JP2013075824A - 透明複合体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】着色が抑制された透明複合体を提供する。
【解決手段】本発明の透明複合体は、ジルコニア粒子を樹脂中に分散してなる透明複合体であって、前記ジルコニア粒子は、平均一次粒径が1nm以上かつ20nm以下であり、ハロゲン元素の含有量がジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量が前記ジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量が前記ジルコニアの質量に対して400ppm以下であり、前記ジルコニア粒子の平均分散粒径は1nm以上かつ30nm以下であり、前記ジルコニア粒子の含有率は1質量%以上かつ80質量%以下であることを特徴とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、ジルコニア粒子とその製造方法及びジルコニア透明分散液、並びに透明複合体及びその製造方法に関し、更に詳しくは、樹脂のフィラー材として好適に用いられ、屈折率の向上および機械的特性の向上と共に樹脂との複合化における着色を抑制し、しかも著しく高い透明性の維持を可能とするジルコニア粒子とその製造方法及びジルコニア透明分散液、このジルコニア透明分散液を用いてジルコニア粒子と樹脂とを複合化することでガラス代替品として利用可能な透明複合体及びその製造方法に関するものである。
従来より、シリカ等の無機酸化物からなるフィラーと樹脂とを複合化することにより、樹脂の機械的特性等を向上させる試みがなされている。このフィラーと樹脂とを複合化する方法としては、無機酸化物粒子を水および/または有機溶媒中に分散させた分散液と樹脂とを混合する方法が一般的であり、分散液と樹脂とを種々の方法により混合することにより、無機酸化物粒子を第2相として複合化した無機酸化物粒子複合化プラスチックを作製することができる。
一方、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(EL)等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用基板としては、従来、ガラス基板が多く用いられてきたが、このガラス基板には、割れ易い、曲げられない、比重が大きく軽量化に不向き等の様々な問題があった。そこで、ガラス基板の代わりにプラスチック基板を用いる試みが数多く行われるようになってきた。
プラスチック基板をフラットパネルディスプレイ(FPD)用とした場合の要求特性としては、透明性、屈折率、機械的特性等が挙げられている。
プラスチックの屈折率を増加させるための無機酸化物フィラーとしては、このプラスチックより高屈折率のジルコニア、酸化チタン等の微粒子が挙げられている。
また、この無機酸化物フィラーを樹脂と複合化するために、無機酸化物フィラーを有機溶媒等の分散媒中に分散させた分散液が開発され、樹脂の屈折率を増加させる点について検討されている。
例えば、平均粒径10〜100nmのジルコニア粒子と樹脂とを複合化した高屈折率かつ高透明性を有し、厚みが数ミクロンのジルコニア複合化プラスチック膜が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−161111号公報
ところで、従来の無機酸化物粒子複合化プラスチックを用いて透明プラスチック基板を作製する場合、基板の透明性を得るために、基板自体の透明度を向上させるのではなく、基板の厚みを薄くすることで対応しているために、機械的強度を高めるために厚みを厚くすると、透明性を維持するのが困難になるという問題点があった。
例えば、上述した従来のジルコニア複合化プラスチック膜の場合、厚みを数μmとすることで高屈折率、高透明性を確保したものであるから、厚みが数十μm、あるいはそれ以上になると、透明性を維持するのが困難になる。
また、ジルコニア粒子と樹脂とを複合化する場合、樹脂と不純物との反応により複合物が着色し透明性が低下するという問題点があるが、現在のところ、技術上及び製造コスト上の点から複合物の不純物量を低減させる画期的な方法は見出されていない。
このように、ジルコニア複合化プラスチックの膜については検討されているものの、このジルコニア複合化プラスチックをバルク体とした場合の屈折率や透明性については、検討されていないのが現状である。
さらに、ジルコニアは、セラミックスの中でも高硬度の特性を有し、第2相として複合化した場合、機械的特性を向上させる点で優位性があるが、機械的特性の向上を目的としてジルコニア粒子を樹脂と複合化しようとする試みは未だになされていない。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ジルコニア粒子の不純物量を抑制することで、屈折率の向上および機械的特性の向上と共に樹脂との複合化における着色を抑制し、しかも著しく高い透明性の維持が可能なジルコニア粒子とその製造方法及びジルコニア透明分散液、このジルコニア透明分散液を用いてジルコニア粒子と樹脂とを複合化することでガラス代替品として利用可能な透明複合体及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、ジルコニア粒子の平均粒径を1nm以上かつ20nm以下とし、ハロゲン元素の含有量を6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量を200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量を400ppm以下に抑制すれば、樹脂と複合化した場合においても着色を抑制することができ、しかも著しく高い透明性を維持しながら、屈折率の向上および機械的特性の向上が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の透明複合体は、ジルコニア粒子を樹脂中に分散してなる透明複合体であって、前記ジルコニア粒子は、平均一次粒径が1nm以上かつ20nm以下であり、ハロゲン元素の含有量がジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量が前記ジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量が前記ジルコニアの質量に対して400ppm以下であり、前記ジルコニア粒子の平均分散粒径は1nm以上かつ30nm以下であり、前記ジルコニア粒子の含有率は1質量%以上かつ80質量%以下であることを特徴とする。
本発明の透明複合体の製造方法は、ジルコニア粒子を樹脂中に分散してなる透明複合体の製造方法であって、ジルコニア透明分散液と樹脂とを混合し、次いで、得られた混合物を成形または充填し、次いで、この成形体または充填物を硬化する工程を有し、前記ジルコニア透明分散液は、ジルコニア粒子を分散媒中に分散してなる透明分散液であり、前記透明分散液中の前記ジルコニア粒子の平均分散粒径が1nm以上かつ30nm以下であり、前記透明分散液中のハロゲン元素の含有量がジルコニアの含有量に対して6000ppm以下、前記透明分散液中のアルカリ金属と窒素各々の含有量が前記ジルコニアの含有量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量が前記ジルコニアの含有量に対して400ppm以下であり、前記ジルコニア粒子は、平均一次粒径が1nm以上かつ20nm以下、ハロゲン元素の含有量がジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量が前記ジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量が前記ジルコニアの質量に対して400ppm以下であることを特徴とする。
本発明のジルコニア粒子は、平均一次粒径は1nm以上かつ20nm以下であり、ハロゲン元素の含有量はジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量は前記ジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量は前記ジルコニアの質量に対して400ppm以下であることを特徴とする。
前記窒素は、アンモニウム性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素、有機性窒素の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
本発明のジルコニア粒子の製造方法は、ジルコニア粒子に含まれる不純物を電気透析法を用いて除去することを特徴とする。
本発明のジルコニア透明分散液は、本発明のジルコニア粒子を分散媒中に分散してなる透明分散液であって、前記分散媒に分散された前記ジルコニア粒子及びその凝集物の粒径である平均分散粒径は1nm以上かつ30nm以下であり、前記透明分散液中のハロゲン元素の含有量はジルコニアの含有量に対して6000ppm以下、前記透明分散液中のアルカリ金属と窒素各々の含有量は前記ジルコニアの含有量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量は前記ジルコニアの含有量に対して400ppm以下であり、前記ジルコニア粒子の含有率は70質量%以下であることを特徴とする。
前記窒素は、アンモニウム性窒素、亜硝酸性窒素、硝酸性窒素、有機性窒素の群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
前記ジルコニア粒子の含有率は1質量%以上かつ70質量%以下であることが好ましい。
本発明の透明複合体は、本発明のジルコニア粒子を樹脂中に分散してなる透明複合体であって、前記ジルコニア粒子の平均分散粒径は1nm以上かつ30nm以下であることを特徴とする。
前記ジルコニア粒子の含有率は1質量%以上かつ80質量%以下であることが好ましい。
可視光線に対する平均透過率は75%以上であることが好ましい。
本発明の透明複合体の製造方法は、本発明のジルコニア透明分散液と樹脂とを混合し、次いで、得られた混合物を成形または充填し、次いで、この成形体または充填物を硬化することを特徴とする。
本発明のジルコニア粒子によれば、平均粒径を1nm以上かつ20nm以下とし、ハロゲン元素の含有量をジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量を前記ジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量を前記ジルコニアの質量に対して400ppm以下としたので、ジルコニア粒子中の不純物の量を減少させることができ、この不純物に起因する光吸収を低下させることができ、その結果、樹脂と複合化した場合においても着色を抑制することができ、この複合物の透明性を向上させることができる。
また、ジルコニア粒子中の不純物の量を減少させたので、屈折率及び機械的特性に優れている。
本発明のジルコニア粒子の製造方法によれば、ジルコニア粒子に含まれる不純物を電気透析法を用いて除去するので、平均粒径が1nm以上かつ20nm以下、ハロゲン元素の含有量がジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量が前記ジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量が前記ジルコニアの質量に対して400ppm以下のジルコニア粒子を、安定かつ安価に製造することができる。
本発明のジルコニア透明分散液によれば、ジルコニア粒子の平均分散粒径を1nm以上かつ30nm以下、この透明分散液中のハロゲン元素の含有量をジルコニアの含有量に対して6000ppm以下、この透明分散液中のアルカリ金属と窒素各々の含有量をジルコニアの含有量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量をジルコニアの含有量に対して400ppm以下としたので、透明分散液の着色を抑制することができる。したがって、透明性の高いジルコニア透明分散液を提供することができる。
本発明の透明複合体によれば、ハロゲン元素の含有量がジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量が前記ジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量が前記ジルコニアの質量に対して400ppm以下のジルコニア粒子を樹脂中に分散し、かつ、このジルコニア粒子の平均分散粒径を1nm以上かつ30nm以下としたので、着色を抑制することができ、透明性、屈折率及び機械的特性に優れている。
本発明の透明複合体の製造方法によれば、ジルコニア粒子の平均分散粒径が1nm以上かつ30nm以下、この透明分散液中のハロゲン元素の含有量がジルコニアの含有量に対して6000ppm以下、この透明分散液中のアルカリ金属と窒素各々の含有量がジルコニアの含有量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量がジルコニアの含有量に対して400ppm以下のジルコニア透明分散液と樹脂とを混合し、得られた混合物を成形または充填し、硬化するので、着色を抑制することができ、透明性、屈折率及び機械的特性にも優れている透明複合体を、容易かつ安価に作製することができる。
本発明のジルコニア粒子とその製造方法及びジルコニア透明分散液、並びに透明複合体及びその製造方法を実施するための最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
「ジルコニア粒子」
本発明のジルコニア粒子の平均粒径は、1nm以上かつ20nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上かつ15nm以下、さらに好ましくは2nm以上かつ10nm以下である。
ここで、このジルコニア粒子の平均粒径を1nm以上かつ20nm以下と限定した理由は、平均粒径が1nm未満であると、結晶性が乏しくなり、高屈折率等のジルコニアとしての特性を発現することが難しくなるからであり、一方、平均粒径が20nmを超えると、このジルコニア粒子を用いてジルコニア分散液やジルコニア透明複合体を形成した場合に、分散液や透明複合体の透明性が低下するからである。
すなわち、ジルコニア粒子をナノメートルサイズの粒子とすることにより、このジルコニア粒子を樹脂中に分散させて透明複合体とした場合においても、分散粒子径をナノメートルサイズに維持することが可能となり、光散乱が小さく、複合体の透明性を維持することが可能となる。
このジルコニア粒子のハロゲン元素の含有量は、ジルコニアの質量に対して6000ppm以下であり、アルカリ金属と窒素各々の含有量はジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量はジルコニアの質量に対して400ppm以下である。
ここで、ジルコニア粒子に含まれる不純物の含有量を、ハロゲン元素の含有量をジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量をジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量をジルコニアの質量に対して400ppm以下と限定したのは、ハロゲン元素、アルカリ金属及び窒素各々の含有量が上記の値を超えると、このジルコニア粒子を用いてジルコニア分散液やジルコニア透明複合体を形成した場合に着色が生じ、透明性が低下するからである。
上記の窒素としては、アンモニアまたはアンモニウム塩に含まれるアンモニウム性窒素、亜硝酸塩に含まれる亜硝酸性窒素、硝酸塩に含まれる硝酸性窒素、ニトリル基、アミン基等の基を有する有機化合物に含まれる有機性窒素等が挙げられる。
「ジルコニア粒子の製造方法」
本発明のジルコニア粒子を作製するには、既に出願公開されている「金属酸化物ナノ粒子の製造方法」(特開2006−16236号公報)に記載の方法を用いる。
すなわち、ジルコニウムイオンまたはジルコニウム酸化物イオンを含むジルコニウム塩溶液を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を含む塩基性溶液にて中和させる際に、ジルコニウムイオンまたはジルコニウム酸化物イオンの価数をm、塩基性溶液中の水酸基のモル比をnとするとき、これらm及びnが次式
0.5<n<m ……(1)
を満たす様に、ジルコニウム塩溶液に上記の塩基性溶液を加えてジルコニウム塩溶液を部分中和させてジルコニア前駆体を生成し、この部分中和された溶液に、アルカリ金属塩および/またはアルカリ土類金属塩等の無機塩を加えて混合溶液とし、この混合溶液を加熱処理する。
このようにして得られたジルコニア粒子は、不純物として、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、ヨウ化物、臭化物、フッ化物またはリン酸塩を含んでいる。
そこで、加熱処理の後、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、ヨウ化物、臭化物、フッ化物またはリン酸塩を洗浄除去する洗浄工程が必要となる。
本発明では、ジルコニア粒子に含まれる不純物を極力除去する目的で、上記の洗浄工程に電気透析法を適用し、ジルコニア粒子に含まれる不純物が、ハロゲン元素の含有量がジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量がジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量がジルコニアの質量に対して400ppm以下となるまで洗浄する。
なお、この洗浄工程の全てを電気透析法による洗浄法で行なうことは必ずしも必要ではなく、あらかじめ通常の水洗などでアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む硫酸塩、炭酸塩、硝酸塩、塩化物、ヨウ化物、臭化物、フッ化物またはリン酸塩の大半を除去した後、最終段階で電気透析法による洗浄を用いることも可能である。
洗浄後のジルコニア粒子を洗浄液と分離し、本発明のジルコニア粒子を得る。
なお、このジルコニア粒子を用いてジルコニア分散液やジルコニア透明複合体を形成する場合に適した分散処理などの処理を、必要に応じて施してもよい。
「ジルコニア透明分散液」
本発明のジルコニア透明分散液は、本発明のジルコニア粒子を分散媒中に分散してなる透明分散液であり、ジルコニア粒子の平均分散粒径を1nm以上かつ30nm以下とし、この透明分散液中のハロゲン元素の含有量をジルコニアの含有量に対して6000ppm以下、この透明分散液中のアルカリ金属と窒素各々の含有量をジルコニアの含有量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量をジルコニアの含有量に対して400ppm以下とした透明分散液である。
このジルコニア透明分散液の平均分散粒径は、1nm以上かつ30nm以下が好ましく、より好ましくは1nm以上かつ25nm以下、さらに好ましくは1nm以上かつ20nm以下である。
ここで、ジルコニア粒子の平均分散粒径を1nm以上かつ30nm以下と限定した理由は、平均分散粒径が1nm未満であると、結晶性が乏しくなり、屈折率等のジルコニアとしての特性を発現することが難しくなるからであり、一方、平均分散粒径が30nmを超えると、レイリー散乱が増加してジルコニア自体の透過率が低下することにより、分散液や透明複合体とした場合に透明性が低下し、可視光線に対する平均透過率が75%以上とならなくなる可能性が生じるからである。
なお、この平均透過率は80%以上であることがより好ましい。この平均透過率を80%以上とした場合、ジルコニア粒子の平均分散粒径を1nm以上かつ20nm以下とすることでレイリー散乱が減少するので好ましい。
ここで、平均透過率とは、可視光線の波長帯域である380nm〜800nmの範囲の光透過率を平均した値である。
なお、ジルコニア粒子の平均分散粒径の範囲が平均粒径の範囲より拡大している理由は、ジルコニア粒子を分散液中または樹脂中に分散させる際に分散剤を添加するために、この分散剤がジルコニア粒子の表面を覆い、このジルコニア粒子の実質的な粒子径を拡大しているためである。また、分散液中あるいは樹脂中のジルコニア粒子の一部が凝集していることも考えられる。
このように、ジルコニア粒子は、ナノメートルサイズの粒子であるから、このジルコニア粒子を樹脂中に分散させて透明複合体とした場合においても、光散乱が小さく、複合体の透明性を維持することが可能である。
また、このジルコニア透明分散液中のハロゲン元素の含有量をジルコニアの含有量に対して6000ppm以下、この透明分散液中のアルカリ金属と窒素各々の含有量をジルコニアの含有量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量をジルコニアの含有量に対して400ppm以下と限定したのは、これらの成分の含有量が上記の値を超えると、分散液に着色が生じ、この分散液の透明性が低下するからであり、さらに、この分散液を用いて透明複合体を形成した場合に、透明複合体に着色が生じ、透明性が低下するからである。
このジルコニア透明分散液におけるジルコニア粒子の含有率は、1重量%以上かつ70重量%以下が好ましく、より好ましくは1重量%以上かつ50重量%以下、さらに好ましくは5重量%以上かつ30重量%以下である。
ここで、ジルコニア粒子の含有率を1重量%以上かつ70重量%以下と限定した理由は、この範囲がジルコニア粒子が良好な分散状態を取りうる範囲であり、含有率が1重量%未満であると、ジルコニア粒子としての効果が低下し、また、70重量%を超えると、ゲル化や凝集沈澱が生じ、分散液としての特徴を消失するからである。
分散媒は、基本的には、水、有機溶媒、液状の樹脂モノマー、液状の樹脂オリゴマーのうち1種または2種以上を主成分としたものである。
上記の有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール、オクタノール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が好適に用いられ、これらの溶媒のうち1種または2種以上を用いることができる。
上記の液状の樹脂モノマーとしては、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系またはメタクリル系のモノマー、エポキシ系モノマー等が好適に用いられる。
また、上記の液状の樹脂オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシアクリレート系オリゴマー、アクリレート系オリゴマー等が好適に用いられる。
このジルコニア透明分散液は、上記以外に、その特性を損なわない範囲において、他の無機酸化物粒子、分散剤、分散助剤、カップリング剤、樹脂モノマー等を含有していてもよい。
ジルコニア粒子以外の無機酸化物粒子としては、酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化スズ、アンチモン添加酸化スズ(ATO)、スズ添加酸化インジウム(ITO)等が挙げられる。
分散剤としては、リン酸エステル系分散剤等が挙げられる。
このジルコニア透明分散液は、ジルコニア粒子の含有率を5重量%とした場合、光路長を10mmとしたときの可視光線透過率が90%以上が好ましく、より好ましくは95%以上である。
この可視光線透過率は、ジルコニア粒子の含有率により異なり、ジルコニア粒子の含有率が1重量%では、95%以上、ジルコニア粒子の含有率が40重量%では、80%以上である。
「透明複合体」
本発明の透明複合体は、平均分散粒径が1nm以上かつ30nm以下、ハロゲン元素の含有量がジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量がジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量がジルコニアの質量に対して400ppm以下のジルコニア粒子を、樹脂中に分散した透明複合体である。
樹脂としては、可視光線あるいは近赤外線等の所定の波長帯域の光に対して透明性を有する樹脂であればよく、熱可塑性、熱硬化性、可視光線や紫外線や赤外線等による光(電磁波)硬化性、電子線照射による電子線硬化性等の硬化性樹脂が好適に用いられる。
この樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリシクロヘキシルメタクリレート等のアクリル、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアミド、フェノール−ホルムアルデヒド(フェノール樹脂)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)、メチルメタクレート・スチレン共重合体(MS樹脂)、ポリ−4−メチルペンテン、ノルボルネン系ポリマー、ポリウレタン、エポキシ、シリコーン等が挙げられる。
これらの樹脂の中でも、特に、光学特性及び機械的特性に優れている点で、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂が好ましい。
この樹脂に対しては、その特性を損なわない範囲において、酸化防止剤、離型剤、カップリング剤、無機充填剤等を添加してもよい。
この透明複合体におけるジルコニア粒子の含有率は、1質量%以上かつ80質量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以上かつ80重量%以下、さらに好ましくは10重量%以上かつ50重量%以下である。
ここで、ジルコニア粒子の含有率を1重量%以上かつ80重量%以下と限定した理由は、下限値の1重量%が屈折率及び機械的特性の向上が可能となる含有率の最小値であるからであり、一方、上限値の80重量%は、樹脂自体の特性(柔軟性、比重)を維持することができる含有率の最大値であるからである。
この透明複合体では、ジルコニア粒子の含有率を25重量%とした場合、光路長を1mmとしたときの可視光線透過率は90%以上が好ましく、より好ましくは92%以上である。
この可視光線透過率は、透明複合体におけるジルコニア粒子の含有率により異なり、ジルコニア粒子の含有率が1重量%では、95%以上、ジルコニア粒子の含有率が40重量%では、80%以上であることが好ましい。
このジルコニア粒子の屈折率は2.15である。一方、複合化前の樹脂の屈折率は、アクリレート、シリコーン樹脂が1.4程度、エポキシ樹脂が1.5程度とジルコニア粒子に比べて低いので、ジルコニア粒子を樹脂中に分散させることにより、透明複合体の屈折率を樹脂単体に比べて増加させることが可能である。
また、ジルコニア粒子は、セラミックス粒子の中でも高硬度を有し、第2相として複合化した場合、透明複合体の機械的特性を向上させることに適している。
また、ジルコニア粒子は、ナノメートルサイズの粒子であるから、樹脂と複合化させた場合においても、光散乱が小さく、透明複合体の透明性を維持することが可能である。
「透明複合体の製造方法」
本発明の透明複合体は、次に挙げる方法により作製することができる。
まず、上述した本発明のジルコニア透明分散液と、樹脂のモノマーやオリゴマーを、ミキサー等の混合手段を用いて混合し、流動し易い状態の樹脂組成物とする。
次いで、この樹脂組成物を、金型を用いて成形、金型あるいは容器内に充填のいずれかの方向により成形体もしくは充填物を作製し、次いで、この成形体もしくは充填物に、加熱、あるいは紫外線や赤外線等の照射を施し、この成形体もしくは充填物を硬化させる。
上記のジルコニア透明分散液に含まれる分散媒のうち、水や有機溶媒については、通常、ジルコニア透明分散液と樹脂とを混合後、揮発などにより除去することが好ましい。除去方法としては、真空(常温)乾燥、加熱乾燥などの方法がある。ここで分散媒の除去が不十分な場合、樹脂硬化時に気泡が発生するなどの問題が生じることがある。一方、液状の樹脂モノマーやオリゴマーを分散媒とした場合には、分散媒自体を樹脂成分として使用することができるので好ましい。
ここで、樹脂のモノマーやオリゴマーが、反応性を有する炭素二重結合(C=C)を有する場合、単に混合するだけでも重合・樹脂化させることができる。
特に、アクリル樹脂等の紫外線(UV)硬化性樹脂を含む樹脂組成物を硬化させる方法としては、様々な方法があるが、代表的には、加熱または光照射により開始されるラジカル重合反応を用いたモールド成形法、トランスファー成形法等が挙げられる。このラジカル重合反応としては、熱による重合反応(熱重合)、紫外線等の光による重合反応(光重合)、ガンマ線による重合反応、あるいは、これらの複数を組み合わせた方法等が挙げられる。
本発明の透明複合体の一例として、シリコーン樹脂からなる光学素子が挙げられる。この光学素子は、1種または複数種のオルガノポリシロキサン、硬化剤、触媒を金型に入れ、この金型中にて熱硬化させ、所定の形状の成形体とすることにより製造される。熱硬化反応としては、縮合架橋、パーオキサイド架橋、白金付加架橋等の反応を用いることができる。特に、白金触媒を用いた付加重合反応による熱硬化が好ましい。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
[ジルコニア粒子の作製及び評価]
「実施例1」
オキシ塩化ジルコニウム8水塩2615gを純水40Lに溶解させたジルコニウム塩溶液に、28%アンモニア水344gを純水20Lに溶解させた希アンモニア水を攪拌しながら加え、ジルコニア前駆体スラリーを調整した。
次いで、このスラリーに、硫酸ナトリウム300gを5Lの純水に溶解させた硫酸ナトリウム水溶液を攪拌しながら加え、混合物を作製した。このときの硫酸ナトリウムの添加量は、ジルコニウム塩溶液中のジルコニウムイオンのジルコニア換算値に対して30重量%であった。
次いで、この混合物を、乾燥器を用いて、大気中、130℃にて24時間、乾燥させ、固形物を作製した。
次いで、この固形物を自動乳鉢により粉砕した後、電気炉を用いて、大気中、500℃にて1時間焼成し、焼成物を作製した。
次いで、この焼成物を純水10L中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、電気透析装置を用いてスラリーの電導度が1mS/cmになるまで洗浄を行い、硫酸ナトリウム等の不純物を十分に除去した。その後、乾燥器にて乾燥させ、実施例1のジルコニア粒子を作製した。
次いで、このジルコニア粒子の塩素含有量をイオンクロマト法、ナトリウム含有量を原子吸光法、窒素含有量を吸光光度法により定量分析した。
平均粒径については、粉末X線回折法によりジルコニアのミラー指数(111)の回折線のプロファイルを測定し、このプロファイルの拡がりからシェラー(Scherrer)の式を用いて結晶子の大きさ(結晶子径)を求めた。
表1に、これらの測定結果を示す。
「実施例2」
実施例1の電気透析装置による洗浄をスラリーの電導度が1.5mS/cmになるまでとした他は、実施例1に準じて実施例2のジルコニア粒子を作製し評価した。
表1に、これらの測定結果を示す。
「比較例1」
実施例1に準じて比較例1の焼成物を作製した。
次いで、この焼成物を純水10L中に投入し、攪拌してスラリー状とした後、遠心分離機を用いて洗浄を行い、その後、乾燥器にて乾燥させ、比較例1のジルコニア粒子を作製した。
次いで、このジルコニア粒子の塩素含有量、ナトリウム含有量、窒素含有量及び平均粒径を、実施例1に準じて定量分析した。
表1に、これらの測定結果を示す。
Figure 2013075824
[ジルコニア透明分散液の作製及び評価]
「実施例3」
実施例1のジルコニア粒子10gに、分散媒としてメチルエチルケトンを87g、分散剤としてCS−141E(旭電化工業(株)社製)を3g加え、その後分散処理を行い、実施例3のジルコニア透明分散液(Z1)を作製した。
次いで、このジルコニア透明分散液(Z1)のジルコニア粒子の平均分散粒径、分散液の可視光線透過率および着色程度を測定した。
平均分散粒径は、動的光散乱式粒径分布測定装置(Malvern社製)を用い、ジルコニア透明分散液中のジルコニア粒子の含有率を1質量%に調製したものを測定用試料とした。
また、データ解析条件としては、粒子径基準を体積基準とし、分散粒子であるジルコニアの屈折率を2.15、分散媒であるメチルエチルケトンの屈折率を1.38とした。
塩素、ナトリウムおよび窒素それぞれの含有量については、上記の分散媒および分散剤の塩素、ナトリウムおよび窒素それぞれの含有量がppmオーダー以下であり、この分散液の塩素、ナトリウムおよび窒素それぞれの含有量を分散液の状態のまま測定することが難しいとの理由から、実施例1のジルコニア粒子の値をそのまま使用した。
可視光線透過率は、この分散液のジルコニアの含有率をメチルエチルケトンを用いて5質量%に調製した試料を石英セル(10mm×10mm)に入れ、この試料の光路長10mmとしたときの可視光線透過率を分光光度計(日本分光社製)を用いて測定した。ここでは、透過率が80%以上を「○」、80%未満を「×」とした。
着色程度は、上記の石英セル中の試料の拡散反射スペクトルを分光光度計(日本分光社製)を用いて測定した。ここでは、波長400〜500nmの領域に吸収が観察されない場合を「○」、吸収が観察された場合を「×」とした。
表2に、これらの測定結果を示す。
「実施例4」
実施例2のジルコニア粒子を用いた他は、実施例3に準じて実施例4のジルコニア透明分散液(Z2)を作製した。
また、このジルコニア透明分散液(Z2)の特性を実施例3に準じて測定した。表2に、これらの測定結果を示す。
「比較例2」
比較例1のジルコニア粒子10gに、分散媒としてメチルエチルケトンを87g、分散剤としてCS−141E(旭電化工業(株)社製)を3g加え、その後分散処理を行い、比較例2のジルコニア分散液(Z3)を作製した。
また、このジルコニア分散液(Z3)の特性を実施例3に準じて測定した。表2に、これらの測定結果を示す。
Figure 2013075824
[透明複合体の作製]
「実施例5」
実施例3のジルコニア透明分散液100gに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート2.5g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5gを加え、真空乾燥により溶媒を取り除き、実施例5の樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を、ガラス板で組み上げた型の中に厚みが1mmになるように流し込み、60℃にて5時間、続いて120℃にて2時間加熱して硬化させ、実施例5の透明複合体を作製した。
この透明複合体のジルコニアの含有率は50重量%であった。
「実施例6」
実施例3のジルコニア透明分散液100gに、シリコーンオイル(メチルハイドロジェンポリシロキサンと両末端に各々ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとの混合物)10gを加え、さらに、塩化白金酸をシリコーンオイル100質量部に対して20ppmとなるように加え、真空乾燥により溶媒を取り除き、実施例6の樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を、ガラス板で組み上げた型の中に厚みが1mmになるように流し込み、150℃にて2時間加熱して硬化させ、実施例6の透明複合体を作製した。
この透明複合体のジルコニアの含有率は50重量%であった。
「実施例7」
実施例3のジルコニア透明分散液100gに、エポキシレジン:エピコート828を7g、および硬化剤としてエピキュア3080を3g(いずれもジャパンエポキシレジン(株)社製)加え、真空乾燥により溶媒を取り除き、実施例7の樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を、ガラス板で組み上げた型の中に厚みが1mmになるように流し込み、80℃にて30分間加熱して硬化させ、実施例7の透明複合体を作製した。
この透明複合体のジルコニアの含有率は50重量%であった。
「実施例8」
実施例4のジルコニア透明分散液を用いた他は、実施例5に準じて実施例8の透明複合体を作製した。
「実施例9」
実施例4のジルコニア透明分散液を用いた他は、実施例6に準じて実施例9の透明複合体を作製した。
「実施例10」
実施例4のジルコニア透明分散液を用いた他は、実施例7に準じて実施例10の透明複合体を作製した。
「比較例3」
比較例2のジルコニア分散液100gに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート5g、ペンタエリスリトールトリアクリレート2.5g、ペンタエリスリトールテトラアクリレート2g、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.5gを加え、真空乾燥により溶媒を取り除き、比較例3の樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を実施例5に準じて処理し、比較例3の透明複合体を作製した。
この透明複合体のジルコニアの含有率は50重量%であった。
「比較例4」
比較例2のジルコニア分散液100gに、シリコーンオイル(メチルハイドロジェンポリシロキサンと両末端に各々ビニル基を有するオルガノポリシロキサンとの混合物)10gを加え、さらに、塩化白金酸をシリコーンオイル100質量部に対して20ppmとなるように加え、真空乾燥により溶媒を取り除き、比較例4の樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を実施例6に準じて処理し、比較例4の透明複合体を作製した。
この透明複合体のジルコニアの含有率は50重量%であった。
「比較例5」
比較例2のジルコニア分散液100gに、エポキシレジン:エピコート828を7g、および硬化剤としてエピキュア3080を3g(いずれもジャパンエポキシレジン(株)社製)加え、真空乾燥により溶媒を取り除き、比較例5の樹脂組成物を作製した。
次いで、この樹脂組成物を実施例7に準じて処理し、比較例5の透明複合体を作製した。
この透明複合体のジルコニアの含有率は50重量%であった。
「比較例6」
透明複合体のジルコニアの含有率を1重量%とした他は、比較例3に準じて比較例6の透明複合体を作製した。
「比較例7」
透明複合体のジルコニアの含有率を1重量%とした他は、比較例4に準じて比較例7の透明複合体を作製した。
「比較例8」
透明複合体のジルコニアの含有率を1重量%とした他は、比較例5に準じて比較例8の透明複合体を作製した。
「透明複合体の評価」
実施例5〜10及び比較例3〜8それぞれの透明複合体について、可視光線透過率、屈折率、硬度及び着色程度の4点について、下記の装置または方法により評価を行った。
(1)可視光線透過率
分光光度計(日本分光社製)を用いて可視光線の透過率を測定した。
ここでは、測定用試料を100×100×1mmの大きさのバルク体とし、透過率が80%以上を「○」、80%未満を「×」とした。
(2)屈折率
日本工業規格:JIS K 7142「プラスチックの屈折率測定方法」に準拠し、アッベ屈折計により測定した。
ここでは、ジルコニアを添加していない樹脂の屈折率を基準として、この基準値より高い場合を「○」、この基準値より低い場合を「×」とした。
(3)硬度
日本工業規格:JIS K 7215「プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法」に準拠し、デュロメータを用いてJIS−A硬度を測定した。
ここでは、ジルコニアを添加していない樹脂の硬度を基準とし、この基準値より高い場合を「○」、この基準値より低い場合を「×」とした。
(4)着色程度
100×100×1mmの大きさのバルク体を測定用試料とし、この試料の拡散反射スペクトルを分光光度計(日本分光社製)を用いて測定した。ここでは、波長400〜500nmの領域に吸収が観察されない場合を「○」、吸収が観察された場合を「×」とした。
表3に、これらの測定結果を示す。
Figure 2013075824
これらの評価結果によれば、実施例5〜10では、可視光線透過率、屈折率、硬度、着色程度ともに良好であることが分かった。
一方、比較例3〜5では、ジルコニアの含有量が50%と実施例5〜10と同等であることから、屈折率および硬度が上昇している点では問題がなかったが、塩素、ナトリウムおよび窒素それぞれの含有量が高いために樹脂に着色が発生し、したがって、着色程度が劣化し、可視光線透過率も劣化していた。
また、比較例6〜8では、ジルコニアを含有したことにより屈折率および硬度が上昇している点では問題がなく、また、ジルコニアの含有量が1%と低いことから、透過率の劣化も問題がなかったが、着色程度が劣化していた。
本発明のジルコニア粒子は、平均粒径が1nm以上かつ20nm以下、ハロゲン元素の含有量がジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量がジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量がジルコニアの質量に対して400ppm以下としたことにより、このジルコニア粒子を樹脂と複合させた透明複合体の屈折率の増加および機械的特性の向上と共に着色を抑制し、よって著しく高い透明性の維持を図ることができたものであるから、この透明複合体が半導体レーザ(LD)や発光ダイオード(LED)の封止材、液晶表示装置用基板、有機EL表示装置用基板、カラーフィルター用基板、タッチパネル用基板、太陽電池用基板等の光学シート、透明板、光学レンズ、光学素子、光導波路等として有用であることはもちろんのこと、これ以外の様々な工業分野に対しても適用可能であり、その効果は大である。

Claims (3)

  1. ジルコニア粒子を樹脂中に分散してなる透明複合体であって、
    前記ジルコニア粒子は、平均一次粒径が1nm以上かつ20nm以下であり、ハロゲン元素の含有量がジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量が前記ジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量が前記ジルコニアの質量に対して400ppm以下であり、
    前記ジルコニア粒子の平均分散粒径は1nm以上かつ30nm以下であり、前記ジルコニア粒子の含有率は1質量%以上かつ80質量%以下であることを特徴とする透明複合体。
  2. 可視光線に対する平均透過率は75%以上であることを特徴とする請求項1記載の透明複合体。
  3. ジルコニア粒子を樹脂中に分散してなる透明複合体の製造方法であって、
    ジルコニア透明分散液と樹脂とを混合し、次いで、得られた混合物を成形または充填し、次いで、この成形体または充填物を硬化する工程を有し、
    前記ジルコニア透明分散液は、ジルコニア粒子を分散媒中に分散してなる透明分散液であり、
    前記透明分散液中の前記ジルコニア粒子の平均分散粒径が1nm以上かつ30nm以下であり、前記透明分散液中のハロゲン元素の含有量がジルコニアの含有量に対して6000ppm以下、前記透明分散液中のアルカリ金属と窒素各々の含有量が前記ジルコニアの含有量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量が前記ジルコニアの含有量に対して400ppm以下であり、
    前記ジルコニア粒子は、平均一次粒径が1nm以上かつ20nm以下、ハロゲン元素の含有量がジルコニアの質量に対して6000ppm以下、アルカリ金属と窒素各々の含有量が前記ジルコニアの質量に対して200ppm以下、かつこれらアルカリ金属及び窒素の合計含有量が前記ジルコニアの質量に対して400ppm以下である
    ことを特徴とする透明複合体の製造方法。
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