JP2013114992A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】零下時における燃料電池システムの始動性を確保する。
【解決手段】本発明は、アノードガス及びカソードガスを燃料電池に供給して発電させる燃料電池システムであって、燃料電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出手段と、燃料電池システムの運転状態に基づいて燃料電池の電解質膜の含水分布を推定する含水分布推定手段と、燃料電池システムの停止後に燃料電池を乾燥させる停止後パージ運転を実施する停止後パージ手段と、を備え、停止後パージ手段は、停止後パージ運転終了時の内部抵抗の目標値を電解質膜の含水分布に基づいて算出し、燃料電池の内部抵抗が目標値以上となったときに前記停止後パージ運転を終了させることを特徴とする。
【選択図】図1
【解決手段】本発明は、アノードガス及びカソードガスを燃料電池に供給して発電させる燃料電池システムであって、燃料電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出手段と、燃料電池システムの運転状態に基づいて燃料電池の電解質膜の含水分布を推定する含水分布推定手段と、燃料電池システムの停止後に燃料電池を乾燥させる停止後パージ運転を実施する停止後パージ手段と、を備え、停止後パージ手段は、停止後パージ運転終了時の内部抵抗の目標値を電解質膜の含水分布に基づいて算出し、燃料電池の内部抵抗が目標値以上となったときに前記停止後パージ運転を終了させることを特徴とする。
【選択図】図1
Description
本発明は燃料電池システムに関する。
従来の燃料電池システムとして、零下起動に備えて燃料電池システムの停止後に燃料電池スタックを乾燥させるための停止後パージ運転を実施するものがある(特許文献1参照)。
前述した従来の燃料電池システムは、燃料電池スタックの内部インピーダンスが予め定められた所定値以上になったときに停止後パージ運転を終了することで、電解質膜の膜中の水分量(以下「含水量」という。)を所定量以下に保ち、零下時の始動性を確保していた。
しかしながら、燃料電池スタックの内部インピーダンスは、電解質膜全体の含水量が変わると変化するが、仮に、含水量が同じだとしても、たとえば、通常に比して電解質膜の上流が乾燥し、下流がより濡れているような含水分布では、通常の含水分布に比して、含水量とインピーダンスの関係が変化することがわかった。そのため、停止後パージ運転を終了する条件となる内部インピーダンスを予め定められた所定値に設定していると、電解質膜の含水分布によっては、電解質膜の含水量が所定量に対して乖離した状態で停止後パージ運転を終了してしまい、零下時の始動性が悪化するという問題点があった。
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、電解質膜の含水分布に関わらず、燃料電池システムの始動性を確保することを目的とする。
本発明は、アノードガス及びカソードガスを燃料電池に供給して発電させる燃料電池システムであって、燃料電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出手段と、燃料電池システムの運転状態に基づいて燃料電池の電解質膜の含水分布を推定する含水分布推定手段と、燃料電池システムの停止後に燃料電池を乾燥させる停止後パージ運転を実施する停止後パージ手段と、を備える。そして、停止後パージ手段が、停止後パージ運転終了時の内部抵抗の目標値を電解質膜の含水分布に基づいて算出し、燃料電池の内部抵抗が目標値以上となったときに停止後パージ運転を終了させる、ことを特徴とする。
本発明によれば、電解質膜の含水分布に応じて停止後パージ運転を終了させる内部抵抗の目標値を変更させることとした。これにより、停止後パージ運転を終了したときの電解質膜の含水量が所定量に対して乖離するのを抑制できる。よって、電解質膜の過湿潤又は過乾燥を抑制することができるので、電解質膜の含水分布に関わらず燃料電池システムの始動性を確保することができる。
以下、図面等を参照して本発明の実施形態について説明する。
(第1実施形態)
燃料電池は電解質膜をアノード電極(燃料極)とカソード電極(酸化剤極)とによって挟み、アノード電極に水素を含有するアノードガス(燃料ガス)、カソード電極に酸素を含有するカソードガス(酸化剤ガス)を供給することによって発電する。アノード電極及びカソード電極の両電極において進行する電極反応は以下の通りである。
燃料電池は電解質膜をアノード電極(燃料極)とカソード電極(酸化剤極)とによって挟み、アノード電極に水素を含有するアノードガス(燃料ガス)、カソード電極に酸素を含有するカソードガス(酸化剤ガス)を供給することによって発電する。アノード電極及びカソード電極の両電極において進行する電極反応は以下の通りである。
アノード電極 : 2H2 →4H+ +4e- …(1)
カソード電極 : 4H+ +4e- +O2 →2H2O …(2)
カソード電極 : 4H+ +4e- +O2 →2H2O …(2)
この(1)(2)の電極反応によって燃料電池は1ボルト程度の起電力を生じる。
このような燃料電池を自動車用動力源として使用する場合には、要求される電力が大きいため、数百枚の燃料電池を積層した燃料電池スタックとして使用する。そして、燃料電池スタックにアノードガス及びカソードガスを供給する燃料電池システムを構成して、車両駆動用の電力を取り出す。
図1は、本発明の第1実施形態による燃料電池システム100の概略図である。
燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、アノードガス給排装置2と、カソードガス給排装置3と、スタック冷却装置4と、コントローラ5と、を備える。
燃料電池スタック1は、複数枚の燃料電池を積層したものであり、アノードガス及びカソードガスの供給を受けて発電し、発電した電力を、車両を駆動するために必要なモータ(図示せず)などの各種の電装部品に供給する。
アノードガス給排装置2は、高圧タンク21と、アノードガス供給通路22と、アノード調圧弁23と、アノードガス排出通路24と、アノードガス還流通路25と、リサイクルコンプレッサ26と、排出弁27と、を備える。
高圧タンク21は、燃料電池スタック1に供給するアノードガスを高圧状態に保って貯蔵する。
アノードガス供給通路22は、燃料電池スタック1に供給するアノードガスが流れる通路であって、一端が高圧タンク21に接続され、他端が燃料電池スタック1のアノードガス入口孔に接続される。
アノード調圧弁23は、アノードガス供給通路22に設けられる。アノード調圧弁23は、コントローラ5によって開閉制御され、高圧タンク21からアノードガス供給通路22に流れ出したアノードガスの圧力を所望の圧力に調節する。
アノードガス排出通路24は、燃料電池スタック1から排出されたアノードオフガスが流れる通路であって、一端が燃料電池スタック11のアノードガス出口孔に接続され、他端が開口端となっている。アノードオフガスは、電極反応で使用されなかった余剰のアノードガスと、カソード側からリークしてきた窒素などの不活性ガスと、の混合ガスである。
アノードガス還流通路25は、アノードガス排出通路24に排出されたアノードオフガスを、アノードガス供給通路22に戻すための通路である。アノードガス還流通路25は、一端が排出弁27よりも上流側のアノードガス排出通路24に接続され、他端がアノード調圧弁23よりも下流側のアノードガス供給通路22に接続される。
リサイクルコンプレッサ26は、アノードガス還流通路25に設けられる。リサイクルコンプレッサ26は、アノードガス排出通路24に排出されたアノードオフガスを、アノードガス供給通路22に戻す。
排出弁27は、アノードガス排出通路24とアノードガス還流通路25との接続部よりも下流側のアノードガス排出通路24に設けられる。排出弁27は、コントローラ5によって開閉制御され、アノードオフガスや凝縮水を燃料電池システム100の外部へ排出する。
カソードガス給排装置3は、カソードガス供給通路31と、カソードガス排出通路32と、フィルタ33と、カソードコンプレッサ34と、エアフローセンサ35と、水分回収装置(Water Recovery Device;以下「WRD」という。)36と、圧力センサ37と、カソード調圧弁38と、を備える。
カソードガス供給通路31は、燃料電池スタック1に供給するカソードガスが流れる通路である。カソードガス供給通路31は、一端がフィルタ33に接続され、他端が燃料電池スタック1のカソードガス入口孔に接続される。
カソードガス排出通路32は、燃料電池スタック1から排出されるカソードオフガスが流れる通路である。カソードガス排出通路32は、一端が燃料電池スタック1のカソードガス出口孔に接続され、他端が開口端となっている。カソードオフガスは、カソードガスと、電極反応によって生じた水蒸気と、の混合ガスである。
フィルタ33は、カソードガス供給通路31に取り込むカソードガス中の異物を取り除く。
カソードコンプレッサ34は、カソードガス供給通路31に設けられる。カソードコンプレッサ34は、フィルタ33を介してカソードガスとしての空気(外気)をカソードガス供給通路31に取り込み、燃料電池スタック1に供給する。
エアフローセンサ35は、カソードコンプレッサ34よりも下流のカソードガス供給通路31に設けられる。エアフローセンサ35は、カソードガス供給通路31を流れるカソードガスの流量を検出する。
WRD36は、カソードオフガス中の水分を回収し、その回収した水分でカソードガスを加湿する装置であって、加湿部361と除湿部362とを備える。
加湿部361は、エアフローセンサ35よりも下流のカソードガス供給通路31に設けられる。加湿部361は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスを加湿する。
除湿部362は、カソードガス排出通路32に設けられる。除湿部362は、カソードガス排出通路32を流れるカソードオフガスを除湿し、回収した水蒸気を加湿部361に供給する。
圧力センサ37は、WRD36の加湿部361よりも下流のカソードガス供給通路31に設けられる。圧力センサ37は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力(以下「カソード圧」という。)を検出する。
カソード調圧弁38は、WRD36の除湿部362よりも上流のカソードガス排出通路32に設けられる。カソード調圧弁38は、コントローラ5によって開閉制御され、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの圧力を所望の圧力に調節する。
スタック冷却装置4は、燃料電池スタック1を冷却し、燃料電池スタック1を発電に適した温度に保つ装置である。スタック冷却装置4は、冷却水循環通路41と、ラジエータ42と、バイパス通路43と、三方弁44と、冷却水循環ポンプ45と、水温センサ46と、を備える。
冷却水循環通路41は、燃料電池スタック11を冷却するための冷却水が循環する通路である。
ラジエータ42は、冷却水循環通路41に設けられる。ラジエータ42は、燃料電池スタック1から排出された冷却水を冷却する。
バイパス通路43は、ラジエータ42をバイパスさせて冷却水を循環させることができるように、一端が冷却水循環通路41に接続され、他端が三方弁44に接続される。
三方弁44は、ラジエータ42よりも下流側の冷却水循環通路41に設けられる。三方弁44は、冷却水の温度に応じて冷却水の循環経路を切り替える。具体的には、冷却水の温度が相対的に高いときは、燃料電池スタック1から排出された冷却水が、ラジエータ42を介して再び燃料電池スタック1に供給されるように冷却水の循環経路を切り替える。逆に、冷却水の温度が相対的に低いときは、燃料電池スタック1から排出された冷却水から排出された冷却水が、ラジエータ42を介さずにバイパス通路43を流れて再び燃料電池スタック1に供給されるように冷却水の循環経路を切り替える。
冷却水循環ポンプ45は、三方弁44よりも下流側の冷却水循環通路41に設けられて、冷却水を循環させる。
水温センサ46は、ラジエータ42よりも上流側の冷却水循環通路41に設けられる。水温センサ46は、燃料電池スタック1から排出された冷却水の温度(以下「スタック温度」という。)を検出する。
コントローラ5は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。コントローラ5には、前述したエアフローセンサ35、圧力センサ37及び水温センサ46の他にも、燃料電池スタックの出力電流を検出する電流センサ51や、燃料電池スタックの出力電圧を検出する電圧センサ52、始動キーのオン・オフに基づいて燃料電池システムの始動要求及び停止要求を検出するキーセンサ53などの燃料電池システム100を制御するために必要な各種センサからの信号が入力される。
ここで、本実施形態のような燃料電池システム100を車両に搭載する場合、外気温度が0℃を下回るような低温環境下においても、燃料電池システム100を確実かつ早期に始動させることが求められる。燃料電池システム100の停止後、燃料電池スタック1の内部を乾燥させずに放置しておくと、低温環境下では、運転中の電極反応によって生じた水(以下「生成水」)が燃料電池スタック1の内部で凍結するおそれがある。そうすると、生成水の凍結によって次回始動時に反応ガスが電極に十分に供給されなくなって発電効率が低下し、燃料電池システム100を確実かつ早期に始動させることできなくなるおそれがある。
そのため、燃料電池システム100の停止後は、電解質膜の含水量を所定量以下に保ち、生成水の凍結による始動性の低下を抑制する必要がある。したがって、燃料電池システム100の停止後は、次回始動時に備えてカソードコンプレッサ34を駆動して燃料電池スタック1の内部の水分を外部に排出し、電解質膜を乾燥させる停止後パージ運転を実施する必要がある。
電解質膜の含水量は、燃料電池スタック1の内部インピーダンスと相関関係にあることが知られており、基本的に電解質膜の含水量が少なく、電解質膜が乾いた状態のときほど内部インピーダンスは高くなる。
そこで従来は、燃料電池システム100の停止後、燃料電池スタック1の内部インピーダンスが予め定められた所定の目標内部インピーダンス以上になったときに、停止後パージ運転を終了していた。
しかしながら、発明者らの鋭意研究によって、燃料電池スタック1の内部インピーダンスは、電解質膜全体の含水量以外にも、電解質膜の含水分布(電解質膜の各位置での含水量)の違いによって変化することがわかった。この点について、図2を参照して説明する。
図2(A)及び図2(B)は、電解質膜全体の含水量λallはそれぞれ同じで、電解質膜の含水分布がそれぞれ異なっている様子を示した図である。図2(A)及び図2(B)において、横軸はカソードガスの流れ方向に沿った電解質膜の位置を表しており、図中右側に行くほどカソードガスの出口マニホールドに近い位置となる。一方、縦軸はカソードガスの流れ方向に沿った電解質膜の各位置での含水量を表す。
図2(A)は、カソードガスの入口マニホールド側の位置における電解質膜の含水量λ0と、出口マニホールド側の位置における電解質膜の含水量λ9と、の間の差が少ない場合、すなわち電解質膜の含水分布が小さい場合を示す。図2(B)は、カソードガスの入口マニホールド側の位置における電解質膜の含水量λ0と、出口マニホールド側の位置における電解質膜の含水量λ9と、の間の差が大きい場合、すなわち電解質膜の含水分布が大きい場合を示す。
電解質膜全体の含水量が同じであれば、図2(A)に示すように電解質膜の含水分布が小さい場合と比べて、図2(B)に示すように電解質膜の含水分布が大きいときのほうが、燃料電池スタック1の内部インピーダンスは高くなる。
換言すれば、燃料電池スタック1の内部インピーダンスが同じ値でも、電解質膜の含水分布に応じて電解質膜全体の含水量が異なってくる。つまり、燃料電池スタック1の内部インピーダンスが同じ値でも、電解質膜の含水分布が小さければ電解質膜全体の含水量は相対的に多くなり、電解質膜の含水分布が大きければ電解質膜全体の含水量が相対的に少なくなる。
したがって、従来のように、燃料電池システム100の停止後、燃料電池スタック1の内部インピーダンスが所定の目標内部インピーダンス以上になったことを条件に停止後パージ運転を終了していたのでは、例えば電解質膜の含水分布が小さかった場合には、電解質膜全体の含水量が所定量よりも多いまま停止後パージ運転が終了されるおそれがある。そうすると、燃料電池システム100の停止後、次に始動されるまでの間に燃料電池スタック1の内部の水分が凍結してしまい、燃料電池システム100の始動ができなくなるおそれがある。
一方、例えば電解質膜の含水分布が大きかった場合には、電解質膜全体の含水量が所定量よりも少なくなっても停止後パージ運転が継続されるおそれがある。そうすると、電解質膜の過乾燥によって、次回始動時において燃料電池スタック1の出力が低下してしまい、暖機時間が長くなって速やかな始動ができなくなるおそれがある。
本実施形態では、燃料電池システムの排水性を向上させるとともに、停止後パージ運転の実施時間を短くするために、電解質膜を比較的乾いた状態で燃料電池システムを運転させている。そのため、電解質膜の含水分布が特に大きくなりやすい。
そこで本実施形態では、燃料電池システム100の運転中に電解質膜の含水分布を推定し、推定した電解質膜の含水分布に応じて、停止後パージ運転の目標内部インピーダンスを変化させることとした。これにより、燃料電池システム100の停止後の電解質膜の含水量を所定量以下に保つことができ、次回始動時の始動性を確保することができる。
以下では、図3から図9を参照して電解質膜の含水分布の推定方法について説明した後、図10を参照して本実施形態による停止後パージ制御について説明する。
図3は、電解質膜の含水分布の推定方法について説明する図である。
図3に示すように、カソードガスの流れ方向に沿った電解質膜の各位置での含水量を比較すると、電解質膜の各位置での含水量はカソードガスの出口マニホールドに行くほど多くなる。
そして、電解質膜の含水分布は、燃料電池スタック1の内部での生成水の水収支に影響を与える各種のパラメータの変化に応じて、燃料電池システム100の運転中に時々刻々と変化する。具体的には、出力電流、スタック温度、カソード圧、ストイキレシオ(カソードガス流量)及び外気湿度の変化に応じて、電解質膜の含水分布は変化する。なお、ストイキレシオとは、燃料電池スタック1の出力電流を目標電流にするために理論上必要なカソードガス流量と、実際に燃料電池スタック1に供給しているカソードガス流量と、の比である。ストイキレシオが大きいときほど、理論上必要なカソードガス流量に対して実際に燃料電池スタック1に供給しているカソードガス流量が多くなる。
図3に示すように、カソードガスの入口マニホールドから出口マニホールドにかけての電解質膜の含水分布は、出力電流、スタック温度、カソード圧及びストイキレシオ(カソードガス流量)に応じて変化する。
これは、出力電流、スタック温度、カソード圧及びストイキレシオに応じて、発電によって生じる生成水量が変化すると共に、カソードガスによって水蒸気として燃料電池スタック1の外部に排出される生成水量が変化するためである。
また、カソードガスの入口マニホールド側の位置における電解質膜の含水量λ0は、外気湿度(Relative Humidity)に応じて変化する。
これは、カソードガスの入口マニホールド側の位置における電解質膜の含水量λ0は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの加湿量、すなわち、WRD36による加湿量と大気中に含まれる水分量(外気湿度)との和によって変化するためである。
図4から図8は、出力電流、スタック温度、カソード圧、ストイキレシオ及び外気湿度のそれぞれが変化したときの電解質膜の含水分布の変化の傾向を示す図である。
図4は、スタック温度、カソード圧、ストイキレシオ及び外気湿度が一定と仮定した場合に、出力電流が変化したときの電解質膜の含水分布の変化の傾向を示す図である。
図4に示すように、出力電流が大きくなるほど、電解質膜の含水分布は大きくなる。
図5は、出力電流、カソード圧、ストイキレシオ及び外気湿度が一定と仮定した場合に、スタック温度が変化したときの電解質膜の含水分布の変化の傾向を示す図である。
図5に示すように、スタック温度が高くなるほど、電解質膜の含水分布は小さくなる。
図6は、出力電流、スタック温度、ストイキレシオ及び外気湿度が一定と仮定した場合に、カソード圧が変化したときの電解質膜の含水分布の変化の傾向を示す図である。
図6に示すように、カソード圧が高くなるほど、電解質膜の含水分布は大きくなる。
図7は、出力電流、スタック温度、カソード圧及び外気湿度が一定と仮定した場合に、ストイキレシオが変化したときの電解質膜の含水分布の変化の傾向を示す図である。
図7に示すように、ストイキレシオが大きくなるほど、電解質膜の含水分布は小さくなる。
図8は、出力電流、スタック温度、カソード圧及びストイキレシオが一定と仮定した場合に、外気湿度が変化したときの電解質膜の含水分布の変化の傾向を示す図である。
図8に示すように、外気湿度が高くなるほど、カソードガスの入口マニホールド側の位置における電解質膜の含水量λ0は多くなる。
このように、出力電流、スタック温度、カソード圧、ストイキレシオ及び外気湿度が分かれば、それらの変化による電解質膜の含水分布の変化を総合的に考慮することで、電解質膜の含水分布を推定することができる。
ここで、出力電流、スタック温度及びカソード圧は、それぞれ電流センサ51、水温センサ46及び圧力センサ37によって検出することができる。また、ストイキレシオは、エアフローセンサ35によってカソードガス流量を検出することで、算出することができる。
一方で、外気湿度については、本実施形態では湿度センサを設けていないので、推定する必要がある。そこで本実施形態では、以下のようにして外気湿度を推定する。
図9は、外気湿度の推定方法について説明する図である。
図9に実線Aで示すように、燃料電池システム100の始動時には、前回停止時に行われた停止後パージ運転によって、電解質膜の含水分布はほとんどついていない状態(つまりλ0≒λ1≒…≒λ8≒λ9)になっていると考えられる。そして、実線Bで示すように、燃料電池システム100の運転条件に応じてこのような初期状態から徐々に含水分布がついていく。
ここで、カソードガスの入口マニホールド側の位置における電解質膜の含水量λ0は、燃料電池スタック1に供給されるカソードガスの加湿量、すなわち、WRD36による加湿量と大気中に含まれる水分量(外気湿度)との和に依存する。
したがって、外気湿度を0[%](基準湿度)と仮定すると、電解質膜の含水分布は、図9に破線で示すように、実際の含水分布に比べて外気湿度分だけ下がる形となる。そうすると、WRD36による加湿量は分かるので、外気湿度を0[%]と仮定したときの電解質膜の含水分布を推定することは可能である。
そこで本実施形態では、外気湿度を0[%]と仮定したとき、すなわち、カソードガスの入口マニホールド側の位置における電解質膜の含水量λ0がWRD36による加湿量と仮定したときの燃料電池スタック1の内部インピーダンスを、電解質膜の含水分布に応じて予め実験等によって算出しておき、マップとしてコントローラ5に記憶させておく。
そして、WRD36による加湿量と、運転条件(出力電流、スタック温度、カソード圧及びストイキレシオ)と、に応じて、外気湿度を0[%]と仮定したときの電解質膜の含水分布を推定し、その推定した電解質膜の含水分布から燃料電池スタック1の内部インピーダンスの暫定値を算出する。
そしてさらに、この内部インピーダンスの暫定値を、実際に検出した内部インピーダンスと比較する。外気湿度が0[%]でなければ、内部インピーダンスの暫定値と内部インピーダンスの実際値との間に乖離が生じるので、その差分から外気湿度を推定することができる。
図10は、本実施形態による停止後パージ制御について説明するフローチャートである。
ステップS1において、コントローラ5は、各種センサの検出信号を読み込む。
ステップS2において、コントローラは、燃料電池スタック1の内部インピーダンスの実際値を算出する。本実施形態では、公知の交流インピーダンス法によって燃料電池スタック1の内部インピーダンスの実際値を算出する。
ステップS3において、コントローラ5は、停止後パージ実施中フラグFpurgeが1に設定されているか否かを判定する。停止後パージ実施中フラグは、停止後パージ実施中に1に設定されるフラグであり、初期値は0に設定される。コントローラ5は、停止後パージ実施中フラグが0であれば、ステップS4の処理を行う。一方、停止後パージ実施中フラグが1であれば、ステップS6の処理を行う。
ステップS4において、コントローラ5は、電解質膜の含水分布推定処理を実施する。含水分布推定処理の詳細については、図11を参照して後述する。
ステップS5において、コントローラ5は、燃料電池システム100が停止されたか否かを判定する。具体的には、始動キーがオフにされたか否かを判定する。コントローラ5は、燃料電池システム100が運転中であれば、今回の処理を終了する。一方、燃料電池システム100が停止されていれば、ステップS6の処理を行う。
ステップS6において、コントローラ5は、停止後パージ処理を実施する。停止後パージ処理の詳細については、図13を参照して後述する。
図11は、電解質膜の含水分布推定処理について説明するフローチャートである。
ステップS41において、コントローラ5は、電解質膜の含水分布が全くついていない状態(つまりλ0=λ1=…=λ8=λ9)を初期状態とし、出力電流、スタック温度、カソード圧及びストイキレシオに基づいて、カソードガスの入口マニホールドから出口マニホールドにかけての電解質膜の含水分布を推定する。具体的には、出力電流、スタック温度、カソード圧及びストイキレシオに基づいて、図4から図7に示した電解質膜の含水分布の変化の傾向からカソードガスの入口マニホールドから出口マニホールドにかけての電解質膜の含水分布を推定する。
ステップS42において、コントローラ5は、燃料電池システム100の運転状態に応じて、WRD36によるカソードガスへの加湿量を算出する。WRD36によるカソードガスへの加湿量は、燃料電池システムの運転状態に応じて予め実験等によって求めておき、それをマップとしてコントローラ5に記憶させておくことで算出することができる。
ステップS43において、コントローラ5は、カソードガスの入口マニホールドから出口マニホールドにかけての推定した電解質膜の含水分布と、WRD36による加湿量と、に基づいて、予めコントローラ5に記憶させておいたマップを参照することで燃料電池スタック1の内部インピーダンスの暫定値を算出する。
ステップS44において、コントローラ5は、内部インピーダンスの暫定値と実際値との差分を算出する。
ステップS45において、コントローラ5は、内部インピーダンスの暫定値と実際値との差分に基づいて、図12のテーブルを参照して外気湿度を算出する。図12は、内部インピーダンスの暫定値と実際値との差分に基づいて外気湿度を算出するテーブルであり、差分が大きくなるほど、外気湿度は高くなる。
ステップS46において、コントローラ5は、WRD36による加湿量と外気湿度とから、カソードガスの入口マニホールド側の位置における電解質膜の含水量λ0を算出し、最終的な電解質膜の含水分布を推定する。
図13は、停止後パージ処理について説明するフローチャートである。
ステップS61において、コントローラ5は、電解質膜の含水分布に基づいて、図14のテーブルを参照して停止後パージ運転を終了する目標内部インピーダンスの値を算出する。図14は、電解質膜の含水分布に基づいて目標内部インピーダンスの値を算出するテーブルであり、電解質膜の含水分布が大きいときほど、目標内部インピーダンスを大きくする。
ステップS62において、コントローラ5は、停止後パージ運転を開始する。具体的には、カソードコンプレッサ34を駆動することで、電解質膜を乾燥させる。
ステップS63において、コントローラ5は、内部インピーダンスの実際値が目標内部インピーダンス以上になったか否かを判定する。コントローラ5は、内部インピーダンスの実際値が目標内部インピーダンスより小さければ、ステップS64の処理を行う。一方で、内部インピーダンスの実際値が目標内部インピーダンス以上であれば、ステップS64の処理を行う。
ステップS64において、コントローラ5は、停止後パージ実施中フラグFpurgeを1に設定する。
ステップS65において、コントローラ5は、停止後パージ運転を終了する。
ステップS66において、コントローラ5は、停止後パージ実施中フラグFpurgeを0に設定する。
次に本実施形態による作用効果について説明する。
本実施形態では、燃料電池スタック1の内部インピーダンスが目標内部インピーダンス以上になったときに、停止後パージ運転を終了する。このとき、燃料電池システム100の運転状態、すなわち燃料電池スタック1の内部における水収支に影響を与える各種パラメータの状態に応じて電解質膜の含水分布を推定し、電解質膜の含水分布が大きいときほど目標内部インピーダンスが大きくなるようにした。
燃料電池スタック1の内部インピーダンスは、電解質膜の含水量が同じでも、電解質膜の含水分布が大きくなるほど高くなる。したがって、電解質膜の含水分布が大きいときほど目標内部インピーダンスが大きくなるようすることで、停止後パージ運転の終了時における電解質膜の含水量のばらつきを抑制することができる。
これにより、電解質膜の加湿潤又は過乾燥を抑制することができるので、周囲の環境温度にかかわらず、燃料電池システム100を確実かつ早期に起動することができる。
また、本実施形態では、電解質膜の含水分布を推定するために必要な外気湿度を、出力電流、スタック温度、カソード圧、ストイキレシオ(カソードガス流量)及び内部インピーダンスに応じて推定することとした。
これにより、外気湿度を検出するセンサが不要となるので、燃料電池システム100のコストを抑えることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、燃料電池システム100の運転状態が過渡状態のときに、電解質膜の含水分布を補正する点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。なお、以下の各実施形態では上述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態は、燃料電池システム100の運転状態が過渡状態のときに、電解質膜の含水分布を補正する点で第1実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。なお、以下の各実施形態では上述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一の符号を用いて重複する説明を適宜省略する。
図15は、出力電流が変化したとき、すなわち定常状態から過渡状態に移行し、再び定常状態に至るまでの出力電圧の変化の様子を示した図である。
図15に示すように、時刻t2で出力電流がI1からI2に増加すると、出力電流の増加に対応して出力電圧が低下する。このとき、出力電圧は、時刻t2で一旦V2まで低下した後、所定の時間をかけて徐々に増加し、時刻t4で負荷変動後の出力電流I2に対応する出力電圧V4になる。
図16は、図15の時刻t1、t2、t3及びt4における電解質膜の含水分布を示した図である。
図16に示すように、出力電流I1からI2に増加したことで、電解質膜の含水分布は、出力電流I1に対応する含水分布(時刻t1における含水分布)から、出力電流I2に対応する含水分布(時刻t4における含水分布)へと徐々に変化する。
このように、出力電流は、過渡状態の間(時刻t2〜時刻t4)も一定であるが、電解質膜の含水分布は、出力電圧と同様に過渡状態の間に負荷変動後の出力電流I2に対応する含水分布へ向けて徐々に変化する。
そこで本実施形態では、燃料電池システム100の運転状態が過渡状態のときは、過渡状態になってからの経過時間に応じて、電解質膜の含水分布を補正することとした。以下、この本実施形態による電解質膜の含水分布推定処理について説明する。
図17は、本実施形態による電解質膜の含水分布推定処理について説明するフローチャートである。
ステップS41からステップS46までは、第1実施形態と同様の処理を実施するので、ここでは説明を省略する。
ステップS47において、コントローラ5は、含水分布補正処理を実施する。含水分布補正処理の詳細については、図18を参照して後述する。
図18は、含水分布補正処理について説明するフローチャートである。
ステップS471において、コントローラ5は、出力電流の今回値と前回値との差分(以下「出力電流差分値」という。)を算出する。
ステップS472において、コントローラ5は、出力電流が変化したか否かを判定する。具体的には、出力電流差分値が所定値以上か否かを判定し、出力電流差分値が所定値以上であれば、出力電流が変化したと判定する。コントローラ5は、出力電流が変化していなければステップS473の処理行う。一方で、出力電流が変化していればステップS474の処理を行う。
ステップS473において、コントローラ5は、過渡フラグFtraが1に設定されているか否かを判定する。過渡フラグFtraは、過渡状態の間は1に設定されるフラグであり、初期値は0に設定される。コントローラは、過渡フラグFtraが1に設定されていれば、ステップS476の処理を行う。一方で、過渡フラグFtraが0に設定されていれば、今回の処理を終了する。
ステップS474において、コントローラ5は、過渡フラグFtraを1に設定する。
ステップS475において、コントローラ5は、図19のテーブルを参照し、出力電流差分値に基づいて、出力電圧が負荷変動後の出力電流に対応する電圧値になるまでに必要な時間(以下「過渡状態時間」という。)を算出する。図19のテーブルは、出力電流差分値と、出力電圧が負荷変動後の出力電流に対応する電圧値になるまでに必要な時間と、の関係を予め実験等によって求めて算出したものである。図19のテーブルに示すように、過渡状態時間は、出力電流差分値が小さいときは短く、出力電流差分値が大きくなるにしたがって長くなる。
ステップS476において、コントローラ5は、過渡状態になってからの経過時間を算出する。具体的には、経過時間の前回値に演算周期を加算する。経過時間の初期値は0に設定される。
ステップS477において、コントローラ5は、過渡状態になってからの経過時間が過渡状態時間以上になったか否かを判定する。コントローラ5は、経過時間が過渡状態時間よりも短ければステップS478の処理を行う。一方で、経過時間が過渡状態時間以上になっていればステップS479の処理を行う。
ステップS478において、コントローラ5は、電解質膜の含水分布が過渡状態時間の経過後にステップS46で推定した含水分布となるように、過渡状態になってからの経過時間に応じて電解質膜の含水分布を補正する。
ステップS479において、コントローラ5は、過渡フラグFtraを0に設定する。
以上説明した本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果が得られるとともに、過渡状態のときに燃料電池システム100が停止されたとしても、精度良く電解質膜の含水分布を推定することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、過渡状態におけるスタック温度の変化を利用して、過渡状態での電解質膜の含水分布を推定する点で第2実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態は、過渡状態におけるスタック温度の変化を利用して、過渡状態での電解質膜の含水分布を推定する点で第2実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
図20は、出力電流が変化したとき、すなわち定常状態から過渡状態に移行し、再び定常状態に至るまでのスタック温度の変化の様子を示した図である。図21は、図20の時刻t1、t2及びt3における電解質膜の含水分布を示した図である。
図20及び図21に示すように、出力電流が変化したときは、第2実施形態で説明した出力電圧以外にもスタック温度が徐々に変化し、スタック温度の変化に対応して電解質膜の含水分布も変化する。
そこで本実施形態では、図22のテーブルを参照し、出力電流差分値に基づいて、スタック温度が負荷変動後の出力電流に対応する温度になるまでに必要な時間(過渡状態時間)を算出する。図22のテーブルは、出力電流差分値と、スタック温度が負荷変動後の出力電流に対応する温度になるまでに必要な時間と、の関係を予め実験等によって求めて算出したものである。
このようにすることで、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、出力電流差分値の大きさに応じて、図19のテーブルを参照して過渡状態時間を算出するか、又は、図22のテーブルを参照して過渡状態時間を算出するかを切り替える点で第2及び第3実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態は、出力電流差分値の大きさに応じて、図19のテーブルを参照して過渡状態時間を算出するか、又は、図22のテーブルを参照して過渡状態時間を算出するかを切り替える点で第2及び第3実施形態と相違する。以下、その相違点を中心に説明する。
図23は、出力電流の変動幅が相対的に小さいとき、すなわち出力電流差分値が小さいときのスタック温度及び出力電圧の変化の様子を示した図である。図24は、出力電流の変動幅が相対的に大きいときのスタック温度及び出力電圧の変化の様子を示した図である。
図23に示すように、出力電流差分値が小さいときは、出力電圧がすぐに負荷変動後の出力電流I2に対応する電圧値V2になるのに対して、スタック温度が負荷変動後の出力電流I2に対応する温度T2になるまでには時間がかかる。
一方で、図24に示すように、出力電流差分値が大きいときは、スタック温度が負荷変動後の出力電流I2に対応する温度T2になるまでに必要な時間よりも、出力電圧が負荷変動後の出力電流I2に対応する電圧値V2になるまでに必要な時間の方が長くなる。
このように、出力電流が変化したときは、出力電圧及びスタック温度のそれぞれが変化するが、それぞれの値が負荷変動後の出力電流に対応する値になるまでに必要な時間は、出力電流差分値に応じて変化する。
そこで本実施形態では、負荷変動後の出力電流に対応する値になるまでに必要な時間が長い方に基づいて、電解質膜の含水分布を補正する。
図25は、本実施形態による含水分布補正処理について説明するフローチャートである。
ステップS471からステップS479までは、第2実施形態と同様の処理を実施するので、ここでは説明を省略する。
ステップS480において、コントローラ5は、出力電流差分値が所定値以上か否かを判定する。コントローラ5は、出力電流差分値が所定値よりも小さければステップS481の処理を行う。一方で、出力電流差分値が所定値以上であればステップS482の処理を行う。
ステップS481において、コントローラ5は、前述した図22のテーブルを参照して、スタック温度が負荷変動後の出力電流に対応する温度になるまでに必要な時間を算出し、これを過渡状態時間とする。
ステップS482において、コントローラ5は、前述した図19のテーブルを参照して、出力電圧が負荷変動後の出力電流に対応する電圧値になるまでに必要な時間を算出し、これを過渡状態時間とする。
以上説明した本実施形態によれば、出力電流の変動幅に応じて、過渡状態における電解質膜の含水分布を補正するときの指標を変えることとした。これにより、過渡状態のときに燃料電池システム100が停止されたときの電解質膜の含水分布を、より精度良く推定することができる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
例えば、上記各実施形態では外気湿度を推定していたが、湿度センサを設けて外気湿度を検出しても良い。
また、上記各実施形態では燃料電池システムの停止時の含水分布に基づいて、目標内部インピーダンスの値を決定していたが、停止後パージ運転中も電解質膜の含水分布を逐次推定し、その推定した含水分布に基づいて目標内部インピーダンスの値を決定しても良い。
1 燃料電池スタック(燃料電池)
100 燃料電池システム
S4 含水分布推定手段
S6 停止後パージ手段
S41〜S45 外気湿度推定手段
S43 内部抵抗暫定値算出手段
S47 含水分布補正手段
S472 過渡状態判定手段
100 燃料電池システム
S4 含水分布推定手段
S6 停止後パージ手段
S41〜S45 外気湿度推定手段
S43 内部抵抗暫定値算出手段
S47 含水分布補正手段
S472 過渡状態判定手段
Claims (9)
- アノードガス及びカソードガスを燃料電池に供給して発電させる燃料電池システムであって、
前記燃料電池の内部抵抗を算出する内部抵抗算出手段と、
前記燃料電池システムの運転状態に基づいて、前記燃料電池の電解質膜の含水分布を推定する含水分布推定手段と、
前記燃料電池システムの停止後に、前記燃料電池を乾燥させる停止後パージ運転を実施する停止後パージ手段と、
を備え、
前記停止後パージ手段は、
前記停止後パージ運転終了時の内部抵抗の目標値を、前記電解質膜の含水分布に基づいて算出し、
前記燃料電池の内部抵抗が前記目標値以上となったときに、前記停止後パージ運転を終了させる、
ことを特徴とする燃料電池システム。 - 前記停止後パージ手段は、
前記電解質膜の含水分布が大きいときほど、前記目標値を大きくする、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。 - 前記含水分布推定手段は、
前記燃料電池内の水収支に影響与えるパラメータに基づいて、その燃料電池の電解質膜の含水分布を推定する、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の燃料電池システム。 - 前記パラメータは、
前記燃料電池の出力電流、前記燃料電池の温度、前記燃料電池に供給するカソードガスの圧力、前記燃料電池に供給するカソードガスの流量及び外気湿度の少なくとも1つである、
ことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。 - 前記含水分布推定手段は、
前記燃料電池の出力電流、前記燃料電池の温度、前記燃料電池に供給するカソードガスの圧力、前記燃料電池に供給するカソードガスの流量の少なくとも1つと、前記燃料電池の内部抵抗と、に基づいて外気湿度を推定する外気湿度推定手段を備える、
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の燃料電池システム。 - 前記外気湿度推定手段は、
前記燃料電池の出力電流、前記燃料電池の温度、前記燃料電池に供給するカソードガスの圧力、前記燃料電池に供給するカソードガスの流量の少なくとも1つに基づいて、外気湿度が基準湿度であると仮定したときの電解質膜の含水分布を算出し、その算出した電解質膜の含水分布における前記燃料電池の内部抵抗を算出する内部抵抗暫定値算出手段を備え、
前記内部抵抗暫定値算出手段によって算出した内部抵抗の暫定値と、前記内部抵抗算出手段によって算出した内部抵抗の実際値と、の差分に基づいて外気湿度を推定する、
ことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池システム。 - 前記燃料電池システムの運転状態が過渡状態であるか否かを判定する過渡状態判定手段と、
過渡状態と判定したときは、過渡時における前記燃料電池の出力電圧の変化に応じて前記燃料電池の電解質膜の含水分布を補正する含水分布補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。 - 前記燃料電池システムの運転状態が過渡状態であるか否かを判定する過渡状態判定手段と、
過渡状態と判定したときは、過渡時における前記燃料電池の冷却水温の変化に応じて前記燃料電池の電解質膜の含水分布を補正する含水分布補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。 - 前記燃料電池システムの運転状態が過渡状態であるか否かを判定する過渡状態判定手段と、
過渡状態と判定したときの負荷変動幅が所定幅以上であれば、過渡時における前記燃料電池の出力電圧の変化に応じて前記燃料電池の電解質膜の含水分布を補正し、過渡状態と判定したときの負荷変動幅が所定幅未満であれば、過渡時における前記燃料電池の冷却水温の変化に応じて前記燃料電池の電解質膜の含水分布を補正する含水分布補正手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の燃料電池システム。
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