JP5664789B2 - ラジアルフォイル軸受 - Google Patents

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Description

本発明は、ラジアルフォイル軸受に関する。
本願は、2011年8月12日に日本に出願された特願2011−176757号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来、高速回転体用の軸受として、回転軸を取り囲むように装着されて用いられるラジアル軸受が知られている。このようなラジアル軸受としては、軸受面を形成する薄板状のトップフォイルと、このトップフォイルを弾性的に支持するバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルを収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備えたラジアルフォイル軸受がよく知られている。ラジアルフォイル軸受のバックフォイルとしては、薄板を波板状に成形し、山部と谷部とを交互に形成したバンプフォイルが主として用いられている。
このようなラジアルフォイル軸受にあっては、通常、トップフォイルやバックフォイルの軸受ハウジングからの脱落を防止するため、その一端部(止端部)がスポット溶接によって軸受ハウジングに直接、あるいはスペーサを介して間接的に固定されている。また、溶接に代えて機械的に固定を行うべく、トップフォイルやバックフォイル(バンプフォイル)の一端部を曲げ加工によって折り曲げ、この折り曲げ部を軸受ハウジングに形成した係合溝に係合させた構造も知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。このように一端部がスポット溶接や係合によって固定されることにより、この一端部が固定端(固定点)となり、他端部が自由端となる。
このようなラジアルフォイル軸受では、この軸受が支持する回転軸が回転すると、トップフォイルと回転軸との間に流体潤滑膜が形成される。このとき、回転軸に作用する荷重が流体潤滑膜を介して加えられることでトップフォイルが押し込まれ、トップフォイルからの荷重を受けたバンプフォイル(バックフォイル)における個々の山部の幅が広げられる。これにより、バンプフォイルの山部の高さが減少し、トップフォイルの撓みを許容する。すなわち、バンプフォイルの山部の高さが減少することで、トップフォイルの撓んだ部分を収容可能な領域が形成される。したがって、ラジアルフォイル軸受は、その軸受面の形状を可変とし、荷重に応じて適切な流体潤滑膜を形成する。
また、バンプフォイルは、前記したように荷重を受けて変形するとき、個々の山部の幅が広がる。その際、バンプフォイルと、トップフォイルや軸受ハウジングとの間で滑りが生じる。したがって、回転軸に振動(軸振動)が発生した際には、この滑りによる摩擦で振動エネルギーを散逸し、振動抑制効果が発揮される。
日本国特開2011−033176号公報 日本国特開2011−017385号公報
バンプフォイルが荷重を受けて軸受ハウジング側に押し込まれると、それぞれの山部は、前記固定端を始点として前記自由端側へ山部の幅を広げながらスライドする(変形する)。その際、固定端に近い山部は、この山部より自由端側に位置する他の山部によってその変形が制限されるため、滑り(変形)が起こり難くなっている。一方、自由端に近い山部では、自由端に近い程変形が制限されなくなり、したがって滑り量(変形量)が大きくなる。
バンプフォイルの山部が軸受ハウジングの周方向に変形し難い場合、軸受ハウジングの径方向での荷重(回転軸に作用する荷重)に対する山部の弾性が高くなる。一方、バンプフォイルの山部が軸受ハウジングの周方向に変形し易い場合、軸受ハウジングの径方向での荷重に対する山部の弾性が低くなる。その結果、バンプフォイルの固定端側ではバネ定数が高く、自由端側ではバネ定数が低くなる。したがって、バンプフォイルを軸受全周に廻らせて配置すると、バンプフォイルの固定端側ではトップフォイルの支持剛性が高くなり、バンプフォイルの自由端側ではトップフォイルの支持剛性が低くなる。
バンプフォイルに支持剛性の低い部分があると、軸受全周に渡って発生する膜圧が低くなり、局所的に膜厚が薄い部分が生じる可能性がある。そのため、軸受負荷能力が低下したり、軸受剛性(流体潤滑膜を含めた軸受としての軸支持剛性)に偏りが生じたりする場合がある。また、バンプフォイルに支持剛性の高い部分があると、滑り量が少なくなって減衰効果(滑りによる摩擦で振動エネルギーを散逸することによる振動抑制効果)が低減し、軸受全体としての減衰能力(振動抑制能力)が低下する可能性がある。
そのため、バンプフォイルの支持剛性と滑り特性とを軸受全周に渡って均等化するべく、バンプフォイルを周方向に分割し、上記特性における固定端側と自由端側との間の差を少なくすることが考えられる。しかし、分割数を増やすとバンプフォイル(バックフォイル)の枚数が増え、固定点も多くなるため、製作面やコスト面で好ましくない。特に、バンプフォイルの固定を溶接で行う場合には、溶接を行う全箇所が良好に溶接できなければ製品として出荷できないため、品質維持が難しくなり、良品率が低下してコストアップとなる可能性がある。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、バックフォイルの固定端側と自由端側との間で生じる支持剛性の差を少なくし、より大きな軸受負荷能力と、高い軸受剛性及び減衰能力を備えるラジアルフォイル軸受を提供することを目的とする。
本発明の第1の態様によれば、回転軸を取り囲んでこの回転軸を支持するラジアルフォイル軸受は、前記回転軸に対向して配置される円筒状のトップフォイルと、前記トップフォイルの径方向外側に配置されるバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルを収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備える。前記バックフォイルは、少なくとも1つのバックフォイル片を用いて円筒状に形成されている。また、前記バックフォイル片は、前記トップフォイルの周方向に沿って交互に形成された山部と谷部とを有し、かつ、その周方向における両端部の中間部にて前記軸受ハウジングに固定されている。
このラジアルフォイル軸受にあっては、バックフォイルが、少なくとも1つのバックフォイル片を用いて円筒状に形成されている。また、このバックフォイル片は、トップフォイルの周方向に沿って交互に形成された山部と谷部とを有し、かつ、その周方向における中央部にて軸受ハウジングに固定されている。そのため、従来のようにフォイルの一端部を軸受ハウジングに固定した場合に比べ、固定端(固定部)と自由端(バックフォイルの端部)との間の距離がほぼ半分になる。したがって、自由端側に位置する山部による制限が少なくなって固定端側に位置する山部が滑り易く(変形し易く)なるため、自由端側と固定端側との間の支持剛性の差が充分に小さくなる。
また、本発明の第2の態様によれば、上記第1の態様において、前記バックフォイルが、前記トップフォイルの周方向に並んで配置された複数のバックフォイル片を用いて円筒状に形成されている。
この場合、バックフォイルが、トップフォイルの周方向に並んで配置された複数のバックフォイル片からなるので、バックフォイルがトップフォイルの全周に渡って単一のバックフォイル片で形成されている場合と異なり、各バックフォイル片がトップフォイルの全周を分割するように配置されている。そのため、バックフォイル片における固定端と自由端との間の距離が短くなる。したがって、自由端側と固定端側との間の支持剛性の差が小さくなる。
また、各バックフォイル片は、トップフォイルの周方向における中央部にて軸受ハウジングに固定されている。そのため、バックフォイル片の一端部を軸受ハウジングに固定した場合に比べ、固定端(固定部)と自由端(バックフォイルの端部)との間の距離がほぼ半分になる。したがって、自由端側に位置する山部による制限が少なくなって固定端側に位置する山部が滑り易く(変形し易く)なるため、自由端側と固定端側との間の支持剛性の差が充分に小さくなる。
また、本発明の第3の態様によれば、上記第1又は第2の態様において、前記バックフォイル片が、前記軸受ハウジングにスポット溶接で固定されている。
バンプフォイルの固定をスポット溶接で行う場合、溶接箇所を全て良好に溶接できなければ製品として出荷できないため、品質維持が難しくなり、良品率が低下する可能性がある。
例えば、従来型におけるバックフォイルの周方向分割数をM個としたとき、M個のバックフォイル片に対する固定点数がM個となる。これに対し、本発明では、バックフォイル片を周方向の中央部にてスポット溶接で固定する。そのため、バックフォイルの周方向分割数をM/2個とし、バックフォイル片の長さを2倍に伸ばすことで、実質的な周方向分割数をM個にすることができる。すなわち、バックフォイル片の数が半分(M/2個)になり、固定点数が半減する。したがって、従来と同じ構成でバックフォイルをその周方向で分割する場合に比べ、固定点数(溶接点数)を半分にすることができるので、製作工数を減らしてコストダウンを図ることができるとともに、品質の安定化を図ることができる。
本発明のラジアルフォイル軸受によれば、少なくとも1つのバックフォイル片をその中央部にて固定したことにより、自由端側と固定端側との間の支持剛性の差を充分に小さくできる。そのため、ラジアルフォイル軸受の、より大きな軸受負荷能力と、高い軸受剛性及び減衰能力を得ることができる。
本発明の第1実施形態に係るラジアルフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す模式図である。 本発明の第1実施形態に係るラジアルフォイル軸受の概略構成を示す側面図である。 図2Aの要部を平坦化して模式的に示す側面図である。 図2Aの要部を平坦化して模式的に示す平面図である。 従来のラジアルフォイル軸受の側面図である。 図3Aの要部を平坦化して模式的に示す側面図である。 従来の別のラジアルフォイル軸受の側面図である。 本発明の第2実施形態に係るラジアルフォイル軸受の概略構成を示す側面図である。 ラジアルフォイル軸受の要部を示す斜視図である。 図4Aの要部を平坦化して模式的に示す側面図である。 図4CのA−A線矢視断面図である。 図4CのB−B線矢視断面図である。
以下、図面を参照して本発明のラジアルフォイル軸受を詳しく説明する。なお、以下の図面においては、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のラジアルフォイル軸受が適用されるターボ機械の一例を示す側面図である。図1中符号1は回転軸、符号2は回転軸の先端部に設けられたインペラ、符号3は本発明に係るラジアルフォイル軸受である。なお、図1では省略してラジアルフォイル軸受を一つのみ記載しているが、通常は回転軸1の軸方向にラジアルフォイル軸受が二つ設けられて、回転軸1の支持構造が構成される。したがって、図示しないが、本実施形態においてもラジアルフォイル軸受3は二つ設けられている。ただし、本発明のラジアルフォイル軸受3は、回転軸に対して一つのラジアルフォイル軸受のみが設けられる形態にも適用可能である。
回転軸1には、インペラ2が形成された側にスラストカラー4が固定されている。このスラストカラー4の両側には、このスラストカラー4に対向してスラスト軸受5がそれぞれ配置されている。
また、インペラ2は静止側となるハウジング6内に配置されており、インペラ2とハウジング6との間にチップクリアランス7が形成されている。
また、回転軸1には、スラストカラー4より回転軸1の中央側に、ラジアルフォイル軸受3が取り囲むように装着されている。
図2A〜2Cは、このような構成のターボ機械に適用されたラジアルフォイル軸受の第1実施形態を示す図である。本実施形態のラジアルフォイル軸受3は、図2Aに示すように回転軸1を取り囲んで回転軸1を支持する円筒状に形成されている。ラジアルフォイル軸受3は、回転軸1に対向して配置される円筒状のトップフォイル10と、トップフォイル10の径方向外側に配置されるバックフォイル11と、バックフォイル11の径方向外側に配置される軸受ハウジング12とを備えて構成されている。
軸受ハウジング12は、ラジアルフォイル軸受3の最外部を構成し、金属を用いて円筒状に形成されている。軸受ハウジング12は、その内部にバックフォイル11およびトップフォイル10を収容している。
バックフォイル11は、フォイル(薄板)で形成され、トップフォイル10を弾性的に支持する。このようなバックフォイル11としては、例えばバンプフォイルや、特開2009−299748号公報などに記載されているバックフォイルなどが用いられる。本実施形態では、バックフォイル11としてバンプフォイルを用いている。ただし、前記のバックフォイルを、本発明のバックフォイルとして用いてもよい。
本実施形態のバックフォイル11(バンプフォイル)は、図2Aに示すように、トップフォイル10の周方向に並んで配置された3つのバックフォイル片11aを用いて円筒状に形成されている。これらバックフォイル片11aは、フォイル(薄板)が波板状に成形され、かつ、その側面が全体として円弧状になるように構成されている。3つのバックフォイル片11aは、全て同じ形状・寸法に形成されている。したがって、これらバックフォイル片11aは、軸受ハウジング12の内周面をほぼ3分割するように配置されている。
また、後述するトップフォイル10の固定端10aを挟むように位置する一対のバックフォイル片11aは、ある程度の隙間をあけて配置されている。一方、それ以外の位置では、隣り合う一対のバックフォイル片11aにおける互いの端部が近接して配置されている。このような構成によって3つのバックフォイル片11aは、全体として略円筒形状に形成されて、軸受ハウジング12の内周面に沿って配置されている。
また、このように波板状に成形されたバックフォイル片11aは、図2Aの要部を平坦化して模式的に示す側面図である図2B、及びその平面図である図2Cに示すように、軸受ハウジング12の周方向に沿って交互に形成された、軸受ハウジング12と接する平坦な(軸受ハウジング12の内周面に沿った)谷部11bと、トップフォイル10に接する湾曲した(径方向内側に向けて突出するように湾曲した)山部11cとを有する。これによってバックフォイル片11aは、図2Bに示すようにトップフォイル10に接する山部11cにより、トップフォイル10を弾性的に支持している。また、山部11cや谷部11bによって、ラジアルフォイル軸受3の中心軸方向に延びる流体の通路が形成されている。
なお、このバックフォイル片11aは、例えばラジアルフォイル軸受3の軸受径φ(内径)が35mmである場合、その厚さが100μm程度、山部11cの幅(ラジアルフォイル軸受3の周方向での幅)が3mm程度、山部11cの高さが0.6mm程度となるように形成されている。また、後述するトップフォイル10の厚さも100μm程度である。
これらバックフォイル片11aは、その周方向、すなわちトップフォイル10の周方向における中央部にて、スポット溶接で軸受ハウジング12に固定されている。スポット溶接は、バックフォイル片11aの中央部に位置する谷部11b(山部11c、11c間に形成された平坦部)においてなされている。スポット溶接を行う箇所としては、図2Cに示すように、1つのバックフォイル片11aにおけるその中央部の谷部11bの2箇所、すなわちバックフォイル片11aの軸方向(ラジアルフォイル軸受3の中心軸方向)での両側縁部が、それぞれスポット溶接される。これにより、谷部11bには、2箇所のスポット溶接によって図2Bに示すように見掛け上1つの溶接点、すなわち固定点8が形成される。また、バックフォイル片11aの中央部に固定点8が形成されることで、バックフォイル片11aの両端は共に自由端9となっている。
すなわち、1つのバックフォイル片11aに、固定端として機能する固定点8と一方の自由端9との間に位置するバックフォイル部11dと、固定点8と他方の自由端9との間に位置するバックフォイル部11dとが形成される。
このように、1つのバックフォイル片11aに2つのバックフォイル部11dが形成される。そのため、本実施形態における1つのバックフォイル片11aは、後述するように、従来のバックフォイル片を2つ備えた構造と同等に機能する。
図2Aに示すようにトップフォイル10は、3つのバックフォイル片11aからなるバックフォイル11の内面に沿って円筒状に巻かれている。トップフォイル10では、一端部がスポット溶接で軸受ハウジング12に固定されて固定端10aとされ、他端部が自由端とされている。
次に、このような構成からなるラジアルフォイル軸受3の作用について説明する。
回転軸1が停止した状態では、トップフォイル10は、バックフォイル11(3つのバックフォイル片11a)によって回転軸1側に付勢されることで回転軸1に密着している。
回転軸1を図2A中の矢印Pの向きに回転させると、最初は低速で回転し、その後徐々に加速して高速で回転する。そのとき、図2A中の矢印Qで示すように、トップフォイル10の固定端10aとバックフォイル片11aの一端との間から周囲流体が引き入れられ、周囲流体はトップフォイル10と回転軸1との間に流入する。これにより、トップフォイル10と回転軸1との間に流体潤滑膜が形成される。
この流体潤滑膜の膜圧は、トップフォイル10に作用し、トップフォイル10に接するバックフォイル片11aの個々の山部11cは径方向外側に向けて押圧される。バックフォイル片11aがトップフォイル10から押圧されることにより、その山部11cが押し広げられる。したがって、バックフォイル片11aは軸受ハウジング12上をその周方向に動く。
すなわち、流体潤滑膜を介してトップフォイル10からの荷重を受けたバックフォイル片11aでは、図2B中に矢印で示すように、個々の山部11cの幅が広がる。これにより、バックフォイル片11aにおける山部11cの高さが減少し、トップフォイル10の撓みを許容する。すなわち、山部11cの高さが減少することで、トップフォイル10の撓んだ部分を収容可能な領域が軸受ハウジング12内に形成される。したがって、ラジアルフォイル軸受3はその軸受面の形状を可変とし、荷重に応じて適切な流体潤滑膜を形成する。
また、バックフォイル片11aは、前記したように荷重を受けて変形するとき、個々の山部11cの幅が広がる。その際、バックフォイル片11aと、トップフォイル10や軸受ハウジング12との間で滑りが生じる。したがって、回転軸1に振動(軸振動)が発生した際には、この滑りによる摩擦で振動エネルギーを散逸し、振動抑制効果が発揮される。
また、バックフォイル片11aの周方向での変形(移動)は、バックフォイル片11aと、トップフォイル10や軸受ハウジング12との間の摩擦の影響を受ける。そのため、図2B中の矢印の大きさで示すように、その両端部、すなわち各自由端9側では変形し易い(動き易い)ものの、固定点8側では変形し難くなっている。そのため、自由端9側と固定点8側とでは、バックフォイル片11aによる支持剛性に差が生じる。
しかし、本実施形態では、スポット溶接による固定点8をバックフォイル片11aの周方向中央部に設けているので、図3A,3Bに示すようなバックフォイル片11aの一端部をスポット溶接で固定した従来の形態に比べ、固定端(固定点8)と自由端(バックフォイルの端部、自由端9)との間の距離がほぼ半分になる。したがって、自由端9側に位置する山部11cによる制限が少なくなって固定点8(固定端)側に位置する山部11cが滑り易く(変形し易く)なり、自由端9側と固定点8(固定端)側との間の支持剛性の差が充分に小さくなる。
また、このようにバックフォイル片11aの中央部に固定点8を形成することで、バックフォイル片11aの両端部が共に自由端9となっている。したがって、1つのバックフォイル片11aに2つのバックフォイル部11dが形成され、本実施形態の1つのバックフォイル片11aは、従来のバックフォイル片を2つ備えた構造と同等に機能する。すなわち、本実施形態のラジアルフォイル軸受3は、バックフォイル片11aを3つ有することで、図3Cに示す、従来のバックフォイル片40aを6つ備えたラジアルフォイル軸受と、機能上は同等となる。
図3Cに示す従来型において、バックフォイルの周方向分割数を6つとしたとき、6つのバックフォイル片40aに対する固定点8の数が6つとなる。これに対し、本実施形態のラジアルフォイル軸受3では、バックフォイル片11aを周方向の中央部にてスポット溶接で固定する。そのため、バックフォイル11の周方向分割数を3つとし、バックフォイル片11aの長さを2倍に伸ばすことで、実質的な周方向分割数を6つにすることができる。
以上説明したように、本実施形態のラジアルフォイル軸受3にあっては、バックフォイル11を、トップフォイル10の周方向に並んで配置される3つのバックフォイル片11aで構成している。バックフォイル11がトップフォイル10の全周に渡って単一のフォイルで形成されている場合に比べ、各バックフォイル片11aがトップフォイル10の全周を分割するように配置されているため、バックフォイル片における固定端と自由端との間の距離が短くなる。したがって、ラジアルフォイル軸受3における、自由端側と固定端側との間の支持剛性の差が小さくなる。また、バックフォイル片11aを、その中央部にて固定したことにより、自由端側と固定端側との間の支持剛性の差がさらに小さくなる。よって、このように自由端側と固定端側との間の支持剛性の差を充分に小さくしたので、ラジアルフォイル軸受3の、より大きな軸受負荷能力と、高い軸受剛性及び減衰能力を得ることができる。
なお、本発明は前記実施形態に限定されることはなく、添付のクレームの範囲によってのみ限定される。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
例えば、前記実施形態ではバックフォイル11を3つのバックフォイル片11aを用いて構成した。しかし、バックフォイル11が、1枚の金属箔(単一のバックフォイル片)を用いて略円筒状に成形されてもよい。この場合にも、バックフォイル11(単一のバックフォイル片)をその中央部にて固定することにより、自由端側と固定端側との間の支持剛性の差を小さくすることができる。
また、バックフォイル11を複数のバックフォイル片11aで構成する場合、その数は3つに限定されない。すなわち、2つ、または4つ以上のバックフォイル片11aでバックフォイル11を構成してもよい。
さらに、前記実施形態では、バックフォイル11(バックフォイル片11a)は、スポット溶接を用いて軸受ハウジング12へ固定されている。しかし、スポット溶接以外の固定手段を用いてバックフォイル11を固定してもよい。
なお、本実施形態のバックフォイル片11aは、その周方向中央部にて軸受ハウジング12に固定されている。しかしながら、バックフォイル片の固定点から自由端までの長さを従来よりも短縮するという本発明の主旨からすれば、必ずしもバックフォイル片の周方向中央部に固定点が設けられている必要は無く、バックフォイル片が、その周方向における両端部の中間部にて軸受ハウジングに固定されていてもよい。例えば、固定点と一方の自由端との長さ、及び上記固定点と他方の自由端との長さの比が、1対2となるような固定点にて、バックフォイル片が軸受ハウジングに固定されていてもよい。
(第2実施形態)
図4A〜4Eは、本発明の第2実施形態におけるラジアルフォイル軸受を示している。図4A〜4Eは、スポット溶接以外の固定手段として、係止部材30を用いてバックフォイル11(バックフォイル片11a)の固定を行うラジアルフォイル軸受20を示す図である。
ラジアルフォイル軸受20は、図4Aに示すように回転軸1に対向して配置される円筒状のトップフォイル10と、トップフォイル10の径方向外側に配置されるバックフォイル11と、バックフォイル11の径方向外側に配置される軸受ハウジング12とを備えて構成されている。
本実施形態の軸受ハウジング12の内周面には、軸受ハウジング12の軸方向に沿って溝13が形成されている。
すなわち、溝13は、軸受ハウジング12の軸方向の全長に渡って形成されている。この溝13は、その深さ方向が、トップフォイル10の一方の端部が延び出る方向に一致するように形成されている。また、その深さは、2mm〜5m程度である。
軸受ハウジング12の外周面には、溝13に連通する2つの孔14が形成されている。これら孔14は、後述するように溝13内に挿入されたトップフォイル10の一方の端部10bを、溝13内に固定するために用いられる雄ネジが挿入される孔である。孔14の内周面には雌ネジが形成されている。
軸受ハウジング12の両側面(中心軸方向での両側面)には、図4A,4Bに示すように、軸受ハウジング12の外周縁から内周縁にまで延びる係合溝15がそれぞれ形成されている。本実施形態の係合溝15は、図4Aに示すように、軸受ハウジング12の側面を、その周方向にほぼ3分割する位置にそれぞれ形成されている。これら係合溝15には、係止部材30が係止している。なお、本実施形態では、3つの係合溝15のうちの2つの係合溝15の間に、溝13が配置されている。
バックフォイル11は、第1実施形態と同様に、トップフォイル10の周方向に並んで配置された3つのバックフォイル片11aを用いて構成されている。溝13を挟むように位置する一対のバックフォイル片11aは、ある程度の隙間をあけて配置されている。一方、それ以外の位置では、隣り合う一対のバックフォイル片11aにおける互いの端部が近接して配置されている。このような構成によって3つのバックフォイル片11aは、全体として略円筒形状に形成されて、軸受ハウジング12の内周面に沿って配置されている。
これらバックフォイル片11aは、図4Aの要部を平坦化して模式的に示す図4Cに示すように、軸受ハウジング12の周方向に沿って交互に形成された、軸受ハウジング12と接する平坦な谷部11bと、トップフォイル10に接する湾曲した山部11cとを有する。
これらバックフォイル片11aには、図4CのA−A線矢視断面図である図4Dに示すように、その周方向中央部(軸受ハウジング12の周方向での中央部)の両縁部(軸方向での両縁部)に、切欠16がそれぞれ形成されている。切欠16は、図4Bに示すように、バックフォイル片11aの谷部11bに形成されている。切欠16は、山部11c、11c間に形成された平坦部である谷部11bを、軸受ハウジング12の軸方向での両縁部から軸方向での中心部に向かって切り欠くことで形成されている。切欠16は、軸受ハウジング12の係合溝15に対応する位置、すなわち係合溝15と重なる位置に形成されており、切欠16の幅(軸受ハウジング12の周方向での幅)、深さ(軸受ハウジング12の軸方向での深さ)が、係合溝15の幅、深さとそれぞれ同一に形成されている。
このような構成のもと、軸受ハウジング12の係合溝15とバックフォイル片11aの切欠16とは、図4Bに示すように、一つの溝として機能する。なお、切欠16は、バリの発生、及びストレスを与えることによる歪みの発生を防止するために、フォイルに対してエッチング加工や放電加工を行って形成することが好ましい。すなわち、エッチング加工や放電加工でフォイルに切欠16を形成した後に、山部11cや谷部11bを形成するためのプレス成型を行い、バックフォイル片11aを形成することが好ましい。
これら係合溝15と切欠16とには、係止部材30が係止している。係止部材30は、図4CのB−B線矢視断面図である図4E、及び図4Bに示すように、一対の係合脚31、31と、これら係合脚31、31の一端側に配置されて係合脚31、31間を接続する接続部32と、を有するコ字状に形成されている。一方の係合脚31がラジアルフォイル軸受3の一方の側面の係合溝15と切欠16とに係合し、他方の係合脚31がラジアルフォイル軸受3の他方の側面の係合溝15と切欠16とに係合している。係合脚31の長さは、図4C,4Eに示すように、軸受ハウジング12の厚さ(径方向での厚さ)とバックフォイル片11aの厚さの和にほぼ等しい。また、接続部32は、図4C〜4Eに示すように、バックフォイル片11aの谷部11bとトップフォイル10との間に配置されている。
このような構成によって係止部材30は、係合脚31が軸受ハウジング12の係合溝15とバックフォイル片11aの切欠16とのいずれにも係合しているため、バックフォイル片11aを軸受ハウジング12に固定する固定手段として機能している。また、接続部32がトップフォイル10で覆われていることにより、軸受ハウジング12及びバックフォイル片11aからの係止部材30の脱落が防止されている。したがって、バックフォイル片11aは軸受ハウジング12に確実に固定されている。
係止部材30の係合脚31や接続部32は、図4Bに示すような四角柱状であっても、また、円柱状(丸棒状)であってもよい。なお、その太さは0.2〜0.5mm程度である。例えば、ラジアルフォイル軸受3の軸受サイズがφ35mm×(軸方向での長さ)35mmである場合、バックフォイル片11a、トップフォイル10の厚さは共に100μm程度であり、バックフォイル片11aの山部11cの高さ(谷部11bに対する高さ)は0.5mm程度である。したがって、係止部材30の太さを0.5mm未満(0.2〜0.5mm程度)とすることにより、図4Cに示したように、係止部材30の接続部32がトップフォイル10から離間して配設され、接続部32のトップフォイル10との接触・干渉が防止される。
このような係止部材30は、例えば厚さが0.5mm未満のステンレス等からなる金属箔をコ字状にエッチング加工することで、形成することができる。また、太さが0.5mm未満の針金状の金属棒を、折り曲げ加工することでも形成することができる。
図4Aに示すように、トップフォイル10は、3つのバックフォイル片11aからなるバックフォイル11の内面に沿って円筒状に巻かれている。トップフォイル10は、その一方の端部10bの先端が軸受ハウジング12に形成された溝13に係合するように配設されている。
このトップフォイル10は、軸受の周方向を長辺とし、軸受の中心軸方向を短辺とする矩形状の金属箔が上記中心軸周りで円筒状に巻かれて、形成されている。
このトップフォイル10は、前記金属箔の両端が互いに当接するように巻かれることなく、一方の端部10bが他方の端部の外側に重なるように巻かれている。また、一方の端部10bは、これ以外の部分で形成される円筒部の所定位置での接線方向に、延び出て形成されている。
なお、軸受ハウジング12における溝13は、その深さ方向が、トップフォイル10の一方の端部10bの延び出る方向に一致するように形成されている。
したがって、トップフォイル10は、その一方の端部10bの延び出た方向が溝13の深さ方向に一致するように配置されて、その一方の端部10bの先端が溝13に係合している。一方の端部10bが溝13に係合した状態ではトップフォイル10は変形しないため、トップフォイル10における歪みの発生が防止される。
本実施形態では、溝13に係合しているトップフォイル10の一方の端部10bは、雄ネジ17によって溝13内に固定されている。すなわち、雄ネ
17が孔14に螺合し挿入され、一方の端部10bが雄ネジ17により付勢されて溝13の内壁面に密着することで、一方の端部10bが溝13内に固定されている。なお、溝13の内壁面に密着することによる一方の端部10bの変形は僅かである。したがって、この変形によってトップフォイル10に歪みが生じることはほとんどない。
トップフォイル10の一方の端部10bと、これと反対の他方の端部とには、これらの間の中央部より薄い厚さの薄厚部18が形成されている。これら薄厚部18は、その外周面(バックフォイル11側の面)が前記中央部の外周面より凹んだ状態となるように薄くされて形成されている。
薄厚部18を形成するには、例えばエッチング加工によってトップフォイル10の両端部を、数十μmの範囲でコントロールして所望の厚さ(薄さ)に形成する。具体的には、軸受径φが35mmで、トップフォイル10の厚さが100μmである場合、薄厚部18の厚さは80μm程度にする。なお、このようなエッチング加工では、曲げ加工などに比べてトップフォイル10に生じる応力が極めて小さい。したがって、トップフォイル10に歪みが生じることもほとんどない。
また、薄厚部18の周方向の長さは、例えば、溝13から、溝13の隣に位置するバックフォイル11の端部の山部11c一つ分までに対応する長さである。
このようにトップフォイル10の両端部に薄厚部18を形成したことにより、これら両端部(薄厚部18)は弾性変形し易くなる。したがって、これら両端部は軸受ハウジング12の内周面を構成する曲面に倣って曲面となる。これにより、トップフォイル10は、その両端部においても回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)をほとんど発生しない。
また、トップフォイル10の両端部の外周面を、前記中央部の外周面より凹んだ状態となるように薄くして薄厚部18を形成している。そのため、トップフォイル10の外周面を支持するバックフォイル11と薄厚部18との間において、バックフォイル11の端部の山部11c一つ分の範囲で、隙間が形成される。これにより、薄厚部18においては、回転軸1を締め付ける力(局所的なプリロード)の発生が確実に防止される。
このようなラジアルフォイル軸受20にあっても、バックフォイル11を複数のバックフォイル片11aで形成したことにより、バックフォイル片11aにおける固定端(係止部材30による係止位置)と自由端(バックフォイル片11aの両端部)との間の距離を短くして支持剛性の差を小さくできる。さらに、バックフォイル片11aをその中央部にて軸受ハウジング12に固定したことにより、自由端側と固定端側との間の支持剛性の差を充分に小さくできる。結果として、ラジアルフォイル軸受20の、より大きな軸受負荷能力と、高い軸受剛性及び減衰能力を得ることができる。
また、係止部材30を用い、バックフォイル片11aの切欠16と軸受ハウジング12の係合溝15とに係合脚31を係合させることにより、バックフォイル片11a(バックフォイル11)を軸受ハウジング12に固定している。そのため、バックフォイル片11aに対してスポット溶接や曲げ加工を行うことなく、バックフォイル片11aを軸受ハウジング12内に収容・固定することができる。したがって、バックフォイル11(バックフォイル片11a)のスポット溶接や、バックフォイル11の歪みの影響による、トップフォイル10における歪みの発生を防止し、又はトップフォイル10の歪みを充分に少なくすることができる。よって、軸受の負荷能力や動特性(剛性と減衰性能)について、設計通りの良好な性能を発揮させることができる。
また、バックフォイル11については、従来のスポット溶接や、歪みを発生させる可能性のある曲げ加工を無くすことができるため、製作の難易度を低下させ、製造コストを低減できる。また、バックフォイル11に特別な曲げ加工が不要となるため、バックフォイル11を高精度にプレス成型することが可能になる。
なお、バックフォイル11(バックフォイル片11a)は、前記のスポット溶接や係止部材30以外の固定手段を用いて軸受ハウジング12へ固定してもよい。
本発明は、回転軸を取り囲んで支持するラジアルフォイル軸受に広く利用することができる。
1…回転軸
3…ラジアルフォイル軸受
8…固定点
9…自由端
10…トップフォイル
11…バックフォイル
11a…バックフォイル片
11b…谷部
11c…山部
12…軸受ハウジング
15…係合溝
16…切欠
20…ラジアルフォイル軸受
30…係止部材
31…係合脚
32…接続部

Claims (3)

  1. 回転軸を取り囲んで該回転軸を支持するラジアルフォイル軸受であって、
    前記回転軸に対向して配置される円筒状のトップフォイルと、前記トップフォイルの径方向外側に配置されるバックフォイルと、前記トップフォイル及び前記バックフォイルを収容する円筒状の軸受ハウジングと、を備え、
    前記バックフォイルは、少なくとも1つのバックフォイル片を用いて円筒状に形成され、
    前記バックフォイル片は、前記トップフォイルの周方向に沿って交互に形成された山部と谷部とを有し、かつ、その周方向における両端部の中間部を固定点として前記軸受ハウジングに固定されており、
    前記固定点と前記両端部の一方までの長さと前記固定点と前記両端部の他方までの長さとの比が1対1〜1対2の範囲であるラジアルフォイル軸受。
  2. 前記バックフォイルは、前記トップフォイルの周方向に並んで配置された複数のバックフォイル片を用いて円筒状に形成されている請求項1に記載のラジアルフォイル軸受。
  3. 前記バックフォイル片は、前記軸受ハウジングにスポット溶接で固定されている請求項1に記載のラジアルフォイル軸受。
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