JP2013075387A - 加飾シート及び加飾成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】基材上に少なくとも離型層、保護層、絵柄層及び接着層を順に積層してなる加飾シートであり、該離型層は、バインダー樹脂及びワックスを18〜60質量%含むバインダー樹脂組成物からなることを特徴とする加飾シートである。
【選択図】図1
Description
射出成形同時転写加飾法においては、射出成形同時転写加飾用の加飾シートの転写層側を金型内に向けて転写層側から熱盤によって加熱し、該加飾シートが金型内形状に沿うように成形して金型内面に密着させて型締した後、キャビティ内に溶融した射出樹脂を射出して該加飾シートと射出樹脂とを一体化し、次いで加飾成形品を冷却して金型から取り出した後、基材フィルムを剥離することにより転写層を転写した加飾成形品を得ることができる。
すなわち、本発明は、(1)〜(8)に関する。
(1)基材上に少なくとも離型層、保護層、絵柄層及び接着層を順に積層してなる加飾シートであり、該離型層が、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が、18〜60質量%である樹脂組成物からなることを特徴とする加飾シート
(2)離型層を構成する樹脂組成物は、更に無機フィラーを2〜50質量%含むものである上記1に記載の加飾シート。
(3)ワックスの軟化点が、50〜90℃である上記1又は2に記載の加飾シート。
(4)離型層を構成する樹脂組成物の無機フィラーが、シリカを含有する上記2又は3に記載の加飾シート。
(5)離型層を構成する樹脂組成物の無機フィラーが炭酸カルシウムであって、樹脂組成物中に30質量%以下含まれるものである上記4に記載の加飾シート。
(6)バインダー樹脂が、アクリル樹脂とスチレン−アクリル共重合体とを含むものである上記1〜5に記載の加飾シート。
(7)上記1〜6のいずれかに記載の加飾シートの接着層側を金型内に向けて、熱盤によって接着層側から該加飾シートを加熱する工程、加熱された該加飾シートを金型内形状に沿わせ予備成形して型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から基材付き加飾成形品を取り出す工程、及び該加飾成形品から基材及び離型層を剥離する工程を含む加飾成形品の製造方法。
(8)射出樹脂、接着層、絵柄層、保護層、離型層及び基材をこの順で有する加飾成形品であって、該離型層が、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が、18〜60質量%である樹脂組成物からなることを特徴とする基材付き加飾成形品。
図1に示される本発明の加飾シート10は、基材11上に離型層12、保護層13、絵柄層14及び接着層15を順に積層させてなる加飾シートであり、該離型層はバインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が18〜60質量%である樹脂組成物からなるものであることを特徴とする。
以下本発明を構成する各層について記載する。
本発明に係る基材11は、真空成形適性を考慮して選定され、代表的には熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムが使用される。該熱可塑性樹脂としては、ポリエステル樹脂;アクリル樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂;ポリカーボネート樹脂;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂);塩化ビニル樹脂等が挙げられる。
本発明に用いられる基材11の厚みは、通常10〜150μmであり、10〜125μmが好ましく、10〜80μmがより好ましい。
また、基材11は、これら樹脂の単層フィルム、あるいは同種又は異種樹脂による複層フィルムを使用することができる。
ポリエステルフィルムを構成するポリエステル樹脂とは、多価カルボン酸と、多価アルコールとから重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーをいう。多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸、アゼライン酸、ドデカジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられる。また、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカンジオール、2−エチル−ブチル−1−プロパンジオール、ビスフェノールAなどが挙げられる。さらに本発明で用いるポリエステル樹脂は、3種類以上の多価カルボン酸や多価アルコールの共重合体であっても良く、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのモノマーやポリマーとの共重合体であっても良い。
なお、該ポリエステル樹脂はホモポリマーでも良く、コポリマーでも良く、また第三成分を共重合させたものであっても良い。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、基材の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
なお、基材11を形成する樹脂フィルムとして市販品を用いる場合には、該市販品は予め上記したような表面処理が施されたものや、易接着剤層が設けられたものも用いることができる。
本発明における離型層12は、保護層13、絵柄層14、及び接着剤層15からなる転写層の基材シート11からの剥離を容易に行うために設けられるものである。離型層12は、図1に示すように、全面を被覆(全面ベタ状)しているベタ離型層であっても良いし、パターン状に設けられるものであっても良い。通常は、剥離性を考慮して、ベタ離型層が好ましい。
本発明における離型層12は、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が18〜60質量%である樹脂組成物からなるものである。
本発明の離型層を構成する樹脂組成物について説明する。
バインダー樹脂としては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体、あるいはこれらの樹脂を(メタ)アクリルやウレタンで変性したものを、単独で又は複数を混合した樹脂混合物等が挙げられる。上記のバインダー樹脂として使用される熱可塑性樹脂、該熱可塑性樹脂を形成するモノマーの共重合体等の重量平均分子量は、好ましくは、3000〜300000より好ましくは5000〜200000のものが用いられる。
上記の熱可塑性樹脂及び樹脂混合物は、無溶剤系でかつ非エマルジョン系、エマルジョン系(水系)、溶剤系等のものを使用することができ、特にエマルジョン系のものを使用することが好ましい。
なかでも、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、これらの樹脂を形成するモノマーの共重合体、及びこれらをウレタン変性したものが好ましく、より具体的には、ポリエステル樹脂とエチレン−アクリル酸共重合体樹脂のウレタン変性体とを混合した樹脂混合物、アクリル樹脂エマルジョンとスチレン−アクリル共重合体樹脂のエマルジョンとを混合した樹脂混合物などが挙げられる。特にこれらのバインダー樹脂の中でもアクリル樹脂エマルジョンとスチレン−アクリル共重合体樹脂のエマルジョンとを混合した樹脂混合物を用いてバインダー樹脂とすることにより、成形後の剥離強度が適度に軽くなり、成形品表面にリリースラインが残存しにくくなるので好ましい。また、その際の質量比(アクリル樹脂:スチレン−アクリル共重合体樹脂)を1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1とすることが望ましい。なおリリースラインとは、加飾成形品から基材及び離型層を剥離する際に、保護層表面に剥離ムラとして線状のムラが残ることを意味する。
ワックスとしては、合成ワックス、石油ワックス、動物由来のワックス、植物由来のワックスが用いられる。合成ワックスは、炭化水素系化合物を化学合成して作られるものであり、炭化水素系合成ワックスと、高級脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等の非炭化水素系合成ワックスとに大別される。炭化水素系合成ワックスとしては、エチレンの重合やポリエチレンの熱分解により製造されるポリエチレンワックスと、一酸化炭素と水素を反応させて製造されるフィッシャー・トロプシュ(Fischer-Tropsch)ワックスとがある。
また、植物由来のワックスとしては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、木蝋、ライスワックス(米ぬか蝋)とが挙げられる。
また上記ワックスを添加することによって後述する無機フィラーを多量に添加することなく、少ない又は添加しない状態であっても、マット感を付与することができる。特に無機フィラーの添加量を、離型層を形成する樹脂組成物中に、固形分比として30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは12質量%以下としたときであってもよりよいマット感を付与することができる。
上述の各種ワックスの内、パラフィンワックス及びカルナバワックスを用いることが良好なマット感が得られる観点から好ましい。また、使用されるワックスの軟化点としては、50〜90℃であることが、より好ましくは50〜70℃であることが剥離強度の観点から好ましい。なお、ワックスの軟化点は、JIS K2207−6の石油アスファルト軟化点試験方法である環球法を用いて測定されるものである。
本発明の加飾シートを構成する離型層を形成する樹脂組成物中には、更に無機フィラーを含むことが好ましい。無機フィラーの含有量は、2〜50質量%、好ましくは5〜45質量%、特に好ましくは5〜20質量%とすることにより、加飾成形品表面のマット感をより豊かなものとすることができる。使用される無機フィラーとしては、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸マグネシウム、リン酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、カオリンなどの無機フィラーを挙げることができる。これらの無機フィラーの中でも、シリカ及び炭酸カルシウムがマット感を豊かにすることができるので好ましく、特にシリカが好ましい。また、シリカと炭酸カルシウムを併用して用いることもできる。シリカと炭酸カルシウムを併用して用いる際の炭酸カルシウムの添加量としては、離型層を形成する樹脂組成物中に、固形分比として30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下となるように添加することが望ましい。炭酸カルシウムの添加量が30質量%以下であれば、加飾成形品表面に良好な耐水性を付与することができる。また、用いられる無機フィラーの平均粒径は、0.1〜10μm、特に好ましくは、0.2〜5μmのものを用いることがよりマット感を付与できる点から望ましい。
なお、無機フィラーの平均粒径の測定は、レーザー回折法を用いて100個測定し、画像解析から算出した数平均粒径を用いる。
本発明の加飾シートを構成する離型層12の厚みは、通常、0.01〜5μm程度であり、好ましくは、0.05〜3μmの範囲である。
本発明における保護層13は、上記した離型層12との相乗効果により、加飾成型品にマット感を有する優れた意匠を付与することを可能とし、また好ましくは保護層13、絵柄層14、及び接着層15からなる転写層の基材シート11からの剥離を容易に行うとともに、該転写層の射出樹脂への転写後においては、絵柄層の保護層として機能させるために設けられる。この保護層を有することで、本発明の加飾シートから転写層を確実に、かつ容易に被転写体へ転写させることができる。保護層は、例えば、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース樹脂、ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、硝化綿などの熱可塑性樹脂を単独で又は複数を混合した樹脂組成物を用い、形成することができる。保護層に用いられる樹脂組成物は、離型層を構成する樹脂組成物との相乗効果により、離型層と保護層との剥離強度を好ましい範囲に調整する観点から適宜選択することが重要となる。このような観点から、保護層に用いられる樹脂組成物はアクリル樹脂、ポリエステル樹脂が好ましく、これらの樹脂をアクリル樹脂の含有量が80〜99.99質量%、好ましくは90〜99.99質量%、より好ましくは99〜99.99質量%の範囲で混合したものがより好ましい。
本発明における絵柄層14は、模様や文字などとパターン状の絵柄を表現するために必要に応じて設けられる層である。絵柄層14の絵柄は任意であるが、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字などからなる絵柄を挙げることができる。また、絵柄層14は、上記絵柄を表現する柄パターン層及び全面ベタ層を単独で又は組み合わせて設けることができる。全面ベタ層は、通常、隠蔽層、着色層、着色隠蔽層などとして用いられる。絵柄層14は、通常は、上記の保護層13に印刷インキでグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インキジェット印刷などの公知の印刷法により形成することで、図1に示すように保護層13と接着層15との間に形成される。絵柄層14の厚みは、意匠性の観点から5〜40μmが好ましく、20〜30μmがより好ましい。
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂としては、通常、酢酸ビニル含有量が5〜20質量%程度、平均重合度350〜900程度のものが用いられる。必要に応じ、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂にさらにマレイン酸、フマル酸などのカルボン酸を共重合させてもよい。アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂との混合比は、アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂=1/9〜9/1(質量比)程度である。この他、副成分の樹脂として、必要に応じて、適宜その他の樹脂、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレンなどの塩素化ポリオレフィン樹脂などの樹脂を混合してもよい。
本発明にかかる接着層15は、好ましくは保護層、絵柄層及び接着層からなる転写層を接着性よく加飾成形品に転写するために形成される。この接着層15に用いられる樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂を挙げることができる。これらの樹脂の1種または2種以上を溶液、あるいはエマルジョンなど塗布可能な形にしたものを、前記保護層で挙げた塗布方法の中から適した方法をそれぞれ選択して、塗布、乾燥することにより形成でき、その厚さは、0.1〜5μm程度が好ましい。
本発明の加飾シートは、基材11上の表面に、好ましくは離型層12、保護層13、絵柄層14及び接着層15を、グラビア印刷、ロールコートなどの公知の印刷又は塗布手段により積層して製造することができる。また、絵柄層14を例えば上記のように柄パターン層と、全面ベタ層との組み合わせとする場合は、一層を積層した後、乾燥し、その後次の層を積層すればよい。
このようにして得られた本発明の加飾シートは、射出成形同時転写加飾に好適に用いられる。
射出成形同時転写加飾による本発明の加飾成形品の製造方法は、以下、(1)〜(5)を含むものである。
(1)まず、本発明の製造方法により得られた加飾シートの接着層側を金型内に向けて、熱盤によって接着層側から加飾シートを加熱する工程、
(2)加熱された該加飾シートを金型内形状に沿わせて予備成形して型締する工程、
(3)射出樹脂を金型内に射出する工程、
(4)該射出樹脂が冷却した後に金型から基材付き加飾成形品を取り出す工程、及び
(5)該加飾成形品から基材及び剥離層を剥離する工程。
上記工程(1)及び(2)において、加飾シートの加熱温度は、基材のガラス転移温度近傍以上で、かつ、溶融温度(または融点)未満の範囲であることが好ましい。通常はガラス転移温度近傍の温度で行うことが、より好ましい。なお、上記のガラス転移温度近傍とは、ガラス転移温度±5℃程度の範囲をさし、基材を構成する熱可塑性樹脂の種類によっても相違するが、基材がポリエステル樹脂である場合、一般に70〜130℃程度である。
加飾成形品に用いられる射出樹脂としては、射出成形可能な熱可塑性樹脂あるいは、熱硬化性樹脂(2液硬化性樹脂を含む)であればよく、特に制限されず、様々な樹脂を用いることができる。このような熱可塑性樹脂材料としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル重合体、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)などのスチレン樹脂、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート、エチレングリコール−テレフタル酸−イソフタル酸共重合体樹脂、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。また、熱硬化性樹脂としては、2液反応硬化型のポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、単独でもよいし、二種以上混合して用いてもよい。
また、これらの樹脂には、必要に応じて各種添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤、可塑剤、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウムなどの無機物粉末、木粉、ガラス繊維などの充填剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤などを添加することができる。なお、射出樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。着色剤には、前述の基材フィルムに用いることのできるものと同様の公知の着色剤を使用できる。
加飾成形品を構成する射出樹脂成形体の厚さについては特に制限はなく、当該加飾成形品の用途に応じて選定されるが、通常1〜5mm、好ましくは2〜3mmである。
〔評価方法〕
<成形後剥離強度>
加飾シートを用いて射出成形を行った直後の離型層と保護層間における剥離強度を以下の基準で評価した。
◎:剥離強度が非常に軽く、成形品表面にリリースラインがない。
○:剥離強度が軽く、成形品表面にリリースラインがほとんどない。
△:剥離強度がやや重く、成形品表面にリリースラインが残る。
×:剥離強度が重く、成形品表面にリリースラインが著しく残る。
<耐水性>
離型層を剥離後の加飾成形品を40℃の温水に24時間浸漬させ、加飾成形品表面の外観状況を観察した。
◎:加飾成形品表面の外観変化が見られない。
○:温水へ浸漬させた部分が若干白濁するが、意匠性は良い。
△:温水へ浸漬させた部分が白濁し意匠性が低い。
×:温水へ浸漬させた部分が著しく白濁し意匠性が失われる。
<成形品グロス値:艶変化>
離型層を剥離後の加飾成形品表面のグロス値を、グロスメーター(「GMX−202(型番)」:村上色彩技術研究所社製)を用いて、入射角60度の条件で測定した。数値が高いほど高艶であることを示し、数字が低いほど低艶であることを示す。
◎:グロス値が0〜5未満
○:グロス値が5〜10未満
△:グロス値が10〜15未満
×:グロス値が15以上
<印刷適性>
絵柄層を印刷した際に見られるインキの転移状態
◎:インキがムラなく転移され意匠性が極めて高い。
○:インキが若干見られるが意匠性は良い。
△:インキのムラが見られ意匠性が低いが、実用上問題ない。
×:インキのムラがあり意匠性が失われる。
(1)加飾シートの製造方法
易接着処理が施された2軸延伸PETフィルム(厚さ:50μm)上に、アクリル樹脂のエマルジョンとスチレン−アクリル共重合体樹脂のエマルジョンとを質量比1:1で混合して得られた混合樹脂溶液にシリカ粉末(平均粒子径4μm)及びパラフィンワックス(軟化点約66℃)を添加して離型層を形成するための塗布液を作成した。この塗布液中には、固形分比として、シリカが10質量%、パラフィンワックスが40質量%含まれていた。この離型層形成用の塗布液を塗布量3g/m2でグラビア印刷を施して離型層12を形成した。次いで、アクリル樹脂(平均分子量95,000)を塗布量4g/m2でグラビア印刷を施して保護層13を形成した。次いで、この保護層上に、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂とをバインダー樹脂とした印刷インキ(アクリル樹脂:50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂:50質量%)を塗布量3g/m2でグラビア印刷を施して木目模様の絵柄層14を形成し、さらにアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂とからなる樹脂(アクリル樹脂:50質量%、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂:50質量%)を塗布量4g/m2でグラビア印刷を施して接着層15を形成し、加飾シートを得た。
上記(1)で得られた加飾シートを、熱盤温度150℃で加熱して射出成形の金型内形状に沿うように成形して、金型内面に密着させた。金型は、80mm角の大きさで、立ち上がり10mm、コーナー部が3Rのトレー状である深絞り度の高い形状のものを用いた。一方、射出樹脂としてABS樹脂(日本エイアンドエル(株)製、商品名「クラスチックMTH−2」)を用いて、これを230℃にて溶融状態にしてから、キャビティ内に射出した。冷却して金型から取り出した後、基材シートを剥離して、表面に保護層、絵柄層、及び接着層からなる転写層を転写形成した加飾成形品を得た。該加飾成形品は、良好であり、マット感(低艶感)が豊かな高級感のある優れた意匠性を有し、また、本発明の加飾シートは、深絞り度の高い三次元曲面を有する表面形状の成形時でも破れることがなく、また、金型成形面に対して追随性が良好であることが分かった。なお、深絞りとは、加飾シートの成形前と成形後との面積比が130%以上となるような形状をいい、深絞り度が高いとは、面積比が大きいことをいう。
また、成形直後の剥離強度、耐水性、艶変化及び印刷適正について評価した結果を表1に示す。
実施例1の加飾シートの製造方法において、離型層形成用の塗布液を固形分比が表1に示す塗布液を使用した以外は同様の方法で加飾シートを得た。得られた加飾シートについて、実施例1の加飾成形品の製造と同様の方法で加飾成形品を得て、成形直後の剥離強度、耐水性、成形品グロス値及び印刷適正について評価した結果を表1に示す。
実施例8
実施例1の加飾シートの製造方法において、アクリル樹脂とスチレン−アクリル共重合体樹脂のエマルジョンとを質量比1:1で混合して得られた混合樹脂溶液に変えて、水性ポリエステルを使用した以外は、同様の方法で加飾シートを得た。得られた加飾シートについて、実施例1の加飾成形品の製造と同様の方法で加飾成形品を得て、成形直後の剥離強度、耐水性、成形品グロス値及び印刷適正について評価した結果を表1に示す。
実施例1の加飾シートの製造方法において、離型層形成用の塗布液を固形分比が表2に示す塗布液を使用した以外は同様の方法で加飾シートを得た。得られた加飾シートについて、実施例1の加飾成形品の製造と同様の方法で加飾成形品を得て、成形直後の剥離強度、耐水性、成形品グロス値及び印刷適正について評価した結果を表2に示す。
パラフィンワックスは、粒子径0.3μm、軟化点約66℃を有する市販品を使用した。
カルナバワックスは、粒子径0.2μm、軟化点約83℃を有する市販品を使用した。
シリカは、平均粒径4μmを有する市販品を使用した。
炭酸カルシウムは、平均粒径1μmを有する市販品を使用した。
表1に示す実施例1〜8の加飾成形シート及び加飾成形品は、表2に示す比較例1〜8の加飾成形シート及び加飾成形品と比較して、成形直後の剥離強度、耐水性、成形品グロス値に優れていることが分かった。なお、実施例2、実施例4及び実施例6における成形品グロス値は、△(グロス値が10〜15未満)であるが、実用上、問題ないものである。また、印刷適性においてもインキムラが若干見られるものの、意匠性の良い成形品が得られることが分かった。比較例1〜4は、ワックスを使用していない例であり、離型層を剥離できなかったり(比較例1及び2)、離型層を剥離できたとしても、成形直後の剥離強度が重く、剥離後、成形品表面にリリースラインが残ったり、成形品グロス値が大きく、マット感に欠けるものであることが分かる(比較例3及び4)。比較例5及び比較例6は、ワックスの含有量が少ない例であり、成形直後の剥離強度が良くないことを示している。また、比較例7及び比較例8は、ワックスの含有量が多すぎる例であり、成形品グロス値や印刷適性が良くないことを示している。
11 基材フィルム
12 離型層
13 保護層
14 絵柄層
15 接着層
Claims (8)
- 基材上に少なくとも離型層、保護層、絵柄層及び接着層を順に積層してなる加飾シートであり、該離型層が、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が、18〜60質量%である樹脂組成物からなることを特徴とする加飾シート。
- 離型層を構成する樹脂組成物は、更に無機フィラーを2〜50質量%含むものである請求項1に記載の加飾シート。
- ワックスの軟化点が、50〜90℃である請求項1又は2に記載の加飾シート。
- 離型層を構成する樹脂組成物の無機フィラーが、シリカを含有する請求項2又は3に記載の加飾シート。
- 離型層を構成する樹脂組成物の無機フィラーが炭酸カルシウムを含み、樹脂組成物中に30質量%以下含まれるものである請求項4に記載の加飾シート。
- バインダー樹脂が、アクリル樹脂とスチレン−アクリル共重合体とを含むものである請求項1〜5のいずれかに記載の加飾シート。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の加飾シートの接着層側を金型内に向けて、熱盤によって接着層側から該加飾シートを加熱する工程、加熱された該加飾シートを金型内形状に沿わせ予備成形して型締する工程、射出樹脂を金型内に射出する工程、該射出樹脂が冷却した後に金型から基材付き加飾成形品を取り出す工程、及び該加飾成形品から基材及び離型層を剥離する工程を含む加飾成形品の製造方法。
- 射出樹脂、接着層、絵柄層、保護層、離型層及び基材をこの順で有する加飾成形品であって、該離型層が、バインダー樹脂及びワックスを含み、該ワックスの含有量が、18〜60質量%である樹脂組成物からなることを特徴とする基材付き加飾成形品。
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