JP2013086239A - プラスチックレンズ用の研磨工具、プラスチックレンズの研磨方法及びプラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

プラスチックレンズ用の研磨工具、プラスチックレンズの研磨方法及びプラスチックレンズの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】プラスチックレンズに対する研磨の際に発生する研磨廃液処理に要するコストを低減しつつ、研磨効率の低下を抑制するプラスチックレンズ用の研磨工具、プラスチックレンズの研磨方法及びプラスチックレンズの製造方法を提供する。
【解決手段】プラスチックレンズの光学面を整えるのに用いられる研磨工具であって、発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質に対して結晶性アルミナからなる砥粒が均一に分散して固定されている単層からなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、プラスチックレンズ用の研磨工具、プラスチックレンズの研磨方法及びプラスチックレンズの製造方法に関する。
近年、光学レンズとして、ガラスレンズの代わりに樹脂素材を用いたプラスチックレンズが多用されている。その理由としては、プラスチックレンズがガラスレンズに比べて軽量であり、割れにくく且つ加工成形がし易いことなどの利点があることに起因している。このプラスチックレンズは光学分野で幅広く採用されているが、上記の利点があることから、眼鏡用レンズとして特に使用されている。
従来、眼鏡用のプラスチックレンズを構成する樹脂素材に対する加工においては、切削・研削方法として球面加工、トーリック面加工、および自由曲面加工を行うためのカーブジェネレーティング加工(以下、CG加工と言う。)が行われている。この加工が行われる工程は、粗削り工程とも呼ばれる。
このCG加工は、被加工物である樹脂素材に対して所望の形状が創成できるような位置にダイヤモンド工具を相対配置し、工具および樹脂素材の両者を相対運動させながら球面、トーリック、および自由曲面形状を創成する方法である。
このCG加工された樹脂素材(以降、プラスチックレンズと言う。)に対し、ポリウレタン研磨パッドや不織布研磨パッド、そして遊離砥粒を用いて機械研磨を行い、プラスチックレンズに対して研磨加工(例えば粗研磨や仕上げ研磨)を施し、光学面を整える。そして最終的に、プラスチックレンズに対して所望の光学面を形成し、プラスチックレンズの完成品とする。以降、この研磨加工のことを、単に「研磨」又は「研磨する」と言い、研磨液(スラリー)中に砥粒を混合させたものについて「遊離砥粒」と言う。
ここで言う研磨の方法としては、弾性研磨器具を用いる方法が提案されている。弾性研磨器具を用いる方法としては、例えば、特許文献1に示すような、風船型研磨器具を用いる研磨方法が知られている。
この方法は、研磨パッドが最表面に設置された風船型研磨器具の内側に圧力気体を送り、内圧で前記風船型研磨器具を膨らませ、その内圧を変更することによって曲率を変更し、被研磨面の曲面形状に合った曲率にして研磨するもので、凹面の曲率に追随できるため、1種類の風船型研磨器具で多数の被研磨面に対応することができる。
ところで、上記のような風船型研磨器具を用いて研磨を行う場合、通常、砥粒を用いる。この砥粒としては、先ほど挙げた特許文献1においては、(酸化)アルミナ、ダイヤモンドパウダー等の砥粒を研磨液に分散させた溶液状の研磨剤を、プラスチックレンズに対して使用している。
なお、特許文献2には、プラスチックレンズに対する研磨において、バインダーに対して酸化アルミニウム等の研磨粒子を固定した研磨複合材料を複数個配置する技術が記載されている。以降、特許文献2で用いられる砥粒を「固定砥粒」と言い、後述する実施の形態において発泡体に固定された砥粒のことも「固定砥粒」と言う。
特許第4681024号 特開平07−186030号公報
まず、CG加工後の研磨(例えば粗研磨や仕上げ研磨)に用いられる砥粒としては、特許文献1のような遊離砥粒を用いるよりも、特許文献2に記載の技術のように固定砥粒を用いる方が、以下の利点がある。
即ち、遊離砥粒を含んだスラリーが研磨工程時に不要となるため、研磨工程後において遊離砥粒を含む研磨廃液が多量に発生するのを抑制できる。また、研磨廃液は、勿論ながら種々の化合物を含有しており、そのまま廃棄してしまうと環境に悪影響を及ぼすことになる。そのため、研磨廃液に対して所定の廃液処理を施すことが必要になってしまうところだが、固定砥粒を用いることにより、廃液処理に必要な時間、設備コスト、ランニングコストを低減させることができる。
また、遊離砥粒を使用すると、研磨処理の際に、研磨布に目詰まりなどが生じて、その性能が低下してしまうおそれが高くなるところ、固定砥粒を使用することによりそのおそれを抑制することができる。その結果、研磨工具を頻繁に取り替える必要が無くなり、研磨処理作業の効率の低下を抑制することができる。
その一方、特許文献2に記載の技術をもってしても、バインダーに対し研磨粒子を固定した研磨複合材料を複数個、基材上に、他の研磨複合材料からある程度間隔を置かれて配置されなければならず(特許文献2の段落0076及び図2)、別個の研磨複合材料を形成するために、研磨複合材料を形成する平面および境界は、その研磨複合材料形状の上部において、少なくとも末端が、互いに分離されていなければならなかった(特許文献2の段落0076及び図3)。このような構成とすることにより、研磨複合材料が互いに分離されて更に柔軟とすることによって、研磨効果が高められていると考えられる(特許文献2の段落0077)。
しかしながら、特許文献2に記載の研磨部材の場合、研磨粒子が存在しない部分(例えば特許文献2の図3に示す断面台形の複合材料間)を形成しなければならず、研磨粒子がバインダーから離脱することにより自生発刃作用が起こりにくくなり、研磨効率が低下するおそれがある。また、研磨複合材料の上端しかプラスチックレンズと接触しないことから研磨が不均一に行われてしまったり、研磨複合材料間に砥粒が埋まってしまったりするおそれがある。そうなると結局のところ、プラスチックレンズの品質や歩留まりが低下してしまう。
現在、プラスチックレンズに対する研磨効率の向上が強く求められている。もし、この研磨効率を向上させれば、プラスチックレンズの製造コストの減少、プラスチックレンズの品質向上ひいては歩留まりの向上にもつながる。
本発明の目的は、プラスチックレンズに対する研磨の際に発生する研磨廃液処理に要するコストを低減しつつ、研磨効率の低下を抑制するプラスチックレンズ用の研磨工具、プラスチックレンズの研磨方法及びプラスチックレンズの製造方法を提供することにある。
本発明者は、プラスチックレンズに対する研磨の際に発生する研磨廃液処理に要するコストを低減しつつ、研磨効率の低下を抑制するべく、従来のプラスチックレンズに対する研磨方法(特に特許文献2に記載の技術)について再検討した。そして、特許文献2の記載で除外されている構成(即ち砥粒が均一に分散して固定されている単層構造)を採用しつつ、本発明の目的を達成できないか検討した。
なお、特許文献2の記載から、研磨複合材料を砥粒が均一に分散して固定されている単層構造にて形成することは、当業者でも考えられない事項である。なぜなら、現在、プラスチックレンズに対する研磨効率の向上が強く求められている状況下で、特許文献2の出願時点という昔の段階でも目的が達成できないと考えられていた構成を現在の技術に適用するとは当業者でも考えられない事項であり、その問題を解決するための手段に関する示唆もないような状況である。特許文献2において、研磨粒子が存在しない部分を形成して自生発刃作用が起こりにくくしてまで、わざわざ研磨複合材料を分離することを必須としていること、そしてその分離を必須なものとした記載が特許文献2にあることがその証左である。
それでも本発明者は、砥粒が均一に分散して固定されている単層構造を有する研磨工具が上記の課題を解決できないかと検討を加えた。
この検討に際し、本発明者は、固定砥粒を用いる場合の研磨のメカニズムについて、原点に立ち返って分析した。まず、固定砥粒を使用する技術と言うのは、発泡体に砥粒を固定したものを研磨工具(例えば研磨パッド)として用いるものである。そして、例えばプラスチックレンズに対して研磨を行う場合、もちろん研磨パッドに固定された砥粒によっても研磨されることになるが、研磨に主に寄与するのは発泡体から離脱した砥粒である。
ところで、研磨にも粗研磨や仕上げ研磨というように種々の研磨が存在するが、砥粒の粒径を変更することにより各々の研磨を行っている。例えば、粒径を大きくすると比較的粗い研磨を行うことが可能になり、粒径を小さくすると比較的細かい研磨を行うことが可能になる。しかしながら、固定砥粒を用いる場合、粒径が小さい場合は砥粒の表面積が小さくなる。そうなると、固定砥粒が発泡体外に露出したときに、被研磨対象と接触する面積も自ずと小さくなってしまい、結局のところ研磨の際に砥粒が離脱しにくくなってしまう。先にも述べたように、固定砥粒を用いる場合の研磨に主に寄与するのは発泡体から離脱した砥粒である。そのため、粒径が小さい場合、研磨の際に砥粒が離脱しにくくなることから、どうしても研磨効率が低下してしまう。更に悪いことに、細かい研磨を行う場合、粗い研磨に比べてただでさえ時間がかかってしまうのに、粒径の小ささに起因して砥粒が発泡体から離脱しにくくなる。その結果、固定砥粒を用いる場合に細かい研磨を行おうとすると、研磨効率が相当低下してしまう、という知見を本発明者は得た。
以上の知見に基づき、本発明者は、鋭意努力を重ねた結果、砥粒が均一に分散して固定されている単層構造であっても、発泡体としてポリウレタン樹脂が主となる物質を採用し、固定砥粒として結晶性アルミナを採用することにより、前記課題を解決できることを想到した。
この想到の理由としては、以下のものが挙げられる。
1.結晶性アルミナは、単純な球形ではなく多数の凹凸や空隙を有する構造となっていることから表面積が大きい複数の粒子により構成されている。大きな表面積を有することにより、例え粒径が小さくとも発泡体から砥粒を離脱させやすくすることができる。
2.結晶性アルミナとポリウレタン樹脂との間では水素結合のような化学結合がほとんど起こらないため、発泡体から砥粒を離脱させやすくなる。
3.結晶性アルミナの硬度は極めて高く、粒径が小さい場合に発泡体から砥粒が離脱しにくい分の短所を砥粒自身の硬度で補うことができ、研磨効率の低下を抑制できる。
以上の知見に基づき、本発明者は初めて、数ある発泡体及び砥粒の中からこの組み合わせを、単層構造の研磨工具を用いた固定砥粒方式の研磨に採用した。この組み合わせにより、プラスチックレンズに対する研磨の際、固定砥粒の量と離脱する砥粒の量のバランスがとれ、研磨効率の低下を抑制できる、そしてもちろん研磨液に砥粒を混ぜて研磨する遊離砥粒方式のように多量の廃液を発生させることはない、という知見を発明者は得た。
以上の知見に基づいて成された本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
プラスチックレンズの光学面を整えるのに用いられる研磨工具であって、
発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質に対して結晶性アルミナからなる砥粒が均一に分散して固定されている単層からなることを特徴とするプラスチックレンズ用の研磨工具である。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の態様であって、
前記砥粒は、平均粒径が0.5μmを超え8μm未満の粒子からなることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、
発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質に対して結晶性アルミナからなる砥粒が均一に分散して固定されている単層を含む研磨工具を用いてプラスチックレンズの主表面を研磨することにより、前記プラスチックレンズの光学面を整えることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法である。
本発明の第4の態様は、第3の態様に記載の態様であって、
前記プラスチックレンズの主表面に対して実質的に化学反応しない研磨液を供給しながら前記主表面を研磨することを特徴とする。
本発明の第5の態様は、
発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質に対して結晶性アルミナからなる砥粒が均一に分散して固定されている単層からなる研磨工具を用いてプラスチックレンズの主表面を研磨することにより、前記プラスチックレンズの光学面を整えることを特徴とするプラスチックレンズの研磨方法である。
本発明によれば、プラスチックレンズに対する研磨の際に発生する研磨廃液処理に要するコストを低減しつつ、研磨効率の低下を抑制することができる。
本実施形態に係る研磨方法を行うための研磨装置の概略構成図である。 本実施形態に係る研磨治具の平面図である。 本実施形態に係る研磨パッドが取付けられた研磨治具の平面図である。 本実施形態に係る研磨治具の底面図である。 図3のVII−VII線断面図である。 本実施形態に係る研磨パッドの平面図である。 本実施形態に係る研磨パッドの締付部材の斜視図である。 本実施形態に係る研磨装置の無軌道研磨軌跡を示す概念図である。
以下、本発明の実施の形態について説明する。順序としては、まず、本実施形態におけるプラスチックレンズの研磨方法を適用する研磨装置について説明する。この研磨装置は特許文献1(特許第4681024号)に記載の装置を元にしたものではあるが、本明細書においては研磨パッドの部分を中心として再掲し、それ以外の部分は省略する。その後、本実施形態の特徴部分であるプラスチックレンズの研磨方法に関する内容について詳述する。それらを踏まえた上で、研磨方法を含んだプラスチックレンズの製造方法について説明する。その後、実施の形態による効果を述べ、最後に変形例について説明する。
具体的には、以下の順序で説明を行う。
1.プラスチックレンズの研磨装置
A)研磨装置の全体構成
B)研磨パッド
C)研磨治具
D)その他
2.プラスチックレンズの研磨方法
A)プラスチックレンズの選定
B)研磨パッドの選定
a)発泡体(スポンジ部分)
b)固定砥粒
c)その他の化合物及び研磨パッドの製造方法
C)研磨の実行
3.プラスチックレンズの製造方法
A)セミフィニッシュレンズの選定
B)CG加工
C)研磨
a)粗研磨
b)仕上げ研磨
D)その他(カラー染色・検査・超音波洗浄・ハードコート加工・マルチコート加工等)
4.実施の形態による効果
5.変形例
<1.プラスチックレンズの研磨装置>
A)研磨装置の全体構成
本実施形態であるプラスチックレンズの研磨方法を行う上で、特許文献1に記載の眼鏡レンズに対する研磨装置を用いた場合を例示する。もちろん、眼鏡レンズ以外の光学レンズであっても、本実施形態で言うところの「プラスチックレンズ」に対してならば、本実施形態を適用することは可能であるが、本実施形態においては眼鏡レンズの研磨方法について例示する。
図1において、全体を符号1で示す眼鏡レンズの研磨装置は、床面に設置された装置本体2と、この装置本体2に紙面において左右方向に移動自在でかつ水平な軸3を中心として紙面と直交する方向に回動自在に配設されたアーム4と、このアーム4を左右方向に往復移動させるとともに紙面と直交する方向に回動させる図示しない駆動装置と、前記アーム4に設けられておりプラスチックレンズ5の凸面5aがレンズ保持体7を介して保持されるレンズ取付部6と、このレンズ取付部6の下方に位置するように前記装置本体2に配設され、図示しない駆動装置により垂直な軸線Kを中心として首振り旋回運動(自転はしない)を行う揺動装置8等を備えている。
また、本実施形態における研磨装置1は、前記揺動装置8の上面に対して着脱自在に設けられた研磨治具9、この研磨治具9に着脱自在に取付けられた研磨パッド10、前記レンズ取付部6を昇降させる昇降装置11等を、更に備えている。なお、前記揺動装置8は、垂直な回転軸21に揺動角度α(例えば、5°)で首振り旋回運動するように傾斜して取付けられている。
以降、レンズを研磨するための部分であって、本実施形態においてはプラスチックレンズ5の研磨に直接用いられる部材を「研磨工具」と言い、本実施形態においては研磨パッド10に該当する。
B)研磨パッド
本実施形態における研磨パッド10は、プラスチックレンズの光学面を整えるのに用いられる。前記プラスチックレンズ5の凹面5bの研磨に用いられる前記研磨パッド10は、図6に示すように前記バルーン部材25のドーム部25Aの正面視形状と略同一の大きさの楕円形に形成された研磨部60(本実施形態で言うところの「接触部」)と、この研磨部60の周縁から外側に伸びる複数本の固定片61とで構成されている。
研磨部60は、外周より中心に向かって形成された複数の溝62により放射状に形成された8個の花弁片63で構成されている。各花弁片63は、中心側の幅が狭く、外周側の幅が広くなるように平面視台形状に形成されている。前記固定片61は、前記8個の花弁片63のうち、長軸方向と短軸方向に位置する合計4つの花弁片63の外縁に径方向にそれぞれ延設されている。固定片61の幅は、花弁片63の外縁の幅より狭く設定されている。これは、研磨中にバルーン部材25の変形や固定片61が後述する締付部材66から引き出された際、固定片61の撓みを容易にするためである。
前記固定片61は、幅が広すぎると柔軟性に欠けて撓み難くなり、狭すぎると強度的に弱くなるため研磨時に破断し易くなる。従って、固定片61の幅は強度と柔軟性を考慮して決められる。例えば、厚さ1mmのフェルトを使用した場合、幅は5〜15mm程度とすることが望ましい。5mm以下では耐久性が低下し、15mm以上であると柔軟性が低下し、バルーン部材25の変形に追随しづらくなる。固定片61の数としては、2つ以上で一定の間隔をおいて配置されることが望ましい。なお、固定片61の数が多すぎると、固定片61と後述する締付部材66との接触面積が大きくなり、固定片61にかかる締付部材66の圧力が分散して小さくなるため外れ易くなる。反対に少なすぎると研磨パッド10の研磨治具9に対する安定した固定が得られなくなる。したがって、固定片61の数としては3〜5つ程度であると、より望ましい。
C)研磨治具
このような研磨パッド10は、前記締付部材66によって前記研磨治具9に着脱自在に取付けられる。以下、研磨治具9について説明する。
図2〜図5において、前記研磨治具9は、弾性材料である天然ゴム、合成ゴムまたはゴム状樹脂によってカップ状に形成された背面側が開放するバルーン部材25と、このバルーン部材25の背面側開口部を閉塞し内部を気密に保持する固定具26と、前記バルーン部材25の内部に圧縮空気を供給するバルブ27とで構成されている。
前記バルーン部材25は、正面視形状が略楕円形で表面が扁平または緩やかな凸曲面からなるドーム部25Aと、このドーム部25Aの外周より下方に向かって一体に延設された略楕円形の筒部25Bと、筒部25Bの後端に一体に延設された環状の内フランジ25Cとで構成されている。また、内フランジ25Cの内端には、上方に突出した環状の係止部28が一体に設けられている。
この係止部28は、後述する内側固定具29と係合することでバルーン部材25と内側固定具29を仮固定し、研磨治具9の組み立てを容易にするとともに、外側固定具30を取付けたときにバルーン部材25が固定具26から外れるのを防止し、かつ内部の密閉を確実にする。
バルーン部材25の材質としては、例えば硬度が20〜50度の天然ゴムに近い合成ゴム(例えば、IIR)または天然ゴムが用いられる。バルーン部材25の厚さTは全体にわたって均一で、約0.5〜2mm(通常1mm程度の等厚)である。バルーン部材25は、研磨するプラスチックレンズ5の大きさや研磨したい被研磨面の形状に応じて複数種類用意することが好ましい。
前記固定具26は、前記内側固定具29と外側固定具30の2部材からなり、これらによってバルーン部材25の内フランジ25Cと係止部28を内側と外側から挟持することにより、バルーン部材25の背面側開口部を気密に封止している。内側固定具29は、バルーン部材25の筒部25Bの内側の形状と略同一の大きさの楕円板からなり、表面側外周縁が面取りされ、裏面外周部に前記内フランジ25Cが嵌合する環状溝31が形成されている。また、環状溝31の内周には、前記係止部28が嵌合する環状の溝31aが全周にわたって形成されている。環状溝31の深さWは、内フランジ25Cの厚さ(T)より若干小さく設定されている。また、内側固定具29は、高さが筒部25Bの高さより低く設定されることにより、バルーン部材25の内部に密閉空間32を形成している。
前記バルブ27を介し、前記密閉空間32に対して圧縮空気を供給し、前記ドーム部25Aを上方に膨張させると、ドーム部25Aの中心軸を含む断面の曲率半径が楕円の短軸方向で最小となり、長軸方向で最大となるトーリック面に近い形状が形成される。この場合、ドーム部25Aの曲率半径は、ドーム部25Aの中央高さ(頂点高さ)に応じて変化するため、適宜な装置によってドーム中央の高さを測定し調整することにより、ドーム部25Aの曲率半径を所望の曲率半径とすることができる。なお、ドーム部25Aの形状をプラスチックレンズ5の凹面5bにより近づけるには長軸、短軸の寸法またはその比率を変えたものを複数種用意しておき、プラスチックレンズ5の凹面形状に近いものを選択して使用することが好ましい。ドーム部25Aの曲率半径を、プラスチックレンズ5の凹面5bの曲率半径よりも小さく設定すると、レンズ凹面をドーム部25Aに押し付ける際に凹面5bの中央部とドーム部25Aの中央部との間に隙間が生じ難くなるのでより良い。
なお、研磨治具9の選定は、レンズ径と研磨面の曲率によって適宜選定されるが、同一径のレンズの場合、曲率が大きくなる程長軸が短い研磨治具を使用すると良い。
D)その他
図5において、前記外側固定具30は、上方に開放するカップ状に形成されることにより、円板状の底板30Aと、この底板30Aの上面外周に一体に突設された円筒部30Bとからなり、円筒部30Bの内側において前記内側固定具29が前記バルーン部材25の筒部25Bとともに嵌挿される凹陥部36を形成している。内側固定具29は、前記バルーン部材25の筒部25Bとともに凹陥部36に嵌挿され、外側固定具30の下面側から複数個の止めねじ37によって凹陥部36内に固定され、バルーン部材25の内フランジ25Cを凹陥部36の底面に押し付けることによりバルーン部材25の背面側開口部を外側固定具30とともに気密に封止する。
このような外側固定具30は、図4及び図5に示すように、底面に設けた係合凹部38および係合溝38’と揺動装置8の上面に設けた図示しない係合部との係合によって位置決め固定される。外側固定具30の凹陥部36は、前記バルーン部材25の筒部25Bの外形と略同一の大きさで、深さが10mm程度で筒部25Bの高さより低い楕円形の凹部を呈する。したがって、バルーン部材25を固定具26に取付けた状態において、筒部25Bは外側固定具30より上方に突出している。このように外側固定具30の高さをドーム部25Aよりも低くしておくと、レンズ5の研磨時に研磨治具9を首振り旋回運動させてもレンズ5と外側固定具30が干渉するのを防止することができる。なお、外側固定具30の外形を円形にしているが、これは後述する締付部材66が締付け時に略円形のリング状の場合、均等に力が加わるようにするためである。
なお、前記研磨治具9に研磨パッド10を取付ける際に用いられる前記締付部材66は、図7に示すように適宜な太さの線ばね67を円形に折り曲げて端部を互いに交差させたもので、自然状態で前記外側固定具30の外径より小さい直径を有し、両端部67a,67bが外側にそれぞれ略直角に折り曲げられている。締付部材66のリング形状は、締付け時に各固定片61に均等に力が加わるように外側固定具30の外形に合わせて適宜設定する。なお、外側固定具30の外形が円形で、締付部材66の締付け時のリング形状が円形の場合は、向きを合わせる必要がないため望ましい。
前記研磨パッド10を研磨治具9に取付けるには、先ず圧縮空気の供給によってバルーン部材25のドーム部25Aを所定のドーム形状に膨張させた後、その上に研磨パッド10の研磨部60を載置する。次に、締付部材66の両端部67a,67bを指先で挟んでその間隔を狭めることにより締付部材66を拡径化し、この状態で締付部材66を研磨パッド10の固定片61に上方から押しつけてこれらの固定片61を下方に折り曲げ外側固定具30の外周に接触させる。そして、両端部67a,67bから指先を離すと、締付部材66は元の形状に復帰して固定片61を外側固定具30の外周に締付け固定し、もって研磨パッド10の取付けが終了する。したがって、接着剤を必要とせず、取付け取外し作業が簡単である。
<2.プラスチックレンズの研磨方法>
A)プラスチックレンズの選定
以下、プラスチックレンズ5の研磨方法について説明する。
まず、本実施形態が適用され得るプラスチックレンズ5は、樹脂素材から形成されるものであれば良く、公知のものであっても良い。なお、樹脂素材の種類としては、特に限定されるものではないが、例えば、ウレタン系、エピチオ系、ポリカーボネート系、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート(CR39)等のプラスチックレンズに通常使用される各種樹脂を挙げることができる。本実施形態においては、プラスチックレンズ5における樹脂素材として、ポリエーテルポリオールを含有する樹脂を選択した場合について述べる。
B)研磨パッドの選定
次に、本実施形態を実施するのに用いられる研磨工具(即ち研磨パッド10)について述べる。具体的には、研磨工具(研磨パッド10)のうち、発泡体を構成する部分(発泡性を有するポリウレタン樹脂)と、それにより固定された砥粒(固定砥粒)について述べる。なお、本実施形態における「研磨工具(研磨パッド)」は、発泡体(スポンジ部分)に対して砥粒が均一に分散して固定されている単層からなるものである。もちろん、この研磨パッド10に対して他の部材を付け加えても良い。例えば、研磨パッド10の研磨面に対向する面に基材を貼り付けても良いし、接着剤層や剥離ライナーを設けても良い。
a)発泡体(スポンジ部分)
本実施形態においては、発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質を発泡体として用いている。また、本実施形態におけるポリウレタン樹脂の合成に用いられる化合物(言い換えると研磨パッド10に含まれる化合物)は、上記のポリエーテルポリオールに加え、イソシアネート及び鎖延長剤や発泡剤等である。もちろんこれら以外にも適宜添加物を加えても良い。なお、上記の「主成分」とは、発泡体の中で最も量が多く、更に、発泡体がプラスチックレンズ5の研磨の用に供することが可能となる程度の量のことを指す。
ポリウレタン樹脂を選定した理由としては、ポリウレタン樹脂は、必要な硬度に加えて強靭性も有しているためである。ポリウレタン樹脂は、耐摩耗性・耐久性に優れた材料であり、研磨パッド10の素材として非常に適している。また、原料組成を種々変えることにより、所望の物性を有した樹脂が得られることも、ポリウレタン樹脂の大きな特徴であり、研磨パッド10の形成材料に適している点である。
また、ポリウレタン樹脂の原料であって後述するポリエーテルポリオールもイソシアネートも、共に比較的低粘度の液体であり各種砥粒と混合が容易である。そのため、様々な形状に成形が可能である。
しかも、ポリウレタン樹脂からなる発泡体は、均一な微細気泡を有している。そのため、研磨パッド10として用いる際に供給した研磨液を保持する気泡を確保することができる。この微細発泡構造は、微発泡部分の穴に研磨液を保持することができる。これは、表面に分散固着された砥粒とともに湿式の機械研磨作用がおこり研磨速度を安定化するのに非常に有効である。そのため、研磨速度が十分に大きくなり、且つ研磨作業が安定化する。
なお、ポリウレタン樹脂からなる発泡体の製造にあたり、ポリウレタン原料に対し、予め発泡剤である水、及び後述の砥粒を混合し、シリコーン系整泡剤を混合しておくことは、微細気泡を安定的に作るのに有利である。ポリウレタンの物性を損なうことなく、気泡が均一なポリウレタン発泡体が安定して得られるためである。
なお、ポリウレタン樹脂に用いられるポリエーテルポリオールとしては、公知のものを用いることができるが、例示するならば、ポリテトラメチレングリコ−ル(PTMG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)等が例示される。これら以外にも、プロピレンオキシドやエチレンオキシドを付加して得られるポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレン化グリセリン、テトラヒドロフラン−ネオペンチルグリコール共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等も例示できる。
イソシアネートとしては、公知のものを用いることができるが、例示するならば、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4−ジフェニルメタンジイソソアネート(MDI)、ポリメリックMDI、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ナフチレンジイソシアネート(NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(PPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、インホロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)等が例示できる。
また、ポリエーテルポリオールとイソシアネートとの配合比は、官能基比率にて、ポリエーテルポリオール(即ち活性水素含有化合物):イソシアネート=1:1から1:1.2の範囲で配合されるのが好ましい。なお、ポリエーテルポリオールにおける活性水素とイソシアネートを反応させる際、例えば、有機錫化合物などの金属化合物系触媒や、トリエチレンジアミンなどのアミン触媒を使用することができる。
また、発泡剤としては、公知のものを使用することができ、例えば水またはカルボン酸を使用することができる。
b)固定砥粒
本実施形態においては、固定砥粒として結晶性アルミナを用いる。結晶性アルミナからなる砥粒が、ポリウレタン樹脂の発泡体に対して均一に分散して固定される。その結果、固定砥粒が研磨パッド10に設けられることになる。そしてこの研磨パッド10は単層構造を有している。
ここで、本実施形態において結晶性アルミナを選択した理由について説明する。
まず、結晶性アルミナ自体が、単純な球形ではなく多数の凹凸や空隙を有する構造となっていることから表面積が大きい複数の粒子により構成されている。そのため、結晶性アルミナからなる砥粒を構成する粒子は、大きな表面積を有することになる。そうすることにより、研磨によって発泡体が削れて固定砥粒が研磨表面に露出した場合、粒子が略球状の他の化合物に比べ、研磨の際のプラスチックレンズ5と砥粒との接触面積や接触機会を増加させることができる。そうなると、例え粒径が小さくとも発泡体から砥粒を離脱させやすくすることができる。
また、結晶性アルミナと発泡性を有するポリウレタン樹脂との間では水素結合のような化学結合がほとんど起こっていないため、発泡体から砥粒を離脱させやすくなる。
仮に、ポリウレタン樹脂に対してアルミナ水和物を固定すると、両者が水素結合により強固に結合する可能性がある。そうなると、研磨に主に起因する離脱砥粒の数が想定より少なくなってしまい、研磨効率が下がるおそれもある。
その一方、ポリウレタン樹脂に対して結晶性アルミナを固定する場合、結晶性アルミナ自体は極めて安定な物質であることから、ポリウレタン樹脂の発泡体に対して砥粒が物理的に固定されているに過ぎない。そのため、砥粒の粒径が小さくとも、研磨の際に、充分な量の砥粒を発泡体から離脱させることが可能となり、研磨効率が向上する。
更に、結晶性アルミナの硬度は極めて高く、粒径が小さい場合に発泡体から砥粒が離脱しにくい分の短所を砥粒自身の硬度で補うことができ、充分な研磨効率を確保することができる。
なお、本明細書における「結晶性アルミナ」とは、酸化アルミニウムのことを指す。この酸化アルミニウムとしては、X線回折により検知可能なγ、η、δ、ρ、χ、θ、κ、α形の各結晶形を挙げることができ、これらの1種または2種以上を分散質として用いることができる。また、酸化アルミニウムは非水和物であることが好ましい。仮に水和物であるとすると、ポリウレタン樹脂と酸化アルミニウム水和物との間で水素結合を形成してしまい、充分な量の砥粒を発泡体から離脱させることができなくなるおそれがあるためである。
なお、「砥粒が発泡体に対して均一に分散」とは、例えば特許文献2のように固定砥粒を意図的に不均一配置しているもの以外の状態を指し、発泡体の原料と固定砥粒とが均一となるよう混合して硬化させたものを含むし、硬化させた後に研磨パッド10の研磨面に固定砥粒が均一に露出することにより研磨面及び発泡体内各々で固定砥粒が均一となっている状態のものも含む。
また、結晶性アルミナからなる砥粒の表面積についてであるが、先に述べた通り、固定砥粒を用いる場合、粒径が小さい場合は砥粒の表面積が小さくなり、研磨の際に砥粒が離脱しにくくなってしまうという傾向がある。この傾向を考慮すると、研磨の際にプラスチックレンズ5と砥粒との接触面積や接触機会を増加させるべく、本実施形態における固定砥粒は、球形の場合よりも大きな表面積を有するのが好ましい。少なくとも、砥粒を構成する粒子の大半がそのように大きな表面積を有しているのが好ましい。
仮に、略球形の粒子の数が比較的多い場合は、別途破砕等の処理を行い、多数の凹凸や空隙を有する構造としたり不定形としたりして表面積が大きい複数の粒子を形成しても良い。
更には各粒子において形状が不均一(即ち不定形)であるのが好ましい。上述のような「発泡体としてポリウレタン樹脂」「固定砥粒として結晶性アルミナ」「発泡体に固定砥粒を均一分散させた単層構造」という組み合わせにおいて、砥粒を構成する粒子が不定形である場合、プラスチックレンズ5に対する研磨の際、表面積が大きくなる粒子を存在させることができるという効果ももちろんある。それに加え、今度は表面積が大きくなり過ぎた場合に砥粒が離脱しやすくなり過ぎたとき、その調整弁の役割として、不定形の表面を有する粒子が発泡体に対してアンカー効果を発揮することができる。しかも不定形であるため、全ての粒子がアンカー効果を有するのを抑えることもでき、その結果、固定砥粒の量と離脱する砥粒の量とのバランスを更にとりやすくなる。
更に、結晶性アルミナからなる砥粒が不定形であることは、「発泡体に固定砥粒を均一分散させた単層構造」という点から見ても極めて有用な効果をもたらす。つまり、結晶性アルミナからなる砥粒を発泡体に「均一」に分散させるにも拘わらず、研磨を行うと、発泡体に固定されたままの砥粒と発泡体から離脱する砥粒とを「不均一(ランダム的)」に生じさせることが可能となる。詳しく言うと、ある砥粒は激しい凹凸を有するためアンカー効果により発泡体に強固に固定され、ある砥粒は比較的緩い凹凸を有するため比較的発泡体から離脱しやすくなり、またある砥粒は完全な球形を有するため発泡体から離脱しにくくなり発泡体に固定されやすくなる。その結果、「プラスチックレンズ」に対し、「発泡体としてポリウレタン樹脂」及び「固定砥粒として結晶性アルミナ」を用いた場合であっても充分な研磨効率を確保できるが、特に結晶性アルミナが不定形であるならば、固定砥粒の量と離脱する砥粒の量とのバランスを更にとりやすくなる。しかもその不均一な分離は、発泡体の原料と砥粒とを均一に分散させて固定して単層化するという極めて簡素な工程により実現することが可能である。なお、「不定形」とは、特定形状を有する粒子の数に偏りがほとんど無く、砥粒の原料を破砕してランダムに粒子形状を形成することにより生ずる形である。
なお、結晶性アルミナからなる固定砥粒は、平均粒径が0.5μmを超え8μm未満の粒子からなるのが好ましい。
平均粒径については、後述する実施例に示すように、平均粒径が0.5μmを超えていれば、実際の研磨において支障がない程度の研磨効率を確保することができる。また平均粒径が8μm未満ならば、研磨効率の低下を抑制しつつ、わずかな研磨傷の発生も抑制することができる。更に、平均粒径が1μm以上5μm以下の粒子からなるのがなお好ましい。なお、本明細書において、「平均粒径」は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
また、研磨パッド10における砥粒の体積比率は、同じく後述する実施例に示すように、2.7%を超え54%未満であることが好ましい。体積比率が2.7%を超えていれば、実際の研磨において支障がない程度の研磨効率を確保することができる。また体積比率が50%未満ならば、研磨パッド10の過度の硬化を抑制することができ、プラスチックレンズ5の曲面に倣って加工を行うことができ、研磨残し及び傷の発生を抑制することができる。更に、体積比率が5.4%以上46%以下だとなお好ましい。なお、本明細書において、「研磨パッドにおける砥粒の体積比率」は、研磨パッドを作製する際の原料段階の体積に基づいた砥粒の体積の比率を意味する。
c)その他の化合物、及び研磨パッドの製造方法
なお、本実施形態におけるポリウレタン樹脂からなる発泡体の製造にあたっては、ポリエーテルポリオール、イソシアネート、整泡剤及び発泡剤の他に、架橋剤、鎖延長剤、樹脂化触媒、泡化触媒、酸化防止剤、老化防止剤、充填剤、可塑剤、着色剤、防黴剤、抗菌剤、難燃剤、紫外線吸収剤を含有し、成形を行ってもよい。
また、発泡体の製造方法は特に限定されないが、射出成形、反応成形などの方法で製造できる。特に好ましいのは、ミキシングヘッド内で原料同士を衝突させて瞬時に混合する高圧注入機、ミキシングヘッドに供給された各原料を攪拌翼などによって機械的に混合する低圧注入機を使用して、モールド成形やスラブ成形を行うことである。
こうして本実施形態においては、前記固定砥粒が、液状のポリエーテルポリオール及び同じく液状のイソシアネートと攪拌混合され、スラブ又はモールド工法によって、ポリウレタン樹脂の発泡体に固定砥粒として設けられる。
研磨パッド10を製造する際、本実施形態においては、発泡体に対して砥粒が均一に分散されて固定されるように研磨パッド10を作製し、更には研磨パッド10を単層構造とする。これにより、砥粒が存在しない領域を研磨パッド10内に設ける必要がなくなるため、自生発刃作用を充分に発揮できる程度の量の砥粒を研磨パッド10内に含有させることができる。また、単層構造を採用したとしても、上述のように「発泡体としてポリウレタン樹脂」「固定砥粒として結晶性アルミナ」という組み合わせのおかげで、後述の実施例に示すように「プラスチックレンズ」に対し充分な研磨効率を確保することができる。なお、被研磨対象を「プラスチックレンズ」とした場合に研磨が上手くいく理由は現在検討中であるが、「結晶性アルミナ」「ポリウレタン樹脂」「プラスチックレンズ」の硬軟の組み合わせが効を奏している可能性もある。
C)研磨の実行
以上のように、被研磨対象であるプラスチックレンズ5、そして研磨パッド10を先制した後、上記のプラスチックレンズ5の研磨装置にて研磨を行う。なお、本実施形態においては、粗研磨及び仕上げ研磨のうちの少なくともいずれかにおける研磨に対して上記の手法を適用した場合について述べる。
本実施形態における研磨は、以下の手順によって行われる。
先ず、アーム4のレンズ取付部6に対し、レンズ保持体7を介してプラスチックレンズ5を装着する。このプラスチックレンズ5は、カーブジェネレータによって切削された(即ち、既にCG加工された)レンズである。
次に、揺動装置8の上面に研磨パッド10が取付けられた研磨治具9を設置し、昇降装置11によってレンズ5を下降させて凹面5bを研磨パッド10の表面に押し付ける。この状態で研磨液を研磨パッド10の表面に供給するとともに、アーム4を左右および前後方向に往復運動させながら揺動装置8を首振り旋回運動させる。これらの運動により、研磨の軌跡が図8(a)または(b)に示すように1周毎に少しずつずれる無軌道研磨軌跡でレンズ5の凹面5bを前記研磨パッド10によって研磨し、所望のトーリック面に仕上げる。なお、研磨代は5〜9μm程度とする。
なお、本実施形態において研磨の際に供給される研磨液については、研磨装置1に不具合を生じさせないものであれば特に限定されず、公知のものを用いれば良い。ただ、本発明の目的を達成するためには、砥粒を含まない研磨液を用いる必要がある。研磨液として例を挙げると、遊離砥粒を含まない水又は溶液(例えばpHが2以上12以下)であり、アルカリ性の場合、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア水溶液、エチレンジアミン等のアミン類など所定割合で混合して生成される。また、酸性の場合、塩酸、塩酸の塩、硫酸、硫酸の塩、硝酸、硝酸の塩、カルボン酸、スルホン酸等で調整される。
また、本実施形態における研磨液としては、プラスチックレンズ5の主表面に対して実質的に化学反応しないものを選択するのが好ましい。通常、化学機械研磨を行えるという観点から見ると、被研磨対象が研磨液により化学反応する方が良いように思われる。しかしながら、固定砥粒を用いた研磨であっても研磨廃液の処理という問題は存在することになり、研磨液としては水、又は環境に対して負荷が小さいものが好ましい。しかも、本実施形態における研磨パッド10ならば、「プラスチックレンズ」「発泡体としてポリウレタン樹脂」「固定砥粒として結晶性アルミナ」「発泡体に固定砥粒を均一分散させた単層構造」という構成を組み合わせることによって、化学反応を利用しない機械研磨であっても充分精細に行うことが可能となる。つまり、プラスチックレンズ5の主表面に対して化学反応する研磨液が不要となる。
以上の結果、プラスチックレンズ5の主表面に対して実質的に化学反応しないものを研磨液として用いることが好ましい。
なお、「実質的に化学反応しない」とは、公知の化学研磨で想定されるような化学反応が起こらない、又は起こったとしても研磨効率において微々たる影響しか及ぼさず、化学研磨の影響がほとんどないことを指す。
かかる研磨液は、研磨液供給ノズルから研磨パッド10上に供給された後、研磨パッド10の運動に伴ってプラスチックレンズ5の被研磨面と研磨パッド10表面との間に入り込む。そうして、プラスチックレンズ5においてCG加工された光学面を、研磨していくことになる。
なお、実際の研磨に当たっては、CG加工されたプラスチックレンズ5の凹面5bには、NC制御によるバックラッシュのための加工段差が切削痕に含まれているので、この段差をその後の研磨(即ち粗研磨や仕上げ研磨)において除去していく。
ところで、この段差を研磨によって取り除く場合、硬質のパッドとある程度の大きさの粒径の砥粒を使用することで好適な研磨力が得られるが、これのみでは研磨時の粒径が影響して研磨の表面粗さに限界がある。したがって、より精緻に鏡面仕上げして切削痕を取り除くには、研磨条件(砥粒の平均粒径、研磨時間等)を変えて2回研磨しても良い。
<3.プラスチックレンズの製造方法>
以下、本実施形態におけるプラスチックレンズ5の製造方法について説明する。
A)セミフィニッシュレンズの選定
上記のプラスチックレンズ5の条件を満たすものならば、どのような被研磨対象を選択しても構わない。本実施形態においては、被研磨対象として、上記の条件を満たしつつ、凸面だけが仕上げられた樹脂素材であって、乱視矯正用の樹脂素材のトーリック面からなる凹面を研磨する研磨装置に適用した例を示す。
B)CG加工
セミフィニッシュレンズである樹脂素材を選定した後、最初に樹脂素材の凸面5aにレンズ保持体7を取付け、このレンズ保持体7を介して樹脂素材をカーブジェネレータに取付け、樹脂素材の凹面5bを所定の形状に切削する切削工程を行う。
なお、樹脂素材をレンズ保持体7に取付けるには、予め樹脂素材の凸面5aに傷防止用の保護フィルム12を密着させておき、その上に例えばLOH社製のレイアウトブロッカーと呼ばれる装置によって前記レンズ保持体7を取付ける。
このようにしてレンズ保持体7が取付けられた樹脂素材は、3次元NC制御を行うカーブジェネレータに前記レンズ保持体7を介して取付けられ、凹面5bを所定の面形状に切削加工される(加工精度3μm以内:50φ、表面粗さRy0.3〜0.5μm)。こうして、樹脂素材に対してCG加工を施し、研磨前のプラスチックレンズ5を得る。
なお、最近のCG加工においては、高速で高精度のNC(数値)制御のCG加工が可能になっていることから、所定の面形状に切削する切削工程の後の、ラッピング加工に似た砂掛け工程を省略しても良い。もちろん、この砂掛け工程を行った後、以下の研磨を行っても良い。
C)研磨
a)粗研磨
CG加工後、レンズ保持体7を介してプラスチックレンズ5を、本実施形態の研磨装置に取付け、切削された面を研磨することにより行う。本工程により、CG加工によりプラスチックレンズ5の光学面に形成された加工痕の段差等を無くす。なお、本工程を、後述の仕上げ研磨とともに、同一の研磨装置にてまとめて行っても良い。また、上記のCG加工を、CG加工機能を備えた研磨装置にて行っても良い。
b)仕上げ研磨
上記の粗研磨を行った後、プラスチックレンズ5が鏡面状態になるまで研磨(即ち仕上げ研磨)を行う。なお、粗研磨と仕上げ研磨とを1工程でまとめて行っても良い。また、本実施形態においては、粗研磨と仕上げ研磨とを1工程にまとめたうえ、上述の研磨を行っているが、いずれか一方の加工のみに本実施形態の研磨を適用しても良いし、粗研磨及び仕上げ研磨を別工程としつつ、いずれか一方の加工のみに本実施形態の研磨を適用しても良い。
D)その他(カラー染色・検査・超音波洗浄・ハードコート加工・マルチコート加工等)
仕上げ研磨終了後、必要に応じて、カラー染色・検査・超音波洗浄・ハードコート加工・マルチコート加工等を、プラスチックレンズ5に施す。こうして、最終的な、眼鏡用のプラスチックレンズの完成品を製造する。
<4.実施の形態による効果>
本実施形態においては、以下の効果を奏する。
まず、結晶性アルミナ自体が、単純な球形ではなく多数の凹凸や空隙を有する構造となっていることから表面積が大きい複数粒子により構成されている。そのため、結晶性アルミナからなる砥粒を構成する粒子は、大きな表面積を有することになる。そうすることにより、粒子が略球状の他の化合物に比べ、研磨の際のプラスチックレンズ5と砥粒との接触面積や接触機会を増加させることができる。そうなると、例え粒径が小さくとも発泡体から砥粒を離脱させやすくすることができる。
また、結晶性アルミナと発泡性を有するポリウレタン樹脂との間では水素結合のような化学結合がほとんど起こっていないため、発泡体から砥粒を離脱させやすくなる。
仮に、ポリウレタン樹脂に対してアルミナ水和物を固定すると、両者が水素結合により強固に結合する可能性がある。そうなると、研磨に主に起因する離脱砥粒の数が想定より少なくなってしまい、研磨効率が下がるおそれもある。
その一方、ポリウレタン樹脂に対して結晶性アルミナを固定する場合、結晶性アルミナ自体は極めて安定な物質であることから、ポリウレタン樹脂の発泡体に対して砥粒が物理的に固定されるに過ぎない。そのため、砥粒の粒径が小さくとも、研磨の際に、充分な量の砥粒を発泡体から離脱させることが可能となり、研磨効率が向上する。
更に、結晶性アルミナの硬度は極めて高く、粒径が小さい場合に発泡体から砥粒が離脱しにくい分の短所を砥粒自身の硬度で補うことができ、充分な研磨効率を確保することができる。
以上の通り、「プラスチックレンズ」「発泡体としてポリウレタン樹脂」「固定砥粒として結晶性アルミナ」「発泡体に固定砥粒を均一分散させた単層構造」という構成の組み合わせを採用することにより、固定砥粒であることのメリットを活かしてプラスチックレンズに対する研磨の際に発生する研磨廃液処理に要するコストを低減しつつ、微細な研磨を行う際であっても研磨効率の低下を抑制することができる。
<5.変形例>
以下、上記の本実施形態以外の変形例について述べる。
(発泡体の原料)
本実施形態においては発泡体の原料としてポリエーテルポリオールを用いたが、もちろんポリエーテルポリオール以外の化合物を用いても良く、例えば、ポリエステルポリオールを用いても良い。ポリエステルポリオールは、一種類または二種類以上の脂肪族ポリカルボン酸と、一種類または二種類以上の脂肪族ジオールの反応生成物である。
上記の脂肪族ポリカルボン酸としては、例えばシュウ酸、マロン酸、琥珀酸、グルタミン酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナメチレンジカルボン酸、デカメチレンジカルボン酸、ウンデカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等があげられる。
また、上記の脂肪族ジオールとは、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール等があげられる。
また、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール以外にも、ポリカーボネートポリオールを用いても良いし、その他の公知のプラスチックレンズを用いても良い。
(研磨パッド以外の研磨工具)
本実施形態においては研磨工具が研磨パッド10の場合について述べたが、もちろんこれ以外を研磨工具に設定しても良い。
(適用可能な研磨の種類)
本実施形態においては、本発明の技術思想を粗研磨や仕上げ研磨に適用する例について述べたが、それら以外の研磨であってプラスチックレンズ5の光学面を整える研磨においても、本実施形態は適用可能である。
(仕上げ研磨を省略する場合)
また、本実施形態においては、粗研磨の後に仕上げ研磨を行い、仕上げ研磨の後にその他(ハードコート加工等)の工程を行う場合について述べた。ただ、例えばハードコート加工においてハードコート被膜をプラスチックレンズ5の光学面に形成する際、光学面に対して要求される鏡面度合いは低くて済む可能性がある。更には、本実施形態におけるプラスチックレンズ5の製造方法を用いることにより、例えば微細なうねりを有する加工痕が光学面に発生するのを最小限に留める(又は発生させない)ことが可能となる。そうなると、粗研磨の段階においても充分に滑らかな光学面が得られ、粗研磨の段階でも品質基準を充分に満たすプラスチックレンズ5を製造できる可能性がある。
以上のことから、仕上げ研磨を省略し、粗研磨の後のプラスチックレンズ5の光学面に対し、直接、ハードコート加工等のその他の工程を行うことも好適である。
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろん本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
本実施例においては、ポリエーテルポリオール(三洋化成社製 商品名:サンニックス)を重量部100、イソシアネート(ダウ・ポリウレタン社製 商品名:PAPI 135)を重量部80、水を重量部1、アミン系触媒(東ソー社製 商品名:TOYOCAT−ET)を重量部0.5、シリコーン整泡剤(日本ユニカー社製 商品名:L−5309)を重量部0.5、固定砥粒(結晶性アルミナ 平均粒径0.1μm)を重量部180、配合して液状混合物を調整した。なお、結晶性アルミナは、研磨パッド10における体積比率としては22%とした。この液状混合物を金型に注入して、20〜30℃の室温で24時間放置し、発泡硬化させ、本実施例における研磨パッド10を製造した。
<実施例2〜5>
実施例1では結晶性アルミナの平均粒径を0.1μmとしたが、実施例2では平均粒径を0.5μmとし、実施例3では平均粒径を1μmとし、実施例4では平均粒径を5μmとし、実施例5では平均粒径を8μmとした。
なお、平均粒径を変更した以外は、実施例1と同様とした。
<実施例6〜10>
実施例6〜10においては、実施例1における平均粒径を1μmとした上で、研磨パッド10における結晶性アルミナの体積比率を変更させた。具体的に言うと、実施例6では体積比率を2.7%とし、実施例7では体積比率を5.4%とし、実施例8では体積比率を22%とし、実施例9では体積比率を46%とし、実施例10では体積比率を54%とした。なお、実施例8は実施例3と同条件であるが、体積比率の変更に伴う研磨レートの変動を調べるべく、実施例8にて別途実験を行った。
なお、それ以外の内容は、実施例1と同様とした。
このような実施例1〜10における研磨パッド10に対し、ダイヤモンドを電着した修正リングを用いて研磨パッド10の表面を修正し、発泡構造が表面に露出した厚み5mmの研磨パッド10を得た。
次いで、この研磨パッド10を本実施形態で述べた研磨装置(図1)に装着した。その後、被研磨対象であるCG加工後のプラスチックレンズ5(三井化学製 製品名:MR−6)を研磨パッド10に押圧し、研磨パッド10とプラスチックレンズ5との間に研磨液(水 pH=7.0)を供給しながら、研磨パッド10とプラスチックレンズ5との相対運動によってプラスチックレンズ5を研磨加工した。研磨装置については、Schneider社製のCCP研磨機を用いた。研磨加工における条件は、以下のように設定した。
研磨圧力:1bar
プラスチックレンズ回転数:200rpm
研磨パッド回転数:800rpm
研磨時間:4分
研磨加工を行った後、プラスチックレンズ5の重量変化に基づいて、プラスチックレンズ5の厚みの変化を測定し、実施例1〜10で製造した研磨パッド10による研磨レート(μm/min)を算出した。
<比較例1>
実施例に対する比較例1として、固定砥粒を用いるのではなく、遊離砥粒による研磨を行った場合について挙げる。なお、この研磨においては遊離砥粒を含む市販の研磨液(フジミインコーポレーテッド社製 アルミナスラリー)を用い、この研磨に用いた研磨パッドは、市販のウレタン研磨パッド(ニッタ・ハース社製、製品名:研磨クロスMH)である。
この比較例1に対しても、上記の研磨レートを調べる試験を行った。
<結果>
実施例1における研磨パッド10では、研磨レートが1.0μm/minであった。
結晶性アルミナの平均粒径を変化させた実施例2においては2.0μm/min、実施例3においては2.1μm/min、実施例4においては2.0μm/min、実施例5においては1.8μm/minであった。
研磨パッド10における結晶性アルミナの体積比率を変更した実施例6においては1.5μm/min、実施例7においては2.0μm/min、実施例8においては2.2μm/min、実施例9においては2.3μm/min、実施例10においては2.0μm/minであった。
いずれの実施例においても研磨廃液には結晶性アルミナが少量しか入っておらず、研磨パッド10への目詰まりを回避することができた。そして、CG加工後の加工残りを残さず研磨でき、プラスチックレンズ5の光学面を整えることができた。また、廃液処理に要するコスト及び時間を省くことができた。
更に、結晶性アルミナの平均粒径を、0.5μmを超え8μm未満とした場合(実施例2〜4)、研磨レートを維持することができ、わずかな研磨傷も発生させなかった。また、砥粒の体積比率を、2.7%を超え54%未満とした場合(実施例6〜9)も、研磨レートを維持することができ、わずかな研磨傷も発生させなかった。
一方、比較例1における研磨パッドでは、研磨レートが2.0μm/minではあったが、当然ながら研磨廃液にはアルミナスラリーが多量に入っており、研磨パッドへの目詰まりが発生した。また、多量の研磨廃液が発生し、その処理に要するコスト及び時間を省くことはできなかった。
以下、その他の好ましい形態を付記する。
[付記1]
前記砥粒は、液状のポリエーテルポリオール及び同じく液状のイソシアネートと攪拌混合され、スラブ又はモールド工法によって、ポリウレタン樹脂の発泡体に固定砥粒として設けられたものであることを特徴とするプラスチックレンズの研磨方法。
[付記2]
前記プラスチックレンズは眼鏡用であって、曲面を有することを特徴とするプラスチックレンズの研磨方法。
[付記3]
発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質に対して結晶性アルミナからなる砥粒が均一に分散して固定されている単層からなる研磨工具を用い、プラスチックレンズの主表面に対して実質的に化学反応しない研磨液を供給しながら前記主表面を研磨することにより、前記プラスチックレンズの光学面を整えることを特徴とするプラスチックレンズの研磨方法。
[付記4]
発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質に対して砥粒を固定させ、前記砥粒により研磨対象を研磨する研磨工具であって、
前記砥粒は、結晶性アルミナ非水和物からなることを特徴とするプラスチックレンズ用の研磨工具。
[付記5]
プラスチックレンズの光学面を整えるのに用いられる研磨工具であって、
発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質に対して結晶性アルミナからなる砥粒が均一に分散して固定されている単層からなり、前記プラスチックレンズの主表面に対して化学反応する研磨液を不要にすることを特徴とするプラスチックレンズ用の研磨工具。
[付記6]
前記プラスチックレンズの主表面に対して化学反応する研磨液を不要にすることを特徴とするプラスチックレンズ用の研磨工具。
[付記7]
前記研磨工具における前記砥粒の体積比率は、2.7%を超え54%未満であることを特徴とするプラスチックレンズ用の研磨工具。
[付記8]
前記砥粒は不定形であることを特徴とするプラスチックレンズ用の研磨工具。
1…研磨装置、2…装置本体、4…アーム、5…プラスチックレンズ、5a…凸面、5b…凹面、6…レンズ取付部、7…レンズ保持体、8…揺動装置、9…研磨治具、10…研磨パッド、25…バルーン部材、25A…ドーム部、25B…筒部、25C…内フランジ、26…固定具、27…バルブ、28…係止部、29…内側固定具、30…外側固定具、31…環状溝、31a…溝、32…密閉空間、60…研磨部、61…固定片、62…溝、63…花弁片、66…締付部材

Claims (5)

  1. プラスチックレンズの光学面を整えるのに用いられる研磨工具であって、
    発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質に対して結晶性アルミナからなる砥粒が均一に分散して固定されている単層からなることを特徴とするプラスチックレンズ用の研磨工具。
  2. 前記砥粒は、平均粒径が0.5μmを超え8μm未満の粒子からなることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックレンズ用の研磨工具。
  3. 発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質に対して結晶性アルミナからなる砥粒が均一に分散して固定されている単層を含む研磨工具を用いてプラスチックレンズの主表面を研磨することにより、前記プラスチックレンズの光学面を整えることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
  4. 前記プラスチックレンズの主表面に対して実質的に化学反応しない研磨液を供給しながら前記主表面を研磨することを特徴とする請求項3に記載のプラスチックレンズの製造方法。
  5. 発泡性を有するポリウレタン樹脂を主成分とする物質に対して結晶性アルミナからなる砥粒が均一に分散して固定されている単層からなる研磨工具を用いてプラスチックレンズの主表面を研磨することにより、前記プラスチックレンズの光学面を整えることを特徴とするプラスチックレンズの研磨方法。
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