しかしながら、上記従来の反作用ウエイトを備えた振動式搬送装置では、搬送体の重心と反作用ウエイトの重心を近づけたり直線状に配列させたりするために構造が複雑になることから装置の大型化や製造コストの増大を招くとともに、重心位置をきわめて精密に設定する必要があるため、搬送物の種類や搬送速度等の状況が変化する製造現場では充分な効果を得ることが難しいという問題点がある。特に、重心位置の僅かなずれがあるだけでも、高速搬送を可能にするために駆動周波数を高めるとピッチングや上下動などが激しくなり、適正な搬送状態を得ることができないため、高周波数化や高速搬送を実現することが難しい。
また、上記従来の反作用ウエイトを備えるとともに搬送体と反作用ウエイトとの間の重心のずれを低減した振動式搬送装置の共通の欠点は、反作用ウエイト及び重心のずれを低減する構造を設けることによって装置内の質量体が3層以上の多層構造となるために高さが増大する点である。このような装置では、上述の3層以上の質量体の多層構造と、各質量体間を接続するための板ばねの長さを確保する必要があることから、装置の全高が必然的に大きくなる。しかし、電子部品等の搬送物のサイズが微細になってくると、製造ラインの搬送前後に配置される他の装置も小型化されるので、搬送装置にも小型化が要求される。しかし、一方、装置の全高を抑制するために板ばねの長さを短くすることが考えられるが、板ばねの長さを短くすると、ばね定数の関係で搬送路において充分な振幅が得られなくなったり、振動数の調整が困難になったりし、充分な性能が得られなくなるという問題点がある。
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、安定した搬送態様を得ることができるとともに、装置の小型化、特に装置の全高の抑制と、搬送性能の確保とを両立することのできる振動式搬送装置を提供することにある。
斯かる実情に鑑み、本発明の振動式搬送装置(10)は、搬送方向の前後位置にそれぞれ設けられ、前記搬送方向に向いた板面を備えた板ばねからなる一対の防振ばね(13a,13b)と、前記一対の防振ばねによって前記搬送方向の前後位置で支持された基準質量体(11)と、前記基準質量体の上方に配置された上側質量体(12A)と、前記基準質量体の下方に配置された下側質量体(12B)と、前記基準質量体と前記上側質量体とを前記搬送方向の前後位置でそれぞれ弾性接続する、前記搬送方向に向いた板面を備えた板ばね構造を含む一対の上部振動ばね(14a、14b)と、前記基準質量体と前記下側質量体とを前記搬送方向の前後位置でそれぞれ弾性接続する、前記搬送方向に向いた板ばね部分を含む一対の下部振動ばね(15a,15b)と、前記基準質量体と前記上側質量体との間、及び、前記基準質量体と前記下側質量体との間の双方に加振力を与え、前記搬送方向に同位相の振動を生じさせる同相加振手段(16a,16b)と、を具備し、前記上側質量体と前記下側質量体の少なくとも一方に搬送物(W)を搬送する搬送路(21)が設けられ、前記上部振動ばね(14a,14b)は、前記基準質量体に接続されて下方に伸びる上部振動用下側突出部(16ad,16bd)と、前記基準質量体の下方位置において前記上部振動用下側突出部に接続されるとともに、前記基準質量体の下方位置から前記基準質量体の上方へ伸びて前記上側質量体に接続される上部振動用上側弾性部(17a,17b)とを有し、前記下部振動ばね(15a,15b)は、前記基準質量体に接続されて上方に伸びる下部振動用上側突出部(16au,16bu)と、前記基準質量体の上方位置において前記下部振動用上側突出部に接続されるとともに、前記基準質量体の上方位置から前記基準質量体の下方へ伸びて前記下側質量体に接続される下部振動用下側弾性部(18a,18b)とを有することを特徴とする。
本発明によれば、搬送方向の前後位置でそれぞれ防振ばねによって支持された基準質量体の上下それぞれに、上側質量体と下側質量体が搬送方向の前後位置において振動ばねを介して弾性接続されるとともに、同相加振手段が加振力を与えることにより、上側質量体と下側質量体が搬送方向に見て同位相で振動するとともに、基準質量体と上側質量体及び下側質量体とが搬送方向に見て逆位相で振動する。したがって、基準質量体の重心位置と上側質量体及び下側質量体の合計の重心位置の上下方向のずれを低減できるため、基準質量体と上側質量体及び下側質量体の搬送方向の振動の反力の打ち消し作用を高めることができる。また、振動時においては、基準質量体に対して上側質量体が与える回転モーメントと下側質量体が与える回転モーメントが相互に逆向きとなるから、基準質量体が受ける振動による回転方向の反力が相互に相殺乃至は減殺されるため、ピッチング動作(回転運動)を抑制することができる。したがって、防振ばねを介して設置面に伝達される搬送方向及び上下方向の反力が低減され、防振ばねを介した設置面への振動エネルギーの漏出を抑制することができる。さらに、ピッチング動作が抑制されることによって、高周波化しても振動が乱れにくく、搬送物の姿勢も安定するために、高速搬送が可能になるとともに、搬送路に沿った搬送速度や搬送姿勢等の搬送状態の均一性も向上させることができる。
本発明においては、上記のように、基準質量体と上側質量体とを弾性接続する上部振動ばねが、基準質量体から下方に伸びる上部振動用下側突出部と、基準質量体の下方位置から上方に伸びる上部振動用上側弾性部との接続構造を有し、基準質量体と下側質量体とを弾性接続する下部振動ばねが、基準質量体から上方に伸びる下部振動用上側突出部と、基準質量体の上方位置から下方に伸びる下部振動用下側弾性部との接続構造を有する。これにより、上部振動ばねを基準質量体と上側質量体の間隔よりも長く構成することが可能になるとともに、下部振動ばねを基準質量体と下側質量体との間隔よりも長く構成することができるため、装置の全高を抑制しつつ、上部振動ばねと下部振動ばねの制約を低減して、充分な搬送能力を確保することが可能になる。
本発明において、前記同相加振手段(16a,16b)は、前記搬送方向の前後位置の少なくとも一方の前記上部振動用下側突出部を構成する上部振動用下側圧電駆動部(16ad,16bd)と、前記搬送方向の前後位置の少なくとも一方の前記下部振動用上側突出部を構成する下部振動用上側圧電駆動部(16au,16bu)とを有することが好ましい。この場合において、搬送方向の前後位置の上部振動用下側突出部がいずれも圧電駆動部で構成されることが望ましく、また、搬送方向の前後位置の下部振動用上側突出部がいずれも圧電駆動部で構成されることが望ましい。
本発明において、前記同相加振手段(16a,16b)は、前記搬送方向の前後位置の少なくとも一方において、前記上部振動用下側突出部を構成する上部振動用下側圧電駆動部(16ad,16bd)と前記下部振動用上側突出部を構成する下部振動用上側圧電駆動部(16au,16bu)とが一体に構成され、前記上部振動用下側圧電駆動部と前記下部振動用上側圧電駆動部の間の中間部が前記基準質量体に結合されるとともに、全体として前記搬送方向に向いた板面が一体に撓み変形する板状の圧電駆動体を有することが好ましい。これによれば、一体に構成される圧電駆動体の中間部が基準質量体に結合され、基準質量体の下方に伸びる上部振動用下側圧電駆動部が上側質量体を加振し、基準質量体の上方に伸びる下部振動用上側圧電駆動部が下側質量体を加振することにより、上側質量体と下側質量体を容易かつ確実に同位相で振動させることができる。また、一体の圧電駆動体で上側質量体と下側質量を加振できるため、装置全体の高さを低減することができ、装置をコンパクトに構成できる。なお、搬送方向の前後位置のいずれにおいても、上部振動用下側突出部と下部振動用上側突出部が上記圧電駆動体で構成されることが望ましく、この場合には、搬送方向の前後位置の上記圧電駆動体は相互に同相に駆動される。
この場合において、前記圧電駆動体は前記上部振動用下側圧電駆動部と前記下部振動用上側圧電駆動部にわたる(前記基準質量体に対する結合位置より上下両側に伸びる)一体の圧電体を有することが好ましい。本発明では、例えば、弾性基板を一体のものとしつつ、基準質量体の上方の上側圧電駆動部と下方の下側圧電駆動部を別々の圧電駆動体で構成することも可能である。しかし、上記のように基準質量体の上下両側に伸びる一体の圧電体を備える圧電駆動体を構成することによって、構造の簡易化、製造コストの低減、上下の振動態様の均一化などを容易に図ることができる。
本発明において、前記上部振動用上側弾性部(17a,17b)と前記下部振動用下側弾性部(18a,18b)は、前記搬送方向の前後位置においてそれぞれ前記搬送方向と直交する幅方向に隣接して配置され、前記上部振動用上側弾性部(17a,17b)は、前記搬送方向の前後位置においてそれぞれ前記上部振動用下側突出部と前記上側質量体とを前記幅方向の一方側において接続し、前記下部振動用下側弾性部(18a,18b)は、前記搬送方向の前後位置においてそれぞれ前記下部振動用上側突出部と前記下側質量体とを前記幅方向の他方側において接続することが好ましい。これによれば、搬送方向の前後位置においてそれぞれ上部振動用上側弾性部と下部振動用下側弾性部が幅方向に隣接して配置されることにより、上側質量体と下側質量体の弾性支持位置の搬送方向のずれを低減することができるとともに、装置の搬送方向のサイズをコンパクトに構成できる。また、上部振動用上側弾性部と下部振動用下側弾性部の各々は、搬送方向の前後位置においてそれぞれ幅方向の一方側と他方側のうちの同じ側に配置されるので、基準質量体と上側質量体又は下側質量体との間の弾性支持構造にねじれ方向の力が加わることを防止することができる。
本発明において、前記圧電駆動体は、弾性基板と、該弾性基板上に積層された圧電体とを有することが好ましい。また、下部振動用上側圧電駆動部と上部振動用下側圧電駆動部が一体の圧電駆動体によって構成される場合には、当該一体の圧電駆動体には、上下一体の弾性基板上に、下部振動用上側圧電駆動部と上部振動用下側圧電駆動部の双方にわたって形成された上下一体の圧電体が構成されていることが望ましい。この場合において、前記上下一体の圧電駆動体は、前記基準質量体に対する結合位置より上下方向に対称な構造を有することが好ましい。
本発明において、前記圧電駆動体は、前記基準質量体に対する結合位置が幅方向両側に設けられ、前記結合位置の間に圧電体が配置されていることが好ましい。これによれば、圧電駆動体と基準質量体とが幅方向両側で結合されるとともに、その結合位置の間に圧電体が配置されることで、基準質量体に対して幅方向両側に均等な結合剛性を確保でき、安定した加振状態を容易に実現することができる。
本発明において、前記基準質量体は前記一対の防振ばねによって下方から支持されることが好ましい。防振ばねによる基準質量体の支持は任意の方向から行うことができるが、この構成によれば、基準質量体を吊り下げたり側方から支持したりする場合に比べて装置全体の設置面積を低減できる。また、前記一対の防振ばねは、それぞれ前記基準質量体から設置面(基台)の側に向かう接続方向(長さ方向)が前記搬送方向と直交する垂直面に沿った垂直姿勢の板ばねによりそれぞれ構成されることが好ましい。上記防振ばねが垂直姿勢の板ばねで構成されることで、基準質量体の上下方向の振動成分を削減することができるため、搬送姿勢の安定化や設置面への振動の漏洩を低減することが可能になる。
本発明において、前記搬送路は前記上側質量体に設けられることが好ましい。上述のように、搬送路は上側質量体と下側質量体のいずれか少なくとも一方に設ければよい。しかし、特に、上側質量体に搬送路を設けることによって、稼働時の装置や搬送物の取り扱いが容易になる。
本発明において、前記基準質量体の質量は、前記上側質量体と前記下側質量体の質量の和と実質的に等しいか、或いは、前記質量の和より大きいことが好ましい。基準質量体と上側質量体及び下側質量体は相互に搬送方向(振動方向)の反力を打ち消し合う関係にあるため、基準質量体の質量が上側質量体と下側質量体の質量の和と実質的に等しいことで反力の打ち消し効果を高めることができる。ただし、基準質量体は防振ばねによって設置面に対して支持されるとともに拘束されているから、上記質量の和よりも基準質量体の質量を大きくすることで、基準質量体の振幅を抑制することができると同時に上側質量体及び下側質量体の振幅を増大させることができるため、設置面へ流れる振動エネルギーを抑制できるとともに、上側質量体又は下側質量体において充分な搬送力を確保することができ、より安定した振動態様を実現できる。
本発明において、前記上側質量体の質量と前記下側質量体の質量は実質的に等しく、前記基準質量体と前記上側質量体の間の重心間隔及びばね定数と、前記基準質量体と前記下側質量体の間の重心間隔及びばね定数とが実質的に等しいことが好ましい。これによれば、基準質量体に対して上側質量体と下側質量体の慣性質量及び弾性接続態様が対称的に構成されるため、回転モーメントを相殺し、ピッチング動作をさらに低減できる。
本発明において、前記搬送路は直線状であり、前記搬送方向は直線に沿った方向であることが好ましい。本発明は、所定の軸線の周りに周回する方向(軸線周りの接線方向)を振動方向とする回転振動機と、この回転振動機上に設置されるらせん状の搬送路とを有する振動式搬送装置において、回転方向の振動によって搬送物をらせん状の搬送路に沿って搬送する場合にも適用可能である。しかし、直線状の搬送路に沿って直線状に搬送物を搬送する場合には、後述する実施例にも示すように、装置構造を簡易に構成できるとともに、搬送速度の向上や搬送状態の安定化を容易に図ることができる。
本発明によれば、安定した搬送態様を得ることができるとともに、装置の小型化、特に装置の全高の抑制と、搬送性能の確保とを両立することのできる振動式搬送装置を提供できるという優れた効果を奏し得る。
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。図1乃至図3は、本実施形態の全体構成について示す斜視図、側面図及び分解斜視図である。また、図4は圧電駆動体の正面図、図5は上側質量体と下側質量体に接続される上下の増幅ばねを示す正面図である。
本実施形態の振動式搬送装置10は、基準質量体11と、この基準質量体11の上方に配置される上側質量体12Aと、基準質量体11の下方に配置される下側質量体12Bとを有する。基準質量体11は、搬送の向きF(図2参照)に沿った搬送方向の前後位置においてそれぞれ搬送方向に向いた板面を備えた板状の防振ばね13aと13bによって下方から支持されている。これらの防振ばね13a,13bの下端は、設置面上に配置された基台19に固定される。
ここで、搬送方向の前後位置とは、搬送方向に沿って相互に離間した2つの位置、すなわち、前方の位置が搬送の向きF側(搬送方向の一方側)の位置、後方の位置が搬送の向きFとは反対側(搬送方向の他方側)の位置である。なお、本明細書において、搬送方向とは、振動式搬送装置10の上側質量体12A上に固定された搬送体20に形成された搬送路21において電子部品などの搬送物Wが搬送されていく方向であり、搬送の向きFとは、上記搬送方向のうちの上記搬送物が進行する向きである。
また、基準質量体11と上側質量体12Aは、搬送方向の前後位置においてそれぞれ搬送方向に向いた板面を備えた板ばね状の構造を含む上部振動ばね14aと14bにより弾性接続されている。すなわち、上側質量体12Aは、搬送方向の前後位置においてそれぞれ上部振動ばね14a,14bにより下方から支持されている。さらに、基準質量体11と下側質量体12Bは、搬送方向の前後位置においてそれぞれ搬送方向に向いた板面を備えた板ばね状の構造を含む下部振動ばね15aと15bにより弾性接続されている。すなわち、下側質量体12Bは、搬送方向の前後位置においてそれぞれ下部振動ばね15a,15bによって上方から吊り下げられている。
上記防振ばね13a,13b、上部振動ばね14a,14b及び下部振動ばね15a,15bは、いずれも全体として板状に構成される板ばね構造を有し、その板面が正対する方向のばね定数は低く、長さ方向(上下両側に接続される物体間を結ぶ方向)のばね定数は高い。また、本実施形態では、上記防振ばね13a,13b、上部振動ばね14a,14b及び下部振動ばね15a,15bの板ばね構造は、それぞれの延在(長さ)方向が垂直方向に近い斜めの方向Tに一致する姿勢となるように取り付けられている。したがって、図示例では、各ばねの垂直方向や幅方向の支持剛性が高いのに対して、搬送方向の剛性は低くなっている。これによって、基準質量体11、上側質量体12A及び下側質量体12Bの相互間の支持構造が安定し、相互の位置関係が保持されやすくなるとともに、搬送物Wに搬送の向きF側への推進力を与えるための振動を容易に生じさせつつ、上記推進力に寄与しない、或いは、上記搬送を妨げる態様の不要振動の発生を抑制する。ここで、防振ばね13a,13bは他のばねよりも幅を大きくすることで幅方向の支持剛性を高めるとともに、他のばねよりも長さを大きくすることで搬送方向の弾性変形を容易にしている。ただし、上記各ばねの弾性特性は材質や板厚によっても調整できる。なお、本明細書において、幅方向とは、上記搬送方向と垂直方向のいずれとも直交する方向である。
本実施形態において、基準質量体11は、搬送方向の中央位置に配置された中央質量部11xと、この中央質量部11xの搬送方向の前後位置に設けられた連結部11a、11bとを有する。連結部11a,11bは、上記中央質量体部11xから搬送方向の前後に幅方向の両側二箇所で突出した一対の突起部と、この突起部のさらに搬送方向の前方若しくは後方に取り付けられた、スペーサ、座金、ボルト等の連結部材とによって構成される。中央質量部11xは、搬送方向の前後位置に設けられた連結部11a,11bの上方及び下方に拡がった厚肉構造を備え、搬送方向の中間位置に配置されている。図示例の基準質量体11の重心位置は、搬送方向の前後位置にある連結部11aと11bを結ぶ直線上に配置される。連結部11a,11bには、上記防振ばね13a,13bと圧電駆動体16a,16bがそれぞれ結合(接続固定)されている。防振ばね13a,13bは、それぞれ、圧電駆動体16a,16bの接続位置よりも搬送方向の前後外側の位置に接続されている。
上記圧電駆動体16a,16bは、上下方向の中央位置の幅方向両側にそれぞれ設けられた後述する側部接続縁16as,16bsにより上記連結部11a,11bに接続固定される。そして、この接続構造により、圧電駆動体16a,16bには、基準質量体11の上方へ伸びる部分である上側圧電駆動部16au,16buと、基準質量体11の下方へ伸びる部分である下側圧電駆動部16ad,16bdとが設けられる。
本実施形態の圧電駆動体16a,16bは、図4(a)に示すように、シム板と呼ばれる金属製の弾性基板16Sと、この弾性基板16Sの表裏両面に貼着(積層)された圧電体(圧電層)16Pとを有する。弾性基板16Sには、圧電体16Pの設置領域の上側及び下側に上部接続縁16su及び下部接続縁16sdが形成され、圧電体16Pの設置領域の左右両側に上記側部接続縁16as,16bsが形成される。上部接続縁16su、下部接続縁16sd及び側部接続縁16as,16bsは、図示例では、上記圧電体16Pの設置領域の左右両側に張り出す形状をそれぞれ有する。また、上部接続縁16su、下部接続縁16sd及び側部接続縁16as,16bsには、それぞれ連結構造(図示例では連結用の貫通孔)が形成されている。ここで、この連結構造は、ねじ穴、ボス、切り欠きなどであってもよく、特に図示例には限定されない。下部接続縁16sdは、上記圧電体16Pの設置領域の下方から幅方向の一方側に張り出す部分を有し、当該部分に上記連結構造(2つの貫通孔)が設けられる。一方、上部接続縁16suは、上記圧電体16Pの設置領域の上方から幅方向の他方側に張り出す部分を有し、当該部分に上記連結構造(2つの貫通孔)が設けられる。
このとき、圧電体16Pは、弾性基板16S上において、左右の側部接続縁16as,16bsの間の幅方向の中間位置に配置されている。このようにすると、基準質量体11に対する結合位置が圧電体16Pを回避した幅方向両側に設けられるため、圧電駆動体16a,16bの撓み変形動作に影響を与えにくくなるとともに、左右両側で確実に基準質量体11に結合させることにより、圧電駆動体16a,16bを基準質量体11に対して強固に固定できるため、この基準質量体11を基準として上下両側にある上側質量体12A及び下側質量体12Bに対して加振力を確実に与えることが可能になる。さらに、本実施形態の圧電駆動体16a,16bでは、圧電体16Pが上側圧電駆動部16au,16buと下側圧電駆動部16ad,16bdにわたって一体に構成されるため、後述するように、上側圧電駆動部16au,16buと下側圧電駆動部16ad,16bdが均一かつ一体的に撓み変形することになることから、上側質量体12Aと下側質量体12Bを同位相で確実に均等な動作態様で駆動することができる。
上記圧電駆動体16a,16bは、圧電体16Pの表裏に電圧を印加すると、電圧に応じて圧電体16Pが変形し、これによって弾性基板16Sは長さ方向に撓むように構成される。そして、所定周波数の交番電圧を印加することにより、圧電駆動体16a,16bは、交互に逆方向に撓み変形することで振動し、その振動は、後述する上側増幅ばね17a,17b及び下側増幅ばね18a,18bを介して基準質量体11を基準として上側質量体12A及び下側質量体12Bにおいて搬送方向にほぼ沿った振動を生じさせる。ここで、搬送方向の前後位置に取り付けられた圧電駆動体16a,16bは共に搬送方向に同位相で撓み変形し、それぞれの上側圧電駆動部16au,16buと下側圧電駆動部16ad,16bdも搬送方向に同位相で変形するので、基準質量体11に対して上側質量体12Aと下側質量体12Bも搬送方向に同位相で振動する。このとき、基準振動体11は、上側質量体12A及び下側質量体12Bの振動による反力を打ち消すように、これらとは逆位相で振動する。なお、図示例の圧電駆動体16a,16bは、弾性基板16Sの両面に圧電体16Pが配置されたバイモルフ構造を有するが、弾性基板16Sの片面のみに圧電体が配置されてなるユニモルフ構造であってもよく、その他、公知の種々の圧電駆動体を用いることができる。また、圧電駆動体16a,16bは、上記中間部位(具体的には、幅方向両側の側部接続縁16as,16bs間を結ぶ線)を対称軸として長さ方向(上下方向)に対称な構造を有し、また、幅方向(左右方向)にも対称に構成される。これにより、上側質量体12Aと下側質量体12Bの双方に対して均等な同位相の加振力を確実に与えることができる。
圧電駆動体16a,16bの上部接続縁16suには、図5に示す下側増幅ばね18a,18bの上部接続縁18au,18buが連結され、下側増幅ばね18a,18bは基準質量体11の上方位置(基準質量体11の重心位置よりも上方にある位置)から下側質量体12Bの高さまで下方へ伸びる。また、下側増幅ばね18a,18bの下部接続縁18ad,18bdは下側質量体12Bに対して搬送方向の前後位置においてそれぞれ接続固定される。上記構造により、上記下部振動ばね15a,15bは、上側圧電駆動部16au,16buと下側増幅ばね18a,18bとの直列接続構造により構成される。ここで、上側圧電駆動部16au,16buは、上記の下部振動用上側突出部、並びに、上記の下部振動用上側圧電駆動部に相当する。また、下側増幅ばね18a,18bは、上記の下部振動用下側弾性部に相当する。
圧電駆動体16a,16bの下部接続縁16sdには、図5に示す上側増幅ばね17a,17bの下部接続縁17ad,17bdが連結され、上側増幅ばね17a,17bは基準質量体11の下方位置(基準質量体11の重心位置よりも下方にある位置)から上側質量体12Aの高さまで上方へ伸びる。上側増幅ばね17a,17bの上部接続縁17au,17buは上側質量体12Aに対して搬送方向の前後位置においてそれぞれ接続固定されている。上記構造により、上記上部振動ばね14a,14bは、下側圧電駆動部16ad,16bdと上側増幅ばね17a,17bとの直列接続構造により構成される。ここで、下側圧電駆動部16ad,16bdは、上記の上部振動用下側突出部、並びに、上記の上部振動用下側圧電駆動部に相当する。また、上側増幅ばね17a,17bは、上記の上部振動用上側弾性部に相当する。
図5に示すように、上側増幅ばね17a,17bは、下部接続縁17ad,17bdから上部接続縁17au,17buまで上方に伸びる板状に形成されている。上側増幅ばね17a,17bは、下部接続縁17ad,17bdから上方へ伸びる帯状部分を幅方向の一方側に偏った位置に有するとともに、当該帯状部分の上下方向の中間位置の外縁には、基準質量体11の連結部11a,11bを避けるための凹部17as,17bsが形成されている。また、上部接続縁17au,17buは、上記帯状部分の上端から幅方向の他方側へ張り出して、振動式搬送装置10の幅方向の中心位置から両側にほぼ均等な範囲に構成される。
また、下側増幅ばね18a,18bは、上部接続縁18au,18buから下部接続縁18ad,18bdまで下方に伸びる板状に形成されている。下側増幅ばね18a,18bは、上部接続縁18au,18buから下方へ伸びる帯状部分を幅方向の他方側に偏った位置に有するとともに、当該帯状部分の上下方向の中間位置の外縁には、基準質量体11の連結部11a,11bを避けるための凹部18as,18bsが形成されている。また、下部接続縁18ad,18bdは、上記帯状部分の下端から幅方向の一方側へ張り出して、振動式搬送装置10の幅方向の中心位置から両側にほぼ均等な範囲に構成される。
上側増幅ばね17a,17bと下側増幅ばね18a,18bとは、それぞれ幅方向に沿った板面を有するとともに、搬送方向の同じ位置において幅方向に離間して配置されている。より詳細には、上側増幅ばね17a,17bの上記帯状部分と、下側増幅ばね18a,18bの上記帯状部分とは、図5に示すように、幅方向の一方側と他方側に相互に離間して配置されるとともに、搬送方向に見て重なる位置に配置されている。また、上部接続縁17au,17buが上部接続縁18au,18buの上方に離間して配置されるとともに、上部接続縁17au,17buと上部接続縁18au,18buが幅方向に見て相互に重なる位置に配置される。さらに、下部接続縁18ad,18bdが下部接続縁17ad,17bdの下方に離間して配置されるとともに、下部接続縁18ad,18bdと下部接続縁17ad,17bdが幅方向に見て相互に重なる位置に配置される。
図2に示すように、搬送方向の前方位置にある圧電駆動体16aは、上側増幅ばね17a及び下側増幅ばね18aの前方に配置される。また、搬送方向の後方位置にある圧電駆動体16bも、上側増幅ばね17b及び下側増幅ばね18bの前方に配置される。ここで、圧電駆動体16a,16bと、上側増幅ばね17a,17b及び下側増幅ばね18a,18bとの間の搬送方向の前後の位置関係は前後いずれであっても構わない。また、搬送方向の前方位置と後方位置で上記搬送方向の前後の位置関係が逆となっていてもよい。ただし、上側質量体12A及び下側質量体12Bに対して搬送方向の前後位置で与える振動の向きを揃え、搬送体20上の搬送路21の搬送方向の搬送力を均一化する上では、図示のように、搬送方向の前方位置と後方位置において上記搬送方向の前後の位置関係が同じであることが好ましい。
上記連結部11aにおいては、圧電駆動体16aの取付位置よりも搬送方向の前方に防振ばね13aの取付位置が設けられ、上記連結部11bにおいては、圧電駆動体16bの取付位置よりも搬送方向の後方に防振ばね13bが取り付けられている。このように防振ばね13a,13bが上部振動ばね14a,14b及び下部振動ばね15a,15bよりも搬送方向の前後位置の外側に配置されることで、主要振動系全体の安定性が向上する。連結部11a,11bにおいて圧電駆動体16a,16bと防振ばね13a,13bとの間にはスペーサが配置され、このスペーサによって圧電駆動体16a,16bと防振ばね13a,13bの間隔が設定されている。当該間隔は上記の安定性に寄与するが、あまり大きくなると、連結部11a,11bの剛性不足によるピッチング運動が生じたり、装置全体の搬送方向のサイズを大型化させたりする。このため、構造上必要な最小限の間隔とすることが好ましい。防振ばね13a,13bには、下側増幅ばね18a,18bと下側質量体12Bとの間の外側からの連結作業を可能にし、或いは、下側増幅ばね18a,18bと下側質量体12Bとの間を連結する部材との干渉を回避するための開口部(図示丸孔)が形成されている。
図3に示すように、本実施形態の場合、防振ばね13a,13bの下端は、基台19の搬送方向の前後位置に形成された一対の突出部19a,19bの前方側及び後方側の面に接続固定される。また、基台19の両側面には、カバー板10s,10sが取り付けられている。これらのカバー板10sは、基台19に対する取付位置から上方へそれぞれ伸び、上側質量体12Aの側方位置に達している。
本実施形態では、図2に示すように、搬送体20が上側質量体12A上に設けられる。搬送体20には、上記搬送の向きFに沿って直線状に伸びる搬送路21が形成されている。なお、搬送体20は下側質量体12B上に設けられることも可能であるが、搬送物Wの取り扱いや搬送態様の調整面で、一般的には、上側質量体12A上に設けられることが好ましい。この場合、振動式搬送装置10の振動系においては、上側質量体12Aは、上記搬送体20をも含めた質量を有する慣性体として作用する。
この振動式搬送装置10では、上記連結部11a,11b等の各部の連結構造により、圧電駆動体16a,16b、上側増幅ばね17a,17b、下側増幅ばね18a,18b及び防振ばね13a,13bが、搬送の向きFに向けて、それらの板面が図3に示す斜め方向Sに向く姿勢、すなわち、図示の斜め方向Tに沿った板面を有する姿勢で取り付けられる。このとき、上側質量体12A及び搬送体20は、上記斜め方向Tと直交する上記斜め方向Sに沿って振動し、その振動角θは、搬送体20の搬送路21上の搬送物Wに搬送の向きFへ向かう推進力を与える。
以上説明した構造を有する本実施形態の振動式搬送装置10は以下のように動作する。圧電駆動体16a,16bを図示しない制御駆動ユニットにより稼働させると、圧電駆動体16a,16bは相互に同位相で搬送方向の前後に撓み変形し、振動を発生する。この振動は、下部振動ばね15a,15bに沿って、すなわち、上側圧電駆動部16au,16buから下側増幅ばね18a,18bを経由して、下側質量体12Bに伝達されるとともに、上部振動ばね14a,14bに沿って、すなわち、下側圧電駆動部16ad,16bdから上側増幅ばね17a,17bを経由して、上側質量体12Aに伝達される。
このとき、下側圧電駆動部16ad,16bdの下端は、圧電駆動体16a,16bの中央部を中心としてほぼ円弧状に振動する。そして、上方に伸びる上側増幅ばね17a,17bは、上記方向Sに沿ってほぼ直線状(上記円弧状より大きな曲率半径の円弧状)に振動する。一方、上側圧電駆動部16au,16buの上端は、圧電駆動体16a,16bの中央部を中心としてほぼ円弧状に振動する。そして、下方に伸びる下側増幅ばね18a,18bは、上記方向Sに沿ってほぼ直線状(上記円弧状より大きな曲率半径の円弧状)に振動する。
上記動作により、基準質量体11と、上側質量体12A及び下側質量体12Bとは、相互に搬送方向に逆位相で振動する。このとき、上側質量体12Aと下側質量体12Bが基準質量体11の上下両側に配置されていることで、基準質量体11の重心位置と、上側質量体12A及び下側質量体12Bの合計の重心位置のずれを低減することが容易である。ここで、静止状態における基準質量体11の重心位置と上側質量体12A及び下側質量体12Bの合計の重心位置とが一致するように全体を設計することが好ましい。
また、上側質量体12Aと下側質量体12Bは相互に同位相で搬送方向の前後に振動するので、基準質量体11から見ると、上部振動ばね14a,14bから受ける反力と、下部振動ばね15a,15bから受ける反力とが相殺若しくは減殺し、これによって基準質量体11に生ずるモーメントが低減されるので、振動系全体のピッチング運動が抑制される。ここで、上側質量体12Aの質量(図示例の場合には搬送体20を含めた質量)と、下側質量体12Bの質量とが一致することが望ましい。ただし、実際には、上側質量体12Aの質量(図示例の場合には搬送体20を含めた質量)と、下側質量体12Bの質量とを完全に一致させる必要はない。これは、上側質量体12Aは下方に伸びる上側増幅ばね17a,17bによって下方から持ち上げられた状態で支持されているのに対し、下側質量体12Bは上方に伸びる下側増幅ばね18a,18bによって上方から吊り下げられた状態で支持されているため、支持状態の相違によって最適な質量関係が影響を受けると考えられるとともに、実際の装置構成中の占有可能なスペースや重心位置の関係、搬送体20の搭載の有無などによっても影響を受けると考えられるからである。なお、一般的には、振動の安定性、基準質量体11が防振ばね13a,13bを介して基台19上に支持された構造などを考慮すると、基準質量体11の質量は、上側質量体12Aと下側質量体12Bの合計の質量よりも大きいことが好ましい。
以上説明した実施形態においては、上側圧電駆動部と下側圧電駆動部が一体に構成された圧電駆動体16a,16bを用いている。しかし、圧電駆動体の構造としては、上側圧電駆動部と下側圧電駆動部とが別々の圧電駆動体により構成され、これらの別々の圧電駆動体が基準質量体11に対してそれぞれ結合した構造であってもよい。また、実施形態では、弾性基板16S上の圧電体16Pは上側圧電駆動部において形成された部分と下側圧電駆動部において形成された部分とが一体に構成されているが、図4(b)に示す圧電駆動体16a′,16b′のように、弾性基板12S上において、上側圧電駆動部16au′,16bu′に形成された圧電体16Puと、下側圧電駆動部16ad′,16bd′に形成された圧電体16Pdとが別々に設けられ、相互に分離された構造であってもよい。
本実施形態の振動系では、搬送方向に見ると、基準質量体11の振動の位相は、上側質量体12A及び下側質量体12Bの振動の位相とは逆位相(位相差が180度)になる。したがって、基台19を基準として考えると、基準質量体11の振動による搬送方向の反力と、上側質量体12Aと下側質量体12Bの振動による合成された反力とは相互に打ち消し合う関係(相殺或いは減殺する関係)となる。その結果、防振ばね13a,13bを介して基台19側へ伝達される搬送方向の振動が低減される。
一方、基準質量体11を基準として考えると、上側質量体12Aから受ける反力と下側質量体12Bから受ける反力はいずれも搬送方向に見たときには同じ向きとなるが、相互に同位相で振動する上側質量体12Aの回転モーメントと下側質量体12Bの回転モーメントは逆向きとなるため、相互に打ち消し合う関係(相殺或いは減殺する関係)となる。したがって、基準質量体11が受ける回転方向の反力は低減され、ピッチング動作が生じにくくなるとともに、防振ばね13a,13bを介して基台19側へ伝達される上下方向の振動も低減される。また、これにより、搬送路21の長さ方向に沿った搬送物Wの搬送速度や搬送姿勢などの搬送状態も安定化される。
本発明では、基準質量体11に対して上側質量体12Aと下側質量体12Bが同位相で振動するように加振力を与える同相加振手段である圧電駆動体16a,16bを設けることにより、上側質量体12Aと下側質量体12Bが実質的に一つの質量体として動作する、換言すれば、同相加振手段によって一つの質量体として動作するように拘束される。このため、防振ばね13a,13bを介して基台19に対して弾性接続された一方の質量体である基準質量体11と、この基準質量体11に対して4つの振動ばね14a,14b,15a,15bを介して弾性接続された他方の質量体(上側質量体12Aと下側質量体12B)を有する、実質的に2自由度若しくは2質点の強制(減衰)振動系が構成される。この振動系では、高低2つの共振振動数ω1とω2を有するとともに、この2つの共振振動数ω1とω2の間の振動数帯域で2つの質量体が相互に逆位相で振動する。
これらの2つの質量体11と質量体12A及び12Bとを有する振動系の逆位相モードでは、2つの質量体間の搬送方向の反力が搬送方向に見て相互に打ち消し合う関係にあるが、実施形態では、上述のように、一方の質量体である基準質量体11に対して他方の質量体が上側質量体12Aと下側質量体12Bに二分割されて相互に反対側に弾性接続されているために、基準質量体11が受ける回転モーメントも相互に打ち消し合う関係にある。
以上の構成及び作用効果は、基準質量体11、上側質量体12A、下側質量体12B、防振ばね13a,13b、上部振動ばね14a,14b及び下部振動ばね15a,15bからなる、本発明の基本的な構成に基づくものである。しかし、本実施形態では、上記構成に加えて、上記同相加振手段(圧電駆動体)が上側加振部(上側圧電駆動部)と下側加振部(下側圧電駆動部)をそれぞれ有して、直接かつ別々に加振力を与えることにより、装置構造を簡易化することができるとともに、例えば、搬送物や搬送路のバリエーション等に対応するための加振側の周波数や振幅等の調整を容易に行うことも可能になる。特に、本実施形態においては、上部振動ばね14a,14bに組み込まれた下側圧電駆動部16ad,16bdと、下部振動ばね15a,15bに組み込まれた上側圧電駆動部16au,16buを設け、圧電駆動方式によって加振しているため、振動系とは別途の加振機構(後述する電磁駆動体など)を設ける必要がないから、装置構造をさらに簡易に構成できる。
本実施形態では、上側圧電駆動部16au,16buに接続された下側増幅ばね18a,18bは、基準質量体11の上方位置から下方へ伸びて下側質量体12Bに接続され、下側圧電駆動部16ad,16bdに接続された上側増幅ばね17a,17bは、基準質量体11の下方位置から上方へ伸びて上側質量体12Aに接続されるため、上部振動ばね14a,14b及び下部振動ばね15a,15bの長さを確保しつつ、装置の全高を低減することができる。これにより、振動式搬送装置10の高さを低減しても搬送性能を犠牲にする必要がなくなるという顕著な効果を奏することになる。特に、上記の構成は、上側増幅ばね17a,17b及び下側増幅ばね18a,18bの長さを確保する上で効果的であり、その結果、圧電駆動体16a,16bの振幅が小さなものであっても、これを十分に増幅して搬送体20に与えることができる。
また、本実施形態では、基準質量体11から上方へ伸びる上側圧電駆動部16au,16buにより生ずる円弧状の振動は、逆の下方へ伸びる下側増幅ばね18a,18bを介して下側質量体12Bに伝達され、基準質量体11から下方に伸びる下側圧電駆動部16ad,16bdにより生ずる円弧状の振動は、逆の上方へ伸びる上側増幅ばね17a,17bを介して上側質量体12Aに伝達される。これにより、上側質量体12A及び下側質量体12Bの振動態様は、従来よりも直線的に、斜め方向Sに沿って振動することとなる。すなわち、上記のように途中で反転した上部振動ばね14a,14bと下部振動ばね15a,15bを設けることで、搬送体20の振動方向の円弧状の曲率半径を大きくすることができ、その結果、搬送物Wをより安定した状態で搬送できる。また、振幅が大きくなっても振動角θの変動が抑制されるため、設定した振動角θで正確に搬送物Wを搬送することができ、その結果、搬送速度の調整や搬送速度の搬送路21に沿った方向の均一性の調整を容易に行うことが可能になる。
また、本実施形態では、上述の理由により、上側増幅ばね17a,17b及び下側増幅ばね18a,18bの設計の自由度を高めることができるため、振動周波数の設定や制御が容易になるとともに、振動周波数の調整作業も容易になる。また、装置の全高を従来装置と同様の高さとしたときには、上側増幅ばね17a,17b及び下側増幅ばね18a,18bを従来装置よりも長くすることが可能になるから、搬送体20の振幅を大きくすることができ、搬送速度の高速化を図ることができるとともに、搬送速度の調整範囲も拡大することが可能になる。
尚、本発明の振動式搬送装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記実施形態では、上部振動ばね14a,14b及び下部振動ばね15a,15bは、それぞれ同相加振手段を包含する態様で、下側圧電駆動部16ad,16bdと上側増幅ばね17a,17b、及び、上側圧電駆動部16au,16buと下側増幅ばね18a,18bでそれぞれ構成されている。しかし、これとは異なり、同相加振手段を、基準質量体11と上側質量体12A及び下側質量体12Bとの間にそれぞれ電磁力に基づく加振力を与える電磁駆動体で構成するとともに、上部振動ばね(上部振動用下側突出部と上部振動用上側弾性部)及び下部振動ばね(下部振動用上側突出部と下部振動用下側弾性部)をそれぞれ単なる板ばねで構成するようにしてもよい。さらに、上記実施形態では、上部振動ばね14a,14bと下部振動ばね15a,15bを、それぞれ、下方に伸びる部分と、上方へ伸びる部分とを接続した構造としているが、両部分を一体化したU字状の弾性体で構成しても構わない。