本発明は振動式搬送装置に係り、特に、搬送物を搬送するための搬送路を備えた搬送体に振動を与えるとともに、該搬送体と逆位相で振動する慣性質量体を備えた搬送装置の構造に関する。
一般に、振動式搬送装置においては、装置から外部への振動エネルギーの流出を抑制し、装置の周囲に設置された外部機器への影響を低減するために、部品などを搬送する搬送体とは別に慣性質量体(カウンタウェイト)を設けたものが知られている(例えば、以下の特許文献1および2参照)。特許文献1に記載の装置では、慣性質量体22を加振体21に対して搬送体25への振動伝達側とは反対側に接続固定するとともに、加振体取付部材23と搬送体25とを接続する振動伝達用板ばね26の中間部を連結部材支持片28を介して防振用板ばね27により弾性支持することにより、搬送体25からの反力を吸収し、防振用板ばね27へ伝達される振動を抑制している。
また、特許文献2に記載の装置では、床上に防振用板ばね15を介して設置された板ばね取付体14と搬送体のトラフ11とを、加振体20a,20bを介して弾性接続し、カウンタウェイト13を板ばね取付体14に対し搬送体11とは反対側に加振体21a,21bを介して弾性接続した構造において、センサにより検出される防振用板ばね15の振動が抑制されるように、上記加振体20a,20bと加振体21a,21bを制御するようにしている。
また、増幅ばね5と防振ばね7で弾性支持された接続部材4に圧電駆動体3を接続するとともに、この圧電駆動体3の反対側に慣性体6を接続した構造としては、以下の特許文献3および4に記載された装置がある。これらの装置では、圧電駆動体3により接続部材4および増幅ばね5を介して搬送体2を振動させるが、圧電駆動体3の反対側に慣性体6が接続されていることで、慣性体6が搬送体2と逆位相で揺動するため、防振ばね7から基台1へ流出する振動エネルギーを抑制することができる。
特開平11−91928号公報
実公平5−20473号公報
特開2007−137674号公報
特開2008−273714号公報
しかしながら、上記特許文献1のような従来の振動式搬送装置では、慣性質量体22が加振体21に対して加振体取付部材23とは反対側に直接に接続され、慣性質量体22と加振体取付部材23との間に振動を生じさせるので、搬送体25の慣性力に対抗すべき加振体21、慣性質量体22および加振体取付部材23の全体の振動態様が搬送体25の振動態様に充分に対応したものになりにくく、搬送体25の反力を十分に吸収することができずに、振動伝達用板ばね26の中間部から連結部材支持片28に伝達される振動エネルギーを大幅に抑制することができないという問題がある。また、この構成では、加振体21、慣性質量体22、加振体取付部材23、搬送体25および振動伝達用板ばね26の全体に搬送方向に沿った上下動(ピッチング動作)が生じやすく、この上下動の振動エネルギーは連結部材支持片28側へ流出しやすいとともに、搬送体25の搬送方向の搬送速度の不均一性や搬送物の搬送状態の不安定性をもたらすという問題もある。
また、上記特許文献2のような従来の振動式搬送装置では、加振体20a,20bがトラフ11を直接に駆動するため、その反動を板ばね取付体14から防振用板ばね15へ伝達させないようにすることが難しく、また、充分な防振作用を得るには、板ばね取付体14とカウンタウェイト13との間に別の加振体21a,21bを介在させるとともに、防振用板ばね15に設置した反力検出器22の検出値に応じて上記別の加振体21a,21bを制御しなければならないため、機械的構造および加振体の制御が複雑になるという問題がある。また、この構成でも、一対の加振体間の制御により搬送方向の反動を打ち消すことはできるが、防振用板ばね15上に配置される全体構造の搬送方向に沿った上下動(ピッチング動作)を抑制することは難しいので、振動エネルギーの流出の充分な抑制および搬送速度の均一性や搬送状態の安定性を実現することは困難である。
さらに、上記特許文献3および4のような従来の振動式搬送装置では、基台1への振動エネルギーの流出を或る程度抑制できるものの、上記特許文献1と同様に、圧電駆動体3の反対側に慣性体6が接続されていることにより、慣性体6の慣性力による搬送体2の反力の低減効果が不十分な場合がある。また、慣性体6の質量を大きくすると、慣性体6の前後両側において圧電駆動体を介して連結された接続部材4およびこれに増幅ばね5を介して接続された搬送体2に搬送方向に沿った上下動(ピッチング動作)が生じやすくなるため、実際に搬送速度が搬送方向に沿って変動したり軽量な搬送物があばれやすくなったりするなど、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性に関する問題がある。
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、装置から設置面に流出する振動エネルギーを従来よりも効率的に抑制できる振動式搬送装置を実現することにある。また、搬送方向に沿った上下動を低減することにより、搬送速度の均一化や搬送姿勢の安定化を図ることも目的とする。
斯かる実情に鑑み、本発明の振動式搬送装置は、搬送物を搬送する直線状の搬送路を備えた搬送体(11、31)と、該搬送体を搬送方向(F)の前方と後方においてそれぞれ前記搬送方向に撓み変形可能に弾性支持する板状の第1の弾性体(12a、12b、32a、32b)と、該第1の弾性体を介して前記搬送体の下方に接続された接続部材(13a、13b、13a′、13b′、33)と、該接続部材を前記搬送方向の前方と後方においてそれぞれ下方から弾性支持する第2の弾性体(14a、14b、34a、34b)と、前記接続部材に対して前記搬送方向の振動を与える加振体(16a、16b、36,37、37′)と、前記接続部材に対して前記搬送方向に撓み変形可能に接続された板状の第3の弾性体(21a、21b、41a、41b)と、該第3の弾性体を介して前記接続部材に弾性接続され前記搬送方向に移動可能に構成された慣性質量体(22、22′、42)と、を具備し、前記搬送体と前記慣性質量体が逆位相で振動することを特徴とする。
本発明によれば、搬送体は、第1の弾性体、接続部材および第2の弾性体により、搬送方向に移動可能となるように下方より弾性支持される。このとき、加振体により搬送方向の振動が接続部材に与えられると当該接続部材を介して第1の弾性体に振動が伝搬して搬送体が搬送方向に振動するが、この振動伝搬経路とは別に、接続部材に第3の弾性体を介して弾性接続された慣性質量体が搬送方向に上記搬送体と逆位相で振動するために、接続部材の振幅が充分に低減されるから、接続部材から第2の弾性体を介した振動エネルギーの流出を従来よりも効率的に抑制できる。また、設置面へ流出する振動エネルギーが従来よりも低減されると設置面側から搬送体が受ける規制力も低減されるため、搬送体に生ずる不要振動(例えば、幅方向のピッチング動作を生じさせる振動など)の発生を抑制できる。特に、上述の振動伝搬経路に沿った各部材の組立体に搬送方向に沿った上下動(ピッチング動作)についても、振動伝搬経路とは別に設けられた、逆位相で振動する第3の弾性体および慣性質量体により軽減することができるから、従来よりも搬送速度の均一性や搬送状態の安定性を高めることができる。
本発明において、前記搬送体は前記搬送方向の前方へ向けて水平方向に対し斜め上方へ振動し、前記慣性質量体は前記搬送方向の後方へ向けて水平方向に対し斜め上方に振動することが好ましい。これによれば、搬送体の振動時において搬送体の移動方向や加減速に起因して生ずる上下動(搬送方向に沿ったピッチング動作)による影響を慣性質量体の揺動に伴う逆向きの作用によって減殺することができるため、第2の弾性体を介した振動エネルギーの流出をさらに低減できるとともに、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性をさらに高めることができる。
本発明において、前記慣性質量体は前記第3の弾性体のみを介して前記搬送方向に揺動可能に支持されていることが好ましい。基本的には慣性質量体が少なくとも搬送方向に移動可能に構成されていれば第2の弾性体を介した振動エネルギーの流出を抑制できるが、この構成によれば、第3の弾性体のみを介して慣性質量体が揺動可能に支持されていることにより、搬送体の揺動による反動を効率的に吸収することができ、特に上下方向の反動も吸収できる。この場合に、慣性質量体の揺動の向きに関しては、例えば、前記第3の弾性体において、前記接続部材に対する取付位置が前記慣性質量体に対する取付位置よりも前記搬送方向の前方に配置されるように接続されると、慣性質量体を前記搬送方向の後方へ向けて水平方向に対し斜め上方に振動するように構成できる。特に、前記第3の弾性体を前記接続部材に対する取付位置から前記慣性質量体に対する取付位置に向かう傾斜姿勢で取り付けることが望ましい。
本発明において、前記慣性質量体の重心は前記接続部材に対する前記慣性質量体の取付位置よりも下方に配置されることが好ましい。これによれば、接続部材に対して搬送体の重心位置と慣性質量体の重心位置が上下反対側に配置されるため、搬送体から受ける反力(特に上下動)を効率的に吸収でき、慣性質量体の重量を軽減できる。ここで、前記加振体の重心が前記接続部材に対する前記加振体の取付位置よりも上方に配置されるように構成すれば、加振体と慣性質量体を搬送体と設置面の間に効率的に配置できるために装置を高さ方向にコンパクトに構成できる。
本発明において、前記搬送方向の前方にそれぞれ配置された前記第1の弾性体、前記第2の弾性体および前記第3の弾性体に対して、共に接続された第1の前記接続部材と、前記搬送方向の後方にそれぞれ配置された前記第1の弾性体、前記第2の弾性体および前記第3の弾性体に対して、共に接続された第2の前記接続部材とを有し、前記第1の接続部材と前記第2の接続部材は相互に離間して配置されることが好ましい。これによれば、搬送方向の前後にそれぞれ配置された第1の接続部材と第2の接続部材が別体に構成されて、搬送体が第1の接続部材と第2の接続部材によりそれぞれ第1の弾性体を介して搬送方向の前後においてそれぞれ別個に加振されるため、第1の接続部材と第2の接続部材が共通化若しくは一体固定化されている場合に比べて、搬送体の搬送方向に沿った上下動(ピッチング動作)が生じにくくなるので、搬送方向に沿った搬送速度の均一性や搬送状態の安定性をさらに向上できる。
この場合において、前記加振体は、前記第1の接続部材に一端が接続された第1の圧電駆動体と、前記第2の接続部材に一端が接続された第2の圧電駆動体と、前記第1の圧電駆動体と前記第2の圧電駆動体の他端同士を接続固定する連結部材とを有することが望ましい。これによれば、第1の接続部材と第2の接続部材がそれぞれ別個の第1の圧電駆動体と第2の圧電駆動体によりそれぞれ駆動されるため、搬送方向に沿った上下動をさらに抑制できると同時に、両圧電駆動体の他端同士が連結部材により接続固定されるので、振動系の一体性を確保することができ、搬送方向前後の駆動態様のばらつきを抑制できる。また、連結部材が圧電駆動体の他端に接続された慣性体としての役割をも果たすので、駆動効率の向上を図ることもできる。
本発明において、前記加振体は、前記搬送体と前記接続部材の間に振動を生成するように構成してもよく、或いは、前記接続部材と前記慣性質量体の間に振動を生成するように構成してもよい。これらの場合における加振体は圧電駆動体と電磁駆動体のいずれであってもよいが、電磁駆動体であることが好ましい。電磁駆動体であれば、振動を生成する両側の部材を相互に必要以上に拘束しなくてもすむので、搬送体と慣性質量体の間の振動の打ち消し作用を向上させることができる。
本発明によれば、装置の設置面から流出する振動エネルギーを従来よりも効率的に抑制できる振動式搬送装置を実現できるという優れた効果を奏し得る。また、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性を高めることもできる。
本発明に係る第1実施形態の構造を示す側面図。
第1実施形態の正面図。
本発明に係る第2実施形態の構造を示す側面図。
第2実施形態の正面図。
本発明に係る第3実施形態の構造を示す側面図。
第3実施形態の正面図。
本発明に係る第4実施形態の構造を示す側面図。
第4実施形態の背面図。
第1実施形態の振動状態を強調して示すシミュレーション画像(a)および(b)。
第2実施形態の振動状態を強調して示すシミュレーション画像(a)および(b)。
第3実施形態の振動状態を強調して示すシミュレーション画像(a)および(b)。
第4実施形態の振動状態を強調して示すシミュレーション画像(a)および(b)。
(第1実施形態)次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明に係る第1実施形態の振動式搬送装置の側面図、図2は同実施形態の正面図、図9(a)および(b)はその振動系の共振時における振動態様を構造解析プログラムにより強調して示した動画を作成したときの搬送方向の前後の最大振幅時の変形態様およびその時のグレースケールで段階的に表された各部の変形量を示すシミュレーション画像である。なお、本明細書では、装置の向きに関し、搬送方向Fの前方(搬送物の供給先)の側から見た面を正面、搬送方向Fの後方(搬送物の供給元)の側から見た面を背面とする。なお、図9乃至図12に示す各シミュレーション画像は、いずれも装置の機械的構造における共振状態の変位態様を振幅を強調して示す動画において、搬送方向Fの前後の最大変位時においてそれぞれ抽出した静止画(a)および(b)である。
図1および図2に示すように、振動式搬送装置10は、トラフ11aと、このトラフ11a上に固定される図示点線で示す搬送ブロック11bからなる搬送体11を備える。搬送体11は図示のようにトラフ11aと搬送ブロック11bが接続固定されたものに限らず、両者が一体に構成されたものであってもよい。搬送ブロック11bの上面には図示しない搬送路が直線状に形成されている。この搬送路では、図示しない電子部品などの搬送物が搬送方向Fに沿って図示矢印の向きに搬送される。
トラフ11aの前端部(搬送方向Fの最も前方にある部位)には、板ばね形状の増幅ばね12a(の上端)が接続固定されている。また、トラフ11aの後端部(搬送方向Fの後方にある部位)には、板ばね形状の増幅ばね12b(の上端)が接続固定されている。上記増幅ばね12a(の下端)は搬送方向Fの前方に配置された接続部材13aに接続固定される。また、増幅ばね12b(の下端)は搬送方向Fの後方に配置された接続部材13bに接続固定される。図示例では、増幅ばね12a,12bの下端は接続部材13a、13bの上部に接続固定されている。また、増幅ばね12a,12bは接続部材13a,13bの搬送方向Fの前後の外側面(搬送方向Fの前方にある接続部材13aの前面、搬送方向Fの後方にある接続部材13bの背面)上にそれぞれ固定されている。増幅ばね12a,12bは搬送方向Fに撓み変形可能に構成されるものであり、それによって搬送体11を下方より搬送方向Fへ揺動可能に弾性支持する。増幅ばね12a,12bは上記第1の弾性体に相当する。
接続部材13aは板ばね形状の防振ばね14a(の上端)に接続固定されている。また、接続部材13bは板ばね形状の防振ばね14b(の上端)に接続固定されている。図示例では、防振ばね14a、14bの上端は接続部材13a,13bの下部に接続固定されている。また、防振ばね14a,14bは接続部材13a,13bの搬送方向Fの前後の外側面(搬送方向Fの前方にある接続部材13aの前面、搬送方向Fの後方にある接続部材13bの背面)上にそれぞれ固定されている。防振ばね14a,14bは上記第2の弾性体に相当する。ここで、増幅ばね12a,12bと防振ばね14a,14bは、搬送方向Fの前方および後方においてそれぞれ搬送方向Fの前方へ向けて水平方向に対して斜め上方に向くように傾斜している。換言すると、いずれのばねもその下端よりも上端が搬送方向Fの後方に位置するように傾斜している。また、本実施形態では、増幅ばね12a,12bと防振ばね14a,14bは、下から上に向かうに従って搬送方向Fの前方から搬送方向Fの後方に向かう態様で傾斜した共通の平面上に沿ってほぼ配置される。ただし、増幅ばね12a,12bと防振ばね14a,14bとは厳密に同一平面上に設置される必要はなく、相互にずれて配置されていてもよい。ここで、防振ばね14a,14bは搬送方向Fに撓み変形可能に構成されるものであり、それによって接続部材13a,13bを搬送方向Fへ揺動可能な状態で下方より弾性支持している。
接続部材13aには、搬送方向Fの前方に配置された圧電駆動体16a(の下端)が接続される。また、接続部材13bには、搬送方向Fの後方に配置された圧電駆動体16b(の下端)が接続される。これらの圧電駆動体16a、16bは、シム板などの弾性金属板(の表裏少なくとも一方の面)上に圧電体を固着した板状体である。ただし、本実施形態では、弾性金属板の表裏両面に共に圧電体を固着した構造、或いは、表裏いずれかの面に複数の圧電層を積層した積層圧電体を固着した構造を用いることが好ましい。図示例の場合、圧電駆動体16a、16bは、上記増幅ばね12a,12bおよび上記防振ばね14a,14bと平行な姿勢で設置されている。また、圧電駆動体16a、16bは、上記圧電体の表裏に電圧を印加することによって長さ方向に撓み変形するように構成され、これによって所定の交流電圧を印加することで撓み振動を生ずるようになっている。ここで、本明細書では、圧電駆動体や板状の各弾性体において、振動の伝搬方向(撓み方向)に沿った寸法および方向を「長さ」および「長さ方向」とし、当該伝搬方向(撓み方向)と直交する方向に沿った寸法および方向を「幅」および「幅方向」ということにする。したがって、本実施形態の場合には、上記増幅ばね12a,12b、上記防振ばね14a,14bおよび圧電駆動体16a,16bは、それぞれ長さ方向を上下方向に近い斜め方向とし、それぞれ幅方向を左右方向とする姿勢で設置されている。
上記圧電駆動体16a(の上端)と上記圧電駆動体16b(の上端)は連結部材17を介して相互に接続固定されている。図示例では、連結部材17の搬送方向Fの前端面と後端面にそれぞれ圧電駆動体16aと圧電駆動体16bが接続固定される。本実施形態の場合、連結部材17は圧電駆動体16a,16b以外には接続されておらず、トラフ11aとは離間している。図示例の場合、連結部材17は板状体であり、基準姿勢(振動していない静置状態における姿勢)が水平となるように構成されている。
防振ばね14a,14bの下端は基台15にそれぞれ接続固定されている。図示例の場合、基台15は、その搬送方向Fの中間部が一段高く構成された側面視で凸字形状に構成され、当該中間部の前方の段差面に防振ばね14aが接続固定され、後方の段差面に防振ばね14bが接続固定される。以上のような構成により、本実施形態では、搬送体11は増幅ばね12a,12b、接続部材13a,13bおよび防振ばね14a,14bにより搬送方向Fの前後2箇所においてそれぞれ弾性支持され、搬送方向Fに揺動可能とされる。ここで、増幅ばね12a,12bと防振ばね14a,14bは共に搬送方向Fにおいて同一の向きに傾斜しているため、両ばねが撓み変形したとき、搬送体は搬送方向Fの前方へ向けて水平方向に対して僅かに(例えば、3〜12度程度)斜め上方に振動するように構成される。ただし、同様の振動態様を実現する構成としては、上記の板ばね自体が傾斜した態様に限らず、例えば、増幅ばね12a,12bが防振ばね14a,14bに対して搬送方向Fの後方に配置されるように、増幅ばね12a,12bの下端の接続部材13a,13bに対する取付位置が防振ばね14a,14bの上端の接続部材13a,13bに対する取付位置よりも搬送方向Fの後方にずらして接続してもよい。このとき、両ばねを垂直姿勢としてもよく、傾斜姿勢としてもよい。
上記接続部材13aには板ばね形状の連結ばね21aの一端(図示上端)が接続固定され、この連結ばね21aの他端(図示下端)は慣性質量体22に接続固定される。また、上記接続部材13bには板ばね形状の連結ばね21bの一端(図示上端)が接続固定され、この連結ばね21aの他端(図示下端)は上記慣性質量体22に接続固定される。図示例の場合、連結ばね21a,21bは慣性質量体22の搬送方向Fの前後の端面上に固定される。また、慣性質量体22は上記圧電駆動体16a,16bおよび連結部材17よりも下方に配置される。図示例では、慣性質量体22は上記連結ばね21a,21bが接続固定された板状部22a上に、当該板状部22aよりも搬送方向Fの前後範囲が狭い追加質量部22bを固定することによって側面視で凸状に構成される。これによって、図示例のように追加質量部を厚く設けても、慣性質量体22が接続部材13a,13bや圧電駆動体16a,16bと干渉しないように構成できるとともに、追加質量部22bを設けることで慣性質量体22の慣性モーメントを大きくすることができる。もっとも、慣性質量体22は図示例のように上記板状部22aと上記追加質量部22bを固定したものに限らず、両者を一体に構成したものであってもよい。なお、上記連結ばね21a,21bは上記第3の弾性体に相当する。
上記慣性質量体22は、基本的には搬送方向Fに移動可能に構成されていれば、搬送体から受ける搬送方向Fの反力を吸収することにより、接続部材13a,13bから防振ばね14a,14bへの振動エネルギーの流出が抑制される。ただし、本実施形態では、慣性質量体22は、上記連結ばね21a,21bのみを介して他部材(接続部材13a,13b)と接続され、すなわち、連結ばね21a,21bのみを介して弾性支持されているため、本実施形態の振動系において自由端として動作するように構成される。これによって、連結ばね21a,21bにより慣性質量体22が揺動することで、搬送体11から受ける反力をより効率的に吸収できる。ここで、図示例のように、慣性質量体22の重心が連結ばね21a,21bの接続部材13a,13bに対する取付位置よりも下方に配置されることが好ましい。これにより、接続部材13a,13bに対して、搬送体11が上方に弾性接続される一方、慣性質量体22が下方に弾性接続されるため、接続部材13a,13bの上下両側にある慣性のバランスで相互に反力を打ち消すように振動系を構成できる。したがって、装置全体の重心を低減して安定性を高めることができるとともに、接続部材13a,13bの振動を低減しやすくなり、防振ばね14a,14bを介した振動の伝搬をさらに抑制できる。なお、このパラグラフで述べた各構成およびその作用効果は、後述する他の実施形態でも同様である。
本実施形態では、図1に示すように、防振ばね14a,14bと連結ばね21a,21bとが搬送方向Fに見て近接して、或いは、一致した位置(幅方向に並列する位置)に配置されているため、図2に示すように、防振ばね14a,14bの幅方向中央を開口部14cとし、この開口部14cの開口面内に連結ばね21a,21bを配置することで、両ばねが相互に接触しないように構成している。これにより、慣性質量体22の重量を増加させやすくなると同時に、装置全体(一般的には搬送ブロック11bを除いた部分)を搬送方向Fに見てコンパクトに構成することが可能になる。図示例では、連結ばね21a,21bの上下両端を固定するためのボルト又はナットも上記開口部14c内に配置されて防振ばね14a,14bと接触しないように構成されている。図示例の連結ばね21a,21bは、搬送方向Fの前後において防振ばね14a,14bの内側(連結ばね21aは防振ばね14aに対し搬送方向Fの後方、連結ばね21bは防振ばね14bに対し搬送方向Fの前方)に配置され、防振ばね14a,14bとそれぞれ平行に設置されている。
ここで、防振ばね14a,14bの上記開口部14cおよびその左右両側部分は、連結ばね21a,21b(の中央軸線)を中心として幅方向に左右対称に構成されている。このようにすると、搬送体11や慣性質量体22の幅方向の弾性支持特性に偏りが生じにくくなるため、ねじれ振動(幅方向のピッチング動作)による駆動効率の低下や搬送状態の不安定化を防止できる。なお、本実施形態では、連結ばね21a,21bの幅方向両側に防振ばね14a,14bが配置される構成としているため、防振ばね14a,14bによる弾性支持力の幅方向のバランスや安定性を確保しやすくなるとともに、連結ばね21a,21bの弾性率を大きくして慣性質量体22を揺動しやすくする(結果として揺動振幅が拡大される)ことで搬送体11の反力を十分に吸収できるように構成する上で好都合である。
本実施形態によれば、加振体(圧電駆動体16a,16bおよび連結部材17)により生ずる振動が接続部材13a,13bにそれぞれ伝達され、さらに増幅ばね12a,12bを介してそれぞれ搬送体11に伝達される。一方で、図9(a)及び(b)に示すように、共振状態においては、接続部材13a,13bが受ける反力は、搬送体11とは逆位相(位相差180度)で揺動する慣性質量体22により連結ばね21a,21bを介して吸収されるため、搬送体11は充分な振幅で振動できると同時に、防振ばね14a,14bから基台15への振動エネルギーの流出が抑制される。特に、加振体から接続部材13a,13bおよび増幅ばね12a,12bを経て搬送体11に向かう振動伝達経路とは別に、接続部材13a,13bに接続された連結ばね21a,21bおよび慣性質量体22が設けられるため、上記振動伝達経路を構成する、搬送体11、増幅ばね12a,12b、接続部材13a,13b、圧電駆動体16a,16bおよび連結部材17の組立体全体に搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)が生じても、当該組立体とは別の連結ばね21a,21bおよび慣性質量体22による反力吸収作用によって軽減することができるため、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性を高めることができる。
実際に、図9(a)および(b)に示されるように、搬送体11を搬送方向Fの前後においてそれぞれ弾性支持する増幅ばね12a,12b、接続部材13a,13bおよび防振ばね14a,14bからなる弾性支持構造の振動の節は、図示のグレースケールで表されるように、接続部材13a,13bと防振ばね14a,14bとの連結部(接続部材13a,13bの下部若しくは防振ばね14a,14bの上部)にあり、当該連結部はほとんど変位していない。その一方で、上記連結部に接続された連結ばね21a,21bが慣性質量体22の変位により大きく撓み変形することがわかる。
従来の振動式搬送装置では、基台の重量を大きく設定するか、他の重量物(床など)に固定しないと、振動エネルギーの基台への流出により搬送体の振幅が充分に得られず、搬送物を高速に搬送することができなくなるという問題点があり、そのために基台の重量を大きくしていた。また、設置面への振動エネルギーの流出を低減するために防振ゴムやコイルばね等の防振部材を介して基台の下方に設置台をさらに配置するといったことも行われていた。しかしながら、本実施形態では、上述のように慣性質量体22による反力の低減により基台15の重量を軽量化しても充分な搬送力を確保することができた。例えば、全体で35kgの重量を有する従来装置に対して、これと同重量の搬送体11を備えた本実施形態では、基台15の重量を低減することにより20kg程度若しくはそれ以下の重量で構成することができることが判明している。これにより、装置の搬入、移動、設置などの各作業が容易化される。
このとき、搬送方向Fの前後の接続部材13a,13bからそれぞれ増幅ばね12a,12bを介して搬送体11が駆動され、これらの駆動箇所は接続部材13aと13bが圧電駆動体16a,16bを介して連結部材17により接続固定されているものの、搬送体11は圧電駆動体16aと16bの振動駆動源により搬送方向Fの前後2箇所において個々に加振されるため、増幅ばね12aと12bが共通の部材に接続される場合に比べて、搬送方向Fに沿ったピッチング動作が生じにくくなる。すなわち、搬送体11への振動伝搬経路上にある接続部材13aと13bが相互に一体化された場合には、振動系全体における搬送方向Fの前後の一体性が高まるため、搬送方向Fに沿ったピッチング動作が生じやすくなり、搬送方向Fの前後2箇所にある増幅ばね12aと12bの接続位置で振動方向に差が生じやすくなるので、搬送体11にも搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)が生じやすくなり、これにより搬送位置による搬送速度の差が大きくなったり、搬送状態が不安定になったりする。これに対して、本実施形態では搬送方向Fの前後2箇所の接続部材13a,と13bが別体に構成されることにより、特に接続部材13aと13bが別々の圧電駆動体16aと16bに駆動されることもあり、上記ピッチング動作による振動方向の差が生じにくくなる。したがって、搬送体の搬送方向F(搬送路)に沿った搬送速度が当該方向に沿った位置に応じて変化することが抑制され、より均一な搬送速度を実現できる。その結果、増幅ばね12aと12bの間の搬送方向Fの前後間隔を変えなくても、搬送体11を搬送方向Fに沿って長く形成することが可能になるため、当該装置を含む製造ラインなどの設計自由度が向上する。また、搬送体11の振動時の移動態様が並進移動に近くなるため、搬送物の搬送姿勢が安定するなど、搬送状態の安定性が向上する。
(第2実施形態)次に、本発明に係る第2実施形態について詳細に説明する。図3は、本発明に係る第2実施形態の振動式搬送装置の側面図、図4は同実施形態の正面図、図10(a)および(b)はその振動系の共振時における振動態様を構造解析プログラムにより強調して示した動画を作成したときの搬送方向の前後の最大振幅時の変形態様およびその時のグレースケールで段階的に表された各部の変形量を示すシミュレーション画像である。
この第2実施形態では、上記第1実施形態と共通の基本構成を有するので、同一部分には同一符号を付し、共通の構成に関する説明は省略する。本実施形態において、搬送体11(トラフ11aおよび搬送ブロック11b)、増幅ばね12a,12b、防振ばね14a,14b、基台15、圧電駆動体16a,16b、連結部材17、および、連結ばね21a,21bの各々は、基本的に第1実施形態と同一の構造を備えている。
本実施形態においては、上記連結ばね21a,21bに対する接続部材13a′,13b′の取付位置および取付角度と、上記連結ばね21a,21bに対する慣性質量体22′の板状部22a′の取付位置および取付角度が第1実施形態とは異なる。そして、上記連結ばね21a,21bが上記防振ばね14a,14bに対して上記搬送方向Fの異なる位置(搬送方向Fのより後方にある位置)に配置されている。また、上記連結ばね21a,21bは上記増幅ばね12a,12bおよび上記防振ばね14a,14bとは逆向きに傾斜している。
また、本実施形態では、連結ばね21a自体が防振ばね14aよりも搬送方向Fの後方に配置されているため、防振ばね14aと連結ばね21a自体が相互に干渉することがないから、第1実施形態のように、防振ばね14aに、連結ばね21aを回避するための開口部14cを設けたり両ばねを幅方向にずらして配置したりする必要はない。ただし、連結ばね21aを上記接続部材13a′および上記慣性質量体22′に接続固定するためのボルト又はナットが防振ばね14aに干渉しないように、防振ばね14aに上記ボルト又はナットを回避するための小開口部14c′,14d′を設けている。
一方、連結ばね21bも防振ばね14bに対して搬送方向Fの後方に配置されているので、上記と同様に防振ばね14bと連結ばね21b自体が相互に干渉することはない。しかし、連結ばね21bに対する取付位置をそれぞれ防振ばね14bに対する取付位置よりも搬送方向Fの後方に配置しつつ、連結ばね21bと慣性質量体22′とを連結するために、接続部材13b′と慣性質量体22′の少なくとも一部(後端部)に、搬送方向Fの後方に突出した連結ばね21bに対する取付部13b1′および取付部22a1′を設けるとともに、上記防振ばね14bの一部に、上記接続部材13b′の取付部13b1′および慣性質量体22′の取付部22a1′を非接触で通過させるための第1実施形態の開口部14cと同様の図示しない開口部を設けている。
本実施形態でも、基本的には上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。実際に、図10(a)および(b)に示すように、振動の節が接続部材13a′,13b′にあり、この接続部材13a′,13b′に接続された二種のばねである防振ばね14a,14bと連結ばね21a,21bのうち、連結ばね21a,21bの下端は慣性質量体22′とともに大きく変位する一方で、防振ばね14a,14bはほとんど変形しない。
本実施形態では、慣性質量体22′を接続部材13a′,13b′に連結するための連結ばね21a,21bが増幅ばね12a,12bとは逆に傾斜していることにより、振動時における上下動については第1実施形態とは異なる作用効果をも生ずる。
上述の第1実施形態では、図1において、搬送体11が搬送方向Fの前方へ向かう過程(以下、単に「搬送体前進時」という。)では、搬送物に前進力を与えるために搬送体は搬送方向Fの前方に向けて水平方向に対して斜め上方へ移動する(矢印P)が、このとき、当該移動方向や加減速に起因して、搬送体11の搬送方向Fの前方にある部分は相対的に一旦上昇し(図示矢印U)、搬送方向Fの後方にある部分は相対的に一旦下降する(図示矢印D)。一方、この搬送体前進時において慣性質量体22は搬送方向Fの後方に向けて水平方向に対して斜め下方へ移動する(図示矢印Q)が、このとき、慣性質量体22の搬送方向Fの前方にある部分は相対的に一旦上昇し(図示矢印U)、搬送方向Fの後方にある部分は相対的に一旦下降する(図示矢印D)。したがって、振動式搬送装置10における搬送方向Fの前方部の重心は、上記搬送体前進時において上昇し、一方、搬送体が搬送方向の後方へ向かう段階(以下、単に「搬送体後退時」という。)には下降し、これとは逆に、装置の搬送方向Fの後方部の重心は、上記搬送体前進時において下降し、上記搬送体後退時において上昇する。その結果、振動式搬送装置10では、振動に伴って振動系全体に搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)が生じ、これに起因して上記防振ばね14a,14bを介して基台15に上下振動が伝達されやすくなる。特に、本実施形態では防振ばね14a,14bが板ばねであるため、搬送方向Fの前後振動は板ばねの撓み変形によって吸収されやすいが、上下振動は板ばねでは逆に吸収されにくいので、装置の搬送方向Fの上下動(ピッチング動作)がそれほど大きくなくても当該上下動成分における振動エネルギーの流出は比較的大きくなる。
これに対して、この第2実施形態では、連結ばね21a,21bが逆側に傾斜していることにより、上記の搬送体前進時においては慣性質量体22′が搬送方向Fの後方に向けて斜め上方へ移動する(図示矢印Q′)ため、慣性質量体22′の搬送方向Fの前方にある部分は相対的に一旦下降し(図示矢印D)、搬送方向Fの後方にある部分は相対的に一旦上昇する(図示矢印U)。したがって、振動式搬送装置10′では、搬送体11と慣性質量体22′は上下動(ピッチング動作)に関して相互に逆に動作し、振動に伴って生ずる振動系全体の搬送方向Fに沿った上下動が相互に減殺し合うため、上下振動(ピッチング動作)そのものが軽減されるから、上記防振ばね14a,14bを介した上下振動の基台15への伝達も低減され、搬送方向Fに沿った搬送速度の均一性や搬送状態の安定性も高められる。
特に、本実施形態では、防振ばね14a,14bが板ばねであるために上下振動を吸収しにくいことから、装置の上下動(ピッチング動作)の抑制は振動エネルギーの流出を低減するのに非常に有効である。実際に、第1実施形態の振動式搬送装置10よりも第2実施形態の振動式搬送装置10′の方が設置面に伝達される上下振動を抑制できること、並びに、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性も向上することが確認されている。
なお、上記のように慣性質量体22′を搬送方向Fの後方に向けて水平方向に対して斜め上方に振動するように構成するには、連結ばね21a,21bを傾斜姿勢とする場合に限らず、例えば、連結ばね21a,21bを上半部と下半部に分割し、上半部と下半部を搬送方向Fに厚みを有するスペーサで連結してもよい。すなわち、連結ばね21a,21bの上端の接続部材13a,13bに対する取付位置が、連結ばね21a,21bの下端の慣性質量体22′に対する取付位置よりも搬送方向Fの後方に配置されるように構成すれば、上述の慣性質量体22′の振動態様を実現することができる。
また、本実施形態では、連結ばね21aが防振ばね14aより搬送方向Fの後方に配置されるとともに、連結ばね21bも防振ばね14bより搬送方向Fの後方に配置される。これは、上述のように搬送体11を搬送方向Fの前方に向けて水平よりも斜め上方に振動させるために、増幅ばね12a、12bの搬送体11に対する取付位置を防振ばね14の基台15に対する取付位置よりもそれぞれ搬送方向Fの後方に配置する場合において、装置設計上、装置下部において慣性質量体22′を搬送方向Fの後方寄りに配置させやすくなり、これにより、慣性質量体22′の重心位置を搬送体11の重心位置に対して搬送方向Fに一致させることが容易になるからである。
なお、以上説明した第1実施形態と第2実施形態の相互に異なる点については、いずれか一方の実施形態において他方の実施形態の各点を任意に選択して採用することが可能である。また、上記のいずれの実施形態においても、接続部材13aと圧電駆動体16aとからなる組立体と、接続部材13bと圧電駆動体16bとからなる組立体は、圧電駆動体が接続部材に対して搬送方向Fの前後のいずれの側に配置されているかという点で相互に逆向きに組み立てられているが、増幅ばね12a又は12bと連結部材17との干渉を回避するように構成すれば、両組立体を相互に同じ向きに組み立てることも可能である。さらに、搬送方向Fの前後の圧電駆動体16aと16bの上端は、上記のように共通の連結部材17で連結するのではなく、個々の慣性体に別々に連結するようにしてもよい。また、連結部材17に接続される圧電駆動体16aと16bのうちいずれか一方を単なる板ばねで構成することも可能である。
(第3実施形態)次に、本発明に係る第3実施形態について詳細に説明する。図5は、本発明に係る第3実施形態の振動式搬送装置の側面図、図6は同実施形態の正面図、図11(a)および(b)はその振動系の共振時における振動態様を構造解析プログラムにより強調して示した動画を作成したときの搬送方向の前後の最大振幅時の変形態様およびその時のグレースケールで段階的に表された各部の変形量を示すシミュレーション画像である。
本実施形態の振動式搬送装置30は、上記の第1および第2実施形態の各部に対応する、トラフ31aおよび搬送ブロック31bを含む搬送体31、増幅ばね32a,32a、防振ばね34a,34b、基台35、連結ばね41a,41b、並びに、慣性質量体42を備えている。基本的に上記各部材は個々には第1および第2実施形態と同様の構成を有するので、説明を省略する。トラフ31a上には搬送ブロック31bが固定され、この搬送ブロック31bの上面には搬送方向Fに沿って伸びる直線状の搬送路(図示せず)が形成されている。トラフ31aと搬送ブロック31bは搬送体31を構成する。
本実施形態では、搬送方向Fの前後の増幅ばね32aと32bの下端が共通の接続部材33に接続されている。接続部材33は、先の実施形態と同様に防振ばね34a,34bおよび連結ばね41a,41bにも接続される。接続部材33には、搬送方向Fの前方の増幅ばね32a、防振ばね34aおよび連結ばね41aに接続される前方部33aと、搬送方向Fの後方の増幅ばね32b、防振ばね34bおよび連結ばね41bに接続される後方部33bと、上記前方部33aと後方部33bを接続する板状の連結部33cとが一体に、或いは、相互に固定されて設けられている。接続部材33(の後方部33b)には、磁芯36aおよびこれを取り巻くコイル36bを備えた電磁ソレノイド36が取付固定される。磁芯36aの先端面は磁極として構成される。一方、搬送体31(トラフ31a)の下部には下方に伸びて上記磁芯36aの先端面と対向配置される対向磁極を構成する対極部材37が固定されている。ここで、電磁ソレノイド36と対極部材37は電磁駆動式の加振体を構成する。
本実施形態においては、電磁ソレノイド36に交代電圧を印加することによって磁芯36aと対極部材37との間に生ずる磁力により搬送体31と接続部材33との間に搬送方向Fの振動が発生し、これが増幅ばね32a、32bを通して伝搬し、搬送体が振動する。このとき、上記各実施形態と同様に、慣性質量体42が揺動して搬送体31により生ずる反力が打ち消され、基台35へ流出する振動エネルギーが抑制される。また、上記第2実施形態と同様に、連結ばね41a,41bが増幅ばね32a,32bおよび防振ばね34a,34bに対して逆向きに傾斜しているので、基本的に第2実施形態と同様に振動系全体の搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)が低減されるため、基台35へ流出する振動エネルギーがさらに低減される。
また、本実施形態では、接続部材33の前方部33aには、増幅ばね32aの接続箇所から搬送方向Fの前方へさらに突出した取付部33a1が設けられ、この取付部33a1に防振ばね34aが接続固定される。同様に、接続部材33の後方部33bには、増幅ばね32bの接続箇所から搬送方向Fの後方にさらに突出した取付部33b1が設けられ、この取付部33b1に防振ばね34bが接続固定される。このように構成すると、防振ばね34aと34bの搬送方向Fに沿った間隔を大きく確保できるため、図示のように防振ばね34aと34bの間に連結ばね41a,41bおよび慣性質量体42の全てを配置できるとともに、慣性質量体42の配置スペースを大きく確保できるため、充分な慣性力を与えることが可能になる。なお、このような接続部材の取付部と防振ばね、並びに、その搬送方向Fの前後の内側に配置される連結ばねおよび慣性質量体の構成は、上記第1実施形態や第2実施形態において採用することも可能である。
本実施形態では、搬送方向Fの前方に配置された前方部33aと同後方に配置された後方部33bが連結部33cを介して接続部材33として一体に構成されているので、上記第1および第2実施形態のように加振作用を搬送方向Fの前後2箇所において独立して与えるものではない。しかし、本実施形態の加振体は一体の接続部材33と搬送体31の間に振動を生じさせるものであるため、接続部材33の搬送方向Fの前後2箇所に接続された増幅ばね32aと32bを介して共通の接続部材33から与えられる加振作用が与えられるから、搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)の少ない安定した振動を搬送体に生じさせることができる。なお、上記接続部材33において、上記連結部33cを撓み変形可能な弾性体として機能する構成としてもよい。
(第4実施形態)次に、本発明に係る第4実施形態について詳細に説明する。図7は、本発明に係る第4実施形態の振動式搬送装置の側面図、図8は同実施形態の背面図、図12(a)および(b)はその振動系の共振時における振動態様を構造解析プログラムにより強調して示した動画を作成したときの搬送方向の前後の最大振幅時の変形態様およびその時のグレースケールで段階的に表された各部の変形量を示すシミュレーション画像である。
本実施形態の振動式搬送装置30′は、上記第3実施形態と同様に、電磁ソレノイド36を備えた電磁駆動式の装置である。本実施形態では、加振体に関する構成部分を除き、基本的に上記第3実施形態と同様の構成を有するので、同一部分には同一符号を付し、同様の構成については記載を省略する。
本実施形態が第3実施形態と異なるのは、電磁ソレノイド36との間に磁力を生じさせる対極部材37′が、搬送体31ではなく、慣性質量体42に接続固定されている点である。このため、電磁ソレノイド36と対極部材37′により構成される加振体は、直接的には接続部材33と慣性質量体42との間に振動を生じさせる。しかしながら、加振体により生じたこの振動が接続部材33から増幅ばね32a,32bを経て搬送体31に伝達される点では第3実施形態と同様であり、この振動伝達経路によって搬送体31を搬送方向Fに振動させるため、第3実施形態と同様の搬送作用その他の作用効果を得ることができる。
また、本実施形態では、搬送体31に直接加振力を与えず、接続部材33および増幅ばね32a,32bを介して搬送方向Fの前後2箇所において振動を伝達しているため、搬送体31に直接に加振体による振動状態の規制力が働きにくいことから、振動系全体のバランスによって搬送体31の振動態様が決定される。
尚、本発明の振動式搬送装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記の第1乃至第4の実施形態の装置に採用されている個々の構成は、特にそれを妨げる理由がない限り、任意の組み合わせで相互に置換して用いることができる。
10,30…振動式搬送装置、11,31…搬送体、11a,31a…トラフ、11b,31b…搬送ブロック、12a,12b,32a,32b…増幅ばね、13a,13b,13a′,13b′,33a,33b…接続部材、14a,14b,34a,34b…防振ばね、15,35…基台、16a,16b…圧電駆動体、17…連結部材、22,22′…慣性質量体、36…電磁駆動体、36a…磁芯、36b…コイル、37、37′…対極部材
本発明において、前記搬送体は、前記搬送方向の前方へ向けては水平方向に対し斜め上方へ移動するように振動し、前記慣性質量体は、前記搬送方向の後方へ向けては水平方向に対し斜め上方に移動するように振動することが好ましい。これによれば、搬送体の振動時において搬送体の移動方向や加減速に起因して生ずる上下動(搬送方向に沿ったピッチング動作)による影響を慣性質量体の揺動に伴う逆向きの作用によって減殺することができるため、第2の弾性体を介した振動エネルギーの流出をさらに低減できるとともに、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性をさらに高めることができる。
本実施形態の振動式搬送装置30は、上記の第1および第2実施形態の各部に対応する、トラフ31aおよび搬送ブロック31bを含む搬送体31、増幅ばね32a,32b、防振ばね34a,34b、基台35、連結ばね41a,41b、並びに、慣性質量体42を備えている。基本的に上記各部材は個々には第1および第2実施形態と同様の構成を有するので、説明を省略する。トラフ31a上には搬送ブロック31bが固定され、この搬送ブロック31bの上面には搬送方向Fに沿って伸びる直線状の搬送路(図示せず)が形成されている。トラフ31aと搬送ブロック31bは搬送体31を構成する。
本実施形態においては、電磁ソレノイド36に交番電圧を印加することによって磁芯36aと対極部材37との間に生ずる磁力により搬送体31と接続部材33との間に搬送方向Fの振動が発生し、これが増幅ばね32a、32bを通して伝搬し、搬送体が振動する。このとき、上記各実施形態と同様に、慣性質量体42が揺動して搬送体31により生ずる反力が打ち消され、基台35へ流出する振動エネルギーが抑制される。また、上記第2実施形態と同様に、連結ばね41a,41bが増幅ばね32a,32bおよび防振ばね34a,34bに対して逆向きに傾斜しているので、基本的に第2実施形態と同様に振動系全体の搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)が低減されるため、基台35へ流出する振動エネルギーがさらに低減される。
本発明は振動式搬送装置に係り、特に、搬送物を搬送するための搬送路を備えた搬送体に振動を与えるとともに、該搬送体と逆位相で振動する慣性質量体を備えた搬送装置の構造に関する。
一般に、振動式搬送装置においては、装置から外部への振動エネルギーの流出を抑制し、装置の周囲に設置された外部機器への影響を低減するために、部品などを搬送する搬送体とは別に慣性質量体(カウンタウェイト)を設けたものが知られている(例えば、以下の特許文献1および2参照)。特許文献1に記載の装置では、慣性質量体22を加振体21に対して搬送体25への振動伝達側とは反対側に接続固定するとともに、加振体取付部材23と搬送体25とを接続する振動伝達用板ばね26の中間部を連結部材支持片28を介して防振用板ばね27により弾性支持することにより、搬送体25からの反力を吸収し、防振用板ばね27へ伝達される振動を抑制している。
また、特許文献2に記載の装置では、床上に防振用板ばね15を介して設置された板ばね取付体14と搬送体のトラフ11とを、加振体20a,20bを介して弾性接続し、カウンタウェイト13を板ばね取付体14に対し搬送体11とは反対側に加振体21a,21bを介して弾性接続した構造において、センサにより検出される防振用板ばね15の振動が抑制されるように、上記加振体20a,20bと加振体21a,21bを制御するようにしている。
また、増幅ばね5と防振ばね7で弾性支持された接続部材4に圧電駆動体3を接続するとともに、この圧電駆動体3の反対側に慣性体6を接続した構造としては、以下の特許文献3および4に記載された装置がある。これらの装置では、圧電駆動体3により接続部材4および増幅ばね5を介して搬送体2を振動させるが、圧電駆動体3の反対側に慣性体6が接続されていることで、慣性体6が搬送体2と逆位相で揺動するため、防振ばね7から基台1へ流出する振動エネルギーを抑制することができる。
特開平11−91928号公報
実公平5−20473号公報
特開2007−137674号公報
特開2008−273714号公報
しかしながら、上記特許文献1のような従来の振動式搬送装置では、慣性質量体22が加振体21に対して加振体取付部材23とは反対側に直接に接続され、慣性質量体22と加振体取付部材23との間に振動を生じさせるので、搬送体25の慣性力に対抗すべき加振体21、慣性質量体22および加振体取付部材23の全体の振動態様が搬送体25の振動態様に充分に対応したものになりにくく、搬送体25の反力を十分に吸収することができずに、振動伝達用板ばね26の中間部から連結部材支持片28に伝達される振動エネルギーを大幅に抑制することができないという問題がある。また、この構成では、加振体21、慣性質量体22、加振体取付部材23、搬送体25および振動伝達用板ばね26の全体に搬送方向に沿った上下動(ピッチング動作)が生じやすく、この上下動の振動エネルギーは連結部材支持片28側へ流出しやすいとともに、搬送体25の搬送方向の搬送速度の不均一性や搬送物の搬送状態の不安定性をもたらすという問題もある。
また、上記特許文献2のような従来の振動式搬送装置では、加振体20a,20bがトラフ11を直接に駆動するため、その反動を板ばね取付体14から防振用板ばね15へ伝達させないようにすることが難しく、また、充分な防振作用を得るには、板ばね取付体14とカウンタウェイト13との間に別の加振体21a,21bを介在させるとともに、防振用板ばね15に設置した反力検出器22の検出値に応じて上記別の加振体21a,21bを制御しなければならないため、機械的構造および加振体の制御が複雑になるという問題がある。また、この構成でも、一対の加振体間の制御により搬送方向の反動を打ち消すことはできるが、防振用板ばね15上に配置される全体構造の搬送方向に沿った上下動(ピッチング動作)を抑制することは難しいので、振動エネルギーの流出の充分な抑制および搬送速度の均一性や搬送状態の安定性を実現することは困難である。
さらに、上記特許文献3および4のような従来の振動式搬送装置では、基台1への振動エネルギーの流出を或る程度抑制できるものの、上記特許文献1と同様に、圧電駆動体3の反対側に慣性体6が接続されていることにより、慣性体6の慣性力による搬送体2の反力の低減効果が不十分な場合がある。また、慣性体6の質量を大きくすると、慣性体6の前後両側において圧電駆動体を介して連結された接続部材4およびこれに増幅ばね5を介して接続された搬送体2に搬送方向に沿った上下動(ピッチング動作)が生じやすくなるため、実際に搬送速度が搬送方向に沿って変動したり軽量な搬送物があばれやすくなったりするなど、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性に関する問題がある。
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、装置から設置面に流出する振動エネルギーを従来よりも効率的に抑制できる振動式搬送装置を実現することにある。また、搬送方向に沿った上下動を低減することにより、搬送速度の均一化や搬送姿勢の安定化を図ることも目的とする。
斯かる実情に鑑み、第1の発明の振動式搬送装置は、搬送物を搬送する直線状の搬送路を備えた搬送体(11)と、該搬送体を搬送方向(F)の前方と後方においてそれぞれ前記搬送方向に撓み変形可能に弾性支持する前後一対の板状の第1の弾性体(12a、12b)と、前記搬送方向の前方と後方においてそれぞれ対応する前記第1の弾性体を介して前記搬送体の下方に別々に接続された前後一対の接続部材(13a、13b、13a′、13b′)と、前記搬送方向の前方と後方においてそれぞれ対応する前記接続部材を下方から弾性支持する前後一対の板状の第2の弾性体(14a、14b)と、前記搬送方向の前方と後方においてそれぞれ対応する前記接続部材に下端が接続されるとともに、前記対応する接続部材に対して前記搬送方向の振動をそれぞれ与える前後一対の板状の圧電駆動体よりなる加振体(16a、16b)と、前記前後一対の加振体の上端のみが共に接続された連結部材(17)と、前記搬送方向の前方と後方においてそれぞれ対応する前記接続部材に対して前記搬送方向に撓み変形可能に接続されて下方へ伸びる前後一対の板状の第3の弾性体(21a、21b)と、前記前後一対の第3の弾性体のみを介して前記前後一対の接続部材に対して下方に弾性接続され前記搬送方向に揺動可能に構成されるとともに前記加振体及び前記連結部材よりも下方に配置された慣性質量体(22、22′)と、を具備し、前後一対の前記加振体を同位相で動作させることにより前記搬送体と前記慣性質量体が逆位相で振動することを特徴とする。
また、第2の発明の振動式搬送装置は、搬送物を搬送する直線状の搬送路を備えた搬送体(31)と、該搬送体を搬送方向(F)の前方と後方においてそれぞれ前記搬送方向に撓み変形可能に弾性支持する前後一対の板状の第1の弾性体(32a、32b)と、前記前後一対の第1の弾性体を介して前記搬送体の下方に接続された一体の接続部材(33)と、前記接続部材を前記搬送方向の前方と後方においてそれぞれ下方から弾性支持する前後一対の板状の第2の弾性体(34a、34b)と、前記搬送方向の前方と後方においてそれぞれ前記接続部材に対して前記搬送方向に撓み変形可能に接続されて下方へ伸びる前後一対の板状の第3の弾性体(41a、41b)と、前記前後一対の第3の弾性体のみを介して前記接続部材に対して下方に弾性接続され前記搬送方向に揺動可能に構成された慣性質量体(42)と、前記搬送体若しくは前記慣性質量体と前記接続部材との間に前記搬送方向の振動を与える電磁ソレノイドと対極を備えた電磁駆動式の加振体(36,37、37′)と、を具備し、前記加振体を動作させることにより前記搬送体と前記慣性質量体が逆位相で振動することを特徴とする。
本発明によれば、搬送体は、第1の弾性体、接続部材および第2の弾性体により、搬送方向に移動可能となるように下方より弾性支持される。このとき、加振体により搬送方向の振動が接続部材に与えられると当該接続部材を介して第1の弾性体に振動が伝搬して搬送体が搬送方向に振動するが、この振動伝搬経路とは別に、接続部材に第3の弾性体を介して弾性接続された慣性質量体が搬送方向に上記搬送体と逆位相で振動するために、接続部材の振幅が充分に低減されるから、接続部材から第2の弾性体を介した振動エネルギーの流出を従来よりも効率的に抑制できる。また、設置面へ流出する振動エネルギーが従来よりも低減されると設置面側から搬送体が受ける規制力も低減されるため、搬送体に生ずる不要振動(例えば、幅方向のピッチング動作を生じさせる振動など)の発生を抑制できる。特に、上述の振動伝搬経路に沿った各部材の組立体に搬送方向に沿った上下動(ピッチング動作)についても、振動伝搬経路とは別に設けられた、逆位相で振動する第3の弾性体および慣性質量体により軽減することができるから、従来よりも搬送速度の均一性や搬送状態の安定性を高めることができる。
本発明において、前記搬送体は前記搬送方向の前方へ向けては水平方向に対し斜め上方へ移動するように振動し、前記慣性質量体は前記搬送方向の後方へ向けては水平方向に対し斜め上方に移動するように振動することが好ましい。これによれば、搬送体の振動時において搬送体の移動方向や加減速に起因して生ずる上下動(搬送方向に沿ったピッチング動作)による影響を慣性質量体の揺動に伴う逆向きの作用によって減殺することができるため、第2の弾性体を介した振動エネルギーの流出をさらに低減できるとともに、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性をさらに高めることができる。
本発明においては、前記慣性質量体は前記第3の弾性体のみを介して前記搬送方向に揺動可能に支持されている。基本的には慣性質量体が少なくとも搬送方向に移動可能に構成されていれば第2の弾性体を介した振動エネルギーの流出を抑制できるが、この構成によれば、第3の弾性体のみを介して慣性質量体が揺動可能に支持されていることにより、搬送体の揺動による反動を効率的に吸収することができ、特に上下方向の反動も吸収できる。この場合に、慣性質量体の揺動の向きに関しては、例えば、前記第3の弾性体において、前記接続部材に対する取付位置が前記慣性質量体に対する取付位置よりも前記搬送方向の前方に配置されるように接続されると、慣性質量体を前記搬送方向の後方へ向けて水平方向に対し斜め上方に振動するように構成できる。特に、前記第3の弾性体を前記接続部材に対する取付位置から前記慣性質量体に対する取付位置に向かう傾斜姿勢で取り付けることが望ましい。また、本発明においては、前記慣性質量体は前記接続部材に対して下方に弾性接続されることにより、接続部材の上下両側にある搬送体と慣性質量体の慣性のバランスで相互に反力を打ち消すように振動系を構成できる。
第1の発明においては、前記搬送方向の前方にそれぞれ配置された前記第1の弾性体、前記第2の弾性体および前記第3の弾性体に対して、共に接続された前方の前記接続部材と、前記搬送方向の後方にそれぞれ配置された前記第1の弾性体、前記第2の弾性体および前記第3の弾性体に対して、共に接続された後方の前記接続部材とを有し、前記第1の接続部材と前記第2の接続部材は相互に離間して配置される。これによれば、搬送方向の前後にそれぞれ配置された一対の接続部材が別体に構成されて、搬送体が前後一対の接続部材によりそれぞれ第1の弾性体を介して搬送方向の前後においてそれぞれ別個に加振されるため、前後の接続部材が共通化若しくは一体固定化されている場合に比べて、搬送体の搬送方向に沿った上下動(ピッチング動作)が生じにくくなるので、搬送方向に沿った搬送速度の均一性や搬送状態の安定性をさらに向上できる。
この場合において、前記加振体は、前記前方の接続部材に一端が接続された前方の圧電駆動体と、前記後方の接続部材に一端が接続された後方の圧電駆動体と、前記前方の圧電駆動体と前記後方の圧電駆動体の他端同士を接続固定する連結部材とを有するので、前後一対の接続部材がそれぞれ別個の前後の圧電駆動体によりそれぞれ駆動されるため、搬送方向に沿った上下動をさらに抑制できると同時に、両圧電駆動体の他端同士が連結部材により接続固定されるので、振動系の一体性を確保することができ、搬送方向前後の駆動態様のばらつきを抑制できる。また、連結部材が圧電駆動体の他端に接続された慣性体としての役割をも果たすので、駆動効率の向上を図ることもできる。
第2の発明において、前記加振体は、前記搬送体と前記接続部材の間に振動を生成するように構成してもよく、或いは、前記接続部材と前記慣性質量体の間に振動を生成するように構成してもよい。これらの場合における加振体は電磁駆動体であるため、振動を生成する両側の部材を相互に必要以上に拘束しなくてもすむので、搬送体と慣性質量体の間の振動の打ち消し作用を向上させることができる。この場合に、前記接続部材は、それぞれ前方の前記第1の弾性体、前記第2の弾性体及び前記第3の弾性体に接続される前方部と、それぞれ後方の前記第1の弾性体、前記第2の弾性体及び前記第3の弾性体に接続される後方部と、前記前方部と前記後方部を接続する板状の連結部とを有し、前記連結部が撓み変形可能な弾性体として機能することが好ましい。
本発明によれば、装置の設置面から流出する振動エネルギーを従来よりも効率的に抑制できる振動式搬送装置を実現できるという優れた効果を奏し得る。また、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性を高めることもできる。
本発明に係る第1実施形態の構造を示す側面図。
第1実施形態の正面図。
本発明に係る第2実施形態の構造を示す側面図。
第2実施形態の正面図。
本発明に係る第3実施形態の構造を示す側面図。
第3実施形態の正面図。
本発明に係る第4実施形態の構造を示す側面図。
第4実施形態の背面図。
第1実施形態の振動状態を強調して示すシミュレーション画像(a)および(b)。
第2実施形態の振動状態を強調して示すシミュレーション画像(a)および(b)。
第3実施形態の振動状態を強調して示すシミュレーション画像(a)および(b)。
第4実施形態の振動状態を強調して示すシミュレーション画像(a)および(b)。
(第1実施形態)次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1は本発明に係る第1実施形態の振動式搬送装置の側面図、図2は同実施形態の正面図、図9(a)および(b)はその振動系の共振時における振動態様を構造解析プログラムにより強調して示した動画を作成したときの搬送方向の前後の最大振幅時の変形態様およびその時のグレースケールで段階的に表された各部の変形量を示すシミュレーション画像である。なお、本明細書では、装置の向きに関し、搬送方向Fの前方(搬送物の供給先)の側から見た面を正面、搬送方向Fの後方(搬送物の供給元)の側から見た面を背面とする。なお、図9乃至図12に示す各シミュレーション画像は、いずれも装置の機械的構造における共振状態の変位態様を振幅を強調して示す動画において、搬送方向Fの前後の最大変位時においてそれぞれ抽出した静止画(a)および(b)である。
図1および図2に示すように、振動式搬送装置10は、トラフ11aと、このトラフ11a上に固定される図示点線で示す搬送ブロック11bからなる搬送体11を備える。搬送体11は図示のようにトラフ11aと搬送ブロック11bが接続固定されたものに限らず、両者が一体に構成されたものであってもよい。搬送ブロック11bの上面には図示しない搬送路が直線状に形成されている。この搬送路では、図示しない電子部品などの搬送物が搬送方向Fに沿って図示矢印の向きに搬送される。
トラフ11aの前端部(搬送方向Fの最も前方にある部位)には、板ばね形状の増幅ばね12a(の上端)が接続固定されている。また、トラフ11aの後端部(搬送方向Fの後方にある部位)には、板ばね形状の増幅ばね12b(の上端)が接続固定されている。上記増幅ばね12a(の下端)は搬送方向Fの前方に配置された接続部材13aに接続固定される。また、増幅ばね12b(の下端)は搬送方向Fの後方に配置された接続部材13bに接続固定される。図示例では、増幅ばね12a,12bの下端は接続部材13a、13bの上部に接続固定されている。また、増幅ばね12a,12bは接続部材13a,13bの搬送方向Fの前後の外側面(搬送方向Fの前方にある接続部材13aの前面、搬送方向Fの後方にある接続部材13bの背面)上にそれぞれ固定されている。増幅ばね12a,12bは搬送方向Fに撓み変形可能に構成されるものであり、それによって搬送体11を下方より搬送方向Fへ揺動可能に弾性支持する。増幅ばね12a,12bは上記第1の弾性体に相当する。
接続部材13aは板ばね形状の防振ばね14a(の上端)に接続固定されている。また、接続部材13bは板ばね形状の防振ばね14b(の上端)に接続固定されている。図示例では、防振ばね14a、14bの上端は接続部材13a,13bの下部に接続固定されている。また、防振ばね14a,14bは接続部材13a,13bの搬送方向Fの前後の外側面(搬送方向Fの前方にある接続部材13aの前面、搬送方向Fの後方にある接続部材13bの背面)上にそれぞれ固定されている。防振ばね14a,14bは上記第2の弾性体に相当する。ここで、増幅ばね12a,12bと防振ばね14a,14bは、搬送方向Fの前方および後方においてそれぞれ搬送方向Fの前方へ向けて水平方向に対して斜め上方に向くように傾斜している。換言すると、いずれのばねもその下端よりも上端が搬送方向Fの後方に位置するように傾斜している。また、本実施形態では、増幅ばね12a,12bと防振ばね14a,14bは、下から上に向かうに従って搬送方向Fの前方から搬送方向Fの後方に向かう態様で傾斜した共通の平面上に沿ってほぼ配置される。ただし、増幅ばね12a,12bと防振ばね14a,14bとは厳密に同一平面上に設置される必要はなく、相互にずれて配置されていてもよい。ここで、防振ばね14a,14bは搬送方向Fに撓み変形可能に構成されるものであり、それによって接続部材13a,13bを搬送方向Fへ揺動可能な状態で下方より弾性支持している。
接続部材13aには、搬送方向Fの前方に配置された圧電駆動体16a(の下端)が接続される。また、接続部材13bには、搬送方向Fの後方に配置された圧電駆動体16b(の下端)が接続される。これらの圧電駆動体16a、16bは、シム板などの弾性金属板(の表裏少なくとも一方の面)上に圧電体を固着した板状体である。ただし、本実施形態では、弾性金属板の表裏両面に共に圧電体を固着した構造、或いは、表裏いずれかの面に複数の圧電層を積層した積層圧電体を固着した構造を用いることが好ましい。図示例の場合、圧電駆動体16a、16bは、上記増幅ばね12a,12bおよび上記防振ばね14a,14bと平行な姿勢で設置されている。また、圧電駆動体16a、16bは、上記圧電体の表裏に電圧を印加することによって長さ方向に撓み変形するように構成され、これによって所定の交流電圧を印加することで撓み振動を生ずるようになっている。ここで、本明細書では、圧電駆動体や板状の各弾性体において、振動の伝搬方向(撓み方向)に沿った寸法および方向を「長さ」および「長さ方向」とし、当該伝搬方向(撓み方向)と直交する方向に沿った寸法および方向を「幅」および「幅方向」ということにする。したがって、本実施形態の場合には、上記増幅ばね12a,12b、上記防振ばね14a,14bおよび圧電駆動体16a,16bは、それぞれ長さ方向を上下方向に近い斜め方向とし、それぞれ幅方向を左右方向とする姿勢で設置されている。
上記圧電駆動体16a(の上端)と上記圧電駆動体16b(の上端)は連結部材17を介して相互に接続固定されている。図示例では、連結部材17の搬送方向Fの前端面と後端面にそれぞれ圧電駆動体16aと圧電駆動体16bが接続固定される。本実施形態の場合、連結部材17は圧電駆動体16a,16b以外には接続されておらず、トラフ11aとは離間している。図示例の場合、連結部材17は板状体であり、基準姿勢(振動していない静置状態における姿勢)が水平となるように構成されている。
防振ばね14a,14bの下端は基台15にそれぞれ接続固定されている。図示例の場合、基台15は、その搬送方向Fの中間部が一段高く構成された側面視で凸字形状に構成され、当該中間部の前方の段差面に防振ばね14aが接続固定され、後方の段差面に防振ばね14bが接続固定される。以上のような構成により、本実施形態では、搬送体11は増幅ばね12a,12b、接続部材13a,13bおよび防振ばね14a,14bにより搬送方向Fの前後2箇所においてそれぞれ弾性支持され、搬送方向Fに揺動可能とされる。ここで、増幅ばね12a,12bと防振ばね14a,14bは共に搬送方向Fにおいて同一の向きに傾斜しているため、両ばねが撓み変形したとき、搬送体は搬送方向Fの前方へ向けて水平方向に対して僅かに(例えば、3〜12度程度)斜め上方に振動するように構成される。ただし、同様の振動態様を実現する構成としては、上記の板ばね自体が傾斜した態様に限らず、例えば、増幅ばね12a,12bが防振ばね14a,14bに対して搬送方向Fの後方に配置されるように、増幅ばね12a,12bの下端の接続部材13a,13bに対する取付位置が防振ばね14a,14bの上端の接続部材13a,13bに対する取付位置よりも搬送方向Fの後方にずらして接続してもよい。このとき、両ばねを垂直姿勢としてもよく、傾斜姿勢としてもよい。
上記接続部材13aには板ばね形状の連結ばね21aの一端(図示上端)が接続固定され、この連結ばね21aの他端(図示下端)は慣性質量体22に接続固定される。また、上記接続部材13bには板ばね形状の連結ばね21bの一端(図示上端)が接続固定され、この連結ばね21aの他端(図示下端)は上記慣性質量体22に接続固定される。図示例の場合、連結ばね21a,21bは慣性質量体22の搬送方向Fの前後の端面上に固定される。また、慣性質量体22は上記圧電駆動体16a,16bおよび連結部材17よりも下方に配置される。図示例では、慣性質量体22は上記連結ばね21a,21bが接続固定された板状部22a上に、当該板状部22aよりも搬送方向Fの前後範囲が狭い追加質量部22bを固定することによって側面視で凸状に構成される。これによって、図示例のように追加質量部を厚く設けても、慣性質量体22が接続部材13a,13bや圧電駆動体16a,16bと干渉しないように構成できるとともに、追加質量部22bを設けることで慣性質量体22の慣性モーメントを大きくすることができる。もっとも、慣性質量体22は図示例のように上記板状部22aと上記追加質量部22bを固定したものに限らず、両者を一体に構成したものであってもよい。なお、上記連結ばね21a,21bは上記第3の弾性体に相当する。
上記慣性質量体22は、基本的には搬送方向Fに移動可能に構成されていれば、搬送体から受ける搬送方向Fの反力を吸収することにより、接続部材13a,13bから防振ばね14a,14bへの振動エネルギーの流出が抑制される。ただし、本実施形態では、慣性質量体22は、上記連結ばね21a,21bのみを介して他部材(接続部材13a,13b)と接続され、すなわち、連結ばね21a,21bのみを介して弾性支持されているため、本実施形態の振動系において自由端として動作するように構成される。これによって、連結ばね21a,21bにより慣性質量体22が揺動することで、搬送体11から受ける反力をより効率的に吸収できる。ここで、図示例のように、慣性質量体22の重心が連結ばね21a,21bの接続部材13a,13bに対する取付位置よりも下方に配置されることが好ましい。これにより、接続部材13a,13bに対して、搬送体11が上方に弾性接続される一方、慣性質量体22が下方に弾性接続されるため、接続部材13a,13bの上下両側にある慣性のバランスで相互に反力を打ち消すように振動系を構成できる。したがって、装置全体の重心を低減して安定性を高めることができるとともに、接続部材13a,13bの振動を低減しやすくなり、防振ばね14a,14bを介した振動の伝搬をさらに抑制できる。なお、このパラグラフで述べた各構成およびその作用効果は、後述する他の実施形態でも同様である。
本実施形態では、図1に示すように、防振ばね14a,14bと連結ばね21a,21bとが搬送方向Fに見て近接して、或いは、一致した位置(幅方向に並列する位置)に配置されているため、図2に示すように、防振ばね14a,14bの幅方向中央を開口部14cとし、この開口部14cの開口面内に連結ばね21a,21bを配置することで、両ばねが相互に接触しないように構成している。これにより、慣性質量体22の重量を増加させやすくなると同時に、装置全体(一般的には搬送ブロック11bを除いた部分)を搬送方向Fに見てコンパクトに構成することが可能になる。図示例では、連結ばね21a,21bの上下両端を固定するためのボルト又はナットも上記開口部14c内に配置されて防振ばね14a,14bと接触しないように構成されている。図示例の連結ばね21a,21bは、搬送方向Fの前後において防振ばね14a,14bの内側(連結ばね21aは防振ばね14aに対し搬送方向Fの後方、連結ばね21bは防振ばね14bに対し搬送方向Fの前方)に配置され、防振ばね14a,14bとそれぞれ平行に設置されている。
ここで、防振ばね14a,14bの上記開口部14cおよびその左右両側部分は、連結ばね21a,21b(の中央軸線)を中心として幅方向に左右対称に構成されている。このようにすると、搬送体11や慣性質量体22の幅方向の弾性支持特性に偏りが生じにくくなるため、ねじれ振動(幅方向のピッチング動作)による駆動効率の低下や搬送状態の不安定化を防止できる。なお、本実施形態では、連結ばね21a,21bの幅方向両側に防振ばね14a,14bが配置される構成としているため、防振ばね14a,14bによる弾性支持力の幅方向のバランスや安定性を確保しやすくなるとともに、連結ばね21a,21bの弾性率を大きくして慣性質量体22を揺動しやすくする(結果として揺動振幅が拡大される)ことで搬送体11の反力を十分に吸収できるように構成する上で好都合である。
本実施形態によれば、加振体(圧電駆動体16a,16bおよび連結部材17)により生ずる振動が接続部材13a,13bにそれぞれ伝達され、さらに増幅ばね12a,12bを介してそれぞれ搬送体11に伝達される。一方で、図9(a)及び(b)に示すように、共振状態においては、接続部材13a,13bが受ける反力は、搬送体11とは逆位相(位相差180度)で揺動する慣性質量体22により連結ばね21a,21bを介して吸収されるため、搬送体11は充分な振幅で振動できると同時に、防振ばね14a,14bから基台15への振動エネルギーの流出が抑制される。特に、加振体から接続部材13a,13bおよび増幅ばね12a,12bを経て搬送体11に向かう振動伝達経路とは別に、接続部材13a,13bに接続された連結ばね21a,21bおよび慣性質量体22が設けられるため、上記振動伝達経路を構成する、搬送体11、増幅ばね12a,12b、接続部材13a,13b、圧電駆動体16a,16bおよび連結部材17の組立体全体に搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)が生じても、当該組立体とは別の連結ばね21a,21bおよび慣性質量体22による反力吸収作用によって軽減することができるため、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性を高めることができる。
実際に、図9(a)および(b)に示されるように、搬送体11を搬送方向Fの前後においてそれぞれ弾性支持する増幅ばね12a,12b、接続部材13a,13bおよび防振ばね14a,14bからなる弾性支持構造の振動の節は、図示のグレースケールで表されるように、接続部材13a,13bと防振ばね14a,14bとの連結部(接続部材13a,13bの下部若しくは防振ばね14a,14bの上部)にあり、当該連結部はほとんど変位していない。その一方で、上記連結部に接続された連結ばね21a,21bが慣性質量体22の変位により大きく撓み変形することがわかる。
従来の振動式搬送装置では、基台の重量を大きく設定するか、他の重量物(床など)に固定しないと、振動エネルギーの基台への流出により搬送体の振幅が充分に得られず、搬送物を高速に搬送することができなくなるという問題点があり、そのために基台の重量を大きくしていた。また、設置面への振動エネルギーの流出を低減するために防振ゴムやコイルばね等の防振部材を介して基台の下方に設置台をさらに配置するといったことも行われていた。しかしながら、本実施形態では、上述のように慣性質量体22による反力の低減により基台15の重量を軽量化しても充分な搬送力を確保することができた。例えば、全体で35kgの重量を有する従来装置に対して、これと同重量の搬送体11を備えた本実施形態では、基台15の重量を低減することにより20kg程度若しくはそれ以下の重量で構成することができることが判明している。これにより、装置の搬入、移動、設置などの各作業が容易化される。
このとき、搬送方向Fの前後の接続部材13a,13bからそれぞれ増幅ばね12a,12bを介して搬送体11が駆動され、これらの駆動箇所は接続部材13aと13bが圧電駆動体16a,16bを介して連結部材17により接続固定されているものの、搬送体11は圧電駆動体16aと16bの振動駆動源により搬送方向Fの前後2箇所において個々に加振されるため、増幅ばね12aと12bが共通の部材に接続される場合に比べて、搬送方向Fに沿ったピッチング動作が生じにくくなる。すなわち、搬送体11への振動伝搬経路上にある接続部材13aと13bが相互に一体化された場合には、振動系全体における搬送方向Fの前後の一体性が高まるため、搬送方向Fに沿ったピッチング動作が生じやすくなり、搬送方向Fの前後2箇所にある増幅ばね12aと12bの接続位置で振動方向に差が生じやすくなるので、搬送体11にも搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)が生じやすくなり、これにより搬送位置による搬送速度の差が大きくなったり、搬送状態が不安定になったりする。これに対して、本実施形態では搬送方向Fの前後2箇所の接続部材13a,と13bが別体に構成されることにより、特に接続部材13aと13bが別々の圧電駆動体16aと16bに駆動されることもあり、上記ピッチング動作による振動方向の差が生じにくくなる。したがって、搬送体の搬送方向F(搬送路)に沿った搬送速度が当該方向に沿った位置に応じて変化することが抑制され、より均一な搬送速度を実現できる。その結果、増幅ばね12aと12bの間の搬送方向Fの前後間隔を変えなくても、搬送体11を搬送方向Fに沿って長く形成することが可能になるため、当該装置を含む製造ラインなどの設計自由度が向上する。また、搬送体11の振動時の移動態様が並進移動に近くなるため、搬送物の搬送姿勢が安定するなど、搬送状態の安定性が向上する。
(第2実施形態)次に、本発明に係る第2実施形態について詳細に説明する。図3は、本発明に係る第2実施形態の振動式搬送装置の側面図、図4は同実施形態の正面図、図10(a)および(b)はその振動系の共振時における振動態様を構造解析プログラムにより強調して示した動画を作成したときの搬送方向の前後の最大振幅時の変形態様およびその時のグレースケールで段階的に表された各部の変形量を示すシミュレーション画像である。
この第2実施形態では、上記第1実施形態と共通の基本構成を有するので、同一部分には同一符号を付し、共通の構成に関する説明は省略する。本実施形態において、搬送体11(トラフ11aおよび搬送ブロック11b)、増幅ばね12a,12b、防振ばね14a,14b、基台15、圧電駆動体16a,16b、連結部材17、および、連結ばね21a,21bの各々は、基本的に第1実施形態と同一の構造を備えている。
本実施形態においては、上記連結ばね21a,21bに対する接続部材13a′,13b′の取付位置および取付角度と、上記連結ばね21a,21bに対する慣性質量体22′の板状部22a′の取付位置および取付角度が第1実施形態とは異なる。そして、上記連結ばね21a,21bが上記防振ばね14a,14bに対して上記搬送方向Fの異なる位置(搬送方向Fのより後方にある位置)に配置されている。また、上記連結ばね21a,21bは上記増幅ばね12a,12bおよび上記防振ばね14a,14bとは逆向きに傾斜している。
また、本実施形態では、連結ばね21a自体が防振ばね14aよりも搬送方向Fの後方に配置されているため、防振ばね14aと連結ばね21a自体が相互に干渉することがないから、第1実施形態のように、防振ばね14aに、連結ばね21aを回避するための開口部14cを設けたり両ばねを幅方向にずらして配置したりする必要はない。ただし、連結ばね21aを上記接続部材13a′および上記慣性質量体22′に接続固定するためのボルト又はナットが防振ばね14aに干渉しないように、防振ばね14aに上記ボルト又はナットを回避するための小開口部14c′,14d′を設けている。
一方、連結ばね21bも防振ばね14bに対して搬送方向Fの後方に配置されているので、上記と同様に防振ばね14bと連結ばね21b自体が相互に干渉することはない。しかし、連結ばね21bに対する取付位置をそれぞれ防振ばね14bに対する取付位置よりも搬送方向Fの後方に配置しつつ、連結ばね21bと慣性質量体22′とを連結するために、接続部材13b′と慣性質量体22′の少なくとも一部(後端部)に、搬送方向Fの後方に突出した連結ばね21bに対する取付部13b1′および取付部22a1′を設けるとともに、上記防振ばね14bの一部に、上記接続部材13b′の取付部13b1′および慣性質量体22′の取付部22a1′を非接触で通過させるための第1実施形態の開口部14cと同様の図示しない開口部を設けている。
本実施形態でも、基本的には上記第1実施形態と同様の作用効果を奏する。実際に、図10(a)および(b)に示すように、振動の節が接続部材13a′,13b′にあり、この接続部材13a′,13b′に接続された二種のばねである防振ばね14a,14bと連結ばね21a,21bのうち、連結ばね21a,21bの下端は慣性質量体22′とともに大きく変位する一方で、防振ばね14a,14bはほとんど変形しない。
本実施形態では、慣性質量体22′を接続部材13a′,13b′に連結するための連結ばね21a,21bが増幅ばね12a,12bとは逆に傾斜していることにより、振動時における上下動については第1実施形態とは異なる作用効果をも生ずる。
上述の第1実施形態では、図1において、搬送体11が搬送方向Fの前方へ向かう過程(以下、単に「搬送体前進時」という。)では、搬送物に前進力を与えるために搬送体は搬送方向Fの前方に向けて水平方向に対して斜め上方へ移動する(矢印P)が、このとき、当該移動方向や加減速に起因して、搬送体11の搬送方向Fの前方にある部分は相対的に一旦上昇し(図示矢印U)、搬送方向Fの後方にある部分は相対的に一旦下降する(図示矢印D)。一方、この搬送体前進時において慣性質量体22は搬送方向Fの後方に向けて水平方向に対して斜め下方へ移動する(図示矢印Q)が、このとき、慣性質量体22の搬送方向Fの前方にある部分は相対的に一旦上昇し(図示矢印U)、搬送方向Fの後方にある部分は相対的に一旦下降する(図示矢印D)。したがって、振動式搬送装置10における搬送方向Fの前方部の重心は、上記搬送体前進時において上昇し、一方、搬送体が搬送方向の後方へ向かう段階(以下、単に「搬送体後退時」という。)には下降し、これとは逆に、装置の搬送方向Fの後方部の重心は、上記搬送体前進時において下降し、上記搬送体後退時において上昇する。その結果、振動式搬送装置10では、振動に伴って振動系全体に搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)が生じ、これに起因して上記防振ばね14a,14bを介して基台15に上下振動が伝達されやすくなる。特に、本実施形態では防振ばね14a,14bが板ばねであるため、搬送方向Fの前後振動は板ばねの撓み変形によって吸収されやすいが、上下振動は板ばねでは逆に吸収されにくいので、装置の搬送方向Fの上下動(ピッチング動作)がそれほど大きくなくても当該上下動成分における振動エネルギーの流出は比較的大きくなる。
これに対して、この第2実施形態では、連結ばね21a,21bが逆側に傾斜していることにより、上記の搬送体前進時においては慣性質量体22′が搬送方向Fの後方に向けて斜め上方へ移動する(図示矢印Q′)ため、慣性質量体22′の搬送方向Fの前方にある部分は相対的に一旦下降し(図示矢印D)、搬送方向Fの後方にある部分は相対的に一旦上昇する(図示矢印U)。したがって、振動式搬送装置10′では、搬送体11と慣性質量体22′は上下動(ピッチング動作)に関して相互に逆に動作し、振動に伴って生ずる振動系全体の搬送方向Fに沿った上下動が相互に減殺し合うため、上下振動(ピッチング動作)そのものが軽減されるから、上記防振ばね14a,14bを介した上下振動の基台15への伝達も低減され、搬送方向Fに沿った搬送速度の均一性や搬送状態の安定性も高められる。
特に、本実施形態では、防振ばね14a,14bが板ばねであるために上下振動を吸収しにくいことから、装置の上下動(ピッチング動作)の抑制は振動エネルギーの流出を低減するのに非常に有効である。実際に、第1実施形態の振動式搬送装置10よりも第2実施形態の振動式搬送装置10′の方が設置面に伝達される上下振動を抑制できること、並びに、搬送速度の均一性や搬送状態の安定性も向上することが確認されている。
なお、上記のように慣性質量体22′を搬送方向Fの後方に向けて水平方向に対して斜め上方に振動するように構成するには、連結ばね21a,21bを傾斜姿勢とする場合に限らず、例えば、連結ばね21a,21bを上半部と下半部に分割し、上半部と下半部を搬送方向Fに厚みを有するスペーサで連結してもよい。すなわち、連結ばね21a,21bの上端の接続部材13a,13bに対する取付位置が、連結ばね21a,21bの下端の慣性質量体22′に対する取付位置よりも搬送方向Fの後方に配置されるように構成すれば、上述の慣性質量体22′の振動態様を実現することができる。
また、本実施形態では、連結ばね21aが防振ばね14aより搬送方向Fの後方に配置されるとともに、連結ばね21bも防振ばね14bより搬送方向Fの後方に配置される。これは、上述のように搬送体11を搬送方向Fの前方に向けて水平よりも斜め上方に振動させるために、増幅ばね12a、12bの搬送体11に対する取付位置を防振ばね14の基台15に対する取付位置よりもそれぞれ搬送方向Fの後方に配置する場合において、装置設計上、装置下部において慣性質量体22′を搬送方向Fの後方寄りに配置させやすくなり、これにより、慣性質量体22′の重心位置を搬送体11の重心位置に対して搬送方向Fに一致させることが容易になるからである。
なお、以上説明した第1実施形態と第2実施形態の相互に異なる点については、いずれか一方の実施形態において他方の実施形態の各点を任意に選択して採用することが可能である。また、上記のいずれの実施形態においても、接続部材13aと圧電駆動体16aとからなる組立体と、接続部材13bと圧電駆動体16bとからなる組立体は、圧電駆動体が接続部材に対して搬送方向Fの前後のいずれの側に配置されているかという点で相互に逆向きに組み立てられているが、増幅ばね12a又は12bと連結部材17との干渉を回避するように構成すれば、両組立体を相互に同じ向きに組み立てることも可能である。
(第3実施形態)次に、本発明に係る第3実施形態について詳細に説明する。図5は、本発明に係る第3実施形態の振動式搬送装置の側面図、図6は同実施形態の正面図、図11(a)および(b)はその振動系の共振時における振動態様を構造解析プログラムにより強調して示した動画を作成したときの搬送方向の前後の最大振幅時の変形態様およびその時のグレースケールで段階的に表された各部の変形量を示すシミュレーション画像である。
本実施形態の振動式搬送装置30は、上記の第1および第2実施形態の各部に対応する、トラフ31aおよび搬送ブロック31bを含む搬送体31、増幅ばね32a,32b、防振ばね34a,34b、基台35、連結ばね41a,41b、並びに、慣性質量体42を備えている。基本的に上記各部材は個々には第1および第2実施形態と同様の構成を有するので、説明を省略する。トラフ31a上には搬送ブロック31bが固定され、この搬送ブロック31bの上面には搬送方向Fに沿って伸びる直線状の搬送路(図示せず)が形成されている。トラフ31aと搬送ブロック31bは搬送体31を構成する。
本実施形態では、搬送方向Fの前後の増幅ばね32aと32bの下端が共通の接続部材33に接続されている。接続部材33は、先の実施形態と同様に防振ばね34a,34bおよび連結ばね41a,41bにも接続される。接続部材33には、搬送方向Fの前方の増幅ばね32a、防振ばね34aおよび連結ばね41aに接続される前方部33aと、搬送方向Fの後方の増幅ばね32b、防振ばね34bおよび連結ばね41bに接続される後方部33bと、上記前方部33aと後方部33bを接続する板状の連結部33cとが一体に、或いは、相互に固定されて設けられている。接続部材33(の後方部33b)には、磁芯36aおよびこれを取り巻くコイル36bを備えた電磁ソレノイド36が取付固定される。磁芯36aの先端面は磁極として構成される。一方、搬送体31(トラフ31a)の下部には下方に伸びて上記磁芯36aの先端面と対向配置される対向磁極を構成する対極部材37が固定されている。ここで、電磁ソレノイド36と対極部材37は電磁駆動式の加振体を構成する。
本実施形態においては、電磁ソレノイド36に交番電圧を印加することによって磁芯36aと対極部材37との間に生ずる磁力により搬送体31と接続部材33との間に搬送方向Fの振動が発生し、これが増幅ばね32a、32bを通して伝搬し、搬送体が振動する。このとき、上記各実施形態と同様に、慣性質量体42が揺動して搬送体31により生ずる反力が打ち消され、基台35へ流出する振動エネルギーが抑制される。また、上記第2実施形態と同様に、連結ばね41a,41bが増幅ばね32a,32bおよび防振ばね34a,34bに対して逆向きに傾斜しているので、基本的に第2実施形態と同様に振動系全体の搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)が低減されるため、基台35へ流出する振動エネルギーがさらに低減される。
また、本実施形態では、接続部材33の前方部33aには、増幅ばね32aの接続箇所から搬送方向Fの前方へさらに突出した取付部33a1が設けられ、この取付部33a1に防振ばね34aが接続固定される。同様に、接続部材33の後方部33bには、増幅ばね32bの接続箇所から搬送方向Fの後方にさらに突出した取付部33b1が設けられ、この取付部33b1に防振ばね34bが接続固定される。このように構成すると、防振ばね34aと34bの搬送方向Fに沿った間隔を大きく確保できるため、図示のように防振ばね34aと34bの間に連結ばね41a,41bおよび慣性質量体42の全てを配置できるとともに、慣性質量体42の配置スペースを大きく確保できるため、充分な慣性力を与えることが可能になる。なお、このような接続部材の取付部と防振ばね、並びに、その搬送方向Fの前後の内側に配置される連結ばねおよび慣性質量体の構成は、上記第1実施形態や第2実施形態において採用することも可能である。
本実施形態では、搬送方向Fの前方に配置された前方部33aと同後方に配置された後方部33bが連結部33cを介して接続部材33として一体に構成されているので、上記第1および第2実施形態のように加振作用を搬送方向Fの前後2箇所において独立して与えるものではない。しかし、本実施形態の加振体は一体の接続部材33と搬送体31の間に振動を生じさせるものであるため、接続部材33の搬送方向Fの前後2箇所に接続された増幅ばね32aと32bを介して共通の接続部材33から与えられる加振作用が与えられるから、搬送方向Fに沿った上下動(ピッチング動作)の少ない安定した振動を搬送体に生じさせることができる。なお、上記接続部材33において、上記連結部33cを撓み変形可能な弾性体として機能する構成としてもよい。
(第4実施形態)次に、本発明に係る第4実施形態について詳細に説明する。図7は、本発明に係る第4実施形態の振動式搬送装置の側面図、図8は同実施形態の背面図、図12(a)および(b)はその振動系の共振時における振動態様を構造解析プログラムにより強調して示した動画を作成したときの搬送方向の前後の最大振幅時の変形態様およびその時のグレースケールで段階的に表された各部の変形量を示すシミュレーション画像である。
本実施形態の振動式搬送装置30′は、上記第3実施形態と同様に、電磁ソレノイド36を備えた電磁駆動式の装置である。本実施形態では、加振体に関する構成部分を除き、基本的に上記第3実施形態と同様の構成を有するので、同一部分には同一符号を付し、同様の構成については記載を省略する。
本実施形態が第3実施形態と異なるのは、電磁ソレノイド36との間に磁力を生じさせる対極部材37′が、搬送体31ではなく、慣性質量体42に接続固定されている点である。このため、電磁ソレノイド36と対極部材37′により構成される加振体は、直接的には接続部材33と慣性質量体42との間に振動を生じさせる。しかしながら、加振体により生じたこの振動が接続部材33から増幅ばね32a,32bを経て搬送体31に伝達される点では第3実施形態と同様であり、この振動伝達経路によって搬送体31を搬送方向Fに振動させるため、第3実施形態と同様の搬送作用その他の作用効果を得ることができる。
また、本実施形態では、搬送体31に直接加振力を与えず、接続部材33および増幅ばね32a,32bを介して搬送方向Fの前後2箇所において振動を伝達しているため、搬送体31に直接に加振体による振動状態の規制力が働きにくいことから、振動系全体のバランスによって搬送体31の振動態様が決定される。
尚、本発明の振動式搬送装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記の第1乃至第4の実施形態の装置に採用されている個々の構成は、特にそれを妨げる理由がない限り、任意の組み合わせで相互に置換して用いることができる。
10,30…振動式搬送装置、11,31…搬送体、11a,31a…トラフ、11b,31b…搬送ブロック、12a,12b,32a,32b…増幅ばね、13a,13b,13a′,13b′,33a,33b…接続部材、14a,14b,34a,34b…防振ばね、15,35…基台、16a,16b…圧電駆動体、17…連結部材、22,22′…慣性質量体、36…電磁駆動体、36a…磁芯、36b…コイル、37、37′…対極部材