1.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、その一方の面に配置された第一の偏光板と、他方の面に配置された第二の偏光板とを有し;バックライトをさらに有してもよい。
図1は、本発明に係る液晶表示装置の構成の一例を示す模式図である。図1に示されるように、液晶表示装置10は、液晶セル20と、それを挟持する第一の偏光板40および第二の偏光板60と、バックライト80とを有する。
液晶セル20について
液晶セル20は、高いコントラストを必要とすることから、電圧無印加時に垂直配向する液晶セルであることが好ましい。図2は、電圧無印加時に垂直配向する液晶セルの一例を示す部分断面図である。図2に示されるように、液晶セル20は、第一の基板100と、第二の基板200と、第一の基板100と第二の基板200との間に配置され、負の誘電率異方性を有する液晶分子を含む液晶層300と、を有する。
第一の基板100は、絶縁基板110と、その表面に設けられた複数の画素電極120とを有する。第二の基板200は、絶縁基板210と、その表面に設けられた共通電極220と、その表面に設けられた配向膜230とを有し、カラーフィルタ240をさらに有しうる。
図3は、第一の基板100の一例を示す部分上面図である。図3に示されるように、第一の基板100は、複数の画素電極120と、複数の走査線130と、複数のデータ線140と、複数の能動素子150とを有する。画素電極120は、画素領域P10ごとに配置されている。画素領域P10は、走査線130とデータ線140によって画定されている。
画素電極120は、能動素子150を介してデータ線140と電気的に接続されている。それにより、データ線140によって伝送された信号を、能動素子150を介して画素電極120に入力できるようになっている。能動素子150は、さらに走査線130と電気的に接続されており、走査線130によって駆動されるように構成されている。
図4Aは、図3の第一の基板100上の画素領域P10を示す上面図である。図4Bは、第二の基板200の配向膜230の面のうち、図4Aの画素領域P10に対向する領域の一例を示す上面図である。図4Aおよび図4Bでは、画素領域P10を、3つの領域に分割した例を示している。図4Aに示されるように、画素電極120は、複数の第一のスリット122を有する第一のスリット領域Aと、複数の第二のスリット124を有する第二のスリット領域Bと、第三のスリット126を有する第三のスリット領域Cとを含む。第一のスリット領域Aおよび第二のスリット領域Bはそれぞれ一つであっても、複数(好ましくは二つ)あってもよい。
第一のスリット122、第二のスリット124および第三のスリット126の形状は、図4Aではそれぞれ矩形状である例が示されているが、これに限定されず、長軸と短軸とを有する形状であればよい。例えば、第三のスリット126は、後述するように、多角形状などであってもよい。多角形状のスリットの長軸と短軸は、当該スリットと外接する矩形を想定したときの、矩形の長軸と短軸としうる。
複数の第一のスリット122は、互いに平行に設けられており、第一のスリット122と第三のスリット126とは、それぞれの長軸同士が互いに略直交するように接続されている。同様に、複数の第二のスリット124は、互いに平行に設けられており、第二のスリット124と第三のスリット126とは、それぞれの長軸同士が互いに略直交するように接続されている。同図では、第三のスリット126と第一のスリット122または第二のスリット124とが互いに接続された態様を示したが、これに限定されず、互いに接続していなくてもよい。
複数の第一のスリット122の総面積/複数の第二のスリット124の総面積/複数の第三のスリット126の総面積の比率は、求められる表示性能にもよるが、例えば45/45/10〜35/35/30としうる。各スリット領域の面積比率は、各スリットの大きさや数によって調整されうる。
電圧印加時に、第一の基板100面近傍の液晶分子を一定の方向にチルトさせやすくするために、電圧無印加時に、第一の基板100面近傍の液晶分子は、第一の基板100の法線に対してプレチルトしていることが好ましい(図5A参照)。プレチルトした第一のスリット領域A近傍の液晶分子は、第一のスリット122の長軸方向に傾いていることが好ましく;プレチルトした第二のスリット領域B近傍の液晶分子は、第二のスリット124の長軸方向に傾いていることが好ましい。そして、プレチルトした第一のスリット領域A近傍の液晶分子の傾きとプレチルトした第二のスリット領域B近傍の液晶分子の傾きとは互いに逆であることが好ましい。プレチルトした第三のスリット領域C近傍の液晶分子は、第三のスリット126の長軸方向に傾いていることが好ましい。
例えば、プレチルトした第一のスリット領域A近傍の液晶分子の傾きの方向は、図4Aにおけるベクトルαで表すことができ;プレチルトした第二のスリット領域B近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルβで表すことができ;プレチルトした第三のスリット領域C近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルγで表すことができる。図4Aにおけるベクトルの起点は、液晶セル20の厚み方向において、液晶分子の長軸の両端部のうち第一の基板100面に近い側の端部を示す。
各スリット領域におけるプレチルトした液晶分子の傾きの方向は、第一の基板100上の配向膜(不図示)の配向処理方向によって調整されうる。
第一の基板100面近傍の液晶分子(第一のスリット領域A、第二のスリット領域Bおよび第三のスリット領域C近傍の液晶分子)の長軸(図5Aにおける方向L)と第一の基板100面の法線(図5Aにおける法線N)とのなす角(プレチルト角)の絶対値は、いずれも0°超15°以下であることが好ましく、0°超10°以下であることがより好ましい。プレチルト角が小さすぎると、表示装置における応答速度の向上効果が得られにくい。一方、プレチルト角が大きすぎると、黒表示時の光漏れが多くなり、コントラストが低下しやすい。
配向膜の配向処理は、ラビング法、SiOxを斜方蒸着させる方法、光配向法などによって行うことができ、配向処理の制御が行いやすいなどの観点から、好ましくは光配向法である。光配向法は、光源とフォトマスクとを固定して露光する方法(同時露光法)や、光線の照射位置を移動させながら露光する方法(スキャン露光法)などがあり、好ましくはスキャン露光法である。
スキャン露光では、配向膜の材料にもよるが、第一の基板面100近傍の液晶分子を前述のようにプレチルトさせるためには、光線を基板面の法線に対して斜め方向から入射させることが好ましい。プレチルト角を前述の範囲とするためには、配向膜の材料にもよるが、光線の基板面の法線に対する入射角を5°以上70°以下とすることが好ましい。光線は、配向膜の材料にもよるが、消光比が2:1以上の部分偏光もしくは直線偏光であることが好ましい。光線の波長帯やエネルギー量は、配向膜の材料に応じて、適宜設定されればよい。
光線が照射される配向膜は、光配向膜材料を含む溶液を絶縁基板110上にスピンコート法、バーコート法、印刷法などで塗布した後、乾燥させて得られるものであることが好ましい。光配向膜材料は、特に限定されず、感光性基を含む樹脂;例えば4−カルコン基(下記式(1))、4’−カルコン基(下記式(2))、クマリン基(下記式(3))、およびシンナモイル基(下記式(4))などの感光性基を含むポリマーであることが好ましく、クマリン基(下記式(3))を含むポリマーであることがより好ましい。ポリマーは、好ましくはポリイミドでありうる。
図4Bに示されるように、第一の基板100の画素電極120に対向する第二の基板200の面は、第一のスリット領域Aに対向する面である第一の領域aと、第二のスリット領域Bに対向する面である第二の領域bと、第三のスリット領域Cに対向する面である第三の領域cとを有する。
前述と同様に、電圧印加時に、第二の基板200面近傍の液晶分子を所定の方向にチルトさせやすくするために、電圧無印加時に、第二の基板200面近傍の液晶分子が、第二の基板200の法線に対してプレチルトしていることが好ましい。プレチルトした第一の領域a近傍の液晶分子は、第一のスリット122の短軸方向に傾いていることが好ましく;プレチルトした第二の領域b近傍の液晶分子は、第二のスリット124の短軸方向に傾いていることが好ましい。そして、プレチルトした第一の領域a近傍の液晶分子の傾きと、プレチルトした第二の領域b近傍の液晶分子の傾きとは互いに逆であることが好ましい。プレチルトした第三の領域c近傍の液晶分子は、第三のスリット126の短軸方向に傾いていることが好ましい。
例えば、プレチルトした第一の領域a近傍の液晶分子の傾きの方向は、図4Bにおけるベクトルα’で表すことができ;プレチルトした第二の領域b近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルβ’で表すことができ;プレチルトした第三の領域c近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルγ’で表すことができる。図4Bにおけるベクトルの起点は、液晶セル20の厚み方向において、液晶分子の長軸の両端部のうち第二の基板200面に近い側の端部を示す。
各領域におけるプレチルトした液晶分子の傾きの方向は、配向膜230の配向処理方向によって規定されうる。配向処理方法は、前述と同様としうる。第一のスリット領域Aの配向膜(不図示)が規定する配向処理方向と第一の領域aの配向膜230が規定する配向処理方向とは互いに略直交することが好ましく;第二のスリット領域Bの配向膜(不図示)が規定する配向処理方向と第二の領域bの配向膜230が規定する配向処理方向とは互いに略直交することが好ましく;第三のスリット領域Cの配向膜(不図示)が規定する配向処理方向と第三の領域cの配向膜230が規定する配向処理方向とは互いに略直交することが好ましい。
配向膜230は、前述と同様に、光配向法により形成されたものであることが好ましい。
第二の基板200面近傍の各液晶分子(第一の領域a、第二の領域bおよび第三の領域c近傍の液晶分子)の長軸と第二の基板200面の法線とのなす角(プレチルト角)の絶対値も、前述と同様に、それぞれ0°超15°以下であることが好ましく、0°超10°以下であることがより好ましい。
液晶層300は、前述の通り、負の誘電率異方性の液晶分子を含む。負の誘電率異方性を有する液晶分子の例には、負の誘電率異方性を有するネマチック液晶分子が含まれる。負の誘電率異方性を有するネマチック液晶分子の例には、特開2004−204133号、特開2004−250668号、特開2005−047980号などに記載のものが含まれる。具体的には、負の誘電異方性を有し、Δn=0.0815、Δε=−4.5程度のネマチック液晶材料などが好ましく用いられる。
液晶層300は、後述するように、電圧印加時に液晶分子を十分にツイスト配向させるために、TN方式の液晶セルに含まれるようなカイラル材をさらに含んでもよい。その場合、電圧無印加時の液晶分子の垂直配向を阻害しないようにするために、カイラル材の含有量は、液晶分子の含有量の1質量%以下であることが好ましい。カイラル材の例には、コレステリック環を有する化合物、ビフェニル骨格を有する化合物、ターフェニル骨格を有する化合物、2つのベンゼン環がエステル結合によって連結された骨格を有するエステル化合物、シクロヘキサン環がベンゼン環に直接的に連結された骨格を有する化合物などが含まれる。そのようなカイラル材の具体例には、下記式(C1)〜(C7)で表される化合物などが含まれる。
液晶セル20の△ndは、透過率を高めるためには、400nm以上であることが好ましい。即ち、△ndが大きい液晶セル20は、電圧印加時に、第二の偏光板を通過した光の偏光軸を、第一の偏光板を通過できる程度まで十分に変化させうるので、透過率を高めることができる。液晶セル20のΔndは、23℃55%RH下、測定波長590nmにて測定される液晶分子の屈折率異方性Δnと、液晶セルのギャップd(nm)との積である。液晶分子の屈折率異方性Δnは、液晶分子の常光屈折率noと異常光屈折率neの差の絶対値Δn=|ne−no|として表される。液晶セルのギャップdは、具体的には液晶層の厚さ(nm)である。
液晶セル20の△ndは、例えば液晶分子の封入量(またはセルギャップd)や、液晶分子の屈折率異方性Δn、液晶分子の配向量によって調整することができる。例えば、液晶セルのΔndを大きくするためには、液晶セルのギャップdを大きくして、液晶分子の封入量を多くしたり;カイラル材などを添加して、液晶分子のツイスト量を多くしたりすればよい。
バックライト80は、液晶セル20の第一の基板100側に配置されても、第二の基板200側に配置されてもよいが、第一の基板100側に配置されることが好ましい。
図5Aは、液晶表示装置10の、一つの画素領域P10の電圧無印加時の状態の一例を示す分解斜視図であり;図5Bは、電圧印加時の状態の一例を示す分解斜視図である。同図では、第一の偏光板40の吸収軸D1と、第二の偏光板60の吸収軸D2とは、互いに直交している。
図5Aに示されるように、電圧無印加時(画素電極120と共通電極220との間に電圧が印加されていない状態)では、液晶分子は、その長軸が第一の基板100面または第二の基板200面に対して、プレチルトしつつも、略垂直に配向している。
図5Bに示されるように、電圧印加時(画素電極120と共通電極220との間に電圧が印加されている状態)では、液晶分子は、電界の影響を受けて第一の基板100面および第二の基板200面に対して略平行方向に配向する。このとき、第一の基板100面近傍の液晶分子の配向方向(長軸方向)と、第二基板200面近傍の液晶分子の配向方向(長軸方向)とは互いに略直交し、ツイスト配向する。それにより、第一の偏光板40を通過した光は、その偏光軸が液晶層300によって十分に変化し、第二の偏光板60を通過することができる。つまり、第二の偏光板60を透過する光量が増えるため、液晶表示装置10の透過率を高めることができる。
さらに、一つの画素領域P10において、液晶分子の配向状態が互いに異なる3つの領域(第一のスリット領域Aと第一の領域aとの間の領域;第二のスリット領域Bと第二の領域bとの間の領域;および第三のスリット領域Cと第三の領域cとの間の領域)を含む。そのため、歩留まりの低下を最小限にしつつ、液晶表示装置10の視野角を広げることができる。また、液晶分子の配向状態が異なる領域の数(配向分割数)が少ないので、遮光領域となる領域間の界面量を少なくしうる。それにより、液晶表示装置10の開口率を高めることができる。
図6Aは、第一の基板100上の画素領域P10における画素電極の他の例を示す上面図である。図6Bは、第二の基板200の配向膜230の面のうち、図6Aの画素領域P10に対向する領域の一例を示す上面図である。図6Aに示されるように、画素電極120’は、複数の第一のスリット122’を有する第一のスリット領域A’と、複数の第二のスリット124’を有する第二のスリット領域B’と、第三のスリット126’を有する第三のスリット領域C’とを含む。第一のスリット領域A’および第二のスリット領域B’は、それぞれ一つであっても複数あってもよい。
第一のスリット122’と第二のスリット124’は、それぞれ画素電極120’と第二の共通電極128とで挟まれた矩形状の領域を示す。第三のスリット126’は、第一のスリット122’と第二のスリット124’との間を連通し、かつ画素電極120’と第二の共通電極128が設けられていない領域である。図6Aにおける第三のスリット126’の長軸は、第三のスリット126’と外接する矩形(第三のスリット領域C’と同形状の矩形)の長軸である。
第一の基板100面近傍の液晶分子は、前述と同様に、第一の基板100面の法線に対して所定の方向にプレチルトしていることが好ましい。例えば、プレチルトした第一のスリット領域A’近傍の液晶分子の傾きの方向は、前述と同様に、ベクトルαで表すことができ;プレチルトした第二のスリット領域B’近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルβで表すことができ;プレチルトした第三のスリット領域C’近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルγで表すことができる。液晶分子のプレチルト角も、前述と同様としうる。
図6Bに示されるように、第一の基板100の画素電極120’に対向する第二の基板200の面は、第一のスリット領域A’に対向する面である第一の領域a’と、第二のスリット領域B’に対向する面である第二の領域b’と、第三のスリット領域C’に対向する面である第三の領域c’とを有する。
第二の基板200面近傍の液晶分子は、前述と同様に、第二の基板200面の法線に対して所定の方向にプレチルトしていることが好ましい。例えば、プレチルトした第一の領域a’近傍の液晶分子の傾き方向はベクトルα’で表すことができ;プレチルトした第二の領域b’近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルβ’で表すことができ;プレチルトした第三の領域c’近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルγ’で表すことができる。液晶分子のプレチルト角も、前述と同様としうる。
図7Aは、第一の基板100上の画素領域P10における画素電極の他の例を示す上面図である。図7Bは、第二の基板200の配向膜230”の面のうち、図7Aの画素領域P10に対向する領域の一例を示す上面図である。図7Aに示されるように、画素電極120”は、複数の第一のスリット122”を有する第一のスリット領域A”と、複数の第二のスリット124”を有する第二のスリット領域B”と、第三のスリット126”を有する第三のスリット領域C”とを含む。第一のスリット領域A”および第二のスリット領域B”は、それぞれ一つであっても複数あってもよい。
図7Bに示されるように、第一の基板100の画素電極120”に対向する第二の基板200面は、第一のスリット領域A”に対向する面である第一の領域a”と、第二のスリット領域B”に対向する面である第二の領域b”と、第三のスリット領域C”に対向する面である第三の領域c”とを有する。
前述と同様に、第一の基板100面近傍の液晶分子は、第一の基板100面の法線に対して所定の方向にプレチルトしていることが好ましい。例えば、プレチルトした第一のスリット領域A”近傍の液晶分子の傾きの方向は、前述と同様に、ベクトルαで表すことができ;プレチルトした第二のスリット領域B”近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルβで表すことができ;プレチルトした第三のスリット領域C”近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルγで表すことができる。
第二の基板200面近傍の液晶分子は、第二の基板200面の法線に対して所定の方向にプレチルトしていることが好ましい。例えば、プレチルトした第一の領域a”近傍の液晶分子の傾きの方向は、前述と同様に、ベクトルα’で表すことができ;プレチルトした第二の領域b”近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルβ’で表すことができ;プレチルトした第三の領域c”近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルγ’で表すことができる。液晶分子のプレチルト角も、前述と同様としうる。
図8Aは、第一の基板100上の画素領域P10における画素電極の他の例を示す上面図である。同図は、画素領域P10を、5つの領域に分割した例を示す。図8Bは、第二の基板200の配向膜230'''の面のうち、図8Aの画素領域P10に対向する領域の一例を示す上面図である。図8Aに示されるように、画素電極120'''は、第一のスリット領域Aと第二のスリット領域Bをそれぞれ2つずつ有する以外は図4Aと同様に構成されている。即ち、画素電極120'''は、第一のスリット領域1Aおよび2Aと、第二のスリット領域1Bおよび2Bと、第三のスリット領域Cとを有する。
図8Aに示されるように、第一のスリット領域1Aと2Aは、第一の基板100面の中央部を対称中心として互いに点対称となるように配置されることが好ましい。同様に、第二のスリット領域1Bと2Bは、第一の基板100面の中央部を対称中心として互いに点対称となるように配置されることが好ましい。
図8Bに示されるように、第一の基板100の画素電極120'''に対向する第二の基板200面は、第一のスリット領域1Aおよび2Aにそれぞれ対向する面である第一の領域1aおよび2aと、第二のスリット領域1Bおよび2Bにそれぞれ対向する面である第二の領域1bおよび2bと、第三のスリット領域Cに対向する面である第三の領域cとを有する。
第一の基板100面近傍の液晶分子は、前述と同様に、第一の基板100面の法線に対して所定の方向にプレチルトしていることが好ましい。プレチルトした第一のスリット領域1Aおよび2A近傍の液晶分子の傾きの方向は、それぞれベクトルαで表すことができ;プレチルトした第二のスリット領域1Bおよび2B近傍の液晶分子の傾きの方向は、それぞれベクトルβで表すことができ;プレチルトした第三のスリット領域C近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルγで表すことができる。
第二の基板200面近傍の液晶分子も、前述と同様に、第二の基板200面の法線に対して所定の方向にプレチルトしていることが好ましい。例えば、プレチルトした第一の領域1aおよび2a近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルα’で表すことができ;プレチルトした第二の領域1bおよび2b近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルβ’で表すことができ;プレチルトした第三の領域c近傍の液晶分子の傾きの方向はベクトルγ’で表すことができる。液晶分子のプレチルト角も、前述と同様としうる。
このように、画素領域P10を、液晶分子の配向状態が異なる5つの領域に分割することで、領域同士の界面量を著しく増やすことなく、視野角を効率的に広げることができる。
図1に示されるように、第一の偏光板40は、液晶セル20の第一の基板100側の面(好ましくはバックライト80側の面)に配置されており、第一の偏光子42と、その液晶セル20とは反対側の面(好ましくはバックライト側の面)に配置された保護フィルム44(F1)と、液晶セル20側の面に配置された保護フィルム46(F2)とを有する。第二の偏光板60は、液晶セル20の第二の基板200側の面(好ましくは視認側の面)に配置されており、第二の偏光子62と、その液晶セル20側の面に配置された保護フィルム64(F3)と、液晶セル20とは反対側の面(好ましくは視認側の面)に配置された保護フィルム66(F4)とを有する。第一の偏光板40の吸収軸D1と、第二の偏光板60の吸収軸D2とは、前述した通り、互いに直交している(図5Aおよび図5B参照)。保護フィルム46(F2)と保護フィルム64(F3)のうち一方は、必要に応じて省略されてもよい。
保護フィルム46(F2)の面内遅相軸と、第一の偏光子42の吸収軸とは直交していることが好ましく;保護フィルム64(F3)の面内遅相軸と、第二の偏光子62の吸収軸とは直交していることが好ましい。
偏光子(第一の偏光子42、第二の偏光子62)は、一定方向の偏波面の光のみを通過させる素子である。偏光子の代表的な例は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものと、がある。
偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色して得られるフィルムであってもよいし、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の厚さは、5〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール水溶液を製膜したものであってもよい。ポリビニルアルコール系フィルムは、偏光性能および耐久性能に優れ、色斑が少ないなどことから、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましい。エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムの例には、特開2003−248123号、特開2003−342322号等に記載されたエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のフィルムが含まれる。
二色性色素の例には、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素およびアントラキノン系色素などが含まれる。
保護フィルム44(F1)、46(F2)、64(F3)および66(F4)は、偏光子の面に直接配置されてもよいし、他のフィルムまたは層を介して配置されてもよい。
前述した通り、本発明の液晶表示装置は、高い透過率と開口率を有する。そのため、第一の偏光板40または第二の偏光板60を構成する保護フィルム;特に、位相差フィルムとして機能する保護フィルム46(F2)と保護フィルム64(F3)の少なくとも一方が、配向乱れを有していると、コントラストの低下が目立ちやすい。配向乱れは、例えば、微粒子を含有する保護フィルムにおいて生じやすい。
微粒子を含有する保護フィルムにおいて配向乱れが生じやすい理由は、必ずしも明らかではないが、以下のように推測される。即ち、微粒子を含有する保護フィルムは、微粒子を含有する原反フィルムを延伸して製造される。特に、位相差調整機能を有する保護フィルムは、延伸によって位相差を得ている。そのような延伸工程において、フィルム中の微粒子近傍の樹脂にかかる延伸応力は、微粒子を含まない樹脂にかかる延伸応力とは異なるため、微粒子近傍の樹脂に局所的な配向乱れが生じやすい。
そこで本発明では、保護フィルム46(F2)または保護フィルム64(F3)を、「微粒子を含有するスキン層」と、「微粒子を含有せず、かつ前述のスキン層の位相差よりも大きい位相差を有するコア層」(微粒子を含有しないコア層)との積層物としている。
保護フィルムF2またはF3について
保護フィルムF2とF3の少なくとも一方;好ましくは保護フィルムF3は、前述の通り、「微粒子を含有するスキン層」と、「微粒子を含有せず、かつ前述のスキン層の位相差よりも大きい位相差を有するコア層」とを有する。
微粒子を含有するスキン層は、保護フィルム46(F2)または64(F3)の滑り性を高めるために、保護フィルム46(F2)または64(F3)の少なくとも一方の最表面に配置される。つまり、微粒子を含有するスキン層は、図1に示される液晶表示装置において、液晶セル20に接して配置されても、第一の偏光子42または第二の偏光子62と接して配置されてもよいが、位相差への影響を少なくするためには、第一の偏光子42または第二の偏光子62と接して配置されることが好ましい。微粒子を含有するスキン層と微粒子を含有しないコア層は、それぞれ一層ずつであってもよいし、それぞれ複数層あってもよい。
1)微粒子を含有しないコア層について
微粒子を含有しないコア層は、熱可塑性樹脂を含み、かつ微粒子を含まないことを特徴とする。微粒子を含有しないコア層を、位相差層として機能させるためである。熱可塑性樹脂の例には、セルロースエステル、環状オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂などが含まれ、好ましくはセルロースエステルである。
セルロースエステル
セルロースエステルは、セルロースの水酸基を、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸でエステル化して得られる化合物である。
セルロースエステルに含まれるアシル基は、脂肪族アシル基または芳香族アシル基であり、好ましくは脂肪族アシル基である。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、シンナモイル基が含まれる。芳香族アシル基の例には、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基などが含まれる。なかでも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基などの炭素原子数2〜4の脂肪族アシル基が好ましい。
微粒子を含有しないコア層に含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度は、後述する微粒子を含有するスキン層に含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度よりも低いことが好ましい。具体的には、微粒子を含有しないコア層に含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度は、好ましくは1.5〜3.0であり、より好ましくは2.0〜2.75であり、さらに好ましくは2.0〜2.6である。延伸によってレターデーションを発現させやすくするためである。
セルロースエステルに含まれるアシル基のうち、アセチル基の置換度は、好ましくは1.5以上であり、より好ましくはアシル基の全てがアセチル基である。延伸によってレターデーションが発現しやすいからである。
アシル基置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの例には、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエートまたはセルロースフタレートが含まれ、好ましくはセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネートなどである。セルロースエステルは、一種類であってもよいし、二種類以上の混合物であってもよい。
セルロースエステルの数平均分子量は、機械的強度が高いフィルムを得るためには、3.0×104〜2.0×105の範囲であることが好ましく、4.0×104〜1.6×105の範囲であることがより好ましい。セルロースエステルの重量平均分子量は、1.1×105以上2.5×105未満であることが好ましく、1.2×105以上2.0×105未満であることがより好ましい。
セルロースエステルの分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1.5〜5.5であることが好ましく、2.0〜5.0であることがより好ましく、2.5〜5.0であることがさらに好ましく、3.0〜5.0であることが特に好ましい。
セルロースエステルの分子量および分子量分布は、高速液体クロマトグラフィーにより測定することができる。
測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製)を3本接続して使用する。
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standardポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1.0×106〜5.0×102までの13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に選択することが好ましい。
セルロースエステルは、公知の方法で合成することができる。具体的には、セルロースと、少なくとも酢酸またはその無水物を含む炭素数3以上の有機酸またはその無水物と、を触媒(硫酸など)の存在下でエステル化反応させてセルロースのトリエステル体を合成する。次いで、セルロースのトリエステル体を加水分解して、所望のアシル置換度を有するセルロースエステルを合成する。得られたセルロースエステルをろ過、沈殿、水洗、脱水および乾燥させて、セルロースエステルを得ることができる(特開平10−45804号に記載の方法を参照)。
原料となるセルロースの例には、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)およびケナフなどが含まれる。木材パルプは、針葉樹由来のものが好ましい。製膜したフィルムの剥離性を高めるためには、綿花リンター由来のセルロースが好ましい。
微粒子を含有しないコア層は、必要に応じて可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レターデーション上昇剤、剥離促進剤などをさらに含んでいてもよい。
可塑剤
可塑剤の例には、ポリエステル系可塑剤、多価アルコールエステル系可塑剤、多価カルボン酸エステル系可塑剤(フタル酸エステル系可塑剤を含む)、グリコレート系可塑剤、エステル系可塑剤(脂肪酸エステル系可塑剤を含む)、およびアクリル系可塑剤などが含まれる。これらは単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル系可塑剤
ポリエステル系可塑剤は、下記一般式(5)で表されるポリエステル化合物であることが好ましい。
一般式(5)
式(5)中、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基または炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基を表す。Gは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基、または炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。Bは、水素原子またはカルボン酸から誘導される1価の基を表す。nは、1以上の整数を表す。
Aの、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれ、特にコハク酸、アジピン酸が好ましい。Aにおける炭素原子数6〜12のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれ、特にフタル酸、テレフタル酸が好ましい。
Gの、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールペンタン)、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール(3,3-ジメチロールヘプタン)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、および1,12-オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。特に、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコールが好ましい。
Gの、炭素原子数6〜12のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2-ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3-ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
Gは、炭素数2〜12のアルキレングリコールから誘導される2価の基であることが好ましい。ポリエステル化合物の、セルロースエステルとの相溶性を高めるためである。
Bの、カルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、およびアセトキシ安息香酸などの芳香族カルボン酸から誘導される1価の基や;酢酸、プロピオン酸、および酪酸などの脂肪族カルボン酸などから誘導される1価の基が含まれる。特に、酢酸、プロピオン酸、酪酸または安息香酸から誘導される1価の基が好ましい。
ポリエステル系可塑剤の数平均分子量は300〜1800であることが好ましく、300〜600であることがより好ましい。数平均分子量が300未満であるポリエステル系可塑剤は、揮発しやすいだけでなく、鹸化処理時にフィルムから鹸化液に流出しやすい。数平均分子量が1800超であるポリエステル系可塑剤は、低アシル基置換度のセルロースエステルとの相溶性が低く、得られるフィルムの内部ヘイズが高くなりやすい。
ポリエステル系可塑剤の含有量は、セルロースエステルに対して0.5〜20質量%であることが好ましく、0.5〜10質量%であることがより好ましい。0.5質量%未満であると、可塑剤としての機能が十分には得られないことがあり、20質量%超であると、ブリードアウトしたり、鹸化液に流出したりすることがある。
多価アルコールエステル系可塑剤
多価アルコールエステル系可塑剤は、2価以上の脂肪族多価アルコールと、モノカルボン酸とのエステル化合物(アルコールエステル)であり、好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。多価アルコールエステル系化合物は、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
2価のアルコールエステル系可塑剤の例には、以下のものが含まれる。
3価以上のアルコールエステル系可塑剤の例には、以下のものが含まれる。
多価アルコールエステル系可塑剤の分子量は、特に制限されないが、300〜1500であることが好ましく、350〜750であることがより好ましい。揮発し難くするためには、分子量が大きいほうが好ましく;透湿性、セルロースエステルとの相溶性を高めるためには、分子量が小さいほうが好ましい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤
多価カルボン酸エステル系可塑剤は、2価以上、好ましくは2〜20価の多価カルボン酸と、アルコール化合物とのエステル化合物である。多価カルボン酸は、2〜20価の脂肪族多価カルボン酸であるか、3〜20価の芳香族多価カルボン酸または3〜20価の脂環式多価カルボン酸であることが好ましい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、特に制限はないが、300〜1000であることが好ましく、350〜750であることがより好ましい。多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、ブリードアウトを抑制する観点では、大きいほうが好ましく;透湿性やセルロースエステルとの相溶性の観点では、小さいほうが好ましい。
多価カルボン酸エステル系可塑剤の例には、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が含まれる。
多価カルボン酸エステル系可塑剤は、フタル酸エステル系可塑剤であってもよい。フタル酸エステル系可塑剤の例には、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が含まれる。
グリコレート系可塑剤の例には、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が含まれる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類の例には、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が含まれる。
エステル系可塑剤には、脂肪酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤やリン酸エステル系可塑剤などが含まれる。
脂肪酸エステル系可塑剤の例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、およびセバシン酸ジブチル等が含まれる。クエン酸エステル系可塑剤の例には、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、およびクエン酸アセチルトリブチル等が含まれる。リン酸エステル系可塑剤の例には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジフェニルビフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、およびトリブチルホスフェート等が含まれる。
これらの可塑剤の含有量の合計は、微粒子を含まないコア層に含まれる前述の熱可塑性樹脂の合計に対して0.5〜30質量%であることが好ましく、5〜20質量%であることがより好ましい。
紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は、フィルムの耐久性を高める目的で含有されうる。紫外線吸収剤は、波長400nm以下の紫外線を吸収する化合物であり、好ましくは波長370nmでの透過率が10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは2%以下である化合物である。
紫外線吸収剤の光線透過率は、紫外線吸収剤を溶媒(例えばジクロロメタン、トルエンなど)に溶解した溶液を、常法により、分光光度計により測定することができる。分光光度計は、例えば、島津製作所社製の分光光度計UVIDFC−610、日立製作所社製の330型自記分光光度計、U−3210型自記分光光度計、U−3410型自記分光光度計、U−4000型自記分光光度計等を用いることができる。
紫外線吸収剤は、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物などであってよい。得られるフィルムの透明性を損なわないためには、好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤であり、さらに好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の例には、5-クロロ-2-(3,5-ジ-sec-ブチル-2-ヒドロキシルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、(2-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-6-(直鎖および側鎖ドデシル)-4-メチルフェノールなどが含まれる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品の例には、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328(BASFジャパン株式会社製)などのチヌビン類が含まれる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例には、2-ヒドロキシ-4-ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4-ベンジルオキシベンゾフェノンなどが含まれる。
紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収剤の種類にもよるが、微粒子を含有しないコア層に対して0.5〜10質量%であることが好ましく、0.6〜4質量%であることがより好ましい。
酸化防止剤
微粒子を含有しないコア層は、例えば高湿高温下で生じやすい樹脂の劣化を防止するために、酸化防止剤をさらに含んでもよい。酸化防止剤は、微粒子を含有しないコア層中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等による分解を遅延または防止しうる。
酸化防止剤の例には、イオウ系化合物、フェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物、リン系化合物、不飽和二重結合を含有する化合物などが含まれる。
イオウ系化合物の例には、住友化学社製Sumilizer TPL−R、Sumilizer TP−Dなどが含まれる。
フェノール系化合物の例には、2,6−ジアルキルフェノールの構造を有する化合物(例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールなど)が含まれる。フェノール系化合物の市販品の例には、BASFジャパン株式会社製Irganox1076、Irganox1010などが含まれる。
リン系化合物の例には、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジホスファイト等が含まれる。リン系化合物の市販品の例には、住友化学株式会社製SumilizerGP、株式会社ADEKA製ADK STAB PEP−24G、ADK STAB PEP−36およびADK STAB 3010、BASFジャパン株式会社製IRGAFOS P−EPQ、堺化学工業株式会社製GSY−P101などが含まれる。
ヒンダードアミン系化合物の例には、BASFジャパン株式会社製Tinuvin144およびTinuvin770、株式会社ADEKA製ADK STAB LA−52などが含まれる。
不飽和二重結合を含有する化合物の例には、住友化学株式会社製Sumilizer GM、およびSumilizer GSなどが含まれる。
酸化防止剤は、一種類のみであっても二種類以上の混合物であってもよいが、好ましくは二種類以上の混合物であることが好ましい。例えば、リン系化合物、フェノール系化合物および不飽和二重結合を含有する化合物を併用することが好ましい。
酸化防止剤の含有量は、前述の熱可塑性樹脂の合計に対して0.05〜5質量%であることが好ましく、0.05〜2質量%であることがより好ましい。
レターデーション上昇剤
レターデーション上昇剤は、少なくとも二つの芳香族環を有する棒状または円盤状化合物でありうる。芳香族環は、芳香族炭化水素環または芳香族性ヘテロ環でありうる。
芳香族炭化水素環は、6員環であることが好ましい。芳香族性ヘテロ環は、不飽和であることが好ましい。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがより好ましい。ヘテロ原子は、好ましくは窒素原子、酸素原子または硫黄原子であり、より好ましくは窒素原子である。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環などが含まれる。
円盤状化合物の芳香族環の炭素数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。円盤状化合物として下記一般式(I)で表されるトリアジン化合物を用いることが好ましい。
一般式(I)のR51は、それぞれ独立に置換基を有する芳香族基または複素環基を示す。
R51が示す芳香族基は、好ましくはフェニル基またはナフチル基であり、より好ましくはフェニル基である。R51が示す複素環基における複素環は、好ましくは不飽和の5員環または6員環であり、より好ましくは不飽和の6員環である。複素環のヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子または酸素原子であり、好ましくは窒素原子である。複素環は、好ましくはピリジン環(複素環基としては、2−ピリジル基または4−ピリジル基)である。
芳香族基または複素環基は、置換基をさらに有してもよい。置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルケニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、スルファモイル基、アルキル置換スルファモイル基、アルケニル置換スルファモイル基、アリール置換スルファモイル基、スルオンアミド基、カルバモイル、アルキル置換カルバモイル基、アルケニル置換カルバモイル基、アリール置換カルバモイル基、アミド基、アルキルチオ基、アルケニルチオ基、アリールチオ基およびアシル基などが含まれる。
一般式(I)のX11は、それぞれ独立に単結合または−NR52−を示す。R52は、それぞれ独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、アルケニル基、アリール基または複素環基を示す。
R52が示すアルキル基は、環状アルキル基または鎖状アルキル基であり、好ましくは鎖状アルキル基であり、より好ましくは直鎖状アルキル基である。アルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜10であり、特に好ましくは1〜8である。アルキル基は、置換基をさらに有していてもよく、その具体例には、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基)およびアシルオキシ基(例えば、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基)などが含まれる。
R52が示すアルケニル基は、環状アルケニル基または鎖状アルケニル基であり、好ましくは鎖状アルケニル基であり、より好ましくは直鎖状アルケニル基である。アルケニル基の炭素原子数は、好ましくは2〜30であり、より好ましくは2〜20であり、さらに好ましくは2〜10であり、特に好ましくは2〜8である。アルケニル基は置換基をさらに有していてもよく、その具体例には、前述のアルキル基が有する置換基と同様のものが含まれる。
R52が示す芳香族環基および複素環基は、前述の芳香族基および複素環基と同様である。芳香族基および複素環基は、さらに置換基を有していてもよく、置換基の例には、R51の芳香族基および複素環基が有する置換基と同様である。
一般式(I)で表される円盤状化合物の例には、以下の化合物が含まれる。
少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(II)で表される化合物が好ましい。
一般式(II):Ar1−L11−Ar2
一般式(II)のAr1およびAr2は、それぞれ独立に芳香族基である。芳香族基は、一般式(I)における芳香族基と同様としうる。
L11は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基は、好ましくはシクロヘキシレン基であり、より好ましくは1,4−シクロへキシレン基である。鎖状アルキレン基は、好ましくは直鎖状アルキレン基である。アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1〜20であり、より好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8である。
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造または鎖状構造を有し、好ましくは直鎖状構造を有する。アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、最も好ましくは2(ビニレン基またはエチニレン基)である。アリーレン基の炭素原子数は、好ましくは6〜20であり、より好ましくは6〜16であり、さらに好ましくは6〜12である。
棒状化合物は、好ましくは下記式(III)で表される化合物であることがより好ましい。
一般式(III):Ar1−L12−X−L13−Ar2
一般式(III)のAr1およびAr2は、それぞれ独立に芳香族基である。
一般式(III)のL12およびL13は、それぞれ独立にアルキレン基、−O−、−(C=O)−およびそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。L12およびL13が示すアルキレン基は、環状構造または鎖状構造を有し、好ましくは直鎖状構造を有する。アルキレン基の炭素原子数は、好ましくは1〜10であり、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1または2(メチレン基またはエチレン基)である。L12およびL13は、好ましくは−O−(C=O)−または−(C=O)−O−である。
一般式(III)のXは、1,4−シクロへキシレン基、ビニレン基またはエチニレン基である。
一般式(II)または(III)で表される化合物の具体例には、以下の化合物が含まれる。
レターデーション上昇剤のその他の具体例には、特開2004−109410号、特開2003−344655号、特開2000−275434号、特開2000−111914号、特開平12−275434号などに記載のものも含まれる。
レターデーション上昇剤は、一種類であってもよいし、二種類以上の混合物であってもよい。レターデーション上昇剤の含有量は、微粒子を含まないコア層に含まれる前述の熱可塑性樹脂の合計100質量部に対して、0.01〜20質量部であることが好ましく、0.05〜15質量部であることがより好ましく、0.1〜10質量部であることがさらに好ましい。
剥離促進剤
剥離促進剤の例には、クエン酸のエチルエステル類などが含まれる。剥離促進剤の含有量は、例えばコア層に対して0.001〜1質量%としうる。
微粒子を含有しないコア層は、後述する微粒子を含有するスキン層よりも高い位相差(面内方向のレターデーションR0および厚み方向のレターデーションRth)を有する。微粒子を含有しないコア層の位相差を大きくするためには、例えばアシル基総置換度が低いセルロースエステルを選択したり;レターデーション発現剤の含有量を増やしたり、微粒子を含有しないコア層を厚くしたりすればよい。
2)微粒子を含有するスキン層について
微粒子を含有するスキン層は、熱可塑性樹脂を含み、保護フィルムの表面の滑り性を高めるために、微粒子(マット剤)をさらに含む。
微粒子を含有するスキン層に含まれる熱可塑性樹脂は、微粒子を含有しないコア層に含まれる熱可塑性樹脂と同じであってもよいし、異なっていてもよい。保護フィルムを、微粒子を含有する層と微粒子を含有しない層の積層物を延伸することによって得る場合、微粒子を含有するスキン層に含まれる熱可塑性樹脂は、微粒子を含有しないコア層に含まれる熱可塑性樹脂よりも、延伸によって位相差を発現しにくい樹脂であることが好ましい。例えば、微粒子を含有しないコア層に含まれる熱可塑性樹脂が、セルロースジアセテートである場合、微粒子を含有するスキン層に含まれる熱可塑性樹脂はセルローストリアセテートであることが好ましい。
微粒子を含有するスキン層に含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度は、前述の微粒子を含有しないコア層に含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度よりも高いことが好ましい。具体的には、微粒子を含有するスキン層に含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度と微粒子を含有しないコア層に含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度の差は、例えば0.3〜0.5程度としうる。
微粒子を含有するスキン層に含まれるセルロースエステルの総アシル基置換度は、好ましくは1.5〜3.0であり、より好ましくは2.6〜2.95であり、さらに好ましくは2.7〜2.95である。延伸によってレターデーションを発現させにくくするためである。
セルロースエステルに含まれるアシル基のうち、アセチル基の置換度は、好ましくは1.6以上である。炭素数3以上のアシル基の置換度は、1.3以下としうる。
微粒子を含有するスキン層に含まれるセルロースエステルは、アシル基の全てがアセチル基であるセルローストリアセテートであることが好ましい。
微粒子
微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。
無機微粒子を構成する無機化合物の例には、二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムなどが含まれる。なかでも、二酸化珪素や酸化ジルコニウムが好ましく、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、より好ましくは二酸化珪素である。
二酸化珪素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)などが含まれる。酸化ジルコニウムの微粒子の例には、アエロジルR976およびR811(以上日本アエロジル(株)製)などが含まれる。なかでも、アエロジルR972V、NAX50、シーホスターKE−P30などが、得られる層の濁度を低く保ちつつ、摩擦係数を低減させうるため特に好ましい。
有機微粒子(ポリマー微粒子)を構成する樹脂の例には、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、スチレン系樹脂および(メタ)アクリル樹脂などが含まれ、これらの樹脂は架橋していることが好ましい。スチレン系樹脂は、得られる層の湿熱耐久性を改善するためなどから、スチレン−無水マレイン酸共重合体であることが好ましい。
シリコーン樹脂微粒子の例には、トスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120及び同240(以上東芝シリコーン(株)製)などが含まれる。スチレン系樹脂微粒子の例には、SMA1000F、SMA2000F(サートマー社製、スチレン/無水マレイン酸共重合体)などが含まれる。
微粒子の形状は、特に制限されず、球状、針状、板状などであってよい。微粒子の一次粒子径は、5〜50nmであることが好ましく、7〜20nmであることがより好ましい。一次粒子径が大きいほうが、得られる層の滑り性を高める効果は大きいが、透明性が低下しやすい。そのため、微粒子は、粒子径0.05〜0.3μmの二次凝集体として含有されていてもよい。微粒子の一次粒子またはその二次凝集体の大きさは、透過型電子顕微鏡にて倍率50万〜200万倍で一次粒子または二次凝集体を観察し、一次粒子または二次凝集体100個の粒子径の平均値として求めることができる。
微粒子の含有量は、微粒子を含むスキン層に含まれる前述の熱可塑性樹脂の合計に対して0.05〜1.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.8質量%であることがより好ましい。
微粒子を含有するスキン層は、必要に応じて、前述と同様の添加剤(紫外線吸収剤、酸化防止剤など)をさらに含有していてもよい。各添加剤の含有量は、前述した範囲と同様としうる。微粒子を含有するスキン層における添加剤の組成は、微粒子を含有しないコア層における添加剤の組成と同じであっても異なってもよい。
微粒子を含有するスキン層は、配向乱れによるコントラストの低下を抑制するために、位相差を実質的に有しないことが好ましい。即ち、微粒子を含有するスキン層は、微粒子を含有しないコア層よりも位相差が小さいことが好ましい。
微粒子を含有するスキン層の位相差を小さくするためには、例えば、アシル基総置換度が高いセルロースエステルを選択したり;レターデーション発現剤を含有させないか、あるいは含有量を低減したり;微粒子を含有するスキン層の厚みを薄くしたりすればよい。
保護フィルムは、必要に応じて他の層をさらに含有していてもよい。例えば、他の層は、微粒子を含有しないスキン層などであってもよい。
保護フィルムの物性
保護フィルムの厚みは、湿度などの影響によるレターデーションの変動を少なくするためなどから、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは80μm以下であり、特に好ましくは60μm以下である。一方、保護フィルムの厚みは、一定のフィルム強度やレターデーションを得るためには、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。
微粒子を含有するスキン層の厚みは、微粒子を含有しないコア層の厚みの20%以下、好ましくは10%以下としうる。例えば、微粒子を含有するスキン層の厚みは、好ましくは0.5〜15μm、より好ましくは0.5〜10μmとしうる。
液晶表示装置の光学補償を十分に行うためには、保護フィルムF2またはF3は、23℃55%RHにおいて測定波長590nmで測定される面内方向のレターデーションR0は、40〜80nmであることが好ましく、45〜75nmであることがより好ましい。23℃55%RHにおいて測定波長590nmで測定される厚み方向のレターデーションRthは、150〜400nmであることが好ましく、165〜350nmであることがより好ましい。保護フィルムF2またはF3が、複数の層の積層物である場合、R0およびRthは積層物全体での値を示す。
レターデーションR0およびRthは、それぞれ以下の式で定義される。
式(I):R0=(nx−ny)×t(nm)
式(II):Rth={(nx+ny)/2−nz}×t(nm)
(式(I)および(II)において、
nxは、保護フィルムの面内方向において屈折率が最大になる遅相軸方向xにおける屈折率を表し;
nyは、保護フィルムの面内方向において前記遅相軸方向xと直交する方向yにおける屈折率を表し;
nzは、保護フィルムの厚み方向zにおける屈折率を表し;
t(nm)は、保護フィルムの厚みを表す)
レターデーションR0およびRthは、例えば以下の方法によって求めることができる。
1)得られた保護フィルムを、23℃55%RHで調湿する。調湿後の保護フィルムの平均屈折率を、アッベ屈折計にて測定する。
2)調湿後の保護フィルムに、フィルム法線方向から測定波長590nmの光を入射させたときのR0を、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)にて測定する。
3)KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)により、フィルム法線方向に対してθの角度(入射角(θ))から測定波長590nmの光を入射させたときのレターデーション値R(θ)を測定する。θは、好ましくは30°〜50°としうる。
4)測定されたR0およびR(θ)と、前述の平均屈折率と膜厚とから、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)により、nx、nyおよびnzを算出して、測定波長590nmでのRthを算出する。レターデーションの測定は、23℃55%RH条件下で例えば12時間程度調質処理を行った後に行うことができる。
保護フィルムのR0とRthは、例えば延伸条件やフィルムの膜厚などによって調整できる。R0を大きくするためには、例えば延伸倍率を大きくすればよい。Rthを大きくするためには、例えば延伸温度と延伸倍率を低くしたり、フィルムの膜厚を大きくしたりすればよい。
保護フィルムの面内遅相軸とフィルムの幅方向とのなす角θ1(配向角)は、−5°以上+5°以下であることが好ましく、−1°以上+1°以下であることがより好ましい。保護フィルムの配向角θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−21WX(王子計測機器)を用いて測定することができる。
保護フィルムの、JIS K−7136に準拠して測定されるヘイズは、1.0%未満であることが好ましく、0.2%以下であることがより好ましく、0.1%以下であることがさらに好ましく、0.05%以下であることが特に好ましい。
保護フィルムのヘイズは、JIS K−7136に準拠した方法;具体的には、以下の方法で測定することができる。
1)得られた保護フィルムを、23℃55%RH下で5時間以上調湿する。その後、フィルム表面に付着したホコリなどをブロワーなどで除去する。
2)次いで、保護フィルムのヘイズを、23℃55%RHの条件下にて、ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)にて測定する。ヘイズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)としうる。
保護フィルムの可視光透過率は、90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。保護フィルムの破断伸度は、10〜80%であることが好ましく、20〜50%であることがより好ましい。
保護フィルムF2またはF3の製造方法
保護フィルムF2またはF3は、任意の方法で製造することができる。例えば、微粒子を含有する層と微粒子を含有しない層とを積層した後、得られた積層フィルムを延伸する方法で製造されてもよいし;微粒子を含有しない層を延伸した後、得られた延伸フィルムの表面に微粒子を含有する層を積層する方法で製造されてもよい。なかでも、製造効率が高いことから、微粒子を含有する層と微粒子を含有しない層とを積層した後、得られた積層フィルムを延伸する方法で保護フィルムF2またはF3を製造することが好ましい。
微粒子を含有する層と微粒子を含有しない層との積層は、溶液(共)流延法または溶融(共)流延法で行うことができ、平面性が高いフィルムが得られやすいことから、好ましくは溶液(共)流延法で行うことができる。
即ち、保護フィルムF2またはF3を溶液(共)流延法で製造する方法は、1)少なくとも前述のセルロースエステルなどを溶剤に溶解させてコア層用ドープとスキン層用ドープを得る工程、2)得られた各ドープを無端状の金属支持体上に共流延させる工程、3)共流延して得られたドープ膜から溶媒を蒸発させた後、金属支持体から剥離してウェブを得る工程、4)ウェブを乾燥後、延伸して積層フィルム(保護フィルム)を得る工程を含む。
1)コア層用ドープとスキン層用ドープを得る工程
溶解釜において、前述の熱可塑性樹脂と、必要に応じて添加剤とを溶剤に溶解させて、微粒子を含有しないコア層用ドープを得る。同様に、前述の熱可塑性樹脂と、微粒子と、必要に応じて添加剤とを溶剤に溶解させて、微粒子を含有するスキン層用ドープを得る。
各ドープの調製に用いられる溶剤は、セルロースエステルなどの熱可塑性樹脂を溶解するものであれば、特に制限されない。そのような溶剤の例には、メチレンクロライドなどの塩素系有機溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサノン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、乳酸エチル、乳酸、ジアセトンアルコールなどの非塩素系有機溶媒などが含まれ、好ましくは塩化メチレン、酢酸メチル、酢酸エチル、アセトン、乳酸エチルである。
各ドープの調製に用いられる溶剤は、前述した以外の他の溶剤をさらに含有してもよい。そのような他の溶剤の例には、炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールが含まれる。炭素原子数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールの例には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノールなどが含まれ、沸点が比較的低く、乾燥しやすいことなどから、好ましくはエタノールである。
他の溶剤の含有量は、溶剤全体に対して1〜40質量%としうる。他の溶剤の含有割合を高めにすると、得られるウェブがゲル化しやすいため、金属支持体から剥離しやすい。一方、ドープ中の他の溶剤の含有割合を低めにすると、溶剤が非塩素系有機溶媒である場合に、熱可塑性樹脂を溶解させやすい。
溶剤として、メチレンクロライドと、炭素数1〜4の直鎖または分岐鎖状の脂肪族アルコールとを含有するドープ中の熱可塑性樹脂の含有量は、10〜45質量%であることが好ましい。
熱可塑性樹脂の溶解は、常圧で行う方法、主溶媒の沸点以下で行う方法、主溶媒の沸点以上かつ加圧下で行う方法、特開平9−95544号、特開平9−95557号または特開平9−95538号に記載された冷却溶解法で行う方法、特開平11−21379号に記載の高圧下で行う方法などであってよく、特に主溶媒の沸点以上かつ加圧下で行う方法が好ましい。
2)共流延する工程
前述で得られたコア層用ドープとスキン層用ドープとを、共流延ダイから無端状の金属支持体上に共流延させる。共流延させる方法は、各ドープを、流延方向に異なる位置に設けられた複数の流延口からそれぞれ流延させながら逐次的に積層して多層のウェブとする方法(逐次積層共流延)でもよいし;流延方向に同じ位置に設けられた複数の流延口から同時に流延して積層して多層のウェブとする方法(同時積層共流延)でもよい。
逐次積層共流延法の例には、特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号に記載の方法がある。同時積層共流延の例には、特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号に記載の方法などがある。
共流延において、金属支持体に接する層(内側の層)と金属支持体に接しない層(外側の層)のうち金属支持体に接しない層(外側の層)の厚さは、好ましくは全膜厚の1〜50%であり、より好ましくは2〜30%である。例えば、3層以上の共流延の場合は、金属支持体に接しない層の厚さは、金属支持体に接する層以外の層の合計膜厚を意味する。
流延ダイの例には、Tダイなどが含まれる。無端状の金属支持体の例には、金属ベルト(例えばステンレススチールベルト)、金属ドラムなどが含まれる。金属支持体の表面は、鏡面仕上げが施されていることが好ましい。
3)ドープ膜の溶媒を蒸発させた後、金属支持体から剥離してウェブを得る工程
流延したドープ膜を、金属支持体上で残留溶媒量が一定以下となるまで乾燥させる。乾燥方法の例には、ドープ膜の表面に風を当てる方法、ドープ膜を赤外線ヒータなどで加熱する方法などが含まれる。
ドープ膜を乾燥させるときの雰囲気温度は、40〜100℃であることが好ましい。剥離時のドープ膜の残留溶媒量は、得られる保護フィルムの平面性を高めるためには、好ましくは25〜120質量%とし、より好ましくは30〜110質量%としうる。
ウェブの残留溶媒量は、下記式で定義される。下記式において、Mは、製造中のウェブまたは製造後のフィルムから任意の時点で採取した試料の質量を示す。Nは、当該試料を115℃で1時間加熱したときの、試料の質量を示す。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
そして、残留溶媒量が一定以下となるまで乾燥させたドープ膜を、金属支持体上から剥離して、ウェブを得る。ウェブは、「微粒子を含有するコア層となる層」と「微粒子を含有しないスキン層となる層」とを含む。ドープ膜の剥離は、例えば剥離ロールによって行うことができる。ドープ膜の剥離張力は、好ましくは300N/m以下とし、より好ましくは190N/m以下としうる。
ドープ膜を剥離する位置における金属支持体の表面温度は、好ましくは−50〜40℃であり、より好ましくは10〜40℃である。
4)ウェブを乾燥後、延伸してフィルムを得る工程
金属支持体から剥離して得られたウェブを乾燥させた後、延伸する。ウェブの乾燥は、ウェブを上下に配置した多数のロールにより搬送しながら乾燥させてもよいし、ウェブの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
ウェブの乾燥方法は、熱風、赤外線、加熱ロールおよびマイクロ波等で乾燥する方法であってよく、簡便であることから熱風で乾燥する方法が好ましい。ウェブの乾燥温度は、40〜250℃、好ましくは40〜160℃である。高温での乾燥は、ウェブの残留溶媒量が8質量%以下で行うことが好ましい。
ウェブの延伸により、所望のレターデーションを有する保護フィルムを得る。保護フィルムのレターデーションは、ウェブに掛かる張力の大きさを調整することによって制御することができる。
ウェブの延伸は、幅方向(TD方向)、ドープの流延方向(MD方向)、または斜め方向の延伸であり、少なくとも幅方向(TD方向)に延伸することが好ましい。ウェブの延伸は、一軸延伸であっても、二軸延伸であってもよい。二軸延伸は、好ましくはドープの流延方向(MD方向)と幅方向(TD方向)への延伸である。二軸延伸は、逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であってもよい。
逐次二軸延伸には、延伸方向の異なる延伸を順次行う方法や、同一方向の延伸を多段階に分けて行う方法などが含まれる。逐次二軸延伸の例には、以下のような延伸ステップが含まれる。
流延方向(MD方向)に延伸−幅方向(TD方向)に延伸−流延方向(MD方向)に延伸−流延方向(MD方向)に延伸
幅方向(TD方向)に延伸−幅方向に延伸(TD方向)−流延方向(MD方向)に延伸−流延方向(MD方向)に延伸
同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方の方向の張力を緩和して収縮させる態様も含まれる。
延伸倍率は、得られる保護フィルムの膜厚や、求められるレターデーション値にもよるが、各方向に1.01〜2.0倍、より好ましくは1.01〜1.5倍としうる。
ウェブの延伸方法は、特に制限されず、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して流延方向(MD方向)に延伸する方法(ロール延伸法)、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を流延方向(MD方向)に向かって広げて流延方向(MD方向)に延伸したり、幅方向(TD方向)に広げて幅方向(TD方向)に延伸したり、流延方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の両方に広げて流延方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の両方に延伸する方法など(テンター延伸法)などが挙げられる。これらの延伸方法は、組み合わせてもよい。
延伸開始時のウェブの残留溶媒量は、好ましくは30質量%以下とし、より好ましくは25質量%以下としうる。延伸後のフィルムの残留溶媒量は、延伸後の乾燥時間を短縮するためなどから、好ましくは10質量%以下とし、より好ましくは5質量%以下としうる。
ウェブの延伸温度は、30〜160℃であることが好ましく、50〜150℃であることがより好ましく、70〜140℃であることがさらに好ましい。
テンター延伸装置は、ウェブの把持長(把持開始から把持終了までの距離)を、左右で独立に制御できるものが好ましい。また、テンター工程は、得られる偏光板保護フィルムの平面性を高めるために、異なる温度領域を有したり、異なる温度領域の間にニュートラルゾーンを有したりすることが好ましい。
このように、ウェブを構成する「微粒子を含有するスキン層となる層」に含まれる熱可塑性樹脂は、「微粒子を含有しないコア層となる層」に含まれる熱可塑性樹脂よりも、延伸によってレターデーションを発現しにくい。そのため、微粒子を含有しないコア層は、微粒子を含有するスキン層よりも高い位相差を有する保護フィルムを得ることができる。
保護フィルムF1またはF4について
保護フィルムF1またはF4は、透明な熱可塑性樹脂フィルムであれば、特に限定されない。そのような熱可塑性樹脂フィルムの好ましい例には、セルロースエステルフィルムが含まれる。
セルロースエステルフィルムは、市販品であってもよい。市販品のセルロースエステルフィルムの例には、セルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC4UX、KC5UX、KC8UY、KC4UY、KC12UR、KC8UCR−3、KC8UCR−4、KC8UCR−5、KC8UE、KC4UE、KC4FR−3、KC4FR−4、KC4HR−1、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、以上コニカミノルタオプト(株)製)などが含まれる。
保護フィルムF1またはF4の厚みは、特に制限されないが、10〜200μm程度とすることができ、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは10〜70μmである。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.セルロースエステルの準備
セルロースアセテート1(アセチル基置換度2.45、アシル基の総置換度2.45、分子量Mw15万)
セルロースアセテート2(アセチル基置換度2.86、アシル基の総置換度2.45、分子量Mw12万)
セルロースアセテート3(アセチル基置換度2.79、アシル基の総置換度2.79、分子量Mw16万)
2.偏光板保護フィルムの作製
(実施例1−1)
コア層用ドープの調製
下記各成分をミキシングタンクに投入し、攪拌して溶解させた。得られた溶液を、平均孔径4μmのろ紙で濾過した後、平均孔径4μmの焼結金属フィルターでさらに濾過してコア層用ドープを得た。
(コア層用ドープの組成)
セルロースアセテート1:100質量部
トリフェニルホスフェート/ビフェニルジフェニルホスフェート(2/1質量比)の混合物:11.7質量部
下記のレターデーション発現剤1、2および3の混合物:7質量部(5/1/1質量比)
紫外線吸収剤(TINUVIN327 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製):0.375質量部
紫外線吸収剤(TINUVIN328 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製):0.75質量部
メチレンクロライド:829質量部
メタノール:124質量部
スキン層用ドープの調製
下記各成分を、前述と同様にして混合して、スキン層用ドープを得た。
(スキン層用ドープAの組成)
セルロースアセテート2:100質量部
トリフェニルホスフェート:12質量部
メチレンクロライド:406質量部
メタノール:61質量部
(スキン層用ドープBの組成)
セルロースアセテート2:100質量部
トリフェニルホスフェート:12質量部
二酸化ケイ素微粒子(シリカ微粒子、一次粒径20nm、モース硬度約7):3質量部
メチレンクロライド:406質量部
メタノール:61質量部
得られたコア層用ドープとスキン層用ドープAおよびBを、バンド流延機にて共流延させた。具体的には、走行するバンド上に、流延ダイからスキン層用ドープA/コア層用ドープ/スキン層用ドープBの順に積層されるように同時多層流延させた。
バンド上で流延したドープ膜を、残留溶剤量が約30質量%となるまで乾燥させた後、バンドから剥ぎ取ってウェブを得た。得られたウェブを、テンターにて140℃の熱風で乾燥させた後、ロールで搬送させながら120〜150℃でさらに乾燥させた。得られたウェブの厚みは80μmであった。
得られたウェブを、テンターにて140℃、延伸倍率35%でウェブの幅方向(TD方向)に延伸した後、延伸倍率が28%となるように140℃で60秒間緩和させた。延伸開始時のウェブの残留溶剤量は、25質量%とした。それにより、スキン層A/コア層/スキン層Bの積層構造を有する保護フィルム1を得た。得られた保護フィルム1の総厚みは60μmであり、各層の厚みはスキン層A/コア層/スキン層B=3μm/54μm/3μmであった。
(実施例1−2)
スキン層用ドープBに含まれる二酸化ケイ素微粒子(シリカ微粒子、一次粒径20nm、モース硬度約7)を、SMA1000F(スチレン−無水マレイン酸共重合体微粒子分散水溶液)に変更した以外は、実施例1−1と同様にしてスキン層用ドープBを得た。
得られたスキン層用ドープBと、前述のスキン層用ドープAと、コア層用ドープとを流延し、かつウェブの延伸倍率を30%とした以外は実施例1−1と同様にして、スキン層A/コア層/スキン層Bの積層構造を有する保護フィルム2を得た。得られた保護フィルム2の総厚みは54μmであり、各層の厚みはスキン層A/コア層/スキン層B=2μm/50μm/2μmであった。
(比較例1−1)
ドープの調製
下記各成分をミキシングタンクに投入し、攪拌して溶解させた。得られた溶液を、平均孔径4μmのろ紙で濾過した後、平均孔径4μmの焼結金属フィルターでさらに濾過してドープを得た。
(ドープの組成)
セルロースアセテート3:100質量部
トリフェニルホスフェート/ビフェニルジフェニルホスフェート(2/1質量比)の混合物:11.7質量部
上記レターデーション発現剤1、2および3の混合物:7質量部(5/1/1質量比)
微粒子(二酸化ケイ素、一次粒径20nm、モース硬度約7):0.05質量部
紫外線吸収剤(TINUVIN327 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製):0.375質量部
紫外線吸収剤(TINUVIN328 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ製):0.75質量部
メチレンクロライド:829質量部
メタノール:124質量部
得られたドープを、バンド流延機のバンド上に流延させた。得られたドープ膜を、残留溶剤量が25〜50質量%となるまで乾燥させた後、バンドから剥ぎ取ってウェブを得た。得られたウェブを、テンターにて、140℃、延伸倍率35%でウェブの幅方向に延伸した。延伸開始時のウェブの残留溶剤量は、5質量%とした。延伸後のフィルムを約5%収縮させた後、ロールで搬送しながらさらに乾燥させた。得られたフィルムの幅方向両端部をナーリング加工して保護フィルム3を得た。
(比較例1−2)
ドープに含まれるレターデーション発現剤1、2および3の混合比率を、発現剤1/発現剤2/発現剤3=6質量部/0.5質量部/0.5質量部に変更した以外は比較例1−1と同様にして保護フィルム4を得た。
実施例1−1〜1−2および比較例1−1〜1−2で得られた保護フィルムのレターデーションR0およびRthを、以下の方法で測定した。
(レターデーションR0およびRthの測定)
1)得られた保護フィルムを、23℃55%RHで調湿した。調湿後の保護フィルムの3方向の屈折率をアッベ屈折計にて測定し、それらの平均値を平均屈折率とした。
2)調湿後の保護フィルムに、フィルム法線方向から測定波長590nmの光を入射させたときのR0を、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)にて測定した。
3)KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)により、フィルム法線方向に対してθの角度(入射角(θ))から測定波長590nmの光を入射させたときのレターデーション値R(θ)を測定した。θは30°〜50°とした。
4)測定されたR0およびR(θ)と、前述の平均屈折率と膜厚とから、KOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)により、nx、nyおよびnzを算出して、測定波長590nmでのRthを算出した。レターデーションの測定は、23℃55%RH条件下で行った。
実施例1−1〜1−2および比較例1−1〜1−2の保護フィルムの評価結果を表1に示す。
3.偏光板の作製
偏光板1の作製
厚さ75μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。このフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬させた後、ヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5g、水100gからなる45℃の水溶液に浸漬させた。浸漬後のフィルムを、55℃、延伸倍率5倍で一軸延伸した。得られたフィルムを水洗した後、乾燥させて厚さ25μmの偏光子を得た。
実施例1−1で得られた保護フィルム1の他に、透明保護フィルムとして、市販のコニカミノルタオプト製KC4UA−SWを準備した。保護フィルム1と透明保護フィルムを、それぞれ50℃2NのKOH水溶液でアルカリケン化処理した後、水洗し、乾燥させた。
偏光子の一方の面に、ケン化処理済みの実施例1−1の保護フィルム1を、水糊を介して配置し;偏光子の他方の面に、ケン化処理済みの透明保護フィルムを、水糊を介して配置し、積層物を得た。得られた積層物を、圧力20〜30N/cm2、搬送スピード約10m/分で貼り合わせた後、70℃で約2分間、次いで60℃で約2分間乾燥させて偏光板1を得た。
一方、剥離加工したポリエチレンテレフタレートフィルム上に粘着層を設けた粘着テープを予め準備した。そして、得られた偏光板の保護フィルム側の面に、粘着テープの粘着層を貼りつけて、粘着剤付き偏光板1を得た。
偏光板2〜3の作製
実施例1−1で得られた保護フィルム1を、比較例1−1で得られた保護フィルム3または比較例1−2で得られた保護フィルム4に変更した以外は前述と同様にして偏光板2〜3を得た。
偏光板Aの作製
前述の保護フィルムと透明保護フィルムKC4UA−SWに代えて、偏光子の片面のみに透明保護フィルムKC4UA−SWを貼り合わせた以外は偏光板1と同様にして偏光板Aを作製した。
4.液晶表示装置の作製
(実施例2−1)
液晶セルの作製
ガラス基板上に、所定のパターンのマスクを介してITOをスパッタリングして、ITO膜を形成した。得られたITO膜上にレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとしてITO膜の露出部をエッチングして、前述の図4Aに示されるような第一のスリット領域A、第二のスリット領域Bおよび第三のスリット領域Cを含む画素電極を形成した。第一のスリットの総面積/第二のスリットの総面積/第三のスリットの総面積の比率を、40/40/20とした。画素内における第一のスリットおよび第二のスリットの長さは300μmとし、幅は100μmとした。第三のスリットの長さは150μmとし、幅は100μmとした。
得られた画素電極上に、下記式(3)で表されるクマリン基を有するポリイミドを含む光配向膜用ポリイミド溶液を、厚さ70nmにスピンコート法により塗布した。次いで、得られた塗布層を180℃で60分間焼成して光配向膜を形成した。その後、得られた光配向膜面にスキャン露光して配向処理を行い、図4Aに示されるような配向分割構造を有する垂直配向膜を得た。スキャン露光における、光線の基板面の法線に対する入射角は15°とした。これにより、第一の基板を得た。
一方、前述の第一の基板とは別に、ITO膜付きガラス基板を準備した。このITO膜上に、カラーフィルタを配置し、その上に前述と同様にして光配向膜を形成した。その後、得られた光配向膜面に、スキャン露光して配向処理を行い、図4Bに示されるような配向処理方向を有する垂直配向膜を得た。これにより、第二の基板を得た。
第一の基板の垂直配向膜上に、スペーサである球状の樹脂ボールを含有する接着剤を枠状に塗布形成した。接着剤からなる枠には、液晶材料を注入するための開口部を設けた。次いで、第一の基板の垂直配向膜と、第二の基板の垂直配向膜とが対向するように、第一の基板と第二の基板とを、枠状の接着剤を介して貼り合わせた。
接着剤に含まれるスペーサであるプラスチックビーズの粒径は4.5μmとした。液晶セルのギャップdを5μmとした。
得られた液晶セル内に、誘電率異方性が負である表示用液晶材料(Δn=0.08、Δε=−4)を真空注入法によって注入した。表示用液晶材料を注入した後、注入口を紫外線硬化樹脂で封止して、垂直配向型の液晶セルを得た。得られた液晶セルの△ndは、400nmであった。電圧無印加時における各基板近傍の液晶分子の、基板の法線に対するプレチルト角は1°であった。電圧印加時には液晶分子が基板面に対して略平行に配向し、かつ第一の基板側から第二の基板側に亘ってツイスト配向するものであった。
得られた液晶セルの両面に、表2に示されるように偏光板を貼り合あわせて、液晶表示装置を得た。
(実施例2−2〜2−3、比較例2−1〜2−2)
得られた液晶セルの両面に貼り合わせる偏光板を、表2に示されるように変更した以外は実施例2−1と同様にして液晶表示装置を得た。
得られた液晶表示装置の、正面コントラストおよび視野角を、それぞれ以下の方法で評価した。
(正面コントラストの測定)
i)液晶表示装置を白表示させたときの表示画面の、1m離れた距離からの正面輝度(表示画面の法線方向から測定される輝度)を、コニカミノルタセンシング製CS2000で測定した。同様にして、液晶表示装置を黒表示させたときの表示画面の正面輝度を測定した。
ii)黒表示させたときの表示画面の正面輝度に対する、白表示させたときの表示画面の正面輝度の比を正面コントラストとした。
正面コントラスト=(白表示させたときの正面輝度)/(黒表示させたときの正面輝度)
iii)液晶表示装置の表示画面の任意の10点における正面コントラストを測定し、それらの平均値を求めた。
(視野角の評価)
液晶表示装置を白表示させたときの、倒れ角θ°における、方位角φが45°または135°の方向での輝度を、測定機(EZ−Contrast160D、ELDIM社製)を用いて測定した。傾れ角θ°における輝度の測定は、表示画面の表面の法線に対して0〜80°の範囲で0.5°毎に行った。同様に、液晶表示装置を黒表示させたときの、倒れ角θ°における、方位角φが45°または135°の方向での輝度を測定した。得られた輝度を下記式に当てはめて、倒れ角θ°における、方位角45°または135°の方向でのコントラスト比をそれぞれ算出し、それらの平均値を算出した。そして、コントラスト比が100となる倒れ角θのうち最大の角度(表示画面の法線に対して傾斜する角度の最大値)を視野角とした。
コントラスト比=(白表示時の輝度)/(黒表示時の輝度)×100
倒れ角θとは、表示画面の法線に対して傾斜する角度をいい、方位角とは、表示画面の面内での回転方向の角度をいう。
実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−2の液晶表示装置の評価結果を表2に示す。
表2に示されるように、実施例2−1の液晶表示装置は、比較例2−1〜2−2の液晶表示装置よりも、正面コントラストが高く、かつ視野角が広いことがわかる。