JP2013115250A - 光電変換素子および光電変換素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】光劣化率を低減可能な光電変換素子を提供する。
【解決手段】光電変換素子10は、光電変換部3を備える。光電変換部3は、p型非晶質半導体層31、バッファ層32、i型非晶質半導体層33およびn型非晶質半導体層34を積層した構造からなる。バッファ層32における炭素原子の含有量は、基準値よりも少なく、基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲からなる。
【選択図】図1
【解決手段】光電変換素子10は、光電変換部3を備える。光電変換部3は、p型非晶質半導体層31、バッファ層32、i型非晶質半導体層33およびn型非晶質半導体層34を積層した構造からなる。バッファ層32における炭素原子の含有量は、基準値よりも少なく、基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲からなる。
【選択図】図1
Description
この発明は、光電変換素子および光電変換素子の製造方法に関するものである。
従来、光を電気に変換する太陽電池として特許文献1に記載の光電変換装置が知られている。
この光電変換装置は、p型半導体層、i型半導体層およびn型半導体層を基板上に積層した構造からなる。
そして、p型半導体層は、少なくともシリコン原子を含有する微結晶半導体からなり、i型半導体層およびn型半導体層は、微結晶半導体からなる。
また、p型半導体層は、1原子%〜40原子%の炭素原子を含有する。
しかし、従来の光電変換装置は、太陽光のような強い光が照射された場合、光劣化率が大きいという問題がある。
そこで、この発明は、光劣化率を低減可能な光電変換素子を提供するものである。
また、この発明は、光劣化率を低減可能な光電変換素子の製造方法を提供するものである。
この発明の実施の形態によれば、光電変換素子は、p型半導体層と、i型半導体層と、n型半導体層と、バッファ層とを備える。p型半導体層は、アモルファスシリコンカーバイドからなる。n型半導体層は、p型半導体層に対向して設けられ、非晶質相からなる。n型半導体層は、i型半導体層に対向して設けられ、非晶質相からなる。バッファ層は、p型半導体層とi型半導体層との間に設けられるとともにアモルファスシリコンカーバイドからなり、炭素原子の含有量が基準値よりも少ない。そして、基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲からなる。
また、この発明の実施の形態によれば、光電変換素子の製造方法は、基板上に形成された透明導電膜上にアモルファスシリコンカーバイドからなるp型半導体層を堆積する第1の工程と、アモルファスシリコンカーバイドからなるバッファ層を炭素原子の含有量が基準値よりも少なくなるようにp型半導体層上に堆積する第2の工程と、バッファ層上に非晶質相からなるi型半導体層を堆積する第3の工程と、i型半導体層上に非晶質相からなるn型半導体層を堆積する第4の工程とを備え、基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲からなる。
この発明の実施の形態による光電変換素子は、炭素原子の含有量が基準値よりも少ないバッファ層を備える。その結果、p型半導体層とi型半導体層との界面における再結合準位が減少し、i型半導体層で光励起された正孔は、p型半導体層へ到達し易くなり、i型半導体層で光励起された電子は、p型半導体層とi型半導体層との界面において再結合し難くなる。そして、光電変換素子の光照射試験を行なった場合、主に、短絡光電流の低下が抑制される。
従って、光電変換素子の光劣化率を低減できる。
また、この発明の実施の形態による光電変換素子の製造方法は、アモルファスシリコンカーバイドからなるバッファ層を炭素原子の含有量が基準値よりも少なくなるようにp型半導体層上に堆積する第2の工程を備える。その結果、製造された光電変換素子において、p型半導体層とi型半導体層との界面における再結合準位が減少し、i型半導体層で光励起された正孔は、p型半導体層へ到達し易くなり、i型半導体層で光励起された電子は、p型半導体層とi型半導体層との界面において再結合し難くなる。そして、光電変換素子の光照射試験を行なった場合、主に、短絡光電流の低下が抑制される。
従って、この発明の実施の形態による光電変換素子の製造方法を用いて製造された光電変換素子の光劣化率を低減できる。
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
この明細書において、「非晶質相」とは、シリコン(Si)原子等がランダムに配列された状態を言う。また、「微結晶相」とは、Si原子等のランダムなネットワークの中にSi等の微結晶粒が存在する状態を言う。更に、アモルファスシリコンを「a−Si」と表記するが、この表記は、実際には、水素(H)原子が含まれていてもよい。アモルファスシリコンカーバイド(a−SiC)、アモルファスシリコンナイトライド(a−SiN)、アモルファスシリコンオキサイド(a−SiO)、アモルファスシリコンゲルマニウム(a−SiGe)、アモルファスゲルマニウム(a−Ge)、微結晶シリコンカーバイド(μc−SiC)、微結晶シリコン(μc−Si)、微結晶シリコンゲルマニウム(μc−SiGe)、および微結晶ゲルマニウム(μc−Ge)についても、同様に、水素(H)原子が含まれていてもよい。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による光電変換素子の構成を示す断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1による光電変換素子10は、透光性基板1と、透明導電膜2と、光電変換部3,5と、n型微結晶半導体層4と、電極6とを備える。
図1は、この発明の実施の形態1による光電変換素子の構成を示す断面図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1による光電変換素子10は、透光性基板1と、透明導電膜2と、光電変換部3,5と、n型微結晶半導体層4と、電極6とを備える。
光電変換部3は、p型非晶質半導体層31と、バッファ層32と、i型非晶質半導体層33と、n型非晶質半導体層34とを含む。また、光電変換部5は、p型微結晶半導体層51と、i型微結晶半導体層52と、n型微結晶半導体層53とを含む。このように、光電変換部3は、p型非晶質半導体層31、バッファ層32、i型非晶質半導体層33およびn型非晶質半導体層34を積層したpin構造からなり、光電変換部5は、p型微結晶半導体層51、i型微結晶半導体層52およびn型微結晶半導体層53を積層したpin構造からなる。
透明導電膜2は、透光性基板1に接して配置される。
光電変換部3のp型非晶質半導体層31は、透明導電膜2に接して配置される。バッファ層32は、p型非晶質半導体層31に接して配置される。i型非晶質半導体層33は、バッファ層32に接して配置される。n型非晶質半導体層34は、i型非晶質半導体層33に接して配置される。
n型微結晶半導体層4は、光電変換部3のn型非晶質半導体層34に接して配置される。
光電変換部5のp型微結晶半導体層51は、n型微結晶半導体層4に接して配置される。i型微結晶半導体層52は、p型微結晶半導体層51に接して配置される。n型微結晶半導体層53は、i型微結晶半導体層52に接して配置される。
電極6は、光電変換部5のn型微結晶半導体層53に接して配置される。
透光性基板1は、例えば、ガラスからなる。
透明導電膜2は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、SnO2およびZnO等からなる。そして、透明導電膜2のp型非晶質半導体層31側の表面は、平坦であってもよく、凹凸構造(テクスチャ構造)であってもよい。
p型非晶質半導体層31は、非晶質相からなり、例えば、p型a−SiCからなる。そして、p型非晶質半導体層31は、例えば、8〜9nmの膜厚および2.05eVの光学バンドギャップを有する。
バッファ層32は、非晶質相からなり、例えば、i型a−SiCからなる。そして、バッファ層32は、例えば、3〜5nmの膜厚、または6〜7nmの膜厚を有するとともに、1.98〜2.0eVの光学バンドギャップを有する。また、バッファ層32における炭素原子の含有量は、基準値よりも少なく、基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲である。
そして、この基準値は、次のように決定された。従来の光電変換装置においては、p型半導体層は、1原子%〜40原子%の炭素原子を含む。シリコンの原子密度は、5×1022(個/cm3)であるので、p型半導体層における炭素原子の含有量は、(1原子%〜40原子%)×5×1022(個/cm3)=5×1020(個/cm3)〜2×1022(個/cm3)の範囲である。
一方、従来の光電変換素子においては、バッファ層は、p型半導体層における炭素原子の含有量と同じ含有量の炭素原子を含み、バッファ層の膜厚は、6〜7nmであるので、バッファ層における炭素原子の含有量は、(5×1020(個/cm3)×6×10−7(cm)〜2×1022(個/cm3))×7×10−7(cm)=3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)である。
そして、光電変換素子10のバッファ層32の膜厚が6〜7nmである場合、バッファ層32は、従来のバッファ層における炭素原子の含有量よりも少ない含有量の炭素原子を含むので、基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)となる。
また、光電変換素子10のバッファ層32の膜厚が3〜5nmである場合、バッファ層32は、従来のバッファ層の膜厚が6nmである場合の炭素原子の含有量よりも少ない含有量の炭素原子を含むので、基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)となる。
従って、炭素原子の含有量の基準値を3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲と決定した。
i型非晶質半導体層33は、非晶質相からなり、例えば、i型a−Siからなる。そして、i型非晶質半導体層33は、例えば、260nmの膜厚および1.85eVの光学バンドギャップを有する。
n型非晶質半導体層34は、非晶質相からなり、例えば、n型a−Siからなる。n型微結晶半導体層4は、微結晶相からなり、例えば、n型μc−Siからなる。そして、n型非晶質半導体層34およびn型微結晶半導体層4の全体の膜厚は、例えば、20nmである。
p型微結晶半導体層51は、微結晶相からなり、例えば、p型μc−Siからなる。そして、p型微結晶半導体層51は、例えば、15nmの膜厚を有する。
i型微結晶半導体層52は、微結晶相からなり、例えば、i型μc−Siからなる。そして、i型微結晶半導体層52は、例えば、1700nmの膜厚を有する。
n型微結晶半導体層53は、微結晶相からなり、例えば、n型μc−Siからなる。そして、n型微結晶半導体層53は、例えば、20nmの膜厚を有する。
電極6は、例えば、アルミニウム(Al)からなる。
光電変換素子10の製造方法について説明する。光電変換素子10は、プラズマ装置を用いてプラズマCVD(Chemical Vapour Deposition)法によって製造される。
プラズマ装置は、仕込室と、反応室CB1〜CB4と、取出室と、整合器と、RF電源とを備える。仕込室、反応室CB1〜CB4および取出室は、直列的に配置されている。そして、仕込室と反応室CB1との間、反応室CB1と反応室CB2との間、反応室CB2と反応室CB3との間、反応室CB3と反応室CB4との間、および反応室CB4と取出室との間は、仕切バルブで仕切られている。また、仕込室から反応室CB1、反応室CB2、反応室CB3、反応室CB4および取出室へ基板を順次搬送する搬送機構がプラズマ装置に備えられている。
仕込室は、加熱機構と排気機構とを備える。加熱機構は、基板を所定の温度に昇温する。排気機構は、仕込室内のガスを排気し、仕込室の到達圧力を、例えば、1×10−5Pa以下に設定する。
反応室CB1〜CB4の各々は、平行平板電極と、加熱機構と、排気機構とを備える。加熱機構は、基板を所定の温度に昇温する。排気機構は、反応室CB1〜CB4内のガスを排気し、反応室CB1〜CB4の到達圧力を、例えば、1×10−5Pa以下に設定する。平行平板電極は、整合器を介してRF電源に接続される。
取出室は、排気機構を備える。排気機構は、取出室内のガスを排気し、取出室の到達圧力を、例えば、1×10−5Pa以下に設定する。
仕込室、反応室CB1〜CB4および取出室の各排気機構は、ターボ分子ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリーポンプからなる。ターボ分子ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリーポンプは、ターボ分子ポンプが仕込室、反応室CB1〜CB4、および取出室に最も近くなるように仕込室、反応室CB1〜CB4および取出室に直列的に連結されている。そして、各排気機構は、ターボ分子ポンプ、メカニカルブースタポンプおよびロータリーポンプによって仕込室、反応室CB1〜CB4および取出室内のガスを排気し、またはメカニカルブースタポンプおよびロータリーポンプによって仕込室、反応室CB1〜CB4および取出室内のガスを排気する。
RF電源は、例えば、13.56MHzのRF電力を整合器を介して反応室CB1〜CB4の平行平板電極に印加する。
光電変換素子10の製造が開始されると、SnO2が形成されたガラス基板(SnO2/ガラス基板)を洗浄し、SnO2/ガラス基板をプラズマ装置の仕込室の基板ホルダー上に配置する。
そして、仕込室の排気機構は、1×10−5Pa以下に仕込室内のガスを排気し、仕込室の加熱機構は、SnO2/ガラス基板の温度を200℃に設定するように基板ホルダーを加熱する。また、反応室CB1〜CB4の加熱機構も、基板温度を200℃に設定するように基板ホルダーを加熱する。
SnO2/ガラス基板の温度が200℃に達すると、仕込室と反応室CB1との間の仕切バルブが開けられ、SnO2/ガラス基板は、仕込室から反応室CB1へ搬送される。
p型非晶質半導体層31、バッファ層32、i型非晶質半導体層33、n型非晶質半導体層34、n型微結晶半導体層4、p型微結晶半導体層51、i型微結晶半導体層52およびn型微結晶半導体層53を形成するときの材料ガスの流量を表1に示す。
SnO2/ガラス基板が反応室CB1へ搬送されると、2sccmのシラン(SiH4)ガスと、42sccmの水素(H2)ガスと、水素希釈された12sccmのジボラン(B2H6)ガスと、252sccmのメタン(CH4)ガスとを反応室CB1に流し、反応室CB1の圧力を13.3Pa〜665Paの範囲に設定する。そして、RF電源は、16〜80mW/cm2の範囲のRFパワーを整合器を介して平行平板電極に印加する。なお、水素希釈されたB2H6ガスの濃度は、0.1%である。
これによって、反応室CB1内でプラズマが発生し、p型非晶質半導体層31としてのp型a−SiCがSnO2上に堆積される。
p型非晶質半導体層31の膜厚が8〜9nmになると、反応室CB1の平行平板電極へのRFパワーの印加を停止するとともに、SiH4ガス、H2ガス、CH4ガスおよびB2H6ガスの反応室CB1への供給を停止し、排気機構によって1×10−5Pa以下に反応室CB1を真空引きする。そして、仕切バルブを開け、p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板を反応室CB1から反応室CB2へ搬送する。
p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板が反応室CB2へ搬送されると、2sccmのSiH4ガスと、42sccmのH2ガスと、126sccmのCH4ガスとを反応室CB2に流し、反応室CB2の圧力を13.3Pa〜665Paの範囲に設定する。そして、RF電源は、16〜80mW/cm2の範囲のRFパワーを整合器を介して平行平板電極に印加する。
これによって、反応室CB2内でプラズマが発生し、バッファ層32としてのi型a−SiCがp型非晶質半導体層31上に堆積される。
なお、CH4ガスの流量を126sccmから4.2sccm/秒の割合で減少させながらバッファ層32(a−SiC)をp型非晶質半導体層31上に堆積してもよい。
バッファ層32の膜厚が6〜7nmになると、反応室CB2の平行平板電極へのRFパワーの印加を停止するとともに、SiH4ガス、H2ガスおよびCH4ガスの反応室CB2への供給を停止し、排気機構によって1×10−5Pa以下に反応室CB2を真空引きする。そして、仕切バルブを開け、バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板を反応室CB2から反応室CB3へ搬送する。
バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板が反応室CB3へ搬送されると、10sccmのSiH4ガスと、100sccmのH2ガスとを反応室CB3に流し、反応室CB3の圧力を13.3Pa〜665Paの範囲に設定する。そして、RF電源は、16〜80mW/cm2の範囲のRFパワーを整合器を介して平行平板電極に印加する。
これによって、反応室CB3内でプラズマが発生し、i型非晶質半導体層33としてのi型a−Siがバッファ層32上に堆積される。
i型非晶質半導体層33の膜厚が260nmになると、反応室CB3の平行平板電極へのRFパワーの印加を停止するとともに、SiH4ガスおよびH2ガスの反応室CB3への供給を停止し、排気機構によって1×10−5Pa以下に反応室CB3を真空引きする。そして、仕切バルブを開け、i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板を反応室CB3から反応室CB4へ搬送する。
i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板が反応室CB4へ搬送されると、20sccmのSiH4ガスと、150sccmのH2ガスと、水素希釈された50sccmのホスフィン(PH3)ガスとを反応室CB4へ流し、反応室CB4の圧力を13.3Pa〜665Paの範囲に設定する。そして、RF電源は、16〜80mW/cm2の範囲のRFパワーを整合器を介して平行平板電極に印加する。なお、水素希釈されたPH3ガスの濃度は、例えば、0.2%である。
これによって、反応室CB4内でプラズマが発生し、n型非晶質半導体層34としてのn型a−Siがi型非晶質半導体層33上に堆積される。
n型非晶質半導体層34の膜厚が所望の膜厚になると、SiH4ガスの流量を20sccmから4sccmに変え、H2ガスの流量を150sccmから250sccmに変え、PH3ガスの流量を50sccmから25sccmに変える。これによって、n型微結晶半導体層4としてのn型μc−Siがn型非晶質半導体層34上に堆積される。
そして、n型非晶質半導体層34およびn型微結晶半導体層4の全体の膜厚が20nmになると、反応室CB4の平行平板電極へのRFパワーの印加を停止するとともに、SiH4ガス、H2ガスおよびPH3ガスの反応室CB4への供給を停止し、排気機構によって1×10−5Pa以下に反応室CB4を真空引きする。そして、仕切バルブを開け、n型微結晶半導体層4/n型非晶質半導体層34/i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板を反応室CB4から反応室CB1へ搬送する。
n型微結晶半導体層4/n型非晶質半導体層34/i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板が反応室CB1へ搬送されると、2sccmのSiH4ガスと、120sccmのH2ガスと、水素希釈された12sccmのB2H6ガスとを反応室CB1へ流し、反応室CB1の圧力を13.3Pa〜665Paの範囲に設定する。そして、RF電源は、16〜80mW/cm2の範囲のRFパワーを整合器を介して平行平板電極に印加する。
これによって、反応室CB1内でプラズマが発生し、p型微結晶半導体層51としてのp型μc−Siがn型微結晶半導体層4上に堆積される。
p型微結晶半導体層51の膜厚が15nmになると、反応室CB1の平行平板電極へのRFパワーの印加を停止するとともに、SiH4ガス、H2ガスおよびB2H6ガスの反応室CB1への供給を停止し、排気機構によって1×10−5Pa以下に反応室CB1を真空引きする。そして、仕切バルブを開け、p型微結晶半導体層51/n型微結晶半導体層4/n型非晶質半導体層34/i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板を反応室CB1から反応室CB3へ搬送する。
p型微結晶半導体層51/n型微結晶半導体層4/n型非晶質半導体層34/i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板が反応室CB3へ搬送されると、4sccmのSiH4ガスと、280sccmのH2ガスとを反応室CB3へ流し、反応室CB3の圧力を13.3Pa〜665Paの範囲に設定する。そして、RF電源は、16〜80mW/cm2の範囲のRFパワーを整合器を介して平行平板電極に印加する。
これによって、反応室CB3内でプラズマが発生し、i型微結晶半導体層52としてのi型μc−Siがp型微結晶半導体層51上に堆積される。
i型微結晶半導体層52の膜厚が1700nmになると、反応室CB3の平行平板電極へのRFパワーの印加を停止するとともに、SiH4ガスおよびH2ガスの反応室CB3への供給を停止し、排気機構によって1×10−5Pa以下に反応室CB3を真空引きする。そして、仕切バルブを開け、i型微結晶半導体層52/p型微結晶半導体層51/n型微結晶半導体層4/n型非晶質半導体層34/i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板を反応室CB3から反応室CB4へ搬送する。
i型微結晶半導体層52/p型微結晶半導体層51/n型微結晶半導体層4/n型非晶質半導体層34/i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板が反応室CB4へ搬送されると、4sccmのSiH4ガスと、250sccmのH2ガスと、水素希釈された25sccmのPH3ガスとを反応室CB4へ流し、反応室CB4の圧力を13.3Pa〜665Paの範囲に設定する。そして、RF電源は、16〜80mW/cm2の範囲のRFパワーを整合器を介して平行平板電極に印加する。
これによって、反応室CB4内でプラズマが発生し、n型微結晶半導体層53としてのn型μc−Siがi型微結晶半導体層52上に堆積される。
n型微結晶半導体層53の膜厚が20nmになると、反応室CB4の平行平板電極へのRFパワーの印加を停止するとともに、SiH4ガス、H2ガスおよびPH3ガスの反応室CB4への供給を停止し、排気機構によって1×10−5Pa以下に反応室CB4を真空引きする。そして、仕切バルブを開け、n型微結晶半導体層53/i型微結晶半導体層52/p型微結晶半導体層51/n型微結晶半導体層4/n型非晶質半導体層34/i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板を反応室CB4から取出室へ搬送する。
その後、取出室でn型微結晶半導体層53/i型微結晶半導体層52/p型微結晶半導体層51/n型微結晶半導体層4/n型非晶質半導体層34/i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板を室温まで冷却した後、n型微結晶半導体層53/i型微結晶半導体層52/p型微結晶半導体層51/n型微結晶半導体層4/n型非晶質半導体層34/i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板を取出室から取出し、n型微結晶半導体層53/i型微結晶半導体層52/p型微結晶半導体層51/n型微結晶半導体層4/n型非晶質半導体層34/i型非晶質半導体層33/バッファ層32/p型非晶質半導体層31/SnO2/ガラス基板を蒸着装置にセットする。
そして、蒸着装置を用いて電極6としてのAlをn型微結晶半導体層53上に形成する。これによって、光電変換素子10が完成する。
なお、上記においては、膜厚が6〜7nmになるようにバッファ層32をp型非晶質半導体層31上に堆積すると説明したが、光電変換素子10の製造方法においては、CH4ガスの流量を252sccmに一定に保持して膜厚が3〜5nmになるようにバッファ層32をp型非晶質半導体層31上に堆積してもよい。
このように、光電変換素子10は、p型非晶質半導体層31、バッファ層32、i型非晶質半導体層33、n型非晶質半導体層34、n型微結晶半導体層4、p型微結晶半導体層51、i型微結晶半導体層52およびn型微結晶半導体層53をプラズマCVD法によって透明導電膜2上に順次積層し、その後、蒸着によって電極6(=Al)をn型微結晶半導体層53上に形成することによって製造される。
図2は、バッファ層32を形成するときのCH4ガスの流量を示す図である。図2において、直線k1,k3は、図1に示す光電変換素子10のバッファ層32を形成するときのCH4ガスの流量を示し、直線k2,k4は、従来の光電変換素子のバッファ層を形成するときのCH4ガスの流量を示す。
バッファ層32の膜厚が6〜7nmである場合、バッファ層32は、図2の(a)に示す直線k1または図2の(b)に示す直線k3に従ってCH4ガスの流量を制御して形成される。
図2の(a)を参照して、光電変換素子10のバッファ層32は、CH4ガスの流量を126sccmに一定に保持して形成される(直線k1参照)。一方、従来の光電変換素子のバッファ層を形成するときのCH4ガスの流量は、252sccmに一定に保持される(直線k2参照)。従って、光電変換素子10のバッファ層32は、従来の光電変換素子のバッファ層を形成するときのCH4ガスの流量(252sccm)を半分に減少して形成される。
図2の(b)を参照して、光電変換素子10のバッファ層32は、CH4ガスの流量を126sccmから徐々に減少させて形成される(直線k3参照)。この場合、CH4ガスの流量は、30秒間で126sccmから0sccmになるように減少される。
一方、従来の光電変換素子のバッファ層を形成するときのCH4ガスの流量は、252sccmから徐々に減少される(直線k4参照)。この場合、CH4ガスの流量は、1分間で252sccmから0sccmになるように減少される。
従って、光電変換素子10のバッファ層32は、CH4ガスの流量の減少割合を従来と同じに保持し、CH4ガスの流量の初期値を従来の半分に減少して形成される。
なお、光電変換素子10のバッファ層32を形成するときのCH4ガスの流量が直線k3に従って制御される場合、形成されたバッファ層32において、炭素原子の含有量は、p型非晶質半導体層31からi型非晶質半導体層33へ向かう方向において、徐々に減少する。従って、CH4ガスの流量を減少させながらバッファ層32を形成した場合、バッファ層32は、所謂、炭素原子を厚み方向にグレーディッドさせた構造からなる。
このように、バッファ層32における炭素原子の含有量は、バッファ層32を形成するときのCH4ガスの流量を減少させることによって、従来の光電変換素子のバッファ層における炭素原子の含有量よりも少ない値に設定される。
また、バッファ層32を形成するときのCH4ガスの流量が252sccmである場合、バッファ層32の膜厚を3〜5nmに設定することによって、バッファ層32における炭素原子の含有量は、従来の光電変換素子のバッファ層における炭素原子の含有量よりも少ない値に設定される。
従来の光電変換素子のバッファ層における炭素原子の含有量は、1原子%〜40原子%=5×1020(個/cm3)〜2×1022(個/cm3)である。そして、従来の光電変換素子において、バッファ層の膜厚は、6〜7nmであるので、従来の光電変換素子のバッファ層における炭素原子の含有量は、5×1020(個/cm3)×6×10−7(cm)〜2×1022(個/cm3)×7×10−7(cm)=3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)である。
一方、光電変換素子10のバッファ層32の膜厚は、3〜5nmであるので、光電変換素子10のバッファ層32における炭素原子の含有量は、5×1020(個/cm3)×3×10−7(cm)〜2×1022(個/cm3)×5×10−7(cm)=1.5×1014(個/cm2)〜1.0×1016(個/cm2)である。
従って、バッファ層を形成するときのCH4ガスの流量を従来と同じに保持し、バッファ層の膜厚を従来よりも薄くすることによってバッファ層32における炭素原子の含有量を少なくできる。
このように、この発明の実施の形態においては、バッファ層32を形成するときのCH4ガスの流量を従来の流量よりも少なくすることによって、またはバッファ層32の膜厚を従来の膜厚よりも薄くすることによって、バッファ層32における炭素原子の含有量を少なくする。
光電変換素子10においては、太陽光は、透光性基板1側から光電変換素子10に入射する。そして、電子および正孔は、主に、光電変換部3のi型非晶質半導体層33および光電変換部5のi型微結晶半導体層52において光励起される。
光電変換部3のi型非晶質半導体層33において光励起された電子および正孔は、p型非晶質半導体層31/i型非晶質半導体層33/n型非晶質半導体層34からなるpin接合による内部電界によって分離される。そして、電子は、n型非晶質半導体層34へ到達し、正孔は、バッファ層32を介してp型非晶質半導体層31へ到達し、p型非晶質半導体層31から透明導電膜2へ到達する。
また、光電変換部5のi型微結晶半導体層52において光励起された電子および正孔は、p型微結晶半導体層51/i型微結晶半導体層52/n型微結晶半導体層53からなるpin接合による内部電界によって分離される。そして、電子は、n型微結晶半導体層53へ到達し、正孔は、p型微結晶半導体層51へ到達する。
n型非晶質半導体層34に到達した電子は、p型微結晶半導体層51に到達した正孔とn型微結晶半導体層4において再結合する。また、n型微結晶半導体層53へ到達した電子は、透明導電膜2と電極6との間に接続された外部負荷を介して電極6から透明導電膜2へ到達し、p型非晶質半導体層31から透明導電膜2へ到達した正孔と再結合する。
これによって、光電変換素子10において発生した電流が外部負荷に流れる。
このように、光電変換素子10は、2つの光電変換部3,5を厚み方向に積層した構造からなる光電変換素子であり、所謂、タンデムセルと呼ばれるものである。
タンデムセルにおいては、光電変換部3で発生した光電流と、光電変換部5で発生した光電流とのバランスを取ることが重要であり、n型非晶質半導体層34へ到達した電子とp型微結晶半導体層51へ到達した正孔との再結合を促進させることが重要である。
そのため、光電変換素子10においては、n型微結晶半導体層4をn型非晶質半導体層34とp型微結晶半導体層51との間に設け、光電変換部3で光励起された電子と光電変換部5で光励起された正孔との再結合を促進させている。
即ち、n型微結晶半導体層4を設けない場合、n型非晶質半導体層34は、p型微結晶半導体層51に接し、n型非晶質半導体層34/p型微結晶半導体層51は、np逆接合を形成し、このnp逆接合は、n型非晶質半導体層34へ到達した電子とp型微結晶半導体層51へ到達した正孔とを分離させる。その結果、n型非晶質半導体層34/p型微結晶半導体層51界面における電子と正孔との再結合が抑制される。
しかし、n型微結晶半導体層4をn型非晶質半導体層34とp型微結晶半導体層51との間に設けた場合、n型非晶質半導体層34/p型微結晶半導体層51によるnp逆接合が形成されず、その結果、n型微結晶半導体層4は、n型非晶質半導体層34へ到達した電子とp型微結晶半導体層51へ到達した正孔との再結合を促進する。
図3は、光電変換素子10の光照射試験の結果を示す図である。図3において、縦軸は、規格値を表し、横軸は、擬似太陽光の照射時間を表す。なお、擬似太陽光の光照射強度は、1000(W/m2)である。
また、曲線k5〜k8は、それぞれ、光電変換素子10における開放電圧(Voc)、短絡光電流(Jsc)、曲線因子(F.F.)および変換効率(Eff)の擬似太陽光の照射時間による変化を示す。
更に、曲線k9〜k12は、それぞれ、従来の光電変換素子における開放電圧(Voc)、短絡光電流(Jsc)、曲線因子(F.F.)および変換効率(Eff)の擬似太陽光の照射時間による変化を示す。
なお、開放電圧(Voc)、短絡光電流(Jsc)、曲線因子(F.F.)および変換効率(Eff)の値は、それぞれ、擬似太陽光の照射時間が0.1(h)のときの開放電圧(Voc)、短絡光電流(Jsc)、曲線因子(F.F.)および変換効率(Eff)の値で規格化した値である。
また、光電変換素子10は、上述したバッファ層32の各種の形成方法のうち、膜厚を3〜5nmに薄くして形成したバッファ層32を備える光電変換素子である。
擬似太陽光の光照射試験の結果、光電変換素子10の開放電圧(Voc)は、従来の光電変換素子の開放電圧(Voc)よりも高く(曲線k5,k9参照)、光電変換素子10の短絡光電流(Jsc)は、従来の光電変換素子の短絡光電流(Jsc)よりも大きく(曲線k6,k10参照)、光電変換素子10の曲線因子(F.F.)は、従来の光電変換素子の曲線因子(F.F.)よりも大きい(曲線k7,k11参照)。その結果、光電変換素子10の変換効率(Eff)は、従来の光電変換素子の変換効率(Eff)よりも高い(曲線k8,k12参照)。そして、光電変換素子10における変換効率(Eff)の光劣化率は、約9%であり、従来の光電変換素子における変換効率(Eff)の光劣化率は、約15%である。この光劣化率における6%の改善は、光電変換素子の分野においては、非常に大きな改善であり、有意差のある改善である。
擬似太陽光を光電変換素子10に照射した場合、短絡光電流(Jsc)の低下が大きく改善されている(曲線k6,k10参照)。これは、上述したように、バッファ層32における炭素原子の含有量を基準値よりも少なくした結果、p型非晶質半導体層31と、i型非晶質半導体層33との界面における再結合準位が減少し、光励起された正孔がより多くp型非晶質半導体層31へ到達し易くなり、光励起された電子のp型非晶質半導体層31/i型非晶質半導体層33界面における再結合が減少したためであると考えられる。
従って、バッファ層32における炭素原子の含有量を従来の含有量よりも減少させることによって、光電変換素子10の光劣化率を減少できることが実証された。
従来の光電変換素子においては、バッファ層における炭素原子の含有量は、1原子%〜40原子%=5×1020(個/cm3)〜2×1022(個/cm3)であり、従来の光電変換素子におけるバッファ層の膜厚は、6〜7nmであるので、光電変換素子10において、バッファ層32の膜厚を6〜7nm(従来の膜厚と同じ)に保持し、CH4ガスの流量を少なくしてバッファ層32を形成した場合、バッファ層32における炭素原子の含有量は、5×1020(個/cm3)×6×10−7(cm)〜2×1022(個/cm3)×7×10−7(cm)=3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)よりも少なくなる。
従って、光電変換素子10は、CH4ガスの流量を少なくしてバッファ層32における炭素原子の含有量を減少させた場合、炭素原子の含有量が基準値(=3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2))よりも少ないバッファ層32を備えていればよい。
また、膜厚を6〜7nmから3〜5nmに薄くすることによってバッファ層32における炭素原子の含有量を少なくした場合、バッファ層32における炭素原子の含有量は、上述したように、1.5×1014(個/cm2)〜1.0×1016(個/cm2)である。
一方、バッファ層の膜厚が6〜7nmである場合、バッファ層における炭素原子の含有量は、上述したように、3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)である。そして、バッファ層の膜厚が6nmである場合、バッファ層における炭素原子の含有量は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)である。その結果、膜厚を6nmよりも薄くすることによってバッファ層32における炭素原子の含有量を減少させた場合のバッファ層32における炭素原子の含有量の基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)に設定されるべきである。
従って、光電変換素子10は、膜厚を薄くすることによってバッファ層32における炭素原子の含有量を減少させた場合、炭素原子の含有量が基準値(=3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2))よりも少ないバッファ層32を備えていればよい。
そうすると、CH4ガスの流量を少なくしてバッファ層32における炭素原子の含有量を減少させる方法、および膜厚を薄くすることによってバッファ層32における炭素原子の含有量を減少させる方法のいずれかの方法を採用する場合、光電変換素子10は、炭素原子の含有量が基準値(=3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲)よりも少ないバッファ層32を備えていればよい。
そして、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)は、バッファ層32を厚み方向から見た場合の単位面積当たりの炭素原子の含有量の範囲を表している。
従って、バッファ層を備える光電変換素子において、バッファ層を厚み方向から見た場合の単位面積当たりの炭素原子の含有量が3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)からなる基準値、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)からなる基準値よりも少なければ、この光電変換素子は、本願発明の範囲に含まれる。
このように、この発明の実施の形態においては、バッファ層32における炭素原子の含有量を、バッファ層32の膜厚を考慮したときの単位面積当たりの炭素原子の含有量である基準値(=3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲)を用いて規定した点に技術的意義がある。バッファ層32における炭素原子の含有量を基準値(=3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲)よりも少なくすれば、光電変換素子10の光劣化率を減少できるからである。
また、膜厚を薄くしてバッファ層32における炭素原子の含有量を少なくする場合、バッファ層32の膜厚を6nmよりも少ない3〜5nmに設定すればよく、膜厚が6nmであるときのバッファ層32における炭素原子の含有量は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)であるので、光電変換素子10におけるバッファ層32の膜厚は、基準膜厚よりも薄く、基準膜厚は、バッファ層における炭素原子の含有量が基準値(=3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2))になるときの膜厚であればよい。
[実施の形態2]
図4は、実施の形態2による光電変換素子の構成を示す断面図である。図4を参照して、実施の形態2による光電変換素子100は、図1に示す光電変換素子10のn型微結晶半導体層4および光電変換部5を削除したものであり、その他は、光電変換素子10と同じである。
図4は、実施の形態2による光電変換素子の構成を示す断面図である。図4を参照して、実施の形態2による光電変換素子100は、図1に示す光電変換素子10のn型微結晶半導体層4および光電変換部5を削除したものであり、その他は、光電変換素子10と同じである。
光電変換素子100においては、電極6は、光電変換部3のn型非晶質半導体層34に接して配置される。
このように、光電変換素子100は、1個の光電変換部3を備える光電変換素子であり、所謂、シングルセルと呼ばれるものである。
光電変換素子100は、上述した光電変換素子10の製造方法において、n型微結晶半導体層4、p型微結晶半導体層51、i型微結晶半導体層52およびn型微結晶半導体層53を形成する工程を削除した製造方法に従って製造される。
光電変換素子100においては、太陽光は、透光性基板1側から光電変換素子100に入射する。そして、電子および正孔は、主に、光電変換部3のi型非晶質半導体層33において光励起される。
光電変換部3のi型非晶質半導体層33において光励起された電子および正孔は、上述したように、それぞれ、n型非晶質半導体層34およびp型非晶質半導体層31へ到達する。そして、正孔は、p型非晶質半導体層31から透明導電膜2へ到達する。
また、n型非晶質半導体層34へ到達した電子は、透明導電膜2と電極6との間に接続された外部負荷を介して電極6から透明導電膜2へ到達し、p型非晶質半導体層31から透明導電膜2へ到達した正孔と再結合する。
これによって、光電変換素子100において発生した電流が外部負荷に流れる。
光電変換素子100は、炭素原子の含有量が基準値(=3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲)よりも少ないバッファ層32を備える。
従って、上述したように、擬似太陽光の照射下において、短絡光電流(Jsc)の低下率が減少し、光電変換素子100の光劣化率を低減できる。
実施の形態2におけるその他の説明は、実施の形態1における説明と同じである。
[実施の形態3]
図5は、実施の形態3による光電変換素子の構成を示す断面図である。図5を参照して、実施の形態3による光電変換素子200は、図1に示す光電変換素子10に光電変換部7を追加したものであり、その他は、光電変換素子10と同じである。
図5は、実施の形態3による光電変換素子の構成を示す断面図である。図5を参照して、実施の形態3による光電変換素子200は、図1に示す光電変換素子10に光電変換部7を追加したものであり、その他は、光電変換素子10と同じである。
光電変換部7は、p型微結晶半導体層71と、i型微結晶半導体層72と、n型微結晶半導体層73とを含む。
p型微結晶半導体層71は、光電変換部5のn型微結晶半導体層53に接して配置される。そして、p型微結晶半導体層71は、例えば、p型μc−Siからなり、膜厚は、例えば、40nmである。
i型微結晶半導体層72は、p型微結晶半導体層71に接して配置される。そして、i型微結晶半導体層72は、例えば、i型μc−Siからなり、膜厚は、例えば、2500nmである。
n型微結晶半導体層73は、i型微結晶半導体層72に接して配置される。そして、n型微結晶半導体層73は、例えば、n型μc−Siからなり、膜厚は、例えば、40nmである。
なお、光電変換素子200においては、電極6は、光電変換部7のn型微結晶半導体層73に接して配置される。
このように、光電変換素子200は、3個の光電変換部3,5,7を積層した構造からなる光電変換素子であり、所謂、トリプルセルと呼ばれるものである。
光電変換素子200は、光電変換素子10の製造方法に、p型微結晶半導体層71、i型微結晶半導体層72およびn型微結晶半導体層73を形成する工程を追加した製造方法に従って製造される。
p型微結晶半導体層71、i型微結晶半導体層72およびn型微結晶半導体層73は、ぞれぞれ、p型微結晶半導体層51、i型微結晶半導体層52およびn型微結晶半導体層33を形成する工程と同じ工程に従って形成される。
従って、光電変換素子200は、上述した方法によって、p型非晶質半導体層31、バッファ層32、i型非晶質半導体層33、n型非晶質半導体層34、n型微結晶半導体層4、p型微結晶半導体層51、i型微結晶半導体層52およびn型微結晶半導体層53を透明導電膜2上に順次積層し、その後、p型微結晶半導体層71、i型微結晶半導体層72およびn型微結晶半導体層73をn型微結晶半導体層53上に順次積層し、更に、電極6をn型微結晶半導体層73に接して形成することによって製造される。
光電変換素子200においては、太陽光は、透光性基板1側から光電変換素子200に入射する。そして、電子および正孔は、主に、光電変換部3のi型非晶質半導体層33、光電変換部5のi型微結晶半導体層52および光電変換部7のi型微結晶半導体層72において光励起される。
光電変換部3のi型非晶質半導体層33において光励起された電子および正孔は、上述したように、それぞれ、n型非晶質半導体層34およびp型非晶質半導体層31へ到達する。そして、正孔は、p型非晶質半導体層31から透明導電膜2へ到達する。
また、光電変換部5のi型微結晶半導体層52において光励起された電子および正孔は、上述したように、それぞれ、n型微結晶半導体層53およびp型微結晶半導体層51へ到達する。
n型非晶質半導体層34に到達した電子は、p型微結晶半導体層51に到達した正孔とn型微結晶半導体層4において再結合する。
更に、光電変換部7のi型微結晶半導体層72において光励起された電子および正孔は、p型微結晶半導体層71/i型微結晶半導体層72/n型微結晶半導体層73からなるpin接合による内部電界によって分離される。そして、電子は、n型微結晶半導体層73へ到達し、正孔は、p型微結晶半導体層71へ到達する。
そして、n型微結晶半導体層53へ到達した電子は、p型微結晶半導体層71へ到達した正孔と再結合する。
また、n型微結晶半導体層73へ到達した電子は、透明導電膜2と電極6との間に接続された外部負荷を介して電極6から透明導電膜2へ到達し、p型非晶質半導体層31から透明導電膜2へ到達した正孔と再結合する。
これによって、光電変換素子200において発生した電流が外部負荷に流れる。
光電変換素子200は、炭素原子の含有量が基準値(=3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲)よりも少ないバッファ層32を備える。
従って、上述したように、擬似太陽光の照射下において、短絡光電流(Jsc)の低下率が減少し、光電変換素子200の光劣化率を低減できる。
実施の形態3におけるその他の説明は、実施の形態1における説明と同じである。
なお、上記においては、i型非晶質半導体層33は、i型a−Siからなると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、i型非晶質半導体層33は、i型a−SiGeまたはi型a−Geからなっていてもよい。
また、上記においては、n型非晶質半導体層34は、n型a−Siからなると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、n型非晶質半導体層34は、n型a−SiC、n型a−SiN、n型a−SiO、n型a−SiGeおよびn型a−Geのいずれかからなっていてもよい。
更に、上記においては、n型微結晶半導体層4は、n型μc−Siからなると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、n型微結晶半導体層4は、n型μc−SiCからなっていてもよい。
更に、上記においては、p型微結晶半導体層51,71は、p型μc−Siからなると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、p型微結晶半導体層51,71は、p型μc−SiCからなっていてもよい。
更に、上記においては、i型微結晶半導体層52,72は、i型μc−Siからなると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、i型微結晶半導体層52,72は、i型非晶質半導体層33がi型a−SiGeからなる場合、i型μc−SiGeからなり、i型非晶質半導体層33がi型a−Geからなる場合、i型μc−Geからなる。
更に、上記においては、n型微結晶半導体層53,73は、n型μc−Siからなると説明したが、この発明の実施の形態においては、これに限らず、n型微結晶半導体層53,73は、n型μc−SiCからなっていてもよい。
更に、光電変換素子10においては、光電変換部5は、光電変換部3のi型非晶質半導体層33の光学バンドギャップよりも小さい光学バンドギャップを有する半導体材料からなっていてもよい。例えば、i型非晶質半導体層33がi型a−Siからなる場合、光電変換部5は、a−SiGeまたはa−Geを用いたpin構造からなる。光電変換素子200の光電変換部5,7についても同様である。この場合、光電変換部7を構成する半導体材料の光学バンドギャップは、光電変換部5を構成する半導体材料の光学バンドギャップよりも小さいことが好ましい。
上述した実施の形態1においては、炭素原子の含有量が基準値よりも少ないバッファ層32を備える光電変換素子10(タンデムセル)について説明し、実施の形態2においては、炭素原子の含有量が基準値よりも少ないバッファ層32を備える光電変換素子100(シングルセル)について説明し、実施の形態3においては、炭素原子の含有量が基準値よりも少ないバッファ層32を備える光電変換素子200(トリプルセル)について説明した。
従って、この発明の実施の形態による光電変換素子は、アモルファスシリコンカーバイドからなるp型半導体層と、p型半導体層に対向して設けられ、非晶質相からなるi型半導体層と、i型半導体層に対向して設けられ、非晶質相からなるn型半導体層と、p型半導体層とi型半導体層との間に設けられるとともにアモルファスシリコンカーバイドからなり、炭素原子の含有量が基準値よりも少ないバッファ層とを備え、基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲からなっていればよい。そして、この発明の実施の形態による光電変換素子は、上述したシングルセル、タンデムセルおよびトリプルセルを含むものである。
また、上述したように、光電変換素子10,100,200の製造方法は、炭素原子用の材料ガスであるCH4ガスの流量を従来の流量よりも少なくして、または膜厚を従来の膜厚よりも薄くしてバッファ層32を形成する工程を備える。
従って、この発明の実施の形態による光電変換素子の製造方法は、基板上に形成された透明導電膜上にアモルファスシリコンカーバイドからなるp型半導体層を堆積する第1の工程と、アモルファスシリコンカーバイドからなるバッファ層を炭素原子の含有量が基準値よりも少なくなるようにp型半導体層上に堆積する第2の工程と、バッファ層上に非晶質相からなるi型半導体層を堆積する第3の工程と、i型半導体層上に非晶質相からなるn型半導体層を堆積する第4の工程とを備え、基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲からなっていればよい。
また、光電変換素子10,100,200の製造方法においては、バッファ層32は、炭素原子用の材料ガスであるCH4ガスの流量を252sccmよりも少なくして形成されるので、バッファ層を形成する第2の工程において、バッファ層は、炭素原子用の材料ガスを基準流量よりも少なくして堆積され、基準流量は、バッファ層32における炭素原子の含有量が基準値(=3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲)になるときの流量であればよい。
更に、光電変換素子10,100,200の製造方法においては、バッファ層32は、膜厚を6〜7nmよりも薄い3〜5nmに設定して形成されるので、バッファ層を形成する第2の工程において、バッファ層は、膜厚を基準膜厚よりも薄くして堆積され、基準膜厚は、バッファ層における炭素原子の含有量が基準値(=3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲)になるときの膜厚であればよい。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
この発明は、光電変換素子および光電変換素子の製造方法に適用される。
1 透光性基板、2 透明導電膜、3,5,7 光電変換部、4,53,73 n型微結晶半導体層、6 電極、10,100,200 光電変換素子、31 p型非晶質半導体層、32 バッファ層、33 i型非晶質半導体層、34 n型非晶質半導体層、51,71 p型微結晶半導体層、52,72 i型微結晶半導体層。
Claims (9)
- アモルファスシリコンカーバイドからなるp型半導体層と、
前記p型半導体層に対向して設けられ、非晶質相からなるi型半導体層と、
前記i型半導体層に対向して設けられ、非晶質相からなるn型半導体層と、
前記p型半導体層と前記i型半導体層との間に設けられるとともにアモルファスシリコンカーバイドからなり、炭素原子の含有量が基準値よりも少ないバッファ層とを備え、
前記基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲からなる、光電変換素子。 - 前記バッファ層における炭素原子の含有量は、前記p型半導体層から前記i型半導体層へ向かう方向において徐々に減少している、請求項1に記載の光電変換素子。
- 前記バッファ層における炭素原子の含有量は、前記バッファ層の厚み方向において略一定である、請求項1に記載の光電変換素子。
- 前記バッファ層の膜厚は、基準膜厚よりも薄く、
前記基準膜厚は、前記バッファ層における炭素原子の含有量が前記基準値になるときの膜厚である、請求項1に記載の光電変換素子。 - 基板上に形成された透明導電膜上にアモルファスシリコンカーバイドからなるp型半導体層を堆積する第1の工程と、
アモルファスシリコンカーバイドからなるバッファ層を炭素原子の含有量が基準値よりも少なくなるように前記p型半導体層上に堆積する第2の工程と、
前記バッファ層上に非晶質相からなるi型半導体層を堆積する第3の工程と、
前記i型半導体層上に非晶質相からなるn型半導体層を堆積する第4の工程とを備え、
前記基準値は、3×1014(個/cm2)〜1.2×1016(個/cm2)の範囲、または3×1014(個/cm2)〜1.4×1016(個/cm2)の範囲からなる、光電変換素子の製造方法。 - 前記第2の工程において、前記バッファ層は、炭素原子用の材料ガスの流量を基準流量よりも少なくして堆積され、
前記基準流量は、前記バッファ層における炭素原子の含有量が前記基準値になるときの流量である、請求項5に記載の光電変換素子の製造方法。 - 前記第2の工程において、前記バッファ層は、前記基準流量よりも少ない範囲において前記炭素原子用の材料ガスの流量を徐々に減少しながら堆積される、請求項6に記載の光電変換素子の製造方法。
- 前記第2の工程において、前記バッファ層は、前記基準流量よりも少ない範囲において前記炭素原子用の材料ガスの流量を略一定に保持して堆積される、請求項6に記載の光電変換素子の製造方法。
- 前記第2の工程において、前記バッファ層は、膜厚を基準膜厚よりも薄くして堆積され、
前記基準膜厚は、前記バッファ層における炭素原子の含有量が前記基準値になるときの膜厚である、請求項5に記載の光電変換素子の製造方法。
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