JP2018094831A - 流路部材及び液体噴射装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い耐久性を有する撥液膜を低コストで設けることができ、液体の堆積を抑制して液体のリークを抑制すると共に、液体の外部への漏洩を抑制することができる流路部材及び液体噴射装置を提供する。【解決手段】流路が形成されたフレーム510と、流路を開ける第1の位置及び流路を閉じる第2の位置の間を移動することで流路を開閉する弁体55と、フレームに一体に設けられて第2の位置にある弁体と当接して流路を閉じる弁座51と、具備し、弁座は、弁体と当接する部分に撥液膜520を有し、撥液膜は、フレーム側に設けられた第1の膜521と、第1の膜に積層され、フレームよりも撥液性が高い金属アルコキシドからなる第2の膜522と、を有し、第1の膜とフレームとの密着力、及び第2の膜と第1の膜との密着力は、第2の膜とフレームとの密着力よりも高い。【選択図】図6

Description

本発明は、流路を開閉するバルブを有する流路部材、流路部材を具備する液体噴射装置に関し、特に液体としてインクを噴射するインクジェット式記録装置に関する。
被噴射媒体に液体を噴射する液体噴射装置には、例えば、液体としてインクを噴射させて被噴射媒体である紙や記録シート等に印刷を行うインクジェット式記録装置が知られている。
このようなインクジェット式記録装置には、インクタンクなどの液体貯留手段からチューブ等の供給管を介してインクジェット式記録ヘッドにインクが供給され、インクタンクから供給されたインクをインクジェット式記録ヘッドのノズル開口からインク滴として噴射するものがある。また、液体貯留手段から供給されたインクがインクジェット式記録ヘッドに所定の圧力で供給されるように、流路の途中に圧力調整弁であるバルブユニットが設けられたものが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
バルブユニットは、弁座と、弁体と、を具備し、弁体が弁座に当接することにより流路を閉弁し、弁体が弁座から離反することで流路を開弁するようになっている。このような弁座と弁体との開閉は、下流側の流路の圧力によって行われる。
このようなバルブユニットでは、弁座と弁体とが繰り返し当接することにより、インクが堆積し、インクのリークが発生する。このため、弁座と弁体とが当接する領域を撥液処理することで、インクの堆積を抑制している。
また、弁座として、支持部材と、支持部材に組み付けられて弁体に当接する当接部材とを設け、当接部材を撥液処理したものが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2010−208048号公報 特開2013−132894号公報 特開2016−022704号公報
しかしながら、弁座と弁体とは繰り返し当接するため、撥液膜には高い耐久性が求められるが、特許文献1及び2に記載された撥液膜では、耐久性が低く、インクの堆積を長期間に亘って抑制することができないという問題がある。
また、特許文献3の撥液膜は、耐久性が高いものの、撥液処理された当接部材が必要となり部品点数が増えてコストが高くなるという問題がある。特に、当接部材は弁体が当接するため、精度が低いとインクのリークが生じることから、高精度な当接部材が必要で高コストになってしまう。
また、特許文献3では、当接部材を支持部材に接着剤で接着するため、接着剤がインク等の液体によって膨潤し、バルブの開弁特性にばらつきが生じてしまうという問題がある。
なお、このような問題はインクジェット式記録装置に代表される液体噴射装置だけではなく、他のデバイスに用いられる流路部材においても同様に存在する。
本発明はこのような事情に鑑み、高い耐久性を有する撥液膜を低コストで設けることができ、液体の堆積を抑制して液体のリークを抑制することができる流路部材及び液体噴射装置を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明の態様は、流路が形成されたフレームと、前記流路を開ける第1の位置及び前記流路を閉じる第2の位置の間を移動することで前記流路を開閉する弁体と、前記フレームに一体に設けられて前記第2の位置にある前記弁体と当接して前記流路を閉じる弁座と、を具備し、前記弁座は、前記弁体と当接する部分に撥液膜を有し、前記撥液膜は、前記フレーム側に設けられた第1の膜と、前記第1の膜に積層され、前記フレームよりも撥液性が高い金属アルコキシドからなる第2の膜と、を有し、前記第1の膜と前記フレームとの密着力、及び前記第2の膜と前記第1の膜との密着力は、前記第2の膜と前記フレームとの密着力よりも高いことを特徴とする流路部材にある。
かかる態様では、弁座に金属アルコキシドの第2の膜を有する撥液膜を設けることで、撥液膜の耐久性を向上して、弁体と弁座とが繰り返し当接することによる液体の体積を長期間に亘って抑制することができる。また、弁座をフレームに一体に設けることで、別部材が不要となってコストを低減することができると共に別部材を接着する接着剤等が不要となって、接着剤の膨潤による開弁特性のばらつき等を抑制することができる。
ここで、前記第1の膜は、プラズマ重合膜であることが好ましい。これによれば、第1の膜によってフレームと第2の膜との密着性を向上して、第1の膜の剥離を抑制することができる。
また、前記第1の膜の厚さは、50nm以上、250nm以下であることが好ましい。これによれば、所定の厚さの第1の膜によってフレームと第2の膜との密着性を向上して、第1の膜の剥離を抑制することができる。
また、前記第1の膜は、酸化タンタルであることが好ましい。これによれば、第1の膜によってフレームと第2の膜との密着性を向上して、第1の膜の剥離を抑制することができる。
また、前記第1の膜の厚さは、10nm以上、30nm以下であることが好ましい。これによれば、所定の厚さの第1の膜によってフレームと第2の膜との密着性を向上して、第1の膜の剥離を抑制することができる。
また、第2の膜の厚さは、1Å以上、20nm以下であることが好ましい。これによれば、所定の厚さの第2の膜によって、十分な撥液性を発揮させることができると共に耐久性を向上することができる。
また、前記弁体は、弾性部材で構成され、前記撥液膜の厚みは、前記弁体が前記弁座に当接して当接方向に変形する変形量よりも薄いことが好ましい。これによれば、撥液膜の厚さにばらつきが生じても、弾性部材の弾性変形によって撥液膜の厚さのばらつきを吸収して弁体を撥液膜に隙間なく密着させることができる。
また、前記撥液膜は、前記弁体と前記弁座とが当接する位置より、下流側の前記流路の壁面上に延設されていることが好ましい。これによれば、撥液膜がフレームに接する面積を増大させて、密着力を向上することができる。
また、前記撥液膜は、前記弁体と前記弁座とが当接する位置よりも下流側の前記流路の壁面に延設された部分の方が薄いことが好ましい。これによれば、撥液膜の下流側に延設された部分の厚さを薄くすることで、撥液膜の延設された部分が弁体の軸部等と干渉するのを抑制することができる。また、撥液膜の下流側に延設された部分を薄くすることで、下流側の流路寸法を大きくして流路抵抗を下げることができ、さらなる小型化を図ることができる。さらに、弁体と弁座とが当接する位置の撥液膜を厚くすることで、弁体と弁座とが当接する部分の流路寸法を小さくでき、当接する部分の流速が上がり堆積物が溜まり難くなる。
また、前記撥液膜は、前記弁座と前記弁座が当接する位置より、上流側の前記流路の壁面上に延設されていることが好ましい。これによれば、撥液膜がフレームに接する面積を増大させて、密着力を向上することができる。
また、前記撥液膜は、前記弁体と前記弁座とが当接する位置よりも上流側の前記流路の壁面に延設された部分の方が薄いことが好ましい。これによれば、撥液膜の上流側に延設された部分を薄くすることで、上流側の流路寸法を大きくして流路抵抗を下げることができ、さらなる小型化を図ることができる。また、弁体と弁座とが当接する位置の撥液膜を厚くすることで、弁体と弁座とが当接する部分の流路寸法を小さくでき、当接する部分の流速が上がり堆積物が溜まり難くなる。
さらに、本発明の他の態様は、上記態様の流路部材を具備することを特徴とする液体噴射装置にある。
かかる態様では、撥液膜の耐久性を長期間に亘って向上してコストを低減した液体噴射装置を実現できる。
ここで、前記流路部材から供給された液体をノズルから噴射する液体噴射ヘッドをさらに具備することが好ましい。これによれば、流路部材からの液体がリークするのを抑制して、液体噴射ヘッドのノズルから液体が漏出するのを長期間に亘って抑制することができる。
本発明の実施形態1に係る記録装置の平面図である。 本発明の実施形態1に係る記録ヘッド及びバルブユニットの断面図である。 本発明の実施形態1に係るヘッド本体の断面図である。 本発明の実施形態1に係るヘッド本体の要部を拡大した断面図である。 本発明の実施形態1に係るバルブユニットの要部断面図である。 本発明の実施形態1に係るバルブユニットの要部断面図である。 本発明の実施形態1に係るバルブユニットの要部断面図である。 試験結果を示すグラフである。 試験結果を示すグラフである。
以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の平面図である。
図1に示すように、インクジェット式記録装置1は平面視矩形状をなす本体フレーム2を備えている。この本体フレーム2内には被噴射媒体(図示略)を支持する媒体支持部材3が主走査方向となる第1の方向Xに沿って延設されている。媒体支持部材3上には、図示しない紙送り機構により紙などの被噴射媒体が副走査方向となる第1の方向Xに直交する第2の方向Yに沿って給送されるようになっている。また、本体フレーム2内における媒体支持部材3の上方には、媒体支持部材3の第1の方向Xと平行に延びる棒状のガイド軸4が架設されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、第1の方向X及び第2の方向Yの双方に交差する方向を第3の方向Zと称する。また、本実施形態では、各方向(X、Y、Z)の関係を直交とするが、各構成の配置関係が必ずしも直交するものに限定されるものではない。
ガイド軸4には、キャリッジ5がガイド軸4に沿って第1の方向Xに往復移動可能な状態で支持されている。キャリッジ5は、本体フレーム2に設けられた一対のプーリー6a間に掛装された無端状のタイミングベルト6を介して本体フレーム2に設けられたキャリッジモーター7に連結されている。これにより、キャリッジ5は、キャリッジモーター7の駆動によってガイド軸4に沿って往復移動される。
キャリッジ5は、本実施形態の液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド(以下、単に記録ヘッドとも言う)20と、液体貯留手段であるインクタンク8からのインクを記録ヘッド20に供給する流路部材であるバルブユニット50と、を具備する。
詳しくは後述するが、記録ヘッド20の媒体支持部材3に相対向する面には、複数のノズル開口が設けられており、記録ヘッド20内に設けられた図示しない圧力発生手段を駆動することにより、各ノズル開口から媒体支持部材3上に給送された被噴射媒体にインク滴が噴射されることでインク滴によるドットの着弾、すなわち、印刷が行われるようになっている。
本体フレーム2の第1の方向Xの一端側にはタンクホルダー9が設けられており、タンクホルダー9には液体貯留手段である複数のインクタンク8がそれぞれ着脱可能に装着されている。本実施形態ではインクタンク8は、2個設けられている。各インクタンク8には、互いに種類(色)の異なるインクが収容されている。
タンクホルダー9に装着された各インクタンク8は、チューブ等の供給管10を介して本実施形態の流路部材であるバルブユニット50に接続されている。バルブユニット50は、各インクタンク8から各供給管10を介して供給される各色のインクをそれぞれ一時貯留するようになっており、個別に一時貯留した各色のインクはそれぞれ記録ヘッド20に供給される。
本体フレーム2内における第1の方向Xの一端部寄りの位置であって、キャリッジ5のホームポジション領域には、記録ヘッド20のクリーニング等のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット11が設けられている。このメンテナンスユニット11は、記録ヘッド20の各ノズル開口を囲うように該記録ヘッド20に当接したり各ノズル開口からフラッシングによって吐出されるインクを受容したりするためのキャップ12と、キャップ12内を吸引可能な吸引ポンプ(図示略)とを備えている。
そして、記録ヘッド20の各ノズル開口を囲うように記録ヘッド20にキャップ12を当接した状態でキャップ12内を吸引ポンプ(図示略)によって吸引することで、各ノズル開口から増粘したインクや気泡などをキャップ12内に強制的に排出させる、いわゆるクリーニングが行われるようになっている。
このようなインクジェット式記録装置1に搭載される記録ヘッド20について図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッド及びバルブユニットの断面図であり、図3は、ヘッド本体の断面図である。
図2に示すように、本実施形態の記録ヘッド20は、インク滴を噴射するヘッド本体30と、ヘッド本体30にインクを供給する流路ユニット40と、を具備する。
ヘッド本体30は、図3及び図4に示すように、アクチュエーターユニット31と、アクチュエーターユニット31を内部に収容可能なケース32と、ケース32の一方面に接合されたヘッド流路ユニット33と、ケース32の他方面に固定された配線基板34と、を具備する。
本実施形態のアクチュエーターユニット31は、複数の圧電アクチュエーター310がノズル開口334の並設方向に沿って並設された圧電アクチュエーター形成部材311と、圧電アクチュエーター形成部材311の先端部(一端部)側が自由端となるようにその基端部(他端部)側が固定端として接合される固定板312とを有する。
圧電アクチュエーター形成部材311は、圧電材料313と、電極形成材料314及び315とを交互に挟んで積層することにより形成されている。
この圧電アクチュエーター形成部材311には、例えば、ワイヤーソー等によって複数のスリット316が形成され、その先端部側が櫛歯状に切り分けられて圧電アクチュエーター310が並設されている。本実施形態では、圧電アクチュエーター310の並設方向は、ノズル開口334の並設方向であって、上述したインクジェット式記録装置1に搭載された際に、第1の方向Xとなるように配置される。したがって、以降、ノズル開口334の並設方向を第1の方向Xと称し、第1の方向Xに直交する方向をインクジェット式記録装置1と同様に第2の方向Yと称する。もちろん、記録ヘッド20は、インクジェット式記録装置1に搭載された際に、ノズル開口334の並設方向が第1の方向Xと一致する方向ではなくてもよく、特に限定されるものではない。
ここで、圧電アクチュエーター310の固定板312に接合される領域は、振動に寄与しない不活性領域となっており、圧電アクチュエーター310を構成する電極形成材料314及び315間に電圧を印加すると、固定板312に接合されていない先端部側の領域のみが振動する。そして、圧電アクチュエーター310の先端面が、後述する振動板331に固定される。
また、アクチュエーターユニット31の各圧電アクチュエーター310には、当該圧電アクチュエーター310を駆動するための駆動IC等の駆動回路317が搭載されたCOF等の回路基板318が接続されている。
ヘッド流路ユニット33は、流路形成基板330、振動板331及びノズルプレート332を具備する。
流路形成基板330には、複数の圧力発生室333が並設され、流路形成基板330の両側は、各圧力発生室333に対応してノズル開口334を有するノズルプレート332と、振動板331とにより封止されている。本実施形態では、圧力発生室333が並設された列が2列設けられている。また、流路形成基板330には、圧力発生室333毎にそれぞれインク供給路335を介して連通されて列毎に複数の圧力発生室333の共通のインク室となるマニホールド336が形成されている。すなわち、本実施形態では、圧力発生室333の列毎にマニホールド336が形成されている。
そして、流路形成基板330の振動板の各圧力発生室333に対向する領域にそれぞれ圧電アクチュエーター310の先端が固定されている。
また、振動板331のマニホールド336に対応する領域は、コンプライアンス部337が設けられている。なお、このコンプライアンス部337は、マニホールド336内に圧力変化が生じた時に、このコンプライアンス部337が変形することによって圧力変化を吸収し、マニホールド336内の圧力を常に一定に保持する役割を果たす。
ケース32は、ヘッド流路ユニット33に接合されて、インクタンク8に接続されたバルブユニット50からのインクをマニホールド336に供給するインク導入路321が設けられている。本実施形態では、マニホールド336の各々に対して1つずつ、合計2つのインク導入路321が設けられている。そして、インクタンク8からバルブユニット50を介してインク導入路321に供給されたインクは、マニホールド336に供給され、インク供給路335を介して各圧力発生室333に分配される。
また、ケース32には、圧力発生室333の列に対応して、収容部322が設けられている。すなわち、本実施形態では、2つの収容部322が設けられており、各収容部322内にアクチュエーターユニット31がそれぞれ固定されている。
さらに、ケース32のヘッド流路ユニット33とは反対側には、配線基板34が設けられており、アクチュエーターユニット31に一端が接続された回路基板318の他端部が配線基板34に接続されている。
このようなヘッド本体30では、圧電アクチュエーター310及び振動板331の変形によって各圧力発生室333の容積を変化させて所定のノズル開口334からインク滴を吐出させるようになっている。
また、流路ユニット40は、図2に示すように、一方面にバルブユニット50が固定されて、他方面に固定されたヘッド本体30にバルブユニット50からのインクを供給するものである。
具体的には、流路ユニット40には、インク連通路41が設けられており、インク連通路41が開口する一方面には、インクに含まれるゴミや気泡などの異物を除去するフィルター42と、フィルター42上に設けられた供給針43とが設けられている。
供給針43は、詳しくは後述するバルブユニット50に挿入されるものである。バルブユニット50からのインクは、供給針43の内部を通過してフィルター42で異物が除去された後、インク連通路41を介してヘッド本体30に供給される。
このような流路ユニット40に接続されてインクタンクからのインクを記録ヘッドに供給するバルブユニットについてさらに図4及び図5を参照して説明する。なお、図4及び図5は、バルブユニットの要部を拡大した断面図である。
本実施形態では、図2に示すように、1つの記録ヘッド20に対して種類の異なる2つのインクが供給されるため、流路ユニット40には、2つのバルブユニット50が固定されている。
図2及び図5に示すように、各バルブユニット50は、インクが流れる流路の途中に設けられて当該流路を開閉するバルブである。具体的には、本実施形態のバルブユニット50は、弁座51と、弁体55と、を具備する。
弁座51は、本実施形態のフレームである支持部材510に一体に設けられている。ここで、弁座51が支持部材510に一体に設けられているとは、弁座51と支持部材510とが接着剤等によって接合されていないことを言う。すなわち、弁座51は、支持部材510の一部のことを言う。
支持部材510は、例えば、ポリプロピレン(PP)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)等の樹脂材料やステンレス鋼等の金属で形成されている。なお、支持部材510は、樹脂材料を用いて成形により安価に形成することができる。
支持部材510には、インクタンク8に供給管10を介して連通してインクタンク8からインクが供給される収容室511と、収容室511に流入口512を介して連通すると共に、記録ヘッド20のインク連通路41に連通する圧力調整室513と、が設けられている。
収容室511は、支持部材510の一方面に形成された凹部を蓋部材514で封止することで形成されている。また、収容室511には、流入路515の一端が連通して設けられている。この流入路515の他端には、供給管10を介してインクタンク8が接続される。
圧力調整室513は、支持部材510の収容室511とは反対側の側面に開口する凹形状を有する。また、支持部材510の圧力調整室513が開口する面には、フィルム516が貼付されており、圧力調整室513の開口はフィルム516によって封止されている。また、圧力調整室513には、流出路517の一端が連通しており、流出路517の他端は、記録ヘッド20のインク連通路41と接続されている。なお、流出路517の圧力調整室513と連通する一端部とは反対側の他端部には、シール部材519が設けられている。流路ユニット40の供給針43は、シール部材519に挿入されて流出路517と接続されている。
ここで、フィルム516は、液体に対して耐性を有する可撓性材料を用いることができる。また、フィルム516としては、水分透過率や液酸素や窒素等のガス透過率の低い材料を用いるのが好ましい。フィルム516の材料としては、例えば、高密度ポリエチレンフィルムあるいはポリプロピレン(PP)フィルムに、塩化ビニリデン(サラン)をコーティングしたナイロンフィルムを接着ラミネートした構成が挙げられる。また、他の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを使用してもよい。また、フィルム516の接合方法は、特に限定されず、熱用着、振動用着、接着剤による接着などを用いることができる。
このようなフィルム516の圧力調整室513の壁面の一部を構成する部分は、ダイヤフラム516aとなっている。また、ダイヤフラム516aの圧力調整室513側の面には、受圧板518が設けられている。受圧板518は、ダイヤフラム516aよりも小さな外形の円盤形状を有する。このような受圧板518は、流入口512を開閉する弁体55が直接フィルム516に当接するのを避けるために設けられたものであり、ダイヤフラム516aよりも剛性の高い材料、例えば、樹脂や金属等を用いることができる。
圧力調整室513の底面、すなわち、支持部材510のダイヤフラム516aに相対向する壁面には、厚さ方向に貫通して圧力調整室513と収容室511とを連通する流入口512が設けられている。収容室511からのインクは、流入口512を介して圧力調整室513に流入される。
流入口512の収容室511側の開口縁部は、収容室511内に向かって突出して設けられており、この突出した部分が弁座51となっている。そして、この弁座51は、弁体55が当接する部分に撥液膜520を有する。すなわち、撥液膜520は、支持部材510に一体に設けられた支持部材510の表面に直接、形成されている。ここで、撥液性とは、流路部材であるバルブユニット50内を流れる液体、本実施形態では、記録ヘッド20から吐出される液体をはじく性質を意味している。つまり、バルブユニット50内を流れる液体の溶液(主に溶媒)の主成分が油のものに対しては撥油性を意味し、バルブユニット50内を流れる液体の溶液(主に溶媒)の主成分が水であるものに対しては撥水性を意味している。撥液膜520とは、この撥液性が支持部材510よりも高いものを言う。
このような撥液膜520は、支持部材510上に設けられた第1の膜521と、第1の膜521に積層された第2の膜522と、を有する。
第1の膜521は、本実施形態では、プラズマ重合膜(PPSi(Plasma Polymerization Silicone)膜)、又は、酸化タンタル(TaO)からなる。このように、プラズマ重合膜又は酸化タンタルからなる第1の膜521を設けることで、支持部材510と第2の膜522との密着性を向上することができる。すなわち、第1の膜521としては、第2の膜522及び支持部材510との密着力が、第2の膜522を支持部材510に直接設けた場合の密着力よりも高くなる材料を用いればよい。
なお、プラズマ重合膜からなる第1の膜521は、例えば、シリコーンをアルゴンプラズマガスにより重合させて形成することができる。また、第1の膜521は、シリコーンをアルゴンプラズマガスにより重合させて形成するため、マスクを用いて部分成膜が可能である。したがって、第1の膜521を支持部材510の全面ではなく、弁体55が当接する部分のみに選択的に形成することができる。このようなプラズマ重合膜からなる第1の膜521の厚さは、例えば、50nm以上、250nm以下が好適である。このように所定の厚さのプラズマ重合膜からなる第1の膜521を設けることで、詳しくは後述する金属アルコキシドの分子膜からなる第2の膜522と支持部材510との密着性を向上して、撥液膜520の剥離を抑制することができる。
また、酸化タンタルからなる第1の膜521は、例えば、ALD(原子層堆積法)やCVD(化学的気相成長法)により形成することができる。また、酸化タンタルからなる第1の膜521の厚さは、例えば、10nm以上、30nm以下が好適である。このように所定の厚さの酸化タンタルからなる第1の膜521を設けることで、詳しくは後述する金属アルコキシドの分子膜からなる第2の膜522と支持部材510との密着性を向上して、撥液膜520の剥離を抑制することができる。
第2の膜522は、支持部材510よりも撥液性が高い金属アルコキシドの分子膜からなる。この第2の膜522は、例えば、アルコキシラン等のシランカップリング剤をシンナー等の溶媒と混合して金属アルコキシド溶液を形成し、この金属アルコキシド溶液に第1の膜521が形成された支持部材510を浸漬して成膜し、その後、乾燥処理、アニール処理等を行うことで、金属アルコキシドの重合した分子膜からなる撥液膜(SCA(silane coupling agent)膜)を形成することができる。ちなみに、撥液膜520として、金属アルコキシドの分子膜からなる第2の膜522を用いた場合には、第1の膜521を設けたとしても、共析メッキにより形成したフッ素系高分子を含む金属膜からなる撥液膜よりも薄く形成できると共に、弁体55が当接することによっても撥液性が劣化し難い「耐擦性」、及び撥液性を向上できるという利点を有する。なお、第2の膜522の厚さは、1Å以上、20nm以下が好ましい。このように第2の膜522を所定の厚さで形成することで、第2の膜522に十分な撥液性を付与することができる。
このような撥液膜520は、詳しくは後述するが、弁体55が繰り返し当接することによるインクの堆積を抑制するために設けたものであるため、撥液膜520は、支持部材510の少なくとも弁体55が当接する部分のみに設けられていればよい。
なお、撥液膜520を、弁体55が当接する部分よりも上流側の壁面上に延設してもよい。本実施形態では、撥液膜520を弁体55が当接する第1の部分523から、流入口512の収容室511側の内壁面上に延設して第2の部分524を設けるようにした。このように、撥液膜520を弁体55が当接する部分よりも上流側の壁面上に延設することにより、撥液膜520と支持部材510との密着面積が広くなり、撥液膜520の剥離を抑制することができる。
また、撥液膜520は、弁体55が当接する部分よりも下流側の壁面上に延設してもよい。本実施形態では、撥液膜520を弁体55が当接する第1の部分523から、支持部材510の流入口512の開口縁部の突出した部分の流入口512とは反対側の壁面上に延設して第3の部分525を設けるようにした。このように、撥液膜520を弁体55が当接する部分よりも下流側の壁面上に延設することにより、撥液膜520と支持部材510との密着面積が広くなり、撥液膜520の剥離を抑制することができる。すなわち、撥液膜520は、弁体55が当接する部分の上流側の壁面及び下流側の壁面の何れか一方又は両方に延設されているのが好ましく、撥液膜520を延設することで、撥液膜520と支持部材510との密着面積が広くなり、撥液膜520の剥離を抑制することができる。特に、本実施形態では、弁体55が当接する第1の部分523に対して、第2の部分524及び第3の部分525は、面方向が略直交する方向に設けられている。このように、第2の部分524及び第3の部分525を第1の部分523と異なる面方向となるように設けることで、第1の部分523と同じ面方向で形成するのに比べてアンカー効果によってさらに剥離し難くすることができる。
ただし、支持部材510の内面の撥液膜520が形成されている領域が広すぎると、撥液膜520には、インクの表面張力によってインクに含まれる気泡が付着し、気泡が成長して予期せぬタイミングで流れるという不具合が発生する虞がある。したがって、撥液膜520はできるだけ狭い面積で形成するのが好ましい。
また、撥液膜520の第2の部分524の厚さt2及び第3の部分525の厚さt3は、第1の部分523の厚さt1よりも薄い(t2<t1、t3<t1)。なお、ここで言う撥液膜520の厚さt1、t2、t3とは、第1の膜521及び第2の膜522の合計の厚さのことをいう。このように、撥液膜520の第1部分523の厚さt1よりも、下流側の壁面に設けられた第2の部分524の厚さt2を薄くすることで、撥液膜520が延設された下流側の流路寸法を大きくして流路抵抗を下げることができ、さらなる小型化を図ることができる。すなわち、本実施形態では、第2の部分524は、弁体55の詳しくは後述する軸部551が挿通された流入口512に設けられているため、流入口512の流路抵抗を下げることができるため、流入口512をさらに断面積が小さくなるように形成することができ、さらなる小型化を図ることができる。同様に、撥液膜520の第1部分523の厚さt1よりも、上流側の壁面に設けられた第3の部分525の厚さt3を薄くすることで、撥液膜520が延設された上流側の流路寸法を大きくして流路抵抗を下げることができ、さらなる小型化を図ることができる。また、弁体55と弁座51とが当接する位置の撥液膜520の第1の部分523の厚さt1を第2の部分524の厚さt2及び第3の部分525の厚さt3よりも厚くすることで、弁体55と弁座51とが当接する部分の流路寸法を小さくすることができ、流速を上げることができる。これによって、弁体55と弁座51とが当接する位置に堆積物を溜まり難くすることができる。また、本実施形態では、弁体55が当接する弁座51は、収容室511内に向かって突出して設けられている。このため、撥液膜520を上記の厚さt1、t2、t3の関係で形成し易いと共に、シール性を向上することができる。
弁体55は、流入口512に挿通された軸部551及び軸部551の収容室511内の端部に設けられたフランジ部552を有する固定部材550と、固定部材550のフランジ部552に固定された弾性部材560と、を具備する。
軸部551は、流入口512よりも若干小さな外径を有し、圧力調整室513内の一端部が受圧板518の中央部に当接する。また、軸部551の受圧板518に当接するのとは反対側の他端部は、収容室511内に配置されており、収容室511内の他端部には、フランジ部552が一体的に形成されている。
フランジ部552は、円形の板状部材からなる。また、フランジ部552には、弾性部材560が固定されている。弾性部材560は、ゴム又はエラストマー等からなる環形状を有し、弁座51に向かって先端が突出した形状を有する。このような弾性部材560は、フランジ部552の弁座51側の面に固定されており、突出した先端が弁座51の撥液膜520に当接することで、流入口512を閉弁する。なお、弾性部材560の固定部材550への固定方法は特に限定されず、例えば、接着剤によって接着する方法が挙げられる。また、弾性部材560は、フランジ部552を覆う形状に形成して、フランジ部552に嵌着させるようにしてもよい。さらに、固定部材550と弾性部材560とは、例えば、2色成形によって一体化するようにしてもよい。このように固定部材550と弾性部材560とを2色成形によって一体化することで、弾性部材560の固定部材550への取り付け時の位置ずれや偏って変形した状態で取り付けられるのを抑制することができると共に、弾性部材560が弁座51に繰り返し当接することによる位置ずれを抑制することができる。したがって、弾性部材560と弁座51とを安定して当接させて、シール性を向上することができる。
このような弁体55のフランジ部552と収容室511を画成する蓋部材514との間には、コイルバネ56が介装されており、コイルバネ56の付勢力によって弁体55は軸部551の軸方向を移動軸方向として圧力調整室513側に付勢されている。
ここで弁体55に働く力には、フィルム516の反力と、圧力調整室513のインク圧を受けて受圧板518とダイヤフラム516aとに働く力と、コイルバネ56の付勢力と、インクの供給圧を受けて弁体55に働く力と、がある。
フィルム516の反力とは、撓み変形したダイヤフラム516aが元の形状に復元しようとする力である。ダイヤフラム516aの変形量、すなわち、撓み量が大きいほど、フィルム516の反力は大きくなる。このようなフィルム516の反力は受圧板518を介して軸部551に伝達される。
圧力調整室513のインク圧を受けて受圧板518とダイヤフラム516aとに働く力とは、インク圧を受ける受圧板518とダイヤフラム516aとの受圧面積とインク圧との積で表される。圧力調整室513内の液体が流出路517から下流に流されて、圧力調整室513内のインクが減少すると、インク圧と大気圧との差圧が大きくなり、受圧板518とダイヤフラム516aとに働く力は大きくなる。この受圧板518とダイヤフラム516aとに働く力は、軸部551を介して弁体55に開弁方向の力として働く。
コイルバネ56の付勢力は、弁体55を閉弁方向に付勢する力である。このように、本実施形態では、弁体55は、コイルバネ56によって、圧力調整室513のインクの圧力によって受圧板518とダイヤフラム516aとに働く力とは反対向きの力を受圧板518に与えるので、受圧板518を弁体55が開弁位置に達するまで変位させるためには、コイルバネ56の付勢力に相当する分だけ、圧力調整室513内のインクをより低い圧力まで減圧させる必要がある(動作圧)。
そして、このようなバルブユニット50では、図7に示すように、圧力調整室513内のインクが下流に流されて圧力調整室513内が大気圧よりも負圧に減圧されることで、ダイヤフラム516aが圧力調整室513の底面側に移動し、受圧板518が弁体55をコイルバネ56の付勢力に抗して押圧することで弁体55の弾性部材560と弁座51との間に隙間が生じて、流入口512が開口、すなわち開弁する。このときの弁体55の位置を第1の位置と称する。また、この開弁によって収容室511から圧力調整室513内にインクが供給されることで、圧力調整室513内の減圧が解消されると、ダイヤフラム516aがコイルバネ56の付勢力によって元の位置に戻り、閉弁する(図5参照)。このときの弁体55の位置を第2の位置と称する。
このようなバルブユニット50は、支持部材510に撥液処理を施すことで撥液膜520を形成する。このとき、撥液膜520を形成しない部分にマスクを設け、全面に撥液膜520を形成した後、マスクをリフトオフすることで所望の領域のみに撥液膜520を形成することができる。その後は、支持部材510にフィルム516を固定すると共に弁体55及びコイルバネ56を配置し、蓋部材514によって収容室511を封止することで図5に示すバルブユニット50が製造される。
ここで、以下の実施例1及び2、比較例1及び2の撥液膜が形成された試験片を用意し、各試験片の撥液膜の耐擦性の試験を行った。
(実施例1)
ポリプロピレン(PP)の板材をプラズマ処理した後、プラズマ重合膜(PPSi)からなる第1の膜521を厚さが200nmとなるように形成し、第1の膜521上に金属アルコキシドの分子膜(SCA)からなる第2の膜522を厚さが数十nmとなるように形成して実施例1の撥液膜が設けられた試験片とした。
(実施例2)
ポリプロピレン(PP)の板材上に、プラズマ重合膜(PPSi)からなる第1の膜521を厚さが200nmとなるように形成し、第1の膜521上に金属アルコキシドの分子膜(SCA)からなる第2の膜522を厚さが数十nmとなるように形成して実施例2の撥液膜が設けられた試験片とした。
(比較例1)
ポリプロピレン(PP)の板材をプラズマ処理した後、金属アルコキシドの分子膜から(SCA)からなる第1の膜521を厚さが数十nmとなるように直接形成して比較例1の撥液膜が設けられた試験片とした。
(比較例2)
ポリプロピレン(PP)の板材上に、プラズマ重合膜(PPSi)からなる第1の膜521を厚さが200nmとなるように形成して比較例2の撥液膜が設けられた試験片とした。
(試験例)
これら実施例1及び2、比較例1及び2の各試験片の撥液膜について、ゴムでワイピングを行う前のインクに対する接触角と、ゴムで1000回ワイピングを行った後のインクに対する接触角とを測定した。また、この耐擦性の試験は、インクに接液する前の初期耐擦と、70℃のインクに3日間接液させた後の耐擦性とで行った。この結果を図8及び図9に示す。
図8及び図9に示すように、実施例1及び2の撥液膜は、初期耐擦及びインク接液後の耐擦ともに、ほとんど擦液性の低下が見られずに撥液していた。このことから、プラズマ重合膜(PPSi)からなる第1の膜521と、第1の膜521上に金属アルコキシドの分子膜(SCA)からなる第2の膜522とを積層した撥液膜520は、耐久性を向上して、インクの堆積を長期間に亘って抑制することができる。
以上説明したように、本実施形態では、フレームである支持部材510に弁座51を一体に設け、弁座51の弁体55と当接する部分に、第2の膜522と支持部材510との密着力に対して、第1の膜521と支持部材510との密着力、及び第2の膜522と第1の膜521との密着力が高い第1の膜521と、第1の膜521に積層され、フレームよりも撥液性が高い金属アルコキシドからなる第2の膜522と、を有する撥液膜520を設けるようにした。このため、撥液膜520の耐久性を向上して、弁体55との繰り返し当接によるインクの堆積の抑制を長期間に亘って維持することができる。特に、撥液膜として第2の膜522を設けることで、第1の膜521の剥離を抑制することができる。また、支持部材510に直接、撥液膜520を設けることができるため、部品点数を減らしてコストを低減することができる。ちなみに、支持部材510とは別体となる部材に撥液膜520を形成し、別部材を支持部材510に接着することも考えられるが、このような構成では、別部材によって部品点数が増えると共に、弁体55が支持部材510とは別部材に当接するため、別部材として高い部品精度が必要になり、高コストになってしまう。また、別部材を支持部材510に接着する場合、接着剤がインクによって膨潤して、弁体55の当接高さにばらつきが生じ、バルブの開閉特性にばらつきが生じてしまう。本実施形態では、支持部材510に直接、撥液膜520を設けたため、接着剤等の膨潤による弁体55の当接高さにばらつきが生じ難く、バルブの開閉特性にばらつきが生じるのを抑制することができる。
また、第1の膜521として、プラズマ重合膜又は酸化タンタルを用いることで、第1の膜521と支持部材510との密着性を向上して、撥液膜520の剥離を抑制することができる。
なお、撥液膜520の第1の部分523の厚さt1は、図6に示すように、弁体55が撥液膜520に当接した第2の位置にいる際に、弁体55の弾性部材560が当接方向に変形する変形量よりも薄い。つまり、弁体55の弾性部材560のつぶれる量よりも撥液膜520の第1の部分523の厚さt1は薄いのが好ましい。このように、撥液膜520の第1の部分523の厚さt1を弾性部材560の変形量よりも薄くすることで、撥液膜520の厚さが面内でばらついていても、弾性部材560の変形によって撥液膜520の厚さのばらつきを吸収することができ、第2の位置において確実に閉弁することができる。つまり、撥液膜520の第1の部分523の厚さt1が、弾性部材560の変形量よりも厚い場合、弾性部材560の変形量を超えて撥液膜520の厚さt1にばらつきが生じる虞がある。このように、弾性部材560の変形量を超えて撥液膜520の厚さt1にばらつきが生じると、弾性部材560が第2の位置で撥液膜520に当接しない部分が生じ、閉弁不良によってインクのリークが生じてしまう虞がある。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
例えば、上述した実施形態1では、撥液膜520の第1の膜521として、プラズマ重合膜又は酸化タンタルを用いるようにしたが、特にこれに限定されず、プラズマ重合膜と酸化タンタルとを積層してもよい。
また、上述した実施形態1では、撥液膜520を支持部材510に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、撥液膜520を弁体55側に設け、弾性部材560を支持部材510側に設けるようにしてもよい。この場合、特許請求の範囲の弁体は、支持部材510に相当し、フレーム及び弁座は、弁体55に相当する。
さらに、上述した実施形態1では、圧力発生室333に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、圧電材料313と電極形成材料314、315とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる圧電アクチュエーター310を用いて説明したが、圧力発生手段としては、特にこれに限定されず、例えば、電極及び圧電材料を成膜及びリソグラフィー法により積層形成した薄膜型、グリーンシートを添付する等の方法により形成される厚膜型などの撓み振動型の圧電アクチュエーターを用いることができる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズル開口から液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズル開口から液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
また、上述したインクジェット式記録装置1では、記録ヘッド20がキャリッジ5に搭載されて第1の方向Xに移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、記録ヘッド20が固定されて、被噴射媒体を第2の方向Yに移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
また、上述した例では、インクジェット式記録装置1は、液体貯留手段であるインクタンク8が本体フレーム2のタンクホルダー9に搭載された構成であるが、特にこれに限定されず、液体貯留手段であるインクカートリッジがキャリッジ5に搭載されていてもよい。また、バルブユニット50は、キャリッジ5に搭載されたものに限定されず、バルブユニット50と記録ヘッド20とがチューブ等の供給管を介して接続されていてもよい。
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッドを具備する液体噴射装置全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等を具備する液体噴射装置に用いることが可能である。
また、本発明は液体噴射ヘッド及び液体噴射装置に搭載される流路部材に限定されず、その他のデバイスに搭載される流路部材についても適用可能である。
1…インクジェット式記録装置(液体噴射装置)、2…本体フレーム、3…媒体支持部材、4…ガイド軸、5…キャリッジ、6…タイミングベルト、6a…プーリー、7…キャリッジモーター、8…インクタンク、9…タンクホルダー、10…供給管、11…メンテナンスユニット、12…キャップ、20…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、30…ヘッド本体、31…アクチュエーターユニット、32…ケース、33…ヘッド流路ユニット、34…配線基板、40…流路ユニット、41…インク連通路、42…フィルター、43…供給針、50…バルブユニット、51…弁座、55…弁体、56…コイルバネ、310…圧電アクチュエーター、311…圧電アクチュエーター形成部材、312…固定板、313…圧電材料、314…電極形成材料、316…スリット、317…駆動回路、318…回路基板、321…インク導入路、322…収容部、330…流路形成基板、331…振動板、332…ノズルプレート、333…圧力発生室、334…ノズル開口、335…インク供給路、336…マニホールド、337…コンプライアンス部、510…支持部材(フレーム)、511…収容室、512…流入口、513…圧力調整室、514…蓋部材、515…流入路、516…フィルム、516a…ダイヤフラム、517…流出路、518…受圧板、519…シール部材、520…撥液膜、521…第1の膜、522…第2の膜、523…第1の部分、524…第2の部分、525…第3の部分、550…固定部材、551…軸部、552…フランジ部、560…弾性部材、X…第1の方向、Y…第2の方向、Z…第3の方向Z

Claims (13)

  1. 流路が形成されたフレームと、
    前記流路を開ける第1の位置及び前記流路を閉じる第2の位置の間を移動することで前記流路を開閉する弁体と、
    前記フレームに一体に設けられて前記第2の位置にある前記弁体と当接して前記流路を閉じる弁座と、を具備し、
    前記弁座は、前記弁体と当接する部分に撥液膜を有し、
    前記撥液膜は、前記フレーム側に設けられた第1の膜と、前記第1の膜に積層され、前記フレームよりも撥液性が高い金属アルコキシドからなる第2の膜と、を有し、
    前記第1の膜と前記フレームとの密着力、及び前記第2の膜と前記第1の膜との密着力は、前記第2の膜と前記フレームとの密着力よりも高いことを特徴とする流路部材。
  2. 前記第1の膜は、プラズマ重合膜であることを特徴とする請求項1記載の流路部材。
  3. 前記第1の膜の厚さは、50nm以上、250nm以下であることを特徴とする請求項2記載の流路部材。
  4. 前記第1の膜は、酸化タンタルであることを特徴とする請求項1記載の流路部材。
  5. 前記第1の膜の厚さは、10nm以上、30nm以下であることを特徴とする請求項4記載の流路部材。
  6. 第2の膜の厚さは、1Å以上、20nm以下であることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の流路部材。
  7. 前記弁体は、弾性部材で構成され、
    前記撥液膜の厚みは、前記弁体が前記弁座に当接して当接方向に変形する変形量よりも薄いことを特徴とする請求項1〜6の何れか一項に記載の流路部材。
  8. 前記撥液膜は、前記弁体と前記弁座とが当接する位置より、下流側の前記流路の壁面上に延設されていることを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の流路部材。
  9. 前記撥液膜は、前記弁体と前記弁座とが当接する位置よりも下流側の前記流路の壁面に延設された部分の方が薄いことを特徴とする請求項8記載の流路部材。
  10. 前記撥液膜は、前記弁座と前記弁座が当接する位置より、上流側の前記流路の壁面上に延設されていることを特徴とする請求項1〜9の何れか一項に記載の流路部材。
  11. 前記撥液膜は、前記弁体と前記弁座とが当接する位置よりも上流側の前記流路の壁面に延設された部分の方が薄いことを特徴とする請求項10記載の流路部材。
  12. 請求項1〜11の何れか一項に記載の流路部材を具備することを特徴とする液体噴射装置。
  13. 前記流路部材から供給された液体をノズルから噴射する液体噴射ヘッドをさらに具備することを特徴とする請求項12記載の液体噴射装置。
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