JP2013056350A - 連続鋳造用ロール - Google Patents

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Abstract

【課題】ヒートクラックの進展が抑制され、ロール取替周期の延長及び折損トラブルを低減することが出来る連続鋳造用ロールの提供。
【解決手段】芯材表面に質量%でCr:9%以上12%未満を含有する耐熱鋼系乃至Cr:12%以上20%以下を含有するステンレス鋼系の肉盛層を有する連続鋳造用ロールであって、前記肉盛層は、ピーニング加工により最表層部の結晶粒を扁平化させ且つ該最表層部から芯材までの次表層部の少なくとも一部を加工硬化させ、次いで好適温度範囲600℃±30℃の熱処理により前記扁平化部及び加工硬化部を再結晶化させて細粒化してなる。
【選択図】図1

Description

本発明は、連続鋳造用ロールに関し、詳しくは、鋼等の連続鋳造設備で用いられる、芯材表面に肉盛を施してなる連続鋳造用ロールにおいて、特に耐熱亀裂性を改善した連続鋳造用ロールに関する。
連続鋳造用ロールは、鋳片(スラブ)と接しない時には、その表層が最大でも200℃程度の温度であるが、鋳片と接触した時には500℃程度まで上昇する。稼働回転中の連続鋳造用ロールの表面は、高温鋳片との接触による加熱と冷却水による冷却とが繰り返される苛酷な熱サイクルを受けるため、ロール表面には、ヒートクラックが発生する。一方、スラブからの反力による大きな曲げ応力も繰り返し受けることから、ヒートクラックが徐々に進展してロール折損に至る場合が少なくなかった。
この状況を改善するための従来技術として、(A)ヒートクラックが発生しにくいロール肉盛材料の開発(肉盛材料のC、Si、Mn、Ni、Cr、Cu、Nbなどの成分と肉盛施工後の熱処理条件をうまく組み合わせることで、目標とする材料を見出す開発)に関するものや、(B)肉盛層にこれへ微細な亀甲状クラックを伝達する皮膜或いは改質層を形成させる事で、ロールを使用中に、前記皮膜或いは改質層に発生し直下の肉盛層へと伝達された微細な亀甲状クラックにより、ヒートサイクルによる熱応力を分散させてシャープなクラックの進展抑止を図るものが提案されている。
尚、上述の従来技術(A)は特許文献1〜5等で提案され、従来技術(B)は特許文献6,7等で提案されている。
特許第2795605号公報 特開2001−340991号公報 特開2002−266056号公報 特開昭59−118854号公報 特開平11−314145号公報 特公昭59−014101号公報 特開昭64−048650号公報
然しながら、従来技術(A)では、開発対象が肉盛材料であるが故の成分のバラツキ、肉盛施工上のバラツキによる性能への影響が大きい事、又、性能のよい肉盛材料が新開発されても、他への水平展開の際には数10本以上となるロールの旧態の肉盛層を削ぎ落として新開発材料で肉盛層を再形成する施工のコストが膨大となる事といった難点があって、一部のユーザでの使用に限定されているのが現状である。
一方、従来技術(B)に目を移すと、特許文献6では肉盛層上に形成させる前記皮膜の材料として自溶性合金を用いており、この材料の皮膜は形成後に1000℃以上で数十分の熱処理を要することから芯材の脆化が進行する事、又、この皮膜は比較的短期間に剥離してしまうため、微細な亀甲状クラックの伝達前に皮膜の剥離する箇所が多数具現し、該剥離した箇所の肉盛層ではヒートサイクルによるシャープなクラックが進展してしまう事などの問題があった。
又、特許文献7は、特許文献6の自溶性合金皮膜形成に代えて、熱処理温度を低くできる窒化処理を肉盛層に施して表層部を窒化層に改質した事で、芯材の脆化を抑えつつ、窒化層から直下の肉盛層へ伝達された微細な亀甲状クラックによる、シャープなクラックの進展抑制を狙ったものであるが、窒化層自体の耐食性及び耐摩耗性が不十分であり、その狙いを達成する前に窒化層が短期間に消失してしまう問題があった。
つまり、従来の連続鋳造用肉盛ロールには、耐熱亀裂性改善のための解を、新肉盛材料開発に求めると性能安定性と製造コスト面に難があり、又、同解を微細な亀甲状クラック付与による熱応力分散に求めると同クラック付与源とされた自溶性合金皮膜や窒化層が剥離し易くて十分な効果を得難いという課題があった。
本発明者らは上記課題を解決するために検討を重ね、次の知見を得た。
(#1) Cr含有量が9mass%以上20mass%以下の範囲である耐熱鋼系乃至ステンレス鋼系の肉盛材料を用いて鋼製芯材表面に形成した肉盛まま状態の肉盛層(厚さd=3〜6mm)は樹状組織を呈する(図1(a)参照)。
(#2) 上記肉盛まま状態の肉盛層にピーニング加工を施す事により、肉盛層の最表層部(厚さd1=0.1〜0.5mm)を塑性変形させて同部の結晶粒を扁平化させると共に、最表層部直下から芯材までの扁平化しない層部分である次表層部の少なくとも表面側の大部分を加工硬化させた。
(#3) 次いで温度600℃±30℃の範囲の熱処理を施す事により、最表層部は、前記扁平化した状態から再結晶し、超微細な再結晶粒組織となり、一方、次表層部の加工硬化した部分は、その加工硬化した状態から再結晶化し、ポリゴナル状に微細化して表面側ほど小粒径の再結晶粒組織となった(図1(b)参照)。
(#4) かくして得られた最表層部及び次表層部の微細粒組織は、亀裂伝播の歯止めになる結晶粒界が微細に分散した事によって、ヒートサイクルによるロール表面からの熱亀裂(ヒートクラック)の発生は抑制しないものの、発生した熱亀裂がロール深部へ伝播(進展)するのを効果的に抑制する事が分った。
本発明は、上述の知見に基いて成されたものであり、その要旨構成は次のとおりである。
[1] 芯材表面に質量%でCr:9%以上12%未満を含有する耐熱鋼系乃至Cr:12%以上20%以下を含有するステンレス鋼系の肉盛層を有する連続鋳造用ロールであって、前記肉盛層は、ピーニング加工により最表層部の結晶粒を扁平化させ且つ該扁平化部から芯材までの次表層部の少なくとも一部を加工硬化させ、次いで熱処理により前記扁平化部及び加工硬化部を再結晶化させて細粒化してなることを特徴とする連続鋳造用ロール。
本発明によれば、Cr:9〜20%を含有する耐熱鋼系乃至ステンレス鋼系の肉盛層を有する肉盛ロールを対象として、その肉盛胴部にピーニング加工とその後の再結晶させる熱処理を施しただけなので、現状使用しているロールにすぐに適用可能である。即ち、肉盛材料の組成や熱処理による各々特有の結晶粒による影響も殆ど受ける事無く、扁平化した最表層部乃至扁平化はしないが加工硬化した次表層部の加工硬化領域の再結晶化による結晶粒微細化を図る事ができるようになった。これによりヒートクラックの進展が抑制され、ロール取替周期の延長及び折損トラブルの低減が達成された。
又、従来技術(B)の様に肉盛層上に皮膜を形成して熱処理する事や従来技術(A)の様に肉盛材料を変更する事は不要であるから、ロール1本当たりの補修コスト低減効果もある。又、ピーニング加工による表面へのディンプル形成で表面が粗面化する事で、断熱厚みを形成できる為、ロールへの高温鋳片の接触とロール水冷とが繰り返すヒートサイクルによる熱衝撃が緩和され、耐熱亀裂性がより向上するという効果もある。
肉盛層の組織であって(a)は肉盛まま状態、(b)は本発明により(a)の組織に対しピーニング加工後に熱処理を施した状態を示す模式的断面図である。 ヒートサイクル試験方法を示す模式的側面図である。 ヒートクラック発生状況をクラック深さ毎のクラック数で示すヒストグラムである。
(肉盛材料)
以下、化学組成の成分含有量は質量%であり、%と略記される。
本発明では、肉盛材料はCr:9%以上12%未満を含有する耐熱鋼系材料乃至Cr:12%以上20%未満であるステンレス鋼系材料とする。Crは耐熱性を得るために9%以上、更に耐食性を得るために12%以上が好ましいが、20%超では耐熱性、耐食性とも飽和して不経済となる為20%以下が好ましい。
Cr以外の成分であるC、Si、Mn、Ni、Mo、Cu、Nb、V、Al、N、B、P、Sについては、本発明による耐熱亀裂性改善効果が上述の如く組成依存性の小さいものであるから、一般に用いられている耐熱鋼乃至ステンレス鋼の組成範囲内としておけばよく、好ましくは以下のとおりである。
C:0.02〜1.5%
Cは高温強度向上効果を得るために0.02%以上が好ましいが、靭性劣化回避のために1.5%以下が好ましい。
Si:0.14〜1.20%
Siは脱酸効果及び耐剥離性を得るために0.14%以上が好ましいが、強度と靭性の劣化回避のために1.20%以下が好ましい。
Mn:0.30〜1.70%
Mnは脱酸効果及び強度向上効果を得るために0.30%以上が好ましいが、靭性と加工性の劣化回避のために1.70%以下が好ましい。
P:0〜0.03%、S:0〜0.02%
P、Sは靭性を劣化させる元素であるため可及的に低減するのが望ましいが、Pは0.03%以下、Sは0.02%以下が許容できる。
Ni:0.1〜5.0%或いは5.0%超〜35.0%
Niは強度、靭性向上効果を得るために0.1%以上が好ましいが、5.0%超ではその効果が飽和して不経済となるため5.0%以下が好ましい。しかし、5.0%超の範囲は熱膨張係数低減のために有用であり、この目的で5.0%超の高Ni添加としてもよいが、過剰な添加は不経済となるので、35.0%までが好ましい。また、Niが5.0%超えの場合、Coを15%まで、Tiを4.5%まで含むこともできる。
Mo:0〜1.7%
Moは高温強度向上効果を得る為に必要に応じて添加するが、過剰な添加は延性、靭性、耐溶接割れ性、耐熱亀裂性を低下させる為1.7%以下が好ましい。尚、より好ましくは0.5〜1.7%である。
Cu:0〜3.5%
Cuは耐高温酸化性向上効果を得る為に必要に応じて添加するが、過剰な添加は酸化増量が増加する為3.5%以下が好ましい。
Nb:0〜1.9%、V:0〜0.9%
Nb、Vは炭化物を形成して高温強度を高める為に必要に応じて添加するが、過剰な添加は効果が飽和して不経済となる為、Nbは1.9%以下、Vは0.9%以下が好ましい。
Al:0〜0.2%
Alは脱酸剤として必要に応じて添加し、又、Nと結合してなるAlNによる組織微細化及び靭性向上の効果を得る為に必要に応じてNと共に添加するが、過剰な添加は清浄度を低下させる為0.2%以下が好ましい。
N:0〜0.11%
NはAlと結合してなるAlNによる組織微細化及び靭性向上の効果を得る為に必要に応じてAlと共に添加するが、過剰に添加しても効果が飽和するだけなので0.11%以下が好ましい。
B:0〜0.07%
Bは結晶粒微細化及び高温靭性向上の効果を得る為に必要に応じて添加するが、過剰な添加はかえって靭性低下をもたらし、熱衝撃亀裂感受性が増す為0.07%以下が好ましい。尚、より好ましくは0.005〜0.07%である。
上記成分を除いた残部はFe及び不可避的不純物である。
(肉盛層の厚さ)
肉盛層の厚さは、肉盛層の再生頻度が多くなり過ぎないようにする観点から3mm以上が好ましく、一方、肉盛層の再生費用を節約する観点から6mm以下が好ましい。
(芯材)
芯材の材質は特に限定されないが、鋳片から受ける負荷に耐えうる程度以上の強度を有する材料とする事は無論である。使用される場所によってロールに要求される特性レベルは変化するが、700MPa以上の引張強さを有する溶接性良好な鋼材が望ましい、例えば、芯材として好適な材料としては、C:0.17〜0.25%、Si:0.30〜0.60%、Mn:0.30〜0.50%、Ni:0.50%以下、Cr:1.20〜1.50%、Mo:1.00〜1.20%、V:0.25〜0.35%、P:0.035%未満、S:0.035%未満を含む組成を有する鋼材(DIN 21CrMoV511)が例示できる。
(肉盛方法)
肉盛方法は公知公用の方法(溶接肉盛、溶射肉盛等)がそのまま採用できる。
(ピーニング加工)
ピーニング加工は、最表層部(厚さd1=0.1〜0.5mm)が塑性変形して扁平化し、且つその下層である次表層部の少なくとも一部が加工硬化する程度に加工条件を設定して実行する。ピーニング方法は特に限定されず、公知公用の遠心式、圧空式、超音波式などの何れを用いてもよい。
(熱処理)
熱処理は、扁平化部及び加工硬化部が再結晶化し細粒化する温度で行う。この温度は、600℃±30℃の範囲が好ましい。この好適温度範囲で熱処理する事で、扁平化状態の最表層部(扁平化部)と、次表層部の加工硬化状態の領域(加工硬化部)とが再結晶化し、図1(b)に示した如く微細な再結晶粒組織を得る事ができて、ヒートクラックの進展を有効に阻止する事ができる。この好適温度範囲を下回ると再結晶化が起こり難く、一方、この温度範囲を上回ると、軟化が進行して強度が低下する。この好適温度範囲は通常の肉盛後の熱処理温度と重なるが、通常の肉盛後熱処理では肉盛後のピーニング加工が無いから本発明で得られる様な微細粒組織は得られない。
尚、上記好適温度範囲での保持時間は、20〜30分の範囲が好適である。この範囲未満の保持時間ではロール軸方向での再結晶進行度合いの局所的ばらつきが大きくなり、一方、この範囲超の保持時間では再結晶後の粒成長による組織の粗大化が顕著になる為、何れの場合もヒートクラック進展抑止効果がいささか低下する。
熱処理方法としては、バーナ加熱、高周波誘導加熱の何れも用いうるが、肉盛層を優先的に加熱する趣旨から、ロール表層へ集中的に入熱できる点及びその入熱制御性の点でバーナ加熱よりも格段に優れる高周波誘導加熱が好ましい。
ラボ実験として、表1に組成を示す(残部はFe及び不可避的不純物であり、各成分の数値は質量%である)連続鋳造用ロール向け肉盛材料を芯材(DIN 21CrMoV511)胴部表面に溶接肉盛して全厚さ3〜6mmの肉盛層を形成し、該肉盛層に、表2に示すピーニング方法の何れかを用いてピーニング加工を施し、最表層部(厚さ0.1〜0.5mm)の結晶粒を扁平化させ且つ次表層部の大部分(厚さ2.5〜5.9mm)を加工硬化状態とした。その後、高周波誘導加熱により肉盛層に600℃±5℃×20分の熱処理を施し、図1(b)の様な微細粒組織となした本発明例サンプルを準備した。又、本発明例サンプルの準備工程からピーニング加工を削除した残りの工程で図1(a)の様な樹状組織となした比較例サンプルを準備した。
得られたサンプルについて図2に示す方法でヒートサイクル試験を行い、試験後のサンプル断面のロール表面からのヒートクラックの個数と深さを測定し、個数を深さで分級したヒストグラムで耐熱亀裂性を評価した。その結果を図3に示す。尚、図3のクラック数は、本発明例、比較例の夫々全サンプル数についての平均値に範囲を付けて示した。
図3より、ピーニング無の比較例サンプルは、ロール表面からの深さが大きいクラックの数が多いのに対し、ピーニング有の本発明例サンプルはロール表面からのクラック深さが浅い微細クラックが大半を占めており、ロール表面からのクラック深さは最大でも0.6mm程度であった。即ち、本発明例サンプルではロール表面からのヒートクラックの発生は妨げないが、発生したヒートクラックがロール深部へ進展(伝播)するのを有効に抑制できた。
又、上記ラボ実験の結果を基に、実機(2ストランドで月産20万トンのスラブを製造する連鋳機)のセグメントロールに、表1のサンプルNo.1相当の準備工程で遠心式ピーニングを行って準備したロール(本発明例A)を導入した。その結果、従来(本発明例Aの準備工程からピーニング加工を削除した残りの工程で準備したロールを使用していた)のロールでは4000チャージ回程度使用するとロール表面からのヒートクラック深さが1.0mm以上に進展して交換を余儀なくされたのに対し、本発明例Aでは12000チャージ回の使用でもロール表面からのヒートクラック深さは1.0mm未満と使用可能なレベルにあり、ロール使用寿命が対従来比で3倍以上向上した。
Figure 2013056350
Figure 2013056350

Claims (1)

  1. 芯材表面に質量%でCr:9%以上12%未満を含有する耐熱鋼系乃至Cr:12%以上20%以下を含有するステンレス鋼系の肉盛層を有する連続鋳造用ロールであって、前記肉盛層は、ピーニング加工により最表層部の結晶粒を扁平化させ且つ該最表層部から芯材までの次表層部の少なくとも一部を加工硬化させ、次いで熱処理により前記扁平化部及び加工硬化部を再結晶化させて細粒化してなることを特徴とする連続鋳造用ロール。
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