JP2013111894A - 液滴吐出装置、バルブユニットおよびバルブユニットの製造方法 - Google Patents

液滴吐出装置、バルブユニットおよびバルブユニットの製造方法 Download PDF

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陽一 黒河内
Masaru Nagatoya
賢 長門谷
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Abstract

【課題】不要なインクを記録媒体に付着させず、印刷品質に優れた液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】液滴を吐出するノズルを有する記録ヘッドと、記録ヘッドに接続され液状体の流路を開閉させるバルブユニットVLと、を備え、バルブユニットVLは、流路に設けられる弁座70及び弁座70に当接可能とする弁体71を有し、弁座70と弁体71との当接によって流路を閉じるように形成され、弁座70は、弁体71との当接部に、液状体に対して撥液性を有するフッ素系の撥液剤で形成された撥液膜80が形成されており、弁体71は、弁座70との当接部が弾性体を用いて形成されている。
【選択図】図4

Description

本発明は、液滴吐出装置、バルブユニットおよびバルブユニットの製造方法に関する。
インクなどの液状体を液滴として吐出する液滴吐出装置には、例えばインクジェット式プリンター装置(以下、「プリンター装置」と表記する)などがある。プリンター装置は、記録媒体に文字や画像等を記録する装置である。プリンター装置は、記録ヘッドに設けられたノズルから記録媒体にインクを液滴にして吐出する構成になっている。記録ヘッドは例えばキャリッジなどの移動機構に搭載され、記録媒体上方を移動しながらインクを吐出するオンキャリッジ型の構成になっている。
オンキャリッジ型の構成では、例えば、特許文献1に記載されているように、キャリッジ側にインク封止機能を有するインク供給用のバルブユニットを備えたプリンター装置が知られている。
特開2004−142405号公報
しかしながら、特許文献1に記載のインク供給用のバルブユニットを備えたオンキャリッジ型の構成では、可動バルブのシール部分にインクが堆積する場合がある。可動バルブのシール部分にインクが堆積すると、可動バルブが閉じるときの動作において、可動バルブが正常に閉じずリークが発生する。リークが発生すると、バルブユニットの上流側の圧力がヘッドに加わるため、ノズルからインクが垂れるなどの問題が発生する。その場合、プリンター装置内部にインクが付着する。このため、印刷中に印刷媒体に不要なインクが付着し、印刷の品質を低下させるおそれがある。
本実施例は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]本適用例に係る液滴吐出装置は、液状体を液滴として吐出するノズルを有する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドに接続され前記液状体の流路を開閉させるバルブユニットと、を備え、前記バルブユニットは、前記流路に設けられる弁座及び前記弁座に当接可能とする弁体を有し、前記弁座と前記弁体との当接によって前記流路を閉じるように形成され、前記弁座は、樹脂を基材とし前記弁体との当接部に、前記液状体に対して撥液性を有するフッ素系の撥液剤で形成された撥液膜が形成されており、前記弁体は、前記弁座との当接部が弾性体を用いて形成されていることを特徴とする。
本適用例によれば、弁座は弁体との当接部に撥液膜を形成するため、当接部においてインクなどの液状体が弾かれることとなる。
従って、弁座と弁体との当接部に液状体の堆積物が堆積するのを抑えることができ、リークの発生を防ぐことができるため、印刷媒体にインクが付着して、印刷品質が低下するのを防ぐことができる。
また、撥液膜にフッ素系を主成分とした撥液剤を用いるため、弁座に樹脂系の基材を用いている場合、主鎖が同一の成分を有することとなり、これによって、撥液膜と弁座との密着性を向上することができる。
従って、弁座と弁体の間にインクが堆積しない液滴吐出装置を提供することができる。
[適用例2]上記適用例に記載の前記撥液膜は、前記流路を囲うように設けられていることが好ましい。
本適用例によれば、撥液膜が流路を囲うように設けられている。
従って、流路を囲う領域全体について、リーク発生から保護されることとなる。
[適用例3]上記適用例に記載の前記弁座は、前記流路に対して前記撥液膜の外側の領域に流通抑制部を有することが好ましい。
本適用例によれば、弁座のうち撥液膜の外側の領域に流通抑制部が形成されている。
従って、弁座に撥液膜を形成する際に撥液膜を構成する材料として液状体を用いた場合であっても、撥液膜の形成領域を確実に区画することができる。
[適用例4]上記適用例に記載の前記流通抑制部は、前記撥液膜の周囲に環状に形成されていることが好ましい。
本適用例によれば、流通抑制部が撥液膜の周囲に環状に形成されている。
従って、環状の領域を確実に区画することができる。
[適用例5]上記適用例に記載の前記流通抑制部は、溝状に形成されていることが好ましい。
本適用例によれば、流通抑制部が溝状に形成されていることとするため、撥液膜の形成時に用いる液状体を捕捉することができる。
従って、撥液膜の形成領域を確実に区画することができる。
[適用例6]上記適用例に記載の前記流通抑制部は、突起状に形成されていることが好ましい。
本適用例によれば、流通抑制部が突起状に形成されていることとするため、撥液膜の形成時に用いる液状体を塞き止めることができる。
従って、撥液膜の形成領域を確実に区画することができる。
[適用例7]本適用例に係るバルブユニットは、液状体を液滴として吐出するノズルを有する液滴吐出ヘッドに接続される前記液状体の流路を開閉させるバルブユニットであって、前記流路に設けられる弁座と、前記弁座に当接可能とする弁体とを有し、前記弁座と前記弁体との当接によって前記流路を閉じるように形成され、前記弁座は、樹脂を基材とし前記弁体との当接部に、前記液状体に対して撥液性を有するフッ素系の撥液剤で形成された撥液膜が形成されており、前記弁体は、前記弁座との当接部が弾性体を用いて形成されていることを特徴とする。
本適用例によれば、弁座が弁体との当接部に撥液膜などから構成されているため、撥液膜において液状体が弾かれることとなるため、弁座と弁体との当接部に液状体が流通しにくくなる。
従って、弁座と弁体との当接部に液状体が堆積するのを抑えることができ、リークの発生を防ぐことができる。
[適用例8]本適用例に係る撥液膜の製造方法は、流路に設けられる弁座と、前記弁座に当接可能とする弁体とを有し、前記弁座と前記弁体との当接によって前記流路を閉じるように形成され、前記弁座は、樹脂を基材とし前記弁体との当接部に、前記液状体に対して撥液性を有するフッ素系の撥液剤で形成された撥液膜が形成されており、前記弁体は、前記弁座との当接部が弾性体を用いて形成されているバルブユニットの製造方法であって、前記撥液膜の形成において、フッ素系の撥液剤を前記弁座に塗布する撥液剤塗布工程と、塗布した撥液剤を塗布した前記弁座を加熱するアニール工程と、を有することを特徴とする。
本適用例によれば、撥液膜に使用する撥液剤がフッ素系のものを用いるため、弁座および弁体に樹脂系の基材を用いた場合は、主鎖の成分が同一となる。
従って、従来技術として撥液膜の塗布方法に用いられているプラズマ処理などの前処理の工程を省略することができる。
実施形態1に係るプリンター装置の全体構成を示す図。 実施形態1に係るプリンター装置の記録ヘッド近傍の構成を示す図。 実施形態1に係る記録ヘッドの構成を示す断面図。 実施形態1に係るサブタンクの構成を示す断面図。 実施形態1に係る樹脂材料の構造を示す図。 実施形態1に係るフッ素系撥液剤の構造を示す図。 実施形態1に係るサブタンクの一部の構成を示す平面図。 実施形態1に係るプリンター装置の動作を示す動作図(収縮状態)。 実施形態1に係るプリンター装置の動作を示す動作図(連通状態)。 実施形態1に係るプリンター装置の動作を示す動作図(閉塞状態)。 変形例1におけるサブタンクの他の構成を示す断面図。 実施形態2における撥液膜の製作工程を示すフローチャート。 従来の撥液膜の製作工程を示すフローチャート。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせしめている。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るプリンター装置PRTの概略構成を示す一部分解図である。
プリンター装置PRTは、プリンター本体5、サブタンク2、及び記録ヘッド3を搭載したキャリッジ4などなどから構成されている。
まず初めに、実施形態1に係る液滴吐出装置としてのプリンター本体5の概略構成について説明する。
プリンター本体5は、キャリッジ移動機構54、キャッピング装置50、インクカートリッジ(液滴供給部材)6などから構成されている。
キャリッジ移動機構54は、キャリッジ4を往復移動させるためのものである。
キャッピング装置50は、記録ヘッド3の各ノズルから増粘したインクL(図3参照)を吸引するクリーニング動作等に用いられるものである。
インクカートリッジ6は、インク供給チューブ34を介して記録ヘッド3に供給するインクLが貯留されたものである。
このプリンター本体5には、記録紙を搬送する不図示の紙送り機構が設けられており、この紙送り機構は紙送りモーターやこの紙送りモーターによって回転駆動される紙送りローラー(いずれも不図示)等から構成され、記録紙を記録(印字・印刷)動作に連動させてプラテン13の上に順次送り出すようになっている。
次に、プリンター本体5の構成をなすキャリッジ移動機構54、キャッピング装置50の概略構成について詳細に説明する。
キャリッジ移動機構54は、ガイド軸8、パルスモーター9、駆動プーリー10、遊転プーリー11、タイミングベルト12などから構成されている。
ガイド軸8は、プリンター本体5の幅方向に架設されたものである。
駆動プーリー10は、パルスモーター9の回転軸に接続されており、パルスモーター9によって回転駆動するものである。
遊転プーリー11は、駆動プーリー10とはプリンター本体5の幅方向の反対側に設けられたものである。
タイミングベルト12は、駆動プーリー10と遊転プーリー11との間に掛け渡されてキャリッジ4に接続されたものである。
パルスモーター9を駆動することによってキャリッジ4がガイド軸8に沿って主走査方向に往復移動するようになっている。
キャッピング装置50は、プリンター本体5内のホームポジションに配置されている。このホームポジションは、キャリッジ4の移動範囲内のうち記録領域よりも外側の端部領域であって電源オフ時や長時間に亘って記録(液滴吐出処理)が行われなかった場合にキャリッジ4が位置する場所に設定されている。
次に、実施形態1に係る液滴吐出装置としての記録ヘッド3の概略構成について説明する。
図2は実施形態1に係る記録ヘッド3の構成を説明する断面図、図3は実施形態1に係る記録ヘッド3の要部断面図である。
記録ヘッド3は、導入針ユニット17、ヘッドケース18、流路ユニット19及びアクチュエータユニット20などから構成されている。
導入針ユニット17の上面にはフィルター21を介在させた状態で2本のインク導入針22が横並びで取り付けられている。これらのインク導入針22には、サブタンク2がそれぞれ装着される。導入針ユニット17の内部には、各インク導入針22に対応したインク導入路23が形成されている。このインク導入路23の上端はフィルター21を介してインク導入針22に連通し、下端はパッキン24を介してヘッドケース18内部に形成されたケース流路25と連通する。
本実施形態では、2種類のインクを使用する構成であるためサブタンク2が2つ配置されているが、3種類以上のインクを使用する構成であっても勿論構わない。
サブタンク2は、ポリプロピレン等の樹脂製材料によって外郭部が成型されている。
続いて、実施形態1に係る液滴吐出装置としてのサブタンク2の概略構成について説明する。
図4は、実施形態1に係るサブタンク2の構成を示す断面図である。
サブタンク2は、弾性シート26、インク供給室27A、圧力室27Bなどから構成されている。
弾性シート26は、可撓性を有するフィルム部材である。
インク供給室27Aは、インク供給チューブ34に接続されており、インク供給チューブ34を介して流れてきたインクLが供給される部分である(図2参照)。インク供給室27Aと圧力室27Bとの間には、各室27A,27Bを区画するように隔壁Aが形成されている。
連通路(流路)60は、インク供給室27Aと圧力室27Bとを連通するために、隔壁Aに形成されているものである。連通路60の一端はインク供給室27Aに開口し、他端は圧力室27Bに開口している。圧力室27Bは、連通路60を介してインク供給室27Aに連通されている。圧力室27Bは、外部に連通する開口部61などから構成されている。
弾性シート26は、開口部61を塞ぐように貼り付けられている。弾性シート26は、圧力室27Bの圧力に応じて膨張及び収縮するようになっている。例えば、図2に示すように圧力室27Bの圧力が外部の圧力よりも高くなると弾性シート26が膨張状態(26a)となり、圧力室27Bの圧力が外部の圧力よりも低くなると弾性シート26が収縮状態(26b)となる。
バルブユニットVLは、連通路60を開閉するバルブである。
バルブユニットVLは、弁座70及び弁体71などから構成されている。
弁座70はポリプロピレンなどの樹脂を基材として形成されている。そして、連通路60の側壁によって構成されている。弁座70には、連通路60を囲うように撥液膜80が形成されている。詳細には、インク供給室27Aの隔壁Aに開口した連通路60の開口部の外周にある弁座70に対して弁体71が当接することで連通路60を閉じる構成であり、弁座70の弁体71との当接面72aには連通路60の開口の外周を囲むように撥液膜80が形成されている。
撥液膜80は、フッ素系撥液剤等のような、インクに対して疎水性を有する材料によって膜状に形成されている。撥液膜80は、例えばスピンコート法、ディスペンサーによる塗布法などの湿式の成膜法によって形成されている。
弁座70の材料が、例えば図5に示すようなアイソタクチックの構造を有した樹脂系の材料の場合、撥液膜80に用いるフッ素系の撥液剤は、例えば図6に示されるように、「Poly(1,1,2,2−Tetrahydro−perfluorodecyl methacrylate)」などのようなものがある。このとき、樹脂系の弁座70とフッ素系の撥液剤は同様の成分を持った構造となっており、結合しやすく密着力の高い撥液膜80が形成される。
図7は、弁座70の構成を示す平面図である。同図に示すように、撥液膜80は、平面視で一定の幅(径方向の寸法)で環状に形成されている。弁座70には、連通路60に対して撥液膜80の外側の領域に溝状の流通抑制部81が形成されている。
流通抑制部81は、撥液膜80の周囲に環状に形成されている。流通抑制部81は、撥液膜80を形成する際に液状の撥液膜材料が弁座70の外側に溢れないように撥液膜材料の流通を抑制する。
弁体71は、閉塞部72及び軸部73などから構成されている。
閉塞部72は、連通路60を塞ぐ部分である。
図7に示すように、閉塞部72は、連通路60の断面形状における径よりも大きな径を有するように形成されている。閉塞部72は、弁座70との当接面(当接部)72aが例えばゴムなどのエラストマー系の材料を用いて形成されている。閉塞部72は、不図示のバネ機構によってサブタンク本体2aに固定されている。
軸部73は、閉塞部72と一体的に形成され、連通路60に挿入される部分である。軸部73は、連通路60の径よりも小さな径を有するように円柱状に形成されている。軸部73の端部73aは板状部材74を介して弾性シート26の中央部に接続されている。
板状部材74は、不図示のバネ機構によってサブタンク本体2aに固定されている。軸部73、板状部材74及び弾性シート26は一体的に形成された状態になっている。このため、弾性シート26が膨張又は収縮することにより、弾性シート26の膨張・収縮方向に軸部73が移動するようになっている。
図1〜図3に戻って、サブタンク2の下部にはインク導入針22が挿入される針接続部28が下方に向けて突設されている。サブタンク2における圧力室27Bは断面視で擂り鉢形状になっている。
圧力室27Bの側面のうち上下方向中央部よりも少し下の位置には、針接続部28との間を連通する接続流路29の上流側開口が配置されている。針接続部28の内部空間にはインク導入針22が液密に嵌入されるシール部材31が嵌め込まれている。インク供給室27Aの入口側(インク供給チューブ34側)には、インク供給室27A内に流入するインクLを濾過するタンク部フィルター30が取り付けられている。
上記の弾性シート26は、圧力室27Bを収縮させる方向及び圧力室27Bを膨張させる方向の両方向に変形可能である。弾性シート26の変形によってインクLの圧力変動が吸収され、インクLがサブタンク2内で圧力変動が吸収された状態で記録ヘッド3側に供給されるようになっている。このようにサブタンク2は圧力ダンパとして機能するようになっている。
ヘッドケース18は、合成樹脂製の中空箱体状部材である。ヘッドケース18の下端面には流路ユニット19が接合されており、内部に形成された収容空部37内にアクチュエータユニット20が収容され、流路ユニット19側とは反対側の上端面にパッキン24を介在した状態で導入針ユニット17が取り付けられている。
ヘッドケース18の内部には、高さ方向を貫通してケース流路25が設けられている。ケース流路25の上端は、パッキン24を介して導入針ユニット17のインク導入路23と連通されている。
ケース流路25の下端は、流路ユニット19内の共通インク室44に連通されており、インク導入針22から導入されたインクLがインク導入路23及びケース流路25を通じて共通インク室44側に供給されるようになっている。
ヘッドケース18の収容空部37内に収容されるアクチュエータユニット20は、圧電振動子38と、固定板39と、フレキシブルケーブル40などから構成されている。
圧電振動子38は、櫛歯状に配列された複数からなるものである。
固定板39は、圧電振動子38を接合するものである。
フレキシブルケーブル40は、プリンター本体側からの駆動信号を圧電振動子38に供給する配線部材である。
各圧電振動子38は固定端部側が固定板39上に接合され自由端部側が固定板39の先端面よりも外側に突出しており、所謂片持ち梁の状態で固定板39上に取り付けられている。
各圧電振動子38を支持する固定板39は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。アクチュエータユニット20は、収容空部37を区画するケース内壁面に固定板39の背面を接着することで収容空部37内に収納・固定されている。
流路ユニット19は、振動板(封止板)41、流路基板42及びノズル基板43などから構成されている。
これら振動板41、流路基板42及びノズル基板43が積層された状態になっており、不図示の接着剤で接合され一体化されている。振動板41、流路基板42及びノズル基板43は、共通インク室44からインク供給口45及び圧力室46を通りノズル47に至るまでの一連のインク流路(液体流路)を形成する部材である。圧力室46は、ノズル47の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。共通インク室44は、ケース流路25と連通されており、インク導入針22側からのインクLが導入される室である。共通インク室44に導入されたインクLは、インク供給口45を通じて各圧力室46に分配供給されるようになっている。
流路ユニット19の底部に配置されるノズル基板43は、ドット形成密度に対応したピッチ(例えば180dpi)で複数のノズル47を列状に開設した金属製の薄い板材である。本実施形態のノズル基板43は、ステンレス鋼の板材によって作製され、例えばノズル47の列(即ち、ノズル列)が、各サブタンク2に対応して合計2列設けられた状態になっている。1つのノズル列は、例えば、180個のノズル47によって構成されている。このノズル47が配列されているノズル基板43の表面が吐出面43aをなす。
ノズル基板43と振動板41との間に配置される流路基板42は、インク流路となる流路部、具体的には、共通インク室44、インク供給口45及び圧力室46となる空部が区画形成された板状の部材である。
流路基板42は例えば結晶性を有する基材であるシリコンウェハーを異方性エッチング処理することによって作製されている。振動板41は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材である。この振動板41の圧力室46に対応する部分には、エッチングなどによって支持板を環状に除去することで、圧電振動子38の先端面が接合される島部48が形成されている。この島部48は、ダイヤフラム部として機能する。振動板41は、圧電振動子38の作動に応じて島部48の周囲の弾性フィルムが弾性変形するように構成されており、流路基板42の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部49として機能するようにもなっている。このコンプライアンス部49に相当する部分についてはダイヤフラム部と同様にエッチングなどにより支持板が除去され弾性フィルムだけが残った状態になっている。
上記の記録ヘッド3において、フレキシブルケーブル40を通じて駆動信号が圧電振動子38に供給されると、この圧電振動子38が素子長手方向に伸縮し、これに伴い島部48が圧力室46に近接する方向或いは離隔する方向に移動するようになっている。島部48の移動によって圧力室46の容積が変化し、圧力室46内のインクLに圧力変動が生じ、この圧力変動によってノズル47からインク滴(液滴)Dが吐出されるようになっている。
次に、上述したプリンター装置PRTの動作を説明する。プリンター装置PRTの動作は、不図示の制御装置が統括的に制御する。
外部からプリンター装置PRTに印刷データが送信されると、制御装置は、ドットパターンに対応した吐出データに展開して記録ヘッド3に送信する。記録ヘッド3では、受信した吐出データに基づき、記録(印字・印刷)処理、すなわち記録紙に対するインク滴Dが吐出される。
制御装置は、所定時間印字処理を行った後、ノズル47の吐出特性を維持すべく、メンテナンス処理を行わせる。吸引動作時において、制御装置はキャッピング装置50におけるキャップ部材(不図示)を記録ヘッド3の吐出面43aに当接させる。この動作により、吐出面43aとキャップ部材とで形成される空間が密閉される。続いて、制御装置はキャッピング装置50に接続される吸引ポンプを駆動し、吐出面43aとキャップ部材とで形成される空間を減圧する。これにより、ノズル47内からインクLを吸引することができる。
続いて、サブタンク2およびバルブユニットVLの動作を説明する。
図8はバルブユニットの収縮状態、図9はバルブユニットの連通状態、図10はバルブユニットの閉塞状態である。
インクカートリッジ6から記録ヘッド3側にインクLを供給する際、制御装置はインク供給チューブ34を介してサブタンク2側にインクLを搬送させる。制御装置は、圧電振動子38を作動させ、ノズル47からインク滴Dを吐出させる。この動作により、サブタンク2の圧力室27B内のインクLが接続流路29から記録ヘッド3側へ移動する。
図8に示すように、圧力室27B内のインクLが流出すると、圧力室27B内の圧力が低くなる。このため、弾性シート26が圧力室27B内に引っ張られるように収縮状態となる。弾性シート26が収縮状態になって圧力室27B内部側へ移動すると、弾性シート26と一体的に形成された板状部材74、軸部73がインク供給室27A側へ押し込まれる。このため、閉塞部72が弁座70(撥液膜80)から離れた状態となり、インク供給室27Aと圧力室27Bとの間が連通路60を介して連通される。
図9に示すように、圧力室27B内の圧力が低下しているのに対してインク供給室27Aの圧力は一定に加圧されているため、インク供給室27Aと圧力室27Bとの間が連通されると、圧力差によってインク供給室27A側に貯留されていたインクLは、圧力室27B側へ移動する。
図10に示すように、圧力室27BにインクLが充填されると、弾性シート26が元の状態に戻され、インク供給室27Aから離れる方向に移動する。この弾性シート26の移動により、板状部材74及び軸部73がインク供給室27Aから離れる方向に引っ張られ、閉塞部72が弁座70(撥液膜80)に当接する。このため、インク供給室27Aと圧力室27Bとの間が閉塞部72によって閉塞された状態になる。
このように、サブタンク2では、圧力室27B内の圧力(インク量)に応じてバルブユニットVLを開閉させ、インク供給室27Aから圧力室27BへインクLを供給するようになっている。サブタンク2では、圧力室27Bから記録ヘッド3側へインクLを流出させるとき以外にはバルブユニットVLが閉状態となるため、記録ヘッド3のノズル47からインクLが垂れてしまうことも無い。
一方、バルブユニットVLの開閉動作を繰り返していくうちに、弁体71と弁座70との当接部にインクの堆積物が堆積して成長する場合がある。この部分にインクの堆積物が堆積すると、堆積物によってバルブユニットVLが完全に閉じなくなり、リークが発生することとなる。リークが発生すると、バルブユニットVLの上流側の圧力がインク供給室27A、連通路60、圧力室27Bを介して記録ヘッド3側に加わるため、ノズル47からインクが垂れてしまうこととなる。そうなると、プリンター本体5内部にインクが付着し、メンテナンス性が悪くなってしまう。また、印刷中に印刷媒体にインクが付着して、印刷品質を低下させる。
これに対して、本実施形態によれば、弁座70の弁体71との当接部に撥液膜80が構成されているため、撥液膜80においてインクが弾かれることとなる。このため、弁座70と弁体71との当接部にインクが流通しにくくなる。これにより、弁座70と弁体71との当接部にインクの堆積物が堆積するのを抑え、リークの発生を防ぐことができる。このため、リークによるインクの漏れがなくなり、不要なインクが記録媒体に付着せず、印刷品質の優れた液滴吐出装置を提供できる。
また、本実施形態では、弁座70のうち撥液膜80の外側の領域に流通抑制部81が形成されているため、弁座70に撥液膜80を形成する際に撥液膜を構成する材料として液体を用いた場合であっても、撥液膜材料が所定の形成領域からはみ出してしまうのを抑制することができ、撥液膜80の形成領域を確実に区画することができる。
なお、本実施例は上述した実施形態に限定されず、上述した実施形態に種々の変更や改良などを加えることが可能である。変形例を以下に述べる。
(変形例1)
図11は、変形例1に係るサブタンクの他の構成を示す断面図である。
上記実施形態1では、流通抑制部81として溝状に形成されている構成であるものとして説明したが、この構成に限定するものではない。
以下、変形例1に係るサブタンクについて説明する。なお、実施形態1と同一の構成部位については、同一の番号を附し、重複する説明は省略する。
図11に示すように、流通抑制部81は突起状に形成されている構成であっても構わない。流通抑制部81を突起状に形成する場合、弁座70と弁体71との当接を妨げないようにするため、流通抑制部81を弁体71の当接領域から外れた位置に形成する必要がある。
このような本実施形態の変形例1における液滴吐出装置によれば、実施形態1での効果に加えて、以下の効果を得ることができる。
流通抑制部81を突起状にした場合、弁体71が弁座70の寸法内に収まるため、実施形態1で示した形状よりリークの発生を抑制しやすい構造とすることが可能となる。
(変形例2)
上記実施形態1においては、バルブユニットVLの弁座70と弁体71の閉塞部72との当接面72aは、平面同士の接触によって連通路60を開閉する構成であるものとして説明したが、この構成に限定するものではない。
当接面72aに前記連通路60を囲うように凸部を設けた構造であっても構わない。
(変形例3)
また、上記実施形態1においては、全てのサブタンク2について弁座70に撥液膜80を設けた構成であるものとして説明したが、この構成に限定するものではない。
例えばインクの種類に応じて弁座70に撥液膜80を設けたり設けなかったりすることも可能である。具体的には、堆積しやすい材料、例えば水系のマゼンタ系やシアン系の顔料成分を用いて形成されたインクの流通経路上のサブタンク2については撥液膜80を設ける構成とし、比較的堆積しにくい材料を用いて形成されたインクの流通経路上のサブタンク2については撥液膜80を設けない構成とすることができる。
このように、インクの種類に応じて撥液膜処理の可否を選択することができるため、撥液膜の塗布工程において自由度が拡大される。
(実施形態2)
次に、弁座に形成される撥液膜の製作工程について説明する。
図12は本実施形態にかかる撥液膜の製作工程を説明するフローチャートである。図13は従来の撥液膜の撥液膜の製作工程を説明するフローチャートである。
従来の撥液膜の製作工程は、図13に示すように、ポリプロピレンなどの樹脂を基材とする弁座の表面にプラズマ処理を行い(ステップS101)、弁座の表面にOH基を発生させる。
その後、シランカップリン剤をスピンコート法、ディスペンサーなどにより弁座の表面に塗布する(ステップS102)。
次に、シランカップリング剤を塗布した弁座を加湿乾燥処理する(ステップS103)。この処理ではH2Oを付加することで弁座表面のOH基とシランカップリング剤のCH基とを反応させ、基材との密着性を向上させる。
続いて、弁座を所定の時間加熱するアニール処理を行い(ステップS104)、撥液膜に含まれたH2Oを除去する。
このようにして、弁座表面に撥液膜の形成が行われている。
次に、本実施形態にかかる撥液膜の製作工程について説明する。
図12に示すように、まず、ポリプロピレンなどの樹脂を基材とする弁座の表面に前述の図6で示したフッ素系の撥液剤をスピンコート法、ディスペンサーなどにより塗布する(ステップS11)。
このとき、撥液剤にフッ素系撥液剤を用いることで、樹脂の基材とフッ素系撥液剤の主鎖が同じ成分を持っているため、基材と撥液剤との密着性を高くすることができる。これにより、プラズマ処理などの前処理を弁座などの基材に施す必要がない。
そして、次に、弁座を所定の時間加熱するアニール処理を行う(ステップS12)。
ここで、例えば弁座の基材をポリプロピレンとした場合、ポリプロピレンが非結晶成分を持っているため、アニール処理を実施することにより、溶けた非結晶部を撥液剤の主鎖部に入り込ませ、基材と撥液剤との密着性を強化することができる。
このようにして、弁座の表面に撥液膜を形成する。
この製造方法によれば、従来に比べて撥液膜の製造工程を簡素化でき、基材と撥液膜との密着強度を向上させることができる。
PRT…プリンター装置(液滴吐出装置)、VL…バルブユニット、2…サブタンク、2a…サブタンク本体、3…記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)、4…キャリッジ、5…プリンター本体、6…インクカートリッジ(液滴供給部材)、8…ガイド軸、9…パルスモーター、10…駆動プーリー、11…遊転プーリー、12…タイミングベルト、13…プラテン、17…導入針ユニット、18…ヘッドケース、19…流路ユニット、20…アクチュエータユニット、21…フィルター、22…インク導入針、23…インク導入路、24…パッキン、25…ケース流路、26…弾性シート、26a…弾性シート膨張状態、26b…弾性シート収縮状態、27A…インク供給室、27B…圧力室、28…針接続部、29…接続流路、30…タンク部フィルター、31…シール部材、34…インク供給チューブ、37…収容空部、38…各圧電振動子、39…固定板、40…フレキシブルケーブル、41…振動板(封止板)、42…流路基板、43…ノズル基板、43a…吐出面、44…共通インク室、45…インク供給口、46…圧力室、47…ノズル、48…島部、49…コンプライアンス部、60…連通路(流路)、61…開口部、70…弁座、71…弁体、72…閉塞部、72a…当接面、73…軸部、73a…軸端部、74…板状部材、80…撥液膜、81…流通抑制部。

Claims (8)

  1. 液状体を液滴として吐出するノズルを有する液滴吐出ヘッドと、
    前記液滴吐出ヘッドに接続され前記液状体の流路を開閉させるバルブユニットと、を備え、
    前記バルブユニットは、前記流路に設けられる弁座及び前記弁座に当接可能とする弁体を有し、前記弁座と前記弁体との当接によって前記流路を閉じるように形成され、
    前記弁座は、樹脂を基材とし前記弁体との当接部に、前記液状体に対して撥液性を有するフッ素系の撥液剤で形成された撥液膜が形成されており、
    前記弁体は、前記弁座との当接部が弾性体を用いて形成されている
    ことを特徴とする液滴吐出装置。
  2. 前記撥液膜は、前記流路を囲うように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の液滴吐出装置。
  3. 前記弁座は、前記流路に対して前記撥液膜の外側の領域に流通抑制部を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液滴吐出装置。
  4. 前記流通抑制部は、前記撥液膜の周囲に環状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の液滴吐出装置。
  5. 前記流通抑制部は、溝状に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の液滴吐出装置。
  6. 前記流通抑制部は、突起状に形成されていることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の液滴吐出装置。
  7. 液状体を液滴として吐出するノズルを有する液滴吐出ヘッドに接続される前記液状体の流路を開閉させるバルブユニットであって、
    前記流路に設けられる弁座と、前記弁座に当接可能とする弁体とを有し、
    前記弁座と前記弁体との当接によって前記流路を閉じるように形成され、
    前記弁座は、樹脂を基材とし前記弁体との当接部に、前記液状体に対して撥液性を有するフッ素系の撥液剤で形成された撥液膜が形成されており、
    前記弁体は、前記弁座との当接部が弾性体を用いて形成されている
    ことを特徴とするバルブユニット。
  8. 流路に設けられる弁座と、前記弁座に当接可能とする弁体とを有し、
    前記弁座と前記弁体との当接によって前記流路を閉じるように形成され、
    前記弁座は、樹脂を基材とし前記弁体との当接部に、前記液状体に対して撥液性を有するフッ素系の撥液剤で形成された撥液膜が形成されており、
    前記弁体は、前記弁座との当接部が弾性体を用いて形成されているバルブユニットの製造方法であって、
    前記撥液膜の形成において、フッ素系の撥液剤を前記弁座に塗布する撥液剤塗布工程と、塗布した撥液剤を塗布した前記弁座を加熱するアニール工程と、を有する
    ことを特徴とするバルブユニットの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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