JP2013077554A - 積層高分子電解質膜およびその製造方法 - Google Patents

積層高分子電解質膜およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、プロトン伝導性に優れ、かつ、燃料遮断性、機械強度、物理的耐久性、耐熱水性、加工性および化学的安定性に優れる積層高分子電解質膜およびその製造方法を提供せんとするものである。
【解決手段】本発明の積層高分子電解質膜は、フッ素系高分子電解質により形成される層と炭化水素系電解質により形成される層とが積層されてなる積層高分子電解質膜であって、積層高分子電解質膜は多孔質材料からなる補強材を有し、フッ素系高分子電解質並びに炭化水素系電解質が補強材に含浸されてなり、フッ素系高分子電解質により形成される層と非フッ素系高分子電解質により形成される層との界面が補強材中に存在することを特徴とするものである。
【選択図】なし

Description

本発明は、高出力、高エネルギー容量および長期耐久性を達成することができる実用性に優れた積層高分子電解質膜、およびその製造方法に関するものである。
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも高分子電解質型燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設や、自動車や船舶などの移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、高分子電解質型燃料電池は、小型移動機器および携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。
燃料電池は、通常、発電を担う反応の起こるアノードおよびカソードの電極と、アノードとカソード間のプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(以降、MEAと略称することがある)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。高分子電解質膜は、主として高分子電解質材料から構成される。
高分子電解質膜の要求特性としては、第一に高いプロトン伝導性が挙げられる。また、高分子電解質膜は、燃料と酸素の直接反応を防止するバリアとしての機能を担うため、燃料の低透過性が要求される。
その他の要求特性としては、燃料電池運転中の強い酸化雰囲気に耐えるための化学的安定性、薄膜化や膨潤・乾燥の繰り返しに耐えうる機械強度および物理的耐久性などを挙げることができる。
これまで高分子電解質膜には、フッ素系電解質のパーフルオロスルホン酸系ポリマー、ナフィオン(登録商標)(デュポン社製。)が広く用いられてきた。ナフィオン(登録商標)は多段階合成を経て製造されるため非常に高価であり、燃料クロスオーバーが大きいという課題があった。また、膨潤乾燥によって膜の機械強度や物理的耐久性が失われるという問題、軟化点が低く高温で使用できないという問題、さらに、使用後の廃棄処理の問題や材料のリサイクルが困難といった課題が指摘されてきた。
こうした状況において、ナフィオン(登録商標)に替わり得る安価で膜特性に優れた高分子電解質材料として、炭化水素系電解質膜の開発が近年活発化してきている。炭化水素系ポリマー骨格としては、耐熱性および化学的安定性の点から芳香族ポリエーテルスルホンや芳香族ポリエーテルケトンについて特に活発に検討がなされてきた。
例えば、芳香族ポリエーテルケトン電解質が報告されている(特許文献1,2)。保護基およびイオン性基を含有する高分子電解質前駆体を成形した後、得られた成形体に含有される該保護基の少なくとも一部を脱保護することにより、従来のスルホン化ポリエーテルケトン、スルホン化芳香族芳香族ポリエーテルスルホン等の、イオン性基含有ポリマーからは得られなかった結晶性を有し、燃料クロスオーバーが小さく、強靱な膜を得ることができた。しかしながら、低加湿条件での更なるプロトン伝導性向上が求められており、そのためにポリマーのイオン性基密度をあげると、電解質膜の膨潤収縮が大きくなり、物理的耐久性が低下してしまうという課題があった。そのため、プロトン伝導性と物理的耐久性のさらに高いレベルでの両立が求められてきた。
そこで、プロトン伝導性に比較的優れているフッ素系電解質膜と、プロトン伝導性と物理的耐久性のバランスの良い炭化水素系電解質膜とを組み合わせた積層膜の検討がなされてきた。
特許文献3にはフッ素系電解質と炭化水素系電解質とを併用した記載はあるが、電極上に炭化水素系電解質を塗布し、その後フッ素系電解質膜と加熱プレス工程にて積層するというものであり、実質的に積層膜としての形態を有するものではなかった。
また、特許文献4、5にはフッ素系電解質膜と炭化水素系電解質膜との積層膜に関する記載はあるが、フッ素系電解質と炭化水素系電解質との接合性が良好ではなく、はがれやすいという課題があった。
このように、従来技術による高分子電解質材料は、経済性、加工性、プロトン伝導性、燃料クロスオーバー、耐溶剤性、機械強度、物理的耐久性、および長期耐久性を向上する手段としては不十分であり、産業上有用な燃料電池用高分子電解質材料とはなり得ていなかった。
国際公開第2006/087995号パンフレット 特開2008−066273号公報 国際公開第2006/061993号パンフレット 国際公開第2004/004037号パンフレット 特開2009−081129号公報
本発明は、プロトン伝導性に優れ、かつ、燃料遮断性、機械強度、物理的耐久性、耐熱水性、加工性および化学的安定性に優れる積層高分子電解質膜およびその製造方法を提供せんとするものである。
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、本発明の積層高分子電解質膜は、フッ素系高分子電解質により形成される層と炭化水素系電解質により形成される層とが積層されてなる積層高分子電解質膜であって、積層高分子電解質膜は多孔質材料からなる補強材を有し、フッ素系高分子電解質並びに炭化水素系電解質が補強材に含浸されてなり、フッ素系高分子電解質により形成される層と非フッ素系高分子電解質により形成される層との界面が補強材中に存在することを特徴とするものである。
本発明によれば、プロトン伝導性に優れ、かつ燃料遮断性、機械強度、耐熱水性、加工性、化学的安定性に優れた、高出力、高エネルギー容量および長期耐久性を達成することができる実用性に優れた高分子電解質材料、ならびにそれを用いた高性能な高分子電解質成型体、膜電極複合体および固体高分子型燃料電池を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
発明者らは、前記課題、つまり、プロトン伝導性に優れ、かつ燃料遮断性、機械強度、耐熱水性、耐熱メタノール性、加工性、化学的安定性に優れる上に、固体高分子型燃料電池としたときに高出力、高エネルギー密度および長期耐久性を達成することができる高分子電解質膜について、鋭意検討した結果、フッ素系高分子電解質により形成される層と炭化水素系電解質により形成される層とが積層されてなる積層高分子電解質膜であって、積層高分子電解質膜は多孔質材料からなる補強材を有し、フッ素系高分子電解質並びに炭化水素系電解質が補強材に含浸されてなり、フッ素系高分子電解質により形成される層と非フッ素系高分子電解質により形成される層との界面が補強材中に存在することを特徴とする積層高分子電解質膜が、特に燃料電池用電解質膜として、低加湿条件下を含むプロトン伝導性と発電特性、製膜性などの加工性、耐酸化性、耐ラジカル性、耐加水分解性などの化学的安定性、膜の機械強度、耐熱水性などの物理的耐久性において優れた性能を発現でき、かかる課題を一挙に解決できることを究明するとともに、さらに種々の検討を加え、本発明を完成した。
これまでもフッ素系電解質と炭化水素系電解質との積層膜は報告されてきているが(特許文献4,5)、フッ素系電解質と炭化水素系電解質を直接積層したものであったため、両者の接合性は良好ではなく、はがれやすいという課題があった。
また、これまでも補強材と高分子電解質とを組み合わせた電解質膜についての記載はあるものの、異なる材質からなる電解質同士の膨潤収縮差抑制に着目したものはなく、その効果についての記載もなかった。
本発明においては、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面を補強材中に有することにより、両電解質の面積方向の膨潤収縮差を低減させ、その結果、両電解質の接合性を向上させたものである。
本発明において、フッ素系高分子電解質とは特に制限されず、公知のフッ素系電解質が使用できる。具体的には、膜を構成するプロトン伝導性を有する官能基を持つフッ素系電解質としては、ナフィオン(登録商標、デュポン社製)、アシプレックス(登録商標、旭化成株式会社製)、フレミオン(登録商標、旭硝子株式会社製)等のパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、ポリトリフルオロスチレンスルフォン酸系ポリマー、パーフルオロカーボンホスホン酸系ポリマー、トリフルオロスチレンスルホン酸系ポリマー、エチレンテトラフルオロエチレン−g−スチレンスルホン酸系ポリマー、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリビニリデンフルオリド−パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー、エチレン−四フッ化エチレン共重合体、トリフルオロスチレンをベースポリマーとする樹脂などが挙げられる。耐熱性、化学的安定性などの発電性能上の観点からはこれらのフッ素系電解質が好ましく用いられ、特に好ましくはパーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマーから構成されるフッ素系電解質が用いられる。
また、炭化水素系高分子電解質とは、主鎖に芳香環を有して炭素と水素とを主な組成とする炭化水素系ポリマーであって、プロトン伝導性を有するイオン性基を有することを特徴とする。 炭化水素系ポリマーの具体例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドスルホン等のポリマーが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むものであり、特定のポリマー構造を限定するものではない。
これらのポリマーのなかでも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド等のポリマーが、機械強度、物理的耐久性、加工性および耐加水分解性の面からより好ましい。
なかでも、機械強度、物理的耐久性や製造コストの面から、芳香族ポリエーテル系重合体がさらに好ましい。主鎖骨格構造のパッキングの良さおよび極めて強い分子間凝集力から結晶性を示し、一般的な溶剤に全く溶解しない性質を有する点から、また引張強伸度、引裂強度および耐疲労性の点から、芳香族ポリエーテルケトン(PEK)系ポリマーが特に好ましい。ここで、芳香族ポリエーテルケトン系ポリマーとは、その分子鎖に少なくともエーテル結合およびケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホン、ポリエーテルケトンホスフィンオキシド、ポリエーテルケトンニトリルなどを含む。
本発明に使用されるイオン性基は、負電荷を有する原子団であれば特に限定されるものではないが、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。ここで、スルホン酸基は下記一般式(f1)で表される基、スルホンイミド基は下記一般式(f2)で表される基[一般式中Rは任意の原子団を表す。]、硫酸基は下記一般式(f3)で表される基、ホスホン酸基は下記一般式(f4)で表される基、リン酸基は下記一般式(f5)または(f6)で表される基、カルボン酸基は下記一般式(f7)で表される基を意味する。
Figure 2013077554
かかるイオン性基は前記官能基(f1)〜(f7)が塩となっている場合を含むものとする。前記塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR (Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。金属カチオンの場合、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。好ましい金属イオンの具体例を挙げるとすれば、Li、Na、K、Rh、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等が挙げられる。中でも、高分子電解質材料としては、安価で、溶解性に悪影響を与えず、容易にプロトン置換可能なNa、Kがより好ましく使用される。
これらのイオン性基は前記高分子電解質材料中に2種類以上含むことができ、組み合わせることにより好ましくなる場合がある。組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基を有することがより好ましく、耐加水分解性の点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。
炭化水素系電解質ポリマーの合成方法は、前記した特性や要件を満足できれば特に限定されるものではない。かかる方法は例えば ジャーナル オブ メンブレン サイエンス(Journal of Membrane Science), 197, 2002, p.231-242 に記載がある。本発明は重合法の中でも脱塩重縮合に限定される方法であり、塩基性化合物の存在下で適用されるのが、最も効果的である。
重合方法に関する好ましい重合条件を以下に示す。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒などを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にし得るものであれば、これらに限定されず使用することができる。
脱離する無機塩、つまりモノマーの反応末端は、一価のアルカリ金属とハロゲンの組み合わせが好ましく用いられる。具体的にはLi、Na、K、RbとF、Cl、Br、I等である。安価であることや環状金属捕捉剤を考慮すると、Na、KとF、Clが特に好ましく用いられる。この脱離した無機塩は塩基性化合物または塩基性化合物の分解物と結合する場合もある。この塩基性化合物の分解物等も重合反応において阻害となる恐れがあり、同様に環状金属化合物により、阻害を抑制する効果もある。
また、重縮合においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水剤を使用することもできる。
反応水又は反応中に導入された水を除去するのに用いられる共沸剤は、一般に、重合を実質上妨害せず、水と共蒸留し且つ約25℃〜約250℃の間で沸騰する任意の不活性化合物である。普通の共沸剤には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、塩化メチレン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどが含まれる。もちろん、その沸点が用いた双極性溶媒の沸点よりも低いような共沸剤を選定することが有益である。共沸剤が普通用いられるが、高い反応温度、例えば200℃以上の温度が用いられるとき、特に反応混合物に不活性ガスを連続的に散布させるとき、反応系内を減圧に保ち溶媒の沸点を低下するときにはそれは常に必要ではない。一般には、反応は不活性雰囲気下に酸素が存在しない状態で実施するのが望ましい。
縮合反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。
得られたポリマーの溶解性が不十分な場合は、必要により適当な加水分解性可溶性付与基を導入して重合後、加水分解により加水分解性可溶性付与基を除去すればよい。
本発明の加水分解性可溶性付与基とは、加水分解性可溶性付与基が導入されていない場合に溶媒に溶解困難なポリマーに導入し、後の工程で加水分解によって除去することを前提に、溶液製膜や濾過が容易に実施できるように一時的に導入される置換基である。加水分解性可溶性付与基は反応性や収率、加水分解性可溶性付与基含有状態の安定性、製造コスト等を考慮して適宜選択することが可能である。また、重合反応において加水分解性可溶性付与基を導入する段階としては、モノマー段階からでも、オリゴマー段階からでも、ポリマー段階でもよく、適宜選択することが可能である。
加水分解性可溶性付与基の具体例を挙げるとすれば、最終的にはケトンとなる部位をアセタールまたはケタール部位に変形し加水分解性可溶性付与基とし、溶液製膜後にこの部位を加水分解しケトン部位に変化させる。また、ケトン部位をアセタールまたはケタール部位のヘテロ原子類似体、例えばチオアセタールやチオケタールとする方法が挙げられる。また、スルホン酸を可溶性エステル誘導体とする方法、芳香環に可溶性基としてt−ブチル基を導入し、酸で脱t−ブチル化する方法等が挙げられる。
加水分解性可溶性付与基は、一般的な溶剤に対する溶解性を向上させ、結晶性を低減する観点から、立体障害が大きいという点で脂肪族基、特に環状部分を含む脂肪族基が好ましく用いられる。
加水分解性可溶性付与基を導入する官能基の位置としては、ポリマーの主鎖であることがより好ましい。主鎖に導入すること加水分解性可溶性付与基導入時と加水分解後に安定な基に変化させた後の状態の差が大きく、ポリマー鎖のパッキングが強くなり、溶媒可溶性から不溶性に変化し、機械的強度が強くなる傾向にある。ここで、ポリマーの主鎖に存在する官能基とは、その官能基を削除した場合にポリマー鎖が切れてしまう官能基と定義する。例えば、芳香族ポリエーテルケトンのケトン基を削除するとベンゼン環とベンゼン環が切れてしまうことを意味するものである。
この、加水分解性可溶性付与基の導入は特に結晶化可能な性質(結晶能)を有するポリマーへの適用が効果的である。これらポリマーの結晶性の有無、結晶と非晶の状態については、広角X線回折(XRD)における結晶由来のピークや示差走査熱量分析法(DSC)における結晶化ピーク等によって評価することができる。結晶能を有することにより、高温水中での寸法変化(膨潤)が小さい、すなわち耐熱水性に優れた電解質膜が得られる。この寸法変化が小さい場合には、電解質膜として使用している途中に膜が破損しにくく、また、膨潤で電極触媒層と剥離しにくいため発電性能が良好となる。
これら電解質ポリマーに対してイオン性基を導入する方法は、イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法と、高分子反応でイオン性基を導入する方法が挙げられるが、本発明はイオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法を使用する。
イオン性基を有するモノマーを用いて重合する方法としては、繰り返し単位中にイオン性基を有したモノマーを用いれば良く、必要により適当な保護基を導入して重合後脱保護基を行えばよい。かかる方法は例えば ジャーナル オブ メンブレン サイエンス(Journal of Membrane Science), 197, 2002, p.231-242 に記載がある。
イオン性基を導入する方法について例を挙げて説明すると、芳香族環へのホスホン酸基の導入は、例えばポリマー プレプリンツ(Polymer Preprints), 51, 2002, p.750等に記載の方法によって可能である。芳香族環へのリン酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族系高分子のリン酸エステル化によって可能である。芳香族環へのカルボン酸基の導入は、例えばアルキル基やヒドロキシアルキル基を有する芳香族系高分子を酸化することによって可能である。芳香族環への硫酸基の導入は、例えばヒドロキシル基を有する芳香族環の硫酸エステル化によって可能である。芳香族環をスルホン化する方法、すなわちスルホン酸基を導入する方法としては、たとえば特開平2−16126号公報あるいは特開平2−208322号公報等に記載の方法が公知である。
具体的には、例えば、芳香族環をクロロホルム等の溶媒中でクロロスルホン酸のようなスルホン化剤と反応させたり、濃硫酸や発煙硫酸中で反応することによりスルホン化することができる。スルホン化剤には芳香族環をスルホン化するものであれば特に制限はなく、上記以外にも三酸化硫黄等を使用することができる。この方法により芳香族環をスルホン化する場合には、スルホン化の度合いはスルホン化剤の使用量、反応温度および反応時間により、容易に制御できる。芳香族系高分子へのスルホンイミド基の導入は、例えばスルホン酸基とスルホンアミド基を反応させる方法によって可能である。
本発明において、多孔質材料からなる補強材には、不織布、抄紙、多孔質膜などがあげられるが、特にこれらに限定するものではない。特に、本発明では連続層を有することが好ましく、不織布、抄紙、多孔質膜など材料が分断されず接触、または融着、または一体化されている構造を形成していることを意味し、高分子電解質が、積層高分子電解質膜の表裏に連続的につながる様に充填される空隙を有することが好ましい。連続層を形成することにより寸法変化抑制効果などがより高くなる。
また、本発明において多孔質材料からなる補強材は、フッ素系電解質と炭化水素系電解質を接合する役割を担っている。フッ素系電解質と炭化水素系電解質は、膨潤収縮の差が両者で異なるため、接合性が悪い。補強材を有することによりフッ素系電解質と炭化水素系電解質の膨潤率の差による接合性不良を改善させることができ、積層高分子電解質膜の作製が可能になる。これらの補強材の中でも、電解質の含浸性の観点から、不織布や多孔質膜が特に好ましい。
不織布を補強材として使用する場合は、直径10μm以下の繊維を主体とすることが好ましく、直径5μm以下の繊維を主体とすることがさらに好ましい。ここでの主体とは電子顕微鏡などで観察した場合、観察視野内の繊維の50%以上を占めるという意味である。5μm以下の繊維を主体とすることで複合化高分子電解質膜の薄膜化が可能でありプロトン伝導性の観点から好ましい。
また、繊維径が10μm以上の繊維のみからなる不織布では、積層高分子電解質膜を薄膜化するためには、繊維の重なりを減らす、すなわち単位面積あたりの繊維量を低く設計することになるが、必然的に繊維間の距離が広がり、最大孔径が大きくなり、膜厚方向でみると局所的に複合化されていない部分が生じる場合がある。その部分は、積層高分子電解質膜の厚みによっては、積層高分子電解質膜の劣化のトリガーとなる可能性があるので、この現象を防止する目的として、平均径10μm以下の繊維を主体とすることが好ましい。特に1μm以下の繊維を主体とする不織布が、積層高分子電解質膜の厚みの増大によるプロトン伝導性の低下を抑制でき、かつ膜厚方向に複合化されていない部分を低減することができる。0.5μm以下の繊維を含むことがさらに好ましい。
1μm以下の繊維を主体とする不織布を製造する場合は、生産性の観点から電解紡糸で得られた繊維をターゲット上に直接捕捉、集積する不織布化した後、空気中で200〜300℃で加熱処理する方法が挙げられる。電解紡糸とは、紡糸原液に高電圧を印加することによって電気的に繊維を紡糸する方法である。
電解紡糸で使用する溶媒は、溶解性や取り扱い性の面からN−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホンアミドなどの有機極性溶媒が望ましく、また、これらの混合物であってもよい。溶解温度には特に限定はなく、室温下であっても、加熱下であってもよい。水やアルコール類、メチルセロソルブ類、テトラヒドロフラン、トルエンなど低沸点の溶媒を加えてもよい。また、紡糸原液の延伸性を付与する目的で、エチレングリコールやグリセリンなどの多価アルコールの添加も好ましい。
上記紡糸原液を用いた電解紡糸工程は特に制限はなく通常公知の方法、設備が使用できる。通常の不織布設備を用いて直径10μm以下の繊維を主体とする不織布を製造することは、条件的にも厳しく、原料の粘度、延伸性等、多くの制約がある。一方、電解紡糸法は、紡糸原液を用いた紡糸法であるため、その乾燥過程において体積収縮が起こること、および紡糸原液が低粘度あるため、極細ノズルでの成形が可能であることにより、直径5μm以下の連続繊維を得やすい。
得られた繊維を不織布化する工程についても、電解紡糸工程においては、紡糸原液からの固化と延伸による紡糸とが同時に、または逐次的に起こるため、紡糸した繊維をターゲットに直接捕捉することで繊維同士が結合した不織布として得ることができる。
電解紡糸以外でもレーザーで局所的に加熱しジェット気流や吸引によりで繊維を延伸補足して不織布とする方法も利用できる。
また、得られた繊維を短繊維としフリースを形成し、通常の乾式方や水中に分散して抄紙工程など不織布化する湿式法で不織布化してもよい。その場合はフリースを結合する方法として、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、水流絡合法なども利用できる。
また、多孔質膜を補強材として用いる場合、多孔質膜は、空隙率が60%以上、透気度が1000秒/100cc以下であることが好ましく。さらには50秒/100cc以下であることがより好ましい。
積層高分子電解質膜に用いる多孔質膜の空隙率は使用する高分子電解質のイオン性基密度によって適宜実験的に求められるが、高分子電解質溶液の充填の容易さの観点から60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。空隙率が60%未満では高分子電解質溶液の充填が内部まで到達せずプロトン伝導パスが低下する。また空隙率の上限は製膜工程で問題がなければ特に限定されない。製膜工程の塗工速度、張力、製膜機の搬送方式のスペックにより適宜実験的に決めることができるが、張力によるフィルムが伸びや縦じわの発生および破断を防止する観点から90%以下が好ましい。
多孔質膜の空隙率は多孔質膜を正方形に切り取り、一辺の長さL(cm)、重量W(g)、厚みD(cm)、を測定して、以下の式より求めることができる。
空隙率=100−100(W/ρ)/(L2 ×D)
上記式中のρは、延伸前のフィルム密度を示す。ρはJIS K7112(1980)のD法の密度勾配菅法にて求めた値を用いる。この時の密度勾配菅用液は、エタノールと水を用いる。
積層高分子電解質膜に用いる多孔質膜の厚みは、目的とする複合化高分子電解質膜の膜厚により適宜決定できるが、1〜100μmであることが実用上好ましい。フィルム厚みが1μm未満では、製膜工程及び二次加工工程における張力よってフィルムが伸び、縦じわの発生や、破断する場合がある。また、100μmを越えると、高分子電解質の充填が不十分となりプロトン伝導性が低下する場合がある。
積層高分子電解質膜に用いる多孔質膜のガーレ透気度は、充填する高分子電解質溶液の粘度や固形分、製膜速度などによって適宜実験的に決めることができるが、実用的な製膜速度およびや複合化高分子電解質膜のプロトン伝導性の観点から1000sec/100cc以下が好ましく、500sec/100cc以下がより好ましく、250sec/100cc以下がさらに好ましい。
ガーレ透気度が1000sec/100ccを越えると多孔質膜の貫通孔性が極めて低いことを示し、高分子電解質の充填が不十分となり、プロトン伝導性が低下するため複合化高分子電解質膜用として使用することが困難である場合がある。また、ガーレ透気度の下限も特に製膜工程で問題がなければ特に限定されない。製膜工程の塗工速度、張力、製膜機の搬送方式のスペックにより適宜実験的に決めることができるが、張力によるフィルムが伸びや縦じわの発生および破断を防止する観点から一般的には1sec/100cc以上が好ましい。
ガーレ透気度はJIS P−8117に準拠して、23℃、65%RHにて測定できる。(単位:秒/100ml)。同じサンプルについて同様の測定を5回行い、得られたガーレ透気度の平均値を当該サンプルのガーレ透気度とする。
積層高分子電解質膜用に使用する多孔質膜の透気性の尺度の一つであるガーレ透気度は、例えば、多孔質膜が延伸ポリプロピレン多孔質膜の場合は、多孔質膜を構成するポリプロピレン樹脂に添加するβ晶核剤の添加量や、その製造工程においては、キャスト工程における溶融ポリマーを固化させる際の結晶化条件(金属ドラム温度、金属ドラムの周速、得られる未延伸シートの厚みなど)や延伸工程における延伸条件(延伸方向(縦もしくは横)、延伸方式(縦もしくは横の10一軸延伸、縦−横もしくは横−縦逐次二軸延伸、同時二軸延伸、二軸延伸後の再延伸など)、延伸倍率、延伸速度、延伸温度など)などにより制御できる。
また、電解質溶液の含浸性を示す一つの尺度として、流動パラフィン透過時間は、0.1〜60秒/25μmであることが好ましい。ここで、流動パラフィン透過時間とは、流動パラフィンを多孔質フィルム表面に滴下し、これが厚み方向に透過して孔を充填して透明化する際に、流動パラフィンがフィルム表面に着地した時点から、フィルムが完全に透明化するまでの時間を測定し、滴下部近傍の平均フィルム厚みを用いて25μm厚み当たりに換算した値をいう。したがって、流動パラフィン透過時間は、フィルムの透過性の尺度の一つであり、流動パラフィン透過時間が低いほど透過性に優れ、高いほど透過性に劣ることに対応する。流動パラフィン透過時間は、より好ましくは1〜30秒/25μm、最も好ましくは1.5〜10秒/25μmである。
また、本発明の積層高分子電解質膜に用いる多孔質膜の製造方法においては、多孔質膜を厚み方向に二枚以上に割く工程を有してもよい。例えば実用的な10μm以下の多孔質膜の薄膜の製造を安定的に実施することは困難であるため、多孔質膜を使用した複合化高分子電解質膜を製造は、該塗液を基材上に流延塗布し、その後に該多孔質膜を貼り合わせて含浸させる工程、または該塗液を該多孔質膜上に流延塗布して含浸させ、その後に基材を貼り合わせる工程の前に、該多孔質膜を厚み方向に二枚以上に割く工程を有し、割いた一方の多孔質膜を使用する。もう一方の多孔質膜は回収することが好ましい。この方法を用いることにより10μm以下の多孔質膜を使用した複合化高分子電解質膜が作製可能となる。また、割くことにより、多孔質膜の表面の孔が閉塞した部分が除去され、より塗液が浸透しやすい状態となる効果もあり、多孔質膜の両面を割いた中心部分を使用することも好ましい。
不織布、抄紙、多孔質膜などの多孔質材料からなる補強材は厚み、空隙率、透気度の調整を目的に加熱プレスしてもよいし、不織布などの繊維構造体は繊維同士がずれないようにバインダーを少量添加してもよい。
補強材の材質としては、高分子電解質溶液に溶解してプロトン伝導を遮断しないもので前記特性を満足すれば特に限定されない。耐熱性の観点や、物理的強度の補強効果を鑑みれば、脂肪族系高分子、芳香族系高分子または含フッ素高分子が好ましく使用される。

例えば、脂肪族系高分子としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、エチレン−ビニルアルコール共重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の多孔質膜として、ポリアクリロニトリル不織布、後述の耐炎化ポリアクリロニトリル不織布、あるいは延伸二軸配向ポリプロピレン膜が好ましく用いられる。
なおここで言うポリエチレンとはポリエチレンの結晶構造を有するエチレン系のポリマーの総称であり、例えば直鎖状高密度ポリエチレン(HDPE)や低密度ポリエチレン(LDPE)の他に、エチレンと他のモノマーとの共重合体をも含み、具体的には直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と称されるエチレン、α−オレフィンとの共重合体や超高分子量ポリエチレンなどを含む。
またここでいうポリプロピレンはポリプロピレンの結晶構造を有するプロピレン系のポリマーの総称であり、一般に使用されているプロピレン系ブロック共重合体、ランダム共重合体など(これらはエチレンや1−ブテンなどとの共重合体である)を含むものである。
さらにポリアクリロニトリルは耐炎化したものであってもかまわない。耐炎化ポリアクリロニトリルは、プロトン伝導性の補助や高分子電解質との界面の密着性を向上するために表面にイオン性基を導入することもでき、またポリアクリロニトリルの段階でラジカル捕捉機能のある金属前駆体などを添加しておき、耐炎化することも可能である。
また、芳香族系高分子としては、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。中でも本発明の不織布として、ポリエステル不織布が好ましく用いられる。
また、含フッ素高分子としては、分子内に炭素−フッ素結合を少なくとも1個有する熱可塑性樹脂が使用されるが、脂肪族系高分子の水素原子のすべてまたは大部分がフッ素原子によって置換された構造のものが好適に使用される。その具体例としては、例えばポリトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリ(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルキルエーテル)、ポリフッ化ビニリデン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも本発明の多孔質膜として、延伸ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜が好ましく用いられる。
本発明の炭化水素系電解質では、加水分解性基を有するポリエーテルケトン系ポリマーを前駆体として使用できるが、これに限定するものではない。以下に、本発明の炭化水素系電解質の重合について、加水分解性基を有するポリエーテルケトン系ポリマーを例として説明する。
まず、本発明中の加水分解性基について説明する。加水分解性基とは、加水分解性基が導入されていない場合に溶媒に溶解困難なポリマーに導入し、後の工程で加水分解によって除去することを前提に、溶液製膜や濾過が容易に実施できるように一時的に導入する可溶性付与を目的とした置換基である
加水分解性基は反応性や収率、加水分解性基含有状態の安定性、製造コスト等を考慮して適宜選択することが可能である。また、重合反応において加水分解性基を導入する段階としては、モノマー段階からでも、オリゴマー段階からでも、ポリマー段階でもよく、適宜選択することが可能であるが、生産性の観点からモノマー段階で導入するのが好ましい。
加水分解性基の活用例は、最終的にはケトンとなる部位をアセタールまたはケタール部位に変形し加水分解性基とし、溶液製膜後にこの部位を加水分解しケトン部位に変化させる方法を挙げることができる。また、ケトン部位をアセタールまたはケタール部位のヘテロ原子類似体、例えばチオアセタールやチオケタールとする方法が挙げられる。また、スルホン酸を可溶性エステル誘導体とする方法や、芳香環に可溶性基としてt−ブチル基を導入し、酸で脱t−ブチル化する方法等も同様な思想で用いることが可能であるが、後述の結晶能を付与する観点から、最終的にはケトンとなる部位をケタール部位に変形し加水分解性基とすることが好ましい。
加水分解性基は、一般的な溶剤に対する溶解性を向上させ、結晶性を低減する観点から、立体障害が大きいという点で脂肪族基、特に環状部分を含む脂肪族基が好ましく用いられる。
加水分解性基を導入する官能基の位置としては、ポリマーの主鎖であることがより好ましい。主鎖に導入することで加水分解性基導入時と加水分解後に安定な基に変化させた後の状態の差が大きく、ポリマー鎖のパッキングが強くなり、溶媒可溶性から不溶性に変化し、機械的強度や耐水性が強くなる傾向にある。ここで、ポリマーの主鎖に存在する官能基とは、その官能基を削除した場合にポリマー鎖が切れてしまう官能基と定義する。例えば、芳香族ポリエーテルケトンのケトン基を削除するとベンゼン環とベンゼン環が切れてしまうことを意味するものである。
本発明の電解質膜の製造方法において、加水分解性基を含む構成単位として、より好ましくは下記一般式(P1)および(P2)から選ばれる少なくとも1種を含有するものである。
Figure 2013077554
(式(P1)および(P2)において、Ar〜Arは任意の2価のアリーレン基、RおよびRはHおよびアルキル基から選ばれた少なくとも1種の基、Rは任意のアルキレン基、EはOまたはSを表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。式(P1)および(P2)で表される基は任意に置換されていてもよい。)
なかでも、化合物の臭いや反応性、安定性等の点で、前記一般式(P1)および(P2)において、EがOである、すなわち、ケトン部位をケタール部位とする方法が最も好ましい。
一般式(P1)中のRおよびRとしては、安定性の点でアルキル基であることがより好ましく、さらに好ましくは炭素数1〜6のアルキル基、最も好ましく炭素数1〜3のアルキル基である。また、一般式(P2)中のRとしては、安定性の点で炭素数1〜7のアルキレン基であることがより好ましく、最も好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基である。Rの具体例としては、−CHCH−、−CH(CH )CH −、−CH(CH)CH(CH)−、−C(CH3 )CH −、−C(CH CH(CH)−、−C(CHO(CH−、−CHCHCH −、−CHC(CHCH−等があげられるが、これらに限定されるものではない。
前記一般式(P1)または(P2)構成単位のなかでも、工程中の耐加水分解性などの安定性、溶媒への溶解性の点から少なくとも前記一般式(P2)を有するものがより好ましく用いられる。さらに、前記一般式(P2)のRとしては炭素数1〜7のアルキレン基、すなわち、Cn12n1(n1は1〜7の整数)で表される基であることが好ましく、安定性、合成の容易さの点から−CHCH−、−CH(CH )CH −、または−CHCHCH−から選ばれた少なくとも1種であることが最も好ましい。
前記一般式(P1)および(P2)中のAr〜Arとして好ましい有機基は、フェニレン基、ナフチレン基、またはビフェニレン基である。これらは任意に置換されていてもよい。本発明では、溶解性および原料入手の容易さから、前記一般式(P2)中のArおよびArが共にフェニレン基であることがより好ましく、最も好ましくはArおよびArが共にp−フェニレン基である。
本発明において、ケトン部位をケタール等の加水分解性基する方法としては、ケトン基を有する前駆体化合物を、酸触媒存在下で1官能および/または2官能アルコールと反応させる方法が挙げられる。例えば、ケトン前駆体の4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンと1官能および/または2官能アルコール、脂肪族又は芳香族炭化水素などの溶媒中で臭化水素などの酸触媒の存在下で反応させることによって製造できる。アルコールは炭素数1〜20の脂肪族アルコールである。
本発明の電解質膜の製造方法に適用するモノマーのうち加水分解性基を有することが好ましい例としては、芳香族ジヒドロキシ化合物としてそれぞれ下記一般式(P1−1)および(P2−1)で表される化合物が挙げられ、芳香族活性ジハライド化合物との芳香族求核置換反応により合成することが可能である。加水分解性基を有するモノマーは前記一般式(P1)および(P2)で表される構成単位が芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族活性ジハライド化合物のどちら側由来でも構わないが、モノマーの反応性を考慮して芳香族ジヒドロキシ化合物由来とする方がより好ましい。
Figure 2013077554
(一般式(P1)および(P2)において、Ar1〜Ar4は任意の2価のアリーレン基、RおよびRはHおよびアルキル基から選ばれた少なくとも1種の基、Rは任意のアルキレン基、EはOまたはSを表す。一般式(P1)および一般式(P2)で表される化合物は任意に置換されていてもよい。)
ケトン部位をケタールで保護する方法としては、ケトン基を有する化合物を、酸触媒存在下で1官能および/または2官能アルコールと反応させる方法が挙げられる。アルコールとしては、炭素数1〜6の脂肪族1官能アルコールあるいは炭素数1〜7の脂肪族2官能アルコールが好ましい。保護基の安定性の観点から、2官能アルコールがより好ましい。
2官能アルコールの具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−2,3−ブタンジオール、2,3−ジメチル−2,3−ブタンジオール、1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。なかでも、保護基の安定性から、エチレングリコール、プロピレングリコール、または2−メチル−1,2−プロパンジオールが好ましい。
また、触媒として固体触媒を用い、アルキルオルトエステルの存在下で反応を行うことが好ましい。
アルキルオルトエステルとしては、オルトぎ酸トリメチル、オルトぎ酸トリエチル、オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルトけい酸テトラメチル、オルトけい酸テトラエチルなどが挙げられる。また、2,2−ジメトキシプロパン、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソランなどの、容易に加水分解されて揮発性生成物を形成する化合物もオルトエステルに代えて用いることができる。
固体触媒としては、好ましくは微粒状酸性アルミナ−シリカ化合物、最も好ましくはK−10(例えば、アルドリッチ社製試薬)と称されるモンモリロナイトにより例示されるようなモンモリロナイトクレイである。高い表面積を持つ他の固体酸性触媒も触媒として有効に使用できる。これらには酸性アルミナ、スルホン化重合体樹脂などが含まれる。
ケタール化反応を行うにあたって、アルコールは、ケトン基に対して、約1当量以上、好ましくは過剰量加えることが好ましい。オルトエステルも、ケトン基に対して、約1当量以上、好ましくは過剰量添加することが好ましい。固体触媒は、ケトン基1当量につき少なくとも1g、好ましくはケトン基1当量につき10g以上用いることが好ましい。固体触媒は、大過剰の固体を用いても、濾過により容易に除去されるので、再使用することができる。
反応は必要に応じて不活性溶媒の存在下に行われる。反応は、約25℃から、用いたオルトエステルの沸点付近までの範囲の温度で行われる。好ましくはオルトエステルの沸点より低く、オルトエステル反応生成物の沸点より高い温度で行われる。例えば、反応生成物がメタノール(沸点65℃)、および、ぎ酸メチル(沸点34℃)であるオルトぎ酸トリメチル(沸点102℃)を用いるときは、約65℃〜102℃の反応温度が好適である。もちろん、反応温度は、反応を減圧または昇圧下に実施するときは適当に調節することができる。
一例を挙げると、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、過剰のグリコール、過剰のオルトぎ酸トリアルキルおよびケトン1gにつき約0.5〜約2.5gのクレイの混合物を反応させ、該オルトぎ酸エステルから得られるアルコールを留去しながら加熱することによって、ケタール化物、すなわち、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソランを、48時間以内の反応時間で、優れた収率(60%〜ほとんど定量的)で得ることができる。
次に、このようにして得られた加水分解性基を有するモノマーを用いて重合反応を行い、加水分解性を有するポリエーテルケトン系ポリマーを得る。加水分解性を有するポリエーテルケトン系ポリマーの合成方法については、実質的に十分な高分子量化が可能な方法であれば特に限定されるものではないが、例えば芳香族活性ジハライド化合物と2価フェノール化合物の芳香族求核置換反応、またはハロゲン化芳香族フェノール化合物の芳香族求核置換反応を利用して合成することができる。
具体的には、例えば前記一般式(P1)または(P2)で表される構成単位を含有する芳香族ポリエーテル系重合体は、2価フェノール化合物としてそれぞれ下記一般式(P1−1)または(P2−1)で表される化合物を使用し、芳香族活性ジハライド化合物との芳香族求核置換反応により合成することが可能である。前記一般式(P1)および(P2)で表される構成単位が2価フェノール化合物、芳香族活性ジハライド化合物のどちら側由来でも構わないが、モノマーの反応性の反応性を考慮して2価フェノール化合物由来とする方がより好ましい。
Figure 2013077554
ここで、Ar〜Arは任意の2価のアリーレン基、RおよびRはHおよびアルキル基から選ばれた少なくとも1種の基、Rは任意のアルキレン基、Eは酸素または硫黄を表す。一般式(P1−1)および一般式(P2−1)で表される化合物は任意に置換されていてもよい。
特に好ましい2価フェノール化合物の具体例としては、下記一般式(r1)〜(r10)で表される化合物、並びにこれらの誘導体を挙げることができる。
Figure 2013077554
これら2価フェノール化合物のなかでも、安定性の点から一般式(r4)〜(r10)で表される化合物がより好ましく、さらに好ましくは一般式(r4)、(r5)および(r9)で表される化合物、最も好ましくは一般式(r4)で表される化合物である。
芳香族活性ジハライド化合物としては、2価フェノール化合物との芳香族求核置換反応により高分子量化が可能なものであれば、特に限定されるものではない。芳香族活性ジハライド化合物の好適な具体例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジクロロジフェニルケトン、4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、4,4’−ジクロロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、4,4’−ジフルオロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。
中でも4,4’−ジクロロジフェニルケトン、または、4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが結晶性付与、機械強度、物理的耐久性、耐熱メタノール性および燃料遮断性の点からより好ましく、重合活性の点から4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが最も好ましい。これら芳香族活性ジハライド化合物は、単独で使用することも、複数の芳香族活性ジハライド化合物を併用することも可能である。
また、ハロゲン化芳香族フェノール化合物としては、4−ヒドロキシ−4’−クロロベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−フルオロベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−4’−クロロジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−フルオロジフェニルスルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−クロロフェニル)スルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−フルオロフェニル)スルホン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−クロロフェニル)ケトン、4−(4’−ヒドロキシビフェニル)(4−フルオロフェニル)ケトン、等を例として挙げることができる。これらは、単独で使用することも、2種以上の混合物として使用することもできる。さらに、活性化ジハロゲン化芳香族化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物の反応において、ハロゲン化芳香族フェノール化合物を共に反応させて芳香族ポリエーテル系化合物を合成しても良い。
また、ハロゲン化芳香族ヒドロキシ化合物として、保護基を含有したものも好ましい。具体例としては下記一般式(h1)〜(h7)を挙げることができる。
Figure 2013077554
(ここで、XはFまたはClである)
芳香族ポリエーテル系重合体を合成するにあたって、イオン性基を有するモノマーも好ましく併用される。芳香族活性ジハライド化合物にイオン性基を導入した化合物をモノマーとして用いることは、得られるポリマーに含まれるイオン性基の量を精密制御できる点から好ましい。プロトン伝導度および耐加水分解性の点から、モノマーに含まれるイオン性基としてはスルホン酸基が最も好ましいが、他のイオン性基を有していても構わない。
イオン性基としてスルホン酸基を有するモノマーの例としては、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、等を挙げることができる。
なかでも耐熱水性、および燃料遮断性の点から3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンがより好ましく、重合活性の点から3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロジフェニルケトンが最も好ましい。
スルホン酸基は重合の際には、スルホン酸基が1価カチオン種との塩になっていることが好ましい。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アンモニウムカチオン等が挙げられる。
本発明の高分子電解質材料を得るために行う芳香族求核置換反応による芳香族ポリエーテル系重合体の重合は、上記モノマー混合物を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜250℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。
使用できる溶媒としては、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒などを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。
芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水剤を使用することもできる。反応水又は反応中に導入された水を除去するのに用いられる共沸剤は、一般に、重合を実質上妨害せず、水と共蒸留し且つ約25℃〜約250℃の間で沸騰する任意の不活性化合物である。普通の共沸剤には、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、塩化メチレン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどが含まれる。もちろん、その沸点が用いた双極性溶媒の沸点よりも低いような共沸剤を選定することが有益である。共沸剤が普通用いられるが、高い反応温度、例えば200℃以上の温度が用いられるとき、特に反応混合物に不活性ガスを連続的に散布させるときにはそれは常に必要ではない。一般には、反応は不活性雰囲気下に酸素が存在しない状態で実施するのが望ましい。
本発明の高分子電解質材料を得るために行う、芳香族求核置換反応による芳香族ポリエーテル系重合体の重合においては、環状金属捕捉剤および/またはグリコール類を添加することが好ましい。一般式(D1)で表されるジハライド残基の含有モル分率が35モル%以上50モル%以下の高分子電解質を得るためにはイオン性基の金属塩を有するモノマーをポリマー鎖に導入することが好ましいが、イオン性基の金属塩を有するモノマーは固体で有機溶剤に難溶である場合が多く、固体のまま重縮合反応を行うと、得られたポリマーのスルホン酸基密度が量論値より減少する傾向にある。
ここで、イオン交換容量とは、乾燥した高分子電解質材料1グラムあたりに導入されたスルホン酸基のモル数であり、値が大きいほどスルホン酸基の量が多いことを示す。
本発明における高分子電解質材料のスルホン酸基密度は、プロトン伝導性、燃料遮断性および機械強度の点から0.1〜5.0mmol/gであることが好ましく、さらに好ましくは、0.5〜3.5mmol/gである。イオン交換容量が、0.1mmol/gより低いと、プロトン伝導性が低いため十分な発電特性が得られないことがあり、3.5mmol/gより高いと燃料電池用電解質膜として使用する際に、十分な耐水性および含水時の機械的強度が得られないことがある。
イオン交換容量は、元素分析、中和滴定により求めることが可能である。これらの中でも測定の容易さから、元素分析法を用い、S/C比から算出することが好ましいが、スルホン酸基以外の硫黄源を含む場合などは、中和滴定法によりイオン交換容量を求めることもできる。本発明の高分子電解質材料は、後述するようにイオン性基を有するポリマーとそれ以外の成分からなる複合体である態様を含むが、その場合もイオン交換容量は複合体の全体量を基準として求めるものとする。
中和滴定の手順は下記のとおりである。測定は3回以上行ってその平均をとるものとする。
(1) 試料をミルにより粉砕し、粒径を揃えるため、目50メッシュの網ふるいにかけ、ふるいを通過したものを測定試料とする。
(2) サンプル管(蓋付き)を精密天秤で秤量する。
(3) 前記(1)の試料 約0.1gをサンプル管に入れ、40℃で16時間、真空乾燥する。
(4) 試料入りのサンプル管を秤量し、試料の乾燥重量を求める。
(5) 塩化ナトリウムを30重量%メタノール水溶液に溶かし、飽和食塩溶液を調製する。
(6) 試料に前記(5)の飽和食塩溶液を25mL加え、24時間撹拌してイオン交換する。
(7) 生じた塩酸を0.02mol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液(0.1体積%)を2滴加え、薄い赤紫色になった点を終点とする。
(8) イオン交換容量は下記の式により求める。
イオン交換容量(mmol/g)=
〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/ml)×滴下量(ml)〕/試料の乾燥重量(g)
本発明の高分子電解質材料には本発明の目的を阻害しない範囲において、他の成分、例えば導電性若しくはイオン伝導性を有さない不活性なポリマーや有機あるいは無機の化合物が含有されていても構わない。
反応促進剤とは、金属カチオンとキレート錯体を形成するものや金属カチオンを包摂する様な構造であれば特に限定しない。例えばポルフィリン、フタロシアニン、コロール、クロリン、シクロデキストリン、クラウンエーテル類、クラウンエーテルのOがSやNHなどに置き換わったチアクラウンエーテル類、アザクラウンエーテル類などが好ましく用いられる。重合安定性や除去の容易さ観点からクラウンエーテル類が好適であり、中でも12−Crown−4(1,4,7,10-Tetraoxacyclododecane)、15−Crown−5(1,4,7,10,13-Pentaoxacyclopentadecane)、18−Crown−6(1,4,7,10,13,16- Hexaoxacyclooctadecane)が好適に用いられ、18−Crown−6が安価なため最適である。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。またこれらの添加剤の量は適宜実験的に決定され、特に限定されないが、使用するモノマー中のイオン性基の金属塩のモル数以下が好ましい。
グリコール類としてはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキルグリコールに代表されるポリグリコール類が好ましく用いられる。中でもポリアルキルグリコールが好ましく、ポリエチレングリコールがより好ましい。ポリグリコール類の分子量としては、電解質ポリマーの性質を阻害しない4000以下が好ましく、溶媒との親和性から常温で液体状である600以下がさらに好ましい。
上記反応促進剤は上記のように相溶化剤としても機能するため、塗液を基材上に流延塗布する工程において効果を奏し、高品位かつ高耐久で、低加湿での発電性能が向上した高分子電解質膜を提供することが可能となる。つまり、重縮合時に添加するだけでなく、それより後でも上記の効果を有するので、塗液を基材上に流延塗布する工程の前であれば、その他の工程に添加することは好ましい。
また、上記反応促進剤は機械的強度や耐水性向上の観点から最終的な電解質膜の段階では除去されていることが好ましく、溶媒の一部を除去して基材上に膜状物を得る工程の後に、上記反応促進剤を除去する工程を有することが好ましい。除去する方法は、特に限定されないが、水や酸性水溶液との接触工程で行うことが生産性向上の観点から好ましい。
芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜50重量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5重量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、50重量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。
重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低く、副生する無機塩の溶解度が高い溶媒中に加えることによって、無機塩を除去、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。回収されたポリマーは場合により水やアルコール又は他の溶媒で洗浄され、乾燥される。
また、遠心分離によっても残留物を洗浄が可能である。遠心分離とは、遠心機等を使ってサンプルに遠心力をかけ、比重差により、液体(高分子電解質溶液)と固体(塩、塩基性化合物、残存モノマー等)を分離する方法であり、通常公知の方法が適用できる。塩分の除去の効率化の観点から重合溶液の粘度を調整することが好ましい。遠心分離を行う場合、重合溶液濃度は10Pa・s以下が好ましく、より好ましくは5Pa・s、さらに好ましくは1Pa・s以下である。10Pa・s以下であれば遠心効果が高くなり、短時間で工業的な遠心装置で遠心分離が可能となる。遠心力は発生する塩とポリマー溶液の比重差や重合液の粘度、固形分、使用する装置など適宜実験的に決定できる。遠心力としては5000G以上、好ましくは10000G以上、より好ましくは20000G以上であり、沈降物の除去時以外は連続的に運転できる装置が工業的に好適である。
所望の分子量が得られたならば、ハライドあるいはフェノキシド末端基は場合によっては安定な末端基を形成させるフェノキシドまたはハライド末端封止剤を導入することにより反応させることができる。
本発明においては、加工性の観点から製膜段階まで保護基を脱保護させずに導入しておく必要があることから、保護基が安定に存在できる条件を考慮して、重合および精製を行う必要がある。例えば、ケタールを保護基として使用する場合には、酸性下では脱保護反応が進行してしまうため、系を中性あるいはアルカリ性に保つ必要がある。
このようにして得られる芳香族ポリエーテル系重合体の分子量は、ポリスチレン換算重量平均分子量で、0.1万〜500万、好ましくは10万〜100万である。0.1万未満では、成型した膜にクラックが発生するなど機械強度が不十分な場合や製膜困難な場合がある。一方、500万を超えると、溶解性が不充分となり、また溶液粘度が高く、加工性が不良になるなどの問題がある場合がある。なお、本発明によって得られる高分子電解質材料の分子量については、溶剤不溶性のために測定が困難な場合があるが、前記分子量の成型性可溶性高分子電解質材料から得られるものが好ましい。
なお、本発明の高分子電解質材料および本発明によって得られる高分子電解質材料の化学構造は、赤外線吸収スペクトルによって、1,030〜1,045cm-1 、1,160〜1,190cm-1 のS=O吸収、1,130〜1,250cm-1のC−O−C吸収、1,640〜1,660cm-1 のC=O吸収などにより確認でき、これらの組成比は、スルホン酸基の中和滴定や、元素分析により知ることができる。また、核磁気共鳴スペクトル( 1 H−NMR)により、例えば6.8〜8.0ppmの芳香族プロトンのピークから、その構造を確認することができる。また、溶液13C−NMRや固体13C−NMRによって、スルホン酸基の付く位置や並び方を確認することができる。
本発明によって得られる高分子電解質材料は、重水素化ジメチルスルホキシドや重水素化クロロホルムに例示される一般的な有機溶剤に不溶な場合があるが、重水素化硫酸を用いれば測定が可能である。これにより、モノマー段階でスルホン化され、スルホン化位置が制御されたポリマーであるか、あるいはスルホン化位置の制御されていない後スルホン化ポリマーかを見極めることが可能である。ただし、ケトン基やスルホン基のような電子吸引性の基が隣接していない場合には、サンプル作成中や測定中にスルホン化反応が進行してしまうので、サンプルの正確なスルホン化位置を断定することが困難となる。
かかる高分子電解質材料の化学構造についてのNMR測定は、下記の方法にて行う。すなわち、Bruker社製 DRX−500を用い、共鳴周波数500.1 MHz、 測定温度30℃、溶解溶媒96〜98%重水素化硫酸水溶液、積算回数256回で測定するものである。
本発明の高分子電解質材料として用いるポリマー中のスルホン酸基はブロック共重合で導入しても、ランダム共重合で導入しても構わない。用いるポリマーの化学構造や結晶性の高さによって適宜選択することができる。燃料遮断性や低含水率が必要である場合にはランダム共重合がより好ましく、プロトン伝導性や高含水率が必要である場合にはブロック共重合がより好ましく用いられる。
本発明において、積層高分子電解質膜は、フッ素系高分子電解質並びに炭化水素系電解質が補強材に含浸されることにより、フッ素系高分子電解質により形成される層と炭化水素系電解質により形成される層との界面が補強材中に存在することを特徴とするが、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面は、下記のような分析方法で測定できるが、これらに限定したものではない。
本発明において、積層高分子電解質の断面をEPMA分析または、SEM-EDX分析などの断面の元素分析を行い、元素濃度に一定の差がみられた点を界面と定義する。また、元素マッピングをの際に、元素濃度に一定の差が見られず不明瞭な場合は、断面の厚み方向と垂直方向を横軸、マッピングした元素の量を縦軸にとったグラフにおいてグラフの傾きが最大となった箇所を界面と定義する。
さらに、積層高分子電解質のフッ素系電解質または炭化水素系電解質のどちらか一方のみを所定の溶媒によって、溶かし、SEMやAFMなどの表面観察で、補強材の表面の露出を確認することによっても、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面が補強材中に存在することを確認できる。表面観察の測定方法においては、上記SEMやAFMに限ったものではなく、表面観察が可能で有れば任意の方法で測定可能である。
また、電解質の溶解させるために使用する溶媒は、フッ素系電解質または炭化水素系電解質のどちらか一方のみを溶解するものが好ましい。
例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水およびこれらの混合物が好適に用いられるが、これらに限定されるものではない。
次に、本発明の積層電解質膜の製造方法について説明する。本発明の積層電解質膜の製造方法は、[1]炭化水素系電解質を製膜して第一の膜層を形成する工程と、該第一の膜層の上に補強材を積層する工程と、さらに補強材の上にフッ素系電解質を製膜する工程、もしくは[2]フッ素系電解質を製膜して第一の膜層を形成する工程と、該第一の膜層の上に補強材を積層する工程と、さらに補強材の上に炭化水素系電解質を製膜する工程とを有する。該補強材上に該塗液を流延塗布する工程は、該塗液を含浸した多孔質材料中の溶媒の一部を除去した後でもよいし、溶媒の一部を除去する前でもよい。このようにして、該電解質を含浸後、溶媒を除去することにより製膜する方法が例示できる。
必要な固形分濃度に調製したポリマー溶液を常圧の濾過もしくは加圧濾過などに供し、高分子電解質溶液中に存在する異物を除去することは強靱な膜を得るために好ましい方法である。ここで用いる濾材は特に限定されるものではないが、ガラスフィルターや金属性フィルターが好適である。該濾過で、ポリマー溶液が通過する最小のフィルターの孔径は、1μm以下が好ましい。濾過を行わないと異物の混入を許すこととなり、膜破れが発生したり、耐久性が不十分となるので好ましくない。
製膜に用いる溶媒としては、高分子電解質材料を溶解し、その後に除去し得るものであればよく、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水およびこれらの混合物が好適に用いられる。
炭化水雄系電解質においては、非プロトン性極性溶媒が最も溶解性が高く好ましい。また、フッ素電解質においては、溶解性の観点から、アルコール系溶媒や水を含有することが好ましく、中でも炭化水素系電解質塗液との相溶性の観点から多価アルコール系溶媒を含有すことが特に好ましい。
本発明の積層高分子電解質膜の製造方法の第一の工程として、フッ素系電解質または炭化水素系電解質を補強材に含浸させる工程は、前述の該塗液を基材上に流延塗布し、第二の工程として多孔質材料からなる補強材を含浸させる工程、第三の工程として第一の工程に用いた電解質と異なる電解質を塗布する工程、または第一の工程として該塗液を該多孔質材料上に流延塗布して含浸させ、第二の工程として基材を貼り合わせる工程、第三の工程として第一の工程に用いなかった電解質を塗布する工程のどちらでも構わず、またこれらに限定されるものではない。
また、積層高分子電解質膜の製造方法において、プレス工程、加熱プレス工程等で電解質が充填されていない空隙部分をつぶすことも耐久性の観点から好ましい。さらには塗液を多孔質フィルムに含浸する工程において、減圧や加圧することにより塗液の含浸を補助し多孔質フィルムの内部の未充填箇所を減少させることも好ましい。
次いで、得られた高分子電解質膜はイオン性基の少なくとも一部を金属塩の状態にしてから熱処理することが好ましい。用いる高分子電解質材料が重合時に金属塩の状態で重合するものであれば、そのまま製膜、熱処理することが好ましい。金属塩の金属はスルホン酸と塩を形成しうるものであればよいが、価格および環境負荷の点からはLi、Na、K、Rb、Cs、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、V、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Zr、Mo、Wなどが好ましく、これらの中でもLi、Na、K、Ca、Sr、Baがより好ましく、Li、Na、Kがさらに好ましい。この熱処理の温度は好ましくは150〜550℃、さらに好ましくは160〜400℃、特に好ましくは180〜350℃である。
熱処理時間は、好ましくは10秒〜12時間、さらに好ましくは30秒〜6時間、特に好ましくは1分〜1時間である。熱処理温度が低すぎると、燃料透過性の抑制効果や弾性率、破断強度が不足する。一方、高すぎると膜材料の劣化を生じやすくなる。熱処理時間が10秒未満であると熱処理の効果が不足する。一方、12時間を超えると膜材料の劣化を生じやすくなる。熱処理により得られた高分子電解質膜は必要に応じて酸性水溶液に浸漬することによりプロトン置換することができる。この方法で成形することによって本発明の高分子電解質膜はプロトン伝導度と燃料遮断性、ならびに機械特性、長期耐久性、耐溶剤性をより良好なバランスで両立することが可能となる。
本発明において、ケタールで保護したケトン部位の少なくとも一部を脱保護せしめ、ケトン部位とする方法は特に限定されるものではない。前記脱保護反応は、不均一又は均一条件下に水及び酸の存在下において行うことが可能であるが、機械強度や耐溶剤性の観点からは、膜状等に成型した後で酸処理する方法がより好ましい。具体的には、成型された膜を塩酸水溶液中に浸漬することにより脱保護することが可能であり、酸の濃度や水溶液の温度については適宜選択することができる。
ポリマーに対して必要な酸性水溶液の重量比は、好ましくは1〜100倍であるけれども更に大量の水を使用することもできる。酸触媒は好ましくは存在する水の0.1〜50重量%の濃度において使用する。好適な酸触媒としては塩酸、硝酸、フルオロスルホン酸、硫酸などのような強鉱酸、及びp−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンルスホン酸などのような強有機酸が挙げられる。ポリマーの膜厚等に応じて、酸触媒及び過剰水の量、反応圧力などは適宜選択できる。
例えば、膜厚50μmの膜であれば、6N塩酸水溶液に例示されるような酸性水溶液中に浸漬し、95℃で1〜48時間加熱することにより、容易にほぼ全量を脱保護することが可能である。また、25℃の1N塩酸水溶液に24時間浸漬しても、大部分の保護基を脱保護することは可能である。ただし、脱保護の条件としてはこれらに限定される物ではなく、酸性ガスや有機酸等で脱保護したり、熱処理によって脱保護しても構わない。
本発明によって得られた高分子電解質膜は、さらに必要に応じて放射線照射などの手段によって高分子構造を架橋せしめることもできる。かかる高分子電解質膜を架橋せしめることにより、燃料クロスオーバーおよび燃料に対する膨潤をさらに抑制する効果が期待でき、機械的強度が向上し、より好ましくなる場合がある。かかる放射線照射の種類としては例えば、電子線照射やγ線照射を挙げることができる。
本発明の高分子電解質膜の膜厚としては、好ましくは1〜2000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の強度を得るには1μmより厚い方がより好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2000μmより薄い方が好ましい。かかる膜厚のさらに好ましい範囲は3〜500μm、特に好ましい範囲は5〜250μmである。かかる膜厚は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができる。
また、本発明の高分子電解質材料には、通常の高分子化合物に使用される結晶化核剤、可塑剤、安定剤あるいは離型剤、酸化防止剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内で添加することができる。
また、多孔質材料と塗液の濡れ性を高めるため、多孔質材料にコロナ処理、プラズマ処理、静電気除去、薬液処理、などの機構を備えていてもよい
本発明の高分子電解質材料は高分子電解質成型体に好適に用いられる。本発明において高分子電解質成型体とは、本発明の高分子電解質材料を含有する成型体を意味する。本発明において、具体的な成型体の形状としては、膜類(フィルムおよびフィルム状のものを含む)の他、板状、繊維状、中空糸状、粒子状、塊状、微多孔状、コーティング類、発砲体類など、使用用途によって様々な形態をとりうる。機械特性や耐溶剤性等の各種特性が優れることから、幅広い用途に適応可能である。
本発明の高分子電解質膜は、種々の用途に適用可能である。例えば、体外循環カラム、人工皮膚などの医療用途、ろ過用用途、イオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途に適用可能である。また、人工筋肉としても好適である。中でも種々の電気化学用途により好ましく利用できる。電気化学用途としては、例えば、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置等が挙げられるが、中でも燃料電池が最も好ましい。
また、本発明の膜電極複合体とは、本発明の高分子電解質材料を高分子電解質膜や触媒層に含有する膜電極複合体を意味する。さらに、膜電極複合体とは、高分子電解質膜と電極が複合化された部品である。
かかる高分子電解質膜を燃料電池として用いる際の高分子電解質膜と電極の接合法については特に制限はなく、公知の方法(例えば、電気化学,1985, 53, p.269.記載の化学メッキ法、電気化学協会編(J. Electrochem. Soc.)、エレクトロケミカル サイエンス アンド テクノロジー (Electrochemical Science and Technology),1988, 135, 9, p.2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。
さらに、本発明の高分子電解質材料を使用した固体高分子型燃料電池の用途としては、特に限定されないが、移動体の電力供給源が好ましいものである。特に、携帯電話、パソコン、PDA、テレビ、ラジオ、ミュージックプレーヤー、ゲーム機、ヘッドセット、DVDプレーヤーなどの携帯機器、産業用などの人型、動物型の各種ロボット、コードレス掃除機等の家電、玩具類、電動自転車、自動二輪、自動車、バス、トラックなどの車両や船舶、鉄道などの移動体の電力供給源、据え置き型の発電機など従来の一次電池、二次電池の代替、もしくはこれらとのハイブリット電源として好ましく用いられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各物性の測定条件は次の通りである。また、本実施例中には化学構造式を挿入するが、該化学構造式は読み手の理解を助ける目的で挿入するものであり、ポリマーの重合成分の化学構造、正確な組成、並び方、スルホン酸基の位置、数、分子量などを必ずしも正確に表すわけではなく、これらに限定されるものでない。
(1)イオン交換容量
電解質膜のイオン交換容量は、中和滴定により算出した。手順は下記のとおりである。測定は3回以上行ってその平均をとるものとする。
(1) 試料をミルにより粉砕し、粒径を揃えるため、目50メッシュの網ふるいにかけ、ふるいを通過したものを測定試料とする。
(2) サンプル管(蓋付き)を精密天秤で秤量する。
(3) 前記(1)の試料 約0.1gをサンプル管に入れ、40℃で16時間、真空乾燥する。
(4) 試料入りのサンプル管を秤量し、試料の乾燥重量を求める。
(5) 塩化ナトリウムを30重量%メタノール水溶液に溶かし、飽和食塩溶液を調製する。
(6) 試料に前記(5)の飽和食塩溶液を25mL加え、24時間撹拌してイオン交換する。
(7) 生じた塩酸を0.02mol/L水酸化ナトリウム水溶液で滴定する。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液(0.1体積%)を2滴加え、薄い赤紫色になった点を終点とする。
(8) イオン交換容量は下記の式により求める。
イオン交換容量(mmol/g)=
〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/ml)×滴下量(ml)〕/試料の乾燥重量(g)
本発明の高分子電解質材料には本発明の目的を阻害しない範囲において、他の成分、例えば導電性若しくはイオン伝導性を有さない不活性なポリマーや有機あるいは無機の化合物が含有されていても構わない。
(2)重量平均分子量
ポリマーの重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー製HLC−8022GPCを、またGPCカラムとして東ソー製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒)にて、サンプル濃度0.1wt%、流量0.2mL/min、温度40℃で測定し、標準ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。
(3)プロトン伝導度
膜の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、25℃、相対湿度50〜80%の雰囲気中に取り出し、できるだけ素早く定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測定した。
測定装置としては、Solartron製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency Response Analyzer)を使用した。サンプルは、φ2mmおよびφ10mmの2枚の円形電極(ステンレス製)間に加重1kgをかけて挟持した。有効電極面積は0.0314cmである。サンプルと電極の界面には、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸)の15%水溶液を塗布した。25℃において、交流振幅50mVの定電位インピーダンス測定を行い、膜厚方向のプロトン伝導度を求めた。
(4)電解質膜の断面測定
電解質膜の断面を電子顕微鏡を用いて観察し、X線分析装置を用い、元素マッピングを行った。
測定装置としては、SEM((株)日立ハイテクノロジーズ、TM3000、SwiftED3000)、X線分析装置((株)日立ハイテクノロジーズ、SwiftED3000)を用いた。電解質膜を厚み方向の断面がとれるように、カッティング後、上記測定装置を用い、断面観察を行い、電解質の違いによる元素濃度の差から界面を判定した。
(5)発電評価
A.低加湿下での発電評価
市販の電極、BASF社製燃料電池用ガス拡散電極“ELAT(登録商標)LT120ENSI”5g/mPtを5cm角にカットしたものを1対準備し、燃料極、酸化極として電解質膜を挟むように対向して重ね合わせ、150℃、5MPaで3分間加熱プレスを行い、評価用膜電極複合化体を得た。
上記燃料電池セルをセル温度90℃、燃料ガス:水素、酸化ガス:空気、ガス利用率:水素70%/酸素40%、加湿条件;アノード側30%RH/カソード30%RH、背圧0.1MPa(両極)において電流−電圧(I−V)測定した。1A/cm時の電圧を読み取り評価した。
B.耐久性試験
上記セルを使用し、セル温度:90℃、燃料ガス:水素、酸化ガス:空気、ガス利用率:水素70%/酸素40%、加湿条件:水素ガス30%RH、空気:30%RHの条件で試験を行った。条件としては、OCVで1分間保持し、1A/cmの電流密度で2分間発電し、最後に水素ガスおよび空気の供給を停止して2分間発電を停止し、これを1サイクルとして繰り返す耐久性試験を実施した。耐久性試験前と3000サイクル後に上記水素透過電流の測定を実施しその差を調べた。また、この試験の負荷変動は菊水電子工業社製の電子負荷装置“PLZ664WA”を使用して行った。
合成例1
下記一般式(G1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン(K−DHBP)の合成
Figure 2013077554
攪拌器、温度計及び留出管を備えた 500mlフラスコに、4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノン49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp−トルエンスルホン酸1水和物0.50gを仕込み溶解する。その後78〜82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで加熱した。この反応液を室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mlで洗浄し分液後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mlを加え結晶を析出させ、濾過し、乾燥して2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン52.0gを得た。この結晶をGC分析したところ99.8%の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソランと0.2%の4,4′−ジヒドロキシベンゾフェノンであった。
合成例2
下記一般式(G2)で表されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの合成
Figure 2013077554
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10h反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記一般式(G2)で示されるジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。純度は99.3%であった。構造はH−NMRで確認した。不純物はキャピラリー電気泳動(有機物)およびイオンクロマトグラフィー(無機物)で定量分析を行った。
合成例3
撹拌機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた5Lの反応容器に、一般式(G1)として前記合成例1で得たK−DHBP90.4g(0.35mol、25mol%)、4,4’−ビスフェノール65.2g(東京化成試薬、0.35mol、25mol%)、一般式(G2)として前記合成例2で得たジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン248.3g(0.59mol、40mol%)、および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン31.2g(アルドリッチ試薬0.14mol、10mol%)を入れ、窒素置換後、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)1820g、トルエン350g、環状金属捕捉剤として18−クラウン−6 136.6g(和光純薬試薬)を加え、モノマーが全て溶解したことを確認後、炭酸カリウム195.8g(アルドリッチ試薬)を加え、環流しながら160℃で脱水後、昇温してトルエン除去し、200℃で1時間脱塩重縮合を行った。得られたポリマーの重量平均分子量は30万であった。次に重合原液の粘度が0.5Pa・sになるようにNMPを添加し重合原液を得た。
久保田製作所製インバーター・コンパクト高速冷却遠心機(型番6930にアングルローターRA−800をセット、25℃、30分間、遠心力20000G)で重合原液Aの直接遠心分離を行った。沈降固形物(ケーキ)と上澄み液(塗液)がきれいに分離できたので上澄み液を回収し、10μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターで加圧濾過しながらセパラブルフラスコに移した。次に、撹拌しながら80℃で減圧蒸留し、上澄み液の粘度が2Pa・sになるまでNMPを除去し、さらに5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製フィルターで加圧濾過して塗液Aを得た。
合成例4
デュポン(DuPont)社製20%“ナフィオン(登録商標)”n−プロパノール溶液100gに、エチレングリコールを80g添加し、減圧下でn−プロパノールを除去することにより溶媒置換し、ナフィオンのエチレングリコール溶液を得た。
合成例5(耐炎化ポリアクリロニトリルの不織布)
アルドリッチ社製のポリアクリロニトリル試薬(平均分子量150000)100gをジメチルホルムアミド450gとアセトン50gの混合溶媒に溶解し紡糸原液とした。次ぎに、カトーテック社製エレクトロスピニングユニットを使用し、電圧35kV、シリンジポンプ吐出速度0.05cc/min、トラバース速度50mm/min、ドラム式ターゲット(直径100mm)の周速度0.8m/min、シリンジとターゲット間の距離100mmの条件で電解紡糸を実施した。
得られたポリアクリロニトリル繊維の直径の平均は400nmであり、ターゲット上に繊維を捕集し厚み20μmのポリアクリロニトリル不織布を得た。
このポリアクリロニトリル不織布を空気雰囲気下の熱風オーブン中で230℃、1時間の熱処理を行い、厚み15μm、平均繊維径350nmの耐炎化ポリアクリロニトリル不織布を得た。
実施例1
合成例4で得たナフィオンのエチレングリコール溶液を基材である厚み125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)上に流延塗布し、その上に、合成例5で得た耐炎化ポリアクリロニトリルの不織布を貼り合わせて、耐炎化ポリアクリロニトリル不織布の空隙にナフィオン溶液を含浸させた。
次ぎに熱風乾燥機に投入し100℃で10分間予備乾燥した後、さらに合成例3で得た炭化水素系電解質溶液を流延塗布し、100℃で10分間、130℃で20分間乾燥した。 次に、膜状物をPETから剥離せずに、25℃の純水10分間浸漬した後、60℃の10重量%の硫酸に30分間浸漬し、イオン性基のプロトン交換を実施した。次に、この膜状物を洗浄液が中性になるまで純水で洗浄し、60℃で30分間乾燥し、積層高分子電解質膜を得た。フッ素系電解質と炭化水素系電解質の接合性は良好であった。また、得られた積層高分子電解質膜の断面観察から、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面が補強材中に存在することを確認した。
得られた積層高分子電解質膜のイオン交換容量は、2.1mmol/g、プロトン伝導度は80℃、相対湿度85%で70mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.1mS/cmであった。積層高分子電解質膜を使用した燃料電池の低加湿下での電圧は0.4V、発電耐久試験回数は5500回であった。
実施例2
補強材として耐炎化ポリアクリロニトリルの不織布の代わりに、厚み15μm、平均繊維径10μmのポリアクリロニトリル不織布を貼り合わせた以外は、実施例1と同様に行い、積層高分子電解質膜を得た。フッ素系電解質と炭化水素系電解質の接合性は良好であった。また、得られた積層高分子電解質膜の断面観察から、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面が補強材中に存在することを確認した。
得られた積層高分子電解質膜のイオン交換容量は、2.2mmol/g、プロトン伝導度は80℃、相対湿度85%で75mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.2mS/cmであった。積層高分子電解質膜を使用した燃料電池の低加湿下での電圧は0.46Vであり、発電耐久試験回数は5000回であった。
実施例3
補強材としてガーレ透気度300秒/100ml厚み15μmの延伸ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜を貼り合わせた以外は、実施例1と同様に行い、積層高分子電解質膜を得た。フッ素系電解質と炭化水素系電解質の接合性は良好であった。また、得られた積層高分子電解質膜の断面観察から、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面が補強材中に存在することを確認した。
得られた積層高分子電解質膜のイオン交換容量は、2.1mmol/g、プロトン伝導度は80℃、相対湿度85%で70mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.1mS/cmであった。積層高分子電解質膜を使用した燃料電池の低加湿下での電圧は0.45Vであり、発電耐久試験回数は5000回であった。
実施例4
合成例4で得たナフィオンのエチレングリコール溶液の代わりに、デュポン(DuPont)社製20%“ナフィオン(登録商標)”n−プロパノール溶液を用いた以外は、実施例1と同様に行ったが、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の接合性は、実施例1〜3にはやや劣るものの、概ね良かった。また、得られた積層高分子電解質膜の断面観察から、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面が補強材中に存在することを確認した。
得られた積層高分子電解質膜のイオン交換容量は、2.0mmol/g、プロトン伝導度は80℃、相対湿度85%で50mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.07mS/cmであった。積層高分子電解質膜を使用した燃料電池の低加湿下での電圧は0.42Vであり、発電耐久試験回数は4800回であった。
実施例5
補強材としてガーレ透気度200秒/100ml、厚み15μmの二軸配向ポリプロピレン多孔質膜を貼り合わせた以外は、実施例1と同様に行い、積層高分子電解質膜を得た。フッ素系電解質と炭化水素系電解質の接合性は良好であった。また、得られた積層高分子電解質膜の断面観察から、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面が補強材中に存在することを確認した。
得られた積層高分子電解質膜のイオン交換容量は、2.1mmol/g、プロトン伝導度は80℃、相対湿度85%で70mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.1mS/cmであった。積層高分子電解質膜を使用した燃料電池の低加湿下での電圧は0.46Vであり、発電耐久試験回数は5600回であった。
実施例6
補強材としてガーレ透気度150秒/100ml、厚み7μmの延伸ポリプロピレン多孔質膜を貼り合わせた以外は、実施例1と同様に行い、積層高分子電解質膜を得た。フッ素系電解質と炭化水素系電解質の接合性は良好であった。また、得られた積層高分子電解質膜の断面観察から、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面が補強材中に存在することを確認した。
得られた積層高分子電解質膜のイオン交換容量は、2.1mmol/g、プロトン伝導度は80℃、相対湿度85%で72mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.1mS/cmであった。積層高分子電解質膜を使用した燃料電池の低加湿下での電圧は0.46Vであり、発電耐久試験回数は5500回であった。
実施例7
耐炎化ポリアクリロニトリルの不織布の代わりに厚み10μm、平均繊維径10μmのポリエステル不織布を使用した以外は、実施例1と同様に行ったが、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の接合性は、良好であった。また、得られた積層高分子電解質膜の断面観察から、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面が補強材中に存在することを確認した。
得られた積層高分子電解質膜のイオン交換容量は、2.0mmol/g、プロトン伝導度は80℃、相対湿度85%で50mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.07mS/cmであった。積層高分子電解質膜を使用した燃料電池の低加湿下での電圧は0.41Vであり、発電耐久試験回数は5100回であった。
実施例8
耐炎化ポリアクリロニトリルの不織布の代わりに厚み12μm、平均繊維径50μmのポリエステル不織布を使用した以外は、実施例1と同様に行ったが、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の接合性は、実施例1〜7にはやや劣るものの、概ね良かった。また、得られた積層高分子電解質膜の断面観察から、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面が補強材中に存在することを確認した。
得られた積層高分子電解質膜のイオン交換容量は、2.0mmol/g、プロトン伝導度は80℃、相対湿度85%で50mS/cm、80℃、相対湿度25%で0.07mS/cmであった。積層高分子電解質膜を使用した燃料電池の低加湿下での電圧は0.42Vであり、発電耐久試験回数は4000回であった。
比較例1
合成例4で得たナフィオンのエチレングリコール溶液を基材である厚み125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)上に流延塗布した後、熱風乾燥機に投入し100℃で10分間予備乾燥した後、さらに合成例3で得た炭化水素系電解質溶液を流延塗布し、100℃で10分間、130℃で20分間乾燥したが、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の接合性が悪く、はがれてしまい、積層高分子電解質膜は作製できなかった。
比較例2
合成例5で得た耐炎化ポリアクリロニトリルの不織布を基材である厚み125μmのPETフィルム(東レ製“ルミラー(登録商標)”)上に設置し、その上に合成例4で得たナフィオンのエチレングリコール溶液を直接塗布し、耐炎化ポリアクリロニトリルの空隙にナフィオン溶液を含浸させた。 次ぎに熱風乾燥機に投入し100℃で10分間予備乾燥した後、さらに合成例3で得た炭化水素系電解質溶液を流延塗布し、100℃で10分間、130℃で20分間乾燥した。
次ぎに熱風乾燥機に投入し100℃で10分間予備乾燥した後、再び、合成例4で得たナフィオンのエチレングリコール溶液を塗布した。さらに合成例3で得た炭化水素系電解質溶液を流延塗布し、100℃で10分間、130℃で20分間乾燥した。 次に、膜状物をPETから剥離せずに、25℃の純水10分間浸漬した後、60℃の10重量%の硫酸に30分間浸漬し、イオン性基のプロトン交換を実施した。次に、この膜状物を洗浄液が中性になるまで純水で洗浄し、60℃で30分間乾燥し、積層高分子電解質膜を得た。得られた積層高分子電解質膜の断面観察から、補強材はフッ素系電解質中にのみ存在し、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の界面は、補強材中存在しないことが分かった。積層高分子電解質膜の形態は保っているものの、フッ素系電解質と炭化水素系電解質の接合性は悪く、膜の端部の一部がはがれてしまった。

Claims (5)

  1. フッ素系高分子電解質により形成される層と炭化水素系電解質により形成される層とが積層されてなる積層高分子電解質膜であって、積層高分子電解質膜は多孔質材料からなる補強材を有し、フッ素系高分子電解質並びに炭化水素系電解質が補強材に含浸されてなり、フッ素系高分子電解質により形成される層と炭化水素系電解質により形成される層との界面が補強材中に存在することを特徴とする積層高分子電解質膜。
  2. 炭化水素系電解質が加水分解性基を有するポリエーテルケトン系ポリマーである請求項1記載の積層高分子電解質膜。
  3. 請求項1記載の補強材が、繊維径10μm以下である不織布または透気度が1000sec/100cc以下である多孔質膜であることを特徴とする請求項1記載の積層高分子電解質膜。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の積層高分子電解質膜を用いて構成されたことを特徴とする固体高分子型燃料電池。
  5. 請求項1記載の積層高分子電解質膜を製造する方法であって、[1]炭化水素系電解質を製膜して第一の膜層を形成する工程と、該第一の膜層の上に補強材を積層する工程と、さらに補強材の上にフッ素系電解質を製膜する工程、もしくは[2]フッ素系電解質を製膜して第一の膜層を形成する工程と、該第一の膜層の上に補強材を積層する工程と、さらに補強材の上に炭化水素家系電解質を製膜する工程とを有し、フッ素系高分子電解質を製膜する工程において、フッ素系高分子電解質ポリマーの塗液が多価アルコールを含む塗液である積層高分子電解質膜の製造方法。
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