JP2013100885A - ラジアルフォイル軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】トップフォイルに生じる歪みを充分に少なくし、軸受の負荷能力や動特性について設計通りの良好な性能が得られるようにした、ラジアルフォイル軸受を提供する。
【解決手段】回転軸1を支持するラジアルフォイル軸受3である。トップフォイル10と、バックフォイル11と、これらを収容する軸受ハウジング12とを備える。軸受ハウジング12の内周面の両側端部には、それぞれ、係合凸部15が設けられている。バックフォイル11の両側周縁部には、それぞれ、係合凸部15に係合する係合切欠16が形成されている。
【選択図】図2

Description

本発明は、ラジアルフォイル軸受に関する。
従来、高速回転体用の軸受として、回転軸に外挿されて用いられるラジアル軸受が知られている。このようなラジアル軸受としては、軸受面を形成する薄板状のトップフォイルと、このトップフォイルを弾性的に支持するバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルを収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備えたラジアルフォイル軸受がよく知られている。ラジアルフォイル軸受のバックフォイルとしては、薄板を波板状に成形したバンプフォイルが主として用いられている。
このようなラジアルフォイル軸受にあっては、通常、トップフォイルやバックフォイルが軸受ハウジングから脱落するのを防止するため、その一端部(止端部)がスポット溶接によって軸受ハウジングに直接、あるいはスペーサを介して間接的に固定されている。
また、溶接に代えて機械的に固定を行うべく、トップフォイルやバックフォイル(バンプフォイル)の端部を曲げ加工によって折り曲げ、この折り曲げ部を軸受ハウジングに形成した係合溝に係合させた構造のものも知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特開2011−033176号公報 特開2011−017385号公報 特開2002−061645号公報
しかし、軸受ハウジングへのバックフォイル(バンプフォイル)の固定を溶接で行うと、入熱によってバックフォイルや軸受ハウジングが変形し、この影響を受けてトップフォイルに歪みが生じてしまう。また、前記特許文献1〜3のものでも、トップフォイルやバックフォイルを曲げ加工しているため、トップフォイルに歪みが生じてしまう。すなわち、トップフォイル及びバックフォイルの曲げ加工によってそれぞれに歪みが生じるが、バックフォイルはトップフォイルを支持しているため、バックフォイルの歪みがトップフォイルに影響し、トップフォイルの歪みがより大きくなってしまう。
ところが、回転軸の回転によって該回転軸とトップフォイルとの間に形成されるフォイル軸受の流体潤滑膜は、10μm前後と非常に薄いため、トップフォイルに少しでも歪みが生じると、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)に影響が及び、設計通りの性能が得られなくなる。
また、ラジアルフォイル軸受の軸受性能を向上させるためには、バックフォイルをその周方向に複数分割することが有効であると考えられる。しかし、その場合には、軸受ハウジングに対するバックフォイルの固定点が多くなるため、従来の溶接による固定では溶接箇所が増えることで工数が増え、製造コストが増大してしまう。また、溶接箇所が増えると、全箇所が良好に溶接できなければ製品として出荷できないため、品質維持が難しくなり、良品率の低下によるコストアップも懸念される。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、トップフォイルに生じる歪みを充分に少なくし、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)について設計通りの良好な性能が得られるようにするとともに、コストアップを抑制した、ラジアルフォイル軸受を提供することを目的とする。
本発明のラジアルフォイル軸受は、回転軸に外挿されて該回転軸を支持するラジアルフォイル軸受であって、前記回転軸に対向して配置される円筒状のトップフォイルと、前記トップフォイルの径方向外側に配置されるバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルを内挿した状態に収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備え、前記軸受ハウジングの内周面の両側端部には、それぞれ、係合凸部が設けられ、前記バックフォイルの両側周縁部には、それぞれ、前記係合凸部に係合する係合切欠が形成されていることを特徴としている。
このラジアルフォイル軸受にあっては、軸受ハウジングの内周面の両側端部にそれぞれ設けた係合凸部に、バックフォイルの両側周縁部にそれぞれ形成した係合切欠を係合させることにより、バックフォイルを軸受ハウジングに固定するので、バックフォイルに対してスポット溶接や曲げ加工を行うことなく、バックフォイルを軸受ハウジング内に収容・固定することができる。したがって、バックフォイルのスポット溶接や、バックフォイルの歪みの影響によりトップフォイルに歪みが生じるのが防止され、トップフォイルの歪みが充分に少なくなる。また、バックフォイルの溶接を不要にしたため、溶接不良による組立て不良や組立てのバラツキを無くすことができる。
また、前記ラジアルフォイル軸受において、前記軸受ハウジングの両側面には、それぞれ、該軸受ハウジングの内周縁から外周縁に向かって延びる係合凹部が互いに対向して形成され、前記軸受ハウジングの内周面には、対向する前記係合凹部間に、該係合凹部に連通して該係合凹部より軸受ハウジングの外周縁側に向かう深さが浅い係合溝が形成され、前記係合凹部および前記係合溝には、前記係合凹部に係合する一対の係合アームと、前記係合溝に係合し、かつ、前記一対の係合アーム間を連結する連結部と、を有する係止部材が係止し、前記一対の係合アームの、前記係合凹部に係合する側と反対の側が、前記軸受ハウジングの内周面より突出して設けられることにより、該係合アームによって前記係合凸部が形成されていることが好ましい。
このようにすれば、比較的簡易な加工と組み立てで軸受ハウジングに係合凸部を形成することができる。
また、前記ラジアルフォイル軸受において、前記バックフォイルの係合切欠は、該バックフォイルの周方向中央部に形成されていることが好ましい。
バックフォイルは、トップフォイルを弾性的に支持するため、トップフォイルから荷重を受けた際には、その周方向に変形することでトップフォイルの撓みを許容し、これを支持する。しかし、バックフォイルは周方向に変形する際、軸受ハウジングとの間の摩擦の影響を受けるため、自由端側では変形し易いものの、固定端側では変形し難くなっている。そのため、自由端側と固定端側とでは支持剛性に差が生じてしまい、軸受全体として均一な支持剛性が得られにくくなってしまう。
そこで、バックフォイルの係合切欠をバックフォイルの周方向中央部に形成し、係合凸部による固定をバックフォイルの周方向中央部で行っているので、バックフォイルの一端部を係合凸部で固定した場合に比べ、固定端(係合凸部による固定部)と自由端(バックフォイルの端部)との間の距離がほぼ半分になり、自由端側と固定端側との間の支持剛性の差が充分に小さくなる。
また、前記ラジアルフォイル軸受において、前記バックフォイルは、前記トップフォイルの周方向に沿って配置された複数のバックフォイル片を有して構成され、前記バックフォイル片には、それぞれ前記係合切欠が形成されているとともに、該係合切欠には、前記係合凸部が係合していることが好ましい。
このようにすれば、バックフォイル片における固定端と自由端との間の距離が短くなるため、前述したように自由端側と固定端側との間の支持剛性の差が小さくなり、したがってバックフォイル全体での支持剛性のバラツキが少なくなる。
また、前記ラジアルフォイル軸受において、前記バックフォイル片の係合切欠は、該バックフォイル片の周方向中央部に形成されていることが好ましい。
このようにすれば、各バックフォイル片の、自由端側と固定端側との間の支持剛性の差がさらに小さくなり、したがってバックフォイル全体での支持剛性のバラツキがより少なくなる。
また、前記ラジアルフォイル軸受において、前記バックフォイルは、前記軸受ハウジングの周方向に沿って、該軸受ハウジングと接する谷部と、前記トップフォイルに接する山部とを交互に形成した波板状のものであり、前記バックフォイル又は前記バックフォイル片の係合切欠は、前記谷部に形成されていることが好ましい。
このようにすれば、バックフォイルはその山部でトップフォイルに接するため、谷部に形成された係合切欠に係合する係合凸部は、トップフォイルに干渉しないように配置可能となる。
本発明のラジアルフォイル軸受によれば、バックフォイルに歪みが生じるのを防止し、トップフォイルの歪みが充分に少なくなるようにしたので、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)について、設計通りの良好な性能を得ることができる。
また、溶接を不要にして溶接不良による組立て不良や組立てのバラツキを無くしたので、良品率の向上によるコストダウンを図ることができる。
本発明に係るラジアルフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す模式図である。 本発明に係るラジアルフォイル軸受の第1実施形態の概略構成を示す図であり、(a)はラジアルフォイル軸受の側面図、(b)は(a)の要部の分解斜視図、(c)は(a)の要部の斜視図である。 (a)は図2(a)の要部を平坦化して模式的に示す側面図、(b)は(a)のA−A線矢視図である。 本発明に係るラジアルフォイル軸受の第2実施形態の概略構成を示す図であり、(a)はラジアルフォイル軸受の側面図、(b)は(a)の要部の分解斜視図、(c)は(a)のB−B線矢視断面図である。 本発明の変形例を示す要部断面図である。
以下、図面を参照して本発明のラジアルフォイル軸受を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
図1は、本発明のラジアルフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図であり、図1中符号1は回転軸、2は回転軸の先端部に設けられたインペラ、3は本発明に係るラジアルフォイル軸受である。なお、図1では省略してラジアルフォイル軸受を一つしか記載していないが、通常は回転軸1の軸方向にラジアルフォイル軸受が2つ設けられて、回転軸1の支持構造が構成される。したがって、本実施形態においてもラジアルフォイル軸受3が2つ設けられているものとする。
回転軸1には、インペラ2が形成された側にスラストカラー4が固定されており、このスラストカラー4の両側には、このスラストカラー4に対向してそれぞれの側にスラスト軸受5が配置されている。
また、インペラ2は静止側となるハウジング6内に配置されており、ハウジング6との間にチップクリアランス7を有している。
また、回転軸1には、スラストカラー4より中央側に、ラジアルフォイル軸受3が外挿されている。
図2(a)〜(c)は、このような構成のターボ機械に適用されるラジアルフォイル軸受の第1実施形態を示す図である。本実施形態のラジアルフォイル軸受3は、その概略構成を示す側面図である図2(a)に示すように、回転軸1に外挿されて該回転軸1を支持する円筒状のもので、回転軸1に対向して配置される円筒状のトップフォイル10と、該トップフォイル10の径方向外側に配置されるバックフォイル11と、該バックフォイル11の径方向外側に配置される軸受ハウジング12とを備えて構成されている。
軸受ハウジング12は、ラジアルフォイル軸受3の最外部を構成する金属製で円筒状のもので、内部にバックフォイル11およびトップフォイル10を収容したものである。この軸受ハウジング12には、その内周面に、該軸受ハウジング12の軸方向に沿って溝13が形成されている。
すなわち、軸受ハウジング12の内周面には、該軸受ハウジング12の軸方向の全長に渡って溝13が形成されている。この溝13は、その深さ方向が、後述するトップフォイル10の一方の側10aが延び出る方向に一致して形成されている。また、その深さは、2mm〜5mm程度とされる。
また、軸受ハウジング12の外周面側には、前記溝13に連通する孔14が一対形成されている。これら孔14は、後述するように溝13内に差し入れられたトップフォイル10の一方の側10aを、溝13内に固定するのに用いられる雄ネジの挿入用の孔であり、内周面に雌ネジ部が形成されている。
また、軸受ハウジング12の内周面には、図2(a)の要部の分解斜視図である図2(b)に示すように、その両側端部にそれぞれ、係合凸部15が互いに対向して形成配置されている。これら係合凸部15、15は、該係合凸部15、15が形成された軸受ハウジング12の内周面に直交する方向に突出した横断面矩形状で柱状(台状)のもので、高さが0.1〜0.3mm程度、好ましくは0.2mm〜0.25mm程度に形成されたものである。なお、このような係合凸部15、15については、旋盤加工によって軸受ハウジング12を円筒状に形成した後、例えば放電加工やワイヤカット放電加工等を組み合わせることにより、加工することができる。
係合凸部15は、本実施形態では図2(a)に示すように、軸受ハウジング12の側面をその周方向にほぼ3分割する位置にそれぞれ形成されている。したがって、軸受ハウジング12の周方向に3箇所形成され、かつ、内周面の両端部に形成されていることから、合計6箇所形成されている。そして、これら係合凸部15には、後述するバックフォイル11の係合切欠16がそれぞれに係合している。なお、本実施形態では、前記3箇所(実際には6箇所)の係合凸部15のうちの2箇所(実際には4箇所)の係合凸部15、15間に、前記溝13が配置されている。
バックフォイル11は、フォイル(薄板)で形成されてトップフォイル10を弾性的に支持するものである。このようなバックフォイル11としては、例えばバンプフォイルや、特開2006−57652号公報や特開2004−270904号公報などに記載されているスプリングフォイル、特開2009−299748号公報などに記載されているバックフォイルなどが用いられる。本実施形態では、バックフォイル11としてバンプフォイルを用いている。ただし、前記のスプリングフォイルやバックフォイルを、本発明のバックフォイルとして用いてもよいのはもちろんである。
バックフォイル(バンプフォイル)11は、図2(a)に示すように本実施形態では、トップフォイル10の周方向に沿って配置された3つ(複数)のバックフォイル片11aによって構成されている。これらバックフォイル片11aは、フォイル(薄板)が波板状に成形され、かつ、側面が全体として略円弧状になるよう成形されたもので、3つが全て同じ形状・寸法に形成されている。したがって、これらバックフォイル片11aは、軸受ハウジング12の内周面をほぼ3分割して配置されている。
また、これらバックフォイル片11aは、前記溝13を挟む位置ではある程度の隙間をあけて配置されているものの、それ以外の位置では、互いの端部が近接して配置されている。このような構成によって3つのバックフォイル片11aは、全体として略円筒形状に形成されて、軸受ハウジング12の内周面に沿って配置されている。
また、このように波板状に成形されたバックフォイル片11aは、図2(a)の要部を平坦化して模式的に示す図3(a)に示すように、軸受ハウジング12の周方向に沿って、該軸受ハウジング12と接する平坦な谷部11bと、トップフォイル10に接する湾曲した山部11cとを交互に形成している。これによってバックフォイル片11aは、特にトップフォイル10に接する山部11cにより、トップフォイル10を弾性的に支持している。また、ラジアルフォイル軸受3の軸方向に、山部11cや谷部11bによる流体の通路を形成している。
また、これらバックフォイル片11aには、図3(a)のA−A線矢視図である図3(b)に示すように、それぞれの周方向中央部(軸受ハウジング12の周方向に沿う方向の中央部)の両側周縁部に、係合切欠16が形成されている。該係合切欠16は、図2(b)に示すようにバックフォイル片11aの谷部11bに形成されたもので、山部11c、11c間に形成された平坦部からなる谷部11bが、その側周縁から内側に向かって矩形状に切り欠かれて形成されたものである。
該係合切欠16は、軸受ハウジング12の前記係合凸部15に対応する位置、すなわち係合凸部15と重なる位置に形成されており、その縦横の幅が、係合凸部15に係合するように該係合凸部15の縦横の幅とほぼ同じに形成されている。具体的には、軸受ハウジング12の周方向に沿う横幅が0.2mm〜0.4mm程度、軸方向に沿う縦幅が1mm〜2mm程度となっている。
なお、係合切欠16の形成については、バリが発生せず、ストレスを与えないため歪みも生じないように、フォイルをエッチング加工や放電加工で行うのが好ましい。すなわち、エッチング加工や放電加工でフォイルに係合切欠16を形成した後、山部11cや谷部11bを形成するためのプレス成型を行い、バックフォイル片11aを形成するのが好ましい。
このような構成のもとに、軸受ハウジング12の係合凸部15には、図2(c)に示すようにバックフォイル片11aの係合切欠16が係合している。
図2(a)に示すようにトップフォイル10は、3つのバックフォイル片11aからなるバックフォイル11の内面に沿って円筒状に巻かれたもので、一方の側10aの先端部が軸受ハウジング12に形成された前記溝13に係合するように配設されたものである。このトップフォイル10は、軸受周方向を長辺とし、軸受長方向を短辺とする矩形状の金属箔が長辺の長さ方向(軸受周方向)に円筒状に巻かれて、形成されたものである。
ただし、このトップフォイル10は、前記金属箔の両端が突き合わされるように巻かれることなく、一方の側10aが他方の側の外側に重なるように巻かれている。また、一方の側10aは、これ以外の部分で形成される円筒部の所定位置での接線方向に、延び出て形成されている。
また、前記の軸受ハウジング12における溝13は、その深さ方向が、トップフォイル10の一方の側10aの延び出る方向に一致するように形成されている。
したがって、トップフォイル10は、その一方の側10aの延び出た方向が溝13の深さ方向に一致するように配置されて、その一方の側10aの先端部が該溝13に係合させられている。これにより、トップフォイル10は、その一方の側10aが溝13に係合した状態では変形しないため、歪みが生じないようになっている。
また、本実施形態では、溝13に係合しているトップフォイル10の一方の側10aは、雄ネジ17によって溝13内に固定されている。すなわち、雄ネジ17が前記孔14に螺合し挿入されることにより、一方の側10aが溝13の内壁面に密着させられることで固定されている。なお、このように溝13の内壁面に密着させられることによる一方の側10aの変形は僅かであり、したがって、この変形によってトップフォイル10に歪みが生じることはほとんどない。
また、トップフォイル10には、一方の側10aと、これと反対の他方の側とに、これらの間の中央部に比べて薄厚な薄肉部18が形成されている。これら薄肉部18は、その外周面(バックフォイル11側の面)が前記中央部の外周面より凹んだ状態となるよう、薄厚化(薄肉化)されて形成されている。
薄肉部18を形成するには、例えばエッチング加工によってトップフォイル10の両端部を、十μmオーダーでコントロールして所望の厚さ(薄さ)に形成する。具体的には、軸受径φ35mmとした場合、トップフォイル10の厚さを100μmとすると、薄肉部18の厚さは80μm程度となるようにする。なお、このようなエッチング加工では、曲げ加工などに比べてトップフォイル10に生じる応力が極めて小さく、したがってトップフォイル10に歪みが生じることもほとんどない。
また、薄肉部18の周方向の長さは、例えば、溝13と、該溝13の両側に位置する、バックフォイル11の端部の山一つ分までに対応する長さとされる。
このようにトップフォイル10の両端部に薄肉部18を形成したことにより、これら両端部(薄肉部18)は弾性変形し易くなり、したがってこれら両端部は軸受ハウジング12の内周面を構成する曲面に倣って曲面となる。これにより、トップフォイル10は、その両端部においても回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)がほとんど発生しないようになる。
すなわち、従来のようにトップフォイルの一端部(止端部)をスポット溶接で軸受ハウジングに固定した場合、その両端付近(止端側と自由端側)が軸受ハウジングの内周面を構成する曲面になじみ難く、平面に近い状態になる。すると、平面に近い当該部位では回転軸を締め付ける力(局所的なプリロード)が発生し、その結果、始動トルクが高くなったり、運転中の発熱が設定以上に高くなるなどの不都合が起こる。これに対し、本実施形態のトップフォイル10では、その両端部に薄肉部18を形成したことにより、前記したように回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)がほとんど発生しないようになる。
また、トップフォイル10の両端部の外周面を、前記中央部の外周面より凹んだ状態となるように薄厚化して薄肉部18を形成しているので、その外周面側を支持するバックフォイル11との間において、その端部の山一つ分との間に隙間が形成される。これにより、該薄肉部18においては、回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)が生じるのが確実に防止される。
次に、このような構成からなるラジアルフォイル軸受3の作用について説明する。
回転軸1が停止した状態では、トップフォイル10はバックフォイル11(3つのバックフォイル片11a)によって回転軸1側に付勢されることで回転軸1に密着している。なお、本実施形態では、トップフォイル10の両端部が薄肉部18となっているので、これら薄肉部18では回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)がほとんど生じないようになっている。
そして、回転軸1を図2(a)中の矢印P方向に始動させると、最初は低速で回転を始め、その後徐々に加速して高速で回転する。すると、図2(a)中矢印Qで示すように、トップフォイル10の一方の側10aとバックフォイル片11aの一端との間から周囲流体が引き入れられ、トップフォイル10と回転軸1との間に流入する。これにより、トップフォイル10と回転軸1との間に流体潤滑膜が形成される。
この流体潤滑膜の膜圧は、トップフォイル10に作用し、トップフォイル10に接するバックフォイル片11aの個々の山部11cを押圧する。すると、バックフォイル片11aはトップフォイル10に押圧されることにより、その山部11cが押し広げられ、これによってバックフォイル片11aは軸受ハウジング12上をその周方向に動こうとする。すなわち、バックフォイル片11a(バックフォイル11)は、トップフォイル10を弾性的に支持するため、トップフォイル10から荷重を受けた際にはその周方向に変形することで、トップフォイル10の撓みを許容し、これを支持する。
しかし、図2(c)に示すようにバックフォイル片11aには、その側周縁部に設けられた係合切欠16に軸受ハウジング12の係合凸部15が係合しており、これによってバックフォイル片11aは、軸受ハウジング12の内周面上で周方向に回ることが防止されている。したがって、バックフォイル片11aの個々の山部11cは、係合凸部15が係合している係合切欠16を固定点(固定端)として周方向に変形する(動く)ものの、バックフォイル片11a自体はその中心が定位置からずれることはない。
また、バックフォイル片11aは周方向に変形する(動く)際、軸受ハウジング12やトップフォイル10との間の摩擦の影響を受けるため、その両端部、すなわち自由端側では変形し易い(動き易い)ものの、前記固定点(固定端)側では変形し難くなっている。そのため、自由端側と固定端側とでは、バックフォイル片11aによる支持剛性に差が生じる。
しかし、本実施形態では、係合切欠16をバックフォイル片11aの周方向中央部に形成し、したがって係合凸部15による固定点をバックフォイル片11aの周方向中央部としているので、固定端と自由端との間の距離が短くなっていることにより、前記の支持剛性の差が小さくなっている。さらに、本実施形態では、バックフォイル11を3つのバックフォイル片11aに分割しているため、バックフォイル11を単一のフォイルで形成した場合に比べ、固定端と自由端との間の距離が短くなっており、したがって自由端側と固定端側との間の支持剛性の差がより小さくなっている。
また、回転軸1が高速で回転している際、係合凸部15がバックフォイル片11aの軸方向への動きも拘束しているため、不測に衝撃等が作用した場合でも、バックフォイル片11aが軸受ハウジング12から脱落することはない。
また、流体潤滑膜が形成されるまでの過渡状態においては、回転軸1とトップフォイル10との間に固体摩擦が生じ、これが始動時の抵抗になる。しかし、前記したようにトップフォイル10の両端部でプリロードが生じなくなっていることや、周囲流体が流入する側のトップフォイル10が薄肉部18となっていて柔らかくなっており、トップフォイル10と回転軸1との間が開口し易くなっていることにより、回転軸1が始動すると早期に流体潤滑膜が形成され、回転軸1はトップフォイル10に対して非接触状態で回転するようになる。
このようなラジアルフォイル軸受3にあっては、軸受ハウジング12の内周面の両側端部にそれぞれ設けた係合凸部15に、バックフォイル片11aの両側周縁部にそれぞれ形成した係合切欠16を係合させることにより、バックフォイル片11aを軸受ハウジング12に固定しているので、バックフォイル片11aに対してスポット溶接や曲げ加工を行うことなく、バックフォイル片11aを軸受ハウジング12内に収容・固定することができる。したがって、バックフォイル11(バックフォイル片11a)のスポット溶接や、バックフォイル11の歪みの影響によってトップフォイル10に歪みが生じるのを防止し、トップフォイル10の歪みを充分に少なくすることができる。よって、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)について、設計通りの良好な性能を発揮させることができる。
また、バックフォイル11については、従来のスポット溶接や、歪みを発生させる曲げ加工を無くすことができるため、製作の難易度を低下させ、製造コストを低減化することができる。すなわち、溶接不良による組立て不良や組立てのバラツキを無くしたので、良品率の向上によるコストダウンを図ることができる。また、バックフォイル11に特別な曲げ加工が不要となるため、バックフォイル11を高精度にプレス成型することが可能になる。
また、バックフォイル11(バックフォイル片11a)の山部11cの高さは係合凸部15の高さより高くする必要があるが、係合凸部15の高さを調整することで、バックフォイル11(バックフォイル片11a)の山部11cの高さについてもその調整が可能となる。したがって、バックフォイル11について所望のバネ特性が得られやすくなる。
また、バックフォイル11の溶接を不要にしたことで、良品率や性能が溶接の良し悪しに影響されないようになるため、再現性が高くなって量産性に優れたものとなり、バックフォイル11の周方向での複数分割化にも対応し易くなる。
また、バックフォイル11を、トップフォイル10の周方向に沿って配置された3つ(複数)のバックフォイル片11aで構成し、これらバックフォイル片11aにそれぞれ係合切欠16を形成しているので、バックフォイル片11における固定端と自由端との間の距離を短くし、これによって自由端側と固定端側との間の支持剛性の差を小さくし、バックフォイル11全体での支持剛性のバラツキを少なくすることができる。したがって、バックフォイル11全体で均一な支持剛性と滑り特性が得られようになるため、大きな軸受負荷能力と、高い軸受剛性能力及び減衰能力を得ることができる。
また、バックフォイル片11aの係合切欠16を、該バックフォイル片11aの周方向中央部に形成しているので、バックフォイル片11aにおける固定端と自由端との間の距離をより短くし、これによって自由端側と固定端側との間の支持剛性の差をさらに小さくし、バックフォイル11全体での支持剛性のバラツキをより少なくすることができる。
次に、図1に示したターボ機械に適用されるラジアルフォイル軸受の第2実施形態を、図4(a)〜(c)を参照して説明する。本実施形態のラジアルフォイル軸受3が、図2(a)〜(c)、図3(a)、(b)に示した第1実施形態のラジアルフォイル軸受3と異なるところは、ラジアルフォイル軸受3の内周面に設ける係合凸部の構造にある。
本実施形態のラジアルフォイル軸受3では、その概略構成を示す側面図である図4(a)に示すように、係止部材30によって係合凸部が形成されている。すなわち、本実施形態では、軸受ハウジング12の両側面にそれぞれ、該軸受ハウジング12の外周縁から内周縁にまで延びる溝状の係合凹部31が互いに対向して形成されている。係合凹部31は、本実施形態では軸受ハウジング12の側面をその周方向にほぼ3分割する位置に、それぞれ形成されている。そして、これら係合凹部31には、前記係止部材30が係止している。なお、本実施形態では、前記3箇所(実際には6箇所)の係合凹部31のうちの2箇所(実際には4箇所)の係合凹部31、31間に、前記溝13が配置されている。
また、軸受ハウジング12の内周面には、図4(a)の要部の分解斜視図である図4(b)に示すように、対向する係合凹部31、31間に、該係合凹部31、31に連通する係合溝32が形成されている。係合溝32は、その深さが、係合凹部31の深さ、すなわち軸受ハウジング12の外周縁側に向かう深さ(本実施形態では軸受ハウジング12の厚さに等しくなっている)より浅くなっている。これにより、本実施形態では、係合凹部31と係合溝32との間に段差部(図示せず)が形成されている。
そして、これら係合凹部31、31および係合溝32には、係止部材30が係止している。係止部材30は、係合凹部31、31に係合する一対の係合アーム33と、これら係合アーム33、33間を連結する連結部34と、を有してH字状に形成されたものである。連結部34は、図4(a)のB−B線矢視断面図である図4(c)に示すように、前記係合溝32に係合して該係合溝32内に収容され、該係合溝32の外側に突出しないように形成されている。具体的には、係合溝32の深さが1mm〜2mm程度となっており、したがって連結部34の高さも1mm〜2mm程度となっている。
一対の係合アーム33は、連結部34に対して上下方向に延出して形成されたもので、これによって前記したように係止部材30をH字状に形成している。これら係合アーム33の上側に延出した部分、すなわち係合凹部31に係合する側と反対の側は、軸受ハウジング12の内周面より突出することにより、本発明における係合凸部(15)となっている。
したがって、係合アーム33の上側に延出した部分に、バックフォイル片11aの係合切欠16が係合し、その状態で軸受ハウジング12の内周面上に3つのバックフォイル片11aが配置されている。このようにバックフォイル片11aが軸受ハウジング12の内周面上に配置されることで、係止部材30は特にその連結部34がバックフォイル片11aに押さえられることにより、軸受ハウジング12から脱落することが防止されている。
また、係合アーム33の下側に延出した部分は、前述した係合凹部31と係合溝32との間の段差部に係止している。これにより、係止部材30は軸受ハウジング12に対し、その軸方向への移動が規制されている。
なお、係止部材30の係合アーム33や連結部34は、図4(b)に示したように四角柱状であっても、また、円柱状(丸棒状)であってもよく、その太さは0.3〜0.5mm程度となっている。このような係止部材30は、例えば厚さが0.5mm未満のステンレス等からなる金属箔をH字状にエッチング加工することで、形成することができる。
また、係合凹部31や係合溝32については、その幅寸法によっても異なるものの、ワイヤカット放電加工やエンドミルによる切削加工などで加工することができる。そして、係止部材30を軸受ハウジング12の内周面側から係合凹部31および係合溝32に差し入れ、係止させることにより、係合凸部15を容易に形成することができる。
本実施形態のラジアルフォイル軸受3にあっても、係止部材30によって形成した係合凸部15にバックフォイル片11aの係合切欠16を係合することにより、バックフォイル片11aを軸受ハウジング12に固定しているので、バックフォイル片11aに対してスポット溶接や曲げ加工を行うことなく、バックフォイル片11aを軸受ハウジング12内に収容・固定することができる。したがって、バックフォイル11(バックフォイル片11a)のスポット溶接や、バックフォイル11の歪みの影響によってトップフォイル10に歪みが生じるのを防止し、トップフォイル10の歪みを充分に少なくすることができる。よって、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰)について、設計通りの良好な性能を発揮させることができる。
また、係止部材30によって係合凸部15を形成しているので、比較的簡易な加工と組み立てで軸受ハウジング12に係合凸部15を形成することができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
例えば、前記実施形態ではバックフォイル11を3つのバックフォイル片11aによって構成したが、バックフォイル11については、1枚の金属箔を略円筒状に成形した単一のもので構成してもよい。また、複数のバックフォイル片11aで構成する場合には、2つ、または4つ以上のバックフォイル片11aでバックフォイル11を構成するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、バックフォイル片11aの周方向中央部に係合切欠16を形成し、該係合切欠16に係止凸部15を係止させることで、該係合切欠16の形成箇所をバックフォイル片11aの固定端(固定点)としたが、係合切欠16を従来のようにバックフォイル片11aの端部に形成してもよい。同様に、バックフォイル11を単一のもので構成した場合にも、係合切欠16を該バックフォイル11の端部に形成してもよい。
また、前記実施形態では、係合凸部15を軸受ハウジング12の内周面の最側端に、すなわち軸受ハウジング12の側面に面一になるようにして係合凸部15を形成したが、本発明はこれに限定されることなく、内周面の最側端よりやや内側であっても、本発明における側端部の範囲内とすることができる。
具体的には、図5に示すように、バックフォイル11(バックフォイル片11a)およびトップフォイル10の軸方向の長さL1を、軸受ハウジング12の軸方向の長さL2より短くした場合に、バックフォイル11の長さに対応させて、係合凸部15を軸受ハウジング12の内周面の最側端よりやや内側に形成してもよい。
すなわち、設計的に必要とされるバックフォイル11(バックフォイル片11a)およびトップフォイル10の軸方向の長さL1に対応させて、係合凸部15の外側面15aが軸受ハウジング12の側面より内側となるように、係合凸部15の位置を決定してもよい。なお、係合凸部15の形成位置については、軸受ハウジング12の内周面上において、軸方向で左右対称でなく、非対称となっていてもよい。
なお、図5に示したように係合凸部15を軸受ハウジング12の内周面の最側端よりやや内側に形成する場合にも、この係合凸部15を第2実施形態で示したような係止部材で形成してもよい。
また、第2実施形態においては、係合凹部31を軸受ハウジング12の内周縁から外周縁まで切り欠いて溝状に形成したが、軸受ハウジング12の内周縁から外周縁に向かって延びていれば、外周縁に到達することなく、その手前まで切り欠くことで、係合凹部を形成していてもよい。さらに、係合凹部の幅については、加工が難しい場合などには係合溝32の幅より広くなっていてもよく、その場合に、係止部材30の係合アーム33は係合凹部に大きなクリアランスを有して係合していてもよい。
さらに、係合凸部の形成については、第2実施形態に示したようにH字状の係止部材を用いることなく、単に棒状(柱状)の係合アームを、係合凹部31に係合・固定することで形成してもよい。その場合に、係合凹部31への係合アームの固定については、圧入(無理嵌め)や、ネジ止め、耐熱性の高い接着剤による接着などで行うことができる。
また、前記実施形態では、トップフォイル10についてもこれを溶接で固定することなく、その一方の側10aを軸受ハウジング12に形成した溝13に係合させることで、軸受ハウジング12内に収容・固定するようにしたが、トップフォイル10の固定については、溶接を含めて任意に行うことができる。
1…回転軸、3…ラジアルフォイル軸受、10…トップフォイル、11…バックフォイル、11a…バックフォイル片、11b…谷部、11c…山部、12…軸受ハウジング、15…係合凸部、16…係合切欠、30…係止部材、31…係合凹部、32…係合溝、33…係合アーム、34…連結部

Claims (6)

  1. 回転軸に外挿されて該回転軸を支持するラジアルフォイル軸受であって、
    前記回転軸に対向して配置される円筒状のトップフォイルと、前記トップフォイルの径方向外側に配置されるバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルを内挿した状態に収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備え、
    前記軸受ハウジングの内周面の両側端部には、それぞれ、係合凸部が設けられ、
    前記バックフォイルの両側周縁部には、それぞれ、前記係合凸部に係合する係合切欠が形成されていることを特徴とするラジアルフォイル軸受。
  2. 前記軸受ハウジングの両側面には、それぞれ、該軸受ハウジングの内周縁から外周縁に向かって延びる係合凹部が互いに対向して形成され、前記軸受ハウジングの内周面には、対向する前記係合凹部間に、該係合凹部に連通して該係合凹部より軸受ハウジングの外周縁側に向かう深さが浅い係合溝が形成され、前記係合凹部および前記係合溝には、前記係合凹部に係合する一対の係合アームと、前記係合溝に係合し、かつ、前記一対の係合アーム間を連結する連結部と、を有する係止部材が係止し、前記一対の係合アームの、前記係合凹部に係合する側と反対の側が、前記軸受ハウジングの内周面より突出して設けられることにより、該係合アームによって前記係合凸部が形成されていることを特徴とする請求項1記載のラジアルフォイル軸受。
  3. 前記バックフォイルの係合切欠は、該バックフォイルの周方向中央部に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のラジアルフォイル軸受。
  4. 前記バックフォイルは、前記トップフォイルの周方向に沿って配置された複数のバックフォイル片を有して構成され、
    前記バックフォイル片には、それぞれ前記係合切欠が形成されているとともに、該係合切欠には、前記係合凸部が係合していることを特徴とする請求項1又は2に記載のラジアルフォイル軸受。
  5. 前記バックフォイル片の係合切欠は、該バックフォイル片の周方向中央部に形成されていることを特徴とする請求項4記載のラジアルフォイル軸受。
  6. 前記バックフォイルは、前記軸受ハウジングの周方向に沿って、該軸受ハウジングと接する谷部と、前記トップフォイルに接する山部とを交互に形成した波板状のものであり、
    前記バックフォイル又は前記バックフォイル片の係合切欠は、前記谷部に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のラジアルフォイル軸受。
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