JP2013060662A - Izoスクラップからの有価金属の回収方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】アノード及びカソードの双方にIZOスクラップを使用し、極性を周期的に反転して電解することにより、インジウム及び亜鉛を水酸化物として回収することを特徴とするIZOスクラップからの有価金属の回収方法及び前記電解することにより得たインジウム及び亜鉛の水酸化物を焙焼してインジウム及び亜鉛の酸化物として回収することを特徴とする前記IZOスクラップからの有価金属の回収方法。
【選択図】なし
Description
このスパッタリング法による薄膜形成手段は優れた方法であるが、スパッタリングターゲットを用いて、例えば透明導電性薄膜を形成していくと、該ターゲットは均一に消耗していく訳ではない。このターゲットの一部の消耗が激しい部分を一般にエロージョン部と呼んでいるが、このエロージョン部の消耗が進行し、ターゲットを支持するバッキングプレートが剥き出しになる直前までスパッタリング操作を続行する。そして、その後は新しいターゲットと交換している。
したがって、使用済みのスパッタリングターゲットには多くの非エロージョン部、すなわち未使用のターゲット部分が残存することになり、これらは全てスクラップとなる。また、IZOスパッタリングターゲットの製造時においても、研磨粉や切削粉からスクラップ(端材)が発生する。一般に、酸化亜鉛(ZnO)が10.7wt%前後含有されているが、多くは酸化インジウム(In2O3)である。
例えば、IZOスクラップを洗浄及び粉砕後、塩酸に溶解し、溶解液に硫化水素を通して、亜鉛、鉛、銅などの不純物を硫化物として沈殿除去した後、これにアンモニアを加えて中和し、水酸化インジウムとして回収する方法である。
しかし、この方法によって得られた水酸化インジウムは、ろ過性が悪く操作に長時間を要し、Si、Al等の不純物が多く、また生成する水酸化インジウムはその中和条件及び熟成条件等により、粒径や粒度分布が変動するため、その後IZOターゲットを製造する際に、IZOターゲットの特性を安定して維持できないという問題があった。
その一つとして、基板上に被着されたITO膜を電解液中で電気化学的反応により還元させ、さらにこの還元された透明導電膜を電解液に溶解させる透明導電膜のエッチング方法がある(特許文献1参照)。但し、目的がマスクパターンを高精度で得る方法であり、回収方法とは異なる技術である。
ITOからの有価金属を回収するための事前処理として、バッキングプレートとの接合に用いていたIn系のロウ材に含まれる不純物を電解液中で分離する技術がある(特許文献2参照)。しかし、これはITOから有価金属を回収する直接的な技術に関するものではない。
また、高純度インジウムの回収方法として、ITOを塩酸で溶解し、これにアルカリを加えてpHが0.5〜4となるようにし、錫を水酸化物として除去し、次に硫化水素ガスを吹き込み銅、鉛等の有害物を硫化物として除去し、次いでこの溶解液を用いて電解によりインジウムメタルを電解採取する技術が開示されている(特許文献4参照)。この技術も精製工程が複雑であるという問題がある。
これ自体は有効な方法であるが、IZOスクラップの基本的な回収方法ではないという欠点がある。以上から、効率的かつ回収工程に汎用性がある方法が求められている。
本発明のIZOスクラップからの有価金属の回収方法は、アノード及びカソードの双方にIZOスクラップを使用することが大きな特徴であるが、さらにこの場合、アノード及びカソードの双方極性を周期的に反転して電解する、すなわち周期的に極性を交互に変化させて電解するものである(アノードの極性⇔カソードの極性の相互反転)。
これにより、インジウム及び亜鉛の水酸化物として効率良く回収することが可能となる。従来このような技術は存在せず、またこの方法を示唆するような一切の文献も存在していない。したがって、本願発明のIZOスクラップからの有価金属の回収方法は基本発明となるものである。
IZO自体が導電性を備えていることは既に知られていることであるが、これは酸化亜鉛(ZnO)及び酸化インジウム(In2O3)の焼結体であるIZO酸化物の酸素欠損によるものと考えられている。本願発明は、このIZO自体の導電性を利用するものであるが、IZO自体に備わる導電性が、電解による有価金属の回収が可能であるという知見と判断さらには多くの実験を行わなければ実現できないものであることは理解されるべきものである。
これらの工程において問題となるのは、IZOスクラップの粉砕工程で不純物が混入することであり、その後の工程で、粉砕工程で混入した不純物を、さらに除去する必要があるので、工程がより煩雑になるということである。
したがって、IZOスクラップから電解により直接有価金属を回収できることは、極めて大きな利点を持つことが理解できるであろう。
また、上記電解に際して、1分〜10分周期でアノード及びカソードの極性を反転するのが好適である。しかし、極性の反転の時期も亦、電解槽の容量、IZOスクラップの量、電流密度、電圧、電流、電解液の種類によって、任意に変更することができる条件である。これは好適な条件を示すものであって、上記と同様にこの条件に拘束されるものでないことは容易に理解されるであろう。
電解液としては、有害ガスの発生がない液であり、またインジウム及び亜鉛の水酸化物として回収する場合に、これらの物質に不純物として含有されない材料を選択するのが望ましい。このことから、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウムなどの溶液を任意に選択して使用することができる。
本願発明は、IZOスクラップからの有価金属の回収に際して、電解することにより得たインジウム及び亜鉛の水酸化物を回収することにより、目的は達成しているのであるが、さらにこのインジウム及び亜鉛の水酸化物を焙焼してインジウム及び亜鉛の酸化物として回収することも可能である。
さらに、上記電解することにより得たインジウム及び亜鉛の水酸化物を酸浸出してインジウムと亜鉛の溶液とし、この溶液をpH調整して亜鉛を水酸化亜鉛として除去し、さらにインジウムを電解採取することもできる。
また、電流密度等の電解条件は、端材等のスクラップであるために一義的に決められるものではなく、電流密度はその端材の量や材料の性質に応じて適宜選択して実施する。電解質溶液の液温は、通常0〜100°Cの範囲とするが、室温(15〜30°C)で十分である。
焙焼温度としては、100〜1000°Cとする。好ましくは100〜500°Cとするのが良い。100°C未満では水分が残り、1000°Cを超えると焼結してしまうので、上記の範囲とする。
陰イオンが塩素系の場合は、陽極の不導体化に伴って塩素ガスの発生があり、また硝酸系の場合は陽極不導体化に伴って酸化窒素ガスの発生と排水の窒素負荷があるので、その処理に注意を要する。
硫酸系ではこれらの問題は殆んどないので、硫酸系は好適な材料と言える。しかし、その他の電解液の使用も、上記の問題を解決できれば、使用を妨げる理由は存在しない。
この他に、電流効率を上げるために、一般に知られている公知の添加材を使用することも可能である。このように、酸化インジウムと酸化亜鉛を同時に回収できれば、再生ITOを製造することも容易になることが理解されるであろう。
電解条件は原料の種類により、適宜に調整することが望ましい。この場合に調整する要素は、生産効率のみである。一般に、大電流、高電圧で電解する方が、生産性が良いと言える。しかし、これらの条件に限定される必要はなく、その選択は任意である。
また、電解温度も特に制限はないが、0〜100°Cに調整して電解することが望ましい。室温で十分電解することができる。端材となったスクラップは、それぞれアノードボックス(籠)又はカソードボックス(籠)に入れて電解すれば良い。スクラップ自体が所定の大きさ(電極として使用できるサイズ)を有するものは、そのまま電極板として使用することができる。
溶解したInとZnはインジウム及び亜鉛の水酸化物として電解液中に析出する。電解当初はこの溶解量は電流効率として10〜50%程度であるが、IZOスクラップの表面にはスラッジが発生するようになり、次第に溶解量が減少し、最終的には溶解しなくなる。
この原因は必ずしもはっきりしないが、アノードに発生する酸素のガスによって酸素欠損によるIZOの導電性が失われ、IZOスクラップ自体が通電しなくなり、アノード電極としての役目を担うことができなくなったと推察される。いずれにしても、このままの状態ではIZOスクラップの溶解が進まず、電解が困難となる。但し、この発生するスラッジをIZOスクラップから効果的に除去できれば、溶解は可能となる。
しかし、通電時間が長くなると、IZOスクラップのカソードの表面に若干の厚みのIn−Znメタルが生成した状態で停止し、In−Znメタル表層の下に、スポンジ状のIn−Zn酸化物が形成されるだけとなり、それ以上の還元が進行しなくなる。
これは、In−Znメタル表層が水素の浸透を抑制していること、またIn−Znメタル表層にのみ電流が流れ、抵抗の高いIZOスクラップ内部への電流の流れが抑制されることが、電解の進行を妨害する主な原因と考えられる。
これによって新アノード(旧カソード)の表面に蓄積していたIn−Znメタルは、溶解する。電解液は中性領域に保持しているので、水酸化物として沈殿する。これによって得られた沈殿物は、インジウム及び亜鉛の水酸化物として回収することができる。主な反応式で示すと(In−Zn→In3++Zn2+→In(OH)3+Zn(OH)2)となる。新アノードではわずかな酸素の発生が認められるがその量は少ない。新アノードでは亜酸化物からのInとZnの溶解も伴っている。これらも同様にインジウム及び亜鉛の水酸化物として沈殿すると考えられる。
しかし、この状態を継続すると、再び新アノードは不働態化し、新カソードは表層のみがIn−Znメタル化して電解が進行しなくなる。この状態になる前に、再度極性を変換する。これを繰り返すことにより、定常的にインジウム及び亜鉛の水酸化物の沈殿を促進させることができる。
この電極を定期的に反転する工程を採用することにより、電極に発生するガス、すなわち水素及び酸素の発生は、アノード又はカソードの一方の固定電極とする場合に比べ、著しく減少する。これは発生ガスが酸化及び還元に有効に消費されていることを物語るものである。
また、実験によれば、1分〜10分周期でアノード及びカソードの極性を反転するのが好適である。しかし、極性の反転の時期も亦、電解槽の容量、IZOスクラップの量、電流密度、電圧、電流、電解液の種類によって任意に変更することができる条件である。
横長20mm×縦長100×厚さ6tのIZO(酸化インジウム−酸化亜鉛)の板状端材(スクラップ)90gを原料とした。この原料中の成分は酸化亜鉛(ZnO)が10.7wt%、残部が酸化インジウム(In2O3)であった(メタルの比率は、In:73.8wt%、Zn:8.6wt%であり、残部は酸素(O)である)。
この原料をアノード及びカソードとし、硫酸ナトリウム100g/Lを含有する電解液1Lを使用し、pH:9.0、電解温度:25°Cとして電解を行った。電圧は10Vと一定電圧にし、通電時間(5分×12サイクルの極性変換)延べ時間600分(10時間)で実施した。電流は5分間の間に、2.95A(開始時)〜1.2A(終了時)と変化した。 この結果、電解槽中には水酸化インジウム及び水酸化亜鉛の混合物が沈殿した。
さらに、このようにして得た水酸化インジウム及び水酸化亜鉛の混合物を、150°Cで焙焼して、In酸化物(In2O3)及びZn酸化物(ZnO)の混合物を得ることができた。この混合物は約25gであった。この方法により得られる比率は、通常In2O3:90wt%、ZnO:10wt%にあり、再生IZOの原料として使用可能であった。
実施例1の方法で電解することにより得た水酸化インジウムと水酸化亜鉛の混合物を、さらに硫酸で酸浸出してインジウムと亜鉛の溶液とし、さらにインジウムを電解温度30°C、電流密度2A/dm2という条件で電解採取した。
この水酸化物を硫酸で溶解し、電解することにより、インジウムを回収することができた。Inの歩留りは98%であった。
実施例1と同等のIZO端材をアノードとカソードに用い、電解液として硝酸ナトリウム100g/Lの液を用い、pH10とし、その他の条件は、実施例1と同様の条件で電解を実施した。その結果、インジウム亜鉛の水酸化物を得た。この場合の回収量と純度は、実施例1と同等であった。
実施例1の条件において、電流量を2Aに一定とし、電圧が10V以上になった時点で、極性を反転するように設定した(他の条件は実施例と同一である)。また、積算電流量も実施例1と同一とした。この結果、インジウムと亜鉛の水酸化物を得た。この場合の回収量と純度は、実施例1と同等であった。
実施例1の条件において、周期だけを1分間、10分間に変え、他の条件を実施例1と同等の条件で電解した。これによって、インジウムの水酸化物は約20g(In品位:69wt%)、亜鉛の水酸化物は約2g(Zn品位:7.7wt%)を得た。この水酸化インジウム及び水酸化亜鉛の混合物の純度は、スクラップの純度と同等の純度を有していた。
IZOスクラップをアノードボックスとカソードボックスに、それぞれ100kg挿入し、電解液として硫酸ナトリウム70g/L、pH10.5、反転周期を5分間として、積算電流量で10000AHrの電解を実施した。他の条件は実施例1と同等である。これによって、インジウムと亜鉛の水酸化物は約13kgを得た。この水酸化インジウム及び水酸化亜鉛の混合物の純度は、スクラップの純度と同等の純度を有していた。
実施例3の条件で、酸浸出を硫酸で行ったが、これを硝酸で酸浸出しても同じであった。この硝酸で酸浸出したインジウム及び亜鉛を、電解採取することにより、3gのインジウムメタルを得ることができた。
実施例1と同等のIZOスクラップを用いて、アノードのみにIZOを用い、カソードにはチタン板を用いた。電解液として硫酸ナトリウム70g/Lを用い、pH4.5とし、60分間電解を行った。得られたインジウムと亜鉛の酸化物の合計量は、0.4gであり、実施例1と比較して、回収量が著しく少なかった。
実施例1と同等のIZOスクラップ(端材)を原料とし、カソードにみにIZOを用い、アノードには不溶性のカーボンを用いた。電解液には実施例1と同様に硫酸ナトリウムを用い、他の条件は実施例1と同等の条件として、電解を行った。この結果、IZOスクラップ(端材)の表面に、インジウム−亜鉛メタルが約0.5gしか得られなかった。実施例に比べ収率は著しく劣っていた。
また、IZOにさらに少量の副成分を添加したものもあるが、基本的にIZOが基本成分であれば、本願発明は、これらにも適用できることは言うまでもない。
本願発明は、アノード及びカソードにIZOスクラップを使用し、かつ極性を変えることにより効率良く水酸化インジウム及び水酸化亜鉛又はメタ亜鉛酸の混合物としてIZOスクラップから有価金属を効率良く回収できることが分る。
さらに、本願発明のIZOスクラップからの有価金属の回収は、電解に供するIZOスクラップ自体が高純度の材料からなるスクラップであれば、その純度はそのまま維持でき、高純度の水酸化インジウムと水酸化亜鉛の混合物又は酸化インジウム及び酸化亜鉛の混合物として回収することができる。これは、本願発明の著しい利点である。従来の煩雑な工程及び製造途中で混入する不純物を除去する工程を必要とせず、生産効率を上昇させ、高純度の有価金属の回収が可能となるという優れたメリットを有し、IZOスクラップからの有価金属の回収方法として極めて有用である。
このスパッタリング法による薄膜形成手段は優れた方法であるが、スパッタリングターゲットを用いて、例えば透明導電性薄膜を形成していくと、該ターゲットは均一に消耗していく訳ではない。このターゲットの一部の消耗が激しい部分を一般にエロージョン部と呼んでいるが、このエロージョン部の消耗が進行し、ターゲットを支持するバッキングプレートが剥き出しになる直前までスパッタリング操作を続行する。そして、その後は新しいターゲットと交換している。
したがって、使用済みのスパッタリングターゲットには多くの非エロージョン部、すなわち未使用のターゲット部分が残存することになり、これらは全てスクラップとなる。また、IZOスパッタリングターゲットの製造時においても、研磨粉や切削粉からスクラップ(端材)が発生する。一般に、酸化亜鉛(ZnO)が10.7wt%前後含有されているが、多くは酸化インジウム(In2O3)である。
例えば、IZOスクラップを洗浄及び粉砕後、塩酸に溶解し、溶解液に硫化水素を通して、亜鉛、鉛、銅などの不純物を硫化物として沈殿除去した後、これにアンモニアを加えて中和し、水酸化インジウムとして回収する方法である。
しかし、この方法によって得られた水酸化インジウムは、ろ過性が悪く操作に長時間を要し、Si、Al等の不純物が多く、また生成する水酸化インジウムはその中和条件及び熟成条件等により、粒径や粒度分布が変動するため、その後IZOターゲットを製造する際に、IZOターゲットの特性を安定して維持できないという問題があった。
その一つとして、基板上に被着されたITO膜を電解液中で電気化学的反応により還元させ、さらにこの還元された透明導電膜を電解液に溶解させる透明導電膜のエッチング方法がある(特許文献1参照)。但し、目的がマスクパターンを高精度で得る方法であり、回収方法とは異なる技術である。
ITOからの有価金属を回収するための事前処理として、バッキングプレートとの接合に用いていたIn系のロウ材に含まれる不純物を電解液中で分離する技術がある(特許文献2参照)。しかし、これはITOから有価金属を回収する直接的な技術に関するものではない。
また、高純度インジウムの回収方法として、ITOを塩酸で溶解し、これにアルカリを加えてpHが0.5〜4となるようにし、錫を水酸化物として除去し、次に硫化水素ガスを吹き込み銅、鉛等の有害物を硫化物として除去し、次いでこの溶解液を用いて電解によりインジウムメタルを電解採取する技術が開示されている(特許文献4参照)。この技術も精製工程が複雑であるという問題がある。
これ自体は有効な方法であるが、IZOスクラップの基本的な回収方法ではないという欠点がある。以上から、効率的かつ回収工程に汎用性がある方法が求められている。
本発明のIZOスクラップからの有価金属の回収方法は、アノード及びカソードの双方にIZOスクラップを使用することが大きな特徴であるが、さらにこの場合、アノード及びカソードの双方極性を周期的に反転して電解する、すなわち周期的に極性を交互に変化させて電解するものである(アノードの極性⇔カソードの極性の相互反転)。
これにより、インジウム及び亜鉛の水酸化物として効率良く回収することが可能となる。従来このような技術は存在せず、またこの方法を示唆するような一切の文献も存在していない。したがって、本願発明のIZOスクラップからの有価金属の回収方法は基本発明となるものである。
IZO自体が導電性を備えていることは既に知られていることであるが、これは酸化亜鉛(ZnO)及び酸化インジウム(In2O3)の焼結体であるIZO酸化物の酸素欠損によるものと考えられている。本願発明は、このIZO自体の導電性を利用するものであるが、IZO自体に備わる導電性が、電解による有価金属の回収が可能であるという知見と判断さらには多くの実験を行わなければ実現できないものであることは理解されるべきものである。
これらの工程において問題となるのは、IZOスクラップの粉砕工程で不純物が混入することであり、その後の工程で、粉砕工程で混入した不純物を、さらに除去する必要があるので、工程がより煩雑になるということである。
したがって、IZOスクラップから電解により直接有価金属を回収できることは、極めて大きな利点を持つことが理解できるであろう。
また、上記電解に際して、1分〜10分周期でアノード及びカソードの極性を反転するのが好適である。しかし、極性の反転の時期も亦、電解槽の容量、IZOスクラップの量、電流密度、電圧、電流、電解液の種類によって、任意に変更することができる条件である。これは好適な条件を示すものであって、上記と同様にこの条件に拘束されるものでないことは容易に理解されるであろう。
電解液としては、有害ガスの発生がない液であり、またインジウム及び亜鉛の水酸化物として回収する場合に、これらの物質に不純物として含有されない材料を選択するのが望ましい。このことから、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化カリウム、硝酸カリウム、硫酸カリウムなどの溶液を任意に選択して使用することができる。
本願発明は、IZOスクラップからの有価金属の回収に際して、電解することにより得たインジウム及び亜鉛の水酸化物を回収することにより、目的は達成しているのであるが、さらにこのインジウム及び亜鉛の水酸化物を焙焼してインジウム及び亜鉛の酸化物として回収することも可能である。
さらに、上記電解することにより得たインジウム及び亜鉛の水酸化物を酸浸出してインジウムと亜鉛の溶液とし、この溶液をpH調整して亜鉛を水酸化亜鉛として除去し、さらにインジウムを電解採取することもできる。
また、電流密度等の電解条件は、端材等のスクラップであるために一義的に決められるものではなく、電流密度はその端材の量や材料の性質に応じて適宜選択して実施する。電解質溶液の液温は、通常0〜100°Cの範囲とするが、室温(15〜30°C)で十分である。
焙焼温度としては、100〜1000°Cとする。好ましくは100〜500°Cとするのが良い。100°C未満では水分が残り、1000°Cを超えると焼結してしまうので、上記の範囲とする。
陰イオンが塩素系の場合は、陽極の不導体化に伴って塩素ガスの発生があり、また硝酸系の場合は陽極不導体化に伴って酸化窒素ガスの発生と排水の窒素負荷があるので、その処理に注意を要する。
硫酸系ではこれらの問題は殆んどないので、硫酸系は好適な材料と言える。しかし、その他の電解液の使用も、上記の問題を解決できれば、使用を妨げる理由は存在しない。
この他に、電流効率を上げるために、一般に知られている公知の添加材を使用することも可能である。このように、酸化インジウムと酸化亜鉛を同時に回収できれば、再生IZOを製造することも容易になることが理解されるであろう。
電解条件は原料の種類により、適宜に調整することが望ましい。この場合に調整する要素は、生産効率のみである。一般に、大電流、高電圧で電解する方が、生産性が良いと言える。しかし、これらの条件に限定される必要はなく、その選択は任意である。
また、電解温度も特に制限はないが、0〜100°Cに調整して電解することが望ましい。室温で十分電解することができる。端材となったスクラップは、それぞれアノードボックス(籠)又はカソードボックス(籠)に入れて電解すれば良い。スクラップ自体が所定の大きさ(電極として使用できるサイズ)を有するものは、そのまま電極板として使用することができる。
溶解したInとZnはインジウム及び亜鉛の水酸化物として電解液中に析出する。電解当初はこの溶解量は電流効率として10〜50%程度であるが、IZOスクラップの表面にはスラッジが発生するようになり、次第に溶解量が減少し、最終的には溶解しなくなる。
この原因は必ずしもはっきりしないが、アノードに発生する酸素のガスによって酸素欠損によるIZOの導電性が失われ、IZOスクラップ自体が通電しなくなり、アノード電極としての役目を担うことができなくなったと推察される。いずれにしても、このままの状態ではIZOスクラップの溶解が進まず、電解が困難となる。但し、この発生するスラッジをIZOスクラップから効果的に除去できれば、溶解は可能となる。
しかし、通電時間が長くなると、IZOスクラップのカソードの表面に若干の厚みのIn−Znメタルが生成した状態で停止し、In−Znメタル表層の下に、スポンジ状のIn−Zn亜酸化物が形成されるだけとなり、それ以上の還元が進行しなくなる。
これは、In−Znメタル表層が水素の浸透を抑制していること、またIn−Znメタル表層にのみ電流が流れ、抵抗の高いIZOスクラップ内部への電流の流れが抑制されることが、電解の進行を妨害する主な原因と考えられる。
これによって新アノード(旧カソード)の表面に蓄積していたIn−Znメタルは、溶解する。電解液は中性領域に保持しているので、水酸化物として沈殿する。これによって得られた沈殿物は、インジウム及び亜鉛の水酸化物として回収することができる。主な反応式で示すと(In−Zn→In3++Zn2+→In(OH)3+Zn(OH)2)となる。新アノードではわずかな酸素の発生が認められるがその量は少ない。新アノードでは亜酸化物からのInとZnの溶解も伴っている。これらも同様にインジウム及び亜鉛の水酸化物として沈殿すると考えられる。
しかし、この状態を継続すると、再び新アノードは不働態化し、新カソードは表層のみがIn−Znメタル化して電解が進行しなくなる。この状態になる前に、再度極性を変換する。これを繰り返すことにより、定常的にインジウム及び亜鉛の水酸化物の沈殿を促進させることができる。
この電極を定期的に反転する工程を採用することにより、電極に発生するガス、すなわち水素及び酸素の発生は、アノード又はカソードの一方の固定電極とする場合に比べ、著しく減少する。これは発生ガスが酸化及び還元に有効に消費されていることを物語るものである。
また、実験によれば、1分〜10分周期でアノード及びカソードの極性を反転するのが好適である。しかし、極性の反転の時期も亦、電解槽の容量、IZOスクラップの量、電流密度、電圧、電流、電解液の種類によって任意に変更することができる条件である。
横長20mm×縦長100mm×厚さ6tのIZO(酸化インジウム−酸化亜鉛)の板状端材(スクラップ)90gを原料とした。この原料中の成分は酸化亜鉛(ZnO)が10.7wt%、残部が酸化インジウム(In2O3)であった(メタルの比率は、In:73.8wt%、Zn:8.6wt%であり、残部は酸素(O)である)。
この原料をアノード及びカソードとし、硫酸ナトリウム100g/Lを含有する電解液1Lを使用し、pH:9.0、電解温度:25°Cとして電解を行った。電圧は10Vと一定電圧にし、通電時間(5分×12サイクルの極性変換)延べ60分(1時間)で実施した。通常は、延べ時間600分(10時間)で実施する。電流は5分間の間に、2.95A(開始時)〜1.2A(終了時)と変化した。 この結果、電解槽中には水酸化インジウム及び水酸化亜鉛の混合物が沈殿した。
さらに、このようにして得た水酸化インジウム及び水酸化亜鉛の混合物を、150°Cで焙焼して、In酸化物(In2O3)及びZn酸化物(ZnO)の混合物を得ることができた。この混合物は約25gであった。この方法により得られる比率は、通常In2O3:90wt%、ZnO:10wt%にあり、再生IZOの原料として使用可能であった。
実施例1の方法で電解することにより得た水酸化インジウムと水酸化亜鉛の混合物を、さらに硫酸で酸浸出してインジウムと亜鉛の溶液とし、さらにインジウムを電解温度30°C、電流密度2A/dm2という条件で電解採取した。
この水酸化物を硫酸で溶解し、電解することにより、インジウムを回収することができた。Inの歩留りは98%であった。
実施例1と同等のIZO端材をアノードとカソードに用い、電解液として硝酸ナトリウム100g/Lの液を用い、pH10とし、その他の条件は、実施例1と同様の条件で電解を実施した。その結果、インジウムと亜鉛の水酸化物を得た。この場合の回収量と純度は、実施例1と同等であった。
実施例1の条件において、電流量を2Aに一定とし、電圧が10V以上になった時点で、極性を反転するように設定した(他の条件は実施例1と同一である)。また、積算電流量も実施例1と同一とした。この結果、インジウムと亜鉛の水酸化物を得た。この場合の回収量と純度は、実施例1と同等であった。
実施例1の条件において、周期だけを1分間、10分間に変え、他の条件を実施例1と同等の条件で電解した。これによって、インジウムの水酸化物は約20g(In品位:69wt%)、亜鉛の水酸化物は約2g(Zn品位:7.7wt%)を得た。この水酸化インジウム及び水酸化亜鉛の混合物の純度は、スクラップの純度と同等の純度を有していた。
IZOスクラップをアノードボックスとカソードボックスに、それぞれ100kg挿入し、電解液として硫酸ナトリウム70g/L、pH10.5、反転周期を5分間として、積算電流量で10000AHrの電解を実施した。他の条件は実施例1と同等である。これによって、インジウムと亜鉛の水酸化物は約13kgを得た。この水酸化インジウム及び水酸化亜鉛の混合物の純度は、スクラップの純度と同等の純度を有していた。
実施例3の条件で、酸浸出を硫酸で行ったが、これを硝酸で酸浸出しても同じであった。この硝酸で酸浸出したインジウム及び亜鉛を、電解採取することにより、3gのインジウムメタルを得ることができた。
実施例1と同等のIZOスクラップを用いて、アノードのみにIZOを用い、カソードにはチタン板を用いた。電解液として硫酸ナトリウム70g/Lを用い、pH4.5とし、60分間電解を行った。得られたインジウムと亜鉛の水酸化物の合計量は、0.4gであり、実施例1と比較して、回収量が著しく少なかった。
実施例1と同等のIZOスクラップ(端材)を原料とし、カソードにみにIZOを用い、アノードには不溶性のカーボンを用いた。電解液には実施例1と同様に硫酸ナトリウムを用い、他の条件は実施例1と同等の条件として、電解を行った。この結果、IZOスクラップ(端材)の表面に、インジウム−亜鉛メタルが約0.5gしか得られなかった。実施例に比べ収率は著しく劣っていた。
また、IZOにさらに少量の副成分を添加したものもあるが、基本的にIZOが基本成分であれば、本願発明は、これらにも適用できることは言うまでもない。
本願発明は、アノード及びカソードにIZOスクラップを使用し、かつ極性を変えることにより効率良く水酸化インジウム及び水酸化亜鉛の混合物としてIZOスクラップから有価金属を効率良く回収できることが分かる。
さらに、本願発明のIZOスクラップからの有価金属の回収は、電解に供するIZOスクラップ自体が高純度の材料からなるスクラップであれば、その純度はそのまま維持でき、高純度の水酸化インジウムと水酸化亜鉛の混合物又は酸化インジウム及び酸化亜鉛の混合物として回収することができる。これは、本願発明の著しい利点である。従来の煩雑な工程及び製造途中で混入する不純物を除去する工程を必要とせず、生産効率を上昇させ、高純度の有価金属の回収が可能となるという優れたメリットを有し、IZOスクラップからの有価金属の回収方法として極めて有用である。
Claims (3)
- アノード及びカソードの双方にIZOスクラップを使用し、極性を周期的に反転して電解することにより、インジウム及び亜鉛を水酸化物として回収することを特徴とするIZOスクラップからの有価金属の回収方法。
- 電解することにより得たインジウム及び亜鉛の水酸化物を焙焼してインジウム及び亜鉛の酸化物として回収することを特徴とする請求項1記載のIZOスクラップからの有価金属の回収方法。
- 電解することにより得たインジウム及び亜鉛の水酸化物を酸浸出してインジウムと亜鉛の溶液とし、この溶液から亜鉛を除去し、さらにインジウムを電解により回収することを特徴とする請求項1又は2記載のIZOスクラップからの有価金属の回収方法。
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