以下に本発明を実施形態に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置の概略図である。
図1に示すように、本実施形態の液体噴射装置の一例であるインクジェット式記録装置Iは、複数のインクジェット式記録ヘッドIIを有するヘッドユニット1を有する。ヘッドユニット1は、キャリッジ3に搭載され、キャリッジ3は、装置本体4に取り付けられたキャリッジ軸5に軸方向移動自在に設けられている。
そして、駆動モーター6の駆動力が図示しない複数の歯車およびタイミングベルト7を介してキャリッジ3に伝達されることで、ヘッドユニット1を搭載したキャリッジ3はキャリッジ軸5に沿って移動される。一方、装置本体4には搬送手段としての搬送ローラー8が設けられており、紙等の記録媒体である記録シートSが搬送ローラー8により搬送されるようになっている。なお、記録シートSを搬送する搬送手段は、搬送ローラー8に限定されずベルトやドラム等であってもよい。本実施形態では、記録シートSの搬送方向を第1の方向Xと称し、キャリッジ3の移動方向を第2の方向Yと称する。また、第1の方向X及び第2の方向Yの双方に交差する方向を第3の方向Zと称する。本実施形態では、各方向(X、Y、Z)の関係を直交とするが、各構成の配置関係が必ずしも直交するものに限定されるものではない。また、第3の方向Zは、本実施形態では、記録シートSからヘッドユニット1側に向かって+Z方向とし、ヘッドユニット1から記録シートS側に向かって−Z方向とした。
また、ヘッドユニット1には、液体としてインクが貯留されたインクタンク等の液体貯留手段を有する液体供給手段2がインクを供給可能に接続されている。また、液体供給手段2は、本実施形態では、ヘッドユニット1とは異なる位置、すなわち、装置本体4に固定されており、液体供給手段2からのインクはフレキシブルチューブ等の供給管2aを介してヘッドユニット1に供給されている。なお、液体供給手段2は、装置本体4に固定されたものに限定されず、例えば、インクカートリッジ等の液体供給手段をヘッドユニット1上に保持させて、液体供給手段をヘッドユニット1と共にキャリッジ3で移動させるようにしてもよい。
さらに、インクジェット式記録装置Iの非印刷領域には、ヘッドユニット1のノズルから流路内のインクや気泡等を吸引する吸引手段9が設けられている。
吸引手段9は、ヘッドユニット1のノズルを覆うキャップ部材9aと、キャップ部材9aに吸引管9bを介して接続された、例えば、真空ポンプ等の吸引装置9cと、を具備する。
このような構成の吸引手段9は、キャップ部材9aをヘッドユニット1のノズル面に当説させて、吸引装置9cに吸引動作を行わせることでキャップ部材9aの内部を負圧としてノズルからヘッドユニット1の流路内のインクを気泡と共に吸引する。また、非印刷時には、キャップ部材9aによってノズルを封止することによりノズルの乾燥を抑制するようにしてもよい。なお、キャップ部材9aは、所望のタイミングでノズル面に当接してノズルを覆うため、キャップ部材9aは、本実施形態では、第3の方向Zに沿って移動自在に設けられている。そして、キャップ部材9aの移動は、例えば、図示しない駆動モーターや電磁石等の移動手段によって行われる。
さらに、インクジェット式記録装置Iには、制御手段である制御装置400が設けられている。
ここで、本実施形態のインクジェット式記録装置Iの流路構成について図2を参照して説明する。なお、図2は、本実施形態のインクジェット式記録装置の流路構成を示すブロック図である。
図2に示すように、上述したインクジェット式記録装置Iでは、液体供給手段2からのインクが供給管2aを介してヘッドユニット1に供給される。
ここで、液体供給手段2は、液体であるインクを貯留するインクタンク等の液体貯留手段160と、液体貯留手段160のインクをヘッドユニット1に向かって圧送する第1加圧手段161と、第1加圧手段161と液体貯留手段160との間に設けられて第1加圧手段161からのインクの逆流を抑制する逆止弁162と、を具備する。
第1加圧手段161は、液体貯留手段160に貯留されたインクを逆止弁162によって逆流させることなく、ヘッドユニット1に供給する。このような第1加圧手段161としては、例えば、液体貯留手段160を外部から押圧する押圧手段や、加圧ポンプ等が挙げられる。なお、第1加圧手段161として、ヘッドユニット1と液体貯留手段160との鉛直方向の相対位置を調整して発生する水頭圧差を用いるようにしてもよい。
ヘッドユニット1は、インクジェット式記録ヘッドII(以下、単に記録ヘッドIIとも言う)と、液体供給手段2から供給されたインクの圧力を調整する圧力調整手段170と、圧力調整手段170よりも下流の記録ヘッドII側に設けられて流路を開閉する開閉弁190と、開閉弁190よりも下流側に設けられてインクを加圧する第2加圧手段200と、を有する。
圧力調整手段170は、詳しくは後述するが、下流側の流路が負圧になることで開弁する圧力調整弁からなる。圧力調整手段170を設けることで、記録ヘッドIIに第1加圧手段161による圧送されたインクが常に記録ヘッドIIに供給されるのを抑制して、記録ヘッドIIのノズルからインクが漏出するのを抑制することができる。
第2加圧手段200は、所望のタイミングで流路内のインクを加圧する。また、開閉弁190は、第2加圧手段200の加圧時に流路を閉弁することで、インクが上流側である圧力調整手段170側に逆流するのを抑制して、第2加圧手段200によって加圧されたインクが記録ヘッドIIに供給されるようにする。ちなみに、詳しくは後述するが、圧力調整手段170は、一部が可撓性を有するフィルムで形成されているため、第2加圧手段200によるインクの加圧時にインクが圧力調整手段170側に逆流すると、圧力調整手段170のフィルムが撓み変形することで第2加圧手段200による圧力が吸収されてしまう。このため、第2加圧手段200が加圧する際には、開閉弁190を閉弁することで、圧力調整手段170のフィルムの変形による圧力吸収を抑制して、加圧したインクを記録ヘッドIIに効率よく供給することができる。
ここで、本実施形態の記録ヘッドIIについて、さらに図3〜図7を参照して説明する。なお、図3は、本発明の実施形態1に係る液体噴射ヘッドの一例であるインクジェット式記録ヘッドの分解斜視図であり、図4は、インクジェット式記録ヘッドの平面図である。また、図5は、コンプライアンス基板の平面図であり、図6は図5のA−A′線断面図であり、図7は図6の要部を拡大した断面図である。また、本実施形態では、記録ヘッドIIの各方向について、インクジェット式記録装置Iに搭載された際の方向、すなわち、第1の方向X、第2の方向Y及び第3の方向Zに基づいて説明する。もちろん、記録ヘッドIIのインクジェット式記録装置I内の配置は以下に示すものに限定されるものではない。
図示するように、本実施形態の記録ヘッドIIは、ヘッド本体11、ヘッド本体11の一方面側に固定されたケース部材40、ヘッド本体11の他方面側に固定されたカバーヘッド130等を備える。また、本実施形態のヘッド本体11は、流路形成基板10と、流路形成基板10の一方面側に設けられた連通板15と、連通板15の流路形成基板10とは反対面側に設けられたノズルプレート20と、流路形成基板10の連通板15とは反対側に設けられた保護基板30と、連通板15のノズルプレート20が設けられた面側に設けられたコンプライアンス基板45と、を具備する。
ヘッド本体11を構成する流路形成基板10は、ステンレス鋼やNiなどの金属、ZrO2あるいはAl2O3を代表とするセラミック材料、ガラスセラミック材料、MgO、LaAlO3のような酸化物などを用いることができる。本実施形態では、流路形成基板10は、シリコン単結晶基板からなる。この流路形成基板10には、一方面側から異方性エッチングすることにより、複数の隔壁によって区画された圧力発生室12が第1の方向Xに沿って並設されている。また、流路形成基板10には、圧力発生室12が第1の方向Xに並設された列が第2の方向Yに沿って複数列、本実施形態では、2列設けられている。
また、流路形成基板10には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部側に、当該圧力発生室12よりも開口面積が狭く、圧力発生室12に流入するインクの流路抵抗を付与する供給路等が設けられていてもよい。
また、流路形成基板10の一方面側には、連通板15と、ノズルプレート20とが順次積層されている。すなわち、流路形成基板10の一方面に設けられた連通板15と、連通板15の流路形成基板10とは反対面側に設けられたノズル21を有するノズルプレート20と、を具備する。
連通板15には、圧力発生室12とノズル21とを連通するノズル連通路16が設けられている。連通板15は、流路形成基板10よりも大きな面積を有し、ノズルプレート20は流路形成基板10よりも小さい面積を有する。このように連通板15を設けることによってノズルプレート20のノズル21と圧力発生室12とを離せるため、圧力発生室12の中にあるインクは、ノズル21付近のインクで生じるインク中の水分の蒸発による増粘の影響を受け難くなる。また、ノズルプレート20は圧力発生室12とノズル21とを連通するノズル連通路16の開口を覆うだけで良いので、ノズルプレート20の面積を比較的小さくすることができ、また、流路形成基板10の面積を連通板15より小さくできるので、コストの削減を図ることができる。なお、本実施形態では、ノズルプレート20のノズル21が開口されて、インク滴が吐出される面をノズル面20aと称する。
また、連通板15には、マニホールド100の一部を構成する第1マニホールド部17と、第2マニホールド部18とが設けられている。
第1マニホールド部17は、連通板15を厚さ方向(連通板15と流路形成基板10との積層方向)に貫通して設けられている。また、第2マニホールド部18は、連通板15を厚さ方向に貫通することなく、連通板15のノズルプレート20側に開口して設けられている。なお、マニホールド100のノズルプレート20側の開口形状は、第1の方向X及び第2の方向Yを含む面内方向において長手方向及び短手方向を有する。なお、マニホールド100が長手方向及び短手方向を有するとは、マニホールド100のノズルプレート20側の開口の縦横比(アスペクト比)が1:1以外のものを言う。また、マニホールド100の開口形状は特に限定されず、例えば、矩形状、台形状、平行四辺形状、多角形状、楕円形状等であってもよい。本実施形態では、流路形成基板10に圧力発生室12が第1の方向Xに並設されているため、各圧力発生室12に連通する共通の液室であるマニホールド100は、第1の方向Xに並設された圧力発生室12に亘って、第1の方向Xが長手方向、つまり長尺となるように設け、第2の方向Yが短手方向、つまり短尺となるように台形状に設けられている。そして、マニホールド100のノズルプレート20側の開口形状も同様に、第1の方向Xが長手方向で、第2の方向Yが短手方向となる台形状に設けられている。
さらに、連通板15には、圧力発生室12の第2の方向Yの一端部に連通する供給連通路19が、圧力発生室12毎に独立して設けられている。この供給連通路19は、第2マニホールド部18と圧力発生室12とを連通する。すなわち、本実施形態では、ノズル21と第2マニホールド部18と連通する個別流路として、供給連通路19と、圧力発生室12と、ノズル連通路16と、が設けられている。
このような連通板15としては、ステンレス鋼やニッケル(Ni)などの金属、またはジルコニウム(Zr)などのセラミックス等を用いることができる。なお、連通板15は、流路形成基板10と線膨張係数が同等の材料が好ましい。すなわち、連通板15として流路形成基板10と線膨張係数が大きく異なる材料を用いた場合、加熱や冷却されることで、流路形成基板10と連通板15との線膨張係数の違いにより反りが生じてしまう。本実施形態では、連通板15として流路形成基板10と同じ材料、すなわち、シリコン単結晶基板を用いることで、熱による反りや熱によるクラック、剥離等の発生を抑制することができる。
ノズルプレート20には、各圧力発生室12とノズル連通路16を介して連通するノズル21が形成されている。すなわち、ノズル21は、第1の方向Xに並設された列が、第2の方向Yに2列形成されている。
このようなノズルプレート20としては、例えば、ステンレス鋼(SUS)等の金属、ポリイミド樹脂のような有機物、又はシリコン単結晶基板等を用いることができる。なお、ノズルプレート20としてシリコン単結晶基板を用いることで、ノズルプレート20と連通板15との線膨張係数を同等として、加熱や冷却されることによる反りや熱によるクラック、剥離等の発生を抑制することができる。
一方、流路形成基板10の連通板15とは反対面側には、振動板50が形成されている。本実施形態では、振動板50として、流路形成基板10側に設けられた酸化シリコンからなる弾性膜51と、弾性膜51上に設けられた酸化ジルコニウムからなる絶縁体膜52と、を設けるようにした。なお、圧力発生室12等の液体流路は、流路形成基板10を一方面側(ノズルプレート20が接合された面側)から異方性エッチングすることにより形成されており、圧力発生室12等の液体流路の他方面は、弾性膜51によって画成されている。
また、振動板50の絶縁体膜52上には、第1電極60と、圧電体層70と、第2電極80とが、積層形成されて圧電アクチュエーター300を構成している。ここで、圧電アクチュエーター300は、第1電極60、圧電体層70及び第2電極80を含む部分をいう。一般的には、圧電アクチュエーター300の何れか一方の電極を共通電極とし、他方の電極及び圧電体層70を圧力発生室12毎にパターニングして構成する。そして、ここではパターニングされた何れか一方の電極及び圧電体層70から構成され、両電極への電圧の印加により圧電歪みが生じる部分を能動部という。本実施形態では、第1電極60を圧電アクチュエーター300の共通電極とし、第2電極80を圧電アクチュエーター300の個別電極としているが、駆動回路や配線の都合でこれを逆にしても支障はない。なお、上述した例では、第1電極60が、複数の圧力発生室12に亘って連続して設けられているため、第1電極60が振動板の一部として機能するが、勿論これに限定されるものではなく、例えば、上述の弾性膜51及び絶縁体膜52を設けずに、第1電極60のみが振動板として作用するようにしてもよい。また、圧電アクチュエーター300自体が実質的に振動板を兼ねるようにしてもよい。ただし、流路形成基板10上に直接第1電極60を設ける場合には、第1電極60とインクとが導通しないように第1電極60を絶縁性の保護膜等で保護するのが好ましい。つまり、本実施形態では、基板(流路形成基板10)上に振動板50を介して第1電極60を設けた構成を例示したが、特にこれに限定されるものではなく、振動板50を設けずに第1電極60を直接基板上に設けるようにしてもよい。すなわち、第1電極60が振動板として作用するようにしてもよい。つまり、基板上とは、基板の直上も、間に他の部材が介在した状態(上方)も含むものである。
さらに、このような圧電アクチュエーター300の個別電極である各第2電極80には、供給連通路19とは反対側の端部近傍から引き出され、振動板50上にまで延設される、例えば、金(Au)等からなるリード電極90が接続されている。
また、流路形成基板10の圧力発生手段である圧電アクチュエーター300側の面には、流路形成基板10と略同じ大きさを有する保護基板30が接合されている。保護基板30は、圧電アクチュエーター300を保護するための空間である保持部31を有する。
また、このような構成のヘッド本体11には、複数の圧力発生室12に連通するマニホールド100をヘッド本体11と共に画成するケース部材40が固定されている。ケース部材40は、平面視において上述した連通板15と略同一形状を有し、保護基板30に接合されると共に、上述した連通板15にも接合されている。具体的には、ケース部材40は、保護基板30側に流路形成基板10及び保護基板30が収容される深さの凹部41を有する。この凹部41は、保護基板30の流路形成基板10に接合された面よりも広い開口面積を有する。そして、凹部41に流路形成基板10等が収容された状態で凹部41のノズルプレート20側の開口面が連通板15によって封止されている。これにより、流路形成基板10の外周部には、ケース部材40とヘッド本体11とによって第3マニホールド部42が画成されている。そして、連通板15に設けられた第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18と、ケース部材40とヘッド本体11とによって画成された第3マニホールド部42と、によって本実施形態のマニホールド100が構成されている。すなわち、マニホールド100は、第1マニホールド部17、第2マニホールド部18及び第3マニホールド部42を具備する。また、本実施形態のマニホールド100は、第2の方向Yにおいて、2列の圧力発生室12の両外側に配置されており、2列の圧力発生室12の両外側に設けられた2つのマニホールド100は、記録ヘッドII内では連通しないようにそれぞれ独立して設けられている。すなわち、本実施形態の圧力発生室12の第1の方向Xに併設された列毎に1つのマニホールド100が連通して設けられている。
また、ケース部材40には、マニホールド100に連通して各マニホールド100にインクを供給するための導入路44が設けられている。また、ケース部材40には、保護基板30の貫通孔32に連通して配線基板121が挿通される接続口43が設けられている。なお、接続口43を挿通された配線基板121はリード電極90と接続される。また、配線基板121には駆動回路120が設けられている。
なお、2つのマニホールド100は、記録ヘッドIIの上流側、すなわち、詳しくは後述するマニホールド100に連通する導入路44に接続される上流流路で連通していてもよい。
このようなケース部材40の材料としては、例えば、樹脂や金属等を用いることができる。ちなみに、ケース部材40として、樹脂材料を成形することにより、低コストで量産することができる。
また、図5〜図7に示すように、連通板15の第1マニホールド部17及び第2マニホールド部18が開口する面には、コンプライアンス基板45が設けられている。このコンプライアンス基板45は、第3の方向Zからの平面視において上述した連通板15と略同じ大きさを有し、ノズルプレート20を露出する第1露出開口部45aが設けられている。そして、このコンプライアンス基板45が第1露出開口部45aによってノズルプレート20を露出した状態で、第1マニホールド部17と第2マニホールド部18のノズル面20a側の開口を封止している。すなわち、コンプライアンス基板45がマニホールド100の一部を画成している。このようなコンプライアンス基板45は、連通板15側に設けられて可撓性を有する材料で形成された可撓部材46と、可撓部材46の連通板15とは反対側に固定された基板である枠部材47と、を具備する。可撓部材46は、可撓性を有するフィルム状の薄膜(例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、芳香族ポリアミド(アラミド)等により形成された厚さが20μm以下の薄膜)からなり、マニホールド100の一壁を形成している。また、枠部材47は、ステンレス鋼(SUS)等の金属等の可撓部材46に比べて硬質の材料で形成される。この枠部材47のマニホールド100に対向する領域は、厚さ方向に完全に除去された貫通口である開口部48となっているため、マニホールド100の一方面は可撓性を有する可撓部材46のみで封止されたコンプライアンス領域49となっている。すなわち、枠部材47に開口部48を設けることで、可撓部材46と蓋部材であるカバーヘッド130とを離間するためのコンプライアンス空間131を形成し、コンプライアンス空間131によって可撓部材46の一部をコンプライアンス領域49として変形可能としている。また、可撓部材46の枠部材47とは反対側に積層され、流路を構成する流路部材とは、本実施形態では、連通板15、流路形成基板10等のことである。なお、本実施形態では、1つのマニホールド100に対応して1つのコンプライアンス領域49が設けられている。すなわち、本実施形態では、マニホールド100が2つ設けられているため、ノズルプレート20を挟んで第2の方向Yの両側に2つのコンプライアンス領域49が設けられている。
なお、可撓部材46と枠部材47とは、例えば、可撓部材46の一方面の全面に亘って接着剤を塗布した後、可撓部材46の接着剤が塗布された一方面に枠部材47を当接することで接着される。したがって、図7に示すように、枠部材47の開口部48で露出されたコンプライアンス領域49にも接着剤が硬化した接着層46aが形成されている。もちろん、これに限定されず、開口部48内のコンプライアンス領域49に接着層46aが形成されていなくてもよい。
ここで、開口部48によって規定されるコンプライアンス領域49は、図5に示すように、第1の方向X及び第2の方向Yにおいて、長手方向及び短手方向を有する。なお、コンプライアンス領域49が長手方向及び短手方向を有するとは、コンプライアンス領域49の縦横比(アスペクト比)が1:1以外のものを言う。また、コンプライアンス領域49の形状は特に限定されず、例えば、矩形状、台形状、平行四辺形状、多角形状、楕円形状等であってもよい。本実施形態では、上述のようにマニホールド100のコンプライアンス基板45側の開口は、第1の方向Xに長手方向を有し、第2の方向Yに短手方向を有する台形状に設けられているため、コンプライアンス領域49はマニホールド100の開口形状と同様に、第1の方向Xに長手方向を有し、第2の方向Yに短手方向を有する台形状に設けられている。これにより、マニホールド100の開口に対して、できるだけ大きな面積でコンプライアンス領域49を設けることができ、記録ヘッドIIの小型化を図ることができる。もちろん、コンプライアンス領域49は、必ずしもマニホールド100の開口形状と同じ形状で設ける必要はなく、マニホールド100の開口形状と異なる形状で設けるようにしてもよい。
また、本実施形態では、コンプライアンス領域49を規定する開口部48の短手方向の壁面は、第3の方向Zにおいてマニホールド100に相対向する位置に設けられている。すなわち、マニホールド100の可撓部材46に対向する面の開口であって、マニホールド100を規定する開口の短手方向の壁面は第3の方向Zにおいて枠部材47に相対向する位置に配置されている。これにより、流路部材である連通板15と可撓部材46とを接合する際の荷重を枠部材47で受けることができるため、連通板15と可撓部材46との接合を確実に行うことができる。したがって、連通板15と可撓部材46との接合時に荷重不足による隙間が発生し、気泡が引っかかる等の不具合が発生するのを抑制することができる。
また、図6及び図7に示すように、ヘッド本体11のノズル面20a側には、本実施形態の蓋部材であるカバーヘッド130が設けられている。
カバーヘッド130には、ノズル21を露出する第2露出開口部132が設けられている。本実施形態では、第2露出開口部132は、ノズルプレート20を露出する大きさ、つまり、コンプライアンス基板45の第1露出開口部45aと略同じ開口を有する。
また、カバーヘッド130は、本実施形態では、ヘッド本体11の側面(ノズル面20aとは交差する面)を覆うように、ノズル面20a側から端部が屈曲して設けられている。
このようなカバーヘッド130は、コンプライアンス基板45の連通板15とは反対面側に接合されており、コンプライアンス領域49の流路であるマニホールド100とは反対側の空間を封止する。すなわち、蓋部材であるカバーヘッド130は、コンプライアンス領域49との間にコンプライアンス空間131を配した状態でコンプライアンス領域49を覆うように設けられている。このようにコンプライアンス領域49を蓋部材であるカバーヘッド130で覆うことにより、コンプライアンス領域49が紙等の被記録媒体が接触しても破壊されるのを抑制することができる。また、コンプライアンス領域49にインクが付着するのを抑制して、カバーヘッド130の表面に付着したインクを例えばワイパーブレード等で払拭することができ、被記録媒体をカバーヘッド130に付着したインク等で汚すのを抑制することができる。
このようにコンプライアンス領域49とカバーヘッド130との間に画成されたコンプライアンス空間131は、記録ヘッドIIの外部に大気開放されている。本実施形態では、特に図示していないが、各コンプライアンス領域49の第1の方向Xの一方側に、枠部材47を厚さ方向に貫通した貫通孔を設け、貫通孔を開口部48と連通することで、コンプライアンス領域49とカバーヘッド130との間のコンプライアンス空間131を、貫通孔を介して外部に大気開放するようにした。なお、コンプライアンス領域49とカバーヘッド130との間のコンプライアンス空間131に連通する貫通孔は、例えば、記録ヘッドIIのノズル面20a側や、側面側、ノズル面20aとは反対側であるケース部材40側などで大気開放すればよい。ただし、大気開放した開口からインクが流入し、大気開放路の閉塞やインクがコンプライアンス領域49に付着するなどの不具合が生じる虞があることから、貫通孔に連通する大気開放路は、ノズル面20aとは反対面側、すなわち、ケース部材40側で外部に開口して大気開放するのが好ましい。
そして、図5、図6及び図7に示すように、コンプライアンス領域49とカバーヘッド130との間のコンプライアンス空間131内には、片持ち梁150が設けられている。すなわち、片持ち梁150は、開口部48に臨んで設けられている。
片持ち梁150は、枠部材47から第2の方向Yに向かって連続してコンプライアンス空間131内に突出するように設けられている。なお、本実施形態では、片持ち梁150の枠部材47と連続する端部側を支点側と称し、コンプライアンス空間131内に突出した端部側を先端側と称する。本実施形態の片持ち梁150は、コンプライアンス空間131の第2の方向Yの両側の枠部材47からコンプライアンス空間131の第2の方向Yの中心側に向かって突出するように設けられており、第2の方向Yの両側から突出した片持ち梁150は、先端同士が所定の間隔を空けて第2の方向Yで相対向している。また、片持ち梁150は、コンプライアンス空間131内において第1の方向Xに間隔を空けて複数設けられている。もちろん、片持ち梁150は、これに限定されず、第2の方向Yの両側から突出した片持ち梁150は、互いに第2の方向Yで相対向しない位置で配置されていてもよい。
このような片持ち梁150は、コンプライアンス領域49の可撓部材46の少なくとも一部で固定され、先端側がカバーヘッド130と固定されない非固定領域となっている。具体的には、片持ち梁150は、可撓部材46に対向する面の全面が可撓部材46に固定されている。本実施形態では、可撓部材46の全面に亘って接着層46aが設けられているため、この接着層46aによって可撓部材46と片持ち梁150とは接着されている。なお、片持ち梁150は、可撓部材46と少なくとも一部で固定されていればよく、片持ち梁150が可撓部材46と固定される部分は、先端側であっても支点側であってもよい。
また、本実施形態の片持ち梁150は、当該片持ち梁150のカバーヘッド130と相対向する面において、先端側に第1切り欠き151を有する。これにより、片持ち梁150の支点側に比べて先端側の厚さが薄くなっている。そして、片持ち梁150の第1切り欠き151を設けた部分を、カバーヘッド130と固定されない非固定領域とし、片持ち梁150の第1切り欠き151が設けられていない部分をカバーヘッド130と固定するようにした。すなわち、枠部材47とカバーヘッド130とを接着剤135で接着した際に、枠部材47とカバーヘッド130との間からはみ出した接着剤135が第1切り欠き151によって第1切り欠き151よりも支点側に留まり、接着剤135が第1切り欠き151よりも先端側に過度に流れ出るのを抑制することができる。これにより、片持ち梁150の非固定領域をばらつきなく形成することができる。ちなみに、第1切り欠き151を設けないようにしてもよいが、第1切り欠き151が設けられていない場合、枠部材47とカバーヘッド130との間の接着剤135の片持ち梁150上への流出量及び流出位置を制御するのは困難であり、非固定領域にばらつきが生じてしまう虞がある。本実施形態では、片持ち梁150に第1切り欠き151を設けて先端側の厚さを薄くすることで、接着剤135の流れ出しを抑制して、非固定領域を容易に且つ高精度に形成することができる。なお、接着剤135の塗布領域や粘度を調整することで、第1切り欠き151を設けなくても接着剤135のはみ出しを抑制して、非固定領域を規定することも可能である。また、片持ち梁150の第1切り欠き151よりも支点側は、カバーヘッド130と固定されていても、また固定されていなくてもよい。本実施形態では、片持ち梁150の第1切り欠き151よりも支点側は、カバーヘッド130と固定するようにした。
ここで、インクを噴射しない待機状態では、マニホールド100内のインクの圧力は負圧(大気圧を基準)となっているため、図8(b)に示すように、可撓部材46のコンプライアンス領域49は、マニホールド100の内側に向かって、すなわち、第3の方向Zにおいて、カバーヘッド130とは反対側に撓み変形する。このとき、コンプライアンス領域49には片持ち梁150が設けられているため、片持ち梁150によってコンプライアンス領域49の撓みは抑えられる。
そして、インクが噴射されてマニホールド100内の圧力がさらに負圧となると、図8(c)に示すように、可撓部材46のコンプライアンス領域49は、片持ち梁150を弾性変形させてさらにマニホールド100の内側に突出するように撓み変形する。このように、片持ち梁150が設けられたコンプライアンス領域49によって印刷開始時及び印刷途中においてマニホールド100内のインクの圧力変動を吸収することができるため、印刷中のインクの噴射特性、特にインク滴の重量のばらつきを抑制して印刷品質を向上することができる。
これに対して、例えば、片持ち梁150を設けていない場合、図9(b)に示すように、印刷待機状態においてコンプライアンス領域49がマニホールド100の内側に撓み切ってしまっていると、インクの噴射を開始した際に、マニホールド100内のインクが消費されることによる圧力変化に対応してコンプライアンス領域49が充分に撓むことができない。また、印刷待機状態において図9(a)に示すように、コンプライアンス領域49が撓み切っていない場合であっても、印刷を開始した直後に急激に図9(b)に示すようにコンプライアンス領域49が撓み切ってしまうと、マニホールド100内のインクが消費されることによる圧力変化に対応してコンプライアンス領域49が充分に撓むことができない。また、インクの噴射によってマニホールド100内のインクの消費が行われると、上流側からマニホールド100内にインクが供給されるが、インクの供給によるマニホールド100内のインクの圧力変化は遅延する。したがって、インクの噴射を開始直後と、インクの噴射がある程度経過した後とにおいて、マニホールド100内のインクの圧力変動がコンプライアンス領域49によって吸収されずに、インクの噴射特性、特にインク滴の重量にばらつきが生じてしまう。
ここで、待機状態からインクの噴射を開始した際のマニホールド100内の圧力変動、すなわち、インク滴の重量と時間との関係の一例を図10のグラフに示す。なお、図10において、片持ち梁を設けた実施例を実線、片持ち梁を設けていない比較例を破線で示している。
図10に示すように、片持ち梁150を設けていない比較例の場合、インクの噴射開始直後のT1において、マニホールド100内のインクが消費されるもののコンプライアンス領域49が圧力変動を吸収できないことから、マニホールド100内が大きく負圧となる。これにより、T1では、噴射されるインク滴の重量が小さくなり印刷濃度が薄くなる。そして、その後のT2では、上流側からマニホールド100内にインクが供給される反動によって一時的にマニホールド100内の圧力は正圧となる。これにより、T2では、インク滴の重量が大きくなり印刷濃度が濃くなる。その後、T3においてコンプライアンス領域49がマニホールド100内のインクの圧力変動を吸収して、マニホールド100内の圧力が安定し、インク滴の重量が中間すなわち、印刷濃度が中間となる。
これに対して、片持ち梁150を設けた実施例の場合、マニホールド100内の圧力変動をコンプライアンス領域49が吸収することができるため、T1、T2、T3においてマニホールド100内のインク圧力の差を低減して、インク滴の重量の差を比較例に比べて小さくすることができる。したがって、片持ち梁150を設けることによって、噴射されるインク滴の重量のばらつきを抑制して、印刷品質を向上することができる。
ちなみに、可撓部材46として変形し難い材料、例えば、可撓部材46の厚さを厚くすることや、厚さを変更することなく可撓部材46を変形し難い材料で形成することも考えられるものの、可撓部材46が撓み難くなることで、コンプライアンス能力が低下してしまうと共に、マニホールド100内のインクの圧力変動に対するコンプライアンス領域49の撓み変形の反応性が低下し、インク滴の噴射特性にばらつきが生じてしまう虞があるため好ましくない。本実施形態では、片持ち梁150を設けることで、撓み易い可撓部材46を用いて、コンプライアンス領域49の反応性を低下させることなく、インク滴の噴射特性のばらつきを抑制することができる。
また、本実施形態では、第2の方向Yの両側から突出した片持ち梁150は、先端同士が所定の間隔を空けて第2の方向Yで相対向しているため、片持ち梁150を設けても、可撓部材46のコンプライアンス領域49の変形を阻害するのをできるだけ抑制することができる。すなわち、第2の方向Yの両側から突出した片持ち梁150の先端同士を連続させて、片持ち梁150ではなく、両持ち梁(両端固定梁)を設けた場合、両持ち梁によってコンプライアンス領域49の変形が著しく阻害され、コンプライアンス領域49による圧力変動の吸収が充分に行われなくなってしまう虞がある。
また、片持ち梁150を設けることによって、図11に示すように、可撓部材46のコンプライアンス領域49が、カバーヘッド130側に移動した際に、カバーヘッド130側への移動が片持ち梁150によって規制される。したがって、可撓部材46のコンプライアンス領域49がカバーヘッド130に当接することによる貼り付きを抑制することができる。ちなみに、片持ち梁150を設けていない場合、図12に示すように、コンプライアンス領域49がカバーヘッド130に接触し、可撓部材46に設けられた接着層46aが高温・多湿の環境下で接着性が復活することで可撓部材46のコンプライアンス領域49がカバーヘッド130に貼り付いてしまう。また、コンプライアンス領域49に接着層46aが設けられていない場合であっても結露等によって可撓部材46のコンプライアンス領域49がカバーヘッド130に貼り付いてしまう。可撓部材46のコンプライアンス領域49がカバーヘッド130に貼り付くと、コンプライアンス領域49がマニホールド100内のインクの圧力変動を吸収することができなくなってしまう。本実施形態では、片持ち梁150によって可撓部材46のカバーヘッド130への張り付きを抑制して、コンプライアンス領域49の貼り付きによるマニホールド100内のインクの圧力変動の吸収が行われないのを抑制し、インクの噴射特性のばらつきを抑制することができる。なお、コンプライアンス領域49がカバーヘッド130側に撓み変形した際に、片持ち梁150は、カバーヘッド130と接触しても、また、接触しなくてもよい。例えば、片持ち梁150がカバーヘッド130に接触する場合には、片持ち梁150のカバーヘッド130に相対向する領域及びカバーヘッド130の片持ち梁150に相対向する面の何れか一方又は両方を撥水処理することで、両者が当接する領域に結露等の水分が付着するのを抑制して水分による固着を抑制することができる。
なお、上述したように、マニホールド100内は、印刷待機時及び印刷時には負圧となっている。このため、コンプライアンス領域49のカバーヘッド130側への変形は、例えば、記録ヘッドIIにインクを充填していない状態で搬送した場合などに発生するものである。したがって、マニホールド100内にはインクが充填されておらず、コンプライアンス領域49が片持ち梁150の弾性力に抗してカバーヘッド130側に移動するのは困難である。つまり、片持ち梁150を設けることで、搬送時などにコンプライアンス領域49がカバーヘッド130に接触することによる固着を抑制することができる。
また、片持ち梁150は、吸引手段9による吸引動作時や、加圧手段である第2加圧手段200による加圧動作時などに、マニホールド100内のインクが正圧又は負圧になることで変形する。この吸引動作や加圧動作時におけるマニホールド100内の圧力変動は、印刷時の圧力変動に比べて大きく、コンプライアンス領域49は、印刷時に比べて大きく変形するものである。したがって、片持ち梁150は、吸引動作時及び加圧動作時において、印刷時に比べて大きく変形し、塑性変形してしまう。特に、本実施形態では、片持ち梁150は、先端側に第1切り欠き151を有し、先端側の厚さが薄くなっているため、片持ち梁150の塑性変形が発生し易い。そして、吸引動作時及び加圧動作時に片持ち梁150が塑性変形してしまうと、片持ち梁150は、可撓部材46に固定されていることから、塑性変形した片持ち梁150によってコンプライアンス領域49の変形が阻害されて、印刷時にコンプライアンス領域49がマニホールド100内のインクの圧力変動を吸収できなくなり、印刷品質が低下してしまう。このため、本実施形態では、詳しくは後述するが、制御装置400が吸引手段9及び第2加圧手段200を制御して、吸引動作時及び加圧動作時の何れか一方を行うことで塑性変形した片持ち梁150を、吸引動作及び加圧動作の他方を行うことで、片持ち梁150の歪みを低減させて、印刷品質を向上することができる。
ここで、本実施形態のヘッドユニット1に設けられた圧力調整手段の一例について図13を参照して説明する。なお、図13は、本実施形態の圧力調整手段を示す断面図である。
図13に示すように、圧力調整手段170は、液体供給手段2と記録ヘッドIIとを連通する流路の途中に設けられて当該流路を開閉するバルブである。具体的には、本実施形態の圧力調整手段170は、弁座171と弁体180とを具備する。
弁座171には、液体供給手段2に供給管2aを介して接続される収容室172と、収容室172に連通口173を介して連通すると共に、記録ヘッドIIに連通する第1圧力調整室174と、が設けられている。
収容室172は、弁座171の一方面に形成された凹部を蓋部材175で封止することで形成されている。また、弁座171には、収容室172と液体供給手段2とを連通する流入口176が設けられている。
第1圧力調整室174は、弁座171の収容室172とは反対側の側面に開口する凹形状を有する。また、弁座171の第1圧力調整室174が開口する面には、フィルム177が貼付されており、第1圧力調整室174の開口はフィルム177によって封止されている。また、第1圧力調整室174には、流出路178の一端が連通しており、流出路178の他端は、記録ヘッドII側と接続されている。
ここで、フィルム177は、液体に対して耐性を有する可撓性材料を用いることができる。また、フィルム177としては、水分透過率や液酸素や窒素等のガス透過率の低い材料を用いるのが好ましい。このようなフィルム177の材料としては、例えば、高密度ポリエチレンフィルムあるいはポリプロピレン(PP)フィルムに、塩化ビニリデン(サラン)をコーティングしたナイロンフィルムを接着ラミネートした構成が挙げられる。また、他の材料として、ポリエチレンテレフタレート(PET)などを使用してもよい。
このようなフィルム177の第1圧力調整室174の壁面の一部を構成する部分は、ダイヤフラム177aとなっている。また、ダイヤフラム177aの第1圧力調整室174側の面には、受圧板179が設けられている。受圧板179は、ダイヤフラム177aよりも小さな外形の円盤形状を有する。このような受圧板179は、連通口173を開閉する弁体180が直接フィルム177に当接するのを避けるために設けられたものであり、ダイヤフラム177aよりも剛性の高い材料、例えば、樹脂や金属等を用いることができる。
第1圧力調整室174の底面、すなわち、弁座171のダイヤフラム177aに相対向する壁面には、厚さ方向に貫通して第1圧力調整室174と収容室172とを連通する連通口173が設けられている。収容室172からのインクは、連通口173を介して第1圧力調整室174に流入される。
連通口173には、弁体180が挿通されている。弁体180は、連通口173に挿通された軸部181及び軸部181の収容室172内の端部に設けられたフランジ部182と、フランジ部182に固定されたシール部材183と、を具備する。
軸部181は、連通口173よりも若干小さな外径を有し、第1圧力調整室174内の一端部が受圧板179の中央部に当接する。また、軸部181の受圧板179に当接するのとは反対側の他端部は、収容室172内に配置されており、収容室172内の他端部には、フランジ部182が一体的に形成されている。
フランジ部182は、円形の板状部材からなる。また、フランジ部182には、ゴム又はエラストマー等の弾性材料で形成されたシール部材183が固定されている。シール部材183が弁座171に当接することで連通口173を閉弁する。
このような弁体180のフランジ部182と収容室172を画成する蓋部材175との間には、コイルバネ184が介装されており、コイルバネ184の付勢力によって弁体180は軸部181の軸方向を移動軸方向として第1圧力調整室174側に付勢されている。
ここで弁体180に働く力には、フィルム177の反力と、第1圧力調整室174のインク圧を受けて受圧板179とダイヤフラム177aとに働く力と、コイルバネ184の付勢力と、インクの供給圧を受けて弁体180に働く力と、がある。
フィルム177の反力とは、撓み変形したダイヤフラム177aが元の形状に復元しようとする力である。ダイヤフラム177aの変形量、すなわち、撓み量が大きいほど、フィルム177の反力は大きくなる。このようなフィルム177の反力は受圧板179を介して軸部181に伝達される。
第1圧力調整室174のインク圧を受けて受圧板179とダイヤフラム177aとに働く力とは、インク圧を受ける受圧板179とダイヤフラム177aとの受圧面積とインク圧との積で表される。第1圧力調整室174内の液体が流出路178から下流に流されて、第1圧力調整室174内のインクが減少すると、インク圧と大気圧との差圧が大きくなり、受圧板179とダイヤフラム177aとに働く力は大きくなる。この受圧板179とダイヤフラム177aとに働く力は、軸部181を介して弁体180に開弁方向の力として働く。
コイルバネ184の付勢力は、弁体180を閉弁方向に付勢する力である。このように、本実施形態では、弁体180は、コイルバネ184によって、第1圧力調整室174のインクの圧力によって受圧板179とダイヤフラム177aとに働く力とは反対向きの力を受圧板179に与えるので、受圧板179を弁体180が開弁位置に達するまで変位させるためには、コイルバネ184の付勢力に相当する分だけ、第1圧力調整室174内のインクをより低い圧力まで減圧させる必要がある(動作圧)。
そして、このような圧力調整手段170では、第1圧力調整室174内のインクが下流に流されて第1圧力調整室174内が大気圧よりも負圧に減圧されることで、図13(b)に示すように、ダイヤフラム177aが第1圧力調整室174の底面側に移動し、受圧板179が弁体180をコイルバネ184の付勢力に抗して押圧することで弁体180のシール部材183と弁座171との間に隙間が生じて、連通口173が開口、すなわち開弁する。また、この開弁によって収容室172から第1圧力調整室174内にインクが供給されることで、第1圧力調整室174内の減圧が解消されると、図13(a)に示すように、ダイヤフラム177aがコイルバネ184の付勢力によって元の位置に戻り、閉弁する。
このような圧力調整手段170をヘッドユニット1に設けることで、液体供給手段2の第1加圧手段161から圧送されたインクを所定の圧力で記録ヘッドIIに供給することができる。すなわち、圧力調整手段170によって、記録ヘッドIIがインクを消費した分だけインクを供給することができる。これにより、記録ヘッドII内のインクを負圧に維持して、ノズル21のインクのメニスカスを形成し、ノズル21からのインクが溢れ出すのを抑制することができる。
また、第2加圧手段200の一例について図14を参照して説明する。なお、図14は、本実施形態の第2加圧手段を示す断面図である。
図14に示すように、第2加圧手段200は、圧力調整手段170と、記録ヘッドIIのマニホールド100とに接続された第2圧力調整室201と、第2圧力調整室201に弾性材料で形成されたシート状の壁部202を介して区画された加圧室203と、を具備する。
第2圧力調整室201には、圧力調整手段170が開閉弁190を介して接続されており、圧力調整手段170から供給されたインクが一時的に貯留される。また、第2圧力調整室201は、記録ヘッドIIのマニホールド100に連通しており、第2圧力調整室201に一時的に貯留されたインクは記録ヘッドIIに供給される。
加圧室203には、外部と連通する大気開放路204が連通されており、加圧室203は大気開放路204を介して外部と連通、すなわち、大気開放されている。また、大気開放路204には、大気開放路204を開閉する大気開放用開閉弁205が設けられており、大気開放用開閉弁205によって加圧室203の大気開放が制御される。
また、加圧室203には、空気等の気体を加圧室203に圧送する圧送手段206が接続されている。大気開放用開閉弁205が大気開放路204を閉弁した状態で圧送手段206が加圧室203に気体を圧送することで、加圧室203内の気体が加圧される。そして、このように加圧室203を加圧することで、壁部202が第2圧力調整室201側に向かって変形し、壁部202によって第2圧力調整室201の容積が減少することによって、第2圧力調整室201内のインクが加圧される。また、圧送手段206による加圧室203の加圧を停止し、大気開放用開閉弁205を開弁することで、加圧室203内の気体が外部に排出されて、加圧室203内の気体の圧力が低下する。これにより、壁部202が弾性力によって元の姿勢に戻り、第2圧力調整室201の容積が元に戻り、第2圧力調整室201内のインクの加圧が解除される。
なお、第2圧力調整室201内のインクを加圧する際には、開閉弁190によって圧力調整手段170側にインクが流れないようにする。これは、例えば、圧力調整手段170側にインクが流れると、圧力調整手段170のフィルム177が撓み変形して圧力吸収してしまうからである。すなわち、第2加圧手段200によってインクを加圧する際に、圧力調整手段170側へのインクの流れ出しを抑制することで、記録ヘッドII側に第2加圧手段200によって加圧したインクを効率よく送ることができる。
また、インクジェット式記録装置Iの制御装置400の一例について図15を参照して説明する。なお、図15は、本実施形態のインクジェット式記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図15に示すように、制御装置400は、印刷制御手段401、印刷位置制御手段402、吸引制御手段403、加圧制御手段404、制御テーブル405、及び、計測手段406を具備する。
印刷制御手段401は、記録ヘッドIIの印刷動作を制御し、例えば、印刷信号の入力に伴って圧電アクチュエーター300に駆動パルスを印加して、記録ヘッドIIからインクを噴射させる。
印刷位置制御手段402は、駆動モーター6及び搬送ローラー8を制御して、記録シートSに対する記録ヘッドの第1の方向X及び第2の方向Yの相対位置を制御する。
吸引制御手段403は、印刷制御手段401の印刷後や印刷前、一定時間が経過した後、空の記録ヘッドIIにインクを充填する初期充填などの所望のタイミングで、吸引手段9を制御して、記録ヘッドIIのノズル21からインクと共に気泡を吸引させる。また、本実施形態の吸引制御手段403は、吸引手段9と共に開閉弁190を制御して、開閉弁を閉弁(チョーク)した状態で、吸引手段9によってノズル21からインク等を吸引させ、開閉弁190を開弁させることにより一気に流路内のインク等を吸引する、所謂、チョーククリーニングを行わせる。すなわち、本実施形態の吸引制御手段403は、吸引手段9による吸引力を段階的に異なる強度に調整することができる。ちなみに、チョーククリーニングでは、開閉弁190を閉弁している時間を短くすれば、比較的弱いチョーククリーニングを行わせることができ、開閉弁190を閉弁している時間を長くすれば、比較的強いチョーククリーニングを行わせることができる。すなわち、開閉弁190の時間を調整することで、チョーククリーニングにおける吸引力の調整を行わせることができる。本実施形態では、開閉弁190を開弁した状態で吸引手段9の吸引のみで吸引する吸引力が最も弱い弱吸引と、2段階のチョーククリーニング、すなわち、吸引力が中間の中吸引と、吸引力が最も高い強吸引との3段階で吸引を行うようにした。
なお、本実施形態では、吸引制御手段403による吸引力は3段階で異ならせるようにしたが、特にこれに限定されず、1段階だけであっても、2段階以上の複数であってもよい。また、吸引手段9のみによる吸引であっても、吸引装置9cの吸引力を調整することで、吸引力の異なるクリーニングを行わせることも可能である。このように、チョーククリーニングを行わせることで、高い圧力で吸引可能な吸引装置9cを設けることなく、比較的低い圧力で吸引可能な吸引装置9cによってインクを高い圧力で吸引することができる。すなわち、高い圧力で吸引可能な吸引装置は、高コストになると共に大型となるため、インクジェット式記録装置Iが大型化してしまうが、本実施形態では、低コストで比較的小型の吸引装置9cを用いることができるため、コストを低減してインクジェット式記録装置Iを小型化することができる。また、吸引制御手段403が吸引動作を行わせる際の圧力は、片持ち梁150が+Z方向に塑性変形する程度の圧力である。
加圧制御手段404は、開閉弁190及び第2加圧手段200を制御して、記録ヘッドII内の流路のインクを加圧する。本実施形態では、開閉弁190を閉弁して第2加圧手段200によって加圧することで、加圧したインクが圧力調整手段170側に逆流するのを抑制するようにした。このような加圧制御手段404による第2加圧手段200の圧力は、本実施形態では、加圧する圧力が弱い弱加圧と、加圧する圧力が高い強加圧との2段階で行わせるようにした。ちなみに、第2加圧手段200による圧力調整は、圧送手段206による加圧室203内の圧力を調整、すなわち、圧送手段206によって加圧室203内に流体を圧送する時間を制御することで行うことができる。
なお、加圧制御手段404が第2加圧手段200を制御して加圧させるタイミングは、詳しくは後述するが、少なくとも吸引制御手段403が吸引手段9に吸引動作を行わせることで塑性変形した片持ち梁150の歪みを低減する際である。ちなみに、第2加圧手段200による加圧によって、ノズル21からインクが流出するため、第2加圧手段200による加圧をノズル面20aのノズル21近傍のクリーニングに用いるようにしてもよい。もちろん、第2加圧手段200によるインクの加圧は、詳しくは後述する片持ち梁150の歪みを低減させる際のみに使用するようにしてもよい。このように第2加圧手段200による加圧を片持ち梁150の歪みを低減させる際のみに使用する場合、ノズル21からインクを流出させる必要はなく、ノズル21を封止する封止キャップ等を設け、封止キャップによってノズル21を封止した状態で、第2加圧手段200がインクを加圧するようにすれば、ノズル21からのインクの流出による流路内のインクの圧力低下を抑制することができると共にノズル21からのインクの流出によるインクの無駄な消費を抑制することができる。ちなみに、加圧動作によってノズル21からインクを流出させてノズル面20a及びノズル21のクリーニングを行う場合、加圧動作によるクリーニングの頻度は、負圧動作によるクリーニングの頻度よりも多くするのが好ましい。これは、吸引動作によるクリーニングの場合、吸引動作によって負圧になった状態から通常の内圧に戻した際に、ノズル21のメニスカスが流路内に引き込まれ、ノズル21内に気泡が入り込む虞があるからである。これに対して加圧動作によるクリーニングの場合、加圧動作によって正圧になった状態から通常の内圧に戻しても、ノズル21のメニスカスの引き込みは抑制されるため、ノズル21からの気泡の侵入が抑制されるからである。したがって、加圧動作によってノズル21のクリーニングを行う場合には、加圧動作によるクリーニングの頻度を負圧動作によるクリーニングの頻度に比べて多くすることで、ノズル21への気泡の侵入を抑制して、気泡の侵入によるインク滴の噴射不良を抑制することができる。
また、加圧制御手段404が加圧動作を行わせるタイミングは、吸引動作によって塑性変形した片持ち梁150の歪みを低減する際であるため、加圧制御手段404が行わせる加圧動作によって加圧される圧力は、加圧動作によって片持ち梁150が塑性変形する程度の圧力である。
制御テーブル405は、下記表1に示すように、吸引制御手段403が行わせた吸引動作、及び、加圧制御手段404が行わせた加圧動作の強度に基づく、片持ち梁150が塑性変形した変形方向及び変形量が規定されている。すなわち、制御テーブル405は、吸引手段9及び加圧手段である第2加圧手段200と、片持ち梁150の塑性変形方向及び塑性変形量とを関連づけた情報である。吸引制御手段403が吸引手段9及び開閉弁190を制御して、吸引動作を行わせると、図16に示すように、マニホールド100内のインクの圧力は負圧になり、コンプライアンス領域49が+Z方向に変形することで、片持ち梁150は、+Z方向に塑性変形する。このとき、図16(a)に示すように、吸引制御手段403が吸引動作を行わせた際の圧力(吸引力)が小さければ(弱吸引)、片持ち梁150が+Z方向に変形する量が小さくなり、片持ち梁150の+Z側への塑性変形の変形量は小さくなる。これに対して、弱吸引よりも大きな吸引力である中吸引を行うと、図16(b)に示すように、片持ち梁150は図16(a)に比べて+Z方向に大きく変形し、片持ち梁の+Z側への塑性変形の変形量は大きくなる。さらに、中吸引に比べて大きな吸引力である強吸引を行うと、図16(c)に示すように、片持ち梁150は図16(b)に比べて+Z方向に大きく変形し、片持ち梁150の+Z側への塑性変形の変形量は大きくなる。このため、下記表1には、吸引動作時の片持ち梁150の第3の方向Zに対する変形方向との変形量とを、正号(+)と数値(1〜3)とで表している。
同様に、加圧制御手段404が第2加圧手段200及び開閉弁190を制御して加圧動作を行わせると、図17に示すように、マニホールド100内のインクの圧力は正圧になり、コンプライアンス領域49が第3の方向Zの−Z方向に変形することで、片持ち梁150は、−Z方向に塑性変形する。このとき、図17(a)に示すように、加圧制御手段404が加圧動作を行わせた際の圧力が小さければ(弱加圧)、片持ち梁150が−Z方向に変形する量が小さくなり、片持ち梁150の−Z側への塑性変形の変形量は小さくなる。これに対して、弱加圧よりも大きな圧力である強加圧を行うと、図17(b)に示すように、片持ち梁150は図17(a)に比べて−Z方向に大きく変形し、片持ち梁150の−Z側への塑性変形の変形量は大きくなる。このため、下記表1には、加圧動作時の片持ち梁150の第3の方向Zに対する変形方向と変形量とを、負号(−)と数値(1〜3)とで表している。つまり、制御テーブル405は、下記表1に示すように、吸引及び加圧の圧力の大小に基づいて、片持ち梁150が塑性変形した変形方向と変形量とを、正負(±)と数値(1〜3)とで表している。なお、吸引動作及び加圧動作を行った際に片持ち梁150が塑性変形した変形量は、吸引動作及び加圧動作の圧力と、片持ち梁150の材料及び形状と、コンプライアンス領域49の材料及び形状等によって決定される。このため、吸引動作及び加圧動作の圧力に基づく、片持ち梁150の塑性変形量を実際に測定又はシミュレーションにより算出して制御テーブル405を形成すればよい。また、本実施形態では、吸引動作及び加圧動作を行った際の片持ち梁150の塑性変形量を1〜3の整数で簡易的に表しているが、片持ち梁150の初期状態の位置を0として、実際に塑性変形した際の先端の位置を数値(mm)等で表すようにしてもよい。
計測手段406は、吸引制御手段403が行わせた吸引動作の回数と、加圧制御手段404が行わせた加圧動作の回数と、を各強度と共に計測するカウンターである。すなわち、計測手段406は、吸引制御手段403が行わせた弱吸引、中吸引及び強吸引の各回数と、加圧制御手段404が行わせた弱加圧及び強加圧の各回数とをカウントする。
そして、制御装置400は、計測手段406が計測した吸引動作及び加圧動作の強度及び回数のカウントに基づいて、制御テーブル405から片持ち梁150の塑性変形の変形方向及び変形量を積算する。このとき制御装置400は、片持ち梁150の一方向への塑性変形した変形量の積算値が閾値を超えたら、片持ち梁150に反対方向に変形させて塑性変形させて、片持ち梁150の塑性変形による歪みを低減する。具体的には、例えば、強吸引(+3)を行った際の片持ち梁150の塑性変形を低減したい場合、積算値の閾値を+3に設定する。つまり、制御装置400は、塑性変形の積算値が+3を超えたら(積算値≧+3)、加圧制御手段404が第2加圧手段200及び開閉弁190を制御して記録ヘッドII内のインクを加圧させることで、吸引によって塑性変形した片持ち梁150を反対側に塑性変形させて、片持ち梁150の歪みを低減する。具体的には、制御装置400は、吸引制御手段403によって強吸引(+3)を1回行った場合に、加圧制御手段404によって強加圧(−3)を行わせる。これにより、強吸引(+3)による片持ち梁150の塑性変形は、強加圧(−3)によって低減される。なお、本実施形態では、強吸引(+3)と強加圧(−3)とにおいて片持ち梁150の塑性変形する変形量が同じであるため、強吸引(+3)を行った後に強加圧(−3)を行うことで、片持ち梁150を歪みの殆どない初期状態、すなわち、片持ち梁150の支点側と先端側とが第3の方向Zに同じ位置に戻すことができる。また、強吸引(+3)を行った後に片持ち梁150の塑性変形を低減する加圧は、弱加圧(−1)であってもよい。つまり、片持ち梁150の塑性変形は、片持ち梁150を歪みのない初期状態に戻すものに限定されず、吸引による塑性変形による歪みを低減することができればよい。すなわち、強吸引(+3)の後に、弱加圧(−1)を行うことで、塑性変形の積算値は+2となり、片持ち梁150は閾値+3を超えない塑性変形した状態(+2)に低減することができる。
また、+Z方向の積算値の閾値が+3の場合、弱吸引による片持ち梁の塑性変形量は+1であるため、弱吸引を3回繰り返すことで積算値が+3になり、閾値+3を超える(積算値≧+3)。このため、加圧を行わせて片持ち梁150を−Z方向に塑性変形させて、歪みを低減する。同様に、中吸引による片持ち梁の塑性変形量は+2であるため、弱吸引(+1)と中吸引(+2)とを行って積算値が+3になった際や、中吸引(+2)を2回繰り返すことで積算値が+4になった際などに加圧を行って片持ち梁150を−Z方向に塑性変形させて歪みを低減する。なお、片持ち梁150の塑性変形の積算値が+4になった際の加圧は、強加圧(−3)を1回及び弱加圧(−1)を1回行えば、積算値が0、すなわち、片持ち梁150が初期状態に戻るが、特にこれに限定されず、例えば、強加圧(−3)のみでも、弱加圧(−1)のみでも良い。また、強加圧(−3)を2回繰り返して、積算値が−2となってもよい。
同様に、例えば、強加圧(−3)を行った際の片持ち梁150の塑性変形を低減したい場合、塑性変形の積算値の閾値を−3に設定する。つまり、積算値が−3を超えたら(積算値≦−3)、吸引制御手段403が吸引手段9及び開閉弁190を制御して記録ヘッドII内のインクを吸引して負圧とすることで、加圧により塑性変形した片持ち梁150を反対側に塑性変形させて、片持ち梁150の歪みを低減する。具体的には、制御装置400は、強加圧(−3)を1回行った場合に、吸引制御手段403によって強吸引(+3)を行わせる。これにより、強加圧(−3)による片持ち梁150の塑性変形は、強吸引(+3)によって低減される。なお、強吸引(+3)と強加圧(−3)とにおいて片持ち梁150の塑性変形する変形量が同じであるため、強加圧(−3)を行った後に強吸引(+3)を行うことで、片持ち梁150を歪みの殆どない初期状態に戻すことができる。また、強加圧(−3)を行った後に片持ち梁150の塑性変形を低減する吸引は、弱吸引(+1)であってもよい。つまり、片持ち梁150の塑性変形は、片持ち梁150を歪みのない初期状態に戻すものに限定されず、加圧による塑性変形による歪みを低減することができればよい。すなわち、強加圧(−3)の後に、弱吸引(+1)を行うことで、塑性変形の積算値は−2となり、片持ち梁150は閾値−3を超えない塑性変形した状態(−2)に低減することができる。
また、−Z方向の積算値の閾値が−3の場合、弱加圧による片持ち梁の塑性変形量は−1であるため、弱加圧を3回繰り返すことで積算値が−3になり、閾値−3を超える(積算値≦−3)。このため、吸引を行わせて片持ち梁150の加圧による塑性変形を反対側に塑性変形させて歪みを低減する。
このように、制御装置400は、計測手段406が取得した吸引動作及び加圧動作の強度及び回数と、予め設定した制御テーブル405とに基づいて、片持ち梁150の塑性変形した変形方向及び変形量を積算し、片持ち梁150の塑性変形した変形量の積算値が閾値を超えたか否かを判別する。制御装置400は、片持ち梁150の変形量の積算値が閾値を超えたと判断した場合には、吸引動作又は加圧動作を行わせて、片持ち梁150を塑性変形した方向とは反対方向に塑性変形させて片持ち梁150の歪みを低減する。これにより、塑性変形した片持ち梁150によってコンプライアンス領域49の変形が阻害されるのを抑制して、印刷時にコンプライアンス領域49がマニホールド100内のインクの圧力変動を確実に吸収して、印刷品質を向上することができる。
なお、本実施形態では、片持ち梁150の塑性変形による変形量が閾値を超えた場合に、片持ち梁150の塑性変形による歪みを低減する処理を行うようにしたが、特にこれに限定されない。例えば、制御装置400は、吸引制御手段403による吸引動作が行われたら、直ちに加圧制御手段404による加圧動作を行うようにしてもよい。つまり、制御装置400は、外部から受け付けたデータに基づいて印刷制御手段401及び印刷位置制御手段402を制御して印刷を行わせる際に、吸引制御手段403による吸引動作と、データに基づく印刷との間に、加圧制御手段404による加圧動作を行わせるようにすればよい。これにより、吸引動作によって片持ち梁150が塑性変形したとしても、加圧動作によって片持ち梁150の塑性変形による歪みを低減することができるため、データに基づく印刷結果に悪影響が生じるのを抑制することができる。同様に、加圧制御手段404による加圧が行われたら、直ちに吸引制御手段403による吸引動作を行わせるようにしてもよい。すなわち、液体噴射方法として、制御装置400は、外部から受け付けたデータに基づいて印刷制御手段401及び印刷位置制御手段402を制御して印刷を行わせる際に、吸引制御手段403による吸引動作又は加圧制御手段404による加圧動作の何れか一方と、データに基づく印刷との間に、吸引動作又は加圧動作の他方を行わせるようにすればよい。
(他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の基本的な構成は上述したものに限定されるものではない。
上述した実施形態1では、吸引制御手段403による吸引動作時の吸引圧力(負圧)と、加圧制御手段404による加圧動作時の加圧圧力(正圧)との絶対値が同じ圧力となるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、加圧動作における加圧は、吸引動作における負圧よりも弱くしてもよい。すなわち、通常時の内圧に対して、加圧動作における加圧圧力の差分(絶対値)は、吸引動作における吸引圧力の差分(絶対値)よりも低くしてもよい。ここで、上述した実施形態1の記録ヘッドIIでは、可撓部材46の枠部材47とは反対側に積層され、流路を構成する流路部材として連通板15、流路形成基板10等が設けられている。このため、加圧動作時の圧力(正圧)が高いと、流路部材である連通板15と可撓部材46とが剥離する方向に高い応力が印加されてしまう。また、連通板15と流路形成基板10とが積層されているため、加圧動作時の圧力(正圧)が高いと、連通板15、流路形成基板10等の積層された部材が剥離する方向に高い応力が印加されてしまう。加圧動作における加圧圧力を弱くすることで、連通板15と可撓部材46とが剥離する方向や、積層された部材が互いに剥離する方向に印加される応力を低減することができ、部材の剥離による破壊を抑制して信頼性を向上することができる。なお、加圧動作における加圧圧力を吸引動作における吸引圧力よりも弱くすることで、上述のように加圧動作によるノズル21のクリーニングの頻度を、吸引動作によるクリーニングの頻度よりも多くした場合には、インクの無駄な消費も抑制することができる。なお、加圧動作による加圧が、負圧動作による負圧よりも弱いとは、加圧動作による強加圧が、吸引動作における弱吸引よりも弱いものだけではなく、強加圧が、強吸引よりも弱く、中吸引よりも強いものも含むものである。すなわち、加圧動作による加圧及び吸引動作による負圧の強度が複数存在する場合には、最も高い加圧(通常時の内圧との差圧が高い)が、最も高い負圧(通常時の内圧との差圧が高い)よりも低ければよい。
また、上述した実施形態1では、強吸引による片持ち梁150の変形量+3と、積算した際の+Z方向の閾値+3とを同じ値としたが、特にこれに限定されず、1回の強吸引だけでは、片持ち梁150の塑性変形が印刷に悪影響を与えない場合には、閾値を強吸引による変形量よりも大きくしてもよい。また、−Z方向の閾値についても同様である。
また、上述した実施形態1では、片持ち梁150の+Z方向の塑性変形における積算値の閾値(+3)と、−Z方向の塑性変形における積算値の閾値(−3)とを同じ値としたが、特にこれに限定されない。例えば、+Z方向は、印刷時にコンプライアンス領域49が変形する方向であるため、片持ち梁150の+Z方向の塑性変形を低減する閾値(絶対値)を−Z方向の塑性変形を低減する閾値(絶対値)よりも低くしてもよい。ちなみに、−Z方向の片持ち梁150の塑性変形は、蓋部材であるカバーヘッド130によって規制されると共に、片持ち梁150が介在することでコンプライアンス領域49がカバーヘッド130に貼り付くのは抑制されるため、−Z方向の塑性変形を低減する閾値は比較的高くても問題ない。また、蓋部材が設けられていない場合であっても、片持ち梁150が−Z方向に大きく塑性変形していても、コンプライアンス領域49が印刷時に+Z方向に変形できれば印刷には影響しないため、−Z方向の塑性変形を低減する閾値は比較的高くてもよく、−Z方向の塑性変形を低減する閾値を高くすることで、吸引動作の頻度を低減して、インクの無駄な消費を抑制することができる。
さらに、上述した実施形態1では、コンプライアンス基板45をノズルプレート20が設けられた面側に設けるようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、コンプライアンス基板45がケース部材40側やノズル面20aと交差する側面等に設けられていてもよい。すなわち、蓋部材とは、コンプライアンス基板45のコンプライアンス領域49との間にコンプライアンス空間131を画成するものであればよいため、上述したカバーヘッド130に限定されるものではなく、その他の部材であってもよい。
また、上述した実施形態1では、記録ヘッドIIには、蓋部材であるカバーヘッド130を設けるようにしたが、特にこれに限定されず、蓋部材を設けないようにしてもよい。この場合、加圧によって片持ち梁150がカバーヘッド130側、すなわち、第3の方向Zの+Z方向に変形したとしても、コンプライアンス領域49がカバーヘッド130に貼り付くことがないため、加圧による片持ち梁の塑性変形時に吸引を行わせる積算量の閾値を大きくするか、又は、加圧時の片持ち梁150の塑性変形による歪みを戻す吸引を行わないようにしてもよい。
さらに、上述した実施形態1では、第2加圧手段200によって記録ヘッドII内のインクを加圧するようにしたが、特にこれに限定されず、例えば、圧力調整手段170の平弁を強制的に解除して開弁する開弁手段を設け、第1加圧手段161によって加圧されたインクを、圧力調整手段170を通過させて記録ヘッドIIに供給するようにしてもよい。すなわち、ヘッドユニット1には、第2加圧手段200が設けられていなくてもよい。もちろん、第1加圧手段161と第2加圧手段200との両方によって記録ヘッドIIのインクを加圧するようにしてもよい。
また、上述した実施形態1では、圧力発生室12に圧力変化を生じさせる圧力発生手段として、薄膜型の圧電アクチュエーター300を用いて説明したが、特にこれに限定されず、例えば、グリーンシートを貼付する等の方法により形成される厚膜型の圧電アクチュエーターや、圧電材料と電極形成材料とを交互に積層させて軸方向に伸縮させる縦振動型の圧電アクチュエーターなどを使用することができる。また、圧力発生手段として、圧力発生室内に発熱素子を配置して、発熱素子の発熱で発生するバブルによってノズルから液滴を吐出するものや、振動板と電極との間に静電気を発生させて、静電気力によって振動板を変形させてノズルから液滴を吐出させるいわゆる静電式アクチュエーターなどを使用することができる。
なお、上述したインクジェット式記録装置Iでは、インクジェット式記録ヘッドII(ヘッドユニット1)がキャリッジ3に搭載されて主走査方向に移動するものを例示したが、特にこれに限定されず、例えば、インクジェット式記録ヘッドIIが固定されて、紙等の記録シートSを副走査方向に移動させるだけで印刷を行う、所謂ライン式記録装置にも本発明を適用することができる。
さらに、本発明は、広く液体噴射ヘッド全般を対象としたものであり、例えば、プリンター等の画像記録装置に用いられる各種のインクジェット式記録ヘッド等の記録ヘッド、液晶ディスプレイ等のカラーフィルターの製造に用いられる色材噴射ヘッド、有機ELディスプレイ、FED(電界放出ディスプレイ)等の電極形成に用いられる電極材料噴射ヘッド、バイオchip製造に用いられる生体有機物噴射ヘッド等にも適用することができる。