JP2013095635A - 高純度炭化珪素粉末の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アチソン炉を用いて、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しており、かつ、B及びPの各々の含有率が1ppm以下である、シリカとカーボンからなる粒子を加熱して、高純度炭化珪素粉末を得る、高純度炭化珪素粉末の製造方法。上記シリカとカーボンからなる粒子は、好ましくは、粒子内のいずれの地点においても、シリカの含有率が90質量%以下であり、かつ、カーボンの含有率が10質量%以上のものである。
【選択図】図4
Description
炭化珪素を工業的に量産する技術としては、珪素(Si)を含む珪酸質原料(例えば硅砂)と炭素を含む炭素質原料(例えば石油コークス)を原料とし、アチソン炉において1600℃以上で加熱することで、直接還元反応によって炭化珪素を製造する方法が知られている。
この従来から行なわれているアチソン炉による製造では、原料中の不純物含有量が高く、不純物の量の制御が難しいため、高純度の炭化珪素粉末を製造することはできなかった。
このため、純度の低い炭化珪素粉末を高純度化する手法が提案されている。例えば、特許文献1では、不純物を多く含有している炭化珪素粉末を真空容器に入れ、真空度が9×10−5〜1×10−2torrの範囲で、かつ1,500〜1,700℃の温度範囲で加熱することで、炭化珪素粉末中の不純物を除去して、高純度炭素珪素粉末を製造する方法が記載されている。
しかしながら、真空にしながら昇温する特許文献1の方法は、装置が複雑で、高価であり、かつ、工業的に一度に大量生産できなかった。
さらに、特許文献2では、不純物が多く含まれている炭化珪素粉とフッ化水素酸との混合物を密閉容器内に導入し、加圧下で加熱処理する高純度炭化珪素粉の製造方法が記載されている。
しかしながら、フッ化水素酸は人体に有害で危険性が高く、取り扱いが困難であり、かつ、工業的に大量に処理できないという問題があった。
また、アチソン炉を用いた炭化珪素の製造方法において、従来の珪酸質原料と炭素質原料の混合物は、珪酸質原料の粒子と炭素質原料の粒子が各々独立に存在しているため、特にこれらの粒子の径が大きい場合には、焼成時の反応性が悪く、高純度炭化珪素を製造する際の消費電力量が大きくなるという問題があった。
本発明の目的は、アチソン炉を用いて、安価にかつ大量に、しかも安全に高純度炭化珪素粉末を製造するとともに、高純度炭化珪素を製造する際の消費電力量を低減することができる方法を提供することにある。
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]を提供するものである。
[1] アチソン炉を用いて、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しており、かつ、B及びPの各々の含有率が1ppm以下である、シリカとカーボンからなる粒子を加熱して、高純度炭化珪素粉末を得る、高純度炭化珪素粉末の製造方法。
[2] 上記シリカとカーボンからなる粒子が、粒子内のいずれの地点においても、シリカの含有率が90質量%以下であり、かつ、カーボンの含有率が10質量%以上である、前記[1]に記載の高純度炭化珪素粉末の製造方法。
[3] 上記シリカとカーボンからなる粒子が、Al、Fe、Mg、Ca、及びTiの含有率が、各々、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、1ppm以下である、前記[1]または[2]に記載の高純度炭化珪素粉末の製造方法。
また、アチソン炉を用いて高純度炭化珪素粉末を製造する際の消費電力量を低減することができる。
本発明の製造方法で用いられるシリカとカーボンからなる粒子は、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しており、かつ、ホウ素(B)及びリン(P)の各々の含有率が1ppm以下のものである。
また、シリカとカーボンの粒子中のアルミニウム(Al)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、及びチタン(Ti)の含有率は、好ましくは、各々、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、1ppm以下である。
本発明の製造方法で用いられるシリカとカーボンからなる粒子は、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しているため、焼成時の反応性が高い。具体的には、粒子内のいずれの地点においても、シリカの含有率が好ましくは90質量%以下、より好ましくは60〜90質量%、さらに好ましくは60〜80質量%、特に好ましくは60〜70質量%であり、かつ、カーボンの含有率が、好ましくは10質量%以上、より好ましくは10〜40質量%、さらに好ましくは20〜40質量%、特に好ましくは30〜40質量%である。
不純物(B、P等)を上記範囲内とすることで高純度の炭化珪素(SiC)粉末を製造することができる。
さらに、本発明のシリカとカーボンからなる粒子中の、シリカとカーボンの合計の含有率は、好ましくは99.0質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上、特に好ましくは99.9質量%以上である。
本発明のシリカとカーボンからなる粒子の大きさは特に限定されるものではないが、粒子の長径が、通常、500μm以下であり、好ましくは400μm以下であり、より好ましくは300μm以下である。
本発明の製造方法で用いられるシリカとカーボンからなる粒子の、カーボン(C)とシリカ(SiO2)の混合モル比(C/SiO2)は、好ましくは2.5〜4.0、より好ましくは2.8〜3.6、特に好ましくは2.9〜3.3である。該混合モル比は、高純度炭化珪素粉末の組成に影響を与える。カーボンとシリカの混合モル比が2.5未満、または4.0を超えると、製品中に未反応のシリカやカーボンが多く残存してしまうため、好ましくない。
なお、本明細書中において、シリカとカーボンの混合物とは、上述したシリカとカーボンからなる複数の粒子からなる集合体をいう。
さらに、以下の工程(A1)〜工程(E)中、工程(B)及び(C)は、上記シリカとカーボンからなる粒子を得るために必須の工程であるが、工程(A)は、シリカ含有鉱物を原料としてケイ酸アルカリ水溶液を調製する場合に追加される工程であり、工程(A1)、(A2)、(B1)、(D)及び(E)工程は、必須ではなく、任意で追加可能な工程である。
[工程(A1);原料水洗工程]
工程(A1)は、シリカ含有鉱物(岩石状又は粉末状)を水洗して、粘土分及び有機物を除去する工程である。水洗後のシリカ含有鉱物は、通常、フィルタープレス等を用いて、さらに脱水させる。
シリカ含有鉱物としては、珪藻土、珪質頁岩等が挙げられる。シリカ含有鉱物は、アルカリに対する溶解性が高いことが望ましい。
ここで、珪藻土とは、珪藻が海底や湖底に沈積し、長い年月の間に体内の原形質その他の有機物が分解し、非晶質シリカを主体とした珪藻殻が集積して堆積したものである。
珪質頁岩とは、珪質の生物遺骸等に由来する頁岩である。すなわち、海域には、珪質の殻を有する珪藻などのプランクトンが生息するが、このプランクトンの死骸が海底中に堆積すると、死骸中の有機物の部分は徐々に分解され、珪質(SiO2;シリカ)の殻のみが残る。この珪質の殻(珪質堆積物)が、時間の経過や温度・圧力の変化などに伴い、続成作用により変質して、硬岩化することにより珪質頁岩となる。なお、珪質堆積物中のシリカは、続成作用によって、非晶質シリカから、結晶化してクリストバライト、トリデイマイトへ、さらに石英へと変化する。
さらに、Cu−Kα線による粉末X線回折において、石英の2θ=26.6degのピーク頂部の回折強度に対するオパールCTの2θ=21.5〜21.9degの回折強度は、石英を1とした場合の比率で0.2〜2.0の範囲が好ましく、0.4〜1.8の範囲がより好ましく、0.5〜1.5の範囲が特に好ましい。該値が0.2に満たない場合には、反応性に富むオパールCTの量が少ないため、シリカの収量が低下する。一方、該値が2.0を超える場合には、オパールCTの量が石英よりはるかに多くなり、このような珪質頁岩は資源的に少なく、経済性に劣る。
なお、石英に対するオパールCTの回折強度の比率は、以下の式で求める。
石英に対するオパールCTの回折強度の比率=(21.5〜21.9degのピーク頂部の回折強度)/(26.6degのピーク頂部の回折強度)
また、珪質頁岩のCu−Kα線による粉末X線回折において、オパールCTの2θ=21.5〜21.9degの間に存在するピークの半値幅は0.5°以上が好ましく、0.75°以上がより好ましく、1.0°以上がさらに好ましい。該値が0.5°未満では、オパールCTの結晶の結合力が増大し、アルカリとの反応性が低下して、シリカの収量が減少する。ここで、半値幅とは、ピーク頂部の回折強度の1/2に位置する回折線の幅をいう。
本発明で用いる珪質頁岩は、シリカ(SiO2)の含有率が70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましい。このような珪質頁岩を用いることにより、より高純度のシリカを低コストで製造することができる。
シリカ含有鉱物は、例えば、珪質頁岩等のシリカ含有鉱物を粉砕装置(例えば、ジョークラッシャー、トップグラインダーミル、クロスビーターミル、ボールミル等)で粉砕することによって得ることができる。
[工程(A2);原料焼成工程]
工程(A2)は、シリカ含有鉱物を300〜1000℃で0.5〜2時間焼成し、有機物を除去する工程である。
なお、工程(A1)と工程(A2)の双方を実施する場合、その順序は特に限定されない。
工程(A)は、シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合して、pHが11.5以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi濃度が10質量%以上となるように、上記シリカ含有鉱物中のSiを液分中に溶解させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離して、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得るアルカリ溶解工程である。
ここで、本明細書中、ケイ酸アルカリ水溶液とは、化学式中にシリカ(SiO2)を含む物質を含有するアルカリ性の水溶液をいう。
シリカ含有鉱物とアルカリ水溶液を混合してなるアルカリ性スラリーのpHは、11.5以上、好ましくは12.5以上、より好ましくは13.0以上となるように調整される。該pHが11.5未満であると、シリカを十分に溶解させることができず、シリカが固形分中に残存してしまうため、得られるシリカの収量が減少する。
pHを上記数値範囲内に調整するためのアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等が用いられる。
スラリーの固液比(アルカリ水溶液1リットルに対するシリカ含有鉱物の質量)は、好ましくは100〜500g/リットル、より好ましくは200〜400g/リットルである。該固液比が100g/リットル未満では、スラリーの固液分離に要する時間が増大するなど、処理効率が低下する。該固液比が400g/リットルを超えると、シリカ等を十分に溶出させることができないことがある。
スラリーは、通常、所定時間(例えば、30〜90分間)攪拌される。
攪拌後のスラリーは、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離される。液分は、Si及び他の成分(Al、Fe等の不純物)を含むケイ酸アルカリ水溶液であり、次の工程(B1)または工程(C)で処理される。液分中に含まれるSiの濃度は、10質量%以上、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは12〜18質量%、特に好ましくは13〜16質量%である。Siの濃度が10質量%未満であると、後述する工程(C)においてゲル状のカーボン含有シリカが析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカとカーボンの混合物の量が低下する。
なお、本工程においてアルカリ性スラリーを得る際の液温は、エネルギーコストの観点から、5〜100℃に保持されることが好ましく、10〜80℃に保持されることがより好ましく、10〜40℃に保持されることが特に好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
本工程は、工程(A)で得られたケイ酸アルカリ水溶液と酸を混合して、pHを10.3を超え、11.5未満であり、かつ液分中のSi濃度が10質量%以上のアルカリ性スラリーを調製し、液分中のSi以外の不純物(例えば、Al及びFe)を析出させた後、上記アルカリ性スラリーを固液分離して、ケイ酸アルカリ水溶液と、固形分を得る工程である。
なお、本工程で回収されずに液分中に残存する不純物は、工程(C)以降の工程で回収される。
本工程において、酸との混合後の液分のpHは、10.3を超え、11.5未満、好ましくは10.4以上、11.0以下、特に好ましくは10.5以上、10.8以下である。該pHが10.3以下であると、不純物(例えば、Al及びFe)と共にSiも析出してしまう。一方、該pHが11.5以上では、十分に析出せずに液分中に残存する不純物(例えば、Al及びFe)の量が多くなる。
また、酸と混合後の液分中に含まれるSiの濃度は、10質量%以上、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは12〜18質量%、特に好ましくは13〜16質量%である。Siの濃度が10質量%未満であると、後述する工程(C)においてゲル状のカーボン含有シリカが析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカとカーボンの混合物の量が低下する。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸、シュウ酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
このうち、固形分(ケーキ)は、不純物(例えば、Al及びFe)を含むものである。
液分は、Siを含むものであり、後述する工程(C)で処理される。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、エネルギーコストの観点から、5
〜100℃に保持されることが好ましく、10〜80℃に保持されることがより好ましく、10〜40℃に保持されることが特に好ましい。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
本工程は、液分中のSi濃度が10質量%以上のケイ酸アルカリ水溶液とカーボンを混合して、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液を得る工程である。
本工程において用いられるケイ酸アルカリ水溶液は、特に限定されないが、具体的には前工程(工程(A)または工程(B1))で得られたケイ酸アルカリ水溶液、及び水ガラス等が挙げられる。
本発明で用いられる水ガラスは、市販のものを使用することができ、JIS規格により規定される1号、2号、3号の他に各水ガラスメーカーで製造販売されているJIS規格外の製品も使用することができる。
ケイ酸アルカリ水溶液中に含まれるSiの濃度は、10質量%以上、好ましくは10〜20質量%、より好ましくは12〜18質量%、特に好ましくは13〜16質量%である。Si濃度が10質量%未満であると、ゲル状のカーボン含有シリカが析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカとカーボンの混合物の量が低下する。
Si濃度が20質量%を超えると、ケイ酸アルカリ水溶液のハンドリング(輸送等)が悪化するとともに、不純物の除去が不十分となる場合がある。
本発明で用いられるカーボンは特に限定されるものではないが、例えば石油コークス、石炭ピッチ、カーボンブラック、各種有機樹脂等が挙げられる。
カーボンの粒度は好ましくは5mm以下であり、より好ましくは2mm以下である。粒度が5mmを超える場合、不純物の除去が不十分となる場合がある。
なお、工程(B)の前に、カーボンを上記の粒度範囲にまで粉砕する工程を含んでもよい。
混合方法は特に限定されるものではないが、ケイ酸アルカリ水溶液にカーボンを加える方法が好ましい。
工程(B)においてカーボンを混合することによって、得られるシリカとカーボンの混合物中のカーボン由来の不純物の量を大幅に低減することができる。また、後述する工程(C)において、内部にカーボンが均一に取り込まれたカーボン含有沈降性シリカを析出することができる。
本工程は、工程(B)で得られたカーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と、10体積%以上の濃度の鉱酸を混合して、液分中のC及びSiを非ゲル状のカーボン含有沈降性シリカとして析出させ、沈降性シリカ含有液状物を得た後、該液状物を固液分離して、C及びSiO2を含む固形分(シリカとカーボンの混合物)と、不純物を含む液分を得る工程である。
なお、カーボン含有沈降性シリカは、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と、鉱酸との混合と同時に生成する。
本工程において用いられる鉱酸は、例えば硫酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、硫酸を用いることが薬剤コストの低減の観点から好ましい。
鉱酸の濃度は、10体積%以上、より好ましくは10〜20体積%、特に好ましくは10〜15体積%である。鉱酸の濃度が、10体積%未満の場合には、カーボン含有沈降性シリカが生成しない、あるいはカーボン含有沈降性シリカとゲル状のカーボン含有シリカの両方が生成するおそれがある。このゲル状のカーボン含有シリカが生成すると、最終生成物中の不純物の濃度が高くなる。また、20体積%を超えるとコストの面から好ましくない。
カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸の混合方法は、特に限定されるものではないが、カーボン含有沈降性シリカのみを生成させる観点から、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に添加する方法が好ましい。具体的には、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液を鉱酸に滴下する方法や、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液を、1.0mmφ以上、好ましくは4.0mmφ以上のチューブ等から、鉱酸中に直接押し出す方法等が挙げられる。
また、混合する際のpHは好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下に保つことが望ましい。pHが1.0を超えるとカーボン含有シリカがゲル状で析出する場合があり、固液分離に時間がかかるとともに、得られるシリカとカーボンの混合物の量が低下する。
また、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液の鉱酸中への流出速度は限定されないが、混合する際にpHが1.0を超え、かつ流出速度が大きい場合には、カーボン含有沈降性シリカが生成しない、あるいはカーボン含有沈降性シリカとゲル状のカーボン含有シリカの両方が生成するおそれがある。
本工程において、カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合する際のカーボン含有沈降性シリカの析出温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20〜30℃であり、通常、常温(例えば10〜40℃)である。80℃を超えると、エネルギーコストが上昇するとともに、設備の腐食が生じ易くなる。
上記カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液中のC及びSiをカーボン含有沈降性シリカとして析出させた後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、C及びSiO2を含む固形分と、不純物を含む液分に分離する。得られたカーボン含有沈降性シリカはゲル状ではなく、粒子状であるため、固液分離に要する時間を短くすることができる。
工程(C)で得られたC及びSiO2を含む固形分は、Al、Fe、Mg、Ca、TiB、P等の不純物が低減されたシリカとカーボンの混合物である。
また、得られたシリカとカーボンの混合物は、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布している粒子からなるため、焼成時の反応性が高く、容易に高純度の炭化ケイ素やシリコンを得ることができる。
過酸化水素を混合することで、不純物(特にTi)が低減されたシリカとカーボンの混合物を得ることができる。
混合方法は特に限定されるものではなく、(1)カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物と鉱酸を混合する方法、(2)鉱酸と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物とカーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液を混合する方法、(3)カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と鉱酸を混合し、次いで得られた混合物と過酸化水素を混合する方法、(4)カーボン含有ケイ酸アルカリ水溶液と、鉱酸と、過酸化水素を同時に混合する方法が挙げられる。中でも、工程の上流側で不純物(特にTi)の低減を図るという観点から(1)が好ましい。
過酸化水素の添加量は、炭素(C)とシリカ(SiO2)の合計質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜15質量%、より好ましくは0.1〜10質量%、特に好ましくは0.1〜5質量%である。過酸化水素の添加量が0.1質量%未満では、不純物(例えばTi)の低減効果が十分ではなく、15質量%を超えると、不純物(例えばTi)の低減効果が飽和状態となる。
工程(C)で得られたC及びSiO2を含む固形分に対して、適宜、工程(D)(酸洗浄工程)を行うことができる。酸洗浄工程を行うことにより、より不純物が低減されたシリカとカーボンの混合物を得ることができる。
工程(D)は、工程(C)で得られたC及びSiO2を含む固形分と酸を混合して、pHが3.0未満の酸性スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物(例えば、Al、Fe)を溶解させた後、上記酸性スラリーを固液分離して、C及びSiO2を含む固形分(シリカとカーボンの混合物)と、不純物(例えば、Al、Fe)を含む液分を得る工程である。
本工程における酸性スラリーのpHは、3.0未満、好ましくは2.0以下である。酸性スラリーのpHを上記範囲内に調整して酸洗浄を行うことにより、工程(C)で得られた固形分にわずかに残存するアルミニウム分、鉄分等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のC及びSiO2の含有率を上昇させることができるため、さらに不純物が低減されたシリカとカーボンの混合物を得ることができる。
pHを上記数値範囲内に調整するための酸としては、硫酸、塩酸、シュウ酸等が用いられる。
pH調整後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
なお、本工程においてpH調整を行う際の液温は、特に限定されるものではないが、エネルギーコストの観点から、好ましくは10〜80℃、より好ましくは15〜40℃、特に好ましくは20℃〜30℃であり、通常、常温(例えば10〜40℃)である。液温を上記範囲内とすることにより、処理効率を高めることができる。
また、酸洗浄工程後の液分を回収し、工程(C)に用いられる鉱酸、および工程(D)に用いられる酸として再利用してもよい。
混合方法は特に限定されるものではなく、(1)工程(C)で得られたC及びSiO2を含む固形分と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物と酸を混合する方法、(2)酸と過酸化水素を混合し、次いで得られた混合物と工程(C)で得られたC及びSiO2を含む固形分を混合する方法、(3)工程(C)で得られたC及びSiO2を含む固形分と酸を混合し、次いで得られた混合物と過酸化水素を混合する方法、(4)工程(C)で得られたC及びSiO2を含む固形分と、酸と、過酸化水素を同時に混合する方法が挙げられる。中でも、工程の上流側で不純物(特にTi)の低減を図るという観点から(1)が好ましい。
過酸化水素の添加量は、炭素(C)とシリカ(SiO2)の合計質量(100質量%)に対して、好ましくは0.1〜15.0質量%、より好ましくは0.1〜10.0質量%、特に好ましくは0.1〜5.0質量%である。過酸化水素の添加量が0.1質量%未満では不純物(例えばTi)の低減効果が十分ではなく、15.0質量%を超えると、不純物(例えばTi)の低減効果が飽和状態となる。
本工程は、前工程(工程(C)または工程(D))で得られたC及びSiO2を含む固形分と水を混合して、スラリーを調製し、上記固形分中に残存する不純物を溶解させた後、上記スラリーを固液分離して、C及びSiO2を含む固形分(シリカとカーボンの混合物)と、不純物を含む液分を得る工程である。適宜、水洗浄を行うことにより、前工程で得られた固形分にわずかに残存するナトリウム、硫黄等の不純物を溶解して液分中へ移行させることができ、固形分中のC及びSiO2の含有率を上昇させることができるため、さらに不純物が低減されたシリカとカーボンの混合物を得ることができる。
水洗浄後、フィルタープレス等の固液分離手段を用いて、固形分と液分に分離する。
本工程で得られた固形分に対して、水洗浄工程をさらに行ってもよい。
また、水洗浄工程後の液分を回収し、工程(A1)、工程(A)、工程(C)、工程(D)、及び工程(E)に用いられる水として再利用してもよい。
さらに、本発明において、工程(A)と工程(B)の間で、適宜、イオン交換処理及び/又は活性炭処理を行うことができる。
イオン交換処理及び/又は活性炭処理で回収される不純物は、ホウ素(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ナトリウム(Na)、チタン(Ti)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、及びマグネシウム(Mg)からなる群より選ばれる一種以上である。
イオン交換処理は、キレート樹脂、イオン交換樹脂等のイオン交換媒体を用いて行なうことができる。
イオン交換媒体の種類は、除去対象元素に対する選択性を考慮して、適宜定めればよい。例えば、ホウ素を除去する場合、グルカミン基を有するキレート樹脂や、N−メチルグルカミン基を有するイオン交換樹脂等を用いることができる。
イオン交換媒体の形態は、特に限定されるものではなく、ビーズ状、繊維状、クロス状等が挙げられる。イオン交換媒体への液分の通液方法もなんら限定されるものではなく、例えばカラムにキレート樹脂またはイオン交換樹脂を充填して連続的に通液する方法などを用いることができる。
イオン交換処理及び/又は活性炭処理を行う際の液温は、各処理に用いる材料の耐用温度以下であれば、特に限定されない。
アチソン炉を用いることで、他の電気炉等と比べて、安価にかつ大量に、しかも安全に高純度炭化珪素粉末を製造することができる。
また、アチソン炉は、炉が大きく、非酸化性雰囲気下で反応が行われることから、他の電気炉等と比べて、不純物(B、P、O等)の含有率、特に酸素(O)の含有率の低い炭化珪素粉末を得ることができる。
なお、上記「酸素(O)の含有率」とは、炭化珪素粉末中に含まれる金属酸化物を構成する酸素原子の総量を示す。
本発明の製造方法で得られる高純度炭化珪素粉末は、不純物(B、P、O等)の含有率、特に酸素(O)の含有率が低いため、パワー半導体等に用いられる単結晶材料として好適である。
さらに、上述したシリカとカーボンからなる粒子は、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しているため、焼成時の反応性が高く、アチソン炉を用いて炭化珪素を製造する際の消費電力量を低減することができる。
図4はアチソン炉4の長手方向の断面図であり、図5はアチソン炉4の長手方向に垂直な方向の断面図である。
アチソン炉4は大気開放型であり、炉本体5の断面が略U字状である炉であり、両端に電極芯3,3を有している。長手方向の中央部には発熱体2が電極芯3,3を結ぶように設置され、発熱体2の周りにはシリカとカーボンの混合物(シリカとカーボンからなる粒子の集合体)1が充填されている。また、シリカとカーボンの混合物1は炉本体5の内部空間にかまぼこ状に収容される。
電極芯3,3間に電流を流し、発熱体2を通電加熱することで、発熱体2の周囲において下記式(1)で示される直接還元反応が起こり、炭化珪素(SiC)の塊状物が生成される。
SiO2+3C → SiC+2CO (1)
上記反応が行われる温度は好ましくは1600〜3000℃、より好ましくは1600〜2500℃である。
発熱体の形態は、上述したように電気を通すことができればよく、粉状でも棒状でもよい。また、棒状の場合、該棒状体の形態も特に限定されず、円柱状でも角柱状でもよい。
本発明の製造方法で得られた炭化珪素粉末は、炭化珪素の含有率が高く、またB、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、Ca等の不純物の含有率が低い高純度炭化珪素粉末である。また、得られた高純度炭化珪素粉末は、酸素(O)の含有率が低い。
具体的には、本発明の製造方法で得られる炭化珪素の含有率は、好ましくは99.0質量%以上である。また、B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Tiの含有率は、各々、好ましくは0.1ppm以下、0.1ppm以下、1.0ppm以下、0.5ppm以下、1.0ppm以下、0.5ppm以下、0.5ppm以下、1ppm以下である。さらにOの含有率は、好ましくは0.5質量%未満である。
なお、得られた高純度炭化珪素粉末は、目標純度に応じて、鉱酸による洗浄を行ってもよい。鉱酸としては、塩酸、硫酸、硝酸等が使用できる。
[分析方法]
(1)B(ホウ素)及びP(リン)の含有率の分析方法
土壌中のB(ホウ素)の分析方法(BUNSEKI KAGAKU VOL47,No7,pp451−454参照)であるアルカリ溶融法によるICP−AES分析に基づいて分析を行った。
具体的には、試料1gおよびNa2CO34gを白金ルツボに入れた後、この白金ルツボを電気炉内に載置して700℃で1時間加熱した。次いで1時間ごとに、白金ルツボ内の混合物を撹拌しながら、800℃で4時間加熱し、さらに1000℃で15分間加熱した。加熱後の混合物(融成物)に50質量%のHCl20mlを添加し、ホットプレートを用いて、140℃で10分間融成物をくずしながら溶解した。水を加えて100mlにメスアップした後、ろ過を行い、得られた固形分に対して、ICP−AES分析を行った。
(2)B及びP以外の元素(Al、Cu、Fe、Mg、Ca、Ni、及びTi)の含有率の分析方法
「JIS R 1616」に記載された加圧酸分解法によるICP−AES分析に基づいて測定した。
(3)酸素(O)の含有率をLECO社製の「TCH−600」を用いて測定した。
水ガラス溶液(富士化学(株)製:SiO2/Na2O(モル比)=3.20)140gに、水35gを加えて混合し、Si濃度10質量%の水ガラス溶液を得た。
得られた水ガラス溶液にカーボン(東海カーボン社製:平均粒径1mm)を27.0g加えて混合し、カーボン含有水ガラス溶液を得た。
得られたカーボン含有水ガラス溶液66.2gを硫酸濃度10.7体積%の硫酸(水165.6mlに濃硫酸20mlを混合したもの)200g中に滴下し、常温(25℃)下でカーボン含有沈降性シリカを析出させた後、減圧下でブフナー漏斗を用いて固液分離し、C及びSiO2を含む固形分(カーボン含有沈降性シリカ)33.9gと、不純物を含む液分232.3gを得た。なお、pHは滴下終了時まで1.0以下に保った。
得られたC及びSiO2を含む固形分(カーボン含有沈降性シリカ)に対して、常温(25℃)下で硫酸濃度10.7体積%の硫酸を200g添加してpHが3.0未満のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に、得られた固形分を、蒸留水を用いて水洗した。その後、水洗した固形分を105℃で1日乾燥させ、シリカとカーボンの混合物(粒子の集合体)21.3gを得た。
得られたシリカとカーボンの混合物中の不純物(ホウ素(B)、リン(P)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)、及びチタン(Ti))の濃度を、上述した分析方法を用いて測定した。その結果を表1に示す。
得られたシリカとカーボンの混合物を乾燥させた後の、CとSiO2の合計量は99.99質量%であり、Siの回収率は97.0%であった。
また、得られたシリカとカーボンの混合物(C/SiO2のモル比:3.5)10gを管状炉に入れて、1650℃で3時間、アルゴン雰囲気下で焼成した。得られた焼成物についてX線回析を行った。結果を図2に示す。
図6にシリカとカーボンの混合物の写真を簡易に表した図を示す。
図7及び8に、シリカとカーボンの混合物表面の写真を簡易に表した図を示す。各図の右上の数値は、混合物を構成する粒子に含まれるシリカまたはカーボンの質量%であり、数値が大きいほど、含有率が高いことを示している。
水ガラス溶液(富士化学(株)製:SiO2/Na2O(モル比)=3.20)140gに、水35gを加えて混合し、Si濃度10質量%の水ガラス溶液を得た。
得られた水ガラス水溶液66.2gを硫酸濃度10.7体積%の硫酸(水165.6mlに濃硫酸20mlを混合したもの)200g中に滴下し、常温(25℃)下で沈降性シリカを析出させた後、減圧下でブフナー漏斗を用いて固液分離し、SiO2を含む固形分(沈降性シリカ)28.9gと、不純物を含む液分237.3gを得た。なお、pHは滴下終了時まで1.0以下に保った。
得られたSiO2を含む固形分(沈降性シリカ)に対して、常温(25℃)下で硫酸濃度10.7体積%の硫酸を200g添加してpHが3.0未満のスラリーとした。このスラリーを固液分離した後に、得られた固形分を、蒸留水を用いて水洗した。その後、水洗した固形分を105℃で1日乾燥させ、高純度シリカ14.5gを得た。
得られた高純度シリカにカーボン(東海カーボン社製:平均粒径1mm)を2.8g加えて混合し、高純度シリカとカーボンの混合物を得た。
得られた高純度シリカとカーボンの混合物中の不純物(B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ca、Ni、Ti)の濃度を、上述した分析方法を用いて測定した。その結果を表1に示す。
得られた高純度シリカとカーボンの混合物は、CとSiO2の合計量が17.3質量%であり、Siの回収率が97.0%であった。
また、得られた高純度シリカとカーボンの混合物(C/SiO2のモル比:3.5)10gを管状炉に入れて、1650℃で3時間、アルゴン雰囲気下で焼成した。得られた焼成物についてX線回析を行った。結果を図3に示す。
合成例1に記載した方法を用いて製造した、シリカとカーボンの混合物160kg、及び発熱体用黒鉛を、図4及び5に記載されたアチソン炉(アチソン炉の内寸;長さ1000mm、幅500mm、高さ500mm)の中へ収容した後、約2500℃で約10時間通電加熱を行い、炭化珪素の塊状物20.0kgを生成させた。
発熱体用黒鉛としては分解黒鉛(カーボンブラックを3000℃で熱処理したもの)を使用した。
得られた炭化珪素の塊状物を粉砕し、炭化珪素粉末を得た。得られた炭化珪素粉末中の不純物(B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、及びO)の含有率を、上述した分析方法を用いて測定した。結果を表2に示す。
また、消費電力量と得られた炭化珪素量から、炭化珪素の電力原単位を求めた。結果を表3に示す。
合成例2に記載した方法を用いて製造した、高純度シリカとカーボンの混合物160kg、及び発熱体用黒鉛を、図4及び5に記載されたアチソン炉(アチソン炉の内寸;長さ1000mm、幅500mm、高さ500mm)の中へ収容した後、約2500℃で約10時間通電加熱を行い、炭化珪素の塊状物14.8kgを生成させた。
発熱体用黒鉛としては実施例1で用いた分解黒鉛を使用した。
得られた炭化珪素の塊状物を粉砕し、炭化珪素粉末を得た。得られた炭化珪素粉末中の不純物(B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、及びO)の含有率を、上述した分析方法を用いて測定した。結果を表2に示す。
また、消費電力量と得られた炭化珪素量から、炭化珪素の電力原単位を求めた。結果を表3に示す。
合成例1に記載した方法を用いて製造した、シリカとカーボンの混合物300gを、超高温電気炉を用いて、空気雰囲気下において、2000℃で24時間加熱を行い、炭化珪素の塊状物110gを生成させた。
得られた炭化珪素の塊状物を粉砕し、炭化珪素粉末を得た。得られた炭化珪素粉末中の不純物(B、P、Al、Cu、Fe、Mg、Ni、Ti、及びO)の含有率を、上述した分析方法を用いて測定した。結果を表2に示す。
また、消費電力量と得られた炭化珪素量から、炭化珪素の電力原単位を求めた。結果を表3に示す。
また、表3から、本発明の製造方法は、消費電力量が少ないことがわかる。
2 発熱体用黒鉛
3 電極芯
4 アチソン炉
5 炉本体
6 シリカとカーボンからなる粒子
Claims (3)
- アチソン炉を用いて、粒子内にシリカとカーボンの各々が全体的に分布しており、かつ、B及びPの各々の含有率が1ppm以下である、シリカとカーボンからなる粒子を加熱して、高純度炭化珪素粉末を得る、高純度炭化珪素粉末の製造方法。
- 上記シリカとカーボンからなる粒子が、粒子内のいずれの地点においても、シリカの含有率が90質量%以下であり、かつ、カーボンの含有率が10質量%以上である、請求項1に記載の高純度炭化珪素粉末の製造方法。
- 上記シリカとカーボンからなる粒子が、Al、Fe、Mg、Ca、及びTiの含有率が、各々、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、5ppm以下、1ppm以下である、請求項1または2に記載の高純度炭化珪素粉末の製造方法。
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