製)を3本接続して使用する。
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standardポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1.0×10〜5.0×10までの13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に選択することが好ましい。
セルロースエステルの粘度平均重合度は、200〜800であることが好ましく、250〜650であることがより好ましく、250〜450であることがさらに好ましく、250〜400であることが特に好ましい。セルロースエステルの粘度平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に従って測定することができる。粘度平均重合度の測定方法は、特開平9−95538号公報にも記載されている。
セルロースエステルは、公知の方法で合成することができる。具体的には、セルロースと、少なくとも酢酸または無水酢酸を含む、炭素原子数3以上の有機酸またはその無水物と、をエステル化反応させて合成することができる(特開平10−45804号に記載の方法を参照)。
原料となるセルロースは、例えば綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)およびケナフなどを用いることができる。
セルロースエステルフィルムは、必要に応じて添加剤をさらに含んでもよい。添加剤の例には、(メタ)アクリレート重合体やポリエステル化合物などが含まれる。(メタ)アクリレート重合体やポリエステル化合物は、溶出(ブリードアウト)を抑制するためには、高分子量であることが好ましい。
(メタ)アクリレート重合体
(メタ)アクリレート重合体は、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、または(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体でありうる。共重合体における(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の割合は50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
共重合体における共重合体モノマーの例には、アルキル部分の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート;アルキル部分の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート;アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル;無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等、アクリロイルモルフォリン(ACMO)等のアクリルアミド誘導体等;N−ビニルピロリドン(VP)等が含まれる。これらは、一種類で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのなかでも、共重合体の耐熱分解性や流動性を高める観点などから、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドンが好ましく、セルロースエステルとの相溶性を高める観点などから、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリロイルモルフォリンおよびN−ビニルピロリドンがより好ましい。
(メタ)アクリレート重合体の重量平均分子量Mwは、いずれも2000〜10000であることが好ましく、3000〜8000であることがより好ましい。重量平均分子量Mwが2000未満である(メタ)アクリレート重合体は、セルロースエステルフィルムから溶出しやすいためハジキが生じやすい。そのため、セルロースエステルフィルム上に形成されるコレステリック液晶の配向ムラを生じやすい。一方、重量平均分子量Mwが10000超である(メタ)アクリレート重合体は、フィルムのレターデーションの発現性を低下させることがある。重量平均分子量の測定は、前述のセルロースエステルの重量平均分子量の測定方法と同様にして測定することができる。
(メタ)アクリレート重合体は、任意の方法;例えば懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合などによって製造されうる。
ポリエステル化合物
ポリエステル化合物は、下記一般式(1)で表されるポリエステル化合物であることが好ましい。
一般式(1)
Figure 2013020213
式(1)中、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基または炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基を表す。Gは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基、または炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。Bは、水素原子またはカルボン酸から誘導される1価の基を表す。nは、1以上の整数を表す。
Aの、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれ、特にコハク酸、アジピン酸が好ましい。Aにおける炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれ、特にフタル酸、テレフタル酸が好ましい。
Gの、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、および1,12-オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。特に、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコールが好ましい。
Gの、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3-ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基であることが好ましい。ポリエステル化合物の、セルロースエステルとの相溶性を高めるためである。
Bの、カルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、およびアセトキシ安息香酸などの芳香族カルボン酸から誘導される1価の基や;酢酸、プロピオン酸、および酪酸などの脂肪族カルボン酸などから誘導される1価の基が含まれる。特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸または安息香酸から誘導される1価の基が好ましい。
ポリエステル化合物は、logP(オクタノール−水分配係数)が0以上7未満であることが好ましい。logPが0未満であるポリエステル化合物は、水溶性が高いため、配向乱れを生じやすい。一方、logPが7以上であるポリエステル化合物は、配向性が低いため、所望の位相差を発現しにくい。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法で測定することができる。
ポリエステル化合物の重量平均分子量Mwは、2000〜10000であることが好ましく、3000〜8000であることがより好ましい。重量平均分子量Mwが2000未満であるポリエステル化合物は、セルロースエステルフィルムから溶出しやすいため、コレステリック液晶をはじいて配向ムラを生じやすい。一方、重量平均分子量Mwが10000超であるポリエステル化合物は、フィルムのレターデーションの発現性を低下させることがある。
ポリエステル化合物の酸価は、それを含むセルロースエステルフィルムと、ハードコート層などの他の機能層との密着性を高めうる観点などから、0.5mgKOH/g以下であることが好ましく、0.3mgKOH/g以下であることがより好ましい。ポリエステル化合物の酸価とは、試料1g中に含まれる酸(試料中に存在するカルボキシル基)を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数として定義される。ポリエステル化合物の酸価は、JIS K0070に準拠して測定されうる。
ポリエステル化合物の水酸基価は、セルロースエステルとの相溶性を高める観点などから、25mgKOH/g以下であることが好ましく、15mgKOH/g以下であることがより好ましい。ポリエステル化合物の水酸基価は、試料1gを無水酢酸と反応させてアセチル化させたとき、未反応の酢酸を中和するために必要な水酸化カリウムのミリグラム数として定義される。ポリエステル化合物の水酸基価は、JIS K 0070(1992)に準拠して測定されうる。
式(1)で示されるポリエステル化合物の具体例を、以下の表1に示す。表1において、TPA:テレフタル酸、PA:フタル酸、SA:コハク酸、AA:アジピン酸、EG:エチレングリコール、1,2PG:1,2−プロピレングリコールを示す。
Figure 2013020213
セルロースエステルフィルムにおける(メタ)アクリレート重合体またはポリエステル化合物の含有量は、セルロースエステルに対して0.1〜30質量%とすることが好ましく、0.5〜20質量%であることがより好ましい。(メタ)アクリレート重合体またはポリエステル化合物の含有量が30質量%超であると、これらの化合物が溶出(ブリードアウト)し、コレステリック液晶層における液晶の配向ムラを生じやすくなる。
セルロースエステルフィルムは、前述の(メタ)アクリレート重合体やポリエステル化合物以外の他の添加剤をさらに含んでもよい。他の添加剤の好ましい例には、セルロースエステルとの相溶性が高いことなどから、一般式(2)で示される糖エステル化合物が含まれる。
一般式(2)
Figure 2013020213
一般式(2)のR〜Rは、置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基、または置換もしくは無置換のアリールカルボニル基を表わす。R〜Rは、互いに同じであっても、異なってもよい。
置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基は、炭素原子数2以上の置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基であることが好ましい。置換もしくは無置換のアルキルカルボニル基の例には、メチルカルボニル基(アセチル基)が含まれる。アルキル基が有する置換基の例には、フェニル基などのアリール基が含まれる。
置換もしくは無置換のアリールカルボニル基は、炭素原子数7以上の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基であることが好ましい。アリールカルボニル基の例には、フェニルカルボニル基が含まれる。アリール基が有する置換基の例には、メチル基などのアルキル基が含まれる。
一般式(2)で示される化合物の平均置換度は、水溶性を確保するためには、3以上であることが好ましく、3〜6であることがより好ましい。
一般式(2)で示される化合物の具体例には、以下のものが含まれる。表中のRは、一般式(2)におけるR〜Rを表す。
Figure 2013020213
セルロースエステルフィルムは、必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、および酸化防止剤などをさらに含んでもよい。
可塑剤の例には、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤を含む)、グリコレート系可塑剤、エステル系可塑剤(脂肪酸エステル系可塑剤を含む)、およびアクリル系可塑剤などが好ましい。これらは単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールと、モノカルボン酸とのエステル化合物(アルコールエステル)であり、好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。多価アルコールエステル系化合物は、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
2価のアルコールエステル系可塑剤の例には、以下のものが含まれる。
Figure 2013020213
Figure 2013020213
Figure 2013020213
Figure 2013020213
多価カルボン酸エステル系可塑剤は、2価以上、好ましくは2〜20価の多価カルボン酸と、アルコール化合物とのエステル化合物である。多価カルボン酸は、2〜20価の脂肪族多価カルボン酸であるか、3〜20価の芳香族多価カルボン酸または3〜20価の脂環式多価カルボン酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、特に制限はないが、300〜1000であることが好ましく、350〜750であることがより好ましい。多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、ブリードアウトを抑制する観点では、大きいほうが好ましく;透湿性やセルロースエステルとの相溶性の観点では、小さいほうが好ましい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の例には、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が含まれる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤であってもよい。フタル酸エステル系可塑剤の例には、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が含まれる。
グリコレート系可塑剤の例には、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が含まれる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類の例には、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が含まれる。
エステル系可塑剤には、脂肪酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤やリン酸エステル系可塑剤などが含まれる。
脂肪酸エステル系可塑剤の例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、およびセバシン酸ジブチル等が含まれる。クエン酸エステル系可塑剤の例には、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、およびクエン酸アセチルトリブチル等が含まれる。リン酸エステル系可塑剤の例には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、およびトリブチルホスフェート等が含まれる。
可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して1〜40質量%であることが好ましい。
紫外線吸収剤は、波長400nm以下の紫外線を吸収する化合物であり、好ましくは波長370nmでの透過率が10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である化合物である。紫外線吸収剤の例には、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物および無機粉体などが含まれる。
酸化防止剤の例には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、およびトリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕などのヒンダードフェノール系化合物が含まれる。
セルロースエステルフィルムは、取扱性を向上させるために、マット剤として微粒子をさらに含んでもよい。微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。無機微粒子の例には、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウムなどが含まれる。有機微粒子の例には、架橋ポリスチレン粒子、ポリメチルメタクリレート系粒子などが含まれる。セルロースエステルフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、酸化ケイ素が好ましい。
微粒子の一次平均粒子径は、5〜400nmであることが好ましく、10〜300nmであることがより好ましい。微粒子の含有量は、フィルム全体に対して0.01〜1質量%であることが好ましい。
セルロースエステルフィルムの厚みは、温度や湿度などの条件による位相差の変動を抑制するためには、100μm以下であることが好ましく、70μm以下であることがより好ましく、60μm以下であることがさらに好ましい。一方、フィルムの機械的強度を確保するためには、セルロースエステルフィルムの厚みは、30μm以上であることが好ましく、40μm以上であることがより好ましい。
λ/4板としてのセルロースエステルフィルムは、その遅相軸が、偏光子の吸収軸と所定の角度で交差するように貼り合わされる。そのため、貼り合わされるセルロースエステルフィルムと偏光子の平面形状は矩形であり、かつそれらの長辺同士または短辺同士を揃えて貼り合わせるだけで、セルロースエステルフィルムの遅相軸と、偏光子の吸収軸とが所定の角度で交差させることが好ましい。平面形状が矩形である偏光子の吸収軸は、通常、フィルムの長さ方向または幅方向と略平行である。
そこで、平面形状が矩形であるセルロースエステルフィルムの遅相軸の方向と、フィルムの長辺または短辺と平行な方向とのなす角θsは、10°〜80°の範囲であることが好ましく、20°〜70°の範囲であることがより好ましく、30°〜60°の範囲であることがさらに好ましく、40°〜50°の範囲であることがさらに好ましい。セルロースエステルフィルムの遅相軸とは、フィルム面内の屈折率が最大となる方向の軸である。
フィルムの遅相軸のフィルムの長辺または短辺と平行な方向とのなす角θsが上記範囲にあると、セルロースエステルフィルムと偏光子とをロールtoロールで貼り合わせるだけで、セルロースエステルフィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とを所定の角度(好ましくは45°)で交差させることができる。セルロースエステルフィルムの遅相軸のなす角θsを上記範囲にするためには、後述する斜め方向の延伸を行えばよい。
セルロースエステルフィルムの遅相軸の、フィルムの長辺または短辺と平行な方向とのなす角θsは、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長590nmにて測定することができる。
セルロースエステルフィルムは、λ/4板として機能するために、面内方向のレターデーションRは120〜150nmであることが好ましい。また、厚み方向のレターデーションRtは、0〜100nmであることが好ましい。セルロースエステルフィルムのレターデーションRおよびRtは、通常、延伸条件により調整することができる。
面内方向のレターデーションRおよび厚み方向のレターデーションRtは、以下の式で表される。
=(nx−ny)×d
Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
(d:フィルムの厚み(nm)、nx:フィルム面内の遅相軸方向の屈折率、ny:フィルム面内において、遅相軸に対して直交する方向の屈折率、nz:厚み方向におけるフィルムの屈折率)
面内方向のレターデーションR、厚み方向のレターデーションRtは、例えば以下の方法によって求めることができる。
1)フィルムの平均屈折率を、屈折計により測定する。
2)王子計測機器製KOBRA 31WRにより、フィルム法線方向からの波長590nmの光を入射させたときの面内方向のレターデーションRを測定する。
3)王子計測機器製KOBRA 31WRにより、フィルム法線方向に対してθの角度(入射角(θ))から波長590nmの光を入射させたときのレターデーション値R(θ)を測定する。θは0°よりも大きく、好ましくは30°〜50°である。
4)測定されたRおよびR(θ)と、前述の平均屈折率と膜厚とから、王子計測機器製KOBRA 31WRにより、nx、nyおよびnzを算出し、Rtを算出する。レターデーションの測定は、23℃55%RH条件下で行うことができる。
セルロースエステルフィルムの、JIS Z 0208に準拠して測定される40℃、90%RHにおける透湿度は、400〜1500(g/(m・24hr))であることが好ましく、600〜1200(g/(m・24hr))であることがより好ましい。セルロースエステルフィルムの透湿度は、例えば総アシル基置換度を高くしたり、炭素数3以上のアシル基置換度の割合を多くしたり、可塑剤などの添加剤を多く含有させたりすることによって低下させることができる。
セルロースエステルフィルムは、溶液流延法または溶融流延法で製造することができ、薄膜で平面性の高いフィルムが得られるなどの観点から、溶液流延法で製造されることが好ましい。
セルロースエステルフィルムを溶液流延法により製造する工程は、1)少なくとも前述のセルロースエステルと、必要に応じて添加剤とを溶剤に溶解させてドープを調製する工程、2)ドープを無端の金属支持体上に流延する工程、3)流延したドープを乾燥してウェブとする工程、4)ウェブを金属支持体から剥離する工程、5)ウェブを延伸してフィルムを得る工程、6)フィルムをさらに乾燥する工程、7)得られたフィルムを巻取る工程、を含む。
1)ドープを調製する工程について
前述のセルロースエステルと、必要に応じて添加剤とを溶剤に溶解させてドープを調製する。ドープに含まれるセルロースエステルの濃度は、乾燥負荷を低減するためには高いことが好ましいが、セルロースエステルの濃度が高すぎると濾過しにくく、濾過精度が低下しやすくなる。このため、ドープに含まれるセルロースエステルの濃度は10〜35質量%であることが好ましく、15〜25質量%であることがより好ましい。
ドープに含まれる溶剤は、1種類でも2種以上を組み合わせたものでもよい。生産効率を高める観点では、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を組み合わせて用いることが好ましい。良溶剤とは、セルロースエステルを単独で溶解する溶剤をいい、貧溶剤とは、セルロースエステルを膨潤させるか、または単独では溶解しないものをいう。そのため、良溶剤および貧溶剤は、セルロースエステルの平均アシル基置換度(アセチル基置換度)によって異なる。
良溶剤と貧溶剤を組み合わせて用いる場合、セルロースエステルの溶解性を高めるためには、良溶剤が貧溶剤よりも多いことが好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%であることが好ましい。
良溶剤の例には、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、およびアセト酢酸メチルなどが含まれ、好ましくはメチレンクロライドまたは酢酸メチルなどである。貧溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、およびシクロヘキサノン等が含まれる。ドープ中には、水分が0.01〜2質量%含まれていることが好ましい。
セルロースエステルを溶剤に溶解させる方法は、一般的な方法であってよく、例えば加熱および加圧下で溶解させる方法、セルロースエステルに貧溶剤を加えて膨潤させた後、良溶剤をさらに加えて溶解させる方法などでありうる。なかでも、常圧における沸点以上に加熱できることから、加熱および加圧下で溶解させる方法が好ましい。具体的には、常圧下で溶剤の沸点以上であり、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を抑制できる。
加圧は、窒素ガス等の不活性気体を圧入する方法や、加熱して溶剤の蒸気圧を上昇させる方法などによって行うことができる。加熱は、外部から行うことが好ましく、例えばジャケットタイプのものは温度コントロールが容易であるため好ましい。
加熱温度は、セルロースエステルの溶解性を高める観点では、高いほうが好ましいが、高過ぎると、圧力を高める必要があり、生産性が低下する。このため、加熱温度は、45〜120℃であることが好ましく、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃であることがさらに好ましい。圧力は、設定された加熱温度において、溶剤が沸騰しないような範囲に調整される。
得られるドープには、例えば原料であるセルロースエステルに含まれる不純物などの不溶物が含まれることがある。このような不溶物は、得られるフィルムにおいて輝点異物となりうる。このような不溶物等を除去するために、得られたドープを濾過することが好ましい。
ドープの濾過は、濾紙等の濾過材によって行われる。濾過材の絶対濾過精度は、ドープに含まれる不溶物等を高度に除去するためには小さいことが好ましいが、小さすぎると目詰まりが生じやすい。このため、濾過材の絶対濾過精度は、0.008mm以下であることが好ましく、0.001〜0.008mmであることがより好ましく、0.003〜0.006mmであることがさらに好ましい。
濾過材の種類は、通常の濾過材であってよく、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾過材や、ステンレススチール等の金属製の濾過材などでありうる。なかでも、繊維の脱落等が少ない観点から、金属製の濾過材が好ましい。
ドープの濾過は、濾過前後の差圧を少なくするために、ドープの調製と同様に、加熱および加圧下で行うことが好ましい。加熱温度も、ドープの調製と同様に、溶剤の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度とすることが好ましく、具体的には45〜120℃であることが好ましく、45〜70℃であることがより好ましく、45〜55℃であることがさらに好ましい。濾圧は、低いことが好ましく、具体的には1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることがさらに好ましい。
ドープの濾過は、得られるフィルムにおける輝点異物の数が一定以下となるように行うことが好ましい。具体的には、径が0.01mm以上である輝点異物の数が、200個/cm以下、好ましくは100個/cm以下、より好ましくは50個/m以下、さらに好ましくは0〜10個/cm以下となるようにする。径が0.01mm以下である輝点異物も少ないことが好ましい。
フィルムの輝点異物の数は、以下の手順で測定することができる。
i)2枚の偏光板をクロスニコル状態に配置し、それらの間に得られたフィルムを配置する。
ii)一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察したときに、光が漏れてみえる点(異物)の数をカウントする。
2)ドープを流延する工程について
ドープが流延される金属支持体は、表面が鏡面仕上げされたものが好ましい。金属支持体の好ましい例は、ステンレススチールベルトや、鋳物で表面がメッキ仕上げされたドラムなどである。
ドープが流延される金属支持体の表面温度は、ウェブの乾燥速度を高めるためには高いことが好ましいが、高すぎるとウェブが発泡したり、ウェブの平滑性が低下したりすることがある。そのため、金属支持体の表面温度は、−50℃以上溶剤の沸点未満に設定されることが好ましい。ウェブの温度は、0〜55℃であることが好ましく、25〜50℃であることがさらに好ましい。
金属支持体の表面温度の制御方法は、特に制限されないが、温風または冷風を吹きかける方法や、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法などであってよい。熱を効率的に伝達でき、金属支持体の温度が一定になるまでの時間を短くできる観点などから、温水を金属支持体の裏側に接触させる方法が好ましい。
3)流延したドープを乾燥する工程について
流延したドープを、残留溶媒が一定以下となるように乾燥させる。金属支持体からウェブを剥離するときのウェブの残留溶媒量は、得られるフィルムの平面性を高めるためには10〜150質量%であることが好ましく、20〜40質量%(低残存溶媒量)または60〜130質量%(高残存溶媒量)であることがより好ましく、20〜30質量%(低残存溶媒量)または70〜120質量%(高残存溶媒量)であることがさらに好ましい。
ウェブの残留溶媒量は、下記式で定義される。下記式において、Mは、製造中のウェブまたは製造後のフィルムから任意の時点で採取した試料の質量を示す。Nは、前記試料を115℃で1時間加熱した後の、試料の質量を示す。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
4)ウェブを剥離する工程について
ウェブの剥離は、一般的な方法で行われるが、剥離ロールにより剥離することが好ましい。剥離ロールによる剥離は、ウェブが、金属支持体の下面に至り、ほぼ一巡したところで行うことが好ましい。ウェブの剥離張力は、300N/m以下とすることが好ましい。
ウェブの剥離は、前記3)の工程でウェブを乾燥した後、剥離する方法だけでなく、前記2)の工程の後に、乾燥させることなくキャスト膜を冷却して、残留溶媒を多く含む状態のままゲル化させた後に、剥離してもよい。
剥離されたウェブをさらに乾燥してもよい。剥離されたウェブの乾燥は、一般的に、ウェブを搬送させながら行うことができる。具体的には、剥離されたウェブを、上下に配置した多数のロールにより搬送しながら乾燥させるロール乾燥方式や、テンター方式などがある。
ウェブの乾燥方法は、特に制限されないが、一般的に、熱風、赤外線、加熱ロールおよびマイクロ波等で乾燥する方法であってよく、簡便である点から、熱風で乾燥する方法が好ましい。ウェブの乾燥温度は、40℃から200℃にかけて、段階的に高くすることが好ましい。
5)ウェブを延伸する工程について
ウェブの延伸により、所望の面内方向のレターデーション値Rを有するセルロースエステルフィルムを得る。本発明においては、フィルムの幅方向に対してフィルム面内の遅相軸が10°〜80°の角度をなすように角度を調整して延伸することが好ましい。
角度を調整して延伸する装置は、フィルムの搬送方向に対して斜め方向に延伸する機構を有していればよく、必要に応じてフィルムの搬送方向または幅方向に延伸または収縮を規制する機構をさらに有してもよい。そのような延伸装置の例には、特開2003−340916号公報の実施例1に記載の延伸装置、特開2005−284024号公報の図1に記載の延伸装置、特開2007−30466号公報に記載の延伸装置、特開2007−94007号公報の実施例1に使用された延伸装置等が含まれる。ウェブの延伸は、製膜後にオンラインで行ってもよいし、オフラインで行ってもよい。
図1は、本発明に用いられる延伸装置の一例を示す模式図である。図1に示されるように、延伸装置10は、ウェブ12を引き出す引き出しロール14と、巻き取りロール16と、それらの間に配置され、ウェブ12の幅方向両端を把持する把持手段(不図示)を走行させる一対のレール18と、一対のレール18を覆う恒温室20と、を有する。
図2は、一対のレール18の把持手段を示す模式図である。図2に示されるように、一対のレール18は、ウェブの幅方向両端を把持する複数の把持手段18Aを有する。把持手段18Aは、レール18上を矢印の方向に走行する。破線26は、把持手段18Aの対応関係を示す。
図3は、一対のレール18の配置態様を説明する模式図である。図3に示されるように、一対のレール18は、恒温室20内の延伸ゾーン20Bにおいて、延伸後のフィルムの遅相軸sがフィルムの幅方向に対して所定の角度となるように設けられている。
恒温室20は、予熱ゾーン20A、延伸ゾーン20Bおよび固定ゾーン20Cを有する。予熱ゾーン20Aは、ウェブの搬送方向aに対して直交する方向のウェブ長さを実質的に変えずに、ウェブを加温しながらウェブを搬送するゾーンである。予熱ゾーン20Aのウェブの搬送方向aは、ロールからウェブが引き出される方向に平行であり、通常、引き出しロール14の回転軸と直交している。
延伸ゾーン20Bは、ウェブの搬送方向bに対して直交する方向のウェブ長さを大きくしながらウェブを搬送するゾーンである。延伸ゾーン20Bにおけるウェブの搬送方向bは、延伸ゾーン20Bが、予熱ゾーン20Aと延伸ゾーン20Bの境目におけるウェブの中点から延伸ゾーン20Bと固定ゾーン20Cの境目におけるウェブの中点に結んだ直線の方向である。
固定ゾーン20Cは、ウェブの搬送方向cに対して直交する方向のウェブ長さを実質的に変えずに、ウェブを冷却しながらウェブを搬送するゾーンである。固定ゾーン20Cのウェブの搬送方向cは、ロールにウェブが巻き取られる方向に平行であり、通常、巻き取りロール16の回転軸と直交している。
予熱ゾーン20Aと延伸ゾーン20Bとの境目、および延伸ゾーン20Bと固定ゾーン20Cとの境目には、ウェブが通過できる大きさのスリットを有する仕切板22と24が設けられている。予熱ゾーン20Aと延伸ゾーン20Bとの境目に設けられる仕切板22の面、および延伸ゾーン20Bと固定ゾーン20Cとの境目に設けられる仕切板24の面は、固定ゾーン20Cのウェブの搬送方向cに対して直交するように配置されることが好ましい。また、予熱ゾーン20A、延伸ゾーン20Bおよび固定ゾーン20Cにおけるウェブ面は互いに略平行であることが好ましい。
固定ゾーン20Cのウェブの搬送方向cは、延伸ゾーン20Bのウェブの搬送方向bに対して傾いている。そして、延伸ゾーン20Bにおいて、延伸後のフィルムの遅相軸sが、フィルム幅方向に対して所定の角度となるように斜め延伸されるようになっている。
このように構成された延伸装置10では、ウェブ12を引き出しロール14から引き出した後、一対のレール18を走行する把持手段によって把持しながら、恒温室20の予熱ゾーン20Aに搬送する。予熱ゾーン20Aでは、ウェブ12を延伸に適した温度に予熱した後、延伸ゾーン20Bに搬送して所望の延伸倍率に斜め方向に延伸する。次いで、延伸後のフィルムを固定ゾーン20Cに搬送して、延伸状態を固定した後、把持手段から開放し、巻き取りロール16にて巻き取る。このようにして得られたフィルムは、幅方向に対して角度θs傾いた分子配向軸(遅相軸)sを有する。
一対のレール18上を走行する把持手段の走行速度はフィルム両端で略等しく、かつ延伸開始点から延伸終了点(延伸ゾーン20B)における把持手段の走行距離はフィルム両端で異なる。把持手段の走行速度は、通常10〜100m/分程度としうる。
ウェブの延伸は、少なくともウェブの幅方向または搬送方向に対して斜め方向に延伸すればよく、必要に応じて、斜め方向に延伸する前に、ウェブの幅方向(横方向)または搬送方向(縦方向)にさらに延伸してもよい。
ウェブの延伸倍率は、最終的にはウェブの幅方向(横方向)に対して斜め方向に1.3〜3.0倍とすることが好ましく、1.5〜2.5倍とすることがより好ましい。さらに、ウェブの延伸を、ウェブの搬送方向または幅方向にも行う場合、ウェブの搬送方向または幅方向の延伸倍率は1.1〜2.0倍とすることが好ましい。
ウェブの延伸温度は、150〜210℃であることが好ましく、160〜200℃あることがより好ましく、170〜200℃であることがさらに好ましい。
延伸されるウェブの残留溶媒は、20質量%以下であることが好ましく、15質量%以下であることが好ましい。具体的には、延伸されるウェブの、155℃における残留溶媒が11質量%であること、もしくは155℃における残留溶媒が2質量%であることが好ましい。または、延伸されるウェブの、160℃における残留溶媒が11質量%であること、もしくは160℃で残留溶媒が1%未満であることがより好ましい。
延伸後に得られたフィルムは、必要に応じてさらに乾燥された後、セルロースエステルフィルムとして巻き取られる。
コレステリック液晶層について
コレステリック液晶層は、少なくとも(a)重合性メソゲン化合物、(b)重合性カイラル剤、および(c)光異性化材料を含む液晶混合物を、紫外線照射によって重合させたものであることが好ましい。
(a)重合性メソゲン化合物は、環を含有する繰り返し単位からなるメソゲン基と、該メソゲン基と直接またはスペーサ部を介して結合する一以上の重合性官能基と、を有する化合物である。メソゲン基を構成する環を含有する繰り返し単位の例には、ビフェニル、フェニルベンゾエート、フェニルシクロヘキサン、アゾキシベンゼン、アゾメチン、アゾベンゼン、フェニルピリミジン、ジフェニルアセチレン、ジフェニルベンゾエート、ビシクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン、およびターフェニルなどから誘導される基が含まれる。メソゲン基の末端の炭素原子に、例えばシアノ基、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子などの置換基が置換していてもよい。
重合性官能基の例には、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基などが含まれ、なかでもアクリロイル基、メタクリロイル基である。
(a)重合性メソゲン化合物におけるメソゲン基と重合性官能基とは、前述した通り、直接結合していてもよいし、スペーサ部を介して結合していてもよい。スペーサ部は、分子に屈曲性を付与するためなどから、ポリメチレン鎖、ポリオキシメチレン鎖などであってよい。ポリメチレン鎖を構成する構造単位の繰り返し数は、好ましくは0〜20であり、より好ましくは2〜12である。ポリオキシメチレン鎖を構成する構造単位の繰り返し数は好ましくは0〜10であり、より好ましくは1〜3である。
重合性官能基を1つ有する(a)重合性メソゲン化合物は、例えば下記一般式(3)で表される化合物でありうる。下記一般式(3)において、Rは水素原子またはメチル基を示し;nは1〜5の整数を示す。
Figure 2013020213
一般式(3)で表される化合物の具体例には、以下のものが含まれる。
Figure 2013020213
重合性官能基を2つ有する(a)重合性メソゲン化合物の例には、BASF社製LC242などが含まれる。
(b)重合性カイラル剤は、1以上の重合性官能基を有し、かつ分子構造中に不斉炭素原子を有する官能基(光学活性基)を有する化合物である。重合性官能基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、ビニルエーテル基等が含まれ、好ましくはアクリロイル基、メタクリロイル基である。(b)重合性カイラル剤の例には、BASF社製LC756が含まれる。
(b)重合性カイラル剤の含有量は、(a)重合性メソゲン化合物と(b)重合性カイラル剤の合計100質量部に対して、1〜20質量部程度であることが好ましく、3〜7質量部であることがより好ましい。(a)重合性メソゲン化合物と(b)重合性カイラル剤の含有比率によって、得られるコレステリック液晶分子の螺旋ねじり力(HTP)が調整される。(b)重合性カイラル剤の含有量を上記範囲とすることで、得られるコレステリック液晶層の反射スペクトルが、可視全域をカバーできるように反射帯域を選択することができる。
(c)光異性化材料は、光異性化反応するものであればよい。(c)光異性化材料の例には、スチルベンとその誘導体、アゾベンゼンとその誘導体、スピロピラン誘導体、スピロオキサジン誘導体、ジアリールエテン誘導体、フルギド誘導体、シクロファン誘導体、カルコン誘導体などが含まれる。なかでも、スチルベン、アゾベンゼンおよびこれらの誘導体が好ましい。
(c)光異性化材料の含有量は、(a)重合性メソゲン化合物と(b)重合性カイラル剤の合計100質量部に対して0.1〜20質量部程度であることが好ましく、2〜10質量部であることがより好ましい。
コレステリック液晶層は、単層で構成されてもよいし、複数の層で構成されてもよい。コレステリック液晶層が複数の層で構成される場合、可視光領域の広い波長範囲の円偏光を選択的に反射させるためには、各層の反射波長が異なることが好ましい。
コレステリック液晶層の厚みは、1〜20μm程度であることが好ましく、2〜10μm程度であることがより好ましい。厚みが1μm未満であると、反射される円偏光の波長帯域は比較的広いが、偏光度が低下しやすい。一方、厚みが20μm超であると、反射される円偏光の波長帯域と偏光度の両方を十分に高めることができない。
本発明の輝度向上フィルムは、コレステリック液晶層の表面を保護するために、保護フィルムまたは保護層をさらに有してもよい。保護フィルムまたは保護層は、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性などに優れるものが好ましい。保護フィルムの材料の例には、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル系ポリマー、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマーなどが含まれる。
保護フィルムの厚さは、通常、500μm以下であり、好ましくは1〜300μmであり、より好ましくは5〜200μmである。
本発明の輝度向上フィルムに含まれるλ/4板としてのセルロースエステルフィルムは、総アシル基置換度が低いことから、延伸によって高いレターデーションが得られやすい。そのため、λ/4板としてのセルロースエステルフィルムの厚みを薄くすることができ、温度や湿度の影響による膜厚の変動を少なくすることができる。それにより、λ/4板の位相差の変動を少なくすることができ、表示装置における輝度ムラを低減することができる。
一方、総アシル基置換度が低いセルロースエステルフィルムは吸湿しやすいため、吸湿を抑制するための添加剤などを含有することがある。本発明では、セルロースエステルフィルムに添加する添加剤を高分子量にすることで、添加剤のブリードアウト(溶出)を抑制できる。そのため、セルロースエステルフィルム上にコレステリック液晶層を形成する際に、ブリードアウトした添加剤によってコレステリック液晶がはじかれるのを抑制することができる。したがって、コレステリック液晶の配向ムラを抑制でき、それによる輝度ムラを抑制することができる。
2.輝度向上フィルムの製造方法について
本発明の輝度向上フィルムは、λ/4板としてのセルロースエステルフィルムを準備するステップと、セルロースエステルフィルム上に直接または配向膜を介してコレステリック液晶層を形成するステップと、を経て製造することができる。λ/4板としてのセルロースエステルフィルムは、前述した通り、総アシル基置換度が1.0超2.0未満であるセルロースエステルを主成分として含むウェブを、ウェブ搬送方向に対して斜め方向に延伸して得られたものである。
コレステリック液晶層は、前述の(a)重合性メソゲン化合物、(b)重合性カイラル剤、および(c)光異性化材料を含む液晶混合物をセルロースエステルフィルム上に塗布した後、紫外線照射して重合させることによって形成することができる。
液晶混合物は、前述の(a)重合性メソゲン化合物、(b)重合性カイラル剤、および(c)光異性化材料以外にも、必要に応じて(d)光重合開始剤や(e)溶媒をさらに含んでもよい。(d)光重合開始剤の例には、チバ・ジャパン社製のイルガキュア184、イルガキュア907、イルガキュア369、イルガキュア651等が含まれる。(d)光重合開始剤の含有量は、(a)重合性メソゲン化合物と(b)重合性カイラル剤の合計100質量部に対して0.01〜10質量部程度であることが好ましく、0.05〜5質量部であることがより好ましい。
(d)光重合開始剤は、紫外線の照射条件や、(c)光異性化材料の含有量によっては、必ずしも含有されてなくてよい。たとえば、(a)重合性メソゲン化合物と(b)重合性カイラル剤との反応速度が十分に速い場合には、(d)光重合開始剤は不要である。
(e)溶媒の例には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどが含まれる。液晶混合物が溶液である場合の固形分濃度は、通常3〜50質量%程度としうる。
液晶混合物を、セルロースエステルフィルム上に直接塗布しても、配向膜を介して塗布してもよいが、コレステリック液晶の配向性を高めるためには、配向膜を介して塗布することが好ましい。
配向膜は、ポリイミドやポリビニルアルコール等からなる薄い塗膜をレーヨン布などでラビング処理して得られるラビング膜;斜方蒸着膜;シンナメートやアゾベンゼンなど光架橋基を有するポリマーあるいはポリイミドに偏光紫外線を照射して得られる光配向膜などであってよい。
液晶混合物の塗布は、例えば押出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、インクジェット法等によって行うことができる。
紫外線の光源の例には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が含まれ、さらにはArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も含まれる。
紫外線の照度は、0.1〜30mW/cm程度であることが好ましく、1〜20mW/cmであることがより好ましい。照射時間は、好ましくは5分間以下、より好ましくは3分間以下、さらに好ましくは1分間以下である。なお、紫外線が照射される面(例えば液晶混合物の塗膜面)とは反対側の面(例えばセルロースエステルフィルムの非塗布面)から加熱することで、液晶混合物におけるモノマー成分の拡散速度を高めることができ、短時間で、反射波長が広帯域であるコレステリック液晶層を得ることができる。
加熱温度は、液晶温度以上であればよく、通常140℃以下であり、好ましくは60〜140℃程度であり、より好ましくは80℃〜120℃である。加熱温度が60℃未満であると、(a)重合性メソゲン化合物の拡散速度が遅いため、反射波長が広帯域であるコレステリック液晶層を得るのに長時間を要する。
3.偏光板
本発明の偏光板は、偏光子と、その一方の面に直接または他のフィルムまたは層を介して配置された本発明の輝度向上フィルムとを含み、必要に応じて偏光子の他方の面に偏光板保護フィルムをさらに含んでもよい。
偏光子について
偏光板を構成する偏光子は、一定方向の偏波面の光のみを通過させる素子である。偏光子の代表的な例は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものと、がある。
偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色して得られるフィルムであってもよいし、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の厚さは、5〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール水溶液を製膜したものであってもよい。ポリビニルアルコール系フィルムは、偏光性能および耐久性能に優れ、色斑が少ないなどことから、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましい。エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムの例には、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載されたエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のフィルムが含まれる。
二色性色素の例には、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素およびアントラキノン系色素などが含まれる。
輝度向上フィルムについて
本発明の輝度向上フィルムは、偏光子上に直接または他のフィルムまたは層を介して配置されうる。他のフィルムの例には、一般的な偏光板保護フィルム(TACフィルムなど)やλ/2板などが含まれる。そして、本発明の輝度向上フィルムは、それに含まれるλ/4板が偏光子側となるように配置され、λ/4板の遅相軸が、偏光子の吸収軸と所定の角度(例えば10°〜80°の範囲)で交差するように配置される。
偏光板保護フィルムについて
偏光子を挟持する一対の偏光板保護フィルムの他方は、前述の輝度向上フィルム以外の偏光板保護フィルムである。輝度向上フィルム以外の偏光板保護フィルムは、液晶セルの表示方式などに応じて選択されればよく、セルロースエステルフィルムや(メタ)アクリレート樹脂フィルムなどであってよい。
セルロースエステルフィルムの市販品の例には、コニカミノルタ タック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、KC6UA、KC4UA、KC4UAW−H−C、KC4UASW−H−C、KC4CZ、KC4HR、KC4KR(コニカミノルタオプト(株)製)などが含まれる。
(メタ)アクリレート樹脂フィルムは、(メタ)アクリル酸エステルの単独重合体、または(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体を主成分として含む。共重合体における(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位の割合は50〜99質量%であることが好ましい。
(メタ)アクリル酸エステルの例には、(メタ)アクリル酸のC1−C18アルキルエステルが含まれ、好ましくは(メタ)アクリル酸のC1−C6アルキルエステルであり、より好ましくは(メタ)アクリル酸メチルである。
(メタ)アクリル酸エステルと他の共重合モノマーとの共重合体における共重合モノマーの例には、アルキル部分の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート;アルキル部分の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート;アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル;無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル等が含まれる。なかでも、共重合体の耐熱分解性や流動性を高める観点などから、アルキル部分の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。共重合体モノマーは、一種類であっても、二種類以上を組み合わせてもよい。
アルキル部分の炭素数が1〜18のアルキルアクリレートの例には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が含まれ、好ましくはメチルアクリレートまたはn−ブチルアクリレートである。
(メタ)アクリル酸エステルの共重合体は、ラクトン環構造を含有する重合体であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステルの共重合体に含まれるラクトン環構造は、例えば下記一般式(4)で表される構造である。
一般式(4)
Figure 2013020213
式(4)において、R〜Rは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1〜20の有機残基を示す。有機残基は、酸素原子を含んでいてもよい。有機残基の例には、直鎖もしくは分岐状のアルキル基、直鎖もしくは分岐状のアルキレン基、アリール基、−OAc基、−CN基などが含まれる。式(4)で示されるラクトン環構造は、後述するように、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造である。
ラクトン環構造を含有する重合体は、(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し構造をさらに含む。(メタ)アクリル酸エステルの例には、前述と同様のものが含まれる。
ラクトン環構造を含有する重合体は、必要に応じて水酸基を含有するモノマー、不飽和カルボン酸、一般式(5)で表されるモノマーなどに由来する繰り返し単位がさらに含まれていてもよい。下記一般式(5)において、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、−OAc基、−CN基、−CO−R基、または−C−O−R基(Rは水素原子または炭素数1〜20の有機残基)を表す。
一般式(5)
Figure 2013020213
ラクトン環構造を含有する重合体における、式(4)で表されるラクトン環構造の含有割合は、好ましくは5〜90質量%であり、より好ましくは20〜90質量%であり、さらに好ましくは30〜90質量%であり、特に好ましくは40〜80質量%である。ラクトン環構造の含有割合が90質量%超であると、成形加工性が低く、得られるフィルムの可撓性も低いことが多い。ラクトン環構造の含有割合が5質量%未満であると、必要な位相差を有するフィルムが得られにくく、耐熱性、耐溶剤性、表面硬度が十分でないことがある。
ラクトン環構造を含有する重合体における、(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位の含有割合は、好ましくは10〜95質量%であり、より好ましくは10〜80質量%であり、さらに好ましくは10〜65質量%であり、特に好ましくは20〜60質量%である。
ラクトン環構造を含有する重合体における、水酸基含有モノマー、不飽和カルボン酸または一般式(5)で表されるモノマーに由来する繰り返し単位の含有割合は、それぞれ独立して、好ましくは0〜30質量%であり、より好ましくは0〜20質量%であり、さらに好ましくは0〜10質量%である。
ラクトン環構造を含有する重合体は、少なくとも、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルと、それ以外の(メタ)アクリル酸エステルとを含むモノマー成分を重合反応させて、分子鎖中に水酸基とエステル基とを有する重合体を得るステップ;得られた重合体を加熱処理してラクトン環構造を導入するステップ;を経て製造されうる。
水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルの例には、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチル、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エチルが含まれ、好ましくは2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルである。
偏光板がIPS方式の液晶セルに用いられる場合、輝度向上フィルム以外の偏光板保護フィルムは、好ましくは(メタ)アクリレート樹脂フィルムであり、より好ましくはラクトン環含有(メタ)アクリレート樹脂フィルムである。後述するように、IPS方式の液晶表示装置では、少なくとも液晶セルに接する偏光板保護フィルムは、通常、面内方向のレターデーションRがゼロ付近に設定されることから、応力が加わったときに生じる複屈折によって光漏れが生じやすい。(メタ)アクリレート樹脂フィルムやラクトン環含有(メタ)アクリレート樹脂フィルムは、光弾性係数が小さいため、応力が加わっても複屈折を生じにくい。
図4は、偏光板の一実施形態を示す模式図である。図4(A)に示されるように、偏光板30は、偏光子32と、その一方の面に配置され、コレステリック液晶層34Aとλ/4板34Bとを有する本発明の輝度向上フィルム34と、他方の面に配置された(メタ)アクリレート樹脂フィルム36と、を有する。本実施形態では、本発明の輝度向上フィルム34のλ/4板34Bが、偏光子32と接するように配置されている。図4(B)に示されるように、本発明の輝度向上フィルム34のλ/4板34Bの遅相軸と偏光子32の吸収軸とが45°で交差するように配置されることが好ましい。
図5は、偏光板の他の実施形態を示す模式図である。図5(A)の偏光板40は、偏光子32と、それを挟持する一対のTACフィルム38および38と、一方のTACフィルム38上にλ/2板42と、本発明の輝度向上フィルム34とが順次積層されている。本実施形態では、本発明の輝度向上フィルム34のλ/4板34Bが、λ/2板42と接するように配置されている。λ/2板42は、斜め方向の延伸のみによって作製された位相差フィルムであってよい。本発明の輝度向上フィルム34に含まれるλ/4板34Bの遅相軸と、λ/2板42の遅相軸と、偏光子32の吸収軸とが図5(B)に示されるような角度で交差するように配置されることが好ましい。このように構成された偏光板は、広い波長領域の円偏光を直線偏光として透過させることができる。
偏光板は、通常、偏光子と、前述の偏光板保護フィルムとを貼り合わせて製造することができる。貼り合わせに用いられる接着剤は、ポリビニルアルコール系接着剤や、ウレタン系接着剤などが挙げられ、なかでも偏光子との接着性に優れるポリビニルアルコール系接着剤が好ましい。
4.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板と、を有する。そして、一対の偏光板のうち一方が前述の偏光板である。
図6は、本発明に係る液晶表示装置の一実施形態の基本構成を示す模式図である。図6に示されるように、液晶表示装置100は、液晶セル120と、それを挟持する第一の偏光板140および第二の偏光板160と、バックライト180と、を有する。
液晶セル120の表示方式は、特に制限されず、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、VA(Vertical Alignment)方式等がある。視野角が広いなどの観点から、IPS方式が好ましい。
IPS方式の液晶セルでは、一対の透明基板のうち、一方の透明基板のみに、液晶に電圧を印加するための画素電極と、それに対応する対向電極とが配置される。液晶層は、正の誘電率異方性(Δε>0)または負の誘電率異方性(Δε>0)を有する液晶分子を含む。液晶分子は、電圧無印加時には基板面に対して水平に配向している。
このように構成された液晶セルでは、一方の基板に設けられた画素電極と対向電極との間に、基板面に対して水平方向の電界を生じさせる。それにより、基板面に対して水平配向している液晶分子を、基板面と水平な面内で回転させる。それにより、液晶層を駆動し、各副画素の透過率および反射率を変化させて画像表示を行う。
第一の偏光板140は、視認側に配置されており、第一の偏光子142と、それを挟持する偏光板保護フィルム144(F1)および146(F2)とを有する。第二の偏光板160は、バックライト180側に配置されており、第二の偏光子162と、それを挟持する偏光板保護フィルム164(F3)および本発明の輝度向上フィルム166(F4)とを有する。本発明の輝度向上フィルム166(F4)は、偏光板保護フィルムとしても機能しうる。偏光板保護フィルム146(F2)と164(F3)は、必要に応じて省略されることもある。
本発明の輝度向上フィルム166(F4)は、コレステリック液晶層166Aと、λ/4板166Bとを含む。そして、本発明の輝度向上フィルム166(F4)は、λ/4板166Bが第二の偏光子162側となるように配置されている。そして、λ/4板166Bの面内の遅相軸と、第二の偏光子162の吸収軸とが10°〜80°で交差している。
偏光板保護フィルム144(F1)、146(F2)および164(F3)は、特に制限されず、セルロースエステルフィルムや(メタ)アクリレート樹脂フィルムなどを用いることができる。特にIPS方式の液晶表示装置では、偏光板保護フィルム146(F2)および164(F3)は(メタ)アクリレート樹脂フィルムであることが好ましい。
前述の通り、本発明の輝度向上フィルムは、コレステリック液晶層166Aに入射した円偏光のうち一部を選択的に反射させ、一部を透過させる。透過した円偏光は、λ/4板166Bであるセルロースエステルフィルムにて直線偏光に変換され、第二の偏光子162の吸収軸を透過する。反射された円偏光は、バックライト側の反射板で反射されて再び光源として利用される。これにより、表示装置の輝度を向上させることができる。
そして、本発明の輝度向上フィルムは、λ/4板166Bのフィルム厚みが薄いため、湿度や温度などの使用環境の変化による位相差の変動が少ない。そのため、表示装置の位置による輝度のムラ(輝度ムラ)を抑制することができる。
また、本発明の輝度向上フィルムのλ/4板166Bは、斜め方向に延伸されたフィルムであるため、応力が加わったときの反りを、フィルムの長手方向または幅方向に延伸されたフィルムよりも少なくすることができる。そのため、例えばIPS方式の液晶表示装置において、応力に起因するEggムラなども抑制することができる。さらに、偏光板保護フィルム164(F3)を(メタ)アクリレート樹脂フィルムとすることで、応力が加わっても位相差を生じにくくすることができる。そのため、例えばIPS方式の液晶表示装置における、応力に起因するEggムラをより高度に抑制することができる。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.材料の準備
実施例/比較例で用いた添加剤を、以下に示す。
PMMA:ポリメタクリル酸メチル(Mw:2000〜10000)
PMMA/ACMO:メタクリル酸メチル−アクリロイルモルフォリン共重合体(メタクリル酸メチル/アクリロイルモルフォリン=80/20(質量比)、Mw:4000)
PMMA/VP:メタクリル酸メチル−N−ビニルピロリドン共重合体(メタクリル酸メチル/N−ビニルピロリドン=80/20(質量比)、Mw:4000)
ポリエステル化合物1:テレフタル酸/フタル酸/コハク酸/アジピン酸(モル比:45/5/30/20)とエチレングリコールとの重縮合体であって、両末端が酢酸で封止された化合物、Mw:4000
TPP:トリフェニルホスフェート
PFR:アデカスタブPFR(レゾルシノールビスジフェニルフォスフェート)
FP−500:アデカスタブFP−500(1,3−フェニレンビスジキシレニルフォスフェート)
2.セルロースアシレートフィルム(λ/4板)の作製
(製造例1)
微粒子添加液の調製
11質量部の微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製)と、89質量部のエタノールとを、ディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散させて微粒子分散液を得た。
溶解タンクに、50質量部のメチレンクロライドを投入して十分攪拌させながら、50質量部の前記微粒子分散液をゆっくりと添加した。得られた溶液を、日本精線(株)製のファインメットNFにより濾過して、微粒子添加液を得た。
ドープ液の調製
下記で示される組成を有するドープ液を調製した。まず、加圧溶解タンクに、300質量部のメチレンクロライドと57質量部のエタノールを投入した。これらの溶剤に、さらに100質量部のセルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度:1.1、アセチル基置換度:0.2、プロピオニル基置換度:0.9、Mw:20万)を攪拌しながら投入した。得られた溶液を、加熱下で攪拌しながら溶解させ、さらに15質量部のポリメタクリル酸メチル(PMMA、重量平均分子量Mw:4000)と、6質量部の微粒子添加液とを添加し、攪拌して完全に溶解させた。得られた溶液を、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を用いて濾過し、下記組成で示されるドープ液を調製した。
(ドープ液の組成)
セルロースアセテートプロピオネート(総アシル基置換度:1.1、アセチル基置換度:0.2、プロピオニル基置換度:0.9、Mw:20万) 100質量部
ポリメタクリル酸メチル(PMMA、Mw:4000) 15質量部
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 57質量部
微粒子添加液 6質量部
得られたドープ液を、ベルト流延装置を用いて、温度22℃、幅2mのステンレスバンド支持体上に均一に流延させた。塗膜の残留溶剤量が110%になるまで溶媒を蒸発させた後、塗膜をステンレスバンド支持体上から剥離した。剥離して得られるウェブを、図1〜3の斜め延伸装置(特開2007−090532号公報に記載の斜め延伸装置)を用いて、延伸温度170℃、斜め45°方向の延伸倍率1.5倍となるように、ウェブの幅方向に対して45°をなす方向に延伸を行った。ウェブを延伸した後、乾燥させて、厚さ30μmのセルロースエステルフィルムCE−1を得た。セルロースエステルフィルムCE−1の面内の遅相軸は、ウェブの搬送方向に対して45°であった。
(製造例2〜5)
表2に示されるように、セルロースエステルの総アシル基置換度、アシル基の種類またはフィルム厚みを変更した以外は製造例1と同様にしてセルロースエステルフィルムCE−2〜CE−5を作製した。
(製造例6〜14)
表2に示されるように、添加剤の種類または分子量を変更した以外は製造例1と同様にしてセルロースエステルフィルムCE−6〜CE−14を作製した。
レターデーションRの測定
得られたセルロースエステルフィルム1〜15を35mm×35mmの大きさにカットして、試料フィルムとした。試料フィルムを、25℃、55%RH下で2時間調湿した。得られた試料フィルムに、王子計測機器製KOBRA 21DHを用いて、フィルム法線方向からの波長590nmの光を入射させたときの面内のレターデーションRを測定した。測定は、25℃、55%RH条件下で行った。
製造例1〜14で得られたセルロースエステルフィルムCE−1〜CE−14の物性などを表2に示す。表2において、Dallはセルロースエステルの総アシル基置換度を示し;Dacはアセチル基置換度を示し;Dprはプロピル基置換度を示す。
Figure 2013020213
3.輝度向上フィルムおよび液晶表示装置の製造
(実施例1)
得られたセルロースエステルフィルムCE−1上に、以下のようにしてコレステリック液晶層を塗布形成し、輝度向上フィルム1を作製した。
配向膜の形成
以下の各成分を混合して、配向膜用塗布液を調製した。
(配向膜用塗布液の組成)
ポリビニルアルコール(日本合成化学社製 ゴーセファイマーN−18)
0.4質量部
水 74.7質量部
メタノール 24.9質量部
得られた配向膜用塗布液を、セルロースエステルフィルムCE−1上に#14のワイヤーバーで塗布した後、80℃で5分間乾燥した。得られた塗布層の表面をラビング処理して、厚さ0.7μmの配向膜を形成した。
コレステリック液晶層の形成
次に、(a)重合性メソゲン化合物としてBASF社製LC242を96質量部、(b)重合性カイラル剤としてBASF社製LC756を4質量部、および(c)光異性化材料としてスチルベンを5質量部、メチルエチルケトンに分散させて、固形分含有量が30質量%であるコレステリック液晶を含む分散溶液を調製した。得られた分散溶液を、セルロースエステルフィルムCE−1上に形成した配向膜の上にキャストした後、100℃で2分間乾燥させて溶媒を除去した。その後、得られた塗膜に、5mW/cmで3分-間紫外線照射した後、100℃で10秒間さらに加熱して、塗膜を硬化させて、膜厚8μmのコレステリック液晶層を形成した。これにより、輝度向上フィルム1を得た。
得られた輝度向上フィルム1における、コレステリック液晶層の配向乱れ、および輝度ムラを、以下の方法で測定した。
コレステリック液晶層の配向乱れの測定
得られた輝度向上フィルムを、偏光顕微鏡(オリンパス(株)製 BX51)のステージにクロスニコル状態となるようにセットした。具体的には、輝度向上フィルムを、クロスニコル状態に配置した2枚の偏光子(ポラライザとアナライザ)の間に配置した。このとき、輝度向上フィルムのλ/4フィルムの遅相軸が偏光板(アナライザ)の吸収軸と一致するように配置し、λ/4フィルムによる光漏れが生じないようにした。そして、一方の偏光板(ポラライザ)の外側から光を当て、他方の偏光板(アナライザ)の外側から観察し、輝度向上フィルムの輝点数を測定した。輝点数の測定は、3mm×3mmの観察領域における輝点の数をカウントして行った。さらに、観察場所を変えて合計10か所における輝点数を測定し、それらの平均値をとって、1mmあたりの輝点個数を求めた。液晶層の配向乱れの評価は、以下の基準で行った。
○:輝点数1個/mm以下
△:輝点数1個/mm超10個/mm以下
×:輝点数10個/mm
輝度ムラの測定
得られた輝度向上フィルムを、50℃90%RH下で48時間調湿した。調湿後の輝度向上フィルムを、図7に示されるような評価系に組み込んだ。図7の評価系では、輝度向上フィルムのλ/4板の遅相軸が偏光子の吸収軸に対して45°となるように配置した。
次いで、図7の評価系において、表示画面を、縦方向に3分割、横方向に4分割して合計12個の領域に分割し、それぞれの領域における光量を測定した。12か所の領域で測定された光量の平均値をL(Ave)、最大値をL(Max)、最小値をL(Min)とし、これらを下記式に当てはめて、輝度ムラを算出した。
輝度ムラ(%)=(L(Max)−L(Min))/L(Ave)×100
そして、輝度ムラを、以下の基準で評価した。○が好ましいが、△であれば実用上問題ない。
○:10%以下
△:10%超20%以下
×:20%超
輝度向上度の測定
まず、図7に示される評価系において、輝度向上フィルムを外した構成とした。そして、積分球にて偏光子の中央部の光量を測定した。
一方、得られた輝度向上フィルムを23℃55%RH下で24時間以上調湿した。そして、図7に示されるように、輝度向上フィルムを、そのλ/4板の遅相軸が偏光子の吸収軸に対して45°となるように配置した以外は前述と同様にして、偏光子の中央部の光量を測定した。輝度向上フィルムがない場合の光量に対する、輝度向上フィルムがある場合の光量の相対値を輝度向上度として求めた。そして、輝度向上度を、以下の基準に基づいて評価した。
○:輝度向上度が20%以上
△:輝度向上度が10%以上20%未満
×:輝度向上度が10%未満
(実施例2〜12)
セルロースエステルフィルムCE−1を、表2のCE−2〜CE−3およびCE−6〜CE−14に変更した以外は実施例1と同様にして輝度向上フィルム2〜12を作製し、同様の評価を行った。
(比較例1〜2)
セルロースエステルフィルムCE−1を、表2のCE−4〜CE−5に変更した以外は実施例1と同様にして輝度向上フィルム13〜14を作製し、同様の評価を行った。
実施例1〜12および比較例1〜2の輝度向上フィルムの評価結果を表3に示す。
Figure 2013020213
実施例1〜12の輝度向上フィルムは、いずれも液晶層の配向ムラは少なく、輝度ムラも少ないことが示される。一方、比較例1〜2の輝度向上フィルムは、いずれも輝度ムラが多いことが示される。
なかでも、平均分子量が2000以上の添加剤を含む実施例1〜9の輝度向上フィルムは、低分子量の添加剤を含む実施例10〜12の輝度向上フィルムよりもコレステリック液晶層の配向ムラが少ないことが示される。実施例1〜9で用いられた添加剤は、いずれも高分子量であるため、セルロースエステルフィルムの表面に溶出しにくく、コレステリック液晶が、溶出した添加剤によってはじかれなくなったためと考えられる。
本発明の輝度向上フィルムは、温度や湿度などの環境条件による位相差の変動が抑制されている。そのため、本発明の輝度向上フィルムを含む液晶表示装置は、輝度ムラが抑制されている。
10 延伸装置
12 ウェブ
14 引き出しロール
16 巻き取りロール
18 レール
18A 把持手段
20 恒温室
20A 予熱ゾーン
20B 延伸ゾーン
20C 固定ゾーン
22、24 仕切板
30、40 偏光板
32 偏光子
34 輝度向上フィルム
34A コレステリック液晶層
34B λ/4板
36 (メタ)アクリレート樹脂フィルム
38 TACフィルム
42 λ/2板
100 液晶表示装置
120 液晶セル
140 第一の偏光板
142 第一の偏光子
144 偏光板保護フィルム(F1)
146 偏光板保護フィルム(F2)
160 第二の偏光板
162 第二の偏光子
164 偏光板保護フィルム(F3)
166 輝度向上フィルム(F4)
166A コレステリック液晶層
166B λ/4板
180 バックライト

Claims (9)

  1. セルロースエステルフィルムからなるλ/4板と、前記λ/4板上に配置されたコレステリック液晶層とを含み、
    前記セルロースエステルフィルムに含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度が1.0超2.0未満である、輝度向上フィルム。
  2. 前記セルロースエステルフィルムの厚みが、30〜100μmである、請求項1に記載の輝度向上フィルム。
  3. 前記セルロースエステルフィルムに含まれるセルロースエステルの炭素数3以上のアシル基の置換度が0.9超2.0未満である、請求項1または2に記載の輝度向上フィルム。
  4. 前記セルロースエステルフィルムが、重量平均分子量2000〜10000の(メタ)アクリレート重合体またはポリエステル化合物をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の輝度向上フィルム。
  5. 偏光子と、前記偏光子の一方の面に配置された請求項1〜4のいずれか一項に記載の輝度向上フィルムと、を含み、
    前記輝度向上フィルムのλ/4板が、前記偏光子側に配置され、かつ前記輝度向上フィルムのλ/4板の面内の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とが10°〜80°で交差している、偏光板。
  6. 前記偏光子の他方の面に配置された偏光板保護フィルムをさらに有し、
    前記偏光板保護フィルムが(メタ)アクリレート樹脂フィルムである、請求項5に記載の偏光板。
  7. 第一の偏光板、液晶セル、第二の偏光板およびバックライトを、視認側からこの順に含む液晶表示装置であって、
    前記第二の偏光板は、第二の偏光子と、前記第二の偏光子の前記バックライト側の面に配置された請求項1〜4のいずれか一項に記載の輝度向上フィルムとを含み、
    前記輝度向上フィルムのλ/4板が前記第二の偏光子側に配置され、かつ前記輝度向上フィルムのλ/4板の面内の遅相軸と前記第二の偏光子の吸収軸とが10°〜80°で交差している、液晶表示装置。
  8. 前記液晶セルは、画素電極および対向電極が配置された第一の基板と、それと対向する第二の基板と、前記第一および第二の基板間に挟持され、電圧無印加時に前記基板に対して水平に配向した液晶分子を含む液晶層とを有し、
    前記第二の偏光板は、前記第二の偏光子の前記液晶セル側の面に配置された偏光板保護フィルムをさらに有し、かつ前記偏光板保護フィルムが(メタ)アクリレート樹脂フィルムである、請求項7に記載の液晶表示装置。
  9. 総アシル基置換度が1.0超2.0未満であるセルロースエステルを主成分として含むウェブを、ウェブの搬送方向に対して斜め方向に延伸してλ/4板を得るステップと、
    前記λ/4板上に、重合性メソゲン化合物と、重合性カイラル剤と、光異性化材料とを含む混合物を塗布した後、重合させてコレステリック液晶層を形成するステップと、
    を有する、輝度向上フィルムの製造方法。
JP2011155900A 2011-07-14 2011-07-14 輝度向上フィルムとその製造方法、それを含む偏光板および液晶表示装置 Withdrawn JP2013020213A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011155900A JP2013020213A (ja) 2011-07-14 2011-07-14 輝度向上フィルムとその製造方法、それを含む偏光板および液晶表示装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2011155900A JP2013020213A (ja) 2011-07-14 2011-07-14 輝度向上フィルムとその製造方法、それを含む偏光板および液晶表示装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2013020213A true JP2013020213A (ja) 2013-01-31

Family

ID=47691668

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2011155900A Withdrawn JP2013020213A (ja) 2011-07-14 2011-07-14 輝度向上フィルムとその製造方法、それを含む偏光板および液晶表示装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2013020213A (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017047578A1 (ja) * 2015-09-16 2017-03-23 日東電工株式会社 粘着剤層付偏光フィルム、光学部材、及び画像表示装置
JP2017179141A (ja) * 2016-03-30 2017-10-05 東ソー株式会社 樹脂組成物およびそれを用いた光学補償フィルム。

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017047578A1 (ja) * 2015-09-16 2017-03-23 日東電工株式会社 粘着剤層付偏光フィルム、光学部材、及び画像表示装置
JP2017058519A (ja) * 2015-09-16 2017-03-23 日東電工株式会社 粘着剤層付偏光フィルム、光学部材、及び画像表示装置
JP2021101249A (ja) * 2015-09-16 2021-07-08 日東電工株式会社 粘着剤層付偏光フィルム、光学部材、及び画像表示装置
JP2017179141A (ja) * 2016-03-30 2017-10-05 東ソー株式会社 樹脂組成物およびそれを用いた光学補償フィルム。

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR101182042B1 (ko) 셀룰로오스에스테르 필름, 편광판 및 액정 표시 장치
US7354633B2 (en) Retardation film, and polarizing plate and display device using the same
WO2011016279A1 (ja) セルロースアセテートフィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP5234113B2 (ja) 位相差フィルム、偏光板、液晶表示装置
WO2012026199A1 (ja) 位相差フィルム、及びそれを用いた偏光板、液晶表示装置
JP5838835B2 (ja) 液晶表示装置
JP2011221122A (ja) 光学フィルム、及びそれを用いた偏光板、液晶表示装置
JP5500106B2 (ja) 位相差フィルムおよびその製造方法、偏光板および液晶表示装置
JP2010215879A (ja) セルロースエステルフィルム及びそれを用いた偏光板並びに液晶表示装置
JP2013020213A (ja) 輝度向上フィルムとその製造方法、それを含む偏光板および液晶表示装置
JP2014071202A (ja) 偏光板および液晶表示装置
KR20110133029A (ko) 버티컬 얼라인먼트형 액정 표시 장치
WO2011114764A1 (ja) 位相差フィルム及びそれが備えられた偏光板
JP5751054B2 (ja) 光学フィルムの製造方法、及び偏光板
JP2009258217A (ja) 輝度向上フィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP5720683B2 (ja) 液晶表示装置
JP5835339B2 (ja) 光学フィルム、それを含む偏光板および液晶表示装置
JP2013120278A (ja) 偏光板保護フィルムの製造方法
JP2014085628A (ja) 位相差フィルムの製造方法、位相差フィルム、偏光板および液晶表示装置
JP2012242804A (ja) 液晶表示装置
WO2012102325A1 (ja) 液晶表示装置
JP5724820B2 (ja) セルロースエステルフィルム、位相差フィルム、偏光板および液晶表示装置
JP5751188B2 (ja) 液晶表示装置
JP2012118177A (ja) セルロースアシレートフィルム、セルロースアシレートフィルムの製造方法、及び液晶表示装置
JP2013083706A (ja) 光学フィルム、それを含む偏光板および液晶表示装置

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20130417

A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20141007