JP5170338B1 - 光学補償フィルムおよびその製造方法、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents

光学補償フィルムおよびその製造方法、偏光板および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】セルロースジアセテートを含み、かつ表示装置の視野角によるコントラストのムラを低減しうる光学補償フィルムを提供する。
【解決手段】
アセチル基置換度の平均が2.0〜2.5であるセルロースアセテートと、ガラス転移温度低下剤とを含有する光学補償フィルムであって、前記セルロースアセテートの、高速液体クロマトグラフィー測定して得られるクロマトグラムにおいて、保持時間0〜4分の範囲のピーク面積の、保持時間0〜28分の範囲の全ピーク面積に対する割合が1〜10%であり、光学補償フィルムにおけるガラス転移温度低下剤の、一方の面近傍の含有量と他方の面近傍の含有量とは異なり、光学補償フィルムの表面の法線に平行に波長550nmの光を入射させたときの、該法線に対して4〜10°の透過散乱光強度の積算量I4−10の、該法線に対して4〜60°の透過散乱光強度の積算量I4−60に対する割合が97%以上である。
【選択図】図6

Description

本発明は、光学補償フィルムおよびその製造方法、偏光板および液晶表示装置に関する。
液晶表示装置は、テレビやパソコンなどの液晶ディスプレイとして広く用いられている。なかでも、垂直配向型の液晶表示装置は、コントラストが高いことから好ましく用いられている。これらの垂直配向型の液晶表示装置には、さらなる正面コントラストの向上が求められている。
液晶表示装置は、通常、液晶セルと、それを挟持する偏光板とを有する。偏光板は、偏光子と、それを挟持する保護フィルムとを有する。偏光子の液晶セル側に配置される保護フィルムには、通常、光学補償フィルムが用いられている。そして、液晶表示装置の正面コントラストを高めるために、光学補償フィルムの内部ヘイズなどの散乱因子を低減することが検討されている。
例えば、特許文献1には、異方性散乱が低減された光学補償フィルムが提案されている。異方性散乱とは、光学補償フィルムの遅相軸方向での散乱光強度と、それと直交する方向での散乱光強度との差として表される。
特開2009−221290号公報
ところで、光学補償フィルムとしては、偏光子と貼り合わせやすいことなどから、セルロースエステルを含むフィルムが多く用いられている。なかでも、アセチル基置換度が2.5以下のセルロースアセテート(セルロースジアセテート)は、安価であるだけでなく、それを含むフィルムを延伸することで高い位相差を発現しうる。そのため、セルロースジアセテートを含む光学補償フィルムが検討されている。
しかしながら、セルロースジアセテートを含む光学補償フィルムを有する垂直配向型の液晶表示装置は、斜め方向のコントラストが、正面方向のコントラストよりも顕著に低く、視野角によるコントラストのムラが生じやすいという問題があった。視野角によるコントラストのムラは、内部ヘイズが十分に低減された光学補償フィルムを用いた場合においても生じやすかった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、セルロースジアセテートを含み、表示装置の視野角によるコントラストのムラを低減しうる光学補償フィルムを提供することを目的とする。
[1] アセチル基置換度の平均が2.0〜2.5であるセルロースアセテートと、ガラス転移温度低下剤とを含有する光学補償フィルムであって、前記光学補償フィルムの、一方の面近傍の前記ガラス転移温度低下剤の含有量と、他方の面近傍の前記ガラス転移温度低下剤の含有量とは異なっており、前記光学補償フィルムに、前記光学補償フィルム表面の法線に平行に波長550nmの光を入射させたときの、前記光学補償フィルム表面の法線に対して4〜10°の範囲の透過散乱光強度の積算量I4−10の、前記光学補償フィルム表面の法線に対して4〜60°の範囲の透過散乱光強度の積算量I4−60に対する割合が97%以上である、光学補償フィルム。
[2] 前記光学補償フィルムに、当該光学補償フィルム表面の法線に平行に波長550nmの直線偏光を入射させたときの、透過光の偏光面の前記直線偏光の偏光面に対する回転角度をθとし、前記光学補償フィルムに、当該光学補償フィルム表面の法線に対して30°傾斜させて波長550nmの直線偏光を入射させたときの、透過光の偏光面の前記直線偏光の偏光面に対する回転角度をθ30としたとき、θ30−θが1.5°以上である、[1]に記載の光学補償フィルム。
[3] 前記セルロースアセテートの、下記の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定して得られるクロマトグラムにおいて、保持時間が0〜4分の範囲のピーク面積の、保持時間が0〜28分の範囲の全ピーク面積に対する割合が1〜10%の範囲である、[1]または[2]に記載の光学補償フィルム。
(測定条件)
カラム:シリカゲル充填剤(カーボンロード率:4.6%、結合官能基:フェニル基、エンドキャップ:有り、形状:球状、平均粒子径:4μm、細孔径:60Å、表面積:120m/g)を含む、内径3.9mm×長さ150mmのカラム
溶離液:下記溶離液(A)と(B)の混合液(A/B)を使用。
(A)クロロホルム/メタノール=9/1(体積比)
(B)メタノール/水=8/1(体積比)
(A/B)溶離液AとBの体積比A/B=20/80(0分)〜100/0(28分);溶離液AとBの体積比A/Bを、時間に対して一次直線的に変化させる
流速:0.7ml/分
カラム温度:30℃
注入量:20μL
試料溶解:前記溶離液(A)で0.1%に調製(完全溶解)
[4] 前記セルロースアセテートは、アセチル基置換度が2.2〜2.5のセルロースアセテートの高置換度成分と、アセチル基置換度が2.2未満のセルロースアセテートの低置換度成分とを含み、前記低置換度成分の含有量は、前記高置換度成分と前記低置換度成分の合計に対して1.0〜10質量%である、[1]〜[3]のいずれかに記載の光学補償フィルム。
[5] 前記光学補償フィルムの一方の面近傍での前記ガラス転移温度低下剤の含有量が、前記光学補償フィルムの他方の面近傍での前記ガラス転移温度低下剤の含有量の1.1倍以上1.5倍以下である、[1]〜[4]のいずれかに記載の光学補償フィルム。
[6] 下記式(I)で定義され、かつ波長590nm、23℃55%RHの条件下で測定される面内方向のレターデーションRが10nm以上100nm以下であり、下記式(II)で定義され、かつ波長590nm、23℃55%RHの条件下で測定される厚み方向のレターデーションRthが70nm以上300nm以下である、[1]〜[5]のいずれかに記載の光学補償フィルム。
式(I):R=(nx−ny)×t(nm)
式(II):Rth={(nx+ny)/2−nz}×t(nm)
(式(I)および(II)において、
nxは、前記光学補償フィルムの面内方向において屈折率が最大になる遅相軸方向xにおける屈折率を表し;
nyは、前記光学補償フィルムの面内方向において前記遅相軸方向xと直交する方向yにおける屈折率を表し;
nzは、前記光学補償フィルムの厚み方向zにおける屈折率を表し;
t(nm)は、前記光学補償フィルムの厚みを表す)
[7] 前記セルロースアセテートと、前記ガラス転移温度低下剤と、溶剤とを含むドープを得るステップと、前記ドープを無端状の金属支持体上に流延するステップと、前記流延したドープから溶媒を蒸発させてウェブを得るステップとを含む[1]〜[6]のいずれかに記載の光学補償フィルムの製造方法であって、前記ガラス転移温度低下剤のSP値と前記溶剤のSP値の差の絶対値が、前記ガラス転移温度低下剤のSP値と前記セルロースアセテートのSP値の差の絶対値よりも小さい、光学補償フィルムの製造方法。
[8] [1]〜[6]のいずれかに記載の光学補償フィルムを含む、偏光板。
[9] 液晶セルと、前記液晶セルの一方の面に配置され、第一の偏光子を含む第一の偏光板と、前記液晶セルの他方の面に配置され、第二の偏光子を含む第二の偏光板と、を有する液晶表示装置であって、前記第一の偏光板および第二の偏光板の少なくとも一方が、[1]〜[6]のいずれかに記載の光学補償フィルムを含む、液晶表示装置。
[10] 前記液晶セルは、一対の透明基板と、前記一対の透明基板の間に配置され、液晶分子を含む液晶層とを含み、電圧無印加時には、前記液晶分子を前記一対の透明基板の表面に対して垂直に配向させ、かつ電圧印加時には、前記液晶分子を前記一対の透明基板の表面に対して水平に配向させるものである、[9]に記載の液晶表示装置。
[11] 前記光学補償フィルムは、前記第一の偏光子または第二の偏光子の前記液晶セル側の面に配置される、[9]または[10]に記載の液晶表示装置。
本発明の光学補償フィルムは、セルロースジアセテートを含み、かつ液晶表示装置の表示装置の視野角によるコントラストのムラを低減しうる。
光学補償フィルムの旋光性の角度依存性の測定方法の一例を示す模式図である。 測定用サンプルの作製手順を示す模式図である。 測定用サンプルの作製手順を示す模式図である。 測定用サンプルの作製手順を示す模式図である。 測定用サンプルの作製手順を示す模式図である。 本発明に係る液晶表示装置の構成の一例を示す模式図である。 実施例におけるセルロースアセテート(AAA)とセルロースアセテート(A′)のHPLCチャートの一例を示す図である。 実施例におけるセルロースアセテート(AA)のHPLCチャートの一例を示す図である。 実施例および比較例の透過散乱光強度の角度分布を示すグラフである。
1.光学補償フィルム
本発明の光学補償フィルムは、セルロースエステルを含有し、必要に応じてガラス転移温度低下剤などの添加剤をさらに含有していてもよい。本発明の光学補償フィルムは、液晶表示装置の液晶セルと偏光子との間に配置され、例えば位相差調整機能を有する偏光板保護フィルムとして好ましく用いられる。
セルロースエステル
セルロースエステルは、セルロースの水酸基を、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸でエステル化して得られる化合物である。
セルロースエステルに含まれるアシル基は、脂肪族アシル基または芳香族アシル基であり、好ましくは脂肪族アシル基である。なかでも、一定以上の位相差発現性を得るためには、炭素原子数2〜6の脂肪族アシル基が好ましく、炭素原子数2〜4の脂肪族アシル基がより好ましい。炭素原子数2〜4の脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基などが含まれ、より好ましくはアセチル基である。
セルロースエステルの例には、セルロースアセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートなどが含まれ、好ましくはセルロースアセテートである。セルロースアセテートは、セルロースエステルに含まれるアシル基の全てがアセチル基であることが好ましい。
セルロースアセテートのアセチル基置換度の平均(アシル基の総置換度)は、延伸によって位相差を発現しやすいこと、膜厚を小さくしても高い位相差が得られること、高い位相差を発現させるための延伸倍率を低くしうることなどから、好ましくは2.0〜2.5であり、より好ましくは2.2〜2.5であり、さらに好ましくは2.3〜2.48である。
アシル基の総置換度(アセチル基置換度の平均)の測定は、ASTM−D817−96に準じて行うことができる。
セルロースアセテートは、後述する光学補償フィルムのI4−10/I4−60を高くする(透過散乱光を正面方向に集中させる)ためには、アセチル基置換度が2.2〜2.5のセルロースアセテートの高置換度成分と、アセチル基置換度が2.2未満、好ましくは2.0以上2.2未満のセルロースアセテートの低置換度成分とを含むことが好ましい。
上記低置換度成分の含有量は、上記高置換度成分と低置換度成分の合計に対して1.0質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることがより好ましい。低置換度成分の含有量が1.0質量%未満であると、光学補償フィルムの透過光の散乱が、正面方向だけでなく斜め方向にも多く生じる(透過散乱光を正面方向に集中させにくい)ため、表示装置の正面方向と斜め方向とでコントラストのムラが生じやすい。一方、低置換度成分の含有量は、上記高置換度成分と低置換度成分の合計に対して10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。低置換度成分の含有量が10質量%超であると、光学補償フィルムが白濁するため、保護フィルムとしての透明性が損なわれやすい。
低置換度成分は、下記条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定したときの、保持時間が0〜4分の範囲のピークとして確認することができる。
(測定条件)
装置:Waters製 Alliance型2695型システム
カラム:シリカゲル充填剤(カーボンロード率:4.6%、結合官能基:フェニル基、エンドキャップ:有り、形状:球状、平均粒子径:4μm、細孔径:60Å、表面積:120m/g)を含む内径3.9mm×長さ150mmのカラム(Waters製 Nova−Pak Phenyl)
溶離液:下記溶離液(A)と(B)の混合液(A/B)を使用
(A)クロロホルム/メタノール=9/1(体積比)
(B)メタノール/水=8/1(体積比)
(A/B)溶離液AとBの体積比A/B=20/80(0分)〜100/0(28分);溶離液AとBの体積比A/Bを、時間に対して一次直線的に変化させる
流速:0.7ml/分
検出器:エバポレイティブ光散乱検出器(ELSD)
エバポレイション温度75℃、ネブライザ温度60℃、窒素圧力30psi
カラム温度:30℃
注入量:20μL
試料溶解:溶離液(A)で0.1%に調製(完全溶解)
上記条件で測定されるクロマトグラムにおいて、保持時間が0〜4分の範囲のピーク面積の、保持時間が0〜28分の範囲の全ピーク面積に対する割合は、1%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることがより好ましい。上記割合が1%未満であると、光学補償フィルムの透過光の散乱が、正面方向だけでなく斜め方向にも多く生じる(透過散乱光を正面方向に集中させにくい)ため、表示装置の正面方向と斜め方向とでコントラストのムラが生じやすい。一方、保持時間が0〜4分の範囲のピーク面積の、保持時間が0〜28分の範囲の全ピーク面積に対する割合は、10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましい。上記割合が10%超であると、光学補償フィルムが白濁するため、保護フィルムとしての透明性が損なわれやすい。
即ち、「保持時間が0〜4分の範囲のピーク面積の、保持時間が0〜28分の範囲の全ピーク面積に対する割合(%)」は、前述の「低置換度成分の含有量の、低置換度成分と高置換度成分の合計量に対する割合(質量%)」と同義である。
アセチル基置換度が2.2〜2.5のセルロースアセテートの高置換度成分と、アセチル基置換度が2.2未満のセルロースアセテートの低置換度成分とを含有するセルロースアセテートは、セルロースアセテートの合成条件を調整したり;低置換度成分を含まないセルロースジアセテート(精製セルロースジアセテート)に、低置換度成分を所定量混合したりして得ることができる。
例えば、セルロースアセテートの合成は、通常、(A)活性化工程(前処理工程)、(B)アセチル化工程、(C)アセチル化反応停止工程、(D)熟成工程(加水分解工程)、および(E)熟成停止工程を含む。このうち、(E)の熟成停止工程の条件を調整することで、得られるセルロースアセテート中の低置換度成分の含有量を調整することができる。
低置換度成分を含まないセルロースアセテート(精製セルロースアセテート)は、例えば、合成により得られたセルロースアセテートXを、低置換度成分の良溶媒(好ましくはメタノール)に分散させて分散溶液とした後;得られる分散溶液を、ろ過してろ取物として得ることができる。一方、低置換度成分は、ろ液を濃縮乾燥して得ることができる。
低置換度成分の良溶媒の例には、メタノール、アセトン、およびそれらの混合溶媒(メタノール/アセトン=2/8溶液など)が含まれる。
セルロースアセテートの数平均分子量は、機械的強度が高いフィルムを得るためには、3.0×10以上7.0×10未満であることが好ましく、4.5×10以上6.0×10未満であることがより好ましい。セルロースアセテートの重量平均分子量は、1.1×10以上2.5×10未満であることが好ましく、1.2×10以上2.5×10未満であることがより好ましく、1.5×10以上2.0×10未満であることがさらに好ましい。
セルロースアセテートの分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、1.8〜4.5であることが好ましい。
セルロースアセテートの数平均分子量および重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。測定条件は以下の通りである。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製)を3本接続して使用する。
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0ml/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standardポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1.0×10〜5.0×10までの13サンプルによる校正曲線を使用する。13サンプルは、ほぼ等間隔に選択することが好ましい。
セルロースアセテートに含まれるアルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム)の含有量は、30質量ppm未満であることが好ましく、20質量ppm未満であることがより好ましく、10質量ppm未満であることがより好ましい。アルカリ土類金属の含有量が30質量ppm以上であると、光学補償フィルムを溶液流延法で製造する工程における、ドープ膜の金属支持体からの剥離力が強くなりすぎて、フィルムにスジや横段といった欠陥が生じやすい。
セルロースアセテートの原料であるセルロースの例には、綿花リンター、木材パルプ(針葉樹由来、広葉樹由来)およびケナフなどが含まれる。原料となるセルロースは、一種類だけであってもよいし、二種類以上の混合物であってもよい。
ガラス転移温度低下剤
ガラス転移温度低下剤の例には、ポリエステル化合物、多価アルコールエステル化合物、多価カルボン酸エステル化合物(フタル酸エステル化合物を含む)、グリコレート化合物、およびエステル化合物(脂肪酸エステル化合物やリン酸エステル化合物などを含む)が含まれる。これらは、単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
ポリエステル化合物は、一般式(I)で表されるポリエステル化合物であることが好ましい。
Figure 0005170338
一般式(I)のAは、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、または炭素数3〜10のシクロアルキレン基を示し、Tg低下能に優れることから、好ましくは炭素数6〜14のアリーレン基であり、より好ましくはフェニレン基、ナフチレン基またはビフェニリレン基である。Bは、炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基または炭素数3〜10のシクロアルキレン基を示す。Xは、水素原子または炭素数6〜14の芳香族モノカルボン酸または炭素数1〜6の脂肪族モノカルボン酸の残基を示し、好ましくは水素原子または炭素数6〜14の芳香族モノカルボン酸の残基である。nは、1以上の自然数を表す。
一般式(I)で表されるポリエステル化合物は、炭素数6〜14のアリーレン基、炭素数2〜6の直鎖もしくは分岐のアルキレン基、または炭素数3〜10のシクロアルキレン基を有するジカルボン酸と、炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基または炭素数3〜10のシクロアルキレン基を有するジオールとを縮合反応させた後、必要に応じて芳香族モノカルボン酸または脂肪族モノカルボン酸で末端を封止して得ることができる。
炭素数6〜14のアリーレン基を有するジカルボン酸の例には、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,8−ナフタレンジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等が含まれ、好ましくはテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸である。これらのジカルボン酸に含まれるアリーレン基は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、または炭素数1〜6のアルコキシ基などの置換基をさらに有してもよい。
炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基を有するジカルボン酸の例には、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸などが含まれ、好ましくはコハク酸、アジピン酸である。炭素数3〜10のシクロアルキレン基を有するジカルボン酸の例には、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が含まれ、好ましくは1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
炭素数2〜6の直鎖または分岐のアルキレン基を有するジオールの例には、エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等が含まれ、好ましくはエタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオールである。
炭素数3〜10の直鎖または分岐のシクロアルキレン基を有するジオールの例には、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が含まれる。
炭素数6〜14の芳香族モノカルボン酸の残基の例には、安息香酸、オルトトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸、ジメチル安息香酸、パラメトキシ安息香酸の残基が含まれ、好ましくは安息香酸、パラトルイル酸、パラターシャリブチル安息香酸の残基である。炭素数1〜6の脂肪族モノカルボン酸の残基の例には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸の残基などが含まれる。
一般式(I)で表されるポリエステル化合物の具体例を以下に示す。下記具体例において、一般式(I)のXは全て水素原子としうる。
Figure 0005170338
Figure 0005170338
Figure 0005170338
Figure 0005170338
Figure 0005170338
Figure 0005170338
多価アルコールエステル化合物は、2価以上の脂肪族多価アルコールと、モノカルボン酸とのエステル化合物(アルコールエステル)であり、好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。多価アルコールエステル化合物は、分子内に芳香環またはシクロアルキル環を有することが好ましい。
脂肪族多価アルコールの好ましい例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、キシリトール等が含まれる。なかでも、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールなどが好ましい。
モノカルボン酸は、特に制限はなく、脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸等でありうる。フィルムの透湿性を高め、かつ揮発しにくくするためには、脂環式モノカルボン酸または芳香族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸は、一種類であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。また、脂肪族多価アルコールに含まれるOH基の全部をエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
脂肪族モノカルボン酸は、炭素数1〜32の直鎖または側鎖を有する脂肪酸であることが好ましい。脂肪族モノカルボン酸の炭素数はより好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜10である。脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸;ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等が含まれる。なかでも、セルロースアセテートとの相溶性を高めるためには、酢酸、または酢酸とその他のモノカルボン酸との混合物が好ましい。
脂環式モノカルボン酸の例には、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸などが含まれる。
芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸;安息香酸のベンゼン環にアルキル基またはアルコキシ基(例えばメトキシ基やエトキシ基)を1〜3個を導入したもの(例えばトルイル酸など);ベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸(例えばビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸など)が含まれ、好ましくは安息香酸である。
多価アルコールエステル化合物の具体例を以下に示す。2価のアルコールエステル化合物の例には、以下のものが含まれる。
Figure 0005170338
3価以上のアルコールエステル化合物の例には、以下の化合物が含まれる。
Figure 0005170338
Figure 0005170338
Figure 0005170338
Figure 0005170338
多価カルボン酸エステル化合物は、2価以上、好ましくは2〜20価の多価カルボン酸と、アルコール化合物とのエステル化合物である。多価カルボン酸は、2〜20価の脂肪族多価カルボン酸であるか、3〜20価の芳香族多価カルボン酸または3〜20価の脂環式多価カルボン酸であることが好ましい。
多価カルボン酸の例には、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸またはその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などが含まれ、フィルムからの揮発を抑制するためには、オキシ多価カルボン酸が好ましい。
アルコール化合物の例には、直鎖もしくは側鎖を有する脂肪族飽和アルコール化合物、直鎖もしくは側鎖を有する脂肪族不飽和アルコール化合物、脂環式アルコール化合物または芳香族アルコール化合物などが含まれる。脂肪族飽和アルコール化合物または脂肪族不飽和アルコール化合物の炭素数は、好ましくは1〜32であり、より好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜10である。脂環式アルコール化合物の例には、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどが含まれる。芳香族アルコール化合物の例には、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどが含まれる。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は、特に制限はないが、300〜1000であることが好ましく、350〜750であることがより好ましい。多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、ブリードアウトを抑制する観点では、大きいほうが好ましく;透湿性やセルロースアセテートとの相溶性の観点では、小さいほうが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の例には、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が含まれる。
多価カルボン酸エステル化合物は、フタル酸エステル化合物であってもよい。フタル酸エステル化合物の例には、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が含まれる。
グリコレート化合物の例には、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が含まれる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類の例には、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が含まれる。
エステル化合物には、脂肪酸エステル化合物、クエン酸エステル化合物やリン酸エステル化合物などが含まれる。
脂肪酸エステル化合物の例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、およびセバシン酸ジブチル等が含まれる。クエン酸エステル化合物の例には、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、およびクエン酸アセチルトリブチル等が含まれる。リン酸エステル化合物の例には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、およびトリブチルホスフェート等が含まれる。
なかでも、多価アルコールエステル化合物、グリコレート化合物、リン酸エステル化合物が好ましい。
ガラス転移温度低下剤のTg低下能は、好ましくは3.5℃/質量部以上であり、より好ましくは3.8℃/質量部以上であり、さらに好ましくは4.0℃/質量部以上である。ガラス転移温度低下剤のTg低下能が上記範囲であると、少ない添加量でも優れたTg低下効果が得られる。一方、ガラス転移温度低下剤のTg低下能は、通常、10.0℃/質量部以下である。
ガラス転移温度低下剤のTg低下能は、下記式によって定義される。下記式において、Xは、セルロースアセテートからなるフィルムのTgを示し;Yは、セルロースアセテート100質量部と、ガラス転移温度低下剤を5質量部とからなるフィルムのTgを示す。フィルムのTgは、示差走査熱量測定法(DSC)により測定することができる。
Figure 0005170338
後述するように、光学補償フィルムの厚み方向にガラス転移温度低下剤を偏在させるためには、フィルムの製造工程に用いるドープ液における、ガラス転移温度低下剤のFedorsの溶解度パラメーターの値(SP値)と溶剤のSP値との差の絶対値が、ガラス転移温度低下剤のSP値とセルロースアセテートのSP値との差の絶対値よりも小さいことが好ましい。
ガラス転移温度低下剤のSP値とセルロースアセテートのSP値との差の絶対値は、好ましくは0.5以上であり、より好ましくは1.0以上としうる。また、ガラス転移温度低下剤のSP値は、9.5〜11.5の範囲であることが好ましい。
ガラス転移温度低下剤の含有量は、低置換度成分を含むセルロースアセテート全体に対して好ましくは1〜15質量%であり、より好ましくは1.5〜10質量%である。ガラス転移温度低下剤の含有量が1質量%未満であると、ガラス転移温度低下剤によるTg低下効果が十分でないことがある。一方、ガラス転移温度低下剤の含有量が10質量%超であると、それを含む光学補償フィルムの位相差が十分には得られにくいことがある。
微粒子(マット剤)
光学補償フィルムは、表面の滑り性を高めるためなどから、微粒子(マット剤)をさらに含有してもよい。
微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。無機微粒子の例には、二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムなどが含まれる。なかでも、二酸化珪素や酸化ジルコニウムが好ましく、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、より好ましくは二酸化珪素である。
二酸化珪素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)などが含まれる。なかでも、アエロジルR972V、NAX50、シーホスターKE−P30などが、得られるフィルムの濁度を低く保ちつつ、摩擦係数を低減させうるため特に好ましい。
微粒子の一次粒子径は、5〜50nmであることが好ましく、7〜20nmであることがより好ましい。一次粒子径が大きいほうが、得られるフィルムの滑り性を高める効果は大きいが、透明性が低下しやすい。そのため、微粒子は、粒子径0.05〜0.3μmの二次凝集体として含有されていてもよい。微粒子の一次粒子またはその二次凝集体の大きさは、透過型電子顕微鏡にて倍率50万〜200万倍で一次粒子または二次凝集体を観察し、一次粒子または二次凝集体100個の粒子径の平均値として求めることができる。
微粒子の含有量は、低置換度成分を含むセルロースアセテート全体に対して0.05〜1.0質量%であることが好ましく、0.1〜0.8質量%であることがより好ましい。
光学補償フィルムは、透過散乱光をフィルムの法線方向(正面方向)に集中させやすくするためには、単層であることが好ましい。
光学補償フィルムの物性
前述の通り、セルロースジアセテートを含有するフィルムを含む表示装置は、斜め方向のコントラストが、正面方向のコントラストよりも顕著に低くなりやすい。液晶表示装置のコントラストは、黒表示時の光漏れに依存する。
本発明者らは、表示装置の斜め方向のコントラストが、正面方向のコントラストよりも顕著に低くなる原因が、セルロースジアセテートを含有するフィルムの旋光性の角度依存性(θ30−θ)が大きいためであることを見出した。
即ち、セルロースジアセテートを含有するフィルムは、環状オレフィン樹脂を含有するフィルムと比べて、旋光性の角度依存性(θ30−θ)が大きく;旋光による斜め方向の光漏れが、旋光による正面方向の光漏れよりも大きくなりやすい。その結果、斜め方向のコントラストが、正面方向のコントラストよりも低くなりやすい。この理由は、必ずしも明らかではないが、セルロースジアセテートは、それを構成するモノマー単位のファンデルワールス半径が小さく、不斉炭素を多く有するためであると考えられる。
Figure 0005170338
光漏れは、旋光によって生じるだけでなく、散乱によっても生じる。そこで、本発明では、散乱による正面方向の光漏れを、散乱による斜め方向の光漏れよりも大きくすることを特徴とする。それにより、旋光による正面方向の光漏れと旋光による斜め方向の光漏れとの差を相殺し;正面方向のトータルの光漏れと斜め方向のトータルの光漏れとの差を小さくすることができる。その結果、正面方向のコントラストと斜め方向のコントラストの差を小さくすることができる。
Figure 0005170338
散乱による正面方向の光漏れを、散乱による斜め方向の光漏れよりも大きくするためには、正面方向に散乱する透過散乱光の強度を、斜め方向に散乱する透過散乱光の強度よりも大きくして、透過散乱光を、フィルムの法線方向(正面方向)に集中させればよい。
本発明の光学補償フィルムに、当該光学補償フィルム表面の法線に平行に波長550nmの光を入射させたときの、当該光学補償フィルム表面の法線に対して4〜10°の範囲の透過散乱光の強度の積算量I4−10の、当該光学補償フィルム表面の法線に対して4〜60°の範囲の透過散乱光の強度の積算量I4−60に対する割合が、97%以上であることが好ましく、98%以上であることがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。透過散乱光の光学補償フィルム表面の法線に対する角度は、散乱角ともいう。
4−10/I4−60を大きくするためには、例えば光学補償フィルムの内部ヘイズを高くすればよい。光学補償フィルムの内部ヘイズを高くするためには、例えば前述したような低置換度成分(アセチル基置換度が2.2未満のセルロースアセテート成分)を一定量以上含有させたり、ガラス転移温度低下剤をフィルム厚み方向に偏在させたり、それらを組み合わせたりすればよい。
透過散乱光の強度は、以下の手順で測定することができる。
測定装置として、日本分光社製分光光度計V670に自動絶対反射率測定ユニット(ARMN−735)を取り付けたものを用いる。
1)ブランク用サンプルの透過散乱光の強度の測定
洗剤で予め洗浄したスライドガラスの上に、グリセリンを一滴(0.05ml)滴下する。このとき、液滴に気泡が入らないようにする。次いで、滴下したグリセリンの上に、カバーガラスを載せる。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がる。得られたブランク用サンプル(カバーガラス/グリセリン/スライドガラス)を、前述の日本分光社製分光光度計V670にセットする。そして、ブランク用サンプル表面の法線に平行に波長550nmの光を入射させたときの、透過散乱光の強度を、サンプル表面の法線に対して0〜60°の範囲で2°毎に合計31点測定する。
2)測定用サンプルの透過散乱光の強度の測定
前記1)と同様にして、洗剤で予め洗浄したスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)滴下する(図2A参照)。滴下したグリセリンの上に、光学補償フィルムを、気泡が入らないように載せる(図2B参照)。さらに、光学補償フィルム上に0.05mlのグリセリンを滴下した後(図2C参照)、カバーガラスをさらに載せる(図2D参照)。得られた測定用サンプル(カバーガラス/グリセリン/光学補償フィルム/グリセリン/スライドガラス)を、前述の日本分光社製分光光度計V670にセットする。そして、前述と同様にして、サンプル表面の法線に平行に波長550nmの光を入射させたときの、透過散乱光の強度を、サンプル表面の法線に対して0°〜60°の範囲で2°毎に合計31点測定する。
3)各測定角度における透過散乱光の強度の算出
各測定角度ごとに、前記1)で得られたブランク用サンプルの透過散乱光の強度と、前記2)で得られた測定用サンプルの透過散乱光の強度を下記式に当てはめて、光学補償フィルムの透過散乱光の強度を算出する。
光学補償フィルムの透過散乱光の強度=(測定用サンプルの透過散乱光の強度)−(ブランク用サンプルの透過散乱光の強度)
サンプル表面の法線に対して4°〜10°の測定角度で測定した透過散乱光の強度の和を「散乱角4〜10°の範囲の透過散乱光の強度の積算量I4−10」とし;サンプル表面の法線に対して4°〜60°の測定角度で測定した透過散乱光の強度の和を「散乱角4〜60°の範囲の透過散乱光の強度の積算量I4−60」とする。そして、I4−10/I4−60×100を算出する。
透過散乱光の強度の測定は、いずれも23℃55%RHの条件下にて行うことができる。また、透過散乱光の強度の測定に用いるスライドガラスは、AGCファブリテック(株)社製、無アルカリガラス基板CFグレード、39mm(縦)×50mm(横)×0.6mm(厚さ)としうる。グリセリンは、関東化学製 鹿特級(純度>99.0%)としうる。
フィルムの旋光性の角度依存性は、フィルム表面の法線に平行に直線偏光を入射させたときに、出射する楕円偏光の偏光面の、入射させた直線偏光の偏光面に対する回転角度θと、フィルム表面の法線に対して斜め(例えば法線に対して30°)に傾斜させて直線偏光を入射させたときに、出射する楕円偏光の偏光面の、入射させた直線偏光の偏光面に対する回転角度θ30との差(θ30−θ)として表すことができる。
フィルムの旋光性の角度依存性の測定方法を、図1に示す。フィルムの旋光性の角度依存性は、日本分光社製エリプソメータ(M−220)を用いて測定することができる。
1)フィルムに、直線偏光を、当該フィルム表面の法線に平行に入射させる。フィルムに入射させる直線偏光の偏光面は、フィルムの面内遅相軸と平行になるようにする。そして、フィルムを透過した後の楕円偏光の偏光面の、入射させた直線偏光の偏光面に対する回転角度をθとする。
2)同様に、フィルムに、直線偏光を、フィルム表面の法線に対して30°に傾斜させて入射させる。フィルムに入射させる直線偏光の偏光面は、フィルムの面内遅相軸と平行となるようにする。そして、フィルムを透過した後の楕円偏光の偏光面の、入射させた直線偏光の偏光面に対する回転角度をθ30とする。
3)θ30−θを算出する。
セルロースジアセテートを含有するフィルムのθ30−θは、通常、1.5°以上であり、2.0以上であってもよい。
ガラス転移温度低下剤を含有する光学補償フィルムのI4−10/I4−60を高くするためには、光学補償フィルムの一方の面近傍のガラス転移温度低下剤の含有量と、他方の面近傍のガラス転移温度低下剤の含有量とが異なることが好ましく、ガラス転移温度低下剤が、フィルムの厚み方向に偏在していることがより好ましい。具体的には、光学補償フィルムの一方の面近傍でのガラス転移温度低下剤の含有量が、他方の面近傍でのガラス転移温度低下剤の含有量の1.1倍以上であることが好ましく、1.2倍以上であることがより好ましく、1.3倍以上であることがさらに好ましい。一方で、ガラス転移温度低下剤が光学補償フィルムの厚み方向に偏在しすぎると、光学補償フィルムがカールしやすいため、光学補償フィルムの一方の面近傍でのガラス転移温度低下剤の含有量は、他方の面近傍でのガラス転移温度低下剤の含有量の1.5倍以下としうる。
光学補償フィルムの厚み方向におけるガラス転移温度低下剤の分布は、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)によって確認することができる。即ち、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)により測定される、光学補償フィルムの一方の面近傍のガラス転移温度低下剤の含有量をdAとし、他方の面近傍のガラス転移温度低下剤の含有量をdBとしたとき、下記式で表されるr値が、1.1以上であることが好ましく、1.2以上であることがより好ましく、1.3以上であることがさらに好ましい。r値の上限は、通常、1.5である。
Figure 0005170338
上記式中、max{d,d}は、dおよびdのうち大きい方を表し;min{d,d}は、dおよびdのうち小さい方を表す。
TOF−SIMS法を用いて、各フィルム表面に存在するガラス転移温度低下剤に起因する参照イオン強度を検出することにより、各フィルム表面におけるガラス転移温度低下剤の含有量を測定することができる。TOF−SIMS法による測定方法は、具体的には、日本表面科学会編「表面分析技術選書 二次イオン質量分析法」丸善株式会社(1999年発行)に記載されている。
また、光学補償フィルムの厚み方向におけるガラス転移温度低下剤の分布は、以下の方法によっても確認することができる。即ち、光学補償フィルムを、フィルム面に平行な面でフィルム厚みが2等分されるように切断する。そして、得られた一方のフィルムに含まれるガラス転移温度低下剤の量と、他方のフィルムに含まれるガラス転移温度低下剤の量とを比較する。
光学補償フィルムにおけるガラス転移温度低下剤を偏在させるためには、例えば、後述する光学補償フィルムの製造工程において、1)セルロースアセテートよりも溶剤との親和性が高いガラス転移温度低下剤を選択したり;2)剥離時のウェブの残留溶媒量を低くしたり;3)延伸時の延伸倍率や延伸速度を高くしたりすればよい。
本発明の光学補償フィルムは、例えばVA方式の液晶セルの光学補償を行うためには、測定波長590nm、23℃55%RHの条件下で測定される面内方向のレターデーションRは、10nm≦R≦100nmを満たすことが好ましく、30nm≦R≦70nmを満たすことがより好ましく、40nm≦R≦60nmを満たすことがさらに好ましい。光学補償フィルムの、測定波長590nm、23℃55%RHの条件下で測定される厚み方向のレターデーションRthは、70nm≦Rth≦300nmを満たすことが好ましく、90nm≦Rth≦230nmを満たすことがより好ましく、100nm≦Rth≦170nmを満たすことがさらに好ましい。
およびRthは、セルロースアセテートのアシル基の総置換度や延伸条件などによって調整することができる。Rを大きくするためには、例えばセルロースアセテートのアシル基の総置換度を低くしたり、延伸倍率を大きくしたりすればよい。Rthを大きくするためには、例えば延伸温度と延伸倍率を低くしたり、フィルムの膜厚を大きくしたりすればよい。
レターデーションRおよびRthは、それぞれ以下の式で定義される。
式(I):R=(nx−ny)×d(nm)
式(II):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d(nm)
(式(I)および(II)において、
nxは、光学補償フィルムの面内方向において屈折率が最大になる遅相軸方向xにおける屈折率を表し;
nyは、光学補償フィルムの面内方向において前記遅相軸方向xと直交する方向yにおける屈折率を表し;
nzは、光学補償フィルムの厚み方向zにおける屈折率を表し;
d(nm)は、光学補償フィルムの厚みを表す)
レターデーションRおよびRthは、例えば以下の方法によって求めることができる。
1)光学補償フィルムを、23℃55%RHで調湿する。調湿後の光学補償フィルムの平均屈折率をアッベ屈折計などで測定する。
2)調湿後の光学補償フィルムに、当該フィルム表面の法線に平行に測定波長590nmの光を入射させたときのRを、王子計測(株)製KOBRA21ADHにて測定する。
3)王子計測(株)製KOBRA21ADHにより、光学補償フィルムの面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、光学補償フィルムの表面の法線に対してθの角度(入射角(θ))から測定波長590nmの光を入射させたときのレターデーション値R(θ)を測定する。レターデーション値R(θ)の測定は、θが0°〜50°の範囲で、10°毎に6点行うことができる。光学補償フィルムの面内の遅相軸は、王子計測(株)製KOBRA21ADHにより確認することができる。
4)測定されたRおよびR(θ)と、前述の平均屈折率と膜厚とから、王子計測(株)製KOBRA21ADHにより、nx、nyおよびnzを算出して、測定波長590nmでのRthを算出する。レターデーションの測定は、23℃55%RH条件下で行うことができる。
光学補償フィルムの面内遅相軸とフィルムの幅方向とのなす角θ1(配向角)は、好ましくは−1°〜+1°であり、さらに好ましくは−0.5°〜+0.5°である。光学補償フィルムの配向角θ1の測定は、自動複屈折計KOBRA−WX(王子計測機器)を用いて測定することができる。
光学補償フィルムの厚みは、熱や湿度によるレターデーションの変動を少なくするためなどから、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは60μm以下である。一方、光学補償フィルムの厚みは、保護フィルムとして機能しうるフィルム強度やレターデーションを得るためには、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上である。
光学補償フィルムのヘイズ(全ヘイズ)は、1.0%以下であることが好ましい。光学補償フィルムのヘイズ(全ヘイズ)は、JIS K−7136に準拠して、ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)にて測定することができる。ヘイズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)としうる。ヘイズの測定は、いずれも23℃55%RHの条件下にて行う。
光学補償フィルムの内部ヘイズは、0.01〜0.1%であることが好ましい。内部ヘイズを0.01%未満とするのは現実的でなく、0.1%超であると、正面コントラストが大幅に劣化し、好ましくない。
光学補償フィルムの内部ヘイズは、特開2009−286931号公報に記載の方法;具体的には、以下の方法で測定することができる。
ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)を準備する。光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)とする。
1)ブランクヘイズの測定
洗浄したスライドガラスの上に、グリセリンを一滴(0.05ml)滴下する。このとき、液滴に気泡が入らないように注意する。
次いで、滴下したグリセリンの上に、カバーガラスを載せる。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がる。
これにより得られるブランク測定用のサンプル(カバーガラス/グリセリン/スライドガラス)を、ヘイズメーターにセットして、ヘイズ1(ブランクヘイズ)を測定する。
2)光学補償フィルムを含むサンプルのヘイズの測定
前記1)と同様にして、洗浄したスライドガラスの上にグリセリンを滴下する。
一方で、測定する光学補償フィルムを、23℃55%RH下で5時間以上調湿する。次いで、滴下したグリセリンの上に、調湿した光学補償フィルムを、気泡が入らないように載せる。
さらに、光学補償フィルム上に0.05mlのグリセリンを滴下した後、カバーガラスをさらに載せる。
これにより得られる測定用のサンプル(カバーガラス/グリセリン/試料フィルム/グリセリン/スライドガラス)を、前述のヘイズメーターにセットして、ヘイズ2を測定する。
3)光学補償フィルムの内部ヘイズの算出
前記1)で得られたヘイズ1と、前記2)で得られたヘイズ2を、下記式に当てはめて、光学補償フィルムの内部ヘイズを算出する。
光学補償フィルムの内部ヘイズ(%)=ヘイズ2(%)−ヘイズ1(%)
内部ヘイズの測定は、いずれも23℃55%RHの条件下にて行う。また、内部ヘイズの測定に用いるガラスは、MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMIとする。グリセリンは、関東化学製 鹿特級(純度>99.0%)、屈折率1.47とする。
光学補償フィルムの可視光透過率は、90%以上であることが好ましく、93%以上であることがより好ましい。
2.光学補償フィルムの製造方法
光学補償フィルムは、溶液流延法または溶融流延法で製造され、好ましくは溶液流延法により製造されうる。
セルロースアセテートを含む光学補償フィルムを溶液流延法で製造する方法は、1)少なくともセルロースアセテートと、必要に応じて他の添加剤とを溶剤に溶解させてドープを調製する工程、2)ドープを無端の金属支持体上に流延する工程、3)流延したドープから溶媒を蒸発させてウェブとする工程、4)ウェブを金属支持体から剥離する工程、5)ウェブを乾燥後、延伸してフィルムを得る工程を含む。
1)ドープ調製工程
溶解釜において、セルロースアセテートと、必要に応じて他の添加剤とを溶剤に溶解させてドープを調製する。
ドープに含まれる溶剤は、1種類でも2種以上を組み合わせたものでもよい。生産効率を高める観点では、セルロースアセテートの良溶剤と貧溶剤を組み合わせて用いることが好ましい。良溶剤とは、セルロースアセテートを単独で溶解する溶剤をいい、貧溶剤とは、セルロースアセテートを膨潤させるか、または単独では溶解しないものをいう。そのため、良溶剤および貧溶剤は、セルロースアセテートの平均アシル基置換度(アセチル基置換度)によって異なる。
良溶剤と貧溶剤を組み合わせて用いる場合、セルロースアセテートの溶解性を高めるためには、良溶剤が貧溶剤よりも多いことが好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率は、良溶剤が70〜98質量%であり、貧溶剤が2〜30質量%であることが好ましい。
良溶剤の例には、ジクロロメタン等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、およびアセト酢酸メチルなどが含まれ、好ましくはジクロロメタンまたは酢酸メチルなどである。貧溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、およびシクロヘキサノン等が含まれる。
ドープにおけるセルロースアセテートの濃度は、乾燥負荷を低減するためには高いほうが好ましいが、セルロースアセテートの濃度が高すぎるとろ過しにくい。そのため、ドープにおけるセルロースアセテートの濃度は、好ましくは10〜35質量%であり、より好ましくは15〜25質量%である。
ドープは、ガラス転移温度低下剤をさらに含有してもよい。得られる光学補償フィルムの厚み方向にガラス転移温度低下剤を偏在させるためには、セルロースアセテート、ガラス転移温度低下剤および溶剤の、Fedorsの溶解度パラメーターの値(SP値)を、それぞれSP、SP、SPとしたとき、下記の関係を満たすように各材料を選択することが好ましい。
Figure 0005170338
即ち、ガラス転移温度低下剤のSP値(SP)と溶剤のSP値(SP)との差の絶対値を、ガラス転移温度低下剤のSP値(SP)とセルロースアセテートのSP値(SP)との差の絶対値よりも小さくすることが好ましい。SP値の差の絶対値が小さいほど、物質同士が溶解しやすいことを意味する。得られる光学補償フィルムにおいてガラス転移温度低下剤をフィルム厚み方向により偏在させやすくするためには、|SP−SP|は、|SP−SP|の好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上、さらに好ましくは1.5倍以上としうる。
SP値は、さまざまな化学物質の親水性・疎水性を予測する上で重要なパラメーターの一つであり、正則溶液理論におけるモル蒸発熱ΔHとモル体積Vとにより定義できる。また、経験的にSP値を予測することができ、Hoy、Fedors、またはSmallなどのパラメーターを用いて計算により求めることもできる。本発明におけるSP値は、パラメーターが豊富で広範囲の化合物に適用することができるFedorsのパラメーターを用いて計算により求めることが好ましい。SP値の単位は、凝集エネルギー密度△Eをモル体積Vで除した値の平方根で、「(cm/cal)1/2」を用いることができる。Fedorsのパラメーターは、参考文献:コーティングの基礎科学 原田勇次著 槇書店(1977)のp54〜57に記載されている。
光学補償フィルムの製造工程において、金属支持体上でドープ膜を乾燥させるとき、ドープ膜の、金属支持体に接していない面(空気と接する面)から溶剤が蒸発する。そのため、ドープ膜の金属支持体と接する面近傍の溶剤濃度が、金属支持体と接しない面(空気と接する面)近傍の溶剤濃度よりも高くなり、ドープ膜の厚み方向に溶剤の濃度勾配が生じる。ガラス転移温度低下剤が、セルロースアセテートよりも溶剤との親和性が高ければ、ガラス転移温度低下剤は、溶剤濃度が高い金属支持体と接する面近傍に多く存在しやすくなると考えられる。
セルロースアセテートを溶剤に溶解させる方法は、例えば加熱および加圧下で溶解させる方法、セルロースアセテートに貧溶剤を加えて膨潤させた後、良溶剤をさらに加えて溶解させる方法、および冷却溶解法などでありうる。
なかでも、常圧における沸点以上に加熱できることから、加熱および加圧下で溶解させる方法が好ましい。具体的には、常圧下で溶剤の沸点以上であり、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を抑制できる。
加熱温度は、セルロースアセテートの溶解性を高める観点では、高いほうが好ましいが、高過ぎると、圧力を高める必要があり、生産性が低下する。このため、加熱温度は、45〜120℃であることが好ましく、60〜110℃がより好ましく、70℃〜105℃であることがさらに好ましい。
得られるドープには、例えば原料であるセルロースアセテートに含まれる不純物などの不溶物が含まれることがある。このような不溶物は、得られるフィルムにおいて輝点異物となりうる。このような不溶物等を除去するために、得られたドープをさらに濾過することが好ましい。
2)流延工程
ドープを、送液ポンプ(例えば、加圧型定量ギヤポンプ)を通して加圧ダイに送液し、無端状の金属支持体(例えばステンレスベルトや回転する金属ドラムなど)上に、加圧ダイのスリットから流延させる。
ダイは、口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一に調整しやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイの例には、コートハンガーダイ、T−ダイなどが含まれる。金属支持体の表面は、鏡面加工されていることが好ましい。
3)溶媒蒸発工程
ウェブ(ドープを金属支持体上に流延して得られるドープ膜)を金属支持体上で加熱し、溶媒を蒸発させる。
ウェブの乾燥は、40〜100℃の雰囲気下で行うことが好ましい。ウェブを40〜100℃の雰囲気下で乾燥させるためには、40〜100℃の温風をウェブ上面に当てたり、赤外線などで加熱したりすることが好ましい。
溶媒を蒸発させる方法としては、ウェブの表面に風を当てる方法、ベルトの裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法などがあるが、乾燥効率が高いことから、ベルトの裏面から液体により伝熱させる方法が好ましい。
得られるウェブの面品質や透湿性、剥離性などを高める観点から、流延後、30〜120秒以内で、ウェブを金属支持体から剥離することが好ましい。
4)剥離工程
金属支持体上で溶媒を蒸発させたウェブを、金属支持体上の剥離位置で剥離する。金属支持体上の剥離位置における温度は、好ましくは10〜40℃であり、さらに好ましくは11〜30℃である。
金属支持体上の剥離位置で剥離する際のウェブの残留溶媒量は、乾燥条件や金属支持体の長さなどにもよるが、50〜120質量%とすることが好ましい。残留溶媒量が多いウェブは、柔らか過ぎて平面性を損ないやすく、剥離張力によるツレや縦スジが発生し易い。そのようなツレや縦スジを抑制できるように、剥離位置でのウェブの残留溶媒量が設定されうる。
ウェブの残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(%)=(ウェブの加熱処理前質量−ウェブの加熱処理後質量)/(ウェブの加熱処理後質量)×100
なお、残留溶媒量を測定する際の加熱処理とは、115℃で1時間の加熱処理を意味する。
ウェブがガラス転移温度低下剤を含む場合、得られる光学補償フィルムにおいてガラス転移温度低下剤をフィルム厚み方向に偏在させるためには、ウェブを金属支持体から剥離するときの、ウェブ中の残留溶媒量を一定以下に低減することで、ウェブの金属支持体と接していない面側の溶媒量を十分に減らすことが好ましい。具体的には、ウェブ中の残留溶媒量は、好ましくは90質量%以下とし、より好ましくは85質量%以下とし、さらに好ましくは80質量%以下としうる。
ウェブの残留溶媒量は、乾燥温度や乾燥時間によって調整されうる。例えば、ガラス転移温度低下剤を含むウェブの残留溶媒量を上記範囲とするためには、乾燥温度は、好ましい25〜50℃程度とし、より好ましくは35〜45℃程度としうる。乾燥時間は、好ましくは15〜150秒間程度としうる。
金属支持体からウェブを剥離する際の剥離張力は、通常、300N/m以下としうる。
5)乾燥および延伸工程
金属支持体から剥離して得られたウェブを乾燥させた後、延伸する。ウェブの乾燥は、ウェブを、上下に配置した多数のロールにより搬送しながら乾燥させてもよいし、ウェブの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
ウェブの乾燥方法は、熱風、赤外線、加熱ロールおよびマイクロ波等で乾燥する方法であってよく、簡便であることから熱風で乾燥する方法が好ましい。ウェブの乾燥温度は、40〜250℃程度、好ましくは40〜160℃程度としうる。
ウェブの延伸により、所望のレターデーションを有する光学補償フィルムを得る。光学補償フィルムのレターデーションは、ウェブに掛かる張力の大きさを調整することで制御することができる。
ウェブの延伸は、幅方向(TD方向)、ドープの流延方向(MD方向)、または斜め方向の延伸であり、少なくとも幅方向(TD方向)に延伸することが好ましい。ウェブの延伸は、一軸延伸であっても、二軸延伸であってもよい。二軸延伸は、好ましくはドープの流延方向(MD方向)と幅方向(TD方向)への延伸である。二軸延伸は、逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であってもよい。
逐次二軸延伸には、延伸方向の異なる延伸を順次行う方法や、同一方向の延伸を多段階に分けて行う方法などが含まれる。逐次二軸延伸の例には、以下のような延伸ステップが含まれる。
流延方向(MD方向)に延伸−幅方向(TD方向)に延伸−流延方向(MD方向)に延伸−流延方向(MD方向)に延伸
幅方向(TD方向)に延伸−幅方向に延伸(TD方向)−流延方向(MD方向)に延伸−流延方向(MD方向)に延伸
同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方の方向の張力を緩和して収縮させる態様も含まれる。
延伸倍率は、得られる光学補償フィルムの膜厚や、求められるレターデーション値にもよるが、最終的には、流延方向に0.8〜1.5倍、好ましくは0.8〜1.1倍とし;幅方向に1.1〜2.0倍、好ましくは1.3〜1.7倍としうる。
ウェブがガラス転移温度低下剤を含む場合、ウェブの延伸速度を大きくすることで、得られる光学補償フィルムのフィルム厚み方向にガラス転移温度低下剤を偏在させやすくしうる。そのため、延伸速度は、好ましくは70〜200mm/secとし、より好ましくは130〜180mm/secとしうる。
ウェブの延伸温度は、好ましくは120℃〜200℃とし、より好ましくは150℃〜200℃とし、さらに好ましくは150℃超190℃以下としうる。
ウェブの延伸方法は、特に制限されず、複数のロールに周速差をつけ、その間でロール周速差を利用して流延方向(MD方向)に延伸する方法(ロール延伸法)、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を流延方向(MD方向)に向かって広げて流延方向(MD方向)に延伸したり、幅方向(TD方向)に広げて幅方向(TD方向)に延伸したり、流延方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の両方に広げて流延方向(MD方向)と幅方向(TD方向)の両方に延伸する方法など(テンター延伸法)などが挙げられる。これらの延伸方法は、組み合わせてもよい。
延伸開始時のウェブの残留溶媒は、好ましくは20質量%以下とし、より好ましくは15質量%以下としうる。
3.偏光板
本発明の偏光板は、偏光子と、その少なくとも一方の面に配置された本発明の光学補償フィルムとを含む。本発明の光学補償フィルムは、偏光子上に直接配置されてもよいし、他のフィルムまたは層を介して配置されてもよい。
偏光子は、一定方向の偏波面の光のみを通過させる素子である。偏光子の代表的な例は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムであり、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものと、がある。
偏光子は、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素または二色性染料で染色して得られるフィルムであってもよいし、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素または二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくはさらにホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の厚さは、5〜30μmであることが好ましく、10〜20μmであることがより好ましい。
ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール水溶液を製膜したものであってもよい。ポリビニルアルコール系フィルムは、偏光性能および耐久性能に優れ、色斑が少ないなどことから、エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましい。エチレン変性ポリビニルアルコールフィルムの例には、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載されたエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、けん化度99.0〜99.99モル%のフィルムが含まれる。
二色性色素の例には、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素およびアントラキノン系色素などが含まれる。
偏光子の一方の面に本発明の光学補償フィルムが配置される場合、偏光子の他方の面には、本発明の光学補償フィルム以外の透明保護フィルムが配置されてもよい。透明保護フィルムは、特に制限されず、通常のセルロースエステルフィルム等であってよい。セルロースエステルフィルムの市販品の例には、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC8UCR3、KC8UCR4、KC8UCR5、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC8UX−RHA、KC8UXW−RHA−C、KC8UXW−RHA−NC、KC4UXW−RHA−NC、以上コニカミノルタオプト(株)製)が好ましく用いられる。
透明保護フィルムの厚みは、特に制限されないが、10〜200μm程度とすることができ、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは10〜70μmである。
偏光板は、通常、偏光子と、本発明の光学補償フィルムとを貼り合わせるステップを経て製造することができる。貼り合わせに用いられる接着剤は、例えば完全鹸化型ポリビニルアルコール水溶液などが好ましく用いられる。
4.液晶表示装置
本発明の液晶表示装置は、液晶セルと、それを挟持する一対の偏光板とを有する。そして、一対の偏光板のうち少なくとも一方が、本発明の光学補償フィルムを含み、好ましくは一対の偏光板の両方が本発明の光学補償フィルムを含む。
図3は、本発明に係る液晶表示装置の一実施形態の基本構成を示す模式図である。図3に示されるように、液晶表示装置10は、液晶セル20と、それを挟持する第一の偏光板40および第二の偏光板60と、バックライト80と、を有する。
液晶セル20の表示方式は、特に制限されず、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、VA(Vertical Alignment)方式(MVA;Multi−domain Vertical AlignmentやPVA;Patterned Vertical Alignmentも含む)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)方式等がある。コントラストを高めるためには、VA(MVA、PVA)方式が好ましい。
VA方式の液晶セルは、一対の透明基板と、それらの間に挟持された液晶層とを有する。
一対の透明基板のうち、一方の透明基板には、液晶分子に電圧を印加するための画素電極が配置される。対向電極は、(画素電極が配置された)前記一方の透明基板に配置されてもよいし、他方の透明基板に配置されてもよく、開口率を高めるためには、(画素電極が配置された)前記一方の透明基板に配置されることが好ましい。
液晶層は、負または正の誘電率異方性を有する液晶分子を含む。一方の透明基板に画素電極が配置され、他方の透明基板に対向電極が配置される場合、負の誘電率異方正を有する液晶分子を用いることが好ましい。一方の透明基板に、画素電極と対向電極の両方が配置される場合、正の誘電率異方性を有する液晶分子であることが好ましい。液晶分子は、透明基板の液晶層側の面に設けられた配向膜の配向規制力により、電圧無印加時(画素電極と対向電極との間に電界が生じていない時)には、液晶分子の長軸が、透明基板の表面に対して略垂直となるように配向している。
このように構成された液晶セルでは、画素電極に画像信号(電圧)を印加することで、画素電極と対向電極との間に電界を生じさせる。これにより、透明基板の表面に対して垂直に初期配向している液晶分子を、その長軸が基板面に対して水平方向となるように配向させる。このように、液晶層を駆動し、各副画素の透過率および反射率を変化させて画像表示を行う。
第一の偏光板40は、視認側に配置されており、第一の偏光子42と、第一の偏光子42の視認側の面に配置された保護フィルム44(F1)と、第一の偏光子42の液晶セル側の面に配置された保護フィルム46(F2)とを有する。第二の偏光板60は、バックライト80側に配置されており、第二の偏光子62と、第二の偏光子62の液晶セル側の面に配置された保護フィルム64(F3)と、第二の偏光子62のバックライト側の面に配置された保護フィルム66(F4)とを有する。保護フィルム46(F2)と64(F3)の一方は、必要に応じて省略されてもよい。
保護フィルム44(F1)、46(F2)、64(F3)および66(F4)のうち、液晶セル側に配置される保護フィルム46(F2)と64(F3)の少なくとも一方を、本発明の光学補償フィルムとすることが好ましい。
保護フィルム46(F2)と64(F3)の少なくとも一方を、ガラス転移温度低下剤を含む光学補償フィルムとする場合、表示装置の視野角によるコントラストのムラを低減するためには、ガラス転移温度低下剤の含有量が多い方の面が、偏光子側となるように配置することが好ましい。
本発明の液晶表示装置は、アセチル基置換度が2.0〜2.5のセルロースアセテートを主成分として含み、かつI4−10/I4−60が一定以上に調整された光学補償フィルムを含む。そのため、アセチル基置換度が2.0〜2.5のセルロースアセテートを主成分として含む光学補償フィルムであっても、表示装置の斜め方向のコントラストと正面方向のコントラストとの差を小さくし、視野角によるコントラストのムラを低減しうる。
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明する。これらの実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.セルロースアセテートの合成
(合成例1)
クラフト法溶解パルプ(α−セルロース含有率93%)を水で解砕した後、アセトンで置換して乾燥した。得られたパルプ100質量部に対し、500質量部の酢酸を均一に散布し、40℃にて30分間混合し、前処理活性化した。
前処理活性化後のパルプに、無水酢酸250質量部、硫酸4.0質量部の混合物を添加し、常法によりエステル化反応を行った。パルプに含まれる水と無水酢酸との反応、およびセルロースと無水酢酸との反応により発熱が生じるが、外部から冷却して調整した。次いで、得られた反応物に、125質量部の有機溶媒をさらに添加し、保温したまま酢化反応を行った。
得られた反応物を加熱して有機溶媒を除去した後、35質量部の20%酢酸カルシウム水溶液を添加混合して硫酸を完全に中和し、かつ酢酸カルシウムが過剰となるようにした(酢酸カルシウムの量が硫酸の量に対して1.09倍等量となるようにした)。完全中和して得られる反応混合物を、150℃で50分間保持した後、大気下100℃に保持した。反応混合物を攪拌しながら、希酢酸水溶液をさらに添加し、フレーク状セルロースアセテートとして分離した。その後、得られた固形物を充分水洗した後、乾燥して、フレーク状セルロースアセテート(A)を得た。
フレーク状セルロースアセテート(A)4kgをメタノール20Lに懸濁させて室温で10時間撹拌した。その後、得られた溶液をろ過して、フィルタ上に得られた固形物を乾燥させて、セルロースアセテート(AA)3.9kgを得た。
一方、ろ液を濃縮乾燥させた後、得られた残渣として、アセチル基置換度2.10、重量平均分子量65000のセルロースアセテート(A’)0.1kgを得た。
得られたセルロースアセテート(AA)300gを、ジクロロメタン6Lに懸濁させ、室温で3時間撹拌した後、室温で24時間静置した。上澄み液2.5Lをデカンテーションし、得られた残渣にジクロロメタン2.5Lを入れて、室温で3時間撹拌した後、室温で24時間静置した。上澄み液2.2Lをデカンテーションし、得られた残渣にメタノール10Lを添加し、室温で1時間撹拌した。析出した固形物をろ過し、フィルタ上に得られた固形物を、メタノール/ジクロロメタン=3/1(重量比)混合溶剤400mlで2回洗浄した。得られた固形物を50℃で乾燥させ、アセチル基置換度2.45、重量平均分子量166000の精製セルロースアセテート(AAA)137gを得た。
(合成例2)
35質量部20%の酢酸カルシウム水溶液を、29質量部の20%酢酸マグネシウム水溶液に変更し、かつ酢酸カルシウム水溶液の添加量を硫酸に対して1.00倍等量とした以外は合成例1と同様にして、アセチル基置換度2.30、重量平均分子量194000の精製セルロースアセテート(BBB)148gと、メタノール洗浄ろ液の濃縮物である、アセチル置換度1.9、重量平均分子量74000のセルロースアセテート(B’)0.2kgとを得た。
(合成例3)
20%酢酸カルシウム水溶液の添加量を39質量部に変更し、その添加量を硫酸に対して1.21倍等量とした以外は合成例1と同様にして、アセチル置換度2.47、重量平均分子量125000の精製セルロースアセテート(CCC)131gと、メタノール洗浄ろ液の濃縮物である、アセチル置換度2.0、重量平均分子量59000のセルロースアセテート(C’)0.1kgとを得た。
(合成例4)
20%酢酸マグネシウム水溶液の添加量を37質量部(硫酸に対して1.28倍等量)に変更した以外は合成例2と同様にして、アセチル置換度2.31、重量平均分子量115000の精製セルロースアセテート(DDD)120gと、メタノール洗浄ろ液の濃縮物である、アセチル置換度2.15、重量平均分子量55000のセルロースアセテート(D’)0.3kgとを得た。
得られたセルロースアセテートの物性を表3に示す。
Figure 0005170338
さらに、合成例1で得られたセルロースアセテート(AAA)、セルロースアセテート(AA)およびセルロースアセテート(A’)を、それぞれ、以下の測定条件で、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定し、HPLCチャートを得た。
(高速液体クロマトグラフィー)
高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定は、以下の条件で行った。
装置:Waters製 Alliance型2695型システム
カラム:シリカゲル充填剤(カーボンロード率:4.6%、結合官能基:フェニル基、エンドキャップ:有り、形状:球状、平均粒子径:4μm、細孔径:60Å、表面積:120m/g)を含む、内径3.9mm×長さ150mmのカラム(Waters製 Nova−Pak Phenyl、3.9mmI.D×150mm、4μm)
溶離液:下記溶離液(A)と(B)の混合液(A/B)を使用した。
(A)クロロホルム/メタノール=9/1(体積比)
(B)メタノール/水=8/1(体積比)
(A/B)溶離液AとBの体積比A/B=20/80(0分)〜100/0(28分);溶離液AとBの体積比A/Bを、時間に対して一次直線的に変化させた
流速:0.7ml/分
検出器:エバポレイティブ光散乱検出器(ELSD)
エバポレイション温度75℃、ネブライザ温度60℃、窒素圧力30psi
カラム温度:30℃
注入量:20μL
試料溶解:溶離液(A)で0.1%に調製(完全溶解)
セルロースアセテート(AAA)とセルロースアセテート(A′)のHPLCチャートをそれぞれ図4に示し;セルロースアセテート(AA)のHPLCチャートを図5に示す。図5では、保持時間が0〜4分の範囲にわずかなピークが確認される。このピークは、セルロースアセテート(AA)に含まれるセルロースアセテート(A’)に由来すると考えられる。
また、後述する表4における低置換度成分(面積%)は、HPLCチャートにおける、保持時間が0〜4分の範囲のピーク面積の、保持時間0〜28分の範囲の全ピーク面積に対する割合を示す。表4における低置換度成分のピーク面積比は、セルロースアセテート成分αに含まれる低置換度成分の量と、セルロースアセテート成分βの添加量との合計量を示す。
2)ガラス転移温度低下剤
化合物A:トリフェニルホスフェート(SP値10.7)
Figure 0005170338
化合物B:ビフェニルジフェニルホスフェート(SP値11.0)
Figure 0005170338
化合物C:エチルフタリルエチルグリコレート(SP値10.9)
Figure 0005170338
化合物D:トリメチロールプロパントリベンゾエート(SP値11.0)
Figure 0005170338
化合物E:ペンタエリスリトールテトラベンゾエート(SP値11.5)
Figure 0005170338
2.光学補償フィルムの製造
(実施例1)
微粒子分散液1の調製
下記成分を、ディゾルバーで50分間攪拌混合した後、マントンゴーリンで分散させて、微粒子分散液1を得た。
(微粒子分散液1)
微粒子(アエロジル R972V 日本アエロジル(株)製):11質量部
エタノール:89質量部
微粒子添加液1の調製
得られた微粒子分散液1を、メチレンクロライドを投入した溶解タンクに十分攪拌しながらゆっくりと添加した。得られた溶液を、微粒子の二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散させた後、日本精線(株)製のファインメットNFで濾過して、微粒子添加液1を得た。
(微粒子添加液1)
ジクロロメタン:99質量部
微粒子分散液:5質量部
次いで、加圧溶解タンクに、ジクロロメタンとエタノールを投入し、セルロースアセテート(AAA)、セルロースアセテート(A’)、化合物A、および微粒子添加液1を攪拌しながらさらに投入した。得られた溶液を加熱し、攪拌しながら完全に溶解させた。得られた溶液を、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244で濾過して、下記組成のドープ液1を得た。
(ドープ液1の組成)
ジクロロメタン(SP値9.7):372質量部
エタノール(SP値12.7):32質量部
セルロースアセテート(AAA)(アセチル基置換度Dac:2.45、重量平均分子量Mw:166000):97質量部
セルロースアセテート(A’)(アセチル基置換度Dac:2.10、重量平均分子量Mw:65000):3質量部
化合物A:5質量部
微粒子添加液1:1質量部
ドープ液1に含まれる溶剤全体のSP値は、ジクロロメタンのSP値9.7×0.87(体積%)+エタノールのSP値12.7×0.13(体積%)=10.1であった。ドープ液1に含まれるセルロースアセテート(AAA)のSP値は12.1であった。
得られたドープ液1を35℃に調整し、ベルト流延装置を用いて、1800mm幅でステンレスバンド支持体に均一に流延した。得られたドープ膜を、残留溶剤量が88質量%になるまでステンレスバンド支持体上で蒸発させた。その後、ドープ膜を、ステンレスバンド支持体から剥離張力130N/mで剥離してウェブを得た。得られたウェブに含まれる溶媒を、55℃でさらに蒸発させた後、1650mm幅にスリットした。
得られたウェブを、テンター延伸機にて、120mm/secの速度で、155℃でウェブの幅方向(TD方向)に40%延伸した。延伸を開始したときのウェブの残留溶剤量は4.6質量%であった。
得られたフィルムを多数のロールで搬送させながら、145℃で乾燥させた。搬送張力は100N/mとした。それにより、膜厚50μmのフィルム101を得た。
(実施例2〜4)
セルロースアセテート(AAA)(セルロースアセテート成分α)の種類を表4に示されるように変更し、かつ延伸条件を調整した以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを得た。
(実施例5〜6および26〜27)
セルロースアセテート(A’)(セルロースアセテート成分β)の添加量を表4に示されるように変更し、かつ延伸条件を調整した以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを得た。
(実施例7〜12)
ガラス転移温度低下剤の種類を表4に示されるように変更し、かつ延伸条件を調整した以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを得た。
(実施例28)
セルロースアセテート(A’)(セルロースアセテート成分β)を添加せず、セルロースアセテートの種類を表4に示されるように変更した以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを得た。
(比較例1〜4)
セルロースアセテート(A’)(セルロースアセテート成分β)を添加せず、かつ延伸条件を調整した以外は実施例1〜4とそれぞれ同様にして光学補償フィルムを得た。
(比較例9および10)
セルロースアセテート(A’)(セルロースアセテート成分β)の添加量を、表4に示されるように変更し、かつ延伸条件を調整した以外は、実施例1と同様にして光学補償フィルムを得た。
得られたフィルム101〜121の透過散乱光の強度、ガラス転移温度低下剤のフィルム厚み方向の分布、RおよびRth、ならびに全ヘイズおよび内部ヘイズを、以下の方法で測定した。
(透過散乱光の強度)
測定装置として、日本分光社製分光光度計V670に自動絶対反射率測定ユニット(ARMN−735)を取り付けたものを準備した。そして、以下の手順でフィルムの透過散乱光の強度を測定した。
1)ブランク用サンプルの透過散乱光の強度の測定
洗剤で予め洗浄したスライドガラスの上に、グリセリンを一滴(0.05ml)滴下した。このとき、液滴に気泡が入らないようにした。次いで、滴下したグリセリンの上に、カバーガラスを載せた。カバーガラスは押さえなくてもグリセリンは広がった。得られたブランク用サンプル(カバーガラス/グリセリン/スライドガラス)を、前述の日本分光社製分光光度計V670にセットした。そして、ブランク用サンプルに、該サンプル表面の法線に平行に波長550nmの光を入射させたときの透過散乱光の強度を、サンプル表面の法線に対して0〜60°の範囲で2°毎に合計31点測定した。
2)測定用サンプルの透過散乱光の強度の測定
前記1)と同様にして、洗剤で予め洗浄したスライドガラスの上にグリセリンを一滴(0.05ml)滴下した。滴下したグリセリンの上に、光学補償フィルムを、気泡が入らないように載せた。さらに、光学補償フィルム上に0.05mlのグリセリンを滴下した後、カバーガラスをさらに載せた。得られた測定用のサンプル(カバーガラス/グリセリン/光学補償フィルム/グリセリン/スライドガラス)を、前述の日本分光社製分光光度計V670にセットした。そして、前述と同様にして、測定用サンプルに、該サンプル表面の法線に平行に波長550nmの光を入射させたときの透過散乱光の強度を、サンプル表面の法線に対して0〜60°の範囲で2°毎に合計31点測定した。
3)各測定角度毎に、前記1)で得られたブランク用サンプルの透過散乱光の強度と、前記2)で得られた測定用サンプルの透過散乱光の強度を下記式に当てはめて、光学補償フィルムの透過散乱光の強度を算出した。
光学補償フィルムの透過散乱光の強度=(測定用サンプルの透過散乱光の強度)−(ブランク用サンプルの透過散乱光の強度)
サンプル表面の法線に対して4°〜10°の測定角度で測定した透過散乱光の強度の和を「散乱角4〜10°の範囲の透過散乱光の強度の積算量I4−10」とし;サンプル表面の法線に対して4°〜60°の測定角度で測定した透過散乱光の強度の和を「散乱角4〜60°の範囲の透過散乱光の強度の積算量I4−60」とした。そして、I4−10/I4−60×100を算出した。
透過散乱光の測定は、いずれも23℃55%RHの条件下にて行った。また、透過散乱光の測定に用いたスライドガラスは、AGCファブリテック(株)社製、無アルカリガラス基板CFグレード、39mm(縦)×50mm(横)×0.6mm(厚さ)を用いた。グリセリンは、関東化学製 鹿特級(純度>99.0%)を用いた。
(ガラス転移温度低下剤のフィルム厚み方向の分布)
飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)により、下記の測定条件にて、光学補償フィルムの一方の面におけるガラス転移温度低下剤の含有量dAと;他方の面におけるガラス転移温度低下剤の含有量dBとを測定した。得られた値を、それぞれ下記式に当てはめて、r値を算出した。検出した各ガラス転移温度低下剤のイオン値を以下に示す。
(測定条件)
測定装置:2100TRIFT2(Physical Electronics社製)
測定モード:冷却測定(温度範囲−95〜−105℃)
一次イオン:Ga(15kV)
測定領域:60μm角
積算時間:2分
検出した各ガラス転移温度低下剤のイオン値(単位:m/Z):
化合物A:327
化合物B:403
化合物C:235
化合物D:105
化合物E:431
Figure 0005170338
とdのうち大きい方は、フィルムの製造工程において、金属支持体と接していた面であり;dとdのうち小さい方は、金属支持体と接していない面であった。
(RおよびRth)
面内方向のレターデーションRおよび厚み方向のレターデーションRthを、以下の方法で測定した。
1)光学補償フィルムを、23℃55%RHで調湿した。調湿後の光学補償フィルムの平均屈折率をアッベ屈折計などで測定した。
2)調湿後の光学補償フィルムに、当該フィルム表面の法線に平行に測定波長590nmの光を入射させたときのRを、王子計測(株)製KOBRA21ADHにて測定した。
3)王子計測(株)製KOBRA21ADHにより、光学補償フィルムの面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)として、光学補償フィルムの表面の法線に対してθの角度(入射角(θ))から測定波長590nmの光を入射させたときのレターデーション値R(θ)を測定した。レターデーション値R(θ)の測定は、θが0°〜50°の範囲で、10°毎に6点行った。光学補償フィルムの面内の遅相軸は、KOBRA21ADHにより確認した。
4)測定されたRおよびR(θ)と、前述の平均屈折率と膜厚とから、KOBRA21ADHにより、nx、nyおよびnzを算出して、測定波長590nmでのRthを算出した。レターデーションの測定は、23℃55%RH条件下で行った。
(全ヘイズ)
光学補償フィルムのヘイズ(全ヘイズ)は、JIS K−7136に準拠して、ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)にて測定した。ヘイズメーターの光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)とした。ヘイズの測定は、いずれも23℃55%RHの条件下にて行った。
(内部ヘイズ)
ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)を準備した。光源は、5V9Wのハロゲン球とし、受光部は、シリコンフォトセル(比視感度フィルター付き)とした。
1)ブランクヘイズの測定
洗浄したスライドガラスの上に、グリセリンを一滴(0.05ml)滴下した。このとき、液滴に気泡が入らないように注意した。次いで、滴下したグリセリンの上に、カバーガラスを載せた。このようにして得られたブランク測定用のサンプル(カバーガラス/グリセリン/スライドガラス)を、ヘイズメーターにセットして、ヘイズ1(ブランクヘイズ)を測定した。
2)光学補償フィルムを含むサンプルのヘイズの測定
前記1)と同様にして、洗浄したスライドガラスの上にグリセリンを滴下した。
一方で、測定する光学補償フィルムを、23℃55%RH下で5時間以上調湿した。次いで、滴下したグリセリンの上に、調湿した光学補償フィルムを、気泡が入らないように載せた。
さらに、光学補償フィルム上に0.05mlのグリセリンを滴下した後、カバーガラスをさらに載せた。
これにより得られた測定用のサンプル(カバーガラス/グリセリン/試料フィルム/グリセリン/スライドガラス)を、前述のヘイズメーターにセットして、ヘイズ2を測定した。
3)光学補償フィルムの内部ヘイズの算出
前記1)で得られたヘイズ1と、前記2)で得られたヘイズ2を、下記式に当てはめて、光学補償フィルムの内部ヘイズを算出した。
光学補償フィルムの内部ヘイズ(%)=ヘイズ2(%)−ヘイズ1(%)
内部ヘイズの測定は、いずれも23℃55%RHの条件下にて行った。また、内部ヘイズの測定に用いるガラスは、MICRO SLIDE GLASS S9213 MATSUNAMIとし;グリセリンは、関東化学製 鹿特級(純度>99.0%)、屈折率1.47とした。
得られた光学補償フィルムの製造条件を表4に示し、評価結果を表5に示す。表4において、△SP対溶剤は、溶剤のSP値とガラス転移温度低下剤のSP値との差の絶対値を示し;△SP対樹脂は、セルロースアセテートのSP値とガラス転移温度低下剤のSP値との差の絶対値を示す。各材料のSP値は、参考文献:コーティングの基礎科学 原田勇次著 槇書店(1977)のp54〜57に記載の計算方法に基づいて算出した。
また、実施例1と2、比較例1と2の透過散乱光強度の角度分布を図6に示す。
Figure 0005170338
Figure 0005170338
表5に示されるように、低置換度成分由来のピーク面積比が1%以上である実施例1〜12および26〜28の光学補償フィルムは、低置換度成分由来のピーク面積比が1%未満である比較例1〜4および10の光学補償フィルムよりも、I4−10/I4−60が大きく、透過散乱光が、フィルム表面の法線方向に集中することがわかる。
また、SP値が樹脂よりも溶剤に近い添加剤(化合物A)を含む実施例1の光学補償フィルムは、SP値が溶剤よりも樹脂に近い添加剤(化合物E)を含む実施例12の光学補償フィルムよりも、I4−10/I4−60が大きく、透過散乱光が、フィルム表面の法線方向に集中することがわかる。
また、実施例1〜12および26〜28、比較例1〜4および10の光学補償フィルムの面内方向のレターデーションRは、いずれも40〜60nmであり;厚み方向のレターデーションRthは、いずれも100〜170nmであった。
3.偏光板の作製
偏光子の作製
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、温度110℃、延伸倍率5倍に一軸延伸した。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬させた後、ヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬させた。得られたフィルムを水洗した後、乾燥させて厚さ25μmの偏光子を得た。
偏光板201の作製
下記工程1〜5に従って、偏光板201を作製した。
工程1:実施例1で得られたフィルム101を、45℃の2モル/Lの水酸化ナトリウム溶液に45秒間浸漬させた後、水洗および乾燥して、偏光子との貼り合わせ面がケン化処理されたフィルム101を得た。同様に、コニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタオプト(株)製セルロースエステルフィルム)の偏光子との貼り合わせ面もケン化処理した。
工程2:前述で作製した偏光子を、固形分2質量%のポリビニルアルコール接着剤槽中に1〜2秒間浸漬させた。
工程3:偏光子の表面に付着した過剰の接着剤を軽く拭きとった後、偏光子の一方の面に得られたフィルム101を配置し、他方の面にコニカミノルタタックKC4UYを配置して、積層物を得た。また、フィルム101の配置は、当該フィルム101の両面のうち、ガラス転移温度低下剤の含有量が多いほうの面が偏光子側となるように配置した。
工程4:工程3で得られた積層物を、圧力20〜30N/cm、搬送スピード約2m/分で貼り合わせた。
工程5:貼り合わせた積層物を、80℃の乾燥機中で2分間乾燥させて、偏光板201を得た。
偏光板202〜221の作製
実施例1で得られたフィルム101を、実施例2〜12および26〜28、比較例1〜4、9および10で得られたフィルム102〜121とした以外は同様にして偏光板202〜221を得た。
4.液晶表示装置の作製
(実施例14)
液晶表示装置として、SONY製40型ディスプレイKLV−40J3000を準備した。液晶セルの両側に予め貼り合わされていた一対の偏光板を取り外して、前述で作製した偏光板201をそれぞれ液晶セルの両面に貼り合わせた。
偏光板201と液晶セルとの貼り合あわせは、実施例1で得られたフィルム101が、液晶セルと接するように行った。また、偏光板201と液晶セルとの貼り合あわせは、偏光板201の偏光子の吸収軸と、予め貼り合わされていた偏光板の吸収軸とが同一方向となるように行った。
(実施例15〜25および29〜31、比較例5〜8、11および12)
液晶セルの両面に貼り合わせる偏光板201を、表6に示されるように変更した以外は実施例14と同様にして液晶表示装置を得た。
液晶表示装置の正面方向のコントラスト(CR0°)、斜め方向のコントラスト(CR30°)、CR0°/CR30°および目視でのコントラストのムラを、以下の方法で評価した。
正面方向のコントラスト(CR0°)の測定
i)暗室にて、液晶表示装置を白表示させたときの、表示画面から1m離れた距離からの表示画面の法線方向の輝度(正面方向の白輝度)を、測定器(TOPCON社製、BM5A)を用いて測定した。同様にして、液晶表示装置を黒表示させたときの、表示画面の法線方向の輝度(正面方向の黒輝度)を測定した。
ii)正面方向の黒輝度と、正面方向の白輝度を、下記式に当てはめて正面方向のコントラストを求めた。
正面方向のコントラスト=正面方向の白輝度/正面方向の黒輝度
iii)液晶表示装置の表示画面の任意の10点における正面方向のコントラストを測定し、それらの平均値を「正面方向のコントラスト(0°CR)」とした。
斜め方向のコントラスト(CR30°)の測定
i)前述と同様に、液晶表示装置を白表示させたときの、表示画面から1m離れた距離からの表示画面の法線に対して30°の方向の輝度(斜め方向の白輝度)を、測定器(TOPCON社製、BM5A)を用いて測定した。同様にして、液晶表示装置を黒表示させたときの、表示画面の法線に対して30°の方向の輝度(斜め方向の黒輝度)を測定した。
ii)斜め方向の黒輝度と、斜め方向の白輝度を、下記式に当てはめて斜め方向のコントラストを求めた。
斜め方向のコントラスト=斜め方向の白輝度/斜め方向の黒輝度
iii)液晶表示装置の表示画面の任意の10点における斜め方向のコントラストを測定し、それらの平均値を「斜め方向のコントラスト(30°CR)」とした。
そして、斜め方向のコントラスト(CR30°)/正面方向のコントラスト(CR0°)を算出した。
コントラストのムラの目視評価は、以下の基準に基づいて行った。
◎:正面方向と斜め30°方向とで黒表示画面の見た目に差がほとんどない
○:正面方向と斜め30°方向とで黒表示画面の見た目にわずかな差が確認される
△:正面方向と斜め30°方向とで黒表示画面の見た目に差が確認される
×:正面方向と斜め30°方向とで黒表示画面の見た目に明らかな差が確認される
実施例14〜25および29〜31、比較例5〜8、11および12の液晶表示装置の評価結果を表6に示す。
Figure 0005170338
表6に示されるように、保護フィルムF2またはF3として、I4−10/I4−60×100が97%以上である光学補償フィルムを用いた実施例14〜25および29〜31の表示装置は、I4−10/I4−60×100が97%未満である比較例5〜8、11および12の表示装置よりも、正面方向のコントラストと、斜め方向のコントラストの差が小さく(CR30°/CR0°が高く)、正面方向と斜め方向とでコントラストのムラが少ないことがわかる。
特に、実施例14〜25および29〜31のなかでも、I4−10/I4−60×100が98%以上の光学補償フィルムを用いた実施例14〜22および31の表示装置は、I4−10/I4−60×100が98%未満である実施例23〜25および29〜30の表示装置よりも、正面方向のコントラストと、斜め方向のコントラストの差がより少なく、正面方向と斜め方向とでコントラストのムラが顕著に抑制されることがわかる。
本発明の光学補償フィルムは、セルロースジアセテートを含み、かつ液晶表示装置の表示装置の視野角によるコントラストのムラを低減しうる。
10 液晶表示装置
20 液晶セル
40 第一の偏光板
42 第一の偏光子
44 保護フィルム(F1)
46 保護フィルム(F2)
60 第二の偏光板
62 第二の偏光子
64 保護フィルム(F3)
66 保護フィルム(F4)
80 バックライト

Claims (10)

  1. アセチル基置換度の平均が2.0〜2.5であるセルロースアセテートと、ガラス転移温度低下剤とを含有する光学補償フィルムであって、
    前記セルロースアセテートの、下記の条件で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)測定して得られるクロマトグラムにおいて、保持時間が0〜4分の範囲のピーク面積の、保持時間が0〜28分の範囲の全ピーク面積に対する割合が1〜10%の範囲であり、
    (測定条件)
    カラム:シリカゲル充填剤(カーボンロード率:4.6%、結合官能基:フェニル基、エンドキャップ:有り、形状:球状、平均粒子径:4μm、細孔径:60Å、表面積:120m/g)を含む、内径3.9mm×長さ150mmのカラム
    溶離液:下記溶離液(A)と(B)の混合液(A/B)を使用。
    (A)クロロホルム/メタノール=9/1(体積比)
    (B)メタノール/水=8/1(体積比)
    (A/B)溶離液AとBの体積比A/B=20/80(0分)〜100/0(28分);溶離液AとBの体積比A/Bを、時間に対して一次直線的に変化させる
    流速:0.7ml/分
    カラム温度:30℃
    注入量:20μL
    試料溶解:前記溶離液(A)で0.1%に調製(完全溶解)
    前記光学補償フィルムの、一方の面近傍の前記ガラス転移温度低下剤の含有量と、他方の面近傍の前記ガラス転移温度低下剤の含有量とは異なっており、
    前記光学補償フィルムに、前記光学補償フィルム表面の法線に平行に波長550nmの光を入射させたときの、前記光学補償フィルム表面の法線に対して4〜10°の範囲の透過散乱光強度の積算量I4−10の、前記光学補償フィルム表面の法線に対して4〜60°の範囲の透過散乱光強度の積算量I4−60に対する割合が97%以上である、光学補償フィルム。
  2. アセチル基置換度の平均が2.0〜2.5であるセルロースアセテートと、ガラス転移温度低下剤とを含有する光学補償フィルムであって、
    前記セルロースアセテートは、アセチル基置換度が2.2〜2.5のセルロースアセテートの高置換度成分と、アセチル基置換度が2.2未満のセルロースアセテートの低置換度成分とを含み、
    前記低置換度成分の含有量は、前記高置換度成分と前記低置換度成分の合計に対して1.0〜10質量%であり、
    前記光学補償フィルムの、一方の面近傍の前記ガラス転移温度低下剤の含有量と、他方の面近傍の前記ガラス転移温度低下剤の含有量とは異なっており、
    前記光学補償フィルムに、前記光学補償フィルム表面の法線に平行に波長550nmの光を入射させたときの、前記光学補償フィルム表面の法線に対して4〜10°の範囲の透過散乱光強度の積算量I4−10の、前記光学補償フィルム表面の法線に対して4〜60°の範囲の透過散乱光強度の積算量I4−60に対する割合が97%以上である、光学補償フィルム。
  3. 前記光学補償フィルムに、当該光学補償フィルム表面の法線に平行に波長550nmの直線偏光を入射させたときの、透過光の偏光面の前記直線偏光の偏光面に対する回転角度をθとし、
    前記光学補償フィルムに、当該光学補償フィルム表面の法線に対して30°傾斜させて波長550nmの直線偏光を入射させたときの、透過光の偏光面の前記直線偏光の偏光面に対する回転角度をθ30としたとき、
    θ30−θが1.5°以上である、請求項1または2に記載の光学補償フィルム。
  4. 前記光学補償フィルムの一方の面近傍での前記ガラス転移温度低下剤の含有量が、前記光学補償フィルムの他方の面近傍での前記ガラス転移温度低下剤の含有量の1.1倍以上1.5倍以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学補償フィルム。
  5. 下記式(I)で定義され、かつ波長590nm、23℃55%RHの条件下で測定される面内方向のレターデーションRが10nm以上100nm以下であり、下記式(II)で定義され、かつ波長590nm、23℃55%RHの条件下で測定される厚み方向のレターデーションRthが70nm以上300nm以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学補償フィルム。
    式(I):R=(nx−ny)×t(nm)
    式(II):Rth={(nx+ny)/2−nz}×t(nm)
    (式(I)および(II)において、
    nxは、前記光学補償フィルムの面内方向において屈折率が最大になる遅相軸方向xにおける屈折率を表し;
    nyは、前記光学補償フィルムの面内方向において前記遅相軸方向xと直交する方向yにおける屈折率を表し;
    nzは、前記光学補償フィルムの厚み方向zにおける屈折率を表し;
    t(nm)は、前記光学補償フィルムの厚みを表す)
  6. 前記セルロースアセテートと、前記ガラス転移温度低下剤と、溶剤とを含むドープを得るステップと、前記ドープを無端状の金属支持体上に流延するステップと、前記流延したドープから溶媒を蒸発させてウェブを得るステップとを含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学補償フィルムの製造方法であって、
    前記ガラス転移温度低下剤のSP値と前記溶剤のSP値の差の絶対値が、前記ガラス転移温度低下剤のSP値と前記セルロースアセテートのSP値の差の絶対値よりも小さい、光学補償フィルムの製造方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学補償フィルムを含む、偏光板。
  8. 液晶セルと、前記液晶セルの一方の面に配置され、第一の偏光子を含む第一の偏光板と、前記液晶セルの他方の面に配置され、第二の偏光子を含む第二の偏光板と、を有する液晶表示装置であって、
    前記第一の偏光板および第二の偏光板の少なくとも一方が、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学補償フィルムを含む、液晶表示装置。
  9. 前記液晶セルは、一対の透明基板と、前記一対の透明基板の間に配置され、液晶分子を含む液晶層とを含み、
    電圧無印加時には、前記液晶分子を前記一対の透明基板の表面に対して垂直に配向させ、かつ電圧印加時には、前記液晶分子を前記一対の透明基板の表面に対して水平に配向させるものである、請求項8に記載の液晶表示装置。
  10. 前記光学補償フィルムは、前記第一の偏光子または第二の偏光子の前記液晶セル側の面に配置される、請求項8または9に記載の液晶表示装置。
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