JP2013086038A - 水素透過用合金膜 - Google Patents

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Abstract

【課題】 高温の使用条件下であっても十分な水素透過性能を長時間維持することができる水素透過用合金膜を提供すること。
【解決手段】 本発明の水素透過用合金膜は、酸化性ガスで表面処理されたNb合金膜と、該Nb合金膜の両面に設けられたPd若しくはPd合金層と、を有する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、水素透過用合金膜に関し、より詳細には水素を含有する混合ガスから水素を選択的に回収する膜に関する。
水素は将来のエネルギー媒体として期待され、製造、貯蔵・輸送、利用など広い技術分野において活発な研究開発が行われている。水素をエネルギー媒体として用いる利点としては、高いエネルギー利用効率の他、燃焼後の排出物が水だけであることなどが挙げられる。
水素は様々な原料から製造できるが、その原料の約80%は石油、石炭、天然ガスなど化石燃料で占められている。化石燃料から水素を製造する方法として水蒸気改質反応を利用したものがある。具体的には、ルテニウムあるいはニッケルなど適当な触媒の存在下、メタン、エタン、プロパン、ブタン、LPG(液化石油ガス)、ガソリン、ナフサ、灯油などの炭化水素燃料を水蒸気と共に高温条件下の反応器に投入し、生成ガスとして水素を主成分とする粗ガスが得られる。生成ガスは、CH、CO、CO、Hおよびスチームの混合ガスであり、水性ガスシフト反応によってCOをさらに水素に転換させることで水素濃度をさらに高めることができる。
燃料電池車に使用される高純度の水素を得るためには精製がさらに必要である。水素の精製方法としては、アミン吸収法、PSA法及び膜分離法が知られている。この中でも、金属膜を用いる膜分離法はコンパクトながら極めて高純度の水素が単純な装置で得られるので、将来的に有望な方法として注目を集めている。
膜分離法で用いられる金属膜は、水素を含む混合ガスから水素を選択的に透過させ、100%純度の水素を与え得るものであり、このような水素分離膜には、主としてパラジウム(Pd)或いはPd合金の薄膜が使用されている。
PdまたはPd合金の薄膜の一方側に、炭化水素燃料などを改質した水素を含む所定温度の混合ガス(改質ガス)を供給すると、水素分子は膜表面で解離し、水素原子となる。水素は原子となることでPdと固溶体を形成することができるようになり膜内に取り込まれる。このとき、混合ガスに含有される水素以外のガス成分は、Pdと反応しないため、Pd合金の薄膜内に取り込まれることなく、薄膜の一方側に残存する。一方、Pd合金の薄膜に取り込まれた水素原子は、薄膜の両側に設定した水素分圧の違いよって生じた膜厚方向の水素濃度の差により、水素濃度の高い一方側から水素濃度の低い他方側へ拡散して、他方側の膜表面で再び水素分子となる。このようにして混合ガスから、水素ガスを選択的に分離することができる。
しかし、貴金属の1つであるパラジウムは、資源が量的に限られていること、特定地域に偏在していること、また高価であることなどの欠点がある。また、経済状況によっては投機の対象となり価格が乱高下することも起きている。そのため、パラジウムの使用量を減少させることが可能な新しい水素分離膜の開発が望まれている。
その1つの方法として、Pd合金膜の水素透過性能を向上させる技術が検討されている。例えば、下記特許文献1には、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)などを添加することで水素透過性能が2〜3倍程度向上することが開示されている。しかし、この方法は低価格化が十分であるとはいえない。
別の方法として、パラジウムを使用しない、或いは微量の使用に留めることができる膜材料の探索がなされている。パラジウムに置き換わり得る元素として有望視されている元素としては、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)などがある。
例えば、下記特許文献2には、NbをベースとしてV、Ta、Ni、Ti及びZrの金属元素のうちの1種類以上を添加して合金化した水素分離膜(以下、「Nb系合金膜」という場合もある。)が提案されている。この水素分離膜は、Nbの結晶格子に原子半径の大きい添加元素を導入して歪を与えることにより、水素透過性能の向上を図るものである。
特開平11−99323号公報 特開2000−159503号公報
しかし、上記Nb系合金膜は、水素脆化が起こりやすいため、水素中では極めて脆くなり膜が簡単に破壊されてしまう。そこで、本発明者らは、水素分子の解離促進及び表面保護の観点から、Nb系合金膜の両表面にPdの薄膜層を形成した水素透過用合金膜について検討を行った。しかし、本発明者らの検討によると、Pdの薄膜層を形成した場合であっても、高温環境下で水素透過実験を実施すると水素透過能が低下することを見出した。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高温の使用条件下であっても十分な水素透過性能を長時間維持することができる水素透過用合金膜を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の水素透過性能が低下する現象の原因を明らかにするために水素透過能が失活した合金膜の分析を行った。その結果、失活した合金膜の表面にはPdがほとんど存在せず、代わりにチタニアが大部分を占めていることを見出した。このことから、水素透過能の失活を防ぐためには、Pdが膜の表面から散逸する現象を阻止することが必要であるとの見解を導き出した。
そして、本発明者らは上記見解に基づき、PdのNb系合金膜内部への拡散を防止する観点から鋭意検討した結果、特定の処理を施したNb系合金膜の表面にPd層を設けることにより、高温環境下における水素透過性能の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の水素透過用合金膜は、酸化性ガスで表面処理されたNb合金膜と、該Nb合金膜の両面に設けられたPd若しくはPd合金層とを有する。
本発明の水素透過用合金膜によれば、高温の使用条件下であっても十分な水素透過性能を長時間維持することができる。
本発明の水素透過用合金膜において、上記Nb合金膜が、Nbを30〜50mol%、Tiを20〜40mol%、及び、Niを20〜40mol%含む合金からなり、厚みが1〜10000μmであることが好ましい。
本発明の水素透過用合金膜において、上記Pd層若しくはPd合金層の厚みが1〜1000nmであることが好ましい。
本発明によれば、高温の使用条件下であっても十分な水素透過性能を長時間維持することができる水素透過用合金膜を提供することができる。
本発明の水素透過用合金膜によれば、安価でコンパクトでありながら、長時間の安定な運転が可能である水素製造装置を実現することができる。また、本発明の水素透過用合金膜は、燃料電池車に必要とされる高純度水素の製造装置の構成部材として有用である。
本発明の水素透過用合金膜の一実施形態を示す模式断面図である。 本発明の水素透過用合金膜の他の実施形態を示す模式断面図である。 本発明に係る表面処理が行われていない比較例の水素透過用合金膜の各温度条件における水素透過係数の変化を示すグラフである。 比較例及び実施例に係るNb合金膜の外観写真である。
図1は、本発明の水素透過用合金膜の一実施形態を示す模式断面図である。図1に示される水素透過用合金膜100は、酸化性ガスで表面処理された表面処理Nb合金膜10と、この表面処理Nb合金膜10の両面に設けられたPd層20とを有する。なお、Pd層20は、Pd合金層であってもよい。
表面処理Nb合金膜10の原料となる合金は、Nbと、Ni、Ti、V、Zr、Cu、W、Sc、Cr、Mn、Fe、及びCoのうちの1種以上の金属とを熔融混合して得ることができる。原料となる金属は、粉末状、粒状、針金状、インゴットなど任意の形状のものを用いることができる。熔融混合の手段としては、金属を均一に混合できる方法であれば任意の方法が採用でき、例えば、アーク放電などによる方法が挙げられる。
各金属の配合比は、Nbが30〜50mol%、上記のその他の金属が50〜70mol%とすることができる。Nbを増量すると、水素透過性能が高くなるが機械的強度は低下する傾向にあり、一方、Ni、TiなどのNb以外の金属を増量すれば、機械的強度は向上するが水素透過性能は低下する傾向にある。本実施形態においては、水素透過性能及び機械的強度をバランスさせる観点から、Nbを30〜50mol%、Tiを20〜40mol%、及び、Niを20〜40mol%含む合金が好ましい。
通常、熔融混合して得られる合金は塊状であるため、これを膜状に加工する必要がある。合金塊を膜に成型する方法としては公知のいかなる方法も採用できる。具体例としては、鍛造、圧延などの塑性加工により薄膜化する方法の他、合金塊から適当な厚みに切り出す、余計な部分を切り落とす、などの方法を例示できる。
表面処理Nb合金膜10の厚みは、1〜10000μmの範囲とすることができ、5〜2000μmが好ましく、10〜1000μmがより好ましい。一般に、膜厚を薄くすると、水素透過速度は向上するが膜強度は低下し、一方、膜厚を厚くすれば、水素透過速度は低下するが膜強度は向上する。本実施形態に係る膜も同様の傾向にあり、具体的には膜厚を1μm以上にすれば十分な膜強度を持たせることが可能となり、一方、10000μm以下にすることで好ましい水素透過速度を担保することができる。
本発明に係る表面処理Nb合金膜10は、Nb合金膜を酸化性ガスに接触させることにより得ることができる。Nb合金膜の表面処理の方法は特に限定されず、例えば連続式処理でもバッチ処理でも、何れの方法も採用可能である。酸化性ガスとしては、酸素、オゾン、一酸化窒素、及び二酸化窒素などが挙げられる。また、必要に応じて、これらの酸化性ガスの混合ガスを用いることもできる。さらには、上記ガスと、窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性ガスとの混合ガスも好適に酸化性ガスとして用いることができる。
表面処理Nb合金膜10は、酸化性ガスが含まれる雰囲気下で加熱されたものであることが好ましく、分子状酸素が含まれる雰囲気下で加熱されたものであることがより好ましく、大気中で加熱されたものであることが更により好ましい。
加熱温度としては、100℃以上とすることができ、好ましくは100〜1000℃、より好ましくは300〜700℃、更により好ましくは300〜500℃、特に好ましくは300〜400℃である。
加熱時間としては、0.1秒〜10時間とすることができ、好ましくは1分〜5時間、より好ましくは5分〜2時間である。このとき、加熱温度が高いほど、また過熱時間が長いほど、合金表面はより強く酸化されることになる。本発明においては、酸化性ガスを用いた表面処理によってどのような層を合金表面に形成するかについては、特に制限されないが、加熱時間を長くし、加熱温度を高くすると、膜の水素透過速度は低下する傾向を示し、同時にPdの拡散抑制能は強くなる傾向を示すことから、必要な水素透過性能とその持続性とを考慮して表面処理の条件を設定することが好ましい。
水素透過性能及びPd拡散抑制能のバランスの観点から、表面処理の条件は、温度300〜400℃、1〜2時間が好ましい。
上記の加熱処理によって、Nb合金膜の表面に酸化物の層を設けることができる。Nb合金膜がNb、Ti及びNiを含む場合、形成される酸化物としては、例えばNb−O固溶体、TiNiO、Nb、及びTiOなどが挙げられる。具体的には、温度400℃で1〜2時間の加熱によりNb−O固溶体を形成することができ、温度600℃で1〜2時間の加熱によりTiNiOを形成することができ、温度700℃で1〜2時間の加熱によりNbやTiOを形成することができる。
なお、本発明に係るNb合金膜は複数の金属の混合物であるため、表面処理したNb合金膜の表面には、金属酸化物として複数の金属元素を含む複合酸化物が生成する可能性がある。こうした複合酸化物の組成と水素透過性能及びその持続性との関連性については必ずしも明らかにはなっていないが、Nb合金膜の表面処理の条件を適宜設定することで本発明の効果を得ることは可能である。
本実施形態においては、表面処理する前にNb合金膜の両面を鏡面研磨することが好ましい。これにより、良質な酸化物層を形成することが可能となる。
図2は、本発明の水素透過用合金膜の他の実施形態を示す模式断面図である。図2に示される水素透過用合金膜110は、表面処理Nb合金膜10が、Nb合金膜1とその両面に形成された酸化物層2とから構成されており、酸化物層2のNb合金膜1と接する面とは反対側面にPd層20を有している。なお、この場合も、Pd層20はPd合金層であってもよい。酸化物層2は、上述した加熱処理によって設けることができる。
表面処理Nb合金膜10の表面は、加熱処理によって形成されるNb及びその他の金属の酸化物からなる酸化物層を含有することができる。そして、これらの層上にPd層又はPd合金層が設けられることにより、高温環境下、特には400℃以上、好ましくは500℃以上の環境下でPdがNb合金膜内部に拡散することが防止できるものと本発明者らは考えている。すなわち、本発明に係る表面処理Nb合金膜10の表面には、酸化性ガスによる表面処理によってPd拡散防止層が形成されていると考えられる。
Nb合金膜1に酸化物層2を設ける場合、その厚さは1〜10000nm、好ましくは5〜2000nm、さらに好ましくは10〜1000nmの範囲である。酸化物層の厚みが1nm以上であればPdの内部拡散を十分抑制することができ、一方、酸化物層の厚みが10000nm以下であれば十分な水素透過速度を確保することができる。
なお、酸化物層2は、Nb合金膜1のNb等が酸化されることで形成されるが、酸化物層の金属元素の組成は合金層の組成と必ずしも同一である必要はなく、Nb合金膜に含まれる金属元素の酸化されやすさ、及び表面処理の条件によってその組成は適宜決定される。
Pd層20は、蒸着法或いはスパッタリング法など方法により表面処理を施したNb合金膜の両面にPdの薄膜を形成し、設けることができる。Pd合金の層を設ける場合、Pd以外の金属としては、Cu、Ag、Auが挙げられる。
Pd層或いはPd合金層の厚みは、1〜10000nmが好ましく、5〜2000nmがより好ましく、10〜1000nmが更により好ましい。Pd層或いはPd合金層の厚みが1nmより薄いと、酸化物層によるPdの内部拡散抑制能が十分に得られにくくなり、一方、10000nmより厚いと、水素透過性能が顕著に低下する傾向にある。
本発明の水素透過用合金膜は、水素を含むガスから水素を抽出する工程に適用できる。特に高純度の水素が必要な用途に好ましく適用されるが、それほど高純度が必要でない場合にも用いることも可能である。この場合、水素を含むガスを得る方法として、種々の水素原料及び反応に適用可能である。その具体例を以下に挙げる。
例えば、適当な燃料の水蒸気改質反応と組合せることができる。ここで燃料としては、メタン、エタン、プロパン、天然ガス、ナフサ、ガソリン、灯油、軽油、重油などの炭化水素燃料類、メタノール、エタノール、ジメチルエーテルなどの含酸素燃料類などを例示できる。また、メチルシクロヘキサン、シクロヘキサン、テトラリン、デカリンなどの飽和6員環化合物の脱水素反応、いわゆる有機ハイドライドと組み合わせることも可能である。さらに、アンモニアの分解により水素と窒素の混合物を得、ここから高純度の水素を抽出する反応にも好適に用いることができる。
本発明の水素透過用合金膜は、通常、100〜700℃、好ましくは200〜600℃、さらに好ましくは300〜500℃の使用温度で用いることができる。使用温度が700℃より高いと、本発明による水素透過性能の低下を抑制する効果が得られにくくなる傾向にあり、使用温度が100℃より低いと、十分な水素透過速度が得られにくくなる。
本発明の水素透過用合金膜を備える膜分離型水素製造装置においては、導入側に原料である粗製ガスを導入し、透過側に高純度の水素ガスを得ることができる。このとき、導入側の圧力(絶対圧、以下同じ)は常圧〜50MPa、好ましくは常圧〜10MPa、さらに好ましくは常圧〜5MPaの範囲で設定される。水素分圧としては、膜分離型水素製造装置導入口において、0.01MPa〜40MPa、好ましくは0.01MPa〜8MPa、さらに好ましくは0.01MPa〜4MPaの範囲で設定される。なお、膜分離装置内において導入側の水素が透過側に移動するので、膜分離装置の後段では導入側の水素分圧は低下する。低下の度合いは運転条件に依存し、運転条件は水素の需要量など経済的要因も含めて様々な要因を考慮し決定される。本実施形態においては、膜分離装置の出口における水素分圧は0.001MPa〜30MPa、好ましくは0.001MPa〜6MPs、さらに好ましくは0.001MPa〜3MPaの範囲で設定される。
一方、透過側には高濃度の水素ガスが得られるが、その圧力は導入側の水素分圧より低いことが必要であり、透過側圧力が低ければ低いほど水素収量の期待値は高くなる。ここで期待値とは理論収量のことであり、一般に透過側と導入側の水素分圧が等しくなるまで水素を抽出した場合に得られる水素量を意味する。しかし、実際には透過側圧力を低くするのに必要なエネルギーと、透過側圧力を低くしたことによる水素収量の増加量とを比較するなどして両者のバランスを取り運転圧力は決定される。本実施形態においては、透過側圧力は0.00001〜10MPa、好ましくは0.0001〜2MPa、さらに好ましくは0.001〜0.5MPaの範囲で設定される。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
本発明の構成を有していない合金膜の高温環境下における水素透過度の低下を確認するために下記の比較実験(比較例)を行った。
(比較例)
Nbを40mol%、Tiを30mol%、及びNiを30mol%の割合で配合し、不活性雰囲気下(Ar)でアーク溶解して、Nb−Ti−Ni合金のインゴットを作製した。得られたインゴットをワイヤーカットして、厚さ1mmのディスク状(直径約10mm)のNb合金膜を切り出した。
上記で得られたNb合金膜の両表面をエメリー紙とバフにより表面に光沢が出るまで鏡面研磨した。鏡面研磨後のNb合金膜の両面に、スパッタ装置を用いて190nmのPdの薄膜を形成し、比較例の水素透過用合金膜を得た。
[水素透過性の評価]
比較例の水素透過用合金膜について、下記の水素透過試験により水素透過係数を測定した。
(水素透過試験)
水素透過装置の非透過側にガス供給ラインをつなぎ、流量コントローラーを設置した。セラミック管状炉で温度コントロールし、SUS管の繋目のVCR内に水素透過用合金膜を、金属製パッキンを用いて固定した。透過側出口には流量計を設置し、水素透過量を測定した。具体的には、水素透過用合金膜の両側(非透過側及び透過側)を拡散ポンプにより排気して3×10−4Pa以下の真空にした後、試験温度(400℃(673K)、450℃(723K)、500℃(773K)、550℃(823K)、600℃(873K))に加熱した。その後、純水素(99.99999%)を非透過側に0.4MPa、透過側に0.1MPa導入し、流量法により非透過側圧力P1及び透過側圧力P2を測定した。なお、用いた流量計及び試験時の条件は以下のとおりである。
流量計:コフロック製3300型、水素用、フルスケール1cc/分
供給側圧力:0.4MPa
透過側圧力:0.1MPa
透過面積:φ5.6mm(24.6mm
水素供給方法:流通式
使用ガス:純水素(99.99999%)
測定された圧力の単位時間変化から、下記式(I)及び(II)により水素透過係数φを算出した。得られた結果を図3に示す。


J:水素透過速度(molH/m・s)、Q:水素透過量(mol/s)、S:透過面積、P1:非透過側圧力、P2:透過側圧力、d:膜厚、φ:水素透過係数
図3に示されるように、比較例の水素透過用合金膜は500℃以上の高温条件では水素透過係数の急激な低下が見られた。そこで、以下の実施例の水素透過用合金膜については、500℃における水素透過係数を測定し、高温の使用条件下における水素透過性能を評価することとした。
(実施例)
比較例と同様にして厚さ1mmのディスク状(直径約10mm)のNb合金膜を切り出した。次に、切り出したNb合金膜を電気炉内で、以下の条件で表面処理した。
(1)大気中、300℃で1時間加熱
(2)大気中、400℃で1時間加熱
(3)大気中、500℃で1時間加熱
(4)大気中、600℃で1時間加熱
(5)大気中、700℃で1時間加熱
(6)大気中、300℃で2時間加熱
(7)大気中、400℃で2時間加熱
(8)大気中、500℃で2時間加熱
(9)大気中、600℃で2時間加熱
(10)大気中、700℃で2時間加熱
こうして表面処理されたNb合金膜をそれぞれ得た。図4にこれらの外観写真を示す。表面処理前のNb合金膜は銀色の金属光沢を呈しているが、300℃(573K)から温度の上昇とともに金属光沢のある金色、青紫色、灰色に変化した。700℃(973K)で熱処理すると、光沢のない灰色になった。
続いて、各表面処理を施したNb合金膜の両面に、スパッタ装置を用いて190nmのPdの薄膜を形成し、実施例の水素透過用合金膜をそれぞれ得た。
[水素透過性の評価]
試験温度を500℃に設定して上記と同様に水素透過試験を行った。得られた結果を表1に示す。

実施例(1)、(6)及び(7)の水素透過用合金膜は、比較例の水素透過用合金膜に比べて水素透過係数の低下が小さいことが確認された。
1…Nb合金膜、2…酸化物層、10…表面処理Nb合金膜、20…Pd層、100,110…水素透過用合金膜。

Claims (3)

  1. 酸化性ガスで表面処理されたNb合金膜と、該Nb合金膜の両面に設けられたPd若しくはPd合金層と、を有する、水素透過用合金膜。
  2. 前記Nb合金膜が、Nbを30〜50mol%、Tiを20〜40mol%、及び、Niを20〜40mol%含む合金からなり、厚みが1〜10000μmである、請求項1に記載の水素透過用合金膜。
  3. 前記Pd層若しくはPd合金層の厚みが1〜1000nmである、請求項1又は2に記載の水素透過用合金膜。
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