JP2013075833A - カンデサルタンシレキセチルを含有する固形製剤 - Google Patents

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Takashi Kakuhari
剛史 覚張
Shohei Akabane
正平 赤羽
Kiyohisa Ouchi
清久 大内
Shinnosuke Zaike
紳之介 財家
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Abstract

【課題】
本発明の課題は、カンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物の分解生成物の生成を防ぐことである。
【解決手段】
本発明は、カンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物を含有する固形製剤であって、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、クエン酸トリエチル、トリアセチン、及びアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーの群から選ばれる少なくとも1の化合物を含有する前記剤を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、カンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物を含有する固形製剤に関する。
カンデサルタンシレキセチル(つまり1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル2−エトキシ−1−{[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボキシレート)は、アンジオテンシンIIがAT受容体へ結合することを抑止する化合物である。カンデサルタンシレキセチルは高血圧症の治療に用いられており、既に実用化されている。実用化された製品は、日本ではブロプレス(商標)なる商品名の下に市販されている。当該製品は、カンデサルタンシレキセチルを2、4、8、又は12mg含有する錠剤である。当該錠剤は、添加物としてトウモロコシデンプン、カルメロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール6000、ステアリン酸マグネシウム、及び乳糖水和物を含む。カンデサルタンシレキセチルは時間とともに分解する。当該分解により生成した分解生成物は、一般に類縁物質とも呼ばれる。第十六改正日本薬局方は、カンデサルタンシレキセチル錠の純度試験を記載し、当該純度試験において類縁物質の量が一定範囲以内になる必要があると定めている。
下記特許文献1は、「抗AII作用を有する式(I)(中略)で表される化合物および低融点油脂状物質を配合してなる経口用医薬組成物」を記載している(請求項1)。特許文献1は、「とりわけ上記一般式(I)中、(中略)(±)−1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル2−エトキシ−1−[[2′−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル]−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボキシラート(以下、化合物(V)と称することがある。下記構造式参照)が好ましく用いられる。」(段落0011)ことを記載している。当該化合物(V)はカンデサルタンシレキセチルである。また、特許文献1は、「抗AII作用を有する式(I)で表される化合物含有製剤に低融点油脂状物質を配合すると、顕著に有効成分の分解が抑えられ、安定な製剤が得られる」ことを記載している(段落0004)。
特開平5−194218号公報
カンデサルタンシレキセチルは時間とともに分解し、分解生成物が生成する。また、従来カンデサルタンシレキセチル錠剤の製造において、より特には造粒工程若しくは圧縮成形工程において加えられる圧力、摩擦、熱等により、カンデサルタンシレキセチル結晶の歪みが生じ、その結果分解生成物の生成が加速される。すなわち、当該錠剤の製造工程を経ることにより、当該錠剤中のカンデサルタンシレキセチル含量低下が加速する。従って、当該分解生成物の生成を抑制して、カンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物を含む固形製剤の保存安定性を改善する必要がある。そこで、本発明の課題は、カンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物の分解生成物の生成を防ぐことであり、それによりカンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物を含有する固形製剤の保存安定性を改善することである。
特許文献1は、「抗AII作用を有する式(I)で表される化合物含有製剤に低融点油脂状物質を配合すると、顕著に有効成分の分解が抑えられ、安定な製剤が得られる」ことを記載している(段落0004)。しかし、当該低融点油脂状物質を配合することにより、打錠時に硬度が出にくいという成形性の問題が生じる。そこで、成形性の問題を防ぐ必要がある。さらに、カンデサルタンシレキセチルの分解生成物の生成を防ぐことが必要である。
本発明は、カンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物を含む固形製剤を提供する。当該固形製剤は、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、クエン酸トリエチル、トリアセチン、及びアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1の化合物を含むことを特徴とする。
本発明において、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、クエン酸トリエチル、トリアセチン、及びアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1の化合物をカンデサルタンシレキセチル含有固形製剤が含むことにより、カンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物の分解生成物の生成を防ぐことができる。その結果、本発明に従う固形製剤は保存安定性に優れている。本発明に従う固形製剤は保存安定性に優れているので、水分透過性の低い防湿タイプの包装、例えばPTPシートなどを包装に用いなくてもよい。
本発明の固形製剤が錠剤である場合、当該錠剤の十分な硬度を確保でき、すなわち成形性の問題が生じない。よって、本発明により、成形性の問題を生じること無く、カンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物を含有する錠剤の保存安定性を改善することができる。また、従来は、打錠時におけるカンデサルタンシレキセチル結晶のひずみ発生を防ぐ為に、カンデサルタンシレキセチル含有錠剤の製造において、約500kgf以下の低圧で打錠していた。本発明の錠剤の製造において、当該低圧で成形する必要がなく、従来よりも広い範囲の成形圧が適用可能である。
カンデサルタンシレキセチルは、ラセミ体または一方の光学活性体であってもよいが、特にはラセミ体であり、第十六改正日本薬局方に従うものである。カンデサルタンシレキセチルは、公知の方法、例えば特開平4−364171号公報に記載の方法によって製造されうる。カンデサルタンシレキセチルは、無定形であるか又は結晶形I型若しくはII型を有するが、通常使用される形態は結晶形I型である。
本発明において、カンデサルタンシレキセチルの生理学的に許容される塩として、以下の塩があげられるが、これらに限定されない:塩酸、臭素酸、ヨウ素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸との塩;酢酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、アスコルビン酸、乳酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、酒石酸、マレイン酸などの有機酸との塩;ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属との塩さらには有機塩基類(例えば、トリアルキルアミン類、ジベンジルアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルモルホリンなど)との塩。また、本発明の剤において、カンデサルタンシレキセチル又はその生理学的に許容される塩の水和物が用いられてもよい。
本発明において、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマーとは、ポリビニルアルコール単位及びポリエチレングリコール単位からなるグラフトコポリマーである。前記ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマーとして、ポリビニルアルコール単位とポリエチレングリコール単位との重量比が60:40〜90:10、特には65:35〜85:15、より特には70:30〜80:20であり、重量平均分子量が30,000〜60,000、特には35,000〜55,000、より特には40,000〜50,000であるものが好ましい。このような好ましいポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマーとして、BASF社のKollicoat(商標)IR(ポリビニルアルコール単位75重量%、ポリエチレングリコール単位25重量%;重量平均分子量約45,000)を挙げることができるが、その他のコポリマーを用いてもよい。
本発明において、クエン酸トリエチルはC12H20O7で示される化合物である。クエン酸トリエチルは、水溶解度65g/L(25℃)、融点−55℃を示す無色の粘稠性のある液である。クエン酸トリエチルは、例えば森村商事株式会社からシトロフレックス2として販売されている。
本発明において、トリアセチンは、別名グリセリン三酢酸エステルであり、C9H14O6で示される化合物である。トリアセチンは、水溶解度64g/L(20℃)、融点−78℃を示す無色のわずかに粘性のある液である。トリアセチンは、例えば大八化学工業株式会社から販売されている。
本発明において、アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーとは、[-CH2C(CH3)(CO2C2H5)-]X[-CH2CH(CO2CH3)-]Yで示される化合物であり、アクリル酸エチル単位及びメタクリル酸メチル単位からなるコポリマーである。当該X及びYの値は特には、それぞれ5000〜7000及び2000〜4000、より特には5500〜6500及び2500〜3500である。前記コポリマーとしては、アクリル酸エチル単位とメタクリル酸メチル単位との重量比が3:1〜1:1、特には2.5:1〜1.5:1であり、重量平均分子量が500,000〜1,500,000、特には700,000〜900,000であるものが好ましい。このようなアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーとして、例えば、EVONIK社のオイドラギットNE30D(アクリル酸エチル単位66.7重量%、メタクリル酸メチル単位33.3重量%;重量平均分子量約800,000)を用いることができる。オイドラギットNE30Dは、約30重量%のポリマー固形分を有する乳濁液である。
ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマーが本発明の固形製剤に添加される場合、当該コポリマーの含有量は、固形製剤の全重量に対して、好ましくは0.5〜40重量%、より好ましくは1〜30重量%、さらにより好ましくは2〜20重量%である。クエン酸トリエチル又はトリアセチンが本発明の固形製剤に添加される場合、クエン酸トリエチルの含有量は、固形製剤の全重量に対して、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜3重量%、さらにより好ましくは0.3〜2重量%である。アクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーが本発明の固形製剤に添加される場合、当該コポリマーの含有量は、固形製剤の全重量に対して、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜9重量%、さらにより好ましくは2〜8重量%である。
本発明の剤はさらに結合剤を含みうる。結合剤を含むことにより、カンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物の分解をさらに抑制することができる。本発明において、結合剤は当技術分野で用いられるものであってよいが、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、メチルセルロース、アルファ化デンプン、部分アルファ化デンプン、ポビドン、ポリビニルアルコール、デキストリン、カルメロースナトリウムなどを挙げることができる。本発明において、結合剤は好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、又はカルメロースナトリウムである。結合剤の含有量は、当技術分野で一般的に用いられる範囲でよいが、結合剤がヒドロキシプロピルセルロースである場合、結合剤の量は特には、製剤の全重量に対して0.5重量%から10重量%、より好ましくは1重量%から8重量%である。結合剤がメチルセルロース又はカルメロースナトリウムである場合、結合剤の量は特には、製剤の全重量に対して0.1%から5%、より好ましくは0.5%から3%である。
本発明の剤の配合において、より特には、結合剤と、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、クエン酸トリエチル、トリアセチン、及びアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1の化合物とは、以下に述べる重量比を有する。当該重量比により剤の好ましい物性、特には好ましい崩壊性が得られる。本発明の剤にポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマーが添加される場合、上記結合剤と当該コポリマーとの重量比は、好ましくは0.1:1〜5:1であり、より好ましくは0.3:1〜3:1である。本発明の剤にクエン酸トリエチル又はトリアセチンが添加される場合、上記結合剤とクエン酸トリエチル又はトリアセチンの重量比は、好ましくは1:0.05〜1:1であり、より好ましくは1:0.1〜1:0.5である。本発明の剤にアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーが添加される場合、上記結合剤とアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーの配合重量比は、好ましくは0.01:1〜1:1、より好ましくは0.05:1〜0.7:1である。本発明の固形製剤が錠剤である場合に、これらの重量比によって特に好ましい錠剤物性、より特には好ましい崩壊性が得られる。
本発明の固形製剤は、例えば錠剤、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤などの形態をとりうるがこれらに限定されない。
本発明の固形製剤は、賦形剤、崩壊剤、流動化剤、滑沢剤などの製剤化成分を配合しても良い。これらの製剤化成分以外に、当技術分野で用いられる抗酸化剤、増粘剤、緩衝化剤、甘味付与剤、フレーバー付与剤、又はパーフューム剤などを、本発明の固形製剤に配合してもよい。
本発明において、賦形剤として、例えば乳糖水和物、結晶セルロースなどが挙げられる。
本発明において、崩壊剤として、例えばクロスポビドン、カルメロース、カルメロースカルシウム、カルボキシプロピルスターチナトリウム、部分アルファ化デンプン、トウモロコシデンプンなどが挙げられる。
本発明において、流動化剤として、例えば軽質無水ケイ酸及び含水二酸化ケイ素などが挙げられる。
本発明において、滑沢剤として、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル及び硬化油などが挙げられる。
本発明の固形製剤は、公知の方法(例えば、第16改正日本薬局方製剤総則に記載されている方法)に従って製造することができる。例えば、当該固形製剤が錠剤である場合、以下のとおりにしてカンデサルタンシレキセチル錠剤を得ることができる。すなわち、カンデサルタンシレキセチル若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物とポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、クエン酸トリエチル、トリアセチン、及びアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーから選ばれる1つあるいは2つ以上の化合物と水とを混合して懸濁液を調製する。当該縣濁液に結合剤が添加混合されてもよい。造粒機中に賦形剤及び必要に応じて崩壊剤を入れ、さらに当該縣濁液をスプレーしながら造粒物を得る。得られた造粒物をふるいで整粒し、整粒物を得る。得られた整粒物に崩壊剤、滑沢剤及び必要に応じて流動化剤を添加して混合し、錠用末を得る。得られた錠用末を、打錠機を用いて打錠して錠剤が得られる。当該打錠において、従来は約500kgf以下の成形圧が適用されていたが、本発明の錠剤の製造では、それより高い成形圧が適用可能である。例えば、約300〜1500kgfの成形圧が適用可能である。また、丸剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤の形態についても、当技術分野の公知の方法に従い製造することができる。
下記に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものでない。
実施例において、類縁物質の生成割合を測定した。当該測定は、第16改正日本薬局方に記載されたカンデサルタンシレキセチル錠純度試験に従い行なった。当該類縁物質とは、カンデサルタンシレキセチルの分解生成物である。類縁物質の生成割合は、剤の保存安定性の指標である。類縁物質の生成割合は少なければ少ないほど好ましく、剤における類縁物質の生成割合が少なければ少ないほど剤は保存安定性に優れている。上記測定の手順の概要は、以下のとおりである。すなわち、製造した剤を10個以上とり、粉末とした。カンデサルタンシレキセチル6mgに対応する量の上記粉末をとり、アセトニトリル/水混液(3:2)15mLを加え、10分間激しく振り混ぜた後、遠心分離した。遠心分離後の上澄液を孔径0.45μm以下のメンブランフィルターでろ過した。初めのろ液3mLを除き、次のろ液を試料溶液とした。この液1mLを正確に量り、アセトニトリル/水混液(3:2)を加えて正確に100mLとし、標準溶液とした。試料溶液及び標準溶液10μLずつを正確にとり、次の試験条件で液体クロマトグラフィーを行なった。
試験条件
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:254nm)
カラム:内径3.9mm、長さ15cmのステンレス管に4μmの液体クロマトグラフィー用オクタデシルシリル化シリカゲルを充てんしたもの
カラム温度:25℃付近の一定温度
移動相A:アセトニトリル/水/酢酸(100)混液(57:43:1)
移動相B:アセトニトリル/水/酢酸(100)混液(90:10:1)
移動相の送液:移動相A及び移動相Bの混合比を次のように変えて濃度勾配制御をした。
Figure 2013075833
流量:毎分0.8mL
上記試験条件下での液体クロマトグラフィーの結果に基づき、自動積分法で類縁物質の合計ピーク面積と総ピーク面積を得た。類縁物質のピーク面積は溶媒のピークの後から注入後30分までの、カンデサルタンシレキセチルのピーク以外のピーク面積である。総ピーク面積は、溶媒のピークの後から注入後30分までの、カンデサルタンシレキセチルのピーク以外のピークの合計面積である。(類縁物質の合計ピーク面積/総ピーク面積)×100が、類縁物質の生成割合(重量%)である。
また、以下の実施例において、錠剤の硬度を測定した。当該測定は錠剤硬度計8M(シュロイゲル社)を用いて行なわれた。
ステンレス容器中で4gのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社)を144gの精製水中に溶解させ、次いで8gのポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー(Kollicoat IR、BASF)を添加して溶解させ、さらにカンデサルタンシレキセチル(第十六改正日本薬局方における「カンデサルタンシレキセチル」)4gを投入して懸濁液を調製した。40gの部分アルファ化デンプン(スターチ1500、Colocon)及び192gの乳糖水和物(Pharmatose200、DMV)を流動層造粒機(MP-01、株式会社パウレック)中に投入して流動させたところに、前記懸濁液160gをスプレーして造粒した。引き続き、流動層造粒機中で乾燥を行い、造粒乾燥物を得た。当該造粒乾燥物を0.5mmふるいに通して整粒し、整粒物を得た。当該整粒物100gに4.5gのカルメロースカルシウム(ECG-505、五徳薬品株式会社)及び0.32gのステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社)を添加して混合し、錠用末を得た。当該錠用末を、ロータリー式打錠機(超小型ロータリー打錠機VELA5、菊水製作所株式会社)により、約530kgf の成形圧で、1錠あたり130mgであり、硬度が60Nであり、且つ2mgのカンデサルタンシレキセチルを含有するように打錠して、錠剤(以下、「実施例1の錠剤1」という)を得た。また、別に、当該錠用末を、約1000kgfの成形圧で打錠して、錠剤を得た(以下、「実施例1の錠剤2」という)。下記表1は、上記懸濁液の組成、造粒機中への材料の添加量、及び錠用末の組成を示す。
ヒドロキシプロピルセルロースの量が8gであること、精製水の量が140gであること、及び乳糖水和物の量が188gであること、並びに錠剤1の成形圧を約530kgfから約500kgfに変更したこと以外は実施例1と同じ方法で2種類の錠剤(以下、「実施例2の錠剤1」及び「実施例2の錠剤2」という)を得た。
ヒドロキシプロピルセルロースの量が16gであること、精製水の量が132gであること、及び乳糖水和物の量が180gであること、並びに錠剤1の成形圧を約530kgfから約400kgfに変更したこと以外は実施例1と同じ方法で2種類の錠剤(以下、「実施例3の錠剤1」及び「実施例3の錠剤2」という)を得た。実施例3の錠剤1の打錠は、約400kgfで行なった。
(比較例1)
ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマーを添加しなかったこと及び精製水の量が152gであること、並びに錠剤1の成形圧を約530kgfから約600kgfに変更したこと以外は実施例1と同じ方法で2種類の錠剤(以下、「比較例1の錠剤1」及び「比較例1の錠剤2」という)を得た。
Figure 2013075833
(試験例1)
類縁物質の生成割合の測定
実施例1〜3及び比較例1で得られた錠剤を、60℃,75%(相対湿度)で10日間の開放状態の苛酷試験に付した。当該試験後、上記のとおり、類縁物質の生成割合を測定した。また、実施例1〜3及び比較例1で得られた錠剤の製造直後のものについて、上記のとおり、類縁物質の生成割合を測定した。
結果を表2に示す。
Figure 2013075833
表2に示されているとおり、実施例1〜3の錠剤1及び2における類縁物質の割合の増加分は、比較例1の錠剤1及び2における類縁物質の割合の増加分と比べて低い。すなわち、実施例1〜3では、比較例1と比べて、類縁物質の生成が抑制された。また、実施例1から3の順に、すなわちヒドロキシプロピルセルロースの量が増加するにつれて、類縁物質割合の増加分が低い。すなわち、ヒドロキシプロピルセルロースの量が増加するにつれて、類縁物質の生成がより抑制されている。
(試験例2)
錠剤の硬度
実施例1〜3及び比較例1で得られた錠剤の硬度を、上記のとおりに測定した。測定結果を表3に示す。
Figure 2013075833
表3に示すとおり、実施例1〜3では、錠剤1に比べて錠剤2の硬度が高く、すなわち成形圧を上げると対応して硬度が上昇した。一方、比較例1では成形圧を上げてもさほど硬度が上がらない。比較例1における錠剤1に対する錠剤2の硬度の上昇は、実施例1〜3におけるものと比べて低い。よって、実施例1〜3の処方は、比較例1の処方と比べて、より良い成形性をもたらす。また、試験例1に示されるとおり、実施例1〜3の錠剤2、すなわち1000kgfの成形圧で打錠された錠剤において類縁物質の生成が抑制された。従来は、打錠時におけるカンデサルタンシレキセチル結晶のひずみ発生を防ぐ為に、約500kgf以下の低圧で打錠していた。実施例1〜3の処方において、当該低圧で成形する必要がない。よって、実施例1〜3の処方において、従来よりも広い範囲の成形圧が適用可能である。
また、カンデサルタンシレキセチルの先発錠剤(ブロプレス錠2、武田薬品工業株式会社)の硬度は約50〜60Nである。当該先発錠剤の硬度と同等若しくはそれ以上の硬度が、カンデサルタンシレキセチル錠剤として適切である。実施例1〜3の錠剤は、いずれも硬度が50N以上である。よって、実施例1〜3の錠剤は、カンデサルタンシレキセチル錠剤として適切である。
(試験例3)
溶出試験
実施例1の錠剤1及びカンデサルタンシレキセチルの先発錠剤(ブロプレス錠2、武田薬品工業株式会社)について、パドル法による溶出試験を行なった。当該溶出試験の試験方法は、第16改正日本薬局方に記載されたカンデサルタンシレキセチル錠の溶出性の試験方法に従った。第16改正日本薬局方において、当該溶出試験における45分間の溶出率が75%以上であることが求められている。当該溶出試験の結果を下のグラフに示す。
Figure 2013075833
上記グラフに示されるとおり、実施例1の錠剤1は、先発錠剤と同様に、45分で75%以上の溶出率が得られた。すなわち、実施例1の錠剤1は、第16改正日本薬局方において求められている溶出率を達成しており、溶出性は良好である。
ステンレス容器中で12gのヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL、日本曹達株式会社)を140.4gの精製水中に溶解させ、次いで3.6gのクエン酸トリエチル(シトロフレックス2、森村商事)を添加して溶解させ、さらにカンデサルタンシレキセチル(第十六改正日本薬局方における「カンデサルタンシレキセチル」)4gを投入して懸濁液を調製した。20gのトウモロコシデンプン(コーンスターチ、日本食品化工株式会社)及び100gの乳糖水和物(Pharmatose200、DMV)を流動層造粒機(FL-LABO、フロイント産業株式会社)中に投入して流動させたところに、前記懸濁液160gをスプレーして造粒した。引き続き、流動層造粒機中で乾燥を行い、造粒乾燥物を得た。当該造粒乾燥物を0.5mmふるいに通して整粒し、整粒物を得た。当該整粒物100gに59gの乳糖水和物(Supertab SD14、DMV)、18.6gの結晶セルロース(セオラスPH-101、旭化成ケミカルズ株式会社)、8gのカルメロースカルシウム(ECG-505、五徳薬品株式会社)、及び0.57gのステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業株式会社)を添加して混合し、錠用末を得た。当該錠用末はロータリー式打錠機(VELA5、菊水製作所株式会社)を用いて、約480kgfの成形圧で、1錠あたり130mgであり、硬度が60Nであり、且つ2mgのカンデサルタンシレキセチルを含有するように打錠して、錠剤(以下、「実施例4の錠剤1」という)を得た。また、別に、当該錠用末を、約1000kgfの成形圧で打錠して、錠剤(以下、「実施例4の錠剤2」という)を得た。下記表4は、上記懸濁液の組成、造粒機中への材料の添加量、及び錠用末の組成を示す。
20gのトウモロコシデンプンの代わりに同量の部分アルファ化デンプン(スターチ1500、Colocon)を用いたこと及びヒドロキシプロピルセルロースのグレードをHPC-SLからHPC-SSLに変更したこと、並びに錠剤1の成形圧を約480kgfから約600kgfに変更したこと以外は、実施例4と同じ方法で2種類の錠剤(以下、「実施例5の錠剤1」及び「実施例5の錠剤2」という)を得た。
20gのトウモロコシデンプンの代わりに同量の部分アルファ化デンプン(スターチ1500、Colocon)を用いたこと及び3.6gのクエン酸トリエチルの代わりに同量のトリアセチンを用いたこと、並びに錠剤1の成形圧を約480kgfから約460kgfに変更したこと以外は、実施例4と同じ方法で2種類の錠剤(以下、「実施例6の錠剤1」及び「実施例6の錠剤2」という)を得た。
(比較例2)
クエン酸トリエチルを添加しなかったこと、精製水の量が144gであること、及び錠用末の組成を以下表4に記載のとおりに変更したこと、並びに錠剤1の成形圧を約480kgfから約300kgfに変更したこと以外は実施例4と同じ方法で2種類の錠剤(以下、「比較例2の錠剤1」及び「比較例2の錠剤2」という)を得た。錠用末の組成の変更は、クエン酸トリエチルを添加しないことによる整粒物の組成の変更に対応するものである。
Figure 2013075833
(試験例4)
類縁物質の生成割合の測定
上記試験例1と同様に、実施例4〜6及び比較例2で得られた錠剤について類縁物質の生成割合を測定した。
結果を表5に示す。
Figure 2013075833
表5に示されているとおり、実施例4の錠剤1並びに実施例5及び6の錠剤1及び2における類縁物質の割合の増加分は、比較例2の錠剤1及び2における類縁物質の割合の増加分と比べて低い。すなわち、実施例4〜6では、比較例2と比べて成形圧が高いにもかかわらず、類縁物質の生成が抑制された。また、実施例6より実施例5のほうが、類縁物質割合の増加が抑制されている。すなわち、トリアセチンを添加した場合よりもクエン酸トリエチルを添加した場合のほうが、類縁物質割合の増加が抑制される。
(試験例5)
錠剤の硬度
実施例4〜6及び比較例2で得られた錠剤の硬度を、上記のとおりに測定した。測定結果を表6に示す。
Figure 2013075833
上記試験例2で述べたとおり、上記先発錠剤の硬度と同等若しくはそれ以上の硬度が、カンデサルタンシレキセチル錠剤として適切である。表6に示すとおり、実施例4〜6の錠剤は、いずれも50以上であり、カンデサルタンシレキセチル錠剤として適切である。
表6に示すとおり、実施例5及び6では、錠剤1に比べて錠剤2の硬度が高く、すなわち成形圧を上げると対応して硬度も上昇した。よって、実施例5及び6における処方は、成形性が良い。また、実施例5及び6において1000kg程度の成形圧でも安定性が良いことが認められた。よって、実施例5及び6の処方において、低圧で成形するなどの特別な方法を必要とせず、一般的な打錠方法で錠剤を得ることができる。
ステンレス容器中で2.4gのメチルセルロース(SM-4、信越化成工業)を117.6gの精製水中に溶解させ、次いで40gのアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマー分散液(オイドラギットNE30D、EVONIK)を加えて混合し、さらにカンデサルタンシレキセチル4gを投入して懸濁液を調製した。20gのトウモロコシデンプン(コーンスターチ、日本食品化工)及び100gの乳糖水和物(Pharmatose200、DMV)を流動層造粒機(FL-LABO、フロイント産業)中に投入して流動させたところに、前記懸濁液をスプレーして造粒した。引き続き、流動層造粒機中で乾燥を行い、造粒乾燥物を得た。当該造粒乾燥物を0.5mmふるいに通して整粒して、整粒物を得た。100gの当該整粒物に、60.4gの乳糖水和物(Supertab SD14、DMV)、18.79gの結晶セルロース(セオラスPH-101、旭化成ケミカルズ)、8.09gのカルメロースカルシウム(ECG-505、五徳薬品)、及び0.58gのステアリン酸マグネシウム(植物性、太平化学産業)を添加して混合し、錠用末とした。当該錠用末を、ロータリー式打錠機(VELA5、菊水製作所)を用いて、約350kgfの成形圧で、1錠あたり130mgであり、硬度が60Nであり、且つ2mgのカンデサルタンシレキセチルを含有するように打錠して、錠剤(以下、「実施例7の錠剤」という)を得た。
メチルセルロースの量が6gであること、乳糖水和物の量が56.34gであること、18.79gの結晶セルロースの量が18.31gであること、カルメロースカルシウムの量が7.89gであること、及びステアリン酸マグネシウムの量が0.56gであること、並びに錠剤の成形圧を約350kgfから約300kgfに変更したこと以外は、実施例7と同じ方法で錠剤(以下、「実施例8の錠剤」という)を得た。
Figure 2013075833
(試験例6)
類縁物質の生成割合の測定
上記試験例1と同様に、実施例7及び8で得られた錠剤について類縁物質の生成割合を測定した。結果を表8に示す。
Figure 2013075833
表8に示されているとおり、実施例7の錠剤及び実施例8の錠剤における類縁物質の割合の増加分は、実施例1〜6の錠剤におけるものと同程度である。すなわち、実施例7及び8の錠剤において、類縁物質の生成が抑制された。
(試験例7)
錠剤の硬度
実施例7及び8の錠剤の硬度を、上記のとおりに測定した。実施例7の錠剤の硬度は63Nであり、実施例8の錠剤の硬度は62Nであった。上記試験例2で述べたとおり、上記先発錠剤の硬度と同等若しくはそれ以上の硬度が、カンデサルタンシレキセチル錠剤として適切である。実施例7及び8の錠剤は、いずれも50N以上であり、カンデサルタンシレキセチル錠剤として適切である。

Claims (4)

  1. 1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル2−エトキシ−1−{[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イル]メチル}−1H−ベンズイミダゾール−7−カルボキシレート若しくはその生理学的に許容される塩又はそれらの水和物を含有する固形製剤であって、ポリビニルアルコールポリエチレングリコールグラフトコポリマー、クエン酸トリエチル、トリアセチン、及びアクリル酸エチルメタクリル酸メチルコポリマーの群から選ばれる少なくとも1の化合物を含有する前記剤。
  2. 結合剤をさらに含む、請求項1に記載の剤。
  3. 前記結合剤がヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、及びカルメロースナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1つである、請求項2に記載の剤。
  4. 錠剤である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の剤。
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