JP2013051910A - 発泡飲料の製造方法、発泡飲料、および飲料用起泡剤 - Google Patents

発泡飲料の製造方法、発泡飲料、および飲料用起泡剤 Download PDF

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Abstract

【課題】起泡性、好ましくはさらに泡保持性を備えた発泡飲料を提供する。
【解決手段】50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物を、発泡飲料の原料液体と混合することにより、発泡飲料を製造する。
【選択図】なし

Description

本発明は、発泡飲料の製造方法、発泡飲料、および飲料用起泡剤に関する。
発泡飲料としては、ビールや酎ハイに代表されるアルコール飲料のほか、サイダー、コーラ、ジンジャーエール等の多種多様の非アルコール飲料が知られている。また、近年では、嗜好性の多様化に伴い、カクテル等の様々な風味を売りにした発泡性飲料の開発も活発である。
発泡飲料においては、「口当たり」が品質を決める重要な要素となり、具体的には生じる泡の「泡立ち」と「泡持ち」が重要である。
アルコール飲料のうち、ビールは、その程度には差があるとしても「泡立ち」や「泡持ち」を実現している飲料の代表である。一方で、酎ハイ等の発泡性アルコール飲料においては、グラス等に注いだ時の泡立ちが悪く、キメの細かい泡を持続することが困難である。すなわち、このような発泡性アルコール飲料においては、ビールのような泡立ちと泡持ちを実現することが難しく、良質なビール様の泡の性状を備えた発泡性アルコール飲料のバリエーションは、未だ十分に開発されていないのが実情である。
また、同様に、炭酸ガスを溶入した非アルコール飲料についても、容器の開封後あるいは開栓後直ちに発生する泡は保持されることなく、程なく炭酸ガスとして揮散してしまうものが殆どであるのが実情である。
発泡性飲料の泡立ちと泡持ちの問題に対処するための試みとして、例えば、非アルコール飲料や低アルコール飲料として、サポニンを0.0001〜0.01重量%含み、オクテニルコハク酸澱粉、ペクチン及びタマリンドガムから選択される1種以上の起泡剤又は泡保持剤を含む炭酸ガス含有飲料が知られている(特許文献1)。また、従来、アルコール飲料に対し、サポニンとオリゴ糖(あるいはさらに多糖類を添加)の組み合わせ(特許文献2)、ペクチン(特許文献3)、イソフムロン抽出物と起泡性タンパク質との組み合わせ(特許文献4)等を配合した例が報告されている。
また、アルコール飲料あるいは非アルコール飲料を問わず、炭酸ガスを溶入した飲料における起泡性等を改善する飲料用起泡剤及び/又は泡安定剤として、大豆多糖類、アラビアガム等が開示されている(特許文献5)。また、同文献には、これらの起泡剤とサポニンを組み合わせて発泡飲料を製造することが開示されている。
特開2009−11200号公報 特開平5−38275号公報 特表平10−510420号公報 特表平8−502641号公報 特開2007−181427号公報
ビールの泡は、単に視覚上の官能効果だけはなく、空気を遮断して酸化に伴う苦味の増加を抑制したり、炭酸の抜けを抑制したり等の風味に対する作用をも有することから、ビール以外のアルコール飲料や非アルコール飲料においても、空気との界面に十分に泡を形成させ、その泡を保持することで、成分の酸化を防いだり、炭酸の抜けを抑制したりし、香味良好な品質を実現することが期待されている。
しかしながら、上述した特許文献に記載された技術では、未だ十分な泡立ち又は泡持ちを達成することはできなかった。
また、上述した特許文献1、2、および4に記載されるように、サポニンやイソフムロン抽出物を用いて十分な泡立ちを実現しようとすると、これらの物質特有の苦味が出現する問題があった。また、これらの文献や特許文献3、5に記載されるように、糖や多糖類を用いて十分な泡保持性を実現しようとすると、飲料自体の粘度が上がってしまい、べたつきを感じる等、口当たりに影響を及ぼす問題があった。
これは、発泡性飲料の嗜好性を高めるという大きな目的においては、少なからず不利になる場合があった。
そこで、本発明は、苦味やべたつき等を極力発現することなく、様々な発泡性飲料に十分な泡立ち、好ましくはさらに泡持ちを付与する技術を提供することを課題とする。本発明においては、泡立ちの性質を「起泡性」、泡持ちの性質を「泡保持性」という。
本発明者等は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、一定のレベルまで加水分解したカゼイン加水分解物を、発泡飲料の原料液体と混合する工程を経て発泡性飲料を製造することにより、起泡性に優れ、好ましくは泡保持性にも優れた発泡飲料が製造できることを見出し、本発明を完成させた。また、上記カゼイン加水分解物は、従来の起泡剤や泡保持剤が有していたような、苦味やべたつき等の問題を極力発現しない範囲で、上記作用を十分に発揮することを見出し、本発明を完成させた。
前記課題を解決する本発明は、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物を、発泡飲料の原料液体と混合する工程を含む、発泡飲料の製造方法である。
このように、カゼイン高分子量成分を一定の比率以下としたカゼイン加水分解物、すなわち、一定のレベルまで加水分解したカゼイン加水分解物を発泡飲料の原料液体と混合することにより、十分な起泡性又は泡保持性を備えた発泡飲料を製造することができる。
本発明の好ましい形態では、発泡飲料に対するカゼイン加水分解物の最終濃度が0.02〜5.0質量%となるように、前記カゼイン加水分解物を混合する。
このような濃度となるように前記カゼイン加水分解物を混合することで、特に良好な起泡性又は泡保持性を備えた発泡飲料を製造することができる。
本発明の一形態では、前記カゼイン加水分解物を、炭酸ガスを含まない原料液体と混合する工程、およびカゼイン加水分解物を混合した原料液体に、炭酸ガスを圧入する工程を含む。
このような製造方法は、例えば、工場において、容器入り発泡飲料を大量生産するのに好適である。
本発明の一形態では、前記カゼイン加水分解物を、炭酸ガスを含まない原料液体と混合する工程、およびカゼイン加水分解物を混合した原料液体と、炭酸ガスを含む原料液体とを混合する工程を含む。
このような製造方法は、例えば、飲食店において、客から注文を受けて発泡飲料を調製し、直ちに客にこれを提供するのに好適である。
本発明の一形態では、前記カゼイン加水分解物を、炭酸ガスを含む原料液体と混合する工程を含む。
このような製造方法は、工場において、容器入り発泡飲料を大量生産するのにはもちろんのこと、飲食店や家庭において、従来の発泡飲料に添加する方法で、従来の発泡飲料に起泡性又は泡保持性を付与するのに好適である。
本発明の好ましい形態では、前記カゼイン加水分解物における20000ダルトン超の分子量を有する成分の比率は、40質量%以下である。
このように、高分子量成分の比率を一定以下とすることにより、より効率よく発泡飲料に起泡性や泡保持性を付与することが可能となる。
本発明の好ましい形態では、前記カゼイン加水分解物において、50000ダルトン超の分子量を有する成分に対する、2000ダルトン超20000ダルトン以下の分子量を有する成分の質量比が、1.5倍以上である。
このように、カゼイン加水分解物における高分子量成分の比率を抑えながら、2000ダルトン超20000ダルトン以下の分子量を有する成分の比率を、一定以上含有させることにより、発泡飲料に十分な起泡性や泡保持性を付与することが可能となる。
本発明の好ましい形態では、例えば、前記カゼイン加水分解物は、以下1)〜4)の分子量分布を有するものである。
1)50000ダルトン超:5〜20質量%
2)20000ダルトン超50000ダルトン以下:3〜10質量%
3)2000ダルトン超20000ダルトン以下:25〜50質量%
4)2000ダルトン以下:5〜55質量%
このような分子量分布のカゼイン加水分解物を用いることにより、更に優れた起泡性又は泡保持性を実現することができる。
本発明は、非アルコール飲料にも、アルコール飲料にも用いることができる。アルコール飲料に用いる場合には、発泡飲料の最終アルコール度数(最終アルコール濃度)が25%以下となるようにアルコール濃度を調整することが好ましい。
本発明は、また、上記のいずれかの製造方法によって製造される発泡飲料を提供する。
また、本発明は、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物を含む発泡飲料を提供する。
本発明の発泡飲料は、グラスに注ぐことによって、或いは発泡飲料自体がグラス内で調製されることにより、グラス内の発泡飲料が十分に起泡し、泡の層が空気との界面に形成される。また、好ましい形態では、この泡の層が一定時間、安定的に保持される。また、本発明の発泡飲料は、飲料原料の風味や口当たりを十分に生かしたものであり、全体として嗜好性に優れるものである。
本発明は、また、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物を有効成分とする、飲料用起泡剤を提供する。
本発明の飲料用起泡剤は、従来の発泡飲料や、炭酸ガスを含む飲料原料へ添加することで、簡単に起泡性(好ましくは更に泡保持性)に優れた発泡飲料を製造することを可能にする。従って、工場や飲食店ではもちろんのこと、家庭においても、本発明の発泡飲料の調製に利用できる。
本発明の好ましい形態では、前記飲料用起泡剤は、発泡飲料に対するカゼイン加水分解物の最終濃度が0.02〜5.0質量%となるように、発泡飲料の原料液体に添加して用いるためのものである。
本発明の飲料用起泡剤は、このような濃度となるように使用されることで、特に良好な起泡性又は泡保持性を飲料に付与する。
本発明の好ましい形態では、前記カゼイン加水分解物は、以下1)〜4)の分子量分布を有するものである。
1)50000ダルトン超:5〜20質量%
2)20000ダルトン超50000ダルトン以下:3〜10質量%
3)2000ダルトン超20000ダルトン以下:25〜50質量%
4)2000ダルトン以下:5〜55質量%
このような分子量分布のカゼイン加水分解物を飲料用起泡剤の有効成分として用いることにより、飲料に対し、特に優れた起泡性又は泡保持性を付与することができる。
本発明は、また、炭酸ガスを含む液体で希釈することにより発泡飲料を調製するために用いられる発泡飲料用濃縮液であって、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物を含むことを特徴とする。
このような発泡飲料用濃縮液は、炭酸水等の炭酸ガスを含む液体で希釈するだけで、起泡性、好ましくはさらに泡保持性に優れた発泡飲料を製造することを可能とし、工場のみならず、飲食店や家庭でも、起泡性、好ましくはさらに泡保持性に優れた発泡飲料の製造を簡単に行うことを可能とする。
本発明の製造方法を用いれば、起泡性、好ましくはさらに泡保持性に優れた、嗜好性の高い発泡飲料を製造することが可能となる。例えば、従来、起泡性を殆ど有しなかった缶や瓶入りの酎ハイやカクテル等、従来、起泡性や泡保持性が不十分であった発泡酒等のアルコール飲料やサイダーやコーラ等の非アルコール飲料に、その風味や口当たりを損なうことなく、起泡性、好ましくはさらに泡保持性を付与し、ビール様の泡という新たな嗜好性を実現することが可能となる。
また、本発明の発泡飲料は、起泡性、好ましくはさらに泡保持性に優れる。また、本発明の発泡飲料は、苦味やべたつきを極力発現しないで十分な起泡性を有するため、風味の点でも嗜好性が高い。
また、本発明の飲料用起泡剤や発泡飲料用濃縮液を用いれば、本発明の発泡飲料を簡便に調製することができる。
本発明の製造方法の第一の実施形態を示す工程図である。 本発明の製造方法の第二の実施形態を示す工程図である。 本発明の製造方法の第三の実施形態を示す工程図である。
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。
本明細書において百分率は、特に断りのない限り質量による表示である。
(1)カゼイン加水分解物
本発明で用いられる50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物は、例えば、常法により、カゼインをペプシン等のたんぱく質分解酵素で加水分解することにより得ることができる。
例えば、ペプシンを用いた加水分解においては、ペプシンの最適pHとカゼインの沈殿等の関係を考慮し、クエン酸等の酸でpHを5.0乃至5.9に調整することが好ましい。また、カゼインやペプシンの臭いや味を十分に除去し、より嗜好性の高い製品を製造することを目的として、予めカゼインやペプシンを吸着性樹脂で処理することも好ましい。
本発明で用いられるカゼイン加水分解物は、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下、好ましくは25質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。このように、カゼイン加水分解物における高分子量成分の比率を一定以下とすることにより、発泡飲料の起泡性が低下することを効果的に抑制することができ、発泡飲料に対して十分な起泡性を付与することが可能となる。
発泡飲料の起泡性を低下させることを抑制するという観点からは、上記のような高分子量成分の比率は小さいことが好ましいが、発泡飲料の過度な起泡性を制御する観点、カゼイン加水分解物の製造の簡便性の観点からは、このような高分子量成分を一定量含ませてもよい。例えば、上記成分の比率の下限として、5質量%、或いは8質量%程度を目安とすることができる。
また、同様の観点から、本発明で用いられるカゼイン加水分解物は、20000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下とすることもできる。また、上記成分の比率の下限として、8質量%、或いは12質量%程度を目安とすることができる。
また、本発明で用いられるカゼイン加水分解物は、2000ダルトン超20000ダルトン以下の分子量を有する成分の比率が、好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは25質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。このように、カゼイン加水分解物における特定の分子量成分の比率を一定以上とすることにより、発泡飲料の起泡性を効果的に高めることができる。
発泡飲料の起泡性を高めるという観点からは、上記の分子量の範囲の成分の比率は大きいことが好ましいが、発泡飲料の過度な起泡性を制御する観点、カゼイン加水分解物の製造の簡便性の観点からは、このような成分の上限を制御してもよい。例えば、上記成分の比率の上限として、好ましくは50質量%、より好ましくは40質量%程度を目安とすることができる。
本発明で用いられるカゼイン加水分解物において、50000ダルトン超の分子量を有する成分に対する、2000ダルトン超20000ダルトン以下の分子量を有する成分の質量は、好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上、より好ましくは2.5倍以上である。このように、カゼイン加水分解物における高分子量成分の比率を抑えながら、2000ダルトン超20000ダルトン以下の分子量を有する成分の比率を一定以上とすることにより、発泡飲料に十分な起泡性や泡保持性を付与することが可能となる。
また、同様の観点から、本発明で用いられるカゼイン加水分解物において、20000ダルトン超の分子量を有する成分に対する、2000ダルトン超20000ダルトン以下の分子量を有する成分の質量は、好ましくは1倍以上、さらに好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上である。
なお、本発明で用いられるカゼイン加水分解物において、2000ダルトン以下の分子量の成分の比率は特に制限されず、上述した分子量の成分の残量として目安として規定し得るものである。後に例示する方法を用いて、高分子量成分が上述した範囲となるようにカゼインを加水分解すると、2000ダルトン以下の分子量の成分の比率は概ね5〜55質量%程度の範囲となるが、これを一部除去するなどして、その比率を低下させても構わない。
本発明において、カゼイン加水分解物は、例えば、以下1)〜4)の分子量分布を有するものが挙げられる。
1)50000ダルトン超:5〜20質量%
2)20000ダルトン超50000ダルトン以下:3〜10質量%
3)2000ダルトン超20000ダルトン以下:25〜50質量%
4)2000ダルトン以下:5〜55質量%
上記のような分子量分布を示すカゼイン加水分解物として、森永乳業株式会社製の「ホイップアップ」等の市販品を用いることができる。また、このようなカゼイン加水分解物は、以下の方法により製造することもできる。
カゼイン加水分解物の原料カゼインとしては、市販品のほか、牛乳、脱脂乳等から公知の方法により分離された乳酸カゼイン、硫酸カゼイン等の酸カゼイン、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインカルシウム等のカゼイン塩、又はこれらの任意の混合物を用いることができる。
この原料カゼインを水又は温湯に分散し、必要に応じて水酸化ナトリウム等のアルカリ剤を添加して、溶解する。該溶解液の濃度は格別の制限はないが、通常、蛋白質換算で5〜15%前後の濃度範囲にするのが効率性および操作性の点から望ましい。
前記カゼイン溶液を80〜90℃で10分間程度加熱殺菌した後、カゼイン溶液にクエン酸を添加する。添加量は、カゼイン100g当りクエン酸1g以上を目安とすることができる。
次いで、クエン酸を添加したカゼイン溶液に、ペプシンを添加して酵素分解する。
加水分解の程度は、カゼイン加水分解物が、50000ダルトン超 5〜20質量%、20000ダルトン超50000ダルトン以下 3〜20質量%、2000ダルトン超20000ダルトン以下 25〜60質量%、2000ダルトン以下 5〜55質量%の範囲で、反応温度、反応時間、酵素添加量等の反応条件を設定すればよい。
カゼイン加水分解物の分子量分布は、高速液体クロマトグラフィー(宇井信生ら編、「タンパク質・ペプチドの高速液体クロマトグラフィー」、化学増刊第102号、第241頁、株式会社化学同人、1984年)により測定することができる。具体的な例を挙げると、ポリハイドロキシエチル・アスパルタミド・カラム[Poly Hydroxyethyl Aspartamide Column:ポリ・エル・シー(Poly LC)社製。直径4.6mmおよび長さ200mm]を用い、20mM塩化ナトリウム、50mMギ酸により溶出速度0.4ml/分で溶出し、UV検出器(島津製作所製)を用いて検出した後、GPC分析システム(島津製作所製)を用いてデータ解析を行うことで測定することができる。
(2)原料液体へのカゼイン加水分解物の添加
本発明では、上述したカゼイン加水分解物(以下、単に「カゼイン加水分解物」という場合がある)を、発泡飲料の原料液体に添加することを特徴とする。原料液体としては、様々な組成のものを用いることができる。例えば、アルコールを含有するものであっても、含有しないものであってもよい。但し、アルコールを含有するものである場合には、発泡飲料の最終アルコール度数(最終アルコール濃度)が、好ましくは30%を超えないように、より好ましくは25%以下となるように、特に好ましくは20%以下となるように、原料液体のアルコール濃度を調整する。発泡飲料に含まれる最終アルコール濃度がこれより高い場合、十分な起泡性、泡保持性を実現するためには、カゼイン加水分解物の添加量を増加させる必要があり、その他の成分の処方の自由度が低くなる場合がある。
また、原料液体のpHは特に制限されないが、本発明の製造方法は、pHが2〜9であることが好ましく、より好ましくはpHが2〜7、さらに好ましくはpHが2〜6の発泡飲料を製造するのに好適である。特にpHが2〜6、中でも2〜4の酸性の発泡飲料の製造に本発明を適用することにより、例えば0.05〜0.15質量%程度(発泡飲料における最終濃度)の少量のカゼイン加水分解物の添加で、起泡性と泡保持性の何れも両立することが容易になる。
カゼイン加水分解物は、発泡飲料(最終製品)に対するカゼイン加水分解物の最終濃度が、好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、より好ましくは0.25質量%以上、特に好ましくは0.5質量%以上となるような範囲で添加する。このような範囲でカゼイン加水分解物を添加することにより、良好な起泡性を有する発泡飲料を製造することが可能となる。また、最終濃度を0.15質量%以上とすることで、発泡飲料に起泡性に加え、十分な泡保持性を付与することが可能となる。
特に、アルコール飲料を製造する際には、カゼイン加水分解物の最終濃度が、好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.25質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上となるような範囲で添加することで、発泡飲料に十分な起泡性と泡保持性を付与することが可能となる。
また、発泡飲料(最終製品)に対するカゼイン加水分解物の含有量の上限は、特に制限されず、風味を考慮して決定すればよい。例えば5.0質量%、好ましくは3.0質量%、より好ましくは1.0質量%を目安とすることができる。
カゼイン加水分解物を原料液体に添加することにより、本発明の発泡飲料を製造する方法としては、具体的には、以下の形態が挙げられる。以下、それぞれの形態について、図1〜3を参照しながら説明する。
<第一の実施形態>
第一の実施形態について、図1を参照して説明する。
この形態では、まず、カゼイン加水分解物を、炭酸ガスを含まない原料液体に混合する工程を行う。この原料液体は、例えば、最終製品である発泡飲料から炭酸ガスを除いた組成に相当する。原料液体は、アルコールを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。アルコールを含有する場合には、発泡飲料の最終アルコール度数(最終アルコール濃度)が、例えば25%以下、好ましくは20%以下となるように、原料液体のアルコール濃度を調整することができる。
ここでのカゼイン加水分解物の混合量は、原料液体に対して、好ましくは0.02〜5.0質量%、さらに好ましくは0.15〜3.0質量%、より好ましくは、0.25〜3.0質量%とすることができる。
続いて、カゼイン加水分解物を混合した原料液体に、炭酸ガスを圧入することで、発泡飲料を製造する。
圧入する炭酸ガスの量は、従来の発泡飲料の製造に用いられる範囲で、嗜好性を考慮して適宜決定することができる。十分な起泡性と泡保持性を得るためには、最終製品である発泡飲料のガス内圧が、好ましくは0.15MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.25MPa以上となるように、炭酸ガスを圧入する。上記ガス内圧は、日本農林規格第4条に従い、例えば、後述する実施例に記載する方法で測定することができる。
このようにして製造された発泡飲料は、缶、瓶、PETボトル等の容器に充填して容器詰め製品とすることができる。
このような製品は、消費者が容器を開封し、容器内の発泡飲料をグラスに注ぐことにより、グラス内に注がれた発泡飲料が泡立ち、発泡飲料と空気との界面に泡の層が形成さる。そして、泡の層が一定時間保持され、ビール様の泡が楽しめる。
<第二の実施形態>
第二の実施形態について、図2を参照して説明する。
この形態では、まず、カゼイン加水分解物を、炭酸ガスを含まない原料液体に混合する工程を行う。ここでの原料液体は、2倍量程度の炭酸水で希釈することで、最終製品である発泡飲料を調製することが可能な、シロップ、リキュール、それらの混合物等である。原料液体は、アルコールを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。アルコールを含有する場合には、発泡飲料の最終アルコール度数(最終アルコール濃度)が、好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下となるように、原料液体のアルコール濃度を調整することができる。
ここでのカゼイン加水分解物の混合量は、原料液体に対して、好ましくは0.04〜10質量%、さらに好ましくは0.3〜6.0質量%、特に好ましくは、0.5〜6.0質量%とすることができる。
ここまでの工程で調製されたカゼイン加水分解物を含む炭酸ガスを含まない原料液体は、それ自体、炭酸水等で希釈して発泡飲料を調製して発泡飲料を調製するための、発泡飲料用濃縮液として容器詰めし、流通させることが可能である。すなわち、本発明は、炭酸ガスを含む液体で希釈することにより発泡飲料を調製するための発泡飲料用濃縮液であって、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物を含むことを特徴とする発泡飲料用濃縮液を提供する。発泡飲料用濃縮液としては、シロップ、カクテルコンク等として販売されるものが挙げられる。
続いて、カゼイン加水分解物を混合した原料液体に、炭酸ガスを含む原料液体を注入することで、発泡飲料を製造する。
このような原料液体としては、例えば炭酸水が挙げられる。
注入する炭酸ガスを含む原料液体の量は、通常の炭酸飲料、発泡飲料の調製に用いられる範囲で、嗜好性を考慮して適宜決定することができる。十分な起泡性と泡保持性を得るためには、最終製品である発泡飲料のガス内圧が、好ましくは0.15MPa以上、さらに好ましくは0.2MPa以上、より好ましくは0.25MPa以上となるように、炭酸ガスを含む原料液体を注入する。上記ガス内圧は、日本農林規格第4条に従い、例えば、後述する実施例に記載する方法で測定することができる。
また、炭酸ガスを含む原料液体の注入は、缶、瓶、PETボトル等から、或いは液体サーバから、グラス等に液体を注ぎ入れる要領で行えばよい。すなわち、予めグラス内にカゼイン加水分解物を混合した原料液体(発泡飲料用濃縮液)を入れておき、その上から炭酸ガスを含む原料液体を注入する。この炭酸ガスを含む原料液体の注入の際の重力によって、該原料液体と炭酸ガスを含む原料液体とが混合されることにより、発泡飲料が泡立ち、発泡飲料と空気との界面に泡の層が形成さる。そして、泡の層が一定時間保持されるのである。
なお、上記の例とは反対に、予めグラス内に炭酸ガスを含む原料液体を入れておき、その上からカゼイン加水分解物を混合した原料液体を注入する方法で、両者を混合してもよいことはいうまでもない(後述する試験例6のc、d参照)。
このようにして調製された発泡飲料は、調製後すぐに、泡の層を楽しむことができるので、例えば、飲食店において、発泡飲料をグラス内で調製するなどし、そのまま客に提供するのに好適である。
<第三の実施形態>
第三の実施形態について、図3を参照して説明する。
この形態では、カゼイン加水分解物を含む飲料用起泡剤を、炭酸ガス含有原料液体に添加する。ここでの原料液体は、例えば、従来の酎ハイや清涼飲料等の炭酸飲料又は発泡飲料に相当する組成の原料液体が挙げられる。すなわち、起泡性や泡保持性を有しない、或いはこれらの性質が十分でない炭酸飲料又は発泡飲料に、カゼイン加水分解物を添加することで、発泡性飲料に良好な起泡性と泡保持性を付与することができる。この原料液体は、アルコールを含有していてもよいし、含有していなくてもよい。アルコールを含有する場合には、発泡飲料の最終アルコール度数(最終アルコール濃度)が、好ましくは20%以下、さらに好ましくは15%以下となるように、原料液体のアルコール濃度を設定することができる。
この形態では、カゼイン加水分解物は飲料用起泡剤の有効成分として作用する。
ここでの飲料用起泡剤の添加量は、例えば、第一の実施形態と同様に考えればよい。
飲料用起泡剤は、カゼイン加水分解物そのものであってもよいし、カゼイン加水分解物を、賦形剤を用いて製剤化したものでもよい。
飲料用起泡剤の剤形としては、特に制限されず、顆粒、錠剤、粉末、液剤等が挙げられる。
飲料用起泡剤におけるカゼイン加水分解物の量は、発泡飲料におけるカゼイン加水分解物の最終濃度を、上述した好ましい範囲とするのに適した量とすることができる。
この形態においては、飲料用起泡剤を、炭酸を含む原料液体に添加し、必要に応じて撹拌、振動させることにより、或いは、飲料用起泡剤をグラス等に入れた後、炭酸を含む原料液体を注ぎ入れることにより、十分な起泡を促すことができ、発泡飲料と空気との界面に泡の層が形成さる。
このような製造方法によれば、簡単に泡の層を形成することができるので、家庭での使用に好適である。もちろん、このような方法は、飲食店や工場における製造にも好適である。
次に、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下のカゼイン加水分解物の起泡性および泡保持性を検証するため、以下に示す試験を行った。
各試験に用いた試料は以下のとおりである。
<試験試料>
*試料1 カゼイン加水分解物
商品名:「ホイップアップ」森永乳業株式会社製
分子量分布:
1)50000ダルトン超:10.1質量%
2)20000ダルトン超50000ダルトン以下:4.9質量%
3)2000ダルトン超20000ダルトン以下:34.0質量%
4)2000ダルトン以下:51.0質量%
(平均分子量:約27000(参考))

*試料2 カゼイン加水分解物
商品名:「エマルアップ」森永乳業株式会社製
1)50000ダルトン超:33.7質量%
2)20000ダルトン超50000ダルトン以下:12.1質量%
3)2000ダルトン超20000ダルトン以下:32.3質量%
4)2000ダルトン以下:21.9質量%

*試料3 カゼインナトリウム(未分解物)

*試料4 サポニン(大豆由来)

*試料5 カゼイン加水分解物
分子量分布:
1)50000ダルトン超:14.6質量%
2)20000ダルトン超50000ダルトン以下:5.5質量%
3)2000ダルトン超20000ダルトン以下:33.2質量%
4)2000ダルトン以下:46.7質量%
(平均分子量:約40000(参考))
[試験例1]
様々なpHおよびアルコール濃度の原料液体を用いて、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下のカゼイン加水分解物の起泡性を試験した。
<方法>
レモン果汁、水道水、アルカリイオン水、ウォッカ(原液アルコール濃度:37.5%および水道水希釈ウォッカを溶媒とし、試料1(カゼイン加水分解物:50000ダルトン超 10.1質量%、20000ダルトン超 15質量%)の0.1、0.5、1.0、2.0、4.0、6.0%溶液を調製した。試料1の溶媒への添加は、泡が立たないようにスパチュラを用いて攪拌を行った。
直径55mm円柱形ガラス容器に、上記で調製した溶液30gを秤量し、炭酸水30gを液面より7cmの高さから一度に添加した際に発生した泡の高さを泡の下面が安定した直後に測定し、以下の評価基準に従って評価した。
<評価基準>
×:5mm未満もしくは泡が1分以内に消失
△:5mm以上〜10mm未満
○:10mm以上〜20mm未満
◎:20mm以上
<結果>
表1に、評価結果を示す。
Figure 2013051910
評価の結果、レモン汁や水道水等の酸性〜中性の非アルコール性の原料液体を用いた場合には、カゼイン加水分解物の濃度が0.1%(最終濃度が0.05%)で10mm以上の泡の高さが観察され、カゼイン加水分解物の濃度が1.0%以上(最終濃度が0.5%)で20mm以上の泡の高さが観察された。また、アルカリ性の非アルコール性の原料液体を用いた場合には、カゼイン加水分解物の濃度が0.1%で10mm以上の泡の高さが観察され、2.0%以上で20mm以上の泡の高さが観察された。このように、何れのpHの原料液体を用いた場合でも良好な起泡性が得られたことより、原料液体のpHは起泡性にほとんど影響を与えないことが分かった。
また、アルコール濃度が37.5%の原料液体を用いた場合(最終アルコール濃度約19%)には、カゼイン加水分解物の濃度が1.0%で10mm以上の泡の高さが観察され、2.0%以上で20mm以上の泡の高さが観察された。また、最終アルコール濃度が5%程度の場合には、カゼイン加水分解物の濃度が0.5%で10mm以上の泡の高さが観察された。これより、発泡飲料の最終アルコール濃度を25%以下、好ましくは20%以下とすれば、カゼイン加水分解物を添加する効果が十分に得られることが分かった。また、発泡飲料の最終アルコール濃度を5%以下とすると、少量のカゼイン加水分解物でも優れた起泡性を実現することができることが分かった。
これらの結果をまとめると、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が15質量%以下、或いは20000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が20質量%以下のカゼイン加水分解物を、様々な原料液体に混合し、炭酸ガスを含む媒体と混合することで、優れた起泡性を有する発泡飲料を製造することができることが分かった。
さらに、50000ダルトン超の分子量の成分に対して、2000ダルトン超20000以下の分子量の成分の比率を3倍以上、より具体的には3〜3.5倍程度とすることにより、発泡飲料に十分な起泡性を付与することができることが分かった。また、20000ダルトン超の分子量の成分に対して、2000ダルトン超20000以下の分子量の成分の比率を2倍以上、より具体的には2〜2.5倍程度とすることにより、発泡飲料に十分な起泡性を付与することができることが分かった。
[試験例2]
更に、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下のカゼイン加水分解物の効果を検討するため、以下の比較試験を行った。
<方法>
水道水に、試料1、試料2又は試料3を溶解し、それぞれ1.0%溶液を調製した。試料の溶媒への添加は、泡が立たないようにスパチュラを用いて攪拌を行った。直径55mm円柱形ガラス容器に、上記で調製した溶液30gを秤量し、炭酸水30gを液面より7cmの高さから一度に添加した際に炭酸によって発生した泡の高さを泡の下面が安定した直後に測定し評価した。評価基準は、試験例1と同じである。
<結果>
表2に、評価結果を示す。
Figure 2013051910
評価の結果、試料1を用いた場合には、20mm以上の泡の高さが観察され、試料2、試料3を用いた場合には、殆ど泡立ちが観察されなかった。これより、50000ダルトン超、或いは20000ダルトン超の分子量を有する高分子量成分の比率を30質量%以下、好ましくは20質量%以下としたカゼイン加水分解物を用いることが、発泡飲料の起泡性に対して重要であることが分かった。
[試験例3]
更に、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下のカゼイン加水分解物の効果を検討するため、以下の比較試験を行った。
<方法>
水道水に試料1、又は試料4(サポニン(大豆由来))をスパチュラを用いて泡立たないように溶解し、それぞれ0.1、0.5、1.0%溶液を調製した。
直径55mm円柱形ガラス容器に溶液30gを秤量し、炭酸水30gを液面より7cmの高さから一度に添加した際に発生した泡の高さを泡の下面が安定した直後に測定し評価した。その後、炭酸添加溶液を口に含んだ際の苦味、臭気を官能評価した。評価基準は以下のとおりである。
<評価基準>
起泡性:試験例1の評価基準と同じ
苦味 :官能評価(5段階評価)
(1:感じられない、2:感じることが出来る、3:やや苦い、4:苦い、5:大変苦い)
臭気 :官能評価(5段階評価)
(1:感じられない、2:感じることが出来る、3:やや臭い、4:臭い、5:大変臭い)
べたつき :官能評価(2段階評価)
(1:感じられない、2:感じることができる)
<結果>
表3(A)〜(D)に、評価結果を示す。
Figure 2013051910
評価の結果、試料1を用いた場合には、従来、起泡剤として用いられているサポニン(試料4)に比して、少量でも起泡性を付与することができ、しかも、当該有効量で、苦味及び臭気が抑制されていることが分かった。
すなわち、本発明の製造方法を用いることにより、苦みを極力発現させることなく、起泡性に優れた発泡飲料を製造することができることが分かる。
また、上記カゼイン加水分解物は、べたつきを生じることもなかったため、従来サポニンと組み合わせて用いられてきた多糖類等が有していたべたつきの問題に対しても、解決手段となるものであることが分かった。
[試験例4]
次に、炭酸ガスの量が起泡性に与える影響を検討するため、以下の試験を行った。
<方法>
水道水に試料1を溶解し1.0、2.0、4.0、6.0、8.0、10.0%溶液を調製した。試料1の溶媒への添加は、泡が立たないようにスパチュラを用いて攪拌を行った。
直径55mm円柱形ガラス容器に、上記で調製した溶液30gを秤量し、以下のガス内圧を有する炭酸水および微炭酸水30gを液面より7cmの高さから一度に添加した際に発生した泡の高さを泡の下面が安定した直後に測定し評価した。評価基準は、試験例1と同じである。
ガス内圧:炭酸水0.28MPa、微炭酸水0.17MPa
(ガス内圧は、炭酸飲料の日本農林規格第4条に従い、20℃にした試料をガス内圧計に固定した後、一度ガス内圧計の活栓を開いてガスを抜き、再び活栓を閉じ、ガス内圧計を振り動かして指針が一定の位置に達した時の値である。)
<結果>
表4に、評価結果を示す。
Figure 2013051910
評価の結果、炭酸水(ガス内圧0.28MPa)を用いた場合には、カゼイン加水分解物の濃度が1.0%以上(最終濃度0.5%以上)で20mm以上の泡の高さが観察された。一方、微炭酸水(ガス内圧0.17MPa)を用いた場合には、カゼイン加水分解物の濃度が6.0%以上で10mm以上の泡の高さが観察された。これより、炭酸のガス内圧が、0.2MPa以上、好ましくは0.25MPa以上で、特にカゼイン加水分解物の添加の効果が顕著に表れることが分かった。
[試験例5]
次に、カゼイン加水分解物の添加方法を変えて、起泡性を検討した。
<方法>
水道水に試料1、試料2又は試料3を溶解し、それぞれ10%溶液を調製した。試料1の溶媒への添加は、泡が立たないようにスパチュラを用いて攪拌を行った。500mlペットボトル入り炭酸水を開栓し、上記で調製した10%溶液を、ペットボトル内に穏やかに添加し試料濃度を0.02%に調整した。ペットボトルの栓を閉め均一なるまで混合した後放置した。その後、60gを秤量し直径55mm円柱形ガラス容器に一度に注いだ際に発生した泡の高さを泡の下面が安定した直後に測定し評価した。評価基準は、試験例1と同じである。
<結果>
表5に、結果を示す。
Figure 2013051910
評価の結果、試料1を用いた場合には、20mm以上の泡の高さが観察され、試料2、又は試料3を用いた場合には、殆ど泡立ちが観察されなかった。これより、50000ダルトン超、或いは20000ダルトン超の分子量を有する高分子量成分の比率が30質量%以下、好ましくは20質量%以下であるのカゼイン加水分解物を含む発泡飲料を、グラスなどに注ぐ方法によっても、十分に起泡させることができることが分かった。
[試験例6]
次に、カゼイン加水分解物の添加方法を変えて、起泡性を検討した。
<方法>
水道水に、試料1、試料2又は試料3を溶解し、それぞれ1.0%溶液を調製した。試料1の溶媒への添加は、泡が立たないようにスパチュラを用いて攪拌を行った。直径55mm円柱形ガラス容器内で、表6の方法に従って発泡飲料を調製し、発生した泡の高さを泡の下面が安定した直後に測定し評価した。評価基準は、試験例1と同じである。
Figure 2013051910
<結果>
表7に、評価結果を示す。
Figure 2013051910
評価の結果、試料1を用いた場合には、何れも10mm以上の泡の高さが観察され、試料2、又は試料3を用いた場合には、殆ど泡立ちが観察されなかった。
添加の方法としては、一度に添加する方が泡の高さが高くなることが分かった。
また、炭酸ガスを含まない原料液体、および炭酸ガスを含む原料液体の何れを他方に注入しても、起泡性に差がないことが分かった。
[試験例7]
次に、カゼインナトリウム加水分解物の泡保持性を検討するため、以下の試験を行った。
<方法>
水道水、レモン果汁、水道水希釈ウォッカを溶媒とし、試料1の0.3、0.5、1.0%溶液を調製した。試料1の溶媒への混合はミルクフォーマーを用いて行った。この際、試料にはミルクフォーマーによって発生した泡が確認された。
直径55mm円柱形ガラス容器に、上記で調製した溶液30gを秤量し、炭酸水30gを液面より7cmの高さから一度に添加した際に発生した泡の高さを泡の下面が安定した直後、および3分後に測定した。また、直後の泡の高さに対する3分後の泡の高さを泡保持率として算出した。なお、炭酸水添加によって発生した泡の高さには、ミルクフォーマーによる混合によって発生した試料由来の泡(炭酸水添加前の泡)も含まれるものである。
<結果>
表8(A)〜(C)に、評価結果を示す。
Figure 2013051910
評価の結果、水道水を用いた場合には、カゼイン加水分解物の最終濃度が0.15%で、泡保持率は50%であった。カゼイン加水分解物の濃度が0.25%以上の場合には泡保持率が70%以上であり、極めて良好な泡保持性が得られることが分かった。
これより、中性付近のpHの発泡飲料において、起泡性と泡保持性を両立させるためには、カゼイン加水分解物の濃度を最終濃度で0.15%以上とすることが好ましいことが分かった。
また、レモン果汁を用いた場合には、カゼイン加水分解物の最終濃度が0.05%で、泡保持率は約40%であり、カゼイン加水分解物の最終濃度が0.15%で、泡保持率は約60%であった。カゼイン加水分解物の濃度が0.25%以上の場合には泡保持率が70%を超え、極めて良好な泡保持性が得られることが分かった。
これより、酸性付近のpHの発泡飲料において、起泡性と泡保持性を両立させるためには、カゼイン加水分解物の濃度を最終濃度で0.05%以上とすることが好ましく、当該濃度が0.25%以上の場合には、極めて良好な泡保持性が得られることが分かった。
また、水道水希釈ウォッカを用いた場合には、カゼイン加水分解物の最終濃度が0.15%、0.25%で、泡保持率は約40%であった。カゼイン加水分解物の濃度が0.5%の場合には泡保持率が約50%であった。
これより、本発明の製造方法を用いることにより、アルコール飲料においても、起泡性と泡保持性を両立することができることが分かった。また、アルコール性発泡飲料の製造においては、起泡性と泡保持性を両立させるためには、カゼイン加水分解物の濃度を最終濃度で0.15%以上とすることが好ましいことが分かった。
[試験例8]
次に、試料1と分子量分布が異なるカゼイン加水分解物(試料5)を用いて、起泡性を試験した。
水道水を溶媒とし、試料5(カゼイン加水分解物:50000ダルトン超 14.6質量%、20000ダルトン超 20.1質量%)の1.0%溶液を調製した。試料5の溶媒への添加は、泡が立たないようにスパチュラを用いて攪拌を行った。
直径55mm円柱形ガラス容器に、上記で調製した溶液30gを秤量し、炭酸水30gを液面より7cmの高さから一度に添加した際に発生した泡の高さを泡の下面が安定した直後に測定し、試験例1と同様の評価基準に従って評価した。
その結果、「◎」の評価が得られた。
これより、発泡飲料に起泡性を付与する観点からは、50000ダルトン超、或いは20000ダルトン超の分子量を有する高分子量成分の比率を低減させること、特に、2000ダルトン超20000以下の分子量の成分に対して小さい比率とすることが重要であることが分かった。試験例1の結果と併せて考察すると、50000ダルトン超の分子量の成分に対して、2000ダルトン超20000以下の分子量の成分の比率を1.5倍以上、好ましくは2倍以上とすることにより、発泡飲料に十分な起泡性を付与することができることが分かった。また、20000ダルトン超の分子量の成分に対して、2000ダルトン超20000以下の分子量の成分の比率を1.0倍以上、好ましくは1.5倍以上とすることにより、発泡飲料に十分な起泡性を付与することができることが分かった。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
<実施例1>カクテルの製造
グラスに市販のライチリキュール(商品名:DITA、輸入社:ペルノ・リカール・ジャパン(株)、アルコール濃度24%)15gを添加し、そこにカゼイン加水分解物(商品名:ホイップアップ(森永乳業株式会社製))を0.12g添加してミルクフォーマーでよく混合した。次いで市販のグレープフルーツジュース(商品名:ウェルチピンクグレープフルーツ100、製造者:カルピス株式会社)45gを添加して混合し、その上からトニックウォーター(商品名:シュウェプストニックウォーター、販売者:コカ・コーラカスタマーマーケティング)60gを注ぎ入れた。炭酸を含むトニックウォーターを注ぎ入れることで起泡し、トニックウォーター注ぎ終わった直後には35mm程度の高さの泡の層が形成された。この泡の層は10分程度保持されていた。
<実施例2>発泡飲料の製造
カゼイン加水分解物(商品名:ホイップアップ(森永乳業株式会社製))の5%水溶液を調製した。次いで市販の発泡飲料(商品名:氷結レモン、製造者:麒麟麦酒株式会社)100gをグラスに秤量し、次いで上記で調製したカゼイン加水分解物の水溶液2gを、汎用注射筒(製品名:テルモシリンジ、製造者:テルモ株式会社)を使用して勢いよくグラスに添加した。
カゼイン加水分解物5%水溶液を添加することで起泡し、添加した直後には35mm程度の高さの泡の層が形成された。この泡の層は4分程度保持されていた。
本発明は、清涼飲料や、酎ハイ、カクテル等のアルコール飲料の分野において、ビール様の泡という新しい嗜好性をもたらすものである。

Claims (16)

  1. 50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物を、発泡飲料の原料液体と混合する工程を含む、発泡飲料の製造方法。
  2. 発泡飲料に対するカゼイン加水分解物の最終濃度が0.02〜5.0質量%となるように、前記カゼイン加水分解物を混合する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記カゼイン加水分解物を、炭酸ガスを含まない原料液体と混合する工程、およびカゼイン加水分解物を混合した原料液体に、炭酸ガスを圧入する工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  4. 前記カゼイン加水分解物を、炭酸ガスを含まない原料液体と混合する工程、およびカゼイン加水分解物を混合した原料液体と、炭酸ガスを含む原料液体とを混合する工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  5. 前記カゼイン加水分解物を、炭酸ガスを含む原料液体と混合する工程を含む、請求項1又は2に記載の製造方法。
  6. 前記カゼイン加水分解物において、50000ダルトン超の分子量を有する成分に対する、2000ダルトン超20000ダルトン以下の分子量を有する成分の質量比が、1.5倍以上である、請求項1〜5の何れか一項に記載の製造方法。
  7. 前記カゼイン加水分解物における2000ダルトン超20000ダルトン以下の分子量を有する成分の比率が20質量%以上である、請求項1〜6の何れか一項に記載の製造方法。
  8. 前記カゼイン加水分解物が、以下1)〜4)の分子量分布を有するものである、請求項1〜7の何れか一項に記載の製造方法。
    1)50000ダルトン超:5〜20質量%
    2)20000ダルトン超50000ダルトン以下:3〜10質量%
    3)2000ダルトン超20000ダルトン以下:25〜50質量%
    4)2000ダルトン以下:5〜55質量%
  9. 発泡飲料が非アルコール飲料である、請求項1〜8の何れか一項に記載の製造方法。
  10. 発泡飲料が最終アルコール度数25%以下のアルコール飲料である、請求項1〜8の何れか一項に記載の製造方法。
  11. 請求項1〜10の何れか一項に記載の製造方法によって製造される発泡飲料。
  12. 50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物を含む、発泡飲料。
  13. 50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物を有効成分とする、飲料用起泡剤。
  14. 発泡飲料に対するカゼイン加水分解物の最終濃度が0.02〜5.0質量%となるように、発泡飲料の原料液体に添加して用いるための、請求項13に記載の飲料用起泡剤。
  15. 前記カゼイン加水分解物が、以下1)〜4)の分子量分布を有するものである、請求項13又は14に記載の飲料用起泡剤。
    1)50000ダルトン超:5〜20質量%
    2)20000ダルトン超50000ダルトン以下:3〜10質量%
    3)2000ダルトン超20000ダルトン以下:25〜50質量%
    4)2000ダルトン以下:5〜55質量%
  16. 炭酸ガスを含む液体で希釈することにより発泡飲料を調製するために用いられる発泡飲料用濃縮液であって、50000ダルトン超の分子量を有する成分の比率が30質量%以下であるカゼイン加水分解物を含むことを特徴とする発泡飲料用濃縮液。
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