JP2013077475A - リチウムイオン二次電池の正極材料用の導電助剤 - Google Patents

リチウムイオン二次電池の正極材料用の導電助剤 Download PDF

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Abstract

【課題】高Cレートでの充放電特性に優れた、リチウムイオン二次電池の正極材料用の導電助剤を提供する。
【解決手段】カーボンブラックを含むリチウムイオン二次電池の正極材料用の導電助剤において、カーボンブラックがアセチレンブラック又はケッチェンブラックのいずれか一方又はその双方であり、平均繊維径5〜25nm、平均繊維長100〜10000nm、平均比表面積100〜500m2/gの範囲にあるカーボンナノファイバーを更に含み、カーボンナノファイバーと、カーボンブラック及びカーボンナノファイバーの合計質量との質量割合((カーボンナノファイバー/(カーボンブラック+カーボンナノファイバー))×100)が0.05〜50%であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、高Cレートでの充放電特性に優れた、リチウムイオン二次電池の正極材料用の導電助剤に関するものである。ここで「Cレート」とは充放電レートを意味し、電池の全容量を1時間で放電させるだけの電流量を1Cレート放電といい、その電流量の例えば2倍であるとき2Cレート放電という。
これまでリチウムイオン二次電池の正極材料の導電助剤として、カーボンブラック(Carbon Black;以下、CBという。)であるアセチレンブラックやケッチェンブラックが主に使用されてきた(例えば、特許文献1参照。)。これらの助剤は、電極作製時のハンドリング性の良さや、粉の粒径がナノサイズということで、正極活物質とよく混ざり合うため、高い充放電のサイクル特性が得られている。
特開2005−38708号公報(請求項1,3)
しかしながら、上記特許文献1に示されるようなCBなどの導電助剤を用いても、高電流密度、即ち、高いCレートでの充放電においては、集電体と活物質との間の電気的な抵抗による局所的な電位低下が起こるために、十分な充電、放電がされず、見かけ上の電池の容量が低下してしまう不具合が生じていた。
本発明の目的は、高Cレートでの充放電特性に優れた、リチウムイオン二次電池の正極材料用の導電助剤を提供することにある。
本発明の第1の観点は、CBを含むリチウムイオン二次電池の正極材料用の導電助剤において、CBがアセチレンブラック又はケッチェンブラックのいずれか一方又はその双方であり、平均繊維径5〜25nm、平均繊維長100〜10000nm、平均比表面積100〜500m2/gの範囲にあるカーボンナノファイバー(Carbon Nano Fiber;以下、CNFという。)を更に含み、CNFと、CB及びCNFの合計質量との質量割合((CNF/(CB+CNF))×100)が0.05〜50%であることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく導電助剤を用いたリチウムイオン二次電池の正極形成材料である。
本発明の第3の観点は、第1の観点に基づく導電助剤を用いて形成されたリチウムイオン二次電池の正極である。
本発明の第4の観点は、第1の観点に基づく導電助剤を用いて形成されたリチウムイオン二次電池である。
本発明の第1の観点のリチウム二次電池の正極材料用の導電助剤は、CBを含むリチウムイオン二次電池の正極材料用の導電助剤の改良であり、その特徴ある構成が、上記CBがアセチレンブラック又はケッチェンブラックのいずれか一方又はその双方であり、平均繊維径5〜25nm、平均繊維長100〜10000nm、平均比表面積100〜500m2/gの範囲にあるCNFを更に含み、CNFと、CB及びCNFの合計質量との質量割合((CNF/(CB+CNF))×100)が0.05〜50%であるところにある。
このように、本発明の導電助剤では、既存のCBだけでなく、特定のサイズ及び特定の比表面積を有するCNFを更に含み、このCNFと既存のCBとを特定の割合となるように配合することにより、上記CNFを活物質粉末に適度に絡みつかせることで、活物質粉末とCBとの電気的な結合を増大させ、良好な電気的パスを構築するため、高電流密度、即ち、高いCレートでの充放電においても、電池内の抵抗を小さくすることができるため、高いCレートでの充放電が可能となる。
次に本発明を実施するための形態を説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池の正極材料用の導電助剤はCBを含み、CBにはアセチレンブラック又はケッチェンブラックのいずれか一方又はその双方が使用される。使用されるアセチレンブラックとしては比表面積が70〜250m2/gのものが、またケッチェンブラックとしては比表面積が400〜2000m2/gのものがそれぞれ好適である。また、本発明の導電助剤には、平均繊維径5〜25nm、平均繊維長100〜10000nm、平均比表面積100〜500m2/gの範囲にあるCNFが更に含まれる。
CNFの平均繊維径を上記範囲内としたのは、下限値未満では電極活物質を繋ぐ電子伝導性の効果が低下する不具合を生じ、上限値を越えると電極活物質との絡み合いが弱くなる不具合を生じるためである。上記範囲内のうち、平均繊維径7〜15nmが特に好ましい。また、CNFの平均繊維長を上記範囲内としたのは、下限値未満ではCNFが短すぎるために、電気的導通が不十分となり、高Cレートでの放電容量が低下する不具合を生じ、上限値を越えるとCNFが長くなりすぎ、CNF同士が凝集しあうために、電極の活物質との結合度合いが弱まる不具合を生じるためである。上記範囲内のうち、平均繊維長200〜2000nmが特に好ましい。また、CNFの比表面積を上記範囲内としたのは、下限値未満では表面活性が小さくなり、CNFが活物質やその他の導電助剤と良好な結合ができなくなる不具合を生じ、上限値を越えると表面活性が強くなり、CNF同士が絡み合いすぎて電極に均一に付着しなくなる不具合を生じるためである。上記範囲内のうち、比表面積150〜300m2/gが特に好ましい。
上記CNFは例えば、次のような製造方法により作製される。例えば、触媒粒子としてFe、Ni、Co、Mn、Cuの酸化物から選ばれた1種又は2種以上と、Mg、Ca、Al、Siの酸化物から選ばれた1種又は2種以上の混合酸化物粉末を用い、400℃〜800℃の温度で、一酸化炭素又は二酸化炭素と水素の混合ガスを上記触媒粒子に接触させて、CNFを製造する気相成長法が挙げられる。
この方法では、上記触媒粒子をファイバーの成長核として石英などの基板上に配置する。触媒粒子の基板上への配置は、触媒粒子をそのまま均一にボートに振りかければよい。または触媒粒子をアルコール等の溶媒に懸濁させて懸濁液を調製し、この懸濁液を基板上に散布して乾燥することによって均一にボート上に配置してもよい。ここで、使用する触媒粒子の粒径を調整することにより、合成するCNFの平均繊維径を上記範囲内に調整することが可能である。
そして、反応室内で0.08〜10MPaの圧力下、450℃〜800℃の温度で、原料ガスを上記触媒粒子に接触させて反応させることによって多結晶構造グラファイトナノファイバーを成長させる。このCNFの気相合成においては、予め十分に合成雰囲気を定常化する必要がある。そのため、水素を10%程度含む不活性ガスを反応室に導入して合成雰囲気を置換した後に加熱を開始し、合成温度に1〜2時間ほど保持することが望ましい。
反応室内の温度及び雰囲気を定常状態にしてから、原料ガスを導入し、触媒粒子に接触させ、原料ガスを熱分解させてグラファイトを成長させる。原料ガスとしては一酸化炭素及び/又は二酸化炭素と水素の混合ガスを用いることができる。混合ガスのCO及び/又はCO2に対するH2の混合容積比(CO/H2)は20/80〜99/1が適当であり、50/50〜99/1が好ましい。この原料ガスを所定の時間供給してCNFを触媒粒子から成長させて合成する。ここで、合成時間を調整することにより、合成するCNFの平均繊維長を上記範囲内に調整することが可能である。
上記得られたCNFに、表面酸化処理を施すには、先ず、硝酸と硫酸の混酸を調製する。このうち濃硝酸と濃硫酸の混酸が好ましい。混酸中の硝酸と硫酸の比率は、混酸中の硝酸濃度が、好ましくは5〜35質量%、更に好ましくは10〜25質量%となるように調整する。混酸中の硝酸濃度が5質量%未満では、酸化処理が不十分となり、電極ペーストを作製した場合にCNFの分散性の効果が十分に得られない場合があり、一方、上限値を越えると、酸化処理が過度となり、CNF自体が溶解してしまう不具合が生じる傾向がみられる。
次に、上記合成したCNFに、CNFの質量の5〜10倍の水を添加し、好ましくは40〜60℃に加熱し、スターラ等で撹拌する。次いで、このCNFが分散する液体を80〜100℃まで上昇させ、これに上記調製した濃硝酸と濃硫酸の混酸を添加した後、上記温度を保持したまま、好ましくは30〜120分間攪拌を続け、酸化処理を行う。このとき、酸化処理の処理時間が下限値未満では、酸化処理が不十分となり、所望の比表面積を有するCNFが得られない場合があり、一方、上限値を越えると、所望の比表面積を有するCNFが得られない、或いはCNFが溶解する不具合が生じる場合があるため好ましくない。
酸化処理後、液温を30℃以下まで低下し、例えばろ過等により固液分離して固形分を回収する。回収した固形分は、イオン交換水を用いて、好ましくは3〜5回洗浄を行う。洗浄後、固形分を乾燥機内へ移し、好ましくは100〜150℃の温度で真空乾燥する。以上の工程により、上記所望の平均繊維径、平均繊維長及び平均比表面積を有するCNFが得られる。
そして、本発明の導電助剤では、CNFと、CB及びCNFの合計質量との質量割合((CNF/(CB+CNF))×100)が0.05〜50%の範囲内、好ましくは2.0〜37.0%となるように配合される。CNFが下限値未満では、CNFを添加することによる効果を確認できず、CNFが上限値を越えると電極体積が大きくなり、結果として、低密度の電極となる不具合を生じる。
このように構成された本発明の導電助剤では、既存のCBだけでなく、特定のサイズ及び特定の比表面積を有するCNFを更に含み、このCNFと既存のCBとを特定の割合となるように配合することにより、上記CNFを活物質粉末に適度に絡みつかせることで、活物質粉末とCBとの電気的な結合を増大させ、良好な電気的パスを構築するため、高電流密度、即ち、高いCレートでの充放電においても、電池内の抵抗を小さくすることができるため、高いCレートでの充放電が可能となる。
次に、上記本発明の導電助剤を用いて形成されたリチウムイオン二次電池用の正極について説明する。
本発明のリチウムイオン二次電池用の正極は、正極集電体上に、正極活物質層が形成されたものである。正極活物質層を形成するには、先ず、正極活物質として粉末状のリチウム含有遷移金属酸化物と、結着剤と、導電助剤とを所定の割合で溶媒中に添加、混合してペーストを調製する。
リチウム含有遷移金属酸化物としては、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO4、Li(Mn1/3Ni1/3Co1/3)O2又はLiFePO4等が挙げられる。リチウム含有遷移金属酸化物の粉末の平均粒径は0.5μm〜10μmであることが好ましい。
導電助剤には、上記本発明の導電助剤を用いる。結着剤としては、有機系では、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、水溶系では、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。また、有機系の溶媒としては、N−メチルピロリドン(NMP)が一般的である。
そして、上記調製したペーストを正極集電体上にドクターブレード法、又は、ダイコート法等により塗布し、乾燥させることにより正極活物質層を形成する。正極活物質層は、剥離防止の理由から、10〜50μmの厚さに形成されるのが好ましい。
以上の工程により、本発明のリチウムイオン二次電池の正極が得られる。このリチウムイオン二次電池の正極は、本発明の導電助剤を用いているため、上記CNFを活物質粉末に適度に絡みつかせることで、活物質粉末とCBとの電気的な結合を増大させ、良好な電気的パスを構築するため、高電流密度、即ち、高いCレートでの充放電においても、電池内の抵抗を小さくすることができるため、高いCレートでの充放電が可能となる。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<実施例1〜6及び比較例1>
(1) CNFの製造
先ず、触媒粒子として、Co34粉末とMgO粉末からなる混合粉末を用意した。この触媒粒子の一次粒子の平均粒径は10nmであり、混合粉末の重量比(Co)酸化物/Mg酸化物)は7/3の割合である。次いで、上記触媒粉末を基板に載せた後、この基板を熱処理炉のガス流路内に収納した。次に、熱処理炉の圧力を0.08〜10MPaの範囲内に制御して、原料の混合ガスを導入し、炉内を450℃に加熱して、原料ガスを触媒粒子に接触させて、原料ガスを熱分解反応させることによってカーボンナノファイバーを合成した。なお、原料ガスには一酸化炭素と水素の混合ガスを用い、混合ガスのCOに対するH2の混合容積比(CO/H2)は75/25とし、合成時間は3時間とした。合成したCNFの平均繊維径は15nm、平均繊維長は1000nmであった。
(2) CNFの表面酸化処理
先ず、濃硝酸と濃硫酸とを混合して混酸を調製した。混酸中の硝酸と硫酸の比率は、混酸中の硝酸濃度が10質量%となるように調整した。次いで、上記合成したCNFに、CNFの質量の5〜10倍の水を添加し、50℃に加熱し、スターラ等で撹拌した。次に、このCNFの混合液を100℃まで上昇させ、これに上記調製した濃硝酸と濃硫酸の混酸を添加した後、上記温度を保持したまま、60分間攪拌を続け、酸化処理を行った。酸化処理後は液温を30℃以下まで低下し、ろ過等により固液分離して固形分を回収し、回収した固形分はイオン交換水を用いて3回洗浄を行った後、固形分を乾燥機内へ移し、130℃の温度で真空乾燥した。表面酸化処理後のCNFの平均比表面積は250m2/gであった。
(3) 正極(作用極)の作製
先ず、正極活物質としてカーボンコートされた平均粒径1.2μmのLiFePO4粉末(TIANJIN STL ENERGY TECHNOLOGY CO. LTD社製、商品名:SLFP-PD60)、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)(株式会社クレハ社製、商品名:PVDF#1100)、導電助剤として、比表面積70m2/gのアセチレンブラック(AB、電気化学工業株式会社製、商品名:デンカブラック)及び上記合成したCNF、溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)(関東化学株式会社製)をそれぞれ用意した。
次いで、LiFePO4粉末、アセチレンブラック、CNF及びPVdFを次の表1に示す質量比となるように秤量して混合し、この混合物をNMPに添加し、PVdFが融けて均一なペースト状になるまで撹拌を行った。なお、ペーストは上記混合した混合物全重量の約1.7倍のNMPを加えることにより作製した。
次に、調製した正極ペーストを正極集電体上に塗布し、隙間50μmのアプリケータを用いて厚さ一定とし、乾燥器にそのシートを移し、130℃で、溶媒であるNMPを乾燥させることにより、正極シートを作製した。正極集電体には厚さ15μmのアルミ箔を用いた。この正極シートから10cm2の大きさの面積に切り抜き、正極(作用極)を得た。
<比較試験1>
先ず、対極として厚さ0.25mmのLi金属(本城金属株式会社製)、ポリプロピレン製のセパレータ(ポリポア株式会社製、商品名:セルガード)、電解液としてエチレンカーボネート(EC)とジエチレンカーボネート(DEC)とが質量比1:1の割合で混合した溶媒の1M−LiPF6溶液(宇部興産株式会社製)を用意した。次いで、Li金属を上記得られた正極(作用極)と同じ大きさに切り抜き、またセパレータを上記得られた正極(作用極)より大きめに切り抜き、切り抜いたセパレータを正極(作用極)と対極の間に挟み込み、これに電解液を加えて電極を形成した。次に、アルミラミネートフィルム内に上記形成した電極を収納し、リード線を用いて正極(作用極)と対極がそれぞれ電気的に接続された構成とすることで充放電試験装置を作製した。
上記作製した充放電試験装置により、0.2Cのレート一定で充電を行い、放電は0.2Cレート、2Cレートと異なるレートでの放電を行って放電特性を調べた。このときの測定温度は25℃一定とした。なお、放電時のカットオフ電圧は2.0V一定とし、この電位まで低下した場合には、Cレートの所定の時間を待つことなく測定を停止した。その結果を次の表1に示す。
Figure 2013077475
表1から明らかなように、実施例1〜6及び比較例1は、CBとしてアセチレンブラックを用い、CNFの添加量を変動させた場合の放電容量の変化である。導電助剤としてCNFを添加せず、アセチレンブラックのみを使用した比較例1は、2Cレートでの放電容量が13mAh/gと非常に低く、この結果から導電助剤としてCBのみの使用では、電池内の抵抗が大きくなることが確認できる。
一方、CNFを添加した実施例1〜6と、CNFを添加していない比較例1とを比較すると、0.2Cレートでの放電ではいずれも高い放電容量が維持できており、放電容量に違いは現れないが、2Cレートでの放電ではCNFの添加量に応じて増加しており、導電助剤としてCNFを添加することにより、高Cレートである2Cレートでの放電特性が著しく向上することが確認された。
<実施例7〜12及び比較例2>
添加するCBとして、比表面積800m2/gのケッチェンブラック(KB、ライオン株式会社製、商品名:EC300J)を使用した以外は、実施例1〜6及び比較例1と同様にして正極を作製した。
<比較試験2>
実施例7〜12及び比較例2で作製した正極について、上記比較試験1での実施例1〜6及び比較例1の正極と同様に充放電試験を行った。その結果を次の表2に示す。
Figure 2013077475
表2から明らかなように、実施例7〜12及び比較例2は、CBとしてケッチェンブラックを用い、CNFの添加量を変動させた場合の放電容量の変化である。導電助剤としてCNFを添加せず、ケッチェンブラックのみを使用した比較例2の結果は、2Cレートでの放電容量が42mAh/gと非常に低く、この結果から導電助剤としてCBのみの使用では、電池内の抵抗が大きくなることが確認できる。なお、アセチレンブラックのみを使用した比較例1と比較すると、ケッチェンブラックのみを使用した比較例2の方が2Cレートでの容量が高い結果が得られているが、実用上十分な容量とはいえない。
一方、CNFを添加した実施例7〜12と、CNFを添加していない比較例2とを比較すると、0.2Cレートでの放電ではいずれも高い放電容量が維持できており、放電容量に違いは現れないが、2Cレートでの放電ではCNFの添加量に応じて増加しており、導電助剤としてCNFを添加することにより、高Cレートである2Cレートでの放電特性が著しく向上することが確認された。
<実施例13〜18及び比較例3>
添加するCBとして、比表面積70m2/gのアセチレンブラック(AB、電気化学工業株式会社製、商品名:デンカブラック)と比表面積800m2/gのケッチェンブラック(KB、ライオン株式会社製、商品名:EC300J)を等量混合した混合物を使用した以外は、実施例1〜6及び比較例1と同様にして正極を作製した。
<比較試験3>
実施例13〜18及び比較例3で作製した正極について、上記比較試験1での実施例1〜6及び比較例1の正極と同様に充放電試験を行った。その結果を次の表3に示す。
Figure 2013077475
表3から明らかなように、実施例13〜18及び比較例3は、CBとしてアセチレンブラック及びケッチェンブラックの双方を用い、CNFの添加量を変動させた場合の放電容量の変化である。導電助剤としてCNFを添加せず、アセチレンブラック及びケッチェンブラックの双方のみを使用した比較例3は、2Cレートでの放電容量は33mAh/gと非常に低く、この結果から導電助剤としてCBのみの使用では、電池内の抵抗が大きくなることが確認できる。なお、比較例3はアセチレンブラックのみを使用した比較例1の結果とケッチェンブラックのみを使用した比較例2の結果のほぼ中間の値となったが、実用上十分な容量とはいえない。
一方、CNFを添加した実施例13〜18と、CNFを添加していない比較例3とを比較すると、0.2Cレートでの放電ではいずれも高い放電容量が維持できており、放電容量に違いは現れないが、2Cレートでの放電ではCNFの添加量に応じて増加しており、導電助剤としてCNFを添加することにより、高Cレートである2Cレートでの放電特性が著しく向上することが確認された。
<実施例19〜25及び比較例4〜6>
添加するCNFとして、合成したCNFの酸化処理時間を5分〜3時間に変化させて得られた、次の表4に示す比表面積の異なるCNFを使用した以外は、実施例4と同様にして正極を作製した。
<比較試験4>
実施例19〜25及び比較例4〜6で作製した正極について、上記比較試験1での実施例1〜6及び比較例1の正極と同様に充放電試験を行った。その結果を次の表4に示す。
Figure 2013077475
表4から明らかなように、実施例19〜25及び比較例4〜6は、添加したCNFの比表面積を変動させた場合の放電容量の変化である。0.2Cレートでの放電ではいずれもCNFの比表面積に関係なく、高い放電容量を維持できているが、2Cレートでの放電では、CNFの比表面積の大きさに応じて放電容量が変化し、実施例19〜実施例25(CNFの比表面積が100m2/g〜500m2/g)の場合に高い容量が得られ、CNFの比表面積が小さい比較例4、CNFの比表面積が高い比較例5,6では、放電容量が小さくなる傾向が見られた。この結果から、CNFの比表面積が高すぎると、CNFの表面活性が強くなり、CNF同士の絡み合い過ぎて、結果として電極に均一に付着しなくなるものと推察され、一方、CNFの比表面積が小さすぎると、CNFの表面活性が小さくなり、CNFが活物質やその他の導電助剤と良好な結合ができなくなると推察される。以上の結果から、導電助剤として添加するCNFの比表面積には適切な範囲が存在することが判った。
<実施例26〜29及び比較例7〜9>
添加するCNFとして、CNF合成時の触媒粒子の一次粒子の平均粒径を5〜50nmに変化させて得られた、次の表5に示す平均繊維径の異なるCNFを使用した以外は、実施例4と同様にして正極を作製した。
<比較試験5>
実施例26〜29及び比較例7〜9で作製した正極について、上記比較試験1での実施例1〜6及び比較例1の正極と同様に充放電試験を行った。その結果を次の表5に示す。
Figure 2013077475
表5から明らかなように、実施例26〜29及び比較例7〜9は、添加したCNFの平均繊維径を変動させた場合の放電容量の変化である。0.2Cレートでの放電では、僅かではあるが、繊維径の小さいCNFを使用した例の方が、放電容量が高い傾向が得られた。また、2Cレートでの放電では、CNFの繊維径の大きさに応じて穏やかに放電容量が変化し、CNFの繊維径が5nm〜25nmの場合に高い容量が得られ、CNFの繊維径が小さい比較例7、CNFの繊維径が大きい比較例8,9では、放電容量が小さくなる傾向が見られた。以上の結果から、導電助剤として添加するCNFの平均繊維径には適切な範囲が存在することが判った。
<実施例30〜32及び比較例10,11>
添加するCNFとして、CNF合成時の合成時間を10分〜150時間に変化させて得られた、次の表6に示す平均繊維長の異なるCNFを使用した以外は、実施例4と同様にして正極を作製した。
<比較試験6>
実施例30〜32及び比較例10,11で作製した正極について、上記比較試験1での実施例1〜6及び比較例1の正極と同様に充放電試験を行った。その結果を次の表6に示す。
Figure 2013077475
表6から明らかなように、実施例30〜32及び比較例10,11は、添加したCNFの平均繊維長を変動させた場合の放電容量の変化である。0.2Cレートでの放電では、CNFの平均繊維長に影響せず、130mA/g程度の放電容量が得られているが、2Cレートでの放電では、CNFの平均繊維長に応じて放電容量が変化し、実施例30〜実施例32(CNFの平均繊維長が約100nm(0.1μm)〜約10000nm(10μm))の場合に高い容量が得られ、CNFの平均繊維長が短い比較例10、CNFの平均繊維長が長い比較例11では、放電容量が小さくなる傾向が見られた。なお、比較例10の平均繊維長が約50nm(0.05μm)のCNFでは、CNFが短すぎるために、電気的導通が不十分となり、高Cレートでの放電容量が低下したと推察され、比較例11の平均繊維長が約30000nm(30μm)のCNFでは、CNFが長くなりすぎ、CNF同士が凝集しあうために、電極の活物質との結合度合いが弱まることが予想される。以上の結果から、導電助剤として添加するCNFの平均繊維長には適切な範囲が存在することが判った。

Claims (4)

  1. カーボンブラックを含むリチウムイオン二次電池の正極材料用の導電助剤において、
    前記カーボンブラックがアセチレンブラック又はケッチェンブラックのいずれか一方又はその双方であり、
    平均繊維径5〜25nm、平均繊維長100〜10000nm、平均比表面積100〜500m2/gの範囲にあるカーボンナノファイバーを更に含み、
    前記カーボンナノファイバーと、前記カーボンブラック及び前記カーボンナノファイバーの合計質量との質量割合((カーボンナノファイバー/(カーボンブラック+カーボンナノファイバー))×100)が0.05〜50%である
    ことを特徴とするリチウム二次電池の正極材料用の導電助剤。
  2. 請求項1記載の導電助剤を用いたリチウムイオン二次電池の正極形成材料。
  3. 請求項1記載の導電助剤を用いて形成されたリチウムイオン二次電池の正極。
  4. 請求項1記載の導電助剤を用いて形成されたリチウムイオン二次電池。
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