JP2021051996A - 積層高分子電解質膜およびそれを用いた触媒層付電解質膜、膜電極複合体および固体高分子型燃料電池 - Google Patents

積層高分子電解質膜およびそれを用いた触媒層付電解質膜、膜電極複合体および固体高分子型燃料電池 Download PDF

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和歩 村上
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大輔 出原
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浩明 梅田
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Tatsuhiro Inoue
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Abstract

【課題】低加湿条件下及び低温条件下においても優れたプロトン伝導性を有し、なおかつ機械強度及び物理的耐久性に優れる積層高分子電解質膜およびそれを用いた固体高分子型燃料電池を提供する。【解決手段】芳香族炭化水素系電解質により形成される層が積層されてなり、以下に記載する(i)及び(ii)を満たす電解質によって形成される層を積層体の少なくとも一方の最表層に有し、かつ、芳香族炭化水素系電解質と多孔質補強材とが複合化してなる複合層を少なくとも一層有する積層高分子電解質膜。(i)すべての芳香環に少なくとも1つの電子求引性基を含有する。(ii)下記一般式(S1)で表される構成単位を有するイオン性基を含有するセグメントと、下記一般式(S2)で表される構成単位を有するイオン性基を含有しないセグメントをそれぞれ1個以上含有するブロック共重合体。Arnは置換されても良い芳香環、Ynは2価の電子求引性基を表す。【選択図】なし

Description

本発明は、高出力、高エネルギー容量および長期耐久性を達成することができる実用性に優れた積層高分子電解質膜に関するものである。

燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって、電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも固体高分子形燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、小型移動機器、携帯機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池に替わり、携帯電話やパソコンなどへの搭載が期待されている。 燃料電池は通常、発電を担う反応の起こるアノードとカソードの電極と、アノードとカソード間のプロトン伝導体となる高分子電解質膜とが、膜電極複合体(以降、MEAと略称することがある。)を構成し、このMEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。高分子電解質膜は高分子電解質材料を主として構成される。

高分子電解質膜の要求特性として、低加湿プロトン伝導性を挙げることができる。自動車用燃料電池や家庭用燃料電池などは実用化に向けての低コスト化が検討されており、充分な低加湿プロトン伝導性を有する高分子電解質膜を使用することで80℃を越える高温で相対湿度60%以下の低加湿条件下で作動させることができ水管理システムの簡素化が可能となる。
従来、高分子電解質膜としてパーフルオロスルホン酸系ポリマーである“ナフィオン”(登録商標)(ケマーズ(株)製)が広く用いられてきた。“ナフィオン”(登録商標)はクラスター構造に起因するプロトン伝導チャネルを通じて、低加湿で高いプロトン伝導性を示すが、その一方で、多段階合成を経て製造されるため非常に高価であり、加えて、前述のクラスター構造により燃料クロスオーバーが大きいという課題があった。また、燃料電池作動条件では、乾湿サイクルが繰り返され、高分子電解質膜は膨潤収縮を繰り返す。その際、電解質膜はセパレータ等で拘束されているため、局所的な応力集中により、膜が破断し、膜の機械強度や物理的耐久性が失われるという問題があった。さらに軟化点が低く高温で使用できないという問題、使用後の廃棄処理の問題や材料のリサイクルが困難といった課題が指摘されてきた。
このような課題を克服するために、“ナフィオン”(登録商標)に替わり得る炭化水素系高分子電解質膜の開発が近年活発化している。例えば、特許文献1には、スルホン酸基が導入されていないセグメントおよびスルホン酸基が導入されたセグメントを有するブロック共重合体が検討されている。特許文献1によるとリンカーによってこれらセグメントを結合したポリエーテルケトン主鎖骨格からなるブロック共重合体が提案されている。
しかしながら一般に、炭化水素系高分子電解質膜はパーフルオロスルホン酸系高分子電解質膜と比べ、酸化雰囲気下における化学的、電気化学的耐久性が劣る傾向があり、燃料電池車運転中に安定に機能する高い耐久性を有することが求められている。加えて、炭化水素系高分子電解質膜は乾湿サイクルにおける寸法変化が大きい傾向があり、物理的耐久性向上のため寸法変化を低減することが重要である。 特許文献2によると、ブレンステッド酸基を有するセグメントにおいて、芳香環を連結する少なくとも1つの基を電子求引性基とすることで、芳香環の電子密度を下げブレンステッド酸基の脱離を抑制できることを記載している。
特許文献3には、芳香族炭化水素系電解質をフッ素系多孔質膜で補強することで、乾湿サイクルにおける寸法変化低減効果を提案している。
国際公開第2013/027724号 特開2012−99444号公報 国際公開第2016/148017号
しかしながら、特許文献1、3の実施例に記載の電解質は、相分離構造により高いプロトン伝導度を達成したが、芳香環周りに電子供与性基のみが結合した構造を含有するため、芳香環の電子密度を高め、隣接のエーテル部位での主鎖切断およびスルホン酸基の脱離による耐久性の低下を招く。
特許文献2では、芳香環を連結する少なくとも1つの基を電子求引性基とすることで、ブレンステッド酸基の脱離を抑制している。しかしながらイオン性基が導入されていないセグメントに電子求引性基を導入する効果について記載はなく、電子求引性基が結合していない芳香環が隣接する部位で主鎖切断による耐久性低下の懸念がある。さらに電子求引性基をポリマー鎖に導入した場合、水との親和性が向上するため寸法変化率が大きくなり、機械的耐久性低下が懸念される場合がある。
本発明は、かかる従来技術の背景を鑑み、低加湿条件下及び低温条件下においても優れたプロトン伝導性を有し、なおかつ機械強度及び物理的耐久性に優れる上に、固体高分子燃料電池としたときに高出力、高エネルギー密度、長期耐久性を達成することができる積層高分子電解質膜およびそれを用いた触媒層付電解質膜、膜電極複合体および固体高分子型燃料電池を提供せんとするものである。
上記課題を解決するため、本発明の積層高分子電解質膜は、次の構成を有する。すなわち、
芳香族炭化水素系電解質により形成される層が積層されてなる積層高分子電解質膜であって、以下に記載する(i)及び(ii)を満たす電解質によって形成される層(以下、(X)層)を積層体の少なくとも一方の最表層に有し、かつ、芳香族炭化水素系電解質と多孔質補強材とが複合化してなる複合層(以下、(Y)層)を少なくとも一層有することを特徴とする積層高分子電解質膜、である。
(i)すべての芳香環に少なくとも1つの電子求引性基を含有する。
(ii)下記一般式(S1)で表される構成単位を有するイオン性基を含有するセグメントと、下記一般式(S2)で表される構成単位を有するイオン性基を含有しないセグメントをそれぞれ1個以上含有するブロック共重合体。
Figure 2021051996
式(S1)中、Ar〜Arは任意に置換されても良い芳香環を表す。Y、Yそれぞれ独立に任意の2価の電子求引性基を表す。Ar〜Arのうち少なくとも1つはイオン性基を有する。*は(S1)または他の構成単位との結合を表す。
Figure 2021051996
式(S2)中、Ar〜Arは任意に置換されても良い芳香環を表す。ただ
しAr〜Arはいずれもイオン性基を有さない。Y、Yそれぞれ独立に任意の2価の電子求引性基を表す。*は(S2)または他の構成単位との結合を表す。
本発明の触媒層付電解質膜は、次の構成を有する。すなわち、
上記積層高分子電解質膜に触媒層を積層してなることを特徴とする触媒層付電解質膜、である。
本発明の膜電極複合体は、次の構成を有する。すなわち、
上記積層高分子電解質膜または上記触媒層付電解質膜と電極を用いて構成されてなることを特徴とする膜電極複合体、である。
本発明の固体高分子型燃料電池は、次の構成を有する。すなわち、
上記積層高分子電解質膜、上記触媒層付電解質膜および上記膜電極複合体のいずれかを用いて構成されてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池、である。
本発明の積層高分子電解質膜は、前記一般式(S1)で表される構成単位が、下記式(S3)で表される構成単位であることが好ましい。
Figure 2021051996
式(S3)中、Y、Yは任意の2価の電子求引性基を表す。M〜Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンを表し、M〜Mは2種類以上の基を表しても良い。n〜nは0または1であるが、少なくとも1つは1である。*は(S3)または他の構成単位との結合を表す。
本発明の積層高分子電解質膜は、前記一般式(S2)で表される構成単位が、下記式(S4)で表される構成単位であることが好ましい。
Figure 2021051996
式(S4)中、Y、Yは任意の2価の電子求引性基を表す。*は(S4)または他の構成単位との結合を表す。
本発明の積層高分子電解質膜は、前記電子求引性基Y、Y、Y、Yがいずれもケトン基であることが好ましい。
本発明の積層高分子電解質膜は、積層高分子電解質膜を形成する前記芳香族炭化水素系電解質において、複合層を形成する芳香族炭化水素系電解質と、少なくとも一方の最表層を形成する芳香族炭化水素系電解質とが、異なるイオン交換容量を有することが好ましい。
本発明の積層高分子電解質膜は、積層高分子電解質膜を形成する前記芳香族炭化水素系電解質において、複合層を形成する芳香族炭化水素系電解質が、少なくとも一方の最表層を形成する芳香族炭化水素系電解質より、高いイオン交換容量を有することが好ましい。
本発明の積層高分子電解質膜は、前記多孔質補強材が、含フッ素高分子多孔質膜であることが好ましい。
本発明の積層高分子電解質膜は、前記多孔質補強材が、炭化水素系高分子化合物からなるナノファイバー不織布であることが好ましい。
本発明の積層高分子電解質膜は低加湿条件下及び低温条件下においても優れたプロトン伝導性を有し、なおかつ機械強度及び物理的耐久性に優れる。したがって、本発明の積層高分子電解質膜を固体高分子燃料電池に用いたときに高出力、高エネルギー密度、長期耐久性を達成することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
<芳香族炭化水素系電解質>

本発明において、前述の(X)層を形成する前述の(i)及び(ii)を満たす電解質(以下、単に「(X)層電解質」という場合がある。)として使用し得るブロック共重合体は、イオン性基を含有するセグメントと、イオン性基を含有しないセグメントが結合することで構成される。ここで、セグメントとは、特定の性質を示す繰り返し単位からなる共重合体ポリマー鎖中の部分構造であって、分子量が2,000以上のものを表す。以下、イオン性基を含有するセグメントもしくはポリマーを(SE1)、イオン性基を含有しないセグメントもしくはポリマーを(SE2)と表記する。なお本発明において、「イオン性基を含有しないセグメント」と記載するが、当該セグメント(SE2)は本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲でイオン性基を少量含んでいても構わない。
以下「イオン性基を含有しない」は同様の意味で用いる場合がある。
イオン性基を含有するセグメント(SE1)とイオン性基を含有しないセグメント(SE2)のような非相溶な2種以上のセグメントからなるブロック共重合体では、共連続様の相分離構造を発現し得る。このような共連続様の相分離構造は、親水性ドメインおよび疎水性ドメインがいずれも連続相を形成するため、連続したプロトン伝導チャネルが形成されることによりプロトン伝導性に優れる高分子電解質膜を得ることができる。ここで、ドメインとは、1本または複数のポリマー鎖において、類似するセグメントが凝集してできた塊のことを意味する。
本発明に使用する(X)層電解質は、化学構造として、イオン性基を含有するセグメント(SE1)とイオン性基を含有しないセグメント(SE2)中に、それぞれ前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位を含有する。そうすることによって、化学的耐久性や物理的耐久性と優れたイオン伝導性、特に、低加湿条件下においても高いプロトン伝導性を実現することができる。
Figure 2021051996
式(S1)中、Ar〜Arは任意に置換されても良い芳香環を表す。Y
、Yそれぞれ独立に任意の2価の電子求引性基を表す。Ar〜Arのうち少なくとも1つはイオン性基を有する。*は(S1)または他の構成単位との結合を表す。
Figure 2021051996
式(S2)中、Ar〜Arは任意に置換されても良い芳香環を表す。ただ
しAr〜Arはいずれもイオン性基を有さない。Y、Yそれぞれ独立に任意の2価の電子求引性基を表す。*は(S2)または他の構成単位との結合を表す。

ここで、Ar〜Arとして好ましい2価のアリーレン基は、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレンジイル基などの炭化水素系アリーレン基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルなどのヘテロアリーレン基などが挙げられるが、これらに限定されない。
Ar〜Arのうち少なくとも1つはイオン性基を有する。また、イオン性基以外の基で置換されていてもよいが、無置換である方がプロトン伝導性、化学的安定性、物理的耐久性の点でより好ましい。さらに、好ましくはフェニレン基とイオン性基を含有するフェニレン基、最も好ましくはp−フェニレン基とイオン性基を含有するp−フェニレン基である。
電子吸引性基Y〜Yは、結合している芳香環の電子密度を減少させる置換基であれば、特に限定されるものではなく、例えば−CO−、−CONH−、−(CF−(nは1〜10の整数)、−C(CF−、−COO−、−SO−、−SO−、−PO(R)−(Rは任意の有機基)などが挙げられる。中でも、−CO−、−(CF−(nは1〜10の整数)、−C(CF−、−SO−、−PO(R)−(Rは任意の有機基)が好ましく、化学的安定性とコストの点から、−CO−、−SO−がより好ましく、物理的耐久性の点から−CO−が最も好ましい。
本発明の(X)層電解質に使用されるイオン性基は、負電荷を有する原子団が好ましく、プロトン交換能を有するものが好ましい。
このような官能基としては、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。ここで、スルホン酸基は下記一般式(f1)で表される基、スルホンイミド基は下記一般式(f2)で表される基[一般式(f2)中、Rは任意の有機基を表す。]、硫酸基は下記一般式(f3)で表される基、ホスホン酸基は下記一般式(f4)で表される基、リン酸基は下記一般式(f5)または(f6)で表される基、カルボン酸基は下記一般式(f7)で表される基を意味する。
Figure 2021051996
かかるイオン性基は、前記官能基(f1)〜(f7)が塩となっている場合を含むものとする。このような塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR (Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。金属カチオンの場合、その価数等特に限定されるものではなく、使用することができる。好ましい金属イオンの具体例を挙げるとすれば、Li、Na、K、Rh、Mg、Ca、Sr、Ti、Al、Fe、Pt、Rh、Ru、Ir、Pd等が挙げられる。中でも、本発明に用いるブロック共重合体としては、安価で、容易にプロトン置換可能なNa、K、Liがより好ましく使用される。
これらのイオン性基は高分子電解質材料中に2種類以上含むことができ、組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基を有することがより好ましく、原料コストの点から少なくともスルホン酸基を有することが最も好ましい。
本発明で使用する(X)層電解質がスルホン酸基を有する場合、そのイオン交換容量は、プロトン伝導性と耐水性のバランスの点から、0.1〜5meq/gが好ましく、より好ましくは1.5meq/g以上、さらに好ましくは1.8meq/g以上、最も好ましくは2.1meq/g以上である。また、(X)層電解質のイオン交換容量は3.5meq/g以下がより好ましく、さらに好ましくは3.0meq/g以下である。イオン交換容量が上記好ましい範囲の場合には、プロトン伝導性が十分で、一方、耐水性にも優れる。
本発明の(X)層電解質に使用されるブロック共重合体としては、イオン性基を含有するセグメント(SE1)と、イオン性基を含有しないセグメント(SE2)のモル組成比(SE1/SE2)が、0.2以上であることがより好ましく、0.33以上がさらに好ましく、0.5以上が最も好ましい。また、モル組成比(SE1/SE2)は5以下がより好ましく、3以下がさらに好ましく、2以下が最も好ましい。モル組成比SE1/SE2が、上記好ましい範囲の場合には、本発明の効果が十分となり、低加湿条件下でのプロトン伝導性が不足することなく、一方、耐熱水性や物理的耐久性にも優れる。
イオン性基を含有するセグメント(SE1)のイオン交換容量は、低加湿条件下でのプロトン伝導性の点から、高いことが好ましく、より好ましくは2.5meq/g以上、さらに好ましくは、3meq/g以上、最も好ましくは3.5meq/g以上である。また、6.5meq/g以下がより好ましく、5meq/g以下がさらに好ましく、最も好ましいのは4.5meq/g以下である。イオン性基を含有するセグメント(SE1)のイオン交換容量が上記好ましい範囲の場合には、低加湿条件下でのプロトン伝導性が不足することなく、一方、耐熱水性や物理的耐久性にも優れる。
イオン性基を含有しないセグメント(SE2)のイオン交換容量は、耐熱水性、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の点から、低いことが好ましく、より好ましくは1meq/g以下、さらに好ましくは0.5meq/g、最も好ましくは0.1meq/g以下である。イオン性基を含有しないセグメント(SE2)のイオン交換容量が上記好ましい範囲の場合には、耐熱水性、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性に優れた構造となる。
ここで、イオン交換容量とは、高分子電解質の単位乾燥重量当たりに導入されたスルホン酸基のモル量であり、この値が大きいほどスルホン化の度合いが高いことを示す。イオン交換容量は、元素分析、中和滴定法等により測定が可能である。元素分析法を用い、S/C比から算出することもできるが、スルホン酸基以外の硫黄源を含む場合などは測定することが難しい。従って、本発明においては、イオン交換容量は、中和滴定法により求めた値と定義する。
中和滴定の測定は、以下のとおり行う。測定は3回以上行ってその平均値を取る。
(1)プロトン置換し、純粋で十分に洗浄した電解質膜の膜表面の水分を拭き取った後、100℃にて12時間以上真空乾燥し、乾燥重量を求める。
(2)電解質に5重量%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12時間静置してイオン交換する。
(3)0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定する。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v%を加え、薄い赤紫色になった点を終点とする。
(4)イオン交換容量は下記の式により求める。
イオン交換容量(meq/g)=〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/mL)×滴下量(mL)〕/試料の乾燥重量(g)
イオン性基を含有しないセグメント(SE2)が含有する前記一般式(S2)で表される構成単位のより好ましい具体例としては、原料入手性の点で、下記一般式(P1)で表される構成単位が挙げられる。中でも、結晶性による機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の点から、下記式(S4)で表される構成単位がさらに好ましい。イオン性基を含有しないセグメント(SE2)中に含まれる前記一般式(S2)で表される構成単位の含有量としては、より多い方が好ましく、20モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が最も好ましい。イオン性基を含有しないセグメント(SE2)中に含まれる前記一般式(S2)で表される構成単位の含有量が上記好ましい範囲の場合には、結晶性による機械強度、寸法安定性、物理的耐久性に対する本発明の効果が十分となる。
Figure 2021051996
(式(P1)および(S4)中、Y、Yはそれぞれ独立に任意の2価の電子求引性基を表す。)
イオン性基を含有するセグメント(SE1)が含有する前記一般式(S1)で表される構成単位のより好ましい具体例としては、原料入手性の点で、下記一般式(P2)で表される構成単位が挙げられる。中でも、下記式(S3)で表される構成単位が最も好ましい。イオン性基を含有するセグメント(SE1)中に含まれる一般式(S3)で表される構成単位の含有量としては、より多い方が好ましく、20モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が最も好ましい。イオン性基を含有するセグメント(SE1)中に含まれる一般式(S1)で表される構成単位の含有量が上記好ましい範囲の場合には、化学的安定性と低加湿条件下でのプロトン伝導性に対する本発明の効果が十分となる。
Figure 2021051996
(式(P2)および(S4)中、Y、Yは任意の2価の電子求引性基を表す
。M〜Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンを表し、M〜Mは2種類以上の基を表しても良い。n〜nは0または1であるが、n〜nのうち少なくとも1つは1である。)

本発明で使用する(X)層電解質は、前記一般式(S2)で表される構成単位を含有し、イオン性基を含有しないセグメント(SE2)を有するブロック共重合体から構成される。当該イオン性基を含有しないセグメント(SE2)は、結晶性を示すセグメントであるため、少なくともイオン性基を含有しないセグメント(SE2)に保護基を導入し、一時的に結晶性を抑制してもよい。ブロック共重合体では、ランダム共重合体よりも、ドメインを形成したポリマーの結晶化により、加工性が不良となる傾向があるので、少なくともイオン性基を含有しないセグメント(SE2)に保護基を導入し、加工性を向上させることが好ましく、イオン性基を含有するセグメント(SE1)についても、加工性が不良となる場合には保護基を導入することが好ましい。
本発明に使用する保護基の具体例としては、有機合成で一般的に用いられる保護基が挙げられ、該保護基とは、後の段階で除去することを前提に、一時的に導入される置換基であり、反応性の高い官能基を保護し、その後の反応に対して不活性とするものであり、反応後に脱保護して元の官能基に戻すことのできるものである。すなわち、保護される官能基と対となるものであり、例えばt−ブチル基を水酸基の保護基として用いる場合があるが、同じt−ブチル基がアルキレン鎖に導入されている場合は、これを保護基とは呼ばない。保護基を導入する反応を保護(反応)、除去する反応を脱保護(反応)と呼称される。
このような保護反応としては、例えば、セオドア・ダブリュー・グリーン(Theodora W. Greene)、「プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス」(Protective Groups in Organic Synthesis)、米国、ジョン ウイリー アンド サンズ(John Wiley & Sons, Inc)、1981、に詳しく記載されており、これらが好ましく使用できる。保護反応および脱保護反応の反応性や収率、保護基含有状態の安定性、製造コスト等を考慮して適宜選択することが可能である。また、重合反応において保護基を導入する段階としては、モノマー段階からでも、オリゴマー段階からでも、ポリマー段階でもよく、適宜選択することが可能である。
保護反応の具体例を挙げるとすれば、ケトン部位をケタール部位で保護/脱保護する方法、ケトン部位をケタール部位のヘテロ原子類似体、例えばチオケタール、で保護/脱保護する方法が挙げられる。これらの方法については、前記「プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス」(Protective Groups in Organic Synthesis)のチャプター4に記載されている。また、スルホン酸と可溶性エステル誘導体との間で保護/脱保護する方法、芳香環に可溶性基としてt−ブチル基を導入および酸で脱t−ブチル化して保護/脱保護する方法等が挙げられる。しかしながら、これらに限定されることなく、保護基であれば好ましく使用できる。一般的な溶剤に対する溶解性を向上させる点では、立体障害が大きいという点で脂肪族基、特に環状部分を含む脂肪族基が保護基として好ましく用いられる。
保護反応としては、反応性や安定性の点で、さらに好ましくは、ケトン部位をケタール部位で保護/脱保護する方法、ケトン部位をケタール部位のヘテロ原子類似体、例えばチオケタール、で保護/脱保護する方法である。本発明の高分子電解質材料および高分子電解質膜において、保護基を含む構成単位として、より好ましくは下記一般式(U1)および(U2)から選ばれる少なくとも1種を含有するものである。
Figure 2021051996
(式(U1)および(U2)において、Ar〜Ar12は任意の2価のアリーレン基、RおよびRはHおよびアルキル基から選ばれた少なくとも1種の基、Rは任意のアルキレン基、EはOまたはSを表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。式(U1)および(U2)で表される基は任意に置換されていてもよい。*は一般式(U1),(U2)または他の構成単位との結合部位を表す。)
なかでも、化合物の臭いや反応性、安定性等の点で、前記一般式(U1)および(U2)において、EがOである、すなわち、ケトン部位をケタール部位で保護/脱保護する方法が最も好ましい。
(X)層電解質は、イオン性基を含有するセグメント(SE1)とイオン性基を含有しないセグメント(SE2)中に、それぞれ前記一般式(S1)および(S2)で表される構成単位以外の芳香環に少なくとも1つの電子求引性基を含有する構成単位を有していても良い。電子求引性基を含有する芳香環は、置換基として水素原子のみを有する芳香環と比較して、芳香環上の電子密度が減少したものとなる。電子密度が減少することで、イオン性基を含有するセグメント(SE1)において、芳香環に結合したイオン性基の脱離を抑制することができる。さらにそれのみならずイオン性基を含有するセグメント(SE1)とイオン性基を含有しないセグメント(SE2)のいずれにおいて、芳香環に結合したエーテル部位での主鎖切断を抑制することが可能である。
本発明の積層高分子電解質膜は、前述の(i)及び(ii)を満たすことを特徴とする(X)層電解質によって形成される層を電解質膜の少なくとも一方の最表層に有することで、燃料電池運転中における強い電気化学的、化学的酸化雰囲気下から電解質の内側の層を保護し、高い酸化耐久性を実現する。
本発明において、補強層(Y)層を形成する芳香族炭化水素系電解質(以下、単に「(Y)層電解質」という場合がある。)は、特に構造限定されるものでなく、主鎖骨格としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドスルホンが挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含む。また、芳香族炭化水素系電解質の主鎖骨格は、上記のポリマー構造を複数含むポリマー構造であってもよい。最表層と類似した骨格を持つことで強固な界面となることから、特にポリエーテルケトン系ポリマーが好ましい。発電性能と物理的耐久性両立の点から、ブロック共重合体またはグラフト共重合体が好ましい。ブロック共重合体またはグラフト共重合体を用いることで、微細なドメイン(類似するセグメントもしくはポリマーが凝集してできた塊)を有する相分離構造の形成が可能となり、より優れた発電性能、物理的耐久性が達成できる。さらに、より均一な相分離構造を形成できることから、ブロック共重合体であることが最も好ましい。
本発明の(Y)層電解質に使用されるイオン性基は前述の(X)層電解質と同様の理由で、スルホン酸基であることが最も好ましい。
(Y)層電解質がスルホン酸基を有する場合、そのイオン交換容量は、プロトン伝導性と耐水性のバランスの点から、0.1〜5meq/gが好ましく、さらに好ましくは0.1〜4meq/gである。また、(Y)層電解質のイオン交換容量は4meq/g以下がより好ましく、さらに好ましくは3meq/g以下である。(Y)層電解質のイオン交換容量が上記好ましい範囲の場合には、プロトン伝導性が不足することなく、一方、耐水性にも優れる。
<多孔質補強材>
本発明において、多孔質補強材には、不織布、抄紙、多孔質膜などが挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。特に、本発明では不織布、抄紙、多孔質膜など材料が分断されず接触、または融着、または一体化されている連続層構造を形成していることが好ましく、高分子電解質が、積層高分子電解質膜の表裏に連続的につながる様に充填される空隙を有することが好ましい。連続層を形成することにより寸法変化抑制効果などがより高くなる。これらの補強材の中でも、電解質の含浸性の観点から、不織布や多孔質膜がよりに好ましい。フッ素原子含有高分子は一般的に疎水性の化合物であるため、高分子電解質と複合化することにより、電解質膜に耐水性を付与し、吸水時の寸法変化を抑制することができるため、フッ素原子含有高分子多孔質膜が特に好ましい。含フッ素高分子多孔質基材の材質としてのフッ素原子含有高分子としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリビニリデンジフルオリド(PVdF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、パーフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、エチレンクロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)などが挙げられ、耐水性の観点から、PTFE、ポリヘキサフルオロプロピレン、FEP、PFAが好ましく、分子配向により高い機械強度を有することから、PTFEが最も好ましい。
不織布を補強材として使用する場合は、直径10μm以下の繊維を主体とすることが好ましく、直径5μm以下の繊維を主体とすることがさらに好ましい。ここでの主体とは電子顕微鏡などで観察した場合、観察視野内の繊維の50%以上を占めるという意味である。5μm以下の繊維を主体とすることで複合化高分子電解質膜の薄膜化が可能でありプロトン伝導性の観点から好ましい。
また、多孔質膜を補強材として用いる場合、多孔質膜は、空隙率が60%以上、透気度が1,000秒/100cc以下であることが好ましく、50秒/100cc以下であることがより好ましい。
積層高分子電解質膜に用いる多孔質膜の空隙率Y1(体積%)は使用する高分子電解質のイオン性基密度によって適宜設定できるが、高分子電解質溶液の充填の容易さの観点から60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。空隙率が上記好ましい範囲の場合には、高分子電解質溶液の充填が内部まで到達してプロトン伝導パスの低下を防止できる。また空隙率の上限は製膜工程で問題がなければ特に限定されない。製膜工程の塗工速度、張力、製膜機の搬送方式のスペックにより適宜設定できるが、張力によるフィルムが伸びや縦じわの発生および破断を防止する観点から95%以下が好ましい。
なお、多孔質膜の空隙率Y1(体積%)は下記の数式によって求めた値と定義する。
Y1=(1−Db/Da)×100
(ここで、Daは多孔質膜を構成する材料の比重、Dbは空隙部分を含む多孔質膜全体の比重である。)
積層高分子電解質膜に用いる多孔質膜の厚みは、目的とする複合化高分子電解質膜の膜厚により適宜決定できるが、1〜100μmであることが実用上好ましい。フィルム厚みが上記好ましい範囲の場合、製膜工程及び二次加工工程における張力によってもフィルムが伸びにくく、縦じわの発生や、破断が起こりにくい。一方、高分子電解質の充填が十分でプロトン伝導性が低下しにくい。
<複合層>
本発明の積層高分子電解質膜は、前述の(Y)層電解質を前述の多孔質補強材と複合化してなる複合層を有するものである。複合化とは、多孔質補強材の空隙に電解質が充填されて固まることで、電解質と多孔質補強材とが一体化することを意味する。
複合層における(Y)層電解質の充填率は50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましい。複合層における(Y)層電解質の充填率が上記好ましい範囲の場合、十分なプロトンの伝導パスを形成し、高い発電性能を達成できる。
前述の(X)層電解質によって形成される(X)層は、芳香環に少なくとも1つの電子求引性基を有する電解質からなり水との親和性が高くなるため、(X)層単体の場合、寸法変化率が大きくなり機械的耐久性が低下することが懸念される。本発明の積層高分子電解質膜は、複合層(Y)層を有することで、面内方向の寸法変化率が低減し、機械的耐久性が向上する。
寸法変化率とは、乾燥状態における高分子電解質膜の寸法と湿潤状態における高分子電解質膜の寸法の変化を表す指標であり、具体的な測定は実施例第(3)項に記載の方法で行う。面内方向の寸法変化が少ないことにより、例えば燃料電池に用いた際に、乾湿サイクル時に電解質膜のエッジ部分等に発生する膨潤収縮によるストレスが低減され、耐久性を向上させることができる。積層高分子電解質膜の面内方向の寸法変化率λxyは10%以下であることが好ましく、8%以下であることがより好ましく、5%以下であることが最も好ましい。
また、本発明の積層高分子電解質膜は、複合層を有することで、面内方向の寸法変化率の異方性を小さくすることができる。寸法変化率の異方性が大きい場合、燃料電池のセルデザインを制約したり、寸法変化の大きい方向と直交する方向の電解質膜のエッジに膨潤収縮によるストレスが集中し、その部分から電解質膜の破断が始まりやすくなったりすることがある。複合高分子電解質膜の面内方向における、TD方向の寸法変化率λTDに対するMD方向の寸法変化率λMDの比λMD/λTDは、0.5<λMD/λTD<2.0を満たすことが好ましい。
また、同様の理由により、本発明の複合高分子電解質膜は、弾性率および降伏応力のMD/TD方向の異方性も小さくすることができる。
多孔質基材として含フッ素系高分子多孔質膜を使用する場合、高分子電解質と多孔質基材との接合性向上効果が得られることから、フッ素系界面活性剤を(Y)層電解質溶液に混合することが好ましい。(X)層と(Y)層が直接積層されてなる積層高分子電解質膜の場合、含フッ素系高分子多孔質膜が(Y)層から(X)層積層面へ露出している場合があるため、(X)層電解質溶液にもフッ素系界面活性剤を混合することが強固な接合界面を形成する観点からより好ましい。
<積層高分子電解質膜>
本発明の積層高分子電解質膜は、前述の芳香族炭化水素系電解質と補強材とが複合化してなる複合層:(Y)層を有し、さらに最表層に前述の最表層電解質によって形成される層:(X)層を有するものである。積層される層の数は特に限定するものでなく(X)層、(Y)層以外の層が積層されていても良いが、多ければコスト面でデメリットになる点から5層以下が好ましく、(Y)層に(X)層が直接積層された3層以下がより好ましい。
本発明の積層高分子電解質膜は、(Y)層を形成する電解質、(X)層を形成する電解質、3層以上の積層を有する場合、さらに積層を形成する電解質において、それぞれ異なるイオン交換容量を有する電解質を用いても良い。補強材に由来する質量分があるため、補強材を含まない相と比較し、補強材との複合層のイオン交換容量は低下する。このため複合層を有する電解質膜では、複合層を有さない膜と比較してプロトン伝導度が低下する。補強材を含むことによるイオン交換容量の低下を抑制するために、複合層である(X)層を形成する電解質は、(Y)層を形成する電解質よりも大きいイオン交換容量を有することが、プロトン伝導性の観点から好ましい。
本発明の積層高分子電解質膜の膜厚としては、好ましくは1〜2,000μmのものが好適に使用される。実用に耐える膜の強度を得るには1μmより厚い方がより好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2,000μmより薄い方が好ましい。かかる膜厚のさらに好ましい範囲は3〜500μm、特に好ましい範囲は5〜250μmである。
(X)層の膜厚としては、電気化学的及び化学的耐久性の観点から、0.1μm〜50μmが好ましく、1μm〜10μmがより好ましい。(X)層が上記好ましい範囲の場合、酸化的耐久性に優れ、(Y)層により(X)層の寸法変化率を抑制することができる。
(Y)層の膜厚としては、1〜50μmが好ましく、3μm〜30μmがより好ましい。(Y)層が上記好ましい範囲の場合、電解質膜の物理的耐久性に優れ、膜抵抗を適度に制御できるので優れた発電性能を達成できる。
また、本発明の積層高分子電解質膜は、機械的強度の向上およびイオン性基の熱安定性向上、耐水性向上、耐溶剤性向上、耐ラジカル性向上、塗液の塗工性の向上、保存安定性向上などの目的のために、架橋剤や通常の高分子化合物に使用される結晶化核剤、可塑剤、安定剤、離型剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、無機微粒子などの添加剤を、本発明の目的に反しない範囲で含有するものであってもよい。
<積層高分子電解質膜の製造方法>
本発明における積層高分子電解質膜は製造方法の一例を説明する。本発明の積層高分子電解質膜の製造方法は芳香族炭化水素系電解質:(Y)層電解質を製膜して第一の膜層を形成する工程と、該第一の膜層の上に補強材を積層する工程と、さらに補強材の上に前述の(i)及び(ii)を満たす電解質:(X)層電解質を流延塗布して製膜する工程とを有する。該補強材上に該塗液を流延塗布して製膜する工程は、該塗液を含浸した多孔質材料中の溶媒の一部を除去した後でもよいし、溶媒の一部を除去する前でもよい。
必要な固形分濃度に調製したポリマー溶液を常圧の濾過もしくは加圧濾過などに供し、高分子電解質溶液中に存在する異物を除去することは強靱な膜を得るために好ましい方法である。ここで用いる濾材は特に限定されるものではないが、ガラスフィルターや金属性フィルターが好適である。該濾過で、ポリマー溶液が通過する最小のフィルターの孔径は、1μm以下が好ましい。濾過を行うと異物の混入を許さず、膜破れの発生を防ぎ、耐久性が十分となる。
(X)層電解質及び(Y)層電解質の溶液に使用する溶媒は、ポリマー種によって適宜選択できる。例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルが好適に用いられ、単独でも二種以上の混合物でもよい。
積層高分子電解質膜の製膜に使用する支持基材としては、特に制限なく公知のものが使用できるが、例えば、ステンレスなどの金属からなるエンドレスベルトやドラム、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホンなどのポリマーからなるフィルム、硝子、剥離紙などが挙げられる。金属は表面に鏡面処理を施したり、ポリマーフィルムは塗工面にコロナ処理を施したり易剥離処理を施したりして使用することが好ましい。さらに、ロール状に連続塗工する場合は、塗工面の裏に易剥離処理を施し、 巻き取った後に電解質膜と塗工基材の裏側が接着するのを防止することもできる。フィルムの場合、厚みは特に限定されるものでないが、50μm〜600μmがハンドリングの観点から好ましい。
流延塗工方法としては、ナイフコート、ダイレクトロールコート、マイヤーバーコート、グラビアコート、リバースコート、エアナイフコート、スプレーコート、刷毛塗り、ディップコート、ダイコート、バキュームダイコート、カーテンコート、フローコート、スピンコート、スクリーン印刷、インクジェットコートなどの手法が適用できる。含浸時に減圧や加圧、高分子電解質溶 液の加温、基材や含浸雰囲気の加温などを実施し、含浸性の向上を図ることも、プロトン伝導性の向上や生産性の向上に好適に用いられる。
膜厚は、塗工方法により制御できる。例えば、コンマコーターやダイレクトコーターで塗工する場合は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができ、スリットダイコートでは吐出圧や口金のクリアランス、口金と基材のギャップなどで制御することができる。
本発明の積層高分子電解質膜は、種々の用途に適用可能である。例えば、人工皮膚などの医療用途、ろ過用途、耐塩素性逆浸透膜などのイオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途、加湿膜、防曇膜、帯電防止膜、脱酸素膜、太陽電池用膜、ガスバリアー膜に適用可能である。中でも種々の電気化学用途により好ましく利用できる。電気化学用途としては、例えば、燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置、水素圧縮装置等が挙げられる。
固体高分子形燃料電池は、電解質膜として水素イオン伝導性高分子電解質膜を用い、その両面に触媒層、電極基材及びセパレータが順次積層された構造となっている。
このうち、電解質膜の両面に触媒層を積層させたもの(即ち触媒層/電解質膜/触媒層の層構成のもの)は触媒層付電解質膜(CCM)と称され、さらに電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散基材を順次積層させたもの(即ち、ガス拡散基材/触媒層/電解質膜/触媒層/ガス拡散基材の層構成のもの)は、膜電極複合体(MEA)と称されている。
触媒層付電解質膜の製造方法としては、電解質膜表面に、触媒層を形成するための触媒層ペースト組成物を塗布及び乾燥させるという塗布方式が一般的に行われている。しかし、この塗布方式であると、電解膜が触媒層ペースト組成物に含まれる溶剤により膨潤変形してしまい、電解質膜表面に所望の触媒層が形成しにくい問題が生じている。この問題を克服するために、予め触媒層のみを基材上に作製し、この触媒層を転写することにより、触媒層を電解質膜上に積層させる方法(転写法)が提案されている(例えば、日本国特開2009−9910号公報)。
本発明によって得られる積層高分子電解質膜は、複合層の高い機械強度により、前記塗布方式、転写法のいずれの場合であっても、触媒層付電解質膜としても特に好適に使用できる。
MEAを作製する場合は、特に制限はなく公知の方法(例えば、電気化学,1985,53, p.269.記載の化学メッキ法、電気化学協会編(J. Electrochem. Soc.)、エレクトロケミカル サイエンス アンド テクノロジー (Electrochemical Scienceand Technology),1988, 135, 9, p.2209. 記載のガス拡散電極の熱プレス接合法など)を適用することが可能である。
プレスにより電解質膜と電極基材とを一体化する場合は、その温度や圧力は、電解質膜の厚さ、水分率、触媒層や電極基材により適宜選択すればよい。また、本発明では電解質膜が乾燥した状態または吸水した状態でもプレスによる一体化が可能である。具体的なプレス方法としては、圧力やクリアランスを規定したロールプレスや、圧力を規定した平板プレス、複数個のローラーに組付けられた弾性を有した対向するエンドレスベルトにより圧着するダブルベルトプレスなどが挙げられる。工業的生産性やイオン性基を有する高分子材料の熱分解抑制などの観点から、これらのプレス工程は0℃〜250℃の範囲で行うことが好ましい。加圧は電解質膜や電極保護の観点からできる限り弱い方が好ましく、平板プレスの場合、10MPa以下の圧力が好ましい。
また、プレス工程による一体化を実施せずに、電極と電解質膜を重ね合わせ燃料電池セル化することも、アノード、カソード電極の短絡防止の観点から好ましい選択肢の一つである。この方法の場合、燃料電池として発電を繰り返した場合、短絡箇所が原因と推測される電解質膜の劣化が抑制される傾向があり、燃料電池として耐久性が良好となる。
なお、このように作製したMEAは、水電解装置や水素圧縮装置等の他の電気化学用途にも好適に用いることができる。
(1)ポリマーの分子量
ポリマー溶液の数平均分子量及び重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー(株)製HLC−8022GPCを用いた。また、GPCカラムとして東ソー(株)製TSK gel SuperHM−H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用いた。N−メチル−2−ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN−メチル−2−ピロリドン溶媒)にて、流量0.2mL/minで測定し、標準ポリスチレン換算により数平均分子量及び重量平均分子量を求めた。
(2)イオン交換容量(IEC)
中和滴定法により次のとおり測定した。測定は3回実施し、その平均値を取った。
プロトン置換し、純水で十分に洗浄した電解質膜の膜表面の水分を拭き取った後、100℃にて12時間以上真空乾燥し、乾燥重量を求めた。
電解質膜に5質量%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12時間静置してイオン交換した。
0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定した。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v%を加え、薄い赤紫色になった点を終点とした。
イオン交換容量(IEC)は下記式により求めた。
IEC(meq/g)=〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/mL)×滴下量(mL)〕/試料の乾燥重量(g)
(3)熱水試験による寸法変化率(λxy)測定
電解質膜を約5cm×約5cmの正方形に切り取り、温度23℃±5℃、湿度50%±5%の調温調湿雰囲気下に24時間静置後、ノギスでMDの長さとTDの長さ(MD1とTD1)を測定した。該電解質膜を80℃の熱水中に8時間浸漬後、再度ノギスでMDの長さとTDの長さ(MD2とTD2)を測定し、面方向におけるMDとTDの寸法変化率(λMDとλTD)および面方向の寸法変化率(λxy)(%)を下式より算出した。
λMD=(MD2−MD1)/MD1×100
λTD=(TD2−TD1)/TD1×100
λxy=(λMD+λTD)/2
(4)電解質膜を使用した膜電極複合体(MEA)の作製
田中貴金属工業(株)製白金触媒担持炭素粒子TEC10E50E(白金担持率50質量%)と、ケマーズ(株)製“ナフィオン”(登録商標)”(“Nafion”(登録商標)”)を2:1の質量比となるように調整した触媒インクを、市販のポリテトラフルオロエチレン製フィルムに白金量が0.3mg/cmとなるように塗布し、触媒デカールを作製した。
上記触媒デカールを5cm角にカットしたもの2枚準備し、電解質膜を挟むように対向して重ね合わせ、150℃、5MPaで3分間加熱プレスを行い、触媒層付電解質膜を得た。市販のSGL社製ガス拡散電極24BCHを5cm角にカットし得られた触媒層付電解質膜を挟持することにより、(Y)層面をカソード極、(X)層面をアノード極としてMEAを作製した。
(5)乾湿サイクル耐久性
上記(4)で作製したMEAを英和(株)製JARI標準セル“Ex−1”(電極面積25cm)にセットし、セル温度80℃の状態で、両極に160%RHの窒素を2分間供給し、その後両電極に0%RHの窒素(露点−20℃以下)を2分間供給するサイクルを繰り返した。1,000サイクルごとに水素透過量の測定を実施し、水素透過電流が初期電流の10倍を越えた時点を乾湿サイクル耐久性とした。
水素透過量の測定は、一方の電極に燃料ガスとして水素、もう一方の電極に窒素を供給し、加湿条件:水素ガス90%RH、窒素ガス:90%RHで試験を行った。開回路電圧が0.2V以下になるまで保持し、0.2〜0.7Vまで1mV/secで電圧を掃引し0.7Vにおける電流値を水素透過電流とした。
(6)プロトン伝導度
膜状の試料を25℃の純水に24時間浸漬した後、80℃、相対湿度25〜95%の恒温恒湿槽中にそれぞれのステップで30分保持し、定電位交流インピーダンス法でプロトン伝導度を測定した。測定装置としては、Solartron社製電気化学測定システム(Solartron 1287 Electrochemical InterfaceおよびSolartron 1255B Frequency Response Analyzer)を使用し、2端子法で定電位インピーダンス測定を行い、プロトン伝導度を求めた。交流振幅は、50mVとした。サンプルは幅10mm、長さ50mmの膜を用いた。測定治具はフェノール樹脂で作製し、測定部分は開放させた。電極として、白金板(厚さ100μm、2枚)を使用した。電極は電極間距離10mm、サンプル膜の表側と裏側に、互いに平行にかつサンプル膜の長手方向に対して直交するように配置した。
(7)開回路保持時間
上記(4)で作製したMEAを英和(株)製JARI標準セルEx−1(電極面積25cm)にセットし、セル温度80℃を保ちながら、低加湿状態の水素(70mL/分、背圧0.1MPaG)と空気(174mL/分、背圧0.05MPaG)をセルに導入し、開回路での劣化加速試験を行った。開回路電圧が0.7V以下まで低下するまでの時間を開回路保持電圧とした。
合成例1
(下記化学式(G1)で表される2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン(K−DHBP)の合成)
攪拌器、温度計及び留出管を備えた 500mLフラスコに、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp−トルエンスルホン酸一水和物0.50gを仕込み溶解した。その後78〜82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで加熱した。この反応液を室温まで冷却後、反応液を酢酸エチルで希釈し、有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mLで洗浄し分液後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mLを加え結晶を析出させ、濾過し、乾燥して2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソラン52.0gを得た。この結晶をGC分析したところ99.9%の2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジオキソランと0.1%の4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンであった。
Figure 2021051996
合成例2
(下記化学式(G2)で表されるジソジウム−3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンの合成)
4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(アルドリッチ試薬)109.1gを発煙硫酸(50%SO)(和光純薬試薬)150mL中、100℃で10時間反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩(NaCl)200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、上記化学式(G2)で示されるジソジウム−3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノンを得た。純度は99.3%であった。
Figure 2021051996
合成例3
(下記一般式(G3)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1,000mL三口フラスコに、炭酸カリウム(アルドリッチ試薬)16.59g(120mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP:25.8g(100mmol)および4,4’−ジフルオロベンゾフェノン(アルドリッチ試薬)20.3g(93mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mLおよびトルエン100mL中、160℃で脱水後、昇温してトルエンを除去し、180℃で1時間重合を行った。多量のメタノールに再沈殿精製を行い、イオン性基を含有しないオリゴマー(末端:ヒドロキシル基)を得た。得られたイオン性基を含有しないオリゴマー(末端:ヒドロキシル基)の数平均分子量は10,000であった。
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム(アルドリッチ試薬)1.1g(8mmol)、イオン性基を含有しない前記オリゴマー(末端:ヒドロキシル基)を20.0g(2mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mLおよびトルエン30mL中、100℃で脱水後、昇温してトルエンを除去し、デカフルオロビフェニル(アルドリッチ試薬)4.0g(12mmol)を入れ、105℃で1時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記一般式(G3)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端:フルオロ基)を得た。得られたイオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端:フルオロ基)の数平均分子量は10,000であった。
Figure 2021051996
(一般式(G3)において、mは正の整数を表す。)
合成例4
(下記一般式(G4)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa2の合成)
K−DHBP25.8g(100mmol)に代えて4,4’−ビフェノール(アルドリッチ試薬)18.6g(100mmol)に加えた以外は、合成例3に記載の方法で、下記一般式(G4)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa2(末端:フルオロ基)を得た。得られたイオン性基を含有しないオリゴマーa2(末端:フルオロ基)の数平均分子量は6,000であった。
Figure 2021051996
(一般式(G4)において、mは正の整数を表す。)
合成例5
(下記一般式(G5)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa3の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1,000mL三口フラスコに、炭酸カリウム(アルドリッチ試薬)27.6g(200mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP25.8g(100mmol)、前記合成例2で得たジソジウム−3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン39.3g(93mmol)、および18−クラウン−6(和光純薬)17.9g(82mmol)を入れ、窒素置換後、ジメチルスルホキシド(DMSO)300mLおよびトルエン57mL中、140℃で脱水および重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記一般式(G5)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa3(末端:ヒドロキシル基)を得た。得られたイオン性基を含有するオリゴマーa3(末端:ヒドロキシル基)の数平均分子量は19,000であった。
Figure 2021051996
(一般式(G5)において、Mは、NaまたはKを表す。また、nは正の整数を表す。)
合成例6
(下記一般式(G6)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa4の合成)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた1,000mL三口フラスコに、炭酸カリウム(アルドリッチ試薬)27.6g(200mmol)、前記合成例1で得たK−DHBP12.9g(50mmol)および4,4’−ビフェノール(アルドリッチ試薬)9.3g(50mmol)、前記合成例2で得たジソジウム 3,3’−ジスルホネート−4,4’−ジフルオロベンゾフェノン39.3g(93mmol)、および18−クラウン−6(和光純薬)17.9g(82mmol)を入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)300mLおよびトルエン100mL中、170℃で脱水後、昇温してトルエンを除去し、180℃で1時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記一般式(G6)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa4(末端:ヒドロキシル基)を得た。得られたイオン性基を含有するオリゴマーa4(末端:ヒドロキシル基)の数平均分子量は14,000であった。
Figure 2021051996
(一般式(G6)において、Mは、NaまたはKを表す。また、nは正の整数を表す。)
合成例7
(下記一般式(G7)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa5の合成)
K−DHBP12.9g(50mmol)に代えて4,4’−ビフェノール(アルドリッチ試薬)9.3g(50mmol)を加えた以外は、合成例6に記載の方法で、下記一般式(G7)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa5(末端:ヒドロキシル基)を得た。得られたイオン性基を含有するオリゴマーa5(末端:ヒドロキシル基)の数平均分子量は13,000であった。
Figure 2021051996
(一般式(G7)において、Mは、NaまたはKを表す。また、nは正の整数を表す。)
合成例8
(下記一般式(G8)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa6の合成)
K−DHBP:25.8g(100mmol)に代えて、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン:33.6g(100mmol)を加えた以外は合成例3に記載の方法で、下記一般式(G8)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa6(末端:フルオロ基)を得た。得られたイオン性基を含有しないオリゴマーa6(末端:フルオロ基)の数平均分子量は13,000であった。
Figure 2021051996
(一般式(G8)において、mは正の整数を表す。)
合成例9
(下記一般式(G9)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa7の合成)
K−DHBP:12.9g(50mmol)および4,4’−ビフェノール(アルドリッチ試薬)9.3g(50mmol)に代えて、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン:33.6g(100mmol)を加えた以外は、合成例6に記載の方法で、下記一般式(G7)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa7(末端:ヒドロキシル基)を得た。得られたイオン性基を含有するオリゴマーa7(末端:ヒドロキシル基)の数平均分子量は19,000であった。
Figure 2021051996
(一般式(G9)において、Mは、NaまたはKを表す。またnは正の整数を表す。)
合成例10
(下記一般式(G10)で表されるイオン性基を含有しないオリゴマーa8の合成)
K−DHBP:25.8g(100mmol)に代えて、4,4′−イソプロピリデンジフェノール:22.9g(100mmol)を加えた以外は合成例3に記載の方法で、下記一般式(G10)で示されるイオン性基を含有しないオリゴマーa8(末端:フルオロ基)を得た。得られたイオン性基を含有しないオリゴマーa8(末端:フルオロ基)の数平均分子量は11,000であった。
Figure 2021051996
合成例11
(下記一般式(G11)で表されるイオン性基を含有するオリゴマーa9の合成)
K−DHBP:12.9g(50mmol)および4,4’−ビフェノール (アルドリッチ試薬)9.3g(50mmol)に代えて、4,4′−イソプロピリデンジフェノール 22.9g(100mmol)を加えた以外は合成例6記載の方法で、下記一般式(G11)で示されるイオン性基を含有するオリゴマーa9(末端:ヒドロキシル基)を得た。得られたイオン性基を含有するオリゴマーa9(末端:ヒドロキシル基)の数平均分子量は15,000であった。
Figure 2021051996
(一般式(G11)において、Mは、NaまたはKを表す。またnは正の整数を表す。)
合成例12
(ポリベンゾイミダゾール(PBI)の合成)
窒素雰囲気下、重合溶媒にポリリン酸(PAA)を用い、3,3’−ジアミノベンジジン(DAB)22.7g(106mmol)、4,4’−オキシビス安息香酸(OBBA)27.3g(106mmol)を秤取り、3質量%溶液となるようにポリリン酸(PPA)を加えて、撹拌しながら徐々に温度を上げ、140℃で12時間撹拌し、重縮合を行った。反応後、室温まで冷却し、イオン交換水に注ぎ凝固させた後、水酸化ナトリウム水溶液中で中和した。濾過、イオン交換水で洗浄後、80℃で一晩減圧乾燥し、目的のポリベンゾイミダゾールを得た。
製造例1
(高分子電解質溶液A、高分子電解質−界面活性剤混合溶液A’:イオン性基を含有するセグメントとして前記一般式(G5)で表されるオリゴマーa3、イオン性基を含有しないセグメントとして前記一般式(G3)で表されるオリゴマーa1を共重合して得られるブロック共重合体b1からなる高分子電解質溶液Aおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液A’の製造例)
かき混ぜ機、窒素導入管、Dean−Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、4mmol)、合成例5で得られたイオン性基を含有するオリゴマーa3(末端:ヒドロキシル基)を19g(1mmol)入れ、窒素置換後、N−メチルピロリドン(NMP)100mLおよびシクロヘキサン30mL中、100℃で脱水後、昇温してシクロヘキサンを除去し、合成例3で得られたイオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端:フルオロ基)10g(1mmol)を入れ、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールへの再沈殿精製により、ブロック共重合体b1を得た。得られたブロック共重合体b1の重量平均分子量は36万であった。
得られたブロック共重合体b1を溶解させた5質量%N−メチルピロリドン(NMP)溶液を、(株)久保田製作所製インバーター・コンパクト高速冷却遠心機(型番6930)にアングルローターRA−800をセット、25℃、30分間、遠心力20,000Gで重合原液の直接遠心分離を行った。沈降固形物(ケーキ)と上澄み液(塗液)がきれいに分離できたので上澄み液を回収した。次に、撹拌しながら80℃で減圧蒸留し、1μmのポリプロピレン製フィルターを用いて加圧ろ過し、ブロック共重合体b1からなる高分子電解質溶液A(高分子電解質濃度13質量%)を得た。高分子電解質溶液Aの粘度は1,300mPa・sであった。
得られた高分子電解質溶液A:100gに、ポリオキシエチレンエーテル系界面活性剤“フタージェント”(登録商標)FTX−218(ネオス(株)製)(フッ素原子含有量46質量%、親水性元素含有量14質量%、重量平均分子量1,900)0.26gを溶解し、高分子電解質と界面活性剤の質量比(以下界面活性剤/高分子電解質と表記)が0.02の高分子電解質−界面活性剤混合溶液A’を調製した。
製造例2
(高分子電解質溶液B、高分子電解質−界面活性剤混合溶液B’:イオン性基を含有するセグメントとして前記一般式(G6)で表されるオリゴマーa4、イオン性基を含有しないセグメントとして前記一般式(G3)で表されるオリゴマーa1を共重合して得られるブロック共重合体b2からなる高分子電解質溶液Bおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液B’の製造例)
イオン性基を含有するオリゴマーa3(末端:ヒドロキシル基)19g(1mmol)の代わりに、イオン性基を含有するオリゴマーa4(末端:ヒドロキシル基)を14g(1mmol)使用した以外は、製造例1に記載の方法でブロック共重合体b2からなる高分子電解質溶液Bおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液B’を得た。
製造例3
(高分子電解質溶液C、高分子電解質−界面活性剤混合溶液C’:イオン性基を含有するセグメントとして前記一般式(G7)で表されるオリゴマーa5、イオン性基を含有しないセグメントとして前記一般式(G3)で表されるオリゴマーa1を共重合して得られるブロック共重合体b3からなる高分子電解質溶液Cおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液C’の製造例)
イオン性基を含有するオリゴマーa3(末端:ヒドロキシル基)19g(1mmol)の代わりに、イオン性基を含有するオリゴマーa5(末端:ヒドロキシル基)を13g(1mmol)使用した以外は、製造例1に記載の方法でブロック共重合体b3からなる高分子電解質溶液Cおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液C’を得た。
製造例4
(高分子電解質溶液D、高分子電解質−界面活性剤混合溶液D’:イオン性基を含有するセグメントとして前記一般式(G5)で表されるオリゴマーa3、イオン性基を含有しないセグメントとして前記一般式(G4)で表されるオリゴマーa2を共重合して得られるブロック共重合体b4からなる高分子電解質溶液Dおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液D’の製造例)
イオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端:フルオロ基)10g(1mmol)の代わりに、イオン性基を含有しないオリゴマーa2(末端:フルオロ基)を6g(1mmol)使用した以外は、製造例1に記載の方法でブロック共重合体b4からなる高分子電解質溶液Dおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液D’を得た。
製造例5
(高分子電解質溶液E、高分子電解質−界面活性剤混合溶液E’:イオン性基を含有するセグメントとして前記一般式(G9)で表されるオリゴマーa7、イオン性基を含有しないセグメントとして前記一般式(G8)で表されるオリゴマーa6を共重合して得られるブロック共重合体b5からなる高分子電解質溶液Eおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液E’の製造例)
イオン性基を含有するオリゴマーa3(末端:ヒドロキシル基)19g(1mmol)の代わりに、イオン性基を含有するオリゴマーa7(末端:ヒドロキシル基)を19g(1mmol)使用し、イオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端:フルオロ基)10g(1mmol)の代わりに、イオン性基を含有しないオリゴマーa6(末端:フルオロ基)を13g(1mmol)使用した以外は、製造例1に記載の方法でブロック共重合体b5からなる高分子電解質溶液Eおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液E’を得た。
製造例6
(高分子電解質溶液F、高分子電解質−界面活性剤混合溶液F’:イオン性基を含有するセグメントとして前記一般式(G11)で表されるオリゴマーa9、イオン性基を含有しないセグメントとして前記一般式(G10)で表されるオリゴマーa8を共重合して得られるブロック共重合体b6からなる高分子電解質溶液Fおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液F’の製造例)
イオン性基を含有するオリゴマーa3(末端:ヒドロキシル基)19g(1mmol)の代わりに、イオン性基を含有するオリゴマーa9(末端:ヒドロキシル基)を15g(1mmol)使用し、イオン性基を含有しないオリゴマーa1(末端:フルオロ基)10g(1mmol)の代わりに、イオン性基を含有しないオリゴマーa8(末端:フルオロ基)を11g(1mmol)使用した以外は、製造例1に記載の方法でブロック共重合体b6からなる高分子電解質溶液Fおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液F’を得た。
製造例7
(高分子電解質溶液G、高分子電解質−界面活性剤混合溶液G’:イオン性基を含有するセグメントとして前記一般式(G6)で表されるオリゴマーa4、イオン性基を含有しないセグメントとして前記一般式(G3)で表されるオリゴマーa1を共重合して得られるブロック共重合体b7からなる高分子電解質溶液Gおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液G’の製造例)
イオン性基を含有するオリゴマーa3(末端:ヒドロキシル基)19g(1mmol)の代わりに、イオン性基を含有するオリゴマーa4(末端:ヒドロキシル基)を20g(1.4mmol)使用した以外は、製造例1に記載の方法でブロック共重合体b7からなる高分子電解質溶液Gおよび高分子電解質−界面活性剤混合溶液G’を得た。
製造例8
(ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)多孔質基材)
“ポアフロン”(登録商標)HP−045−30(住友電工ファインポリマー(株)製)を縦横方向に3倍延伸することにより、膜厚8μm、空隙率89%のePTFE多孔質フィルムを作製した。
製造例9
合成例12で得られたポリベンゾイミダゾールを、8重量%となるようにジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解し、カトーテック(株)製エレクトロスピニングユニットを使用し、電圧20kV、シリンジポンプ吐出速度0.12mL/時、シリンジとターゲット間の距離100mmの条件で紡糸すると同時にナノファイバー不織布を作成した。得られたナノファイバー不織布を80℃で1時間減圧乾燥した後、厚み125μmの“カプトン”(登録商標)基材上に積層し、窒素雰囲気中400℃で10分加熱することで繊維径が150nmであり、厚みが7μmのポリベンゾイミダゾール繊維からなるナノファイバー不織布を得た。空隙率は87%であった。
実施例1
ナイフコーターを用い、製造例2の高分子電解質−界面活性剤混合溶液B’をガラス基板上に流延塗布し、製造例8のePTFE多孔質フィルムを貼り合わせた。室温にて1h保持し、電解質−界面活性剤混合溶液B’を十分含浸させた後、100℃にて4h乾燥した。乾燥後の膜の上面に、製造例1の高分子電解質−界面活性剤混合溶液A’を流延塗布し、室温にて1h保持した後、100℃にて4h乾燥し、フィルム状の重合体を得た。10重量%硫酸水溶液に80℃で24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応し、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄した後、室温で終夜乾燥した。ガラス基板上から乾燥後の膜を剥離することで、高分子電解質A/高分子電解質BとePTFE多孔質フィルムとが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜(膜厚11μm)を得た。
実施例2
高分子電解質−界面活性剤混合溶液B’の代わりに製造例3の高分子電解質−界面活性剤混合溶液C’を使用した以外は、実施例1に記載の方法で高分子電解質A/高分子電解質CとePTFE多孔質フィルムとが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
実施例3
高分子電解質−界面活性剤混合溶液A’の代わりに製造例5の高分子電解質−界面活性剤混合溶液E’を使用した以外は、実施例1に記載の方法で高分子電解質E/高分子電解質BとePTFE多孔質フィルムとが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
実施例4
ePTFE多孔質フィルムの代わりに製造例9のポリベンゾイミダゾール繊維からなるナノファイバー不織布を使用した以外は、実施例1に記載の方法で分子電解質A/高分子電解質Bとナノファイバー不織布とが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
実施例5
高分子電解質−界面活性剤混合溶液B’の代わりに製造例7の高分子電解質−界面活性剤混合溶液G’を使用した以外は、実施例1に記載の方法で高分子電解質A/高分子電解質GとePTFE多孔質フィルムとが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
実施例6
高分子電解質−界面活性剤混合溶液B’の代わりに製造例7の高分子電解質−界面活性剤混合溶液G’を使用し、ePTFE多孔質フィルムの代わりに製造例9のポリベンゾイミダゾール繊維からなるナノファイバー不織布を使用した以外は、実施例1に記載の方法で分子電解質A/高分子電解質Gとナノファイバー不織布とが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
実施例7
高分子電解質−界面活性剤混合溶液B’の代わりに製造例7の高分子電解質溶液G’を使用し、電解質−界面活性剤混合溶液A’の代わりに製造例5の高分子電解質溶液E’を使用した以外は、実施例1に記載の方法で高分子電解質E/高分子電解質GとePTFE多孔質フィルムとが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
比較例1
高分子電解質−界面活性剤混合溶液A’の代わりに製造例2の電高分子解質−界面活性剤混合溶液B’を使用した以外は、実施例1に記載の方法で高分子電解質B/高分子電解質BとePTFE多孔質フィルムとが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
比較例2
高分子電解質−界面活性剤混合溶液A’の代わりに製造例3の高分子電解質−界面活性剤混合溶液C’を使用した以外は、実施例1に記載の方法で高分子電解質C/高分子電解質BとePTFE多孔質フィルムとが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
比較例3
高分子電解質−界面活性剤混合溶液A’の代わりに製造例4の高分子電解質−界面活性剤混合溶液D’を使用した以外は、実施例1に記載の方法で高分子電解質D/高分子電解質BとePTFE多孔質フィルムとが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
比較例4
高分子電解質−界面活性剤混合溶液A’の代わりに製造例6の高分子電解質−界面活性剤混合溶液F’を使用した以外は、実施例1に記載の方法で高分子電解質F/高分子電解質BとePTFE多孔質フィルムとが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
比較例5
高分子電解質−界面活性剤混合溶液B’の代わりに製造例2の高分子電解質溶液Bを使用し、ePTFE多孔質フィルムの代わりに製造例8のナノファイバー不織布を使用し、電解質−界面活性剤混合溶液A’の代わりに製造例2の高分子電解質溶液Bを使用した以外は、実施例1に記載の方法で高分子電解質B/高分子電解質BとPBI繊維からなるナノファイバー不織布とが複合化してなる複合層の2層構造を有する積層高分子電解質膜を得た。
比較例6
ナイフコーターを用い、製造例1で製造した高分子電解質溶液Aをガラス基板上に流延塗布した後に100℃にて4h乾燥し、フィルム状の重合体を得た。10重量%硫酸水溶液に80℃で24時間浸漬してプロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、高分子電解質Aからなる単層の高分子電解質膜を得た。
比較例7
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Bを使用した以外は、比較例6に記載の方法で高分子電解質Bからなる単層の高分子電解質膜を得た。
比較例8
高分子電解質溶液Aの代わりに高分子電解質溶液Gを使用した以外は、比較例6に記載の方法で高分子電解質Bからなる単層の高分子電解質膜を得た。
各実施例、比較例にて得られた積層高分子電解質膜について、IEC、面内方向と膜厚方向の寸法変化率の比λxy、プロトン伝導度、乾湿サイクル耐久性、開回路保持時間を評価した。評価結果を表1に示す。なお、乾湿サイクル耐久性に関して、20,000サイクルを超えても水素透過電流が初期電流の10倍を越えなかった場合、20,000サイクルで評価を打ち切った。開回路電圧保持時間に関して、3,000時間を超えても0.7V以下とならなかった場合は、3,000時間で評価を打ち切った。
Figure 2021051996

Claims (11)

  1. 芳香族炭化水素系電解質により形成される層が積層されてなる積層高分子電解質膜であって、以下に記載する(i)及び(ii)を満たす電解質によって形成される層を積層体の少なくとも一方の最表層に有し、かつ、芳香族炭化水素系電解質と多孔質補強材とが複合化してなる複合層を少なくとも一層有することを特徴とする積層高分子電解質膜。
    (i)すべての芳香環に少なくとも1つの電子求引性基を含有する。
    (ii)下記構一般式(S1)で表される構成単位を有するイオン性基を含有するセグメントと、下記一般式(S2)で表される構成単位を有するイオン性基を含有しないセグメントをそれぞれ1個以上含有するブロック共重合体。
    Figure 2021051996
    式(S1)中、Ar〜Arは任意に置換されても良い芳香環を表す。Y、Yそれぞれ独立に任意の2価の電子求引性基を表す。Ar〜Arのうち少なくとも1つはイオン性基を有する。*は(S1)または他の構成単位との結合を表す。
    Figure 2021051996
    式(S2)中、Ar〜Arは任意に置換されても良い芳香環を表す。ただしAr〜Arはいずれもイオン性基を有さない。Y、Yそれぞれ独立に任意の2価の電子求引性基を表す。*は(S2)または他の構成単位との結合を表す。
  2. 前記一般式(S1)で表される構成単位が、下記式(S3)で表される構成単位であることを特徴とする請求項1に記載の積層高分子電解質膜。
    Figure 2021051996
    式(S3)中、Y、Yは任意の2価の電子求引性基を表す。M〜Mは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオンを表し、M〜Mは2種類以上の基を表しても良い。n〜nは0または1であるが、少なくとも1つは1である。*は(S3)または他の構成単位との結合を表す。
  3. 前記一般式(S2)で表される構成単位が、下記式(S4)で表される構成単位であることを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載の積層高分子電解質膜。
    Figure 2021051996
    式(S4)中、Y、Yは任意の2価の電子求引性基を表す。*は(S4)または他の構成単位との結合を表す。
  4. 前記電子求引性基Y、Y、Y、Yがいずれもケトン基であることを特徴とする請求項1〜3に記載の積層高分子電解質膜。
  5. 積層高分子電解質膜を形成する前記芳香族炭化水素系電解質において、複合層を形成する芳香族炭化水素系電解質と、少なくとも一方の最表層を形成する芳香族炭化水素系電解質とが、異なるイオン交換容量を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の積層高分子電解質膜。
  6. 積層高分子電解質膜を形成する前記芳香族炭化水素系電解質において、複合層を形成する芳香族炭化水素系電解質が、少なくとも一方の最表層を形成する芳香族炭化水素系電解質より、高いイオン交換容量を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の積層高分子電解質膜。
  7. 前記多孔質補強材が、含フッ素高分子多孔質膜であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層高分子電解質膜。
  8. 前記多孔質補強材が、炭化水素系高分子化合物からなるナノファイバー不織布であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の積層高分子電解質膜。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の積層高分子電解質膜に触媒層を積層してなることを特徴とする触媒層付電解質膜。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の積層高分子電解質膜または請求項9に記載の触媒層付電解質膜と電極を用いて構成されてなることを特徴とする膜電極複合体。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の積層高分子電解質膜、請求項9に記載の触媒層付電解質膜および請求項10に記載の膜電極複合体のいずれかを用いて構成されてなることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
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